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訪日外国人4千万人の裏で進む二極化…静岡・関西が直面する“チャイナ・ショック”
●この記事のポイント
・訪日客数は過去最高水準に達する一方、中国依存度の高かった静岡や関西では渡航自粛の影響が直撃。インバウンド市場の「二極化」が地方経済を揺さぶっている。
・静岡県や関西圏では、中国団体客に特化した宿泊・観光モデルが機能不全に陥り、空路減便や宿泊単価下落が連鎖。成功体験が構造的リスクへと転じた。
・生き残りの鍵は「脱・中国依存」。団体から個人、量から質へと転換し、国籍を分散した需要ポートフォリオを築ける地域だけが次の成長を掴む。
日本のインバウンド市場は歴史的な転換点を迎えている。日本政府観光局(JNTO)によれば、訪日外国人数は2025年、11月までの累計で3,906万5,600人で、年間4,000万人を超えることが確実となり、コロナ禍以前を大きく上回る水準だ。東京、京都、大阪といった主要都市ではホテル不足が常態化し、宿泊料金(ADR)は過去最高を更新している。
しかし、その華々しい統計の裏側で、深刻な経営危機に陥っている地域がある。静岡県、そして関西圏の一部だ。
引き金となったのは、2025年11月に表面化した中国政府による日本への「渡航自粛要請」だ。高市早苗首相をはじめとした日本政府関係者の政治的発言を契機に、中国当局が団体旅行を中心に事実上のブレーキをかけたことで、回復基調にあった中国市場は一気に冷え込んだ。
欧米豪や東南アジアからの観光客が都市部を埋め尽くす一方で、かつて中国団体客でにぎわった地方観光地には、異様な静寂が広がっている。インバウンド市場は今、「総量の拡大」と「地域間の格差拡大」という二つの顔を同時に見せている。
観光政策アナリストの湯浅郁夫氏は、こう指摘する。
「いま起きているのは需要減少ではなく、“需要の偏在”です。中国依存度の高かった地域ほど、好調な全国統計とのギャップに苦しむ構造になっています」
●目次
「静岡県」が最大の被災地となった構造的理由
その象徴が静岡県だ。観光庁の宿泊旅行統計(2025年1〜9月期)によれば、同県における外国人宿泊者のうち、中国人が占める割合は45.0%。全国平均(約22%)のほぼ2倍で、全都道府県で突出して高い。
背景にあるのが、いわゆる「ゴールデンルート」だ。東京―富士山―名古屋―京都―大阪を結ぶこの動線は、中国の団体ツアーにとって効率性が極めて高い。富士山を擁する静岡県は、その中継地として宿泊需要を一身に集めてきた。
しかし、この成功体験が逆に足かせとなった。静岡県内の観光業について湯浅氏は、「団体特化型」の脆弱性をこう説明する。
「大型ホテルが中国系エージェントに100室単位で在庫を卸すモデルは、平時には稼働率を最大化できますが、政治リスクが顕在化した瞬間に需要が蒸発する。FIT(個人旅行)主体の欧米客へ切り替えようにも、施設設計やサービスが合わないケースが多い」
実際、富士山周辺のあるホテル経営者は、事態の深刻さをこう語る。
「11月の通知直後、12月と旧正月の予約が数日で8割キャンセルされました。全客室の7割を中国団体に充てていたため、代替需要が見つからない。雇用を守るため、一時休業も現実的な選択肢になっています」
「明日から1,000泊が消えた」という言葉は、決して誇張ではない。
関西圏を襲う「単価下落」の連鎖
静岡に次いで中国依存度が高いのが関西圏だ。和歌山県(37.0%)、兵庫県(34.4%)、大阪府(30.9%)と、中国客への依存度は全国でも上位に集中している。
関西では、関西国際空港(KIX)を起点とする団体ツアーが長年の基盤だった。黒潮市場や温泉地、有馬・城崎といった「分かりやすい観光資源」が、中国団体客に好まれてきた。
大阪の場合、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や道頓堀といった「コト消費」は欧米客にも人気だが、中国客が担ってきた「爆買い」の消失は、宿泊・小売の双方に大きな影響を与えている。
特に問題視されているのが、宿泊料金の地盤沈下だ。中国需要を当て込み急増した中価格帯ホテルが、稼働率を維持するため値下げ競争に突入。その結果、地域全体のADRが押し下げられ、収益性が悪化する「デフレ・スパイラル」が生じている。
不動産・ホテル市場の現状から湯浅氏は、「供給過剰と需要ミスマッチが同時に起きている」と指摘する。
「欧米FITは価格より体験を重視する。一方、団体前提で造られた中価格帯ホテルは、その価値を十分に伝えられず、結果として安売りに陥っている」
データが示す「質的変化」への対応遅れ
2025年7〜9月期の訪日消費動向を見ると、中国客の1人あたり買い物代は依然として高水準(約10万円)を維持している。しかし、全体では「モノ消費」から「体験消費」へのシフトが鮮明だ。
地域別に見ると、その差はさらに際立つ。
・静岡県:中国依存度45.0%、旅行支出約18万円
・東京都:中国依存度18.2%、旅行支出約28万円
・大阪府:中国依存度30.9%、旅行支出約21万円
東京では欧米FITを中心に、高単価な体験型消費が拡大する一方、団体主体の地域は単価が伸び悩んでいる。湯浅氏は、「問題は国籍ではなく、ビジネスモデルだ」と強調する。
「中国客が悪いわけではない。団体・薄利・大量消費というモデルから脱却できなかった地域が、構造的に不利な立場に立たされている」
“チャイナ・ショック”の深層
1. 空路が語る地方切り捨て
2025年11月以降、日中間の航空便は急減した。OAGなどの航空データによれば、12月の中国系航空会社による日本便は、旅客便数で約25%、座席数で約24%減少。特に影響を受けたのが、関空や地方空港だ。
中国LCCの撤退により、団体客を前提とした地方の「二次交通」や観光バス網は、存続の危機に立たされている。
2. 生死を分けた「ポートフォリオ」
静岡県の老舗大型ホテルでは、予約2,000人分が消失し、稼働率は10%台に低迷。一方、新宿や大阪の一部都市型ホテルは、コロナ禍以降あえて中国団体枠を制限し、欧米・東南アジアのFITに舵を切った。
その結果、ADRはコロナ前比で30〜50%上昇。国籍を分散した「需要ポートフォリオ」が、地政学リスクへの最大の防御となった。
3. 免税店ビジネスの変質
大阪市内の免税売上は一時的に15〜20%減少したが、高価格帯ブランドは欧米・東南アジア富裕層が下支えする。一方、京都の「よーじや」のように体験価値とブランド力を持つ小売は、影響を1割程度に抑え、全体では増収を維持している。
経営者に求められる「脱・チャイナ・バイアス」
今回の“チャイナ・ショック”は、単なる観光客数の増減ではない。日本の観光業が抱えてきた構造的脆弱性を露呈させた出来事だ。
第一に、特定国への過度な依存は経営リスクそのものだ。第二に、団体から個人へ、数から単価へという転換が不可避である。第三に、地政学リスクはもはや一時的な例外ではない。
2026年、中国市場の不透明感は続く可能性が高い。「中国が戻るまで待つ」経営ではなく、「中国がいなくても成り立つ」経営を構築できるかどうか。静岡や関西の事業者はいま、観光立国・日本の真価を問われる分岐点に立っている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)
訪日外国人4千万人の裏で進む二極化…静岡・関西が直面する“チャイナ・ショック”
●この記事のポイント
・訪日客数は過去最高水準に達する一方、中国依存度の高かった静岡や関西では渡航自粛の影響が直撃。インバウンド市場の「二極化」が地方経済を揺さぶっている。
・静岡県や関西圏では、中国団体客に特化した宿泊・観光モデルが機能不全に陥り、空路減便や宿泊単価下落が連鎖。成功体験が構造的リスクへと転じた。
・生き残りの鍵は「脱・中国依存」。団体から個人、量から質へと転換し、国籍を分散した需要ポートフォリオを築ける地域だけが次の成長を掴む。
日本のインバウンド市場は歴史的な転換点を迎えている。日本政府観光局(JNTO)によれば、訪日外国人数は2025年、11月までの累計で3,906万5,600人で、年間4,000万人を超えることが確実となり、コロナ禍以前を大きく上回る水準だ。東京、京都、大阪といった主要都市ではホテル不足が常態化し、宿泊料金(ADR)は過去最高を更新している。
しかし、その華々しい統計の裏側で、深刻な経営危機に陥っている地域がある。静岡県、そして関西圏の一部だ。
引き金となったのは、2025年11月に表面化した中国政府による日本への「渡航自粛要請」だ。高市早苗首相をはじめとした日本政府関係者の政治的発言を契機に、中国当局が団体旅行を中心に事実上のブレーキをかけたことで、回復基調にあった中国市場は一気に冷え込んだ。
欧米豪や東南アジアからの観光客が都市部を埋め尽くす一方で、かつて中国団体客でにぎわった地方観光地には、異様な静寂が広がっている。インバウンド市場は今、「総量の拡大」と「地域間の格差拡大」という二つの顔を同時に見せている。
観光政策アナリストの湯浅郁夫氏は、こう指摘する。
「いま起きているのは需要減少ではなく、“需要の偏在”です。中国依存度の高かった地域ほど、好調な全国統計とのギャップに苦しむ構造になっています」
●目次
「静岡県」が最大の被災地となった構造的理由
その象徴が静岡県だ。観光庁の宿泊旅行統計(2025年1〜9月期)によれば、同県における外国人宿泊者のうち、中国人が占める割合は45.0%。全国平均(約22%)のほぼ2倍で、全都道府県で突出して高い。
背景にあるのが、いわゆる「ゴールデンルート」だ。東京―富士山―名古屋―京都―大阪を結ぶこの動線は、中国の団体ツアーにとって効率性が極めて高い。富士山を擁する静岡県は、その中継地として宿泊需要を一身に集めてきた。
しかし、この成功体験が逆に足かせとなった。静岡県内の観光業について湯浅氏は、「団体特化型」の脆弱性をこう説明する。
「大型ホテルが中国系エージェントに100室単位で在庫を卸すモデルは、平時には稼働率を最大化できますが、政治リスクが顕在化した瞬間に需要が蒸発する。FIT(個人旅行)主体の欧米客へ切り替えようにも、施設設計やサービスが合わないケースが多い」
実際、富士山周辺のあるホテル経営者は、事態の深刻さをこう語る。
「11月の通知直後、12月と旧正月の予約が数日で8割キャンセルされました。全客室の7割を中国団体に充てていたため、代替需要が見つからない。雇用を守るため、一時休業も現実的な選択肢になっています」
「明日から1,000泊が消えた」という言葉は、決して誇張ではない。
関西圏を襲う「単価下落」の連鎖
静岡に次いで中国依存度が高いのが関西圏だ。和歌山県(37.0%)、兵庫県(34.4%)、大阪府(30.9%)と、中国客への依存度は全国でも上位に集中している。
関西では、関西国際空港(KIX)を起点とする団体ツアーが長年の基盤だった。黒潮市場や温泉地、有馬・城崎といった「分かりやすい観光資源」が、中国団体客に好まれてきた。
大阪の場合、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や道頓堀といった「コト消費」は欧米客にも人気だが、中国客が担ってきた「爆買い」の消失は、宿泊・小売の双方に大きな影響を与えている。
特に問題視されているのが、宿泊料金の地盤沈下だ。中国需要を当て込み急増した中価格帯ホテルが、稼働率を維持するため値下げ競争に突入。その結果、地域全体のADRが押し下げられ、収益性が悪化する「デフレ・スパイラル」が生じている。
不動産・ホテル市場の現状から湯浅氏は、「供給過剰と需要ミスマッチが同時に起きている」と指摘する。
「欧米FITは価格より体験を重視する。一方、団体前提で造られた中価格帯ホテルは、その価値を十分に伝えられず、結果として安売りに陥っている」
データが示す「質的変化」への対応遅れ
2025年7〜9月期の訪日消費動向を見ると、中国客の1人あたり買い物代は依然として高水準(約10万円)を維持している。しかし、全体では「モノ消費」から「体験消費」へのシフトが鮮明だ。
地域別に見ると、その差はさらに際立つ。
・静岡県:中国依存度45.0%、旅行支出約18万円
・東京都:中国依存度18.2%、旅行支出約28万円
・大阪府:中国依存度30.9%、旅行支出約21万円
東京では欧米FITを中心に、高単価な体験型消費が拡大する一方、団体主体の地域は単価が伸び悩んでいる。湯浅氏は、「問題は国籍ではなく、ビジネスモデルだ」と強調する。
「中国客が悪いわけではない。団体・薄利・大量消費というモデルから脱却できなかった地域が、構造的に不利な立場に立たされている」
“チャイナ・ショック”の深層
1. 空路が語る地方切り捨て
2025年11月以降、日中間の航空便は急減した。OAGなどの航空データによれば、12月の中国系航空会社による日本便は、旅客便数で約25%、座席数で約24%減少。特に影響を受けたのが、関空や地方空港だ。
中国LCCの撤退により、団体客を前提とした地方の「二次交通」や観光バス網は、存続の危機に立たされている。
2. 生死を分けた「ポートフォリオ」
静岡県の老舗大型ホテルでは、予約2,000人分が消失し、稼働率は10%台に低迷。一方、新宿や大阪の一部都市型ホテルは、コロナ禍以降あえて中国団体枠を制限し、欧米・東南アジアのFITに舵を切った。
その結果、ADRはコロナ前比で30〜50%上昇。国籍を分散した「需要ポートフォリオ」が、地政学リスクへの最大の防御となった。
3. 免税店ビジネスの変質
大阪市内の免税売上は一時的に15〜20%減少したが、高価格帯ブランドは欧米・東南アジア富裕層が下支えする。一方、京都の「よーじや」のように体験価値とブランド力を持つ小売は、影響を1割程度に抑え、全体では増収を維持している。
経営者に求められる「脱・チャイナ・バイアス」
今回の“チャイナ・ショック”は、単なる観光客数の増減ではない。日本の観光業が抱えてきた構造的脆弱性を露呈させた出来事だ。
第一に、特定国への過度な依存は経営リスクそのものだ。第二に、団体から個人へ、数から単価へという転換が不可避である。第三に、地政学リスクはもはや一時的な例外ではない。
2026年、中国市場の不透明感は続く可能性が高い。「中国が戻るまで待つ」経営ではなく、「中国がいなくても成り立つ」経営を構築できるかどうか。静岡や関西の事業者はいま、観光立国・日本の真価を問われる分岐点に立っている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)
トランプ政権「洋上風力」全面停止の衝撃…日本は五島沖で初稼働も、逆風だらけ
●この記事のポイント
・トランプ政権が洋上風力発電を「国家安保リスク」として全面停止。再エネが環境政策から地政学問題へ転じた衝撃が、日本のエネルギー戦略にも重くのしかかる。
・日本初の浮体式洋上風力が稼働する一方、三菱商事の撤退で露呈したコスト高と中国製設備依存。再エネ推進が新たな安全保障リスクを生みかねない現実。
・洋上風力が苦境に立つ中、日本が技術優位を持つペロブスカイト太陽電池が急浮上。再エネの主役を巡り、日本の「エネルギー主権」が問われている。
「夢の再生可能エネルギー」は、いつから「国家安全保障のリスク」になったのか——。洋上風力発電を取り巻く世界の景色が、いま日米で劇的に塗り替えられている。
2025年12月22日、トランプ政権は、米国内で建設中・計画中のすべての洋上風力発電プロジェクトに対し、事実上の全面停止命令を下した。内務省は、マサチューセッツ州からバージニア州にかけて進行中の5件の連邦リース契約を一時停止。理由は「国防総省の機密報告書が指摘した国家安全保障上のリスク」だ。巨大な風車のブレードが軍用レーダーに干渉し、国防上の死角を生む可能性があるという。
だが、市場関係者の多くはこの説明を額面通りには受け取っていない。エネルギー政策の専門家である佐伯俊也氏は「再エネを“美しい自然の破壊者”と公然と批判してきたトランプ氏にとって、これは化石燃料回帰を鮮明にするための決定打だ」との見方を示す。
この「トランプ・ショック」は米国にとどまらず、日本のエネルギー政策の「急所」をも直撃している。
●目次
- 日本初の「浮体式」稼働、その裏で広がる違和感
- 三菱商事の「敵前逃亡」とJERAの「冷徹なリアリズム」
- 「クリーンエネルギー」が「安保リスク」に変わる日
- ペロブスカイト太陽電池という「刺客」
- 問われる「エネルギー主権」
日本初の「浮体式」稼働、その裏で広がる違和感
皮肉なことに、米国の全面停止命令からわずか数週間、日本では歴史的な一歩が刻まれる。長崎県五島市沖で2026年1月、国内初となる商用の「浮体式」洋上風力発電所が運転を開始するのだ。
ゼネコン大手の戸田建設などが参画するこのプロジェクトは、急深な海域でも設置可能な独自の「ハイブリッドスパー型」技術を活用し、今後20年間で40億円超の経済効果を見込む。
政府は「第6次エネルギー基本計画」で、2040年に再エネ比率4〜5割、うち風力4〜8%という野心的な目標を掲げる。表面的には、日本の洋上風力は順風満帆に見える。
しかし現場では、祝祭ムードをかき消すような冷ややかな空気が漂い始めている。
三菱商事の「敵前逃亡」とJERAの「冷徹なリアリズム」
空気を一変させたのは、2025年8月の三菱商事を中心とする企業連合の衝撃的な事業撤退だ。
秋田県・千葉県の3海域で進められていた国内最大級のプロジェクトから、突如として手を引いた。かつて圧倒的な低価格で落札し、市場の「覇者」と目された三菱商事が「採算確保が困難」として白旗を上げた意味は重い。
背景にあるのは、総事業費が当初想定の2倍以上に膨れ上がった「世界的インフレ」と、深刻な「メーカー不在」だ。
日立製作所や三菱重工業といった重電大手は、すでに大型風車事業から撤退。現在、日本の海に並ぼうとしているのは、圧倒的なコスト競争力を誇る中国のMingyang(明陽智慧能源)やGoldwind(金風科技)といった中国勢である。
この状況下で、日本最大の発電会社JERAは「冷徹なリアリズム」に舵を切った。自社での開発に固執せず、ベルギーのパークウインド買収などで得た「海外の知見と供給網」を優先。国内メーカーの復活を待つ余裕などないと言わんばかりのスピード感は、裏を返せば、日本の製造業がこの分野で完全に「脱落」したことを示唆している。
「クリーンエネルギー」が「安保リスク」に変わる日
この構図は、単なる産業政策の失敗にとどまらない。トランプ政権が強調した「レーダー干渉」の問題は、日本にとっても他人事ではない。
洋上風力は、沿岸部や排他的経済水域(EEZ)という、国防上最もセンシティブな海域に巨大な構造物を設置する。そこに外国製(特に中国製)の高度な通信・制御システムを備えた設備が並ぶことは、サイバーセキュリティや情報漏洩の観点から、新たな脆弱性となり得る。
「エネルギーインフラは防衛・通信と密接に絡む。中国製設備への過度な依存は、経済合理性だけでは説明できないリスクを孕む」(佐伯氏)
米国が「国家安保」を盾に自国の産業を止める一方で、日本だけが「コスト高・中国依存」の風車を海に並べ続けることに、国民的合意は得られるのか。
ペロブスカイト太陽電池という「刺客」
さらに、風力発電の「コスト高と建設の遅さ」をあざ笑うかのように、日本発の次世代技術「ペロブスカイト太陽電池」が急速に実用化の兆しを見せている。
薄く、軽く、曲げられるこの電池は、ビルの壁面からEVの車体まで、あらゆる場所を「発電所」に変える。海上工事や漁業調整、そして「レーダー干渉」といった重い社会的コストを伴う洋上風力に対し、より合理的で「日本らしい」選択肢として投資家の関心を集め始めている。
問われる「エネルギー主権」
政府は海域使用期間を30年から延長可能にするなど、事業者の「延命」に奔走している。しかし、それは対症療法にすぎない。
世界はすでに、再エネを「環境問題」ではなく「国家戦略」として捉え直している。米国は安保を理由にブレーキをかけ、中国は産業覇権を狙い、日本は自国メーカー不在のまま巨額の国費を投じ続けている。
戸田建設が五島沖で示した「浮体式」の技術は、確かに日本の希望だ。しかし、それを支えるサプライチェーンが「中国依存」である限り、その希望は常に他国の政治的思惑にさらされる。
「再生可能エネルギー」とは何を守るためのものなのか。日本が今、海に建てるべきは風車なのか、それとも揺るぎない「エネルギー主権」なのか。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)