茨城最強・サザコーヒーのゴン攻め戦略…スタバでも赤字のコロナ不況で、単年度黒字確保

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

 長引くコロナ禍で、外出自粛による来店客の減少や営業時間短縮など飲食店の苦境は続く。

業態別では、「居酒屋」に比べて「カフェ」は基本的に酒類提供を行わず(届け出をして行う店はカフェバーとなる)、夜間営業自粛の影響も受けにくい。だが、都心や駅前の商業施設に入居する店ほど、外出自粛や営業規制などのダメージが直撃する。

 業界最大手のコーヒーチェーンで業績も一頭地を抜く「スターバックス」ですら、運営会社(スターバックス コーヒー ジャパン)の2020年度業績は単年度赤字となったほどだ。

 そんなコロナ不況下でも、「2020年度の業績は黒字を確保した」個人チェーン店がある。人口約15万人の茨城県ひたちなか市に本店を構える「サザコーヒー」だ。

 国内で1600店以上を展開するスタバに対して、サザの店舗数は1%にも満たない15店。茨城県内が中心だが、埼玉県と東京都内の商業施設にも店がある。創業は1969(昭和44)年と半世紀を超えるが旧態依然としておらず、積極的な仕掛けを行う。

 なぜ老舗の個人系カフェが、コロナ禍でも業績を上げられるのか。

 その取り組みを2回に分けて紹介したい。会長(創業者の父)と社長(息子)それぞれの手法も興味深く、厳しい時代のヒントとなれば幸いだ。まずは現社長の仕掛けから――。

モノづくりは真摯、コトづくりは話題性

「『良い材料×良い技術×良い人材』で、もっと美味しい商品ができます。コロナ禍が長引いて気が滅入る時期だからこそ、お客さんに楽しんでいただきたいと思っています」

 サザコーヒー社長の鈴木太郎氏は、こう話す。

 一般社団法人・日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)理事兼コーヒーブリューワーズ委員会委員長も務める同氏は、世界各国のコーヒーに精通する。スペイン語も堪能で、出身校は東京農業大学農学部で果樹園芸学を専攻。現在は社業の傍ら、筑波大学大学院で学ぶ。

 こう記すと学究肌の経営者に思えるが、マイブームの発案者・みうらじゅん氏(クリエーター)に憧れて長髪にするなど、米国西海岸のカフェオーナーにいそうなタイプだ。

 同氏の最近の活動を整理すると、大きく次の2つに分けられる。

(1)真摯な味づくり
(2)誤解を深める

 詳しい手法は後述するが、(1)はモノづくり、(2)はコトづくりだ。東京五輪の金メダル種目・スケートボードの解説に例えれば「ゴン攻め」ともいえる手法だ。

 飲食の味には徹底してこだわり、試食や試飲を繰り返す。一方で後述する「誤解を深める」では、周囲を驚かせる仕掛けも行う。お客さんが(1)を評価するからこそ、(2)が生きるのだ。

高級豆「ゲイシャ」を独自技術でブレンド

「ゲイシャ」というコーヒー豆がある。名前の由来は発祥地・エチオピアの“ゲイシャ村”から来ており、もっとも有名なのは「パナマゲイシャ」=パナマで栽培されるゲイシャ品種だ。海外の「コーヒーオークション」でも大人気で、最高級豆として取引される。

 2020年10月、サザコーヒーは新作として「ゲイシャハンター」を発売した。コーヒー豆は100グラムで2000円(税込み、以下同)と安くはないが、同社の取り組みやゲイシャの価値を知る消費者からは人気で、売れゆきも上々だ。

 もともと鈴木氏は、早くからゲイシャの魅力にとりつかれ、十数年にわたりゲイシャのコーヒー豆を購入してきた。近年はコーヒーオークションで価格がつりあがっているが、それでも落札を続けている。国際審査員としても活躍し、コーヒー豆の国際品評会「ベスト・オブ・パナマ」では、「最も有名な審査員」(業界関係者)と言われる存在だと聞く。

 その当人が吟味した三種の豆(=パナマゲイシャ、エチオピアゲイシャ、コロンビアゲイシャ)のブレンドコーヒーだ。前述したパナマは最高級、エチオピアは発祥地で、コロンビアは直営のサザコーヒー農園の豆を用いる。ハンターの言葉には本人の思いもあるのだろう。

 同氏は2019年までは年間150~200日を海外で過ごし、産地訪問や品評会の審査を繰り返した。コロナ禍で渡航ができない2020年からは自社で焙煎を続け、多彩な味を追究した。

 その成果が「ゲイシャハンター」だ。フルーティーな味わいが特徴のゲイシャ品種は“シングルオリジン”(単独の豆を抽出)が人気。それをあえて“ブレンド”にしたのだ。

茨城県産「シェイク」や「ジェラート」

 同社は“コーヒー屋”を自称し、コーヒーへの情熱が高いが、もうひとつの情熱が茨城県だ。「茨城のコーヒー屋」として県産品にこだわり、それを使った自家製スイーツが多く販売される。実は同県は、一般の知名度は低いが農作物の品質には定評がある。

 夏の時季に人気なのが「シェイク」で、メロンシェイク(610円)は茨城県産の糖度の高いメロンを使用。いちごシェイク(610円)は、都内の有名スイーツ店にも提供する鉾田市(村田農園)と水戸市(八木岡農園)産のいちごを用いている。

 今年のGWから販売を始めたのが「ジェラート」だ。当初はミルク、イチゴ、ラムレーズン、マンゴーの4種類で、夏に将軍珈琲とブルーベリーが加わった(店内価格は500円)。

「北海道産を中心にしたミルクと茨城県産フルーツを使用したジェラートです。

 商品開発のキッカケは2014年にさかのぼります。当社のバリスタだった尾籠一誠さん(現在は独立)が日本大会で優勝してワールドブリューワーズカップ出場のためにイタリア・リミニに行きました。欧州視察を兼ねて当社のケーキ工房スタッフも連れて渡航したのですが、リゾート地で知られるリミニは、冬にはジェラートの大会が開かれる土地柄。『いつかは本格的なジェラートをつくりたい』と刺激も受けて帰国しました」(鈴木氏)

 冷凍保存すれば賞味期限がないジェラートは、夏だけでなく年間を通した販売も可能で、通信販売にも向く商品だ。専門家の監修も得て、7年越しの思いをかなえた。

あえて行う、「誤解を深める」とは?

 こうしたモノづくりの一方で、コトづくりでは「誤解を深める」――。誤解を解くのではなく、深めるのだ。最近の事例では以下の活動がそれに当たる。

・カフェなのに「天然鮎」を販売
・コーヒーの「ゲイシャ」イベントに、本物の「芸者さん」を招待

 それぞれ簡単に説明したい。

 今年春の金曜日。サザコーヒー本店を訪れると、店の駐車場に「那珂川 天然鮎」を掲げた移動車が停まっていた。毎週第一金曜日と第三金曜日に行う「鮎まつり」だ。

「茨城のコーヒー屋として、川魚を食べる食文化も紹介しています。茨城県と栃木県にまたがる那珂川は『天然鮎がのぼる川』として知られ、鮎の漁獲高でも長年日本一です。『カフェなのに何で鮎を?』と思われるでしょうが、コーヒーと関係なく始めた活動も、天然本物の鮎好きはみなさん意外とコーヒー好きなことがわかり、本業へのいい刺激となっています」(同)

 2020年11月14日、JR東京駅前の商業施設「KITTE(キッテ)」内の同店で、「パナマゲイシャまつり2020」イベントが開催された。当日のイベントに登壇したのは、カルロス・ペレ駐日パナマ大使、パナマのコーヒー生産者、さらに新橋・金田中の芸者衆3人だった。

「『パナマゲイシャ』の由来は、エチオピアのゲイシャ村ですが、初めてその品種名を聞く人は、日本の芸者さんをイメージする。それなら『誤解を深めよう』と考えたのです」(同)

 実現には「名門の新橋・金田中さんにご協力いただく」。本物を目指すのもモットーだ。

百貨店の催事で培った「味×仕掛け」

 一見、奇想天外に思える活動にも鈴木氏の信念がある。

 1990年代後半、同氏は父(現会長)が購入した南米コロンビアの農園に派遣された。土壌改良やコーヒー品種の植え替えなど、試行錯誤の末に農園運営を軌道に乗せて帰国。2005年には、品川駅内の商業施設・エキュート品川に店舗を出し、東京進出を果たした。

「品川店開業の前に、三越日本橋本店と渋谷・東急東横店(当時)の東急フードショーでの催事に何度も参加した経験が大きかったですね。

 催事継続の条件は売り上げ目標と集客でしたが、想定の数倍を達成。ひたすらコーヒーを淹れ続けて来店客にミニカップで試飲してもらいました。1対1でお客さんと向き合うと『買わされるのでは』と警戒されてしまう。10人ぐらいの方と一緒なら安心して興味を持たれる。たくさんの人に提供し、味を評価いただくと一定数の方が買ってくださいました」

 この経験を踏まえて品川駅に出店。後に東京の玄関口・東京駅前KITTEにも出店した。

「東京都内に店があることで、毎日従業員にリアルな情報が入ってきます。動きの激しい周辺の競合店の情報もあれば、カフェのトレンドも把握できる。ネットでも情報収集はできますが、目や舌で感じられるリアルな情報にはかないません」

 集客のやり方は多様化したが、自慢の味を基本に訴求する姿勢は変わらない。

モノ×コトの潤滑油は「タダコーヒー」

 こうしたイベントで行うのが無料の試飲や試食だ。こだわりのコーヒーや手づくりスイーツを常連客にも一見客にも惜しみなく振る舞う。

 長年の伝統だが提供商品も多様化。いまや「タダコーヒー」として評判が定着し、これを楽しみにイベントに集まるお客さんも多い。

 話題性では、念願の「ロケットコーヒー」(12グラム5袋入りで1000円)も発売した。

「2019年、堀江貴文さんのホリエモンロケット(MONO4号機:インターステラ社)に、世界一高価な(当時世界最高価格の)パナマゲイシャのコーヒー豆を搭載し、創業50周年の年にボクらの夢を宇宙へ届ける願いを込めました。この4号機は飛んだものの宇宙へは届かず北海道沖太平洋に沈んでおり、世界一深い深海コーヒーとなっています」

 その後も5号ロケットが発射されたが失敗。2021年7月3日に同7号機が打ち上げ成功し、晴れて商品として発売されるようになった。

 鈴木氏の活動を見ていると、「遊びをせむとや生まれけむ」(=遊びをしようとして生まれてきたのだろうか。出典『梁塵秘抄』)という言葉も思い起こす。

 ただし同社のコトづくりは、あくまでも本業の飲食に関連し、事業の“飛び地”は行わない。こうした発想を培ったのは、本店のあるひたちなか市(旧・勝田市)の大らかな風土も大きいようだ。

 次回は創業者・鈴木誉志男氏の活動をもとに、強みを深掘りしたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。 近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

FIRE実践!本気で40歳代リタイアを実現するマネー&行動プラン…長期積立分散投資の重要性

今年、日本でバズったお金のキーワードは「FIRE」

 今、FIREがブームとなっています。“Financial Independence, Retire Early”の略で、経済的な独立を果たし、早期リタイアを目指すチャレンジのことです。

 私も今年の1月に、『「やりがい」より「高収入」を選ぶのが正解…早期リタイアを実現する「貯蓄増大」戦略』というコラムを寄稿したのですが、タイトルにFIREと使っていなかったように、当時はまだ「FIREって何?」という雰囲気のほうが強かったと思います。

 半年ほど経って状況は一気に変わりました。マネー系の情報媒体をチェックしていると、FIREという文字を目にする機会がぐっと増えました。編集者と話をしてみると、タイトルにFIREとつけるとアクセス数が段違いだそうです。

 FIREは、40~50歳代の中高齢者のテーマではなく、むしろ20~30歳代の若い世代のためのお金のテーマです。そこで今回は「本気で40歳代で仕事を辞めたい人のためのFIREの方法」をまとめてみたいと思います。

キャリアアップに徹底的に取り組む

 あなたが人より早くリタイアしたいとすれば、人より多く稼ぐ気合いが欠かせません。普通に働く人の生涯賃金を、普通の人より短い年数で稼ぐわけですから当然のことです。特に、20歳代後半と30歳代前半でのキャリアアップが欠かせません。まず20歳代前半は自分の伸び代を見極め、稼ぐ能力を高めることに集中します。悩むなら、仕事に使える資格をとにかく取得しておくといいでしょう。資格給がゲットできたり、転職活動時の能力証明になることがあります。

 今の会社で年収増が早期に実現するのかも冷静に判断します。20歳代後半以降は、年収増を実現するためには転職もためらわないくらいのスピード感でキャリア形成をしていきましょう。

 とはいっても、毎年転職を繰り返し、年収は大して増えず、むしろ長続きしないタイプの人材と見なされるリスクもあるので、転職のタイミングを見計らうセンスも求められます。

徹底的節約によるハイペースでの貯蓄を実現

 次のテーマは節約です。社会人最初の数年間で毎月の家計のやりくりができるようになったら、FIREチャレンジャーは年収増の実現とあわせて、徹底的な節約体制を整えていく必要があります。

 基本的には「大卒初任給以上の収入増は貯蓄」とするくらいの覚悟が40代FIREチャレンジには必要です。「年収増=生活水準アップ=支出増」を繰り返してしまうと、どんなに年収が増えてもお金が貯まりません。40歳代でリタイアしたいなら貯蓄ペースを上げ続ける意識で取り組みます。

 できるだけ生活にかかるコストは抑え、ボーナスも基本的には半分以上を貯めます。これでハイペースの資産形成になります。年100万円を超えて、年200万円以上たまり始めると、40歳代で相当の資産に育つでしょう。

 ただし、これを徹底すると、ワンルームマンションでほとんどモノは持たない生活を志向することになります。ミニマリストのライフスタイルが参考になるかもしれません。自分が苦しいと思うなら、「年収3~4割増=(貯蓄2~3割増+生活水準1割増)」くらいで生活の充実にお金を回してもかまいません。

長期積立分散投資で無理なく確実にリターンを獲得する

 FIREというと投資テクニックばかりが注目されがちですが、あなたが本気でビジネススキルを磨き、節約を真剣に取り組んでいるのであれば、運用に高いリターンを求めすぎないほうがいいでしょう。例えば年10%以上というのは、かなりリスクを取っている状態です(2020年度のように相場全体が大きく上昇することもありますが)。

 まずは年4~6%くらいの利回りを目指してみます。これでも15~20年も続ければ、相応の収益確保につながります。一定額を20年積み立てて、年4%相当の収益確保をしたものとして試算をすると、財産は積立元本の52.3%増になります。1000万円の元本が1500万円超になるなら、悪いペースではありません。

 そして、年4~6%くらいの運用利回りを狙うのであれば、国内外に分散投資をしたバランス型ファンド(インデックス投資)を積立購入するだけで、利回り獲得のチャンスが得られます。個別株の短期売買チャレンジ、レバレッジをかけてのFXや暗号資産トレード、不動産投資などに踏み切るのも選択肢ですが、まずはインデックス投資を行いつつ、資産の一部を振り向けていくことをおすすめします。

夢の40歳代リタイアをしたいなら、あきらめず挑戦しよう

 22歳から3年間は月3.0万円、25歳からは月6.0万円、30歳からは月12.0万円のペースで積み立て、年4.0%で回したとしたら、40歳時点での積立額は約2500万円です。

 ということは1億円を目指すなら、積立ペースを4倍にするか、運用利回りを18.5%まで高めるか、あるいはその組み合わせ、ということになります。年収の半分以上を貯める人はこのモデルの2~3倍以上は貯められるでしょうから、決して夢の実現は不可能ではありません。しかし高いハードルであることは事実です。

 さて、FIREの基本的な手法を説明してきましたが、チャレンジしてみたいと思うでしょうか。もし本気でやってみたいと思うなら、ぜひ早期リタイアを目指してみてください。そして、あなたがFIREを目指そうとするとき、そのチャレンジを笑う人があるでしょう。そうした雑音には負けずあきらめず、がんばってください。

 また、若くして数千万円を貯めていることについては、基本的には内緒にしておくことをオススメします。妬みやひがみの対象となるだけでなく、お金目当てで近づいてくる人がいたり、最悪の場合はあなたの財産をかすめ取ろうとする人がいるからです。

 拙著『日本版FIRE超入門』には、ここでは書き切れなかったFIREに向けて注意するべきポイント、FIRE実行後の留意点などもまとめています。よろしければ手に取ってみてください。

(文=山崎俊輔/フィナンシャル・ウィズダム代表)

●山崎俊輔/フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー

1972年生まれ。中央大学法律学部法律学科卒業。企業年金研究所、FP総研を経て独立。個人の資産運用や老後資産形成のアドバイスが得意分野。日経新聞電子版やYahoo!ニュースなど多数連載を持つ。月間PVは200万以上。

腸内フローラの乱れ、自閉症・うつ病の要因に…加工食品の添加物や輸入肉の残留ホルモンに懸念

 現在、ヒトの腸内細菌問題が世界的なトピックになっている。ヒトの体内の腸内細菌は約500種類、37〜40兆個におよび、全重量は約1.5キログラムにもなる。腸内フローラ(細菌叢)を形成し、私たちの健康を左右することが最近の研究で明らかになっている。

 特に、脳腸相関としては、腸内フローラの動向が不安、攻撃性などの気分などに影響し、自閉症やうつ病などの神経疾患を引き起こすことが解明されている。さらに、特定の腸内細菌の増加や減少によって腸内フローラのバランスが崩れることによって、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群、大腸がんの危険因子となり、さらにメタボリック症候群や花粉症などのアレルギーにも関与していると指摘されている(「食べもの通信」<2021年7月号>順天堂大学名誉教授・佐藤信紘論文などより)。

 現在、多くの食品添加物が加工食品に使用され、野菜などでは農薬残留問題が指摘され、肉類では残留抗生物質、輸入肉の残留ホルモン剤などが懸念されている。加工食品の市場規模は、2010年の21兆5527億円から年々増加し、21年には6%増の22兆9108億円になると予測されている。牛肉や豚肉も輸入が急増し、残留農薬が懸念されている中国野菜の輸入も増加している。

 他方、06年から17年にかけて子供の自閉症、学習障害、注意欠如多動性障害が急増していることが統計上明らかになっている。文部科学省調査によれば、06年と17年を比較すると、自閉症は3912人から1万9567人と5倍に、学習障害は1351人から1万6545人と5倍に、注意欠如多動性障害は3912人から1万6135人と4.12倍になっている。

 ここで懸念されるのは、加工食品を通じた食品添加物や残留農薬、残留抗生物質、残留ホルモン剤の摂取増加が私たちの腸内細菌に影響を与え、腸内フローラのバランスを崩すことによって、脳腸相関で自閉症や学習障害や注意欠如多動性障害が急増しているのではないかという問題である。

食品安全委員会の責任増す

 では、食品の安全性をリスク評価する食品安全委員会は、食品添加物などの腸内フローラに対する影響評価を実施しているのであろうか。食品安全委員会は、現在使われている食品添加物や残留農薬、残留抗生物質、残留ホルモン剤のうち、委員会が設置された03年以降、新規に安全性評価を申請されたものについてリスク評価を行なってきた。そのため、委員会設置以前に使用が認められたものについては、腸内フローラに対する影響評価はなされていない。

 10年に食品安全委員会が決定した「添加物に関する食品健康影響評価指針」では、毒性試験は、亜急性毒性試験及び慢性毒性試験 、発がん性試験 、生殖毒性試験 、出生前発生毒性試験 、遺伝毒性試験 、アレルゲン性試験などであり、腸内フローラに対する毒性試験は明記されていない。

 また、「農薬(殺菌剤等)の腸内細菌への影響」に関する文書では、以下のように、具体的なハザードがないためリスク評価をしないとしている。

「令和元年、自ら評価にて、残留農薬、添加物、遺伝子組み換え食品が腸内細菌に与える影響を調査して、管理措置をとることを要望する提案があったが、具体的なハザードの記載がなかったことから、自ら評価の案件候補に該当しないと判断された」

 しかし、腸内細菌の研究が進むなか、この姿勢は正されるべきであり、国会で取り上げられるべき事案である。

(文=小倉正行/フリーライター)

●小倉正行

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。

主な著書に、『よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答』『輸入大国日本変貌する食品検疫』『イラスト版これでわかる輸入食品の話』『これでわかる TPP 問題一問一答』(以上、合同出版)、『多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴』『放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る』(以上、新日本出版)、『輸入食品の真実 別冊宝島』『TPP は国を滅ぼす』(以上、宝島社)他、論文多数

アフガン退避で日本と韓国の差! 外交官は逃げて民間人と現地職員を置き去りの日本、外交官がアフガンに戻り390人を退避させた韓国

 日本政府の棄民姿勢はコロナ対策だけではなかったらしい。タリバンが権力を掌握したアフガニスタンで、日本の自衛隊がJICA職員など民間の在留邦人や大使館の現地スタッフの退避作戦を展開したが、結局、日本人1人しか退避させられなかった。  アフガニスタン人については14人をパキ...

大御所パチンコライターが“開店プロ”の実態を大暴露!!

 1990年代から2000年代初頭までは、開店プロなるパチプロ集団が実在した。

 名前からも分かる通り、開店プロとは新装開店のホールを狙い打つ集団。業界の重鎮であるヒロシ・ヤング氏と大崎一万発氏は所属した過去があるそうで、ヤング氏の公式YouTubeチャンネル「ヤングちゃん、寝る?」では、そんな開店プロたちの実態について触れている。

 大崎氏は学生時代、パチンコや競馬、マルチ商法などで総額200万円ほどの借金を抱えて開店プロに。一方のヤング氏はアンダーグラウンドな組織に興味があったそうで、所属を決意したという。

 メンバーは大崎氏の所属時で200人、ヤング氏の所属時で150人ほどいたそうで、インターネットがなかった当時、新装開店の情報はそれぞれのエリア担当が入手して事務所に連絡するスタイル。それを事務所の電話番がまとめて、メンバーたちに発信していたそうだ。

 情報をもとにホールへ出向いた際は、そのホールの新台や出玉状況、調整なども報告するとのこと。好状況のホールがあれば情報を共有し、「稼働の効率を上げていた」という。

 また、開店プロたちによる慰安旅行や忘年会もあったそうで、忘年会は大規模な中華料理店を借り切って行われたと回想。その場では貢献度に応じて「表彰式」などもあったそうで、「オレンジカードとテレホンカード」がもらえたそうだ。

 このほか、互助会システムも充実しており、月々費用を払えば冠婚葬祭や入院時に「5万円」が支給されたとのこと。結婚式では会社の同僚や上司と偽って出席するサポートシステムもあったそうで、ヤング氏いわく「どうみてもカタギじゃない」外見の人がマイクで挨拶をしたケースもあったという。

 そんな開店プロたちは当時、「時間、何千円入るか?」で台のクオリティを判断していたと説明。なかには数取り機でカウントするプロもいたそうだが、データカウンターがない時代だけに、回れば回るほど返しが多い=投資が少ない……という点に着目していたそうだ。

 最終的にインターネットの発展で開店プロは消滅したそうで、動画の終盤、ヤング氏は「お店が常連に還元とか、新しいお客さんを獲得するために用意した台を全部かっさらう、ドロボーみたいな事をしていました」と頭を下げる場面も。ただ、当時はホールも「ザルな営業でも儲かっていた」時代であり、開店プロがいても一般客が打てる台はまだまだ残されていたという。

 現在とは違う、どことなくアンダーグラウンドでゆるいパチンコ業界。古き良き時代とまでは言わないが、当時を知らないファンは驚愕すること必至の内容につき、視聴してみてはいかがであろうか。

【注目記事】

甘デジ新台「大当り確率1/77」で「79%ループ」の絶唱スぺック! 遊タイム発動率は「甘デジ最高峰」!

パチンコ「10回転以内」に必ず当る激アツ現象!?

パチンコ店「残高あるカード」を盗んだ「意外な人物」!?

甘デジ新台「大当り確率1/77」で「79%ループ」の絶唱スぺック! 遊タイム発動率は「甘デジ最高峰」!

 パチンコ「甘デジ分野」にファン期待の“絶唱スぺック”が降臨する。リーディングカンパニー・SANKYOはこのほど、最新タイトル『Pフィーバー戦姫絶唱シンフォギア2 1/77VER.』のティザーPVを公開し、基本的なゲーム性を明らかにした。

 スぺックは大当り確率約1/77の甘デジタイプで、ラッシュまでのメインルートはシリーズでお馴染みの突破型システムを採用している。

 気になる右打ち「シンフォギアチャンス」の継続率は約79%。現在稼働中の『CRフィーバー戦姫絶唱シンフォギアLIGHT ver.』『Pフィーバー戦姫絶唱シンフォギア(甘デジ)』と遜色ない仕上りとなっている。

 そして注目すべきは、動画内の「大当り後230回転で『V-STOCK』⁉」という文言。これは遊タイムの発動契機を示唆していると思われるが、一般的な甘デジ機の遊タイムが300回転付近で発動することを考えると、かなり浅めに設定されていることがわかる。

 初当り確率は軽く、天井機能も優秀。それにコンテンツは大人気の『シンフォギア』シリーズということで、ネット上では早くも期待の声があがっているようだ。

「初代の登場から丸8年が経過した『シンフォギア』シリーズですが、さすがにパチンコファンにも飽きがきたようで、本シリーズへの注目度は徐々に薄れている印象です。実際、ライトミドルの『Pフィーバー戦姫絶唱シンフォギア2』に関しては初代ほどの反響を呼ぶことができず、空き台もチラホラ見かけます。

そうした中で登場する今回の甘デジ最新作は、遊びやすさと連チャンを兼ね備えたスペックで、また今作では手に汗握る『最終決戦』などの演出面も刷新されているようなので、コンテンツを知らないパチンカーはもちろん、既存のファンからも好評を得そうです。

すでにSNS上では『甘デジの中でもかなり期待できそうな一台』『かなり甘いスぺックになりそう!』など、本機の登場を待ちわびる声が多く寄せられていますよ」(パチンコライター)

 SANKYOといえば、本機と同じ大当り確率となる『CRF宇宙戦艦ヤマト YR』『CRFマクロスフロンティア2 Light Spec 77Ver.』をリリースしており、いずれも甘デジ随一の甘さで一部ファンから大好評の機種だ。

 実績のある「1/77」スぺック。それだけに、『シンフォギア』最新作の活躍に期待が高まるばかりだ。

【注目記事】

パチスロ「激甘ボーナスタイプ」の新攻略要素! 遂に通常時の小役出現率が判明!!

パチスロ、閉店取り切れずの「ミリオン達成」も…実際は悲劇の万枚だった!? 「無限ART」から予想外の大事故が発生!

甘デジ確率で「2000発ループ」の激熱マシンVS 初代『北斗の拳』…超スペック出玉バトルの勝者は!?

JRA武豊「最後の手段」1200m挑戦で起こった2つの誤算とは。「難しい馬ですね」1番人気メイケイエール7着惨敗……「4コーナーでは手応えがなかった」

 29日、札幌競馬場で行われたキーンランドC(G3)は、3番人気のレイハリア(牝3歳、美浦・田島俊明厩舎)が怒涛の4連勝。狙い通りの賞金加算に成功し、秋のスプリンターズS(G1)の有力候補に浮上した。

 この夏、例年以上の旋風を巻き起こしているのが、3歳牝馬だ。

 特にサマースプリントシリーズとなる短距離重賞では、アイビスサマーダッシュ(G3)をオールアットワンスが制したことを皮切りに、先週の北九州記念(G3)で九州産馬のヨカヨカが地元Vを達成。そして、極めつけがキーンランドCを勝ったレイハリアというわけだ。

 また、彼女たちの代表格となる桜花賞馬のソダシも古馬を相手に札幌記念(G2)を制覇。斤量面のアドバンテージは然ることながら、今年の3歳牝馬は例年以上のハイスペック揃いだ。

 その一方、そんなトレンドに乗り切れなかったのが、この日のキーンランドCで1番人気に推されながらも7着に敗れたメイケイエール(牝3歳、栗東・武英智厩舎)ではないだろうか。

「3歳牝馬がすごいね。それに乗りたいよね」

 レース前そう話していたのが、まさにメイケイエールの主戦・武豊騎手だった。自身の公式ホームページでも「3歳牝馬の大活躍が話題を集めています」と綴り、「今週、その流れをメイケイエールも引き継ぎたいものです」と悩めるパートナーとの復活を誓っていた。

 しかし、ゲートこそ無難に出て好位を取ることに成功したメイケイエールだったが、好スタートを決めたレイハリアが内に切れ込む際に目の前を通ると、一瞬で我を失った。頭を高く上げると、武豊騎手の制止も空しく暴走気味にハナへ……。

 先頭に立ってからは落ち着いたようにも見えたが、最後の直線では本来の伸びを欠いて7着に沈んだ。

「うーん、武豊騎手がレース後に『難しい馬ですね』と話していましたが、正直、進境が見られないレースだったと思います。『返し馬は上手くいきましたが、輪乗りの時点で気合が入りすぎて……』との言葉通り、まともに走ったのはレイハリアが目の前を横切るまでのほんの数秒で、そこからはエキサイトして『いつものメイケイエールだった』と言わざるを得ません。

これならいっそのこと、レイハリアが来る前に自らハナに立ってしまった方がよかったかもしれませんが、メイケイエールはそこまでスタートが上手くない馬。実はレース前に武豊騎手が『自分のリズムで動きたいから外枠がいい』と話していたのですが、当たったのは内目の3枠5番。この時点で、かなり苦しい状況になったと思います」(競馬記者)

 また記者曰く、ペースがそれほど上がらなかったこともメイケイエール陣営にとっては「誤算だったのではないか」という。

「今回、メイケイエールを1200mに使ったのは、武英調教師が『古馬の速い流れの競馬で冷静になれる部分はあるかと思う』と話していた通り、レース全体のペースが上がることで引っ掛かるのを少しでもマシにしたかったから。しかし、今年のキーンランドCは戦前から明確な逃げ馬がおらず案の定、前半600mが34秒とペースが落ち着きました。

ちなみにこれはメイケイエールの新馬戦や小倉2歳S(G3)よりも遅い時計。これではメイケイエールが掛かってしまうのも無理はないでしょう。競馬場が違うので一概には言えませんが、例えば一昨年は稍重でも前半33.2秒だったように、近年のキーンランドCなら33秒台も珍しくないですからね……」(同)

 いずれにせよ、一発逆転を期した1200m戦で結果が出なかったことはメイケイエール陣営にとって痛恨の極みと言わざるを得ない。レース前には『結果次第でスプリンターズSへ』と話していたが、この結果では仮に向かうとしても大きな不安を抱えたままになる。

「4コーナーでは手応えがなかったです。もう少し、ゆっくり走ってくれるようになれば……」

 レース後、そう無念のコメントを残した武豊騎手。仮にメイケイエールがスプリンターズSに進んだとしても、自身は同日にフランスで行われる凱旋門賞(G1)に騎乗する可能性が高い。同世代の好調な流れに、メイケイエールだけが乗れていない印象だ。

(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。

菅首相「地銀は多すぎる」は本当か…地銀再編が進まないワケ…系列の呪縛とプライド問題

2014年に予想された2020年の姿…「地銀再編は進みまくる?」

 もうすっかり忘れられてしまった感があるのだが、菅義偉首相の就任時に「地方銀行の数が多すぎるのではないか」との発言があり、「すわ! 銀行再編か?」と銀行業界に衝撃が走った。

 そのことを予言していたような書籍がある。

 津田倫男著『大予想 銀行再編地銀とメガバンクの明日』(平凡社、2014年)だ。その帯には「2020年、銀行再編予想図はこれだ!」とある。地銀再編を考えるに当たって、こんな格好の著作はない。ちょっと覗いてみよう。

 たとえば、2020年までに「北海道、東北地区で現状維持する銀行は一つもないだろうと予想できます」と指摘し、具体的には、ほくほくFG(北陸銀行+北海道銀行)グループ、七十七銀行グループ北洋銀行グループ新東北グループ(フィデアHD+じもとHD等)の4グループに集約されると予想されている。

 結果からいえば、ひとつも当たっていない。「北海道、東北地区の銀行はほぼ現状維持のまま、合併・経営統合は進んでいない」というのが正解だ。北海道、東北地区以外も状況としては似たり寄ったりだ。2014年から2021年までの7年間に合併が6件(1件は合併予定の発表)、経営統合が9件、資本提携が8件。2014年に104行あった地方銀行は2021年現在、99行にしか減っていない。

 だから首相は、「地方銀行の数が多すぎるのではないか」と発言したのかもしれない。地方銀行を取り巻く環境は厳しい。県内に複数の地方銀行が存在するだけの余地がなく、経営環境が悪化しているにもかかわらず、まったく再編が進んでいないのだ。

 ではなぜ、地銀再編は進まないのだろうか?

完全にひとつになる「合併」と、持株会社にぶら下がる「経営統合」

 上の表では合併と経営統合を別物として扱っているが、そもそも合併と経営統合はどう違うのか。

 戦後しばらくの間、複数の企業が経営を統合する方法は合併しかなかったのだが、1997年の独禁法(独占禁止法)改正で(1998年から)持株会社が解禁され、合併をせずに経営統合することが可能となった。

 第二次世界大戦で敗北した日本は戦後、GHQ(連合国軍総司令部)によって占領され、その占領下で独禁法が制定された。GHQは財閥など大企業による独占・寡占を徹底的に排除するため、財閥で多く用いられた持株会社を禁じたのだ。

 時代は下って、バブル崩壊後の1990年代後半、都市銀行(今でいうメガバンク)は多額の不良債権を抱え、経営統合(=当時は合併)による大規模なリストラを敢行しなければもはやもたない状況にまで追い込まれた。しかし、日本企業の経営者はとにかく合併が嫌いだった。そこで政府は、メガバンク再編を行う経営環境を整えるため、独禁法改正で持株会社の解禁に踏み切ったのだ。

 A銀行とB銀行が合併してC銀行になる場合、A銀行をC銀行に商号変更し、B銀行の資産・従業を移転した後、B銀行を消滅させるケースが多い(C銀行を新設して、両行の資産・従業を移転した後、両行を消滅させる場合もある)。

 これに対し、A銀行とB銀行が経営統合する場合、両行が持株会社:Cホールディングスを設立して、その子会社となる場合が多い。そしてその先の段階として、A銀行とB銀行がそのまま存続する場合と、一定期間を経た後、両行が合併する場合とがある。

 では、地方銀行は合併と経営統合をどのように使い分けているのか。結論からいってしまうと、県内の地方銀行同士は合併、隣県の地方銀行は経営統合というパターンが圧倒的に多い。

 県内の地方銀行同士――たとえば、青森銀行とみちのく銀行は、青森・弘前・八戸など県内の主要都市にそれぞれ支店を持っている。合併すれば、重複した店舗を整理することも容易となるが、経営統合で両行が存立したままでは難しい。青森銀行の弘前支店を残して、みちのく銀行の弘前営業部を廃止するなんてことはできっこないからだ。

 しかし、隣県――たとえば、肥後銀行(熊本県)と鹿児島銀行の場合、重複する店舗が少ないため、あえて合併する必要がない。むしろ、合併するデメリットが大きい。両行は指定金融機関(県の公金取扱銀行)である。仮に両行が合併し、本店が熊本市に移ったら、鹿児島県は指定金融機関を他行(たとえば、鹿児島に本店を置く南日本銀行)に移すだろう。昨今では、指摘金融機関であることが必ずしもメリットをもたらすばかりではないのだが、とはいえ県内の金融機関序列というか、ステイタスに大きくかかわる大問題ではある。

第一地銀同士、第二地銀同士しか合併しない、地方銀行の“プライド問題”

 では、県内の地方銀行同士であれば、合併が進むのか。実はそう簡単にはいかないのである。最初の表に挙げた合併6件にはある共通点がある。

①第一地銀同士  3件:十八親和銀行、 第四北越銀行、 青森+みちのく銀行
②第二地銀同士  2件:関西みらい銀行、徳島大正銀行
③第一+第二地銀 1件:三十三銀行

 地方銀行には、1990年頃に相互銀行から普通銀行に転換した「第二地銀」と、それ以前から普通銀行だった「地方銀行」(便宜的に「第一地銀」と呼ぶ)がある。6件のうち、第一地銀と第二地銀の組み合わせは1件のみ。圧倒的に、出自を同じくする銀行同士の合併が多いのだ。

 しかし、県内に複数の第一地銀、もしくは第二地銀が存在するケースは意外に少ない。そもそも第一地銀のほうは、戦前に「一県一行主義」といって銀行を集約する金融政策があったにもかかわらず、なんらかの理由で合併しなかった銀行が残っているわけで、フツーに考えれば合併なんかしない。バブル崩壊のような激震が走らない限り、銀行合併はそう簡単には実現しない(とか書いてしまうと、数年後に「ひとつも当たっていない」と書かれてしまうので、もっと曖昧に濁したほうがよい)のかもしれない。

高度経済成長期に成立した都市銀行と地方銀行の“系列問題”が、地銀同士の合併をはばむ?

 それ以外にも、銀行系列の問題がある。地方銀行の多くは、メガバンクと親密関係にある。

 高度経済成長期(1955~1973年頃)には、企業の資金需要が旺盛で、その多くを銀行に頼っていた。企業(というか産業界)にとってすぐれた銀行とは、預金高の多い銀行。それは、支店が多く、庶民の預金を吸い上げることができる銀行だった。ところが一方で銀行は大蔵省(現・財務省+金融庁)による厳しい行政指導によって、支店増設にはこれまた厳しい許認可の壁があり、そう簡単は支店を増やせないジレンマがあった。

 そこで、都市銀行は地方銀行との関係を強め、預金吸収を委ねた。たとえば、富士銀行(現・みずほ銀行)は熊本県の肥後銀行と親しい。なので、熊本県にはムリして支店増設はしない。熊本県での預金吸収は肥後銀行に任せるのだ。そして、富士銀行が大企業に融資するとき、その融資団に肥後銀行を加える(大変失礼な話だが、当時の肥後銀行には単体で大企業の与信審査をするだけの実力があったかは疑わしい。しかし、それは富士銀行がやってくれる。富士銀行にとっても、肥後銀行にとってもWIN-WINの話だったのだ)。

 つまり、地方銀行が地元で集めた預金は、都市銀行を介して首都圏や関西圏の大企業融資に使われていたのだ。ところが、高度経済成長期が終焉を迎えると、都市銀行も融資先に困ってしまったのだが、同じく地方銀行も少なからず大口融資先を失って困ってしまった。こんなところにも、オーバーバンキング問題の根本原因があるのだ。

 今では、メガバンクが大口融資に地方銀行を引き入れるという事例は皆無に等しいと思われる。しかし、メガバンクと地方銀行の関係は続いており、これが合併や経営統合をさえぎる壁になる可能性は十分ある。

 2019年の関西アーバン銀行(三井住友銀行系)と近畿大阪銀行(りそな銀行系)の合併(関西みらい銀行)では、「ホンマに合併できるんかいな?」といぶかしがる向きもあった。ただ、そもそも三井住友銀行自体が、まずあり得ないと思われていた財閥の壁を越えた合併で誕生したのだから、もうそんなことはいっていられない時代なのかもしれない。

(文=菊地浩之)

●菊地浩之(きくち・ひろゆき)
1963年、北海道札幌市に生まれる。小学6年生の時に「系図マニア」となり、勉強そっちのけで系図に没頭。1982年に國學院大學経済学部に進学、歴史系サークルに入り浸る。1986年に同大同学部を卒業、ソフトウェア会社に入社。2005年、『企業集団の形成と解体』で國學院大學から経済学博士号を授与される。著者に、『日本の15大財閥 現代企業のルーツをひもとく』(平凡社新書、2009年)、『三井・三菱・住友・芙蓉・三和・一勧 日本の六大企業集団』(角川選書、2017年)、『織田家臣団の系図』(角川新書、2019年)など多数。

JRA 2歳女王「最後の仔」が9馬身差レコードタイのド派手デビュー! 「いい勝ち方でした」コロナ禍に現れた「世界平和」の象徴再び

 29日、新潟競馬場で行われた6Rの新馬戦(ダート1200m)は、6番人気のインコントラーレ(牡2歳、美浦・菊沢隆徳厩舎)が2着馬に9馬身差をつけて勝利。2002年の2歳女王ピースオブワールドの仔がド派手なデビューを飾った。

「いいスピードがありますね」

 鞍上の三浦皇成騎手の言葉通り、スピードの絶対値が違い過ぎた。

 スタート直後にあっさりとハナに立って主導権を握ったインコントラーレに対して、各馬も必死に食らいつく。しかし、インコントラーレの行き脚はまったく衰えることなく、逆に4コーナーから直線入り口で後続をスッと突き放すと、あとはワンサイドゲーム。ダート1200mの短距離戦だったが、最後は9馬身差という大差をつけてゴールした。

「めちゃくちゃ速かったですね。ゲートの出は普通でしたが、そこからのダッシュ力は一級品。レース後、三浦騎手が『物見が凄くて……オフになると一気に周りを気にするので、やめさせないように乗った』と話していた通り、最後の直線で抜け出してからもしっかりと追われていましたが、勝ち時計の1:11.1はこのコースの2歳レコードタイ。

それもナムラビームがレコードを記録した当時が時計の出やすい不良馬場だったことに対して、この日は良馬場でしたから、より価値があると思います。現時点の同世代の中で非凡なスピードを秘めていることは間違いなさそうです」(競馬記者)

 また、インコントラーレの母は2002年に阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を制したピースオブワールド。レース後、菊沢調教師が「最後の仔です」と話していた通り、すでに繁殖生活を引退しており、マクフィ産駒の本馬が最後の仔となる。

「インコントラーレの母ピースオブワールドは4連勝で阪神JFを制した2歳女王。クラシック開幕前は当然の大本命でしたし、三冠を期待する声があったほどの大器でした。しかし、桜花賞(G1)前の2月に骨折……その後は、本来の姿を取り戻せないまま引退しました。

馬名の由来は、飯田正オーナーが渡米していた時に、アメリカ同時多発テロ事件を経験したことから『世界の平和』を願ったもの。世界からコロナ禍に苦しんでいる最中ですから、ピースオブワールドの最後の仔が新馬戦を大勝したことは、何か運命のようなものがあるかもしれません。

新潟のダート1200mは芝スタートなのが特徴。スタートからのダッシュは群を抜いていましたし、あれなら母同様、芝でもやれるんじゃないでしょうか」(同)

 レース後「性格的には素直でオン、オフがあって普段は落ち着いている」と菊沢調教師が言えば、三浦騎手も「いい勝ち方でした」と高評価。2歳女王の最後の傑作が母の無念を晴らすような活躍となるか期待したい。

(文=大村克之)

<著者プロフィール>
 稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。

【澤田晃宏/外国人まかせ】実習生の不正労働が横行する縫製業界のホワイト化を目指す監理団体の挑戦

「奴隷労働」ともいわれる外国人労働者。だが、私たちはやりたくない仕事を外国人に押し付けているだけで、もはや日本経済にその労働力は欠かせない――。気鋭のジャーナリストが“人手不足”時代のいびつな“多文化共生”社会を描き出す。(月刊サイゾー2021年7・8月号より転載)

 ベトナム出身のグェン・ティ・キムアンさん(31歳)は、2018年5月に婦人子ども服製造の外国人技能実習生として来日し、山形県鶴岡市の縫製会社「フォーティーン」で働き始めた。

 始業時刻は7時半。21時頃まで縫製作業が続き、帰宅後も寮でボタン付けなどの内職を課せられた。休憩時間すらまともに与えられず、出勤前に作ったおにぎりやゆで卵をポケットに入れ、作業時間中にトイレで食べたこともある。

 タイムカードや給与明細書はなく、正確な労働時間はわからない。納期前は朝の5時半まで作業が続き、残業時間は200時間を超えたという。国は「過労死ライン」を、病気の発症直前1カ月に100時間以上の残業、または発症前の2~6カ月の平均残業時間が月80時間以上としているが、その基準を優に超える。

 同工場では、11人のベトナム人実習生が働いていた。実習生は11個のベッドが並ぶ大部屋で寝泊まりし、シャワーはひとつしかなかった。外出が許されるのは週に1回で、同じ年に入国した実習生の代表者ひとりが、スーパーマーケットで全員分の食材の買い出しをした。

 立ち上がったのは、グェンさんと同時期に入国した実習生だった。庄内労働基準監督署に駆け込み、窮状を訴えた。グェンさんが働く縫製工場と同社役員は19年6月に労働基準法第32条(労働時間)違反容疑で書類送検され、20年9月には出入国在留管理庁と厚生労働省が同社の技能実習計画認定を取り消した。

 劣悪な労働環境から解放されたベトナム人実習生だが、実習先を失った。グェンさんら実習生の多くは、多額の借金を背負って来日しており、実習ができないからと帰国するわけにはいかない。

 実習生に「転職」は認められていないが、同じ職種・作業を学べる他企業への「転籍」はできる。実習継続を求めるグェンさんは19年3月、岐阜県岐阜市の縫製会社「エトフェール」に転籍した。

 作業場の入口にはタイムカードがあり、厚生労働省が作成しているベトナム語の最低賃金に関するリーフレットが掲示されていた。寮は民間の清潔な一軒家で、キッチンが2つある共用スペースと部屋が6つあり、シャワーが3つ、トイレも2つあった。グェンさんは、 「働いた分だけ残業代が支払われ、手取りが20万円近くになることもあります。こうも環境が違うのかと驚きました」

ファストファッション定着と縫製工場の劣悪労働

 同社の内ケ島圭祐社長は40歳と若く、出身は岐阜県だ。岐阜県は戦後、日本有数のアパレル産地として発展してきた。バブル期にはDCブランドブームもあり、県内繊維工業の出荷額は4395億円(91年)に達し、事業所数は2145社(98年)にまで増えた。

 だが、2000年代に入ると、中国製品を中心とする安価な商品が流通し、海外からH&Mなどの低価格帯のアパレルブランドが相次いで日本国内に進出。国内でも卸売業者などを通さず、自社製品を海外の工場で生産するユニクロなどが勢力をつけた。結果、岐阜県内の繊維業の工業出荷額は1464億円(15年)まで減少。事業所数は430社(19年)に激減した。91年に約52%だった衣類の輸入品の割合は、20年には約98%に達している。

 ファストファッションの定着で縫製工場の加工賃が下がり続ける中、現場を支えたのが外国人だった。岐阜県既製服縫製工業組合の平嶋千里理事長は朝日新聞の取材に対し「ここ20年、我々の業界は技能実習制度に依存してきた」(19年3月25日付)と答えている。

 ただ、その労働環境は劣悪だった。内ケ島社長は創業前の02年から7年間、岐阜県関市内の縫製工場で働いていた。内ケ島社長の働く縫製工場にも中国人技能実習生がいて、その姿を見てきた。

 「休みは週に1回あるかないかで、ひどいときは残業時間が200時間を超え、それでも給料は手取りで12万円程度。タイムカードは定時で打刻し、残業代は適正な賃金が支払われていなかった」

 だからこそ、自分が技能実習生を受け入れる際は、きちんとした労働環境を準備しようと思った。内ケ島社長は言う。

 「上代(販売価格)が1万円以下の商品を扱っていては、収益となる加工賃が残らず、従業員に適正な賃金を払えない」

 エトフェールでは、オーダーが100着以下の少量ロットの製品を扱う。上代が10万円以上するものも珍しくはない。内ケ島社長が「日本人が働きたいと思えるアパレル産業にすることが夢だ」と話すエトフェールでは現在、グェンさんを含む2人のベトナム人技能実習生と、4人の中国人技能実習生が働く。

 海外に支社のあるような大企業は自ら実習生を受け入れることができるが、実習生を採用する企業の約98%は「団体監理型」での受け入れだ。出入国在留管理庁と厚生労働省が所管する外国人技能実習機構から認定を受けた「監理団体」を通じ、実習生を受け入れる形になる。

 監理団体には、技能実習計画が計画通りに実施されているかを監査したり、実習生を保護したりする責任がある。

 内ケ島社長が監理団体に選んだのが、17年に監理団体許可を受けたばかりのMSI協同組合(岐阜市)だった。同組合には約30社が加入するが、エトフェールのような「ホワイト企業」以外の加入は認めていない。

 監理団体は非営利団体に限られ、実習実施者からの監理費が主な収入源となるが、実習生ひとり当たりの監理費を相場より安い2万2000円に設定している。毎月の監理費が経営を圧迫し、実習生の待遇悪化につながることも多いためだ。

 「当団体で技能実習を行うには、法令通りの労働環境にあるかはもちろんのこと、経営者の考え方や寄宿舎の状態など、とにかく審査が厳しい。だから、加入者がなかなか増えません」

 MSI協同組合の井川貴裕代表理事(48歳)は、そう言って、苦笑いを浮かべた。ジャケットの左襟に、「SDGs」のピンバッジが付いていた。SDGsとは、15年の国連サミットで採決された「持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」のことだ。「働きがいも経済成長も」「人や国の不平等をなくそう」「つくる責任つかう責任」など、国連に加盟する193カ国が30年までの15年間で達成すべき17の目標が掲げられている。

 井川代表は、こう語気を荒らげた。

 「中国の人件費が上がったら、次はベトナムに。ベトナムも人件費が上がったら、次はミャンマーに。そうした焼畑農業をいつまで続けるのか。オーガニックコットン(綿)が毎年栽培され、生産者に適正な賃金が払われることで、産地と生産者を守り、持続可能な暮らしを送ることができるのではないか」

 5月、アメリカ税関がユニクロ(ファーストリテイリング)製品の輸入を差し止めた。アメリカ政府は強制労働を理由に中国・新疆ウイグル自治区の生産団体が関わる綿製品の輸入を禁止していた。ユニクロはホームページで「弊社製品の生産過程において強制労働が確認された事実はありません」としているが、エシカルファッション[註:エシカルとは倫理的・道徳的という意味の言葉で、人や社会、環境に配慮した衣料品のこと]が注目されるなど、世界の潮流が変わりつつある。井川代表は「デフレ経済から抜け出せず、安ければいいと考える消費者が多いですが、その製品が労働搾取のないクリーンなフェアトレード商品なのか。少しずつ理解が広がれば、世の中も変わっていくはずです」と話す。

 井川代表には、縫製業のアイエスジェイエンタープライズ(岐阜市)の代表という立場もある。先代の父のもとで、幼少期から日本の縫製業を見てきた。

 例えば、3900円で買える日本国内製造のスカートがあったとする。生地代が1000円(用尺1メートル)で、縫製に1時間半かかったとして、人件費は1278円(岐阜県の最低賃金852円×1.5)、工場の固定経費も同額かかったとする。ファスナーなどの付属品400円にデザイン料など1500円を加えると、合計5456円。ここに送料や販売店舗の利益も乗る。アパレル商品の原価率は20~55%と幅広いが、平均的な33%で計算しても適正価格は1万6000円を超える。井川代表は、 「十数年前まではジーパンが1万円以下で買えることなどなかった。日常的に着る衣類を日本で作ろうとすると、適正な賃金を払うのは難しい」

今治タオル騒動ほか相次ぐ縫製業の不正

 井川代表には監理団体の代表、縫製工場の社長に加え、もうひとつの顔がある。外国人技能実習生の保護、支援活動をするNPO法人「労働相談.com」の副理事も務める。県内に限らず、全国の技能実習生の相談、保護活動をしている。

 「縫製業は技能実習の中でも、もっとも不正行為の多い職種のひとつです。私の体感値ですが、全国的に見れば9割の縫製工場でいまだに不当労働行為がある。タイムカードを2枚用意し、残業代は500円といった会社は珍しくはない」

 愛媛県今治市にある劣悪な環境の縫製工場で働くベトナム人実習生を取り上げたNHKのドキュメンタリー番組『ノーナレ』の放送をきっかけに、今治タオルの不買運動が起きるなど、縫製業の不正行為は後を絶たない。ベトナムのある送り出し機関幹部は、こう話す。

 「縫製は人を募集しても、人が集まらない不人気職種の代表格。給料が安く、失踪も多いため、縫製業を扱いたがらない監理団体も多い」

 井川代表が自身の工場で初めて実習生を採用したのは14年。外国人を奴隷のように扱う周辺工場を見ており、最後まで日本人の採用に固執した。

 「90年代は技能実習生ではなく『研修生』という立場ですが、団体監理型の受け入れが始まり、県下で働く外国人が増えました。研修生は労働基準法を適用する必要がなく、研修手当として月に3万円程度。残業代は時給300円程度で、200時間の残業をしても10万円に満たないような働かせ方が横行していました」

 そうした時代から外国人を雇う縫製工場では、法令順守の意識がとても低い。こうした経営者を排除することで、井川代表は業界全体のホワイト化・フェアトレードを目指している。

 「アパレルメーカーや卸売業者を通さず、直接小売店から注文を受けたり、著名なインフルエンサーと共同で商品を製作したりして、加工賃の高い仕事を受注する縫製工場が増えてきた。サスティナブルな業界に変えていかなければならない」

 現在、井川代表が運営する縫製工場アイエスジェイエンタープライズでは、10人の実習生が働く。18年12月に来日したヂィア・ヂェンホンさん(45歳)は、中国大連市の出身。国内総生産(GDP)で世界2位の中国だが、地域によって賃金差が大きい。24歳から縫製関係の仕事に就くが、大連では経験豊富なヂィアさんでも月に4000元(約7万円)程度しか稼げないという。13歳の子どもがおり、「寮費を引いた手取りの賃金が約16~20万円あり、満足しています。日本で5年働いて、子どもの教育費などに使いたい」

 ベトナム出身のグェン・ティ・タオさん(30歳)は、岡山県の縫製工場で3年間の技能実習をし、帰国した。

 「300万円くらい貯金したいと日本に来たけど、残業がないと手取りは10万円を切り、思ったほど稼げませんでした。寮は8人部屋で、実習生が風邪をひいても病院にひとりで行けと言われるなど、働く環境もよくなかった」

 グェンさんは日本の別の会社で働きたいと、アイエスジェイエンタープライズの技能実習3号(4~5年目)の技能実習生として再来日した。現在は個室を与えられ、洗濯機が壊れると、夜でも実習実施者の生活指導員が駆けつけ、翌朝には新しい洗濯機が準備されていた。

 仕事が終わると、毎日、日本語検定3級(N3)の試験に向け、日本語を勉強する。実習生は19年に新設された在留資格「特定技能」で、実習後も5年間働けるようになっているが、現在、縫製業はその対象職種に入っていない。

 特定技能が対象とする14業種の技能試験とN4を取得すれば、他業種なら日本で働き続けることができるが、 「縫製業を特定技能に入れてほしい。このまま、今の会社で働き続けたいです」

 グェンさんは、最後にそう言葉を残した。

(文=澤田晃宏)

●プロフィール

澤田晃宏(さわだ・あきひろ)

1981年、兵庫県神戸市出身。ジャーナリスト。進路多様校向け進路情報誌「高卒進路」(ハリアー研究所)編集長。高校中退後、建設現場作業員、アダルト誌編集者、「週刊SPA!」(扶桑社)編集者、「AERA」(朝日新聞出版)記者などを経てフリー。著書に『ルポ技能実習生』(ちくま新書)、『東京を捨てる コロナ移住のリアル』(中公新書ラクレ)がある。