新総裁・岸田文雄は安倍前首相の完全な操り人形に! 今井尚哉、北村滋、岩田明子を監視役に送り込み「高市早苗の国家観」を強制

 本日、自民党総裁選がおこなわれ、決選投票で河野太郎氏を引き離し、岸田文雄氏が新総裁に選ばれた。だが、これは「岸田自民党、岸田政権の誕生」ではなく、「安倍自民党、安倍傀儡政権の誕生」と呼ぶべきものだ。  今回の総裁選で安倍晋三・前首相は、同じ極右思想を持つ高市早苗氏を支持...

アスリート×ビジネスで生まれる、新たな価値とは?

5歳からラグビーを始め、高校、大学、社会人、さらに日本代表でもキャプテンを務めた廣瀬俊朗さん。現在は起業家として、アスリートと企業が協業して社会課題解決を目指すプロジェクト「TEAM FAIR PLAY」を牽引しています。

本記事では、SDGs達成のためのヒントを探るべく、アスリート×ビジネスから生まれる新たな可能性や、ご自身が考えるリーダーシップやキャプテンシーについて廣瀬さんに伺いました。

廣瀬俊朗

 

引退後も「面白いこと」をするために、ビジネスを学び始めた

──廣瀬さんは2016年に現役を引退されましたが、その後のキャリアについてはどのように考えていたのでしょうか?

廣瀬:明確なビジョンがあったわけではないのですが、将来的にはビジネスで面白いことをやってみたいと思っていました。そのために準備をしようと、2016年にビジネス・ブレークスルー大学大学院(※)に入学して、経営の勉強を始めました。ゆっくり勉強するのもいいけど、自分にプレッシャーを与えたほうが頑張れると思い、あまり悩む期間をつくらずに入学を決めましたね。

すぐにアクションを起こせたのは、長年スポーツをしてきて、「体感すること」の大切さを実感していたからかもしれません。いいなと思ったら「まずはやってみる」というのは、僕がとても大事にしていることなんです。

2019年には「HiRAKU」という会社を設立しました。これまでスポーツを通して得た知見をビジネスのフィールドに広げ、人材育成やスポーツに携わる人を増やすことを目的にしています。会社を立ち上げるにあたり、「お金もうけをしたい」とはあまり考えていませんでした。それよりも、スポーツをもっと身近なものにするため、好きになってもらうために、みんなで何か面白いことができないかなという気持ちが強くありましたね。

ただ一方で、何かを継続的にやっていくためにはお金がないとうまくいかないだろうとも思っていて。まずは、みんなで面白いと思うことをやってみる。そしてそれが最終的にマネタイズにつながればいいな、と今は考えています。

また、現役時代から「アスリート」や「スポーツ」といった視点から、社会課題の解決のために何かできないかなということもぼんやり考えていました。合宿で地方へ行ったときに、町に元気がなくなってきているのを肌で感じて、どうしたら活気を取り戻せるのか、そもそも地方の本当の課題は何なのか、といったことを自然と考えるようになったんです。

僕は今も、やりたいことが明確にあるというわけではなくて、いろんな人と関わる中でやりたいことが見つかって、新しい道が開けてくる感じです。HiRAKUではいろいろな活動を行っていますが、2021年からは、新しいプロジェクトとして「TEAM FAIR PLAY」をスタートしました。

※ビジネス・ブレークスルー大学大学院:国内初のオンラインMBA大学院として2005年に開学。世界的な経営コンサルタント大前研一氏が学長を務めている。


 

アスリート×ビジネスで社会課題の解決を目指す「TEAM FAIR PLAY」

──現在、廣瀬さんが取り組まれている「TEAM FAIR PLAY」について教えてください。

廣瀬:「TEAM FAIR PLAY」は、アスリートと企業が協業して社会課題の解決を目指すプロジェクトです。ルールを守って他者を尊重する、スポーツの「フェアプレイ」を、社会でも当たり前のこととして広めていきたいという想いから始まりました。環境問題や食、地方創生など幅広い領域に取り組んでいこうとしています。

──具体的には、今どのような活動をされているのでしょうか?
 
廣瀬:現在、「FAIR PLAY TALK」と題した動画企画に取り組んでいます。社会課題の解決に取り組む先駆者たちに僕が話を聞き、その動画をYouTubeで公開するというものです。

例えば先日は、産業廃棄物のリサイクルに取り組む石坂産業の石坂典子社長に、廃棄物の根本的な課題や、SDGsに取り組む企業の課題などを教えてもらいました。

石坂さんには、アスリートが直接話を聞きに来るのは珍しいと驚かれ、さらに2回目にお伺いしたときには、「普通は2回も来ないよ!」と笑われました(笑)。でも喜んでいただけて、その後のイベントにも呼んでくださり、新たなリレーションも生まれました。

廣瀬俊朗

他にも、フォーブスが選ぶ“アメリカで自力で成功を収めた女性50名”に、日本人で唯一選ばれた起業家の久能祐子さんや、「東北風土マラソン&フェスティバル」の発起人・竹川隆司さんなどに、社会が求めるリーダー像や、東北復興のためにスポーツができることなどを聞きました。今後も定期的に動画を公開し、“地球のためにできるフェアプレイな活動”なども紹介していく予定です。「FAIR PLAY TALK」をきっかけに、次のアクションにつながるヒントが得られたり、活動が広がったりしていけばいいなと思っています。

皆さんとお話をしていて感じたのは、それぞれが「実現したい世界」のビジョンをきちんと持っているということ。熱い想いが伝わってきましたし、自分にはない発想を持っている人から学ぶことは多いと感じました。皆さん、それぞれの分野で今まで培ってきたことがあるので、そこに頼って力を借りながら、一緒に面白いことをやっていきたいです。

みんながそれぞれの役割を担いながら活動を進めていけると、まさにスポーツのチームみたいでいいですよね。そして活動をするときには、「楽しむ」ことも大切にしたいと考えています。周りの人を楽しませて巻き込んでいくためには、まずは自分たちがワクワクした気持ちで楽しまなければいけないですよね!

そのほか、現在はコロナ禍でなかなか進められていませんが、マルコメさんと一緒に食品ロス問題の解決に向けた取り組みを計画しています。「TEAM FAIR PLAY」は一緒に活動を推進する仲間を増やしていこうとしています。最初に仲間になってくれたのがマルコメさんだったんですね。具体的には、形が悪いという理由だけで廃棄される規格外野菜を使用して味噌汁をつくり、それをスポーツイベントなどでお客さんに食べてもらおうという企画です。

栄養満点で体にいい味噌の魅力や、地域ごとに味が異なる面白さも感じてもらえればと思っています。イベントでは、地域性を生かして「味噌汁対決」と題して食べ比べをしてみたり、同じく発酵食品である甘酒を使ったスイーツも一緒に提供してみたり……。面白いことができないか、いろいろ考えているところです。この取り組みを通して、食品ロスはもちろん、日本の文化についても、みんなで楽しみながら考え直すきっかけになればうれしいです。

──これからさらに活動が広がっていきそうですね。現在の活動の中で、廣瀬さんが難しいと感じることや課題はありますか?

廣瀬:「TEAM FAIR PLAY」を事業として続けていくための、マネタイズの仕組みができあがっていないところが課題だと感じています。お金もうけが目的ではないものの、「TEAM FAIR PLAY」の理念や想いだけで活動していては、事業を続けていくことはできません。そのため、お金をいただけるような仕事もやっていかなければならないのですが、そのバランスがとても難しいですね。

これは、SDGsや社会貢献活動に取り組む企業もきっと悩むところではないでしょうか。しかし今の時代、「お金もうけ」に寄ってしまったり、楽な道を選んだりしてしまうと、「本気で取り組んでいないんだな」とすぐに見抜かれてしまう。大変なところを乗り越えた先に、お金もついてきて回るようになっていくと思っています。

あとは「仕事」と「勉強」のバランスも難しいと感じていますね。例えば今はマルコメさんとの取り組みで「発酵」や「日本文化」に関することを学びたいと思っているのですが、仕事もしながら学ぶための時間を確保するのはなかなか厳しい。今もベストな塩梅を日々模索しているところです。

──それらの課題を乗り越えるために必要なことは何でしょうか?

廣瀬:何かのプロジェクトや活動を始めるとき、最初に考える目的の部分、「大義」がとても大切だと考えています。「TEAM FAIR PLAY」で言うと、「フェアプレイ」の精神を世の中全体に広げることが大義です。これが、チーム内できちんと共有されて、みんなが腹落ちした状態であれば、それを成し遂げるためにどうしたらいいのかをみんなが一番に考え、同じ方向へ進んでいくことができると思います。

リーダーシップやキャプテンシーを身につけるためには? 

──廣瀬さんは長年、さまざまなチームでキャプテンを経験されてきていますよね。廣瀬さんが考える「リーダーシップ」について、教えてください。

廣瀬:リーダーシップで大切なのは、自分が「どうありたいか」を考えて行動すること。「どうありたいか」を見つけるためには、さまざまな人と会ってコミュニケーションを取りながら、自分自身を知ることが必要不可欠です。自分の「軸」になる部分が見えてきたら、トライアンドエラーを繰り返しながら、その軸をより強固なものにしていくことが大事だと思います。

また、自分が動くことで周りの人も巻き込んでいけるとすごくいいですよね。自分がどうありたいかが定まらないまま、なんとなく「世の中の流れや常識的にはこうだから」と行動していては、周囲は「見栄でやっているんじゃないか」「本当はどう思っているんだろう?」と感じてしまうはず。揺らがない軸があることで、「この人についていきたい」「この人と一緒に何かやりたい」と思ってもらえるのではないでしょうか。

「リーダーシップ」というと、組織のリーダーになりたい人や上に立って引っ張っていきたい人だけに必要なものだと思われがちですが、そんなことはありません。二人一組であっても、相手に変化を与えることができれば、それはもう「リーダーシップを発揮している」と言えます。リーダーシップは、誰にとっても本当に身近なところにあるものなんです。

最近では、リーダーシップだけでなく「キャプテンシー」というアプローチからも、皆さんに何か伝えられることがあるのではと考えています。スポーツの場合、「キャプテン」は、監督とチームメイトの間をうまくつなぐことが求められるポジション。これって、上の立場と下の立場に挟まれながら仕事をする中間管理職や現場のプレイングマネージャーと同じだと思うんです。

その難しい立ち位置にいる人たちは、どうすればうまく仕事ができるのか。何を大切にすればいいのか。もしかしたら、僕自身が監督とチームメイトの間で両者の想いをうまく咀嚼しながらコミュニケーションするようにしてきた経験から、ヒントが見つかるのではないかと考えていて……。何か新しいことができるかもしれないと思い、今チャレンジしているところです。

──最終的に廣瀬さんが目指すもの、到達したいのは、どのようなところでしょうか?

廣瀬:最終的には、さまざまな取り組みを通して「自分自身がどう生きたいか」を考えてもらうきっかけをつくりたいと思っています。仕事でも趣味でもいいのですが、自分が好きなこと、これをやって生きていきたい、と思えることを見つけてもらえたらうれしいです。

そして、「今だけ良ければいい」と考えるのではなく、次世代の子どもたちや未来のことを考えてアクションを起こす人が増えてほしいなとも思っています。新しいことを学んだり、行動したりすることは億劫かもしれませんが、いろいろなことに飛び込んで体感するのは面白いということを、今後も伝えていきたいです。「TEAM FAIR PLAY」の仲間として一緒に活動頂ける企業や団体、個人の方などは、ぜひ連絡いただけますと幸いです。

TeamSDGs

TeamSDGsは、SDGsに関わるさまざまなステークホルダーと連携し、SDGsに対する情報発信、ソリューションの企画・開発などを行っています。

TeamSDGsのウェブサイトでは、ウェブ電通報とは違う切り口で廣瀬さんのインタビューを紹介。コロナ禍の学生アスリートを支援するプロジェクト「#スポーツを止めるな 」について、さらにはさまざまな社会貢献活動を行う中で意識されていることをお伝えしています。ぜひご一読ください。

【参加者募集】「朝日地球会議2021 ~希望と行動が世界を変える~」 

朝日新聞社は、10月17日(日)~21日(木)の5日間にわたり、国際シンポジウム「朝日地球会議2021」をオンラインで開催する。 
今年は「希望と行動が世界を変える」をメインテーマに、一般の来場者を会場に招かず、オンライン配信のみのイベントとなる。  
登壇者・プログラムの詳細や最新情報、視聴申し込みは公式サイトから。 

<主催>朝日新聞社 <共催>テレビ朝日
<特別協賛>旭硝子財団、アデランス、イオン環境財団、サントリーホールディングス、JT、台湾貿易センター
<協賛>住友林業
<特別協力>帝国ホテル、テレビ朝日映像
<協力>グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン、日本マーケティング協会、朝日学生新聞社、CNET Japan、ハフポスト日本版
<特別共催>国際交流基金日米センター、東京大学未来ビジョン研究センター
<後援>文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省 

「朝日地球会議2021 ~希望と行動が世界を変える~」開催告知

■主なセッションのテーマと登壇予定者(敬称略) 

【10月17日(日)】
◇「のんさんと学ぶSDGs」
のん女優・創作あーちすと)
◇「ポストコロナ時代の人類と社会~いま考える『新しい知』」
マイケル・サンデル(米ハーバード大教授)/福岡伸一(生物学者)/長野智子(キャスター)*特別共催:国際交流基金日米センター
◇「宇宙探査と開発、未来のあり方はー」
津田雄一 (はやぶさ2プロジェクトマネージャ)ほか
◇「子どもたちに残したい 私たちの家『地球』」
市川海老蔵(歌舞伎俳優)/あん・まくどなるど(上智大大学院教授)/沖大幹(水文学者)

【10月18日(月)】
◇「気候安全保障と地政学」
亀山康子(国立環境研究所社会システム領域長)ほか
◇「せめて宇宙は始めから」
岡田光信(アストロスケールホールディングスCEO)/篠原ともえ(デザイナー・アーティスト)/藤嶋昭(東京理科大栄誉教授)ほか
◇「新型コロナで逼迫した日本の医療を考える」
忽那賢志(大阪大大学院教授)ほか

【10月19日(火)】
◇「今、民主主義を一から考える」
コリン・ウッダード(米歴史家)/宇野重規(東大教授)
◇「生き抜くためのシスターフッド 女性と政治の今と未来」
ブレイディみかこ(ライター)
◇公開授業「デジタルネイチャー わたしって何?」
落合陽一(ピクシーダストテクノロジーズCEO)ほか

【10月20日(水)】
◇「アメリカはどこへ向かうのか」

町山智浩(映画評論家)/能町みね子(文筆業)
◇「気候変動だけじゃない!」
高村ゆかり(東大教授)ほか *特別共催:東京大学未来ビジョン研究センター
◇「台湾、デジタル、民主主義」
オードリー・タン(台湾デジタル担当政務委員)

【10月21日(木)】
◇「コロナ禍と文明」

五箇公一(国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室長)ほか
◇「大阪・関西万博 未来社会どう描く」
堺井啓公(2025年日本国際博覧会協会広報戦略局長)ほか
◇「日本経済の新陳代謝」
南場智子(DeNA代表取締役会長・経団連副会長)ほか
◇「『未来』に愛こそ注ごう 少しでもマシな世界のために」
安宅和人(慶大教授)/能條桃子(NO YOUTH NO JAPANN代表理事)ほか

元JRA藤田伸二氏「ユタカさんにはがっかり」、メイケイエール池添謙一にアドバイスしたスプリンターズS(G1)の大胆作戦の内容とは

 10月3日、中山競馬場では第55回スプリンターズS(G1)が行われる。注目は近年屈指のハイレベル世代と呼び声が高い3歳馬だ。

 古馬との混合戦が始まった6月以降、オールアットワンス、ヨカヨカ、そしてレイハリアの牝馬3頭が1200m以下の短距離レースを勝利。斤量に恵まれた部分もあったが、古馬牡馬相手に世代レベルの高さを見せつけた。

 しかし、今週末のスプリンターズSでその3頭の姿を見ることはない。

 ヨカヨカは本番を前に故障を発生。競走能力喪失と診断され引退。オールアットワンスとレイハリアは特別登録もせず、結局3歳馬の出走はピクシーナイトとメイケイエール(牝3歳、栗東・武英智厩舎)の2頭だけになりそうだ。

「どんな競馬を見せてくれるのか」という点でより注目度が高いのはメイケイエールの方だろう。

 デビューからその類い希なるスピードを生かし、重賞を3勝した一方で、前向きすぎる気性が災いし、特に近2走では鞍上の制御が利かず、直線で失速するという残念な競馬が続いている。

 今回は武豊騎手から池添謙一騎手に乗り替わりとなるが、気の向くままに逃がすのか。それとも無理にでも抑え込んで末脚に懸けるのか。その戦法に注目が集まっている。

 武英調教師は『東京スポーツ』の取材に「馬の後ろで我慢が利いた時は結果が出ていますからね。池添騎手も我慢の利くジョッキーなので、そのあたりで良さを生かしてほしいと思っています」と答えており、どうやら陣営の腹はある程度決まっているようだ。

 そんなメイケイエールを独自の視点で切り込んだのは、JRA通算1918勝を誇る元騎手の藤田伸二氏だ。

 藤田氏は今月24日に自身のYouTubeチャンネルで「雑談しようぜ‼」と題して生配信を敢行。特にテーマを定めず、視聴者からの質問などにも答える形で約1時間にわたって語り尽くした。

 その配信中、ある視聴者からメイケイエールと池添騎手の新コンビついての感想を問われた藤田氏。「面白いと思うよ」と即座に反応すると、前走7着に敗れたキーンランドC(G3)での走りをこう振り返った。

「スプリンターを目指すなら、やっぱり前回(キーンランドC)はドンケツから行ってほしかった。ユタカさん(武豊騎手)がハナ行ってしまったのはがっかりだったな」

 藤田氏は前走で制御を諦め逃げの手に出た武騎手をやんわりディスると、「(メイケイエールが)行きたがっても無理してでも抑えて、上がりの3ハロンでどれくらいの脚を使えるのか。距離は違えど、(池添騎手は)デュランダルのイメージで乗るんじゃないかな」と、強烈な末脚を武器に池添騎手とのコンビでG1を3勝した名短距離馬の名前を挙げ、後輩の心中を推測した。

 さらに、「後ろから残り600mまで我慢して、そこから大外ブン回してどれくらいの脚を使えるか。そうしたら次のレースにつながると思う」と、後方待機はあくまでも今後につなげるための策だと断じた。

「現在は競馬界から距離を置いている藤田氏ですから、いつも通りざっくばらんに思ったことを口にしていました。キーンランドCで武騎手が逃げたのはある程度仕方がなかったと思います。1番人気で結果を残さないといけない立場でしたし……。

ただ藤田氏の指摘通り、スプリンターズSを見据えていたのなら、道中ケンカをしてでも我慢する競馬を試しておくべきだったかもしれません」(競馬誌ライター)

 代打騎乗には定評がある池添騎手。今回は人気が落ちてある程度気楽な立場で臨めるだろう。果たして「デュランダルのイメージ」で直線突き抜けるシーンを演出することはできるだろうか。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

化学メーカー最大手の名門企業・三菱ケミカルHDが重視する「ゆでガエル理論」

 三菱ケミカルホールディングス(HD)は同社初の外国人社長、ジョンマーク・ギルソン氏(57)が誕生して2カ月あまりが経過した。株主総会でのギルソン氏の賛成比率は98.53%。同氏は株主総会で「低炭素経済は化学企業が直面する最大の課題であると同時に、大きな機会だ」と語った。自身のリーダーとしての役割について「事業ポートフォリオのなかに、常に成長産業と、その資金源となる大規模な高収益事業をうまく組み合わせていくことだ」と説明。30もの市場や製品セグメントに分かれる事業の「選択と集中」を進めると述べた。

 指名委員会の橋本孝之委員長(日本IBM元会長)はギルソン氏を社長に選んだ理由を問われ、「事業環境の変化が加速している。過去の延長に未来はない」と指摘。「これまでの延長線上ではない経営が必要になると考えてトップを選定し、その条件に合致したのがギルソン氏だった」と答えた。

初の外国人社長は社外取締役が主導した

 国内最大手の総合化学メーカーである三菱ケミカルHDは異例ともいえる人事に踏み切った。21年4月1日付で越智仁社長が退任し、ベルギー出身のギルソン氏が後任に就くという人事を発表したのは2020年の秋だった。社外から外国人のトップを招聘するのは初めて。三菱ケミカルHDは90年近い歴史を持つ名門。三菱重工業など三菱系企業が集まる「金曜会」でも中核企業である。経営状態に大きな問題があるわけではない。だから今回の人事は産業界で大きな話題を呼んだ。

 新社長の選考を主導したのは社外取締役だ。指名委員会5人のうち4人は社外取締役である。三菱ケミカルHDは2015年、指名委員会等設置会社に移行した。最高実力者の小林喜光会長が「社内の人間だけでは従来の会社の姿に固執してしまう」との思いを強めたのがきっかけだった。「日本の社会に忍び寄る危機への対応が遅れると“ゆでガエル”になってしまう」というのが小林氏の持論だ。

 ギルソン氏は欧米の化学メーカーで事業責任者や経営トップを歴任してきた。直近までフランスの化学メーカー、ロケット社でCEO(最高経営責任者)を務めていた。三菱ケミカルHDのトップとなったギルソン氏の初仕事は1000億円強を投じ、米国に自動車や塗料に使う樹脂原料の工場を建てることだ。4割の世界シェアを持つアクリル樹脂原料「MMA」を米国で増産する。車のランプカバーや看板、住宅建材などに使われる汎用性の高い樹脂である。バイデン政権が打ち出した「バイ・アメリカン」の強化策をにらみ、米国市場へのシフトを強めた。

外国人社長の光と影

 外国人社長は日本の上場企業ではほんの一握りだ。日本的慣行や社内のしがらみにとらわれない大胆な経営改革が実行できると、期待されることが多い。だが、外国人社長には光と影がつきまとう。日産自動車の再建に辣腕をふるい、カリスマ経営者として名を馳せたカルロス・ゴーン元会長は、会社法違反(特別背任罪)などで起訴され、保釈中にレバノンに逃亡した。

 武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長CEOは19年1月、日本企業のM&Aとして過去最大の約6.2兆円を投じアイルランド製薬大手シャイアーを買収し、世界トップ10入りを果たした。医療用医薬品事業に経営資源を集中する一方、大衆薬事業を米ファンドに売却するなど、事業の入れ替えを積極的に進めている。三菱ケミカルHDのギルソン氏も事業の「選択と集中」を進めると明言している。

(文=編集部)

「新しいふつう」をつくる。広告の枠を超えた、サントリーの取り組みとは?

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center(FCC)」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティ」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

クリエイターの領域が拡張しています。広告コミュニケーションを超えて、新事業の立ち上げや社会課題の解決といった幅広い領域に携わるケースが増えているのです。

サントリーが行ったプロジェクトでも、広告の枠を超えたアイデアが世の中に届けられたケースが出ています。サントリー天然水が防災継承プロジェクトとして公開した「3.11あの日、助けてくれたものリスト」や、コロナ禍の家飲みをハレにする、旅をテーマにしたミールキットサービス「table trip」はその代表。

これらのプロジェクトや新事業には、電通FCCのクリイターが参加。そこで今回、サントリーコミュニケーションズ宣伝部・岡ゆかり氏と谷口彩香氏、電通FCCメンバーの小野総一氏(クリエーティブディレクター/ストラテジスト)が、プロジェクトの振り返りとクリエイティブの領域拡張について語り合いました。

岡氏、谷口氏、小野氏
※この取材は、オンラインで行われました。

「若年層のお酒離れ」を解決するために、遺伝子から誕生したグラス

岡:小野さんと初めてお会いしたのは、2017年にローンチした「DNA GLASS 」のときでした。ローンチまで1年半ほどかかっているので、2015年頃ですかね。このときはクリエイティブ表現だけにとどまらず、 ストラテジーや事業開発も含めてトータルでコミュニケーションデザインできる方として小野さんをご紹介いただいたんですよね。

谷口:私たちは、普段は飲料やお酒のブランドコミュニケーションやコーポレートの広告を担当していて、それぞれのブランドの目的に沿って広告制作をしています。しかしDNA GLASSを作るときは、成果物のゴールを決めず、「若年層のお酒離れ」という大きな課題に対してサントリーで何かできないかを小野さんと考え始めました。

小野:そうですね。その課題に対して、広告の外側にやれることがあるかもと作ったのがDNA GLASSでした。これは、一人一人のDNA情報をもとに作られるビールグラスで、いわば自分だけのグラスです。

人がお酒を飲める量や麦芽の感受性は遺伝子レベルで決まっているという話があり、「それなら一人一人の遺伝子にもとづいた、自分だけの世界一おいしくビールが飲めるグラスを作ったら面白いのでは」と考えたのがきっかけです。僕は全然お酒を飲めないのですが、そういう人はすごく小さなグラスができたり、岡さんと谷口さんはすごく大きなグラスになったり(笑)。

DNAからグラスを造形するのはサントリーも電通も初めてのことなので、その技術を持つ企業や3Dプリンターでグラスを造形できる企業を探すところから始めて、1年半ほどかかりましたね。その間に皆さんとお酒を飲んだり話したりする中で、僕自身どんなことで貢献できるかをお伝えしていきました。

DNA GLASS_1

DNA GLASS_2

サントリー天然水が、なぜ防災プロジェクトを行うことになったのか

谷口:このDNA GLASSがきっかけで、のちの「3.11あの日、助けてくれたものリスト」につながっていきましたよね。小野さんが広告を超えた解決策を出すのを見る中で、私たちも、広告だけではない手法で世の中にすべきことがあるなと感じてきて。

今までのように、ブランドの課題や「この商品を売りたい」という気持ちを起点に考えるのではなく、世の中の課題を起点にして、サントリーができることは何かを考える。それをクリエイターの方とワンテーブルで一緒に模索したいと思い始めて。その話を小野さんにしたら「いいっすね」と言ってくれて(笑)。

岡:サントリー天然水は「水」という性質上、生命に直結するものであり、清涼飲料水No.1ブランドとしても社会インフラの役割を果たす責任があると考えています。特に災害時には重要な存在になり得るなと。だからこそ、東日本大震災から10年のタイミングで、サントリーとしてすべきことを考えたのが始まりでした。

小野:僕も含め、防災用の備蓄が大切だとはわかっているのですが、なかなか行動に移せないものです。一方、実際に被災を経験した方に話を聞くと、自分が被災しているからこそ、被災未経験の方に備蓄の大切さを伝えたいという思いがありました。

そこで、被災者の方に話を伺いながら、震災時に自分たちを助けてくれたものをリスト化していこうと。防災グッズや備蓄品の情報は数多くありますが、なかなか人は動かない。ただ、被災者が実際に救われたもの、あって良かったものなら興味も湧くと思ったのです。

岡:小野さんには天然水の事業戦略にも携わってもらっていて、そのひとつとして出てきたアイデアです。大切なのは、天然水を売るための広告活動ではなく、社会課題へのブランドアクションとして防災情報を発信しようと。被災時に何が支えになるかを共に考えることに意味がありますし、そのアクションをサントリー天然水が推し進めることで、結果的に世の中に必要とされ、信頼していただけるブランドになりたいと考えました。DNA GLASSの発売から4年以上たった2021年の3月に「3.11あの日、助けてくれたものリスト」を公開しました。

「3.11あの日、助けてくれたものリスト」_1
小野:プロジェクトでは、400人以上の被災者のリストを新聞やウェブサイトに掲載。ムービーなども作りました。当時9歳だったある男性は、被災時に家族でやったトランプが鮮明に記憶に残っていると話していて。一人一人の支えになったものは違うので、教科書的に「これを備蓄しよう」と勧めるのではなく、各々の多種多様なリストを見て、自分なら何が必要か考えるきっかけを作れたのが良かったと思います。

「3.11あの日、助けてくれたものリスト」_2

家飲みをハレの場にし、旅体験そのものを新しくする「table trip」

谷口:2021年8月にスタートした新サービス「table trip」も、小野さんと作ったものです。コロナ禍で家飲みが増えていますが、その家飲みを“ハレ”の場にできないかという課題から始まりました。小野さんが話していたのは、家飲みと外飲みの違いは「非日常が存在するかどうか」ではないかと。家飲みをハレの場にするには、本来、家の外にある想定外の非日常を持ち込むことがカギになると話していて。その視点が腑(ふ)に落ちました。

table trip_1

小野:家の中をハレにしたいというのは、コロナ禍における社会課題といえます。それをサントリーのバリューでどう解決するか考えたときにtable tripが生まれました。

谷口:table tripは、世界各国の料理(ミールキット)とお酒、さらに現地の景色や文化を感じられる本「トリップブック」を一緒に届ける新サービスです。サントリーも電通もミールキット事業は初めてで、しかも今回はブックの製作もあり、雑誌「ELLE gourmet」をはじめ複数社が力を合わせて生まれました。各社の個性や力を融合させて家中の「ハレ」を作り上げたような、合わせ技一本のサービスになったかなと思っています。

小野:家の中で旅の感覚を少しでも味わったり、ミールキットも定番の海外料理だけでなく、現地の家庭で食べられている料理を用意したり。旅に行けない気持ちを晴らすサービスは、コロナ禍においてたくさん生まれ、ニーズもあると思いますが、その中でも、ご自宅での食を通じて、かつて旅行で訪れた国を思い出す、あるいは、これから旅に行く場所のガイドブックの形として食べる。そんな、旅体験の拡張という時流に添ったものでもあります。

table trip_2

「新しいふつう」をつくるためには、手段を広告領域に限定しない

谷口:小野さんと仕事をしていると、プロジェクトが進行するうちに“増幅”していく感覚が楽しいですね。通常、企画を進めるといろいろなハードルが出て縮小することがありますが、小野さんとの仕事は、ハードルを回避するより、もっと大きな視点で見て、まったく違う分野で解決方法を提案いただくことがあります。広告を超えてさまざまな領域でプロジェクトが広がっていきますよね。

サントリーは広告コミュニケーションを得意にしてきた会社だと思いますが、そこから拡張することも求められています。複層的にアンテナを張って考える時代になっていて、広告に特化しないクリエイターの方は今後頼もしい存在になると思います。

小野:僕は10年間ストラテジストをやって、その後10年ほどクリエイティブにいるので、クリエイティブ一筋の人に比べると専門性や得意領域がないと思っています。その分、広告に限定せず、本当に必要な解決策を選ぼうという気持ちは強く、フラットに手段を選択することは意識しています。

岡:これからの時代、コロナも環境問題も含め、大きく難しい課題がある中で、今までの延長線上で企業活動を行ってもなかなか未来は見通せません。その中では、新しい視点が大切になると思います。ただ、新しい視点を一人・一社で出すには限界がある。どうしても自分たちの会社の視点から抜け出せませんから。その点、今回のように、小野さんと私たちが同じテーブルで共にじっくり考えられたのはよかったですね。

小野:本当にそう思います。日本にはたくさんの「変えるべきふつう」があって、それを「新しいふつう」に変えていくのが、僕個人やFCCの目標でもあります。かつて広告全盛の時代は、広告だけでそれを解決しようとしていたかもしれません。ただ、広告以外でもできることはあるし、企業と伴走型で一緒に行えれば、最終的に生活者の企業に対する印象が変わり、売上にも貢献できるでしょう。そんな思いで、これからも「新しいふつう」をつくっていきたいと思います。

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食料自給率37%の日本、輸入が途絶えた場合の「一日の食事の献立」が衝撃的

 政府は2020年の食料自給率(カロリーベース)が過去最低の37%であったと公表した。食料自給率が減少した原因として、政府は「米の需要が長期的に減少していること、小麦が特に作柄が良かった前年に比べて単収が減少したこと」を挙げている。いずれにせよ、これで30年には食料自給率45%に引き上げるという政府目標の達成は困難になってきているといえる。

 日本の食料自給率の世界的な位置はどうなのか、主要先進国で見てみると、各国のデーターが揃っている18年で比べると、トップはカナダ266%で以下、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、スペイン100%、ドイツ86%、イギリス65%、オランダ65%、スウェーデン63%、イタリア60%、スイス51%、韓国35%で、日本は韓国をやっと上回る37%と、主要先進国では最下位に次ぐ位置となっている。韓国はこれまで日本を上回っていたが、米韓FTAを締結してから自給率が急速に低下している。

 カロリーベースの食料自給率は、私たちが食事を通じて摂取するカロリーの自給率を意味している。例えば、国産牛肉や国産豚肉を食べたとしても、その牛や豚が餌としている飼料がすべて輸入飼料に依存したとすると、摂取カロリー自給率は0カロリーとなる。日本の飼料自給率は25%と飼料の4分3を輸入飼料に依存しているため、牛肉の自給率は9%、豚肉6%、鶏肉8%、鶏卵12%、牛乳・乳製品26%となる。これは、輸入飼料の輸入が途絶したら、日本の畜産酪農生産は家畜に餌を与えることができず、たとえば牛肉生産は現状の9%の水準になるということを意味している。

 政府が2003年に発表した「不測時の食料安全保障マニュアル」では、日本で食料輸入が途絶した場合、私たちの食卓がどうなるかを例示している。生きていくために必要な1日当たりの摂取カロリーは2020キロカロリーといわれているが、食料輸入が途絶した場合、そのカロリー量を供給する食事メニューは次のようになっている。

・朝食:茶碗1杯のご飯、蒸しジャガイモ2個、糠漬け1皿

・昼食:焼き芋2本、蒸しジャガイモ1個、りんご4分の1個

・夕食:茶碗1杯のご飯、焼き芋1本、焼き魚1切れ

・その他:2日に1回1杯のうどんと味噌汁、3日に1回2パックの納豆、6日に1回コップ1杯の牛乳。7日に1回1個の卵、9日に1回108グラムの食肉

 食事は、ご飯、ジャガイモ、焼き芋主体で、食肉は9日に1回、それも108グラムしか食べることができない。

地球温暖化と農業生産

 今、政府が2003年に「不測時の食料安全保障マニュアル」で描いた食料輸入途絶の危機が迫っているともいえる。それが地球温暖化による食料生産への影響である。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は8月9日、第5次報告書以降8年ぶりに第6次評価報告書と第1作業部会報告書の概要を公表し、世界に大きな衝撃を与えた。

 報告書は、地球温暖化の原因を人間の影響と断定し、これまでの予想より10年早く、世界の気温上昇が21〜40年に1.5℃に達するとの予測を明らかにした。また、報告書は地球温暖化の脅威の実態を新たに明らかにした。

・もっとも暑い日、気温がもっとも上昇するのは一部の中緯度帯、半乾燥地域および南米モンスーン地域で、地球温暖化の約1.5〜2倍の速度になる

・熱波と干ばつの同時発生、火災の発生しやすい気象条件(高音、乾燥、強風)、複合的な洪水(極端な降雨や河川氾濫と高潮の組み合わせ)

・温暖化した気候では、極端な雨期又は乾期、並びに気象の極端現象の深刻さが増大。世界規模では、地球温暖化が1℃進行するごとに極端な日降水量の強度が約7%上昇

 これらが世界の農業生産に深刻な打撃を与えることは、論を待たない。今年、熱波でカナダとアメリカで小麦生産が減少し、その影響で今、日本の小麦価格が上がっている。今後さらに深刻な影響が日本を襲うことになるであろう。

(文=小倉正行/フリーライター)

●小倉正行

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。

主な著書に、『よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答』『輸入大国日本変貌する食品検疫』『イラスト版これでわかる輸入食品の話』『これでわかる TPP 問題一問一答』(以上、合同出版)、『多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴』『放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る』(以上、新日本出版)、『輸入食品の真実 別冊宝島』『TPP は国を滅ぼす』(以上、宝島社)他、論文多数。

【江川紹子の提言】ウィシュマさん死亡、強制送還「違憲」判決…入管行政の改革が必要だ

人権意識に乏しい日本の入管行政

 日本の入管行政のあり方が問われる出来事が相次いでいる。

 名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが、適切な医療を受けられず、33歳の若さで死亡した事件では、その後の遺族への対応も含め、当局の人権感覚への信頼は地に落ちた。

 また9月15日、大阪出入国在留管理局に、2017年に収容されていた日系ペルー人の男性が、職員の暴行で腕を骨折したとして国に損害賠償を求めた裁判では、国側が所内の監視カメラ映像を提出。そこには、後ろ手に手錠をかけられたまま床に横たわっている男性が、職員5人に押さえつけられたり、14時間にわたって放置されたりする場面が映っていた。

 代理人が映像の一部を公表し、それを見た多くの人が衝撃を受けた。

 さらに9月22日、スリランカ人の男性2人が、難民不認定の処分を通知された翌日に強制送還されたため、処分取り消しの裁判を起こせなかったと訴えていた件で、東京高裁は、出入国在留管理庁の対応は「憲法32条で保障する裁判を受ける権利を侵害した」として、原告逆転勝訴の判決を出した。

 2人はいずれも不法残留として警察に逮捕され、検察の起訴猶予処分を受けて、東京入管収容場に収容された。難民申請を行ったが不認定となり、異議申立の行政手続きを行っている最中に仮放免となった。異議申立は棄却となったが、入管当局は40日以上もそれを伝えなかった。仮放免延長の手続きで2人が訪れた機会にも伝えていない。そして、2014年12月17日、仮放免延長のために出頭した2人に、延長不許可を伝えて再収容し、異議申立の棄却を伝え、翌日のチャーター便による一斉強制送還で帰国させた。

 難民不認定に対しては、行政手続きとしての異議申立のほか、処分取り消しを求める裁判を起こす司法手続きがとれる。2人は裁判を起こす意思を示し、1人は担当弁護士との連絡を要求した。入管職員は、弁護士に電話をすることは許したが、弁護士は事務所に不在で連絡がとれなかった。入管が弁護士との連絡を認めたのはわずか30分間で、その後は携帯電話を取り上げ、連絡をさせなかった。

 憲法第32条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と明記している。判決は、それに加えて、国の行為は適正手続きの保障を定めた憲法第31条などにも違反していると断じた。

 こうした出来事からは、当局が不法残留と認定した外国人は、とにかく早く追い返すことばかり一生懸命で、その人権には頓着しない入管行政のありようが浮かんでくる。

被収容者への人権侵害によって日本のお粗末な人権状況が海外に知れわたり、国益を損なうのでは

 入管行政を担う出入国在留管理庁は法務省の外局だが、法律が定める同省の所管事務は、「人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関すること」など、39項目のうち4項目が「人権」にかかわる仕事だ。その所轄下にある、入管庁職員の人権意識が相当に危ういといわざるをえない。

 東京高裁の違憲判決を受けて、上川陽子法相は「対象となる外国人の人権を尊重し、適正手続きを順守した運用の徹底に取り組んでいきたい」と述べ、難民不認定の場合は、「送還は告知から2カ月以上してから」とする内部通知を出したことを明らかにした。

 しかし、そのような弥縫策で済むような問題ではないだろう。

 入管行政を巡る問題の根本にあるのは、その不透明さではないか。難民認定や非正規在留者への在留特別許可、仮放免の可否の判断など、権限は大きいのに、その基準は明確でなく、曖昧なまま絶大な裁量権を当局が握る。そのうえ、プロセスや職員の言動に問題が疑われても、外部の目が入らず、事実が十分明らかにならない。

 ウィシュマさんの件で、遺族が真相を知りたいとして公文書の開示を求めたのに対し、名古屋入管が開示した行政文書1万5113枚のほとんどが黒塗りされていたことは、入管行政の不透明さを象徴的に示している。

 出入国在留管理庁は、ウィシュマさんが収容中の監視カメラ映像の一部を遺族(妹2人)が視聴することは認めたものの、代理人の同席は認めなかった。病気で苦しんでいる姉が職員から粗雑に扱われる様子を見て、妹2人は衝撃を受けたため、視聴は途中で中断したままになっている。代理人による視聴や付き添いを許さない同庁の対応は、人道をひどく外れたものといわざるをえない。

 同庁は、ウィシュマさんの死について、内部で検証を行い、最終報告書を公表したが、これも十分なものとはいえない。明らかに体調が悪化し、本人から訴えがあったのに、誰もまともに取り合わなかったのはなぜなのか、という一番大事な点も疑問が残ったままだ。遺族は到底納得できないだろうし、ことの詳細が明らかにならなければ、有効な対策も打てないのではないか。

 今の状況は、被収容者にとって深刻な問題であるに留まらない。日本の国のお粗末な人権状況が海外にも知られ、大いに国益を損なっている、というべきだろう。

 ただ、一連のことを、個々の職員だけの責任に帰するのは適切ではないだろう。国が、難民を受け入れようとせず、「技能実習」の名目で外国人を“安い労働力”として搾取する制度を続け、不法残留となった外国人は徹底して帰国させる方針を示している中で、現場の職員の労働状況や精神状態に、どのような影響を及ぼしているかも吟味する必要があるのではないか。

外部有識者会議を設置し、入管行政の改革や入管法改正の方向性も議論せよ

 そこで、提案がある。

 2003年に刑務所改革の提言をまとめた行刑改革会議のような外部有識者らによる会議を作り、入管行政の実態と人権にかかわる事柄について真相を検証し、問題の所在を分析し、改善策を提言するようにしたらどうか。

 行刑改革会議は、2001~02年にかけて、名古屋刑務所で刑務官の行為によって受刑者が死傷する事件が相次いだことを受けて、法務大臣の私的諮問機関として発足した。弁護士や大学教授などの専門家のほか、メディア関係者、作家などもメンバーとなり、法務当局には日頃、批判的な人も含まれた。私も委員を務めた。

 8カ月に10回の全体会のほか、3つの分科会をそれぞれ8~9回開き、国内外の刑務所の視察を重ね、元受刑者や刑務官へのヒアリング、受刑者と刑務官双方へのアンケートなどさまざまな形で調査活動を行った。委員が行いたいと提案した調査が、法務省によって拒まれることはなかったように記憶している。

 提言は、受刑者の処遇だけでなく、刑務所の透明性確保に力点を置いた。刑務所医療や刑務官ら職員の働き方の改善など多岐に及び、明治時代から続いていた監獄法の改正も求めた。これを受けて、法務省はさまざまな改革を行い、法律も現在の「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(刑事収容施設法)へと改められた。

 その結果、各刑事施設に民間人からなる視察委員会を設置したり、被収容者の不服申立制度もできるなど、透明性はかなり改善した。かつては閉鎖的でメディアの取材に応じることはめったになかった刑務所にも、テレビのカメラが入り、受刑者のプライバシーに配慮しながら、インタビューも行えるようになった。

 職員の厳しい労働環境や受刑者の高齢化など困難な問題が社会に伝わり、受刑者の更生プログラムに、外部の専門家が直接関与することも増えている。透明性が高まることは、職員らにとっても悪いことではない、という認識も深まっていったのではないだろうか。改善を進めるには、外部から押しつけるだけでなく、関係者の納得も大事だ。

 それでも、刑務所や拘置所を巡っては、さまざまな課題はあり、個別に問題が発生することもある。さらなる改善が必要なのは言を俟たないが、20年前とは、そのありようは大きく変わっている。

 入管行政を巡っては、法務省は入管施設での長期収容の解消を掲げ、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正を急いだ。しかし、裁判所の関与も収容期間の上限もない不透明な収容手続きが放置されるなど、さまざまな問題点が指摘されたうえ、ウィシュマさんの事件が明らかになって、先の通常国会での採決は見送られ、事実上の廃案となった。

 行刑改革会議と同様、入管に関する有識者会議の議論のなかで、法改正の方向性も議論し、それを踏まえて新たな法改正を目指せばいいのではないか。

 その不透明さを改善するためには、まずは外部の目で現状を検証し、一般の人権感覚をもって、改善策を検討することだ。

(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か – 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。
江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

20歳でマルチ商法、月収100万超えるが……借金700万円に転落! 『マルチの子』作者がアノ世界の“表と裏”、明かします

 サイゾーウーマンとWEZZYが合同でトークイベントを開催することになりました!

 今回はゲストとして、マルチ商法にハマった女性を描く話題のサスペンス小説『マルチの子』(徳間書店)の著者・西尾潤さんが登場。自身もマルチ商法にハマり、月収150万円を稼いだ一方、700万円もの借金を背負ったという西尾さんに、マルチのオモテとウラをいろいろ聞いちゃいます。

 また、会場では西尾さんによるマルチ勧誘の実演も。手強い勧誘を断る方法や、マルチに誘われやすい人の特徴など、“護身術”として知っておきたいことも聞けちゃいます。ご興味ある方は、ぜひお越しください。

■「呪われ注意報」マルチの“表と裏”、明かします

開催日:10月3日(日)
時間:15時開演(14時半開場)/17時終演予定
場所:LIVE STUDIO LODGE(ライブスタジオ・ロッジ) 東京都渋谷区代々木1-30-1 代々木パークビルB1
料金:アーカイブ配信付き/1,800円、アーカイブ配信なし/1,300円(どちらもワンドリンク制)

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【ゲスト】
・西尾潤『マルチの子』(徳間書店)著者。小説家、ヘアメイク・スタイリスト。

【出演者】
・黒猫ドラネコ
:サイゾーウーマンで「スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコの“教祖様”注意報」連載中。怪しいスピリチュアルや自己啓発セミナーなどの監視と注意喚起を行う。

・山田ノジル:wezzyで「スピリチュアル百鬼夜行」を連載中。同連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。

【司会】
・三浦ゆえ
:フリー編集&ライター。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに取材、執筆活動を行う。

◉ 質問受付中!
 ゲストの西尾潤さん、出演者の山田ノジル氏、黒猫ドラネコ氏に直接聞いてみたい質問、疑問、身の上話まで、下記よりどしどしお寄せください!
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総裁選中に自民党が発表「河井夫妻の選挙買収に党本部の1億5000万円は使われず」の嘘! 誰が総裁になっても安倍の責任は闇に

 こんな幕引きが許されるはずがない。河井克行・元法相と河井案里・前参院議員が有罪となった2019年参院選における大規模買収事件で、自民党本部が投入した1億5000万円の選挙資金について、今月22日、自民党の柴山昌彦幹事長代理が会見をおこなって「(買収に)使った事実がない」と...