実質GDP、年0.2%減に上方修正=内需押し上げ、米関税警戒も―1~3月期改定値

 内閣府が9日発表した2025年1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.04%減、この成長ペースが1年続いた場合の年率換算で0.2%減となった。5月発表の速報値(前期比0.17%減、年率0.7%減)から上方修正された。個人消費など内需の上振れが主因だが、トランプ米政権の関税措置を受けた景気減速の懸念が残る。

 内訳は、内需の柱である個人消費が外食やゲームソフトが好調で0.1%増(速報値は0.04%増)に上方修正された。住宅投資がリフォームの増加で1.4%増(同1.2%増)。民間在庫の寄与度は、原油や液化天然ガス(LNG)の積み増しで0.6%(同0.3%)に上昇した。

 一方、企業の設備投資はソフトウエア関連が伸び悩み、1.1%増(同1.4%増)に下方修正された。政府支出や公共投資も下振れした。

 外需は、輸出が0.5%減(同0.6%減)、輸入は3.0%増(同2.9%増)になった。

 物価変動の影響を反映し、生活実感に近い名目GDPは前期比0.9%増、年率3.6%増で、速報値(前期比0.8%増、年率3.1%増)から上方修正された。24年度の実質GDP成長率は、速報値と同じ前年度比0.8%増で4年連続のプラス。実額で559兆8703億円となった。 

 第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、4~6月期もマイナス成長を予想する。米国の関税引き上げによる、自動車を中心とした輸出の減少や、設備投資の抑制など、「悪影響が顕在化し、景気の停滞感は一段と強まる」とみている。

◇1~3月期のGDP改定値
◇実質成長率    ▲0.0(▲0.2) 年率換算 ▲0.2(▲0.7)
◇寄与度  内需   0.8( 0.7)
      外需  ▲0.8(▲0.8)
◇主要項目
 個人消費      0.1( 0.0)
 住宅投資      1.4( 1.2)
 設備投資      1.1( 1.4)
 民間在庫      0.6( 0.3)
 公共投資     ▲0.6(▲0.4)
 輸出       ▲0.5(▲0.6)
 輸入        3.0( 2.9)
◇名目成長率     0.9( 0.8) 年率換算   3.6(  3.1)
(注)かっこ内は速報値。数値は前期比伸び率%、寄与度は%。民間在庫は成長率への寄与度。▲はマイナス(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/06/09-18:20)

観光⽴国の死⾓を救う…宿泊施設の客室から24時間受診可、インバウンド医療DX

●この記事のポイント
・インバウンドが急増するなか、旅行中に体調を崩した外国人の対応にホテル関係者が苦慮するケースが少なくない。旅行者も、慣れない異国で病院に行くことを躊躇している間に深刻な病気になることもある。
・そんな事態において大きな解決策となり得るサービスが注目を浴びている。ホテルなどの宿泊施設にいながら、オンラインで診療を受けられるというもの。その開発企業と導入企業の背景を深掘りする。

目次

「発熱した旅⾏者が、夜中のホテルで困り果てる」。そんな事態に対応するため、現在、⻄武プリンスホテルズ&リゾーツをはじめとする全国23都道府県119の宿泊施設で、訪⽇外国⼈向けの24時間オンライン診療サービス「HOTEL de DOCTOR 24」の導⼊が進んでいる。

 最⼤の特徴は、スマートフォン1台で医師につながり、22⾔語に対応した医療通訳を介して診療が受けられるという点だ。夜間や早朝、近隣の医療機関が閉まっている時間帯でも、旅⾏者は部屋から⼀歩も出ずに適切な医療を受けられる。現場のホテルスタッフからは、「夜間対応の懸念が軽減された」という声も上がっている。

「コロナ前は、⾼度な治療や検診を⽬的とした医療ツーリズムが注⽬されていました。しかし、いま本当に求められているのは、旅⾏中に体調を崩しても安⼼できるという⽇常的な医療アクセスです。旅の安⼼をどう⽀えるかは、観光⽴国にとって避けて通れないテーマだと感じました」(エムスリーキャリア 事業開発部 グループリーダー 岩井眞琴氏)

 実は、訪⽇外国⼈の約4%が滞在中に体調不良を訴えている。そしてその6割が⾵邪症状や熱の症状だ。しかし、彼らの多くは⾔語の壁に不安から、病院を訪れることなく我慢してしまう(令和5年度「訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」結果より)。

 その結果、病状が悪化したり、ホテル側で対応に追われたりすることも後を絶たない。

「特に深刻だと感じているのは、体調不良の訴えがあっても正確に聞き取れないという現場の不安です。⾵邪程度かと思っていたら実は重症だった、というケースもあり、対応判断に時間がかかってしまう。その点、HOTEL de DOCTOR 24は、医療通訳を介して即座に医師につなげることで、スタッフの判断負担を⼤幅に減らすことができています」(岩井⽒)

 ⻄武プリンスホテルズ&リゾーツでは、全国54施設に同サービスを導⼊。背景には、医療選択肢を増やすことで、訪⽇外国⼈客にとって安⼼して宿泊できるホテルチェーンとして、さらなる環境を整備するという狙いがある。

「体調不良という特殊かつ緊急性の⾼い状況において、⼀⼈ひとりに寄り添ったサービスを提供できることは、ホスピタリティの向上につながると同時に、従業員のモチベーション向上にも寄与しています」(⻄武・プリンスホテルズワールドワイド広報部 藤⽥有咲⽒)

 また、宿泊施設側にとって導⼊はオペレーション不要・費⽤負担ゼロ。この低ハードルも広がりを後押ししている。

 現在開催されている⼤阪・関⻄万博では、約350万⼈の訪⽇外国⼈が来場すると⾒込まれており、HOTEL de DOCTOR 24はその先端インフラの⼀翼を担うと期待されている。

 実際、エムスリーキャリアでは⼤阪万博をインバウンド需要拡⼤の転機と捉え、サービス⽴ち上げのタイミングを意図的に早めたという。

「⼤阪万博をきっかけにインバウンド需要が⼀気に⾼まると⾒て、早期の⽴ち上げを決めました。今後も、あらゆる場⾯での導⼊を広げていきたいと考えています」(岩井⽒)

 彼らが⾒据えているのは、ホテルにとどまらない旅の安⼼インフラとしての展開だ。観光施設や空港・駅といった動線上にも対応拠点を広げ、「どこにいても相談できる」という安⼼感を、旅の標準装備にしようとしている。

 そこで、HOTEL de DOCTOR 24について全国54施設への導⼊、拡⼤を予定している⻄武プリンスホテルズ&リゾーツ、同サービスを展開しているエムスリーキャリア、それぞれに話を聞いた。

⻄武プリンスホテルズ&リゾーツ、サービス導入の背景

̶̶訪日外国人の医療ニーズに着⽬したきっかけは?

「コロナ禍明け以降、外国⼈旅⾏者の急増とともに、以前から訪⽇外国⼈に⼈気のあった地域だけでなく、地⽅の隠れた魅⼒にも注⽬が集まるようになり、インバウンド対応が求められるようになりました。⽐較的⻑く旅⾏する傾向にある海外ゲストにとって⽇本滞在中の不安要素となるのは「⾔葉の壁」と「急な体調不良」と捉え、本サービスの導⼊によって不安要素を取り除き、訪⽇外国⼈が安⼼して泊まれるホテルをめざしたいと考え、導⼊を決定しました」(藤⽥⽒)

̶̶「HOTEL de DOCTOR 24」導⼊の決め⼿は何でしたか?

「最⼤の決め⼿は、24時間対応と22⾔語での医療通訳という、インバウンド対応における壁を⼀気に乗り越えられる点でした。この2つを満たすサービスは他になく、訪⽇客の安⼼感を⽀えるサービスとしてのポテンシャルを感じました。

 さらに現場からの声も⼤きく、各施設のスタッフから「うちでも導⼊したい」と⾃発的な声が多数上がったことにも後押しされました。特に評価されたのは、ホテルのオペレーションに⼤きな負荷をかけずに運⽤できる点と、導⼊費⽤や固定費がほぼゼロであることです。HOTEL de DOCTOR 24のサービスと当社のニーズが合致し、全国54施設への導⼊がスムーズに進みました」(同)

̶̶どのような課題意識が背景にあったのでしょうか?

「発熱や腹痛、頭痛といった体調不良の申し出は、訪⽇外国⼈のお客様との接点の中で⽇常的 に起こるものです。お客さまにとって『⾔葉が通じない』『病院の場所がわからない』という不安が重なることを考えると、対応には留意が必要です。

 特に夜間や早朝は、すぐに案内できる医療機関が限られており、ホスピタリティの観点から何かできないかという想いがある⼀⽅で、⼗分に意思疎通ができないことで、お客さまをさらに不安な気持ちにさせてしまったり、対応の遅れにつながったりすることに懸念がありました。

 HOTEL de DOCTOR 24には、そうした現場のジレンマを解消するツールとしての役割も期待していました。スタッフが⾃信を持って案内できるようになることで、ホテル全体としてのホスピタリティレベルも確実に⾼まると感じています」(同)

̶̶実際に導⼊してみての初期反応はいかがですか?

「導⼊直後から、⼀般のお客さまのみならず、ツアーガイドや旅⾏代理店の⽅々からも反響をいただいています。⾔語や時間帯の問題に悩まされていた宿泊業界にとって、現場で勧めやすい医療⽀援が整ったことは⼤きな安⼼材料になっているようです。

 現場のホテルスタッフからも『お客さまに提案できるサービスの幅が広がった』『どんどん活⽤していきたい』といった期待を寄せる声が届いており、業務負担の⼼理的軽減という⾯でも⼿応えを感じています。

 利⽤件数としてはまだ限定的ですが、今後、旅⾏の繁忙期や国際的なイベント時などにはより活⽤が進むことが想定されます」(同)

̶̶コストやオペレーション⾯での負担はどうでしたか?

「このサービスで注⽬したのは、ホテル側に導⼊ハードルがほとんどないところでした。導⼊時も、パネルの設置やスタッフによるQRコードの案内だけで済むため、⾮常にスムーズだと感じました」(同)

̶̶今後の展望を教えてください。

「当社では現在、『⽇本をオリジンとしたグローバルホテルチェーン』という⻑期ビジョンを掲げており、2035年までに世界250施設体制を⽬指す戦略を進めています。単に施設数を増やすのではなく、グローバル基準での標準化と、⽇本をオリジンとした当社ならではの差別化の両⽴を重視し、安⼼・安全かつ魅⼒的な『体験価値』の創造により滞在の質を⾼めていくことが重要だと考えています。『プリンスならどこに⾏っても安⼼して泊まれる』というブランド価値こそが、グローバル展開の要。その象徴として、このサービスの活⽤をさらに広げていく⽅針です」(同)

エムスリーキャリア、開発のきっかけ

̶̶HOTEL de DOCTOR 24開発のきっかけは何だったのでしょうか?

「厚⽣労働省や観光庁の調査で、訪⽇外国⼈の約 4%が旅⾏中に体調不良を経験しているというデータがありました。この数字を⾒て、私たちは『必要な医療サービスへのアクセスが⼗分に確保されていないのではないか』と強く感じました。

 実際、医療機関やホテルへのヒアリングを重ねる中で、『⾔語の壁』や『深夜・休⽇の対応困難』といった現場の悩みが数多く寄せられました。観光業界がインバウンド需要の回復・拡⼤を⽬指す中で、旅先での安⼼をどう⽀えるかという課題は、⾮常に⼤きな意味を持っています。

 こうした空⽩を埋めるために、医療側と宿泊側、双⽅にとって負担の少ない形でサービスを提供できないか──。その発想から⽣まれたのがHOTEL de DOCTOR 24です」(岩井氏)

̶̶サービスの強み・差別化ポイントは?

「HOTEL de DOCTOR 24には、⼤きく3つの強みがあります。24時間対応、22⾔語での医療通訳、導⼊施設の負担ゼロ設計です。特にホテル側が費⽤負担なく導⼊できる点を評価いただいています。

 また、医療を受ける際の不安を最⼩限に抑えるため、ホテル・医師・通訳がシームレスにつながる運⽤設計にも⼒を⼊れました。緊急時には問診内容がホテルにも共有され、必要に応じて翻訳もされるなど、現場の混乱を防ぐ仕組みが整っています。

 さらに、⽇本ではオンライン診療がまだ⼀般的ではない⼀⽅、海外では旅先でもオンラインで医師に相談する⽂化が定着しており、その期待に応えられる体制づくりが重要でした。実際、医師の公募を⾏った際には、『留学経験を生かしたい』『育児との両⽴ができそう』と⼿を挙げてくださる先⽣が多く、医療従事者側のニーズを感じています」(同)

̶̶実際にあった印象的な事例はありますか?

「体調を崩された外国⼈旅⾏者がフライトの変更を余儀なくされ、航空会社から診断書の提出を求められたことがありました。私たちはオンライン診療で対応し、英語の診断書を即⽇発⾏。旅⾏者は無事に⼿続きを完了することができました。

 別のケースでは、2時間後に搭乗予定の旅⾏者に対し、オンライン診療を⾏った医師が、成⽥空港の薬局で購⼊できる市販薬を具体的に指⽰。⽇本語で薬の名前を書いたスクリーンショットを患者に送り、それを薬局で⾒せる形で無事⼊⼿できました。

 いずれも、『旅先で今すぐ必要な⽀援』に対し、制度や⾔語の壁を越えて対応できた象徴的な事例だと思っています」(同)

̶̶事業としての成⻑性・収益性はどう⾒ていますか?

「現状では、1⽇あたりの診療件数はまだ限られていますが、⽉間1000件規模の利⽤を⽬指して拡⼤中です。そのためのフロー整備も着実に進めています。

 また、ユーザーが申し込んでから診療を開始できるまでの待ち時間を短縮する開発にも注⼒しており、今後は利便性のさらなる向上が収益にも直結していくとみています」(同)

̶̶このサービスを通じて、社会にどんな貢献をしたいですか?

「旅の不安を取り除く仕組みこそが、真の観光⽴国を⽀える基盤だと信じています。今後は、観光協会や空港、主要駅などとの連携も視野に⼊れ、より多くの旅⾏者が安⼼して⽇本を訪れられる環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。

 特にホテルに限らず、駅の中や観光拠点など旅の動線上で、気軽に診察が受けられる仕組みを整えていくことが次の⽬標です。⽇本全体の安⼼インフラとして、このサービスを根づかせていきたいと思っています」(同)

 海外で体調を崩す――それは、どれほど⼼細く、不安な経験だろう。だからこそ、スマホの向こうから聞こえる「⼤丈夫ですよ」の声は、きっと世界中の旅⼈にとって、最もありがたい⽇本語になるに違いない。

(構成=昼間たかし/ルポライター、著作家)

メルカリはパスキー登録者1千万人で不正取引抑制、ネット証券は不正取引拡大…何が差を生んだ?

●この記事のポイント
・メルカリ、パスキーの登録者数が累計1000万人に達し、パスキーでは不正利用が確認されていないと発表
・パスキー登録者は「メルカリ」にログインする際にパスキーによる認証を原則必須
・楽天証券、ログイン追加認証を全チャネルで必須化。ログイン後に受信したメールに記載の認証画像を確認し、認証コードの画像を順番通りに選択し認証

 今年1月頃から被害が拡大していた証券会社のネット証券口座への不正アクセスによる不正取引。不正売買の金額は5月末までに約5240億円に上り(金融庁発表による)、証券各社はログイン時の個人認証厳格化などの対策に取り組んでおり、たとえば楽天証券は6月1日から全チャネルで画像選択方式のログイン追加認証(多要素認証)を必須化している。一方、昨年9月からパスワード不要のパスキーを登録済みのユーザーに対してパスキーによるログインを原則必須化していたフリマアプリのメルカリは先月、パスキーの登録者数が累計1000万人に達し、パスキーではフィッシングによる不正利用が確認されていないと発表した。パスキーとは、端末の顔認証や指紋認証などを用いて本人確認を行う認証方式であり、自民党金融調査会もネット証券で生体認証の導入を促進するよう政府に提言する考えを示している。なぜメルカリはパスキーの登録者を増加させ、不正利用の発生を抑制できているのか。一方、なぜネット証券では不正取引が拡大しているのか。企業への取材をもとに、何が差を生んでいるのかを追ってみたい。

●目次

なぜメルカリはパスキー登録者を増やせたのか

 今年1月頃から、ネット証券利用者がログインID・パスワード・取引暗証番号などを盗まれて不正に取引をされるという被害が続出。証券各社が対策を強化しているため不正取引は減っているものの、金融庁発表によれば5月単月での不正売買は2094億円に上り、現在も被害が拡大している。証券各社は取引暗証番号の変更や二段階認証設定を行うよう注意喚起を行っていた。SBI証券は当初、ID・パスワードのみでのログインが可能な「バックアップサイト」を5月30日に閉鎖する予定だったが、セキュリティ上の問題を指摘する声が広まったことを受けて、前倒しして5月2日に閉鎖。楽天証券はリスクベース認証がなかった旧バージョンのトレーディング用アプリ「マーケットスピード」を含む全チャネルについて、6月1日から画像選択方式のログイン追加認証(多要素認証)を必須化した。

 そうしたなか、メルカリは5月、パスキー登録者数が累計1000万人に達し、パスキーについてはフィッシングによる不正利用も確認されていないと発表した。なぜメルカリはパスキー登録者を増やせたのか。同社は次のように説明する。

「メルカリでは、2023年4月から暗号資産サービス『メルコイン』の認証にパスワード不要なパスキーを導入し、さらに2024年1月にフリマアプリ『メルカリ』のログイン時にも活用場面を広げてきました。また、2024年9月よりパスキーをご登録されているお客さまにおいては、『メルカリ』にログインする際にパスキーによる認証を原則必須といたしました。これらの安心安全な利用環境の構築に向けた取り組みの中で、パスキー登録者が増加し続け、2025年5月に1,000万人を突破いたしました。

 パスキーは、登録されているお客さまにとって、ログイン時のパスワード入力が不要で利便性の向上に繋がるだけでなく、これまでフィッシングによる不正利用が確認されておらず、高い安全性が確保できています。メルカリは、お客さまにとっての利便性と安全性の両面で優れているパスキーの普及促進に取り組んでまいりました。具体的には、お客さまにパスキーについてご理解いただけるよう、ヘルプページの作成と説明動画を公開しております

 また、多くのお客さまに『パスキー』をご利用いただけるようキャンペーン等の施策も並行して実施しておりました」

楽天証券「あらゆる可能性を常に検討」

 前述のとおり証券各社も本人認証の厳格化に取り組んでいる。例えば楽天証券は6月1日より、ログイン追加認証を全チャネルで必須化。ユーザーはログインIDとパスワードを入力しログイン後、受信したメールに記載の認証画像を確認し、認証コードの画像を順番通りに選択し認証する。8日からはログイン追加認証で選択する絵文字の組み合わせについて、従来の「絵文字10種類から順番通りに2種類を選択」する仕様から、「絵文字10種類+数字5種類から順番通りに4種類を選択」する仕様に変更する。楽天証券はパスキー認証の導入は検討しているのか。同社は次のようにいう。

「多要素認証などのセキュリティ対策は、今般の事象発生に限らず、従前より注力しており、あらゆる可能性を常に検討しています。絵文字の多要素認証においても、数字10個より数百種類ある絵文字の利用・偽の画面複製のしづらさから、不正アクセスのリスクを低減させるとして2021年より導入しています」 

 中堅IT企業幹部はいう。

「楽天証券も指紋認証や顔認証を使う認証方式を提供しており、現在では本人認証まわりのセキュリティレベルを上げているので、不正取引は減っていくでしょう。ただ、これまでに関していえば、たとえばメルカリはかなり力を入れてパスキーの登録者の増加に向けて取り組んできており、そうした姿勢の違いが差を生んでいる面はあるかもしれない」

不正取引の被害者に対する補償

 5月に入り証券各社は不正取引の被害者に対し一定の補償を行う方針を発表したが、当初、各社は補償には慎重な姿勢をみせていた。金融商品取引法では、証券会社などの金融商品取引業者が顧客の損失を補てんする行為は禁止されていることなどが背景にある。たとえば楽天証券は「総合証券取引約款」の「免責事項 第52条」で、以下の事由により顧客に発生した損失・費用については、その責を負わないとしていた。

「お客様ご自身が入力したか否かにかかわらず、第11条に規定するお客様の認証コード、ワンタイムパスワード、追加認証コード、お問い合わせ番号の一致により当社が本人認証を行い取引注文の申込みを受け付け、当社が受託した上で取引が行われた場合」

「お客様の認証コード等の本人認証のための情報または取引情報等が漏洩し、盗用されたことにより生じた損害につき、当社の故意または重大な過失に起因するものでない場合」

 だが、被害の拡大を受けて日本証券業協会は、各社の約款などに関係なく1月以降に発生した不正アクセスによる被害について一定の補償を行う方針で大手10社が合意したと発表した。楽天証券も以下方針を発表した。

「今般のフィッシング詐欺等による不正アクセスにより、第三者がお客様の資産を利用して、有価証券等の売買等を行ったことにより発生した損失について、従前の約款等の定めに関わらず、お客様個別の状況に応じて、一定の被害補償を行う方針です」

「なお、不正取引被害のお申し出を頂戴しているお客様に加え、当社で確認した不正が疑われる取引についても、対象のお客様へのご連絡を予定しております」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

「非財務情報」をひもとけば、進むべきサステナビリティ経営への道筋が見える!

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サステナビリティ経営に対する意識の高まりを受け、財務以外の情報を積極的に開示する企業が増えています。今やそうした非財務情報は、ともすれば財務資産以上に企業価値を左右し得る重要なファクター。情報の価値を正しく見極め、サステナビリティ経営に生かしていきませんか?電通 サステナビリティコンサルティング室の永井と電通総研 コンサルティング本部の蟹江が、非財務情報を分析する独自ソリューション「非財務価値サーベイ」についてご紹介します。

近年、注目が高まる「非財務情報」とは?

企業が外部に開示する情報は、大きく「財務情報」と「非財務情報」に分類されます。財務諸表で開示される定量的な情報=財務情報に対し、数値化できない定性的な情報が非財務情報。これを読んでいる皆さんには言わずもがなかもしれませんが、その中身をもう少し詳しくおさらいしましょう。

非財務情報には、主に以下の5つの資本に関する情報が該当します。

  1. 製造資本
  2. 知的資本
  3. 人的資本
  4. 社会・関係資本
  5. 自然資本
参考:国際統合報告評議会(IIRC)「国際統合報告フレームワーク(IIRCフレームワーク)」における分類
 

堅い言葉が使われていますが、つまり商品開発力や技術力、経営者の能力の高さや経営方針、社員のモチベーションの高さやスキル、優良な仕入れ先や得意先との関係性、そして事業の環境貢献度などが、非財務情報の具体的な中身です。これらは無形資産とも呼ばれます。

今、企業経営においてこの非財務情報が大きな意味を占めるようになっています。その背景にあるのは、世界的なサステナビリティ意識の高まり。サステナビリティ経営の重要性が増すなか、社会課題に対する取り組み姿勢などの情報開示が、投資家たちの間で強く求められるようになったのです。

また、そうした非財務情報が就職先を選ぶ基準になったり、商品購入や契約の決め手となったりと、投資以外の局面でも広く重視されるようになっています。グローバルで見てみると、米国市場(S&P500)の企業価値における無形資産比率はなんと90%(2020年)にも(※1)!企業の競争力の源泉が、有形資産から無形資産にシフトしていることがよく分かります。

※1 出典:内閣府「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示およびガバナンスに関するガイドラインVer1.0」


日本は非財務情報の活用が遅れている。理由は数値化の難しさ

日本でも2023年3月期から、有価証券報告書でサステナビリティ情報の開示が義務付けられました。それを受け、近年「統合報告書」や「サステナビリティ報告書」等で非財務情報の公開を行う企業が急増しています。ところが、日本企業の企業価値に占める無形資産の割合は、欧米と比べて相対的に低い(※2)ことをご存じでしたか?

※2 出典:内閣府「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示およびガバナンスに関するガイドラインVer2.0」


その要因として、多くの日本企業が「非財務活動と業績の関係性」を認識できていないことや、多種多様なサステナビリティテーマの中から有望なものを見いだせていないことなどが挙げられます。実際に統合報告書などで情報公開に取り組みながらも、実は“その情報を公開する意義”や“自社の非財務情報の価値”をきちんと把握できていない……という人も多いのではないでしょうか。

非財務情報は、財務データと違って簡単には数値化することができません。数値で表せない分、わかりやすい指標が設けづらく、一般的な判断基準も定まっていないことがしばしば。そのため、「やってはいるが、次に打つべき手がわからない」「企業価値を高めるために今後どこに注力したらいいかわからない」といった状況に陥り、義務的な非財務情報開示にとどまってしまっているケースが多くみられます。

重要なのに、数値化できないから価値がわからず、活用できない。それが非財務情報を取り巻く日本企業の現状ですが、そのために自社のサステナビリティ経営の可能性を狭めてしまっているとしたら、非常にもったいないことです。

見える化する、次の一手がわかる!「非財務価値サーベイ」とは

そうした課題を解消するためにまず必要なのは、ずばり「非財務情報の価値の正確な分析」です。高度なデータ分析を通じて自社の非財務価値を客観的・相対的に評価することで、自社の立ち位置が明確になり、非財務価値を経営に生かす筋道や方向性がわかるからです。

電通では、そうした考えに基づき、2023年から「非財務価値サーベイ」の提供を開始しました。これは、企業の財務データ・ESG評価データ・イメージデータ、従業員クチコミデータという4種類のビッグデータを掛け合わせ、企業価値に与える影響を分析できる電通独自のソリューションです。

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「非財務価値サーベイ」を使うと、例えば以下のような問題についての評価や因果関係を明らかにすることができます。

1. ステークホルダー評価の問題
【問題】どの活動がどのステークホルダーに響いているのかがわからない
【分析できること】ステークホルダーごとの評価を判定

2. 競争優位評価の問題
【問題】自社の取り組みが競合と比べてどこが優れているのかわからない
【分析できること】業界平均/競合他社との比較により、自社の強みと弱みを明確化

3. トレンド把握の問題
【問題】今後サステナビリティの取り組みを見直そうにも、どう見直してよいかわからない
【分析できること】ステークホルダーの評価向上につながりやすいサステナビリティ活動を特定

4. 社内合意の問題
【問題】社内の従業員の意見がさまざまで、議論がかみ合わず合意できない
【分析できること】データ分析結果を基に経営者と従業員が現状を同じ目線で振り返り、今後の方向性に合意を得る

ポイントは、分析によって現状把握をするだけでなく、現状を踏まえたうえで「今後重点的に取り組むべき課題は何か」までしっかり導ける点です。サステナビリティ経営でこれから問われるのは、いかに「企業価値への貢献度の高い活動」に取り組むか。サーベイによって非財務価値の企業への貢献を見える化することで、活動の取捨選択ができるようになります。

例えば、サステナビリティにおいて業界内でトレンドとなっている活動があるとして、そこへの取り組みが不十分な企業に対して「こういうテーマで活動を行えば、今後成果が生まれるのではないか」といった仮説をデータに基づいて提示することができます。

あるいは先進的な取り組みを行う企業に対しては、まだどこも手を付けていない次の領域を見つけ出し、新たな可能性を提示することも可能です。実際に取り組むためには信頼できる分析データや評価がないと社内で合意が取りづらいものですが、そうした場合のファクトデータとしても、「非財務価値サーベイ」の分析結果が納得材料となるでしょう。

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診断からアクションプラン、ステークホルダーとの関係構築まで

もし自社のサステナビリティ対応が遅れている自覚がある場合、そのままでは今後の経営リスクが高まる一方です。まずは、「非財務価値サーベイ」で自社の立ち位置をしっかり把握することをおすすめします。サーベイとセットで、今後の活動を検討するセッションも行っていますので、分析からアクションプランの策定まで一貫して取り組むことが可能です。

企業によっては、「非財務価値サーベイ」によって注力すべきサステナビリティテーマがわかっても、実現が難しいケースもあります。そういう場合には、どうすれば実現できるのか、因数分解をするように課題を振り分けていき、道筋を探っていくこともできます。

また、サステナブルな事業をマネジメントするには、多岐にわたるステークホルダーからの理解や協力が欠かせません。幅広いステークホルダーの評価を明らかにして、今後のコミュニケーションや関係づくりの構築にも、活用していただけると思います。

サステナビリティの取り組みや今後の進め方に悩んでいる企業の皆さまに、さまざまな角度からお役に立てるはずです。自社の非財務価値やその生かし方にお悩みの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

●「非財務価値サーベイ」を詳しく説明したeBookはこちらから 
 

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「電話が繋がらない」を撲滅…AIで“顧客の不満”を先読みし、企業収益に変えるCX革命

●この記事のポイント
・株式会社RightTouchはシリーズAラウンドで総額8億円超の資金調達を実施し、累計調達額は14.2億円となった
・同社はカスタマーサポート領域に特化したSaaS事業を展開しており、同社のサービスを導入した企業は、単なる業務効率化にとどまらず「コスト削減と顧客体験の向上を両立できる」などの成果が出ているという

 株式会社RightTouch(東京都港区、代表取締役 野村修平/長崎大都)は、グローバル・ブレイン株式会社(東京都渋谷区、代表取締役社長 百合本 安彦)とGMOインターネットグループのGMO VenturePartners株式会社(代表取締役:杉山 一康)を対象とした第三者割当増資に加え、商工組合中央金庫からの借入によりシリーズAラウンドで総額8億円超の資金調達を実施し、累計調達額は14.2億円となったと発表した。

 RightTouchは、カスタマーサポート領域に特化したエンタープライズ企業向けSaaS事業を展開している。複数のプロダクトを展開し、VoC(Voice of Customer:顧客の声)や顧客行動、企業ナレッジなどのカスタマーサポートにまつわるデータを統合・連携し、これまで分断されていた各顧客接点やワークフローをつなぐことで、カスタマーサポートのより深い課題解決、価値創出を行うコンパウンド型の戦略を取っている。

目次

 RightTouchは、サポートデータと生成AIの活用でカスタマーサポート産業全体に革新をもたらすスタートアップとして注目を集めている。もともとマーケティング領域を中心としたSaaSプロダクト「KARTE」を手掛ける株式会社プレイドからカーブアウトする形で設立された。

「RightTouchの事業着眼点は、顧客との最初の接点、すなわち問い合わせが発生する前の段階に着目していることが特徴的です。従来のカスタマーサポートは、問い合わせが来てからいかに効率的に対応するかに焦点が当てられていましたが、当社では顧客が問い合わせに至る前、Webサイト上の行動データを元に顧客の困りごとを特定し先回りして解決することで、CX(顧客体験)向上と問い合わせ削減を両立することを可能にしています。

 弊社のソリューションは、SBI証券やJCB、Panasonicなどの各業界をリードする大手企業にも導入されており、その効果は実証済み。Web上で顧客の課題を的確に捉え、プロアクティブな情報提供を行うことで、自己解決率の向上、オペレーターの負担軽減、そして顧客満足度の向上に貢献しています」(長崎氏)

 近年、RightTouchは生成AIを軸にした各プロダクト・基盤の強化を進めており、SaaS企業でありながら、AI技術を駆使した高度な顧客対応ソリューションを提供している。VoC(Voice of Customer)や企業ナレッジをはじめとした大量の非構造化データがカスタマーサポート領域には存在しており、労働集約性が高い職種特徴も相まって生成AIとの相性が非常に良い。例えば、昨年発表した「RightVoC by KARTE(β版)」では大量のVoCをAIが解析し、問い合わせ内容の分類、要約、課題分析を自動で行い、カスタマーサポート部門やオペレーターの業務効率化はもちろん、発見した課題やニーズを顧客接点でも活用していくことで、さらなる顧客体験の向上が図れる。

 RightTouchは、顧客との関係性を重視し、カスタマーサポートの単なる効率化だけでなく、カスタマーサポート自体の役割を変革し、企業の成長と顧客満足度の最大化を支援するパートナーとして、その存在感を増している。

RightTouchが描くカスタマーサポートの未来

●カスタマーサポートの体験や企業内における業務フロー全体を最適化するため4つのプロダクトと生成AI機能群

 RightTouchが提供するプロダクトは現状で大きく4つある。Web行動データを元にプロアクティブなWebサポートで問い合わせ前の自己解決を促進する「RightSupport by KARTE」、Webと電話のデータ・体験を連携してコンタクトセンター業務の最適化を図る「RightConnect by KARTE」に加えて、新たに音声領域×AIで適切な自己解決促進、オペレーター応対の大幅削減を可能にするチャネル最適化ボイスボット「RightVoicebot by KARTE(β版)」や前述の「RightVoC by KARTE(β版)」を昨年末にリリースした。

 これらのプロダクトは、顧客の自己解決率を高めるだけでなく、オペレーターの負担軽減や顧客満足度の向上にも貢献している。

「RightSupport by KARTEを導入しているJCB社は、顧客の問い合わせ内容を詳細に把握し、ウェブサイトの改善やFAQコンテンツの最適化を行うことで、顧客の自己解決率が大幅に向上しまました 。また、これまで月に数件しか実施できなかったサイト改善のアクションを、月に数十件へと増加させることに成功し、カスタマーサポート部門主導での顧客体験の継続的な向上を実現しています」

 導入企業からは、「コスト削減と顧客体験の向上を両立できる」「オペレーターの負担が軽減され、離職率が低下した」「顧客からの問い合わせが減り、本来注力すべき業務に時間を使えるようになった」などの声が寄せられているという。

AIエージェントとしての進化

 また、RightTouchはAI技術の進化を積極的に取り入れ、AIエージェントとしての側面を強化している。

「私達が提供するRight Intelligenceは、カスタマーサポートの各種顧客接点で柔軟に活用できる生成AIを搭載した機能群です。『スマートエージェント(β版)』『ライブアシスト』『RightVoicebot by KARTE(β版)』の3つの機能モジュールを通じて、顧客の困りごとを正確に理解し、最適なFAQや問い合わせ窓口へと誘導いたします。ハルシネーション防止の設計により、Web接点から電話対応まで一貫した顧客体験を提供し、CXと業務生産性の両立を実現しています」 

 このように、同社ではAI技術を活用することで、さらなる顧客体験の向上と企業の成長に貢献することを目指している。

成長戦略と投資家の期待

 RightTouchは、カスタマーサポート領域におけるAIエージェントとしての成長に、投資家からも大きな期待が寄せられている。

 外部からの資金調達も積極的に行い、プロダクト開発や事業拡大に投資することで、さらなる成長を目指す。RightTouchは、SaaSとAIの融合により、カスタマーサポートの未来を創造する企業として、その動向から目が離せない。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)

日米関税、一致点見いだせず=赤沢氏、「進展」強調も―迫るG7、次回協議未定

【ワシントン時事】トランプ米政権の高関税措置の見直しを求め、赤沢亮正経済再生担当相は6日(日本時間7日)、ベセント財務長官、ラトニック商務長官とそれぞれ会談した。会談後、赤沢氏は5回目となる今回の関税交渉について、記者団に「(日米の)合意の実現に向けた議論がさらに進展した」と強調した。一方、現時点で「一致点は見いだせていない」と明らかにした。

 日米が両首脳による合意のめどとするカナダでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)が今月15~17日に迫る中、交渉の行方は依然不透明だ。赤沢氏は「サミットのタイミングは念頭にはある」との認識を示したが、次回の交渉日程について「現時点で決まっていることはない」と述べた。

 赤沢氏は6日、ワシントンでベセント氏と約45分間、ラトニック氏と約1時間50分間にわたって協議。自動車や鉄鋼・アルミへの追加関税、相互関税など米側の一連の措置の見直しを改めて要求した。ラトニック氏とは5日も会談した。

 日米は、(1)両国間の貿易拡大(2)非関税措置の見直し(3)経済安全保障面での協力―を軸に接点を探っている。

 赤沢氏は記者団に「貿易赤字の解消というのは米側の大きな関心事だ」と指摘。日本側は米国産車を日本に輸出しやすくする「相互認証」の強化や、米国で生産した日本車の第三国向け輸出への協力を提案。トランプ米大統領が重視する貿易赤字削減につなげ、その貢献度を自動車などへの関税率に反映させたい考えだ。

 このほか、造船技術や液化天然ガス(LNG)開発などで米側に協力する姿勢も示し、一連の関税措置見直しでの早期合意につなげる構えだ。

 米側は国・地域別の相互関税の上乗せ部分の見直しには柔軟な姿勢を示しているものの、日本の主張とは依然として溝がある。 

◇赤沢担当相会見のポイント
 一、日米の一致点は見いだせていない
 一、合意実現に向け議論がさらに進展
 一、双方に利益となる合意実現へ精力的に調整
 一、(首脳合意で)G7サミットのタイミングは念頭にある
 一、今後の協議日程、現時点で決まっていることはない
 一、貿易赤字解消は米側の大きな関心事(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/06/07-11:22)

なぜガストやバーミヤンは「食べ残しの持ち帰りOK」? NGのチェーンとの差を生む要因とは

●この記事のポイント
・ガストでは食べ残した料理を持ち帰れる。20円の容器を注文し、食べ残しを自分で詰めて持ち帰るというスタイル
・すかいらーくHD、食品ロス削減に注力。食品廃棄量について2030年に2018年比50%削減を目標に定めている
・コメダ珈琲店は持ち帰り用容器と紙袋などを無料で提供

 ファミリーレストランの「ガスト」では食べ残した料理を持ち帰れることを、知らない人は少なくないかもしれない。お客はデジタルメニューブックから「もったいないパック」(税込20円)をリクエストして容器を取り寄せ、食べ残しを自分で詰めて持ち帰るというスタイルだ。食べ残しの持ち帰りを許していない飲食店も多いなか、なぜガストは対応しているのか。また、持ち帰りOKの店とNGの店があるように、なぜ対応が分かれるのか。ガストの運営元への取材を交えて追ってみた。

●目次

すかいらーくHD、食品ロス削減に注力

 ガストに限らず、すかいらーくホールディングス(HD)が運営する「バーミヤン」「ジョナサン」なども持ち帰りに対応している。背景には、すかいらーくHDが食品ロス削減に注力していることがある。同社は各課題についてKPIを設定。食品廃棄量について2030年に2018年比50%削減、2050年に同75%削減を中長期目標として定めている。達成に向けて、工場では各野菜類の歩留まりについて目標値を設定し、例えば焼売用玉ねぎのカット方法の見直しによる廃棄部分の削減や、長ネギの根に近い部分を出汁取り用として使用するなど、野菜を残さず使用する工夫を実施。加工ミスや計量ミスを減らすために計量順、原料投入順などを細かく規定した手順書を作成している。発生した規格外の商品は従業員向けに販売したり、従業員食堂のメニューに利用したりし、発生した食品廃棄物は肥料または飼料にリサイクル。工場でのリサイクル率は約90%に上る。

 店舗では、使用した分の食材を毎日補充する食材の自動発注システムを導入し、食材の発注量を適切にコントロール。製造工程や保管温度などを見直し、科学的な根拠を元に食材期限の延長を行っている。調理ミスや計量ミスを発生させないよう動画や画像を活用した調理マニュアルを整備し、毎月の上長との面談の中で削減対策とKPIを個店ごとに決定している。さらに、客の食べ残しを削減するために、ご飯の量を選択可能にしたり、定食のおかずだけを注文可能にしている。

 食品ロス量の計測をより正確に行うための施策も重視している。毎日の発注データ、在庫データをもとに、店舗ごと工場ごと食材ごとに細分化して食品ロス量を算出し、廃棄量の計測データをもとに店舗ごとに廃棄物量、コストを算出している。これらのデータをもとに、店舗ごとの特性に合わせた商品管理計画やオペレーション指導を実施している。

 食べ残しの持ち帰りができないチェーンも多いなか、どのように可能としているのか。すかいらーくHDは次のように説明する。

「取り組みの背景としては、約3000 店舗のファミリーレストランを展開する企業として、食品ロス削減を重要な社会課題と認識し、2030年までに2018年比で 50%の食品廃棄を削減する目標を立て、取り組みを推進しています。以前から、お子様が食べきれず残してしまった時や、多く頼み過ぎてしまった時に、お客様のご要望に応じてお持ち帰り用の容器をご提供していました。

 こうしたサービスをより多くのお客様に知っていただくために、『もったいないパック』と名付け、デジタルメニューブックでご注文いただけるようにしたり、推奨動画を配信するなどの取り組みを行っています(2020年9月~)。現在もったいないパックについては、税込20円にてご提供させていただいております。食べきれなかった食材のお持ち帰りにつきましては、お客様の責任の範囲でお持ち帰りいただく形となりますため、『もったいないパック』を提供する際は食品衛生上の注意事項をしっかりとご案内するようにしています(注文用のタブレット端末にて記載/お持ち帰り用の袋にも記載)。お店では、お持ち帰り容器と袋をお持ちし、お客様ご自身で容器に入れお持ち帰りいただく形としております」

 ちなみに同社は持ち帰る際の注意事項として、

・刺身などの生ものや半生の食材は避けてください
・お持ち帰りのお料理は冷蔵庫に保管し、お早めにお召し上がりください
・中心部まで十分に再加熱してください

としている。

 すかいらーくグループとしては、「もったいないパック」以外にも食品ロス削減のための取り組みを行っている。ユニークなものとしては、しゃぶしゃぶ食べ放題「しゃぶ葉」の全店で「こまめどりプロジェクト」を実施。客が食事終了時にきれいに食べたテーブル上の写真を撮影し、会計時にスタッフに提示すると、もれなくドリンクバー110円券をプレゼントされるというものだ。

食べ残しの持ち帰りに対応するメリットとデメリット

 政府は食べ残しの持ち帰りを推進している。2024年12月には、消費者庁と厚生労働省が「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン ~SDGs 目標達成に向けて」を発表している。この発表前から、すかいらーくグループ以外でも持ち帰りを許可している外食チェーンはある。カフェチェーン「コメダ珈琲店」は一部商品について、店舗スタッフに依頼すれば持ち帰り用容器と紙袋などを無料で提供してくれる。一方、持ち帰りには対応していないチェーンもあるが、なぜ対応が分かれるのか。

「店舗側にとって客が食べ残しを持ち帰ってくれるメリットとしては、食品廃棄コストの削減あげられます。廃棄する食品を一時保管しておくためには労力、手間や保管スペースも必要になるので、トータルでみると店舗にかかる負担は低くはないです。『あの店は食べ残しても持ち帰ることができる』という点が客の来店動機につながり集客効果が生まれることも期待できるでしょう。

 一方、デメリットとしては、客が持ち帰った料理が原因で食中毒などの体調不良を起こすといったトラブルが発生するリスクがあることです。小規模な個人店の場合は、持ち帰り用の容器を仕入れて保管しておくというのは、それなりに手間がかかり、保管スペースの問題もあるでしょう。ですので飲食店としては、そのメリットとデメリットを天秤にかけて、個々の事情に応じて判断をするということになります。

 政府が持ち帰りを推進しており、社会的にも食品廃棄削減が重視される風潮が強まっているので、基本的には持ち帰りに対応する店が増えていくという流れになっていくのではないでしょうか」(外食チェーン関係者) 

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

スタバ・吉野家、実は無人ロボット配送をやっていた…楽天無人配送、生鮮食品や日用品も

●この記事のポイント
・スターバックス、吉野家、ファミリーマートなどが、無人の配送ロボットによる配送サービスを実施
・配送ドロイドの活用に向けた動きが活発化し始めた背景には、法改正と政府の推進姿勢
・楽天無人配送、無人配送サービスのロジスティクスやオペレーションを独自に開発

 大手カフェチェーン「スターバックス コーヒー」が実は無人の配送ロボットによる配送サービスを行っていることは、あまり知られていない。現時点では一部の店舗のみだが、吉野家やファミリーマートなども行っている。配送ドロイドと呼ばれる専用ロボットを使うものだが、フードデリバリーサービス「Uber Eats」を提供するUber Eats Japa(ウーバーイーツジャパン)も今月から大阪市内のローソン4店舗で配送ドロイドによる商品配送を行う。配送ドロイドによる配送は今後、普及していくのか。また、普及に向けた課題は何か。企業への取材をもとに追ってみたい。

●目次

「楽天無人配送」届け場所は90カ所以上にまで増加

 日本で配送ドロイドによる配送を先駆けて提供しているのは楽天グループだ。同社は昨年11月から小売店や飲食店の商品を配送する「楽天無人配送」を、東京都中央区晴海全域、月島と勝どきの一部で提供開始。対象店舗と地域を徐々に拡大させ、ユーザーが注文時に指定できる届け場所は90カ所以上にまで増えた。現在利用している店舗は以下のとおり。

・スターバックス コーヒー 晴海 トリトンスクエア店
・スーパーマーケット文化堂 月島店
・吉野家 晴海 トリトンスクエア店
・パティスリーハット
・ファミリーマート 晴海センタービル店

 米Cartken Inc.が開発し、三菱電機のグループ会社が同サービス向けに調整したロボットに加え、2月からは米国で自動配送ロボットを展開するAvride inc.のロボットも加わった。楽天Gは、注文内容に応じて最適なロボットの自動割当などを行う独自開発の配送管理システムの改良や、自動配送ロボット10台体制によるサービス提供の実証実験を行ってきた。

 配送ドロイドの活用に向けた動きが活発化し始めた背景には、法改正と政府の推進姿勢がある。2023年4月に改正道路交通法が施行され、遠隔操作型の公道走行が解禁。国は事業者に対する財政的な支援も行っている。パナソニックも神奈川県藤沢市で自動配送ロボットのサービス実証を行っている。

「楽天無人配送」はどのようなサービスなのか。楽天Gは次のように説明する。

「スマートフォン向けの専用サイトから注文することで、自動配送ロボットが配送する店舗の商品を、指定したお届け場所で受け取ることができるサービスです。温かい料理や冷たい飲み物、生鮮・冷凍食品など4000品以上の商品を取り揃えており、忙しい日の食事、日常の食材や生活必需品の購入など様々な場面で暮らしをサポートします。また、お届け場所は晴海周辺のマンションやオフィス、公園などで、在宅時に加えて仕事の合間、外出時などにも利用可能です」

 どのような技術によって実現されているのか。

「無人配送サービスのロジスティクスやオペレーションは、独自に開発した以下の3つのシステムで支えられています。

(1)ロボット配送専用サイト 
 お客様が注文する際に使用するスマートフォン向けの専用サイトです。このアプリを通じて、商品を注文します。また注文後も配送中のロボットの位置を教えてくれたり、到着を知らせてくれたりします。

(2)ロボット配送管理システム
 注文や配送状況が分かる店舗向けの管理アプリです。注文と配送を一元管理できる仕様となっていて、タブレットで感覚的操作できるため、不慣れな店舗の方でも簡単に操作できます。楽天スタッフが、アプリ操作・配送手配を行う場合もあります。

(3)Robot Gateway
 自動配送ロボットは様々なメーカーで作られており、少しずつ機体システムや仕様が異なります。そのため、どのメーカーのロボットにも対応できるよう、『ロボット配送専用アプリ』や『ロボット配送管理システム』との互換性を持たせるためのシステムも開発しています」(楽天G)

 今後の展開予定についても聞いた。

「24年11月に晴海全域、月島と勝どきの一部でサービスの提供を開始し、25年2月の新たなロボットの導入や、対象店舗、提供範囲の拡大などによるサービスの拡充を進めており、今まで以上に多くのお客様にご利用いただいております。まずは晴海全域、月島と勝どきの一部で利便性の高いサービスの提供を目指し、配送対象地域の拡大や配送元の小売店や飲食店の追加を目指し、ロボット配送サービスを確立させていきます」(楽天G)

配送ドローンの商用化に向けた取り組みも拡大

 配送ドロイドのほかにも、配送ドローンの商用化に向けた取り組みも広がっている。国土交通省が23年度に行った委託事業「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証に関する調査業務」では、9つの事業者がレベル4飛行による自動配送ロボット連携の実証実験を実施した。レベル4飛行とは、人口密集地域での目視外無人飛行。もっとも、法律では配送ドロイドは小型ロボットに限られていたり、ドローンも飛行ごとに申請・承認が必要であったりと、普及に向けたロードマップは短くはない。

 配送ドロイドの実用化が進むのか。大手飲食チェーン関係者はいう。

「大きな荷物や長距離配送は運送会社やメーカーなどで無人トラックの開発・実証実験が進んでいるようなので、その進展を待つというかたちになるでしょう。一方、スーパーやコンビニの日用品や食品類、飲食店の料理が配送ドロイドの対象となってきますが、信号での停止・横断やヒト・モノ・車両との接触回避などを踏まえると、ハードルは低くはないでしょう。ヒトがロボットを遠隔操作するかたちですと結局、その人件費が発生しますし、ハード・システムの導入費・メンテナンス費用もかかることになり、コスト削減にはつながりにくいです。

 また飲食店の料理は直接、ヒトが口に入れるものなので、ヒトが運ぶということが“配送時に第三者が触ったりイタズラをしていない”ということの担保になっている面もあり、いくら遠隔でロボットの動作を監視しているといっても、ユーザー側の心配というのはなかなか解消されにくいでしょうから、スーパーなどの商品の配送よりもハードルが高くなってくるのではないでしょうか。とはいえ、人手不足は今後も小売店・飲食店の重い課題であり続けますし、配送ロボットの技術的進歩と価格低下は進んでいくでしょうから、将来的には、こういったものを使う動きが広がるという流れになっていくかもしれません」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

中国製の家電が日本で攻勢、日本メーカーは家電でも中国勢に市場を奪われるのか?

●この記事のポイント
・ハイアールやハイセンスなど中国製の家電製品、家電量販店で徐々に売り場が拡大
・カタログ性能はほとんど差がないにもかかわらず、日本製品の半値近くで売られているケースも
・専門家は「中国製品は性能や品質の面で日本製と比べて遜色ない」と評価

 ハイアールやハイセンスなど中国製の家電製品が売れている。家電量販店では徐々に売り場が拡大され目立つようになり、日本製品の売り場を侵食しつつある。ひときわ客の目を引くのが、その安さだ。カタログ性能はほとんど差がないにもかかわらず、日本製品の半値近くで売られているケースもある。かつて中国家電といえば「安かろう、悪かろう」というイメージが強かったが、家電量販店関係者は「ハイアールやハイセンスなどの大手の製品に関していえば、日本製と比べて遜色ない」と言い切る。そうなれば、気になるのが中国製品のシェア拡大によって、日本メーカーが打撃を受けてしまうのではないかという点だ。かつて日本製テレビは世界市場で大きな存在感を示していたが、低価格を武器に躍進した韓国・中国勢に押されるかたちで衰退。すでに東芝、三菱電機、日立製作所は生産から撤退または事実上の撤退。パナソニックも撤退を検討していると伝えられている。「日本の家電」も国内市場で同じ道をたどるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

日本の消費者の認識が変化

 大型家電では現在世界シェア1位のハイアールは、2002年に三洋電機(当時)と三洋ハイアールを設立して日本市場に参入。昨年には日本市場で販売体制を強化していくと発表。ハイセンスは2018年に東芝のテレビ事業を買収し、現在は傘下のTVSレグザを通じて「レグザ」ブランドを展開。白物家電も商品ラインナップを拡充している。

 なぜ今、中国メーカーが日本で攻勢をかけているのか。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏はいう。

「日本の消費者が中国製品に対して抱くイメージは、かなり上がってきています。かつては『安かろう悪かろう』というイメージがありましたが、それもなくなりつつあります。アマゾンなどで名前を聞いたことがないような中国メーカーの低価格の製品を買ってみて『意外に使える』と感じた消費者が増えて、中国製品の購入へのハードルが低くなったというのが、要因の一つでしょう。ジェネリック家電やアイリスオーヤマ、ニトリなどのPB(プライベートブランド)家電が増え、低価格家電への抵抗感が薄まり、日本製であっても製造は中国メーカーに委託するケースが当たり前になっているという事実を消費者が認識して、『中国メーカーもきちんと品質の良い製品をつくる技術力がある』という理解が広まったことも大きいでしょう。このほか、アマゾンの場合は基本的には返品が可能なので、中国製品でも安心して購入できるという点も影響していると思われます。

 消費者の認識という点では、もはや『日本製だから安心』『日本製は世界ナンバーワン』というイメージは薄れつつあります。カスタマーサポートの拠点も減っていますし、その点で中国と日本のメーカーに差はなくなりつつあります。加えて、ハイセンスのレグザがサッカーワールドカップの公式スポンサーになったり、TCLがオリンピックのワールドワイド・オリンピック/パラリンピック・オフィシャル・パートナーになったりして、中国メーカー各社が世界で大々的にPR活動を展開している点も影響しているでしょう。

 以上のように日本市場が新たなフェーズに入ったことを受けて、中国メーカーが攻勢をかけてきているのだと考えられます」

低価格実現の理由

 低価格を実現できている理由は何か。

「直接的な理由としては、世界市場に広く展開しているため生産量が圧倒的に多いという点があげられます。また、ハイアールの『AQUA』にせよ、東芝の白物家電事業を買収した美的集団(マイディアグループ)にせよ、グループで各製品のベースモデルを持っており、それをマイナーチェンジするというかたちで低コストでつくることができています。

 静音性やコンパクトさなど細かい点のクオリティを追求するには、やはり独自に設計する必要があると日本メーカーは言いますが、逆にいうと、細かい点にこだわらなければ、中国製品は性能や品質で大きく劣るわけではないので、そっちのほうを選んでも問題ないわけです。実質賃金の低下で日本人の家計がどんどん苦しくなり、『洗濯機に高い性能は必要ないよね』『ニトリやアイリスオーヤマの低価格PB商品で十分』という消費者が増えた今、その延長線上で中国製品が売れるのは当然でしょう」(安蔵氏)

先進的な機能を積極的に搭載していく姿勢

 では、中国家電の躍進で日本メーカーが苦境に追い込まれるという展開は考えられるのか。

「中国メーカーとしては、低価格の商品だけしか売れないという状況にはしたくないわけで、一方、日本のメーカーは、低価格商品は中国メーカーに任せて自分たちは高価格商品を売っていきたいと考えています。ですので日本メーカーは『日本人の機微をよくわかってるよね』みたいな『痒いところに手が届く』ものづくりを続けるしかないと思います。その点でも中国メーカーが日本メーカーと同じレベルになってくると、日本メーカーは太刀打ちできなくなるかもしれません。中国製のロボット掃除機も世界で売れていますが、米アイロボットの製品よりも先進的な機能をどんどん搭載しており、新しい技術を先んじで取り入れるというのは中国メーカーの強みです。日本メーカーも高級モデルでそのような方向にいけないと、なかなか厳しくなっていくのではないでしょうか。

 中国メーカーはまずは低価格製品から攻勢をかけて、徐々に高価格帯にも広げていくでしょう。エアコンのような設備的な製品は海外メーカーが入り込みにくい分野ではありますが、すでに中国メーカーのドラム式洗濯機や冷蔵庫は日本でも売れているので、徐々に日本の家電市場全体でシェアを拡大していくという流れになるのではないでしょうか」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=安蔵靖志/家電ジャーナリスト)

実質賃金、1%上昇目標=中小「防衛的賃上げ」からの脱却カギ―骨太原案

 政府が6日示した経済財政運営の基本方針「骨太の方針」の原案は、「賃上げを起点とした成長型経済の実現」を柱に据え、物価変動の影響を差し引いた実質賃金の年1%程度の上昇を目標に定めた。賃上げは大企業を中心に進む一方、中小企業や地方への波及が課題。政府は「政策総動員」の姿勢を強調したが、人手を確保するための「防衛的賃上げ」からの脱却がカギを握る。

「商品価格に(仕入れ)コストの転嫁がしづらく、賃上げが利益を圧迫し厳しい」(九州の小売業者)―。

 全国の中小企業が加盟する日本商工会議所が実施した2025年度の調査では、正社員の賃上げ率は4.03%。ただ、賃上げを実施・予定する企業の約6割は、業績が改善していないが人員を確保するための「防衛的な賃上げ」を迫られている実態が明らかになった。

 厚生労働省が5日発表した4月の毎月勤労統計調査では、実質賃金が前年同月比1.8%減と、4カ月連続のマイナス。物価上昇の勢いに賃上げペースが追い付いていない。

 骨太原案では「賃上げこそが成長戦略の要」として、所得と生産性の向上を強調。中小企業の賃上げ実現に向け、29年度までに官民で60兆円程度の投資を掲げた。人工知能(AI)などデジタル技術を使える人材の育成に力を入れる方針も示し、その実効性が問われる。

 賃金底上げの要となる最低賃金について、政府は20年代に1500円を目指す。原案には、中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)が例年夏に示す引き上げの「目安」を上回る都道府県に対し、補助金や交付金で支援する方針を盛り込んだ。日本より水準が高い欧州連合(EU)で用いる指標を参考に、審議会で目安を議論するとの方向性も示した。

 第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、秋以降に実質賃金がプラスに転じると予想する一方で、「トランプ関税の影響で企業業績が悪化すれば26年春闘の賃上げ率が大きく鈍化する恐れがある」とも指摘。トランプ関税のリスクは、賃上げにも暗い影を落としている。 (了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/06/06-19:29)