政府、なぜ「データセンター+再生エネ発電所」セット輸出を推進?日本企業の新ビジネスモデル確立

●この記事のポイント
・政府、日本企業によるデータセンターと再生可能エネルギー発電所を組み合わせたビジネスモデルの輸出を支援
・省エネデータセンターを日本企業のビジネスモデルとして確立し、海外マーケットでも一定のシェアを獲得
・今年度は欧州マーケットの調査を実施

 AIの普及により世界的にデータセンター需要が増大するなか、政府は日本企業によるデータセンターと再生可能エネルギー発電所を組み合わせたビジネスモデルの輸出を支援する。NTTデータグループはデータセンター市場で世界シェア3位とされ、総合商社をはじめ太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー事業に注力する日本企業は少なくなく、両分野において日本企業の海外進出が促進される可能性がある。具体的なスキームやロードマップについて、政策を推進する総務省に取材した。

●目次

デジタル海外展開総合戦略2030

 今回の施策を推進するに至った背景について、総務省 国際戦略局は次のように説明する。

「総務省は6月に『デジタル海外展開総合戦略2030』を策定・公表しました。その中で我が国の国際競争力の強化と経済安全保障の確保に向けて、自律性の確保が必要な領域と、将来において不可欠性の獲得が期待できる領域を重点分野として定めております。その重点分野の一つとしてデータセンターが含まれており、2030年頃までにオール光ネットワークとのパッケージ展開や海外市場の獲得を目標に定めまして、海外展開を進めていくこととしています。

 具体的に実行する政策の一つとして、海外において新たなデータセンターのモデル実証に対する支援に取り組んでいくこととしており、オール光ネットワークや再生可能エネルギーをはじめとした発電システムと連携した新しいデータセンター事業モデルを海外に展開していくことを考えております。今年度はデータセンターと再エネを組み合わせた新たなモデルの実現に向けて、まずは欧州市場等の基礎調査を始める予定です」

 総務省は前出のデジタル海外展開総合戦略2030のなかで、2030年までに世界のデータセンター市場における日本企業のシェアを20%以上にすることを目標として掲げている。今回の施策の意義は何か。

「大量の電力を消費するデータセンターと再エネ発電をセット販売のような形で実現し、課題解決につなげつつ、データセンターと再エネ発電の市場を取りに行くビジネスモデルの強化にもつながればいいと考えております。現在、総務省では経済産業省とも連携しながら、ワット・ビット連携というものを進めておりまして、送電容量の空きや再エネのポテンシャルがあるところにデータセンターを設置することで、データセンターの分散立地を進めていこうという取り組みです。こうした取り組みとも連携しながら、オール光ネットワークや再エネとの組み合わせによる新たな省エネデータセンターの事業モデルを日本企業のビジネスモデルとして確立し、海外展開に繋げていければ、海外マーケットにおいて一定のシェアが取れるのではないかと考えております」(総務省)

政府として事業展開先の政府に対して働きかけ

 総務省と事業者はどのような役割分担で進めていくのか。

「総務省は安全性・信頼性を確保したデジタルインフラの海外展開支援事業を行っています。この事業は、事業者への補助金交付といった形ではなく、総務省の調査の委託という形になります。再エネ発電とデータセンターを組み合わせた事業モデルの可能性について、今年度は初期調査として、欧州地域において規制やニーズの調査、ビジネスモデルの検討等を実施すべく、現在、委託先の事業者の選定に向けて公告を行っているところです。

 また、将来的に事業者が現地でビジネスを展開することになれば、案件の受注や円滑な事業展開に向けて、相手国政府や関係機関に対して働きかけを行ったり、現地の企業や政府とのネットワーキング構築の支援を行ったりといったサポートを行っていきます」(総務省)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

あなたの会社もきっと何かの世界一!ギネス世界記録の企業活用とは?

左からギネスワールドレコーズジャパン丸山拓郎氏、同社代表・石川佳織氏、電通 内山修一氏
左からギネスワールドレコーズジャパン丸山拓郎氏、同社代表・石川佳織氏、電通 内山修一氏

2025年で70周年を迎えた「ギネス世界記録™」。実は、企業のPR施策としても広く活用されています。

そこで今回は、ギネスワールドレコーズジャパンで法人のコンサルティングを担当する丸山拓郎氏と、ギネス世界記録の企業活用を支援する電通の内山修一氏にインタビュー。

ギネス世界記録を企業が活用するメリットや、過去の事例について語っていただきました。

<目次>
ギネス世界記録の認定は、PRにおいて強力な“ファクト”になる

「なぜその記録に挑戦するのか」のストーリー設計から電通が伴走

限られたスケジュールの中でエビデンスを集める「実績系」のギネス世界記録

徹底した事前準備が成功の秘訣!「チャレンジ系」のギネス世界記録

ギネスワールドレコーズジャパン代表に聞く!
 そもそもギネス世界記録ってどんなもの?


ギネス世界記録の認定は、PRにおいて強力な“ファクト”になる

電通 内山修一氏
電通 内山修一氏

──エンタメ性の高いコンテンツとして広く知られているギネス世界記録ですが、「ギネス世界記録の企業活用」とは具体的にどのようなものなのでしょうか?

内山:活用方法は大きく三つあると考えています。一つは、商品やブランドのプロモーションでの活用です。「世界一」「ギネス世界記録認定」という客観的根拠のあるわかりやすい表現を、“ファクト”として使用することができます。

二つ目が、いわゆる周年事業への活用です。企業がこれまで積み上げてきた歴史や実績の証明やメッセージを伝える手段として、ギネス世界記録にチャレンジする企業が昨今増えてきています。

そして三つ目が、海外市場に展開する際のコミュニケーションフックとしての活用です。これは、ギネス世界記録が世界でも非常に認知度の高いコンテンツだからこそできることです。

丸山:ギネス世界記録は今年で70周年を迎え、世界的に見て約9割の認知度があるブランドとなっています。書籍やテレビで触れていただくことも多いと思いますが、近年はSNSにも力を入れています。リーチ数は80億を超え、かなりのパワーコンテンツになっているんです。

国内はもちろん、世界中で認知されているギネス世界記録を活用することに、企業側もメリットを感じていただいているのかなと思います。

──企業が「世界一」を取得することで、どのような効果が得られるのでしょうか。

内山:一つはPR効果です。昨今、景品表示法が厳格に適用される風潮が高まっており、“最上級表現”が使いにくくなっています。その中でギネス世界記録に認定されたものは、堂々と「世界一」を示すことができます。

ギネス世界記録のライセンスは、テレビ、オンライン、新聞、商品パッケージなど、メディアごとに細かく切り分けて設定されています。プランニングや予算によりますが、最大で全メディアで活用可能です。

二つ目が、購買に対する効果です。例えば、食品メーカーの営業担当者が流通にアプローチする際、「ギネス世界記録に認定された商品です」と強力なファクトをわかりやすく伝えられることは、大きな強みになります。それがPOPなどの店頭施策を充実させ、購買にもつながると考えています。

三つ目は、クライアントの従業員といったインナーメンバーのモチベーションアップです。大きな企業ほど生活者やエンドユーザーのリアクションが見えづらかったり、日々の業務がどのような結果につながっているのかわかりづらいこともあると思います。その中でギネス世界記録の認定は、目に見える形で一つの評価となります。インナーメンバーにもポジティブな効果が与えられるところは、ギネス世界記録ならではの強みです。

「なぜその記録に挑戦するのか」のストーリー設計から電通が伴走

ギネスワールドレコーズジャパン 丸山拓郎氏
ギネスワールドレコーズジャパン 丸山拓郎氏

──ギネス世界記録を活用する企業は、どのような課題を抱えて相談されるのでしょうか?

内山:「商品やブランドのプロモーションをしたいが、強力なファクトが見つからない」と悩んでいるクライアントが多いですね。相談を受けたら、私たちはまずその商品やブランドの強みをヒアリングします。

その上で、約7万タイトルあるギネス世界記録の中からベストなタイトルをいくつか提案したり、合致するタイトルがまだない場合は、ギネスワールドレコーズ社に新規の記録開設が可能か打診します。そしてそのタイトルを活用してどのようなコミュニケーション展開ができるのかを考え、プランニングしていきます。

また最近は、周年事業でギネス世界記録を活用したいという相談も増えています。周年事業はメッセージやコンセプト、将来への展望を外に発信する機会ですが、どうしても企業本位になってしまいがちです。しかしそこに「ギネス世界記録への挑戦」と一つ旗を立てることで、社員からお客さままで、ステークホルダー皆が同じ方向を向けるようになります。

企業がお客さまを巻き込んでギネス世界記録に挑戦するケースも多いのですが、「ギネス世界記録に一緒にチャレンジしましょう」と呼びかけることで、エンタメ性が生まれて、前向きに取り組んでもらえるんです。

そして企業が伝えたいメッセージやコンセプトを、ギネス世界記録のチャレンジにうまく掛け合わせることで、お客さまにも自然な形で伝えることができます。

丸山:私も企画の部分から内山さんと連携して、いくつものプロジェクトに関わっていますが、内山さんはいつも「なぜその世界一にチャレンジするのか?」という裏付けを大切にされています。記録ありきではなく、全体のストーリー設計を考えているので、クライアントも納得感を持って取り組んでくださっているように思いますね。

内山:私たちの最終的なゴールは、世界一に認定されることではなく、ギネス世界記録を活用して企業の課題を解決することです。そのため、新たなタイトルで挑戦するときにも、商品やブランドの強みや特徴を重視しつつ、「どういうメッセージを打ち出していきたいのか」「メディアにはどう取り上げられたいのか」と、PRのヘッドラインに向けて逆算しながら考えるようにしています。

限られたスケジュールの中でエビデンスを集める「実績系」のギネス世界記録 

電通 内山氏
──実際に内山さんが関わったプロジェクトについて教えてください。

内山:まずは「実績系」のギネス世界記録の事例について二つ紹介します。

一つ目が、ニチレイフーズの「本格炒め炒飯®」です。本件は「瞬間的ではなく、継続した購買につながるようなプロモーションがしたい」というご相談からスタートしました。その中で「炒飯の売上金額でギネス世界記録が取得できないか」いう話になり、結果的にそのアプローチで進めることに。最終的に、世界で一番売れている冷凍炒飯として「最大の冷凍炒飯ブランド」というタイトルを開発し、認定されました。

ニチレイフーズ

丸山:補足すると、ギネス世界記録は、何でもタイトル化できるというわけではなく、「世界的に見て標準化できるか」が重要なポイントになります。例えば、「その企業だけしか挑戦できないタイトル」は記録にはなりません。

グローバルで同じルールのもと、同じように調査をしてナンバーワンであるかどうかが判定できるものに限られます。当社には70年の蓄積があるので、「標準化できるタイトルか否か」は比較的、明確に判断することが可能です。

内山:本件はニチレイフーズの営業チームから「流通との交渉がしやすい」と非常に評価をいただき、2年目以降もライセンス取得を継続していただくことができました。商品の売り上げ伸長を実現するなど、販促におけるギネス世界記録の効果がよくわかる事例となっています。

また、ギネス世界記録認定を祝して、メディア向けにPRイベントを開催したり、認定証を工場に掲出したり、アウター・インナー両方のコミュニケーションで最大限に活用されたようです。

テーブルマーク

内山:二つ目はテーブルマークの冷凍麺の事例です。テーブルマークはもともとギネス世界記録を取得されていましたが、周年事業のタイミングでより幅広く展開していきたいと、当社にご相談いただきました。

冷凍麺は競合が非常に多いカテゴリーで、価格競争も厳しいので、他の商品との差別化はどのメーカーも苦心されているところです。その中でテーブルマークは、冷凍麺世界売り上げナンバーワンとして「最大の冷凍麺ブランド」に認定され、テレビCMやパッケージにライセンスを活用いただいた結果、こちらも売り上げ伸長に貢献しています。引き続き、ライセンス使用を継続していただいていることから、一定の効果を感じていただけたのではないかと思っています。

丸山:ニチレイフーズやテーブルマークのように、売上額などすでに存在するファクトをもとにした「実績系」と呼ばれるギネス世界記録では、世界一の要件を満たすエビデンス(証拠物)を提出いただきます。具体的には、国際市場調査会社による調査のエビデンスにもとづいて認定の審査を行っています。

内山:私がプロモーションを設計する際は、「認定にはどんなエビデンスが必要か」「調査にかかる時間はどのくらいか」なども考慮しています。というのも、周年事業など、クライアントのプロモーションスケジュールが決まっていることもあるからです。

スケジュールに間に合うように調査を進め、必要な要件を満たし、ギネス世界記録の認定までもっていく。ここはかなりテクニカルなところではないかと思います。これを企業のマーケティング部や宣伝部の方が、日ごろの業務と並行しながらギネス世界記録の認定に向けて作業をするのは、かなり大変です。その点、私たちのチームはどこよりも確実性とスピード感をもってサポートできる自信があります!

丸山:それこそ、「世界で一番」のサポートかもしれませんね(笑)。

徹底した事前準備が成功の秘訣!「チャレンジ系」のギネス世界記録

ギネスワールドレコーズジャパン 丸山氏
──「実績系」以外にはどのようなギネス世界記録があるのでしょうか。

内山:「チャレンジ系」と呼ばれる事例を二つ紹介します。一つ目はP&Gのプロジェクト。これは二種類の食器洗い洗剤「JOY」が発売されたタイミングで、「販促施策として世界記録認定にチャレンジをしたい」という相談から始まったものです。

JOY画像 
内山:2商品のダブル認定にチャレンジすべく、それぞれの商品の長所に沿ってタイトルを設計しました。泡もちの良さが特徴の「ジョイPRO洗浄 まとめ洗い用」は、「3分間で洗ったお皿の最多数」、泡切れの良さが特徴の「ジョイPRO洗浄 すぐ洗い用」は、「3分間ですすいでタオルドライしたお皿の最多数」というものです。

後者のタイトル設計は特に苦労しました。というのも、日本はお皿を洗った後に水ですすぎますが、世界には洗い流さずにタオルドライする文化もあるんです。丸山さんとも相談しながら、ギネス世界記録の記録対象となりえる適切なタイトルを見つけ出すために試行錯誤しました。

この二つの記録チャレンジには、ジョイの広告に起用されているみちょぱさんと杉浦太陽さんに行っていただきました。本番での成功率を上げるために、私たち電通チームで徹底して準備をしました。チャレンジを実施するハウススタジオを借りて、お皿やスポンジを置く場所、お湯の温度など、どうすればギネスワールドレコーズ社が定める目標数値に近づけるかいろいろ試したのですが、これが本当に大変でしたね(笑)。

徹底した準備と、タレントさんの素晴らしいポテンシャルのおかげでチャレンジは成功。無事、ダブル認定となりました。各商品の強み自体がギネス世界記録のタイトルになっているので、流通にもお客さまにも訴求しやすいと、クライアントからも評価をいただきました。

ローソン画像 
内山:二つ目が、ローソンの「からあげクン」とサントリーの「こだわり酒場」のコラボ企画。コラボ商品としてからあげクンのレモンペッパー味が販売され、梅沢富美男さんを起用したPRイベントを実施したいというご相談がありました。

結果としてイベントで実施したのが、梅沢さんに「1分間で箸を使って移動したレモンの個数」のギネス世界記録にチャレンジしてもらう企画です。シンプルではありますが、からあげクンとレモンサワーを「つなぐ」という意味を込め、ビジュアル的にもわかりやすいものを実施しました。

こちらも電通チームで入念に準備し、梅沢さんにも本番前に練習していただいたおかげで、無事にギネス世界記録を達成。梅沢さんもとても喜んでくださり、ご自身のSNSなどで取り上げていただくなど、PR発表会以外の場でもPRにつながったと捉えています。

丸山:ギネス世界記録のカテゴリーには、箸で何かを移動させるという記録のカテゴリーがあります。お箸はアジア圏の方々が使うもので、世界的にも「チョップスティック」という言葉も浸透しているので、標準化しやすい点でも良い企画だと思いました。

また、こうしたチャレンジ系のギネス世界記録では、チャレンジ本番で3回までの挑戦が認められています。しかし、本番には公式認定員が立ち会うので、普段より緊張してうまくいかないことも多々あるんです。そのため、事前の練習や準備はとても大切。内山さんは特に「準備をすること」に、ものすごく信念をもって取り組んでおられる印象があります。

内山:もちろん、失敗覚悟で世界一にチャレンジをするケースも多々あると思います。ですが、私たちのチームが手掛けるような企業のPRプロモーションは、成功ありきでプランニングしているので、失敗が許されないところがありますから。個人的には、準備段階で成功率は95%くらい決まるのではないかと思っているので、いつも徹底的に準備し、できる限りのことをし尽くしてから、本番を迎えるようにしています。私が制作に関わったギネス世界記録の案件は、今のところ認定率が100%なんですよ! 

また最近、「サッポロ クラシック」誕生40周年の施策もお手伝いしました。この施策では、生活者、飲料店、量販店、インナーメンバーなどすべての北海道の方と一緒に40周年を盛り上げようという趣旨で、「サッポロ クラシック」を乾杯でつなぐ「乾杯の最大のオンラインビデオチェーン」の世界一にチャレンジしました。

これまでは電通だけで完結するケースが多かったのですが、本件は電通北海道との協業プロジェクトです。今後も、電通グループで連携しながら、全国各地のさまざまな企業のギネス世界記録の活用をサポートしていけたらと思っています。

──最後に、読者へメッセージをお願いします。

内山:大企業・中小企業関係なく、日本中のどの企業にもきっと何かの「世界一」の可能性があると私は思っています。商品やブランドのPRや周年事業など、どんな目的でも良いので、ギネス世界記録に挑戦してみたい、興味・関心がある企業の皆さまは、ぜひお気軽にご相談ください!

お問い合わせ先:
電通第5マーケティング局:5mk_gwr@group.dentsu.co.jp


石川代表

ギネスワールドレコーズジャパン代表に聞く!
そもそもギネス世界記録ってどんなもの?

【ギネスワールドレコーズジャパン 代表 石川 佳織】
ギネス世界記録の始まりは、1950年代初期のこと。当時ギネス醸造所のCEOが友人らと狩りに行ったときに「ヨーロッパで最も速く飛ぶ鳥は何だろう?」と議論になりましたが、答えがでませんでした。そこでいろんな「世界一」を調べて集めた本があったら面白いのではないかと、1955年に「ギネス世界記録」(当時の呼称は「ギネスブック」)が作られました。
 
当初は「この本をパブに置いたらお客さんたちが議論をして、ビールが売れるのではないか」という考えもあったようです。その後、ギネス醸造所から独立し、さまざまな世界一を収集、登録する形になりました。現在も毎年「ギネス世界記録」は出版され、特に欧米などではクリスマスプレゼントの定番になっています。

私たちが掲げるブランドフィロソフィーは、「世界を、よりおもしろく、楽しく、ポジティブな場所にする」。驚きや発見、挑戦者の思いや情熱が詰まった世界記録を広く発信することで、人々がさまざまなことに興味を持ったりアクションを起こしたりするきっかけになればと思っています。今後も、原点である書籍も大切にしつつ、SNSなどにも力を入れて情報を発信していきます。

また70周年を迎えた2025年は「Be Part of It - 挑戦した人は、知っている」というメッセージも打ち出しました。世界一は、読むのも見るのも楽しい。けれど、挑戦してこそ知る景色があります。世界一にたどり着くまでに見える景色、達成した瞬間の景色、記録保持者としての景色……。これらは挑戦者にしかわからないものです。皆さんにもぜひ、自身が好きなことや今のお仕事の中から「どんな世界一にチャレンジできるだろう?」と、好奇心を持って考えてみてもらえたらうれしいです。

ギネス世界記録の企業活用セミナー開催
 
●実施日時 :2025年9月9日(火)15:30~17:00
●登壇者  :丸山拓郎氏(ギネスワールドレコーズジャパン)
        内山修一(電通第5マーケティング局 CXコンサルティング3部 コンサルタント)
●実施方式 :会場リアル参加 or ウェブ参加(Teamsでの実施を予定/URLは後日ご案内します)
●実施会場 :電通関西オフィス
      (大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト17階)
●会場定員 :約30名(お申し込み多数の場合はウェブ参加へのご変更をお願いする場合があります)
●参加費  :無料
●申込先  :下記URLよりお申し込みください。
       https://forms.office.com/r/Fj01cixKVU
●申込締切 :2025年8月29日(金)17:00
●《問い合わせ》 :電通 第6マーケティング局プロジェクト開発部
          6mk_prokai@group.dentsu.co.jp
          担当:下川・一山・中村
 

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“ヒット作の深読み”が、ビジネスの突破口をひらく!?

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記録的な興行収入をたたき出したアニメ映画や、放送するたびSNSのトレンドに上がる人気ドラマ。それらがなぜヒットしたのか、深く考えてみたことはありますか?FUKAYOMIは、映画・ドラマ・アニメなどのヒット作品を読み解き、私たちの価値観変化や未来の欲望を予測する電通の独自メソッド。単なる作品批評にとどまらない鋭い視点は、ビジネスの突破口をひらく大きなヒントになるかもしれません。
書籍『未来の消費者は何を欲望するのか~ヒット作品を読み解いて分かった6つの価値観変化』も発売されたこのメソッドについて、DENTSU DESIRE DESIGN(電通デザイアデザイン)FUKAYOMIチームの佐藤と石川にインタビューしました。
※この記事はDo! Solutionsに掲載された記事を編集・転載したものです。
<目次>
ヒット作から、価値観変化と未来の欲望をあぶりだす
国際的ヒット映画「怪物」に見る、多層的な視点への欲望
作品からのさまざまな発見を、ビジネスのヒントに
“FUKAYOMI”すれば、ビジョン策定やコンテンツ制作の幅が広がる
FUKAYOMIを入り口にすれば、難しそうな未来予想もハードルが低くなる
FUKAYOMIのメソッドと実績がこれ一冊に!『未来の消費者は何を欲望するのか~ヒット作品を読み解いて分かった6つの価値観変化』発売
 

ヒット作から、価値観変化と未来の欲望をあぶりだす

──まずはFUKAYOMIについて教えてください。お二人は電通報でも何度か取り上げているDENTSU DESIRE DESIGN(以降「DDD」)のメンバーですよね。FUKAYOMIは、DDDの分科会といったイメージでしょうか?

佐藤:そうですね。DDDは“欲望”を基点とした生活者調査やマーケティング支援を行う電通のプロジェクトで、いくつかの分科会が存在するのですが、その一つが未来の欲望の予測に挑戦するFUKAYOMIチームです。“未来の欲望”は今まだ可視化されていない潜在的なものなので、それを予測するにはかなり奥深くまでインサイトを掘らないといけません。どういう方法論があるだろうかと考えた時に、「映像作品コンテンツ」に着目をしたことがFUKAYOMIの始まりです。

──なぜ映像作品だったのでしょうか?

佐藤:一つは僕が大学時代に自主映画を制作していて映画が大好きだったこともありますが、実は社会人になってから趣味でシナリオ学校に通ったことが大きく影響しています。映画やドラマのシナリオはとても戦略的に作られていて、決められた時間枠の中に制作者の考えや見る側の心の動きが緻密に計算されて盛り込まれています。シナリオを学びながら、ヒットした作品をひもとくことで今の社会が共感する欲望や価値観を抽出できるのでは、と直感したんです。それで実際にいくつかの作品を分析しながら、半年かけてFUKAYOMIのメソッドを体系化していきました。

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──そのFUKAYOMIメソッド、具体的に教えていただけますか?

佐藤:「価値観変化の流れ」を読み解く独自のフレームワークを用い、ヒット作品の中でどういった「欲望の生成」「欲望の解消」「価値観の更新」が行われているか、そしてそこからどんな「新しい欲望」が生まれ得るかを抽出・分析します。プランナー個人の視点から読み解くことに加え、ソーシャルリスニングなどの分析も踏まえてチームでディスカッションを重ね、共感性の高い結果を導き出していることがポイントです。

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国際的ヒット映画「怪物」に見る、多層的な視点への欲望

──具体的な分析事例を、何か一つご紹介いただけますか?

石川:例えば、書籍でも分析しましたが第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞したヒット映画「怪物」。 これは、息子の異変に気づいたシングルマザーの母親が担任教師の体罰を疑うことからストーリーが始まるのですが、途中で視点が担任に変わり、そして息子とその友達へと移っていく中で、同じ出来事に対して多層的な真実が浮かび上がる、という展開になっています。

──劇中では断定されない「怪物とは何なのか」という結論を巡り、国内外でさまざまな考察が巻き起こりましたよね。

石川:はい。この映画は、情報があふれる現代社会において「真実に近づきたい」という私たちの欲望をかき立て、さらに「自分の見ているものはどこまで真実かわからない」「もし違う視点から見たら、まったく異なる意味を持つのではないか?」という価値観の変化をあらわにした象徴的な作品だったと思います。さらにそれを踏まえると、この先の未来では「一つの真実を求める」よりも「俯瞰(ふかん)的に複数の視点を持ちたい」というマルチソースへの欲望が強まることが予測できます。こうした欲望は「怪物」だけでなく、途中で視点が逆転する展開は最近の多くのヒット作品から読み取ることができるんです。

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──たしかに最近、複数の視点から真実を立体的に描く作品が増えていますね。「マルチソースを求める」という新たな欲望も納得感があります。ちなみにFUKAYOMIでは、これまで何作品ほど分析してきたのですか?

佐藤:150作品ほどです。年代別に欲望の変化を捉えてみたり、複数の作品から読み取れる傾向を分類したりと、いろいろなアプローチを行っています。さらに、DDDが年に2回行っている「心が動く消費調査」の定量分析も重ね合わせ、一部の主観だけにとどまらない裏付けも取っているので、納得感の高い分析結果になっているのだと思います。

作品からのさまざまな発見を、ビジネスのヒントに

──FUKAYOMI流の読み解き方がわかったところで気になるのは、「それがビジネスにどう応用できるのか」という点です。

佐藤:分析結果の生かし方は幅広くあると思います。例えば「価値観の更新」に注目して、「そういう価値観の変化があるなら、当社のこんな技術が使えるな」と新商品やサービス開発に生かすことができますし、価値観変化に合わせて既存商品の訴求方法を刷新することもできます。先ほどもお話ししたように150作品ものヒット作を分析してきたので、クライアントのターゲットや課題感に合わせて適した価値観や欲望の情報をお伝えできると思います。

──なるほど。新しいマーケティングの切り口を探している人には、ダイレクトなヒントが得られそうですね。

石川:それで言うと、劇場版「名探偵コナン」シリーズの分析はマーケティング応用への気づきが多かったです。劇場版「名探偵コナン」は90年代から続く超ロングシリーズにもかかわらず、毎年興行収入を拡大している驚異のヒット作品です。そのシリーズを第1作からまとめて分析してみたんです。

詳細は割愛しますが、特に近年の大きな勝因は「推し活」文脈をうまく捉えた点にあることが分かりました。毎回フィーチャーする登場人物を変え、その人を中心とした登場人物の関係性を描く。あたかもその公式が二次創作をしているような感じで、毎年4月の映画公開時期にはまるでコミケが盛り上がるようにお祭り状態になるんです。

佐藤:するとそのフィーチャーされた登場人物を入り口に、毎年新しいファンが流入する。この巧みな戦略で、この数年は興行収入100億を超えている大成功コンテンツになっています。ポイントは、これまで大多数の人の推し活の対象にはなりづらいとされていた脇役キャラクターに光を当てたこと。プロダクト全体を見て終わるのではなく、一つ一つの要素に着目していくと必ずそれを偏愛している人たちがいる。その“偏愛”や“推し”という価値観を突破口にファンを広げていく手法は、そのまま他のマーケティングにも応用できますよね。

実はロングセラーお菓子の「たべっ子どうぶつ」も似たような手法を取っています。パッケージに描かれた動物たちをカプセルトイにして売り出したことから火がついて、体験型イベントやアパレル、ゲーム化、そして映画化にまで広がり、製品自体の売り上げも毎年2桁増を達成。今や大ヒットコンテンツに。英語を学ぶためのビスケットが推し活の対象になるなんて、最初は誰も考えなかったんじゃないでしょうか。

──FUKAYOMIからマーケティングへの接続、新たな視点が得られておもしろいですね!

佐藤:僕をはじめFUKAYOMIのメンバーは全員戦略プランナーなので、作品から得た知見をどうビジネスに応用させるかということは常々考えています。DDDはマーケティング支援の実績が豊富ですから、FUKAYOMIの活動も単なる作品批評とは大きく異なり、ビジネスへの有効なヒントとなるのがユニークなところであり強みですね。

“FUKAYOMI”すれば、ビジョン策定やコンテンツ制作の幅が広がる

──FUKAYOMIのビジネス応用という視点から、他にも可能性はありますか?

佐藤:より大きなところで言えば、ビジョンやパーパスの策定に役立てることもできると考えています。というのも、未来に向けて企業が生活者に何を提供できるかというビジョンを決めるときに、「未来の人たちがどういうことを欲望するのか」を前提に置かないと的を射ないものになりかねないからです。

それから、個人的に協業していきたいと思うのは、メディア関係の方々や販促企画を行っている方々です。これまではコンテンツやタレントなどの知名度や人気度を生かしたタイアップ企画が販促の主流でしたが、FUKAYOMIによって視聴者側の価値観や欲望の視点を深掘りしていくことで、より細やかで最適化されたコンテンツとのマッチングや企画立案につながっていくと思います。

──生活者のインサイトを細やかにつかむことで、企業・コンテンツ・顧客との新しい関係性が生まれるかもしれませんね。

石川:世の中にはいろんな消費者調査データがありますが、それらの多くは顕在化された声を数字にしているので、生活者も気づいていないような心の奥まで知ることは難しいとされています。潜在的なニーズを捉えるためにFUKAYOMIを使っていただき、それを刺激にいろんなビジネスや関係づくりに生かしていただけたらと思います。

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FUKAYOMIを入り口にすれば、難しそうな未来予想もハードルが低くなる

──ここまでのお話をお聞きして、FUKAYOMIによる分析結果はもちろんのこと、FUKAYOMIというメソッドそのものを身につけることがビジネスパーソンの大きな力になるように感じました。

佐藤:ありがとうございます。僕もそれがとても重要だなと思っていて、映画をたくさん見て、その裏にある共感ポイントや心を動かされた要因は何だろうってことをひもといていくと、だんだん人間の欲望や気持ちというものが見えてくるようになるんです。そうすると、自分の中でいろんな発想や切り口を持つことができて、ビジネスのいろんなシーンで今までよりたくさんの意見が言えるようになる。そのためのトレーニングとして、FUKAYOMIメソッドは一つの有効なフレームワーク。われわれが深読みしたものをクライアントに提供するだけでなく、個人個人でぜひ実践していただけたら理想的です。

──例えばそうした研修プログラムをソリューションとして提供することも、可能なのでしょうか?

佐藤:FUKAYOMIのサービスは、クライアントからのご要望があれば、個別の課題に合わせて柔軟に対応する方式を採用しています。例えば物語のシナリオ構造と、それによる人間の心の動きを知ることは、企画書を書く時にそのまま役立ったりもします。また、ストーリーテリングのスキルアップにもつながるので、プロジェクトで価値観変化を検討し、未来の欲望を予想するステップに取り込んだり、研修などのメニューとしてプログラム化することも可能です。 

人の欲望を探るとか、未来を予想するとか言われるとなんだか難しいことのように思われがちですが、FUKAYOMIの考え方は、消費者の価値観の変化の潮流から、未来の欲望を予測するというとてもシンプルなものです。ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

FUKAYOMIのメソッドと実績が一冊に!「未来の消費者は何を欲望するのか~ヒット作品を読み解いて分かった6つの価値観変化」発売

──FUKAYOMIメソッドが2025年7月26日に書籍化されましたね。

佐藤:はい。発足以来5年間にわたる活動の集大成として、代表的なヒット30作品の分析から導き出した「6つの価値観変化」と、そこから予想される「3つの未来欲望」を1冊にまとめた書籍です。自社のビジネスに今までの延長線とは違う風を吹かせたいという方にはきっとヒントがあると思うので、多くの方に読んでいただけたらうれしいです。そしてもっと詳しく知りたいという方は、ぜひ直接お話しする機会を設けさせていただければと思います。

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──これを読んだ後は、もはや何も考えずにコンテンツを見ることはできなくなるかもしれませんね。

石川:確かにそう言われると、私もFUKAYOMIチームに加わってから、普段プライベートで映画を見るときも「これって観客の価値観にどんな変化をもたらすのかな」と考えるようになりました。でもそのおかげで、FUKAYOMI以外の業務でも、価値観変化や時代背景を踏まえた長期的な視点を持てるようになったと思います。

とはいえこの書籍に関しては、ビジネスに限らず映像コンテンツが好きな人なら誰でも楽しめる内容。ぜひ、ライトな気持ちで読んでみてほしいです。

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今、注目の不動産SaaS・7選は?物件管理・契約手続き・入居者対応・営業支援などを効率化

●この記事のポイント
・不動産業界においても、SaaSの導入が加速
・物件管理や契約手続き、入居者対応、営業支援、リーシングなど、多岐にわたる業務を効率化
・データ一元管理、ペーパーレス化、自動化、遠隔対応などのメリット

 クラウド会計の「freee」や請求管理の「マネーフォワードクラウド」など、SaaS(Software as a Service)は今や多くの業種で導入が進み、業務の効率化や生産性向上に欠かせない存在となった。実は、アナログな印象が強い不動産業界においても、SaaSの導入が加速している。物件管理や契約手続き、入居者対応、営業支援、リーシングなど、多岐にわたる業務を抱える不動産業界こそ、SaaSの恩恵を受ける場面は多い。本記事では、不動産業務向けに提供されている代表的なSaaSをピックアップし、その特徴を紹介する。

●目次

不動産業務とSaaSの親和性

 不動産業界には「紙と電話」の文化が根強く残っていたが、近年はコロナ禍を契機にデジタル化が一気に加速。非対面での内見や契約、遠隔地の物件管理など、従来のやり方では対応しきれない場面が増えたことで、SaaSへの関心が高まっている。不動産業界におけるSaaSの主なメリットは以下の通りだ。

・データ一元管理:情報共有を強化し、属人化を解消 
・ペーパーレス化:電子署名で書類業務を効率化 
・自動化:入居者対応や契約手続きの負担を軽減 
・遠隔対応:複数拠点やテレワークをスムーズに運用

 こうした利点を生かし、業務効率化や顧客体験の向上を実現するSaaSが続々登場している。ここからは、日本市場で実績を重ねる代表的なサービスを紹介しよう。

注目の不動産SaaS:7つの有力ツール

1.  いえらぶCLOUD
 不動産仲介・管理会社向けの総合システム。物件登録から反響管理、契約書作成、入居者対応、退去精算まで一括管理。30以上のポータルサイトとの自動連携や、CloudSign(クラウドサイン)を活用した電子契約が強みだ。中小から大手まで5,000社以上に導入され、業務の効率化を支援している。
公式サイト)https://ielove-cloud.jp/

2.  @property(@プロパティ)
賃貸管理をデータで最適化。家賃収入や空室率、物件パフォーマンスを可視化し、投資家や管理会社向けに収支予測やポートフォリオ管理を提供。資産価値の最大化をサポートする。
公式サイト)https://propertydbk.com/service/

3.  パレット管理
賃貸管理会社向けテナント管理システム。クラウドベースでテナントやオーナーとのコミュニケーションを効率化し、ペーパーレス化を推進。契約や問い合わせ対応をスムーズにする。
公式サイト)https://www.management.palette.co.jp/

4.  ANDPAD(アンドパッド)
建設現場のデジタル化を推進。クラウドでの書類管理やグループチャット、進捗管理で施工効率を向上。建築・不動産開発の現場課題を解決するツールとして広く採用されている。
公式サイト)https://andpad.co.jp/

5.  Qosmos(コスモス)
建物・設備のメンテナンス業務を効率化。過去の工事データを蓄積・整理し、保守管理の最適化を支援。メンテナンス業務の省力化に貢献する。
公式サイト)https://lp.qosmos.biz/

6.  SPIDERPLUS(スパイダープラス)
建築現場向けアプリ。図面や写真のデジタル管理、帳票生成をサポート。リアルタイムの情報共有で、現場の生産性を高める。
公式サイト)https://spider-plus.com/

7.  リノべる。
物件探し、デザイン、施工、資金計画を一括提供するリノベーションプラットフォーム。デジタルツールでリノベーションのプロセスを簡素化し、顧客ニーズに応える。
公式サイト)https://www.renoveru.jp/

導入の鍵は「業務の見直し」と「連携」

 SaaS導入は「万能薬」ではない。社内フローの整理やデジタルスキルの底上げ、部門間の連携体制など、業務そのものの見直しが必要なケースもある。また、複数のSaaSを導入する場合はデータの連携や統一ルールの設定が重要だ。

 一方で、クラウドサービスが普及する中で、各SaaSベンダーも「連携可能なエコシステム」としての進化を進めている。API連携、カスタマイズ性、サポート体制などを見極め、自社にフィットするツールを選ぶことが求められる。

不動産SaaSで未来の働き方へ

 多忙かつ煩雑な不動産業務を、少人数で効率よく回すために――。SaaSは単なるITツールではなく、働き方を根本から変える「仕組みのアップデート」だ。今後は、契約からテナント対応、オーナーとのコミュニケーションまで、顧客体験(CX)を高めるエコシステムがさらに進化するだろう。業務現場の課題を理解し、改革意識を持って導入を進めることが成功の鍵だ。日本の不動産業界は、クラウド化の波に乗って新たなステージへ進んでいる。

(文=齋藤めぐみ/有限会社リーゼント、ライター)

ハノイで和牛イベント=ベトナム顧客に知識や技術を提供―サクラフーズ

【ハノイ時事】香港を拠点に和牛の卸売業を手掛けるサクラフーズは16日、ベトナムのハノイで和牛の知識を深めるイベントを開催した。日本人シェフが和牛の各部位を使用した調理方法を紹介し、鮮度や品質を保つための保管方法などを解説した。

 サクラフーズはハノイに支店を構え、熊本産ブランド肉「和王(WAOH)」をベトナム国内のレストランに販売している。今回のイベントには、同社と取引のある企業10社25人が参加した。

 イベントを主催したサクラフーズの薗田昌己社長は、「ベトナムでは和牛の人気が高まっているが、和牛と言えばステーキのイメージが強く、レストランが仕入れる部位には偏りがある」と説明。「イベントを通じて、より多くの部位やそれぞれの部位に適した料理への知識を深めてもらいたい」と語った。

 ハノイ市内の日本食レストランのシェフ、ダオ・バン・ロアートさんは「肉をゆでてサラダにする調理方法は新しい発見であり、多くのことを学ぶことができた」と感想を述べた。すしレストランのシェフであるファム・ミン・クアンさんは「ベトナムの一般人にとって和牛は高価であり、多くの人に広めることは難しいが、和牛のさまざまな部位を使用すれば手頃な価格で提供できるかもしれない」と期待した。

 サクラフーズは今後もベトナム顧客に向けて、和牛の知識や調理方法などを伝えるイベントを定期的に開催する。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/07/21-14:33)

人を育てられない現場を変える…人手不足時代の“技術継承”を救うマニュアル革命

●この記事のポイント
・人口減少が進む日本にあって、企業が生き残るためには、属人的なノウハウを誰もが教えられる「再現性のある仕組み」に変えることが不可欠。多くの地方企業では、OJTに頼った教育が中心で、熟練者の技術やノウハウが言語化されておらず、新人が育ちにくい状況にある。これが離職率の高さや、教える側の疲弊にもつながっている。特に多国籍化が進む現場では、この問題がより深刻化している。
・スタディストは、「人が減っても事業が回る社会」の実現を目指している。同社が提供する「Teachme Biz」は、動画や画像を使ってマニュアルを簡単に作成・共有できるツール。これを利用することで、属人化していたノウハウを「形式知」として可視化し、新人が短期間で業務を習得できるようになる。

 人口減少、採用難、技術継承の断絶──。地方企業が直面する人手不足の裏には、「仕組みがない」ことによる悪循環がある。長く続いてきた属人化されたオペレーションは、今や新しい担い手を遠ざけ、世代交代をも阻んでいる。

 現場の熟練の技術をテクノロジーの力で継承することはできるのか。現場のマニュアル化の実態を、スタディスト代表取締役の鈴木悟史氏に聞いた。持続可能な地方の技術継承のヒントを探る。

目次

昭和のプロセスが残る現場──地方企業の構造的課題

「地方ではどの業種でも、『人が足りない』どころではなく、もはや“人材の奪い合い”です。それに伴い、給与水準が上昇し、収益性が悪化。業績に直接打撃を与えています」

 スタディスト代表取締役の鈴木悟史氏は、現場で目にする課題をそう語る。

 同社は、業務マニュアルの作成・共有ツール「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」を提供するスタートアップだ。人手が不足する現場において、無駄のない合理的な業務オペレーションを実現するためのサービスである。これまで主に都市部で使われてきたが、近年は地方での導入も急速に進んでいる。

 とりわけ引き合いが多いのは、昭和時代に設計された非効率なプロセスや、属人的な手順が色濃く残る現場だ。変化に向けた第一歩すら見えないまま、OJT(On-the-Job Training/実地訓練)に頼った教育が常態化している。マニュアル自体は存在していても形骸化し、業務が手書きのノートで共有されているケースも珍しくない。

 たとえば、食品製造の工場は外国人労働者が多く集まる代表的な現場のひとつだ。かつては技能実習生の受け入れによって特定の国の出身者が多かったが、現在は国籍もばらばらな“多国籍軍”の様相を呈している。

属人化と「仕組みの空白」が生む負の連鎖

 地方の現場では、マニュアルの整備が進まず、属人的な業務のやり方が続いている。新人への教育も、ベテランの経験や勘に頼ったOJTが中心だ。技術や手順を言語化できないまま、「見て覚えろ」と伝えるしかない状況が続く。その結果、外国人や未経験者には十分に伝わらず、教える側も疲弊してしまう。

 店舗や工場では、教育に人手が割かれ、通常業務との両立が難しくなる。店長が育成にかかりきりになることで、他の従業員がフォローを受けられず、不満が高まるケースも多い。

 属人化された環境では、新人の教育に時間がかかり、結果として離職が相次ぎ、教える側まで離脱してしまうケースもある。こうした“負のループ”が、地方の現場に深刻な構造的課題として広がっている。

「制服の着方や手の洗い方から教えなければならない。でも、教える人の手が足りない。やり方がわからないまま教えられ、教える側も疲れて辞めていく。こうした現場には、“仕組みの空白”が広がっています」と、鈴木氏は語る。

 製造現場だけではない。たとえば鈴木氏は、地方の飲食店で貼られた「担々麺やめます」の張り紙に、危機感を抱いたという。

「地方に行くと、『今日は人が足りないので、担々麺やめます』といった張り紙を見かけることがあります。人手不足のため、注文数を制限せざるを得ないのだと思います。さらに、インバウンド需要の高い地域では、より条件のよい仕事に人が流れてしまい、店舗が立ち行かなくなりつつあります」

 外国人労働者や短期のスポット労働者を頼るとしても、教える人の手が空かなければ何もできない。「人手不足」と一言で語られがちだが、その本質は「雇っても業務を引き継げる人がいない」ことにある。

 経営者が採用に動いても、外国人材やパートタイム人材の受け入れには教育コストがかかる。現場は疲弊し、教える側も含めて人が辞めていく。この悪循環が繰り返されている。特に属人化が進んだ職場では、新人の教育に手がかかり、定着せずに辞めていく。教育に割ける余力も限られ、教える側も疲れ果てていく。

キーパーソンは「声の大きな人」

 新人が辞めるだけでなく、教える立場のベテランまで離脱すれば、現場に蓄積されてきたノウハウの喪失は避けられない。とはいえ、テクノロジーの導入は決して簡単ではないと、鈴木氏は指摘する。

「社長がいくら積極的でも、現場のスタッフが実際に使わなければ意味がありません。システムを導入しても、現場の人たちがその意義を感じなければ、なかなか根づかないんです」

 スタディストでは、こうした現場の反応の壁を超えるため、実際に現地へ赴き、作業風景を撮影。動画からマニュアルを生成し、その場で見せることで、納得感を得てもらう工夫をしている。

「実際にその場でやって見せると、『これなら自分にもできそうだ』と感じてもらえます。現場の“声の大きな人”を納得させることができれば、組織は一気に動き出すんです」

 こうした現場に寄り添った支援があってはじめて、テクノロジーの力が真に活きてくる。

 たとえば、ある部品メーカーでは、新人の5割が1年以内に離職していた。熟練技術者が新人に技術を教えるのに1年を要し、習得も難しいうえに定着しない状況が続いていた。そこで同社は、「Teachme Biz」を活用して業務をすべて可視化し、マニュアルとして形式知化することを決断した。

 ただし、シニア層の技術者にとっては、マニュアルを一つひとつテキストで入力する作業は非常に負担が大きい。そこで「Teachme Biz」を使い、日常の作業を動画と音声で記録。その内容をシステムに取り込み、実行ボタンを押すだけで、動画マニュアルが自動で生成される仕組みを導入した。

 動画には文字起こしが付き、さらに自動翻訳機能により、外国人労働者でも母国語でマニュアルを確認できる。「Teachme Biz」の導入で、1年かけていた工程がおよそ1カ月で習得可能になった。従業員の定着率も50%から90%へと大きく改善したという。

「頭の中にしかなかった非構造的な手順を可視化できることが、何よりの強みです。こうして蓄積されたノウハウは、将来的にはチャットボットからも検索できるようになり、教育コストはさらに下がっていきます」

脱・属人化は避けられない流れに

「『Teachme Biz』はあくまで手段であり、私たちが目指すのは“人が減っても事業が回る社会”です」

 鈴木氏が掲げるのは、人口が4割減ってもGDPが上がる日本の実現だ。本当に付加価値を生む業務を見極め、マルチスキル化と再現性のある仕組みによって業務を効率化するためには、個人の熱意ではなく“仕組みそのもの”が不可欠だという。

「自動翻訳や読み上げ機能、AIによる支援など、どんどん機能は増えていますが、それは“どんな課題をどう解くか”を一つひとつ考えてきた結果です。テクノロジーは、利用者の課題に寄り添って進化しているのです」と鈴木氏は語る。

 最近、鈴木氏が地方でよく耳にするのは、「スキルアップに応じて給与を払いたいが、その原資がない」という経営者の悩みだ。人件費の上昇、採用競争の激化、そしてノウハウの流出。多くの企業が今、初めて“仕組みの必要性”に本格的に向き合い始めている。

 こうした中で、「Teachme Biz」のようなツールを導入する企業も着実に増えている。さらにスタディストは今年、BPO事業者(Business Process Outsourcing/業務プロセスを専門的に外部委託する事業者)をM&A(合併・買収)し、マニュアル整備にとどまらない“業務の合理化支援”にも乗り出した。

 重要なのは、「テクノロジーを導入すること」そのものではない。人口減少が進むなかで、再現性のある仕組みをどう構築し、いかに業務を回していくかという発想を、企業が本気で受け止められるかが問われている。

 現場に埋もれている知識を形式知として残す。人に頼らずに、誰もが教えられる仕組みを持つ。それは今、あらゆる企業にとって“生き残るための前提条件”になりつつある。

(寄稿=相馬留美/ジャーナリスト)

東京23区、高層ビル開業ラッシュでオフィス供給過多の懸念→逆に空室率が低下の不思議…「魅力的なオフィス」求める企業が増加

●この記事のポイント
・東京23区のオフィス空室率、前月比0.05ポイント低下の2.15%。千代田区は0.97%
・オフィス需要は一時的な調整局面を経て、着実に増加基調へと転じた
・企業による立地・設備面で優れた物件への移転・増床ニーズが上昇

 渋谷駅周辺や東京駅周辺などで大規模開発が進み高層オフィスビルの建設・開業が相次ぎ、オフィスの供給過多を懸念する見方もあった東京。そうした予測を裏切るかのように、オフィス空室率が極めて低い水準で推移している。ザイマックス総研が発表した6月の「オフィス空室マンスリーレポート」によれば、東京23区のオフィス空室率(対象:延床面積300坪以上のオフィスビル)は、前月比0.05ポイント低下の2.15%であり、賃貸面積のうちの募集面積の割合を示す募集面積率は3.28%(同0.03ポイント低下)だった。なかでも都心5区の空き室率は1.79%(同0.06ポイント低下)と低さが際立っており、千代田区(0.97%)のように1%を切る区も出ている。コロナ禍でリモートワークが拡大・定着し、人々の働き方が変容して“オフィス離れ”が加速するとの見方もあったが、なぜ逆の現象が起きているのか。また、今後も空室率低下が進んで企業が“オフィスを借りにくい”状況になるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

対面での打ち合わせやチームでの協働作業が再び重視

 同研究所の調査によれば、大規模なビルのほうが空室率が低い。大規模ビル(延床面積5,000坪以上)は2.01%、中小規模ビル(延床面積300坪以上5,000坪未満)は2.31%となっている。東京23区では大規模開発が進行中だ。渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内では、東急不動産などが「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」と定めた大規模再開発が進行。「渋谷ストリーム」「渋谷スクランブルスクエア」「渋谷ソラスタ」「渋谷フクラス」「Shibuya Sakura Stage(サクラステージ)」など高層オフィスが次々と開業。東京駅周辺では八重洲、日本橋地区の開発が進行中であり、23年に「東京ミッドタウン八重洲」が開業し、28年には高層ビルとしては日本一の高さとなる「トーチタワー」が開業予定。日本橋1丁目中地区でも高層ビルが開業予定だ。

 これ以外にも、数年前にひと段落ついた丸の内地区の再開発でも多くの高層ビルが開業し、2年前には港区に「麻布台ヒルズ」が開業。都内ではオフィス供給過多による空室率の上昇を予想する見方も強かったが、なぜ逆に低下しているのか。ザイマックス総研は次のように説明する。

「現在の空室率の低下は、複数の要因が重なっていると考えられます。まず、コロナ禍を経て、企業の人員構成や働き方の見直しが進み、オフィス需要は一時的な調整局面を経て、着実に増加基調へと転じています。出社回帰の流れが強まっていることに加え、対面での打ち合わせやチームでの協働作業が再び重視されるようになったことで、物理的なワークスペースの重要性が再評価されているのが背景にあります。出社回帰の動きは、必ずしも100%出社ではなくても着実に強まる傾向にあります。

 こうしたなか、社員の生産性を高めるための『より良いオフィス環境』を求める動きが活発になっており、企業による立地・設備面で優れた物件への移転・増床ニーズが高まっています。採用活動の観点でも、快適かつ魅力的なオフィス空間を持つことが企業の競争力につながると考える企業が増えているという面もあります。製造業でさえ、地方立地の工場に併設された研究所では研究職の採用が厳しいという声があります。

 また、出社回帰に伴い、入居企業内での会議室不足が顕在化しており、外部の貸会議室を一時的に利用するケースも増加しています。こうした需要も、オフィスの有効活用やスペース拡張の下支えになっています」

空室率や賃料、成約ペースに格差が生まれていく可能性

 では、今後も低い空室率が続くと予想されるのか。

「短期的には、空室率は現在の低水準で安定的に推移すると見込まれます。ただし、先行きについては以下の点に注意が必要です。例えば、米国の通商政策をめぐる不透明感などにより世界経済の先行きに対する警戒感が高まれば、企業の投資意欲が抑制され、オフィス需要にも影響が及ぶ可能性があります。また、今後も都心部では大規模オフィスビルの新規供給が続く予定であり、大型ビル間の競争はより一層激化していくと考えられます。こうしたなかで、立地やビルスペックなどで明確な差別化が図られている物件と、それ以外の物件との間で、空室率や賃料、成約ペースに格差が生まれていく可能性もあります」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=ザイマックス総研)

メディアが大変革期を迎える中、人々が「頼り」にするメディアとは

「情報メディア白書2025」(電通メディアイノベーションラボ編、ダイヤモンド社刊)が4月23日に発行されました。情報メディア産業の全貌を明らかにするデータブックとしてまとめられた本白書の発行は、今年で32年目となります。

巻頭特集の「メディアの大変革期、未来を形作る新たなコミュニケーションの地平」では、以下の4つの記事において情報メディア市場や人々の行動のトレンドを解説しています。

  1. メディアの多様化が進む中、人々はどのようなメディアを「頼り」にしているのか
  2. 現代的インフルエンサーの転回:マーケター化、ポッドキャスト、小さなプラットフォーム症候群
  3. 「推し活」を広告・マーケティングに活かすヒントを探る
  4. メディアスタディーズ~新聞の今とこれから~

本連載では、この巻頭特集の内容を一部紹介します。今回は「メディアの多様化が進む中、人々はどのようなメディアを『頼り』にしているのか」をもとに、人々のメディアとの関与の様子をひも解いていきます。

<目次>

大変革期を迎えるメディア

年齢を重ねるにつれて「個人」から「社会」へ。幅広い興味関心ジャンルの中、移り変わる対象

全ての年代が、ニーズに合わせて新旧さまざまなメディアや情報源を利用する

若年層のメディア利用の中核を占めるSNS・ブログ、動画・音声配信

40代が「分水嶺」!?年代によって大きく異なる「“頼り”にするメディア」

多様化するメディアと人々のつながりの未来

大変革期を迎えるメディア

日本のラジオ放送は1925年に始まりました。音声情報を電波でリアルタイムかつ多くの人に届けるメディアの登場が、人々の生活や娯楽を大きく変えたことは想像に難くありません。ラジオ誕生から100年の節目を迎えた現在、メディアはどのような時代を迎えているのでしょうか。

通信インフラやデジタル機器の進化を背景に、2000年代より急速に浸透したインターネットは、人々の情報取得、娯楽、そしてコミュニケーションのあり方を変貌させました。これは日本に限ったことではなく、例えば2024年9月の英国のOfcom(放送通信庁)の発表を見ても明らかです。

16歳以上を対象とする最新調査において、71% は何らかの形でオンラインのニュースを利用すると回答し、その比率が初めてテレビ(70%)を上回りました。Ofcomはこの状況を、「テレビはニュースの主要な情報源としての王座を失う(”TV loses its crown as main source for news”)」と表現しています(※1)。

※1 出典:Ofcomウェブサイト、2024年9月10日付発表記事”TV loses its crown as main source for news”

 

直近では、私たちは日常生活への大きな制約を伴うコロナ禍を経験しました。この局面においてインターネットは多くの人にとって不可欠な生活インフラとしても機能しました。メディアとしての役割もさることながら、生活の利便性向上のためにもインターネットの重要性は増しています。このような時代の変化に応じて新聞、雑誌、ラジオ、テレビも進化を続けています。

他方、近年ではインターネットに関連するさまざまな課題が指摘されています。例えば、利用者の興味・関心に基づきコンテンツを表示するアルゴリズムは、パーソナライズされた体験を実現する一方、過度に最適化された情報に接し続けることによるフィルターバブルやエコーチェンバーが懸念されています。

また、行き過ぎたアテンション・エコノミー(※2)による情報空間のゆがみも指摘され、多様な意見や価値観に触れる機会をいかに確保できるか、各所で議論が進行しています。

※2  アテンション・エコノミー = 情報過多の社会において、(各情報に対する)生活者の興味や関心自体が経済的な価値をもつとされる経済モデル。

 

現在、メディアはかつてない変革の時代を迎えており、その将来像を明確に描くことは容易ではありません。しかし、現時点における人々とメディアとの関係性を深く理解することで、未来を見通すための重要な手がかりが得られるはずです。

年齢を重ねるにつれて「個人」から「社会」へ。幅広い興味関心ジャンルの中、移り変わる対象

ここからは、電通メディアイノベーションラボが2024年6月に実施した「頼りにするメディアに関する調査」の結果をもとに、人々とメディアの関係性について考察します。多くの人は自身の興味関心を満たすような情報や体験を得るためにメディアを利用するのではないでしょうか。本調査では、人々がどのようなジャンルの事象に興味関心を持っているかをたずねました。

図表1は主要な興味関心ジャンルと属性の関連を可視化する目的で、男女10歳刻みの属性についてコレスポンデンス分析(※3)を行った結果を示しています。

※3 コレスポンデンス分析=カテゴリーデータの関係を視覚化する解析手法。カテゴリーデータ間の「距離」を測定し、その「関係性」を視覚化してデータのパターンや構造を視覚的に理解することができる。関連性が強いものは近くに、弱いものは遠くにプロット(布置)される。

 

横軸は、右に「国の政治・行政」、「外交・安全保障」などがあり、左に「美容・コスメ」「アイドル」「ファッション」など個人の嗜好が大きく影響するジャンルを配置することから、<個人⇔社会>を表すと解釈されます。

縦軸は上に「美容・コスメ」「医療・介護」「ドラマ」「料理・レシピ」などソフトなジャンル、下に「ゲーム」「自動車・バイク」「テクノロジー・IT」などのハードなジャンルがあり、<ソフト⇔ハード>を表すと捉えられます。

情報メディア白書2025#1_図版01

属性別の傾向を見ると、女性はより上側の象限(ソフトな領域)のジャンルと関係性が近いようです。年齢層別では、若い女性ほど「個人」の嗜好性が強く反映されるジャンルに近く、年齢が上がるに伴い、右側のより社会性の強い領域のジャンルへの関心をもつことがわかります。男性は総じて下側の象限(ハードな領域)のジャンルに近く、年齢層別では女性と同様に若年層ほどより身近で趣味性の高いジャンル、高年齢層になると社会事象に関心がシフトします。

このように年齢によって人々の興味関心の対象が異なるのは、個人の嗜好性もさることながら、ライフステージの変化やそれまでの経験が影響していると考えられます。この幅広い興味関心を満たすような情報や体験を求めて人々はメディアに接していると考えられます。

全ての年代が、ニーズに合わせて新旧さまざまなメディアや情報源を利用する

テレビ、新聞、ラジオ、雑誌は幅広いニーズに応える多彩なジャンルのコンテンツを長らく届けてきました。加えて、インターネットではさまざまな主体がテキスト、画像、音声、動画という形式でコンテンツを発信しています。そこで本調査では、78のメディアや情報源(テレビの主な番組ジャンルを加えると82)の利用状況を確認しました。

図表2はふだん利用するメディアや情報源の上位20項目をその利用頻度とともに示したものです。

情報メディア白書2025#1_図版02

1位は「ポータルのニュースサイト」(70.8%)、次いで「民放の番組」(69.8%)、「NHK(総合・Eテレ)の番組」(53.2%)、「ネットショッピング・ECサイト」(44.4%)、「一般紙」(34.3%)が続きます。上位には従来型メディアとネット系メディアが混在し、その内容はニュースや商品・サービス情報、音楽など多岐にわたります。

また、動画共有サイト(YouTube、ニコニコ動画、TikTokなど)の「有名人(ユーチューバー、ティックトッカーなど)のチャンネル」、「友人・知人のSNS投稿やブログ」など、個人が発信する情報もよく利用されています。このような状況から、人々は情報取得や娯楽など、その時々の目的に適したメディアや情報源を選び、利用しているといえるでしょう。

若年層のメディア利用の中核を占めるSNS・ブログ、動画・音声配信

続いて、年齢ごとに日常的に利用するメディアにはどのような特徴があるのかを見ていきます。図表3は、各メディア・情報源の利用頻度シェアを「テレビ・ラジオ(放送)」、「新聞・雑誌(印刷版)」、「ネット・デジタル」、「動画・音声配信」、「SNS・ブログ」のサービス類型別に集約した結果です。

情報メディア白書2025#1_図版03

50代、60代は「テレビ・ラジオ(放送)」を最も頻繁に利用しており、電波系メディアへの依存が強いといえます。しかし年齢層が下がるに従い、「テレビ・ラジオ(放送)」のシェアは縮小し、代わって20代~40代では「ネット・デジタル」(一般的なインターネットサイトやアプリの利用)が最大です。

さらに若い15~19歳は「SNS・ブログ」のシェアが最大である点が特徴的で、これは同じ若者でも20代とは異なる傾向です。「SNS・ブログ」には個人や企業等によるSNS投稿やブログが含まれますが、15~19歳が最もよく利用するのは、友人・知人、芸能人、SNS・ネット上の有名人、ブロガー、インフルエンサーによるものです。この年代のメディア利用においては、個人が発信する情報が重要な位置を占めていることが認められます。

若者に特徴的な傾向はもう一つあります。15~19歳、20代においては「動画・音声配信」のシェアが2番目に大きいのです。その内訳をみると、やはり多く利用しているのは動画共有サイト(YouTube、ニコニコ動画、TikTokなど)の「有名人(ユーチューバー、ティックトッカーなど)のチャンネル」や「音楽配信サービス」でした。中高年層が電波系メディアによく接しているのとは対照的に、若年層はネット経由でさまざまな動画や音楽を楽しんでいる様子です。

40代が「分水嶺」!?年代によって大きく異なる「“頼り”にするメディア」

これまでどのようなメディアがよく利用されているかを年齢層別に見てきました。それでは、それらのメディアはどの程度「頼り」にされているのでしょうか。

本調査では、利用しているメディアが自分にとってどれくらい頼りになっているのかをたずねました。メディアに対する「信頼」ではなく「頼り」を切り口とした理由は、一般的なメディアイメージではなく、自身の体験に引き寄せた回答を通して、個人によって大きく異なるメディアとの向き合いの様子を明らかにするためです。

図表4は年代別に各メディア等を頼りにする度合を示したものです。調査対象メディアは回答傾向に応じて12グループに集約されています。年齢階層別にどのメディア群を頼りにしているのかはスコアと色で表され、スコアが「正」(オレンジ)であれば当該メディア群をより頼りにし、「負」(水色)であれば当該メディア群への依存度は希薄と解釈できます。

情報メディア白書2025#1_図版04
頼りにする度合(非利用者を加えた4段階)に関する回答傾向に従ってカテゴリカル因子分析を実施。図表内の数値は標準化した因子得点を表す。

50代、60代では「BS・CS/CATV」「民放番組」「NHK/新聞(一般紙)」など、従来型メディアにおけるスコアが高いという特徴が見られます。60代においてより顕著ですが、長年接してきたメディアへの信頼が厚く、若いころのメディア接触スタイルを維持していることが推測されます。

30代以下ではスコアの正負が逆転し、「音楽・音声/動画配信」「SNS・ブログ」「ネタ・まとめサイト」などのネット系メディアが頼りになっていると回答する傾向です。中でも15~19歳ではこれらのメディア群のスコアが突出して高いのに対して、30代は「比較・評価/ショッピング/フリマ/Q&A・口コミ」、従来型メディアによるネット展開を含む「ニュースサイト・テレビ・新聞・出版社の公式動画チャンネル」に加え、雑誌に由来するメディア群など、テレビ・ラジオの従来型メディアを除く幅広いメディア群において正の傾向を示すという違いがあります。

両者の間に位置する40代は、新旧いずれのメディア群への強い依存を示すことがない点が特徴的です。1975年~1984年生まれのこの世代は、学生・若手社会人のころにWindows95の登場を契機とするPC、インターネットの普及を体験し、その後のiモード、写メールなどのガラケー文化を含め、デジタル技術に真っ先に触れてきた「デジタルネイティブ世代」に相当します。

その一方で、前の晩に見たテレビ番組が友人との話題になるような子ども時代を過ごし、家では家族が新聞を読む姿に接していたことでしょう。こうした経験から40代は新旧メディアになじんでいた世代にあたり、メディアとの向き合い方において分水嶺ともいえるポジションを確立していると考えられます。

多様化するメディアと人々のつながりの未来

かつてマスメディアが主要な情報源であった時代と比べ、現代はメディアの多様化が進み、情報の発信主体も個人を含め多岐にわたっています。一方で、オーディエンスを取り巻く環境にも大きな変化が見られます。スマートフォン、タブレット、スマートテレビ、スマートスピーカー、スマートウオッチなど、情報端末の進化により、さまざまな生活シーンにおいてニーズに応じたメディア接触が可能となっています。

こうした状況の中、本調査により年齢層によって新旧メディアとの向き合い方に顕著な違いがあることが明らかになりました。マーケティングにおいて情報やメッセージを届けるためには、こうした傾向を的確に捉えた上、メディアを効果的に組み合わせたコミュニケーションの設計がこれまで以上に重要になっていると言えるでしょう。

現在、真偽不明な情報の流通やなりすましによる詐欺広告の拡散等などを背景に、インターネット上の情報空間の健全性をいかに維持・確保するかが重要な社会的課題として議論されています。この局面でメディアが果たす役割は大きいと考えられ、マスメディアに対してもコンテンツの質やネットを活用していかに情報を広く届けられるかが問われています。メディアに関わるあらゆる業界が、人々が安心して情報を活用できる環境整備への貢献を期待されているといえるでしょう。

同時に、受け手側のリテラシーの重要性もこれまで以上に高まっています。今後のメディア体験の変化によっては、人々の「頼り」を切り口とするメディア評価が現在のものから変わる可能性も否定できません。人々がどのようなメディアをよりどころとしていくのか―その動向を今後も継続的に注視していく必要があると考えます。

【調査概要】
電通メディアイノベーションラボ「頼りにするメディアに関する調査」
・全国インターネット調査
・対象:15~69歳(有効サンプル数:4,727)
・実査時期:2024年6月

 

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「熊本から脱炭素を進める!」地銀の挑戦

政府が2050年カーボンニュートラルの実現を掲げて以降、企業における脱炭素への取り組みは年々重視され、その強化が求められています。

現在では、中小企業も取引先をはじめとしたステークホルダーからCO2排出量の算定と情報開示を求められるケースが増加。一方で、近年提供されているCO2排出量算定ツールは大企業の利用を想定したものが多く、中小企業は予算や使いやすさの点からなかなか導入が進んでいません。

こうした状況の中、熊本県を代表する地銀「肥後銀行」は、安価で使いやすいCO2排出量算定ツール「zero-carbon-system炭削(たんさく)くん」(以降「炭削くん」)の開発・展開プロジェクトを実施。その全国販売に向けた戦略策定とマーケティングを電通が担当しています。

「炭削くん」
https://www.higobank.co.jp/business/tansaku/

地方銀行が、なぜ自らCO2排出量算定ツールを開発しようと考えたのか?また、熊本から全国へこのツールを展開するにあたってカギとなったものは?本プロジェクトを中心となって進めた肥後銀行経営企画部サステナビリティ推進室の玉木孝次郎氏、西村奈未氏、電通第1ビジネス・トランスフォーメーション(第1BX)局の槙谷吉紘に聞きました。

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(写真左より)肥後銀行・玉木氏、西村氏、電通・槙谷

中小企業による脱炭素への第一歩を、安価な算定ツールでサポートしたい

──まずは皆さんの自己紹介をお願いします。

西村:肥後銀行経営企画部のサステナビリティ推進室に所属し、SDGsと経営品質に関わる業務を担当しています。肥後銀行内に限らず、地域のお客さまに対する取り組みも含んだ仕事です。炭削くんプロジェクトでは、主に企画・開発・プロモーションなどをメイン担当者として進めました。

玉木:同じくサステナビリティ推進室で副企画役を務めています。炭削くんプロジェクトには本推進室に所属する9人のメンバーが関わっており、私はプロジェクトマネージャーとして取りまとめやディレクションを行いました。

槙谷:電通の第1BX局は広告領域以外のコンサルティングなどでお客さまをご支援している部署です。本プロジェクトでは、戦略立案チーム、プロモーションチームなどに分かれて支援を行っており、私は電通側全体の取りまとめとディレクションを担当しました。

──地銀である肥後銀行が、企業のCO2排出量の算出ツールを開発しようと思われた背景についてお聞かせください。取引先企業や肥後銀行自体が、脱炭素の取り組みにおいて抱えていた課題も含め、お話しいただけますか。

玉木:同じ地方と言っても、SDGsや脱炭素への取り組み状況は、地域によって大きく異なります。2024年に行われた帝国データバンクの調査によると、熊本県はSDGsに積極的な都道府県の1位でしたが、これも地域としての取り組みの影響が大きいと考えています。

2021年に当行は熊本県と共同で「熊本県SDGs登録制度」を創設しました。この制度を活用しながらSDGsや脱炭素への取り組みを進めていきたいという取引先企業に対して、当行は、「SDGsコンサルティング」や「カーボンニュートラルコンサルティング」を通してサポートをしています。

これまでにコンサルティングサービスを通して約300社をご支援してきたのですが、近年は特に脱炭素に対しての課題を感じているお客さまが増えており、

「まず何から脱炭素への取り組みを始めればいいのかが分からない」
「さまざまな算定ツールがあるが、いずれも利用コストが高く導入が難しい」

といった声を多くお聞きしていました。脱炭素に向けた取り組みの第一歩は、自社のCO2排出量を把握することです。お客さまの中には、Excelなどを使って算定していた企業もありますが、その計算に必要な「排出係数」が年に複数回更新されることもあり、ヒューマンエラーを誘発したり作業負荷を高めたりする原因になっています。

そこで、算定ツールをわれわれが開発し、お客さまに低価格で提供できれば、地域のカーボンニュートラルの実現に向けて貢献できるのではないかと考え、炭削くんプロジェクトがスタートしました。

肥後銀行#1_玉木さんソロカット

「金融面の支援」だけで終わらない。地銀が旗振り役となり、脱炭素を進める意義とは

──地域の支援が地方銀行の大きな役割となる中で、特に脱炭素・SDGs推進の重要性を感じられていたということでしょうか?

西村:そうですね。肥後銀行は「私たちは、お客様や地域の皆様とともに、お客様の資産や事業、地域の産業や自然・文化を育て、守り、引き継ぐことで、地域の未来を創造していく為に存在しています」というパーパスを掲げています。

当行は金融機関ですが、金融の枠を超えてあらゆる可能性を追求し、地域課題解決に貢献するグループを目指すため、あえて「金融」という言葉を入れていません。当行の頭取は常に「地域にどのような金融機関があるかによって、その地域の未来は変わる」と話しています。だからこそ私たちは「銀行だから金融面を支援」するだけではなく、銀行分野以外でもお客さまを支援し、地域を守り育てていかなければならないと思っています。そのため、サステナビリティ推進室には全体で15人ものメンバーが配属されているのです。

玉木:とはいえ、SDGs分野の取り組みにおいて特に中小企業のネックとなってしまうのは、ファイナンスの部分です。この点を併せて支援できるのがわれわれの強みだと考えています。最初はCO2を「測る」ところからですが、その次にどう削減するかを考えるフェーズに入ります。例えば企業内設備をCO2排出量が少ないものに更新したり、サステナブルな原料への変更を検討したりする場合に資金の問題は無視できません。

炭削くんを使ってCO2排出量が分かったら、次は排出量が増える一番のポイントは電気なのか、社用車のガソリンなのかを見つける。当行ではそうしたホットポイントと企業ごとの状況に応じた削減方法をご案内し、取り組みに必要な資金面のご相談も併せて、一気通貫でサポートできます。そのためのフックとして「炭削くん」を使っていただけたらと考えています。

槙谷:中小企業の場合、資金面の問題などもあって、利益に直結しないこうした分野の取り組みを進めるのが特に難しい状況にあります。誰かが旗振り役になって推進する必要がある中で、そこを担えるのが地方銀行だと考えています。

その中で、肥後銀行ほどサステナビリティ領域に人員を割いているところは、銀行でも他業種の企業でも多くありません。また、自行でこうしたツールの開発を手掛けていること自体が、かなりレアなケース。脱炭素は、電通にとっても非常に重要なアジェンダです。今回のプロジェクトのように、地方銀行が進めるSDGsの取り組みをご支援することには大きな意味があります。

月額2200円で「Scope3」の算出にも対応! サプライチェーン全体での導入も含め4000社以上が利用する「炭削くん」の魅力

──炭削くんの概要と、独自性を教えてください。

西村:一番のポイントはやはり、中小企業の皆さまの課題として大きかった価格面だと考えています。

炭削くんの場合、Scope1・2・3※を全て測ることができ、いくつ拠点を登録しても5IDまで月額2200円です。一方で機能面は他のツールと変わらず、PCやスマートフォンから自社で使用する電気やガソリンなどの使用量を入力するだけで、下記の通りCO2排出量の“見える化”ができます。

※ Scope1・2・3:「Scope」はCO2などの温室効果ガス(GHG)の排出量を測定する範囲を表したもの。大まかに以下の3つに分けられる。

・「Scope1」
 燃料の燃焼や、製品の製造などを通じて企業・組織が「直接排出」するGHG
・「Scope2」
 他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで、間接的に排出されるGHG
・「Scope3」
 自社事業における原材料仕入れや販売後など、サプライチェーンを通して排出されるGHG

 

① 企業活動全体の CO₂排出量算定(Scope1・2・3)および可視化
② 排出量削減目標の設定および進捗管理
③ 算定結果のレポート出力
④グループやサプライチェーン全体の排出量管理

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「炭削くん」から出力できるレポート(イメージ)

西村:現在、プライム上場企業十数社を含めた4000社以上にご利用いただいています。上場企業に関しても、Scope3は自社だけでは算定できません。炭削くんは、サプライヤーの中小企業にも利用してもらえれば、そのデータをシステム内でひもづけて自社のScope 3の算定にそのまま使うことができます。当初は中小企業に向けて開発したツールでしたが、炭削くんを通してサプライヤーから集めたデータを自社のサプライチェーン排出量算定に活用される上場企業も増えてきています。

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サプライチェーン排出量算定に関わる画面(イメージ)

槙谷:炭削くんは、安価でありながら機能面では競合ツールと遜色ありません。これは、先ほどのお話どおり、肥後銀行さんは事業として、炭削くんシステム利用料による利益化を目指しているのではなく、あくまで地域の企業の脱炭素を進める入り口として利用していただくために開発したからこそだと思います。

上場企業単体でしたら、多少コストのかかるツールでも導入できますが、サプライチェーン全体に同じツールを入れてデータをひもづけようとしたとき、高価なツールの利用をサプライヤーに勧めるのは難しくなります。炭削くんでしたら月に2200円なので広く活用をしやすいということですね。

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全国の金融機関と連携するために開発した、新たな機能

──「炭削くん」では、中小企業に加え、貴行と同じ地方の金融機関にも使いやすい機能があるそうですが、どのようなものでしょうか?

西村:金融機関においては、Scope3の中でも「投融資先」のCO2排出量が対象となるカテゴリー15の排出量が多くを占めます。例えば肥後銀行の場合、自行で担うCO2排出量の9割が投融資先のもの。つまり、取引先企業の排出量もきちんと算定しなくては、カーボンニュートラルを進められない状況なのです。炭削くんは、金融機関が投融資先の排出量を確認しながら、地域のカーボンニュートラルに向けて取り組むことを目指してFE(ファイナンスド・エミッション)機能を途中で追加しました。

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ファイナンスド・エミッション機能に関わる画面(イメージ)

玉木:こちらは槙谷さんから提案をいただいて追加した機能です。金融機関の取引先は多岐にわたり、自社のCO2排出量を算出できていない企業も多く含まれます。そのため金融機関はこのカテゴリーについては、売り上げ規模や融資残高といった数値を掛け合わせた推計で算出せざるをえません。自行の9割を占めるこの項目のCO2を減らすためには、お客さまの実データを知る必要があり、さらにそれをきちんと算定する機能が必要なのです。

西村:当初は熊本県内の中小企業に向けて開発を進めていたのですが、途中から他県の金融機関にも導入、活用していただくことも考えるようになりました。理由として、各地域のカーボンニュートラルを実現するためには、例えばお客さまが算定したデータを基に、「自治体と一緒に進められる施策」を考えるといった目線も必要だと感じたことがあります。他県の金融機関に、炭削くんをホワイトラベルとして導入していただき、さらに各地域の企業への導入が進めば、熊本県以外でも同じような取り組みができると考えたのです。

肥後銀行#1_西村さんソロカット

玉木:他の地域で「炭削くん」を導入し、地域内の企業へ展開している金融機関を「パートナー銀行」と呼んでいます。現在、福岡銀行、鹿児島銀行、東北銀行がパートナー銀行ですが、本年中にあと5行は増やしていきたいと考えています。

カーボンニュートラルの取り組みは、熊本県だけが進んでも目標に届きません。その意味で、日本全国の金融機関と連携して取り組んでいけたら、われわれとしてもメリットがあります。金融機関に対しては、同じ立場として自行と地域の脱炭素推進における課題を抱え、対応してきたノウハウや成功・失敗事例なども共有できますし、より近い目線でサポートできます。また、パートナー銀行からの案内で「炭削くん」を導入していただいた企業へのヘルプデスクはすべて肥後銀行が担当するなど、サービスを充実させています。

徹底的な情報収集と分析によって、「炭削くん」の位置付けを明確に。約4000社の導入を実現した戦略とは?

──「炭削くん」を全国に展開するにあたり、電通に戦略設定やプロモーションを依頼した理由をお聞かせください。

西村:地銀である肥後銀行が全国に向けたサービスを提案、展開する機会は「炭削くん」が初めてだったため、ノウハウがほとんどなく、やりたくても方法が分からない状況でした。地銀がサービスを展開するときの基本は直接お客さまに会いに行き、対話することです。全国を対象とした場合、面識のないお客さまに商品を提案していくことになるので、この方法では無理がある。そこで、全国展開における知見が豊富で、営業戦略や有効性の高い方法をご相談できる電通さんに、伝手をたどってお願いすることにしました。

──実際に電通からどのようなご提案がありましたか?

西村:プロモーション部分だけではなく、競合ツールがある中で炭削くんを「どんなシステムに育て上げていくか」や、今後目指すポジションに必要な機能といったところを選評していただきました。もちろん、電通さんの強みである全国地域に対する広報戦略も含めてのご提案がありました。

玉木:特に印象に残っているのは、他社の情報収集と分析をたいへんスピーディーに、膨大な情報量をもって対応してくださった点です。その情報と分析を基に、炭削くんが目指すべきポジションなど戦略策定の部分で、かなりお力添えをいただきました。プロモーションにおいても、われわれは「とりあえずCMを……」と考えていたのですが、「それは無駄金になります」とハッキリ言っていただきました(笑)。

肥後銀行#1_玉木さん西村さん

──電通側がサポートするにあたり、ポイントとしたのはどのような部分でしたか?

槙谷:こうしたツールを開発・提供している全国のプレーヤーと戦っていく必要もあると考えたときに、まずきちんとした状況分析が必要だと考えました。この場合の「状況」には、競合ツールについてだけではなく、利用してくださる金融機関やエンドユーザーとなる企業も含まれます。そうした方々の状況が分かって初めて、炭削くんの営業戦略やポジショニングが考えられます。基本的なことではありますが、オンラインのリサーチだけではなく、生の声を集めてくることも含めて最初に分析や診断を約2ヵ月かけてしっかりやりました。

西村:他社ツールにはあって、炭削くんにはない機能ももちろんあります。その場合、「機能を追加してください」と言われることもあるのですが、「その機能は果たして『炭削くん』のユーザーや目的を考えたときに追加開発する必要があるのか?」と俯瞰する目線を、電通さんが伴走してくださったことで持つことができました。

炭削くんが目指すポジションや営業戦略に合わせて機能に優先順位をつけ、必要かどうかといったことを何度も話し合い、自行で開発した方が強みになる部分と、他社ツールと連携するなどの方法にした方が強みになる部分をアドバイスしていただいたのもありがたかったです。価格は変えない前提でしたので、その中での取捨選択ができました。

炭削くん自体は、2024年1月にリリースしましたが、その後の4~9月の間に電通さんの分析を基にした戦略を立てられていなければ、1年で約4000社の導入には至っていないと思います。

“見える化”の次は実現可能な削減案を!日々状況が変わる中でも、日本全体に脱炭素の流れをつくりたい

──今後の展開について考えていることを教えてください。また、肥後銀行が電通に対して期待されていることなども併せてお願いします。

玉木:炭削くんはあくまでCO2を「算定」し“見える化”するツールです。カーボンニュートラルのためには、“見える化”して終わりではなく「削減」していかないと意味がありません。そこで、今後はAI等を活用して企業ごとに実現可能な削減施策を提案するような機能をつけていきたいと考えています。

脱炭素分野を取り巻く状況は、お客さま企業も、国の方針も含めて日に日に変わっています。そうした中で炭削くん自体も戦略も常にブラッシュアップしていかないといけません。電通さんはこの分野の知見と経験をたくさん持っていらっしゃるので、最新の情報と併せてご提示いただきながら引き続き相談していきたい。われわれもアンテナを高く張って推進していけたらと考えています。

西村:電通さんに対しては日本を代表する企業の1つとして、私たちへの情報提供だけではなく、「日本全体で脱炭素を推進していく流れ」をつくっていただけるよう期待しています。

槙谷:ありがとうございます。脱炭素に対する取り組みは、地域によって推進状況が、はっきりと2極化しています。電通は、生活者はもとより、さまざまなお客様との接点があるので、B to Bの側面でもムーブメントをつくっていける点が強み。クライアント企業と脱炭素を推進していくような団体を組織したり、流れをつくることで、引き続き脱炭素を推進していきたいですね。

肥後銀行#1_集合カット

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【参加者募集】電通×電通マクロミルインサイト 共催ウェビナー「どうなる?ポストSDGs!未来の人々が望む商品・サービスとは? 市場をリードする新たな価値のつくり方」9月3日開催

電通と電通マクロミルインサイトは、9月3日(水)に開催するウェビナー「どうなる?ポストSDGs!未来の人々が望む商品・サービスとは? 市場をリードする新たな価値のつくり方」の参加者を募集している。

SDGsのゴールイヤーである2030年が近づき、ポストSDGsのアジェンダに関する議論が、国連をはじめとする国際機関、各国政府や経済界において始まっている。Beyond GDPといった概念も提唱され、経済成長だけでは捉えきれない「実感できる豊かさ」を新たな指標とする動きが広がりつつある。「より良い社会や暮らし」に向けて、企業はこれから何を届けていくべきか。SDGsのその先を見据えた、新たな価値創造のあり方が問われている。

本ウェビナーは、未来視点からのバックキャスト型アプローチにより新規事業・サービス開発やビジョン策定を支援する電通「未来事業創研」と、生活者の主観的なWell-beingなどのインサイト研究を行う電通マクロミルインサイト「人と生活研究所」が共催する。最新の“幸せ調査”の結果も踏まえ、「ポストSDGs」および「Well-Being」を軸に、これからの価値創造の方向性を探る。未来に選ばれるブランド・事業を構想するうえで、未来の生活者視点に立って何が必要か、そのヒントを共有する。
 
「未来の人々が望む商品・サービスとは?」

【概要】
日時:
9月3日(水)13:00~14:00
形式:オンライン
費用:無料
申し込み締め切り:9月1日(月)12:00
主催:電通、電通マクロミルインサイト

■参加登録・ウェビナー詳細はこちらから


【プログラム】

・ポストSDGsとWell-Being
・生活者の主観的Well-Beingについて
 「人と生活研究所」主観的幸せの9因子のご紹介
・最新の調査結果から読み解く“幸せを感じる”商品・サービスとは
・ポストSDGs時代を意識した、あるべき未来の可視化方法
・あるべき未来からバックキャストで考えるこれからの人々が望む商品・サービスとは

【登壇者プロフィール】

電通  シニア・ディレクター/未来事業創研 ファウンダー
吉田 健太郎

モバイル事業、スマホアプリ領域を中心とした市場分析、戦略プランニング、コンサルティングなどに従事。電通モバイルプロジェクトリーダーとして、CES/MWCに2011年から毎年参加し、TECHトレンドを把握。2021年、国内電通グループ横断組織「未来事業創研」設立。未来の暮らしの可視化からのバックキャストでの事業開発を得意とする。消費者庁 新未来ビジョンフォーラム フェロー、経営管理学修士(MBA)、日本デジタル空間経済連盟 2045年の社会像検討委員。

電通マクロミルインサイト リサーチャー/ファシリテーター
工藤 陽子

“人“を基点に、インサイトやトレンドに関するメソッド開発や、情報発信をしていく窓口「人と生活研究所」所属。企業活動におけるWell-Being促進のための研究や、クライアントワークでは、エスノグラフィのような質的調査やワークショップデザインに主に従事。JPPI認定ポジティブサイコセラピスト。