パチンコ「140連チャン」など爆裂報告が続々…「遊びやすさ」と「出玉感」を両立した新台も参戦で「激アツ状態」に!!

 先行きが見えない不透明な時代であるが、いまのところパチンコの未来は明るい。新機種が導入されるたびに140連チャンだの10万発だのと景気のいい出玉報告が各所でなされ、P機の勢いを感じさせる熱気に満ちている。

 そのパチンコの未来を担う新機種。直近でも『P北斗の拳8救世主』『Pガールズ&パンツァー劇場版』(5/10導入開始)、『Pフィーバーパワフル』(5/17導入開始)『P弾球黙示録カイジ』(5/24導入開始)、『Pスーパー海物語IN沖縄5』と注目コンテンツが目白押しだ。

 もちろん、ほかにも魅力的な新台がいくつも存在。2013年にテレビアニメが放送されると人気が拡散され、マンガやゲームなどのメディアミックス展開もされた『Pビビッドレッド・オペレーション』といった注目の機種もある。

 この『Pビビッドレッド・オペレーション』は描き下ろしイラストを650カット用意し、佐倉綾音、村川梨衣、大坪由佳、内田彩、内田真礼の超豪華声優陣による新規ボイスを収録するなど力の入れようがうかがえる。

 また、大当り確率が1/219.91の当りやすさと継続率約75%で大当りの半分が1400発出玉となる高機能の連チャンモードを兼ね備えたライト層にも楽しめる作りでお出迎えだ。

 遊びやすさといえば、『PA激デジジューシーハニー3』も気になる1台。機種名に付け加えられた「激デジ」とは「甘デジをより遊びやすく」をコンセプトにサンセイが打ち出した新たなスペックタイプ。

 大当り確率が1/77.74と従来の甘デジより破格の当りやすさを実現。さらにST突入率100%で安定感を担保しながら、電サポ中の大当りを契機とした上位モードの搭載によって継続率が約72%となる連チャン性が装備された胸アツのスペックとなっている。

 さらに通常確率を200回転消化すると295回転の電サポモードに突入する遊タイムも搭載。発動回転数の低さと大当り割合97.8%の期待度、さらに電サポでの大当りとなるので最上位モード「ジューシーハニーTIME」突入が濃厚になるなど、チートな遊タイム性能も魅力的だ。

 一方、メーカーからの告知はまだないが、最新の検定通過情報にも激アツのタイトルが大集合。

 ラブコメの最高峰でありパチンコで人気のシリーズ機種となっている『Pめぞん一刻5』、スペースオペラをアニメの世界に根付かせた第一人者の最新作映画をモチーフとした『P宇宙戦艦ヤマト2202』。そして大ヒットパチンコシリーズの最新作が甘デジとなった『PAぱちんこ仮面ライダー轟音』と注目のマシンが勢揃い。

 パチンコの推進力はとどまるところを知らない様子で、この勢いはしばらく続きそうだ。

(文=デニス坂本)

<著者プロフィール>
 企業の品質管理業務を経て、フリーライターの道へ。主に趣味であったパチンコ・パチスロの実戦記事を作成してきた。現在はパチmax!の編集部において、業界関係者から得た情報、約20年のパチンコ・パチスロ経験を活かした記事を紹介。インタビューやプレス発表会の記事なども担当している。

甘デジ「爆連」狙いで“10万発”へアプローチ!「マシンガン打線戦略」が火を噴く!?

 新緑の季節。日に日に気温が上昇し、風が薫る気持ちの良い気候となっているが、町男の引きは湿りがちで、一足早い梅雨を思わせるのである。前回は初当りばかり早く、バキッとした連チャンをお見舞いできずに終わってしまった。今回こそはとの思いが強くなる。

 だからこそ、とにかく連チャンさせようと今回は連チャンをテーマにした実戦機種を構成し、ゴールデンウィークを想起させるような大型連休ならぬ大型連チャンで10万発にアプローチしようと思う。

 そんなわけで、最初に打つのが『ぱちんこ劇場版魔法少女まどか☆マギカキュゥべえver.』である。ちょうど「叛逆の物語」の続編にあたる新作「劇場版魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉」の制作発表が行われたところ。そういった意味でも期待できる。

 あわよくば適度にハマっていて遊タイムも視野に入れられるような状況を期待したが、RUSH抜け即ヤメの台ばかり。まあ仕方がないと26回転から打ち始めると150回転ほど回したところで初当りとなった。

 うーむ、当るなら当るでもう少し早く当たってほしいし、当らないなら当らないで遊タイムまでいってほしいと、新しくパチンコ界に出現したこの甘デジ遊タイムジレンマに苛まされた影響か、もともと30%を引っかける力が不足している今日なのか、「RUSHチャレンジ」で成果を見せることができずに終わった。

 またこの展開か、と嫌なムードが町男の心に去来するので、ここはひとつ流れを変えるべく、1種2種じゃない高ループ機となる『PAわんわんパラダイスV』をチョイス。いっぬの可愛さを全面に押し出しているのでほんわかしてそうであるが、なかなかに激しい台なのである。

 しかもデータ表示に示された数値は「173」。前回がSTだったとしても100回転そこそこで遊タイムが見えてくるではないか。これを打たずに何を打つとばかりに、飛びついたのだが、人生は、パチンコはそんなに甘くない。

 通算で200回ちょっとのところで大当りし、もちろん3%の直撃にはならなかったので50回転の時短に回ったが、スーパーリーチが1回もかからない大凪にて瞬時のスルー。初当りもノーマルリーチがあっさり当ったので、見せ場が一切存在しない時間であった。

 いやーマジかと精神的に追い詰められていたこともあり、気がつけば『PA戦国BASARA』などというややこしい機種に座っていたのである。直撃は2%、時短の突破率は40%以下。RUSHに入っても確変突入率こそ85%だが転落抽選で5回リミットと予想がつきにくい激ムズ台である。

 だからこそ逆に、訳わかんない展開で訳わからなく連チャンするんじゃないか的なことを考えたのだが、89回転で初当りを引くと50回転の時短をしっかり消化してくれる王道のスルーパターンで実のない結果で終わってしまった。

 むしろ町男が訳わからない立ち回りである。

【E店】
・今回のトータル出玉 -2134発(総収支 -2532発)
・実戦機種 3台(計9台/20台)

これまでの結果
A店【実戦機種26台、コンプリート(大当りさせた)台、16台/33台中・収支 -12249発】
B店【実戦機種21台コンプリート、収支 -16314発】
C店【実戦機種40台コンプリート、収支 +3917発】
D店【実戦機種20台コンプリート、収支 +12249発】

(文=大森町男)

<著者プロフィール>

 羽根物によってパチンコの魅力にとり憑かれ、パチンコ雑誌を製作する編集プロダクションに入社。パチンコに関する記事作りや編集業務に携わる。編集長としてファン雑誌の制作に取り組むなどの経験を活かし、その後は携帯サイトやweb、動画コンテンツなど幅広いパチンコメディアに従事。現在はフリーランスのパチンコライターとして活動。パチMaxを中心に消極的に執筆の場を広げている。

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JRA ナリタブライアンVSマヤノトップガン「伝説」再現を完全阻止! 天皇賞・春(G1)残酷に告げられた最強馬交代の報せ、リベンジ懸けた最強兄弟の血が再び舞い降りる

 時は1996年――。4月21日に行われた天皇賞・春(G1)は、ナリタブライアン、マヤノトップガンの2強対決に大きな注目が集まった。

 前哨戦の阪神大賞典(G2)は、最後の直線でマヤノトップガンをアタマ差かわしたナリタブライアンが勝利。3着のルイボスゴールドを9馬身も突き放した2頭のマッチレースは、今もオールドファンの語り草となっている。

 そんな伝説のレース後ということもあり、本番の天皇賞・春でも2頭に人気が集中。単勝1.7倍のナリタブライアンと2.8倍のマヤノトップガンの一騎打ちと目され、3番人気サクラローレルは14.5倍と軽視されていた。

 レースは16頭立ての芝3200m。ナリタブライアンにとっては2年前の1994年に兄のビワハヤヒデが制したレースでもあり、兄弟での天皇賞制覇が懸かった一戦でもあった。

 中団馬群の中を追走するナリタブライアンに対し、マヤノトップガンは後方から。テイエムジャンボとスギノブルボンの2頭が、後続を大きく突き放す展開となった。

 1周目の正面スタンド前でマヤノトップガンが外目から押し上げて4番手を追走。ナリタブライアンは馬群でじっくりと脚を溜めた。

 2周目の向正面で馬群は凝縮し、勝負どころの3コーナーへ。外から動いたナリタブライアンと併せてマヤノトップガンという形は、阪神大賞典の再現を思わせた。

 しかし、残り200mではマヤノトップガンがまさかの失速。これを交わして先頭に躍り出たナリタブライアンがそのまま押し切るかに思われたのも束の間、それをぴったりとマークしたサクラローレルが一気に交わし去り1着でゴールした。

 人気を裏切る形となったナリタブライアンは、2馬身半差の2着。兄のビワハヤヒデに続く天皇賞制覇とはならなかった。

 ビワハヤヒデ、ナリタブライアンを出した母パシフィカスの仔による2度目の天皇賞制覇とはならなかったが、その意思を受け継ぐ馬が今年も出走を予定している。

 キズナ産駒のディープボンド(牡4歳、栗東・大久保龍志厩舎)だ。

 父キズナの2代母はパシフィックプリンセスで、母キャットクイルはパシフィカスの妹。つまりキズナは、ビワハヤヒデとナリタブライアンの近親に当たる。

 ディープボンドは、昨年の菊花賞(G1)で4着と好走して長距離適性を証明。前哨戦の阪神大賞典では2着ユーキャンスマイルに5馬身差をつける圧勝劇で存在感を見せつけた。

 今年の出走馬で唯一パシフィックプリンセスの血を受け継ぐディープボンド。天皇賞とは縁のなかったナリタブライアンのリベンジとなるかに注目したい。

ANA、社員のSNSを監視、グループ内の投稿も…愚痴でも社員呼び出し、数時間も説教

「全日本空輸(ANA)は社員のSNSを監視していて、会社側に都合の悪い書き込みを見つけたら、休日でも呼び出して密室で説教をして、処分もするんです」

 こう嘆くのはANAの若手現役CA(客室乗務員)だ。ANAのパイロット、CAなど社員のSNSへの監視が異常な域に達していることは、すでに本連載1回目などでご紹介した。筆者が取材を進めると、SNS監視の専門部署が存在し、社員が同僚のSNSの書き込みを密告する窓口にもなっていることが明らかになった。

突然電話で呼び出し、上司数人でSNSについて追及

 先のCAにある日突然、上司から電話がかかってきた。「すぐに会社に来てください」。ただ事ではない雰囲気だ。呼び出さられるまま出社すると、複数人のCAの女性管理職に密室に案内され、写真投稿SNS「Instagram」に書き込んだ業務の愚痴について責められたという。「本名でアカウントを開設していなかった上、本来なら⾝内にしか⾒れないはずのグループ投稿だっただけに、なぜ知っているのか怖かった」(前出CA)というのも無理はない。

 ANAが指定する「SNS上の不適切な投稿」は連載第1回でも紹介したが、もう一度ざっと振り返ると、(1)会社の悪口、不満、フライト内の出来事(有名人が乗ってきたなど)、(2)ステイ先の写真、食べ物、景色、自身の婚約指輪など自己顕示欲の強い写真などだ。今回の若手CAは(1)に該当すると思われるが、本名のアカウントでもないため、ANAに迷惑をかけたとは到底思えない。

 このCAによると、その後、数日にわたって計5、6時間、愚痴をこぼした理由などについて追及された。「東京五輪に向けて大量採用したCAがコロナ禍で余剰人員となった今、SNSの書き込みを口実にした退職勧奨が横行しないか心配している」(CA)という声も聞かれる。

身内の連絡手段であるLINEですら内容に制約

 筆者が取材を進めたところ、ANAではInstagramに「同期」というキーワードを投稿することや、FacebookやTwitterなどでANAに批判的な報道・ブログ記事をシェアしたり、「いいね!」するのも処分対象となるという。

 また、本来身内でのコミュニュケーションツールであるLINEでのやりとりも処分対象になったCAもいるというのだから、開いた口がふさがらない。先の若手CAとは別の現役CAの解説。

「ANAは業務連絡で『SNS上の不適切な投稿』を禁止しているので、SNSの一種であるLINEも処分対象に入ります。そこで会社の愚痴や批判をしているところを見つかれば、管理職から呼び出されることになります。

 LINEには24時間で投稿が消えるストーリーという機能がありますが、友人だけに公開するよう設定していてもダメというのが会社の方針です。もちろん、LINEの個人同士、グループ内でのトークが第三者に閲覧されることは普通ないと思いますが、どんな形で外に漏れるかわからないので、不適切な発言は禁止されています」

 JALのCAに取材したところ、「JALでもCAをほのめかす投稿はダメだという規則はありますが、せいぜい投稿の削除と始末書レベルで終わる話。業務の愚痴くらいで呼び出して密室で数時間説教なんてありえない」と驚きを隠さない。身内での不平不満すら禁止するという会社の姿勢は、外資系航空会社でもありえないのはいうまでもない。

SNSオフィサーという密告窓口

 しかし、素朴な疑問として、先のCAは身内のグループに投稿したにもかかわらず、ANAが本人を特定できたのはなぜか。LINEの中身がなぜか会社側に知られているケースもあり、なんらかの密告がANA側にあったと考えるのが自然だ。

 実は、ANAにはSNSに関する「不適切な投稿」を監視する専門部署「SNSオフィサー」が存在する。日常的な監視のほか、「匿名通報で情報提供者が不利益を受けない」というのが売りで社内に連絡先が周知されている。LINEをはじめ、社員がSNSで書き込んだ投稿をスクリーンショットするなどして送れば、冒頭の若手CAのように手が回り処分対象になるというわけだ。

 連載第1回目で書いた通り、ANAは2005年からそれまでのCAの乗務手当制度を変更し、評価者(班長や管理職)の評価による格付けによって乗務手当を決めるかたちに切り替えた。基本給も一部、能力給となっていて、上司の評価により同期でも賃金に格差が生じるシステムになっている。このため、「会社の管理職に気に入られたいばかりに同僚を売る人間もいる」(先の現役CA)といい、社内の風通しを悪くするだけだと社員の間では大不評だという。

 ANAのSNSに対する監視は3年ほど前から強まった。最近では、社員への業務連絡の内容がどんどん厳しく、かつ長文になり、具体的写真なども増えている。3年前の18年といえば、東京五輪直前でANAが中期経営計画を開始した年だ。ビッグイベントを前に企業のイメージダウンはなんとしても避けたい経営側が、締め付けを強化したとも考えられる。

会社のお墨付きの「自撮り動画」の配信開始

 そんなANAが今月23日、パイロットや整備士、CA、グランドスタッフ(地上係員)などが仕事の裏側や各地のおすすめ情報を発信するYouTubeチャンネル「BLUE SKY NEWS」をスタートさせた。第1回は「【ANAのCA1日密着】羽田空港での出社から退勤まで大公開」と題したCAの自撮り動画だ。この動画の主な内容は以下の通り。

・7年⽬の現役CAが、午前9時40分の⽻⽥発福岡便に搭乗

・本来の出社時間の午前8時40分より約1時間も早い午前7時50分に出社

・着替えで2種類の制服があることや、髪型について紹介

・搭乗前に休憩室や食事について公開

・実際に福岡便に乗り、午後3時に羽田に戻ってきた後、ソムリエなどの習い事もしていると自己紹介

・CAの仕事の第一は顧客の安全を守る保安要員と説明

・食事は便間が50分しかないので、各地で用意された弁当を食べる

 一つひとつ検証して行こう。

 まず、ANAのCAは定時より1時間早く出社しても、CAの組合の働き掛けがあったJALとは違い、超過勤務とは⾒なされずサービス残業扱いとなる。着替えの関しては、本連載5回目でご紹介したパジャマなどスーツケースの中身を見せることが視聴者へのサービスと勘違いしたオッサンのセクハラじみた感覚が依然として残っていると言わざるを得ない。

 食事についても、50分の便間の時間があるときも、ゆっくりと食事ができるかのように説明しているが、「到着して乗客が降りるのに10分、25分前には次便の乗客の搭乗が始まり、その間に次便の準備などで、お弁当食べる時間は5~10分しかない。到着が遅れると その時間もなくなります」(ANAの現役CA)という。それに、清掃をした機内はほこりが舞うなど、食事をするにはあまりに不潔である。

 また、習い事の部分は、いつでも午前9時台の国内便で一往復して東京に午後3時には帰れるという、さも「華やかでホワイトな労働環境」というような印象を与える。ただ、ANAは⼊社直後から国内線、国際線に搭乗し、不慣れな状況で体調を悪くしながら働かせられている現状はすでに本連載4回⽬で指摘した通りだ。

 この動画は建前では「社員発信」の動画となっているが、社員の生の声が一番反映されるSNSを徹底的に監視し、愚痴や不満すら封じ込めようとする専門部署を置いている企業から発信される時点で、眉唾モノだと考えるべきだろう。

無給休暇中に立て替えた社会保険料を、復職後に天引きで強制返済させる

 ANAでは、本連載をSNS上でシェア、「いいね!」したりしても処分対象となるという。ジャーナリストとしてはまったく光栄なことだが、ANA側はそんなことにエネルギーを使うよりも、効果的なSNS広報戦略の策定や、風通しのよい労働環境を現場に提供できるように努力すべきだろう。同僚のSNS投稿を会社側に密告することがまかり通る企業で、まともな仕事ができるわけがない。

 筆者は連載第3回で、ANAのCAが妊娠した場合、すぐに会社に報告し無給休職を取得する選択肢しかないという時代遅れの制度設計を批判した。その後、情報提供により、なんと妊娠中に無給で休んでいる期間にANAが⽴て替えた社会保険料などを、復職後に給与天引きでANAに返済しなければならないという驚くべき事実が新たに判明した。SNSオフィサーといった社員監視に使う人件費とエネルギーは、こういう本来不可欠な福利厚生に充てるべきである。

 18年度からの中計で「足元をしっかり固め、未来へ動く」と宣言している以上、しっかりスローガンを実現していただきたいものだ。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)

Kyuzo Matsuoka

ジャーナリスト

マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや文春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは@kyuzo_matsuoka

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/

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山尾志桜里議員、不倫相手の元妻が自殺報道…「希薄な罪悪感」と「永田町での悪評」

 彼女の死に、元エリート検事の現役国会議員は何を思うのだろうか――。

 2017年に不倫疑惑が報じられた山尾志桜里衆院議員だが、その不倫相手とされる弁護士の倉持麟太郎氏の元妻、Aさんが自殺していたと、27日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が報じた(26日に電子版で有料公開)。

 山尾議員は民進党(当時)の幹事長に内定していた17年9月に不倫疑惑が報じられ、同党を離党したが、無所属で戦った同年10月の衆院選で当選。同年12月に立憲民主党に入党したが、昨年3月に「憲法観の違い」などを理由に離党し、同年6月に国民民主党に入党していた。

「山尾氏の政界デビューは09年、小沢一郎氏の強力なバックアップを受けて、民主党(当時)から衆院選に初出馬・初当選を果たしました。現在でも山尾議員は不倫騒動などまるでなかったかのように、国会で与党を厳しく追及したり、執行部とそりが合わないからと立憲民主党を離党したり、一昨年には国会会期中に無届けで倉持氏とアメリカ旅行に行き厳重注意を受けたりと、なぜか強気の姿勢が目立つ。スキャンダルで民進党を追われた1カ月後に“奇跡の当選”となった経験から、ヘンな自信を持ってしまったのかもしれません。

 立憲民主党を離党して国民民主党入りしたのも、立憲にいても今年の衆院選で党から優遇されないことがわかり、国民民主の玉木雄一郎代表を“落とした”ためだと永田町では噂されています。実際に、次の衆院選では、国民民主から比例東京1位で出馬という超優遇を受けることが決まっています。まさに国民民主の体たらくぶりが、ここに極まれりといえるでしょう」(全国紙記者)

国民民主党の内部に不満

 不倫報道時、山尾議員と倉持氏は共に既婚で子どももいたが、両者ともにのちに離婚。「文春」によれば、Aさんは不倫と離婚のショックに加え、倉持氏に子どもの親権を奪われたことなどが重なり「うつ病」を患い、昨年10月に自殺したという。また、「文春」には現在も交際を続ける山尾議員と倉持氏の様子も詳細に綴られている。

 そんな山尾議員だが、永田町ではどのようにみられているのだろうか。国会議員秘書で『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』(徳間書店)著者の神澤志万氏はいう。

「山尾議員がまだ倉持さんと関係が続いていたことに驚きました。秘書仲間同士の会話では、山尾議員は倉持さんと結婚するつもりはないらしく、最近は関係も終わったといわれていたからです。山尾事務所には、ベテランの地方議員経験者の政策秘書が入り、積極的にさまざまな政策に取り組んでいるように見えました。つい最近『人権外交を超党派で考える議員連盟』の立ち上げに山尾議員が奔走する姿を見てたので、国会議員としてがんばっているんだなという印象でした。

 ただ、国民民主党のなかには、山尾議員の存在を疎ましく思う人たちも多かったように思います。なぜなら、次期衆議選で彼女は、東京ブロックの比例単独1位を約束されているからです。他の出馬予定の陣営から『なぜ彼女に選挙区と掛け持ちで出馬させないんだ』と党執行部に対しての不満が噴出してるようです。支持率1%未満の同党ですから、取れても東京ブロックで1議席。その1議席を山尾議員が持って行くのですから、他の候補者たちが『なぜ、山尾のためにがんばらないといけないんだ』という気持ちになるのも理解できます。

 彼女自身も『私が出れば、1議席は取れる!』と発言しているようですから、反感を買うのも無理はありません。山尾議員は確かに有名ではありますが、投票に結び付く信用があるかとなると、どうなんでしょうかね」

ゲミュートローゼ

 それにしても、山尾議員が倉持氏の元妻の自死を知りながらも、倉持氏との関係を続けているのだとすれば、次期衆院選では議員としての資質にも有権者の目が向けられることは避けられない。『「不倫」という病』の著者で精神科医の片田珠美はいう。

「倉持氏の元妻は、3年前に『文春』に寄せた手記で、

<私は山尾さんのせいで、全てを失いました。家庭、愛する夫、かけがえのない息子、全部失ったのです>

と綴っています。また、うつ病と診断され、抗うつ剤を処方されていたということですから、元夫の不倫による離婚と親権喪失という喪失体験が引き金になってうつ病を患い、その症状の1つである希死念慮が強くなって自殺した可能性が高いと思います。

 当然、その原因の一端は山尾議員にもあると考えられるにもかかわらず、山尾議員が倉持氏との関係を継続できるのは、いかなるメンタリティーによるのでしょうか。2つの要因、強い特権意識と希薄な罪悪感が挙げられます。

 まず、山尾議員は、『自分は特別な人間だから普通の人には許されないことでも許される』という特権意識がかなり強そうです。東大法学部出身で、司法試験に合格して検事になり、その後衆院議員に転身した輝かしい経歴のうえ、ミュージカル『アニー』で主役を務めたほどの美貌の持ち主です。まさに才色兼備の典型なので、特権意識が強いのは当然かもしれません。

 この特権意識に、過去の成功体験が拍車をかけているようにも見えます。17年9月に倉持氏との不倫疑惑が報じられましたが、約1カ月後の総選挙では無所属で出馬し、見事に当選しました。こうした成功体験が特権意識をさらに強めることはまれではありません。

 また、罪悪感が希薄、というか罪悪感を覚えないことも大きいでしょう。そんな人間がいるのかと不思議に思われるかもしれませんが、実際にいるのです。

 もう30年以上も前の話ですが、知り合いの女性精神科医が自宅マンションで首を吊って自殺しました。彼女の夫も精神科医だったのですが、勤務先の同僚だった女性医師と不倫関係にあったようで、それを知って絶望したらしいのです。

 そのため、この女性精神科医の両親が怒り心頭で、遺骨を婚家と実家のどちらの墓に埋めるかで、かなりもめたそうです。もっとも、彼女の夫は、三回忌を待たずに不倫相手と再婚しました。その後一緒にクリニックを開業し、かなり繁盛していると聞きます。彼女の生前は夫だった精神科医に学会で久しぶりに会ったとき、『うちのクリニックは本当に儲かっている』と自慢そうに話すのを聞いて、罪悪感が希薄な印象を受けました。

 私の知り合いは婚姻期間中に自殺しましたが、倉持氏の元妻は、離婚後に自殺しています。そのため、『離婚後のことだから、もう関係ない』という理屈で、罪悪感を覚えなくてすむように自己正当化した可能性も考えられます。

 もしかしたら、山尾議員も倉持氏も、罪悪感を覚えず、同情もしない『ゲミュートローゼ』かもしれません。『ゲミュート』とは、思いやり、同情、良心などを意味するドイツ語です。このような高等感情を持たない人を、ドイツの精神科医、クルト・シュナイダーは『ゲミュートローゼ』と名づけました。日本語では、『情性欠如者』と訳されます。

 『ゲミュートローゼ』は、罪悪感を覚えず、反省も後悔もしません。殺人や放火、強盗や強姦などの凶悪犯に多いとされていますが、みながみな犯罪者になるわけではありません。むしろ、きわめて高い能力の持ち主にも少なくないのです。その典型が、『屍を超えて進む鋼鉄のごとき』人物であり、罪悪感にも良心の呵責にも悩まされずにすむからこそ成功できるともいえます。山尾議員も倉持氏も社会的成功者なのは、決して偶然ではないでしょう」

 今回の報道を受けても、山尾議員と倉持氏は関係を続けるのだろうか。

(文=編集部)

 

新たな兆し。ウェルビーイングを高める、男性×料理のおいしい関係

新型コロナウイルスの影響もあって生活様式が大きく変化している今、「Well-being(ウェルビーイング、イタリア語のベネッセレを始原とする“よくある状態”を意味する)」をより高める鍵は「料理」にあるのかもしれません。

男性の調理支援を目的としたプロジェクト、「世の中が変わるときは、料理をしよう。」が「BRUTUS.jp」と「AJINOMOTO PARK」でスタートしました。Withコロナ時代に幸福度を上げていくための新たな兆しとなりえる、男性×料理の魅力とは何でしょうか。

同プロジェクトの発起人である味の素社執行理事の岡本達也氏、その志に共感し、企画を立案した「BRUTUS」編集長の西田善太氏、岡本氏が料理とウェルビーイングの関係へ着目するきっかけを作った予防医学研究者の石川善樹氏の鼎談からヒントをお届けします。

(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行役員の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏
(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行理事の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏

「食」への行動が生み出す「居場所」。コロナ禍でも幸福度が高い人の特徴とは?
 

西田:今40~50代の男性の多くは、おそらくあまり料理をしていません。しかしそれは、社会と本人、双方にとっての新たな“鉱脈”が潜んでいることでもあると思います。

BRUTUSでは2011年に「最高の朝食を」という特集を組み、東日本大震災で多くの人が苦しんだ時期に、さまざまな思いを込めて朝ご飯だけは自分で作ってきちんと摂ろうと発信しました。レシピもたくさん載せ、コア読者である男性に朝ご飯から料理への意識を向けたいと考えたのです。

昨年から新型コロナの先行きが見えず不安な状況が続いていますが、簡単に抜け出せないのは、世の中が変わるときだからだと私は考えています。そういった時代に、足元を見直したり、根幹に立ち返ったり、アクションを変えてみることがプラスになるなら、男性にとっての料理はとてもいい素材です。ノウハウがたくさんたまっているし、簡単にも深くも追求できるカルチャー。今回はそれを提案するチャンスをいただけたので、BRUTUSなりに紹介していきたいと思っています。

西田氏

岡本:近年は、どちらかといえば“調理をすることは面倒だから可能な限り簡単に”といった風潮があったと思います。完全栄養食のような物を作るなど、商品の中にすべてそろっていることが当たり前という流れだったのですが、私はそこに違和感を覚えていました。

私自身は料理が楽しく、作ったものを誰かに「おいしい」と言ってもらえればうれしい。買い物に行き、旬の食材を見つければ気分が上がります。そこで「調理を簡単にすることだけが本当に“絶対”なのだろうか?」という思いがあったのです。

その後、石川さんから「料理をすることや食にまつわる時間が人生を豊かにする」と複数のエビデンスを基にしたお話を伺い、「私が求めていたものはこれだ!」と直感しました。現状、日本ではまだ料理の楽しさや充足感に気づいていない男性が多いように思います。この企画ではそこをお伝えできればいいですね。

岡本氏

石川:そうですね。近年は特に男性の料理頻度がとても低くなってきています。2019年に世界116カ国で「人々がどれくらいの頻度で料理をしているのか」という調査が行われました。すると、一国の例外もなくすべての国で男性よりも女性の方が料理をしていることが明らかになりました。それに驚くと同時に、料理頻度の男女格差は国ごとにばらつきがあることも分かりました。そして、格差が小さい国ほど、ウェルビーイング度が高い傾向がみられました。

また昨年、コロナ禍での苦境や大変さが話題に上がる中、僕は逆の視点を持とうと考え、この状況にもかかわらず幸福度やウェルビーイング度が上がった人の特徴を調べました。すると、共通していたのが料理でした。例えば在宅勤務で料理をするようになった人ほど、ウェルビーイング度が上がったという傾向がみられました。

西田:僕は食べることって「居場所」につながる行為だと考えています。例えば、飲食店に行き、食事をすることでそこにひとときの居場所ができますよね。今はそれが一気にできなくなってしまってたいへんつらい状況。

では、家で男性が居場所を作るにはどうしたらいいかというと、料理をするのがとても有効なんです。ただ座って料理を待っているだけではなく、参加しないと家では居場所ができません。食事を作るのは、そこで一歩先に進む大きなチャンスとも言えます。

岡本:時間をいい形で使えると人は幸せになる。食材を集めたり、料理をしたり、家族や気を許せる相手に食べてもらいながら話をするのはすごく幸せな時間ですよね。

西田:今、調理器具は非常に発達しています。そういった道具を使うのは手抜きではありませんし、機能やスペックなんかを見比べるのも男性には面白いはず。それに今ほど世の中にたくさんのレシピが出回っている時代はありません。好みの料理を作るシェフが、自分の料理の秘密を本でもインターネットでも動画でも簡単に明かしてくれている。料理を始めるのに、これほどいい時代はないのではと感じています。

料理は現代のキーワードすべてを象徴するアクション

石川:新型コロナの影響に限らず、今の時代は生活様式や概念に幅広く変化が生じているタイミング。「ダイバーシティー」や「サステナビリティー」「ウェルビーイング」といった時代のキーワードが次々生まれている中で、それらすべてを象徴するのが料理ではないかと考えています。

例えば料理をする過程で「食材ってどこから来て、どこに行く?」と考えることはサステナビリティーにつながるし、男性が料理をすることでダイバーシティーが推進され、女性がもっと自分の時間をしっかり持てるようにもなる。だから「世の中が変わるときは、料理をしよう。」という話なのですが、特にこれから料理はもっと今の時代の象徴になっていく期待感があります。

サステナビリティーを象徴する行為として脱プラやエコバッグを持ち歩くことが挙げられますが、もっと広い視点で“今の時代を象徴する行為”を考えたときに僕は料理だなと。入り口が広い半面、少し踏み込むととても奥深い世界が待っています。

石川氏

岡本:料理は基本的にクリエイティブな作業。やってみると楽しい部分がすごくたくさんありますよね。少しの工夫がどこかに現れてきますし、そういった検証をしていくのが好きな男性は多いと思います。

石川:一概には言えませんが、食べてくれる人が自分以外にいなくても、料理という行為自体がウェルビーイング度を上げる可能性は高いですね。買い物、調理、片づけをすべてするのは手のかかることではありますが、それをせずにファストフードで食事をしたとして、空いた時間に何をしているものでしょうか?

これは私自身もそうですが、何となくスマホを見たり、ぼんやりして時間をつぶしている場合、きっと本人が本当にしたくての行動ではないですよね。それに代わる時間の過ごし方として、料理はよりウェルビーイングを高める所作と言えるはずです。

西田:料理をすることで、自分の生活をきちんと管理してコントロールしている感覚もつきますね。

石川:そうですね。加えて達成感もあります。今は仕事も分業が進んでいるので、一つの事案を最初から最後まで全部自分で手掛けることはなかなかありません。“部分”の仕事に意味合いややりがいを感じるのは難しいものです。そういう意味でも料理は最初から最後まで自分が関われるので、すごく充実した時間の過ごし方になります。この企画を通して料理を食におけるニューノーマルと捉え、それも含めた新たな生活のバランスを見つけてもらえればと。

西田:世の中を変えていくのはやはり“能動”。外出自粛が続く中で、例えば動画サービスなどを受動的に見続けていた人たちは、コンテンツ疲れを起こしているように感じます。与えられるコンテンツに疲れたら、自分のコンテンツを作ればいい。それが料理だと思うんです。自分の料理は唯一無二の作品ですから。

料理をしなかった時間が長い人ほど最初の下ごしらえのハードルが高いと思ってしまうようですが、みじん切りが難しいなら切られた野菜を買ってきて、そこから始めることもできます。

岡本:私自身仕事に没入していた時期が長く、その当時は物質的な豊かさの方ばかりを追いかけていたように思います。けれど、石川さんとお話をする中で、一番大切なものはやはり「時間」だと気づきました。

時間はプライスレス。だからこそ、何に使うかということが非常に大切です。時間をいい形で使えると人は幸せになる。それがウェルビーイングなのではないかと思います。ウェルビーイングを生み出すのに一番いい時間の使い方が食と調理なのではという思いでこの企画を始めましたが、こういった取り組みは、すぐ終わってしまっては意味がありません。長期にわたって続けていくものとして携わっています。まずは日本の男性が料理の良さに気づき、始めることで周りも幸せになれるような動きのお手伝いが少しでもできたらうれしいです。


「世の中が変わるときは、料理をしよう。」

「BRUTUS.jp」の特集ページはこちら

「AJINOMOTO PARK」の特集ページはこちら

<コンテンツ詳細>

①Talk ~俳優・永山絢斗の『聞くレシピ』~
「料理×ウェルビーイング」をテーマに俳優・永山絢斗氏が各界の有識者と対談。予防医学研究者の石川善樹氏、作詞家の児玉雨子氏、情報学研究者のドミニク・チェン氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/talk01/

Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?
Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?

②Fun Cooking ~作りたくなるレシピ(動画付き)料理ってこんなに楽しかったのか!~
簡単で誰でも作りたくなるようなレシピを動画付きで紹介するコンテンツ。「ごはんと旅は人をつなぐ。」をテーマにレシピ開発を行う山田英季氏と、「Bistro Rojiura」「PATH」「LIKE」を経営するシェフ原太一氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/funcooking01/

③Recipe Archive ~作りたくなるレシピ 今はなきあの名店の味を自宅で!~
“最強料理芸人”の愛称で知られるクック井上氏が「BRUTUS」で連載していた「十中八九同じ味!思い出巡りの料理レシピ」から、選りすぐりのベストレシピ30を掲載。クック井上氏の料理術も紹介する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/recipearchive01/

④Book 美味求真2021 ~もっと食を知るためのブックリスト~
日本の美食文化の礎となった大正時代の名著「美味求真」(木下謙次郎著)へのオマージュとして、食にまつわる書籍を紹介。食文化研究家の畑中三応子氏が日本屈指の食の専門図書館(「食の文化ライブラリー」)から11冊を選書する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/book01/
 

新たな兆し。ウェルビーイングを高める、男性×料理のおいしい関係

新型コロナウイルスの影響もあって生活様式が大きく変化している今、「Well-being(ウェルビーイング、イタリア語のベネッセレを始原とする“よくある状態”を意味する)」をより高める鍵は「料理」にあるのかもしれません。

男性の調理支援を目的としたプロジェクト、「世の中が変わるときは、料理をしよう。」が「BRUTUS.jp」と「AJINOMOTO PARK」でスタートしました。Withコロナ時代に幸福度を上げていくための新たな兆しとなりえる、男性×料理の魅力とは何でしょうか。

同プロジェクトの発起人である味の素社執行理事の岡本達也氏、その志に共感し、企画を立案した「BRUTUS」編集長の西田善太氏、岡本氏が料理とウェルビーイングの関係へ着目するきっかけを作った予防医学研究者の石川善樹氏の鼎談からヒントをお届けします。

(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行役員の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏
(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行理事の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏

「食」への行動が生み出す「居場所」。コロナ禍でも幸福度が高い人の特徴とは?
 

西田:今40~50代の男性の多くは、おそらくあまり料理をしていません。しかしそれは、社会と本人、双方にとっての新たな“鉱脈”が潜んでいることでもあると思います。

BRUTUSでは2011年に「最高の朝食を」という特集を組み、東日本大震災で多くの人が苦しんだ時期に、さまざまな思いを込めて朝ご飯だけは自分で作ってきちんと摂ろうと発信しました。レシピもたくさん載せ、コア読者である男性に朝ご飯から料理への意識を向けたいと考えたのです。

昨年から新型コロナの先行きが見えず不安な状況が続いていますが、簡単に抜け出せないのは、世の中が変わるときだからだと私は考えています。そういった時代に、足元を見直したり、根幹に立ち返ったり、アクションを変えてみることがプラスになるなら、男性にとっての料理はとてもいい素材です。ノウハウがたくさんたまっているし、簡単にも深くも追求できるカルチャー。今回はそれを提案するチャンスをいただけたので、BRUTUSなりに紹介していきたいと思っています。

西田氏

岡本:近年は、どちらかといえば“調理をすることは面倒だから可能な限り簡単に”といった風潮があったと思います。完全栄養食のような物を作るなど、商品の中にすべてそろっていることが当たり前という流れだったのですが、私はそこに違和感を覚えていました。

私自身は料理が楽しく、作ったものを誰かに「おいしい」と言ってもらえればうれしい。買い物に行き、旬の食材を見つければ気分が上がります。そこで「調理を簡単にすることだけが本当に“絶対”なのだろうか?」という思いがあったのです。

その後、石川さんから「料理をすることや食にまつわる時間が人生を豊かにする」と複数のエビデンスを基にしたお話を伺い、「私が求めていたものはこれだ!」と直感しました。現状、日本ではまだ料理の楽しさや充足感に気づいていない男性が多いように思います。この企画ではそこをお伝えできればいいですね。

岡本氏

石川:そうですね。近年は特に男性の料理頻度がとても低くなってきています。2019年に世界116カ国で「人々がどれくらいの頻度で料理をしているのか」という調査が行われました。すると、一国の例外もなくすべての国で男性よりも女性の方が料理をしていることが明らかになりました。それに驚くと同時に、料理頻度の男女格差は国ごとにばらつきがあることも分かりました。そして、格差が小さい国ほど、ウェルビーイング度が高い傾向がみられました。

また昨年、コロナ禍での苦境や大変さが話題に上がる中、僕は逆の視点を持とうと考え、この状況にもかかわらず幸福度やウェルビーイング度が上がった人の特徴を調べました。すると、共通していたのが料理でした。例えば在宅勤務で料理をするようになった人ほど、ウェルビーイング度が上がったという傾向がみられました。

西田:僕は食べることって「居場所」につながる行為だと考えています。例えば、飲食店に行き、食事をすることでそこにひとときの居場所ができますよね。今はそれが一気にできなくなってしまってたいへんつらい状況。

では、家で男性が居場所を作るにはどうしたらいいかというと、料理をするのがとても有効なんです。ただ座って料理を待っているだけではなく、参加しないと家では居場所ができません。食事を作るのは、そこで一歩先に進む大きなチャンスとも言えます。

岡本:時間をいい形で使えると人は幸せになる。食材を集めたり、料理をしたり、家族や気を許せる相手に食べてもらいながら話をするのはすごく幸せな時間ですよね。

西田:今、調理器具は非常に発達しています。そういった道具を使うのは手抜きではありませんし、機能やスペックなんかを見比べるのも男性には面白いはず。それに今ほど世の中にたくさんのレシピが出回っている時代はありません。好みの料理を作るシェフが、自分の料理の秘密を本でもインターネットでも動画でも簡単に明かしてくれている。料理を始めるのに、これほどいい時代はないのではと感じています。

料理は現代のキーワードすべてを象徴するアクション

石川:新型コロナの影響に限らず、今の時代は生活様式や概念に幅広く変化が生じているタイミング。「ダイバーシティー」や「サステナビリティー」「ウェルビーイング」といった時代のキーワードが次々生まれている中で、それらすべてを象徴するのが料理ではないかと考えています。

例えば料理をする過程で「食材ってどこから来て、どこに行く?」と考えることはサステナビリティーにつながるし、男性が料理をすることでダイバーシティーが推進され、女性がもっと自分の時間をしっかり持てるようにもなる。だから「世の中が変わるときは、料理をしよう。」という話なのですが、特にこれから料理はもっと今の時代の象徴になっていく期待感があります。

サステナビリティーを象徴する行為として脱プラやエコバッグを持ち歩くことが挙げられますが、もっと広い視点で“今の時代を象徴する行為”を考えたときに僕は料理だなと。入り口が広い半面、少し踏み込むととても奥深い世界が待っています。

石川氏

岡本:料理は基本的にクリエイティブな作業。やってみると楽しい部分がすごくたくさんありますよね。少しの工夫がどこかに現れてきますし、そういった検証をしていくのが好きな男性は多いと思います。

石川:一概には言えませんが、食べてくれる人が自分以外にいなくても、料理という行為自体がウェルビーイング度を上げる可能性は高いですね。買い物、調理、片づけをすべてするのは手のかかることではありますが、それをせずにファストフードで食事をしたとして、空いた時間に何をしているものでしょうか?

これは私自身もそうですが、何となくスマホを見たり、ぼんやりして時間をつぶしている場合、きっと本人が本当にしたくての行動ではないですよね。それに代わる時間の過ごし方として、料理はよりウェルビーイングを高める所作と言えるはずです。

西田:料理をすることで、自分の生活をきちんと管理してコントロールしている感覚もつきますね。

石川:そうですね。加えて達成感もあります。今は仕事も分業が進んでいるので、一つの事案を最初から最後まで全部自分で手掛けることはなかなかありません。“部分”の仕事に意味合いややりがいを感じるのは難しいものです。そういう意味でも料理は最初から最後まで自分が関われるので、すごく充実した時間の過ごし方になります。この企画を通して料理を食におけるニューノーマルと捉え、それも含めた新たな生活のバランスを見つけてもらえればと。

西田:世の中を変えていくのはやはり“能動”。外出自粛が続く中で、例えば動画サービスなどを受動的に見続けていた人たちは、コンテンツ疲れを起こしているように感じます。与えられるコンテンツに疲れたら、自分のコンテンツを作ればいい。それが料理だと思うんです。自分の料理は唯一無二の作品ですから。

料理をしなかった時間が長い人ほど最初の下ごしらえのハードルが高いと思ってしまうようですが、みじん切りが難しいなら切られた野菜を買ってきて、そこから始めることもできます。

岡本:私自身仕事に没入していた時期が長く、その当時は物質的な豊かさの方ばかりを追いかけていたように思います。けれど、石川さんとお話をする中で、一番大切なものはやはり「時間」だと気づきました。

時間はプライスレス。だからこそ、何に使うかということが非常に大切です。時間をいい形で使えると人は幸せになる。それがウェルビーイングなのではないかと思います。ウェルビーイングを生み出すのに一番いい時間の使い方が食と調理なのではという思いでこの企画を始めましたが、こういった取り組みは、すぐ終わってしまっては意味がありません。長期にわたって続けていくものとして携わっています。まずは日本の男性が料理の良さに気づき、始めることで周りも幸せになれるような動きのお手伝いが少しでもできたらうれしいです。


「世の中が変わるときは、料理をしよう。」

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<コンテンツ詳細>

①Talk ~俳優・永山絢斗の『聞くレシピ』~
「料理×ウェルビーイング」をテーマに俳優・永山絢斗氏が各界の有識者と対談。予防医学研究者の石川善樹氏、作詞家の児玉雨子氏、情報学研究者のドミニク・チェン氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/talk01/

Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?
Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?

②Fun Cooking ~作りたくなるレシピ(動画付き)料理ってこんなに楽しかったのか!~
簡単で誰でも作りたくなるようなレシピを動画付きで紹介するコンテンツ。「ごはんと旅は人をつなぐ。」をテーマにレシピ開発を行う山田英季氏と、「Bistro Rojiura」「PATH」「LIKE」を経営するシェフ原太一氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/funcooking01/

③Recipe Archive ~作りたくなるレシピ 今はなきあの名店の味を自宅で!~
“最強料理芸人”の愛称で知られるクック井上氏が「BRUTUS」で連載していた「十中八九同じ味!思い出巡りの料理レシピ」から、選りすぐりのベストレシピ30を掲載。クック井上氏の料理術も紹介する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/recipearchive01/

④Book 美味求真2021 ~もっと食を知るためのブックリスト~
日本の美食文化の礎となった大正時代の名著「美味求真」(木下謙次郎著)へのオマージュとして、食にまつわる書籍を紹介。食文化研究家の畑中三応子氏が日本屈指の食の専門図書館(「食の文化ライブラリー」)から11冊を選書する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/book01/
 

多様化する価値観の時代に、広告はどう向き合えるのか?

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center」(FCC)は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティーでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティー」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

緊急事態宣言による“自粛疲れ”が顕著だった昨年のゴールデンウィーク。このとき、ドラえもんが日本中に届けたメッセージが話題になりました。新聞広告などで展開された「ドラえもん STAY HOME PROJECT」です。新聞広告は8ヶ国語に翻訳され、世界にも発信されました。

ドラえもん①

 

ドラえもん②
8ヶ国語に翻訳された新聞広告

この取り組みに携わったのが、電通FCCメンバーの有元沙矢香氏(電通 zero コピーライター/プランナー)と、根本陽平氏(電通パブリックリレーションズ PRプロデューサー)です。誰もが不安な日々を過ごす中、ドラえもんという国民的キャラクターのメッセージはどのように生まれたのでしょうか。このプロジェクトの経緯と、2人の広告コミュニケーションに対する考え方について話を聞きました。

電通、有元氏、電通パブリックリレーションズ、根本氏
※この取材は、オンラインで行われました。

不安が蔓延する中、ドラえもんだからこそ伝えられたメッセージ

有元:「ドラえもん STAY HOME PROJECT」のきっかけになったのは、自粛期間が始まってすぐの根本くんの行動でした。世の中が大きく変わる中で、私たちがクリエイティビティーやアイデアを生かしてできることはないか、根本くんがさまざまなスタッフに相談していました。その中で、私が以前お仕事をさせていただいた方が藤子・F・不二雄プロ(藤子プロ)にいらっしゃって、そこからこの企画につながりました。

根本:2020年の春は、自分のようなコミュニケーションを生業にする人間の無力さを感じた時期でした。とはいえ、僕にはそれしかできないので、コミュニケーションによって何かしらの支援ができないかという気持ちがありました。

有元:2020年はドラえもんの50周年でもありました。しかし、映画の公開延期など春の状況下ではとてもお祝いムードではなくなっていました。ただ、日本中に愛されてきたドラえもんだからこそ、この状況でできることがあるのではと思い、藤子プロさんに提案。プロジェクトがスタートしました。

このプロジェクトでは、ゴールデンウィーク初日の4月29日の新聞広告のほか、5月5日のこどもの日には、子どもたちに向けて「のび太になろう。」というメッセージを掲載しました。

5月5日掲載、新聞広告「のび太になろう。」
5月5日掲載、新聞広告「のび太になろう。」

ほかにも、飲食店や配達員の方を応援するポスターを作成。無料でダウンロードできる仕様にし、テイクアウトやデリバリー対応を始めた飲食店での活用や、配達員の方への感謝のメッセージとして掲示していただきました。

ドラえもん③
飲食店や配達員の方々への、応援ポスター

私がコピーを考える上でこだわったのは、ドラえもんという国民的キャラクターからの発信である以上、誰かを傷つけるメッセージになってはいけないということでした。当時はウイルスが今以上に未知のものであり、誰もが大きな不安を抱えていました。世の中全体がセンシティブな中で、ドラえもんが特定の誰かだけを応援したり、間接的にでも誰かに辛い思いをさせることになることは避けたかったんです。そこでコピーを精査していく上で行ったのが、ソーシャルハンティングでした。

人間の奥深くにある“インサイト”は、SNS上(=アウトサイド)に表面化している

根本:ソーシャルハンティングとは、SNS上にあふれている言葉を分析し、どんなことが今の人たちの怒りや悲しみ、あるいは喜びにつながるかを洗い出す手法です。本来、人間の本音や奥深くにある感情といった“インサイト”は、表に現れず、これまで様々な手法で調査されるものでした。しかし、SNSが普及した今は、SNS上にインサイトが表面化しています。この現象はよく「アウトサイド・インサイト」という概念で表されますが、そういった手法も参考にしながら、ドラえもんが送るメッセージを受け取った方がどんな反応が起きるかを想像していきました。

また、今の時代のメディアは、ターゲットという言葉が通じなくなっていると思います。新聞広告にせよ屋外広告やTVCMにせよ、SNSの力によって(よくもわるくも)本来届けたい層を超えて拡散される、届ける相手を限定することは非常に難しい世の中です。さらに価値観が多様化している。何かを発信するときに「目の前にいない誰か」をどこまで想像できるかがとても重要になっています。本来届けたい層に深く刺さり、さらにその外側にいる人たちを不快にしない、これは決して簡単なことではないですが、この時代に最も必要な技術の一つだと感じてます。

有元:たとえば今回の「のび太になろう。」というコピーは、当時の状況下で仕事を休めない方にとっては気持ちに逆行する言葉です。そこでみんなで話し合い、このメッセージは子どもの日に、子どもたちに向けて届けようということになりました。まだまだ遊びに行けないけれど、のび太くんみたいに一生懸命のんびりしようね。それが世界を救うことになるんだよ、とエールを送りました。漢字にはルビも振り、おうちでステイホームを頑張る子どもたちが家族と一緒に読める原稿にしました。原稿全体でそのスタンスを明確にすることが、ターゲット以外の人が原稿に触れた時にも誤解を生まない大切なポイントだと考えました。

根本: なお、ソーシャルハンティングは近年さまざまなマーケティングで使われています。そのひとつが、ライオンの取り組みです。洗濯物に関する悩みをソーシャルハンティングで分析すると、3大ニオイ悩み(部屋干し臭・干し忘れ臭・戻り生乾き臭)に対しての不満が散見されました。それらに共通するのは、きちんと洗ったのに臭ってしまうという点です。しっかり洗ったのにも関わらず、家族から「クサいけどこれ洗ったの?」と言われてしまう。ということでそのセリフに関する不満を吐露している人が複数いました。

ライオン「トップ クリアリキッド抗菌」プロモーション
ライオン「トップ クリアリキッド抗菌」プロモーション

SNS上で表面化されている本音を発見したことから、決してその人のせいではなく、ニオイに焦点をあてることで、その家族間の分断をなんとかチャーミングに解消できないかと考え、ライオンはこのニオイを「ゾンビ臭」という愛称で呼ぶことにしました。まだ一般化されていないテーマでも、問題を提起すると「あ、これ私の話だ!」と多くの人がその指にとまりたくなる。そういったイシューを探すのにもソーシャルハンティングは役立ちます。

コミュニケーションの深さは「考察」から生まれる

有元:根本くんと一緒にやっている日本花き振興協議会の「okulete gommen(オクレテゴメン)」プロジェクトもそのひとつです。コロナ禍で人と会えず、記念日や節目にお祝いができずにいる人をたくさんSNSで見かけました。そんな人たちに、遅れたってきっと喜んでもらえるはずだからお花でお祝いしてみませんか?と背中を押せればと考えた企画です。

日本花き振興協議会の「okulete gommen(オクレテゴメン)」プロジェクト

日本花き振興協議会の「okulete gommen(オクレテゴメン)」プロジェクト
日本花き振興協議会の「okulete gommen(オクレテゴメン)」プロジェクト

根本:コロナ前から友達への誕生日おめでとうLINEを送り忘れるなど、祝いそびれ自体はありました。ただ、コロナ以降は、祝いそびれに対するSNSでの言及が急増していました。それは流行の明確なサインです。
 
こういった分析は、価値観が多様化するほどより重要になります。ただ、有元さんのようなコミュニケーションをつくる人からすると、価値観の多様化は難しさも生むのではないでしょうか。誰かの喜ぶ言葉は誰かを傷つける可能性があります。その中で、いかにコミュニケーションの深度を高めるかは難しさもあると思います。深さを生もうとすれば、どうしてもメッセージの対象を限定する必要が出てきますから。

有元:そこは難しい部分ですが、1つ大切なのは誠実さだと思っています。ターゲットに対して、どこまで本気でメッセージを届けているか。そこに嘘がなければターゲット以外の人も納得してくれる。そして、ターゲットとの深度を増すヒントになるかもしれないと感じたのは、「情報の余白」と「過度な情報」です。正反対の事象ですが、どちらかに振り切ることで「考察」が始まる。

それを感じたのが、M-1グランプリのプロモーション映像の制作でした。この映像では熱量を伝えたかったので、情報量を増やす方へ振り切って制作しました。2019年のものは動画では追いきれない量のコピーを、2020年のものは映像自体の情報量を増やしました。すると、YouTubeのコメント欄にそのコピーを書き起こしたり、編集に対する考察などが繰り広げられ、コメント欄がひとつのメディアとして機能するなど、とても興味深い現象が起きていました。

M-1グランプリ2019「前前前夜」×「前前前世」プロモーション
M-1グランプリ2019「前前前夜」×「前前前世」プロモーション
M-1グランプリ2020 ×Creepy Nuts「板の上の魔物」スペシャルムービー
M-1グランプリ2020 ×Creepy Nuts「板の上の魔物」スペシャルムービーより

根本:CMに詰め込んだ大量の情報をもとに、ファンの方々が自発的に議論し始めたということですよね。

有元:はい。その議論のために何度も映像を見てくださる方がいて、これは深さにつながると感じました。余白も同じで、制作物に余白を作ると、「こういうことなんじゃないか」と一人ひとりが想像し、話し始めてくれます。広告は一方通行に言いたいことを言って終わりのゴールではありません。見た人たちが同じテーマで議論できる問いにもなる。広告単体で完結するのではなく、見ている人たちの想像力によって、発信者との深度を深めていくアイテムとして捉えられたら、広告は絆を深めるための大事なツールになるのではないかと信じています。

CR×PR、表現クリエイティブと情報クリエイティブを標準装備するチームへ

有元:いろいろと話が飛んでしまいましたが、今日はこの二人の掛け合わせで広告の可能性が広がるということが伝わったらいいなと思っていたのですが、伝わったのかな・・・?PR視点なしに広告を作ることはできなくなった昨今ですが、根本くんのようなPRのプロとがっつり組んで仕事したのは最近のことで、いろんな発見がありました。

PR概念図

根本:パーソナル担当とパブリック担当って感じですかね。僕(のチーム)が発見したパブリックなインサイトを有元さん(チーム)がよりパーソナルに届くようにアイデアに落として、最後にリスクがないか改めてパブリックな視点でチェックする。表現クリエイティブと情報クリエイティブと言いますか。

有元:一人で想像する範囲よりも、二人で想像する範囲の方が広がるし、その掛け合わせが、PRとクリエイティブはとてもいい気がします。

根本:マス向けに広告をしていく場合は特に、目の前にいない人をどれだけ想像できるか。どれだけ多くの人の置かれている環境や対峙している問題を想定して企画をブラッシュアップできるか。これらは価値観が多様化する中で、できたらいいね。ではなく、必須のスキルになってきていることを日に日に痛感します。私自身も無意識に固定化されてしまっている価値観を自己修正していくには、本当に日々勉強しかなく・・・。
その想像の範囲と深さを、分野が違うもの同士でより広げ、深めていく。広告がちゃんと世の中の人の心を動かし続けるものであるために、それを諦めずにやっていきたいです。

“同志”型ブランディングに欠かせない、「小さな効力感」を持つ生活者とは?

過去2回の連載では、コロナ禍をきっかけに人々の意識が“サステナビリティ”へとシフトし、「コロナ以前に戻るのではなくこれを機により良い世の中になってほしい」という意識が高まっていること、また、そのような生活者の想いを企業が“いかに自社のパーパスに反映し、社会を変革していけるか”が、その企業の評価やブランド力に影響することを紹介しました。加えて、コロナ禍によって「企業と生活者が“同志”として共創する環境が整っていく」ことについても述べました。

第1回:よりサステナブルな世の中へ。コロナ禍がもたらした生活者意識の「5つのシフト」

第2回:“志す力”がアフターコロナの企業を強くする。社会変革のパーパス・デザイン

では、企業は自社のパーパスに基づき、どのように生活者と共創すれば、“社会変革”を実現していくことができるのでしょうか。

第3回は、企業にとって重要な共創パートナーとはどのような人々か、そして、より多くの生活者に参加してもらい、ブランディングにもつなげるヒントについて考えます。

「人々」の力が世界を変え始めている。消費も「社会変革消費」の時代へ

世界中で「より良い世の中」を求めて声を上げる人々の動きが後を絶ちません。環境問題への取り組みを訴える欧米の若者たちの動き、Black Lives Matterを合言葉にした人種差別撤廃への動き、性的マイノリティの人々が社会の偏見をなくし、平等な権利を訴える動き、などなど。

どの社会課題も複雑で深い問題であるだけに表層的な議論だけで解決することはできず、当然それぞれの活動には賛否両論があります。が、いずれにせよ、自らの意思で立ち上がった人々の動きが、結果的に規制や社会システムの再考を促し、世の中の変革を加速させていく様子には目を見張るものがあります。

この潮流は、街に出て実際に社会的な活動を起こすことだけにとどまりません。日々の消費生活や購買行動においても、意思が問われる時代になりつつあります。「商品を選ぶたび、私たちは、ありたき世の中に投票している」とは、欧米のある著名な企業が唱えている言葉です。今後、そのように、商品選択が社会変革のアクションの一つとなる、「社会変革消費」とでも言えるような現象が増えていくかもしれません。

■生活者の「小さな効力感」が社会を動かしている

この時代の流れは、少しずつ日本にも浸透し始めています。それを踏まえて、今回実施した調査では次のような設問を入れました。

「一人一人の力は小さくても、想いがあれば世の中を良い方向に変えていくことができると思う」

私たちはこの意識を、生活者の社会に対する「小さな効力感」と名付けました。塵も積もれば山となるように、この「小さな効力感」こそが先述したような世界を動かす大きなうねりを生んでいる源であり、これからの購買行動を左右するものになり得ると考えたからです。

調査結果を見ると、この問いに対し、日本の生活者全体の64.5%が「そう思う」もしくは「ややそう思う」と回答したことが分かりました(「そう思う」19.9%、「ややそう思う」44.6%)。

01
(図1)

「小さな効力感」を持つ人々とはどんな人?

「小さな効力感」を抱く生活者のうち、「そう思う」と回答したTop1層(全体の約20%)について、以下の傾向があることが分かりました。

傾向その1:社会・環境問題への関心が高く、特に環境問題で、全体との差が大きい

「社会全体が本気になって取り組む必要があると思う社会問題や環境問題」で見ると、全体に比べて概ねどの項目でも反応が高く、特に「地球環境(自然環境保全・地球温暖化)」で関心が高い。

傾向その2:企業のサステナビリティへの対応への期待が高く、取り組みを行っている企業に対しては高く評価する

「企業に期待すること」では、サステナビリティに関連する項目で全般的に高い傾向にある。

02
(図2)

ちなみに、サステナビリティへの期待に応えられれば、企業は高く評価される傾向にあります。実際に、企業各社に対する評価を見ると、環境・社会課題解決の取り組みに熱心との定評がある企業に対しては、全体に比べてより高く評価している結果も出ているのです。

傾向その3:情報感度や発信力が高い

「良いと思った情報はできるだけ多くの人と共有することが多い」「自分がいいと思ったものは他人にすすめる」といった項目でも全体を20ポイント程度上回る。

03
(図3)

以上のことから分かるのは、「小さな効力感」を持つ人々は、まさに企業と同じ志を持つ“同志”として、社会変革を共に推し進める共創パートナーとなり得る人々だということです。情報発信力が高い人々なので、応援したい活動であれば、周囲にも協力を呼び掛けてくれる可能性もありますし、その企業のファンになってもらえれば、力強いブランド推奨者になってくれるかもしれません。

「“同志”型ブランディング」に向けて。人々の心のスイッチをどう入れる?

ここからは、より多くの生活者に参加してもらい、ブランディングにもつなげるヒントについて考えてみたいと思います。パーパス・ブランディングには数多くのアプローチがありますが、その一つを、私たちは「“同志”型ブランディング」と名付けています。

これは企業と生活者が、同じ志の実現を目指し、共に一つのことを成し遂げる体験を共有する(=共創する)ことで、結果的に両者の絆も深めていく、という考え方です。今回紹介した「小さな効力感」を抱く人々との共創は、まさにこのブランディングの第一歩であるともいえるでしょう。

とはいえ、より大きな社会的インパクトの創出を目指す上で、現在「小さな効力感」を持つ人々を巻き込むだけでは決して十分ではありません。それらの人々に味方になってもらいつつ、ムーブメントを共に、さらに広げていく視点が重要です。では、より多くの人々を社会変革に向けた共創に誘うためにはどうしたら良いでしょうか。

今回の調査結果を電通独自の生活者データベース(PDM Tunes 2020)のデータと掛け合わせて分析した結果、「小さな効力感」を持つ人々の心のよりどころとなっている時間として、「感動する時」「気の合った友人や仲間と過ごす時」「何かを達成する、実現する時」「人から愛されている時」「ワクワクしている時」などの項目が、全体に比べて特に高いことが分かりました。

04
(図4)

注目すべきポイントは、「感動する時」を心のよりどころとする人に、「小さな効力感」を持つ人が多いという事実。私たちは、ここに“同志”型ブランディングを実現するための大きなヒントがあると考えています。

例えば、外から与えられた知識や頭で考えた「べき論」を超えて、一人の人間として純粋に感動したときこそ、「小さな効力感」を駆動する目的意識が芽生える。小さなことであっても、何かを成し遂げられたという達成感が新たな感動を生み、次の「小さな効力感」につながっていく。そして、「仲間」の存在や「ワクワク」「知識・教養を高める喜び」といった好奇心を満たす要素、「愛情(心のふれあい)」などが、この循環をさらに加速させる。このような仮説が考えられます。

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生活者の心の中でこのような良い循環が生まれる体験を設計することができれば、より多くの人々に参加してもらい、さらに持続可能な取り組みへと進化させていくことができるのではないでしょうか。

これは、通常私たちマーケターが考えるカスタマージャーニーと少し異なる「心のジャーニー」です。生活者を顧客ではなく、「社会の中で生きる一人の人間」として捉え直すと、自然にその企画は顧客層以外の人々の共感にもつながり、社会に対してもより大きなうねりを生み出していけるものになる、と考えられます。

社会変革、そしてパーパス・ブランディングを行う際に必要なのは、「CX(顧客体験)」ならぬ、「HX」。つまり、一人の人間としての体験=「Human Experience」とも呼べるような事柄に対する感性と視点なのかもしれません。


調査概要 

“サスティナビリティ”や企業/ブランドの“パーパス(社会に対する志・社会的存在意義)”に関する意識調査

  • 調査手法:インターネット調査
  • 調査時期:2020年10月26~28日
  • 調査エリア/対象:全国20~74歳男女2000人
  • 調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト

 

JRA 「低レベル説」にアーモンドアイもとばっちり!?「史上最高」といわれた2020年ジャパンC(G1)組の不振で最強伝説に翳り?

 昨年11月、東京競馬場で行われた第40回ジャパンC(G1)。アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクト、史上初めて3頭の三冠馬が一堂に会するドリームマッチとなったことはまだ記憶に新しい。

 結果は、このレースで現役引退を表明していたアーモンドアイが貫録を見せつけて完勝。2着にコントレイル、3着にはデアリングタクトが入り、三冠馬のワンツースリーフィニッシュ。レース後、「こんなドラマティックなレースは今まで見たことがない」「感動して泣いた」「最高のドリームレース」と評したファンの声が溢れかえった。

 そんな「伝説」のレースとなった昨年のジャパンCだったが、ここにきて「実はレベルが低かったのではないか」といった声が一部の競馬ファンから聞こえ始めている。

 ケチが付き始めたのは、3月に行われた金鯱賞(G2)からだろうか。ジャパンCで3着だったデアリングタクトが、単勝オッズ227.3倍のギベオン相手にまさかの敗戦。無敗の三冠牝馬であり、ジャパンCの盛り上がりの一角も担っていた同馬だけに、いくら前哨戦とはいえ快勝して欲しかったというのが競馬ファンの本音だろう。

 その3週間後に行われた大阪杯(G1)。今度はジャパンCで2着だったコントレイルが3着に敗退。同世代の牝馬レイパパレに4馬身以上離された上、伏兵のモズベッロにまで差されてしまった。なす術なく敗れ去った昨年の無敗の三冠馬の姿を見て、落胆したファンも多かったのではないだろうか。

 そして先週、香港のシャティン競馬場で行われた、クイーンエリザベス2世C(G1)である。単勝1.7倍の支持を受け、負けられない戦いとなったデアリングタクトだったが、1つ上の先輩オークス馬であるラヴズオンリーユーとの勝負に敗れた。さらに、ジャパンCと金鯱賞では先着していたグローリーヴェイズにまで交わされ、まさかの3着に終わった。

 無敗の三冠馬2頭の不甲斐ない姿に、両馬のそもそもの実力を疑問視する声が出始め、昨年のジャパンC自体が、「実はレベルがあまり高くなかったのではないか」という話にまで至っている次第である。

 さらにはコントレイル、デアリングタクトに先着したアーモンドアイの勝利にまでケチが付き始める事態に発展している。

 コントレイルは次走に宝塚記念(G1)を予定。デアリングタクトも出走する可能性がある。伝説となった昨年のジャパンCのためにも、両馬には雑音を一掃する見事な走りを期待したい。