NTTデータと鹿島、シンガポールでスマートビルの実証実験を開始=関連データをKPIで分析

 NTTデータは12日、鹿島建設と提携してシンガポールでスマートビルディング運用の実証事業を開始したと発表した。鹿島が地域本社兼研究開発拠点としてシンガポールに開設した「The GEAR(ザ・ギア)」を拠点に、10以上の技術を統合、収集したビル関連データを経営指標(KPI)に基づいて分析し、運営効率と持続可能性の向上を図るという。

 NTTデータはネットワーク基盤やIoT(モノのインターネット)プラットフォーム、コンサルティングを提供して建物内の約2000個のセンサーから得られる8700件超のデータを一元管理する。業務自動化や在庫・調達の最適化、遠隔監視、利用者の快適性向上を実現する。エネルギーの監視や知的管理システムも導入して資源効率化によるコスト削減と環境配慮型運営を進める。

 ザ・ギアはシンガポール建築建設庁(BCA)が定める持続可能な不動産認証の最高位「グリーンマーク・プラチナム」の「スーパー・ロー・エナジー(SLE)」認証を取得済みで、導入されたスマートシステムはエネルギー消費削減やライフサイクル管理の高度化を通じ、認証基準の維持に寄与している。サイバーセキュリティー対策も全システムに組み込み、IoT機器やデータ保護を強化した。

 NTTデータ・シンガポールのプン・キムメン最高経営責任者(CEO)は、「現行、将来の需要に応える柔軟な環境を実現した」と強調。ザ・ギアのマネジング・ディレクターであるルーク・ウー氏も、「ビルを革新と持続可能性の『生きた実験室』に変えた」と述べた。【時事】
(記事提供元=時事通信社)
(2025/08/15-19:26)

情報が安心に変わる。燦ホールディングスが挑む“後悔のない葬儀”のかたち

 多くの人が、一生に数回しか経験しない葬儀。しかし、料金体系のわかりにくさや慌ただしい意思決定などが原因となり、消費者と葬儀事業者の間でトラブルが増えています。

「こうしたトラブルの根底には消費者と葬儀事業者の“情報格差”がある」と話すのは、燦ホールディングス株式会社の代表取締役社長、播島 聡氏。

 燦ホールディングスは創業90年以上の歴史があり、東証プライム市場に上場する全国展開の専業葬儀事業者です。グループ会社としては、株式会社公益社や株式会社きずなホールディングス、ライフフォワード株式会社などがあります。

 今回は、播島氏に、葬儀業界における課題とその原因、燦ホールディングス株式会社が終活の啓蒙に尽力する理由などをお聞きしました。

 本当に納得できる「人生の終わり方」のために、私たちはどのように向き合えばよいのでしょうか。その答えに迫ります。

消費者と葬儀事業者の“情報格差”はなぜ起こる?


——現在、葬儀業界で起こっている問題があれば教えてください。

 現在、独立行政法人・国民生活センターへの葬儀に関する相談が増加しています。相談件数は、2024年には978件にも上っています。

 最近目に付く事例は「提示されている金額よりも高額になった」「希望していないオプションをつけられた」などの、料金に対する相談です。CMなどにより家族葬は比較的金額が抑えられるというイメージが定着しつつあり、提供されるサービス内容についてよく判らないまま、広告で表示されている料金だけで依頼する葬儀事業者を決めてしまうことで、葬儀後に金額や内容に疑問や不満が出てくるというケースが多いようです。

 この問題に対して、私は「葬儀事業者が持っている情報」と「お客様が持っている情報」に格差があることが原因だと考えています。

——葬儀事業者と消費者の間に情報格差が発生してしまう原因はどこにあるのでしょうか?

 私は、おもに

●葬儀は日常使いするサービスでないということと、比較検討する十分な時間や判断基準がない中で、提供されるサービス内容や料金について短時間で判断・決定しなければならないということ

●葬儀業界への新規参入ハードルの低さ

●料金体系のわかりにくさ

 この3つだと思っています。

 葬儀などのエンディングに関するサービスを利用する機会は、どんな方でも一生に数回程度です。そもそも日常使いするサービスではないため、お客様の多くは、依頼する事業者を選定する判断基準を持っておられないのではないでしょうか。 

 さらに、葬儀を執り行うまでに時間がなく、慌ただしく物事を決めなければなりません。情報に接する頻度が少ない上に、情報を精査する時間もないのです。

 また、葬儀事業そのものは許認可制ではないため、事業者にとって参入ハードルが低い業界です。

 事業者ごとに葬儀に対する知識や考え方が違うため、提供するサービスや価格のばらつきが大きく、同じサービスでも金額の桁が違う場合もあります。

 お客様から見た際、事業者ごとの知識量や考え方の差が見えづらいことで、安心して葬儀を任せられる事業者なのかが判断できないのです。

 サービス内容や価格体系がそもそも不透明な業界であった、ということも、お客様がエンディングサービスに関する正確な情報を得づらかった原因のひとつです。

 以前は人生のエンディングに関して、価格の話をしたり聞いたりすることをはばかる方が多く、葬儀業界からも積極的に情報発信がされてこなかったという歴史があります。

 燦ホールディングスのグループ中核葬儀会社の公益社では、公益社としての創業当初から価格を明確に打ち出す取り組みを行ってきたのですが、数十年前は「なぜ料金をオープンに見せるんだ!」など、むしろ同業者からのクレームが多かったですね。

 葬儀などは、終わってしまうとやり直しができません。エンディングサービスに対する情報を得られないことは、お客様の後悔につながってしまう可能性があります。

——価格に対しては、ネット広告やテレビCMなどで低価格を明確に打ち出す事業者も増えている印象です。

 テレビCMなどでプロモーションを行っていた多くの事業者は、お客様に葬儀事業者を紹介する仲介事業者ですが、彼らのマスメディアを使った広告宣伝の効果もあって、「安い葬儀」=「家族葬」というイメージが消費者に定着したと言っても良いかと思います。

 お客様が安くてよいサービスを求めることは自然なことですし、決して悪いことではありません。

 問題は、広告宣伝で表示している価格や提示された見積金額と、結果的に支払う金額が大きく乖離(かいり)して、お客様に不信感が残ってしまうなど、消費者センターへの相談につながってしまうようなサービス提供を行っている事業者も一部存在していることですね。

終活とは、生きているうちに自分の今後に答えを出すこと


——消費者が抱える「情報がないことへの不安」という課題に対して、燦ホールディングスが寄与できるポイントを教えてください。

 情報を積極的に開示することで「安心感」を抱いていただける、という部分ですね。

 未上場の事業者が多い葬儀業界において、上場している事業者であるということは、コンプライアスやガバナンスの面からもお客様に安心感を与えられる要素であると感じますし、当たり前のことではありますが、創業当時から一貫して続けている料金体系の開示も、お客様の不安を払拭できる大きなポイントです。

 サービスについての価格や金額を明確にするだけでなく、しっかりと説明を行い、お客様の事情やご希望に対応し、必要な部分、不必要な部分などもお伝えすることが大切だと考えています。

 また今、燦ホールディングスが進めている終活の啓蒙やライフエンディングサポート事業は、葬儀などの局所的な部分のみではなく、「人生を送ること」における安心感をお客様に抱いていただけるポイントであり、他社と大きく差別化できる部分です。

——終活の啓蒙とは、どのようなことを行っているのでしょうか?

 「自分でしっかりと考えられる元気な時期に、自分の今後についての答えを出しておく」ということを啓蒙しています。

 多くの方は、「自分に何かあったときに子どもや家族に負担をかけたくない」と考えている一方、終活に向けて動き出すタイミングがわからず、行動できていない状態です。実際、終活という言葉をよく聞くようになったものの、具体的に終活を進めている方が劇的に増加しているという印象はありません。

 しかし、頭で考えているだけでは、周囲に自分の今後どうしてほしいかを示すことができず、結果、いざというときに周囲に負担をかけてしまうことになるのです。

 我々は相続や葬儀、お墓に関することなど、これまではお客様自ら、ぞれぞれの事業者や専門家にアプローチしなければ必要とする情報が得られなかったのですが、私たちはワンストップでサポートする体制を整えています。このような仕組みで動いている葬儀事業者は、現状ではあまり耳にしません。

 もちろん、「葬儀やお墓に関することはまだイメージしづらい」とおっしゃる方もいます。そういった方に対しては、例えば、家にあるものの整理や、家族と何気なく話しておいたほうがよい事柄などについて事前相談会などでお話しさせていただいています。

葬儀業界を内側から変えることが消費者の安心につながる


——今後、葬儀業界はどう変化していくと考えていますか?

 葬儀というもの自体がなくなることはありません。

 新型コロナ感染症流行以降、葬儀の小規模化が進み家族葬がメインになったという変化があった一方、人とのつながりの大切さも改めて認識されていると感じます。人生のイベントとして、葬儀やそれに向けた終活などがより大事になってくるのではないかと思います。

 業界として目に見えるような大きな変化はなく、しばらく今のような状態が続いていくと考えていますが、葬儀業界が自ら変革していかなければいけない部分はあると感じますね。

——具体的にはどのような部分でしょうか?

 現在、多くの業界でAIなどテクノロジーの力での省力化が進んでいます。しかし、葬儀事業は、人が対面でお客様と接して信頼関係を構築することが非常に重要な事業です。私は、葬儀事業に従事する方々は、エッセンシャルワーカーであると認識しています。

 お客様との信頼関係を構築すると同時に、生産性も上げながらしっかりと利益を出し、働く方々の環境をいかに整えていくか、という部分は、より重視していかなければなりません。生産年齢人口が減少するなか、人の確保が重要な葬儀業界においては、どれだけ「この業界で働きたい」と考えてくれる方を増やしていけるかが今後取り組むべき大きなトピックになります。

 働く環境を整備し、従業員のエンゲージメントを高く保つことは、結果的にお客様のエンゲージメントを高めることにもつながります。

 お客様の人生に向き合う前に、まず自分の人生に向き合い、「自分はどう生きていきたいか」「自分は何を大切にしたいか」を考え実践することが大切で、従業員のエンゲージメントを高め「より良く生きる従業員」を育成していくことは、お客様にとっての「より良い人生の伴走者、パートナー」を育成することにもなるものと考えています。

 従業員に対しての人的資本投資や利益の還元、お客様との信頼関係構築や認知獲得のためのマーケティングなど、燦ホールディングスは、規模のメリットをしっかりと享受してグループ会社との連携を図り、従業員にもお客様にも多くのものを還元していける企業になっていければと思います。

 誰しもが避けられない「そのとき」に備えることは、遺される人のためであると同時に、自分自身の人生と向き合うことでもあります。

 葬儀はやり直しのきかない、関わる人すべてにとって大切な人生の節目でありイベントです。後悔しないためには、正しい情報にアクセスできる環境や余裕、信頼できるパートナーの存在が不可欠です。

「情報格差」を埋め、人生の終わりに“安心”を届ける燦ホールディングス株式会社の取り組みは、今後の葬儀業界にとってひとつの道標となるかもしれません。

※本稿はPR記事です

亀田製菓、実は海外事業比率40%の「グローバル企業」の素顔…北米の売上745億円への戦略

●この記事のポイント
・亀田製菓、2030年代前半に北米事業の売上高を745億円まで成長させる戦略を描く
・北米で取り組んできた構造変革による営業赤字の減少が奏功し、海外事業として初めての黒字化を達成
・北米でのグルテンフリー市場の深耕、アジアでのOEMビジネスおよび内販拡大、国を超えたクロスボーダー取引の3本柱

「亀田の柿の種」「ハッピーターン」「ソフトサラダ」などで知られる大手製菓メーカー・亀田製菓の業績が伸びている。2026年3月期の連結純利益は前期比4.5倍の242億円となる見通しだが、実は売上高における海外事業比率が約40%(米THフーズ連結子会社化後)に上るグローバル企業という顔を持つ。ベトナム・タイ・中国などアジア市場に加え、2030年代前半に北米事業の売上高を745億円と、25年3月期の約10倍にまで成長させる戦略を描くなど、海外事業の強化に注力している。そんな亀田製菓の海外進出加速の舞台裏に迫る。

●目次

各国のお客様の嗜好に合わせた商品開発

 まず、近年の海外事業の状況について、亀田製菓 執行役員 海外事業部長 堀部宏幸氏は次のように説明する。

「24年度の海外事業の実績は売上高172億3900万円(前年比114.2%)、営業利益1億3500万円で着地しました(海外事業の業績推移は以下をご参照ください)。好調なアジア事業での売上と営業利益の拡大、北米で取り組んできた構造変革による営業赤字の減少が奏功し、海外事業として初めての黒字化を達成しました。国別では、アジアのベトナム・タイが特に好調に推移しています。ベトナムは主力商品『ICHi』の販売強化、タイは輸出拡大が好実績につながりました。

年度  売上高    営業利益
2020  7,597   -376
2021  9,183   -278
2022  13,751   -589
2023  15,096   -413
2024  17,239     135
(単位:百万円)」

 海外事業の成長のために、具体的にどのような取り組みを展開してきたのか。

「海外事業は、北米でのグルテンフリー市場の深耕、アジアでのOEMビジネスおよび内販拡大、国を超えたクロスボーダー取引の3本柱で事業拡大を目指しています。北米事業においては、先日THフーズ社の連結化に向けて動き出すことを決定いたしました。これにより、亀田製菓の売上高における海外事業比率は約40%になります。現在は日本のうす焼の技術をいかしたライスクラッカーを販売していますが、亀田製菓が創業以来培ってきた米菓の加工技術を活かしてラインナップ強化を行い、北米のライスクラッカー市場のさらなる深耕を図ります。

 アジア事業においては、ベトナムと中国で内販強化を行っています。日本のグローバル技術開発部、マーケティング戦略本部とも連携し、各国のお客様の嗜好に合わせた商品開発を行っています」

OEMで稼いだ利益をブランド事業に投資する好循環

 現在、特にベトナム市場に力を入れているという。

「ベトナムのTHIEN HA KAMEDA,JSC.が非常に好調に推移しています。これまで自国で生産した商品を国内で販売する内販が中心でしたが、ベトナムで生産した商品をアメリカほかに輸出するクロスボーダー取引もスタートさせています。ベトナムでは日本の『揚一番』のような揚げせんべい『ICHi』を主力商品として展開しており、国内の3工場で生産しています。24年7月には『ICHi』のリブランディングを行い、より若い世代の方にも親しみをもっていただけるパッケージに変更、加えて、味替え商品も発売しており、ブランド拡張を図っています。これにより8月は前年比で10%近く売上伸長いたしました」

 今後の海外事業伸長に向けた戦略・計画については次のように説明する。

「現中期経営計画で定めているようにブランド事業とOEM事業の両輪で拡大、OEMで稼いだ利益をブランド事業に投資する好循環を実現し、事業拡大を続けていきます。 亀田製菓のコアコンピタンスである『お米の加工技術』と『各国の生活者の嗜好に合わせたローカライズ』により、唯一無二の価値を提供することで2026年の中計目標(売上高180億円、営業利益率3.0%以上)の結果を狙っていきます」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

聞こえにくくても誰もが平等に「電話」を使える社会へ。相手の声が読める電話「ヨメテル」 で変わる未来

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お話を伺ったのは、総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報活用支援室 課長補佐の輿石美和氏(写真中央右)、日本財団電話リレーサービス広報チームディレクター上村麻子氏(写真右)、日本財団電話リレーサービス文字表示電話チームディレクター西川賢氏(写真中央左)。聞き手は電通 野村朗子氏(写真左)。

電通は国内電通グループ8社と共同で、“誰一人取り残されない”コミュニケーションの実現を目指す「みんなのコミュニケーションデザインガイド」を制作し、2025年1月28日より一般公開をしています。

本連載では、みんコミュ事務局のメンバーが、コミュニケーションにおける多様性やインクルージョンの貢献に寄与する事例を紹介しながら、その社会的意義を深掘りします。

今回取り上げるのは、電話で相手先の声が聞こえにくいことがある人へのサービスとしてスタートした相手の声が読める電話「ヨメテル」です。なぜ通話相手の声を文字にするアプリを開発するに至ったのか――。その経緯や社会的背景をひもとくと、聞こえにくいなどの理由によって電話でのコミュニケーションが難しい約1430万人(※1)の存在が浮き彫りになりました。

多様な“みんな”を知り、誰もが当たり前にコミュニケーションを享受できる社会のために必要なこととは?

※1厚生労働省によると、難聴患者数は全国で約1430万人(国民全体の約10%)いるといわれている。  

 

電話リレーサービスは、国民の生活に欠かせない公共インフラの一つ


野村:2025年1月23日から、相手の声が読める電話「ヨメテル」 の提供がスタートしました。まずはヨメテルのサービスについて簡単にご紹介をお願いします。

上村:ヨメテルは、難聴者や中途失聴者など電話で相手先の声が聞こえにくいことがある人へのサービスとして、通話相手の声を文字にする電話アプリです。24時間、365日、双方向で利用ができるのも特徴です。通話相手の声を文字にすることで、電話でのコミュニケーションをスムーズにする、法律に基づいた公共インフラの一つとなっています。

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ヨメテルは、電話で相手先の声が聞こえにくいことがある人へのサービスとして、自身の声で通話相手に伝え、通話相手の声を文字で読むことができる電話アプリです。

野村:法律に基づいてサービスが提供されているということですが、このヨメテルのサービスの提供にいたった社会的背景を教えてください。

輿石:ではまず電話リレーサービスについてお話しさせてください。そもそも電話は、遠くにいる相手とリアルタイムで意思疎通ができる基礎的なコミュニケーション手段で、とくに緊急時や災害時に重要な役割を担っています。しかし、音声でのやりとりをする電話の特性上、聴覚や発話に困難のある人が利用することが難しく、緊急時に自身で電話ができないというのは、命にかかわる大きな問題でした。

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こうしたさまざまな課題を解決するために海外などで運用されていたのが電話リレーサービスです。これは電話の利用が困難な人に対し、通訳オペレータを介し、手話や文字などを使って電話が利用できるサービスです。

日本では、2013年9月より日本財団がモデルプロジェクトとしてサービスの提供を開始し、聴覚や発話に困難がある人と聞こえる人との会話を通訳オペレータが手話や文字と音声で通訳することで双方向なコミュニケーションを実現してきました。

その後、日本財団でのモデルプロジェクトとしてのサービス提供が2020年度に終了するということもあり、デジタル活用共生社会実現会議の電話リレーサービスワーキンググループなどで議論を行い、総務省で制度整備について検討を行いました。そして2020年6月に「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が可決成立。電話リレーサービスが制度化(※2)され、2021年度から公共インフラとしてのサービス提供が始まったのです。

野村:なるほど。電話リレーサービスを誰もがいつでも使えるように 制度化し、公共インフラとして整備されたという経緯があったのですね。

※2 法律に基づき、総務大臣が全国で1者指定する電話リレーサービス提供機関として(一財)日本財団電話リレーサービスが指定され、サービスの提供や啓発活動などを行っている。

 

抱える課題やニーズは人それぞれ。まずは多様な「みんな」を知ることから

野村:ではヨメテルのサービスはどのような課題がきっかけで、アプリの開発やサービス提供に至ったのでしょうか?

西川:先に提供を開始していた電話リレーサービスは、聴覚や発話に困難がある人と聞こえる人との会話を通訳オペレータが手話や文字と音声で通訳するサービスです。厚生労働省の調査によると、現在日本においては聴覚・言語障害者(障害者手帳保持者)は約37万9000人(※3)います。 その中で、手話を使う人は約8万人弱いるといわれています。 この電話リレーサービスは 手話を使う人が利用できるサービスです。

ただ、自己申告による難聴者率は、日本の人口の約10%(※4)いるといわれています。


※3 厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」
※4 日本補聴器工業会の調査「JapanTrack 2022」
 

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上村:中途失聴者の場合は、失聴するまでは音声によるコミュニケーションを活用していたため、自分の声を使いたいと思っている人が多くいらっしゃいます。しかし相手の声は聞こえない、もしくは聞こえにくいため電話を使うのが困難という状況がありました。

電話リレーサービスは、手話や文字を使って電話をするサービスのため、自分の声で何かを伝えることができません。そのため、自分の声を使いながら、相手の声を補完してくれるサービスが欲しいというニーズが以前からありました。

野村:海外ではすでにそういったサービスは展開されていたのでしょうか?

上村:海外でも同様のニーズがあり、アメリカなどではCaptioned Telephone Service(以下、CTS)という字幕付き電話サービスがあります。そのため、日本でもCTSのようなサービスを求める声が多くあり、「ヨメテル」の開発がスタートしました。

輿石:これまで限られた人しか利用できなかった電話リレーサービスでしたが、ヨメテルの登場により選択肢が増えました。 

野村:みんコミュガイドでも、障害のある人の中には多様なニーズの受け手がいることをお伝えしています。ヨメテルはそういった多様なニーズに応えるサービスの一つとなっているのですね。

また、「自己申告による難聴者率は日本の人口の約10%」というデータもみんコミュガイドに掲載していますが、私たちが思っている以上に聞こえない、聞こえにくいといった悩みを抱える人は多いのですね。

上村:おっしゃる通りです。聴覚障害といっても一くくりにはできず、それぞれに抱える悩みやニーズは違うということは多くの人に知ってほしい事実です。

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聴力の低下が気になる人にも!ヨメテルの利用がQOL向上の一助に

野村:ヨメテルのアプリ開発や運用にあたって意識したことはありますでしょうか? 

上村:先ほど輿石さんがおっしゃったように、電話は遠隔にいる人とコミュニケーションを図る基礎的なツールです。その理念をきちんとヨメテルのアプリに反映させ、iPhoneやAndroidのOSに入っている電話機能と使用感のギャップを作らないようにシンプルな使い心地を意識して開発しました。

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※イメージ

西川:昨夏に試験運用を実施して、多くの人にご意見をいただきながら使いやすさを追求してきました。特に相手の声が文字になる速度や見やすさ、ほかに発信や着信などは、当事者のご意見を反映させ、議論して作り上げていった部分でもあります。

また、相手の声を文字にする方法は、AI(自動音声認識)と文字入力オペレータ を選べるようになっており、よりスピードを重視してリアルな通話感を求める場合はAI(自動音声認識)、精度の高さを求める場合は文字入力オペレータと使い分けることも可能です。

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実際の通話画面。このように通話相手の声が文字で表示される。

上村:人によっては普段生活をする上ではそこまで不便は感じないけれど、電話の機械音が聞こえにくいといった人もいます。そういった人は、ヨメテルを利用して、聞こえにくかった場所のみ文字を確認するといったこともできます。

野村:年齢を重ねるうちに聞こえづらくなる加齢性難聴の人や突発性難聴、また女性に多いとされるメニエール病で聴力の低下が気になる人などにも利用してほしいですね。実際にサービスが開始されてまだ日は浅いですが、普及率などはいかがでしょうか?

西川:登録者を見ると、現在はこのサービスを前々から待ち望んでいた人々が登録をして利用している状況です。しかし先ほどのデータでもあった通り、日本の人口の約10%が難聴者ということを考えると、10人に1人はヨメテルの利用対象者となり得るわけです。そう考えると、潜在的な対象者はまだまだ多く、その人たちにヨメテルの情報が届いていないという課題を感じています。
この辺りは、登録方法の見直しや説明会、講習会の実施などを行いながら、引き続き普及啓発を行っていきたいと思います。

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誰にでも平等に情報が届く社会へ。総務省が取り組む情報アクセシビリティの配慮とは?

野村:総務省は経済や社会活動など国民の生活基盤に関わる行政機能を担っている省であり、情報通信に関する整備なども担当されているかと思います。インターネットの普及によって社会の在り方も大きく変化している今、力を入れていくべきことや課題意識を感じていることなどはありますか?

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輿石:誰もがスマホやPC、タブレットなどさまざまな端末でインターネットに接続でき、多くの情報に触れることができる今、情報アクセシビリティの確保はとても重要です。情報アクセシビリティとは、年齢や障害の有無にかかわらず、誰でも必要な情報に簡単にたどり着くことができ、利用できることを指します。

わかりやすいところで言うと、UDフォントのように読みやすいフォントが使用されているか、一文が長すぎてわかりにくい文章になっていないか、難しい漢字にはルビがふられているか、色弱者や高齢者などに配慮した色彩が使われているか……など、意識すべき点はたくさんあります。ですが、意外と情報を伝える側のちょっとした心がけで解決できる部分も多くあると感じています。

野村:「みんコミュガイド」でも、ジェンダー、年齢、障害といった多様なニーズのある受け手がいることを前提に、必要な配慮や参考となる事例などを紹介しています。

■印刷

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行や文字間隔を調整し、読みやすい情報量にしたり、読みやすいフォントを使ったりすることで、必要な人に正しい情報を伝えやすくなります。

■動画コンテンツ・CM

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動画コンテンツやCMにおいては、配色やフォントなどの調整で視認性を上げたり、字幕を付けたりするなど、見えにくさや聞こえにくさをサポートする工夫も重要です。

輿石:こういったガイドがあるとわかりやすいですよね。

総務省ではウェブサイトのアクセシビリティに関しても「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を公開しています。国および地方公共団体など公的機関のホームページなどでは、国民にとって重要な情報を多く発信しています。そのため高齢者や障害者を含む誰もが利用しやすいものとなるように、ウェブアクセシビリティに関する規格や手順を示し、ウェブアクセシビリティの向上を呼び掛けています。

野村:インターネットでさまざまな情報を取得できる今、ウェブアクセシビリティの向上は公的機関だけでなく、多くの企業でも意識すべき重要課題ですね。

輿石:そうですね。情報取得者の中には、視覚に障害のある方、ディスレクシア(読み書きに困難がある学習障害)の方、外国の方などさまざまな特性の人がいることも配慮する必要があります。

情報を伝えたい人たちの中にどんな人たちがいるのかをまずは想像し、文字の大きさ、動画の遷移の仕方、音声の出るタイミングなど、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を参考にして整備していただけたらと思います。

ウェブアクセシビリティの向上を多くの企業や団体が実践していくことで、誰もが不自由なく情報を取得でき、やがて誰一人取り残されないコミュニケーションの実現につながると感じています。

野村:また世の中が便利になった一方で、偽・誤情報、闇バイト、オンラインカジノなど、インターネットにまつわるさまざまな問題が発生しています。総務省で取り組まれている対策などあれば教えてください。

輿石:2025年1月から総務省の情報活用支援室では、「DIGITAL POSITIVE ACTION」という取り組みを始めています。フェイク情報にだまされたり、拡散させたりすることのないよう、国民一人ひとりが情報リテラシーを高めていく必要があります。

誰もが簡単にインターネットにアクセスできる時代だからこそ、情報アクセシビリティや情報リテラシーについて、一人ひとりが理解を深め、実践していくことが、インクルーシブな社会をつくる第一歩だと考えています。

野村:今回のお話を聞いて、コミュニケーションを取る相手の特性やニーズを想像することの必要性をあらためて強く感じました。情報アクセシビリティの配慮や情報リテラシーの向上など、できることから実践していけたらと思います。本日は貴重なお話ありがとうございました。

 

みんなのコミュニケーションデザインとは? 

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コミュニケーションの対象には、年齢、障害の有無、ジェンダー、国籍など多様な特性やニーズのある受け手がいることを前提に、“誰一人取り残されない”みんなにとって理想的なコミュニケーションの実現を目指す考え方。「みんコミュガイド」では、多様な「みんな」を知ることと、送り手と受け手の間に介在する多岐にわたるコミュニケーションメディアを取り上げ、必要な配慮や参考となる事例などを紹介しています。

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経理業務の効率化と業務負荷低減を実現するBPaaSとは?主要サービス3選と導入のポイント

●この記事のポイント
・BPaaSが経理業務の新たなソリューションとして注目されている
・定型的な経理業務を専門家に委託しつつ、リアルタイムでのデータ管理や法令改正への対応をクラウドで実現
・代表的な経理業務向けBPaaSサービス3選とは

 企業のデジタル化が急速に進む中、経理部門も効率化と高度化の両立を迫られている。従来の経理業務は煩雑で専門性が高く、人手不足や業務負荷の増加が課題となってきた。こうした背景から、クラウド技術とアウトソーシングを融合させた「BPaaS(Business Process as a Service)」が経理業務の新たなソリューションとして注目されている。BPaaSは、定型的な経理業務を専門家に委託しつつ、リアルタイムでのデータ管理や法令改正への対応をクラウドで実現するサービスであり、企業の経理体制の改革に貢献している。本記事では、BPaaSの仕組みと特徴を整理し、主要なサービス事例を紹介する。

●目次

 BPaaSは、クラウド上で業務プロセスを提供し、ソフトウェア(SaaS)と専門家による業務代行(BPO)を組み合わせたサービス。経理分野では仕訳入力、請求書発行、支払管理、財務報告、税務申告など、専門性が高い一方で繰り返し作業の多い業務に適用される。これにより企業はノンコア業務の負担を軽減し、戦略的な業務にリソースを集中できる。

【BPaaSの主な特徴】
・クラウド活用:データを一元管理しリアルタイム更新。法改正にも自動対応
・専門家サポート:経理・税務のプロが業務を代行し高精度な処理を実現
・柔軟なコスト体系:サブスクリプションや従量課金で初期投資を抑制

 世界のBPaaS市場は急成長を遂げており、国内でも人手不足やDX推進の追い風を受けて導入が拡大している。

BPaaS導入のメリットと注意点

 BPaaSを導入することで得られる最大のメリットは、経理業務の効率化だ。クラウド技術と専門家の代行により、従来手間のかかっていた作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、人的ミスも削減できる。また、自社で経理システムを構築したり専門人材を採用したりするコストを抑制できるため、経費面でも貢献する。さらに、クラウド上で経理データを一元管理することで、必要な情報を迅速に把握でき、経営判断のスピードアップにもつながる。

 一方で、クラウドサービスを利用するため、データの漏洩や不正アクセスなどのセキュリティリスクに十分配慮しなければならない。また、特定のBPaaSサービスに依存すると、将来的に他社サービスへの移行が難しくなるベンダーロックインの問題にも要注意だ。さらに、標準化されたサービスのため、企業独自の複雑な業務要件に対応しきれず、カスタマイズに制約が生じる場合がある点も留意する必要がある。

代表的な経理業務向けBPaaSサービス3選

 次に、国内の代表的な経理業務向けBPaaSサービスを紹介しよう。

1. freee受取請求書アシスト
 クラウド型経理アウトソーシングサービスで、AI-OCRと専門スタッフが請求書処理を効率化。紙・PDFの請求書を自動データ化し、freee会計と連携。電子帳簿保存法・インボイス制度に対応し、支払管理も自動化可能。業務負担軽減と法令遵守を実現する。
 https://www.freee.co.jp/bpaas/ac/

2. マネーフォワード おまかせ経理
 中小企業向けの経理BPOサービス。AIとクラウドを活用し、記帳、請求書発行、支払管理、給与計算などを代行。最短5営業日で月次試算表を提供し、経営の可視化を支援。専門家によるサポートで、法改正対応や業務効率化を実現し、経営者が本業に集中できる環境を構築する。
 https://biz.moneyforward.com/campaign/keiri_bpo/

3. 奉行V ERPクラウド会計
 OBCが提供するクラウド型会計システム。財務会計・管理会計を一元管理し、AIによる自動仕訳やデータ連携で経理を効率化。電子帳簿保存法・インボイス制度に対応し、法改正も自動更新。Microsoft Azure基盤で高セキュリティを実現し、中堅・上場企業のDX化を力強く支援する。
 https://www.obc.co.jp/bugyo-v

導入成功のためのポイント

 BPaaS導入の際には、自社の経理フローに合致したサービス選定、セキュリティ対策の徹底、サポート体制の確認、コスト透明性の確保が重要となる。また、今後はAIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用により自動化の精度が向上し、法改正対応の負担軽減も期待される。以降もますます、国内市場では人手不足やテレワーク普及を背景に、BPaaSが経理業務改革の中核ツールとして位置付けられるだろう。

(文=齋藤めぐみ/有限会社リーゼント、ライター)

海外就労希望者の情報収集支援プラットフォームを開設=JICA・ベトナム

【ハノイ時事】国際協力機構(JICA)とベトナム内務省の海外労働管理局(DOLAB)は連携し、技能実習生や在留資格「特定技能」を活用して海外での就労を希望するベトナム人向けに、送り出す機関と就労希望者をつなぐプラットフォーム「DOLAB-JICA(ドラブ・ジャイカ)」を開設したことを明らかにした。アプリケーションを用い、仲介者(ブローカー)不要で求人情報にアクセスできるほか、関心がある情報があれば取り扱う送り出し機関と直接メッセージでのやりとりや応募ができる。

 法外な手数料を要求するブローカーを排除し、技能実習生らには日本での仕事内容や条件など正確な情報を得た上で安心して来日してもらいたい考えだ。

 2022年の日越首脳会談では両国間の人的交流について、技能実習生の失踪問題や悪質なブローカーの介在などについて両国で解決に向けて取り組む方向性が確認された。これを受けてシステムの構築が始まったという。

 送り出し機関は求人情報を掲載し、基本的に就労希望者はアカウントを登録。スマホアプリやパソコンから情報検索や閲覧ができ、希望に合う仕事を無料で探せる仕組みだ。就労場所や労働条件のほか、送り出し機関に納めるサービス料や健康診断料など出発前に必要な支払い費用も明確に確認できる。

 名前やメールアドレス、電話番号などの基本情報は、提供に合意した場合は送り出し機関側に共有され、通知される。

 送り出し機関側にとってもベトナム全域の求職者にアプローチできるという利点がある。8月中旬の時点で250機関ほどが登録しているという。JICAはベトナムの中央政府や地方省・市、関係機関と協力し、プラットフォームの周知と広報に努める方針だ。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/08/14-19:08)

朝ドラにも垣間見える葬儀業界の変化——プロが語る“真にやるべき終活”とは

「もしものとき、何をすればよいのか」

 人生の最後に向き合う葬儀や終活について、漠然とした不安を抱えている方は多いはずです。

 さらに葬儀業界は現在、少子高齢化や地域とのつながりの希薄化、さらには新型コロナウイルスの影響などさまざまな要因により、大きく変化しつつあります。

 これまでの常識が通用しなくなった現代において、遺族は何に戸惑い、葬儀社はどう寄り添っているのでしょうか。

 今回は、25年にわたり葬儀に携わり、NHK連続テレビ小説『おむすび』の撮影協力なども行った株式会社公益社大阪本社 セレモニーサービス部 担当次長馬渡氏に、葬儀業界の変化や終活の必要性についてお聞きしました。

一般葬はもはや一般的ではない?葬儀業界の変化とは


——葬儀の現場で、今と昔でニーズが変化していると感じることはありますか?

 以前に比べ、「家族葬」という形で葬儀を済ませたい、と考えている方が増えています。

 現在は第一声、「家族葬でお願いします」とおっしゃるご遺族の方が大半ですね。

 そもそも、私が葬儀業界に入った25年ほど前には「家族葬」という言葉もありませんでした。

——実際には「家族葬」の定義がわからないご遺族の方もいるのではないかと思います。これまでの一般葬との具体的な違いはどこにあるのでしょうか?

「家族葬」に明確な定義はありませんが、まず、葬儀に集まる人数が圧倒的に違います。以前は、一般的な家庭の葬儀でも100人ほど集まるのが普通だったのですが、現在は10〜20人ほどで済ませる場合が多いです。

 参列される方の人数が少なくなると、会場の大きさや食事の数など、グレードダウンできる点が増え、結果として以前の葬儀より金額面でも下がるケースがほとんどですね。

 また、親戚の方々の参列が減っていると感じます。故人のごきょうだいなどが高齢で、ご自身だけでの参列が難しいためです。

 以前は、こういった方々が葬儀に関する知識を豊富に持っていて、我々葬儀社が一から十まで説明せずとも葬儀の準備が進んでいくケースが多かったのですが、最近はそういった光景が少なくなっていると、身をもって実感します。

 喪主の方が、正解がわからない状態で葬儀を進めなければならない、というイメージです。

——このように、葬儀の規模感が小さくなった要因はどこにあると考えていますか?

 新型コロナウイルス感染症の流行も加速化の一因になっていますが、高齢化も大きな要因のひとつであると考えています。

 先ほど、故人のごきょうだいが高齢で参列できないケースがあると話しましたが、これは亡くなる方自体がかなり高齢になってから亡くなられることが多いためです。

 また、亡くなる年齢が高齢になることで、勤務した会社との縁が薄くなってしまい、会社関係者の参列がなくなるということも要因としてあります。

 喪主の方も自分自身の会社関係者に葬儀のことを詳細にはお伝えしなくなっていますね。以前は、喪主の同僚の方が受付を担当するなど、葬儀への参列も仕事の一部と捉えていた会社もありました。

 縁が薄くなってしまっているのは、会社関係者だけではありません。人間関係が希薄になり、地域や町内会の関係者の参列が減少していることも要因のひとつですね。

朝ドラの現場で感じる、時代の移り変わり


——馬渡さんは、NHK連続テレビ小説『おむすび』の葬儀のシーンで作法の指導を担当されましたよね。印象的だったことはありますか?

 はい、橋本環奈さん演じる主人公の祖父役を松平健さんが演じており、そのお通夜や葬儀のシーンで取材協力や撮影の立ち会いを行いました。

 打ち合わせの段階でスタッフの方に「法名(戒名)がおかしくないか」などの質問を受けるなど、細部へのこだわりを感じることが多かったですね。

 そしてやはり、現在我々が多く担当する葬儀とは、異なる部分が多くあると感じました。

——時代背景としては平成の、阪神淡路大震災の少しあとですよね。

 そうですね。比較的、新しい時代を取り扱った朝ドラではあるものの、時代設定は十数年前です。現在のような家族葬ではなく、「顔が広い人物が亡くなった際の、中規模程度の葬儀のイメージ」と伝えられました。

「そういえば十数年前まではこうだったな」と思い出しましたね。

 お通夜が終わったあとのシーンでは、人が入れ替わり立ち替わり故人に会いにくるのですが、現在ではお通夜後にそのような様子はあまり見受けられません。

 また、関西地方などでは現在、「香典辞退」のケースが増えてきました。お香典のやり取りのシーンなどにも、逆に新鮮さを感じました。

目の前の葬儀単価ではなく、未来の顧客を見据えたサポートを


——葬儀に対する考え方の変化を受けて、市場や葬儀社の動きにも変化はあるのでしょうか?

 市場としては2040年が死亡者数のピークだといわれています。2040年に向けて葬儀の件数は増えていく一方、葬儀1件あたりの単価は下がってきています。葬儀社がビジネスとして経営を維持していくためには、限りある件数をどう確保していくかが課題になるのです。

 そのため、家族葬をお手伝いできる、という部分を大きくプロモーションに取り入れている葬儀社が多いですね。とくに、ここ十数年で業界に参入してきた葬儀社は、Web広告での集客にも力を入れている印象です。

 弊社も、家族葬をアピールするプロモーションのほか、イベントなどで認知を広げていく活動を行っています。

 また、弊社は100年近い歴史があることで、宗教関連の方やお客様からのご紹介なども多いです。我々はこの部分をとても大事にしています。

 葬儀の喪主の方、参列している方々も将来のお客様になりうると考えているため、1件あたりの単価をいかに上げるかよりも、誠心誠意寄り添って「次も頼みたい」「誰かにすすめたい」と感じていただけるようにお手伝いすることもプロモーションの一端になるのではと考えています。

——日々、そのような気持ちでお客様と向き合っている馬渡さんが、葬儀や事前相談の際に大切にしていることはありますか?

 とにかく、細かい部分まで説明を欠かさないことです。

 家族葬が増えたことで、自分自身が葬儀に参列したことがないという人が増えています。さらに、「なぜこれをするのか?」を当たり前に教えてくれる親戚の参列も減少していることで、葬儀社側がしっかり説明を行わないと金額や行動に納得感が得られないのです。

 ただ葬儀をお手伝いするだけではなく、「なぜお布施にこれだけの金額を出さなければいけないのか」「お通夜と葬儀を別で行うのはなぜか」など、多くの方々が疑問に思う部分をしっかりと解消できる、コンサルタント的な役割も果たしていかなければと思っています。

終活は遺される家族のために


——最近は、「終活」という言葉の浸透も顕著になってきていると感じます。実際に葬儀社の目線から見て、終活をする方は増えているのでしょうか?

 葬儀に関して生前に準備される方が劇的に増えている、という印象はありません。どちらかといえば、多くの方がイメージし行動している終活は、財産の整理や身の回りの断捨離、介護施設の検討などを指しているように感じます。

 一方で、お墓に関する相談は増えていますね。以前はこちらからお墓についてお伺いすることが多かったのですが、最近はお客様の方からご相談いただくことが多いです。

 自分自身のお墓をどうするかだけでなく、お墓の移転や墓じまいに関する相談も多く耳にするようになりました。

 年代の傾向としては、60〜70代の方々の相談が多いです。自分自身が動けるうちに、という意識が高くなっているのでしょう。

——多くの方がいずれ意識することになる終活ですが、そもそも終活が必要な理由はどこにありますか?

 やはり、「遺される方々のため」ですね。

 葬儀ひとつとっても、参列者や葬儀の規模、祭壇に飾る写真など、事前に伝えられていないと判断に困ってしまうことが多いのです。実際に、葬儀の現場で喪主の方々が困惑する様子を多く目にします。

 故人が本当にしたかったことが見えていないと、遺された方々が「本当にこれでよかったのか」と悩むことになってしまうケースもあるのです。

 また、葬儀だけで終わりません。葬儀後も、相続など対処する項目が数多く存在します。

——終活をした場合とそうでない場合でどのような違いが出てくるのでしょうか?

 まず、葬儀や相続などの、打ち合わせや手続きにかかる時間が違います。

 たとえば葬儀では、亡くなられた直後の打ち合わせは平均して2時間半ほどかかるのですが、終活をしている方の場合、1時間かからずに打ち合わせが終了する場合もあります。

 打ち合わせだけでなく、準備にかかる時間も大幅に短縮されることが多いです。

 これによって、遺族の方々は故人とゆっくりと最後の時間を過ごしてお別れができますし、喪主の方々が葬儀に抱える不安や不満も少ない傾向にあります。

よりよい終活のため、葬儀社や故人・家族ができること


——故人だけでなく、遺族の方にもメリットが多い終活ですが、より世の中に普及するためには何が必要だと感じますか?

 まず、終活は1人でやるには限界がある、という認識が広まることが必要だと感じます。

 どうしても終活をする方は、身の回りの整理など、たった今、自分自身だけでできることばかりに目が向く印象があります。しかし、実際には葬儀や相続関連の手続きなど、故人以外の方がやることのほうが多くあるのです。

 自分の死後に関わる誰かを巻き込んで、「引き継ぎをする」意識で終活を進めるのがよいですね。

 今後、喪主を経験した方が「こういうことをしておけばよかった」「こんな終活をしてくれていて助かった」など、終活の重要性を発信できるようなイベントや終活カフェなどの場が、もっと認知されていくことも、終活普及の一助になると感じます。

——葬儀業界や終活市場が変化していくなか、公益社をはじめとする葬儀社はどういった役割を担っていくのでしょうか?

 これまで葬儀社は、葬儀のお手伝い、サポートをすることが仕事でしたが、今後はその範囲がどんどん広がっていくのではないかと考えています。

 実際、葬儀社は江戸時代に葬儀に使用する道具を貸し出すところから始まり、徐々に葬儀の手伝いや進行を担当するというふうに、役割を変化させてきました。現在は、徐々に葬儀に関わるコンサルタントや、作法や金額の理由をレクチャーするという役割も加わっていると感じます。

 今後は、お墓や相続など葬儀後の分野のサポートも担っていくことが予想されますし、我々のグループではすでにそういった業務を専門に担当する会社も備えています。

 時代の変化に合わせて、葬儀に関わるスタッフも、葬儀に関する知識だけではなく葬儀の前後に関する知識も持っておかなければなりません。

 親戚や近所づきあい、宗教観などが変化し、葬儀や終活に関して迷いが多く生じるなか、多くの方々にとって「相談窓口」や「駆け込み寺」のような存在になれればと思っています。

「もしものとき、何をすればよいのか」

 その問いに、明確な正解はないかもしれません。

 しかし、準備をしておくこと、信頼できる相手に相談することは、自分自身への安心をもたらします。また、「もしものとき」への不安を話し合い、備えることは、遺される方々への優しさにもつながるのではないでしょうか。

 人生の終わりに寄り添うプロの視点から学び、できることから始めてみましょう。

※本稿はPR記事です。

水辺の安全を1秒で守る――プライムセンス「Meel」が変える溺水事故防止の未来

●この記事のポイント
・2025年夏、東京・小金井市のスイミングスクールで小1児童が溺死する事故が発生。全国的にも溺水事故は増加しており、監視の死角や救助までの時間が課題となっている。
・株式会社プライムセンスが開発した「Meel」は、RFID技術を用い、溺水の兆候を検知して約1秒で通知。プライバシーに配慮しつつ誤検知も少ない。来シーズンには閉鎖水域での導入を予定し、将来的には海水浴場などへの応用も視野に入れる。
・普及にはコストや装着ルール、文化的課題が残るが、同社は業界団体や行政との連携で社会実装を目指す。水辺の安全を社会インフラとして標準化し、「1秒で命を救う」未来を創ろうとしている。

 2025年夏、東京・小金井市のスイミングスクールで小学1年生の児童が溺死する事故が起きた。事故はさまざまなメディアでも報じられ、SNS上では監視体制や施設運営の在り方を巡って激しい議論が交わされた。

 監視員が配置され、一定の安全対策が講じられているはずのスイミングスクールで、なぜ命が失われてしまったのか――。その背景には、施設運営の人員不足や監視の死角、そして「異常を発見してから救助までの時間の長さ」という課題がある。

 実は、全国的にも溺死事故は増加傾向にある。警察庁の統計によると、コロナ禍による外出自粛の影響で一時的に減少していた溺水事故は、2023年以降、再び増加に転じた。暑さの厳しい夏が続く中、川や海だけでなく、管理されたプール施設でも事故が相次いでいる。

 溺水事故は数十秒で命に直結する。特に子どもは静かに沈むため、周囲が気づきにくい。監視員が異常を発見してから救助に向かうまでの数十秒〜数分の遅れが、生死を分けることになる。

目次

検知から通知まで約1秒――「Meel」の革新性

 こうしたなか、株式会社プライムセンスが開発したプール向け安全監視システム「Meel(ミール)」が注目を集めている。溺水の兆候を検知してから通知まで、わずか約1秒。現場の監視員やインストラクターに即座に知らせ、救助活動を開始できる。

 代表取締役の高木淳氏は、開発の背景をこう語る。

「私はもともとトライアスロン競技の経験者で、水泳の危険性を肌で感じていました。子どもたちが安全に水泳を学べる環境を作りたい。でも、これまで世の中に本格的な溺水検知システムはほとんどなかった。それなら自分たちで作ろうと、千葉大学との共同研究を始めたのです」

 高木氏自身、泳げない状態からトライアスロンを始め、水の怖さと正しい泳ぎの重要性を実感してきたという。その経験が、命を守る技術の開発を後押しした。

技術の中核はRFID――プライバシーに配慮した検知方式

 Meelの心臓部は、交通系ICカード「Suica」や「PASMO」にも使われるRFID(無線自動識別)技術だ。ただし、同社が採用するのは長距離通信に対応した周波数帯で、25メートルプール全域をカバーできる。

 利用者は、RFIDチップを内蔵した小型センサーを水泳帽やゴーグル、首輪状のバンドに装着。監視システムは、センサーが一定時間水中に留まり続ける状態を検知すると、瞬時に警報を発する。

 検知~通知の所要時間は約1秒。人間の視覚監視に頼るより圧倒的に早く、誤検知率も低い。

 最近は監視カメラ映像+AI解析による検知方式も開発されているが、日本ではプライバシーへの懸念や設置コストの問題で普及が進みにくい。対象が水着という特性から、この問題は避けて通れない。RFID方式は顔や身体を映さずに検知できるため、導入の心理的ハードルも低い。

市場投入は来シーズン、まずは「閉鎖水域」から

 現在、Meelは大学との共同研究フェーズを終え、実証実験の最終段階にある。リリースは来シーズンを予定しており、当面はスイミングスクールや小学校プールといった閉鎖水域に特化する。

 その理由は明快だ。

 第一に、海や川など広大な水域では電波が届きにくく、監視精度が落ちる。第二に、一般客が集まる海水浴場ではセンサー着用を義務付けるのが難しい。ただし、沖に浮かぶ小規模なフロートや限定水域では導入の可能性がある。近年、沖合に人工浮島を設置した海水浴場が増えており、こうした限られた範囲なら技術的に対応可能だという。

 さらに、太陽光発電による駆動も実証済み。電源確保が困難な屋外施設でも、日中であれば安定稼働できることが確認されている。

溺死事故は「どこでも」起きる――普及の急務

 高木氏は「事故が多いのは海や川だけではない」と強調する。プールでも事故件数は増加しており、特に夏休みの水泳教室やレジャープールでは監視体制が追いつかないケースがある。

 実際、小金井市の事故をはじめ、過去数年でも市民プールや学校施設での死亡例は報告されている。

「Meelのようなシステムが全国のプールに配備されれば、数秒で救える命が確実に増えます」

導入の壁――コスト、運用ルール、文化的課題

 全国展開には課題も多い。まずは導入コストだ。機器本体やセンサーの価格、メンテナンス費用は自治体や民間施設にとって負担となる。

 また、利用者全員にセンサーを装着させるためのルールづくりや、学校・保護者の理解も必要だ。

 海外では監視カメラ+AI解析方式のシステムが導入され始めているが、日本はプライバシー意識の高さから慎重姿勢が目立つ。RFID方式はその懸念を回避できるが、「装着を嫌がる子ども」や「自由度の高い海水浴場」での対応は依然として課題だ。

スタートアップが挑む「社会実装」

 安全分野の製品は、開発後すぐに売れるわけではない。社会全体での信頼獲得と制度整備が必要だ。高木氏はこう語る。

「我々だけでやるのではなく、水泳連盟、スイミングクラブ協会や教育委員会、ライフセービング協会など、関係者が手を組むことが重要です。安全は競争ではなく、協力で作るものです」

 補助金や助成制度、保険会社の割引制度などが組み合わされれば、導入の加速も期待できる。スタートアップとしては、技術面だけでなく行政・業界団体との連携が成功のカギとなる。

技術を「社会の標準」に――命を守るインフラとしてのMeel

 水辺の安全はサービスではなく、社会インフラだ。道路に信号機があるように、プールや海水浴場にも「命を守る仕組み」が当然のように備わる未来が必要だ。

 高木氏は最後にこう締めくくった。

「溺水事故をゼロにすることは難しいかもしれません。でも、1秒で気づけるなら、防げる命は必ずある。そのために技術を磨き続けます」

 事故は起きてからでは遅い。今求められているのは、「誰もが安心して水辺を楽しめる社会」を実現するための行動だ。その第一歩として、Meelはすでにスタートラインに立っている。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)

OpenAIが無料の「オープンウェイトモデル」GPT-ossを出さざるを得なかった理由

●この記事のポイント
・OpenAI、オープンウェイトAI言語モデル「GPT-oss」をリリース
・無料で使うことができ、「重み」を開示しているため、開発者が自由にカスタマイズして利用可能
・市場圧力とプライベートAI需要の拡大に対応する動き

 OpenAIは7日(現地時間)、「ChatGPT」向けの新AIモデル「GPT-5」を発表したが、その直前の5日に同社が発表したオープンウェイトAI言語モデル「GPT-oss」が注目されている。無料で使うことができ、出力結果を左右するモデルの仕組みである「重み」を開示しているため、開発者が自由にカスタマイズして利用することができる。ここ数年、OpenAIは新たなモデルをリリースしてもソースを開示しない姿勢を示してきたが、今回、「GPT-2」以来5年ぶりにオープンモデルを発表。その背景は何なのか。また、「GPT-oss」はどのような特徴を持ち、どのような用途に向いているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

オープンウェイトモデルとは何か

 軽量モデルといわれる「GPT-oss」は推論機能を持つリーズニングモデルで、数学やプログラミングなどに優れているという。公開されたモデルは「gpt-oss-120b」と「gpt-oss-20b」の2種類。「120b」は80GBの単一のGPU、米エヌビディアのGPU「H100」1枚で動作し、性能は「OpenAI o4-mini」とほぼ同等。一方、「20b」は性能的には「OpenAI o3-mini」と同程度で、ノートパソコンやスマートフォンなど16GBのGPUを搭載したエッジデバイスでも実行可能な点が大きな特徴。Apache 2.0ライセンスの下でリリースされ、マイクロソフト「Azure」、「AWS」、開発プラットフォーム「Hugging Face」などを通じて無料でダウンロードでき、商用目的での改変も可能。

 ちなみに8日に発表された「GPT-5」は、無料ユーザも使用できるが制限があり、一定量以上を利用する場合は月額20ドルの「ChatGPT Plus」、もしくは「ChatGPT Pro」を契約する必要がある。

 オープンウェイトモデルとは何か。ソフトウェアエンジニアで合同会社Hundreds代表の大塚あみ氏は次のように解説する。

「学習済み重み(weights)を公開し、ダウンロードしてローカル実行・再学習・蒸留・オンプレ運用ができる言語モデルを指します。しばしば“オープンソース”と混同されますが、学習データや学習コードの全面公開までは含みません。今回の gpt-oss は Apache 2.0 ライセンス+利用規約で提供されています。

 近年のオープンウェイトをめぐる潮流としては、米メタ(Llama系)、仏Mistral AI、中国アリババ(Qwen)が牽引し、中国勢(例:DeepSeek)の台頭で一段と加速しました。OpenAIが 2019年のGPT-2以来となるオープンウェイトを再開したのは、この市場圧力とプライベートAI(自社環境で完結させる運用)需要の拡大に対応する動きと見られます」

なぜオープンウェイト型のモデルをリリース?

 今回のGPT-ossの特徴・優位点は何か。

「性能レンジ:120bは標準ベンチマークで o4-miniに匹敵/一部で上回る、20bはo3-mini級の結果が公表されています。ツール使用(関数呼び出し/ブラウジングやPython実行)、構造化出力、CoT(Chain of Thought)に対応し、reasoning_effort(推論強度)も段階的に調整可能です。

運用性:120bは単一80GB GPUで推論可、20bは16GB級メモリでも動作可能とされ、クラウド/オンプレ/エッジまで展開しやすいのが強みです(それぞれ、80万円/15万円程度で買えるパソコンで使える)

安全性:OpenAIの Preparedness Framework下での追加評価レイヤー導入やシステムカードが用意され、同社内の安全性ベンチマークでフロンティア系に準じる水準と説明されています

 用途としては、クラウドに機微データを出せない現場や、レイテンシ/コスト/カスタマイズを最適化したい企業に有効です。ローカル運用であればプロンプトは自社環境外へ出ません」

 前述のとおり、OpenAIは近年、情報の公開を限定するかたちでAI言語モデルをリリースしてきたが、ここへきて5年ぶりにオープンウェイト型のモデルをリリースした理由は何であると考えられるのか。 

「あくまで私見ですが、以下が重なった結果だと考えます。

・データ主権・コンプライアンス要件に応えるローカル/オンプレ需要
・開発者エコシステムの奪還(Llama/Qwen等へ流れていた)
・『プライベートAI』市場の拡大(企業内での自律エージェント運用やツール連携)
・中国勢の高性能オープンモデルへの対抗」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=大塚あみ/合同会社Hundreds代表)

古代壁画からAIの時代まで――米PRミュージアム「PR Timeline」で歴史から未来を学ぶ

電通PRコンサルティングが昨秋から都内各所で展開しているPR展「What’s PR?~PRって何だろう?身近な活動から社会を変えるチカラまで」では、ニューヨークの「ザ・ミュージアム・オブ・パブリックリレーションズ」の協力を得て、同ミュージアムのコンテンツの一部を展示しています。本稿ではこのPRを専門に展示するユニークなミュージアムの紹介と、PRミュージアムが目指すもの、さらには、われわれが展示会を通してそこから学んだこと、日本で伝えたいことをご紹介していきます。

マンハッタンのPR専門の常設ミュージアム

私たちが「パブリックリレーションズ(以下PR)」と呼ぶ営みは、古代壁画に始まり、国家の碑文、宗教的スクロールを経て、印刷物・ラジオ・テレビ・デジタルプラットフォームへとメディア環境の革新にともなう、“コミュニケーション技術の進化”を基盤として発展してきました。その歴史的な足跡を1カ所で俯瞰(ふかん)できる常設施設が、マンハッタン南端のウォールストリートにある「ザ・ミュージアム・オブ・パブリックリレーションズ(以下PRミュージアム)」です。

この施設は、ニューヨーク州教育局(Board of Regents)から公式認可(ミュージアム・チャーター)を取得した登録博物館であり、私設展示ではありません。運営母体も、非営利の教育法人(501(c)(3)団体)として認可を受けています。PRを唯一のテーマに据えた常設登録ミュージアムは、世界でここだけとされています。所在地は金融街の高層ビルの23階。研究者、学生、PR実務者が集う「知のアーカイブ」としての空間が広がっています。

ザ・ミュージアム・オブ・パブリックリレーションズ
所在地:120 Wall Street,23階,New York, NY 10005 
営業時間:平日(月〜金)11 :00~17 :00、土日は休館 
入館料:学生 $10、教育関係者 $15、一般 $25
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PRミュージアムの共同創設者のバリー・スペクター氏(左)と共同創設者で館長のシェリー・スペクター氏(右)と

1997年、PR史研究家のシェリー・スペクター氏とその夫でありパートナーでもあるバリー・スペクター氏が、近代PRの父の一人であるエドワード・バーネイズの私蔵資料を引き継ぎ、まずはオンライン博物館として公開し、その後、物理的なアーカイブとしても拡張しました。ミュージアムの基本姿勢は「PRの歴史から未来を学ぶこと」。過去の記録を保存し、次世代が活用できる形で共有することに重きが置かれています。

5000点を超える所蔵品と展示ハイライト

PRミュージアムのコレクションは5000点を超えます。エドワード・バーネイズとともに、もう一人の近代PRの父と呼ばれるアイビー・リーのプレスリリース草稿、エドワード・バーネイズの初版本や、企業PRの父と呼ばれる元AT&TのPR担当副社長アーサー・ペイジの社内覚書、大手PR会社バーソン・マーステラ(現バーソン)の創業者ハロルド・バーソンのメディアトレーニング資料など、PR黎明(れいめい)期から現代までの原資料が体系的に保存されています。

加えて、このミュージアムには第1次世界大戦期のプロパガンダ資料、ベトナム戦争下の政府PR記録、企業の危機対応文書なども収蔵され、政治・社会運動・企業実務が交錯する多層的な展示構成が特徴です。

われわれは、東京でPR展を開催するに当たり、展示内容を以下のような方針で構成しました。

1)ニュートラルで営業色のないものとすること
2)「グローバル視点と日本の視点」「過去と現在」といった多層的な展示とすること
3)PRを単なる実務やビジネスとしてではなく、より広い社会的営みとして提示すること

そこでわれわれが目をつけたのが、ニューヨークにあるPRミュージアムでした。同ミュージアムにアプローチし、シェリーとバリー両氏の協力の下、同館の貴重なコンテンツを和訳・編集し、展示に盛り込むことにしました。

PR Timeline

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南欧に点在する古代洞窟壁画

PRミュージアムのコンテンツの一つに、「PR Timeline」という、PRの歴史をまとめたものがあります。これは、同ミュージアムと米ホフストラ大学が共同で制作したもので、「Public Relations through the Ages(時代を超えて見るパブリックリレーションズ)」というタイトルの下、PRの進化と人類のコミュニケーションの発展との関係を示した歴史年表です。時代を超えて、「メッセージ」と「伝え手」をつないできた重要な人物、出来事、技術発明の数々が紹介されています。

このタイムラインは、古代洞窟壁画から始まります。これまで洞窟壁画は人類による初期の芸術的表現と見なされてきましたが、近年では、動物を描いた壁画の周りに見られる螺旋(らせん)、楕円、手形、交差する線などの抽象的な記号に注目する文化人類学者が増えています。これらの記号は、単なる装飾ではなく、視覚的な世界を抽象的な記号に置き換える文字の始まりであると考えられるようになっています。そして人類がことばを持つ前の、初期のコミュニケーション手段であった可能性があるとされ、「PR Timeline」ではPR史の出発点と位置付けています。

聖書に見られるスポークスパーソン

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旧約聖書に登場する預言者モーセ

 「スポークスパーソン(代弁者)」という重要なPRの役割は、実は紀元前に書かれた旧約聖書にその起源を見いだすことができます。「出エジプト記」は旧約聖書の2番目の書で、ヘブライ人がエジプトでの奴隷状態から解放され、神との契約の下に民族として形づくられていく過程を描いています。その中に出てくる預言者モーセは、神からイスラエルの民  を導き出す使命を受けますが、自身の話し下手を理由にためらいます。そこで神は、雄弁な兄アロンに「彼の口となる」役割を与え、モーセが神から受け取った意志をアロンが民やファラオに伝えるという形で「神→モーセ→アロン→民」という伝達の構図を設けます。さらに、民の信頼を得るため、奇跡を起こすつえを与えます。これによって、民は、モーセが神によって遣わされたことを信じたと記されています。モーセが神の意志を受け取り、アロンが民やファラオに向けて語るという役割分担で、兄弟は共に使命を果たしていきます。

聖書において、神の言葉は特別な啓示を受けた預言者など、限られた者しか直接受け取ることができません。「出エジプト記」では、モーセが仲介者として神のメッセージを受け取り、さらにアロンというスポークスパーソンが、それを民にとって理解可能な言葉へと変換しました。つまり、聖書に登場する預言者たちは、神から受け取ったメッセージを人々が理解できる文脈に翻訳して伝え、民の態度変容を促していったのです。さらに、神はモーセに対し、視覚的・体験的な証拠となるつえを与えることで、民の信頼を得ながらその権威を補強したことが描かれています。これはまさに、エビデンスに基づく信頼を背景としたコミュニケーションの一例と見ることもでき、現代のPRの実務でも行われていることです。

新約聖書に見られる「ストーリーテリング」の技術

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新約聖書の著者の一人、使徒パウロ

初期キリスト教会の発展において、コミュニケーションは中心的な役割を果たしました。使徒パウロは地中海各地を旅しながらキリストの教えを広め、新約聖書27巻のうち13巻を執筆したとされます。彼の書簡は、信徒の疑問に答えるために書かれ、礼拝の場で読み上げられることを前提としていました。歴史家の中には、こうした活動を「PRキャンペーン」と位置付ける見解もあります。実際、現在、全世界で約24億人、世界総人口の32%がキリスト教徒であることを考えれば、パウロの宣教活動は人類史上最も成功したPRキャンペーンの一つといっても過言ではありません。新約聖書には、また、「善きサマリア人  」や「放蕩(ほうとう)息子」など、さまざまなたとえ話が描かれています。神の教えやメッセージを人々が理解できるよう、親しみやすい物語を通して語られているものです。これは現代のPRにおいて重視される「ストーリーテリング」と本質的に同じ技法であり、新約聖書にはその原点ともいえるさまざまなストーリーテリングの実例が見られるのです。

PRの歴史は古代から始まり、AIの時代まで続きますが、その一部を電通PRコンサルティングのウェブサイトで公開しています。
https://www.dentsuprc.co.jp/pr/beginners/

世界のリーダーたちはPRの専門家に支えられてきた

PRミュージアムからはこの「PR Timeline」の他に、ハロルド・バーソンがレーガン元大統領と写る写真も提供していただきました。

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レーガン元大統領(左)とハロルド・バーソン(右)

大手PR会社の社長は、一国の大統領や首相のアドバイザーとして助言することがよくあります。イギリスのPR会社ベル・ポッティンガーの社長であったティモシー・ベルはマーガレット・サッチャー元首相のアドバイザーとして有名でした。アメリカではハロルド・バーソンが、歴代の大統領へ助言してきたことで知られています。中でもロナルド・レーガンとは友人関係にあり、レーガンがホワイトハウスを去った後も、月に1回は昼食を一緒に取っていました。PR展ではこういったPR業界のトリビアも展示しています。国家のリーダーが、PRの重要性を理解していたことがこれらの資料から分かります。

社会改革をもたらすPR

展示コンテンツはPRミュージアムから提供された歴史資料だけではありません。日本におけるPRの歴史では、60年前の電通報の記事の一部も紹介し、「パブリックリレーションズ」という言葉がどのようにして日本に入ってきたのかを紹介しています。

さらに、近年実施されたPRキャンペーンの成功事例なども動画とPOPで展示しました。その一つが、世界最大級のPR会社エデルマンがスウェーデンの家具ブランドであるIKEA(イケア)のためにカナダで実施したPRキャンペーン「SHT(シット)」です。このPRキャンペーンは「カンヌライオンズ2024」PR部門でゴールドを受賞しました。

社会を動かしたイケアのSHTキャンペーン

カナダでは、2022年ごろから全国的な物価高騰が続いており、イケアの調査によると、カナダ人の45%が自身の家計に不安を感じ、多くの人が限られた予算の中でより多くの価値を得るために、中古品市場に活路を見いだしていました。実際、月に1回以上中古品を購入している人は全体の31%に達していました。

一方、オンタリオ州では、全ての売買取引に13%のHST(ハーモナイズド・セールス・タックス/統一売上税)が課されます。この税は1997年から導入されており、もはや誰も疑問を持ちません。

ところが、イケアではある問題に気付きました。中古品を購入すると、税金が二重にかかってしまうことです。新しい持ち主は、最初の購入時にすでに支払われたHSTを、再び支払わされることになります。こうした二重課税によって、連邦政府にはなんと年間数百万ドルもの収益がもたらされていました。

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イケアのSHTキャンペーン

イケアでは、環境保護のため、また、経済的な手頃さを提供するため、自社製品の中古品の売買を行っています。そのイケアが、この二重課税の問題と戦うため、「SHT(セカンドハンド・タックス)」を考案しました。これは、中古品に課される二重課税を事実上打ち消す“対抗税”です。仕組みはシンプルです。HSTが13%であるのに対し、SHTはマイナス13%。顧客がイケアで中古製品を購入する際、税金が相殺され、実質的に0%の税率となるのです。

イケアは、SHTの取り組みについて広くメディアに情報提供を行い、イケアの中古マーケットプレイスへのアクセスとHST廃止を訴える署名活動への参加を促しました。

このキャンペーンの結果、3万5000件以上の署名が集まり、イケアの中古品売り上げが192%の増加をしました。そしてカナダ政府は、二重課税を長期的に廃止するための政策変更についてイケアとの協議に応じることを決定したのです。

このようにPRには、社会課題を浮き彫りにし、その解決に向けたムーブメントをつくり上げるチカラがあるのです。われわれは、PR展で、こういったPRの可能性やチカラについても来場者に訴えていきました。

PRの歴史から未来を学ぶこと

過去を学ぶことは、単に知識を蓄積することではなく、未来のイノベーションを生み出すインサイトを得ることにつながります。洞窟壁画から、AIによる高度な対話が可能となった現代に至るまで、「パブリックリレーションズ」は、人や組織が社会に働きかけ、改革を生み出すチカラとして発展してきました。PR展「What’s PR?」は、小規模ながら、展示する歴史資料と、クリエイティブなケーススタディによって、その歩みと新たな可能性について考える機会の場となることをめざしています。

私たちPR展の運営チームは、「PRとは何か」「PRは人類社会にどのように関わってきたのか」を知っていただくことを出発点に、これからのPR、そして新たなイノベーションへとつながるインスピレーションを感じていただけることを願っています。

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