JRA菊花賞、10番人気以下で勝利したのはヒシミラクルただ1頭のみ、当時を振り返り異例の混戦レースを検証してみると…

●秋のG1レースは波乱続き

 秋華賞はソダシが出血のアクシデントもあり敗退と、まさかの波乱。スプリンターズS、秋華賞と秋のG1レースはともに1番人気が敗れており、あらためて競馬の難しさを認識させられた。今週行われる菊花賞は、かつてコントレイルやディープインパクト、オルフェーヴルといった断然の人気馬が圧巻の走りで勝利。人気馬が結果を出している傾向にあるが、1986年以降10番人気以下の勝利が1度だけある。それが関西馬のヒシミラクルだ。

 ヒシミラクルは682万円という低価格で落札されたように、父サッカーボーイというマイナーな血統からもさほど注目を集めていなかった。同じ年に行われたセレクトセールの最高落札額は1億9000万円であり、それと比較してもヒシミラクルの682万円は非常にお得だったのは間違いない。2歳8月のデビューから3歳5月の初勝利までなんと10戦。しかし5月26日に初勝利を挙げ、わずか5ヵ月後の菊花賞を勝利したのである。そして翌年には天皇賞(春)、宝塚記念も制し、G1を3勝、獲得賞金は5億円を超えたのだ。

 ヒシミラクルが勝利した2002年の菊花賞は、日本ダービー馬タニノギムレットやシンボリクリスエスといった世代トップの実力馬が不在で、1番人気が武豊騎手騎乗の皐月賞馬ノーリーズン、そしてアドマイヤマックス、メガスターダムといった馬が上位人気となる混戦模様。ヒシミラクルもトライアルの神戸新聞杯で6着に敗退し、出走権も賞金も足りない状態であった。しかし幸運にも抽選を突破して菊花賞の参戦が決まったが、重賞実績が乏しいこともあり10番人気の低評価だったのである。

 しかも同馬はクラシック登録がなかったため、追加登録金を払って出走している。それほどまでに、陣営は密かに自信を見せていたのだ。それは当時コンビを組んでいた角田晃一騎手の「とにかくスタミナがある。菊花賞も獲れる」というコメントからもわかる。菊花賞はそんな角田騎手の言葉を証明するようなレースだった。スタートで1番人気ノーリーズンがいきなり落馬。場内の喧騒をよそにヒシミラクルは後方待機で折り合い、スタンド前は動かない。しかし向こう正面に入って仕掛け、坂の登りから下りにかけてポジションを上げていき、第4コーナーでは早くも先頭に並びかける。道中ひたすら追われ続けながら、実際に脚は鈍ることなく伸び続けた。そしてゴール前で急追してきたファストタテヤマを振り切り、1着でフィニッシュ。1着ヒシミラクルは10番人気、2着ファストタテヤマは16番人気、そして3着メガスターダムは3番人気ですべて関西馬という組み合わせ。3連複は34万4630円の大波乱となり、当時は3連単が発売されていなかったが、仮に3連単があれば300万馬券となる可能性もあっただろう。

 それにしてもヒシミラクルに代表されるようにこの菊花賞は関西馬が強い。無敗で三冠を制したコントレイルやディープインパクトも関西馬であり、人気薄で勝利したキタサンブラックやビッグウィーク、スリーロールスなども関西馬だ。なぜこれほどまでに菊花賞は関西馬が強いのか。その秘密を探るべく、関西馬情報のスペシャリスト集団であるチェックメイトに話を聞いた。

●圧倒的な西高東低

――菊花賞と関西馬の成績は?

担当者 過去の優勝馬も上位好走馬も圧倒的に西高東低です。ここ10年に限定しても、関西馬が9勝し、2着も10頭すべてが関西馬。つまり過去10年で2着以内に好走した20頭中19頭が関西馬なのです。そして唯一関東馬が勝利したケースも、その馬(フィエールマン)の鞍上は関西所属騎手のC.ルメール。関西関係の組み合わせをすべて購入すれば、誰でも的中できるレースと言っても過言ではありません。しかしそれでは膨大な組み合わせとなってしまいます。そこからいかに不要な馬を排除し、買うべき馬のみに絞れるか、それがこの菊花賞を的中させるポイントでしょう。

――なぜ関西馬が強いのか?

担当者 今のJRAは強い馬、素質のある馬が関西馬に集中しやすい状況です。それは厩舎も厩務員も調教助手も騎手も、そして設備や様々な制度も、関東より関西の方が上と考えられているからです。もちろん関東にも優秀なスタッフはいますが、関西の方が圧倒的に多いというのが業界の認識。その結果、2020年は関西馬2005勝に対し関東馬は1459勝。今年も秋華賞が終了した時点で関西馬1615勝と関東馬1153勝。関西馬が圧倒的な結果を出しているのです。


――今年の菊花賞は?

担当者 ご存じのように皐月賞馬エフフォーリアと日本ダービー馬シャフリヤールが不在。一見すると混戦模様ですよね。しかも関東馬はアサマノイタズラ、タイトルホルダー、ヴァイスメテオール、グラティアス、オーソクレースなどが揃って関東馬にチャンスというイメージがあるかもしれません。対する関西馬はステラヴェローチェ、レッドジェネシスの2頭以外は、あまりパッとしない印象があるでしょう。しかしそこが盲点です。ある関西馬陣営から『賞金や実績では格下かもしれないが、長丁場の競馬なら決して見劣りしません。ここを目標に体調面もピークと言えるくらいなので、一発ありますよ』という勝負話を入手していますが、この馬の評価が急上昇しているのです。菊花賞は過去に多くの人気薄関西馬が激走してきたレース。今年はこの馬が、その激走穴馬になるのではないかと見ています。

――チェックメイトの実力は?

担当者 今年の日本ダービーでは関西馬の4番人気シャフリヤールを本命に指名し、9番人気3着ステラヴェローチェも穴馬に抜擢し、馬連だけでなく3連単5万8980円の万馬券を的中させました。秋華賞が行われた先週も、土日2日間で合計9本の万馬券を的中と好調です。この勢いで菊花賞も、そして『穴の関西馬情報』を入手している来週の天皇賞(秋)も仕留めますよ。

――菊花賞情報の提供はあるのか?

担当者 馬券で勝ちたい、本当の関係者情報を知りたいというファンの皆様へ向け、この『菊花賞で3連単勝負買い目情報を無料で公開』させていただきます。今まで体験したことのない真の関西馬情報を、ぜひ実感してください。


 チェックメイトがこれほどまでに関西馬情報に強いのは、彼らが本物の関西関係者だからだ。それは元JRA調教師で関西に所属していた清水久雄氏を筆頭に、伝説級の大物ばかり。彼らの人脈から入手される情報の価値は、どんなマスコミよりも高いといっても過言ではない。そのチェックメイトが破格の自信を見せる、菊花賞の人気薄穴馬が含まれる3連単勝負情報が、なんと無料で提供されるのだ。これは誰もが知るべき最重要情報である。また、先週無料で公開された10/16阪神12Rでは3連単3万2070円を的中している。来週の天皇賞に向けた資金稼ぎとしても、ぜひこの情報で勝負したい。
CLICK→無料公開!【菊花賞3連単勝負買い目!】チェックメイト

昭和電工、世紀の巨額買収、成果乏しく特損も…「のれん代」6千億円の重荷

 昭和電工は2022年1月4日付で高橋秀仁取締役常務執行役員(59)が社長に昇格する。20年に買収した連結子会社の昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)の社長も兼ねる。森川宏平社長(64)は代表権を持つ会長に就く。社長交代は5年ぶり。「経営トップの一本化と世代交代。昭和電工と昭和電工マテリアルズの統合の加速とグループとしてのスピーディーな経営を推進するため」とした。

 9月22日に開いたオンライン会見で、森川氏は高橋新社長を「グローバル企業で働いた経歴を持ち、論理力と決断力が高く、自社からは出ない人材だ」と高く評価した。高橋氏は「世界大手は優秀な若手を引き上げることに時間を割いている」と述べ、年代ごとに幹部候補を競わせながら人材の育成や登用に力を入れる方針を示した。

 高橋氏は1986年(昭和61年)東京大学経済学部卒、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。日本ゼネラルエレクトリックなど複数の外資系企業を経て、2015年に昭和電工に入社。17年1月、常務執行役員、同年、取締役常務執行役員。20年1月常務執行役員最高戦略責任者(CSO)に就き、9600億円を投じた旧日立化成の買収や、その後の事業整理を進めてきた。

 森川氏は17年1月に社長に就任した。東京大学工学部卒。昭和電工に入社以来、執行役員になるまで一貫して化学品の研究開発畑を歩んできた。20年ぶりの技術系社長だった。

日立化成を9600億円で買収

 日立化成へのTOB(株式公開買い付け)が成立し、20年4月28日付で連結子会社にした。日立グループの「御三家」の一つだった日立化成を昭和電工がM&A(買収・合併)したことになる。

 買収総額は素材分野のM&Aとして破格の約9600億円。昭和電工の時価総額(約3300億円)の3倍だったため「小が大をのむ買収」といわれた。日立化成の買収のために設立した特別目的会社、HCHDに、みずほ銀行がノンリコースローンで4000億円を融資。さらに同行と日本政策投資銀行が優先株を取得することで2750億円を出資した。買収主体となる昭和電工は、HCHDに普通株で2950億円出資。昭和電工の2019年12月期連結決算の営業利益1207億円の2.4倍にあたる巨額の出資だった。

 日立化成の買収によるのれん代の償却負担が重くのしかかる。のれん代(買収額と買収先の純資産の差額)、無形固定資産、持ち分投資の合計は6259億円(20年12月期時点)に達した。償却期間は最大20年間だから、年換算で313億円の償却負担となる。

 昭和電工は「3年後に年間200億円以上のコスト削減効果を見込める」(森川社長)としてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で業績への悪影響は不可避となった。猛烈な逆風下での買収となったわけだ。

 昭和電工が20年12月に公表した長期ビジョンで2000億円相当の事業の売却の方針を打ち出した。今年1月末にはアルミニウムの2事業(アルミ缶、高純度箔)を米投資ファンド、アポロ・グローバル・マネジメントに500億円で売却した。

 連結上場子会社である化学商社の昭光通商の株式を、丸紅系投資ファンドに譲渡した。昭光通商株式の44%を所有していたが、丸紅系のアイ・シグマ・キャピタルが運営するファンドのTOB(株式公開買い付け)に29%分を応募。15%を残すことで昭光通商との取引を継続する。

半導体への投資を拡大

 昭和電工マテリアルズの売り上げ、利益を20年第3四半期(7月~9月)の期首から取り込んだ。21年12月期は年間を通して寄与する。21年12月期の売上高は20年12月期比43.8%増の1兆4000億円。従来予想を550億円上方修正した。営業利益は850億円の黒字(前期は194億円の赤字)。170億円増やした。ナフサ価格の上昇を背景にエチレンなどの製品価格が上昇。黒鉛電極は電炉向けの需要が強く販売数量が上向いた。

 しかし、最終損益は250億円の赤字(同763億円の赤字)。これまでの予想を110億円引き下げ、赤字幅が広がる。事業売却に伴う評価損や昭和電工マテリアルズの資産の再評価で210億円の特損を計上するためだ。

 昭和電工マテリアルズ関連では鉛蓄電池事業やプリント配線事業などの売却を決めており、事業改善費用として150億円を特別損失として計上した。モビリティ事業でも固定資産の減損損失を35億円見積もっている。昭和電工のアルミニウム関連事業も譲渡し、25億円の譲渡損失が出る。事業整理にメドがついたことから、新規投資に踏み切る。

 9、10月に公募増資や追加売り出し(オーバーアロットメント)で最大で3519万株の新株を発行する。発行価格は1株2465円。発行済み株式数の2割強に相当する。手取り資金は概算で823億円。706億円を昭和電工マテリアルズの製造設備や再生医療の分野に充当する。

 25年12月期の売上高を20年12月比6割増の1兆6000億円、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を同6.4倍の3200億円に高める目標を掲げる。半導体関連に積極投資し収益拡大への道筋をつける。

 今後、旧日立化成の巨額買収の償却負担を吸収できるだけの収益を上げることができるかだ。外資系企業で経験が長い高橋新社長の経営手腕が問われる。

(文=編集部)

昭和電工、世紀の巨額買収、成果乏しく特損も…「のれん代」6千億円の重荷

 昭和電工は2022年1月4日付で高橋秀仁取締役常務執行役員(59)が社長に昇格する。20年に買収した連結子会社の昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)の社長も兼ねる。森川宏平社長(64)は代表権を持つ会長に就く。社長交代は5年ぶり。「経営トップの一本化と世代交代。昭和電工と昭和電工マテリアルズの統合の加速とグループとしてのスピーディーな経営を推進するため」とした。

 9月22日に開いたオンライン会見で、森川氏は高橋新社長を「グローバル企業で働いた経歴を持ち、論理力と決断力が高く、自社からは出ない人材だ」と高く評価した。高橋氏は「世界大手は優秀な若手を引き上げることに時間を割いている」と述べ、年代ごとに幹部候補を競わせながら人材の育成や登用に力を入れる方針を示した。

 高橋氏は1986年(昭和61年)東京大学経済学部卒、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。日本ゼネラルエレクトリックなど複数の外資系企業を経て、2015年に昭和電工に入社。17年1月、常務執行役員、同年、取締役常務執行役員。20年1月常務執行役員最高戦略責任者(CSO)に就き、9600億円を投じた旧日立化成の買収や、その後の事業整理を進めてきた。

 森川氏は17年1月に社長に就任した。東京大学工学部卒。昭和電工に入社以来、執行役員になるまで一貫して化学品の研究開発畑を歩んできた。20年ぶりの技術系社長だった。

日立化成を9600億円で買収

 日立化成へのTOB(株式公開買い付け)が成立し、20年4月28日付で連結子会社にした。日立グループの「御三家」の一つだった日立化成を昭和電工がM&A(買収・合併)したことになる。

 買収総額は素材分野のM&Aとして破格の約9600億円。昭和電工の時価総額(約3300億円)の3倍だったため「小が大をのむ買収」といわれた。日立化成の買収のために設立した特別目的会社、HCHDに、みずほ銀行がノンリコースローンで4000億円を融資。さらに同行と日本政策投資銀行が優先株を取得することで2750億円を出資した。買収主体となる昭和電工は、HCHDに普通株で2950億円出資。昭和電工の2019年12月期連結決算の営業利益1207億円の2.4倍にあたる巨額の出資だった。

 日立化成の買収によるのれん代の償却負担が重くのしかかる。のれん代(買収額と買収先の純資産の差額)、無形固定資産、持ち分投資の合計は6259億円(20年12月期時点)に達した。償却期間は最大20年間だから、年換算で313億円の償却負担となる。

 昭和電工は「3年後に年間200億円以上のコスト削減効果を見込める」(森川社長)としてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で業績への悪影響は不可避となった。猛烈な逆風下での買収となったわけだ。

 昭和電工が20年12月に公表した長期ビジョンで2000億円相当の事業の売却の方針を打ち出した。今年1月末にはアルミニウムの2事業(アルミ缶、高純度箔)を米投資ファンド、アポロ・グローバル・マネジメントに500億円で売却した。

 連結上場子会社である化学商社の昭光通商の株式を、丸紅系投資ファンドに譲渡した。昭光通商株式の44%を所有していたが、丸紅系のアイ・シグマ・キャピタルが運営するファンドのTOB(株式公開買い付け)に29%分を応募。15%を残すことで昭光通商との取引を継続する。

半導体への投資を拡大

 昭和電工マテリアルズの売り上げ、利益を20年第3四半期(7月~9月)の期首から取り込んだ。21年12月期は年間を通して寄与する。21年12月期の売上高は20年12月期比43.8%増の1兆4000億円。従来予想を550億円上方修正した。営業利益は850億円の黒字(前期は194億円の赤字)。170億円増やした。ナフサ価格の上昇を背景にエチレンなどの製品価格が上昇。黒鉛電極は電炉向けの需要が強く販売数量が上向いた。

 しかし、最終損益は250億円の赤字(同763億円の赤字)。これまでの予想を110億円引き下げ、赤字幅が広がる。事業売却に伴う評価損や昭和電工マテリアルズの資産の再評価で210億円の特損を計上するためだ。

 昭和電工マテリアルズ関連では鉛蓄電池事業やプリント配線事業などの売却を決めており、事業改善費用として150億円を特別損失として計上した。モビリティ事業でも固定資産の減損損失を35億円見積もっている。昭和電工のアルミニウム関連事業も譲渡し、25億円の譲渡損失が出る。事業整理にメドがついたことから、新規投資に踏み切る。

 9、10月に公募増資や追加売り出し(オーバーアロットメント)で最大で3519万株の新株を発行する。発行価格は1株2465円。発行済み株式数の2割強に相当する。手取り資金は概算で823億円。706億円を昭和電工マテリアルズの製造設備や再生医療の分野に充当する。

 25年12月期の売上高を20年12月比6割増の1兆6000億円、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を同6.4倍の3200億円に高める目標を掲げる。半導体関連に積極投資し収益拡大への道筋をつける。

 今後、旧日立化成の巨額買収の償却負担を吸収できるだけの収益を上げることができるかだ。外資系企業で経験が長い高橋新社長の経営手腕が問われる。

(文=編集部)

JRA秋華賞(G1)2着「絶好調厩舎」の確変ストップ!? 目前に迫った「調教停止処分明け」も“生え抜き馬”の躍進に期待!

 先週は秋華賞(G1)2着のファインルージュを筆頭に、美浦の岩戸孝樹厩舎が絶好調。土・日に出走した管理馬16頭の成績は3勝、2・3着がそれぞれ2回。勝率18.8%で、複勝率は驚異の43.8%を記録した。

 この好調ぶりは、近走だけではない。2017年から昨年まで、それぞれ年間16勝を記録した岩戸厩舎だが、今年は既に23勝をマーク。重賞成績も“確変中”で、9月には札幌2歳Sと紫苑S(ともにG3)を、それぞれジオグリフとファインルージュで勝利。同厩舎の平地競走の重賞勝利は2008年、ゲットフルマークスで制した京王杯2歳S(G2)以来、実に約13年ぶりとなった。

 岩戸厩舎といえば今夏、同じ美浦所属の木村哲也厩舎の管理馬を受け入れたことを覚えているファンも多いだろう。

 木村師の弟子に対する暴行事件に端を発して下された、同師への調教停止処分。JRA公式HPには「木村哲也調教師の調教停止処分に伴い、全管理馬が転厩となります」と記されており、7月28日には67頭もの馬が岩戸厩舎へ転厩することが発表された。

 前出のファインルージュやジオグリフらは、木村厩舎からの転厩馬。近いところではサウジアラビアRC(G3)2着のステルナティーアも岩戸厩舎の管理馬だが、デビュー前は木村厩舎に入厩。つまり岩戸厩舎の「躍進」は、木村厩舎からの転厩馬の存在が大きいことは否めない。

 ところがこの「躍進」ぶりが近々、ストップする懸念もある。JRA公式HPに記されている通り、木村師の調教停止期間の期限は10月31日まで。処分停止は目前まで迫っており、11月以降、転厩馬たちは岩戸厩舎から木村厩舎の管理馬へと“出戻り”することが予想される。

 そうなると、岩戸厩舎の成績はガタ落ちしてしまうのだろうか。しかし、そう考えるのは早計かもしれない。同厩舎が元々管理していたいわゆる“生え抜き馬”も、転厩馬を受け入れた期間を経て、大きな“変わり身”を見せている例があるのだ。

 岩戸厩舎が管理する生粋の“生え抜き馬”ゼログラヴィティは、今年3月27日の未勝利戦でデビューするも12着。間隔を空けて挑んだ7月10日の次走も6着と、なかなか勝利を挙げることができなかった。

 ところが、転厩馬とそのスタッフを受け入れた後、8月8日に未勝利を脱出。次走の小樽特別(1勝クラス)では昇級戦に挑戦して2着。そして9月の中山4Rでは見事、1勝クラスの壁を突破する“変わり身”を見せた。

 転厩馬の調教は木村厩舎のスタッフが引き続き行っているというが、好調な厩舎成績が生え抜きの馬たちにも好影響を与えているのかもしれない。木村師の処分が明ける日が目前に迫っている中で、今後は両厩舎の勝ち星がどのように変化していくのか。管理馬たちの行方はもちろん、両厩舎の動向に注目したい。

(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。

JRA秋華賞(G1)2着「絶好調厩舎」の確変ストップ!? 目前に迫った「調教停止処分明け」も“生え抜き馬”の躍進に期待!

 先週は秋華賞(G1)2着のファインルージュを筆頭に、美浦の岩戸孝樹厩舎が絶好調。土・日に出走した管理馬16頭の成績は3勝、2・3着がそれぞれ2回。勝率18.8%で、複勝率は驚異の43.8%を記録した。

 この好調ぶりは、近走だけではない。2017年から昨年まで、それぞれ年間16勝を記録した岩戸厩舎だが、今年は既に23勝をマーク。重賞成績も“確変中”で、9月には札幌2歳Sと紫苑S(ともにG3)を、それぞれジオグリフとファインルージュで勝利。同厩舎の平地競走の重賞勝利は2008年、ゲットフルマークスで制した京王杯2歳S(G2)以来、実に約13年ぶりとなった。

 岩戸厩舎といえば今夏、同じ美浦所属の木村哲也厩舎の管理馬を受け入れたことを覚えているファンも多いだろう。

 木村師の弟子に対する暴行事件に端を発して下された、同師への調教停止処分。JRA公式HPには「木村哲也調教師の調教停止処分に伴い、全管理馬が転厩となります」と記されており、7月28日には67頭もの馬が岩戸厩舎へ転厩することが発表された。

 前出のファインルージュやジオグリフらは、木村厩舎からの転厩馬。近いところではサウジアラビアRC(G3)2着のステルナティーアも岩戸厩舎の管理馬だが、デビュー前は木村厩舎に入厩。つまり岩戸厩舎の「躍進」は、木村厩舎からの転厩馬の存在が大きいことは否めない。

 ところがこの「躍進」ぶりが近々、ストップする懸念もある。JRA公式HPに記されている通り、木村師の調教停止期間の期限は10月31日まで。処分停止は目前まで迫っており、11月以降、転厩馬たちは岩戸厩舎から木村厩舎の管理馬へと“出戻り”することが予想される。

 そうなると、岩戸厩舎の成績はガタ落ちしてしまうのだろうか。しかし、そう考えるのは早計かもしれない。同厩舎が元々管理していたいわゆる“生え抜き馬”も、転厩馬を受け入れた期間を経て、大きな“変わり身”を見せている例があるのだ。

 岩戸厩舎が管理する生粋の“生え抜き馬”ゼログラヴィティは、今年3月27日の未勝利戦でデビューするも12着。間隔を空けて挑んだ7月10日の次走も6着と、なかなか勝利を挙げることができなかった。

 ところが、転厩馬とそのスタッフを受け入れた後、8月8日に未勝利を脱出。次走の小樽特別(1勝クラス)では昇級戦に挑戦して2着。そして9月の中山4Rでは見事、1勝クラスの壁を突破する“変わり身”を見せた。

 転厩馬の調教は木村厩舎のスタッフが引き続き行っているというが、好調な厩舎成績が生え抜きの馬たちにも好影響を与えているのかもしれない。木村師の処分が明ける日が目前に迫っている中で、今後は両厩舎の勝ち星がどのように変化していくのか。管理馬たちの行方はもちろん、両厩舎の動向に注目したい。

(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。

一味違うN-BOX、ルパンが乗ったフィアット500…珠玉のコンパクトカー5車

 中古車情報メディア『カーセンサー』(企画・制作 株式会社リクルート)は7月号で「三ツ星コンパクトカー」を特集し、読者から好評を得たという。今回、その中からさらに珠玉の5車を選んでもらい、その魅力について、リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に聞いた。

プロが選ぶコンパクトカー5選

――三ツ星コンパクトカーとして選んだ29モデルから、さらに厳選した5車を教えてください。

西村泰宏氏(以下、西村) 個人的な好みも入りますが、以下の通りです。

1.フィアット「500(現行型)」

2.ルノー「トゥインゴ(現行型)」

3.ホンダ「N-BOX スラッシュ(初代)」

4.BMW「i3(現行型)」

5.フォルクスワーゲン「ザ・ビートル(初代)」

――まず、フィアット「500」の魅力から教えてください。

西村 旧型は、アニメ映画『カリオストロの城』でルパン三世が乗っていたことでも知られている名車です。カラーリングが豊富で、特別仕様や限定モデルも多く用意されています。自分に合った“オンリーワン”が見つかりやすいことが特徴です。コンパクトカーのエースといえる存在でしょう。中古車価格も30万~300万円という水準で、老若男女を問わず幅広い世代から人気があります。

 また、『カーセンサー』7月号の表紙を飾っているフィアット「500」は、グッチが内外装をドレスアップした特別仕様車です。限定生産のため、流通台数は20台ほどで、見つけるのも難しいモデルです。

――2番目から4番目についてはいかがでしょうか。

西村 2番目のルノー「トゥインゴ」は乗りやすく、RR(リヤエンジン・リヤドライブ)という、あのポルシェ「911」と同じ機構を持っているので、軽快なハンドリングで小道をスイスイとドライブできることが特徴です。

 一方、3番目のホンダ「N-BOX スラッシュ」はシートの内装が多様で、車内でくつろげるクルマがほしいというニーズに応える1台です。ベースとなっているN-BOXはもともと人気がありますが、もう少し個性的なクルマを選びたいという人はN-BOX スラッシュを選択するのがオススメです。

 4番目はBMWの電気自動車(EV)の「i3」で、未来の街を走るクルマというのがコンセプトです。乗り味、見た目、内装など、ほかのモデルと一線を画しているクルマです。今後は、同じEVでも自動車メーカーによって打ち出す方向性によって、さまざまなモデルが登場するでしょう。

――最後はフォルクスワーゲン「ザ・ビートル(初代)」です。

西村 丸みを帯びたデザインでメインのユーザーは女性と思われがちですが、走りがしっかりしており、スピードを出したり長い距離を走る分にも申し分ありません。デザインだけでなく、フォルクスワーゲンのロングセラーモデルがベースとなってつくられている、いいクルマです。

 今回ご紹介した5台はいずれも流通台数が安定しており、入手しにくいということはありません。コロナ禍で海外旅行などが楽しめなくなる中、ちょっとした贅沢を楽しむ方が増えており、移動時間をより豊かにしてくれるコンパクトカーの人気が高まっています。

(構成=長井雄一朗/ライター)

一味違うN-BOX、ルパンが乗ったフィアット500…珠玉のコンパクトカー5車

 中古車情報メディア『カーセンサー』(企画・制作 株式会社リクルート)は7月号で「三ツ星コンパクトカー」を特集し、読者から好評を得たという。今回、その中からさらに珠玉の5車を選んでもらい、その魅力について、リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に聞いた。

プロが選ぶコンパクトカー5選

――三ツ星コンパクトカーとして選んだ29モデルから、さらに厳選した5車を教えてください。

西村泰宏氏(以下、西村) 個人的な好みも入りますが、以下の通りです。

1.フィアット「500(現行型)」

2.ルノー「トゥインゴ(現行型)」

3.ホンダ「N-BOX スラッシュ(初代)」

4.BMW「i3(現行型)」

5.フォルクスワーゲン「ザ・ビートル(初代)」

――まず、フィアット「500」の魅力から教えてください。

西村 旧型は、アニメ映画『カリオストロの城』でルパン三世が乗っていたことでも知られている名車です。カラーリングが豊富で、特別仕様や限定モデルも多く用意されています。自分に合った“オンリーワン”が見つかりやすいことが特徴です。コンパクトカーのエースといえる存在でしょう。中古車価格も30万~300万円という水準で、老若男女を問わず幅広い世代から人気があります。

 また、『カーセンサー』7月号の表紙を飾っているフィアット「500」は、グッチが内外装をドレスアップした特別仕様車です。限定生産のため、流通台数は20台ほどで、見つけるのも難しいモデルです。

――2番目から4番目についてはいかがでしょうか。

西村 2番目のルノー「トゥインゴ」は乗りやすく、RR(リヤエンジン・リヤドライブ)という、あのポルシェ「911」と同じ機構を持っているので、軽快なハンドリングで小道をスイスイとドライブできることが特徴です。

 一方、3番目のホンダ「N-BOX スラッシュ」はシートの内装が多様で、車内でくつろげるクルマがほしいというニーズに応える1台です。ベースとなっているN-BOXはもともと人気がありますが、もう少し個性的なクルマを選びたいという人はN-BOX スラッシュを選択するのがオススメです。

 4番目はBMWの電気自動車(EV)の「i3」で、未来の街を走るクルマというのがコンセプトです。乗り味、見た目、内装など、ほかのモデルと一線を画しているクルマです。今後は、同じEVでも自動車メーカーによって打ち出す方向性によって、さまざまなモデルが登場するでしょう。

――最後はフォルクスワーゲン「ザ・ビートル(初代)」です。

西村 丸みを帯びたデザインでメインのユーザーは女性と思われがちですが、走りがしっかりしており、スピードを出したり長い距離を走る分にも申し分ありません。デザインだけでなく、フォルクスワーゲンのロングセラーモデルがベースとなってつくられている、いいクルマです。

 今回ご紹介した5台はいずれも流通台数が安定しており、入手しにくいということはありません。コロナ禍で海外旅行などが楽しめなくなる中、ちょっとした贅沢を楽しむ方が増えており、移動時間をより豊かにしてくれるコンパクトカーの人気が高まっています。

(構成=長井雄一朗/ライター)

水田の病害虫チェック、人間なら14万人必要→AI活用なら「年2万円」で実現?

 以前の記事『5万円でできるのに1千万円も費用投下?“過渡期のAI”導入がDXを遅らせる!』、そして『真のDX推進を実現する正しいAI導入のコツ…人間は人間にしかできない仕事をして利益を最大化』では、旧来の非効率なワークフロー、特に紙や黒板・白板に書かれた文字をテキスト化するようなAIが、本格的なDXを阻害しがちだ、と書きました。本格的なDX、言い換えれば、業務や取引のフルデジタル化とは、劇的に生産性、正確さを向上させ、ひいては数十倍速水準のスピードの向上や省力化を達成するものです。

 一方、「では正しいAI導入とは?」といわれたときに、「従来人間にできなかったことをAIにやらせる」というひとつの勝ちパターンがあることを具体例で示しました。人間には物理的に無理な稼働中のガス管や水道管に入り込んで管の内壁を検査する仕事とか、あるA4用紙1枚の文章と似ている記述を100万件の文章から漏れなく見つけ出す(その裏返しに不存在の証明=悪魔の証明も可能)とかです。

 今回は、人海戦術で莫大な時間、コストをかければできなくはなかったが、従来は【経済的に事実上不可能】だったのを、AIや周辺の自動化ツール群が可能にする事例を取り上げます。

従来は不可能だった水田の稲の予防的大規模検査

 前回、自動化の先にある課題として「人間は人間にしかできない仕事を」しましょう!と提唱。「AIには機械、道具(=AI)にしかできない高速・大容量の作業をさせよ!」の裏返しです。特に、「なぜ?」を5重、6重に問うて、因果関係を深堀りするなど、AIには不可能な課題を、拙著『AIに勝つ!』を引いて紹介しました。この『AIに勝つ!』の「第6章 新たに生まれる仕事群を楽しむ」には、AI導入以前には【経済的に事実上不可能】だった、おもしろい事例を詳述しています。少し長いですが、その全体を引用します。

AI利用の意義を水田農家の病害虫チェックの例で考える

 最近の講演で、数字を使って好んでプレゼンしているのが、水田の葉の病害虫を毎日チェックする、という仕事です。10ヘクタールの水田の稲の葉のほぼ全部を、何百種類もの病害虫にかかっていないか毎日チェックするのにどのくらい時間がかかるでしょうか。株式会社アスクの「たわら蔵」という米作りを解説したホームページに、計算に必要な数字がありました。一部引用します:

(ホーム>お米の話>お米を作る>葉・茎・根の成長

「こうして苗として植えられた一本の稲は数十本もの茎に増える。しかし、田植では一株として5〜6本の苗を植えるし、株数も平方メートル当たり20株程度ですから、多くの分げつの芽は退化します。一本から7〜8本の分げつが出るだけで、ふつう一株では30〜35本くらいの茎に増

えます。

……中略…

 1平米当たりの稲の葉の枚数を、簡単な算数で計算してみましょう。

20株×33茎×12.5枚=8250枚

 1万枚に足りないくらいの数だとわかります。1アール(100平方メートル)当たりでは、82.5万枚、1ヘクタール(1万平方メートル)当たりでは、1億枚に近い8250万枚です。IoT農家がめざすべきレベルといわれる10ヘクタールなら10億枚に近い規模になります。仮に、数百種類のすべての病害虫に精通したスーパー農民が1人で1枚の葉を5秒でチェックできたとして(1茎分を1分間で精査できるとしても同じ)、41億2500万秒=1145万833時間=47万743日=130.8年

 これではもちろん、毎日水田のどこかに病害虫が忍び寄っていないかチェックするのにスピードが足りません。そこで、人海戦術をとってみましょう。1日8時間で完了するのに何人が必要か。上の計算式の途中を拝借して1回割り算すれば事足ります。

1145万833時間÷8時間=14万3229人

 彼らを収容する施設を用意して法人税、社会保障費の法人負担分を払うなどのコストを含めて1人当たり年間約1000万円のコスト増とすれば、年間経費が1兆4323億円増大します。これに対して、10ヘクタールの水田を耕作して得られる年収は700〜1000万円(ブランド米以外)です。 (引用終わり)

 売上の10万~20万倍の経費をかけて持続可能なビジネスなど存在しません。上記は、【経済的に事実上不可能】な事例として間違いないでしょう。同じパターン認識(画像認識)AIでも、前々回紹介の悪い応用例と違って、経済的に正しく活用できる見込みがあるわけです。毎秒30コマ撮影できる8Kカメラ(約3000万画素)を搭載したドローンに8K動画の1コマ1コマでちょうど、みっしりと稠密に10haの水田を撮影できるように飛行させるのに、画角(広角~望遠)や速度にもよりますが、1コマが1平米を撮影するとして、10haは10万平米、1時間は60分ですから、10万÷30÷60 = 55分33秒。

 これを約1時間として、1日10時間、週7日稼働させれば、10haの農家を毎週70軒、カバーできます。学習済のAIが判定処理をするのは、そこそこの性能のコンピュータで、文字通り1瞬(0.02秒以下)で終えられるので、計算機のコスト、電気代などは、AIクラウド管理の人件費に比べれば無視できるくらいのコストで収まります。

 すると、初期投資は別として、1人フルタイムで雇ったとしても、年間1400万円でAIクラウド運営者は十分に利益が出ます。同じAIをコピーして700軒分の水田を1人で監視すれば農家1軒当たり、年間2万円。これで、10~20年に一度の凶作を予防したり、収量をアップしたりができるなら格安ではないでしょうか?

おわりに

 AIには、人間みたいな振る舞いをさせたい、鉄腕アトムをつくりたいという夢を抱く人が多いのはわかります。その裏返しとしての恐怖心を抱く人も、最近は減ってはいるものの、一定数いるのは仕方ありません(是非本連載を最初から読んで「怖くない!」と思い直してください(笑))。しかし、AI=道具を本当にうまく使いこなしたいと考えるなら、上記のように算盤はじいて活用するのが産業応用で成功する秘訣だと思います。高性能化した計算機上のAIの超高速性、自動化率大幅向上がもたらすのは低コスト化です。従来、人間がやるのは経済的に不可能だった仕事が、実施可能になるわけです。

 どうせAIをやるなら、知能、学習などのキーワードに惑わされずに、超高速性、自動化率大幅向上がもたらす経済性に着目し、算盤勘定をしませんか? それこそが産業界をリードする経営者の使命ではないかと思います。

(文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

●野村直之

AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員。

1962年生まれ。84年、東京大学工学部卒業、2002年、理学博士号取得(九州大学)。NECC&C研究所、ジャストシステム、法政大学、リコー勤務をへて、法政大学大学院客員教授。05年、メタデータ(株)を創業。ビッグデータ分析、ソーシャル活用、各種人工知能応用ソリューションを提供。この間、米マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所客員研究員。MITでは、「人工知能の父」マービン・ミンスキーと一時期同室。同じくMITの言語学者、ノーム・チョムスキーとも議論。ディープラーニングを支えるイメージネット(ImageNet)の基礎となったワードネット(WordNet)の活用研究に携わり、日本の第5世代コンピュータ開発機構ICOTからスピンオフした知識ベース開発にも参加。日々、様々なソフトウェア開発に従事するとともに、産業、生活、行政、教育など、幅広く社会にAIを活用する問題に深い関心を持つ。 著作など:WordNet: An Electronic Lexical Database,edited by Christiane D. Fellbaum, MIT Press, 1998.(共著)他

水田の病害虫チェック、人間なら14万人必要→AI活用なら「年2万円」で実現?

 以前の記事『5万円でできるのに1千万円も費用投下?“過渡期のAI”導入がDXを遅らせる!』、そして『真のDX推進を実現する正しいAI導入のコツ…人間は人間にしかできない仕事をして利益を最大化』では、旧来の非効率なワークフロー、特に紙や黒板・白板に書かれた文字をテキスト化するようなAIが、本格的なDXを阻害しがちだ、と書きました。本格的なDX、言い換えれば、業務や取引のフルデジタル化とは、劇的に生産性、正確さを向上させ、ひいては数十倍速水準のスピードの向上や省力化を達成するものです。

 一方、「では正しいAI導入とは?」といわれたときに、「従来人間にできなかったことをAIにやらせる」というひとつの勝ちパターンがあることを具体例で示しました。人間には物理的に無理な稼働中のガス管や水道管に入り込んで管の内壁を検査する仕事とか、あるA4用紙1枚の文章と似ている記述を100万件の文章から漏れなく見つけ出す(その裏返しに不存在の証明=悪魔の証明も可能)とかです。

 今回は、人海戦術で莫大な時間、コストをかければできなくはなかったが、従来は【経済的に事実上不可能】だったのを、AIや周辺の自動化ツール群が可能にする事例を取り上げます。

従来は不可能だった水田の稲の予防的大規模検査

 前回、自動化の先にある課題として「人間は人間にしかできない仕事を」しましょう!と提唱。「AIには機械、道具(=AI)にしかできない高速・大容量の作業をさせよ!」の裏返しです。特に、「なぜ?」を5重、6重に問うて、因果関係を深堀りするなど、AIには不可能な課題を、拙著『AIに勝つ!』を引いて紹介しました。この『AIに勝つ!』の「第6章 新たに生まれる仕事群を楽しむ」には、AI導入以前には【経済的に事実上不可能】だった、おもしろい事例を詳述しています。少し長いですが、その全体を引用します。

AI利用の意義を水田農家の病害虫チェックの例で考える

 最近の講演で、数字を使って好んでプレゼンしているのが、水田の葉の病害虫を毎日チェックする、という仕事です。10ヘクタールの水田の稲の葉のほぼ全部を、何百種類もの病害虫にかかっていないか毎日チェックするのにどのくらい時間がかかるでしょうか。株式会社アスクの「たわら蔵」という米作りを解説したホームページに、計算に必要な数字がありました。一部引用します:

(ホーム>お米の話>お米を作る>葉・茎・根の成長

「こうして苗として植えられた一本の稲は数十本もの茎に増える。しかし、田植では一株として5〜6本の苗を植えるし、株数も平方メートル当たり20株程度ですから、多くの分げつの芽は退化します。一本から7〜8本の分げつが出るだけで、ふつう一株では30〜35本くらいの茎に増

えます。

……中略…

 1平米当たりの稲の葉の枚数を、簡単な算数で計算してみましょう。

20株×33茎×12.5枚=8250枚

 1万枚に足りないくらいの数だとわかります。1アール(100平方メートル)当たりでは、82.5万枚、1ヘクタール(1万平方メートル)当たりでは、1億枚に近い8250万枚です。IoT農家がめざすべきレベルといわれる10ヘクタールなら10億枚に近い規模になります。仮に、数百種類のすべての病害虫に精通したスーパー農民が1人で1枚の葉を5秒でチェックできたとして(1茎分を1分間で精査できるとしても同じ)、41億2500万秒=1145万833時間=47万743日=130.8年

 これではもちろん、毎日水田のどこかに病害虫が忍び寄っていないかチェックするのにスピードが足りません。そこで、人海戦術をとってみましょう。1日8時間で完了するのに何人が必要か。上の計算式の途中を拝借して1回割り算すれば事足ります。

1145万833時間÷8時間=14万3229人

 彼らを収容する施設を用意して法人税、社会保障費の法人負担分を払うなどのコストを含めて1人当たり年間約1000万円のコスト増とすれば、年間経費が1兆4323億円増大します。これに対して、10ヘクタールの水田を耕作して得られる年収は700〜1000万円(ブランド米以外)です。 (引用終わり)

 売上の10万~20万倍の経費をかけて持続可能なビジネスなど存在しません。上記は、【経済的に事実上不可能】な事例として間違いないでしょう。同じパターン認識(画像認識)AIでも、前々回紹介の悪い応用例と違って、経済的に正しく活用できる見込みがあるわけです。毎秒30コマ撮影できる8Kカメラ(約3000万画素)を搭載したドローンに8K動画の1コマ1コマでちょうど、みっしりと稠密に10haの水田を撮影できるように飛行させるのに、画角(広角~望遠)や速度にもよりますが、1コマが1平米を撮影するとして、10haは10万平米、1時間は60分ですから、10万÷30÷60 = 55分33秒。

 これを約1時間として、1日10時間、週7日稼働させれば、10haの農家を毎週70軒、カバーできます。学習済のAIが判定処理をするのは、そこそこの性能のコンピュータで、文字通り1瞬(0.02秒以下)で終えられるので、計算機のコスト、電気代などは、AIクラウド管理の人件費に比べれば無視できるくらいのコストで収まります。

 すると、初期投資は別として、1人フルタイムで雇ったとしても、年間1400万円でAIクラウド運営者は十分に利益が出ます。同じAIをコピーして700軒分の水田を1人で監視すれば農家1軒当たり、年間2万円。これで、10~20年に一度の凶作を予防したり、収量をアップしたりができるなら格安ではないでしょうか?

おわりに

 AIには、人間みたいな振る舞いをさせたい、鉄腕アトムをつくりたいという夢を抱く人が多いのはわかります。その裏返しとしての恐怖心を抱く人も、最近は減ってはいるものの、一定数いるのは仕方ありません(是非本連載を最初から読んで「怖くない!」と思い直してください(笑))。しかし、AI=道具を本当にうまく使いこなしたいと考えるなら、上記のように算盤はじいて活用するのが産業応用で成功する秘訣だと思います。高性能化した計算機上のAIの超高速性、自動化率大幅向上がもたらすのは低コスト化です。従来、人間がやるのは経済的に不可能だった仕事が、実施可能になるわけです。

 どうせAIをやるなら、知能、学習などのキーワードに惑わされずに、超高速性、自動化率大幅向上がもたらす経済性に着目し、算盤勘定をしませんか? それこそが産業界をリードする経営者の使命ではないかと思います。

(文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

●野村直之

AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員。

1962年生まれ。84年、東京大学工学部卒業、2002年、理学博士号取得(九州大学)。NECC&C研究所、ジャストシステム、法政大学、リコー勤務をへて、法政大学大学院客員教授。05年、メタデータ(株)を創業。ビッグデータ分析、ソーシャル活用、各種人工知能応用ソリューションを提供。この間、米マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所客員研究員。MITでは、「人工知能の父」マービン・ミンスキーと一時期同室。同じくMITの言語学者、ノーム・チョムスキーとも議論。ディープラーニングを支えるイメージネット(ImageNet)の基礎となったワードネット(WordNet)の活用研究に携わり、日本の第5世代コンピュータ開発機構ICOTからスピンオフした知識ベース開発にも参加。日々、様々なソフトウェア開発に従事するとともに、産業、生活、行政、教育など、幅広く社会にAIを活用する問題に深い関心を持つ。 著作など:WordNet: An Electronic Lexical Database,edited by Christiane D. Fellbaum, MIT Press, 1998.(共著)他

GU、今、買わない理由がない“神コスパ”な商品5選…リアルレザーシューズ、ブルゾン

GU(ジーユー)」は2006年10月に1号店が誕生したため、今月でちょうど15周年。「ユニクロ」の姉妹ブランドとして誕生し、ユニクロよりもさらにリーズナブルな価格設定で人気を集め、442店(21年5月31日現在)を展開している。

 どんな時代でもファッションは不滅であるという理念をもとに、「YOUR FREEDOM 自分を新しくする自由を。」というコンセプトを掲げるGUは近年、衣服以外にも注力しており、今年は男性用リアルレザーシューズも発売している。10月時点でダービーシューズやストレートチップなどのドレスシューズを5商品展開しているが、驚くべきはその値段。牛革の本革使用であるにもかかわらず、3990円というリーズナブルな価格設定となっているのである。

 今回はそんな攻めの姿勢を忘れないGUの秋アイテムを紹介。「この秋、買うべきGUの服5選」をリストアップし、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーである堺屋大地氏に、おすすめポイントを解説していただいた。

 今回、以下の5つを基準として選定した。

・ファッションビギナーでも比較的に着こなしやすいこと

・難易度の高い“最先端のおしゃれ”は目指さないこと

・“ダサい”と思われるぐらいなら無難な着こなしにすること

・女子ウケが良く“ちょっとおしゃれ”と思われること

・無理に若ぶるのではなく、年相応に大人っぽく見られること

コーデュロイシェフジャケット/2990円(税込、以下同)

 近年GUが推し出しているシェフシリーズのコーデュロイ仕様ジャケット。肩を落としたビッグシルエットになっており、トレンド感を演出している。タフな見た目ながらカジュアルから“きれいめ”までフレキシブルに対応する一着。カラーバリエーション(カラバリ)は、ブラック、ピンク、ナチュラル、ダークブラウン、ブルーの5色展開。

「コーデュロイにヴィンテージ感があって大人っぽい仕上がりになっていますね。秋のデートコーデに最適でしょう。カラバリが豊富なのもうれしいポイント。大人男性は、ピンクは避けたほうがいいでしょうが、ダークブラウンやブラックは誰が着ても似合いそう。ちょっと攻めたい人はブルーやナチュラルが狙い目です」(堺屋氏)

ユーティリティオーバーサイズブルゾン/3990円

 前身頃に大きなポケットを4カ所備えたスタンドカラータイプのブルゾン。タフな素材を使っており、タウンユースだけでなくアウトドアシーンなどでも活躍できる。カラバリはブラック、ベージュ、ダークグリーンの3色展開。

「『買うべき』というポイントは、見た目のカッコよさと利便性を両立しているところ。ユーティリティポケットが実用的であり、デザイン性の高さも底上げしていますね。ポケットの収納力が高いので、なるべくバッグなどを持たずに手ぶらで出かけたいという人にピッタリのアウターでしょう。ブラックは無難でカッコいいですが、個人的には円熟味のあるベージュとダークグリーンが大人っぽくていいなと感じました」(堺屋氏)

ウォッシャブルアゼカーディガン(長袖)/2490円

 中肉の糸を使用して畦(あぜ)編みで仕上げたVネックカーディガンで、冬到来前の涼しい季節のアウターとして重宝。カラバリはオフホワイト、ブラック、ダークブラウンの3色展開。

「カーディガンは大人コーデの定番なので、攻めずにちょいオシャレを目指したい人は買いでしょう。こちらは洗濯機で洗えるウォッシャブルタイプになっているので、扱いがラクなのもうれしいところ。カラバリのなかではブラックとダークブラウンが、良い意味で奇をてらっておらず、失敗しないですむのでおすすめです」(堺屋氏)

イージーアンクルパンツ/1990円

 テーパードシルエットのアンクルパンツで、特徴はなめらかな肌触りと適度な落ち感。イージーウエストを採用し、ドローコードで調整ができるようになっており、ラクに穿ける一本となっている。カラバリはライトグレー、グレー、ブラック、ワイン、ベージュの5色展開。

「一般的なパンツよりも丈がやや短いアンクルパンツは、足元を軽やかな印象にできるので秋コーデに最適。それをこのリーズナブル価格で買えるというのはありがたいです。カラバリのなかでワインはちょっと冒険なので買う際に注意が必要ですが、グレーやブラックは手堅い色味でいろいろなトップスと合わせやすいでしょう」(堺屋氏)

リアルレザーダブルモンクストラップシューズ+E/3990円

 アッパーに牛革を使用したダブルモンクストラップデザインのリアルレザーシューズ。本革ならではの独特な経年変化も楽しめるアイテムだ。カラバリはブラック、ダークブラウンの2色展開。

「『買うべき』理由は、かなりコストパフォーマンスが良いことですね。牛革仕様で約4000円という価格に驚きで、さらに見た目は高級感もあります。デート時のきれいめコーデに合わせやすいでしょう。10月現在、GUではリアルレザーシリーズが5種あり、このダブルモンクストラップシューズ以外にもダービーシューズ、コインローファー、オペラシューズ、ストレートチップシューズがあります。5種すべてコスパ上々なのでどれもおすすめですが、なかでもこのダブルモンクストラップシューズのデザイン性は頭ひとつ抜けて渋いのでGOODです」(堺屋氏)

 GUは若者向けのアイテムが多かったが、今回紹介したリアルレザーシューズなどは大人男性に向けられたデザインとなっており、30代以上のビジネスパーソンの獲得も狙いにきている印象を受ける。若々しすぎるアイテムもあるが、ベーシックでファッションビギナーでも着こなしやすい服は増えてきているので、今回の記事を参考にぜひGUでの買い物を楽しんでいただきたい。

(文・取材=A4studio)

※情報は2021年10月10日現在のものです。