米国で日本勢が無双!名門・開成高出身の調教師、次は悲願のJRAマイルCS獲り

ブリーダーズカップの次はマイルチャンピオンシップ

 日本時間11月7日早朝に開催されたアメリカのブリーダーズカップで、日本調教馬のマルシュロレーヌとラヴズオンリーユーが勝利した。両馬を管理する矢作芳人調教師からは「もう死んでもいいくらい」という過激な発言も飛び出したが、これも愛嬌。日本のホースマンによるブリーダーズカップにかける意気込みは、それほどまでに大きなものなのだ。そんな矢作調教師は一躍世界にその名を轟かせたが、これまでの実績を考えれば当然の結果といってもいいだろう。実際、その活躍と実績には目を見張るものがある。

 矢作調教師は父が大井競馬場の調教師で、進学校として知られる開成高校に入学。その後、競馬界へ進むことを決め、オーストラリアに渡って修業を積み、帰国後は日本中央競馬会(JRA)の競馬学校厩務員課程に入学。卒業後はJRAで厩務員となり、2005年に調教師としてスタートする。開業4年目にJRA史上最速で通算100勝を達成、翌年には関西リーディングとなり、2012年には開業8年目で東京優駿(日本ダービー)を勝利。2016年には早くも海外G1レースを勝利し、昨年はコントレイルで無敗のクラシック三冠を達成するなど、国内外で大活躍。今や誰もが認めるトップトレーナーだ。

 そんな矢作調教師にとって今週末行われるマイルチャンピオンシップ(G1)は、悲願の初勝利を目指すレースでもある。これまでスーパーホーネット、グランプリボス、ダイワマッジョーレで2着は合計4回あるものの、いまだ勝利はない。これまで日本ダービーや有馬記念、安田記念など多くのG1レースを勝利しているが、このマイルCSは縁がない。

 それだけに、今年出走を予定しているホウオウアマゾンにかける思いは強そうだ。このホウオウアマゾンはシュネルマイスターと同じ3歳馬で、マイルCSと同じコースのアーリントンカップ(G3)においてピクシーナイトらに快勝。マイルCSの前哨戦となるスワンステークス(G2)でも、休み明けながら差のない3着と好走しており、一叩きしたここは上積みも大きそうだ。有力馬次第では、アっと驚く激走があってもおかしくはない。

 今年のマイルCSは、最強牝馬の一角でクリストフ・ルメール騎手が鞍上のグランアレグリア、横山武史騎手が騎乗するNHKマイルカップ優勝馬シュネルマイスター、福永祐一騎手が騎乗する2019年のマイル王インディチャンプ、2歳G1王者のサリオス、グレナディアガーズ、ダノンザキッドのほか、伏兵も武豊騎手騎乗のサウンドキアラ、戸崎圭太騎手騎乗のカテドラルと豪華なメンバーが揃った。

 しかし、有力馬の多くは不安要素が一つや二つではなく、かなりの混戦模様となっている。それだけに、この状況はほかの馬にとっても競馬ファンにとってもチャンス到来といえる。もし、グランアレグリアやシュネルマイスターが敗退すれば、かなりの万馬券も期待できるからだ。

 そこで、今年春のG1レースにて11レース中8レース的中と高確率&高回収を実現している、競馬界の重鎮が揃う「競馬セブン」からマイルCSの最新情報を聞き出した。

競馬界の重鎮がズラリ

 競馬セブンは今年で創業25年という歴史があるが、競馬ファンに「競馬を楽しんでいただくと同時に、G1シーズンの的中ラッシュで喜んでいただく」というコンセプトで活動している。それは業界屈指の情報ルートを誇るものの役割だと、競馬セブンは語っている。

 実際に競馬セブンがどれほどG1レースに強いのかといえば、この春は11戦8勝という好成績。しかも、馬連のみの馬券購入で合計166万8000円もの大金を獲得しているのだから、驚かされる。その強さの秘密は、まず各専門分野に特化した情報ルートが所属していることだろう。

 競馬セブンには、ほかでは考えられないような、各分野に特化したスペシャリストたちが多数所属。総監督を務める徳吉一己は、元JRA騎手・元JRA騎手学校教官という経歴があり、あの福永祐一騎手、池添謙一騎手、和田竜二騎手といったトップジョッキーは教え子だという。まさに【騎手情報】のすべてを知る存在といえよう。

 また、“美浦トレセンの地獄耳”との異名を持つ古川幸弘は、競馬記者歴40年以上の実績があり、厩舎関係者だけでなく現役馬主とのつながりも深く、【馬主情報】も把握。さらに、内田博幸騎手の身元受入先も務めた嶋田潤元JRA調教師が【美浦情報】を、名馬タマモクロスを育てた小原伊佐美元JRA調教師が【栗東情報】を網羅。

 ほかにも、貴重な【馬産地情報】は北海道に拠点を構える元札幌馬主協会理事の斉藤隆が、入手困難な【社台情報】は元社台スタリオンステーション荻伏場長の林勲らが、ありとあらゆる競馬情報を収集している。これほどの人材が揃うのだから、まさに競馬セブンは業界トップの情報力を有しているといっても決して間違いではないだろう。

 その競馬セブンはこの春も桜花賞、NHKマイルカップ、安田記念といったマイルG1レースで万馬券などを的中。この3レースとも人気薄穴馬が馬券に絡んだことで話題となったが、それらの穴馬をしっかり把握していたのだから、さすがだ。そしてその流れで、今週末のマイルCSに向けても絶好の手応えを掴んでいるという。

「昨年に続きマイルCS連覇を狙うグランアレグリアが出走し、断然人気が予想されますが、実は競馬セブンでは人気薄確実な穴馬の激走情報を独占入手済みです。完全オフレコ情報のため、ここでその詳細はお伝えできませんが、この穴馬が馬券に絡めば好配当は必至です。

 さらに、多くのG1馬が出走しますが、なかにはマスコミには知らせていない致命的な不安を抱える陣営もいます。その馬の不安情報を知らないマスコミやファンが注目すればするほど、我々が狙う馬券のオッズも跳ね上がるでしょう。いずれにせよ、このマイルCSはマスコミの報道通りの簡単な決着になることはありません。まさかの結末が待っているといえます。

 なお今回は、より多くのファンにこの情報を届けるため、レース当日にマイルCS馬連3点買い目の無料公開を実施します。事前に入手法をチェックしていただき、当日は馬券購入前に必ずご確認ください」

 このコメントからもわかるように、競馬セブンはマイルCSに向けてかなりの手応えを掴んでいる様子。しかも配当妙味があり、馬連買い目の無料公開というおまけ付きだ。これほどの機会は、なかなかお目にかかれない。しかも、競馬セブンでは、この買い目情報以外にも多くの無料コンテンツがあり、今週だけでなく来週以降も毎週無料で見られる。つまり、来週末のジャパンカップや年末の有馬記念において、業界最高峰の情報力を持つ競馬セブンの情報を無料で見られるのである。

 迷っている暇はない。今すぐ競馬セブンにアクセスして、無料情報をチェックしておこう。

(文=編集部)

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※本稿はPR記事です。

JRAエリザベス女王杯(G1)レイパパレ敗因は「距離」だけじゃない!? 「339万馬券」演出はソダシも餌食となった阪神の激流に伏線

 14日、阪神競馬場で開催された秋の女王決定戦・エリザベス女王杯(G1)は、幸英明騎手の10番人気アカイイトが勝利した。前走の府中牝馬S(G2)を12番人気で7着に敗れてからの挑戦ながら、初の重賞勝ちにG1タイトルという嬉しい“オマケ”もついてきた。

 人気馬が総崩れして2着にも7番人気ステラリア、3着に9番人気クラヴェルが入ったレースは大波乱。馬単の払戻しは13万7500円、三連単は339万3960円となり、今年行われたG1レースで初の100万円超えを記録した。

 そして、339万馬券演出の一因といえるのが、C.ルメール騎手とのコンビで単勝オッズ2.9倍に支持を受けて6着に沈んだレイパパレ(牝4、栗東・高野友和厩舎)である。

「ずっと引っかかった。だから、早く動いたけど、最後のストライドは止まってしまった。距離も長かったし、コントロールも難しかった」

 レース後、ルメール騎手がそう振り返ったように、レイパパレにとってあと1ハロンの距離の克服は最重要課題だった。そんな爆弾を抱えていた1番人気馬に、最悪の形で立ちはだかったのが、あまりに厳し過ぎた激流である。

 17頭立てで行われた内回りの芝2200m戦。最内1枠1番から好スタートを決めたレイパパレだったが、ハナを主張したシャムロックヒルにロザムールが競り掛けてペースアップ。これにウインマリリンが3番手で続いて、その後方の内目4番手につける。

 このままペースが緩めば展開も変わったかもしれないが、すぐ外を並走するアカイトリノムスメやリュヌルージュにもプレッシャーを受け続ける苦しいポジション。外に出すスペースもないまま、内に押し込められたレイパパレは息を入れるタイミングもない。その結果、本来なら避けたかったはずの消耗戦へと巻き込まれることとなる。

 パートナーの逸る気持ちをヒシヒシと感じていたルメール騎手は、3コーナー手前でワンテンポ早く進出を決断。一足先に抜け出して底力勝負に一縷の望みをかけた。

 しかし、後方から脚を伸ばしてきたアカイイトに残り200mで並び掛けられると、もはやレイパパレに抵抗するだけの余力は残されていなかった。ゴール前では他の後続馬にも交わされ6着で入線する。

 4月の大阪杯(G1)ではコントレイルやグランアレグリアら現役トップクラスを相手にG1初優勝。デビューから無傷の6連勝で戴冠の衝撃は競馬ファンの度肝を抜いたが、ライバルが重馬場を苦にしたことや、展開的に恵まれたという声もあったことは確かだ。

 実際に芝2200mのレースは宝塚記念(G1)、オールカマー(G2)で敗れ、エリザベス女王杯で3連敗。2000mまで無敗だったことを思えば、敗因を距離に求めるのは正論かもしれない。

 だが、一概にそれだけで済ませてしまうには、あまりに早計という見方もある。

「着順こそ6着でしたが、勝ち馬とのタイム差は0秒6とわずかです。レースラップから分かるように12秒台前半のラップが続いた激流でした。これを自分から動いて勝ちに行く競馬をしながら、残り100mまで先頭を守っていたことを考えれば、バッタリ止まった訳でもありません。

後方待機策を採った馬が上位に食い込んでいることから、展開のアヤも大きく影響しています。先行した3番手までの馬が後ろからワンツースリーの大敗を喫しており、先行勢には明らかに不利な展開でした。ピタリとマークされた相手のアカイトリノムスメには先着していますし、距離だけが敗因なら惨敗しても不思議ではなかったでしょう」(競馬記者)

 一見有利に思えた内枠も結果的には仇となっている。ハイペースの今回は次々と襲い掛かる刺客がスタミナを容赦なく奪った。

 勝ち時計にしても同じく内回りの芝2000mで行われた8R(2勝クラス)が2分14秒7に対し、エリザベス女王杯のそれは2分12秒1。クラスの違いはあっても両レースの差は2秒6も開いていることから、道中で息を入れられるレースではなかったことも伝わる。

 また、それと同時に思い起こされるのはソダシが10着に敗れた秋華賞(G1)だ。このときソダシは2番手から強気な先行策を取ったものの、直線で伸びを欠いている。

 この背景には、10月からずっとAコースを使用し続けていることも関係している可能性がある。この阪神の芝コースの傷み具合のイメージは、軽くて速い日本特有の馬場よりも力を要する欧州の馬場。時計だけでなく上がりも掛かり、スピードが生かせない馬場状態を思わせる。

 そう考えると、先行勢にとっては見た目以上に過酷なレース展開だったといえないだろうか。いずれにしても、前で競馬するしかないレイパパレには距離以前の問題だった気がしてならない。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

餃子の王将、なぜ顧客ロイヤルティが高い?日高屋を凌駕、顧客囲い込み戦略の秘密

 誰もが最低1台は持っているといわれるスマートフォン。非接触の観点から、アプリを通して会員証やお得なクーポンを配信して顧客を維持・獲得する戦略を取る企業が増えている。コロナ禍を追い風としてスマホだけで完結する仕組みが定着し、定期券や会員証をスマホに収納することも当たり前となった。

 10月からマイナンバーカードも健康保険証として使えることとなり、ますます紙が使われなくなる一方で、紙の会員証にプライドを持ってこだわり続ける外食チェーンが存在することをご存知じだろうか。餃子の王将、そしてファーストキッチンだ。大戸屋もかつてはスタンプカードを発行し、多くの顧客に愛用されていた。残念ながら買収劇と前後して廃止となり、「顧客サービス」「顧客目線」という単語は同社の戦略において見つけることが難しくなった。

 餃子の王将は積極的に活用している。あらためて同社の業績を確認してみると、9月の直営全店売上高は57億1500万円(前年同月比91.3%)、既存店売上高は55億9300万円(前年同月比90.6%)前年同月比で減収となったものの、営業可能である5時から20時までの売上は前年同月比106%と前年を上回った。

「酒類売上の前年同月比減収額を本年9月の売上に加算すると、ほぼ前年並みの売上になることから、緊急事態宣言等による営業時間の短縮及び酒類提供禁止の対応が、減収の主な要因であると考えられます。直営全店売上高のうち、店内売上高は前年を下回りましたが、店外売上(テイクアウト・デリバリー)は、前年同月比151.2%と大幅に増加しており、店外売上が占めるシェアが45.8%(前年同月33.9%)に達したことからも、引き続き店外売上がコロナ禍における売上を牽引いたしました」(餃子の王将のリリースより)

 緊急事態宣言の発出された都道府県においては、3密を避けるための客席利用制限などをうけて、飲食店は店内飲食を伸ばすことは難しかった。中小飲食店が対応に苦慮するなかで、外食チェーン各社はテイクアウトやデリバリーに戦略の軸を置き、中食需要の取り込みを拡大・強化していった。

「紙のスタンプカード」を重視

 6月25日よりスタートした「2022年版ぎょうざ倶楽部お客様感謝キャンペーン」は、王将ファンならば必ず持っていると言われる「紙のスタンプカード」を活用した戦略だ。多くのファンは利用を重ね5%割引となる「ぎょうざ倶楽部会員カード」の取得を狙っているといわれる。

 顧客はスマホでもスタンプを獲得することは可能であるが、あえて紙のスタンプカードを所有する意味はどこにあるのだろうか。ここに、餃子の王将が仕掛ける顧客ロイヤルティ向上の取り組みを見て取ることができる。

 筆者もスマホアプリをダウンロードしてみた。スマホアプリの場合、画面は自分しか見えない。ここが大きなポイントとなる。自身のステータス(利用履歴など)は自分のスマホで確認することはできるが、ほかの人はもちろん店舗スタッフにさえも精算時に初めて見せるものだ。紙のポイントカードはほかの人に見せることも可能であり、この点を意識しているように映る。

 1月18日から6月13日まで開催された前回のこのキャンペーンでは、王将の各店舗において、金色のプレミアム会員カードを手に持ちながら並んでいる顧客を多く見かけた。プレミアムカードを持つ理由は、単に割引や特典が多いからだけではなく、クレジットカードでいうところのゴールドカードを持っているという「優越感」を感じられるからではないか。

 利用回数が増えると特典や割引額が増え、顧客のステータスもあがる。クレジットカードのように年会費を払う必要もなく、ただ頻回に利用することで、店舗からも重要顧客として認知される。いわゆるマーケティングにおける「ロイヤルカスタマー」の地位を自他ともに確立したことになる。ゴールドカードを所有する顧客が空港などにある専用ラウンジを利用できる「優越的な立場」を、王将全店舗で体験することができる。顧客満足度を高めることは各社とも目指しているところであるが、外食業において餃子の王将ほど成功した事例は決して多くない。

 株式分割を考慮すると、餃子の王将は06年2月期から20年2月期まで実質15年連続増配。21年2月期も前年同様18円、22年2月期中期は12円の1株当たり現金配当を見込んでいる。このことから、固定ファンが継続的に利用することがいかに企業経営を支えているか知ることができる。

日高屋との違い

 餃子の王将は立地という利便性の高さだけではなく、固定ファンをくすぐる販売戦略を実行している。一般的には競合同士とみられる餃子の王将と日高屋(運営会社:ハイデイ日高)には、実は大きな違いがある。日高屋のメイン客は「ちょいのみ日高屋」を軸とする店内飲食である。また、使用頻度の低いと思われる割引券や低価格の昼弁当など価格戦略が中心であり、自店舗の顧客を対象とした優遇施策はあまり見られない。企業として顧客の囲い込みに関しては、餃子の王将が数段上を行っている。

 ハイデイ日高は10月7日、22年2月期第2四半期決算説明会資料のなかで中期的な取り組みを発表した。主な施策としては、テイクアウト・デリバリーのさらなる強化やロードサイド店舗の出店強化だが、時短営業による影響も併せて発表している。コロナ前は20時までの売上は1日の60%を占めていたが、関東の1都3県を中心に店舗展開をしているため、コロナによる時短営業やアルコール類の提供禁止は全店舗に大きな影響を及ぼした。多くの店舗が駅前立地であることから、時短営業だけでなく在宅ワークも業績悪化に拍車をかけることとなった。ビジネス街のランチ需要が蒸発したことが最大の原因といっても過言ではないだろう。

 日高屋のテイクアウトは顧客に浸透したとはいいがたい。月別推移をみると、売上自体は昨年6月から右肩上がりで伸長しているものの、売上高に占める割合はようやく12%を超えた水準である。9月の月次を見ても客単価は前年同月比85.5%、客数は71.6%と振るわない。駅前立地と店内飲食を中心に据えた同社は、ちょい飲み需要に大きく支えられていたとみることができる。

 駅前立地ゆえ必然的に店舗面積が限られることから、厨房スペースが狭く「ワン鍋」を採用している。「ワン鍋」とは、厨房内で調理に使用する中華鍋が一つであることであり、中華鍋を使用するメニューについては一度に調理できる量に限りがあるということを意味する。日高屋のデリバリーは出前館と提携しており、来店客のピークとデリバリーのピークタイムの重複を低減させ、中華鍋の稼働を平準化することがデリバリー需要の取り組みに対する課題として挙げられる。

 今後の取り組みにおいても、同業他社と比較して周回遅れの感は否めない。コロナ禍における販売戦略としては、テイクアウトやデリバリーの強化という代わり映えのしない表現にとどめている。

 餃子の王将と大きく異なるのは、顧客に特化した戦略が見当たらないという点である。日高屋の配布する割引券は、多くの顧客にとってそれほど魅力があると映ってはいない。割引券であればアークランドサービスホールディングスの運営する「かつや」の100円割引券がわかりやすく、多くの顧客に恩恵をもたらしている。それでも足繫く通う原動力には少しもの足りない。なぜなら割引券は訪問する店舗やチェーンが決まっていないときに、選択肢として上位に上げる動機付けにはなるが、決定打ではないからだ。

 リピーターや常連客を増やすためには、価格にかかわらずほかの店と比較して「目に見える優位性」があり、客が「大切にされている」と感じられる仕掛けが必要ではないだろうか。たとえば航空会社のマイレージ上位会員はほかの顧客と差別化され、専用ラウンジの利用や優先チェックイン、座席のグレードアップなどの恩恵を受けられる。外食業では見過ごされがちだが、顧客満足度を最大化するということは、最も重要な営業戦略ではないだろうか。

 10月25日に日本フードサービス協会より発表された外食産業市場動向調査によると、9月の全体動向は「緊急事態宣言等が続き外食業は依然深刻な状況」だという。アルコール類の提供など各種制限が緩和・解除され、夜の街も賑わいを取り戻しつつあるが、コロナ禍で各種対策を率先して実施してきた飲食店はまだまだ楽観できないだろう。第6波に備え引き続き感染予防に心がけ、飲食店と生産者、そして消費者がWIN-WINの状態を築いていくことを筆者は切に願う。

(写真・文=重盛高雄/フードアナリスト)

●重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。

5年ぶりの電通報登場!1万字インタビュー 「風とロック」 箭内道彦は、コロナ禍のいま、何を考えているのか聞いてみた。

井口:どうもー、井口です。CRAFTPR Laboratoryです!ということでね、ちょっと連載サボってしまっていて……。各方面から「おいおい、これって連載詐欺じゃね?」なんて言われちゃったもんだから……。

橋本:別にサボってたわけではないんですが、、、お叱りも期待感のある証拠ということで、すべてを前向きに受け止めつつ。まあ、でもラボの管轄をしている、うちの局長、マイクロマネジメントとご自分では言いますけど、お尻のたたき方、うまかったですね(笑)。言われてすぐに、箭内さんに連絡したもんね。

井口:そうだね(笑)。ちなみに言い訳するとですね、前回ご紹介していたわれわれの戦略思考のデータベース的アーカイブでもある「LIONS GOOD NEWS  2020」サイトが、FWA、awwwards.、CSS Design Awardsを受賞した他、結構な評価をいただきまして。分かりやすいところだと国内のグッドデザイン賞 、海外では、世界3大デザイン賞の一つともいわれる「Red Dot Award」の、2万件近くあるエントリーの上位1%未満しか受賞できないといわれる「Best of the Best」もいただくなど、ちょいちょいそちらの対応でバタバタしておりました。

そうそう、コロナ禍で動ける人も少なくて、パネル展示なんかも、わざわざ井口が名古屋の現地まで行ってやってましたからね、もう自給自足っていうか。ちょっと違うけど。でも、最後まで責任を持ってやるっていうのがやはり一番大事ですね。そこに結果もついてくる。

橋本:まあ、ものは言いようですけどね。

井口:そんな言い訳を用意して、「LIONS GOOD NEWS」のロジックをベースにしながら、いろいろお手伝いさせていただいた東京藝大のお仕事「東京藝大アートフェス2021」も無事終了したんで、そのつながりで、このプロジェクトの総合プロデューサーでもある、東京藝術大学教授で、みなさまもおなじみ「風とロック」箭内道彦さんに今回はお話を聞いちゃいます。

箭内さんがこのコロナ禍で考えていること、最近手がけた仕事や仕事に対しての視点などなど、内容盛りだくさんです。

橋本:僕のドリル、電通での先輩で、この場にも同席いただいた、東京藝大講師でもある浜島デザイン・浜島達也さんも、ありがとうございました!箭内さんの話の中には、業務に生かせそうなヒントが詰まってます。だいぶボリュームあるんですけど、2~3日に分けて読むなどして、ぜひお楽しみください。ま、でも昨今一番思ったのは、もっとコンスタントに原稿は入れていけよ、という反省なんですけどね。


■About 箭内道彦

箭内道彦氏
博報堂を経て2003年に独立、自身の事務所「風とロック」を設立。広告領域にとどまらず、自らが所属するロックバンド「猪苗代湖ズ」のNHK紅白歌合戦への出場、また、映画監督への挑戦やコミュニティFM「渋谷のラジオ」設立など、多岐にわたる活躍を続ける箭内道彦氏。
 
2015年には出身地である福島県のクリエイティブディレクターに着任し、その地域活性化を主導。2009年より毎年現地で開催してきた「風とロック芋煮会」は2021年12年目を迎え、コロナ禍での開催という制約を受けながらも、YouTubeなどのオンラインメディアを駆使した72時間ストリーミング放送なども実施し、国内各地からの参加を促した。
 
また、2016年より美術学部デザイン科教授を務める東京藝術大学では本年、学長特命によりオンライン上でのアートフェス「東京藝大アートフェス 2021」を立ち上げ、コロナ禍で活躍の場を著しく狭められてしまった若手アーティストの発信の場を創出し、支援をした。わが道を行く存在に見える箭内氏だが、そのコミュニケーションの根底には、個々の相手をしっかりと見据えた上でその反応を想像しアジャストしていく丁寧な姿勢や信条があるという。
https://michihikoyanai.com/

「オンラインだからこそできること」をみんなようやく見つけ出した

──まず、コロナ禍で箭内さんご自身が感じた一番大きな変化はなんでしたか?

個人的なことじゃなく、世の中を見渡すと、目にしたり耳にしたワードは「分断」という言葉ですかね。ソーシャルディスタンスといった言葉もありますけど、そういう物理的なものだけでなく、世の中に無数の線が引かれてしまったという印象があります。それは思想であったり格差であったり……。こんな硬い話から入ってしまったことをすでに後悔しているんですけど(笑)。ここまで人と人の関係が分断されるとは思わなかったですね。

あとはやっぱり、オンライン。いまだにオンラインでの生活が中心で、「会うことの代用品」としてオンラインが緊急措置的に僕らの生活や仕事に入ってきましたけど、これだけ長く続くと、だいぶオンラインの疲れもある半面、オンラインでのコミュニケーションが意外とみんなうまくなってきたな、と感じることもあって。

第1希望が対面、第2希望がオンラインのようなことではなくて、「オンラインだからこそできること」をみんな、それぞれようやく見つけ出したな、と。それは結果オーライというところもありますけど。今日これから話す事例「藝大アートフェス2021」や「風とロック芋煮会」みたいなイベントもそうですけど、去年だったらこうはできていなかったなということがちょっとずつやれるようになってきていて。それは「新しいことをやってやるぞ!」という気概ではなくて、むしろ「やむを得ず、そこに追い詰められた」環境下で、自然に人間の生命力によって、新しいコミュニケーションが生まれてきた、というのを感じてはいます。だから、緊急事態宣言が解除されて良かったと思うのが大部分ですが、「うわー、これリアルにいろいろ出席しなきゃな~、往復の時間が……」と思う自分がいるのを不思議に感じていたりします(笑)。

──そういった物理的な距離なども含めて、箭内さんが感じるオンラインの楽しさとは?

僕は東京コピーライターズクラブの副会長を、なぜかやらせていただいていて、毎年新たに受賞した新人たちが入ってくるんですけど、その歓迎会をオンラインでやっていて感じたことは、これだけ人と人が顔を向き合う、見つめ合って一人一人と話すというのは、まずないですよね。みんなの顔が一斉に見える、発言者は瞬時にしてその場の主役になっていく、これはすごいと思いました。

一方で、オンラインの会議は1時間やるとぐったりだと、あるカメラマンの方とは話していました。相手の表情からさまざまなことを読み取るので、処理しなきゃいけない情報が表情の中にたくさんあって。それが1人ではなくて、今も4人の方と同時に向き合っていて。

カメラマンの方はぐったりだと言ってましたが、オンラインでは接する情報量が格段に多いので、僕は逆に、そこが面白いと思っています。例えばお手伝いいただいた、東京藝大アートフェスは、美術と音楽が共存する展覧会なんですけど、こういう新しい体験、見え方は、リアルでは絶対実現できないことでした。これがどういう進化をしていくかは予想がつかないんですけど、今までなかったものが生まれたり、新しい出会いが化学反応として起こると思います。ある審査員の方が、非常に藝大アートフェスを評価してくれてまして。お忙しい方だから少しずつ日を分けて自分のペースで見ることができた、と。それはオンラインがなかったらできなかったな、と勝手に想像しています。

──確かにオンラインって、会議でも、仕事でも、きちんとやるとホント疲れますよね。井口は、PCの画面が悪いからだと思ってました(笑)。読み取る情報量が多くて脳が疲れるんですね。

そんな気がしますよ。今も「橋本くん、ペットボトルで水飲んでるな」「銘柄なにかな?」と同時に、「浜島先生は穏やかに見てくれてるな」と、たくさんの処理をするわけです。やはりみんなだいぶ慣れてきて、始まる前にようやく雑談ができるようになりましたね。必要なことしかしゃべらない1時間だから、それはそれで濃密なんですけど。雑談からしか生まれないものを、この1年間たくさんみんな逃してきたので、それができるようになってきたのは良かったですね。

浜島先生とも一緒に藝大の授業をやっているんですけど、そこでも、学生全員バーッと顔が並んで一人一人名前を呼んで出欠をとったり、背景の画像に突っ込みを入れたりなど、いままでの対面ではなかったコミュニケーションの距離感も新鮮に感じますね。またこういう状況ならではの、システムをうまく利用している作品が生まれているのも面白いなとは思いつつ、リアルな場所での設置の力が伸びてないというのは少し気になっています。

ただ、最近は、ハイブリッドつまりオンラインとリアルの両方で、という概念が入ってきてるので、これは倍疲れますけど(笑)、これでうまくできれば面白いことになっていくと思います。リアルにいく人、いかない人で溝をつくっていかないようにしないといけないですね。お互いの選択を尊重する、ということですね。

事例紹介①:東京藝大アートフェス2021
事例紹介①:東京藝大アートフェス2021 
コロナ禍で発表の機会などが失われ困窮する若手芸術家たちのために、SNSを駆使したデジタル上の展示会を開催。この展示会をきっかけにギャラリーと専属契約し個展が開けたなど、箭内さんがいうような新しい出会いも生まれている。より詳しい解説は、カンヌ公式サイトコラム「LIONS GOOD NEWS 2021」にて。

オンラインはオフラインの代用品ではない

──ハイブリッドという言葉が出ましたが、「風とロック芋煮会」に関しても少し聞かせてください。

「風とロック芋煮会」を電通のみなさんに取材してもらえるのは、これが最初で最後でしょうから、とても光栄ですし(笑)、うれしいです。風とロック芋煮会は、世界で一番、観客と出演者の距離が近いというのが大きな特徴なので、そういう意味では、物理的に距離を取らないといけないコロナには、最も弱いイベントなんです。

距離を空けたままで開催するのは不可能だろうと思って、3カ月前には中止を決定していました。もう一つの理由は、福島と全国の方々の触れ合いの場でもあるので、全国からウイルスを運んでいくのは誰も望んでいない、少しでも不安があるならできないだろうな、と。とはいえ、お客さんはフェスが終わると「芋ロス」になるといわれているんですね。1年に1回、何もないのは耐えきれないという声をたくさんいただき、2020年は福島中央テレビさんにイベントをやらない代わりに6時間何かやらせてほしいとお願いして、LINE LIVE-VIEWINGと福島中央テレビの生放送の特番で配信しました。

そもそもこのフェスティバルは、福島民報という新聞社とやっているんですが、福島民報の系列は福島テレビなんですよね。なのに、ライバルのテレビ局である福島中央テレビが12年前から、志に賛同してくれて系列の壁を越えて特番を作ってくれているんですよね。そんな中で、今年は去年よりすごいことをしないと気がすまない、というのを僕自身思っていて。地元のテレビだけではなく、ラジオ、新聞、YouTube Live、LINE LIVE-VIEWING、Rakuten TVを横断して、もともとのスケジュールの4日間分、72時間やってみました。

年齢的にもみんなかなりダメージあったんですけど……メディアの人たちがすごくキラキラしていたんですよね。いつもと違うことをいつもと違う仲間とやってるんだ、と。メディアってインターネットに押されたり、批判の的になったりしているんですけど、ホントに生き生きとやってくれて。

オンラインがオフラインの代用品ではなくて。僕も最初は代用品だと思ってたんですけど、参加してくれた人が福島に足を運んでないのに「芋ロス」になりましたと教えてくれたり。オンラインでも人と人の温かさやつながりをつくることができるんだ、と初めて感じた体験でした。

ただ、これは全部インターネットで、ということではなくて、新聞、テレビ、ラジオという生まれてからずっとなじみのあるメディアと組み合わせることで、みんなが体に入れやすかったのではないかな、と思います。例えばYouTubeで流す映像も、見慣れたテレビ番組の立て付け、テロップの入れ方、カメラワークやライティングなどが取り入れられていると、それらのメディアに慣れ親しんだ人が、その世界にとても入りやすくなるわけです。

あとは、今回の72時間、出演者の方も含めてみんなちょっといい人になってましたね。メディアって喜怒哀楽、怒りも含めて、いろいろ受け止める場所ではあるけど、テレビを見て、ラジオを聴いて、みんな優しくなるんだな、と。そして、これがメディアの役割なんだと思いましたね。

事例紹介②:風とロック芋煮会
事例紹介②:風とロック芋煮会 
箭内さんがもう10年以上続けているロックフェスティバル。コロナ禍を機に、アップデートされた村祭り。デジタルを駆使しているが、デジデジ、していない。実に箭内さんらしいイベントです。こちらもより詳しい解説は、カンヌ公式サイトコラム「LIONS GOOD NEWS 2021」にて。

箭内流のコミュニティビルディング

──最近、「地方への移住者、3世代たってもまだよそ者扱い」というような、ニュース記事を見まして。芋煮会が福島というコミュニティでうまくいっているのは、地元メディアとのリレーション、そこからのお墨付き・継続性といったところが大きい気がします。

そうですね。例えば、最近増えてきた地方の芸術祭を例にとると、髪の毛がながーいお兄さんが海岸でずっとオブジェ作っていたり、汚いツナギを着た金髪のお姉さんが古い一軒家を真っ赤に塗りつぶしていたり。地元の人たちのストレンジャーに対するアレルギーではないんですけど、良くも悪くも驚きがあって。地方の人たちはなかなか異質なものを受け入れる免疫がないので、よそでどれだけ成功事例があってもなかなか入っていきにくいコミュニティはたくさんあります。時間をかけて、地元の人たちと新たにそこで何かをしようとする人の共創、そこでできたものを第三者が楽しみにやってくる、という構図をつくらないといけないと思います。

その過程でボタンの掛け違いや誤解なども生まれるでしょうけど、地元の人もそれを乗り越えていく、体験して面白さを知っていく、というのがコミュニティで何かやる意義だと思います。そんな時にオンラインが入り口になっていると、刺激も適度に緩和される気もしますね。

風とロック芋煮会も震災を経て、少しずつ少しずつ、信頼されていったというのはありますね。継続していく中で。いいことあったよね!というのが何年か続いてから、面白くなりました。あとは、東京のものを持っていくのではなく、地元の人と一緒に創るという視点。そのうち地元の人が創ってくれて、僕がお客さんとして行くのが理想ですね。

人間、与えられることの苦しさ、居心地の悪さってあると思うんですね。田舎にいくと、めちゃくちゃお土産もらって帰ってくることってあるじゃないですか。人にあげることで自分が満たされていくというのは、とても大事なことだろうなと思います。地方の人も深い関係になるとめちゃくちゃ深いんですけどね、その関係になるまでの一線をどうやって越えていくか、という。僕が心がけていることは、なるべくお客さんの顔と名前を覚えようとしているんですよ。もう何百人は覚えています。具体的な顔が浮かぶ人が、どうしたら喜んでくれるだろう、何をしたら悲しんでしまうだろう。想像しながらいろんな企画を選んだり、捨てたり、思いついたりできるというのはすごくありますね。この創り方が自分の東京の仕事にフィードバックされてる気がしますね。

──こういう、周りの人のことを考える優しいところなんですね、箭内さんも浜島さんも、一緒にやっていていいところは。

僕、実家が菓子店なんですよ。対面接客業の息子なんですよ。広告業界の人にもいろいろいるじゃないですか。先生の子供とか建築家の子供とか装丁家の子供とか。装丁は多田琢さんで、建築は佐藤可士和さんを想像したんですけど。その親の職業っぽい広告作るんですよ、みんな。これは僕の持論なんですけど。だから1対1の対面は大事にしているとも言えるけど、そこが抜けないので……突破力がないんですよね(笑)。

──確かに顔が見えるリアリティは大事ですよね。ペルソナと言われても、おいおいってのも多いですからね。

浜島先生もおっしゃっていますが、どれだけ商品のことを考え尽くしても、グループインタビューなどで実際のユーザーに会うと、想像と違った、裏切られたということも多いので、生身であることの大切さを常に矯正していかないと、ちょっとした言葉のさじ加減みたなところまで調整していくときに困っちゃうというのも、もちろんです。

ただ、グループインタビューなどはバイアスがかかっていることもあるので。僕が一時期やってたのは、5~6人のサンプルのTwitterをフォローせずに観察し続けるんですよ。その人が世の中をどう見てるか。たまに自分が作ったものに面白いとかつまんないとか言ってたりとか。その5~6人を満足させるものをどうやったら作れるか、ということをやってましたね。
顔も知らないんだけど、この人がいいって言ったら300人くらいはいいっていってくれるんですよ。

データとの付き合い方、チームの在り方

──作り方で言うと、最近の広告はデータ含めて科学的になってきてますからね。箭内さんは、データや科学と友達になっています?それとも距離を置いています?

博報堂にまだいたときに、マーケティングの新人の前で話をしなきゃいけなくて、そこで最初に質問してきた新人が「箭内さんの中にはマーケティングがありませんよね」という非常に失礼なことを言ってきまして(笑)、「うるさい」と言いながらちょっとうれしかったんですけどね。科学を否定していた時代もあるんですよ。データに振り回されたり、言い訳にしてるだけじゃないのかと散々思って、そこに目をつむっていた時もありましたよ。

今は、科学の奥に何があるのかを何とか見極めたいと思いながら、数字の裏にある真実を見つけたいな、と。なるべく無視はしないようにはしていますね。だから、クリエイティブディレクター的な神通力でやっているわけでもないんです。

──クリエイティブディレクター的な神通力というと?

だいたい1時間じゃないですか、会議って。僕、ときどきテレビとか出ますけど、クリエイティブディレクターは僕の中ではそういう仕事でもあるんですが。この1時間の中で見せ場がちゃんとつくれたかどうか、神通力を感じてもらえるような。クライアントと打ち合わせしてたり、プレゼンをしてたり、スタッフと話しているときに「うわ、すごいこと言ったな」という場面を1回はつくらないと、その1時間は何だったのかと。そういう感覚ですね。だからオンライン会議が増えて、この1時間番組の中で自分は何ができたんだろう、と。だから、すごく苦しいですね、今。目の前の人たちが視聴者だと思って、打ち合わせはやってますね。

──チームでやる時に何か意識していることはありますか?

チームもどんどん若い人間になっていって、会話の流れをずっと聞いていると、どんどん科学的な正解にいきたがるんですよね。科学的な正解って少し麻薬チックなところがあって、ロジカルで、企画書も理路整然としてすごくキレイで。これはこれでいい話なんですけど。でもずっと見ていると、大事なところに空欄が大きく広がってどんどん話が進んでるぞ、と。その空欄を埋めるのはエージェンシー、電通の役割である、という浜島先生の話はすごく分かります。パズルを解いていくゲームみたいになると、人間じゃなくてもできますから。それこそAIとか。その階段を素直に上ってしまうと、例えばアレもコレも15秒にうまく入れることできますよ、オレ。腕があるから、ってなっちゃうんですよ。

ある人が、最近の広告を作ってる人は売り込みがどんどんうまくなっていて果てしないねー、と言っていて。やはり、売り込みじゃない部分の文化であったり、思いであったりというのは科学で数値化されないので、空欄という話もそうなんですけど、心や血の通ったものにしていくには、そうじゃない方向にいっているなら、誰かがそこを止めなきゃいけないな、といつも思います。

風とロック芋煮会や藝大の若い学生と接するのもそうなんですけど、自分が浄化されて、このドロドロしている世界に帰ってきて、ギャップを目の当たりにしながらも、切り離さずに開通させていくのが自分の使命だと思っています。僕らがやらなきゃいけないことって絶対あると思うんですよね、広告を作る者の矜持(きょうじ)というか。

広告の世界にいる人たちへ

──最後に、エージェンシーの役割という話も出たので、広告の世界にいる人にひとことお願いします。

これまでずっといろんなタイミングで「今が過渡期だ」「時代は変わるよ」と散々言われてきたけど、本当に変わる時がそろそろやってきてるなと思います。このあと、世の中が、自分がどうなっていくんだろう、古いとか新しいとか、どう向き合っていくのかが非常に重要なタイミングなのではないかと感じますね。

今までにないくらい、壊れなかったものが壊れて、新しいという言葉を使うのも陳腐なくらい想像できないようなことが起きて。その時に人が冷静でいたり、優しかったりするために何ができるのか、みんな、そこと今向き合ってる最中だと思います。電通さんも含めて。新しいメディアが生まれた、新しいクリエイションがトレンドだとか、そういうことでは全然なくて。これからどうしようか、というところにいるんだなと思います。

──まさに、変化が大きいというのは恐怖ですものね。そこでパニックになって変なことをするのではなく、いかに冷静でいられるか、優しくできるかというのは非常に大事ですね。

広告の世界の人って、みんなポリシーないねってよく言われるんですけど(笑)、自分の主義・主張ではなくて、与えられた仕事でどう成果を出すかに長けた人たちなんです。それゆえに、いろんなことを言われたり、広告の世界は声をあげないと散々言われてきたけど、逆に言うと、広告の世界の人が持っているバランス感覚や人のことをおもんぱかる技術と努力は途轍(とてつ)もないものがあると思うんですよ。

広告業界の人は、ある種の絶滅危惧種ではないですけど、この不思議なバランス感覚を恥じずにやっていったらいいんじゃないか、と思いますね。何にも言わないもんね、広告業界の人。内閣退陣、原発反対と言ってる人をみたことないですからね。それは考えがないんじゃなくて、賛成と反対の両者をどういうふうに結び付けて前に進めていこう、ということをじっと観察しながらコミュニケーションの役立て方、自分のスキルの役立て方を切磋琢磨している人たちだから。だからこそ、すごく良い中立にもなれるし、ケンカの仲裁もできるんです。自分たちにしかできないことに誇りをもっていてほしいな、と思います。

「風とロック芋煮会」に参加してくれた徳島出身のバンドがいまして。わざわざ徳島からね、福島まで来て参加してくれたんです。彼らが歌う前に、今回のイベントを「コロナ禍でのイベント中止の代わりではなくて、来年の開催のための前夜祭なんです!」と言ってくれて。これは、広告の人間が得意な価値の変換というか、新たな意味づけをしてくれたんです。これを聞いて、みんなうれしくなったんですね。同じことをやっていてもそれは何なのか、意味をのせて人の気持ちを変えていくということもできます。藝大アートフェス2021も浜島先生はじめ、みなさん、広告の専門家の方々にお願いしたので、あのベストなものにすることができたと思います。

──お褒めいただきありがとうございます!

ホントに良くやっていただいたので、、、僕が電通の宣伝したいくらい(笑)。


橋本:いやー、盛り上がりましたねー。箭内さん、絶好調でしたね。ありがとうございます。また、われわれ広告人に対してもとても励みになる言葉を最後にいただき、感謝感謝でございます。ちなみに僕は3回、おっ、となりました、視座が高いな、と。さすが箭内先生です。

井口:お手伝いした東京藝大アートフェス2021は、プロジェクトとしての成功だけでなく、対外的な評価も良いのはうれしい限りですね。箭内さん、浜島さん、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。というわけで、われわれにご相談いただければ、もろもろの学びをお仕事・雑談の中でご紹介していく所存です。特に雑談に長けているわれわれですが、お仕事もいただけますと、やる気倍増。雑談もさらに倍、ということで。ここで紹介させていただいた東京藝大アートフェス2021のような、最先端の戦略・戦術をご提供しますので、ぜひ!お気軽にお声がけくださいませー。

次回更新は、いま一緒にやっている案件の進捗状況からいって12月、1月くらいですね。またお会いしましょー!でもここまでの高いレベルの話になるかなー(汗)。あっ、あと最後に!ここでいただいた箭内さんのお言葉をベースに事例をさらに深掘りしているコンテンツも、カンヌのコラムで展開中です。ぜひ、あわせてご覧ください!もう少し実務ベースですけど。
問い合わせ先:offer@craftprlaboratory.com

Special thanks:平岡真吾(電通)、細田知美(電通PRコンサルティング)、蔵谷玲奈(風とロック)
 
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サッポロビールに学ぶ!顧客の文脈に“置いてくる”ターゲティングとは

コンテクスチュアル広告
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Cookieフリー時代に向け、デジタル広告の新潮流である「コンテクスチュアル広告」(※1)の可能性を探る本連載。

コンテクスチュアル広告のトップランナー・GumGum Japanの取り組みをもとに、その画期性と有用性を解説した前回に続き、今回は具体的な企業事例からコンテクスチュアル広告の魅力に迫ります。

サッポロビールの福吉敬氏をゲストに迎え、GumGum Japanの松本亮氏、電通デジタルの廣田理也子氏が語り合いました。

※1 コンテクスチュアル広告
文脈(コンテキスト)解析によりブランドとマッチしたメディア・コンテンツ上に掲出され、そのブランドと相性の良い生活者にリーチできる運用型広告。(別名:コンテキスト広告/コンテンツ連動型広告)
 
福吉敬氏、松本亮氏、廣田理也子氏
<目次>
「企業都合の広告」から、「お客さまの文脈に寄り添う広告」へのシフト
コンテクスチュアル広告のKPI設計は「顧客起点」がカギになる
コンテクスチュアル広告のクリエイティブは、「おもてなし」の精神がポイントに

「企業都合の広告」から、「お客さまの文脈に寄り添う広告」へのシフト

松本:福吉さんはサッポロビールでコンテンツコミュニケーションを多く手掛ける中で、かなり早い段階から「文脈を意識した施策」に取り組まれてきていますね。近年ある種のバズワードとして独り歩きしつつあるコンテクスト(文脈)という言葉を、どのように認識していますか?

福吉:文脈はいろんなことを内包しているので、単純に解釈するのは難しいのですが、アフィニティー(興味関心)・モーメント(瞬間)・ジェネレーション(世代)の組み合わせで構成されると考えています。

そもそも、一人一人の興味関心は異なりますし、同じ人でも朝と夜、月曜と金曜で気分は変わり、世代間での文脈の差異もあります。昨今は働き方や育児の仕方、休日の過ごし方も多様化し、消費者の興味・思考も多種多様になっていると感じます。こうした「多様な文脈」に寄り添うことが今の時代の広告に求められているのではないでしょうか。

廣田:私も同感です。同じ性別・年代でも同じ商品やライフスタイルに憧れを抱くという時代ではないですし、「Right time、Right message、Right place」で広告を出すといった“文脈作り”のニーズが高まってきていると感じます。

松本:現代人は選択肢が大量に増えたからこそ、「自分にとって文脈を感じられない情報」はノイズと捉えてすぐにシャットダウンする傾向にある、ということは私も感じます。従来のマス広告のように「情報を発信する側の都合」だけではなく、「情報を受け取る側の文脈」を捉える必要性が高まっているんですね。

福吉:スマホが普及するよりも前、企業視点で都合のよい文脈を作るような広告が強く機能していた頃は、娯楽の種類も、お客さまが日々接する情報量もそこまで多くありませんでした。

ビールを例に挙げると、かつては消費者が選ぶ銘柄がある程度決まっていて、デモグラ的に「30代男性であればこう!」という型にはめるやり方で、リーチ勝負のマスコミュニケーションが機能していました。しかし、もう時代は変わっています。スマホの普及であらゆる生活スタイルが変わり、デモグラのような画一的なことだけでは通用しなくなってきています。

自分が今見たくて見ているコンテンツと全然関係のない広告が文脈を無視して出てくるという状況がありますが、そういう従来のやり方では、お客さまに“愛される広告”は作れないと思っています。

松本:なるほど。“愛される広告”を作るために、サッポロビールではどのようなことを心がけているのでしょうか?

福吉:それは“お客さまの幸せ”を第一に考えることです。お客さまが何を求めているのか?どんなことに興味関心を持ち、幸せを感じるのか?を起点に、広告を発信する側が、お客さま一人一人の“文脈”に合わせていく。つまり、「企業が伝えたいこと」を前提にターゲティングやクラスタリングをするのではなく、顧客のペルソナを理解し、そこにある個人個人の文脈に対して、何を伝えられるのかを考えることです。

コンテクスチュアル広告のKPI設計は「顧客起点」がカギになる

松本:その点は全く同感です。私たちの扱うコンテクスチュアル広告は「ポストクッキー時代の運用型広告の代用品」と捉えられがちですが、本来の役割は必ずしもそうではなく、その顧客にとって適切なモーメントに適切なクリエイティブを掲出することで、ブランドリフトするためのものでした。

しかし、GumGumが広告主企業に実施した調査によると、全体施策を考える時は「ブランドやサービスに好意を持たせる」ことを最重要視し、デジタルを考える時は「顧客獲得効率を意識した施策展開」を最も重視する傾向にあることが分かっています。

全体施策とデジタルマーケティングに対する目的のギャップ
GumGumの調査より抜粋。調査概要は記事末尾を参照

松本:全体設計はしっかり「顧客起点」でスタートできているのに、なぜかデジタルになった途端に「企業都合の視点」になりがちということですね。この点について、電通デジタルで普段GumGumのセールスサポートをしていらっしゃる廣田さんはどう思われますか?

廣田:松本さんのおっしゃる通り、特に日本は今でも「デジタル広告はパフォーマンスを重視する」という傾向がまだ強いと感じます。GumGumの本拠地であるアメリカの担当者に話を伺ってみると、アメリカでは各媒体におけるパフォーマンスよりも、「施策全体としてのKPI達成度」を重視し、そのKPIも「ブランドの価値向上に寄与したか」に力点が置かれています。

もちろん、アメリカと日本では広告費の規模感やカルチャーの違いはあります。しかし日本でも、Eコマースでのコンバージョンなど直接的なユーザーの行動にはつながらなくても、例えば「スーパーにいる時に、以前閲覧したサッポロビールのコンテクスチュアル広告をふと思い出してビールを手に取る」といったように、「店頭購買に寄与するデジタル広告」の可能性を、もっと実証していく必要があると考えています。

松本:なるほど、欧米ではパフォーマンスに偏らず、デジタルも含めてブランドリフトに貢献できているかという品質に重きを置く傾向にありますよね。福吉さんから見て、広告主側の視点ではどうですか?

福吉:私たちも、たとえその場ですぐにコンバージョンに直結しなくても、ターゲットの文脈に深く入り込んでブランドの印象を残せることに、コンテクスチュアル広告ならではの大きな価値があると思っています。

ターゲット不在でも、ただプロダクトのUSP(Unique Selling Proposition:自社やブランドが持つ独自の強み)を打ち出すだけで従来型の広告は作れます。「麦芽増量」とか「コク」とか、単純に「うまい」とか。もちろん、USPの訴求はこれからも大切なものですが、「うまいだけでは選ばれにくい世の中」になりつつあるのが現実で、「このうまい商品は、あなたのもの」まで伝える必要があるんです。そこで重要なのが文脈という考え方です。

松本:そう考えると、コンテクスチュアル広告の成否はどのように「評価」していくのが適切なんでしょうか?

福吉:顧客起点で考えて、コンテクスチュアル広告によって「お客さまとブランドの距離がどう近くなったか」「お客さまにとってのブランドとの出会いの入り口をどう作れたか」を測ることです。

コンテクスチュアル広告を見たお客さまが、「将来的にファン化できているかどうか」「ブランドサイトに訪問しているかどうか」といった評価軸ですね。

その上で「その広告でどんなことを狙って、それが達成されたかどうか」をKPIに設定します。例えば「ブランドサイトのコンテンツを5000人に読了してもらうこと」を目標にするなら、インプレッション数と離脱率から逆算して明確なゴール指標を作れます。

そして、先ほど廣田さんのスーパーのお話にあったように、ブランドサイトへの訪問率などをもっと「アトリビューション」の観点で計測したりすること。つまり、瞬間的な反応だけでなく中長期的な視点で計測していくことが、今後はますます重要になるのではないでしょうか。

コンテクスチュアル広告のクリエイティブは、「おもてなし」の精神がポイントに

松本:ここまで、コンテクスチュアル広告の評価指標について教えていただきましたが、広告における「文脈」という考え方を重視してきた福吉さんから、広告表現の作り方についてもアドバイスを頂けますでしょうか?

福吉:私は“置いてくる”という言葉をよく使うのですが、「こんな商品です」といった直接的な表現よりも、“文脈の中に商品を置いてくる”ような表現が望ましいです。

例えば、「土用の丑(うし)の日は、鰻(うなぎ)と一緒にヱビスビールを!」というコンテンツではなく、「土用の丑の日の起源を知っていますか?」というコンテンツでお客さまの興味関心に応えながら、おいしそうな鰻の写真の端っこに、さりげなくヱビスビールが置いてある。これにより、土用の丑の日が来た時に「鰻とセットでヱビスビールを飲みたい」という気持ちを醸成させることを狙うのです。

また、先ほど挙げたアトリビューションを計測するためには広告からブランドサイトに遷移していただくのが理想ですが、そのブランドサイトの表現も、コンテンツの文脈やストーリー、雰囲気も含めて整合性を持たせることが重要です。

松本:今のお話を伺っていて、「おもてなし」という言葉が浮かびました。まさに高級旅館のように、入り口(広告)から出口(ブランドサイトや店舗での購入体験)まで、統一感のあるメッセージを届けられるように緻密に設計されているのですね。

福吉:それは私たちサッポロビールが“嗜好品”を取り扱う企業だからかもしれません。生きていくための必需品ではなく、人生を豊かにする楽しみや娯楽をお届けする。だからこそ、「おもてなし」の精神でお客さまの気持ちに寄り添うことが大切だと思っています。

松本:大変分かりやすい事例をありがとうございました。最後にお二人がコンテクスチュアル広告に期待することや要望を教えてください。

福吉:私たちはお客さまがどこにいるのか、何が好きなのか、データを分析しながら常に考え続けています。そこから導き出された“文脈”に対して、自然に溶け込むことができるコンテンツには非常に大きな可能性があると感じています。

今は「関心を持って接触した記事やコンテンツに対して、その場で適切な広告が掲出される」という仕組みですが、今後はもう一歩踏み込んで、例えば「時間帯」とか「位置情報」などでコンテンツやクリエイティブの出し分けができるとうれしいですね。

イチ消費者としても、例えば北海道旅行中にグルメサイトを閲覧している時に、最初から「北海道のグルメ情報」が出たり、ヱビスビールが好きなら「北海道でヱビスが飲める店」がさりげなく出てきたりしてくれたら最高だと思うので(笑)。これはID情報がなくてもできることなので、Cookieフリー時代にもマッチした施策になると思います。

廣田:私自身がそうなのですが、最近は動画やビジュアルで情報収集する方が増えています。現在は動きのあるディスプレー広告が中心ですが、もっと動画サイトや、ネットラジオのような音声の領域でもコンテクスチュアル広告ができると世界が広がりそうだなと期待しています。

松本:皆さんの思いを熱く受け止めて開発を進めてまいります!本日はありがとうございました!


<調査概要>
プライバシーやインターネット広告に対する意識を調査


1. 業界関係者向け調査 
・調査主体:GumGum
・調査実施機関:シードプランニング
・調査実施期間:2021年6月24日〜7月15日
・調査手法:インターネット調査
・対象者条件:広告主または広告会社
(広告代理店・メディアレップ)
・サンプルサイズ:200名
 
2. 生活者向け調査 
・調査主体:GumGum
・調査実施機関:インテージ
・調査実施時期:2021年7月16日~7月18日
・調査手法:インターネット調査
・対象者条件:20~59歳男女
・サンプルサイズ:n=1073

 

Twitterリンク

中野区、奇抜すぎる図書館が物議…ツタヤ図書館インスパイア系、10mの高層書架

<7階の天井から9階にかけて吹き抜けになった場所に、高い高い本棚があります。(高所恐怖症のスタッフは見上げるだけでもドキドキです……)>

 来年2月1日にオープン予定の東京・中野区立図書館の公式アカウント「100日後に開館する中野東図書館」の、そんなツイートが話題を呼んでいる。

 この投稿に添付されたのは、3階上の天井に向かってそびえ立つ超高層書架の写真。高さは、ゆうに10メートルを超えると思われる。国内でも最大級の高層書架なのは間違いない。

 このような高層書架から「また“ツタヤ図書館”か?」かと思われたが、運営者はヴィアックスと紀伊国屋書店の共同事業体。TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とはまったく無縁の企業が、ツタヤ図書館顔負けの高い書架の図書館を運営するというのは、どういうことなのか。

 中野区では、もともと8館あった区立図書館のうち、本町図書館と東中野図書館の廃止を2020年10月に正式決定。その代わりに、区内中学2校を統合した中野東中学校等複合施設内に新しい図書館が建設されることになった。これが件の中野東図書館だ。

 同館は複合施設内の7~9階に設置され、総面積3445平米、蔵書17万冊(開架10万冊)と比較的コンパクトな図書館ながら、約300の閲覧席が用意されている。

 複合施設全体で、総事業費は93億4500万円(うち内定している国の補助金は学校建設に関する5億5000万円)。今年9月17日建物の竣工直後から図書館は開館準備に入っていた。

 その7階から上へ広がる吹き抜け部分の壁面に、高さ10.5メートル、幅3.5メートルの超高層書架が配置されている。この書架が今回、公式アカウントのツイートによって広く拡散されたわけだが、写真のインパクトが強かったからか、投稿直後から批判が殺到。「本は飾りですか?」「手が届かない本棚に意味があるの?」「(インスタ)映え目的?」「こんな書架つくるより、もっと本を買うべき」「司書の待遇は?」「光があたって本が傷む」「地震対策してるの?」などの意見が続々と書き込まれていったのだった。

 今回の件でまず驚いたのが、中野区の公式アカウントであるにもかかわらず「中野区立図書館」とはせず、2019年12月から2020年3月にかけて大きな話題になった『100日後に死ぬワニ』をマネしたようなアカウント名になっていることだ。役所の公式アカウントにしては悪ノリがすぎるのではないかとの批判も予想され、てっきり運営受託した企業の暴走だったのかと思っていたが、そうではなかった。

 中野区に本件ツイートについて情報開示請求をした区民のブログ(中野非公式リポート)では、来年2月のオープンに向けてSNSで開館までのカウントダウンの広報を提案したのは指定管理者側だったが、「100日後に開館する~」との名称を記載しているのは区側の提案によるものではないかと指摘。確認すると、区はこの点を否定し、お互いの意見交換の結果としている。

 また、このブログによれば、投稿はあらかじめ区側でチェックして出すようになっていて、10月18日に翌月18日まで、まとめて1か月分(ただし週3回)の投稿が区側に提出されていた。それをみると、11月7日日曜日の欄には、問題になった超高層書架の写真とともに、実際のツイートされたものと同じ内容が記載されている。

 このことから、役所は当初から、批判されるであろうことは十分に覚悟のうえで話題になることを狙った「炎上マーケティングではないのか」との指摘が、にわかに信憑性を帯びることになった。

 もうひとつ驚いたのは、日本最大級の高層書架の存在が、市民にもまったく知らせていない“騙し討ち”にほぼ等しい行為だったことである。

 中野東図書館は2つの図書館の閉館に伴って進められた計画だったことから、旧図書館の閉館に反対する市民も少なくなく、計画段階からそのプロセスについては情報開示請求もされていた。

 事前に開示された図面やパース等をみれば、その存在は一目瞭然のはずだ。それにもかかわらず、建物が完成し、開館まで100日を切った準備段階で、超高層書架が明るみに出るというのは、実に不可解である。

 区の担当部署によれば、複合施設の基本設計(案)は2017年10月4日に議会提出されていたが、この時点では、建物内に吹き抜けをつくることは明示されていなかったという。

 しかし、2018年6月からの専門家会議までにつくられた実施設計では、明確に吹き抜けを設置することが示されていて、そのことについて専門家会議の委員も承知していたはずだという。さらに、2019年8月からの市民も含めて4回実施された検討会議でも承認されたはずというが、その議事録をみても、超高層書架の話はどこにも見当たらない。

 何より、この超高層書架が描かれた建築パースが、これまでに公開された形跡はどこにもないのだ。担当部署でもパースは把握していないというから、それでは誰も異を唱えようがない。区内で図書館について活動している市民団体のメンバーは、こう話す。

「事前に提示されていた図面からは、そのような高い書架が設置されることは、まったくわかりませんでした。知ったのは、今年9月末に完成後の図書館を見学させてもらったときでした。『ここに本を置いて、使えるの?』と驚きました」

 さらに興味深い事実がひとつ、浮かび上がってきた。それは、2018年11月に酒井直人区長が、国内初のツタヤ図書館をオープンさせた武雄市を視察に訪れていたことである。当然のごとく図書館も訪れており、自らのフェイスブックに「武雄市立図書館は、以前から憧れていた」ことを告白したため、「中野区にもツタヤ図書館ができるのでは」とのウワサがたちまち巷を駆け巡ることになった。

 中野駅前のサンプラザの解体や図書館の統廃合を決めていた田中大輔前区長(自民・公明・維新推薦)を破って、この年の3月に当選したばかりの酒井区長(立憲、国民民主推薦)は、区制改革の期待も大きかっただけに、「ツタヤ図書館に憧れていた」との発言には落胆した市民も多かったに違いない。

 そこへ、今回のツタヤ図書館ばりの超高層書架の問題が出てきたわけだ。酒井区長は、指定管理者にCCCを選定して各方面からの批判を浴びることを嫌い、設計者に要望を伝えてデザインだけツタヤ図書館ふうにしたかったのではないのかとの見方も広がっている。ある図書館関係者は、こんな感想を漏らす。

「設計者が、このような奇を衒ったものを自ら提案するとは思えません。図書館管轄部署は反対することもできず、これをどのように使うのかの計画すら、いまだにできていない状態になっています。ツイッターの公式アカウントについても、指定管理業者は問題を引き起こしかねないのは十分に分かっているはずで、自らの意思でトラブルを呼び込むことはしないはずです。それを行わせる力を持ち、自分にとって大いに得になると信じた人間が、全体の黒幕であると思います」

 今回の件について、区の担当部署である教育委員会子ども・教育政策課に聞いてみた。

――高いところの作業は、どうするのか?

教育政策課 裏側にネジがあって、ネジから開閉ができる。裏側に本を配架する場所がある。基本的に表に配架して、裏には関連する本を置くことを考えている。はしごを使わなくても裏側はフロアに面している。7階は表から手にとれ、8階と9階は裏側に書架がある構造になっている。

――高い場所には、本は貼り付けるのか?

教育政策課 固定するか、いろいろご意見をいただいているところなので、そこについては検討重ねているところ。

――この書架は誰のアイデアなのか?

教育政策課 こちらの要望に基づいて、設計者が基本設計、実施設計をした。何度か折衝したと聞いている。基本設計の段階から吹き抜けは出ていない。2018年の途中から実施設計から変わった。

――パースはどうして出さないのか?

教育政策課 自治体でも、パースを公開しているところと、ないところがあると思う。うちでは、指定管理者決まってから、区民に対してパースを見せることはあまりしていない。一部見せているかもしれないが、大々的には出していない。

――高所作業については資格が必要か?

教育政策課 高所作業も含めて、どういうふうにするのか、指定管理者とも検討重ねているところ。必要な場合は足場組んで行う。

――それは指定管理者が資格を持った人を手配するのか?

教育政策課 基本的には、そこは外部委託。司書には難しい。

――見た人の感想として、地震が起きた時は怖いと思うが?

教育政策課 バー以外でも固定は必要だろうという想定はしている。バーはあくまでも補助的なもの。

――本の表紙を表にして配架するのか?

教育政策課 面出しについては、企画系を出すことを考えている。企画に関するもの関連は裏側に配架する。あくまでも書架として、本を選ぶひとつの誘導というか、展示になる。

――同じ本が表と裏にあるのか?

教育政策課 そこに置くのは必ずしも本ではなく、あくまでも検討中の案だが、たとえば表面に手芸に関する展示をし、裏に手芸に関する本を配架するとか。

――裏側からも見られるのか?

教育政策課 (裏側には)誰でも入れる。この書架とトイレの間がある。それは横幅があり入れます。普通にフロアなので。

――どこから見られるのか?

教育政策課 各フロアは吹き抜けになっているので、9階だったら9階の真正面から見られるところがある。8階は8階で見られるところがある。そこに興味を持ってもらって、裏に回ると関連本があるというかたち。

――たとえば、あそこにピンポイントで手芸の本があるとして、その真裏がどこかすぐわかるのか?

教育政策課 そういったアナウンス、見せ方は必要だろうなと思う。手芸とかで興味を持ってもらう。真裏に関連本が配架されているようなイメージ。

――具体的に(配架を)どうするのか?

教育政策課 いま指定管理者と話し合っている。【※1】

――いつごろ決定する予定なのか?

教育政策課 一応、12月頃までには決めたい。2月に開館するので、たぶん1月には完成していると思う。

――批判が殺到しているようだが、今後、この公式アカウントのリプライを制限したり、消したりすることはないか?

教育政策課 そういうことをするつもりは一切ない。ご意見はどしどしお寄せいただきたい。我々はそれを今後の広報の方法やサービス提供に反映していきたい

 専門家は、今回の件をどのようにとらえているのだろうか。中野区で過去に区内図書館の新設にもかかわったことのある人物に話を聞いた。

――手が届かないところに本を置くのは、図書館としての実用性がないだけでなく、安全性などデメリットもさんざん指摘されている。それらを犠牲にしてでも、デザインを優先するのはどうしてか?

「建築家の自己満足でしょう。発注者が、このようなデザインはお願いしていないと言えば、建築家はデザインを変えます。私たちがまず行うのは、専門家・設計者がやりたがる吹き抜けの阻止です。

 理由としては、第一に空間利用の効率上、無駄が多すぎることです。少しでも収蔵量を多くして、利便性を高めたいというのが司書の本能です。使えない、利用者の手が届かない壁は無駄です。第二に冷暖房の効率が悪く、光熱経費がかさみます。上部から扇風機を回すなどと言いますが、それも無駄です。

 あんな書架はモニュメントではありませんか。冗談にしか思えません。よほど財政が豊かで、専制的に思い通りにできるならともかく、切り詰めながらの運営が常です。意味がわかりません。

 私たちは、本棚は6段までにしようと考えてきました。利用者が無理なく手が届く範囲がいいからです。特に、日本は地震が多いので、書架から本が落下しても大事にはならないようにしないといけません。地震の揺れにも耐えられて、本が落ちないようにストッパーとして専用のテープを張ったりする工夫をしましたが、そうすると滑らなくて書架整理などには不都合でした。それでも、落ちても大事に至らないことが重要だと思います。

 大型の本は書架の下のほうを使う。子供のスペースでは、さらに低くしようと考えると、収蔵量は減ります。そのため、利用できる書架スペースが必要となります。

 吹き抜けはやめて、地道に、本来の資料で見せるやり方にすべきです。まして売れ残りの図書を買って、使えもしないところに(大量に)並べるなんて、バカの極みです」

 CCCが運営する通称・ツタヤ図書館は、公共図書館であるにもかかわらず人が多く集まる賑わい創出を優先して、本来の図書館機能をないがしろにしているのではないかとの批判が絶えない。

 当サイトでは4年前、山口県周南市の徳山駅前図書館で、2000万円を使って9メートルの高層書架に中古の洋書を張り付ける計画を進めていることを報じた(『ツタヤ図書館、お飾り用の読めない洋書購入に巨額税金投入…高さ9mの棚に固定』)。すると、同記事が出た直後からネット上で非難の声が殺到。その後、CCCと周南市は計画中止を発表し、壁面に地元アーティストのデザインによる本のイラスト壁紙に変更した。

 だが、それでもツタヤ図書館の集客力を見習おうとする自治体や受託企業は後を絶たず、高層書架にしたり、燦々と太陽光が書架に降り注ぐ図書館も出てきている。

 そのようなトレンドのなかで、中野区があえて超高層書架を導入したのは、それだけ専門職の意見が通りにくくなっているからだろう。

 現在、7館ある中野区立図書館は中央も含めてすべて、民間企業が運営を担当しているという。都内でも、地域館は指定管理にしても、図書館行政の司令塔となる中央館だけは直営という自治体が多いなか、中野区は完全民間委託なのは興味深い。行政が専門職を育てる場を手放してしまうと、運営能力はどんどん失われていくと考えるのは、果たして筆者だけだろうか。

(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

【※1】11/9時点での回答。この後、中野区教育委員会子ども・教育政策課は11/11に公式サイトを更新し、以下のような安全対策を行うことを公表した。「超高層書架は危険」と批判されたことを受け、ツタヤ図書館のような「中身がカラのダミー本を設置する」とした区の行き当たりばったり対応には、再度、怒りの声が上がり始めている。

○展示物については、紙及び発泡スチロール等の素材で作成します。

○各階上層部分については、書架として認識可能なように本のダミーを設置します。こちらも紙及び発泡スチロール等の素材で作成し、固定します。

○吹抜書架向かいのフロア側については、落下防止ネットを設置します。

中野区公式サイトより)

妻や夫の不倫を認める“オープンマリッジ”とは?婚外恋愛を選択する夫婦の事情

 既婚者にとって「不倫」のリスクは大きくなるばかりだ。政治家や芸能人、アスリートなどの場合はメディアで厳しく追及され、キャリアを左右するほど断罪されることもあり、一般社会でも不倫に対する風当たりは強い。

 一方で、結婚していながらもパートナーの恋愛を容認する「オープンマリッジ」の認知が徐々に高まっているという。「結婚したら生涯、その人と添い遂げる」という常識に縛られない新たな夫婦関係のあり方について、国内最大級の既婚者マッチングサービス「既婚者クラブ」の副管理人・あいこ氏に話を聞いた。

婚外に恋人を持つ「オープンマリッジ」とは

「歴史を振り返れば、明治時代初期くらいまでは『お妾さん』など、日本でも事実上の一夫多妻が慣行されていたこともありましたが、現代では不倫は隠すべき後ろ暗い行為とされています。しかし今、1970年代にアメリカの社会学者のオニール夫妻によって提唱された、婚姻関係を保ったままで夫や妻以外に恋人をつくることを夫婦で容認し合う『オープンマリッジ』という倫理観が、世界的に広がりつつあります。オープンマリッジで婚外の恋人の存在をオープンにするのはあくまでパートナーに対してだけで、知人や親戚などにまで宣言するものではありません」

 そう解説するのは、既婚者クラブの副管理人を務めるあいこ氏だ。既婚者クラブは独身者は参加できないマッチングサイトで、結婚していながらもさまざまな事情でパートナー以外の交際相手を求める人たちの出会いの場となっている。パートナーに秘密で登録している人もいるが、なかには夫婦で利用しているケースも存在するという。

 しかし、結婚相手以外と恋愛をするオープンマリッジは、いわゆる“不倫”とどう違うのだろうか。

「不倫はパートナーに隠しながらコソコソと恋愛をするものなので、バレたら離婚につながるなど、人生設計が崩れるリスクがあります。一方、オープンマリッジはパートナーが認めた上でほかの人と恋愛することができるため、気持ちの上で結婚相手を騙すような罪悪感を持つ必要はありません」(あいこ氏)

 近年、ドラマや漫画で「セカンドパートナー」や「婚外恋愛」などが取り上げられ始めているが、オープンマリッジはそれらと近しい関係性だ。ただ、前者は恋愛感情だけで性交渉がないのに対し、オープンマリッジは合意の上で交際相手との性交渉も認める関係となる。

 また、オープンマリッジは夫婦が性的パートナーを交換する“スワッピング”とも異なる。スワッピングは性的嗜好の一種で「多くの人とさまざまなプレイがしたい」という欲求によるものと定義される。対して、オープンマリッジは恋愛の一環として恋人に選んだ1人だけと性交渉を含んだ交際をする関係性なのだ。

「オープンマリッジでは、夫婦がともに恋人をつくる場合もあれば、どちらか一方のみが婚外関係をつくることもあり、夫婦の価値観や事情によって関係性はさまざまです。恋愛と同様に、夫婦の形も千差万別になっていると言えます」(同)

オープンマリッジを選択する夫婦の事情

 では、オープンマリッジを取り入れている夫婦とは、いったいどんな人たちなのだろうか。実際に既婚者クラブに登録した金子和幸さん(仮名・38歳)の体験談を紹介したい。

「結婚5年目の妻(37歳)に申し出た上で、今年6月から既婚者クラブに登録しました。夫婦の関係はすでに口喧嘩すらしないほど冷え切っていて、もはや互いを1人の男性・女性として見ることはできない状況だったんです。ただ、今年3歳になる息子の将来を考え、離婚はしないほうがいいという意見は一致していました。そんなころ、ネットでオープンマリッジという関係性を知り、『家族のつながりを保ったままで、恋愛のドキドキする気持ちを味わえるのなら』と、素直に妻に相談しました。妻から理解してもらうのは難しいかと思っていましたが、『私たちの間に愛がないのはわかっている。親としての責任は捨てないでください』と、案外すんなり了承してもらえました」(金子氏)

 あいこ氏によると、オープンマリッジを選択する夫婦には子どもがいる場合もあり、子育てが落ち着いて自由に使える時間が増えてきたタイミングでスタートする傾向があるそうだ。

 加えて、子育ても仕事も一息ついた熟年夫婦が導入することも多いという特徴がある。実際、既婚者クラブの利用者は30~50代がメインで、なかには70代の利用者もいるという。

「仕事や家庭以外の趣味や居場所を求めることは一般的ですが、オープンマリッジを選ぶ人もそれと同じで、今までとは違う新たな居場所や関係性を求めているんだと思います。また、新たに恋愛することで、人生そのものに活力が生まれるという効果もあるでしょう」(あいこ氏)

 また、オープンマリッジに踏み切る理由として、セックスレスの問題も大きいという。

「既婚者クラブを利用している夫婦のなかには、夫のED(勃起不全)が原因でセックスができず、『自分では妻を満足させてあげられない』という夫の意向でオープンマリッジをスタートさせたご夫婦もいます。セックスに関してはパーソナルな問題のため、個々で事情が違うのに、画一的に『不倫はダメ』と言い切ってしまうことは、まるで臭いものに蓋をするように目を背けている状態だと思います」(同)

 なかには、婚外相手との交際を経て、改めてパートナーの良さを知るケースもあるという。あくまでパートナーの欲求を大切にする方法を話し合った結果として、オープンマリッジを選ぶ人が出てきているのだ。

オープンマリッジを選択するときに守るべきこと

 互いを思いやった末の関係性とはいえ、オープンマリッジを取り入れた夫婦が必ずしも円満な関係を続けられるわけではない。「家庭を最優先する」と決めてオープンマリッジを始めても、徐々に恋人のほうに気持ちが入り、夫婦関係に亀裂が入ってしまうこともある。

「オープンマリッジは、婚姻関係にあるパートナーを傷つけないように気を使い合うことが大前提です。『恋人と会うときは事前に連絡する』『月に3回までしか会わない』など、夫婦それぞれの価値観に合ったルールを決めておくことが大切です。不倫を認めるとはいえ、パートナーをないがしろにしていいわけではありません」(同)

 最後に、オープンマリッジの未来について聞いた。

「オープンマリッジの関係性がうまくいかなかったり、そもそも考え方自体が受け入れられなかったりする人も多いので、すぐに浸透していくものではないと思います。ただ、夫婦には、それぞれにそうしなければならない理由があり、その家庭にしかわからない事情が複雑にからみ合っている。『不倫は悪』と簡単に片付けないで、夫婦のあり方のひとつとして、徐々に認知されてほしいですね」(同)

「心に決めた1人を愛す」という美学が浸透している日本では、オープンマリッジが広まるには、まだまだ時間がかかりそうだ。しかし、これまでの考え方にとらわれずに、それぞれの価値観を尊重した関係性を築く夫婦も増えていくのかもしれない。

※注:本記事は不倫を助長・推奨するものではありません。

(文=田中慧/清談社)

●「既婚者クラブ」
https://kikonclub.com/
https://e-venz.com/column/14087/

頻尿に悩む人に朗報のはずの「ボトックス」、なぜ普及しない?費用対効果は…

「トイレから出たばかりなのに、すぐにトイレに行きたくなる」

「尿意を感じてからトイレに行くまでに、我慢できずに漏れてしまう」

「就寝中、何度もトイレに起きる」

 このような症状に悩む中高年は少なくないだろう。これらは「過活動膀胱」といわれ、膀胱の筋肉が硬くなった状態であることを示している。

 従来、過活動膀胱の治療は薬を服用することが一般的だったが、2020年4月にボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が保険適用となった。過活動膀胱の患者にとっては朗報であるが、まだ広く知られていないのが現状である。新たな治療法であるボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法と過活動膀胱について、くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢医師に聞いた。

「過活動膀胱とは、急に尿意を感じ我慢できなくなり、慌ててトイレに駆け込むような症状をいい、一度、尿意を感じ始めると我慢できなくなり、頻尿になります。また、夜間頻尿を伴うことが多い症状ですが、実際にトイレに行っても、尿は僅かしか出ないという点も特徴です」

 日本では、 40 歳以上で 12.4%(男性 14.3%、女性 10.8%)の人が過活動膀胱の症状を有するとの統計もあり、性別を問わず加齢に伴い増加する傾向にあるが、理由は加齢だけではないという。

「加齢により膀胱の筋肉が硬くなり伸び縮みが悪くなることも原因のひとつですが、男性の場合は、前立腺疾患などが影響していることもあります。前立腺疾患の場合は、そちらの治療を行います。しかし、過活動膀胱は原因不明なケースも多く、ストレスなどが影響することも多くあります。いずれの原因の場合も、過活動膀胱により生活の質(QOL)が低下するなど、頻尿に悩む人は少なくありません。

 頻尿の目安としては、日中にトイレに行く回数が8回以上。夜間頻尿は、就寝中に1 回でもトイレに起きれば当てはまります。これまで、過活動膀胱の治療といえば、まず行動療法を行い、効果がない場合や症状がひどい場合には薬物療法も合わせて行うことがメインでした。しかし、薬物療法では、他の疾患によっては使用できる薬に制限が出るケースもあります。ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が新しい選択肢として加わったことは、過活動膀胱に悩む患者にとって有益だと思います」

 過活動膀胱の治療薬のなかには、緑内障がある場合には使用できないものもあり、薬の選択には注意が必要となる。

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法はなぜ普及しない?

 ボツリヌス毒素による治療は「ボトックス」と呼ばれ、美容医療の分野では、顔の筋肉を動かすことによって起きる表情ジワの改善に使用されており、安全性は高い。ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、ボトックスにより膀胱の筋肉を緩めることで症状を緩和する。

「実は、保険適用となる以前から、自由診療によって取り入れている医療機関もありました。しかし、全額自己負担となるため、希望する患者さんは多くはいなかったのが実情です」

 それが保険適用となり、多くの医療機関で行われるようになるかと思われたが、実際はそうではないという。

「保険適用となったことで、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が適すると考えられる患者さんには治療を行いやすくなりましたが、どの過活動膀胱の患者さんにも適用できるかというと、そうではありません。ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、局所麻酔を打ち、尿道から膀胱内に入れた内視鏡で観察しながら、専用の細い注射針を膀胱の筋肉に注射します。その量は、ボツリヌス毒素を100~200単位、20~30箇所に分けて打ちます。入院の必要はなく、外来で行うことができ、所用時間はわずか10~20分程度です」

 通常、治療後2~3日で効果を感じるが、6カ月程度で徐々に効果がなくなるという。

「効果が得られ、治療を継続する場合には1年に2回、膀胱への注射が必要となります。使用するボツリヌス毒素の量が多いため、保険適用とはいえ窓口負担は1回の治療で3万円ほどになり、1年に2回治療を行うと約6万円。費用対効果は患者さんによって異なると思います。また、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は泌尿器の専門医しか行うことができないので、治療を行う医療機関が限られます」

 世界では90カ国以上の国で行われ、安全性が高い治療法ではあるが、副作用が起きる可能性もある。

「尿道から内視鏡を入れるため、まれに細菌感染が起きることもあり、その場合は抗生物質を服用します。また、ボトックスの効果により、筋肉が緩みすぎて尿を出すことが困難となり、尿閉(尿が出ない)になるケースが5~9%程度、起きると報告されています。尿閉となった場合には、尿道から管を入れて尿を出す自己導尿を行う必要があります」

 ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法に伴い、さまざまなケアが必要となることがあるため、医師とよく相談する必要があるが、興味がある人は泌尿器科の専門医に相談してほしい。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

パチスロ『北斗の拳』への愛情がダダ漏れ! 人気芸人の好きな演出BEST3動画が大反響!!

 累計販売台数62万台。これは4号機時代に登場したサミーの『パチスロ北斗の拳』が打ち立てた驚異的な記録で、ギネスブックにも記載されている。

 当時はパチスロ設置台の全てが当機といったホールもあったほどで、多くの人々が斬新システム「バトルボーナス」に熱狂。原作の世界観を絶妙に組み込んだ演出とスピード感ある出玉に一喜一憂したものだが…。

 大人気お笑いコンビ「かまいたち」の濱家隆一と山内健司も、そんな当機に魅せられたスロッターだという。

 彼らが実機購入の末に実戦の模様を公式YouTubeチャンネル「かまいたちチャンネル」で公開したこと、その実機を用いてラオウ昇天、即ちバトルボーナス20連以上を目指して生配信を行ったことなどは、当サイトでもお伝え済み。生配信に関しては当日の深夜に同時接続数で19万人を突破し、その時間帯でのYouTube生配信ランキングで世界一を樹立した。

【注目記事】

パチスロ5号機『アナザーゴッドポセイドン』間もなく撤去へ…万枚ゲットへ向けた攻略ポイント特集!!

甘デジ新台「確率1/77」ながら万発も余裕でクリア…噂の激甘スペックの実力は!?

 そんなパチスロ愛、北斗愛に溢れる彼らは先日、新たな動画「【北斗の拳レア演出映像】かまいたちがパチスロ北斗の拳好きな演出BEST3を発表!」を公開。11月9日現在で視聴回数約47万回に到達するなど、大きな反響を呼んでいる。

「パチスロ芸人みたいになってますね」。そう自嘲した濱家は、まず第3位に「バトルボーナス中ケンシロウ攻撃時レイカットイン」をチョイス。これはバトルボーナス4G目に発生する可能性がある継続率79%以上確定、しかも継続率88%時に最も発生しやすいパターンで、山内も「この青は1番綺麗な青だと思う」と、早くも興奮を隠せない様子だった。

 山内の第3位は「第3リール停止時に赤リンゴ3つ落ち」で、こちらはチェリー対応及び高確or前兆確定演出。動画内でも山内が触れた通り、2枚チェリーに期待できる激アツ演出で、第2停止時点で缶やリンゴが落ちない状況でのドキドキ感を熱弁している。

 濱家は第2位に、これと同系統「バットつまずくと同時に赤リンゴ3つ落ち」を選び、「こんなニアなことがあるんやな」と2人でニヤリ。濱家的には「真ん中7、右上7」を狙った後の左リール停止時に、「4チェの可能性が高そうな段階で、2チェに俺がねじ込むんだ」とアツくなっていたのだそうだ。

 一方、山内は第2位に「アミバ演出でトキだった時」を選択。これは、演出「奇跡の村編」でアミバではなくトキが治療する大当り確定パターンで、山内曰く、当演出は「他の演出で当たり確定してて、7がまだ揃ってない時、これにいくパターンが多い」そうだが、「ごく稀に、全くまだ当たってるか分かんない状態で一気にここいってくれる時がある」とし、「なんなの。このトキの神々しさ」と2人して演出に見惚れる場面も印象的だ。

 その後、いよいよ第1位が発表されるわけだが、それについてはあえて割愛。気になる方は是非ともご自身で確かめていただきたい。
 

JRA福島記念(G3)「令和のツインターボ」パンサラッサ“圧逃”! 4馬身圧勝も「歴史的偉業」には一歩及ばず…これには“師匠”もニッコリ?

 14日、福島競馬場で行われた福島記念(G3)は、5番人気のパンサラッサ(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)が逃げ切り。前走に続く2連勝で嬉しい重賞初制覇を決めた。

「ハナに行こうと思っていた。ペースが速いのは分かっていたけど、抑えるよりは直線を向くまではしっかりと体力を温存しようと思って」

 鞍上・菱田裕二騎手の腹をくくった作戦が見事にハマった。16頭立て芝2000mで行われたレース。ゲートから飛び出したパンサラッサは迷いなくハナを主張。ディアンドルが内から抵抗し、外からコントラチェックも食い下がろうとしたが、構わずぶっ飛ばした。

 最初の600mの入りが33.6秒というスプリント戦のようなペース。馬群はあっという間に縦長になり、1000m通過は57.3秒。誰もがパンサラッサの暴走だと信じて疑わなかったに違いない。

 しかし、「福島ですし、(後続を)待っても仕方がないので積極的にいきました」と振り返る菱田騎手の腹は座っていた。ペースよりも、相棒の気持ちを優先した騎乗で2番手に食い下がるコントラチェックを振り切ると、7、8馬身という大きなリードを持って最後の直線を迎えた。

「追い出してからの反応も良かったし、これなら追いつかれないだろうと」

 菱田騎手の“放任主義”は、見事にパンサラッサのやる気と噛み合った。292.0mと短い福島の直線で粘りに粘るパンサラッサ。後続が必死に追い上げるも、時すでに遅し。最後は2着ヒュミドールに4馬身差をつける圧勝劇だった。

「菱田騎手の肝が据わった凄い逃げでしたね。大逃げがハマった前走(オクトーバーS・1着)も参考になっていたと思います。元々、気分次第というか成績にムラがあるタイプ。理屈よりも気持ちを優先させてあげることが、この馬には合ってるんでしょうね。見事なレースだったと思います」(競馬記者)

 超ハイペースからの逃げ切りといえば、1998年にJRA特別賞を受賞したサイレンススズカが有名だが、福島の大逃げというキャラではやはりツインターボか。

 1993年の七夕賞(G3)やオールカマー(当時G3)で外連味のない逃げで勝利し、人気を博したツインターボ。今春に大ヒットした競馬アプリ『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)で個性派ウマ娘として登場して一躍人気者になった。

 そんな背景もあってか、レース後にはSNSや掲示板でも「令和のツインターボ!」「これにはツインターボ師匠もニッコリ」と、かつての大逃げ馬を彷彿とさせたファンも多かったようだ。ちなみに「師匠」は、アニメ放送で「ターボ師匠」呼ばれていたことからファンの間にも定着している。

「ツインターボが逃げ切った七夕賞も同じ福島の2000m。あの時も前半1000m通過が57.4秒でしたが、この日のパンサラッサも57.3秒と同じようなペースで逃げています。2着の着差が4馬身差という点も同じですね。

実はグレード制導入以降の福島・芝2000m重賞での4馬身差は最大着差。タイム差だとパンサラッサが0.6秒差で、ツインターボが0.7秒差と“師匠”の方に軍配が上がっていますので『まだまだだな』といったところでしょうか(笑)。パンサラッサはまだ4歳ですし、今後かつてのツインターボのようにファンから愛される馬になるかもしれません」(別の記者)

「素晴らしい馬に乗せてもらえて感謝しています」

 そう話した菱田騎手は昨夏のアイビスサマーダッシュ(G3)以来、約1年3カ月ぶりの重賞勝利で通算4勝目。実は逃げの名手として知られている鞍上・中舘英二騎手はツインターボの七夕賞が重賞2勝目だった。騎手人生を変えた歴史的名牝ヒシアマゾンと出会ったのは、ツインターボと共にオールカマーで重賞連勝を決めた同日だ。

「重賞を勝つのはタイミングもあると思いますが、大きな舞台で乗せてもらえるようにコツコツと頑張っていきます」

 今年ここまで28勝と中堅の壁を突破できないでいる菱田騎手。果たして今後、騎手人生を変えるような名馬との出会いは待っているのだろうか。まずはパンサラッサの“手綱”をしっかりと握っておきたい。

(文=大村克之)

<著者プロフィール>
 稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。