三菱商事の洋上風力撤退を検証=再公募へ制度見直し―政府

 政府は11日、三菱商事と中部電力子会社などの企業連合が秋田、千葉両県沖の3海域で進めていた洋上風力発電事業から撤退した要因の検証作業を始めた。検証結果を踏まえて公募制度を見直し、早期の再公募に向けて年内をめどに方向性をまとめる。
 三菱商事は撤退理由として、資材価格の高騰などで建設費が当初の想定から2倍以上に膨らんだことを挙げた。このため、政府は経済産業、国土交通両省の有識者会議で、事業者がプロジェクトを継続しやすいようにコスト負担を軽減する制度を議論する方針。落札事業者を決める評価手法の見直しも検討する。
 11日の会議で、ある有識者は撤退について「非常に残念で、社会的なインパクトも大きい」と批判。再公募で選ばれた事業者が早期に着工できるように、撤退した事業者が集めた地質や地形のデータ提供を求めるべきだとの声も上がった。 
 三菱商事連合は、国が2020~21年に公募した大規模な洋上風力の落札第1号事業者。3海域で合計約170万キロワットの出力を持つ洋上風力発電所を建設し、28年から順次運転を開始する予定だったが、今年8月に撤退を決めた。

(記事提供元=時事通信社)
(2025/09/11-20:19)

長い資料が一瞬で数分の動画に…NotebookLMの新機能で情報共有が変わる!

 

●この記事のポイント
・GoogleのNotebookLMに日本語対応の新機能「Video Overviews」が登場し、長文資料を数分の解説動画に自動変換できるようになった。
・実際に試すと「つかみ」から入る自然な構成や聞きやすいナレーションが特徴で、外注並みの質を短時間で実現できた。
・教育やビジネス、行政など幅広い分野で活用が期待され、情報の伝え方を根本から変える可能性を持つと専門家は語る。

 2025年、GoogleのAIノートアプリ「NotebookLM」に日本語版の新機能「Video Overviews(ビデオ・オーバービューズ)」が追加され、注目を浴びている。

 膨大なレポートや複雑な資料を数分の動画にまとめ、日本語のナレーション付きで解説してくれる。まるで経験豊富なプレゼンターが資料を紹介してくれるような体験が、ワンクリックで実現するのだ。

 今回は、システムエンジニアの伊藤朝輝氏に、この新機能を実際に試した感想や活用の可能性について話を聞いた。

●目次

NotebookLMとは何か

 まずNotebookLMについて整理しておきたい。

 NotebookLMはGoogleが提供するAIベースのノートアプリである。ユーザーがPDFやドキュメントをアップロードすると、その内容をAIが理解・整理し、要約や質問応答、洞察の提示といったサポートを行う。

「AIを自分専用のリサーチアシスタントとして使う」イメージに近い。従来のAIチャットと異なり、アップロードした資料に特化して答えてくれる点が特徴だ。

 今回、そのNotebookLMに加わったのが「Video Overviews」である。

「Video Overviews」でできること

 伊藤氏はこの機能を次のように説明する。

「NotebookLMにアップロードした資料をもとに、AIが自動で解説動画を作ってくれます。単なる要約ではなく、スライドを整理し、日本語ナレーションを加えて、見て理解できる形式に変換してくれるんです」

 長いレポートを「読む」のではなく「見る・聞く」で理解できるのが大きな利点といえる。

 また動画だけでなく、音声解説やマインドマップといったアウトプットも選択可能だ。読む・聴く・全体構造で把握する――複数のアプローチを使い分けられる点で、従来のAI要約よりも応用範囲が広がっている。

実際に使ってみたらどうだったのか

 伊藤氏は厚生労働省の約40ページにおよぶPDFをアップロードし、Video Overviewsを試した。結果は以下のとおりだ。

 ・生成時間:約10分
 ・出力された動画:約8分

「驚いたのは、資料をただ順番にスライド化するのではなく、冒頭で“つかみ”を入れてから、重点部分を掘り下げていたことです。まるで人間が“ここを押さえておけば大丈夫”と意識して構成したような自然な流れでした」

 特筆すべきはナレーションである。

「単調さがなく、抑揚や間の取り方が自然で、まるで経験豊富なプレゼンターがフランクに話しかけてくる印象でした。一般的な解説用途なら、この親しみやすさはむしろプラスだと思います」

 外注でナレーションを依頼するとコストも時間もかかるが、AIが即座に提供できる点は大きな進化といえる。

解説動画のニーズと具体的な活用シーン

 この機能はどのような場面で役立つのか。伊藤氏は大きく3つの分野を挙げる。

1. 教育分野
講義ノートを解説動画にして、学生が授業前に予習できる。授業の効率化や学習の理解促進につながる。

2. ビジネス分野
会議資料や調査レポートを短い動画にまとめ、チームで共有する。会議時間の短縮や意思決定のスピードアップが期待できる。

3. 行政・医療分野
膨大なガイドラインや健康指針を市民に分かりやすく伝える。文字情報だけでは理解しづらい内容を「見て聞ける」形式に変換できる。

多様なアウトプット形式がもたらす利便性

 動画だけでなく、音声解説やマインドマップも生成できる点も評価が高い。

「同じ資料から、映像で直感的に理解する、音声で移動中に聴く、マインドマップで全体を俯瞰する、といった使い分けが可能です。これまで外注しなければ難しかった多様な表現形式を、社内で即座に内製できるのは大きな変化です」

 特にマインドマップは、レポート全体の構造をひと目で把握できるため、概要確認やプレゼン準備での論点整理に役立つ。

ビジネスパーソンにとってのメリット

 ビジネスの現場において「スピードとコスト」は常に課題である。Video Overviewsはその両方を解決する可能性を秘めている。

 ・時間短縮:数週間かけて外注していた動画コンテンツが、その日のうちに完成
 ・コスト削減:ナレーションや動画編集を外部に依頼する必要が減少
 ・知識共有の多様化:動画・音声・マインドマップという複数の入口を用意

 情報をより多くの人に、より早く、よりわかりやすく届けられるようになる。

今後の進化に期待されるポイント

 現状でも十分に実用的だが、伊藤氏はさらなる進化の余地があると指摘する。

 ・ナレーションのトーン(フォーマル/カジュアル)の選択
 ・スライドデザインのバリエーション拡充
 ・重点的に解説してほしい部分を柔軟に指定できる機能の強化

 これらが実装されれば、教育・ビジネス・公共の場での活用範囲はさらに広がるだろう。

 NotebookLMの「Video Overviews」は、単なるAI要約の枠を超え、情報を「どう伝えるか」という次元に踏み込んだ機能だ。

 伊藤氏は次のように結ぶ。

「外注で数週間かかっていた解説コンテンツを、社内でその日のうちに動画・音声・マインドマップといった形で生成できる。これは新しい知識共有ツールと言えるでしょう。教育からビジネス、行政まで、情報の伝え方を根本から変えるポテンシャルを感じます」

 忙しいビジネスパーソンにとって、長文資料を読む時間を削減し、理解を加速させる「解説動画生成AI」。その存在感は今後ますます大きくなっていくはずだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=伊藤朝輝/システムエンジニア、ライター)

AIとともに、あるかもしれない未来を旅行する。「ITOCHU SDGs STUDIO」企画展で見えた、テクノロジーとの向き合い方

日々進化し続けるCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)領域に対し、電通のクリエイティブはどのように貢献できるのか?電通のCX専門部署「CXCC」(カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター)メンバーが情報発信する連載が「月刊CX」です(月刊CXに関してはコチラ)。

今回は、伊藤忠商事が運営する「ITOCHU SDGs STUDIO」の展示において、電通CXCCが2024年に関わった2つの事例、企画展「きみとAIの!?(ワンダー)な未来旅行展」と、常設展「地球のあした観測所」についてご紹介します。

特に企画展の事例においてはAIを積極的に活用し、密度の濃いコンテンツをスピーディに仕上げられたのが特徴でした。企画に関わったクリエイティブディレクター/クリエイティブテクノロジストの大瀧篤氏と、クリエイティブディレクターの小池宏史氏にAIを活用したCXづくりについて話を聞きました。

大瀧氏、小池氏
(左から)【大瀧篤氏プロフィール】
電通
zero/Dentsu Lab Tokyo
クリエイティブディレクター/クリエイティブテクノロジスト 
大学・大学院でのAI研究と惑星探査車開発を経て電通入社。現在は、リアル体験×テクノロジーのクリエイティブを武器に、企業・国家事業のソリューションやR&Dプロジェクトに関わる。PARCOグランバザール2024「MATSUKEN PARADE!!」/ 2025「西川貴教/来れそうかい?」、セイコーグループ2024 SEIKO HOUSE GINZA「時の龍」ショーウインドー/ARショー演出など。世界ゆるスポーツ協会 理事/スポーツクリエイターとして「トントンボイス相撲」など多数の新スポーツを企画開発。Cannes Lions、ONE SHOW、CLIOをはじめ、ACC賞、文化庁メディア芸術祭など国内外で100以上の受賞。著書に「クリ活2 クリエイターの就活本:デジタルクリエイティブ編」。

【小池宏史氏プロフィール】
電通
カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター/Dentsu Lab Tokyo
クリエイティブディレクター/プランナー
デジタル〜リアルのメディアやデバイスにおいてプランニングとクリエイティブディレクションを統括。マス広告やサービス・プロダクト開発から、TV番組、映画・演劇演出、展覧会・デジタルインスタレーション、タレントプロデュース、ゲーム開発等のエンターテインメント領域まで、幅広くコミュニケーションに関わる体験設計に携わる。Cannes Lions、D&AD、THE ONE SHOW、ADFEST、グッドデザイン賞、新聞広告賞、文化庁メディア芸術祭、等での受賞歴あり。

「ITOCHU SDGs STUDIO」で行った2つの展示

月刊CX:まずは、今回の企画についてそれぞれ簡単に説明をお願いします。

大瀧:伊藤忠商事がSDGsに関する情報を発信する施設「ITOCHU SDGs STUDIO」のリニューアルにあたって、企画展「きみとAIの!?(ワンダー)な未来旅行展」と、常設展「地球のあした観測所」の2つの展示を同時に担当させていただきました。

「きみとAIの!?(ワンダー)な未来旅行展」は、2024年7月18日から9月23日の2カ月間開催しました。

きみとAIの!?(ワンダー)な未来旅行展

これは“AIが考えた「あるかもしれない未来」への旅を通じて本物の未来に思いを馳せる”をコンセプトに、移動や食、住環境、自然などの6テーマを取り上げ、SDGs達成のためにどのようなアクションが必要かを伝える展示でした。

本企画は、未来を描いた展示映像やビジュアル、VRコンテンツなどのアウトプットのほぼ全てをAIを用いて制作しているのが特徴です。企画のコンセプトや展示会のステートメント、全体のトンマナを決めるロゴや空間の造作など、大きなディレクションに関わる部分については、もちろん私たち人間が行いつつ、各コーナーの制作物はAIを用いて各担当のクリエイティブテクノロジストたちと練り上げていきました。

月刊CX:具体的にはどのようなものを制作されたのですか?

大瀧:一例を挙げると、AIが予測した未来の動物の姿を伝える「未来に出会う!?サファリ&サブマリンツアー」というブースでは、多様な進化をとげた生き物のひとつとして「熱反射ライオン」という生き物を展示しました。

熱反射ライオン

AIが導きだした「地球温暖化が進む未来では、体内の熱を逃がしやすいように耳が大きくなっているのではないか」という仮説を基に、テキストや音声、グラフィックもすべてAIで生成しました。

展示例
その他のブースでも展示物はすべてAIで制作

月刊CX:「地球のあした観測所」についても教えてください。

地球のあした観測所

大瀧:「地球のあした観測所」は、伊藤忠商事の各カンパニーの事業とSDGsのさまざまな取り組みを紹介する常設展です。パネルや映像などをただ見るだけの展示ではなく、大型のデジタル地球儀「SPHERE(スフィア)」やApple Vision Proを活用した体験型の展示方法を採用し、各カンパニーの事業内容をわかりやすく、少しでもインタラクティブに伝えることをチームで心がけました。

展示例

「きみとAIの!?(ワンダー)な未来旅行展」のテーマがはるか先の未来であるのに対し、こちらの展示では伊藤忠商事の現在の取り組みをテーマにしています。いま私たちが行っている毎日の活動は、いい明日を作るためにしているものであるはず。そうした意味合いを込めて“あした”というネーミングにし、最新の技術を使って伊藤忠商事の活動やチャレンジを伝えることを意識しました。

地球のあした観測所 再生リスト
地球のあした観測所 再生リスト
※画像をクリックすると、動画を見られます

答えを提示するのではなく、考えるきっかけを与える展示に

月刊CX:「きみとAIの!?(ワンダー)な未来旅行展」は、旅行というテーマも今回の企画にフィットしているように思います。

大瀧:今回は常設展のリニューアルと同タイミングでの実施ということもあり、過去の企画展以上にSDGsを網羅的に扱うことが命題にありました。

地球や社会のために大切だと頭でわかっていることを、正面から正しく言われるだけでは、ココロもカラダも動かないのが人間ですよね。人としてあたり前に存在する欲望や感覚にうったえるものをベースにした方が、行動に移しやすくなりますし、結果的にSDGsにつながります。

その上で、移動や食事など自分ごと化できる身近な問題がすべて集約されているのが“旅行”という体験だと考えました。地球の未来は僕たちの生活の延長線上です。「楽しむ中で自然とSDGsに触れられるといいよね」ということで、旅行というフレームを選びました。

展示の入り口に設置された出発ゲートの横に掲げられていたコピー
展示の入り口に設置された出発ゲートの横に掲げられていたコピー

誰しも旅行に出かけたときは心がワクワクすると思うんです。今回の企画はそうした心が動く瞬間を大事にして制作しました。制作全体の思想として、答えを提示するのではなく考えるきっかけをつくることを意識しています。

「未来はこんなふうに良くなるかもしれないし、もしくはちゃんと取り組まないとこんなふうになってしまうかもしれない」とメッセージを投げかけつつ、楽しみながらSDGsを学べるように「未来旅行」というテーマでアプローチしました。

小池:展示をめぐってパスポートにスタンプを押していく体験設計も功を奏したように思います。それぞれの展示を見ていくことで疑似的に旅行を体験したことになり、全体をつなぐ世界観を具現化するアイテムになっていました。パスポートが一気に体験の質を深めてくれましたし、とても良いアイデアだったと思います。

パスポート
月刊CX:それぞれ、来場者の反響はいかがでしたか?

大瀧:どちらの企画も、とても楽しんでいただいていました。親子だったり、友人グループだったり、カップルだったりと、多様な方々が来場されていたのも印象的で。「きみとAIの!?(ワンダー)な未来旅行展」では、展示を見ながら同行者と「未来はもしかしたらこうなるかも」と話している方も見かけて、私たちが提示した「!?」という問いに向き合っていただけているのだと感じて、とてもうれしかったですね。

小池:「地球のあした観測所」では、最先端の空間コンピューターであるApple Vision Proを導入したことで、最新ガジェットをワクワクしながら試しているお客さまもいました。

展示風景
大瀧:「SDGsについて考えよう」とストレートに言われるとハードルが高いですが、エンタメとして自分ごとにできるCXづくりができたと思います。伊藤忠商事の担当者の方々にも非常に喜んでいただけました。

AIは人間と手をつないで共により良い未来を作っていく存在

月刊CX:「きみとAIの!?(ワンダー)な未来旅行展」は、一気通貫のAI活用がとてもユニークですね。そもそもAIを活用しようとしたきっかけはなんだったのでしょう?

大瀧:AIを活用するアイデアは、こちらから伊藤忠商事のSDGsスタジオチームに提案しました。小池さんとChatGPTや生成AIを使ったアウトプットのプロジェクトを探していく中で、今回の企画はAIとかなり相性がいいと感じたのです。

AIは人間と比べると、主観というものがなく、世界中の膨大なデータから解を導き出すことができる、フラットな存在だと思います。誰かひとりの思想ではなく、世の中のことを中立的な視点で考える必要があるSDGsというテーマにおいては、AIが真価を発揮するのではないかと。世の中にあるファクトや論文をベースにAIとともに考えることで、フラットかつ人間が議論したくなるような余白あるメッセージを構築できました。

小池:企画が立ち上がった当時は、AIを使ったコンテンツが世の中に広まり始めたタイミングで。その当時から「AIは敵なのか、味方なのか」という論争が巻き起こっていて、人間と相対する存在としてAIを置く見方も多く目にしていました。

そういう背景もあり、今回の展示では“AIは人間と手をつないで、共により良い未来を作っていく存在”だと感じてもらいたい思いもありました。制作にAIを使うことで、私たちも「AIでここまでできるんだ」と驚かされましたね。

月刊CX:AIを活用していく上で、苦労した点があれば教えてください。

大瀧:AIによるハルシネーション(AIが事実とは異なる情報を生成する現象)のケアは、非常に苦労しましたね。若手のメンバーと一丸となって、論文や研究データを確認してファクトチェックを入念に行いました。

また、生成された画像についても「現実と違う」「崩れている」といった点はもちろんチェックしていました。たとえば未来の国のパンフレットを作るときには「この国には環境条件からこの動物はいないはず」など、細かく確認しましたね。通常のプロジェクトは制作に時間を要しますが、今回は作った後のコンテンツチェックに時間をかけました。

ちなみに、データは伊藤忠商事の担当者の方々ともシェアし、共に多角的にチェックしていただきました。生成AIは多くの可能性を秘めている半面リスクも伴うため、制作過程からクライアントの皆さんと擦り合わせながらプロジェクトを進行することが非常に大切です。

未来ツアーガイド

小池:ファクトチェックに苦労した半面、AIで制作をする恩恵は非常に大きかったです。今まではSDGsの中のひとつをテーマにした展示が多かったのですが、今回は「SDGsの17テーマをすべて盛り込みたい」との要望を受けていました。

人力の進め方では実現できない工数とスケジュールでしたが、AIによって作業スピードが上がり、クオリティも担保しながら、結果すべてのテーマを盛り込めたのです。

常日頃からアイデアを考え、新技術で誰よりも早く形にできる準備をしておくことが肝心

月刊CX:今回の企画を振り返っての感想を教えてください。

大瀧:今回の企画でさまざまな研究や課題に触れ、世界を良くするための技術や研究がこれほど多くあると知り、未来に希望が持てるなと非常にワクワクしました。多くの人にこのことを知ってほしいですし、テクノロジーとクリエイティブをかけ合わせた社会実装を推進している身としては、大きなポテンシャルを感じましたね。また、AIへのディレクションや多角的なファクトチェックを通して、自然と私たち自身もアップデートされていくというのは面白い発見でした。

月刊CX:両事例はAIと最新技術の活用が印象的だったと思います。最後に、今回の体験を踏まえて今後のクリエイティブに生かしたいことがあれば教えてください。

大瀧:今回の企画はAI時代の新しいものづくりのプロトタイプができたことが、非常に大きかったように思います。生成AIの知見もチーム全体で蓄積できました。

また、すぐに実現が難しいアイデアでも、AIのテクノロジーが追いついてきて、ある日急に実現できるようになる可能性もあるのだと気がつきました。実際に、今回の企画を進める中でAIの進化を感じる場面が多くて。「クオリティ的に限界だろうし、方向転換をせざるを得ないか……」と悩んでいた翌日に新サービスが出たり、アップデートされたりして課題がふと解決されたことがあったのです。

クリエイティブジャンプを実現するためには、日頃からアイデアをためておいて、AIが進化した瞬間に誰よりも早く形にできる準備をしておくことが重要だと思いました。今後も、さまざまなところにアンテナを張って、最速でプロトタイピングしていきたいです。

小池:テクノロジー界隈やサイエンス界隈がポジティブになっているなと肌で感じましたし、今回はそのムードを反映できた展示だったように思います。

80年代や90年代の高度経済成長時代には、科学至上主義が過剰に進み、その副作用として環境問題や社会課題を生んでしまった側面があります。その後、持続可能性や倫理面での課題に直面し、技術革新が停滞しがちだった時期もありました。2024年は、そうした行き詰まり感に直面していたテクノロジーの状況が、AIの登場によって再び可能性の扉を開いた年だったのではないかと感じます。

AIに関わって未来のものづくりのエッセンスに触れる中で、そういった扉が開き続ける面白さや期待を実感しました。環境負荷を抑えつつ人々の創造性を広げ、社会課題の解決にもつながるような取り組みが加速していく未来。今後の制作でも、そうした視点を忘れないようにしていければと思います。


〈電通メンバークレジット〉
Executive Creative Director:小池 宏史 
Creative Director / Creative Technologist:大瀧 篤
Creative Director:尾崎 賢司 
Copywriter:伊藤 みゆき、高階 壮秀
Art Director:各務 将成 
Creative Technologist:若園 祐作、藤 大夢、斧 涼之介、厚木 麻耶、戸松 嶺太郎 、横山 魁
Business Producer:内山 瑞貴、白石 一将

(編集後記)

今回は伊藤忠商事が運営する「ITOCHU SDGs STUDIO」の2つの展示企画について話を聞きました。

AIの活用が印象的でしたが、AIは人間と対置されるのではなく、良きパートナーであり、未来のものづくりには欠かせない存在であるように感じました。

今後こういう事例やテーマを取り上げてほしいなどのご要望がありましたら、下記お問い合わせページから月刊CX編集部にメッセージをお送りください。ご愛読いつもありがとうございます。

月刊CXロゴ
月刊CX編集部
電通CXCC 木幡 小池 大谷 奥村 古杉 イー 齋藤 小田 高草木 金坂
 
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ローカルタクシー会社が売上1.5倍の急成長…木更津タクシーDX改革の全貌

●この記事のポイント
・木更津タクシーはAIやクラウドを導入し、売上1.5倍・稼働率70%を達成。DX化で地方タクシーの常識を覆した。
・配車効率やバックオフィス業務をデータで可視化し、従業員の意識改革と働き方改善を同時に推進した。
・他業種の知見を取り入れ、現場と共有する仕組みを重視。DXを単なる効率化で終わらせず事業成長に結びつけた。

 千葉県木更津市に拠点を構える木更津タクシー株式会社。かつては「紙の日報と勘頼みの配車」が当たり前の、典型的なローカルタクシー会社だった。だが、ここ数年で同社はAIやクラウドを積極的に導入し、売上は前年比1.5倍、月によっては1.8倍という驚異的な伸びを実現。稼働率も業界水準を大きく上回る70%に到達した。

 同社の変革を主導したのは、所長の永野陽子氏を中心とした管理職(経営陣)と、親会社である小湊鐵道だ。タクシー業界では難しいとされてきたDXを、なぜ短期間で実現できたのか。その過程には、他業種の常識を取り入れ、現場と経営を巻き込みながら進めた数々の工夫があった。

●目次

紙と勘に頼る経営の限界から効率化へ

 木更津タクシーが直面していた課題は多岐にわたる。

 ・手書きの日報を事務員が手作業で集計し、請求書を発行
 ・営業(配車)は乗務員の勘と経験に依存
 ・コロナ禍で利用客が減少し、乗務員も「稼げない」と諦めムード
 ・採用は経験者頼みで、新しい血が入らず組織が硬直化

 小湊鐵道の広報担当者は「タクシー業界は“隠すのが正義”という雰囲気すらあった。情報がブラックボックス化し、効率化が進まない状況だった」と振り返る。

 このままでは会社が立ち行かないーー。そうした危機感が、DX推進の原動力になった。

 最初に手をつけたのは、バックオフィス業務のデジタル化だ。

 ・「タクコン」システムを導入し、日報や収支を自動集計
 ・デジタルタコグラフ付きメーターを全車両に搭載し、拘束時間や走行状況をクラウドで可視化

 これにより、運行管理者は「紙の日報と格闘していた毎日」から解放された。永野氏は「以前は一日がかりだった集計が、今では1時間以内に終わる。その分、新しい施策の検討に時間を使えるようになった」と語る。

 単なる効率化にとどまらず、“可視化”が現場の意識を変えた。拘束時間や走行距離をリアルタイムで把握できることで、経営側は安全管理を徹底でき、乗務員は「自分の働き方を数字で確認する」ようになったのだ。

 次に着手したのが、配車の効率化だった。

 従来は「駅に戻る」「経験則で待機場所を選ぶ」といった属人的な判断が中心だったが、デジタルメーターから得られる走行データを活用し、「どのエリアで需要が高まっているか」を地図で可視化。これを社内で掲示し、誰でも確認できるようにした。

 その結果、乗務員は「駅に戻る前に需要エリアを回る」といった判断を自発的に行うようになり、空車で戻る“空車率(風車率)”が大幅に低下。会社の燃料コストも抑えられ、売上も改善した。

 永野氏は「重要なのは“データを現場に隠さず見せる”こと。アプリやメーターの数字を公表することで、乗務員が自分で考えて動くようになった」と強調する。

アプリ導入で新しい顧客層を獲得

 木更津タクシーは積極的に配車アプリも導入している。現在は「GO」「Uber Taxi」「S.RIDE」の3種類のアプリを併用。Uberは千葉県内での展開が限定的だったが、同社が営業を働きかけ、市原市から木更津まで利用可能エリアを拡大させた。

 アプリ経由の依頼は単価も高く、顧客層も広がった。顧客からの電話予約はコロナ禍直後には1日10件程度に減っていたが、現在は80件にまで回復。さらに、ミニバンのセレナを導入し「大人数や荷物の多い移動に対応する」という差別化も進めている。

 DX化は「働き方改革」とも連動している。

 ・休日を業界平均の80日から110日に拡大
 ・勤務サイクルを「4勤1休」から「2勤1休」に変更
 ・労働時間も「9(8)時間拘束・8(7)時間労働」を徹底

「楽に働けて収入も上がる」という環境を整えた結果、若い人材が応募しやすくなり、ベテランも「新人ができるなら俺もできる」と前向きにシステムを使いこなすようになった。

 このように、DXと人材戦略を一体で進めたことが成功の要因のひとつだ。

DX成功の背景にあった「他業種視点」

 DX導入の成果は明確な数字で表れている。

 売上:前年比1.5倍(単月では1.8倍も)
 稼働率:65〜70%(業界水準を大きく上回る)
 実車率:20〜30% → 40〜45%へ改善
 顧客からの予約件数:1日10件 → 80件へ増加
 運行管理者の事務作業時間:1日 → 1時間以内に短縮

 単なる効率化にとどまらず、「収益性・働きやすさ・顧客満足度」の三方よしを実現している。

 タクシー業界はDX化が遅れているといわれる。しかし、木更津タクシーには他業種の視点を持つ人材がいた。

 ・永野氏は観光業や東京の大手タクシー会社の経験者
 ・経営陣の一部は美容・宿泊(医療)など全く別業界の出身

「都内のタクシーは地方より3〜10年進んでいる。その仕組みを見て、地方に導入できる部分を探した」と永野氏は言う。外部の成功事例を柔軟に取り入れ、現場に合わせてローカライズしたことが、スピーディーな成果につながった。

今後の展望:24時間営業と新システム

 DX化によって車両の稼働率が向上した結果、新たな課題も浮かび上がっている。

 ・LPガススタンドの営業時間問題:従来の燃料では夜間稼働が難しい
 ・24時間営業体制の構築:顧客ニーズはあるが、インフラ課題が残る

 今後はガソリン車やEVへのシフト、アプリ連携のさらなる強化、さらには「乗務員が車内で需要予測データをリアルタイムに確認できる仕組み」の導入も検討しているという。

 小湊鐡道の広報担当者は「タクシー業界は縮小傾向にあるが、木更津にはマーケットがある。だからこそ逆行して、24時間動かすモデルを実現したい」と意欲を示す。

 木更津タクシーの事例から、他業種の経営者も学べるポイントは多い。

(1)データは現場と共有する
DXの目的は管理者の効率化だけではない。現場に「数字を見せる」ことで、従業員が自発的に動く文化を生み出す。

(2)働き方改革とセットで進める
休みを増やし、勤務時間を短縮したことで、採用力が高まり、現場も前向きに変革に取り組んだ。DXは制度改革と一体で進めるべき。

(3)外の知恵を取り入れる
他業種や先進地域の仕組みを見に行き、取り入れる勇気を持つ。業界の常識に囚われない視点が、変革の突破口となる。

 木更津タクシーのDXは、単なるデジタル化ではなく、「人と組織の意識改革」を伴う全社的な変革だった。その成果は、売上や稼働率といった数字の改善にとどまらず、社員が「もっと働きたい」と思える職場環境を生み出した点にある。

 データと現場をつなぐ仕組みを整えれば、伝統産業でも驚くほどの成長を遂げられる。木更津タクシーの挑戦は、その強力な証明といえるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

人事データは「バラバラ」でいい?急成長HRテック市場で200億円を目指す統合型システム

●この記事のポイント
・jinjerは元Zendesk社長の冨永健氏を新CEOに迎え、経営陣を刷新。「第二創業期」として新ビジョンを発表した。
・HRテック市場の急成長を背景に、人事データの分散課題を解決する統合型システム「ジンジャー」で市場拡大を狙う。
・AIエンジニア増員や生成AI・AIエージェント活用により、人事業務を自動化・高度化し、No.1統合型人事システムを目指す。

 クラウド型人事労務システム「ジンジャー」を提供するjinjer(東京都新宿区)の新しいCEOに5月1日、元Zendesk社長の冨永健氏が就任した。これに伴い、CFO、CCOなどの経営陣も刷新され、新たな体制で事業を推進していくことになった。同社ではこの新体制への移行を「第二創業期」と位置づけ、今後の事業展開を発表する記者会見を行った。

 登壇した冨永CEOはまず、新しく策定したビジョンとミッションを紹介。ビジョンは「『ひと』の可能性のすべてが見える世界へ」、ミッションは「人事の『これからの当たり前』をつくり、お客様とともに進化する」となっている。同社が提供する価値や社会における役割を、社内外に向けて一貫したメッセージとして発信していくことを目指している。

●目次

「ジンジャー」でバラバラの人事データを解決

 日本のHRテック市場は現在、約1800億円(出所:デロイトトーマツミック経済研究所)と言われている。HRテックには採用管理クラウド、人事・配置クラウド、労務管理クラウド、育成・定着クラウドなどが含まれる。注目すべきは成長率で、年平均29.5%増で拡大し、2028年度には約3900億円の市場規模になると予想されている。

 HRテック市場の急成長を加速させる社会背景としては主に2つの要因がある。労働人口の減少と価値観の多様化だ。企業にとって、従業員一人ひとりの生産性向上と従業員エンゲージメント(組織との関係性)を向上させることが急務となっている。

 これに対してIT業界は労務管理システムや人事評価システム、ワークフローシステムなど数多くのソリューションを提供してきたが、一部の問題しか解決せず今日に至っている。その原因は「人事データがバラバラ」(冨永CEO)だからだ。

 人事データは平均で5つのシステムに分散しているといい、例えば、ある従業員Aの学歴や社歴は労務管理、どのくらい働いているのかは勤怠管理、給与明細は給与管理、という具合だ。「私の姓はワ冠の『冨』ですが、ウ冠の『富』もある。これをシステムごとに入力し間違えると、それだけでデータが合わなくなる」(冨永CEO)ということになる。

 近年、従業員の離職率を抑えるのは経営者の必須課題だが、それには給与情報と人事評価が一元化されていなければならない。高い評価を得ているにもかかわらず給与に適切に反映されていなければ離職につながる可能性があるし、そこに本人の異動願や異動履歴なども考慮されなければ、やはり離職につながるかもしれない。

 冨永CEOは、そうした課題を根本的に解決するのが、同社で提供しているクラウド型人事労務システム「ジンジャー」だという。勤怠や給与のみならず、社保手続き、人事評価、さらにはタレントマネジメントや1on1ツールなど、すべての人事関連業務を1つのプラットフォームに総合することができるという。これにより、企業は「正しい人事データ」を収集・管理・活用し、単なる記録ではなく組織の成長を支える資産として活用することができる。具体的に言えば、採用計画、人員配置、研修効果の測定などを容易に行うことができる。

AIエンジニア30%増員でNo.1のシステムへ

 同社は統合型人事システムとしてNo.1を目指すとしており、2年後のARR(年間経常収益)200億円達成が大きなマイルストーンになる。では、具体的にどんな施策を打つのか。冨永CEOは戦略として「プロダクト」「エコシステム」「組織強化」の3つを挙げた。

 具体的には、プロダクトはAI時代に合わせた統合対応の進化、エコシステムは販売パートナーへの注力やユーザーコミュニティの発足、組織強化はカスタマーサクセスの強化と開発体制の強化だという。SaaSは毎月継続的に使ってもらってこそ利用価値がわかるものだが、そのためにもユーザーコミュニティが必要だということだ。そして、開発強化のために、AI対応のエンジニアを30%増員するとしている。

 AIというと昨今は「生成AI」が大きな話題だが、「AIエージェント」も花開こうとしている。これは、ユーザーからの継続的な指示なしに、目標達成に必要な行動を自ら判断・実行する自律性が特長だ。そして、時を同じくしてMCP (Model Context Protocol)というテクノロジーも出てきている。生成AIと外部のデータソースやツールを連携させるためのオープンな標準規格で、AIエージェントが多様な外部ツールを簡単かつ効率的に利用できるようにするものだ。

 システムがAI化されても、そもそもデータベースが正しくなければ何の意味もないわけだが、同社の人事システムは正確さが担保されているため、3つのAI技術が統合されたときには革新的な変化が生まれると期待される。冨永CEOは「ジンジャーはその世界に向けて準備万端であり、当社はAI-Readyな人事データベース」と強調する。

AIによって実現できる未来いろいろ

 AIによって人事関連の何がどう変わるのか、もう少し具体的に紹介する。

 採用が決定した瞬間にAIが起動すれば、本人のスマホには必要な情報が届き、簡単に雇用契約が締結できる。入力された情報は人事データベースに登録され、社会保険の手続きなども準備される。入社後の備品やPCなども手配されるし、関係部署に通達される。入社後もAIが従業員を継続的にサポートし、eラーニングの受講も適切なタイミングで勧める。

 経営側には人員の過不足をリアルタイムで可視化され、勘と経験に頼っていた人員配置がデータに基づいたものへと修正される。後任候補についてもAIが全従業員のスキルや実績を基に最適な候補者を複数ピックアップする。客観的で公平な人員配置が実現する――。

 人事向けポータルサイト「日本の人事部」発表の調査によれば、すでに約7割の人事担当者が生成AIを活用しているという。しかし、それは議事録や会議内容の要約といったレベルで、主に業務の効率化を図っているに過ぎない。「ジンジャー」が上に挙げたようなAI活用の未来を実現できるかどうか、注目していきたい。

(文=横山渉/フリージャーナリスト)

TOPPANグローバルパーパス浸透施策。世界を巻き込んで可視化した「Culture」とは?

TOPPAN

TOPPANホールディングス株式会社は、2025年4月1日にグループパーパス特設サイト「TOPPAN's Purpose Special Site」を開設。TOPPANグループのパーパスをグローバルに発信するムービーや、創立125周年にちなみ、125人以上のグローバル社員を巻き込んだコンテンツ制作をしました。

パーパス浸透に課題を抱える企業が多い中、なぜTOPPANは“コンテンツ”を軸にグローバル規模のパーパス浸透にチャレンジしたのか?

TOPPANホールディングス 広報本部 宣伝部長の佐藤圭一氏と宣伝部 課長 渡邊慎悟氏、本プロジェクトに伴走した電通の森本紘平、江口露美が語り合います。

世界250社が同じ方向を向くために。TOPPANが挑んだパーパス浸透の第一歩

森本:まずは、今回のパーパス浸透施策に着手した背景からお聞かせいただけますか?

佐藤:きっかけは、2023年10月の持株会社体制への移行と社名変更でした。TOPPANとしてブランドを再構築する中で、「凸版印刷はもはや印刷だけの会社ではない」という認識のもと、“印刷”の文字を社名から外しました。同時に、グループ会社間の連携を一層深めて、新たな価値創造のスピードを上げていく体制に舵を切ったのです。

ただ、グループ会社ごとに理念やビジョンなどを独自で持っており、理念体系や言葉の使い方も違っていました。本来は一本化するのが理想だと思うのですが、各社の独自性や歴史もある。そうした中で、各社の理念を残しつつ、グループ共通の指針となるような“グループ理念”が必要だと感じていました。そこで、社会的な視点から企業としての存在意義を明確に示せるパーパスを掲げようと考えました。

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TOPPANホールディングス 佐藤圭一氏

江口:そのパーパスは、どのようなプロセスで策定されたのでしょう?

佐藤:着手したのは2022年の夏ごろで、そこから約10カ月かけて、徹底的にリサーチを重ねました。まずはデスクリサーチから始まり、各グループ会社の経営陣へのインタビュー、次代を担う若手社員へのヒアリング、グループ従業員全体へのアンケート調査も実施しました。さらに、一般生活者向けブランド調査や未来予測資料、第三者評価データなども活用し、多面的にデータを収集・分析しています。

それらのインサイトを統合して、未来の社会が求めているニーズにどう応えるか、社会にどんな価値を提供するか、自分たちらしさや強みは何か、といった要素を整理・体系化し、パーパスの核となる構成を固めていきました。

また、パーパスの実現に向けて従業員が共通で持つべき価値観を言語化したバリューズも合わせて策定しました。こうして「TOPPAN's Purpose & Values」が完成したのが、2023年5月です。

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森本:パーパスを策定したものの、形骸化してしまい、浸透させていくことに課題を抱えている企業も多いと聞きます。御社はどのようにして施策を進めていったのでしょうか?

佐藤:まず、パーパスとバリューズをしっかり伝えるための基盤として、パーパスブックやムービー、携帯型カード、ポスターなどを制作しました。さらに、オンライン説明会や、社内報・ポータルサイトなどの社内情報メディアでの展開、教育研修プログラムでの活用、社内制度への組み込みなど、さまざまなチャネルを通じて社内への周知を図っています。

ブックやポスターなどは、英語や中国語を含む多言語展開をして、海外のグループ企業にも配布しました。新入社員向けのテキストブックにもパーパスを掲載し、入社時点から意識を共有できるようにしています。さらに、社内報では特集号を作成し、策定のストーリーや社員ヒアリング調査の結果、大学教授との対談なども掲載しました。

江口:浸透のために力を入れてこられたのが伝わってきます。外部への発信もされていたのでしょうか?

佐藤:はい。社名変更とタイミングを合わせて、新聞広告を地方紙含めて全国54紙に展開し、コーポレートサイトや特設サイトでもパーパス&バリューズを紹介しました。会社案内や統合レポート、サステナビリティレポートなどのコーポレートコミュニケーションツールでもパーパスを前面に出しています。

森本:そうした取り組みを経て、従業員の皆さんの反応には変化がありましたか?

佐藤:2025年1月時点で実施した社内調査では、国内におけるパーパスの認知率は98.1%、共感度は74.6%という結果が出ました。正直、高すぎて驚いたぐらいですが、「伝える」というフェーズでは一定の成果が得られたと考えています。

ただ、海外についてはまだ大きな課題が残っていました。ポスターや資料は各拠点に送っているのですが、ちゃんと見られているかは分からないし、認知の度合いも拠点によってバラつきがある状態でした。

江口:そこから次の一手として、グローバル向けの施策を検討されたんですね。

佐藤:はい。国内では「知っている」から「自分ごと化」へ、海外ではまず「知ってもらう」段階をしっかりつくる必要がある。そこで、グローバル企業グループとして私たちより先行してさまざまな取り組みをしている電通さんの事例を参考にしつつ、森本さんや江口さんに協力していただいてグローバル特設サイトを立ち上げることにしました。

森本:われわれからも弊社の国内外グループ各社を交えたコンベンション開催の知見等、紹介させていただき、最終的にはそういった活発なディスカッションの場も意識しつつ、まずは佐藤さんのおっしゃる、その前段となる「知っていただく」フェーズからやってみようという流れでしたね。

TOPPANグループが生み出す多様な「Culture」が息づく世界を描く

森本:今回はインナー向けの施策でありながら、イントラネットではなく、あえて社外からもアクセス可能な特設サイトを開設しています。改めてその狙いを教えていただけますか。

佐藤: TOPPANグループ全体を見渡すと、イントラの環境が各社で統一されていない状況でした。中国など一部地域ではアクセス制限がありますし、インフラも異なります。買収によって加わった企業も多く、それぞれのIT環境を統一させるにはかなり時間がかかると思われました。

それならば、マルチステークホルダーに向けて、誰でもアクセスできるオープンなウェブサイトにしてしまおうと。あくまで主な対象はグループの従業員ですが、外部の人が見ても違和感のないよう設計しました。中身はインナー寄りですが、伝えるべきメッセージは外にも広げていくべきだと考えた結果です。

江口:外への情報発信は、中にいる人たちのモチベーションにもつながりますよね。私も森本さんと一緒にさまざまな切り口でのインナーブランディングやパーパス浸透施策に携わってきましたが、外と中の循環は大切なポイントだと感じます。今回のコンテンツ内容についてもご説明をお願いします。

佐藤:コンテンツの柱は大きく3つあります。1つ目は、グローバルレベルで共感を得られるような新しいパーパスムービー「Culture」。もともとパーパス策定時につくった解説ムービーはありましたが、今回はよりエモーショナルに、文化や思いに寄せた構成にしようと、映像のトーンや音楽も含めて、従業員のモチベーションを上げるような仕上がりにしています。

2つ目が経営層・現場層10人へのインタビュー動画。多様性を重視し、国内外問わず、さまざまなキーパーソンに、自分たちが生み出しているCultureについて語ってもらいました。

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そして3つ目が125人の社員メッセージ。創立125周年に合わせて、世界中から125人分の“私が生みだすCulture”を集めました。海外比率を高めに設定し、国籍・年齢・職種もバラバラな構成にしています。

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森本:江口さんは電通の人事時代に社員の声を集めたコンテンツ制作を担当してきた知見を多数提供してくれましたが、今回の企画は構想段階でどう感じていましたか?

江口:私もよく類似の作業はやってきた経験がありましたが、出演される従業員の方はそれぞれ本業もある中で、置かれている状況も違います。そういった面での配慮や進行スケジュールのバッファー、また、従業員の方々のモチベーションを上げるコンセプトも大事になってくると感じていました。しかも今回はグローバルでこれだけの規模感です。TOPPANさんは、この施策に対して本気なんだなという印象が大きかったです。

佐藤:ありがとうございます。ムービー制作にあたっては、部長・執行役員クラスの方々に集まってもらい、自分たちの事業が生み出しているCultureについて考えるワークショップを開催しました。半日かけて出てきた言葉やエピソードを整理し、最終的には8つのテーマに集約。それぞれのCultureをムービーの構成要素に反映させています。教育、ヘルスケア、セキュリティ、電子部材など、多様な事業の中にCultureの芽があることを、全員で再確認できるプロセスにもなりました。

渡邊:サイト全体のメッセージも主語を「TOPPANは」ではなく、「私たちは」「私は」に変えたことで、社員の言葉がよりリアルに響くようになったと思います。「私もこんなCultureをつくっているかも」と自然に共感できるようなサイト構成を意識しました。

森本:社員の皆さんがそれぞれに自分の言葉を持っていて、心に響きました。

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TOPPANホールディングス 渡邊慎悟氏

佐藤:そうですね。今回大切にしていたのが、パーパスをどう共有していくか?という問い自体への向き合い方です。「“浸透”という言葉は上から目線のような印象を与えないか?」と感じているので、私はなるべく「共有」という言葉を使うようにしています。パーパスを上から強制的に浸透させるのではなく、まずは知ってもらって、それをきっかけに、自分自身の“マイパーパス”についても考えてもらう。その結果、会社のパーパスと自分のパーパスが2〜3割でも重なればいい。逆に重なっていない部分があるからこそ、自分自身の思いを原動力に、会社を動かしていく主体性が生まれる。それがCultureの多様性やイノベーションにつながっていくのではないかと考えています。

地道な作業と丁寧なコミュニケーションで支えた、コンテンツ制作の裏側

森本:グローバル全体に向けて取り組んだ今回の施策、各国の皆さんへ企画意図や内容を深く理解してもらうためのマテリアル制作や進行方法は特に気を遣ったポイントだったかと思います。その点は、いかがでしたでしょうか?

渡邊:そうですね。大前提として、短期間で5カ国を巡りながら同時にコンテンツを制作していくスケジュールは、かなりチャレンジングでした。特に多言語展開を前提とした映像制作や社員メッセージの収集では、言語や文化、表現のニュアンス調整が一番のハードルだったと思います。

マニュアルやガイドラインもかなり細かくつくりましたし、メールのトーンにも気を配りました。森本さん、江口さんにも一緒に連日手を動かしていただきましたし、どうすればもっと良くなるのかを何度も議論できたことが良かったと感じます。

森本:とんでもないです。渡邊さんの現地の協力者や制作メンバーへの接し方からも、そのこだわりと熱意が伝わってきました。

江口:佐藤さんや渡邊さんを含めた宣伝部の皆さんの心のこもった進行の一つ一つが、今回のコンテンツにつながっていますよね。

渡邊:ありがとうございます。今回は全世界のTOPPANグループに届けるコンテンツだったので、妥協せずに向き合いたかったんです。電通さんにもサポートしていただいて、資料やヒアリングシートを用意し、可能な限り相手の背景を理解した上でインタビューや撮影に臨みました。ロケハンをする時間がないので、現地からシューティングシートを共有してもらって事前にアングルを想定するなど、そういう一つ一つの段取りが、結果的に現地での信頼につながったと感じています。

森本:インタビュー動画の撮影現場でも出演者の皆さんにわれわれから当日の進行オリエンをさせていただいた際、事前にかなり深くご理解いただけていた印象を持ちました。渡邊さんたちの細やかな根回しや情報共有のおかげだなと感じました。

渡邊:いえいえ、電通さんを含め、撮影メンバーの皆さんの進行に助けられました。

佐藤:メッセージ収集など、最初は「なんでこんな面倒なことを…」と思われるかもしれないと心配していたのですが、意外なほど前向きに協力してくれる人が多かった。むしろ「うちも参加したい」という声も出てきて、125人に収まらないほど参加希望者が集まったのはうれしかったです。

コンテンツを起点に広がる、パーパス浸透の輪

森本:特設サイトやコンテンツが形になったとき、お二人はどんな印象を持たれましたか?

渡邊:完成したインタビュー動画は、10人×日・英・中の3言語展開で計30本ほどに及ぶ大仕事でしたが、TOPPANらしさをビジュアル化できたという手応えがあります。また、125人のメッセージは内容もさることながら、写真だけでもインパクトがあり、ユニークな仕上がりになったと思っています。

江口:自分が出ていなくても、知り合いの社員が登場していることで自然と話題になったり、一緒に見てみようというきっかけになったりしますよね。世界各地に広がる125人を起点に、その周囲の多くの人へも確実に波及していったと思います。

渡邊:SNSの反応も上々です。社内でのシェアだけでなく、海外の従業員が自らLinkedInで投稿したり、Facebookでシェアしてくれたり。広報が働きかけなくても、自然に広がっていく形もあるんだなと感じました。

江口:私も今回、改めて「こんなにも多様な人たちがTOPPANグループにいるんだ」と実感しました。その多様性が視覚的に一瞬で伝わるインパクトは、想像以上に大きなものでした。

渡邊:グループ全体で5万人を超える多様な従業員がいると、パーパスの共有は難しいと思われがちなのですが、むしろその多様さ自体が魅力だということが、今回の取り組みで可視化されたように思います。パーパスムービーで世界観を伝え、インタビュー動画で具体例を示し、125人のメッセージで一体感と多様性を表現するという構成が、結果的にとても良かったですね。

江口:「あなたがつくるCultureは?」という問いに答えるのは難しいのではないかと思っていたのですが、皆さん本当に真剣に向き合ってくださって、『チャレンジ』や『前例にとらわれない姿勢』、『誠実さ』など、TOPPANのパーパスやバリューズに通じる言葉が自然と出てきていたことも印象的でした。結果として、125通りの“TOPPANらしさ”が浮かび上がってきたように感じます。

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電通 江口露美、森本紘平

渡邊:江口さんがおっしゃったように、今回のメッセージからはTOPPANのバリューズである誠実さ(インテグリティ)や、情熱(パッション)、積極性(プロアクティビティ)といった要素も感じ取れました。それが自然に表れていたのがすごく面白かったですね。

森本:今の時代、新入社員にとっても「この会社はどんな価値観を大事にしているか」だけでなく、「どんな人がどんな思いで働いているか」が重視されている印象があります。だからこそ、従業員の皆さんが自分のパーパスを持ち、それを言語化する機会を提供できたことには大きな意味があると思います。

渡邊:普段、社内で「あなたのつくっているCultureは何ですか?」なんて会話、なかなかしないですよね。そういう意味でも、国内外でいろんな思いを持って仕事に向き合っている人たちの存在を“見える化”できたことは、今後の広報活動にも生かせる財産だと感じています。

森本:青臭いことでも、企画に落とし込むと聞きやすくなるし、答えやすくなりますよね。社内外からの反応はいかがでしたか?

渡邊:グループ会社の中には、125人のメッセージに登場した社員を社内報でさらに深掘りする動きもありました。今回のインタビューを通してパーパスを考えるきっかけが社内にも広がっていったようで、小さな波が別の場所で立ち上がっていくのを見られて、やって良かったなと心から思います。

森本:各社でのコミュニケーションのきっかけになっているのが素晴らしいですね。

渡邊:そこはやはり、「What Culture Are You Creating?」といった問いかけるメッセージを掲げたことが大きかったと思います。シンプルだけど、本質を突いていて、今後も長く使っていける問いになりました。さらに、森本さんには国内の出演者への、江口さんには中国の出演者へのインタビュアーも担っていただいて、雰囲気づくりに加えて、素晴らしいエピソードをたくさん引き出していただきました。本当にありがとうございました。

森本:とんでもありません。インタビュアーをやりながら皆さんのお話が伺えて貴重な経験となりました。10人のインタビューも125人のメッセージも、参加者の皆さんの熱い思いや仕事に対するプライドが感じられて、私たちも刺激をいただきました。

江口:私も同じく、TOPPANグループが担う幅広い事業領域と、多様な人材によってCultureが形づくられていることを改めて実感しました。この仕事もTOPPANさんだったんだ!こんな領域にまで広がっているのか!というたくさんの発見もありました。とても濃い数カ月を、皆さんとご一緒させていただけて良かったです。

自分がつくっているCultureを語り合う。そんなCultureをつくりたい

森本:今回の取り組みを通じて、今後さらにトライしていきたいことはありますか?

佐藤:今回出演していない従業員にも魅力的な人はたくさんいるので、125人で終わりじゃなくて、今後も継続的に新しいコンテンツを出していきたい。コンテンツを拡充し続けることが、パーパスを風化させずに「TOPPANって、こういう会社だよね」というイメージをキープし続けるポイントだと思います。

渡邊:今回は共感やきっかけをつくることが目的でしたが、今後はそれをどうアクションにつなげていくかが次のテーマだと思っています。この施策をゴールにせず、スタート地点として捉えて、さらに進化させていきたいですね。

森本:では最後に、お二人が「これからTOPPANでつくっていきたいCulture」についてお聞かせください。

渡邊:「あなたはどんなCultureをつくっていますか?」という対話が自然に生まれるようにしていければと思っています。今回のプロジェクトで、そういった会話ができる土壌が見えましたし、自分たちがつくるCultureに誇りを持って語り合える状態は、パーパスが共有されている証だと思います。

森本:今回ご協力いただいた皆さんは、本当に誇りを持って語ってくださいましたよね。

渡邊:そうですね。現地での取材でもそれを強く感じました。それを肌で感じられたのは大きかったです。

森本:では佐藤さん、お願いします。

佐藤:私はこれまでさまざまな企業のブランディング支援に長く携わってきましたが、ブランドをつくるというのは、突き詰めれば「Cultureをつくる」ことだと思うんです。広報や宣伝の役割は、そうしたCultureを可視化し、社内外に届けていくこと。

TOPPANは長い歴史の中で“印刷会社”という強いイメージが根づいていました。その堅実さは強みでもありますが、同時に保守的や受け身体質に見られることもあったと思います。だからこそ今、従業員一人一人がプロアクティブに動き、パッションを持って「多様な文化が息づく世界」を目指す。そうした姿を発信しながら、誇りを持てるCultureを築いていきたいです。

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電通幹事映画「宝島」 東京プレミアイベントに主演の妻夫木聡さんらが集結 9月19日より全国公開

アメリカ統治下の沖縄の史実を背景に、若者たちの葛藤と友情を圧倒的な熱量と壮大なスケールで描く映画「宝島」。9月19日(金)の全国公開に先立ち、東京プレミアイベントが9月9日(火)、東京・六本木で開催された。

「宝島」東京プレミアイベント

豪華絢爛(けんらん)なレッドカーペットが敷かれた会場には、主演の妻夫木聡さんをはじめ、広瀬すずさん、窪田正孝さん、永山瑛太さんらキャスト陣と大友啓史監督の14人が集結した。

会場に集まったファンと報道陣を前に、本作で激動の時代を生き抜く主人公グスク役を演じた妻夫木さんは、「『宝島』は、命をつないでいく物語。思いというものはどんどんつながっていきます。熱い思いをかけて作ったので、一人一人に、そしてより多くの方に届けられるといいなと思っています。そして、『映画の力』というものを感じてほしい。皆さん、9月19日の公開を楽しみにしていてください!」と呼びかけた。

会場に集まったファンと交流する妻夫木聡さん(中央)と永山瑛太さん(右)
会場に集まったファンと交流する妻夫木聡さん(右から2人目)と永山瑛太さん(右)

グスクの幼なじみのヤマコ役を演じた広瀬さんは、「沖縄という場所に愛情と情熱をもって向き合い、貴重な刺激のある時間を過ごさせていただきました。スクリーンを通して一人でも多くの方に伝わってほしいと思います」と笑顔を見せた。

会場に集まったファンと交流する広瀬すずさん
会場に集まったファンと交流する広瀬すずさん
報道陣の取材を受ける(右から)中村蒼さん、瀧内公美さん、栄莉弥さん
報道陣の取材を受ける(右から)中村蒼さん、瀧内公美さん、栄莉弥さん

構想6年、2度の撮影延期を乗り越えて本作を完成に導いた大友監督は、「いろいろな困難がありました…それでも絶対に届けないといけない作品だとキャスト・スタッフ一人一人が感じながら作りました。力のある、そして腰の強い、みなさんに胸を張って届けられる作品になったと思います!」と力強く語った。

レッドカーペットイベントの後、TOHOシネマズ六本木ヒルズ・劇場内に会場を移して、場内を埋め尽くす500人ほどの観衆を前に舞台あいさつが行われた。キャスト陣や監督が製作の舞台裏や本作に懸ける思いをそれぞれの言葉で熱く語ると、会場からは惜しみない拍手が湧き上がり、「宝島愛」に包まれた一夜限りの盛大なプレミアイベントは幕を閉じた。

映画「宝島」はキャスト、監督のたぎる思いを乗せ、9月19日(金)より全国公開を迎える。

映画「宝島」ポスター


■作品情報
・作品タイトル:「宝島」
・出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄、ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮、デリック・ドーバー
・監督:大友啓史
・原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
・公開日:9月19日(金)より全国公開
・配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
・コピーライト:©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

■ストーリー    
ある夜、一人の英雄が消えた。
アメリカ統治下の沖縄で、自由を求め駆け抜けた若者たちの友情と葛藤を描く感動超大作。
英雄はなぜ消えたのか?幼なじみ3人が20年後にたどり着いた真実とは――。
沖縄がアメリカの統治下におかれていた時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼なじみのグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは“予定外の戦果”を手に入れ、突然消息を絶つ……。残された3人は、「オンが目指した本物の英雄」を心に秘め、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、オンの影を追いながらそれぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせ、ある事件をきっかけに抑えていた感情が爆発する。
やがて、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す――。
消えた英雄が手にした“予定外の戦果”とは何だったのか?そして、20年の歳月を経て明かされる衝撃の真実とは――。

■公式サイト&SNS
・オフィシャルサイト:https://www.takarajima-movie.jp 
・オフィシャルX:https://x.com/takarajimamovie 
・オフィシャルInstagram:https://www.instagram.com/takarajimamovie/(ハッシュタグ:#映画宝島 / #映画宝島全国キャラバン 開催中!)

 

超高齢社会、「老い」は課題ではなく資源…価値観の転換が変える日本の未来

●この記事のポイント
・日本の高齢化を「危機」ではなく「可能性」と捉え、若者と高齢者が対等に関わる仕組みづくりが進んでいる。
・シニアは支えられる存在ではなく知恵や経験を持つ「社会資源」であり、世代間の交流が自己肯定感と行動変容を生む。
・価値観の転換こそが最大のイノベーションであり、高齢社会をポジティブにデザインする視点が日本の未来を変える。

 日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えている。高齢者人口は総人口の約3割に達し、労働人口の減少や社会保障費の増大が課題として語られる一方で、高齢者が社会的「負担」として捉えられる風潮は根強い。

 しかし、その見方を根本から覆そうと挑んでいる起業家がいる。株式会社AgeWellJapan代表の赤木円香氏だ。同社は「Age-Well=よりよく年を重ねる」という価値観を掲げ、世代を超えた協働を軸に、多様な取り組みを展開している。

 本稿では赤木氏への取材をもとに、同社の事業内容、世代間の断絶を超える仕組みづくり、そして「高齢化を可能性に変える」挑戦について紹介したい。

●目次

「100歳まで生きたい」人は2割しかいない

 AgeWellJapanが掲げる社会課題の出発点は、日本社会に蔓延する「老いへの不安感」だ。調査によると「100歳まで生きたい」と思う人は、わずか21%。多くの人が、老いを「不安」「孤独」「自己肯定感の低下」と結びつけてしまっている。

「心がポジティブになることで行動変容が起きる。その仕組みを社会に実装したいと考えています」
赤木氏はこう語る。

 同社は2020年に創業し、現在はBtoC・BtoB・R&Dの三本柱で事業を展開している。

・BtoC事業では「モットメイト」「モットバ!」などのサービスを展開。若者とシニアをマッチングし、伴走する「Age-Well Designer」と呼ばれる若者が、シニアと互いに学び合いながら、人生の新たな挑戦や発見を後押しし、意欲を引き出す伴走を行う。

・BtoB事業では企業や自治体と連携し、シニアコミュニティや新規事業開発を支援。

・R&D事業では会話内容を録音・解析し、シニアがどのようにポジティブに変化していくかを可視化する研究を行っている。

 特筆すべきは、こうしたコミュニケーションの変化をデータ化する技術に関して、ビジネス特許も取得している点だ。

シニアは「負担」ではなく「社会資源」

 高齢化が進む日本社会では、シニアを「支えられる側」として描くイメージが根強い。しかし赤木氏は、その構造自体を問い直す。

「シニアは本来、知識や経験の宝庫であり、社会資源です。それを活かさずに『負担』とみなすのは大きな誤解です」

 背景にあるのは「エイジズム(年齢差別)」だ。年齢を理由に「もう働けない」「派手な服は似合わない」と決めつける社会的偏見は、シニア自身の行動意欲を削ぐ。

 その是正に必要なのが「多世代交流」である。心理学的にも、異なる世代の対話が偏見を和らげ、互いを理解するきっかけとなることが知られている。

世代間の誤解と断絶を超えて

 同社の取り組みの現場では、世代を超えたユニークな交流が生まれている。

・若者がシニアに恋愛相談をする

・シニアが若者のマッチングアプリのプロフィールを一緒に考える

・料理や生活の知恵を伝授する

・就職やキャリアに悩む学生に、シニアが自身の経験を踏まえて助言する

 こうした関係は「支援する側・される側」ではなく「相棒関係」に近い。赤木氏は「縦の関係ではなく横並びで人生をデザインする」ことを強調する。

 あるシニア会員は「若者が私を年齢ではなく、一個人として見てくれる」と語った。結果として、若者側のシニアに対するイメージも変わっていく。

小さな気づきが自己肯定感を育む

 赤木氏は、自身がシニアから受けたエピソードを紹介する。

 炊飯器が壊れて困っていたとき、会員のシニアが即座に鍋での炊き方を教えてくれた。
また、急にポチ袋が必要になった際に、ポチ袋を手作りして持たせてくれた。

 一見ささやかな知恵だが、若者から感謝されることでシニアの自己肯定感は高まり、「誰かの役に立っている」と感じられる。すると、挑戦意欲や新しい活動につながる。

 実際に「早くお迎えが来ないかしら」と語っていたシニアが、伴走する若者との交流を通じて「人生まだまだこれからだ」と意識を変え、十数年ぶりにピアノに挑戦した例もある。

 ある会員は赤木氏にこう伝えた。
「目も耳も衰えてきたけれど、感性だけは衰えることを知らない」

 いくつになっても、新しい出会いや体験にときめき、ワクワクする気持ちは失われない。この言葉は、赤木氏が掲げる「Age-Well」という価値観を象徴している。

高齢化は「危機」ではなく「可能性」

 AgeWellJapanの活動は、単にシニアの孤独を和らげるだけではない。消費や経済活動にも波及効果をもたらす。

 二俣川のコミュニティスペースでは、会員の平均月間消費額が1万2000円増加。エイジウェルフェスティバルでは、同規模イベントの約6倍の売上を記録した。

「不安を煽って商品を売るのではなく、ポジティブな未来に投資してもらう。前向きな価値観が消費を生み、経済を回すんです」

 シニアが「まだ社会の一員でありたい」と思える環境を整えることは、個人の幸福だけでなく経済全体の活性化にもつながるのだ。

価値観こそがイノベーション

 赤木氏は語る。
「テクノロジーだけがイノベーションではありません。行動変容をもたらす価値観の転換こそがイノベーションです」

 同社は「Age-Well Designer」という新しい職業を提唱し、介護や看護の枠に収まらない世代共創型の役割を社会に広げている。将来的には、制度設計や文化変容にも影響を与える存在となることを目指している。

 SNSの普及により「孤立」は減っているが、信頼できる関係を持てずに「孤独感」を抱える人は多い。赤木氏は「孤独感を減らすには、信頼関係を築き、自己肯定感を高めることが必要」と語る。

 同社が提供するのは、単なる交流の場ではなく「自分は理解されている」という感覚を得られる仕組みだ。

 企業や自治体も、Age-Wellの仕組みを応用できる。シニアが持つ知恵や経験を組織の資産として活かし、多世代で価値を共創することは、イノベーション創出にもつながる。

「大手企業や自治体、大学を巻き込みながら、世代共創のエコシステムを広げていきたい」と、赤木氏は展望を語る。

 日本はこれからさらに高齢化が進む。しかし、AgeWellJapanが提示する未来像は、「高齢化=危機」ではなく「高齢化=可能性」だ。

 世代間の断絶を乗り越え、シニアが再び社会に参画し、若者と共に価値を生み出す。そこには、新しい幸福感と経済循環の芽がある。

「Age-Well」という言葉が日本社会に浸透したとき、世界は日本を「超高齢社会のロールモデル」として見るだろう。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)

課題だらけの産業に新たな選択肢を。スタートアップはレガシー産業を救えるか

●この記事のポイント
・waypoint venture partnersは「街づくり」「産業成長」「個人のエンパワーメント」を軸に、レガシー産業へ挑むスタートアップに投資している。
・インフラや製造業には課題が山積する一方、DX導入の価値が認識されづらく、スタートアップ参入が難しい現実がある。
・Lenovoのサブスク型ハードウェア支援はスタートアップや中小企業の負担を軽減し、新たな選択肢を生み出す後押しをしている。

 VCが投資する分野といえば、ITやディープテックなど先端技術を駆使した分野が真っ先に思い浮かぶかもしれません。

 しかし、waypoint venture partners 株式会社が注目するのは、建設や製造といったレガシー産業や、インフラ産業などの既存領域です。

 こうした領域に挑むスタートアップを、ハードウェア支援はどのように後押しできるのでしょうか?

 今回は、waypoint venture partners 株式会社 代表取締役の平田拓己氏と、Lenovo Japanの中田竜太郎氏が、インフラやレガシー産業におけるスタートアップ支援の新たな可能性を、VCとハードウェア企業、双方の視点から語ります。

●目次

変わりゆく世の中と既存産業に新たな選択肢を

——waypoint venture partnersがどんなスタートアップ、企業に投資しているのか教えてください。

平田:waypoint venture partnersでは基本的にシード、プレシードステージを中心に投資をしている2023年に創業したVCです。

 投資テーマはおもに、
・新しい街づくり
・産業の持続的成長
・個人のエンパワーメント
 この3つを掲げています。

「新しい街づくり」は、人口が増えていくことを想定してつくられた、現在は老朽化が進むインフラを、実際には人口が減少していくなかでどう最適化していくのがよいのか?という部分を投資テーマにしたものです。

 対象としては、電気やガス、水道だけではなく、医療や行政サービス、モビリティなども、広い意味でのインフラとして捉えています。

 2つ目の「産業の持続的成長」のテーマも、背景にあるのは高齢化や人口減少です。担い手が減っていく一方、カーボンニュートラルなどの新たなトレンドはどんどん登場します。

 このような状況のなか、とくにDX化がままならない、建設や不動産、製造、物流のようなレガシー産業を中心に何か新しいことができないか、新しいチャンスが生まれるのではないか、という観点で注目しています。

 3つ目の「個人のエンパワーメント」は、教育や金融など、BtoCサービス(消費者向けサービス)のなかでも個人が生活していく上で最低限必要になる分野の選択肢をどう増やせるか、という部分を見ています。

 かなり広い投資テーマを持ったVCではあるものの、共通しているのは、「世の中に対して新しい選択肢を生み出すことで、多くの中から人が最適なもの、自分に合ったものを選べるっていう状態をつくる」という考え方ですね。

——シードステージに投資することが多い、とのことですが、インフラやレガシー産業とスタートアップのつながりをあまりイメージできない方も多いように思います。インフラやレガシー産業に参入するスタートアップはどのような事業を行うことが多いのでしょうか?

平田:「直接参入型」と「間接支援型」の2つがあります。

 直接参入型は、自分たちが製造業や建設業を行うというものです。商流や製造工程をゼロから立ち上げるイメージですね。

 waypoint venture partnersの投資先にも自動車を製造している企業があるのですが、スタートアップだけあってつくるものがこれまでの自動車とまったく違います。

 一方、間接支援型は、インフラやレガシー産業の企業を支援するツールやサービスを提供するものです。SaaS開発やロボティクスをイメージしてもらうのがわかりやすいですね。

 元々、そういった業界にいた方が課題感を持って創業する、デジタル側の方が業界の課題を見つけて参入する、どちらのパターンもあります。後者の場合、業界構造を知るために一度インフラやレガシー産業に入り込んでみた、という面白いケースを耳にしたこともあります。

インフラ・レガシー産業にスタートアップやデジタルが参入しづらい理由

——産業における課題というお話がありましたが、インフラやレガシー産業ではどのような課題が存在しているのでしょうか?

平田:むしろ課題しか残っていない、という見方もできますね。

 経理周りのデジタル化など、他業界ではすでに解消されたような課題も数多く残っています。請求書が紙ベースだったり、あらゆる連絡にいまだにFAXが使用されていたり、ということも多いです。業務連絡も、Slackなどのツールではなく個人コミュニケーションで使用されるLINEを使っているという話をよく聞きます。

 このように多くの課題が置き去りになってしまう理由は、目の前の煩雑さや課題を解決することが、売り上げの増大やコストの大幅削減などの大きなインパクトにつながらないためでしょうね。 

 たとえば、建設業に従事する一人親方や現場の職人の方々からすると、バックオフィス業務がデジタル化されていなくても、最低限自分たちのやり取りができていれば受注はできるし売り上げも立つのです。

 現場の方々からすると、あくまで施工や製造など現場での仕事が主体なので、新しい技術や知識を学ぶことが、目の前の仕事にまったくつながりません。

中田:それが、インフラやレガシー産業にスタートアップが入り込みづらい要因にもなっていますよね。

平田:そうですね。一見、スタートアップからすれば「チャンスだらけ」の業界に見えるのですが、いわゆる間接支援型などのスタートアップが考えうるSaaSなどのツールやサービスが、そもそも産業の根幹となる業務にマッチしない場合が多いのだと思います。

中田:こうした業界では、スタートアップが生み出すものに価値を感じてもらいづらい、ということなのかもしれませんね。

 企業が生まれて存続していけるのは、生み出した価値に対して対価が支払われるからです。

 課題ドリブンでスタートアップが生まれる場合、課題が明確に認識されている場合はそこに解決方法をぶつけやすいですし、ソリューションに価値を感じてもらいやすくなります。一方、課題が認識されづらい業界においては「対価を払うべきものではない」と思われてしまいます。

平田:本当に必要な場合はしっかりと対価を払って享受したい、という考えはあるのでしょうが、インフラやレガシー産業は「人が柔軟で最適化されている状態」なのですよね。ゆえに、DXのソリューションを入れたところで人が手を動かしているのとあまり変わらず、対価を払うほどのインパクトがない、という部分もあると感じます。

 AIやロボティクスなども多く活用すれば効率化されると考えがちですが、建設業などは安全規制が厳しい上に作業の条件分岐が無限に存在します。現状、ロボティクスはそこまでの柔軟性を持つものではなく、AIも思考がブラックボックスなため、安全基準に正確に適合しているとは断言できません。

 テクノロジーをすべて業務に適応させようとすると、人が手を動かすよりも開発費用のほうが高くなってしまうのです。

中田:まさにその通りで、建設業や製造業などでは、現時点で人が一番安い労働力であることが多いのですよね。

 人を労働力としている以上、今後の労働人口の減少は大きな問題になるのですが、現在の経営層の方々が定年を迎えるまでの間には、その問題は大きく顕在化してきません。そうなると経営層にとっては、労働力不足に向けたDXなどにたった今お金を払うよりも、コストを削減し四半期の決算で利益を積み上げるほうが重要なことになります。

 意思決定者のライフサイクルが、課題のライフサイクルを超えてしまっている状態なのです。

——しかし、この状態では対処しないまま課題が顕在化してしまいますよね。

平田:そうですね。今後、ノウハウを持っている方々がどんどん高齢化して業界から離れていきます。ノウハウが消えゆくなかで、このまま人の手だけで業務が回せるのか?という議論は必ず起こると考えています。

 そうなると、デジタルに置き換えようという動きが加速したり、徐々にルールが変化したり、法的な後押しが出てきたりと、新たな選択肢を取れるチャンスや機会も生まれてくるのではないでしょうか。

スタートアップにも既存企業にも有効なハードウェア支援

——インフラやレガシー産業の課題、業界に参入する際のスタートアップの課題に対して、Lenovoのハードウェア支援「Lenovo for start-ups」が寄与できるポイントはどのようなものでしょうか?

中田:サブスクリプションでパソコンというデバイスを利用できるので、フィナンシャル面での負担を軽減できるところは大きなポイントだと感じます。

 支払いを月々の定額にすることで、スタートアップという資金やリソースに限りある事業体においても、フィナンシャル面での不安なく、産業に対して高付加価値を生み出す可能性がある事業を維持できます。

平田:これはどの産業に参入しようとしているかにかかわらずいえることですね。現在、どの分野においてもパソコンは必須ですが、事業を加速させるという意味では最もお金をかけるポイントではないと思っています。

 一気に数百万のキャッシュが出ていく購入という形を取らないことで、キャッシュフローを安定させる一助になりますよね。

 また、利用するパソコンのスペックの相談ができるのは、インフラやレガシー産業に対して直接参入したいスタートアップにとっても有効です。

 直接参入の場合、既存企業との差別化をしなければ、競争優位性は生まれません。当然、デジタルの仕組みが入る部分も多いですし、そういった仕組みをつくるパソコンにはある程度のスペックが必要です。

 とはいえ、ただ高いものを使うのではオーバースペックになり、無駄な支出を生むことになります。

 その部分を相談して、サブスクリプションでパソコンが利用できるという部分はLenovo for start-upsが持つ、インフラやレガシー産業のスタートアップに対する強みかもしれません。

 逆に、想定よりも業務に対してパソコンが低スペックだった、という事態も防げます。

 あとは、サポートが手厚いということがメリットですね。積極的なサポートが受けられずに、うまくデバイスやシステムが活用できないという例は多いです。

 そういった意味では、スタートアップだけではなく、インフラやレガシー産業に存在する既存の中小企業にも有効な支援のようにも感じます。

中田:たしかに、インフラやレガシー産業は企業ごとにパソコンの導入率やOSのバージョンがバラバラで、パソコンを通じたコミュニケーションがシームレスにいかない場合があります。

 たとえば、Zoomでミーティングを行う企業もあれば、パソコンのメモリ不足でZoomがうまく利用できない企業もあります。あまりにパソコンの導入状況やスペックに違いがあると、効率化に影響して取引が難しくなってしまうということにもなりかねません。

 企業同士のコミュニケーションに制約がない状態をつくる、というのは非常に大切なことですね。

 たった今必要なスペックを見極めて、バージョンサポートが終わったものに関しては新たなモデルに入れ替えることもサブスクリプションであれば可能です。

機能強化と選択肢の拡大、それぞれの方向から産業を変えていく

——それでは、最後にLenovoとwaypoint venture partners、それぞれがスタートアップ支援を通じてどのような社会を実現したいか、その展望を教えてください。

中田:スタートアップ向けにフレームワーク化された我々のサプスクリプションのモデルが、先ほど話に出てきたような中小企業のエンパワーメントにも寄与できればと思っています。

 日本の企業は、9割以上が中小企業です。スタートアップはもちろん、既存企業の機能を高め、成長につながる支援として存在したいですね。

 そのためには、どこでもユニバーサルに使えるパソコンというものに対して、その周辺機能を徹底的に強化していくことが非常に重要だと感じています。

平田:先に挙げたVCとしての3つのテーマにおいて、個人や企業に対して広く選択肢を提供できるようになればと考えています。

 我々が投資するスタートアップが、対象とする顧客に新たな価値や選択肢を届け、さらに選んでもらえる存在になることに対して、微力ながらも後方支援を続けていきたいですね。

 その先に、「あのタイミングであの企業が生まれてくれたからこそ、街のあり方や産業が変化した」と感じてもらえる状態が生まれればベストです。

 インフラやレガシー産業とスタートアップ。一見、交わりのない二者にも思えますが、スタートアップは既存産業に新たな価値をもたらし、支えていく存在になりつつあります。

 VCやハードウェア支援がその歩みを後押しすることで、日本を支え続ける既存産業にどのような変化が訪れ、どんな未来が描かれていくのか注目されます。

※本稿はPR記事です。

【参加者募集】Do! Solutions Webinar「『先延ばし』にしない、組織文化変革のはじめ方」10月8日開催

電通が運営する、ビジネス課題を解決する情報ポータルDo! Solutionsは、10月8日(水)に開催するウェビナー「『先延ばし』にしない、組織文化変革のはじめ方 実践事例で学ぶ、企業成長のヒント」の参加者を募集している。

新規事業がうまくいかない、株価が上がらない、採用活動がうまくいかない、期待した社員が離職する──そのような企業の「問題」を議論すると、必ずといってよいほど「人と組織」の課題が浮かび上がる。しかし、組織文化に対する取り組みは成果がでるのに時間がかかるため、社内で優先順位が下がり、先延ばしにしてしまいがちである。

本ウェビナーでは、動かない組織を動かし、成長につなげる「鍵」である組織文化について、実際に成果を上げた事例を交えながら説明する。

「『先延ばし』にしない、組織文化変革のはじめ方 実践事例で学ぶ、企業成長のヒント」

【概要】
日時:
10月8日(水)14:00〜15:00
費用:無料
形式:Zoomウェビナー
登録締め切り:10月5日(日)17:30
定員:先着500人

■参加登録・セミナー詳細はこちらから


【プログラム】

第1部
組織文化変革が始まるきっかけ/Culture for Growthのご紹介

第2部
組織文化変革の事例紹介①
~組織の節目をきっかけとした企業文化の進化~

第3部
組織文化変革の事例紹介②
~新事業を飛躍させるために人と組織を変える~

第4部
まとめ:変革のポイント

【登壇者プロフィール】

電通 グロース・HR部 部長・ディレクター
小山 雅史(こやま まさし)

入社以来、一貫してブランドストラテジストとして食品、通信、金融、飲料、化粧品、家電、薬品、自動車など、さまざまな領域のコーポレートブランディングとそれに伴う企業変革や従業員意識の変革、事業戦略や開発などを担当している。顧客との関係だけでなく、マスコミ、投資家など企業や事業を取り巻くマルチステークホルダーの視点で「社会にとってのこの企業や事業の価値とは何か」を常に考えながら、企業価値の持続的な向上方法を模索している。

電通 BXコンサルタント
家泉 洋平(いえずみ ようへい)

マーケティング局にて飲料・アルコールメーカーをメインに消費財・化粧品・金融などの企業のマーケティング・PR戦略立案に従事。その後、ビジネスプロデュース局にて消費財のコミュニケーション領域に加えて、宣伝部ではない新規事業部署を担当、非広告領域での事業開発を支援。現局では企業理念浸透/中計時企業ストーリー策定/MVV策定などBX(Business Transformation)領域でクライアントビジネスを支援、特に企業文化やCultureの変革に多く携わり、企業文化変革「Culture for Growth」プログラムの開発・提供を行っている。

電通 プランナー
世津 洋子(せつ ようこ)

マーケティング部門、デジタル部門にて新規開発、マーケティング/コミュニケーション戦略立案、CX体験設計に従事し、顧客視点に立つことにより、ビジネスや広告のあり方を刷新する提案を行いながら顧客企業をサポート。現在は顧客企業の変革を幅広く支援。〈世の中〉〈企業ステークホルダー〉双方をとらえ、提案を行っている。新規事業やブランド、プロダクトの開発や中長期戦略策定に加え、企業文化変革におけるコンサルティングを提供。