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「2020年 日本の広告費」特別対談 ネットとリアルの融合が加速。メディアの役割はどう変わる?

2020年日本の広告費は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により大幅に減少しました。
一方で、コロナ禍による外出・移動の自粛によって“巣ごもり需要”が活発化し、ネット通販やデリバリーの利用、オンライン会議やリモートワーク、キャッシュレス決済の活用など、社会におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が一気に加速しました。
本対談では、ICT およびメディア研究、ネットと社会経済を専門とする早稲田大学大学院・三友仁志教授をゲストに招き、電通メディアイノベーションラボの奥律哉と共に、コロナ禍による人々の生活行動の変化、広告やメディアへの影響について考えます。
<目次>
▼リーマン・ショック時との違いは「消費者側」への影響が大きいこと
▼テレビとネットを分ける意味が薄れ、進むのは「一周まわってテレビ」化
▼マルチスクリーンの使われ方は「同時視聴」から「シーケンシャル視聴」に
▼ネット最大の魅力はフルオンデマンド。テレビにもそれが求められる
▼これからのメディアが発信すべきは、さまざまなレベルの情報と多様性
リーマン・ショック時との違いは「消費者側」への影響が大きいこと
奥:2020年日本の広告費は、前年比88.8%の6兆1594億円でした。東日本大震災の2011年以来9年ぶりのマイナス成長であり、リーマン・ショックの影響を受けた2009年以来の2桁減少です。1947年の統計開始以来、2番目の下げ幅となりました。この結果を、三友先生はどうご覧になりますか。

三友:広告費減少という点で見ると、数字上の規模は同じくらいですが、リーマン・ショックとコロナ禍には大きな違いがあります。リーマン・ショックでは、主に広告主に大きなインパクトがあったのですが、このコロナ禍は消費者側にも重大な影響を及ぼしています。それに、ダメージを受けた業種が、リーマン・ショック時と比べて非常に広範にわたります。
一方で増収増益を達成している企業もあるのですが、さすがに広告のように目に見える形でマーケティング戦略を派手に展開することははばかられる。さらに、ゲームやパソコン関連がそうですが、需要増に応えて事業を拡大したくても部品の供給が滞ってしまい、生産をコントロールせざるを得なくなったところもあるでしょう。
奥:成長した業種や企業はあっても、それで必ずしも広告費を増やせたとは限らないということですね。
三友:また、全体的に見て、インターネット広告への流れがますます加速していますが、コロナ禍の収束後、この流れがどうなるのかは興味深いです。それにインターネット広告と一言でくくってしまいますが、実際は多種多様な性質を持っていて、効果や影響もそれぞれ違いますよね。
例えばYouTube広告にはいくつかのフォーマットがあって、スキップできるものとスキップできないものがあります。また、バナー型のディスプレイ広告は能動的にクリックされるので、視聴者へのリーチがほぼ確実に分かりますが、そうではなく「動画を見たいのに、いきなり広告を見せられた」場合、ネット広告はテレビCM以上に「邪魔なモノ」と受け取られかねません。
このように、どういう形の広告が、どういう条件で受け入れられているのか、利用者の評価、受容性は引き続き注視したいです。
奥:確かに、テレビは「CMが入る」という前提で本編がつくられていますが、動画サイトで強制的にCMに入ってしまう場合、利用者の受容する姿勢は同じではありませんよね。それに、テレビ文化で育った比較的年配の視聴者と若年層とでは、動画サイトでのCMへの受容性も違います。その点は広告業界も課題感を持って取り組んでいます。
テレビとネットを分ける意味が薄れ、進むのは「一周まわってテレビ」化

三友:この調査では総広告費を「マスコミ4媒体」「インターネット」「プロモーションメディア」の三つに分類していますが、こうした切り分けが、今後は徐々にあいまいになっていくのではないでしょうか。YouTubeでNHKのCMを見て驚きましたが、考えてみると、特にテレビとインターネットの間では行き来が増え、マスとネットを分ける意味は徐々に薄くなってきています。
最近「テレビ」という家電の立ち位置、性格が急速に変わっているように感じています。これは私の場合ですが、テレビをつけますと、まず地上波の番組が映ります。一通りザッピングして、見たい番組がなければ衛星放送に変えます。衛星には面白い番組もあるのですが、通販系が多かったりしますと、今度はインターネットに行って、テレビ画面のままネットの動画を見たりするわけです。
若者たちはスマホで動画をよく見ると言われますが、今は在宅の機会も多いですし、Netflixのドラマを見るにしても、自宅の大きなスクリーン、つまりテレビ受像機で見る方が楽しいでしょう。今やネット動画の質もテレビと遜色ありませんから、地上波や衛星放送と区別なく、インターネットの動画もテレビ受像機で見るわけです。
こうした変化の中で、広告については、こちらはテレビ、あちらはネットと分けることに、一体どれだけの意味があるかは考え直す時期に来ていると思います。
奥:そういう生活者の変化について、私は数年前から、「一周まわってテレビ」という言い方をしています(笑)。特に昨年から、巣ごもりで皆が家にいたことが大きく影響して、テレビのスクリーンを動画配信や動画共有のスクリーンとして使うようなスタイルが広まりました。
電通グループ会社のサイバー・コミュニケーションズ(CCI)による調査では、2020年の6月時点でテレビのネット接続率が50%を超えるまでになっています。さらにこの先、大きなスポーツイベントがあったり、4Kテレビの普及が進むと、たいていの家庭でテレビがネットにつながって、テレビのリモコンにYouTubeボタンが付いているのが当然ということになる。同じ番組を見ていても、放送波で届いた映像なのか、ネット経由なのか分からなくなりますから、広告費を集計する側は大変なことになりますね(笑)。
三友:そのように、インターネットの動画はパソコンやタブレット、スマホといったデバイスでの視聴から、テレビ受像機で見る流れができてきた印象があります。しかし、逆の流れ、つまり「テレビ番組をパソコンやスマホで見る」という方向は、まだまだ制約がありますよね。
奥:私と三友先生は、総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」でご一緒していますが、地上波とネットの同時配信についてはこの4~5年議論を重ねてきて、ようやく「NHKプラス」が始まったのが、コロナ自粛期とほぼ同じタイミングでした。
三友:この点、やはり日本は遅れていると感じます。テレビには産業としての伝統や保守性もあり、難しいのは分かるのですが、双方の行き来があまりにも“対称”でありません。放送や通信を巡る政府の会議では「テレビがいかにネットの方に出ていくか」という限定的な議論に終始しています。そうこうしている間に、ネットが「デバイスとしてのテレビ受像機」を乗っ取りつつある、そんな状況になってしまっているようにも思います。
マルチスクリーンの使われ方は「同時視聴」から「シーケンシャル視聴」に
奥:ネット動画サービスでいえば、例えばTVerからは、「TVerの視聴デバイスがPCからテレビにシフトしている」と発表されています(※)。先生のおっしゃる通り、ユーザーは「テレビ受像機でネット動画を見る」方向に進んでいるわけですね。
※【TVer】2020年10-12月期サービス利用状況
https://tver.co.jp/news/-tver-202010-12-14f1f2-1.html
ただ、「では単にテレビのコンテンツをネットに持っていけばいいのか?」という問題もあります。ネット側からいえば、もともとパソコンやタブレット、スマホがあった上でのテレビ受像機ですから、延長線上で考えられるでしょうが、テレビというのは、ひたすら本編を放送してきましたから、他のデバイスに持っていこうとしたときに融通が利かない。
「同時配信」の名の下、NHKプラスや日テレ系ライブ配信の例もありますが、単純に地上波と同じコンテンツをそのまま配信しても、特にカジュアル視聴志向の強い若い人たちにはそれだけではなかなか見ていただけないでしょう。
三友:確かに、若い人は「長いもの」を敬遠する傾向が強く、1話完結的なもの、短いものが受け入れられやすい。ネット動画は短いものが多いですね。テレビ番組というのは、なんていうのか、“次”に引っ張ろうとするじゃないですか(笑)。
奥:動画共有サイトをよく見ているユーザーからは「テレビ番組は、“引っ張る”ところが良くない」と言われることもありますね。特に民放の場合はCMというタイミングもありますので、どうしても、少しだけ先に見せておいて、後でしっかり見ていただこうという、“縦”の視聴導線を重視せざるを得ません。
三友:近年のメディアを語るとき、よく「マルチスクリーン」といいますが、今の若年層は複数のスクリーンをシーケンシャル(連続的)に見ていきます。一つのプログラムを、家ではテレビを見て、外ではスマホやタブレットと、デバイスを変えながら、シーケンシャルに追っていく。
ちょっと前まではマルチスクリーンというと、テレビを見ながらパソコンを見たり、スマホをいじったりという“同時利用”のイメージでしたが、今は「デバイスを変えながらシーケンシャルに見ていく」スタイルが多くなっているので、そうした生活者の視聴スタイルの変化に、テレビが追い付いていない面はあると思います。
奥:アナログ放送の時代には、家庭内にはテレビが複数台あって、お茶の間で家族みんなが見ることもあれば、親と一緒に見たくない、違う番組を見たい場合には個室のテレビで見ることもできたわけです。ところが今どきの家にはテレビは1台しかなくて、あとは各自ネットデバイスを持つ家庭が多くなっている。
昨年の6月、まさに東京アラートで、学校も休校になり、みんなが巣ごもりしていた時期ですが、この6月のMCR(Media Contact Report=メディア環境調査)データを見ると、「自宅でネットを思いっきり使って、寝る直前までネットで遊んでいる高校生」の姿が見えてくるんですね。
三友:私も授業で学生に「今朝、起きて最初にしたことは?」と聞くと、皆「スマホを見た」って答えるのですね。そして、「じゃあ昨日寝る前、最後にしたことは?」と尋ねると、「スマホを見た」っていう(笑)。
奥:今や多くの人の目覚ましがまずスマホですし(笑)、スマホに送られてきた定時のニュース配信をきっかけにしてネット側にエントリーしていきますから、もはやネットとは切っても切れない生活です。コロナ禍の影響もあって、若い人だけではなく年配者も含め、「みんな」の生活にネットがしっかりはまった、根付いたと思いますね。
ネット最大の魅力はフルオンデマンド。テレビにもそれが求められる
三友:ネットで最もみんなに見られているのがYouTubeです。視聴者参加型で、幅広いコンテンツで溢れています。一方、テレビのコンテンツは非常によくつくられてはいますが、YouTubeに数多く投稿されているコンテンツの多様性には、テレビにはない魅力があります。
また、YouTuberといわれる人たちの登場で、面白い動画をネットに投稿することが収益につながると分かりました。テレビ局のような大きな事業ではなくとも、メディアという世界、映像の世界において個人事業主による新しいビジネスモデルが出来上がってきたのです。
さらに、ネット最大の魅力はフルオンデマンドであること。つまり、生活者が見たいときに見たいコンテンツを見ることができる。ところがテレビはそうなってはいない。それはまさに、広告との兼ね合いもあるのでしょう。
奥:先ほどのMCRのデータを見ますと、コロナ禍を経て、男女10代の起床時間が1時間くらい遅くなっています。通学の時間がない分、家でゆっくりできて、その分若干“夜ふかし”になっていたりする。
しかし、放送のスケジュールは、相変わらず7時のニュースは7時に始まりますし、8時からの連ドラは8時スタートのままでした。テレビの番組編成はいつも通りで、「生活者の生活行動が大きくズレた」という現実は加味されていなかったわけですね。
昨年の4~6月期には皆さん家にいましたので、いつもよりテレビをたくさん見ていたことが視聴率データからも明らかです。ところが、だんだんワイドショーやバラエティー番組に飽きてきたのか、YouTubeやNetflixなどのオンデマンド系のネット動画視聴が増えていき、10月頃になるとテレビの視聴率も元に戻ってしまいました。
この経緯を見ますと、見たいときに見られるオンデマンドのサービスが高く評価され、もっといえば、従来はあまりネット動画を視聴していなかった人々にまで「オンデマンド視聴」の裾野が広がったのだと思います。
これからのメディアが発信すべきは、さまざまなレベルの情報と多様性
三友:ところで最近、ネットで昔のCMをまとめたコンテンツを見る機会がありました。A社のインスタントラーメンのCM、S食品のラーメンのCMとか、古いCMがたくさん登場するのですが、ほとんど全部覚えているのです(笑)。当時の広告はいずれもすごいインパクトで、それぞれのCMがそれぞれの番組と結びついていた、一体化していたように思います。
近年のスポットCMは、単に「商品の何かを、企業の何かを宣伝するための時間」でしかなくなってしまったようにも思えます。生活者が動画広告をスキップするという話もありましたが、広告自体が魅力的なものに変わっていかなければいけない。ただ、テレビとネットがクロスする時代に、どういう広告に効果があるのか、どういう見せ方がよいのかは難しい問題です。
奥:私も小学生、中学生のころからテレビっ子でしたから、当時のアニメ番組の提供社もセットで覚えています(笑)。それがブランドリフトにつながるという、テレビらしい中長期のブランド戦略にマッチしていたわけですね。一方ネットは比較的短期の“刈り取り”を得意としていましたが、ネット動画がテレビスクリーンに出るようになると、ブランドリフトも可能になってくるのではないかと思います。
三友:もう一つテレビの課題として、情報が画一化していることが挙げられます。SNSでの情報取得が増えてきているとはいえ、コロナ禍に関しても、やはりテレビから情報を得ている人が多いと思います。実際に多くの情報バラエティー番組がコロナの話題を取り上げますが、MCと専門家のゲスト、レギュラーのコメンテーターがパネルディスカッションをする番組がほとんどです。
本来、テレビにはさまざまな情報を提供することが期待されているわけですが、ともすればどこも同じになってしまう。一方インターネットの情報は信頼性に欠ける部分もありますが、生活者が本当に欲する情報があったりするわけですね。
奥:テレビとの付き合いの少ない、ネットから情報を得ている若年層を中心に、玉石混交の情報の中からファクトを拾い出し、自分なりに「世の中はこうなんだ」と理解している人も増えているように感じます。「情報の信頼性はネットよりもマスの方が高い」といわれてきましたが、もうそこまで単純化できないのかもしれません。
三友:テレビの性格上、すべての人のニーズに合った情報を出すことはできません。その点で、多様性にも限界があります。例えば大きな地震があったとき、1次的な情報としてテレビは非常に重要ですが、断水したときに水はどこでもらえるかといったニーズには十分に応えられません。そのため、全国ネットにローカル、あるいはケーブルテレビなど、さまざまなレベルの情報があって相互に補完することが重要なのだと思います。
奥:情報の多様性は担保すべきで、ユーザーが選べればいい。そうした多様性をより理解しているのは、やはり若い世代かもしれませんね。お話をしながら、コロナ禍が現代社会とメディア利用の変化をあぶり出しているように感じました。本日はありがとうございました。
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「事業成長につなげるデジタルテクノロジーの教科書」発売
電通のシニア・ビジネス・ブロデューサーであり、セガ エックスディーの取締役執行役員 CSOを務める片山智弘氏の著書「事業成長につなげるデジタルテクノロジーの教科書」(発行:大学教育出版)が3月15日に発売された。
本書は、新しい技術が生活やビジネスへ加速度的に浸透している中、デジタルテクノロジーを活かして事業開発を行う著者が、「デジタルとは何か?」から「デジタルテクノロジーをどう理解し活用するのか?」までを解説したビジネス実践書である。
【主な目次】
第 1 章 身近に起きているデジタルテクノロジーの変化
第 2 章 デジタルテクノロジーの内容をとらえるフレームワーク
第 3 章 デジタルテクノロジーの体験価値と測定
第 4 章 デジタルテクノロジーの事業を考えるステークホルダー観点
第 5 章 デジタルテクノロジーのレギュレーション観点での評価
第 6 章 デジタルテクノロジーの活用に向けて
第 7 章 デジタルテクノロジーを事業にする上で重要になること
第 8 章 デジタルテクノロジーのマーケティング
第 9 章 まとめ
【著者コメント】
昨今、新規事業やマーケティング、デジタルトランスフォーメーションなどで、会社や事業を成長させていく中において、デジタルテクノロジーに関する知識理解の必要性は、時代と共に増すばかりになっていると思います。更に、活況なマーケット環境も含めて、次から次へとこの領域における新しいバズワードやサービスが出てきます。
そういった環境下でビジネスとして、いかにそれを汎用的に捉えて考えていくといいかを私の経験と多大なる関係者の皆様のご協力でまとめたのが、この本書になります。
ぜひ、これから新しいデジタルテクノロジーを活かした業務に関わっていく皆様は本書をご覧いただけますと幸いです。
【著者紹介】
片山 智弘(かたやま ともひろ)
株式会社電通 事業共創局 シニア・ビジネス・ブロデューサー
株式会社セガ エックスディー 取締役執行役員 CSO
1987 年、東京都生まれ。2010 年、慶應義塾大学理工学部卒業後、慶應義塾大学大学院在学中に就職活動の採用試験を練習するイーラーニングサービスで起業。2年間経営後にサイトM&Aで売却。2012年、大学院修了と共に株式会社電通へ入社。
電通入社後は、一貫して新規事業部署に所属。デジタルテクノロジーおよびビジネスメソドロジーを活かした様々な事業開発を歴任。並行して、オープンイノベーションによる協業推進の責任者や、デジタル環境戦略と UXに関するアドバイザリー業務も実施。
2019年 7月より、セガ エックスディーへの合並会社としての電通の資本参画を契機に取締役を兼任。
「ダボス・アジェンダ」にみる2021の行方
「ダボス・アジェンダ2021」。1月の会合はオンラインで開催
新型コロナウイルスの流行は、これまでの価値観を一変させています。世界中で当たり前のように集まって行われていた国際会議もそのひとつでしょう。
毎年1月下旬にスイスで行われていた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会・ダボス会議は、世界経済を引っ張る首脳陣が対面で集い、その年の重要な問題を議論します。
「1年の始まりはダボスから」。世界の1年の議論をリードしてきたこの会議は、51年の歴史で初めて、すべてがオンライン形式で開催されました。対面による年次総会は既に2度延期され、現在は8月開催で予定されています。
今年は「信頼回復に向けた重要な年」と位置付けて、5日間で100あまりのセッションを一般にも公開しました。対面での開催を延期してもなお、年初のオンラインでの開催にこだわった理由に関して、WEFのシュワブ会長は
「パンデミックという状況下において、優先順位を再設定する必要性と制度改革の緊急性が世界中で高まっている」
と述べていました。
「ダボス・アジェンダ2021」と名付けられたこの会議では、日本を含む各国の首脳による脱炭素や国際協調、グリーン社会への取り組みを強調する発言が目立ちました。
その他のトピックとしては、
- 先進国による必要以上のワクチン購入への懸念
- 国際機関の機能不全
- 気候変動への対応の遅れ
など、自国主義に端を発する課題が山積しており、就任直後の米バイデン政権への期待を反映した内容も多くありました。
「持続可能な未来のための消費のあり方」や「危機に強い公衆衛生のシステム」なども議論されました。プラスチック対策に取り組んでいる若者も会議に参加し、行動の呼びかけや革新的な解決策を企業のトップと共有しました。
またネットゼロエミッション(温室効果ガス排出量実質ゼロ)へのチャレンジとして、企業、政府、投資家、個人それぞれの取り組みの加速が不可欠ということも議論されました。
デジタルの領域では、グーグルのピチャイCEOの発言が注目を集めました。
インターネットにおける言論の自由と安全の両立について、動画サイトなどの自由は守られるべきだが、社会として合意した境界線が必要であること、企業により対応が異なる中、政府は明確な指針を示すことが重要と強調しました。
また、今後3~5 年で圧倒的な情報処理能力を持つ量子コンピューターを貸し出す「量子クラウド」が実現すると予測。量子コンピューターや人工知能によって引き起こされる差別などの倫理的な問題に対し、温暖化対策にまつわる「パリ協定」のような国際的な枠組みの整備を急ぐ必要があると主張しました。
サーキュラーエコノミーの実証実験も加速
ここ数年議論されてきた「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)も、動きが活発になっています。
ダボス・アジェンダの議論を受けWEFはメキシコシティ、ブリュッセル、トリノ、バンコクで循環型イノベーションのハブを立ち上げると2月8日に発表しました。
これは、WEFの20代の若者のコミュニティーであるグローバル・シェイパーズ・コミュニティーが中心となり、若い変革者を活用することで、循環型社会に向けた草の根的なアプローチの実現を目指すものです。
ハブとなる都市の選定には、40以上の応募があり、その中から4都市が選ばれました。2030年までにSDGs(国連の持続可能な開発目標)を達成するためには、現在の商品やサービス、この先のイノベーションにおける新しいアプローチが必要です。ローカル(地元的な視点)とグローバル(世界的な視点)を考慮することで、循環型の未来に向けた前進を目指しています。
サーキュラーエコノミーはオランダ政府、大手のコンサルティング会社やエレン・マッカーサー財団などがリードしており、それぞれ目標や原則を打ち出していますが、自治体や企業が取り入れるためには、それぞれの強みをどう取り入れていくかの見極めが必要です。
経済構造の見直しは避けて通れないものとなっています。このWEFが始めた実証実験の行方を、この先も注目していきたいです。
ESGの動きもさらに加速。「ステークホルダー資本主義指標」への取り組み
企業によるESGの取り組みの動きもさらに加速します。
ダボス・アジェンダに合わせてWEFとそこに参加するビジネスリーダー61人が、新たにつくられた「ステークホルダー資本主義指標」に基づく報告に取り組むことを発表しました。
これは、企業が業種や地域を問わず報告可能な、普遍的で比較可能な開示事項で、「人」「地球」「繁栄」「ガバナンス」の四つの柱を中心とした枠組みです。
非財務報告の分野でも、結束の声が高まっています。企業や投資家はサステナビリティーへの評価能力を強化して意思決定を改善するとともに、透明性と説明責任を負うべき、という強い決意を、ビジネスリーダーたちが表明しています。
具体的には、自社の事業に関連性の高い指標や、より適切なアプローチを示し、投資家その他のステークホルダーへの報告(年次報告書、サステナビリティー報告書、委任状などの資料)に反映させるというものです。
ビジネスリーダーたちは、ESGがすべての企業でこれまで以上に重要になると感じています。自社の中核的な戦略、事業運営、企業情報開示にサステナビリティーを組み入れるという大手グローバル企業の意向を明確に表しているといえるでしょう。
バンク・オブ・アメリカのモイニハンCEO兼会長は
「私たちは株主にリターンを提供すると同時に、社会課題の解決に貢献しなければなりません。これこそが、ステークホルダー資本主義の実践なのです。共通の指標があれば、すべてのステークホルダーが進捗状況を測定することができ、資本主義の下、企業や投資家、その他の人々から集結できる資源を、最も大きな変化をもたらす場所に向けることができます」
と述べています。
またサステナビリティーへの対応で注目されるユニリーバのアラン・ジョープCEOは
「世界が直面している課題は、気候変動の暴走、環境悪化、社会的不平等です。変革のためのメカニズムとして、企業の年次報告書や決算書が最初に思い浮かぶことはないかもしれませんが、これらの問題に取り組む新たな資本主義を創出するためには、標準化された非財務報告の義務化が不可欠です」
と述べています。
「ダボス・アジェンダ2021」では、グローバル視点の“改革の必要性”が、この数年と同様に訴えられていますが、多くのセッションでパネリストから“改革実行の必要性”を切に訴えるメッセージが出されていました。今がまさに社会・国際秩序の歴史的な転換点であると感じ取れます。
毎年1月の会議の直前に出される「グローバルリスク報告書」でも、引き続き気候変動を重大なリスクと位置づけていました。その上で、今後2年間は新型コロナウイルスの感染拡大が大きなリスクとなり、人々の生活が脅かされるだけでなく、医療や所得、デジタル技術などの格差がさらに広がるおそれがあると指摘しています。
そしてリスクも短期だけではなく中長期でも見るべきだとし、3~5年後には資産バブルの崩壊や債務危機といった経済のリスクに、5~10年後には国家の崩壊といった地政学的リスクにつながりかねないと指摘しています。
サーキュラーエコノミーも議論から実践に移るフェーズに入っており、現場を巻き込んでどのように動かすのかが重要と感じます。ESGもしかり、ステークホルダーたちがいかに社会とのつながりを持っていくかが重要です。あらゆる面において「コミュニケーション」が重要な時代だと痛感しました。
東京五輪めぐり増田明美と有森裕子が論争! コロナを無視して開催を主張する増田のスポーツ至上主義に有森が「社会への愛が足りない」
「2020年インターネット広告媒体費」解説。4マス媒体とほぼ並んだ「2.2兆円超」の内訳は?
サイバー・コミュニケーションズ(CCI)、D2C、電通、電通デジタルの4社は共同で「2020年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(以下、本調査)を発表しました。CCIの梶原理加が解説します。
※ニュースリリース「2020年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」

<目次>
▼インターネット広告費は日本の総広告費の36.2%に到達
▼「広告種別」「取引手法別」に見たインターネット広告媒体費
▼トピック①ビデオ(動画)広告費はインストリームとアウトストリームが半々
▼トピック②インターネット広告媒体費全体の3割以上が「ソーシャル広告」に
▼2021年のインターネット広告費はどうなる?
インターネット広告費は日本の総広告費の36.2%に到達

既報の通り、2020 年の日本の総広告費は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)拡大の影響で、前年比88.8%の6兆1594億円まで減少しました(解説記事)。
しかし、この状況下でも「インターネット広告費」は一貫した伸長を続け、「マスコミ4媒体広告費」の2兆2536億円に匹敵する2兆2290億円、広告費全体の36.2%を占める市場に成長。
「インターネット広告費」から「インターネット広告制作費」および「物販系ECプラットフォーム広告費」を除いた「インターネット広告媒体費」は、1 兆 7567 億円(前年比105.6%)となりました。

本記事では、この「インターネット広告媒体費」を中心に解説します。
「広告種別」「取引手法別」に見たインターネット広告媒体費
インターネット広告媒体費1兆7567億円の内訳について、「広告種別」「取引手法別」でそれぞれ分析しました。
●広告種別ではビデオ(動画)広告は前年比121.3%、ネット広告の2割を超える


広告種別では、インターネット広告媒体費全体の1兆7567億円のうち、「検索連動型広告」が38.6%の6787億円と最も多くの割合を占めます。検索エンジンと連動したタイプの広告です。
続いて、さまざまなウェブサイトに表示されるバナータイプの「ディスプレイ広告」が全体の32.6%で5733億円。この2種類合わせて7割を占めています。
そして昨年に引き続き大きな伸長を見せたのが、動画ファイル形式(映像・音声)の広告、「ビデオ(動画)広告」です。
ビデオ(動画)広告は、2017年にはインターネット広告媒体費のうち9.5%(1155億円)と1割未満でしたが(※1)、2018年14.0%(2027億円)、2019年には19.1%(3184億円)、そして2020年には22.0%の3862億円に達し、初めて2割を超えました。
前年比121.3%の伸長で、インターネット広告費全体の伸び率105.6%を大幅に上回っています。
かつてはビデオ(動画)広告の使いどころは限られていましたが、インフラの強化が年々進み、インターネット広告費の伸長を牽引する広告種別となっています。今後も5G回線の普及などにより一層の活用が期待されます。
※1 2018年にインターネット広告媒体費の推計対象に「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」が追加されたため2017年は推計範囲が異なり、参考値となる。
●取引手法別×広告種別構成比でもビデオ(動画)広告が伸長


取引手法別では、「運用型広告」が82.9%の1兆4558億円と、全体の約8割を超えました。インターネット広告取引の主力として引き続きニーズを集めています。
一方で、新型コロナ拡大の影響を受け、予約型広告は前年比87.5%、成果報酬型広告は前年比93.9%と、いずれも減少しました。
この取引手法別の広告費の内訳を広告種別と掛け合わせて見ると(上図)、「運用型の検索連動型広告」が、全体の38.6%の6787億円で最多となります。
次いで「運用型のディスプレイ広告」が25.7%(4520億円)、「予約型のディスプレイ広告」が6.9%(1213億円)と、いずれも大きな割合を占めていますが、運用型のディスプレイ広告が前年比112.1%と伸長したのに対し、予約型は前年比80.1%と、全体の減少率よりもさらに少なくなっています。
また、ここでも「運用型のビデオ(動画)広告」が18.3%(2019年は15.2%)の3206億円と大きく伸長しています。「予約型のビデオ(動画)広告」は656億円、3.7%(2019年は4.0%)と微減ですが、前年に近い数値に踏みとどまりました。
トピック①ビデオ(動画)広告費はインストリームとアウトストリームが半々


ここでは、近年のインターネット広告費で特に伸長の著しい、ビデオ(動画)広告費の内訳を分析します。
ビデオ(動画)広告費3862億円のうち、動画コンテンツの前後や間に再生される「インストリーム広告」が構成比46.6%の1800億円。ウェブ上の動画コンテンツ外に表示される広告枠や記事のコンテンツ面といった「アウトストリーム広告」が構成比53.4%の2063億円です。
ほぼ拮抗していますが、ややアウトストリームコンテンツが高い割合を占める結果となりました。
取引手法別では運用型が3206億円と圧倒的で、ビデオ(動画)広告の8割以上を占めています。
トピック②インターネット広告媒体費全体の3割以上が「ソーシャル広告」に

本調査では、ユーザーが投稿した情報をコンテンツとする、「ソーシャルメディア(※2)」のサービス上で展開される広告を「ソーシャル広告」として推計しています。
2020年はソーシャル広告全体で前年比116.1%の5687億円と高い成長率を示し、インターネット広告媒体費の3割以上を占めるまでに成長しました。
昨年同様「SNS系」「動画共有系」、さらにブログサービスやソーシャルブックマークサービス、電子掲示板サービスなどの「その他」という三つに分類し、構成比を分析しました。
※2 ソーシャルメディア
本調査では、ユーザーが投稿した情報をコンテンツとし、ユーザー間で共有・交流するサービスを提供するメディア(プラットフォーム)を「ソーシャルメディア」と定義している。

前年に引き続き「SNS系」が最も多く、2488億円で43.7%を占めています。そして「動画共有系」が1585億円(2019年は1139億)と伸長し、構成比27.9%(2019年は23.2%)と、「その他」の28.4%に迫っています。
2021年のインターネット広告費はどうなる?
「2020年 日本の広告費」では、新型コロナの影響による9年ぶりのマイナス成長がインパクトを残す中、インターネット広告費のみが唯一のプラスになりました。
特にポイントとなるのは、前年から続く「ビデオ(動画)広告」「ソーシャル広告」「物販系ECプラットフォーム広告」の伸長です。
ビデオ(動画)広告に関しては、5Gの普及などにより通信環境が今後よりスムーズになるにつれ、視聴数がより増加していくと考えられます。特にコロナ禍による“巣ごもり”の中で、無料動画配信サービスも視聴者数を増やしており、これを支えるインストリーム広告のさらなる成長拡大が予想されます。
中でもTVerをはじめとするテレビ関連メディアの動画広告はまだ伸びしろがあります。例えば、仮に同時配信の流れが加速するようなことがあれば、今後爆発的に需要が増える可能性もあるでしょう。

ソーシャル広告においても、「動画共有系」の伸びが非常に大きく、もともとあった流れがコロナ禍をきっかけに加速した感があります。コロナ禍による生活者のスタイル変化により、今後はますます「ソーシャルメディアでの動画広告」が主流になっていくでしょう。
また、2019年から推定している「物販系ECプラットフォーム広告費」は今回で2年目となりますが、コロナ禍で生活者の購買行動の変化と共にECの利用も増加し、広告費は1321億円(前年比124.2%)と伸長しています(※3)。
物販系ECプラットフォーム広告費は、ECモール内でオンライン店舗を構える企業が自社の商品ページへ誘導するための広告です。また、リアルで店舗を持たないDtoC(Direct to Consumer)の事業者も増えており、オンラインでいかにユーザーを自社ページに誘導するかが重要になっています。こうした背景から、物販系ECプラットフォーム広告費は今後も拡大していくことが予想されます。
※3 「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」について
2019年から、インターネット広告費の中に新たに「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」を追加推定した。「インターネット広告媒体費」には含まない。

最後に、CCIが広告主、メディア・プラットフォーマー、広告会社、メディアレップ、コンサルティングファーム、アドテクノロジーベンダーなどに対して実施した「新型コロナ禍における2020年下期インターネット広告市場動向」から、今後のインターネット広告の課題を考えてみます。
2020年のインターネット広告市場で順調な成長を見せた運用型広告ですが、課題もあります。アンケートにおいて多くの回答を集めたのが、「コンテンツの質」の問題です。

ユーザー投稿コンテンツが中心となるソーシャルメディアでは、コンテンツの質をコントロールすることが難しく、ブランドリスクを課題と捉えている回答が多く見受けられました。
また、運用型広告の中心であるターゲティング広告においては、Googleの“脱クッキー”本格化に見られるように、ユーザーのプライバシー配慮がますます重要となり、クッキー規制やIDFAのポリシー変更など技術的な側面でも対応が迫られています。
この数年、電通グループも含めた広告業界が特に力を入れて取り組んでいる領域でもありますが、今後も「十分なリーチや効果を担保しつつ、コンテンツの質をいかに改善し、広告主のブランドリスクを減らしていけるか」や「ユーザーのプライバシー保護を重視したマーケティング」が、インターネット広告を考える上での焦点になっていくでしょう。

