ChatGPTがまた進化、社内のあらゆる情報が検索不要に…リスクは?便利な使い方は?

●この記事のポイント
・ChatGPTの「Company Knowledge」は社内データをAIが理解・活用する仕組みで、検索の手間を省き生産性と業務品質を大幅に向上させる。
・一方で、機密情報漏洩や誤情報の拡散、AIへの過信といったリスクも大きく、ガバナンスとAIリテラシーが不可欠となる。
・AIが社内の知を統合し「賢い同僚」として機能する時代が到来。知識管理のあり方が「探す」から「届ける」へと変わろうとしている。

 2025年、生成AIの進化は新たな段階に入った。単なる文章生成や質問応答の枠を超え、企業内部の知識そのものを理解・活用するAIが現実化している。その中心にあるのが、OpenAIが提供する「Company Knowledge」機能だ。

 ChatGPTをはじめとする生成AIは、すでに多くの企業で業務効率化やアイデア創出に使われている。しかし、その多くは「外部の一般知識」に基づいた回答にとどまっていた。

「Company Knowledge」は、そのAIに企業固有の情報を学ばせる仕組みを提供する。社内の議事録、マニュアル、ナレッジベース、チャットログ、プロジェクト資料などを接続することで、AIがその企業ならではの知識に基づいて回答できるようになるのだ。

 では、この仕組みはどのような変化をもたらすのか。そして、どのようなリスクが潜むのか。

●目次

生産性を根底から変える「検索の終焉」

 これまで、社員が必要な情報を探すには社内Wikiやクラウドドライブを横断検索し、数分から数十分を費やすのが当たり前だった。

 だが「Company Knowledge」を使えば、ChatGPTに「前回の製品発表のプレス対応マニュアルを教えて」「A社との契約更新手順は?」と尋ねるだけで、即座に正確な情報を得られる。

「この“検索不要”の構造は、情報探索に費やしていた膨大な時間を解放することになります。特にナレッジが分散しがちな大企業や、リモートワーク環境では効果が顕著でしょう。社員がAIに自然言語で質問し、必要な情報を即座に得る。これは、インターネット検索の次に訪れる『社内情報検索の終焉』とも呼べる変化です」(ITジャーナリスト・小平貴裕氏)

 AIが企業特有の知識を理解するということは、単に「早く答える」だけでなく、「より正しく、より一貫した判断を下せる」ことを意味する。

「意思決定の前提となる情報を常に最新・正確に保つことで、属人的な判断を減らし、組織全体のアウトプットの品質を底上げする効果が期待できます」(同)

 また、新入社員や異動者の教育にも有効だ。社内ルールや業務プロセスをAIが理解しているため、「この業務の流れを説明して」と聞くだけで、AIが最適な手順を提示してくれる。研修資料を読むよりも、AIに“質問しながら学ぶ”ほうが圧倒的に早く、実践的だ。

「知識のブラックボックス」を解体する

 もう一つの大きな効用が、知識の偏在解消だ。日本企業では長年、熟練社員のノウハウが属人化し、共有が進まないことが生産性のボトルネックとされてきた。

「Company Knowledgeの導入により、チャットや報告書、議事録といった“非構造的情報”がAIの知識として再利用可能になります。これにより、『誰が知っているか』ではなく、『組織が知っているか』という構造へ転換するわけです。AIがナレッジを橋渡しすることで、ベテランと若手の知識格差が縮まり、全社の知的基盤が強化されます」(同)

 言い換えれば、AIが“企業の記憶”を再構築するのだ。

 一方で、この仕組みは強力であるがゆえに、リスクも大きい。

「第一に挙げられるのは、機密情報漏洩のリスクです。AIが接続するデータには、顧客情報や社外秘の戦略、取引条件などが含まれる可能性があります。OpenAIや各AIベンダーは、企業専用環境やデータ分離を強調していますが、接続設定やアクセス権限の管理を誤れば、情報流出のリスクは残ります。特に、『誰が』『どの情報に』アクセスできるかを厳格に管理しなければ、AI経由で機密情報が思わぬ形で再利用される危険もあります。

 第二に、情報の正確性とガバナンスの問題です。AIは学習データの内容に忠実ですが、古い資料や矛盾する情報が含まれていれば、それをもとに誤った回答(ハルシネーション)を出します。そのため、AI導入後も『情報の鮮度』『レビュー体制』『出典の明示』といったガバナンス整備が不可欠です。

 そして第三に、AIへの過信です。AIが正確そうに見える回答を出すことで、社員が最終確認を怠る可能性があります。『AIがそう言っていたから』という理由で誤った判断が下される危険は、むしろ人間側の油断から生まれます」(同)

AIは「答える装置」から「考える同僚」へ

 Company Knowledgeは単なる機能拡張ではなく、人間とAIの関係性そのものを変える技術だ。従来、AIは「社外の知識」をもとに一般的な回答をする存在だった。しかし、企業固有のナレッジにアクセスできるようになることで、AIは組織の文脈を理解する“内部の知性”へと進化する。

 たとえば、マーケティング担当者が「昨年のキャンペーンと同様の施策を提案して」と言えば、AIは過去の資料や議事録を参照し、社内基準に即した提案を返す。これは、もはや「検索ツール」ではなく、「社内の賢い同僚」と呼ぶべき存在だ。

 この方向性は、AIを“企業のOS”として活用する構想と重なる。意思決定、教育、ナレッジ共有──すべての知的活動を支えるプラットフォームとしてのAI。その未来の入口に立っているのが、Company Knowledgeだといえる。

「現状では、Google DriveやSlack、Notionなどのクラウドストレージが主要な接続対象ですが、今後はさらに多様な基幹システムとの統合が進むでしょう。ERP(基幹業務システム)やCRM(顧客管理システム)と連携すれば、AIは財務データや顧客履歴を踏まえた助言も行えるようになります。

 たとえば、経理担当者が『今期の売上傾向を分析して』と尋ねれば、AIが会計データを参照してリアルタイムに回答。営業担当者が『A社の契約更新リスクを評価して』と言えば、過去の交渉履歴や売上推移をもとに提案を返すという光景が、現実のものとなり得るのです」(同)

 つまり、AIが「知識を検索する存在」から「企業活動を伴走する存在」へと変わる時代が始まっているのだ。

ナレッジマネジメントのパラダイムシフト

 この変化は、単に技術的進歩ではなく、知識管理そのもののパラダイムシフトを意味する。

 これまでのナレッジマネジメントは、「情報を集め、整理し、分類しておく」ことが中心だった。

 しかし、AIが介在する世界では、「必要なときに、AIが自動で最も関連性の高い知識を引き出す」ことが主流になる。社員はデータベースを探す必要がなく、AIが代わりに“最適解”を提示する。

 つまり、「人が知識を探す」時代から、「AIが知識を届ける」時代への転換だ。これは、企業の知的生産性の構造そのものを変える。

 とはいえ、技術の進歩だけでは未来は拓けない。AIが社内知識を扱う以上、情報の扱い方、責任の所在、倫理的判断を含めた人間側の統治(ガバナンス)が重要になる。その中心にあるのが「AIリテラシー」だ。

 AIが万能ではないこと、情報の正確性や偏りを常に検証する姿勢を組織全体で共有する必要がある。また、誰がどの情報にアクセスできるか、どのように更新されているかを可視化する仕組みも欠かせない。

 AIを恐れるのではなく、“信頼できる知的基盤”として育てる姿勢が企業に問われている。

 Company Knowledgeが示すのは、単なるツールの進化ではない。それは、企業という“知の集合体”の在り方を根本から変える可能性を秘めている。情報が人から人へと渡るのではなく、AIを介して常に最適化され、全員が同じ知のレベルに立てる。そんな世界が、すぐそこにある。

 だが同時に、その力は「扱い方次第」で善にも悪にも転じる。AIが企業の知を拡張する未来を迎えるために、必要なのはテクノロジーではなく、人間の知恵と覚悟なのかもしれない。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

約半数に“推し”がいる時代、広告・マーケティングに必要な視点とは?

「情報メディア白書2025」(電通メディアイノベーションラボ編、ダイヤモンド社刊)が4月23日に発行されました。情報メディア産業の全貌を明らかにするデータブックとしてまとめられた本白書の発行は、今年で32年目となります。

巻頭特集の「メディアの大変革期、未来を形作る新たなコミュニケーションの地平」では、情報メディア市場や人々の行動のトレンドを解説。本連載では、この巻頭特集の内容を一部を紹介します。

本稿では、2024年9月に電通が実施した「推し活」とメディア利用などに関する調査結果とそこからの示唆を解説します。「推し」の存在が与えるメディア接触への影響に加え、消費全般やウェルビーイングなどの生活への影響をひもときます。

さらには「推し活」を取り入れた広告などのマーケティング・コミュニケーションがどのような効果があるのか、またそれらの「推し」のジャンルによってどういった差異があるかなどについて考察。メディア、クリエイティブ、プロモーションなどの広範なプランニング領域で有効と思われるデータを、電通メディアイノベーションラボの長谷川想が解説していきます。

<目次>
約半数に“推し”がいる!「推し活」の広がりの実態

“推しジャンル”の上位はアーティスト、スポーツ関連、日本のアイドル。年代で傾向に差も

“推しとの出会い”は「テレビ番組」が最多。「推し活」とメディア利用

「推しあり」と「推しなし」で、メディア接触時間には顕著な違い

時間とお金の消費率が圧倒的に高いのは、「日本のアイドル」を推すファン

“推し”の広告起用がファンにもたらす影響の実態は?
 

約半数に“推し”がいる!「推し活」の広がりの実態

近年注目を浴びている「推し活」。近頃はコンテンツやキャラクタービジネスの視点だけでなく、推し活の熱量に期待し、消費の拡大などを目的とした、マーケティングの観点やウェルビーイングの観点からなどでも語られることが多いと感じます。

「推し活」が広まりつつある背景のひとつとして、動画配信・共有サービスやSNSの利用普及など、メディア環境の変化がよく指摘されます。動画配信・共有サービスの多くは自らの趣向に合った動画をいつでもどこでも視聴可能にしています。またSNSは、「推し」に関するコアな情報を日々アップデートすることを可能にし、さらには自己表現の場や、同じ「推し」の仲間とのコミュニティ的な役割を果たしています。

このようにメディア環境の変化と「推し活」は密接に結びついていると言え、特に若者のメディア利用行動の理解を深める上で、「推し活」の実態を知ることは重要になりつつあります。

今回の調査ではまず、「推し」の有無を質問し、無いと回答した回答者にはさらに、「ファンや応援している人・もの」の有無を質問しています。その際に対象として、アーティスト、アイドル、スポーツ選手やチーム、芸人、タレント、俳優、YouTuber、インフルエンサー、VTuber、作家、映像作品、漫画、小説など広く例示を行っています。

その結果、「推し」があるとの回答率は37.8%となりました。また「推し」はいないと回答したものの、「ファン・応援している人・もの」(以降「ファン」と記載)はあると回答した回答者を加えると、合計では47.0%となり、「推し+ファン」は、全体の約半数に及ぶことがわかりました。

図表1は、性年齢別に「推し」と「ファン」の有無を示したものです。


情報白書#2 性年齢別の「押し+ファン」がいる割合 図版1

図表1を見ると男性より女性、中高年層よりも若年層が、「推し」、「推し+ファン」ともに多くなっています。特に女性15~29歳では、4分の3以上が「推し+ファン」があると回答し、最も少ない男性50~69歳でも3分の1弱があると回答しています。「推し」や「推し活」という言葉そのものは若年層により浸透している状況もあり、前述の通り動画配信サービスやSNSなどのメディア接触状況と密接に関係しているとも考えられます。

“推しジャンル”の上位はアーティスト、スポーツ関連、日本のアイドル。年代で傾向に差も

図表2は、性年代別の「推し」のジャンル(複数回答あり)をまとめたものです。(以降、「推し+ファン」を統合して、「推し」と表記)

情報白書#2 性年齢別の「推し」のジャンル(複数回答) 図版2

全体では、「アーティスト・ミュージシャン・音楽家」「スポーツ選手・チーム(野球・サッカーなど)」「日本のアイドル」の3つのジャンルで回答率が高くなり、3つとも複数回答ありで13%を超えました。(「最も推し」としての単一回答でもいずれも7%超え)

それ以降には、「アニメ・漫画のキャラクター」、「日本の俳優、女優、タレント・モデル」、「YouTuber・VTuber」、「アニメ・漫画・小説などの作品」、「国内外で人気のキャラクター、ゆるキャラなど」、「海外のアイドル(K-POPなど)」が続きました。

「推し」の名前について自由回答で質問したところ、ベスト10に、「日本のアイドル」が5つ、「スポーツ選手・チーム(野球・サッカーなど)」が3つ、「海外のアイドル(K-POPなど)」、「キャラクター」がおのおの1つ入りました。

その中で「スポーツ選手・チーム(野球・サッカーなど)」「日本のアイドル」は特定のチームやグループに回答が集まり、反対に「アーティスト・ミュージシャン・音楽家」は回答が大きく分散する傾向となりました。

なお1位はプロ野球の大谷翔平選手、2位は阪神タイガース、3位はSnow Manでした。

性年齢別でもう少し詳しく見ていくと、女性15~29歳は多くのジャンルで「推し」の回答率が高くなっています。また「アニメ・漫画のキャラクター」「ゲームのキャラクター」「ゲーム実況者」「YouTuber・VTuber」などは特に若年層で高く、中高年齢層では低くなるなど、年齢による傾向の違いが明らかとなっています。

一方、男女50~69歳では、「スポーツ選手・チーム(野球・サッカーなど)」や「アーティスト・ミュージシャン・音楽家」が高くなっています。このように性別による違いよりも、年齢による違いが顕著となりました。
 

“推しとの出会い”は「テレビ番組」が最多。「推し活」とメディア利用

以降は、特に女性15~29歳の支持を集めた8つの「推し」のジャンルを抜粋し、解説を行っていきます。図2の薄黄色で網掛けした6ジャンルに加えて、一定のサンプル(回答)数を確保した分析のために、「ゲーム関連(実況を除く)」(薄緑色2カテゴリー分)と「配信者・インフルエンサーなど」(薄青色7カテゴリー分)という合算したジャンルを設定した上での分析結果となります。


図表3はこういった「推し」を最初に知ったメディア(情報源)について尋ねた結果です「最も推し」として単一回答した結果に基づく)。

情報白書#2 「最も推し」を知った情報源(複数回答) 図版3

「テレビ番組」が最も多く、8ジャンルの中で比較すると「日本のアイドル」がテレビ番組で知った「推し」としてもっとも高い数値になっています。

テレビ番組での露出の多さが強く影響していると考えられますが、それ以外でもテレビ番組を通じて知ったとの回答が最多のジャンルが複数あり、テレビ番組が「推し」に出会うきっかけとして強い影響力を有していることがわかります。

一方「ゲーム関連(実況を除く)」や「配信者・インフルエンサーなど」は、インターネット動画がテレビ番組を大きく上回っています。さらに「海外のアイドル(K-POPなど)」も同様にインターネット動画が高くなっています。図表2で明らかになったような各ジャンルを「推し」としている年代構成ごとのメディア接触状況の差異や、当該メディアにおけるコンテンツの流通量が、「推し」を最初に知るメディアの違いに影響しているとも考えられるでしょう。

「国内外で人気のキャラクター、ゆるキャラなど」をはじめとして、SNS(タイムラインやトレンド)、口コミ(家族・友人・知人の紹介)が多くなっているジャンルもあります。SNS上では、トレンドやフォロワーの投稿、おすすめ投稿で知るケースも考えられますし、「推し」の口癖やダンスなどをまねた、いわゆる「ミーム」を通じたものも多く含まれていると考えられます。

また書籍、DVD、グッズなどとの相性が良いジャンルは、会話に登場しやすく、リアルな場での口コミを通じて知るケースも多いと考えられます。これらのデータは、コンテンツビジネスだけでなく、「推し」を使ったキャンペーンのプランニングに際して、有効なヒントになりうるでしょう。

「推しあり」と「推しなし」で、メディア接触時間には顕著な違い

「推し」の有無によって、メディア接触時間がどのように異なるのか、ジャンルごとにまとめたデータが図表4です。

集計の区分は、「マスメディア合計」、DVD・ブルーレイ、書籍(写真集も含む)などの「パッケージメディア合計」、音楽配信、動画共有、動画配信、SNSなどの「インターネットメディア合計」の3種類。この3区分について、1週間あたりのメディア接触分数を示しています。また、比較対象として「推しなし」の回答者のメディア接触時間も掲出しています。

情報白書#2 「最も推し」別の1週間あたりのメディア接触時間(分数) 図版4

図4に示した8つのジャンルすべてで、「推しなし」よりも、メディア接触時間が多くなりました。グラフを見て分かるとおり、接触時間の伸びの多くはインターネットメディアになっています。図表には示していませんが、この傾向はジャンルを問わない年代別の「推し」の有無による差異でも同様です。例えば最も差異が顕著な女性15~29歳では、メディア接触時間合計が「推し」ありでは3487分、「推し」なしでは1188分、インターネットメディア接触合計ではおのおの、2693分と775分になっています。

この傾向は今回掲出した8ジャンル以外でも同様です。おそらく多くの人が自宅外であっても、スマートフォンを通じて好きな時に「推し」の動画やSNSにふれられることから、インターネット接触時間が長くなり、結果としてメディア接触時間全体が長くなっていると言えるでしょう。

マスメディア合計では、「アニメ・漫画・小説などの作品」「アーティスト・ミュージシャン・音楽家」「日本のアイドル」を推す人々の接触時間が多くなっています。この結果はテレビ視聴とやや距離がある若年層の含有率が比較的高めのジャンルであっても、「推し」が登場することでテレビ番組の視聴が促されるという仮説の信ぴょう性を高めるものです。

一方インターネットメディア合計では、「配信者・インフルエンサーなど」と「海外のアイドル(K-POPなど)」が多くなりました。ライブ配信が多い、長時間のコンテンツが多い、視聴可能な動画コンテンツ種類が豊富なことなどから、インターネットメディア合計の接触時間が増えていると考えられます。パッケージメディア合計については、大方の想定どおり「アニメ・漫画・小説などの作品」が最も多い接触時間となりました。

では、具体的にどういったメディアの接触時間が伸びているのでしょうか。図表5は、全ジャンルにおける「推し」の有無で区分集計した、主なメディアの1週間あたりの接触時間となります。

情報白書#2 1週間あたりのメディア別接触時間(推しあり・推しなし) 図版5

「推し」の有無に関わりなく、テレビ(地上波・BS・CS)が最も長く、YouTubeがそれに続く接触時間となりました。一方「推し」の有無による接触時間の伸びを確認すると、X(旧Twitter)の伸び率がほぼ4倍と、最も高い結果になりました。

また、本図表では示していませんが、図表4で取り上げた8ジャンルをそれぞれ個別に分析した結果でも、X(旧Twitter)の接触時間はすべて「推しなし」の2倍を超える伸び率になることが分かりました。これは他のメディアにはない結果で、本稿の冒頭で立てた仮説を証明するものです。X(旧Twitter)は日々のコアな情報のアップデートやコミュニティ形成のための鍵となるメディアとして、大きな役割を果たしていると考えられるでしょう。

時間とお金の消費率が圧倒的に高いのは、「日本のアイドル」を推すファン

本調査では自由に使える時間とお金のうち、どれくらいの比率を「推し活」に投資しているかについても調査しています。その結果を「最も推し」のジャンル別にプロットしたものが図表6になります。

情報白書#2 「最も推し」別推し活の「時間と消費のエンゲル係数」 図版6

X(横)軸が時間、Y(縦)軸がお金となりますが、一見してわかるように「日本のアイドル」が他を圧倒して時間も金銭も投資している比率が高いとわかります。この結果を分析すると、下記の影響によって、時間比率が突出していると考えられます。

・さまざまなメディアに多くのコンテンツがある
・コンサートや握手会などのイベントといった過ごし方のオプションも豊富にある

また消費に関しても、コンサートやイベントなどへの参加費に加え、パッケージメディアやさまざまなグッズの購買も考えられます。ビジネスとして成熟した結果、そのすそ野が広がっていると想定され、消費額比率も高いのではないでしょうか。

時間比率の優位(グラフ右下方向)ジャンルとしては、「配信者・インフルエンサーなど」、「海外のアイドル(K-POPなど)」がプロットされました。これは、前節で述べたとおり、インターネットメディアの接触時間の長さが寄与していると思われます。

一方金銭比率の優位(グラフ左上方向)ジャンルには「アニメ・漫画のキャラクター」がプロットされました。これにはフィギュア、アクリルスタンド、クリアファイル、缶バッジ、ぬいぐるみなどさまざまなグッズなどを扱うマーチャンダイジングのすそ野の広さが影響していると考えられます。

時間比率優位なジャンルは、「推しと同じ空間・時間を共有したい」「あの瞬間の感動が忘れられない」「ファンの一体感を味わいたい」といった気持ちが強い傾向があり、いわば“フロー型推し活”と呼べるでしょう。

一方金銭比率優位なジャンルは、「自分の好きな空間を推しで満たしたい」「コレクションが増えていくのがうれしい」といった気持ちが強い傾向があるとみられ“ストック型推し活”と呼べます。

また「いつでも推しを感じていたい」といった心理は、インターネット動画の視聴のような時間消費で満たされることもあるでしょうし、グッズを購入して手元に置くような金銭消費で満たされることもあると言えるでしょう。

“推し”の広告起用がファンにもたらす影響の実態は?

図表7は、「推し」が広告に起用されることで、その商品やサービスに関して、どういった気持ちになるかの質問に対する回答結果になります。

情報白書#2 「最も推し」が広告に起用された場合の気持ち 図版7

8ジャンル以外も含めた全体を通して、「商品・サービスの広告をすべて最後まで見聞きする」、「商品・サービスを意識するようになる、目にとまるようになる」、「商品・サービスに興味・関心がわく」などの認知や興味喚起のスコアが高くなりました。これはわかりやすい広告効果と言えるでしょう。

「日本のアイドル」は、「推し」のすそ野も広く、広告の視聴や注目に効果があると確認できます。一方「アニメ・漫画・小説などの作品」は、「商品・サービスを詳しく調べたくなる・問い合わせたくなる」に加え、「商品・サービスを欲しくなる・利用したくなる」という項目で特に高くなりました。アニメ作品などとの企業のタイアップキャンペーンが多く実施される今日、調べたい、購入したいなどの行動喚起にきちんと効果があることが確認できました。

さらに、キャラクター関連のジャンルについては、多くの項目で上位になっています。日本はかねてよりキャラクター文化が根付いており、自治体などの「ゆるキャラ」も含めてキャラクターが多くの場面で活用されていますが、広告やマーケティングにおいても、幅広い効果があると言えるでしょう。 

今回の調査では、「推し」が起用されたキャンペーンや広告などについて、印象に残ったものを、その理由とともに自由回答で質問を行っています。「推し」が起用されている商品やサービスへの好意度が高いことはもちろん、熱量のある回答の中には、トラブルがあったときでも「推し」の広告起用を中止しなかった企業に対して、企業そのものに感謝するような回答も複数ありました。

SNS上では、個人のものも企業からのものも、その投稿などは同じタイムライン上に表示されますが、企業のスポンサーシップも「推し活」と同じように考えることもでき、自らの「推し」を推す企業は、“同志”や“同担”のような見え方になっているとも考えられます。

生活者の興味関心やメディアが細分化し、商品の多くがコモディティ(汎用)化する中、マーケティング・コミュニケーションを展開していく上では、リーチだけを追求すれば良いという時代は過去のものになりつつあります。

その状況に対するひとつの解として、企業自体が「推し活」の視点を取り入れてみてはどうでしょうか。広告に起用するといった視点をアップデートし、企業として「推し活」に参加するという考え方でプランニングを行うということです。それが単発ではなく持続的であれば、企業への共感が誘発され、さらにはその共感がSNSなどを通じて好意的に拡散していくかもしれません。

冒頭にも述べましたが、「推し」もしくは「ファン」がいるとの回答率は47.0%となりました。また「推しがあることで、日々の生活が楽しく、充実して感じられるようになった」という人は、65.5%に上ります。つまり、生活者の3分の1が、「推し」によってポジティブな生活を感じているということです。

今回「推し」に注目した理由のひとつに、一部で広告が嫌われ者になっているような風潮がある中、「メディア、コンテンツ、広告との幸せな関係」を再構築する役割を「推し活」が果たしうるのではないかとの仮説がありました。まだまだ検証の途上ですが、紹介してきたデータなどを、マーケティング・コミュニケーションやコンテンツビジネス領域などでのプランニングのヒントにしていただければ幸いです。

【調査概要】
調査時期:2024年9月
調査手法:ウェブ調査
調査エリア:全国
サンプルサイズ:4,925(SC調査)、1,374(本調査:「推し」あり)、720(「推し」なし)
対象者属性:男女15~69歳
 
分析における各ジャンル(「最も推し」)のサンプルサイズ
日本のアイドル:232
海外のアイドル(K-POPなど):88
アーティスト・ミュージシャン・音楽家:216
アニメ・漫画のキャラクター:113
アニメ・漫画・小説などの作品:41
ゲーム関連(実況を除く):51
国内外で人気のキャラクター、ゆるキャラなど:55
配信者・インフルエンサーなど:109


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都市と地方をめぐることが、訪日旅の新たな醍醐味に。インバウンド地方回遊を促す3つの視点

ジャパンブランド調査は2011年にスタートした電通オリジナルの海外大規模調査です。訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流など、日本全般に関する海外生活者の意識と実態を把握することを目的としています。15年目を迎えるジャパンブランド調査2025では、過去最大規模の20の国・地域(調査概要)、20を超える産業分野、10を超えるテーマを網羅したデータとなっています。

第1回では、観光および持続可能な未来に焦点を当てながら、調査結果を広くご紹介させていただきました。

第2回の今回は「地方観光」に焦点を当て、持続可能な観光の実現における「地方」の重要性に着目。調査から見えてきた海外生活者からのまなざしや、さらなる誘客に向け意識すべき視点をご紹介していきます。全国の観光事業者・自治体などで訪日外国人の誘客に取り組まれる方々の参考になれば幸いです。

<目次>
持続可能な訪日観光に向けて「地方回遊」は不可欠なピース
満足度&再訪意向90%超!「地方をめぐる」旅行こそ、日本の醍醐味に
「地方回遊」を促すために意識したい「ルート・シーズン・コンテンツ」の視点
「都市と地方をめぐる旅」が持続可能な訪日観光を築く

 

持続可能な訪日観光に向けて「地方回遊」は不可欠なピース

2024年、日本を訪れた外国人は3687万人と過去最多を記録しました。これは、コロナ前に最多を記録した2019年の3188万人を上回り、30年前である1995年の334万人からは10倍以上増加したことになります。2025年は、上半期(1-6月)で過去最多の約2151万人を記録し、年間4000万人達成ペースで推移しています。

一方で、その内訳を見ると、訪問先の地域別の偏りが顕著に見られています。観光庁発表のデータからは、2024年の都道府県別の訪日客数を確認できます。1位は東京都の1446万人、2位は大阪府1288万人、3位は千葉県1064万人と都市圏への偏りが見られます。これに対して下位は、島根県4.3万人、福井県5.2万人、高知県は7.1万人となっています。

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訪日客数の過度な集中は、地域社会へ少なくない影響をもたらしています。「オーバーツーリズム」が社会課題として認識されてすでに久しいですが、観光客の過度な集中によって地域の深刻な交通渋滞やごみの増加などの「環境的影響」、ホテルや飲食店の物価上昇などの「経済的影響」が起きています。

このような状況に対し、観光庁は2023年に「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を取りまとめ、その柱の1つに「地方部への誘客促進」を掲げています。

地方部の経済活性はもちろんのこと、2025年の訪日観光客が4000万人を超える見込みの中、「住んでよし、訪れてよし」の持続可能な観光の実現に向けて「地方回遊」は国全体の観光振興の不可欠なピースとなっています。

満足度&再訪意向90%超!「地方をめぐる」旅行こそ、日本の醍醐味に

ジャパンブランド調査2025からは、国別での地方訪問の傾向の違いや、ユーザー目線からの「地方回遊」の価値が見てとれます。

訪日経験のある海外生活者に対して、直近の訪日旅行で「都市部のみ(東京、大阪、京都、名古屋)」「地方部のみ」「両方を訪れた」のかを尋ねた調査結果では、国・地域間において大きなばらつきがあることが明らかになりました。例えば東アジアにおいても、韓国は「都市部のみ」の旅行実施率がおよそ70%、中国本土・台湾・香港は「地方部」の訪問がおよそ50%となっていました。

地方部を訪問した訪日客のうち、地方観光の満足度は96.2%、また訪れたいという回答は93.4%となっており、地方観光の高い満足度と再訪意向が明らかになりました。この傾向は調査対象すべての国・地域で共通でした。この数値は、地方回遊を促すことが、日本の持続可能な観光を推進するだけでなく、訪日客目線でも満足度の高い訪日経験につながるWin-Winな取り組みであることを示唆しています。

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一方で、海外生活者において、都市部に対し地方部の「認知度」や「訪問意向」が明確に低いことは依然として課題であると言えます。都道府県別では、「東京都」が「認知」「経験」「意向」ともに他を圧倒して高く、次いで「北海道」「大阪府」「京都府」が他県と大きく差をつけています。

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ジャパンブランド調査2025では主要都市についても同様に聴取しています。「札幌市」「大阪市」「京都市」はやはり群を抜いて高い認知・経験・意向を誇り、認知度でいえば「福島市」「横浜市」「広島市」が比較的高い傾向にありますが、経験・意向に差はあまり見られません。

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では、「誘客に向けて、うちの地域も注目を集めていこう!」となったとき、多様な海外市場に対して何をしていけばいいのか、悩むことも多いと思います。また、都市部の自治体や観光事業者に比べて、予算にも比較的限りがあると推察されます。そこで、今回は公的統計やジャパンブランド調査を活用し、地方回遊を促す上で意識したい3つの視点もご紹介します。

「地方回遊」を促すために意識したい「ルート・シーズン・コンテンツ」の視点

地方部に訪日客を誘客する上で意識したい視点として、

「ルート(=訪日客が物理的に地方に来ることのできる経路は何か?)」
「シーズン(=訪日客が特に来たいと感じる時期はいつか?)」
「コンテンツ(訪日客が特に目当てにしてくれそうな魅力・体験は何か?)」

の3つの視点があると考えています。
 
まず「ルート」の視点です。地方部における都市部との最大の違いは「海外からのアクセス性」言い換えれば「訪日客の輸送力」にあります。

日本国内には97の空港がありますが、2025年夏の国際旅客定期便数(国土交通省発表)を空港別で見てみると、成田国際空港、東京国際空港(羽田)で約50%を占め、関西国際空港で25.5%、中部国際空港で5.8%、福岡空港で8.4%となり、その他地方空港で12.1%となっています。

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国際便の運航がない空港も全国には多くありますが、訪日客がまず日本に訪れる入り口がある程度限定的であることが分かります。地方の観光地がまず念頭に置くべきは、「どの空港および空港付近のエリア」から訪日客を呼んでくるかという視点です。例えば九州の観光地であれば、最寄りの国際便のある空港に加え、福岡空港からの誘客も検討する必要があります。

加えて、参考になるのが各空港に「どの国・地域から訪日客が来ているか」を把握することです。法務省が発表している出入国管理統計からは、空港別で国・地域からの来訪者を分析することができます。

例えば、羽田空港は米国・ヨーロッパからの来訪が4割近くある一方、成田空港はアジアからの来訪が7割を占めています。また福岡空港は過半数が韓国からの来訪になっていて、地域別の傾向が明確にあることがわかります。

このことから、例えば九州においては、韓国からの観光客を念頭に置いたプロモーションや受入体制の整備が基盤となりそうです。

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この最寄りの主要空港に訪れる訪日客がターゲット市場のベースになり、そこからバス・電車・新幹線などによる陸路の交通網や輸送力を考慮していくことが、地方部におけるターゲット国・地域を分析する視点になると思います。

続いてシーズンの視点です。訪日旅行で関心のある体験としては、1位が「和食を食べること」2位が「自然景勝地」3位が「四季の体験」となっています。

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上の表から国・地域別の特徴も見てとることができます。和食は欧米豪も含め全体的に意向が高く、四季体験は特に気候が異なる東南アジア地域で人気となっています。和食・日本の自然景勝地は「季節」や「旬」との関連性が非常に高いため、訪日客を誘客できるような「シーズン」を見定めることも重要となります。

訪日観光で海外生活者が「最も訪れたい」と答えた季節は「桜シーズン」となり、「その季節ならではの景色を楽しみたい」という訪問理由がトップになっています。一方で、桜シーズンに次ぐ訪日時期については、国・地域によって関心が分散する傾向があり、欧米は「夏休みシーズン」東南アジアや台湾は「雪シーズン」への関心が高いのが特徴です。季節を意識した、ターゲットや魅力への着目も地方誘客の重要な視点となるでしょう。

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最後に「コンテンツ」の視点です。前述のとおり訪日体験では、「自然景勝地」や「四季体験」の関心が高い結果となっていましたが、「自然体験」の関心についてさらに細かくみていきましょう。

図表9を見ると、「桜の花見」に次いで「温泉入浴」「自然散策」の他「紅葉狩り」「花火大会」「星空観察」「フルーツ狩り」などが人気であり、山岳・海洋・河川などのアクティビティはまだ注目を獲得できる余地が見られます。

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日本は森林地域が国土の2/3を占め、山が多く河川にも恵まれた自然環境が特徴ですが、その特徴を生かした体験の磨き上げが全国的な課題といえそうです。近年は、混雑していない地域やまだ知られていない景色の価値も高まっているため、地方部における自然景勝地に今一度目を向けてみてはいかがでしょうか。

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参考:地方で光るジャパンブランドとは?訪日客を地方に呼び込むための3+1のコト
 

「都市と地方をめぐる旅」が持続可能な訪日観光を築く

今回は、「日本の地方観光」に着目し、持続可能な観光・訪日客の満足度獲得に向けたポテンシャルと、さらなる地方誘客に向けた3つの視点を公的統計や調査結果をもとに考察してきました。オーバーツーリズムが指摘される中で、訪日観光の地域・時期の分散は今後も大きなテーマとなります。また訪日客としても、地方を訪れる観光の満足度・再訪意向は高いため、継続的な訪日リピーター獲得の重要な要素となります。

「地方観光」に限らず、観光の促進は観光庁が掲げるように、「住んでよし、訪れてよし」と地域住民にも配慮され進められることが大前提と考えます。ただその中で、「地方観光」が官民で促進される現在の国内機運は、今よりももっと多くの人たちに自分たちの地域を好きになってもらえる、千載一遇のチャンスと捉えることもできます。

ジャパンブランドプロジェクトチームとしても、今回の「ルート・シーズン・コンテンツ」の視点に限らず、地方観光の持続可能な促進に、ぜひ貢献していきたいと思います。

【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社電通 ジャパンブランドプロジェクトチーム
japanbrand@dentsu.co.jp

【電通ジャパンブランド調査 実施目的】
2011年、東日本大震災で日本の農水産物や訪日旅行に風評被害が発生した際に、ジャパンブランドが世界でどのように評価されたかを把握するために始まった電通の独自調査。2022年、調査設計・分析アプローチおよびアウトプットを抜本的再構築し、専門性を高める全社横断プロジェクト活動へと進化。2025年、一般向けナレッジポートフォリオを新たに企画・構築し、生活者インサイトに立脚した社会的価値の創出を目指す。
ジャパンブランド調査では、訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流などジャパンブランド全般に関する海外生活者の意識と実態を定期的に把握。変わりゆく生活者の気持ちとジャパンブランドの課題・可能性を可視化し、複雑化が進む企業活動に寄与するとともに、日本社会における異文化理解の促進にも貢献する。
 
【電通ジャパンブランド調査2025 調査概要】
・対象エリア:20カ国・地域※1(アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、サウジアラビア、インド、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、中国本土、香港、台湾、韓国)
・対象者条件:20~59歳の男女(中間所得層以上)※2
・サンプル数:12400(内訳:アメリカ・中国本土 各1600、インド1200、韓国・台湾・イギリス 各800、その他の国・地域 各400)※3
・調査手法:インターネット調査
・調査期間:2025年5月20日~6月22日
・調査機関:株式会社電通(調査主体)、株式会社ビデオリサーチ(実施協力)

【注記・免責事項】
※1:中国本土の対象エリアは上海・蘇州・北京・天津・広州・深セン・成都・重慶、インドの対象エリアはデリー・ムンバイ・ベンガルール、オーストラリアはシドニー都市圏、東南アジアは主にメトロポリタンエリアに限定。 
※2:中間所得層の定義:OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定。
※3:各国・地域とも性年代別に均等割付で標本収集し、人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。
※4:本調査における構成比は小数点以下第2位(一部整数表示の場合は小数点以下第1位)を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※5:本調査レポートおよびウェブサイトからの情報発信における対象国・地域の名称表記は、従来からの日本政府の見解、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものです。
※6:本調査の図表作成において、分析対象となる国・地域名は一部例外を除き、国際基準ISOカントリーコード(ISO 3166-1 alpha-2)を使用しています。
アメリカ/US、カナダ/CA、オーストラリア/AU、イギリス/UK、ドイツ/DE、フランス/FR、イタリア/IT、スペイン/ES、サウジアラビア/SA、インド/IN、インドネシア/ID、シンガポール/SG、マレーシア/MY、フィリピン/PH、タイ/TH、ベトナム/VN、中国本土/CN、香港/HK、台湾/TW、韓国/KR
※7:本調査における国・地域の名称表記は、統計上または分析上の便宜を目的としており、いかなる政治的立場や見解を示すものではありません。
※8:本調査で使用した地図(世界地図および日本地図)は分析内容やページのレイアウトに合わせて一部加工・トリミングを行っており、必ずしも国境線および国土範囲を正確に反映したものとは限りません。

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学生たちと考える、「わかりあえないこと」の先にある可能性

アドミュージアム東京で、6月25日(水)から8月30日(土)まで開催された「わたしたちはわかりあえないからこそ展」。本展ではさまざまな広告事例を通じて、ジェンダーにまつわる課題や「わかりあえないこと」の先にあるコミュニケーションの可能性が探られました。

7月30日(水)、dentsu Japan DEIオフィスがお茶の水女子大学の「サマープログラム」の一環として、本展を活用したワークショップを開催。ジェンダー課題に関する講義とワークを行いました。本記事ではその様子をレポートします。

企画展をフックにジェンダー課題を自分事として捉えてもらう

今回のワークショップの目的は、参加した学生たちが企画展を見学して気づきを得るだけでなく、自分たちにできることやジェンダー課題解決のアイデアまで考えること。ワークショップは2部構成で、前半は「わたしたちはわかりあえないからこそ展」を見学、後半はグループに分かれて2つのワークを実施しました。

参加したのは、サマープログラム受講生であるさまざまな国・地域からの留学生、お茶の水女子大学の学生および附属高校の生徒たち約60人。男子学生も数人参加し、多様な学生たちが集まりました。また、講義やコミュニケーションはすべて英語で行われました。

展示作品から浮かび上がる、日本のジェンダーギャップ

ワークショップ前半は、アドミュージアム東京で企画展を見学。最初に講師の兼崎知子さん(電通/クリエイティブディレクター)から、日本のジェンダーギャップ指数が146カ国中118位(2024年 World Economic Forum調査結果)であるという実態のほか、dentsu Japanが取り組むブランディングの仕事や、ブランディングが時にステレオタイプを生み出す可能性があることなどが語られました。また、本企画展の制作に関わった明田川紗代さん(電通/コピーライター)からは、企画展の背景について説明がありました。

dentsu Japan DEI
dentsu Japan DEI

その後は、4つのグループに分かれて展示をまわりつつ、数ある展示の中からピックアップされた2つの作品について、dentsu Japanでジェンダー課題やクリエイティブ制作に長く携わるスタッフが複数人協力し、英語で広告作品の説明を行いました。

働く中での「ジェンダーに関する違和感」を可視化

企画展では、「新しくしてみる」「声をあげてみる」「データから考えてみる」などのテーマごとに作品を展示。ジェンダー平等を訴える企業広告のほか、「女性らしさ」の偏見、性暴力、生理への間違った認識といったさまざまな課題にアプローチする取り組みなど、国内外の多様な事例が紹介されていました。

ワークショップで焦点を当てた展示の一つが、求人検索サイトを展開するインディードジャパンの企業広告。この広告は、同社が実施した「ジェンダーギャップに関する意識調査」の結果を「これでいいのか?」というコピーとともに、グラフィック広告としてビジネス街の主要駅などに展開されたものです。説明後、広告の詳細や広告展開後の取り組みについて学生たちが質問する場面もありました。

dentsu Japan DEI
ハロー、ニュールール!/インディードジャパン

この広告は、職場や仕事探しにおけるジェンダー課題を解消するためのキャンペーン「ハロー、ニュールール!」の第一弾として作られたもの。調査の結果から、ジェンダーギャップを解消した方が良いと考える人が6割以上いる一方で、身近なテーマと捉える人は2割以下であることなどが明らかになりました。

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(右)広告作品の解説をする飯沼瑶子さん(電通/プランナー)

東京大学に女性が少ないのはなぜ?学生たちのリアルな声がポスターに

二つ目は、東京大学が学内に掲出した「なぜ東京大学には女性が少ないのか?」と問うポスター。女性が少ない原因を可視化して問題提起を行ったポスターの制作背景や意図を説明しました。

#言葉の逆風:なぜ東京大学には女性が少ないのか?/東京大学 多様性包摂共創センター ジェンダー・エクイティ推進オフィス
#言葉の逆風:なぜ東京大学には女性が少ないのか?/東京大学 多様性包摂共創センター ジェンダー・エクイティ推進オフィス

東京大学の学生や研究者が性別にもとづいて投げかけられた言葉をアンケート調査し、集まった回答をもとにポスターを作成。センシティブな内容も含まれるため、寄せられた回答はポスターをめくることで見られる仕組みになっています。

説明後、dentsu Japanスタッフが学生たちに感想を尋ねると、イタリアやオーストラリアなど多様な国籍の学生たちが自国の大学事情について話す場面も。日本の学生はもちろん、留学生たちも自分事として捉えて考えている姿が見られました。

(左)広告作品の解説をする坂本陽児さん(電通/クリエイティブプロジェクトプロデューサー)
(左)広告作品の解説をする坂本陽児さん(電通/クリエイティブプロジェクトプロデューサー)

多様な視点でジェンダー課題を知るきっかけに

企画展ではそのほかにも、体験型のインスタレーションとして社会に潜むアンバランスを体感できる「データから考えてみる」シーソーや、多様な質問に回答して他者との答えの違いを知る「問いかけてみる」テーブルなども展示。実際に手を動かしながら体験する学生たちもいました。

「データから考えてみる」シーソーを体験する学生
「データから考えてみる」シーソーを体験する学生

企画展での気付きをヒントに、具体的なアイデアを考えるワークを実施

後半は、dentsu Japanの汐留オフィスに移動してワークを実施。企画展での気付きを生かしながら、具体的に自分たちができることやアイデアをグループワークで考えました。

わかりあえないからこそ私たちにできることは?

一つ目のワークは「私たちはわかりあえないからこそ、○○する」の、○○に当てはまる内容を考えるもの。

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学生からは、「話しやすい環境を作る」「相手の発言や行動を受け入れるだけでなく、背景について思いをはせる」などさまざまな意見が出ました。そのほか「違いを楽しむ」というポジティブなアイデアも。

それぞれのグループにdentsu Japanスタッフがサポートに入り、時にアドバイスをする場面も。限られた時間の中で、活発な議論が行われていました。
それぞれのグループにdentsu Japanスタッフがサポートに入り、時にアドバイスをする場面も。限られた時間の中で、活発な議論が行われていました。
それぞれのグループにdentsu Japanスタッフがサポートに入り、時にアドバイスをする場面も。限られた時間の中で、活発な議論が行われていました。

生理についてオープンに話すには?

次に実施したのが「生理についてオープンに話すためのアイデア」を考えるワーク。ワークの前にdentsu Japanメンバーから、生理をテーマとして扱った広告やコミュニケーションツールなどディスカッションのヒントとなるような事例が共有されました。

ワークでは、いきなりアイデアを出し合うのではなく、生理をオープンに話すことについてどう思うかなど個人的経験のシェアから始めるグループもありました。多様なバックグラウンドの学生が集まっていたため、「生理の話題を男性ともオープンに話せるかどうか」など、生理に対する考え方や課題感にも違いが見られました。

ワークの後に、それぞれのグループがアイデアを発表。多くのグループから、「学校での性教育」「男性にも正しい情報を知ってもらうための取り組み」が大切だという意見があがりました。

お茶の水女子大学

最後はdentsu Japanメンバーから学生たちに向けてコメント。「自分とは異なる意見でも相手を否定せず、そこからよりよいアイデアにつながるよう議論している姿が印象的だった。皆さんのアイデアやジェンダー課題に向き合う姿勢に刺激を受けた」と話し、ワークショップを締めくくりました。


【ワークショップを終えて】

・お茶の水女子大学 キャロル マイルズ先生
今年のお茶の水女子大学サマープログラムでは、ジェンダー、多様性など幅広いテーマが取り上げられ、広告業界がこれらの課題をどのように取り組んでいるかを目の当たりにでき、大変有意義でした。「わかりあえないからこそ」をテーマにした展示と生理についてのワークショップは、多様化が進む現代社会において、他者とより寛容に向き合う方法を考える貴重な機会となりました。

・電通 クリエイティブディレクター兼崎知子さん
生理ほど、「わかる」と「わからない」がはっきりしているものはない。と、同時に国を超えても痛みは同じ。わかりあえないことをわかるようにできるだろうか。それは、私たちの原点(カンヌ帰りホヤホヤから、PR、マーケティング、生理プロジェクトに関わるメンバーまで)。今夏は、電通での体験を豊かにするためにDEIオフィスの半澤さんとプロ知能とスキルを集結。学生たちの熱と「世の中はもっと良くなる」と信じる姿勢を目の当たりにし、大事なテーマと向き合う勇気をもらった。帰り際、参加者の1人が「去年の参加者から絶対にいい体験だから行ったほうがいいと言われ参加したんです。来てよかった」と言葉をかけてくれた。電通の仲間を心から誇りに思うと同時にこの連携がつづくことこそGlobal Presence Upの一歩になると確信した。


dentsu JapanのDEIに関する取り組みは以下をご覧ください。
https://www.japan.dentsu.com/jp/deandi/

【問い合わせ先】
dj-dei-office@dentsu.co.jp

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AIが働き方も学びも行政も変える…生成AI時代の人的資本戦略の最前線

●この記事のポイント
・「AIは人の仕事を奪う」から「AIが人を成長させる」へ。
・生成AI時代の人材戦略を先進事例から探る『GenAI HR Awards 2025』が幕張メッセで開催された。
・企業、教育、自治体など多様な現場で、AIが“人の力”を引き出している。

 一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)が主催する「GenAI HR Awards 2025」の最終審査・表彰式が10月9日、幕張メッセ開催の展示会イベント「NexTech Week 2025 AI・人工知能EXPO【秋】」会場内で実施された。

 本アワードの趣旨は、生成AI時代における人的資本戦略の優れた実践事例を発掘することや、組織内外で生成AI活用を推進している人々を称えることにある。そのうえで、人と生成AIが協働する社会の実現に向けたヒントや、先進的な事例を世の中に広げていく場としたい考えだ。

 最終審査では、ファイナリストが10分間のプレゼンテーションと5分間の質疑応答を行う形式を採用。アワードは「企業セクター(中小企業)」「企業セクター(大手企業)」「教育セクター」「公共セクター」の4部門で構成され、グランプリが選出された。

SALES ROBOTICS──AIが“時間”を取り戻す

 企業セクター(中小企業)部門のグランプリは、BPO支援を手がけるSALES ROBOTICS株式会社が受賞。テーマは「AI利用率98.7%。『AIが当たり前』の組織文化が、新たな顧客価値を創造する」だ。

 同社は、BPO業界が抱える構造的課題や慢性的な人材不足、ノンコア業務の増加によって顧客対応の時間を確保しにくいという現実を背景に、「5年後も事業を継続できるのか」という危機感のもと、生成AIの本格導入に踏み切った。

 目の前の顧客に向き合う時間を増やすことを目標に、組織体制の構築では現場主体の推進を意識。経営層はその体制を支えながら、現場が自らの課題としてAI活用に取り組める環境づくりに注力した。

 人材育成においては、学び続けるマインドを重視。日々の業務の中で生まれる問いを明確にし、その解決にAIを活用するという循環的な仕組みを整備した。たとえば、既存システムにAIを組み込み、「AIなしでは業務が回らない」環境の構築にも取り組んだ。

 その結果、2025年6月時点で社内の生成AI利用率は98.7%に達し、利用頻度も半年で2.5倍に増加したという。審査員は、「BPOという受け身の業務構造を、生成AIの導入によって主体的な人間回帰型の働き方へと変えた点に感銘を受けた」と評価した。

ソフトバンク──AIが“成長機会”を創る

 企業セクター(大手企業)部門のグランプリは、ソフトバンク株式会社が受賞。テーマは「人的資本経営を基軸とした全社生成AI活用と価値最大化の仕組み」だ。同社はAI戦略の推進において、「テクノロジーを扱う人の意識と能力」を重視し、人材戦略を構築。

 社員が自ら未来を選び取り、成長をデザインできる機会を提供しており、生成AIやクラウドセンターなど新たな領域にすでに1,000名がシフトしたという。

 全社員が生成AIを活用できる環境づくりにも注力し、安心してAIを利用できる基盤整備、学習機会の提供、活用促進施策の実施。また、ガバナンス体制の整備により、安全な利活用を推進している。全社員向けのAI人材育成プログラム「AI Campus」では、レベルに応じた学習が可能で、2025年7月時点でAI関連資格を保有する社員は全体の約13%に達した。

 さらに、日本一生成AIを活用する企業を目指すにあたって、新しい事業を生み出すことと、業務効率向上を両立させ、そこで生まれた時間を次の挑戦へとつなげる好循環を生み出すことに挑んでいる。その象徴的な取り組みが、全社員参加型の「生成AI活用コンテスト」だ。現在11回目を迎え、これまでに累計26万件を超えるアイデアと1万件以上の特許出願を生み出し、優れた提案は実際の事業化にも結びついている。

 審査員は「取り組みの規模・多様性・成果のどれをとっても素晴らしく、日本の生成AI活用におけるベストプラクティスになるもの」と評価した。

麻生塾──AIが“学び”を変える

 教育セクター部門のグランプリは、学校法人麻生塾が受賞した。テーマは「独自開発AI『Alis』が切り拓く教育DX!教職員の能力を最大化し、学校全体の人的資本価値を高める麻生塾の挑戦」だ。

 教育現場には課題がある。学力を伸ばすには個別指導が効果的だが、リソースには限りがあるため、従来型の一斉授業により成果に伸び悩む中間層が多かった。そのためAI活用が求められる一方、従来のChatGPT活用法を発信しても、なかなか普及が進まなかったという。

 そこで開発されたのが、麻生塾専用AI「Alis」だ。授業資料作成や類題問題生成など、約40の機能を搭載している。

 発表では、AIを活用した授業の実例として「SQL」の授業が紹介された。SQLは生徒から人気が低く、成績も伸び悩む科目だった。そこでAlisを活用し、授業をゲーム風の動画に生成することで、生徒が楽しみながら学べるように改善。さらに授業を早く終えた生徒には、教員キャラクターと対話できるチャットボットを用意し、質問や問題出題を通じて生徒のレベルに合わせた学習を提供した。

 その結果、学年平均点は161.9%に向上。授業コマ数は半減し、準備工数も75%削減と、目覚ましい成果が確認された。発表を行った藤澤昌聡氏は「AIはズルの道具ではなく、学生のための愛。この愛をもって明るい教育改革を進めていきたい」と語った。

 審査員は「AIによるみんながワクワクする教育を実現した事例で、強烈なインパクトを残した」と評価した。

南あわじ市──AIが“行政”を進化させる

 公共セクター部門では、兵庫県南あわじ市役所がグランプリを受賞した。テーマは「自ら開発・実装する!人材育成とサービス向上の両立を目指す南あわじ市の挑戦」。市長の守本憲弘氏が情報課長とともに登壇した。

 同市は「最強の市役所」の実現を掲げ、人材育成に注力している。2022年には業務効率化に向け、自前でDXを推進する「DX人材育成プロジェクト/DIYプロジェクト」を始動し、職員自身がDIYでDXに取り組める体制づくりを進めた。

 DIYグループの取り組みとして、3つの事例が紹介された。1つ目は、移住支援サイト「住みニコ」へのAI検索システム導入。従来、電話問い合わせが多かった原因はサイト内検索で必要な情報にたどり着けないことにあり、RAGによるAI回答システムを導入で効率化を推進した。

 2つ目は、庁内問い合わせ向けのAI検索システムだ。公共建築には細かいルールがあり、国交省マニュアルが膨大のため、AI検索システムを構築。AIが現場状況を考慮しない回答をする点を補うため、回答時には関連するマニュアル項目を5件表示する仕組みを採用した。

 3つ目の事例は、ごみ分別ガイド「わけるんです♪」の開発だ。従来Excelで公開していた分別リストは問い合わせが多く、外国人人口の増加も課題だったため、多言語対応アプリを開発。PythonやHTMLコードの作成には生成AIを活用し、問い合わせ件数が減少した。

 審査員は「市長自らが AI 活用推進に取り組む素晴らしい発表。日本全国のロールモデル自治体として広く知っていただきたい」と評価した。

 最後に大会全体を振り返り、審査員長の山本貴史氏は「深みのあるプレゼンは、日々の苦労の証だ」と述べ、出場者へ敬意を示した。

(取材・文=福永太郎)

中古マンション平均1.1億円の衝撃…止まらぬ価格上昇、どうすれば家を買える?

●この記事のポイント
・東京23区の中古マンション平均価格が初の1.1億円超え。新築の高騰で実需が中古市場に流入し、価格差はわずか2割に。実需と投資マネーが交錯する「構造的高騰」が進んでいる。
・新築用地の不足と建設費高騰により供給が減少し、「高くても売れる」状況が続き、築浅中古も新築並みの価格になっている。都心では海外投資家の買いも増加している。
・ファミリー層の現実的選択肢は、23区周縁の足立区など“ねらい目”エリア、または埼玉・千葉など郊外の通勤圏。今後は価格の二極化と、早期判断が鍵を握る。

「中古マンションが新築に比べて安価に購入できる」という常識は、もはや過去の話になりつつある。不動産調査会社・東京カンテイが10月23日に発表した最新データによれば、2025年9月時点の東京都23区の中古マンション平均価格は、ついに1.1億円を突破。調査開始以来、初の大台乗せとなった。

 一方で新築マンションとの価格差は、わずか約2割まで縮小している。なぜ今、中古市場がここまで加熱しているのか。そして、一般のファミリー層が現実的に住宅を手に入れるにはどうすればいいのか。

●目次

新築価格の異常な高騰が「玉突き現象」を生む

 背景には、まず新築マンションの価格高騰がある。建設用地の枯渇、資材費や人件費の上昇が重なり、23区内で新築マンションを建てること自体が「贅沢な事業」になりつつある。国土交通省の統計によれば、東京23区での新築分譲マンションの平均価格は2024年度に1億3000万円を超え、10年前の約2倍に膨らんだ。

「新築は高すぎて買えない」層が中古市場に流れ込む。結果として、実需に基づく買い需要が中古市場に集中し、成約件数はこの1年で6割増。不動産仲介大手の担当者が「以前は中古といえば“価格重視の妥協策”でしたが、今は“新築と遜色ない選択肢”と見なされる。結果的に価格も吊り上がっている」と語るように、中古市場の需要が高まり価格が高騰している様子が見て取れる。

 中古市場の熱気を背景に、販売事業者側の姿勢も変わった。「高くても売れる」——この確信が、価格設定の強気を後押ししている。

 不動産経済研究所によると、都心3区(千代田・港・中央)の中古マンションの平均成約単価は、2023年から2025年にかけて約25%上昇。築浅(築10年以内)の物件では、新築とほぼ同水準の坪単価で取引されるケースも珍しくない。その裏にあるのは「実需+投資」の二重需要だ。かつて中古市場は“実需の受け皿”として安定していたが、今や投資家マネーの流入が加速している。

投資マネーの流入が中古市場を押し上げる

 近年、国内外の投資家が「都心の中古マンション」を“代替資産”として買い始めている。その理由は明確だ。供給の減少見込みと資産価値の安定性である。

 デベロッパー各社が都心での新築開発を進めたくても、土地取得コストと建設費があまりに高いため、供給は減少傾向にある。結果として、すでに存在する中古ストックが「希少資産」と化しているのだ。金融アナリストの一人はこう語る。

「金利が相対的に低水準で推移する日本では、不動産は依然として“インフレヘッジ”の代表的な選択肢。新築が高すぎて利回りが取れないため、築浅中古に投資マネーが流れています」

 特に都心部では外国人投資家の買いも目立つ。香港や台湾からの富裕層が「円安+日本の不動産安」を好機と見て、港区や渋谷区の築浅中古を現金で購入するケースが増えているという。

ファミリー層の「現実的な選択肢」

 では、東京で働くファミリー層にとって、どのような選択が現実的なのか。不動産コンサルタントの秋田智樹氏に聞いた。

(1)23区内で“ねらい目”を探す

「23区の平均が1.1億円を超えたとはいえ、区によって差は大きいです。足立区・葛飾区・江戸川区などでは平均価格が5000万円前後にとどまり、まだ現実的な水準にあります。実際、足立区内の北千住駅周辺では、駅徒歩10分圏・築15年・70平米クラスの物件が6000万円前後で取引されています。

 足立区などは治安や学区のイメージが過去の印象で語られがちですが、近年は街づくりが進み、若い世代の移住も増えています。早めの判断が功を奏するでしょう」

 ただし注意点もある。人気上昇によって地価上昇スピードが加速しており、「待てば安くなる」構図は通用しにくい。早期の資金計画が重要だ。

(2)郊外に目を向け、広さと価格を両立

 通勤時間を許容できる層には、郊外エリアという現実的な選択肢もある。

「首都圏全体の中古マンション平均価格は約6000万円ですが、埼玉・千葉の一部では2000万~3000万円台の物件も多く、通勤時間1時間圏で3LDK・70平米超も狙えます。とりわけ、埼玉県川口市・千葉県市川市・松戸市などは、東京都心へのアクセスがよく、再開発も進む人気エリアです。住宅価格に対して教育・生活環境の満足度が高いとして、若いファミリー層が流入しています。

 新築でも中古でも、“駅徒歩15分以内・築20年以内”の物件は資産価値が落ちにくいので、将来的な売却も見据え、流動性の高いエリアを選ぶべきです」

 そのうえで、購入を検討する際の「3つの視点」を提示する。

1.築年数・修繕履歴を確認する
「中古物件では、築年数が浅くても管理組合の財政が不安定なケースもあります。大規模修繕の履歴や積立金の水準を必ずチェックすることが肝心です」

2.金利上昇リスクに備える
「変動金利でローンを組むケースが多いですが、日銀の金融政策転換次第では支払額が上昇するリスクもあることに注意が必要です。固定金利や繰り上げ返済を視野に入れ、長期的な返済シミュレーションを行うべきでしょう」

3.将来の売却・賃貸需要を見極める
「職住近接ニーズが高まるなかで、駅近・再開発エリアなど“貸しても価値が残る”物件を選ぶことが、結果的に資産防衛につながります」

価格上昇はどこまで続くか

 専門家の間では、「価格の上昇ペースは鈍化するが、下落局面には入りにくい」との見方が支配的だ。

「国交省の住宅着工統計によれば、都心部の新築供給戸数は前年から約15%減。一方、東京23区の人口は依然として微増傾向にあり、需要が大きく落ち込む要因が見当たりません。中古価格が1.1億円を突破しても、実需と投資の両輪で支えられているのでs、今後は“築浅・好立地”と“築古・郊外”で二極化が進むと考えられます」

 東京23区の中古マンション価格高騰は、単なる“バブル”ではなく、新築高騰・供給減少・投資流入という構造的な要因に支えられている。

 この状況でファミリー層が住宅を取得するには、
 ・価格上昇が続く「ねらい目エリア」を早めに確保する
 ・郊外に目を向け、通勤とのバランスを取る
 ・資産価値と管理状況を重視する
といった“戦略的判断”が求められる。

 今や「マンションを買う」という行為は、単なる住まいの確保ではなく、資産設計とリスク管理の意思決定でもある。住宅市場の変動を正しく読み、早めに動けるかどうかが、次の10年の暮らしと資産を左右する。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

Google Veo 3の衝撃。超進化する動画生成AIは、SNS動画施策をどう変える?

動画生成Ai_GoogleVEO3_メインカット
左から電通 第1ビジネスプロデュース局 餅原創平氏、伊豫田敏広氏、Google ランディ・ハン氏

非常に速いスピードで進化し、近年ビジネスの舞台でも積極的に活用されている生成AI。

特に動画生成AIは、高い制作効率と無限の創造性、そして現実世界と見間違えるほどの精巧さにより、広告やマーケティング領域において大きな存在感を示しています。

今回は、そんな動画生成AIの中から、Googleの動画生成AIモデル「Google Veo 3(以下、Veo 3)」とショート動画施策の可能性に着目。

トヨタ自動車(以下、トヨタ)のグローバルSNS施策を担当する電通の伊豫田敏広氏と餅原創平氏が、Googleのグローバル営業チームとしてトヨタをサポートするランディ・ハン氏と、マーケティング領域における動画生成AI活用の可能性について語り合いました。

Journey on a whole different scale.
https://www.youtube.com/shorts/ln3UAkOs9c8

 

What rumbles but never crumbles?
https://www.youtube.com/shorts/rhPSf1GJ7Ew

 

<目次>
もはやAIが生成したと気付けない?Google Veo 3の3つの進化ポイント

他のプロダクトと連携すれば、より簡単により良い映像を作れる

SNS戦略、今後のキーワードは「たくさん」と「映像の多様性」

ネガティブな面ともポジティブな面とも向き合いながら、AI時代の制作プロセスを模索

もはやAIが生成したと気付けない?Google Veo 3の3つの進化ポイント

動画生成Ai_GoogleVEO3_伊豫田さんソロカット
電通 伊豫田氏

伊豫田:私と餅原は現在、トヨタのグローバルSNSの運用やコンテンツ制作を担当しているのですが、年間150本を制作・投稿するショート動画の制作効率や、移り変わりの早いSNSトレンドにどうついていくか、という点に課題を抱えていました。

そんな中、2025年5月に行われたのが、トヨタと電通が参加したGoogle主催のワークショップです。そこで、同月に日本でローンチされたばかりだったVeo 3を試用させていただき、性能の高さとSNSマーケティング領域での可能性を強く感じました。

餅原:このワークショップについては、前世代のモデルであるVeo 2で制作した映像を見て衝撃を受けた私が、ランディさんにお声がけして、開催に至りました。ちなみにその映像はLaszlo Gaalというクリエイターがつくったものですが、本当に衝撃的な作品で、大きな話題を呼んだものです。

ランディ:もともとは「Veo 2のワークショップを」という話だったんですよね。ところがそのワークショップ開催の3日前にVeo 3が公開されまして(笑)。結果として、早い段階でVeo 3に触れていただくことができました。

Google Veo
https://gemini.google/overview/video-generation/?hl=ja

「Google Veo」は2024年5月に発表された動画生成AIモデルです。約半年後の2024年12月にVeo 2を、2025年5月にVeo 3を発表。約半年ごとという非常に速いペースでバージョンアップを行っています。

伊豫田:生成AIの進化のスピードを感じる話です。そんなVeo 3ですが、Veo 2と比べてどの部分が進化したのでしょうか?

ランディ:進化したポイントは大きく3つで、「物の動きを再現した動画生成」「複雑な演出への対応」「アクセシビリティの向上」です。

まず物の動きを再現した動画生成ですが、プロンプトで細かく指示しなくても、物理的な特性を再現して、より自然な動画を生成できるようになりました。例えばVeo 3は重力などの「現実世界の物理法則」も再現できます。水が流れ落ちたり、地面ではじける様子なども、簡単に生成可能です。また、プロンプトで「車が走る」と指示すれば、車が人間のように走るのではなく、車として正しく走行する動きを生成できます。プロンプトに対しての出力が、全体的に自然になっているんです。

2つ目は、クリエイターの創造の幅をより広げる、複雑な演出が可能になった点です。物の動きを再現したことで、ドローンショットやパノラマショットなどの高度なカメラワークが実現できるようになるなど、クリエイターが使いやすい機能が追加されました。

最後に、アクセシビリティの向上です。Veo 2まではあくまでも単体のツールでしたが、Veo 3ではGoogleのさまざまなサービスからVeo 3にアクセスできるようになりました。Geminiや、現在はアメリカのみですがGoogle フォトといったプラットフォームへの提供も開始しています。自由な発想を表現するためのツールとして、より多くのユーザーに使ってもらいたいという狙いです。

餅原:ワークショップでは、クリエイターの制作したデモ映像のクオリティの高さに衝撃を受けました。Veo 2の段階でも実写のような完成度だと思っていましたが、Veo 3はもはや実際に撮影した映像と比べてもほとんど遜色ない出来で、「プロンプトを打つだけでこのレベルの映像が作れるのか」と。

伊豫田:私が注目したのは、映像と音が同時に生成できることです。特に、音声に合わせて人の口が動く、「リップシンク」の精度の高さには驚かされました。音声の内容と人の動きの整合性も問題ありませんし、日本語の方言もプロンプトひとつで再現できるんです。

また、トヨタの動画施策で使うことを考えると、車のエンジン音や走行音の再現度の高さもうれしいですね。まだよく見ると細部に違和感がある場合はあるのですが、車が静止している映像や、細かい部分が見えない引きのカットであれば、十分なものを作ることができています。Veo 3ではすでに企業がSNS向けに活用できるレベルのものになっていると思いますね。

トヨタのグローバルSNSのコンテンツとして、Veo 3を使った動画制作はスタートしており、現在プロトタイプを公開中です。冒頭でご紹介した2つの動画ですが、トヨタのランドクルーザー300を主役に、「クッキーでできた荒野を走り抜ける」というユニークな世界観の映像と、反対に自然のエネルギーや雄大さを感じさせる、リアルで迫力のある映像となっています。どちらもプロの映像クリエイターが主にVeo 3を使って作ったもので、マーケティング観点でもすでに実用レベルになりつつありますが、さらなる進化も予感させます。

他のプロダクトと連携すれば、より簡単により良い映像を作れる

動画生成AI_GoogleVEO3_餅原さんソロカット
電通 餅原氏

伊豫田:どんどん進化している動画生成AIですが、それをわれわれがどのように活用するのか、という課題もありますよね。餅原さん、制作側の視点から、いい映像を作るためのコツみたいなものはありますか?

餅原:やっぱり「プロンプトをどこまで的確に書けるか」だと思います。ただ、僕自身も、自分の持っているイメージを言語化できないことはあります。例えば「ドローンショット」という単語は、映像制作のプロでなければなかなか思い浮かばないですよね(笑)。ツールがどんなに進化しても、やはり使う人間によってアウトプットには差が出ます。

そういうときは、チャット型のAIアシスタントであるGeminiなど、他の生成AIにVeo 3用のプロンプトを作ってもらったりしています。また、Veo 3はテキストのプロンプトで指示を出す「Text to Video」だけでなく、他の画像や動画を読み込ませることで対象物を正確に再現できる「Image to Video」や「Video to Video」も有効で、私たちも動画生成に当たっては他のGoogleプロダクトを活用しています。そうすれば、制作経験がない人でも比較的簡単に動画生成ができると思います。

特にGoogleはクリエイティブのエコシステムがあり、VeoとGemini、まだアメリカのみですがGoogleフォトの画像からも動画生成できるということで、豊富なプロダクトを生かした制作環境が整っている点が魅力ですよね。

ランディ:「Text to Video」「Image to Video」といった制作プロセスは、生成AI時代にはじめて生まれた新しいやり方ですから、Google社内でも「Veoの使い方ガイドライン」が頻繁にアップデートされています。「こういうふうにプロンプトを書けばこれができる」というふうに、制作におけるノウハウを蓄積している最中です。

生成AIは進化のスピードが速いので、もし今後Veo 4、Veo 5が発表されたとして、今積み重ねたガイドラインやノウハウがそこで使えるかはわかりませんが(笑)。

餅原:自分たちで作ったプロダクトに関してのガイドラインを、実際に使いながら作っていくのって珍しいですよね。それが生成AIの大変さでもあり、面白さでもあるんだと思います。そして、進化の方向性としては、「ガイドラインが要らなくなる未来」を目指して進んでいるんですよね?

ランディ:そうですね、「ヒューマンクリエイティビティの拡張」を目指し、人間のクリエイティビティをより容易に、最大限に引き出せるように進化していくと考えています。Veoのプロンプトガイドラインについては、Googleクラウドのオフィシャルブログから定期的に公開していますので、興味のある方はご覧になってください。

https://deepmind.google/models/veo/prompt-guide/ 
https://blog.youtube/news-and-events/made-on-youtube-2025/

SNS戦略、今後のキーワードは「たくさん」と「映像の多様性」

動画生成AI_GoogleVEO3_ランディさんソロカット
Google ランディ氏

伊豫田:ここまで「動画生成AIの現在」について話してきましたが、ここからは「企業が動画生成AIをどう活用し、SNSに組み込んでいくか」について考えたいと思います。

動画生成AIがビジネスの領域に登場することで、企業のSNSマーケティングにおける投稿戦略なども変わってくると思いますが、いかがでしょうか?

ランディ:まず制作面については、動画生成AIによって予算や時間など、さまざまな制限が解決され、提案の数や幅が大きく広がるでしょう。

従来の映像作りとの違いについて、Veo 3でトヨタの動画をプロトタイピングしてくれたクリエイターは、

「場所や時間、天気など、いろいろな制限を気にせずに、『どう見せるか』『どう伝えるか』に注力することができる」

と言っています。予算的・時間的制限がなくなることで、これまで以上に多彩な映像表現が期待できるのではないでしょうか。

伊豫田:私も「映像の多様性」はキーワードになってくると思います。AIによって、これまで作れなかったものが簡単に作れるようになり、制作過程に存在するあらゆる制限がクリアになる。そういう環境の中で制作していると、「この発想はなかった」と思わされるものが出てきやすいんです。つまり、「誰でも作れる」ようになったからこそ、感性の部分で「その人にしか作れない」ものに価値が出てくる。

そうしたクリエイターのユニークな感性と、SNSのトレンドを掛け合わせ、動画生成AIが制作をサポートすることで、すごくいいものが作れるなと感じています。

また、動画生成AIによって映像制作のプロセスが短縮されることで、企画を重視し、より多くのアイデアを出すことができるようになるでしょう。その際に、膨大なアイデアをどう選定するか、どう管理するかは、今後考えていくべき部分です。1つ挙げると、スピード感が重要なSNS領域に関しては、「クライアントに企画を提案する工程」も簡略化を目指すべきなのではないかと考えています。

餅原:SNSにおいては、やはりショート動画が重要になっていくと思います。「短い動画をたくさん見る」という生活者行動が浸透している中で、企業も「短い動画をたくさん作る」という方向に動いているんです。

私たちが運用を担当しているトヨタのグローバルSNS施策では、365日SNSを運用していく上で、フォロワーの方とコンタクトにコミュニケーションを取り、よりブランドを知っていただくために、ある程度の投稿数の担保が必要になります。戦略的に本数と投稿頻度を計算しながら、 年間150本くらいショート動画を制作しています。

伊豫田:過去に「なぜそんなにたくさん作るのか?」と聞かれたことがあるんですが(笑)、個人的な答えとしては、単純にいろんなコンテンツがあった方が見ている人が楽しいから。そういうエンターテインメント性は、やはり数があってこそ成立するものだと思うんです。「数を作る」という部分では、制作効率の良さも含めて、動画生成AIの存在は大きいです。

餅原:それに加えて、「ヒューマンクリエイティビティの拡張」という面でも、生成AI活用は重要になってきます。SNS施策の目的として、動画を見た人に、ブランドやプロダクトのファンになってもらいたいという思いがあります。そのためには、そもそも見てもらえるような面白いコンテンツが必要ですよね。動画生成AIだからこそ実現できる、ユニークなアウトプットに期待しています。

伊豫田:ただ、先ほど挙げたように、「誰でも作れる」ことで映像が普遍化・陳腐化してしまうことは避けられません。そこにどうエッジを付け、個性を出していくかが、制作側としての課題です。先ほどランディさんがおっしゃっていたヒューマンクリエイティビティにわれわれも目を向け、生成AIで効率化をした分、人間はアイデアや企画の部分に時間を割いていくことが、今後重要になってくると思います。

ネガティブな面ともポジティブな面とも向き合いながら、AI時代の制作プロセスを模索

動画生成AI_GoogleVEO3_渋谷ストリーム壁前
渋谷ストリーム内、Googleオフィスにて、壁に書かれた文字は「Unlock Your Creativity(自身の創造性を解き放て)」というメッセージ。

伊豫田:最後に、これからの動画生成AIの在り方、そしてわれわれの関わり方についてお話をできればと思います。まず、Veoの今後の展望についてはいかがでしょう?

ランディ:今日何度かお話ししたように、Googleはより多くの人が自由な発想のもとで多彩なクリエイティブを生みだせるよう、より良いツールを提供していきます。

そのうえで、Veoについては、ビジネス領域だけでなく一般ユーザーにも使っていただきたいという思いから、アクセシビリティの向上と、ユーザーベースの拡大を進めています。

また、電通をはじめとする企業やクリエイターから、使用感、機能面などについてフィードバックやインプットをいただきながら、Veo 4、Veo 5と進化させていきたいです。

餅原:動画生成AI全体としては、「たくさん作る」という今のSNSの環境と、「制限を気にせずいろいろなものを簡単に作れる」という動画生成AIの特徴がうまく掛け合わさって、いろいろ試せる時代になったなと思います。今後、動画生成AIを使った映像制作はさまざまな領域で増えていくと思います。その未来がすごく楽しみですね。

ただ、生成AI活用における著作権や肖像権といった権利の問題は非常に重要で、クリエイティブ業界全体の課題だと思います。Veo 3では、企業用には権利関係の保証が用意されていますよね。そういった部分にも企業としてきちんと向き合いつつ、面白いものを作るためにどうバランスを取っていくか、考え続けていきたいです。

伊豫田:私は、とある海外クリエイターが言っていた「この時代に生まれてよかった」という言葉がすごく印象に残っています。広告業界にとって、動画生成AIはネガティブな存在に見えるところもあるかもしれませんが、効率やヒューマンクリエイティビティなど、ポジティブな要素がとても多いんです。

そこをいかに理解して、パートナー企業と手を組んで前向きに進めていくかといった制作プロセスを、電通としてもしっかりと考え、適切なやり方を模索していきたいですね。

AI主導型SNSソリューション「VERTICAL」

電通、電通ライブを含む、複数企業によるコンソーシアム型プロジェクト。SNS領域の本質課題に向き合い、強力なプレイヤーと、クライアント、ユーザー、コミュニケーション観点を深く理解しながら、垂直統合型で瞬発力をもって一気に推進する取り組みです。
 
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「予定意識」が日本人の旅行を阻む?今どきの“旅意識”とは

電通デザイアデザイン(DDD)は消費と欲望の関係から、さまざまなソリューション開発や情報発信を行う組織です。

第21回からは、DDDが実施している「心が動く消費調査」を分析。調査結果から得られたインサイトやファインディングスをお伝えしています。

今回は、2025年5月に実施した第10回の調査結果に基づき、DDDの松本泰明が日本人の「旅行」にまつわるインサイトを読み解きます。

なぜ減った?日本人の海外旅行数

近年、「日本人が海外旅行に行かない」という話題を非常に多く聞きます。これは単なる印象論にとどまらず、2024年の日本人のパスポート取得率は16.8%(引用元:観光産業ニュース「トラベルボイス」)で、G7各国、例えばアメリカ36%、ドイツ41%と比較しても低い水準にあります。

また、2024年の出国者数は約1301万人、出国率は10.5%(引用元:観光産業ニュース「トラベルボイス」)で、これも海外諸国と比べても非常に低い水準です。2020年の新型コロナで急減した出国者数の回復基調が遅れていることもありますが、海外がそれ以上に伸び続けているという側面もあります。

日本人はなぜ海外旅行に行かない、もしくは行かなくなったのでしょうか?

宿泊費や外食費などの旅行にかかる諸費用の増加、コロナ禍の影響によりそもそもの旅行経験の乏しい世代が増えた、情報取得がバーチャル化して海外旅行の魅力がなくなったなどの理由をしばし見かけます。

本稿ではDDDの「心が動く消費調査」の結果から、今の日本人の「旅行意識」(旅行に対して持っている意識)を読み解き、日本人の旅行離れに歯止めをかける方法について検討していきます。

日本の生活者は旅行が“好きではない”?

心が動く消費調査では毎回の調査で「最近、心に残った消費体験」について自由回答によるコメントを収集しています。この回答内で「旅行/観光」関連を挙げている人は5.5%。全体で7位となります。

10代では男女ともにほとんどいないのですが、男性は20代で5位、同女性では14位となり、それ以降の年代はほぼ10位前後に位置しています。さまざまな消費体験の中でも「旅行/観光」は比較的上位に入るものと言えます(図表1)。

DDD#25_図版01

また「あなたが普段、興味や関心をもっていることを教えてください。」という質問への回答を見ると「旅行・観光」は46項目中の1位です。こちらも男女ともに10代はやや低いのですが、それ以外の世代はほぼ3位以内に入っています(図表2)。

DDD#25_図版02

10代は旅行への関心は低めなものの、20代以降は依然としてかなり関心を持っているのです。若者の場合は、関心のある事柄が分散されていることで、相対的に旅行の位置づけが落ちている面もあるのではないでしょうか。

ファミリー層は旅行による金銭的負担感が強め。生活者による「旅行」の捉え方

心が動く消費調査の価値観項目では旅行意識についても尋ねています。その結果をひもといてみましょう。

「旅行は富裕層のものになってしまったと思う」という質問では男性全体の54.9%、女性全体の59.7%が「そう思う」と回答しています。年代別で見ていくと男女ともに特に40~50代で高い傾向があります(図表3)。言い換えると、ファミリー世代は旅行に対する金銭的な負担感が大きいことがうかがえます。

DDD#25_図版03
※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。

一方で「金銭的に無理をしても、少なくとも年に一回は旅行したい」という質問には男性全体の54.1%、女性全体の51.8%が「そう思う」と回答しています。こちらは10~20代の若年層の方が高い傾向にあります。先の結果と合わせて考えると、若年層は他のさまざまなものと比べて旅行への関心は低くなっているものの、旅行に行きたいという気持ちは他の年代より強いようです(図表4)。

DDD#25_図版04

“贅沢派”?それとも“長期のんびり派”?今の生活者が求める旅行とは

今度は旅行の仕方についての意識を見てみましょう。

「【A】期間は短くても、贅沢感のある旅行がしたい」と「【B】節約しても、より期間の長い旅行にしたい」では、どちらに気持ちが近いかを聞いたところ、全体傾向では「【A】期間は短くても、贅沢感のある旅行がしたい」が高いのですが、男性ではやや「【B】節約しても、より期間の長い旅行にしたい」が多い傾向にありました(図表5)。

また、グラフでは示していませんが、女性の方が旅行に出たら、その土地の名物を食べたり、名所や景勝地を観光したりしないともったいないと思う割合が高い傾向もあります。この結果から、女性の方がより旅行に対していろいろな予定や経験を詰め込みたいという欲望の強さがうかがえます。

DDD#25_図版05

上記のデータを見ると、女性はおおむね「短い期間で食も観光も目いっぱい楽しめる贅沢感のある旅行」を求める傾向が見えてきます。実際に心が動く消費調査の「最近、心に残った消費体験」での旅行に関する女性の回答を見てみると、下記のような贅沢感のある旅行についての記述が多くみられました。

  • 湯布院の温泉宿「日常を離れゆったりとしたラグジュアリーな旅で、一度泊まりたかった憧れの旅館に泊まって想像通りの満足度が、味わえた」(70代女性)
  • 都内のホテルステイ「子どもが生まれる前の夫婦2人きりで過ごせる最後のゆっくり時間ということで選んだ。ホテルマンの対応がものすごく良く、思い出に残った」(30代女性)
  • テーマパークの宿泊付きパッケージ「非日常、わくわくする気持ちを味わいたかった」(20代女性)
  • パッケージツアー「日常から離れて温泉やグルメを堪能したくて」(60代女性)

対して男性の場合は、旅全体への期待というよりも、特定の目的への記述が多くみられます。

  • 遊漁船「自分の釣り方で本命の魚を釣り上げたい」(60代男性)
  • 長良川鉄道フリーパス「初めて向かう地域へのわくわく感を感じたい」(20代男性)
  • 雪の大谷見学バス「一度見てみたい景色だったので計画を立てていった」(50代男性)

女性の贅沢感のある旅行志向、男性の目的のある旅行志向、いずれも金銭的、時間的な余裕がないと簡単にはできないものです。しかし、旅行離れの要因はそれだけなのでしょうか。

旅行意識に影響する日本人の「予定意識」

ここで心が動く消費調査の価値観項目のひとつに着目してみたいと思います。

「【A】一日の予定をあらかじめしっかり組む方だ」(以下、「予定順守層」と記載)「【B】一日の予定はなるべくその日の気分で決めたい方だ」(以下、「気まぐれ層」と記載)の項目を見ると、全体ではやや【A】予定順守層が多い傾向にあります(図表6)。

しかし若年層ほど【B】気まぐれ層が多い傾向が強く、男性の10~20代と女性の10代では【B】気まぐれ層が【A】予定順守層を上回っています(図表6)。さらに【A】予定順守層と【B】気まぐれ層の年代構成を比較すると、【A】予定順守層はややシニア寄り、【B】気まぐれ層はやや若年層寄りになります(図表7)。

DDD#25_図版06DDD#25_図版07

この【A】予定順守層と【B】気まぐれ層について先ほど見た旅行意識の項目で比較してみましょう。

「旅行は富裕層のものになってしまったと思う」は【A】予定順守層は59.0%が「そう思う」と答えているのに対し、【B】気まぐれ層は55.2%とやや低くなっています。また、「金銭的に無理をしても、少なくとも年に一回は旅行したい」は【A】予定順守層は57.7%が「そう思う」のに対し、【B】気まぐれ層は47.0%と低くなっています。

旅行の仕方に関しても【A】予定順守層が「期間は短くても、贅沢感のある旅行がしたい」と答える割合が66.1%に対し、【B】気まぐれ層は59.7%にとどまり、「節約しても、より期間の長い旅行をしたい」と答えている人が40.3%います(図表8)。

DDD#8_図版08

総じて【A】予定順守層は先ほど見てきたような一般的な旅行意識に近い一方、【B】気まぐれ層は「旅行は富裕層のもの」とまでは思っていないものの、そもそもの関心が低めな状況が見えてきます。

その日の気分で予定を決める【B】気まぐれ層にとっては、旅行にまつわるさまざまな予定を立てることや事前の準備はハードルが高く、関心を下げているのかもしれません。また【A】予定順守層は年に一回は旅行をしたいものの、金銭的、時間的な余裕がないということが読み解けます。

日本人の旅行意識を活性化させるヒントは、「旅行準備」のハードルをどう下げるか

多くの人が選ぶフリープランや自由旅行は準備のための労力が大きくなりがちです。ホテルや交通手段の予約、旅先での過ごし方、旅行用品の購入などの旅行準備こそ、旅のだいご味と考える人もいると思いますが【B】気まぐれ層のタイプには、こうした旅行準備が旅行のハードルになっている可能性があります。

心が動く消費調査の「最近、心に残った消費体験」を見ると、景勝地や観光スポットの名前だけではなく、ツアーの名称や泊まったホテルの名前を挙げる人が多くみられます。つまり、自分自身で行きたい場所をピックアップして旅程を組んだものに限らず、旅行会社等が企画したツアーへの参加や、ホテルでの滞在をメインとした旅行も印象に残っているということではないでしょうか。

また、近年の旅行トレンドとして話題になる、オールインクルーシブなホテルやクルージングなどは、日程さえ決めれば後は準備の労力は少なくて済みます。

結論として、近年はシニア向けでより充実しているパッケージツアーも、より幅広い世代向けの商品としてのチャンスがあると言えそうです。旅行準備という視点で見ると、アメニティが充実したホテルや朝食が充実したホテルなども、こうした気まぐれ層にはチャンスと言えそうです。

DENTSU DESIRE DESIGNでは旅行も含めたさまざまな消費行動について、より深い分析を進めていきます。

【調査概要】
第10回「心が動く消費調査」
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳男女
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2025年5月13日(火)~ 5月16日(金)
・調 査 主 体:株式会社電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調 査 機 関:株式会社電通マクロミルインサイト
 

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「成長し続けるチーム」をつくるには 〜経済学・人間科学・AIで、生産性向上にどうつなげるか〜

日本の1人あたり労働生産性はOECD加盟国38カ国の中で32位と長期低迷しています。本記事では生産性向上の鍵を握るデジタル化とモチベーションに焦点をあて、「タレントマネジメント」や「ミドルマネジメントのサポート」を通じた生産性向上のヒントを探ります。

ミクロ経済理論やマーケットデザインを専門とする政策研究大学院の安田洋祐教授と、HRテック企業のミイダス執行役員の越智道夫氏、同社最高科学責任者の神長伸幸氏と、電通サステナビリティコンサルティング室ディレクターの田中理絵の4人の座談会を紹介します。

越智氏、安田教授、神長氏、田中氏
(左から)ミイダス 越智道夫氏、政策研究大学院 安田洋祐氏、ミイダス 神長伸幸氏、電通 田中理絵

ミイダス
パーソルグループのダイレクトリクルーティングサービス会社。求職者のスキルや経験、コンピテンシー診断(個人の行動特性や思考性を診断)の結果に基づき自社に合いそうな人材に自動スカウト送信できる定額制サービスが特徴。また定額料金内で求職者からの応募の促進を実現する採用ブランディングのサービスも好評。

<目次>
出社などによって、人の距離(D)を縮めると組織の生産性(S)は上がるのか?

上司が弱みをさらすチームは、エンゲージメントも生産性も高い

類似性の魅力と成長実感のバランス

 

出社などによって、人の距離(D)を縮めると組織の生産性(S)は上がるのか?

田中:本日のテーマは「外から働きかけて、チームの成長をどう促進できるか?」です。精神論ではなく、データの裏付けを持つ形で、ビジネスにおいて人を動機づけてチームや組織が成長する方法を探りたいと思っています。最初に、今回の思考の補助線となる「SDG仮説」について安田先生、解説していただけますか。

安田教授、田中氏
安田:SDG仮説のSは、「Scale(尺度)」のことで、スキルや売り上げなどで測れる定量的な評価や見える化を表しています。Dは「Distance(距離)」で人と人との相対的な距離感をつかむ物差し。価値観など距離が近い人とは自然と協力関係が生まれると考えられます。Gは両者がバランス良くかけ合わさって引力が生まれることから「Gravity(引力)」、魅力的な場ができるという仮説です。

大きく見れば、日本企業はDを大事にして、同質化が進んだ。その後、能力主義のSの尺度を人事評価に取り入れたけれど生産性が上がらない、という状況だと思います。組織にとって、SとDという性質の異なる2つの尺度両方を持つことの効果を実証できたらと思っています。

安田洋祐教授のSDG仮説
安田洋祐教授のSDG仮説

田中:働く人にとっても、職場の居心地のよさに関わるDと事業成長に関わるSの両方が、所属企業としての魅力になりますよね。昨今、出社を促す企業が増えたのは物理的な距離(D)が、生産性や成果(S)に関係するためでしょうし、DをSにどうつなげるかはサステナビリティ経営でも注目の領域です。

神長:実は本日お話しできるのを楽しみにして、ガチで勉強して資料を作ってきました。

安田:おおっ、本当だ。「ミイダスのアセスメントからみたSDG仮説」と書かれてる!他の人が作った、SDG仮説が使われている資料をはじめてみました。光栄です。

神長氏が作成した資料の表紙
神長氏が作成した資料の表紙

上司が弱みをさらすチームは、エンゲージメントも生産性も高い

越智氏、神長氏

神長:「データサイエンスは、データから傾向を見つけて検証し、プロダクトに実装するまで時間がかかる。仮説を持てたら、ショートカットできるのでは」とミイダスの現社長・後藤が考えたことをきっかけに、2019年にミイダス HRサイエンス研究所を設立しました。AIやデータサイエンスを扱う情報科学と、心理学・経済学・言語学などの理論・仮説を扱う人間科学を融合して研究しています。

安田:神長さんが早稲田大学で研究していらっしゃったときと、ミイダスでは、研究の仕方は違うのでしょうか。

神長:取得できるデータ量が大学の研究とは全然違います。ミイダスは55万社と契約し、転職前と転職後、組織サーベイなどを通じて約150万人のステータス別データが分析できます。

田中:コンピテンシー診断は、たしか転職のマッチングをする際にスキルだけではなく、性格を含めた転職希望者の資質が、転職先の組織文化と「肌が合うか」や「活躍できそうか」を、判定するものでしたよね。

神長:はい。コンピテンシー診断ではパーソナリティ、ストレス要因、上司または部下としての適性など52項目を10段階でアセスメントします。さらに、バイアス診断ゲームという無意識に働く思考バイアスを診断するサービスもリリースしたので、合計で74項目のかけあわせが可能です。

越智:そこまで項目が多いと、同じスコアになることはほぼないので、その組織で評価されるハイパフォーマーに共通する高い項目3つを設定して、募集ポジションに合わせて職場で活躍できそうな人を自動判定します。

座談会風景
田中:上位3つの属性を重要と決め、スコア管理するのは、越智さんお得意のブランドマネジメントの考え方と近いですね。このコンピテンシー診断は、転職以外では、人事セクションが人材配置に使うのでしょうか。

越智:使い方としては人事セクションが裏で密かに使うよりも、あえて「自分をさらす」ような使い方を推奨しています。客観的な数字をベースに上司が弱みを見せたチームの部下たちは、エンゲージメントも生産性も高く、しかもダブルスコアぐらい違っていました。だから、コンピテンシー診断をもとに上司部下の1on1が変わるような活用方法や、コンピテンシー診断の結果をラップにしてカジュアルに自己紹介できるなど、いくつかの活用方法をつくって働きかけています。

神長氏のコンピテンシー診断とミイダスラップ
神長氏のコンピテンシー診断とミイダスラップ

安田:あえて公表するとか、ラップにする発想が面白いですね。ミイダスラップは後半「チームワークを重視しない」とか、毒も入っているのに受け入れやすい。そもそも、なぜラップにしたのでしょうか。

越智:52項目のデータをメンバー全員分なんて見ていられないし、自分のものさえ覚えられない。じゃあどうシェアするといいのか。上司の弱みをどんなタイミングで見せてほしいかを調査したら「雑談とか飲み会の時で、あんまりシリアスにやってほしくない」という意見があったので。

越智氏
神長:科学的な知見って「難しそう」と捉えられがちですが、われわれとしてはせっかくアセスメントされた個人の特徴はできるだけ活用していただきたいので、親しみを持てるようなラップの形はとても良いと思っています。私たちHR研究所のミッションは、「科学的な知見を生かし、活躍の機会損失を減少させること」なので、研究としても雇用後に活躍するところまで追いかけたいですし、研究成果の活用という視点でも雇用後にどんどんコンピテンシー診断を利用してほしいですね。

越智:採用以降もデータプラットフォームで支援できるようになり、ダイレクトリクルーティング以外のプロダクトも拡充しました。例えば、朝日新聞さんとの「人」を大切にする企業を表彰する「はたらく人ファーストアワード」は3年目で、賛同企業数3627社になりました。アワード規模では日本で2番目、グッドデザイン賞の約6000社に次ぐ多さで、企業価値向上や企業PRに貢献しています。そのほかに福利厚生やeラーニングなど、中小企業だと手が回りにくいけれど若い従業員から重視されている仕組みをミイダスプラットフォームで利用できるようにしています。

田中:すべてに共通して「人への投資が組織を成長させる」という信念を感じますね。

類似性の魅力と成長実感のバランス

神長:自分に似ている人に魅力を感じるという「類似性魅力仮説」という研究がありまして、類似性の要素は、人口統計的な類似性(性別・年代・社会的地位など)と心理的な類似性(性格・興味・心情など)があります。2024年の学術論文「就業場面における類似性魅力仮説の検証」によると、人口統計的類似性は採用選考やチーム誕生時に影響し、心理的な類似性は長期間チームで働く際に影響しやすいそうです。

安田:採用といえば、経済学にはオーケストラ演奏のブラインド・オーディションにおける有名な研究があります。社会的地位の高いオーケストラは男性の演奏家が多いのですが、性別がわからないように姿を隠して演奏し審査を行ったところ、女性の合格者が増えたというものです。著者のクラウディア・ゴールディン氏は、2023年にノーベル経済学賞を受賞したことでも話題となりました。

神長:まさに「人口統計的な類似性が採用選考に影響した」事例ですね。この場合は、単純に類似性だけに頼ってしまった結果、ネガティブな影響も出てしまったんだと思います。

安田:男性という同質性の強いD軸だけだと、実力のS軸で優秀な女性を落としてしまう。かといって、もしも完全実力主義でS軸の尺度だけでメンバー選定すると、パレートの法則(売り上げの8割は2割の社員に依存することを表す法則)で上位2割しか活躍できない組織になってしまう恐れもあります。一人でやりきる仕事は企業にほとんどありませんし、チームで動く前提ですよね。コンピテンシー診断のように、SとDの要素両方で「この組織で活躍できそうな人」の指標を持つことが大事だと思います。

田中:自社メンバーに類似した「ウチに合う人」はチームでうまくやってくれて、評価されやすいでしょう。でもSとDともに近すぎる状態だと、多様性がなく変化に弱くなりませんか。

安田:全員の距離が近くなる必要はないと思います。人同士の距離が見えない組織の中で、同じ学校とか出身地とか、趣味とか理念とか、軸が増えてくると距離感の近い集団がポコポコ出てくる。距離感の近い人同士は、部署が違ってもやり取りするから、担当している仕事は遠くても何をしているかの情報共有ができ、困っている時に協力関係を築きやすい。

Dの物差しがいろいろあることによって団子状態の人の集まりができ始め、協力行動が生まれてくる。一方で、違う団子もできるので、異なる集団間での競争も適切に働く。こうしたDがある組織の方が、Dの尺度や仕掛けがない組織に比べると適切に協力できるのではないか、という捉え方をしています。

田中:そうか……優劣をみるSと違って、Dは軸が1つではないのですね。テックカンパニーで、あえて登山などのカルチャーイベントが盛んなのは、個人と会社の距離を近づけるためだと考えていました。でも実際は、イベントがきっかけで協力しあう団子がいくつかでき、それが生産性に効果をもたらすのかもしれません。アメリカの大手調査会社であるギャラップ社の従業員エンゲージメント調査「Q12®」(※1)でも「仕事上で最高の友人と呼べる人がいる」が重要な問いとして入っていますし。

※1=ギャラップ社の従業員エンゲージメント調査「Q12®」
ワークエンゲージメントとも呼ばれる、仕事への熱意や没頭度合いを測定するための12の質問項目で企業のパフォーマンス向上のための示唆を得る


神長:フレッド・ルーサンスという研究者が、人的資本の一部として「心理的資本」という考えを提案しています。業務成績向上のために測定・開発される心理学的な特性のことで、「自己効力感」「希望」「レジリエンス」「オプティミズム」の4つがあります。これらは生産性を上げる項目を心理的にみるもので、組織行動領域特有かつ、開発や変化が可能という考察がされています。ミイダスのコンピテンシー診断の項目の多くは、ルーサンスの心理的資本の定義にあてはまると考えています。

安田:「自己肯定感」はよく聞きますが、「自己効力感」はそれとは違うのでしょうか。

神長:「自分は何でもできる」と思うのは自己肯定感や有能感で、自己効力感はタスク別に設定されます。例えば数学はできるけど、英語はできない人がいたとして、「数学だけ使うこの仕事なら役に立てそう」と感じるのは自己効力感です。

安田:なるほど。何でもできるのが肯定感、個別で役に立てそうなことを考えるのが効力感ですね!

神長:最後に、場の魅力Gは個人が持つのではなく、関係性からでてくるとするなら、社会関係資本に近いのかなと。人々の関係性には類似性による結束型ネットワークと、非類似性の橋渡し型ネットワーク(※2)があります。橋渡し型は、結束力は弱いが開放的で、さまざまな資源が流入するので、新たな情報の獲得が容易です。

※2=橋渡し型ネットワーク
幅広くて薄い人間関係や組織間のネットワークのこと。同質的な「結合型」と対比され、異質な人・異なる専門性がつながることで、知識伝達やイノベーションの推進に役立つ。
(Adler & Kwon, 2002; 服部, 2020; Putnam, 1995)


田中:橋渡し型ネットワーク、ヒントになりそうです。私がいる部署は専門職に近いので「居心地は良いし、自律的に働けてやりがいもあり、不満はない。でも成長実感が得にくい」という30~40代もいます。働きやすくても、成長実感がないと組織へのエンゲージメントは下がってしまう。

神長:私も、類似性のネットワークで満足できなかった人が橋渡し型ネットワークを作り両方が共存すると生産性が向上するのではと仮説をたてています。今後、実証的に研究したい話題です。

田中:下記の1on1動画で「デザイナーは専門職として接していたが、実はリーダーをやりたい人だ」とミドルマネジメントが気づいたように、異動しなくても新しい成長の道を見つけられる仕組みはいいですよね。

コンピテンシー診断を1on1に用いたドキュメンタリー動画の一場面
【とあるチームの記録】上司が部下を知るためにやったこと。部下が上司を理解して気づいたこと。(コンピテンシー診断を1on1に用いたドキュメンタリー動画の一場面)
※画像をクリックすると動画をご覧いただけます

安田:ひょっとすると、SDGのGはGrowth(成長)にした方がしっくりくるかもしれませんね。ある時点を捉えたスナップショット的なSとDだけではなく、従業員目線で自分が今後成長できるかどうかは、重要な尺度だと感じました。こういう部署でこの能力を磨けたら「おそらく成長できる可能性が高い」という期待は、強い動機づけになりそうです。

田中:成長という言葉の中に「隠れた資質が開発される期待」や「ポジションへのこだわり」が強い場合は、本人の努力ではどうにもならなくてしんどい。だったら、目指すものはチームの成長においたほうが気も楽になるし、貢献実感も持てる。マネジメント以外のメンバーにも「チーム・組織の成長を担っている」というオーナーシップが持てるといいのではと個人的には考えています。

越智:HRは競合他社のベンチマークデータがない、自社データしかないというのがネックです。業界共通の指標や尺度を持つこと。そして上司の責務だけでなく、部下の役割や義務とは何だろうということと両面からいかないと。リーダーシップと同じようにフォロワーシップが評価されるようにしていきたいです。

神長:隠れた資質やフォロワーシップを測定し、個人の成長度合いをトラッキングできる仕組みは使えるようになってきたので、ミドルマネジメントが活用できるシチュエーションも考え、実装していきたいと思います。

田中:まだまだ話は尽きませんが、本日は生産性向上のためにできることについてさまざまな角度から、示唆に富んだお話をいただきました。ありがとうございました。

 
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「ターゲット以外への無駄打ちが多い」は、ホント?テレビCMの価値を改めて考えた

本連載では、高度化するテレビメディアについて、広告主のKPIや課題を踏まえて、どのようにテレビCMを活用していけばよいかをお伝えします。

「テレビCMは一度に多くの人にリーチできるものの、ターゲット以外への無駄打ちが多い」。メディアプランニングに携わっていると、このような声を聞くことがあります。デジタルメディアの高精度なターゲティングが主流になったことの副作用のようなものかもしれません。

しかし、マーケットは流動的です。テレビは、「今後顧客になるかもしれない、潜在的なターゲット」にも広告を当てることができます。

今回は、電通のメディアプランナー・窪谷航が、「マーケットの流動性」を踏まえたテレビCM活用について、データを示しながらお伝えします。

「無実化する“平均”」。難易度が上がるメディアプランニング

これまでの広告プランニングは、メディア接触に関する複数のサンプルデータの「平均」に着目し、世の中を捉えようとすることが一般的でした。

以前は、お茶の間で家族みんながそろってテレビを見る暮らしが多くの人に共通していました。テレビ以外のメディアの選択肢に限りがあったこともあり、メディア視聴データの平均値は「典型的な視聴スタイル」として、メディアプランニングにおいて機能していました。だからこそ、平均値を用いた分析や効果予測は、世の中の実態を確度高く捉えて説得力があるものでした。

しかし、現在は生活者のメディア接触は多様化しています。これにより「典型的な視聴スタイル」というものはなくなり、一人一人のメディア接触が異なるため、「平均値が誰のことも表していない」環境になりつつあります。そのため、以前よりもメディアプランニングや効果予測・分析が難しくなっています。

テレビCM

テレビだけを取り上げても、「無実化する“平均”」の傾向が見られます。下図は、電通のデータベース「DCANVAS」を用いて、テレビへのCM出稿に対して、獲得できた認知を算出したものです。横軸は個人全体の出稿量(TRP)、縦軸は認知率を表しています。

テレビ

これを見ると、「2019年」「2021~2024年4月」ともに、出稿量に対して獲得できる認知の平均をとったグラフ(曲線)の形は大きく変わっていません。一方で、各キャンペーンを表すグラフのプロットは、「2021~2024年」の方が、より上下に大きくバラついています。テレビが好きで毎日見ている人もいれば、たまに視聴する人もいるといった視聴の差もあってか、近似曲線が実態から離れつつあることを感じます。この図からも、メディアプランニングの難易度が上がっていることがお分かりいただけると思います。

このように、メディア視聴データの平均値の実態がなくなりつつあることを、私たちは「無実化する“平均”への挑戦」と捉え、これからのメディアプランニング領域における大きなテーマであると考えています。

「マーケットの流動性」を捉えたメディアプランニングが必要

メディア消費の多様化が進んでいく状況下で、テレビの強みとして注目したいのは、数あるメディアの中でも突出した「リーチの同時性」です。テレビとデジタルそれぞれのリーチの特徴を見てみましょう。

下図は、電通のプランニングツールを用いて、テレビスポットとデジタル動画(いずれも20~34歳をターゲティング)、それぞれに1億円を投資した場合の想定リーチを表しています。20~34歳へのリーチ率はデジタル動画が優位ですが、それ以外の層へ同時に発生するリーチを加味すると、テレビがカバーするリーチの広さがお分かりいただけると思います。

テレビ

テレビの強みである「リーチの同時性」を伝えると、「テレビCMは無駄が多い投資なのでは?」と思う広告主がいらっしゃることを感じます。テレビが幅広い年代に広くリーチできるために、「ターゲット以外への広告リーチ=無駄な投資」と捉えられているからです。このときによくお伝えするのが、「マーケットの流動性」です。

下図は、某サービスカテゴリを趣味とする人々の2年間の推移を示しています。趣味とする人は、2022年が調査対象の10.1%、2023年が9.4%でおおよそ横ばいですが、内訳を見ると、1年間でその4割が入れ替わっています。つまり、マーケットにおける顕在層は固定化しておらず、流動化していることが分かります。

テレビ

このことは、多くのマーケットに共通して言えることです。下図は、某飲料カテゴリの認知率・認知継続率を調査したものです。横軸は「2024年の認知率」、縦軸は「2024年の認知率を100%としたときの2025年の認知継続率」を表しています。これを見ると、
・認知水準が高いほど継続率も高く、忘れられづらい
・認知継続率は65%~90%のレンジで、強いブランドは認知が高止まりしている
ということが分かります。

テレビ

続いて、前述した飲料カテゴリ市場において、商品別の主飲用ブランドとその継続率を見てみます。横軸は「2024年に主飲用していたブランドの割合」、縦軸は「2025年の継続率、つまり主飲用し続けている割合」です。最も飲まれているブランドでもその継続率は66.8%で、約3分の1が1年間で主飲用しなくなったことを示しています。

テレビ

これら2つのデータから、「認知」と「利用」のファネルの変化スピードは一定ではないことが分かります。この事例では、ボトムファネル(主飲用ブランドの継続率)指標の方が、より多くの人の入れ替わりが発生しています。

ここで挙げた例以外でも、いままでサービスや商品に対する利用意向のなかった人が、ある日突然、利用意向が芽生えて潜在層から顕在層に変わることは決して珍しいことではなく、世の中で頻繁に起こっています。

「認知はもう十分に取れているから、テレビCMは打たなくてよい」といった判断もたまに聞きますが、テレビCMには「流動するマーケット環境下で、まだ顕在化していないが、これから顕在化する可能性が十分にある人々に対して、最も効率的に広告を届けてマインドシェアを上げておく機能」があります。この点がリーチパワーに長(た)けるテレビCMがマーケティングに果たす重要な役割の1つだと考えます。

ターゲティングが得意なデジタル広告は、潜在層や非顕在層に対する広告コストをそぎ落すことで費用対効果を上げています。多くのブランドやサービスは、デジタルの高精度なターゲティングで顕在層をカバーしていることを踏まえると、潜在層や非顕在層を含む広い性年代にコミュニケーションできるテレビCMはカテゴリーシェアを上げる有効な手段と言えます。

非顕在層のマインドシェアの重要性については、ブランド想起のキャパシティと関連します。下の図はその一例ですが、いずれの商品カテゴリにおいても純粋想起するブランドの数は1、2個ほど。つまり、私たちが瞬間的に頭に浮かべられるブランドは想像以上に少ないのです。もちろん、早く想起されたブランドの方が、選択肢や検討時間の面から考えて有利なので、消費行動につながる欲求が顕在化した瞬間に思いついてもらえるサービスになることは価値のあることだと言えるでしょう。

テレビ


 

フリークエンシーを抑えて効率を上げるだけがメディアプランニングではない

ここまで、マーケットの流動性とその中でテレビCMが果たす役割についてお伝えしてきました。このマーケットの考え方に立脚したテレビ投資の考え方の事例を紹介します。

ここでは、複数のサービスライン・ブランドを持つある企業(A社)を例に取り上げます。電通が保有する、テレビ実視聴データを用いた統合マーケティング基盤「STADIA360(スタジア・サンロクマル)」(※)で、3カ月に1回ごとにA社の「テレビCM接触カテゴリ数」を分析しました。接触カテゴリ数とは、1人が一定期間にテレビCMで接触した、同社のブランドやサービスカテゴリの数を可視化したものです。

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接触カテゴリ数が増えるごとに、A社のサービス全体における利用意向率が上昇することが分かりました。接触が多ければ多いほど、利用意向率が上がることは想像できますが、ここで注目してほしいのは、5カテゴリ接触したときに大きく利用意向率が伸長している点です。1年間を通じて複数カテゴリに接触し続けている状況を生むことで、サービス全体の利用意向を押し上げることが証明できました。

※STADIA360(スタジア・サンロクマル)=電通が提供する、ユーザーの同意許諾を得たテレビ実視聴データを基盤とした国内最大規模のマーケティングプラットフォーム。テレビ実視聴データとデジタル行動データを連携することで、オンオフ統合での分析が可能。


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調査では、「STADIA360」を利用して、接触カテゴリ数の割合とテレビCMのフリークエンシー(接触回数)を突合させた分析も行いました。A社のテレビCMへのフリークエンシーが1~3回の人は、当然、CMの接触カテゴリ数も1~2カテゴリほどしかありません。しかし、フリークエンシーが積みあがっていくと、接触カテゴリ数も増加していきます。

先ほど述べた、利用意向率がアップする5カテゴリ接触を目指した場合、テレビCMへのフリークエンシーを約33回にすると、ほぼ5カテゴリに接触できることが分かりました。よって、3カ月間でフリークエンシーが33回以上になるようにテレビCMを出稿すると、年間を通じたA社の利用意向を高められるということです。

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テレビとデジタルを統合的に分析する際の一般的な最適フリークエンシーの議論では、「いかにフリークエンシーを抑えて効率を上げるか?」という論調になりがちです。しかし、「ブランドや企業全体の利用意向を押し上げるために必要な接触量」という観点では、まるで違う結論に至った例と言えます。

もちろん、利用意向を高めることができるフリークエンシーは、業種やマーケットの成熟度合いによって異なります。電通には、さまざまな生活者の過去のメディア接触経験やタイミング、意識のデータがあり、それらをひもづけて精緻に分析することができます。

メディアの視聴スタイルが多様化し、世の中の実態が捉えにくくなった昨今、思い込みやコアターゲットの獲得だけを目的にしたメディアプランニングでは、十分な広告効果を発揮することが難しくなってきています。

生活者が「欲しい」と思ったときに一番に思い出してもらえるブランドになるために、今回お話ししたテレビを含め、あらゆるメディアの特性と「マーケットの流動性」を踏まえて、広告プランニングをすることが必要です。

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