ローソン快進撃が止まらず、5年間の大改革が奏功…既存店売上高の増加率が業界ダントツ1位

●この記事のポイント
・ローソンの業績が好調。25年2月期の営業収益、純利益ともに過去最高
・20年に立ち上げた「ローソングループ大変革実行委員会」で進めてきた改革の効果
・5年ぶりにPBを刷新、「3つ星ローソン」のブランド名に統一

 ローソンの業績が好調だ。2025年2月期の営業収益(売上高に相当)は1兆1707億円、純利益は599億円でともに過去最高。その勢いは既存店売上高の増減率(前年同月比、カード・チケットの影響を除く)にも表れており、6月は7.7%であり、競合他社のファミリーマート(約2.7%)、セブン-イレブン(2.0%)を大きく上回る。その背景には、ローソンが数年前から進めている、商品や店舗の売り場づくり、収益力向上などに関する多面的な改革が存在する。その改革の舞台裏について、ローソンへの取材を交えて追ってみたい。

●目次

次世代発注システム「AI.CO」を全店に導入

 ローソンの業績伸長の理由について、同社は次のように説明する。

「2020年に立ち上げた『ローソングループ大変革実行委員会』で進めてきた商品の刷新や店舗の品揃え・接客などQSCの徹底、デリバリーサービス導入店の拡大などの改革、『ハピろー!』の販促効果が出ております。22年度から『地域密着×個客・個店主義』を戦略コンセプトに掲げ、よりお客様に近い現場で、顧客価値の創造を徹底追求する体制を強化。先行エリアとして『北海道カンパニー』『近畿カンパニー』を新設してエリアの特性を把握し、お客様・マチの変化に素早く対応して地域密着を目指す形としました。23年度からはカンパニー制を全国に拡大し、『地域密着×個客・個店主義』のさらなる推進を行っております。カンパニー制により、意思決定スピードが高まり、これまで以上に地域に根差した商品開発や出店などが進んだことも奏功しました。

 商品については、『定番商品』と『チャレンジ商品』の2軸で商品開発を実施。お客様の日常使いのニーズに応え、売り上げのベースとなる定番商品では、22年度から一部の定番商品に対して、お客様による試食調査を実施し、その結果をもとに発売の判断や商品改良を行っています。お客様の変化に対応し、差別化による新規顧客獲得を狙うチャレンジ商品では、人気の弁当がおにぎりになって手軽に食べられる『具!おにぎり』シリーズなど、タイパ+食べ応えある商品を発売し、ご好評いただきました。また、時間をかけずに野菜もお肉もバランスよく食べたいといった声にお応えする『振っておいしいパスタサラダ』については、発売から約4週間で300万個突破する人気商品となりました。

 店内厨房で調理した『まちかど厨房』については、春には『てりたま』、夏には『おろし』など、季節に合わせた商品を発売し、季節感ある売場を演出することができました。ユニークさが話題となった商品も多数発売しております。例えば、24年11月に発売した『飲むマヨ』は商品担当者が『マヨネーズ好きの方が多いことに着目して、飲めるマヨネーズを作りたい』といった発想で開発した商品です。さまざまなご意見がありましたが、多くの方に面白いと楽しんでいただけました。24年10月に発売した具無しカップ麺『スープ激うま!シリーズ』は、具材をなくすことで、その分、スープにこだわった商品です。物価高のなかで価格を抑えてご満足いただける商品を提供したいとの想いで商品担当者が考えました。カップ麺に具材は当然必要だろうという固定概念を取っ払って、お客様が何を求めているかを考えた結果、このように尖った商品が誕生しました。その発想の面白さも好評につながったと感じています。

 デリバリーサービスにおいては、24年4月から店頭在庫の有無がお客様のアプリ上で確認できるよう機能を改善したうえで、取扱商品数を約700品から約3,200品に拡大。導入店舗数は全国47都道府県で約7,400店舗となりました(25年2月末時点)。24年7月には次世代発注システム『AI.CO(AI Customized Order)』を全店に導入し、品揃え・発注数・値引きの推奨がさらに適正化され、売上・利益の拡大に貢献しています。

 いずれの施策においても、お客様と直に接していただいているオーナーさんクルーさんに店舗で具現化いただけたからこその結果と考えております」(ローソン)

ローソングループ大変革実行委員会

 前述の「ローソングループ大変革実行委員会」では、具体的にどのような改革に取り組んできたのか。

「『ローソングループ大変革実行委員会』は新型コロナウイルス感染症により、お客様や社会の価値観が大きく変化したことにいち早く対応していくため、『商品』『店舗改装』『売場作り』『マーケティング』『SDGs』『データ活用』『収益力向上』『ブランディング』などに取り組む12のプロジェクトを立ち上げました(随時アップデートを行っており、25年度については14のプロジェクトを実施中)。

『商品面』では『まちかど厨房』導入店舗の拡大や無印良品の全国展開、『売場作り』では冷凍食品売り場の拡大や揚げ物商品のセルフ販売などを実施。『収益力向上』ではAIを活用した次世代発注システム『AI.CO』を24年7月には全店に導入。品揃え・発注数など発注にかかわる業務の推奨に加えて、値引きの推奨をする機能も実装されており、オペレーションの削減や利益向上につながっています。実際に使用している加盟店からはオペレーションが改善され、店舗運営が効率的になったという声が多く寄せられています。また、サステナブルな食の循環を目指し、冷凍おにぎりの販売についても拡大しております。

 商品事例としては、冷凍商品の強化として21年度に冷凍スイーツや冷凍刺身を発売。これまでストック需要の高かった冷凍食品が即食用としても選ばれる一品となりました。24年度の具体的な商品事例では、新機軸のスイーツ『ふわ濃チーズケーキ』や『ご褒美スティックケーキ』などがご好評いただきました」(ローソン)

地域共生コンビニの取り組み

 今年度に展開を計画している“チャレンジ”についても聞いた。

「今年は1975年6月14日に大阪府豊中市にローソン1号店の桜塚店がオープンして50周年を迎えました。これからの50年は圧倒的な成長を実現して、少子高齢化・人口減・災害対策など日本が抱えるさまざまな社会課題の解決にチャレンジしていきたいと考えております。今年、6月3日がローソンの日に認定されました。この日を皮切りにお客様、マチ、地球すべてをハッピーにしていく『マチのハッピー大作戦』を開始しました。6月に実施のさらにパワーアップした『盛りすぎチャレンジ』や、記念商品の発売をはじめとしたプロモーションに加え、未来のコンビニのお披露目や新たな環境対策施策等、サステナブルな社会を構築するための取り組みにもチャレンジしてまいります。

 8月には食品ロス削減と寄付によってサステナブルな『食』の循環を築く『FOOD GOOD SMILE』を開始します。値引きシールが貼ってあるおにぎりを買うと1個当たり1円が食を提供する福祉施設(法人)へ食材費として寄付される取り組みです。コンビニの日配商品はほとんどが即食需要であり、賞味期限の迫ったお値引き品をお得に買っていただくことで、食品ロスの削減につながることを広くお伝えしていきたいです。デリバリーでは、導入店舗数を8,200店舗まで拡大予定であり、あわせてゴーストレストランを1,400店舗に拡大していきます。

 地域共生コンビニについて、昨年度に続き、誰もが便利に楽しくお買物を続けることができる買い場の維持を目指し、地元企業や地域の皆さまと連携した“地域共生コンビニ”の出店を進めていきます(25年6月の出店事例:ローソン道志店 その他の出店事例:ローソン マルショク長浜店、ローソン龍神村西店、ローソン由利本荘鳥海町店)」(ローソン)

 プライベートブランド(PB)の刷新も進める。

「刷新前のPBの約95%にあたる商品を10月までに順次、『3つ星ローソン』のブランド名に統一します。PBの刷新は2020年以来5年ぶりとなります。『3つ星ローソン』では、ローソンが宣言している“3つの約束”を指針として、商品のリニューアルを行っていきます。

 1.圧倒的な美味しさ
  お客様の声を具現化することを第一に、商品開発プロセスを変更

 2.人への優しさ
  お客様の関心が高い添加物について独自の使用基準を設ける

 3.地球(マチ)への優しさ
  25年度中に容器包装における環境配慮素材を使用する商品の比率を80%まで拡大

 また、近年の『タイパ』を重視するトレンドのなかでお買い物に時間をかけたくないという意識が高まっていることから、『わかりやすい』を意識し、商品名は見やすい大きさと濃さの文字に変更。パッケージカラーは商品に合わせた識別しやすい色を使用。アレルゲン表示記載に関しては、パッケージ前面での記載に変更します」(ローソン)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

地域の文化を、もっとスマートに。東海市芸術劇場の団体管理に「スクウる。」をベースとしたシステムを提供

 令和7年度より、東海市芸術劇場にて、株式会社PAY ROUTEの部活管理ツール「スクウる。」をベースにカスタマイズした団体管理システムの運用が開始予定です。

 今回の団体管理システムは、同施設がこれまで紙や現金を中心に行っていた業務をデジタル化し、運営効率やユーザー利便性の向上を目指す取り組みの一環です。

 株式会社PAY ROUTEは、独自技術を活用し、安心・安全でスマートな団体運営を支援します。

東海市芸術劇場での管理ツール導入の背景

 今回、東海市芸術劇場で導入される団体管理システムは、劇場で活動する

 ・東海市民合唱団
 ・東海児童合唱団
 ・東海市子どものオーケストラ
 ・東海市ダンスチーム Miakot
 ・市民スタッフ

 上記の団体で利用されます。

 東海市芸術劇場ではこれまで、劇場で活動している市民団体の団員への連絡・周知は紙を利用、月謝も現金集計などほとんどを手作業で行っていました。

 今回、東海市芸術劇場の団体管理のDX化を目的に管理システムの公募を開始。「スクウる。」は部活動の管理ツールであることが、劇場の団体管理との親和性が評価され、システムのカスタマイズと提供を行うことになりました。

「スクウる。」従来の機能を要望に合わせて柔軟にカスタマイズ

 今回の団体管理システムの特徴は、管理側(劇場・各団体担当者)とメンバー側(団員・保護者)の双方向からのアクションが可能になっていることです。

 従来の「スクウる。」は、集金管理のデジタル・キャッシュレス化や、アプリ上での集金に関するお知らせの送付、メンバーのグルーピングなど、管理側からメンバーに向けてのアクションが基本機能でした。東海市芸術劇場の団体管理システムでは、出欠の送信やQRコードを活用した出席登録、出席実績の閲覧など、メンバー側が活用できる機能が複数搭載されています。

 また、これまでの「スクウる。」の機能に加え、スケジュールの管理・閲覧、LINE連携などの機能も、カスタマイズによって追加されています。

 集金は、クレジットカード決済と口座振り込みに加え、情報漏えいリスクがないID・パスワードレス決済、「ROUTE PAY」の使用が可能です。

「スクウる。」とは

「スクウる」とは、株式会社PAY ROUTEが提供する部活動管理システム。部活動におけるお金の流れをキャッシュレス化、見える化するツールです。

 教育現場における、現金集金による業務負担や管理ミスの解消や教職員の業務負担軽減、透明性のある運営などを目的として提供しています。

 ID・パスワードを必要としない「ROUTE PAY」による決済を活用することで、セキュリティ性の高い安全な決済を実現します。

高く評価されたセキュリティ性とシンプルな操作性

 複数の機能追加もさることながら、今回の団体管理システムにおいて大きく評価されたのは、「ROUTE CODE」によるID・パスワード不要のログインです。

「ROUTE CODE」は、株式会社PAY ROUTEの双方向認証技術です。ID・パスワードの入力がないため、認証時に個人情報を盗まれたり、フィッシング詐欺に遭ったりする心配がありません。

 セキュリティ性の高さとシンプルな操作を兼ね備えた仕様が、評価の大きなポイントとなっています。

社会の活動を、より安全・効率的に支えるために

 株式会社PAY ROUTEは、安心・安全かつシンプルなソリューションに、さまざまな要望を反映した機能を加えることで、より利用者に寄り添ったシステムの提供を続けてまいります。

 今後も、教育や文化、スポーツ、企業活動など、あらゆる分野の現場で求められる多様なニーズに応えながら、DXの推進を支えるサービスを展開していきます。

会社概要


社名  :株式会社PAY ROUTE(ペイルート)

所在地  :本社 大阪府大阪市北区堂島1-1-25 新山本ビル6F

    東京支社 東京都港区赤坂3-13-3 赤坂セントラルビル2F

設立  :2011年4月

代表者  :代表取締役 田川 涼

資本金  :2億815万円

事業内容  :クレジットカード決済事業、オンライン決済事業、セキュリティ開発事業、決済ソリューション開発事業

URL  :https://pay-route.co.jp/

※本記事はPR記事です

ENEOSなど、自動車レースに低炭素燃料=非可食バイオエタノール混合で国内初

 ENEOSと国内の自動車レース「全日本スーパーフォーミュラ選手権」を運営する日本レースプロモーション(東京都)、福島県大熊町を拠点にバイオ燃料の研究を行う次世代グリーンCO2燃料技術研究組合(raBit)は8日、共同で会見を開き、同レースで非可食植物由来の「セルロースエタノール」を混合した低炭素ガソリンを使用することを発表した。 

 国内の自動車レースでセルロースエタノールが使われるのは初めて。今年度内に複数回の性能試験を実施し、来年4月のレースからの導入を目指す。過酷なレース環境で性能をアピールし、一般車両への普及に役立てる方針だ。

 活用するのはraBitが非可食植物「ソルガム」から製造したセルロースエタノールで、低炭素ガソリンでは約1割を混合させる。セルロースエタノールは、現在主流となっているトウモロコシやサトウキビ由来のバイオエタノールと比べ、食料との競合につながらず、環境負荷も小さいが、製造技術やコストの面で課題が残る。ENEOSの藤山優一郎常務執行役員は「注目度の高いイベントを通じて低炭素燃料の存在をアピールし、一般の方に知ってもらう機会にしたい」と話す。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/08/02-14:13)

「価値観でつながる採用」は幻想か、突破口か…Z世代と企業の新しいマッチング論

●この記事のポイント
・新卒採用における企業と学生のミスマッチを解決するため、株式会社ベースミーが提供するAIサービス「BaseMe」は、ESや面接では測れない「価値観」を可視化し、企業と学生の文化的フィットを分析する。このサービスは、フリー株式会社や株式会社丸井グループといった大手企業も導入している。
・この価値観マッチングの主なポイントは以下の通りである。従来の採用プロセスの限界を補完する。対話のきっかけとして活用する。企業側の自己理解が成否を分ける。

 Z世代の新卒就活において、企業と学生の間に生じる「ミスマッチ」が問題視されて久しい。価値観の多様化、自己実現志向、早期離職の常態化……。こうした状況下で「価値観マッチング」という新手法を打ち出したのが、スタートアップの株式会社ベースミー。同社の提供するサービスZ世代キャリア支援AI「BaseMe」は、ES(エントリーシート)や面接だけでは測れない相性をAIが分析し、企業と学生の「文化的フィット」を可視化するという。フリー株式会社や株式会社丸井グループなど、大手企業も導入を進めているが、果たしてその効果は?

 本稿では、BaseMeの狙いと技術的裏付け、そして導入企業の実体験を通して、この「価値観採用」のリアルを問い直す。

目次

従来型採用の限界と「価値観」の導入

「価値観が合わずに辞めてしまう」ーー。これは近年の新卒採用における離職理由の上位に挙げられるが、こうした傾向に対し、株式会社ベースミーは「価値観マッチング」という新たな視点で採用のあり方を問い直そうとしている。

 ベースミーCEOの勝見仁泰氏は、従来型の採用プロセス──エントリーシート(ES)や面接、学歴フィルター──が抱える限界に警鐘を鳴らす。

「ESは学生のプレゼン能力やアピール力を測るには有効だが、本当にその人が組織に合うか、長期的に働けるかどうかはわからない」

 同社が提供するBaseMeは、企業と就活生双方の価値観を可視化し、マッチングサービスだ。従来のような一方向の診断ではなく、企業側にも「自社の価値観とは何か」を言語化してもらい、学生との相互比較が行える点が特徴だ。

「優秀な人材が入っても、価値観が合わなければ短期間で離職してしまう。その原因の多くは、企業自身が自分たちの価値観を把握できていないことにある」と、勝見氏は指摘する。そのうえで、BaseMeは「お見合い」の場にすぎず、マッチングの結果をそのまま採否判断に使うことは推奨していないという。

「価値観のズレがあるなら、その違いにどう向き合うかを話し合うきっかけにしてほしい」

 同社はこのように、マッチング結果を対話の素材として活用することを重視する。

 また、就活生側にも診断結果をフィードバックすることで、自己理解を深める副次的な効果も狙っている。「社会課題を解決したいという抽象的な志向を持つ学生にとって、言語化の材料になるよう設計している」と勝見氏は語る。

 従来、学生の自己分析は自己流の振り返りやキャリアセンターでの面談が中心で、客観的な視点を得ることが困難だった。BaseMeはこうした課題に対し、AIによる多角的な質問と分析を通じて「自分がどう働きたいのか」「どんな組織で力を発揮できるのか」の言語化を支援する。企業とのマッチングだけでなく、学生自身の自己理解促進も重要な機能の一つといえる。

「価値観マッチング」は本当に機能するのか…実証例

●フリー株式会社

 価値観マッチングは実際の採用現場でどう機能するのか。まず、話を聞いたのはフリー株式会社。

 同社の担当者は「これまで選考時の評価と、入社後の成果のギャップは一定発生していた」と話す。

「優秀な学生だと思っても、得意なこととか好きな領域では能力を発揮する一方で、本当に苦手なことや困難に直面した時に本当に頑張れるのかといった、本質的な部分をESや面接だけで判断するのは、困難ではないかと感じていた」

 とりわけ同社が直面していたのは、企業イメージと実態の乖離だ。

「弊社に対して学生は、ホワイト企業でキラキラしたイメージを抱いている。しかし実際には、まだまだカオスな部分が多い。そのため入社後に挫折してしまうケースもあった」

 それを乗り越える人材を獲得する方法としてESは不十分だった。

「たとえば、ESで『最も高い壁に向かってやりきった経験を教えてください』という設問を設けたことがある。しかし、やり切ったレベルがどれだけの難易度だったのか、その学生がどういう思いを持って挫折を乗り越えたのかといった部分は、文字からはなかなか伝わりにくいという課題が残った」

 さらに、近年のAI文章生成能力の向上により、学生がそれらを利用した場合、本来の思考や価値観が見えづらいという問題も生じていた。

 こうした問題の解決にBaseMeは有効に機能している。価値観のマッチングにより、一人採用するのに必要な母集団の質は劇的に向上した。結果として、採用コストの大幅削減も実現している。

 将来的にはAIによる面接も検討する同社だが、現状ではまだ踏み切れない部分もある。

「採用ペルソナが本当に整合性を保てているかは、まだ検証し切れていない。そのため現状、AIによる足切りは行っていない」

 何よりも、マッチング精度を向上させるには、採用側の要件をどれだけ言語化できるかが課題となる。結局のところ、価値観マッチングの成否は企業側の自己理解の深さに依存するといえるだろう。

●株式会社丸井グループ

 一方、丸井グループは「企業イメージと実態の乖離」という異なる課題に、価値観マッチングで取り組んでいる。

 同社担当者はこう語る。

「当社の場合、小売業のイメージが先行しがちだが、実際のビジネスの中心はフィンテックや共創投資など、かなり多様である。学生側ではそうした実態に触れる機会が少なく、入社後のギャップが課題になることもあった」

 同社が求めているのは、従来の一括選考では出会えなかった人材との接点だ。

「『こんな社会課題を解決したい』『こういう働き方が理想』といった抽象的な話題で会話できると、学生の価値観がよく見えるし、こちらの価値観も伝えやすくなる。学生の話を起点に双方向の会話ができることで、従来のESでは見えてこなかった側面を掘り下げられる」

 企業側が「どういう人と働きたいか」を丁寧に言語化することが前提だが、同社が目指すのは価値観マッチングを起点とした早期接触による新しい選考スタイルへの転換だ。

「BaseMeの価値は、最初に『こういう人かも』という仮説が立てられることにある。そこから対話を重ねる中で理解を深めていける。早く出会えて、早く関係を作れるという意味で効果を感じている」

 つまり、BaseMeはあくまで最初の出会いの補助線だ。そこから先は、人と人との対話や関係構築といった泥臭いプロセスを重ねていく。価値観マッチングとは、万能なふるいではなく、時間を投資するに足る相手と出会うための起点にすぎない。

 その利点と限界を理解した上で、どう活用するかが成否を分ける。

人事施策としての「価値観マネジメント」へ

 前段の勝見氏への取材に戻ろう。

 取材の中でふと疑問に思ったのは、BaseMe導入している企業から、ユーザーには有名大学の学生が多い点を利点として挙げる声があったこと。

 ともすれば、BaseMeは本質から外れ、人事担当者がコストを削減して見栄えのする学生を獲得するツールとなりかねない。また、学生側も価値観マッチングの特性を理解して企業に受けるような自分を演出することも可能ではないのだろうか。

「BaseMeは正解を出すものではなく、対話のきっかけを生む装置なんです。設問の数も多く、表層的な演出で意図通りのスコアを出すのは実際には難しい。仮にズレが出た場合でも、それを面接で問い直すことで、逆に深いコミュニケーションにつながることもある」

 さらに、勝見氏は「似た価値観の人を集めればうまくいく」という誤解にも釘を刺す。

「価値観が近いからこそうまくいく、とは限らない。違和感こそが、対話や発見を生む出発点になると考えている」

 価値観マッチングを支えるのは、採用の効率化ではなく、あくまで「人を理解する」ための問いの連鎖。その姿勢こそが、ツールの運用次第で組織文化を深化させるか、硬直させるかを分ける現場において、BaseMeの存在意義となっている。

 勝見氏は、今後の採用環境の変化についてもこう語る。

「これからは新卒一括採用が崩れ、通年採用が当たり前になる。学生と企業が、よい偶然として出会う場面をいかに創出できるかが問われます。そのとき、価値観という軸でのマッチングは、テクノロジーを通じてごく自然に行われるようになっていくでしょう」

 通年採用時代においては、従来の「選考期間」という区切りがなくなり、学生との接点は年間を通じて発生する。そうした環境下では、企業側の意識や運用姿勢こそが問われる。「人を理解し、対話を促す」という基本姿勢を忘れず、価値観マッチングの本質を正しく活用できるかどうか。それが、変化する採用市場の中で企業が選ばれる理由にもなっていくはずだ。

 人を理解する問いを投げかける装置としてのBaseMeは、単なる効率化ツールではなく、採用の現場における新しい接点と可能性を広げる実験場であり続けるだろう。

(構成=昼間たかし/ルポライター、著作家)

【UNICORN NIGHT開催レポート】SHONAI×ユナイテッドがつくり上げる、起業と投資の新しい関係性とは

 2025年7月16日、ユナイテッド株式会社本社にて、ユニコーンジャーナル主催の「UNICORN NIGHT(ユニコーンナイト)」が開催されました。本イベントは登壇者によるトークセッションを含む、経営者・決裁者限定のオフライン交流会です。

 第2回目となる今回は、山形県鶴岡市で農業やホテル、教育など多角的に事業を展開している株式会社SHONAI 代表取締役社長 山中 大介氏と、SHONAIのグループ企業NEWGREEN社に出資を行っているユナイテッド 株式会社 代表取締役社長 兼 執行役員 早川 与規氏を登壇者に迎え、「多角化経営」などをテーマに、事業戦略の描き方や、資金調達や出資における考え方などをお話しいただきました。

●目次

“善進投資”がつなぐ、SHONAI社とユナイテッドの出資ストーリー

 SHONAI社は、「地方の希望であれ」というビジョンを掲げ、農業や観光事業などを中心に地域課題に貢献するビジネスを多角的に展開する企業。2014年に資本金10万円からスタートし、来期には売り上げ50億突破が予想される、今もっとも勢いがあるベンチャー企業のひとつです。

 2年前、SHONAI社のグループ会社NEWGREENでの資金調達のタイミングで、早川氏が農業分野に興味を示していたことが縁となり、NEWGREEN社への出資が実現しました。しかし、山中氏は最初、ユナイテッド社の出資先がIT関連中心であることから、NEWGREENへの出資を受けられるとは思っていなかったそう。

 ユナイテッド社がNEWGREEN社への出資を決めた理由には、ユナイテッド社の投資方針があります。

「ユナイテッド社では、投資を2つの系統で行っています。1つはテック系企業への投資です。こちらは投資に対しての結果が出るのが早いことが特徴です。もう1つは社会課題の解決と事業性の追求が両立する企業への投資です。こういった企業に関しては結果が出るまでに時間がかかります。10年ほどでの回収を目標にするなど、通常のファンドのような指標では見ていません。我々は、この2つ目の投資を“善進投資(ぜんしんとうし)”と呼んでいます。NEWGREEN社への出資は、この善進投資にあたります」(早川氏)

 また、山中氏は次のようにいいます。

「当社では、資本提携を前提とした資金調達を行っています。単に投資を受けるだけでなく、ともに事業を創っていくことを重視しているのです。当社の資本には同じ課題意識を持ち、この考え方に共感してくださった方々のみが参加しています」

 2社のつながりは、お互いの思想に対する共感が結んだものといえそうです。 

多角化経営を成功させる事業や人材の条件とは

 トークセッションでは、SHONAI社やユナイテッド社の事業の多角性にも話が及びました。

 SHONAI社は、ホテル観光事業、農業事業、教育事業、地域企業の成長支援など多くの分野で事業を行っており、ユナイテッド社もまた、投資事業、教育事業、人材マッチング事業をリンク・循環させることを想定して事業を進めています。起業家の方々に向けた多角化経営のヒントを求められ、山中氏は、「多角化経営をおすすめするわけではない」とし、

「企業が成長し続けるために必要なのは従業員。そして今いる従業員たちと一緒に働き続けるには、企業は成長し続けなければいけません。当社の場合、そのためにやれることはすべてやる、と舵を切った多角化が、結果うまくいったということだと捉えています。1つの事業に集中するという価値観でうまくいっている企業もあるので、どちらがいい、と優劣をつけるものではないと感じています」

と、自社の多角化経営の経緯をまじえて語りました。

 早川氏は投資家の視点から、多角化経営に向いているタイプと不向きなタイプについて話します。

「多角化ができるタイプの事業や人物、というものが明らかにあると感じています。スケーラビリティのある事業であれば多角化したほうがよい場合も多いです。

 人物に関しては、何かやってくれそうだと人に感じさせることで、さまざまな事業の話が舞い込んでくるタイプ、かつ、舞い込んできた事業に対してしっかりと組織をつくってさばいていける方が多角化経営に向いています。

 山中さんは、まさにそのようなタイプです。逆に、すべて自分でやろうとして、事業の各所に目を光らせてしまうタイプの方は、多角化経営を破綻させてしまいます」

必要なのは覚悟ひとつ!?挑戦する起業家へのメッセージ

 トークセッションの最後、山中氏と早川氏は、新たなことに挑戦したい、資金調達を受けたい起業家の方々に向けて次のようにメッセージを語りました。

「上の世代になればなるほど、若者よりも根性もグリット力もある方が多いです。しかし、下の世代にいくとそういった方の割合は少なくなっています。つまり、『絶対に自分がやる』と決めて動いてやりきれば、勝てる時代だと感じています。そういった覚悟を持って、ビジネスをやっていただきたいなと思いますね」(山中氏)

「おそらく今日は皆さん、夢に出てくるくらい、山中さんの話に影響されていると思います。現在140社に投資しているなかでも、山中さんはとくに期待する経営者です。しかし、経営者は山中さんのような方法で経営する方ばかりではありません。自分のやり方や事業を伸ばすアプローチを実践してもらえるとよいのではないか、と思っています」(早川氏)

 地方から新しい挑戦を続けるSHONAI社 山中氏と、それを“善進投資”で支えるユナイテッド社 早川氏の対話は、これからの起業や事業成長のヒントに満ちていました。今後の経営戦略や投資戦略は、単なる数値的なコミュニケーションではなく、「誰とどんな未来を描くか」というパートナーシップ的な価値観に変化していくのかもしれません。

 今回のトークセッションの模様は、ユニコーンジャーナルの公式YouTubeチャンネルでも公開予定です。チームづくりのコツや、投資したくなる起業家の特徴など、記事では紹介しきれなかったリアルなやり取りが満載です。

「AI×組織」をテーマにした産学連携イベント「AI ON LIVE 2025」開催決定:9/2(火)

 AIの組織実装という重要なテーマに対し、企業の経営者・人事責任者から現場リーダーまで全ての挑戦者を対象に具体的な実践知をお届けするイベント「AI ON LIVE 2025 ~AI Organization Next~」が開催される。開催するのは、挑戦者支援をミッションに掲げる、プロトスター株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:前川英麿)。「AI ON LIVE」とは、「組織はAIでどう変わるのか 未来への洞察と、実践の解を掴む一日」。パネルディスカッションには脳科学者の茂木健一郎氏と経営学者の入山章栄氏が登壇し、「AI時代における淘汰の法則とは?~5年後に消える人と稼ぐ人~」というテーマで議論を交わす。プロトスター代表取締役の前川英麿氏は、本イベントの魅力を次のように説明する。

「AIの飛躍的な進化は、組織の形を根本から刷新し、人とテクノロジーの関係を再定義しつつあります。私たちプロトスターは“挑戦者と共により良い時代をつくる”という使命のもと、産学の叡智を結集し、実践知が響き合う舞台としてAI ON LIVEを企画いたしました。本イベントが、経営の最前線で奮闘する皆さまにとって、AI実装の具体的な羅針盤となり、未来への確かな一歩を踏み出す契機となれば幸いです。東京大学という知の殿堂でお会いできますことを、心より楽しみにしております」

●以下より詳細の確認・参加申込いただけます(※参加費無料)
 公式サイト: https://ai-o-n.com/

 イベントには、最先端AIソリューションの展示ブースも設置。人事・労務などHR領域を中心とする、「SaaS×AI」のトップランナー企業が集結し、自社の課題を解決する具体的なソリューションを、デモや対話を通じて知り、触れることができる貴重な機会となっている。また、明日から使えるスキルを習得「AI体験コーナー」として、AIを「使いこなす」感覚を、誰もがその場で掴める以下の3つの実践ワークショップも開催される。

・今ならまだ間に合う!初心者向けAIプロンプト講座

・誰でもAI開発、ローコードAI作成ツールDIfy入門

・AIと創る、SFプロトタイピング事業構想ワークショップ

 さらには、以下の申込・参加特典も用意されている。

・申込特典1:AI仕事術をアップデートする実務プロンプト集
 日常の面倒な作業はAIに任せ、思考に集中する。
 明日から使える「時短」「効率化」を実現する実務プロンプト集です。

・参加特典2:【VC監修】イノベーションの土壌を育む AI事業開発プロンプト集
 現役VCの思考プロセスをAIで再現。
 質の高い事業分析や戦略立案を実践し、イノベーションが生まれる組織の土壌を育みます。

 日頃からAIの組織実装というテーマに取り組んでいる方、興味のある方は、参加を検討してみてはいかがだろうか。

●以下より詳細の確認・参加申込いただけます(※参加費無料)
 公式サイト: https://ai-o-n.com/

・基調講演:「AIの進化を前提とした、組織と個人の未来 ~これからの人事に求められる役割とは~」
 株式会社松尾研究所 取締役 副社長 久保田 陽登美 氏

・パネルディスカッション:「AI時代における淘汰の法則とは?~5年後に消える人と稼ぐ人~」
 脳科学者 茂木 健一郎 氏 × 経営学者 入山 章栄 氏

●開催概要

名称: AI ON LIVE 2025

日時: 2025年9月2日(火) 12:30~19:00

会場: 東京大学 伊藤謝恩ホール( 〒113-0033 東京都文京区本郷7丁目3−1 )

アクセス:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線)徒歩8分/ 本郷三丁目駅(地下鉄大江戸線)徒歩6分

参加対象: 経営者、役員、人事責任者、DX推進担当者、AI活用に関心のある全てのビジネスパーソン

参加費: 無料

定員: 500名(※定員に達し次第、受付を締め切ります)

公式サイト(参加申込): https://ai-o-n.com/

主催: プロトスター株式会社

●プロトスター株式会社について

「挑戦者と共に より良い時代をつくる」をミッションに掲げ、挑戦者を多角的に支援しています。国内最大級の起業家・投資家マッチングサービス「StartupList」や起業家支援メディア「起業LOG」の運営、大企業との共創促進事業などを展開。AIという変化に直面する全ての組織と個人も挑戦者と捉え、産学の知を結集する本カンファレンスを通じ、未来への洞察と実践の解を提供します。

所在地:〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町9-4 日本橋富沢町ビル 501

資本金:89,098,750円

設立日:2016年11月30日

従業員数:約60名(パート、契約社員含む)

URL:https://www.theprotostar.co/

参加団体:
・経済産業省 J-Startup Supporters
・経済産業省 九州経済産業局 J-Startup KYUSHU
・東京都 Tokyo Innovation Base スターティングメンバー
・東京都産業労働局 インキュベーションHUB推進プロジェクト 平成28年度採択事業
・独立行政法人中小企業基盤整備機構 スタートアップエンジェル連携推進協議会(SAN)会員
・つくばスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム 正会員
・Diagonal Run Tokyo OFFICIAL SUPPLIERS
・一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会 賛助会員

ネコラボはじめました。 ─猫×テクノロジー×アイデアの研究所

近年、猫と人間の関係は大きくアップデートされ、新たな時代が到来しています。

本連載「ネコラボ通信」は、電通のクリエイティブR&D組織「Dentsu Lab Tokyo」内に発足した猫専門イノベーションチーム「Neko Lab Tokyo」(以下、ネコラボ)のメンバーが持ち回りで登場。テクノロジーとアイデアを掛け合わせた、猫にまつわる最新プロジェクトやユニークな研究開発をお届けしていきます。

<目次>

ようこそ猫沼へ

「ニャー・ノーマル」がやってきた?

好奇心は、猫を救う

猫は、1匹ずつちがう。猫好きもね

次回、「猫とお花の関係」を考える

 

ようこそ猫沼へ

「猫と仲良くなるコツは、やさしく見つめて、ゆっくりまばたきをすること」

ある本にそう書いてあったのを思い出して、繁殖猫としてのつとめを終えてやってきたばかりの猫に、半信半疑で試してみます。警戒モード全開だったその子が、ほんの少し目を細めてまばたきを返してくれた瞬間、私はたぶん、完全にやられてしまったのです。

鳥山石燕「今昔百鬼拾遺」より妖怪「毛羽毛現」(左)と「マジョ」さん(右)
鳥山石燕「今昔百鬼拾遺」より妖怪「毛羽毛現」(左)と「マジョ」さん(右)

以降いっしょに暮らしているのが、妖怪「毛羽毛現(けうけげん)」にそっくりな、ペルシャ猫のマジョさんです。申し遅れました。マジョさんの同居人で、ネコラボのリーダーを務めているアートディレクター/クリエイティブ・ディレクターの宮下良介と申します。

広告の世界で長らく「人の気持ち」について考えてきた私ですが、猫に関しては素人同然です。おやつの気配を察知する驚異的な能力を持ちながら、ソファから鈍くさく落っこちる。毎朝6時に飼い主の目覚めを強要する一方で、まるで哲学者のように窓辺で物思いにふける。めずらしく甘えてきたと思えば、すぐに飽きてぷいっとどこかへ行ってしまう。なんとも愉快だけど、つくづく、よくわからない存在。

……この「猫という謎」にちゃんと向き合ってみたい。そんな思いで、なかば勢いだけで所属する「Dentsu Lab Tokyo」の猫好きに声をかけ立ち上げたのがネコラボです。ラボとは言ってもアカデミックな機関ではなく、「テクノロジー」や「アイデア」を武器に、ちょっとユニークな視点で猫を見つめ、研究やものづくりを行うチームです。

「ニャー・ノーマル」がやってきた? 

およそ1万年前、人間と猫のつき合いが始まります。日本人と猫との出会いは弥生時代にさかのぼり、平安時代に貴族のペットとして飼われた猫は、江戸時代には庶民の暮らしに溶け込みました。そして平成の終わりごろ、日本では3度目と言われる「猫ブーム」が訪れます。

2014年、猫の飼育数が犬をはじめて上回り(※)、2016年には「猫」の検索数が犬の約3倍に達します。メディアには猫コンテンツがあふれ、その経済効果から「ネコノミクス」なんて言葉も生まれました。

※一般社団法人ペットフード協会調べ
 

さらに2020年代に入って、猫を取り巻く環境にこれまでになかった変化が次々と現れはじめます。

  • 改正動物愛護法により虐待厳罰化・繁殖制限・マイクロチップ義務化が進む
  • 「保護猫を迎える」という選択肢が広く認知されるように
  • スマート首輪やAIトイレなど、猫のウエルネステックが進化
  • 「フレッシュ&ヒューマングレード」など、高品質なキャットフードの登場
  • トリミングやインテリア雑貨など「猫だけ」に特化したサービスや商品の拡大
  • 「猫は小さな犬ではない」国際認識の広がりとともに、猫専門医療が普及
  • 高齢猫の腎疾患研究が進み、日本発の新薬が臨床試験フェーズに移行…などなど

 ネコラボ

2010年代後半が、SNSを中心に猫の「かわいさ」や「コンテンツ力」に注目が集まった時代だったとすれば、2020年代は、より科学的な視点で猫の個性や健康に寄り添うケアが重視されるようになった時代と言えるでしょう。いわば「猫版・新しい日常」の到来です。

こうした変化の先には、まだ見ぬ可能性があふれているはず。私たちネコラボにとっても、猫と人間の「当たり前」を見つめ直す絶好のタイミングなのです。

好奇心は、猫を救う

ネコラボはイギリスのことわざ「Curiosity Killed the Cat. 好奇心は、猫を殺す。」から着想した「Curiosity Saves the Cat. 好奇心は、猫を救う。」というスローガンを掲げています。本来は「好奇心もほどほどに」という戒めの言葉ですが、私たちはむしろ、好奇心こそが猫との距離を縮める原動力だと考えています。

日常でふと浮かぶ「これって猫的にどうなんだろう?」という疑問や発見を、私たちなりのアイデアやテクノロジーで形にしてみたいのです。まだ実績はないけれど、始まったばかりのラボだからこそ自由に発想できるはず……。そこで今回は(あくまで私の超個人的な)妄想たっぷりの“R&D”をご紹介することにします。

ネコラボ

《妄想R&Dその1》世界の「猫犬境界線」を探ってみる

日本では猫が犬の飼育数を上回りましたが、世界はどうでしょう。フランスでは長年猫優勢、中国は2021年に猫が犬を逆転、アメリカは2010年代に再び犬がリードしています。そこで、各国の猫犬比をランキング化して猫派・犬派で色分けした世界地図を作ってみる。さらにはGDPや幸せ指数を重ね合わせてみたら――もしかして、猫が多い国に、意外な共通点が見えてくるかもしれません。

《妄想R&Dその2》令和の「猫の目時計」

古くから中国に伝わる、猫の目で時刻を推定する「猫時計」という概念を、現代のテクノロジーで発展させる試みです。球体の透明デバイスに、磁力で自在に形を変える「磁性流体」を封じ込め、猫の瞳孔に見立てます。この瞳孔は、GPSで取得したその土地の太陽の動きと連動。さらに環境音センサーを組み合わせることで、光や音に反応しながら刻々と表情を変える、まるで生き物のようなアート時計の誕生です。

《妄想R&Dその3》史上初?!「まぐろ臭」ディフューザー

じつは猫は「におい」に超敏感。精油などの「いい香り」が命とりになることも。そこで逆転の発想です。人間には魚臭いけど、猫はゴロゴロ喉をならして喜ぶ香りをディフューザーにしてサンプリング。受け取った人間が思わず顔をしかめたらしめたもの。「人間に心地よい香りは猫にとって危険かもしれない。だから気をつけよう」という「猫を救う」メッセージになってくれたら最高です。

猫は、1匹ずつちがう。猫好きもね

最後に、そんな妄想に本気で取り組んでいるネコラボメンバーたちから、一言ずつコメントをもらいました。一見バラバラに見えるチームですが、その好奇心の多様性こそが最大のクリエイティビティです。

  • 「“かわいい”だけじゃない、命と向き合うということ。看病からペットロスまでの経験を生かしたい」秋澤瑞穂(コピーライター/CMプランナー)
  • 「2週に1度は動物園・水族館に行かないと落ち着かないんです。※上野・葛西・多摩の年間パス持ってます」上杉剛弘(獣医師/コンサルタント)
  • 「猫のおかげで兄弟なかよくできた。奮闘中の育児に、猫が与える影響に関心があります」大瀧篤(クリエイティブ・ディレクター/クリエイティブ・テクノロジスト)
  • 「保護猫を迎えてから、“ゆかいな生物多様性”をモットーに活動しています」澤井有香(コンサルタント)
  • 「猫大好きだけど猫の毛アレルギー。そのもどかしい愛を原動力に」関陽子(コピーライター/クリエイティブ・ディレクター)
  • 「うちの猫が時折見せる、人間っぽい行動の謎に迫りたい!」高瀬未央(アートディレクター)
  • 「necomimiという製品企画に関わったことがあり、猫に恩返しがしたいです」なかのかな(クリエイティブ・テクノロジスト/リサーチャー)
  • 「猫が遊ぶだけで、健康状態を測定できるおもちゃを作りたい」中村恵(コミュニケ―ション・プランナー)
  • 「感動的ですらある猫の身体感覚を、自分自身に宿らせたい!」中山桃歌(クリエイティブ・テクノロジスト)
  • 「最大6匹のヒマラヤンに埋もれて育った、根っからの猫派です」根岸桃子(アートディレクター)
  • 「猫の幸せのためには、まず猫の気持ちを知るところから」若園祐作(クリエイティブ・テクノロジスト)
  • 「ふみふみで発電する照明をつくりたい」宮下良介

ネコラボ

次回、「猫とお花の関係」を考える

ネコラボ通信は、本日8月8日「世界猫の日」からスタート。第2回は、妄想ではなく実際に行われた実験です。「猫NGのお花判定アプリ開発」をテーマに、なかのさんと若園さんの奮闘をご紹介します。どうぞ引き続きおつき合いください!

イラストレーション:根岸桃子(Neko Lab Tokyo)
お問い合わせ:neko-lab-tokyo@dentsu.co.jp 
 

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「作業員の確保難で大型プラントの定期修理ができない」…三菱ケミカルG、自社開発システムを業界他社にも展開する理由

●この記事のポイント
・石油化学会社などの大型プラント、人手不足などで定期修理が困難になる可能性
・三菱ケミカルG、工程の「可視化」を実現するシステムを開発して、定期修理の効率を大幅に改善
・三菱ケミカルG、化学業界の競合他社に対し、このプラットフォームの導入・利用を呼び掛けている

 石油化学会社などの大型プラントは数年ごとに稼働を全面的に停止して、定期修理を行う必要がある。化学最大手の三菱ケミカルグループ(G)は一部の大型プラントについて2年に一度、約2カ月をかけて多い日には一日に4000人近くの作業員を動員して定期修理を行っているが、建設業界の全国的な人手不足や時間外労働規制などの影響で作業員の確保が難しくなりつつあり、「定期修理ができなくなるかもしれない」(三菱ケミカルG)という課題を抱いていた。そこで同社は工程の「可視化」などを実現するシステムを開発して、定期修理の効率を大幅に改善。トータルでの作業への動員数の10%以上の削減や定期修理期間の短縮を達成したが、同社は化学業界の競合他社に対し、このプラットフォームの導入・利用を呼び掛けるという異例の動きをみせている。その背景について三菱ケミカルGに取材した。

●目次

定期修理をめぐる厳しい現状

 まず、定期修理をめぐる厳しい現状について、三菱ケミカルGは次のように説明する。

「国内の製造事業者の大型プラントは、かつての高度経済成長期のようにスクラップ・アンド・ビルドでどんどん設備を大きくしていくという環境ではなくなり、国内需要が減少していくなかで既存のプラントをいかに効率的に使っていくかという課題に、石化業界全体が共通して直面しています。50年以上稼働しているようなプラントが増加し、経年劣化が進みやすい環境にあるなかで、定期修理としてやらなければならない検査、補修、設備の更新、部分更新などが増加して、工事量が増えています。加えて時間外労働規制で作業員が働ける時間自体も限られ、少ない人数で限られた時間のなかで定期修理をやらなければいけない。これはどの石化企業も同じく抱える課題です。

 業界団体の石油化学工業協会もこれを問題視して、2019年にエチレンオーナーの意見・状況を集約し、有識者による定期修理研究会を立ち上げ、定期修理のあり方の検討に着手しました。そこで、各社が同じ時期に定期修理を実施すると全国から作業員を集めるのが大変なので、重なりをできるだけ少なくして協力会社の奪い合いが生じないような環境を整えましょうという提言がなされました。個社間で調整してしまうと独占禁止法に抵触する恐れがあるため、公正取引委員会にも問題がないことを確認し、2023年から石化協が調整するスキームが始まっています。

 弊社は2024年度の茨城・鹿島コンビナートの定期修理で、石化協から『他社と定期修理の期間が重なっているので、工期を調整することは可能ですか。』との問題提起があり、通例より、工期自体を9日間短縮すること等の対応で、他社との重複影響を縮小できました」

システムを開発・導入して工事計画を精緻化し動員数を削減

 工期を短縮化できた要因の一つが、同社が日立ソリューションズと共同開発した、定期修理を効率化するためのシステムの導入だった。

「ピーク時の工事物量を精査したり、一人ひとりの作業員の効率を上げることによって、同じ工事をやるにも少ない人数で仕上げましょうという工事計画精緻化の取り組みを行ってきたことで、動員する作業員の延べ人数を、前回の2020年の定期修理と比較して10%以上削減することができました。弊社は茨城・鹿島のほかに、岡山の水島コンビナートにも大型プラントを持っており、岡山で植えた種を茨城で大きくして、それをまた岡山に返すというサイクル(あるいは逆のサイクル)が、お互いの情報交換のなかで生まれてきました。さらに全社の若手スタッフを集めて、他の事業所とも共有しながら施策を検討し、全社施策として展開することで、25年度から同じ仕組み・システムを用いて各事業所工場の定期修理を回すという段階に入ってきています。

 工事進捗を可視化することで、作業員の待ち時間を少なくし、現場作業に注力できる時間を長くする工夫を行ったりしています。例えば、従来は日々の工事は弊社の運転管理部門及び設備管理部門の担当者が現場の安全措置状況と前日の工事日報の内容を照合して、紙に印刷された着工許可証にハンコを押すことで協力会社作業員の工事着工を許可していました。定期修理時はプラントによっては数百件の工事着工を一つひとつ確認するため、着工までに朝1時間の待ち時間が発生することも珍しくありませんでした。この着工許可証にRIFDを貼り付け、安全確認に必要な情報を連携させ、多数の工事の着工可否を瞬時に仕分けできる受付システムを構築したことで朝の着工待ち時間が大幅に削減されました。

 もっとも動員数の減少につながったのが、日立ソリューションズと共同で開発した工程管理ツールの導入です。計画段階で安全措置にかかる期間、複数の協力会社に実施いただく各種工事の期間を可視化し、精緻に見直すことが工程短縮に大きく寄与しました。このツールは工事実行段階での効率化にも役立ちました。従来は協力会社の方々が作成した当日の工事進捗と翌日の予定工事が記載された工事日報を使用して、毎日夕刻に運転管理部門及び設備管理部門の担当者と協力会社の3者で調整会議を実施していました。工事の作業単位での進捗をシステムに入力、管理することで、工事日報の作成、詳細な調整会議を実施しなくても工事進捗をリアルタイムで把握することが可能となりました。その情報は協力会社間でも共有され、作業終了が次工程を担当する協力会社の担当者へメール送信されることで無駄なアイドルタイムが削減され作業員の稼働率の向上につながりました。

 このほか、作業員の方々のヘルメットにビーコンデバイスをつけて、プラントの入り口に受信機を設置し、どの作業員が今、どこでどういった作業に従事しているのか、もしくは事務所に戻って待機しているのかを把握できるようにもしました。

 こうした取り組みによって、無駄な時間を大幅に削減することで、弊社も協力会社様も助かっています。もちろん工期の圧縮やコスト削減といった効果もありますが、何よりも定期修理は人集めに本当に苦労しますし、『もうこのままだと、定期修理ができなくなってしまう』という危機感を抱いていたので、少ない人数で定期修理をできるような素地ができつつあるという点が大きいです」

定期修理をめぐる課題は業界共通

 前述のとおり、三菱ケミカルグループは自社で導入しているこのプラットフォームを、石化業界の競合他社にも展開していこうとしている。その理由はなんなのか。

「大前提としては、定期修理をめぐる課題は業界共通のものであり、一社だけで解決できるものではないという点があります。業界全体で取り組めば、協力会社の方々も同じツールを使用することで手間が省け、業界全体で効率化が進むと考えられます。また、より使い勝手の良いシステムになっていくのではないかと思います。どのようなプラットフォームをつくるのかという検討業務の負荷は軽くはないですし、各社それぞれ進んでいる領域などを持ち寄って協力して開発していったほうが、業界全体にとってプラスの効果が大きいと考えています」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

「猫と花とAIと」

近年、猫と人間の関係は大きくアップデートされ、新たな時代が到来しています。

本連載「ネコラボ通信」は、電通のクリエイティブR&D組織「Dentsu Lab Tokyo」内に発足した猫専門イノベーションチーム「Neko Lab Tokyo」(以下、ネコラボ)のメンバーが持ち回りで登場。テクノロジーとアイデアを掛け合わせた、猫にまつわる最新プロジェクトやユニークな研究開発をお届けしていきます。

2回目は、猫と生活する上での「とある困りごと」を、テクノロジーで解決する方法はないか、リサーチャーのなかのかなと、クリエイティブテクノロジストの若園祐作が試行錯誤している事例をご紹介します。

<目次>

猫を飼いはじめてチューリップを飾れなくなった

「この花はどう?」と気軽に聞けるAIがいたら

猫も花も好きな人のためのアプリを試作してみた

提案型AIが猫との暮らしをアップデートする未来

 

猫を飼いはじめてチューリップを飾れなくなった

ネコラボ
なかの:8月8日の世界猫の日にスタートしたネコラボですが、その前日の8月7日ってなんの日か知ってますか?

若園:8と7……花の日ですか?

なかの:正解です!花の日と猫の日、記念日としてはおとなり同士なんですが、わたしは猫が家に来てからお花や植物を飾れなくなってしまったんです。

若園:もともと花や植物を飾らないのでよくわからないのですが、猫がイタズラするからですか?

なかの:それもありますが、中毒になる植物が結構あるらしいんです。猫を飼うのは初めてだったので、家に来ることが決まってから、飼育や生態についての入門書を買ってきて何冊か読みました。

necomimi(※1)を企画していたときにも猫について調べてはいたのですが、一緒に暮らすぞ!ということになってみると、資料の読み方も変わりますね。以前は気にしていなかった「命に関わるNG項目」に、「ユリ科の植物」が書かれているのが目に飛び込んできて、すごくショックを受けました。 

※1 necomimi=頭に装着することで、脳波を測定し、「猫耳」の動きで装着者の集中・リラックス状態を表現するデバイス。Bio Search(旧ニューロスカイ)から2世代目が発売中です。https://dentsulab.tokyo/works/necomimi


若園:ああ、確かに植物のNGは多いですよね。ユリ科は花瓶の水も危険と書いてあるウェブサイトも見たことがあります。 

なかの:そうなんです。来てみると、おてんばで好奇心の強いタイプの猫だったので、倒しでもしたらと心配になってお花を買うことをいったんやめました。ユリ科ということはヒヤシンスもチューリップも……。花を飾るのは毎年の春先の楽しみだったので、家の中で過ごすことが多かったパンデミック中は特に寂しい気持ちになりました。その穴を猫が埋めてくれたとも言えますけども。若園さんの家の猫さんはやんちゃなタイプですか?

若園:はい、とても。今一緒に住んでいる猫は2歳なのですが、成長するごとにどんどんやんちゃになっています。人間の気を引くために物を落としたり、歯がかゆいからなのか、さまざまなものをかんでみたり。

わが家では花を飾る習慣はなかったのですが、猫を飼いはじめてからよりいっそう、花や植物はうちとは関係ないものだと思ってしまっていました。猫のいる生活と花を飾る生活を両立するためには、気持ちの面でも情報面でもハードルが高かったんですよね。

「この花はどう?」と気軽に聞けるAIがいたら

ネコラボ
なかの:生花店で猫がいる家に飾っても大丈夫かどうか聞こうと思っても、その店員さんが猫を飼っていないとわからない場合もありますしね。家に植物がないことに、がまんができなくなって探した結果、ECサイトで「犬猫がいても安心」カテゴリを設けている翠堂明(みどりどうめい)さんというお店を見つけて、勇気を出して実店舗の方に観葉植物を買いに行きました。

店主の吉川靖さんにご相談したところ「すべての猫に絶対ではないですが、コレとコレは大丈夫だと言われていますね」とおすすめしていただいた中から鉢植えを購入して、家が少し明るくなりました。最近ではサブスクリプションサービスで猫に安全なブーケを届けてくれるECサイトも出てきています。

若園:それはとてもラッキーでしたね!そのような情報やおすすめを実際のお店で得られて、納得して購入できる体験は本当に貴重だと思います。多くの方は、信頼できる情報にたどり着けなかったり、信頼できる情報なのか判断できなかったりしそうです。

例えば、アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)のウェブサイトでは猫にとって有毒・無毒な植物のリストが掲載されていることを先日なかのさんに教わりましたが、それをパッと活用できる方は限られそうですよね(※2)。

※2 アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)による猫にとって有毒・無毒な植物のリスト  https://www.aspca.org/pet-care/animal-poison-control/cats-plant-list


なかの:そうですね。ASPCAのリストは信頼できる参照先としてさまざまなメディアでも取り上げられていますが、英語なのと、リストの数が膨大なのとで、その場で調べるのは難しいなと感じました。お店に詳しい方がいなくても、猫と花に詳しいAIチャットボットがあって「これどう?」って聞けたらいいのに!と思ったので、AIに詳しい若園さんに相談したわけです。

猫も花も好きな人のためのアプリを試作してみた

若園:相談を受けた当初は、世の中の生成AIチャットボットをそのまま使えばいいのでは?とも思ったのですが、「信頼できる情報」という観点で、やはりなんらかの試作をしてみようということになりました。

生成AIは誤った助言をすることもあるので、信頼できるソースを絞り込んで間違える確率をできるだけ下げたり、それでも誤りをゼロにはできないので、利用者の方に「最後は自分で判断する」ことをうながしたり、仕組みや体験でAIの弱みを補完するようにしました。それと、誤りをゼロにできない生成AIをそもそも使わないタイプのアプリも試作しましたね。

なかの:植物名の札の文字をスキャンしてASPCAのリストに照らし合わせて判定するタイプと、AIチャットボットに写真を送って植物名を推定してASPCAのリストに照らし合わせるタイプの2種類ですね(※3)。これは試さないと!ということで、再び翠堂明さんに伺って、両タイプの試作アプリを使ってみたんです。

若園:おお、実地検証ですね!どうでしたか?

なかの:宝探しみたいで楽しかったです。店主の吉川さんも「こういうアプリがあったら便利そう」と言ってくださって、AIチャットボットに写真を送る際の弱点である「見た目が似ている植物の誤認」については「プロが見れば見分けられるので、植物名検索と組み合わせて使うと良いのでは」とアドバイスもいただきました。プロの目からの情報もAIにフィードバックして見分け方などを学習させていけるといいですね。

※3 本プロダクトは試作品であり、ASPCAとの提携を行って開発しているものではありません。
 
ネコラボ

若園:たとえ植物のプロが猫のプロでなかったとしても、AIを活用することで大きな苦労なくそこを補完できるなら、お店にとっても猫飼いにとってもハッピーですよね。猫を飼うご家庭が増加傾向であることを考えると、この層を顧客として取りこぼさないことは今後大切になるのではないでしょうか。全国の悩める猫&花好きのために、いっしょに開発してくれるお花屋さんお待ちしています!

なかの:そうですね、ECサイトに「犬猫がいても安心」カテゴリを設けたのは、問い合わせが多かったからだそうです。特に猫を飼っている方からの相談が多かったそうで。

若園:やっぱり猫は植物にじゃれたり、高いところに飛び乗ったりしますもんね。

なかの:犬を連れてお買い物に来る方もいらっしゃるそうなんですが、犬は植物に関心を示さないことが多いみたいです。細かい葉っぱが特徴のエバーフレッシュなんかは空調で揺れるから特にじゃれやすいらしくて。でも、猫も学習するのか大きくなると飽きることもあるとか(笑)。

ネコラボ

 

 

提案型AIが猫との暮らしをアップデートする未来
 
 

ネコラボ
なかの:NGな植物についても解決策がないかなと考えていて、春になったらチューリップを飾りたい!と思ったときに、似たような花を提案してくれる仕組みがあったらいいなと思うんです。季節感も考慮して、これがいいかもっていう提案があるとうれしいですね。

若園:そうですね。お店と連携して、売れ筋の花をもとにしたレコメンドもできるといいですよね。データさえあれば実際にできそうです。お店の方の研修やECサイトでも使えそうですね。

なかの:猫用の食品でも同じようなおすすめが欲しいです。例えば、猫に有害なレーズンの代わりに大丈夫とされているブルーベリーを提案してくれる仕組みがあったら安心です。将来的には、店に入ると自動的に飼っている猫の存在を感知して、危険な食品を避けるようにおすすめしてくれる仕組みが実現するかもしれませんね。

若園:それは面白いですね。例えば服についた猫の毛はカメラ画像でも検出できそうです。「家に猫がいるんだから、ミントの精油はやめといたら?」と提案してくるおせっかいな買い物カートとか。

なかの:インテリアショップだったら、猫の遊んでいる動画を解析して、倒されにくいスタンドライトを提案するなんてこともできそうですね。

若園:いろんな業界で使えそうですね。今回はまだまだ「試してみた」の段階ですが、テクノロジーを上手に使って、猫と暮らしやすい未来を作っていけるといいですね。

イラストレーション:根岸桃子(Neko Lab Tokyo)
お問い合わせ:neko-lab-tokyo@dentsu.co.jp 
  
取材協力
吉川 靖

吉川 靖(「翠堂明 -みどりどうめい- 店主」)
東京都文京区出身。一つ一つの植物がまるで主役かのように輝く、“一目ぼれ”の植木鉢を追い求めるプランツデザイナー。2024年1月、渋谷区神宮前に観葉植物と鉢の専門店「翠堂明 -みどりどうめい-」をオープン。感性を刺激する空間で、日常に癒やしと楽しみを生み出すグリーンの風景を提案。


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グローバルワーク、タイ出店で東南ア参入=海外売上高、30年までに4倍増―営業本部長インタビュー

 カジュアル衣料ブランド「グローバルワーク」は7月、タイ・バンコクに1号店をオープンし、東南アジア市場に参入した。海外売り上げを2030年までに現在の約4倍の100億円とする目標の実現につなげる。運営を手掛けるアダストリア(東京都渋谷区)の太田訓グローバルワーク営業本部長は8月上旬の時事通信のインタビューで、タイ現地のビジネス環境について「特別なやりづらさは感じない」と好感。進出の背景や今後の展望を語った。発言要旨は以下の通り。

◇日本語人材採用

 ―東南アジアの中でもタイを進出先に選んだ理由は。
 可処分所得の高い中間層の拡大や若年層を中心としたファッションに対する支出意欲の高さ、保守的な国も多い東南アジアの中でも多様なスタイルを受け入れる土壌があることなどを考慮した。23年に現地に出店したアダストリアの別ブランド「ニコアンド」を通じて顧客ニーズの理解が進み、現地デベロッパーとのつながりができていたことも後押しとなった。

―かねて台湾や香港に進出済みだが、言語、法律・規制の運用、人材といった面でタイのビジネスのしやすさは。

 現地法人や店舗の主要スタッフに日本語が話せる人材を採用したため、あまりやりづらいとは感じていない。どの国・地域にも文化の違いはあり、タイだけ特別に気になる点はない。法律や規制のやりづらさも当社ではそれほど感じなかった。

 店舗にはアパレル業界の経験者を数人配置したため、スタッフとのコミュニケーションで大きく困ることもなかった。ただ、ブランドのコンセプトや大切にしている価値を伝えるといったやりとりは当然必要となった。

―日本市場の先行きをどうみるか。

 物価高の影響で、アパレル購入の見極め・厳選が進むとみている。人口減少で販売員確保にも影響が出るだろう。市場自体が縮小する中、シェア獲得が重要になると考えている。

 ―活況のインバウンド(訪日客)市場に対する受け止めは。

 ニーズが高まっておりチャンスと捉えている。ニコアンドの事例では都内の旗艦店を目にした訪日客が帰国後に現地店舗を訪れたり、商業施設のデベロッパーが出店を打診したりする相乗効果が出ている。

◇気候や文化に対応

―タイ出店後の現地の客の反応は。

 品質の良さに加え、仕事でも休日でも着られる点が好評だ。こうしたオン・オフ両方に対応したブランドが現地に不足していることは事前の聞き取り調査で把握していた。

―商品ラインアップは日本の店舗とどう違うか。

 各地の気候や文化に対応する必要があると考えている。タイと日本の気候差が大きくなる10月以降への準備を進めており、ニコアンドの経験から、現地で不要な冬物の除外や不要と思われたが実はニーズのある商品の確保に取り組む。

 海外事業の戦略立案を担う多国籍人材のチームを本社に設置し、現地ニーズの把握や文化の違いを見極めた商品開発も実施している。市場規模やわれわれの強みが生かせるかどうかを考慮して商品化するかどうかを決める。

―今後の進出計画は。

 直近では7月末にフランチャイズ形式でマレーシアに出店した。市場理解を進め、将来的な直営店出店を検討する。ニコアンドが進出済みのフィリピンも視野にあるほか、巨大市場である中国も見据えている。(時事)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/08/07-15:00)