「信頼できる情報源はない」と感じる若者。これからのメディアはどうあるべきか?

電通若者研究部(以下、電通ワカモン)は高校生、大学生、社会人1~3年目の若年層を中心に2年ぶりとなる大規模調査を実施(調査概要はこちら)。その調査結果をもとに若者のメディアとの関わりをひもといた「若者まるわかりナレッジ2025(メディア篇)」を作成しました。(お問い合わせはこちら)

本記事では、調査から得られたファインディングスを紹介しながら、若者のメディアとの関わりについて見ていきます。

SNSは、「ほぼ世論」

インターネットの普及により、メディア環境は大きく変化しています。新聞・雑誌・ラジオ・テレビといった「4マス」への接触率はインターネットを下回り、「マスメディア」という言葉自体の再定義が求められる時代に突入しました。

特に若者にとっては自由に使える時間は意外と限られています。バイトやインターン、部活動、課題、そして友人との時間など、多くのことに忙殺されており、「テレビを見るための時間を作る」という考えそのものが選択肢から外れている若者が多くなっています。

若者は倍速視聴、切り抜き動画、さらにAIによる要約やレコメンドなどを駆使して、自分に必要な情報だけを効率よく取捨選択しています。このような「自分軸」で情報を選ぶ姿勢が、すでに当たり前の感覚となっているのです。

また、若者にとってSNSを「世論そのもの」と捉える感覚が急速に強まっています。高校生の実に6割以上が「だいたいの世論はSNSを見ればわかる」と回答。ニュースがSNSで炎上し、それをテレビが取り上げる光景を幼少期から見てきた世代にとって、「SNSで話題になること=世間で話題になること」という構図は、ごく自然な感覚なのです。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

情報収集時も、参考にするのはSNSでの反応や友人との会話が主であり、情報選択の基準は「自分ゴト化できるかどうか」に集約されています。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

信頼できる情報源はない

一方で、若者にとって信頼できる情報源がほとんど存在しない現状も見逃せません。「参考にしている」と回答されたSNSも、「信頼できる情報源」としての評価は10%前後と低く、さらに約4人に1人が「信頼できる情報源は一つもない」と回答しています。これは若者が、特定の情報源を無条件に信じるという前提を持たず、自らの情報リテラシーを鍛えながら複数の情報源を比較し、自分なりの「納得解」を追求していることを意味します。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

また、マスメディアへの不信感は年々強まっています。特に若者はリスクや表現に敏感で、テレビなどの過剰な演出や不快な表現に強く反応します。実際に大学生へのヒアリングでも、「テレビのコメンテーターが時代遅れな発言をしていると嫌な気持ちになる」「若者のことが分からないまま発信していて置いて行かれる気がする」といった声があがっており、「情報が自分に向けられていない」と感じた瞬間に視聴意欲も共感も途絶えてしまうと推察できます。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」「調査概要2」を参照ください

さらに、不祥事報道や偏った伝え方が続くことで、メディア全体への信頼も揺らいでいます。今、若者が重視しているのは「何を伝えるか」よりも「その情報にどう向き合っているか」というメディア側のスタンスです。発信内容だけでなく、その背景にあるスタンスや誠実な対応姿勢が信頼や共感を左右する決定的な要素となっています。

結局大切なのは、媒体そのものよりもコンテンツの面白さ

信頼できるメディアがない状況の中、メディアの種類に関係なく「コンテンツそのものが面白いかどうか」を重視する傾向が強まっています。つまり、媒体の力ではなく、コンテンツそのものの魅力が視聴や購読の決め手になっているのです。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

一方、若者は「時間を無駄にしたくない」という意識も非常に強いため、「せっかく見たのに面白くなかった」という状況はタイムパフォーマンス(タイパ)的に最悪です。そのため、本編を見る前にSNSの切り抜きや要約動画を使って事前に“面白さの保証”を求めることが日常化しています。

実際、「テレビ番組をテレビでは見ないが、SNSの切り抜きではよく見る」と回答した若者は61.8%と高く、短尺で興味を引く入り口設計が今後のコンテンツ開発において欠かせないポイントになっていくでしょう。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

SNSでバズったネタがテレビに取り上げられたり、テレビ発のコンテンツがSNSで拡散されたりと、メディアの行き来が当たり前に起きています。もはや「どちらが主か従か」という発想ではなく、テレビとSNSはお互いを高め合う“相互補完”の関係になっていくべきだと考えます。

これからのテレビの価値とは?

テレビ離れが進み、メディアへの信頼感も低下してきている昨今において、これからテレビが担っていくべき役割や価値はなにか?電通ワカモンは、今後テレビの2つの価値がますます重要になっていくと考えます。

①上の世代との「共通言語」へ
実はいま、多くの若者が「テレビは世の中への影響力が大きい」と感じていることが明らかになっています。興味深いことに、自分自身がテレビを見ているかどうかにかかわらず、こうした印象を抱いているのです。

なぜ、若者は「テレビを見ていないのに影響力がある」と感じるのか?その理由を聞いてみると、特に多かったのが「上の世代が見ているから」という声でした。「自分は見ないけれど、親や上司などの世代はよくテレビを見ている」「高齢化が進む中で、インターネットよりテレビに触れている人が多い」といったコメントが多く挙げられています。

つまり、若者は自分自身がテレビを見ていなくても、多くの人がテレビに触れているという事実を冷静に把握しており、それを通じてテレビの持つ社会的影響力を客観的に認識しているということです。

さらに、「テレビが親や上司との価値観のギャップを埋める役割を果たすと思うか?」という質問に対しては、実に7割以上が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答しました。これは、テレビが世代を超えて共有できる「共通言語」として、新たな役割を果たす可能性を示していると考えます。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要3」を参照ください

②機運醸成から「機運定着」へ
テレビはこれまで「機運をつくる(機運醸成)」メディアとして、大きな役割を果たしてきました。国民規模で同時に情報を届けるという強力なリーチ力を生かし、社会的なムードや価値観を広めていく「機運醸成」の場として機能してきたのです。

しかし、インターネットが普及し、テレビ離れが進んだことで、若者にとって「SNS=世論」という認識が広がりました。その結果、社会的な機運を醸成するメディアは、テレビだけではなくSNSや個別コンテンツを含めて極めて多様化しています。

このような状況の中で、これからのテレビが果たすべき役割とは一体なにか?それは、「機運を定着させること」だと、私たち電通ワカモンは考えています。

実際に、大学生の約9割が「テレビで繰り返し取り上げられることで、知らなかった価値観や考え方が『常識』になることがある」と感じており、さらに6割以上が「SNSで生まれた価値観でも、テレビで取り上げられなければ定着せず消えてしまうこともある」と答えています。例えば「LGBTQ」「メンズメイク」「男性の日傘」なども、テレビで取り上げられたことによって、自分にとっての当たり前が変化したと感じるという声が数多く見られました。

つまり、SNSで点在する形で生まれたムーブメントを、テレビがまとめて社会全体に「定着」させる。この役割こそが、今後テレビが担うべき新たな価値であると考えます。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要3」を参照ください

以上が調査から得られたファインディングスです。若者に情報を伝える際のメディア選定や、コンテンツ企画などにぜひお役立てください。

【調査概要1】
調査名:若者まるわかり調査
調査機関:電通マクロミルインサイト
調査時期:2024年12月
調査方法:インターネット調査
調査対象エリア:全国
調査対象・サンプル:高校生以上の未婚15~46歳男女 2000ss (以下セグメントごとに男女均等割付)
(内訳)高校生 400ss/大学生 400ss/社会人1~3年目 400ss/社会人4~10年目 500ss/社会人11~20年目 300ss
※上記サンプルの抽出にあたり、15~69歳の一般男女(高校生以上、未既婚・職業不問)を対象にスクリーニング調査を実施、その結果から人口構成比に基づいた10000ssを抽出し、別途分析に使用

【調査概要2】
調査名:サークルアップ調査
調査機関:電通若者研究部(ワカモン)
調査時期:2025年5月
調査方法:インターネット調査
調査対象エリア:全国
調査対象・サンプル:大学生 200ss

【調査概要3】
調査名:サークルアップ調査
調査機関:電通若者研究部(ワカモン)
調査時期:2025年7月
調査方法:インターネット調査
調査対象エリア:全国
調査対象・サンプル:大学生 500ss


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インバウンド増加の一方で増える外国人労働者、社会的問題も顕在化…「外国人なしで日本は成り立たない」は本当か?

●この記事のポイント
・増加しているのは「高度人材」よりも「単純労働者」
・インドネシアからの受け入れ数が増加の背景
・先進国のなかで日本は外国人労働者の受け入れハードルが最も低い

 今年1~6月の訪日外国人数(推計値)が2151万8100人(日本政府観光局発表)となり、過去最も速いペースで年間2000万人を超えるなど、引き続きインバウンドの増加傾向が続いている。日本を訪問する外国人として増えているのは旅行客だけではない。日本の在留資格を得て就労する外国人の数は年々、増加傾向にある。専門性の高い「技術・人文知識・国際業務(技人国)」に就く、いわゆる技人国ビザを得る外国人が増える一方で、その何倍もの数の肉体労働者が受け入れられている。国籍別ではインドネシア人などの増加が目立つ。日本での就労経験を通じて日本に好意を持つ外国人が増えれば、将来的にはさらなるインバウンドの増加につながると考えられるが、現在、外国人労働者を取り巻く状況はどうなっているのか。また、現場では何が課題となっているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

「高度人材」増加の実態

 
 法務省入管庁の在留外国人統計によると、技術・人文知識・国際業務といった高度人材向けの在留資格取得者は確実に増加している。ジャーナリストの出井康博氏はいう。

「2021年末が約27万人でしたが、2024年末には約42万人と、15万人程度増加しています。コ増加傾向にあるには事実だが、より注目すべきは実習生など肉体労働者の急増ぶりです」

 外国人労働者受け入れの背景には、企業にとって安価な労働力を確保できるメリットと、消費者が安い価格でサービスを受けられるメリットがある。しかし、その一方でデメリットも生じている。

「技能実習生や特定技能といった在留資格で就労する外国人労働者は、やはり低賃金で働いています。日本人の働き手がいないと言われますが、実際には働く能力のある人はいるはずです。賃金を上げれば日本人も働くはずですが、賃金が安いためやりたがらない介護などの分野で今、外国人に頼っている状況です。このまま外国人頼みが進めば、今後も賃金の上昇は抑えられてしまいます」

 さらに問題となるのは、外国人なしでは成り立たない業種の拡大だ。

「日本人がやらない仕事で、どんどん外国人頼みの仕事が増えていく。外国人なしでは成り立たない仕事が増えていくわけですが、それが良いことなのかどうかは、もう一つの議論としてあると思います」

「ポスト・ベトナム」としてのインドネシア注目

 外国人労働者の供給源は、送り出し国の経済発展に伴って変遷している。2000年代は中国が中心だったが、中国の経済成長により日本への出稼ぎ労働者は減少。2010年代に入るとベトナムが主要な送り出し国となったが、最近はその状況にも変化が見られる。

「ベトナム人で日本に働きに来たいという人も減り始めています。ベトナムに進出している外資系の工場などで働けば日本円で10万円程度稼げるようになったため、わざわざ日本に来て働くメリットが減りました。

 こうした状況から、インドネシア、ネパール、ミャンマーといった国々が“ポスト・ベトナム”として注目されています。これらの国々はベトナムよりもさらに賃金水準が低く、他に出稼ぎに行く選択肢も限られています。

 世界的に人材獲得競争が起きていると言われますが、スキルを必要としない『単純労働』に就く人材に関していえば競争など起きてはいません。日本は受け入れのハードルが非常に低く、送り出し業者に支払う手数料のための借金さえ厭わなければ誰でも入国できてしまう。ただし、わざわざ借金までして日本に行くのは母国で仕事の見つからない人たちです。当然、人材の質は保証できない」

制度改革の限界

 現行の技能実習制度は2027年から「育成就労制度」に名称変更される予定だが、出井氏は実質的な変化は少ないと見る。

「技能実習に対するさまざまな批判を受けて政府が制度を変更しようとしていますが、名前が変わる程度で、大して中身は変わりません。そして特定技能制度は、技能実習生を日本に引き止めるための資格です。もともと技能実習は最長5年で帰国する制度でしたが、海外の賃金が上がる中で外国人労働者を確保できなくなることを懸念し、日本で定住・永住し、無期限に働けるようになりました。特定技能『2号』を取得すれば母国から配偶者や子どもも呼び寄せられるため、事実上の移民政策となっています。

 しかし、この政策変更について十分な国民的議論が行われていないのが現状です。移民が増えることのメリット・デメリットについて、デメリットの部分が十分に検証されていません。そのため漠然とした不安が国民の中に広がっています」

今後の課題と社会的リスク

 出井氏は、今回の参議院選挙の結果を踏まえ、外国人労働者問題に対する社会的関心の高まりに注目している。

「“外国人問題”が選挙の争点になるなど以前では考えられなかった。今後も世の中の関心が高まっていくと思います。今回の選挙結果を見ても、国民の不安が強まっているのは明らかです。欧米諸国でも外国人労働者・移民の問題は国を二分する問題になっています。そこを解決しないと、日本でも大きな社会問題となりかねません」

 出井氏は、経済界の安価な労働力へのニーズだけでなく、日本社会全体にとっての影響を総合的に検討する必要性を強調する。

「一度立ち止まって、デメリットのところをよく考える必要があります。本当にこのまま外国人労働者をどんどん増やしていくことが、日本に暮らす我々にとって良いことなのかを検討すべきです。今、少なくとも先進国でこれほど簡単に外国人労働者・移民を受け入れている国はありません。逆に欧米では制限しようという動きになっている中で、日本だけが2周、3周遅れでどんどん入れていこうとしていますが、今一度立ち止まって考えるべきではないでしょうか」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=出井康博/ジャーナリスト)

IT武装スーパー「トライアルGO」、まいばすけっととの激突が始まる

●この記事のポイント
・トライアルGOが首都圏展開で小型スーパー業界の勢力図を塗り替える可能性がある。
・同店の特徴は、従来のスーパーとは異なるバックヤードレス方式でコストを大幅削減できることにある。
・まいばすけっととの競合が激化し、中小スーパーの淘汰が加速

 トライアルホールディングスが今秋から首都圏で展開する予定の小型スマートストア「トライアルGO」が注目を集めている。同社は2025年7月1日に西友の全株式を取得し、その物流網と製造拠点を活用して一気に関東圏を攻略する方針だ。小型店舗市場で先行するイオン系列の「まいばすけっと」との競争が激化するとみられるが、流通アナリストの中井彰人氏に両社の戦略について詳しく話を聞いた。

●目次

「ITで武装した」異色のディスカウントストア

「トライアルは基本的にITに非常に関心のあるオーナーが作った会社で、IT装備によって差別化しようという発想があります」と中井氏は説明する。

 同社のルーツは創業時から続くIT活用の取り組みにある。「もともと一般的なトライアルでも、カードを提示すれば、カート自体に決済機能が付いていて、バーコードを読ませるとその時点でどんどん集計されていき、出るときに清算しますという仕組みを導入していました」

 これは「セルフレジのカート版みたいなもの」で、顧客が店内を回りながら商品をスキャンし、最後に一瞬で決済を完了できる。「今ではイオンの一部店舗でも似た仕組みが導入されているが、大手ではない地方企業だった時からそういうことをずっと研究して実証実験してきている」という。

 中井氏は、トライアルを「ITでガチガチに武装して勝負する特殊なスーパー」と評価し、「今やイオンかトライアルかというぐらいIT分野で進んでいる国内では素晴らしい企業」だと述べた。

顔認証決済で「何もしないで店を出られる」

 トライアルGOの最大の特徴は無人決済システムだ。「顔認証で登録をすると、全部袋に入れてそのまま持って出ても決済がそのまま済んでしまう。何もしないで店を出られるという仕組み」を実現している。

 これはアマゾンゴーの日本版のようなもので、小型店舗ながら従来のコンビニ等とは一線を画すサービスを提供する。

「普通のスーパーだとバックヤードが店の3分の1ぐらいを占めるが、トライアルGOはコンビニの跡地にも出店できる。バックヤードをほとんど使わないからこそ、都内の高い賃料の場所でも効率的な経営が可能」だと中井氏は分析する。

バックヤードがない革新的なビジネスモデル

 日本のスーパーマーケット業界の構造的問題について、中井氏は興味深い指摘をする。

「日本では魚を生で食べる文化があり、昔から鮮度にうるさい客が多い。そのため『いま切りました。いまパック詰めしました』と見せないと客が離れてしまう国だったので、各店舗で加工作業を行うようになった」

 この結果、「欧米のスーパーは集中センターで加工したものを各店舗に配送するが、日本ではそれをやらなかった。店を増やせば増やすほど効率が良くなるはずのチェーンストアで、規模の利益が働かない」という非効率な構造が生まれた。

「どこのスーパーも全部バックヤードで作業をしているので、ものすごく労働分配率が高い。ドラッグストアなど生ものを扱わない小売業と比べて10%ぐらい人件費率が高い」

 この構造的問題により、「人件費が上がった瞬間に一発で収益が悪化する。大手も含めて基本的にスーパーマーケット業界は今、青息吐息の状況」だという。

まいばすけっととの本格競合が始まる

 こうした業界環境の中、まいばすけっとが成功している理由について、中井氏は次のように説明する。

「まいばすけっとはイオンの集中センターから全部配送している。バックヤードを使わないノウハウをイオンがちょっとずつ強めていき、最近になってそれを実験してみた」

 最初は「団地の中など、他に店がないような場所で実験していた。要はうるさい客も文句の言いようがない状況です。交通の足がない人が『生ものがあって嬉しい』と言ってくれる場所を選んで作ってきた」

 実験の結果、「遠くに行かなくてもいいという人は結構受け入れてくれるし、高齢化してきたので、そこまでうるさく言わなくなったということがわかった。鮮度云々よりも今は近いことの便利さが上回る」時代になったわけだ。

 トライアルGOとまいばすけっとの競合について、中井氏は「めちゃめちゃある」と断言する。「基本的に目指しているものは全く一緒で、コンビニのサイズのお店をコンビニの距離感でたくさん密集して出す戦略」だからだ。

 ただし、トライアルGOの優位性として「無人店に近い効率的な運営により、まいばすけっとよりも処理能力が非常に高い可能性がある。もし本当に実現できれば、まいばすけっとよりも効率の良い儲かるスーパーになる」と予測している。

 今後の展開について中井氏は、「西友の既存店を使ったサテライト方式で最初はスタートダッシュをかけ、最終的には独立したセンターを作ると思う。この時期、地方企業にとって都会を取るためにはこの手しかなかった」と分析。「何年かはトライアルが相当首都圏を席巻する可能性がある」と予想している。

 小型店舗市場の競争激化により、従来の中小スーパーの淘汰が加速することは避けられない。IT技術を駆使した新しいビジネスモデルが流通業界の勢力図を大きく変える転換点を迎えている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=中井彰人/流通アナリスト)

「ドンキ」親会社、最高益=訪日客消費伸び―25年6月期

 ディスカウント店「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが18日発表した2025年6月期連結決算は、純利益が前期比2.0%増の905億円となり過去最高を更新した。訪日客消費が旺盛で免税品の売り上げが拡大したほか、プライベートブランド(PB)商品の売れ行きも好調だった。

 26年6月期の通期業績も増収増益を予想。純利益は同社として初めて1000億円を突破する見通しだ。

 9月26日付で社長に就任する森屋秀樹専務は東京都内で記者会見し、「(現状の倍以上の)営業利益3000億円を稼ぎ出す企業に成長させる」と述べた。 

 2035年6月期までの長期経営計画も併せて発表した。店舗戦略では250店の新規出店を目指す。食品を中心に扱う新ブランド店も26年中にオープンする予定で、今後10年間で200~300店舗を展開する。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/08/18-19:43)

サントリーHDが国内初のグリーン水素“総合企業”になる必然的理由…製造から販売まで、地産地消モデル構築

●この記事のポイント
・サントリーHDは、グリーン水素の製造から輸送・販売までを手掛ける事業を2027年に開始
・県内の再エネ電力と、『天然水の森』で涵養した地下水から、『サントリーグリーン水素』として製造
・グリーン水素の地産地消モデルを構築することにビジネスチャンス

 大手飲料メーカー・サントリーホールディングス(HD)は、グリーン水素の製造から輸送・販売までを一気通貫で手掛ける事業を2027年に開始する。全工程を手掛けるのは国内企業としては初となる見通し。グリーン水素とは、再生可能エネルギー由来の電力による水の電気分解でつくる水素で、製造工程において二酸化炭素(CO2)を排出しないため、脱炭素につながる。サントリーHDは現在、政府のグリーンイノベーション基金事業として、山梨県の自社工場・蒸溜所に隣接する土地で民間企業10社によるグリーン水素製造設備「やまなしモデルP2Gシステム」を建設中であり、ここでグリーン水素を製造する。グリーン水素は、25年秋から工場の燃料や熱殺菌用の蒸気製造に利用する予定。加えて、外部事業者への輸送・販売も行う予定だという。なぜ飲料メーカーであるサントリーHDは、まだ市場が拡大しているとはいえないグリーン水素に注力するのか。また、どのようなロードマップを描いているのか。同社に取材した。

●目次

山梨県には水素の“材料”が豊富に揃っている

 企業にとって脱炭素への取り組みはまったなしの状況だ。東証プライム上場企業は2027年3月期から、有価証券報告書でサステナビリティ情報を開示する必要があり、GHG(温室効果ガス)排出量の開示などが求められる。そうしたなか、サントリーHDが、グリーン水素事業に注力する理由は何か。同社は次のように説明する。

「コーポレートメッセージ『水と生きる SUNTORY』を掲げるサントリーグループとして、『水から生まれ、水に還る』水素の製造から物流・販売までバリューチェーン全体を担います。グリーン水素ならではの価値の創造と訴求によって、世の中への普及を図り、水素社会の実現に向けて貢献したいと考えました。当社としてP2G(Power to Gas、余剰電力を気体燃料に変換して利用・貯蔵する手法)のプロジェクトに関わる中で、得られた水素事業のノウハウや、P2Gの施設自体の活用を考えるようになりました。

 当社での水素の利用想定量に対しP2Gは水素製造の余力があり、加えて山梨県には水素の“材料”(未利用の再エネと水資源)が豊富に揃っています。また、水素は沿岸部に供給拠点が多く、内陸部にはないという点において今回のP2Gのモデルは独自性があり、国の水素基本戦略はじめ、2050年に向けて水素への需要が確実に高まることが想定される中、グリーン水素の地産地消モデルを構築することにビジネスチャンスがあると考えました。加えて、山梨県の隣、大規模消費地である東京都も水素活用に積極的であり、補助金をもとに外販していく構想です」

高効率で水素を生成できる「PEM型」を採用

 グリーン水素の製造は、具体的にどのような技術によって実現するのか。

「一般的には、再生可能エネルギーを活用して水を電気分解することで製造されます(再エネ由来で新たな化石燃料を使わないため、製造工程でもCO2が発生しない)。今回、山梨県はじめ技術開発参画企業10社で取り組むP2Gシステムにおいては、主に県内の再エネ電力と、『天然水の森』で涵養した地下水から、『サントリーグリーン水素』として製造します。液体水ではなく膜に浸透した水分子を分解することで、高効率で水素を生成できる『PEM型』を採用します」

 グリーン水素の販売先としては、どのような顧客を想定しているのか。

「これから検討していきますが、山梨県内産業での地産地消や、小口需要家等これまで水素の利用対象となっていなかった産業や個人等の観点で新たな需要を開拓していきたいと考えています。水素活用に積極的な東京都への供給も検討中です」

 事業の立ちあげ、継続にあたっては、どのような点が課題・カギになってくるのか。

「柔軟なサプライチェーンの構築や、販売にあたりいかに価値を感じていただけるかという需要喚起を課題として考えています。安全確保も大前提となるので、関連法規・届出を遵守のうえ体制・設備含めて今後の事業化において議論していきます」

 販売初年度の売上、販売量などの計画については次のように説明する。

「今回ビジョンとして発表しましたが、今年の秋にまずはP2Gを無事稼働させ、実際の水素製造量を長期的に評価の上、販売開始時の市場価格動向なども見ながら供給していきます。そのため、2027年時点での具体的な売り上げや供給量を現段階で答えるのは、時期尚早と考えています」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

パナソニック オートモーティブシステムズ永易社長×dentsu BX 「移ごこちデザイン」カンパニーとして描くモビリティの未来

あらゆるバイアスを壊し、自らアーキテクト(全体設計者)として社内の事業変革を遂行しているトップエグゼクティブの方々に話を聞きながら、その神髄に迫る本連載。

前編では、パナソニック オートモーティブシステムズ代表取締役 社長執行役員の永易正吏氏に、ビジョンである世界一の「移ごこちデザイン」カンパニー策定の経緯や背景をお話しいただきました。後編では引き続き、永易社長にビジョン策定を経て考えるモビリティの未来や、事業変革について、電通の田幸佑一朗氏と小林麻里絵氏が伺います。

前編:パナソニック オートモーティブシステムズ永易社長×dentsu BX 車載事業会社から「移ごこちデザイン」カンパニーへの変革

永易氏、田幸氏、小林氏
(左から)電通 田幸佑一朗氏、小林麻里絵氏、パナソニック オートモーティブシステムズ 永易正吏社長

クルマの「知能化×多様化」時代における「移ごこちデザイン」とは?

小林:世界一の「移ごこちデザイン」カンパニーというビジョンに加え、ステートメントも作成しました。特に「居ごこちや着ごこちや寝ごこちのように、「移ごこち」のよい世の中にしたい。」という冒頭の文章は永易さんからも好評をいただき、「世の中に対してこれぐらい大きな価値を届けていきたい」とおっしゃっていただいたのが印象的でした。

ステートメント

田幸:こうしたエンドユーザーを表現する言葉を、BtoBの会社が掲げるのはインパクトがありますよね。これからのモビリティ業界をカーメーカーの皆さんと一緒にリードしていく、一緒になってモビリティの未来をつくっていくという意思の表れにも受け取れると思います。

永易:数年前から私たちはBtoBだけど、BtoBtoCでもあると考えていました。C、つまりエンドユーザーをわかろうとしないと、新たな価値を生み出すことはできない。メーカーの要望に忠実に対応するだけではダメだと思ったんです。EVやSDV(Software Defined Vehicle)など、クルマの技術革新が目覚ましい中で、カーメーカーもどのようにオリジナルの価値をつくり、差別化していくか悩まれています。これからはカーメーカーの「共創パートナー」として、一緒に答えを見つけていくような関係を築けないと、この業界では生き残れないでしょう。

田幸:モビリティ業界でトピックとなっている、「クルマの知能化、多様化」にもつながるお話だと感じました。知能化×多様化という文脈の中で、御社としてはどのように「移ごこち」をデザインしていこうとお考えでしょうか。

永易:今後「移ごこち」をつくっていくのは、ソフトウエアやAIの技術だと思います。知能化の中心にあるのがSDV、つまりスマートフォンのように、ソフトウエアのアップデートで機能を進化させていくクルマでしょう。そして、SDVを実現するために不可欠なのが、HPC(High Performance Computing)です。これは、膨大な情報をリアルタイムで処理したり、ユーザーの状態を分析して環境を自動で整えたりといった、高度な判断や制御を支える頭脳の役割を担う技術です。

永易氏

当社にはテレビや携帯等の開発経験者が多数所属しており、ソフト開発において大きな強みがあります。こうした卓越した技術を生かし、HPC事業にさらに注力していきます。私たちは理想的なSDVを実現していく存在にならねばなりませんし、僕はなれると思っていますからね。

そしてもう一つ、多様化に通じる部分が当社のイノベーションである「キャビンUX」です。私たちはこれまで、人の状態を読み取るセンサや、環境を調整するデバイスを開発してきました。これからはそれらをもっと高度につなぎ、人の気持ちや状態に合わせて動くような技術へと進化させたいと考えています。例えば顔の表情や血流などから感情を読み取り、それに合わせて光や音、空調などを自動で調整する。そうすることで、一人ひとりに合った快適な「移ごこち」を届けられるようになると思います。

つまり、ソフトウエアやAIでクルマの「知能化」を進めながら、人に合わせて変化する「多様化」も実現していく。その両方を支える技術を、私たちはすでに磨いてきていると自負していますし、今後も強化していくつもりです。

経営の筋肉質化やDEIの推進 永易社長が進める変革の取り組み

田幸:多様性の話にも通じると思いますが、永易社長自らDEI(Diversity・Equity・Inclusion)の推進を担当されていますよね。

永易:そうですね。社長に就任したタイミングで、自らDEIの担当を引き受けました。まずは自分自身の意識を率先して変革し、会社、そして業界に変革のきっかけを生み出したかったんです。社内をあらためて見渡すと、業界柄かやはり男性が多く、考え方や価値観もまだまだ画一的だと感じています。僕は、同じ考えの人が集まる会社では、新しい価値は生まれないと思っています。性別・国籍・キャリア・ライフスタイルなど、多様な背景を持つ人たちが集まり、挑戦できる環境こそが新しい発想や事業につながっていくはずです。

小林:先日「ここちよさの深掘り」というテーマで永易さんとビジュアルセッションを実施しました。その際、「ここちよさは世代や性別、人それぞれの価値観などによって感じ方が全く違うかもしれない」というお話になり、若手の社員の方々にも「ここちよさ」に関するセッションを実施させていただきましたよね。すると、本当に人それぞれで違いがあって。適度な緊張感がここちよいという方もいれば、フェスのようなにぎやかさが好きな方、一人の時間が大切な方など、人の数だけここちよさがありました。やはり御社がつくる「移ごこち」も画一の価値観でつくられたものではなく、多様であることが理想的とお話ししたことが印象に残っています。社員の多様性を大切にするという視点は、永易さんが先ほどお話しされていた、“一人ひとりに合った「移ごこち」を提供する”ことにつながるように思いました。

小林氏

永易:多様性を重視することは、いくら経営が変わろうと続けていかなければいけないことだと思っています。トップが変わったら文化も変わるというのはよくないですよね。

田幸:パナソニックグループからカーブアウトされていますが、それでも創業者は変わらないということは、従業員の皆さんも矜持として持ち続けていらっしゃるように感じていました。不変のものを大切にしながらも変えていくべきところは変えていく。まさに御社は変革期にあるように思います。

私が永易社長の変革で印象的だったのが「経営の筋肉質化」というキーワードのもと、事業部制を廃止されたことです。100年近く本社グループが培ってきた在り方を変えていくのは相当な決断だったと思いますが、どのような背景があったのでしょうか。

永易:もともと我々の事業は、お客さまごとに地域でしっかり納入していく必要があることから、地域軸でグローバル展開してきました。ただ、その一方で、長年「ジャパンセントリック(日本中心)」な体制が残っていたのも事実です。

これまでの「グローバル事業部軸経営」は、事業部長が事業単位で意思決定を行う形で、一気通貫で動きやすいというメリットがありました。しかし、オペレーション面では縦割りになりやすく、特にサプライチェーンの連携や生産性の面で非効率が生じていたのも事実です。また、お客さまにとって社内の部署の違いは関係なく、「会社としてどう対応してくれるか」が重要です。組織もお客さま目線に立ち返った在り方が必要なのではと感じ、地域軸での経営体制へと大きく舵を切りました。まだ始まったばかりで未知数な面ももちろんありますが、私たちにとって大きな変化点になったと思います。

田幸:まさに「移ごこちデザイン」への考え方と同じですね。永易さんは「ユーザー視点」で物事を考え、変革を起こしていらっしゃるのだと思いました。

すべての人がストレスフリーで移動し、QOLが上がる未来をモビリティでつくる

小林:永易社長が見つめるモビリティの未来についておうかがいしたいと思います。永易さんは、“一つ一つの「移ごこち」が、社会課題と密接に関わっている”とお話しされています。特に永易さんが重要と捉えている、移動にまつわる社会課題にはどのようなものがあるのでしょうか。

永易:私が目指すモビリティの未来は、すべての人がストレスフリーで移動できる社会をつくることです。そのために特に重要視しているのは、高齢化などによる「移動弱者」をどう救うかです。移動が困難になると、生活の満足度や幸福度が下がってしまいます。「行きたいときに、行きたい場所へ、ストレスなく移動できること」が非常に大切ですし、そんな世界を目指したいと思っています。

また、今注目されている「地方創生」もモビリティの活性化と深く関わっており、自動運転の導入や過疎地での移動支援は、まさにそのカギを握っています。ただし、法制度や安全性といったハードルも多く、そうした障壁をどう乗り越えていくかが重要です。こうした課題を私たちだけで解決することは難しいので、多様な会社と連携しながら取り組んでいきたいですね。

多くの課題がある一方で、モビリティには「楽しさ」を生み出す力もあると感じています。例えば、スポーツ観戦や観光といった非日常の体験を支える移動の価値。それから最近気になっているのが「推し活」です。地方で行われるコンサートなどのイベントと移動とを絡めて何かできるのではないか。これは地方創生にもつながると思いますし、新しい事業として挑戦していきたいと考えています。社会課題の解決と、人々の心を動かす体験の両方に貢献していきたいです。

田幸:これから先、さらに高齢化が加速する中で必要不可欠な取り組みですよね。御社が描くモビリティの未来を実現するために、会社として大切にしていることや社員の皆さんに伝えていることはありますか?

田幸氏

永易:私たちの最大の強みは人です。これは自信をもって言えます。社員一人一人がもっと挑戦できるようになれば、さらに強い会社になっていくはずです。つまり、当社の進化は、社員が挑戦しやすいカルチャーをつくれるかどうかにかかっているともいえます。

そのために大切にしているのは、「ゼロベースで考える」ことです。この思考ができれば、過去のやり方にとらわれず、今やっていることが本当に必要かという視点のもと、これまでと違った判断軸が出てくると思うからです。

もう一つ「失敗を許容するカルチャー」をつくることも重視しています。特に、失敗したときに「なぜ」は絶対に聞かないようにと繰り返し伝えています。「なぜ」ではなく「今後失敗しないためにどうするか」を建設的に考えられる風土をつくる。社員が失敗を恐れることなく、安心してトライできる環境を育てていきたいと思っています。そのうえで、社員には「健全な危機感」を持つようにと伝えています。危機感ばかりをあおると人は萎縮してしまいますが、健全な危機感を持つことは挑戦するうえでも大事な基盤になるはずです。

小林:個人的な思いになりますが、御社の皆さんはとても謙虚でいらっしゃいますし、自社の価値をことさら強くはアピールされない印象もあります。でも、実際にお話をうかがうと、とても独自性のある事業を手掛けられていて、細やかなインサイトの捉え方や、ユニークなソリューションなど、思わず誰かに伝えたくなるようなお話ばかりです。また、社員の方々のプロフェッショナリズムやお人柄に、感銘を受ける場面もたくさんあります。

だからこそ御社がすでにお持ちの価値を、外からの視点で引き出し、言葉にして世の中に伝えるお手伝いができればと思っています。

田幸:御社は今、大きな変革の真っただ中にあります。私たちが貢献できるのは、コミュニケーションやクリエイティブといった人の心に届ける力を通じて、御社の変革をドライブすることだと考えています。皆さまの思いや意志を「戦略」や「施策」という形で可視化する。それを多様なステークホルダーに浸透させていくことで、期待を生み出し熱量を高め、変革を駆動させる原動力をつくる。そんな存在でありたいと思っています。

永易:ありがとうございます。これまでの取り組みを振り返ると、「移ごこちデザイン」という言葉を生み出していただいたことには、感謝の思いしかありません。ワークショップをはじめ、さまざまなプロセスを通じて、私たちは“ともに価値をつくっている”という実感を強く持っています。だからこそ、これからも変わらぬ共創パートナーとして、私たちの変革を多方面から支え、力を貸していただけたら心強いです。

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突然の出血にうつ状態……。更年期の現実ってどんなカンジ!?

フェムテックを、女性のみならず社会全体に関係するものとして捉え、さまざまな取り組みを推進する電通の社内横断組織「Femtech and BEYOND.」(フェムテックアンドビヨンド)。

この連載では、本組織の取り組みを通して、フェムテックの潮流の変化やそこに関わる意義などを多彩な企業・メディアなどと意見を交わしながら考えていきます。

今回は、「Femtech and BEYOND.」とアンファーの出会いから始まった、更年期をはじめとするホルモン変化とともに歩むための取り組み、「ホルモンハグプロジェクト」のメンバーが集まり座談会を実施。小学館の下河辺さやこ氏、ラキャルプの新井ミホ氏、アンファーの矢幡路子氏、電通Femtech and BEYOND.の石本藍子氏が、更年期のつらさ、課題、対処法、プロジェクトの今後などについて語り合いました。

ホルモンハグプロジェクトとは
業界業種の垣根を越えた有志が運営する、ホルモンバランス変化に伴う生理痛やPMS、男女双方の更年期などの健康課題に向き合うプロジェクトです。「Femtech and BEYOND.」とアンファーが中心となり2025年3月に活動をスタートし、同年5月22日に電通ホールでメディア向け説明会を開催しました。活動を応援していただける方、協賛していただけるブランド・メーカーさまを随時募集しています。

集合画像
(左から)アンファー 矢幡路子氏、小学館 下河辺さやこ氏、ラキャルプ新井ミホ氏、電通 石本藍子氏

電通とアンファーの出会いによって、「ホルモンハグ プロジェクト」が始動

石本:「ホルモンハグ プロジェクト」は、今年3月に立ち上がり、以降、有志のインフルエンサーの皆さんや、フェムテック商品を扱う企業の方々などを巻き込みながら、少しずつ、更年期に関する情報を発信し、議論の機運を醸成する活動を行ってきました。

プロジェクト立ち上げのきっかけは、私が、たまたまフェムテック系のイベントを見に行って、アンファーさんに出会ったこと。名刺交換をして立ち話をしていたら、どんどん女性の課題についての話が盛り上がっていったんですよね。すぐに意気投合し、なにか一緒に新しいことをやりたいですねということになりました。

矢幡:アンファーというと男性用の薄毛ケア製品を扱う会社だと思われがちなんですが、実はバックボーンに医療がありまして……。大学機関などと連携しながら、予防医学などの観点に基づいた幅広い商品開発をしているんですよ。女性向けの製品も多く扱っており、例えばまつ毛美容液や女性向けのヘアケア用品、デリケートゾーンケア用品なども販売しています。

私はアンファーで女性向けブランドのプロモーションを担当しており、長年、女性の健康課題や美容課題に向き合ってきました。そんななかで、自然と、「生涯にわたって健康で美しくいるにはどうしたらよいか」「輝きながら年齢を重ねること──アクティブ・エイジングに必要なことは何か」といったことを考えるようになったんです。

そんなときに、偶然、イベント出展で石本さんに出会って、「Femtech and BEYOND.」の活動について知りました。すぐに「面白い!」と感じて、ご一緒したいとお伝えしたことを覚えています。

矢幡氏

ファッションエディターの大草直子さんと話しが盛り上がり、その後小学館の下河辺さやこさんをご紹介いただきました。このようにだんだんネットワークが広がっていき、ラキャルプを経営されている新井ミホさん、瀧渕絵美さんが加わってくださるようになって。

石本:みんなでざっくばらんに話をするうちに、「実は更年期がとてもつらかった」「更年期について悩みを抱える女性は多いはず。フェムテックが浸透してきた今だからこそ、アクションを起こそう!」ということになったんですよね。

不正出血にうつ症状。つらい更年期と共存できるようになり人生が変わった

石本:プロジェクトの立ち上げ時に皆さんからお聞きして驚いたのが、「更年期に関するエピソード」です。私はまだ更年期を経験していないため、“それ”がどんなものなのかイマイチ想像しきれないところがあったんです。ですから、実際に更年期を経験し、ともに生きていらっしゃる先輩たちのお話をお聞きして、「そんなことが起こるのか」「こんなふうにざっくばらんに話していいものなんだな」「困難だけでなく、よい変化をもたらすものでもあるんだな」と、いろいろな点で気付きがありました。

せっかくなので、今日、この場でも、少し皆さんの更年期エピソードをお聞きできたらと思うのですが……。まずは新井さんから、いかがでしょうか?

新井:私は50歳ぐらいになって不調を自覚するようになりました。更年期に差し掛かるまではとても健康で、働くことに意欲があり、夢も希望もたくさんあって、とにかくよく動くタイプでした。2012年にオーガニックライフ専門の美容PR会社を設立し、以降は、理想に燃えて走り続けてきたように思います。

ところが50歳になって、急に、体と心が動かなくなってしまったんです。眠れないし、起きられないし、肌はやたらと乾燥するし、不正出血は止まらないし。働きたくても働けない、会社の仲間や友人と仲よくしたくても仲よくできない……。肉体と魂のバランスがすべて崩れてしまい、うつ状態になってしまいました。

新井氏

「これはなんだ?」ということで更年期に気付き、それからは、本当にいろいろな治療にトライしました。まずはホルモン値を測る検査をして、漢方を始めて、食事・運動・睡眠といった生活習慣を見直し、瞑想なども行って。それでも改善せず、最終的にナチュラルホルモンを補充する治療法にたどり着き、現在は、以前と変わらないパフォーマンスで仕事ができています。

新井氏グラフ

不調の渦中にいたときはただただつらく感じていたのですが、今振り返ると、更年期は“自分の体と心を改革する時期”だったように思うんですよね。変化に気付き、立ち止まり、改めて自分と向き合って、そしてアップデートする時間。不調を抱える女性社員の気持ちもわかるようになりましたし、女性がより長くいきいきと働けるよう会社の環境や制度を見直すきっかけにもなりました。

更年期というとネガティブなイメージを持つ方も多いと思うのですが、更年期は決してつらいだけではない、意味のあるもの。実際に経験してみて、人生100年時代を健やかに生きるためのライフイベントなのだと思うようになりました。

えっ、職場のあの先輩もこの先輩も生理がないの!? 更年期の衝撃事実

石本:下河辺さんは、お若いときから“ホルモンの影響力”を感じることが多かったとお聞きしています。どのようにホルモンとかかわり、今に至っているのでしょうか?

下河辺:初めてホルモンのすごさを実感したのが、妊娠・出産のとき。若いころからファッション誌で女性の健康に関するページを担当していたため、ホルモンについてある程度の知識を持っているつもりでいたのですが、実際に自分が出産してみて、産んだ途端に涙は出るわ、肌は荒れるわ、太るわ、むくむわで、「ホルモンってとんでもない影響力を持つものなんだな……」と改めて実感してことを覚えています。

下河辺氏

その後、仕事で、ゲイの方々が登場する小説や映画に関わることになったのですが、ここでも、“ホルモンのすごさ”を感じました。徐々にネットワークが広がりLGBTQの方のお話を聞く機会が増えました。なかにはホルモン治療を受けている方がいらっしゃるのですが、私が話を聞いた方は「男性ホルモンを補充しはじめたら、ヒゲが生えるだけでなく性欲も強くなった」「男性が浮気をする気持ちがわかるようになった」など“ホルモンによる体の変化”に心から驚いていらっしゃって。あちらこちらでそのような話を耳にして、「やっぱりホルモンって強烈なんだなあ」と思いました。振り返ると、なんだかずっと、ホルモンのすごさを感じながら生きてきたような気がします(笑)。

そうこうするうちに45歳を過ぎて、急に、自分自身の生理の様子が変わってきたんですよね。突然、すごく長く不正出血が続いたかと思ったら、そのあとは3カ月ぐらい生理がスキップしてしまったり、かと思ったら、またドバッと血が出たり。最初は子宮がんかもしれないということでがん検査をしたのですが、がんではないとわかり、医師から「更年期では」と指摘されました。

下河辺氏グラフ

そのときに知ってびっくりしたのが、「閉経の平均年齢は50歳前後である」(※)という事実。知識としてはうっすら理解していたのですが、自分ゴトとしてとらえたことがなかったため、「えっ!?ウソでしょ!あと2、3年しかないじゃん!!」と驚きました。同時に、「職場のあの先輩もこの先輩も、もう生理ないの!?」「みんな更年期だったってこと!?」と衝撃を受けてしまって。

※参考:更年期に負けたくない!更年期症状に直面する令和のアラフィフ女性たち 


美容・ファッション業界だからというのもあるかもしれませんが、みんな誰にも言わずに人知れず闘い、我慢していたということなんですよね。いつもおしゃれでさっそうとしているけれど、実は更年期による心身の不調を抱えながら、会社ではバリバリ仕事をして、家庭では子育てや介護に向き合っている。これはものすごくしんどいことだと。とても大きな社会課題だと思いました。

幸いにも私には知識やサポートが得られる環境があったので、すぐに友人知人に相談して、更年期の症状がひどくなる前にホルモン補充療法で対策することができたのですが、「知らない」「話せない」状況だと、ただただ我慢をすることになってしまう。だからこそ、正しい情報を発信すること、話せる場を作ることが大事だと思い、ホルモンハグ プロジェクトに賛同しました。

更年期は隠れ社会課題。対処法と、今後の見通しとは?

石本:お話を聞いて、新井さんや下河辺さん、そして先日行われたホルモンハグのメディア向け説明会に登壇してくださった大草さんや瀧渕さんなど、アクティブでキラキラした女性たちが、こんなにも更年期に悩んでいたということを知って衝撃を受けました……。下河辺さんがおっしゃるように、まさに“隠れ社会課題”ですよね。

下河辺:そう思います。昔は働く女性が少なかったから表面化しにくかったけれど、今は管理職になる女性や定年まで働く女性が多い時代です。働く女性が増えたからこそ、仕事と更年期に悩む女性が増え、外に出るからこそ、薄毛など見た目の問題も気にする人が増えるようになったのだと思います。しかも更年期の時期って、ちょうど、子どもの反抗期や親の介護が重なる時期なんですよね。更年期の悩みを抱えながら、子育ても、家事も、介護も、責任ある仕事や昇進もしなければならない。これが大変でないわけがありません。たぶん女性活躍推進法によって仕事における活躍をより強く意識するようになった私たちの世代が、仕事と家庭と更年期に悩みながらキャリアを切り開く、いわゆるパイオニアのような世代なんだと思います。

石本:そう考えるといろいろ重なっているし、ロールモデルはいないしで、すごく過酷ですよね……。こうしたお話をお聞きして、「更年期ってとてもじゃないけど一人で乗り越えられるものじゃないんだな」と。「共存して、抱きしめて、乗りこなすものなんだな」と感じました。乗りこなすためには、どのようなことが必要だと思いますか?

石本氏

下河辺:私は知識があったことで早めに医療につながれて対処できたので、まずはきちんとした知識を持っていただくことが大事だと思っています。あとは我慢しないこと。更年期だと思っていたら、実はがんなど別の病気だったということも少なくありません。「どうせ更年期だから」「我慢すればなんとかなる」と思わず、更年期を治療するためにも、大きな病気を未然に防ぐためにも、おかしいと思ったら、早めに婦人科にかかっていただきたいなと思います。

新井:私は怖がらずにポジティブに受け止めていただきたいなと思っています。つらいことも多いのですが、先ほども申し上げた通り、更年期にはよい変化もたくさんあります。自分の生活を見直し、いらないものを捨て、よりよく人生の後半戦を生きるすべを身に付けるための、人生の更新期のようなものなのかなって。いい気付きがいっぱいあり、悟りが開けます(笑)。

矢幡:あとは話せる環境を作ることも大切ですよね。いまだに「更年期って恥ずかしい」「人に言うもんじゃない」と、一人で抱えていらっしゃる方も多いと思います。そのもやもやした気持ちを誰かと分かち合えば、きっと心が軽くなると思うんです。対処法が見つかることもあるでしょうし、後輩たちに知識や経験を共有することにもつながりますよね。

新井:話しにくい場合は、ズバリ更年期ではなく、デリケートゾーンのケアや腸活の話など、周辺の話題から入るといいかもしれません。相手が男性の場合は男性更年期や、パートナーの不調をとっかかりにしてもよいと思います。

下河辺:それはとてもいいですね。男性更年期への理解が深まれば、自然と女性の更年期のこともわかるようになると思うので。

矢幡:ほかに、セミナーなんかもいいですよね。弊社の場合は、日ごろから、予防医学の観点でいろいろなセミナーを行っているため、更年期のセミナーもすんなりと受け入れられているように感じます。医師など専門家の視点から、ファクトベースで語っていくと、特に男性は抵抗感なく受け入れられるように思います。

石本:私たち「ホルモンハグ プロジェクト」の使命は、更年期をはじめとするホルモンに関する正しい情報を発信し、つながって、共感し、安心できる場を作ること。これからも、矢幡さん、新井さん、下河辺さんをはじめとする多くのインフルエンサーや専門家の方々と、全国に、話せる場を作っていきたいと思っています。

同時に、更年期に関するビジネスも盛り上げていきたいですね。グローバルではいろいろなメノポーズ(更年期)プロダクトが出ているのですが、日本のサービスや商品はまだまだ少ない状態です。あったとしても、点在していると言いますか……。参入企業が、それぞれで活動しており、あまり大きな動きになっていないような気がします。

新井:わかります。更年期って、点で対処しても解決しないんですよね。先述したように、運動をして、食生活を変えて、漢方を飲んで、病院に行って血液検査して、ホルモン療法についても調べたり。ものすごくやることが多くて忙しいんです。

下河辺:確かに。お金も時間もかかるし、知識も必要だしで、すごく複合的な課題解決が必要だと感じます。

矢幡:だからこの領域は、一社でなにかをやる感じじゃないと思うんです。企業の垣根を越えて、力を合わせて、新しいプラットフォームを作り、面で取り組む必要がある。今までのやり方とは違うやり方をする必要があると思っています。

石本:ホルモンハグのハグには、「抱きしめる」以外に、ハブですとか、人をつなぐみたいな意味も込めています。いろいろな人や企業をつないで、課題を解決するビジネスをきちんと作っていきたい。日本におけるメノポーズ・メノテック分野は、今、ブルーオーシャンの状態です。そこでしっかりと存在感を発揮し、女性が長く快適に暮らすための環境を整えていきたいと思っています。

座談会画像
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販売支援向けBPaaS、注目サービス5選…顧客管理・受注処理・営業進捗管理の効率を向上

●この記事のポイント
・販売支援向けBPaaSは、販売業務全体の効率化と高度化を実現す業務支援ソリューション
・必要な機能をオンデマンドで利用可能にするため、コスト面・運用面でのハードルを大幅に下げる
・注目の販売支援BPaaSサービス5選とは

 企業の販売活動は、顧客管理から受注処理、営業進捗管理まで多岐にわたり、効率化が経営課題となっている。そんな中、注目を集めているのが「販売支援向けBPaaS(Business Process as a Service)」だ。クラウド上でビジネスプロセスをサービス化し、販売業務全体の効率化と高度化を実現する最新の業務支援ソリューションである。

●目次

販売支援向けBPaaSの意義

 従来、販売管理システムや営業支援ツールは自社内でのシステム構築や複雑なカスタマイズが必要で、初期コストや運用負荷が大きかった。しかしBPaaSは、クラウド環境に業務プロセスを組み込み、必要な機能をオンデマンドで利用可能にするため、コスト面・運用面でのハードルを大幅に下げることができる。さらにリアルタイムの情報共有や営業活動の可視化により、営業組織の意思決定スピードを加速させる点も大きなメリットだ。

注目の販売支援BPaaSサービス5選

 ここからは、国内で利用可能な注目すべき販売支援BPaaSサービスを紹介する。

1.Salesforce
業界最大手のCRM/SFAプラットフォーム。顧客管理から商談追跡、営業予測まで豊富な機能を持ち、あらゆる業種・規模に対応。多数の連携アプリも魅力。

2.Microsoft Dynamics 365 Sales
Office製品との連携が強力なクラウド営業支援。見積作成や顧客分析に優れ、Microsoft 365ユーザーにとって導入のハードルが低い点でも人気。

3.SAP Sales Cloud
大企業向けの販売支援に特化。複雑な販売チャネル管理や販売計画、インセンティブ計算まで包括的にサポートする。

4.Kintone
ノーコードで営業管理アプリをカスタマイズできるプラットフォーム。業務に合わせた柔軟な運用が可能で、現場での使い勝手の良さに定評がある。

5.Sansan
名刺管理を基盤とした営業支援サービス。営業ネットワークの可視化と情報共有を促進し、新規開拓や顧客フォローの効率を高める。

販売支援向けBPaaS導入時の留意点

 販売支援向けBPaaSの導入は、営業担当者の業務負担が軽減されるだけでなく、営業活動の質が向上し、売上拡大にも貢献する。特にコロナ禍でリモートワークが増えた中、クラウドベースのBPaaSはどこからでもアクセスできる点で利便性が高い。今後もAIやデータ分析を活用した高度な営業支援機能の追加が期待され、販売現場のデジタル化はさらに加速すると見られる。

 しかし、導入に失敗したケースや予期しづらい運用課題も散見される。例えば、多機能なサービスでも標準仕様が自社に合わない場合、運用面での負担や効率低下を招く恐れがある。また、クラウドサービスを活用する以上、顧客情報や営業データのセキュリティ体制を厳しくチェックし、情報漏洩リスクを最小限に抑えることが不可欠だ。さらには、営業現場の担当者が新たなシステムをスムーズに使いこなせるよう、操作教育や運用ルールの整備、定期的なフォローアップも重要となる。

 コスト面でも、BPaaSは初期投資を抑えられる一方、月額料金制やユーザー数による従量課金体系が多く、長期的な活用や機能拡充でコストが増加する懸念がある。導入から運用までの総コストを長期視点で試算し、費用対効果(ROI)をしっかりと把握することが肝心だ。

 留意点を踏まえた上で、戦略的にBPaaSを選定・導入すれば営業の効率化と売上拡大を実現できる。販売支援向けBPaaSは、単なるITツールの提供に留まらず、営業戦略や組織運営の改革を後押しする重要な武器だ。これからの競争激化の時代、企業の販売力強化に欠かせないソリューションとして一層注目を集めることになるだろう。

(文=齋藤めぐみ/有限会社リーゼント、ライター)

楽天銀、AIを融資審査に試験導入=音声相談システムも開発―東林社長インタビュー

 楽天銀行の東林知隆社長がインタビューに応じ、住宅ローンや不動産担保ローンの融資審査に人工知能(AI)を試験導入する考えを表明した。AIの可能性について、「期待している。いかに早く成長させて活用するかが勝負だ」と強調。顧客の相談にAIが音声で応じる仕組みの開発にも意欲を示した。

 AI審査は既にカードローンの融資の一部で試験導入しており、対象を拡大する。AIによる音声相談システムは試作中。銀行によるAI利用の規制はまだ不明確だが、実用化すれば金融商品や資産運用の提案などで「能動的な対話ができる」と説明した。店舗を持たないインターネット専業銀行の「弱点が解消される」とも指摘した。 

 楽天銀は、通販サイトを中心とする楽天グループの会員を取り込めるのが強み。会員の取引データを基にAIで顧客ごとに最適な商品・サービスを紹介するネット広告事業も手掛けており、「今後かなり伸ばせる」と意気込んだ。

「金利のある世界」の到来で預金獲得競争が激化し、大手銀各行も個人向けデジタル金融サービスを強化している。東林氏は「『楽天経済圏』の商流に絡んだ銀行取引をもっと掘り起こす余地がある」と述べ、グループ内の連携を深めてポイント優遇などで対抗する方針を示した。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/08/14-00:06)

能登の未来へ走れ――「のと鉄道の旅」をCMに。 広告小学校、被災地・穴水町で特別授業

CMづくりを通して次世代のコミュニケーション力の育成を目指す電通の社会貢献活動「広告小学校」が、能登半島地震からの復興に歩みを進める石川県・穴水(あなみず)町で、特別授業を実施した。

このプログラムは、子どもたちがCMづくりのプロセスを実際に体験しながら、伝える力や表現力、チームでの創造力を育むことを目的としたもので、2006年からこれまでに全国約530校、延べ6万7000人以上が体験してきた。今回の授業には、2024年元日に発生した能登半島地震で大きな被害を受けた地域にある、穴水中学校の2年生39人が参加。復興への願いを胸に、「のと鉄道の旅」をテーマにしたCMづくりに挑戦した。

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特別授業は6月30日(月)のリモート授業からスタート。電通1CRプランニング局 木村亜希氏が講師となり、「つたえる=つたわる、にするために、大事なこと」をテーマに、CMづくりに必要な視点や考え方について授業をした。その後の7月4日(金)、生徒たちは実際にのと鉄道に乗車し、沿線の魅力を取材。7月11日(金)、穴水中学校で「広告小学校」の特別授業が行われた。

当日は、木村亜希氏や電通2CRプランニング局の田中元氏をはじめとする講師陣が授業アドバイザーとして参加。多様な視点からアイデアを導き出す方法や、映像で人の心を動かすヒントを生徒たちに伝授した。

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講師を務めた木村氏は「決まった答えのないCMづくりに、生徒たちは最初こそ戸惑いながらも、自由に発想する楽しさに目覚めていくようでした」と語る。多様な意見を取り入れながら新しい価値を生み出し、拡散させた思考を収束させていく過程では、広告の現場でプロが使う「考え方の考え方」も自然と身につく授業となった。

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10のグループに分かれた生徒たちは、最後に30秒のCM劇という形で「のと鉄道の旅」の魅力を発表。自然や車窓風景はもちろん、人とのふれあいやのと鉄道が取り組んでいるさまざまな仕掛けなど、それぞれが選んだテーマを個性豊かに表現し、見る人の心を引きつける作品が次々と披露された。

特別授業に全面協力している、のと鉄道の宮上哲夫氏は「被災してもなお、ふるさとには数えきれないほどの魅力があることへの気づきや、その魅力を伝えようとするみずみずしい感性を引き出してくださり、生徒自らの手で能登の未来に希望を生み出していく、大きな一歩になったと思います」と振り返った。

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今後、生徒たちはさらにコンセプトやストーリーを練り上げ、のと鉄道の全面協力のもと停車中の車両や駅ホーム、学校などでの本格的な撮影。完成した30秒のムービーは、来年、東京にある石川県のアンテナショップ「八重洲いしかわテラス」で放映される予定。

目指すのは、単なる紹介映像ではなく、「のと鉄道に乗ってみたい」「能登を訪れてみたい」と見る人の心を動かす30秒CM映像。中学2年生たちの挑戦は、復興の歩みと重なりながら続いていく。

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また、「広告小学校」のノウハウをもとにした授業プログラム「みんハピ」が新たに開発され、その体験会を8月25日(月)に開催する。現在、参加者を募集している。

※「みんハピ」体験会の概要・申し込みはこちら(定員に達し次第締め切り)
https://forms.cloud.microsoft/r/MKx2sn97f2