B2B事業「デジタルセールスシフト」のススメ

はじめまして。電通の梅木と申します。私は転職も含めて営業業務を8年、マーケティング業務を12年やってきました。

今回は私と同世代である40代を中心とした営業担当の方に読んでいただきたく、記事を書かせてもらいました。テーマは、法人向けビジネスの営業のデジタル化、すなわち「デジタルセールスシフト」です。

<目次>
平成の営業で学んだ「質より量」と「量を達成するための生産性向上」
2014年アメリカで見た「完全分業制営業」の衝撃
インターネット普及による、購入者側の意思決定プロセスの変化
「GNP(義理、人情、プレゼント)」の日本型営業をコロナ禍が変えていく
「デジタル投資の多寡」によって企業の格差は広がっている
事業の成長戦略において日本企業に必要な「二つのこと」
これからの日本のB2B営業は「GNP×デジタルセンサー」!?

 



平成の営業で学んだ「質より量」と「量を達成するための生産性向上」

私は現在、電通といわれてイメージされるであろう「広告」「キャンペーン」「CM」といった生活者向けの仕事(B2C)ではなく、法人向けビジネスを展開する企業(以下B2B)へ向けた「デジタルセールスシフト」の支援を中心に活動しています。

あらゆる業種で起こっているデジタルシフトですが、そもそもB2Bの営業はもともとどんなもので、どう変わっていこうとしているのかをひもとくため、まずは私の経験則にはなりますが「平成の営業」を振り返ってみましょう。

2002年の新卒当時、私は電通ではなく、ある求人広告会社に就職をしました。1週間ほどのビジネスマナー研修を受けると、教育担当者から「はい、これ」と以下のものを渡されました。

  • 黒いビジネスバッグ
  • 名刺の束を500枚
  • 会社のロゴが入った手提げ袋に大量の商品カタログチラシ

そして、「名刺獲得キャンペーン」と呼ばれる、その会社に代々続く伝統行事が始まりました。朝から夕方までの決められた時間の中で飛び込み営業を行い、名刺を100枚獲得したら会社に戻ってきてもよいという、全ての新人が経験する通過儀礼のようなものです。

二度とやりたくないですが、その中で多くのことを学びました。例えば限られた時間の中で、どうやって100枚の名刺を獲得するかという行動計画の立て方、エレベーターで一緒になる30秒間で伝えたいことを端的に伝えるプレゼン力など……。

続いて始まったのが、テレフォンクリーニング(通称:テレクリ)、すなわち電話営業です。NTT(当時)の「タウンページ」を使い、担当エリアの企業に片っ端から電話をかけて声が枯れるまでアポを獲る特訓でした。

非対面の中で、どうやって受付担当者を乗り越えて人事担当者につないでもらうか。何百回もガチャ切りされ続ける中で、強い精神や根性を養いました。

「量は質に勝る」ということを若いうちに経験できたことは、今でも財産です。「数」や「量」をこなす営業活動で最も学んだことは、「行動の生産性を上げること」でした。

売上目標に対してまず「平均受注単価」を割り出し、そこから「目標契約件数」を計算し、それを達成するまでに何件の商談、アポイントメント、架電数が必要かを逆算していくゴールから逆算した行動計画の立て方。

そしてもう一つ学んだのが「GNP」(義理、人情、プレゼント=おもてなしのような心遣い)です。足を運んだ回数や、怒られても耐え抜き人間関係をつくり上げる中で信頼関係が生まれ、お客さまに気に入っていただき、お仕事を頂くということを身に染みて学びました。

私はこのように社会人デビューしましたが、同世代の営業職の皆さんも、似たような経験があるのではないでしょうか? 

2014年アメリカで見た「完全分業制営業」の衝撃

ここで時が飛躍しますが、2014年、初めての海外出張でアメリカのニューヨークとボストンに行ったときの話です。このときには私は電通で働いていました。

それまで私は営業職とマーケティング職を何度か行き来していましたが、このアメリカ出張の際に、日本とアメリカの営業プロセスの根本的な違いを知りました。

私が最も驚いたのは、営業が「完全な分業制」で行われていたことです。

まず、ウェブサイト、テレマーケティング、ウェビナー、SNS(特にLinkedInやブログ)、そしてマーケティングオートメーション(以下MA)というシステムを使った、非対面を中心とした見込み客(以下リード)の獲得をマーケティング担当者が行います。

そのリードを受け取った営業担当者が、対面または非対面で商談、クロージングを行うという「完全な分業制」だったのです。自分が営業の基本として教わった、「足を使った飛び込み営業」のような気合や根性論はそこにはありませんでした。

さらに営業はSFA(セールスフォース・オートメーション)というシステムで取引管理まで行い、マーケティング担当者との情報共有をリアルタイムで行っているというのです。

私が常識と考えていた「顧客との人間関係づくり」や「経験や勘による営業活動」とは全く異なり、データを駆使して無駄な動きを徹底的に排除し、効率的かつ科学的に案件創出活動をしている、それが2014年に見たアメリカの営業プロセスでした。

インターネット普及による、購入者側の意思決定プロセスの変化

2014年のアメリカで私が体験したような一連の活動を、B2Bマーケティング用語で「デマンドジェネレーション」(案件創出)といいます。デマンドジェネレーションが普及した背景には、インターネットの普及による「購入者側の意思決定プロセスの変化」があります。

ポイントになる数字が「57%」です。これはアメリカのシンクタンク企業Corporate Executive Boardが2012年に、1400 社以上の B2B 顧客を対象に実施した調査結果に出てくる数字です。

下図にあるように認知から購入までのプロセスを100%とした場合、購入側が初めて売手側である営業担当に接触するのが、全体の57%の地点だというのです。

取引先担当者の購買検討プロセス 
つまり、今の顧客は購入検討プロセスのかなり後の段階になって初めて営業と接触するということです。

ネットが普及したため、購入者は営業に接触する前にウェブサイトやSNSを通じて情報を入手してしまっている状態にあります(Self-Educating buyer=自ら学ぶ購買者)。

つまり、ネット上での情報発信を十分に行えていないと、購入の選択肢にも入らないし、いつの間にか「既存顧客が他の業者に声をかけていた」などという状態になり得る、それが現在です。

営業マンに情報提供されて初めて商品やサービスを知っていた顧客が、ネット普及後には自分の自由なタイミングで知りたいことを探すことができる時代になりました。

しかし、逆の見方をすれば、「購入者側がウェブで情報を探す」という行為は、デジタル技術により「データ化」できるということでもあります。

アメリカでは、2014年どころか2000年初め頃から、ウェブ上のデータを用いた購入者の研究が進んでいました。そして、このようなデータ化やマーケティングオートメーション等のデジタル戦略は、営業経験者よりもマーケティング経験者のほうが長けていることが多かったため、役割が変化し、分業されていきました。

従来の営業活動の大部分をマーケティング担当者が担うようになり、営業担当者はマーケティング担当者が入手したリードデータで受注確度を事前に把握し、それに基づいて商談をする体制に変化したのです。

もともとアメリカ大陸は西と東で時差が異なるほど広大なので、商談に至る前の前工程のために「移動する」時間を圧縮する意味でも、この考え方が浸透していったようです。

この新たな営業方法は「デジタルセールス」という表現をすると分かりやすいかもしれません。

「GNP(義理、人情、プレゼント)」の日本型営業をコロナ禍が変えていく

「マーケティングオートメーション等を活用したデジタルセールス」は、アメリカでは2000年頃に原型ができて、急速に成長したわけですが、日本では2014年がマーケティングオートメーション元年といわれています。外資系のマーケティングオートメーション(ここからはMAと略します)が進出してきたことがきっかけといわれています。

この2014年、電通デジタル(当時は電通イーマーケティングワン)も、米国Marketo(2018年にアドビシステムズが買収)と共同出資で、MAに特化したマルケトを設立しています。

しかしこのB2B事業におけるMAが、2014年以降国内で急速に普及したのかというとそうではなく、一部の企業でしか採用されませんでした。もちろん多くのB2B企業が、MAを使いこなそうとチャレンジを繰り返してきましたが、なかなか定着しなかったのが実情です。

理由は、MAを使ったやり方が、「対面」や「人間関係」を尊重する“日本型営業”には馴染まなかったことです。私は従来の日本型営業の良さをGNP(義理、人情、プレゼント=おもてなしのような心遣い)と呼んでいます。営業には、足で稼いだ信頼と築き上げた人間関係で売り上げをつくってきた自負があります。デジタルだか、DXだかよく知らんが、数字をつくっているのは自分たちだ!と思っています。

前述の通り営業歴が長かった私も、同じように考えており、このMAというものが日本で浸透するのはまだまだ時間がかかると考えていました。外国のことだし……とも思っていました。

ところが2020年、否応なく世界のビジネス構造が変化する出来事が起こります。コロナ禍です。未曽有の天変地異によって、営業が置かれている状況も一変しました。

コロナ前後のセールスシフト

最近、ZoomやTeams等のリモートツールを使ったミーティングやウェビナーは日常的なものとなっていますが、コロナ禍以前に想像できたでしょうか。

新規開拓のために電話をしても、飛び込み営業をしても、そもそも相手が会社にいません。「ルート営業(既存顧客の担当営業)だから自分には関係がない」と思う人もいるかもしれませんが、競合企業や新興のベンチャー企業はデジタルセールスを駆使して挑んできます。

従来型の対面営業の現場においても、デジタル投資を検討しなければならないときがまさに今なのです。

「デジタル投資の多寡」によって企業の格差は広がっている

本当にデジタル投資が必要なのかを、数字でひもといてみましょう。「無形固定資産」の指標をみると、その企業がデジタル投資をどれくらい行っているのかという参考になります。

無形固定資産には、ソフトウエアや特許、著作権、M&A(合併・買収)に伴うのれんなどがあり、日本ではシステム会社や製薬会社などの計上が多い傾向にありました。

日本経済新聞社が日経500種平均株価を構成する企業(金融など除く)の20年1~3月期決算を調べたところ、無形固定資産(のれんを除く)が有形固定資産のどのくらいに当たるかを示す「無形固定資産倍率」が低い企業ほど、業績の落ち込みが大きくなっていたといいます(※)。

※出典:日本経済新聞「デジタル投資 格差鮮明 積極企業、落ち込み小さく」 
 

つまり、コロナ禍での厳しい経営環境においても、デジタル/ITへの投資比率が高い企業ほど業績に耐性が見受けられたのです。

今後、コロナ禍以前のように対面での人間関係づくりや商談をすることは戻ってくるのでしょうか?日本国内でもワクチンの接種が急速に進んでいます。

しかし、在宅勤務、リモート営業でも業務は成立してしまいますし、逆に作業の効率が上がり働き方が豊かになったり、逆にさぼれなくなったりした方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「あんな時代もあったよね」という時が必ず来ると私自身は信じていますが、たとえコロナ禍が完全に終息したとしても、リモートという働き方、この非対面によるビジネス環境は、残り続ける可能性は高いと思います。

営業の在り方が、まさに変わらなくてはならない時がきているのではないでしょうか。

事業の成長戦略において日本企業に必要な「二つのこと」

以下は「アンゾフのマトリックス」という事業の成長モデルを整理したものです。

アンゾフのマトリクス

 「GNP」を主体とする①市場浸透戦略は日本の企業の得意とするところです。しかし、②新商品開発戦略、つまり既存の顧客に新商品を購入してもらう、または③新市場開拓戦略、つまり未取引の新規の顧客リストを収集し、既存の商品を購入してもらうという領域には、気合と根性だけでは進出するのは難しく、マーケティング戦略が必要になります。

②新商品開発戦略の領域では営業としての肌感覚という経験や勘だけでは相手にされません。現在はいわゆる「デジタルセンサー」(MA等のDXツールやウェブサイト、広告)を使うことで、より正確な顧客ニーズを知ることができます。

③新市場開拓戦略の領域はどうでしょうか。特定の市場を対象とするB2B商材の場合、戦略なくただリストを集めても無意味です。この領域もデジタルセンサー(MAや外部で提供されている顧客データベースの活用や自社購買データ分析)を使うことで、効率的に特定領域の見込み客リスト収集や受注確度を把握していくことが可能になります。

これからの日本のB2B営業は「GNP×デジタルセンサー」!?

先に触れた通り、従来の日本型営業のことを私は「GNP」(義理、人情、プレゼント)と表現しています。私は今でも、これらが間違っているとは思っていません。

一方で、2014年頃から、外資系のMAプロバイダーが多数進出してきた流れもあり、だいたいのB2B関連のコンサルタントやシステム会社はこう言います。「日本の営業は古い、マーケティングが10年遅れている」

そしてB2B企業はその言葉を信じて、デジタルセールスシフトにチャレンジしてきました。しかし残念ながら、明確にデジタルセールスシフトを実現できている企業はまだ少ないのが現状です。

先端に立ち続けている営業は馬鹿ではありません。皆、今のままではまずいと分かっています。しかし「過去の成功体験からなかなか抜け出せない」という生の声を、私は数多く聞いてきました。

そこで私が推奨しているのは、「GNP×デジタルセンサー」という考え方です。

我々は今までのやり方を全てシフトするということだけが正しいとは思いません。特に北米で起きているはやりのやり方が正しく、日本は古いという論調はおかしいですし、この8年間ほどの間で何度も失敗している事業会社を見てきています。商談するときの営業トークや経験は普遍的に必要です。人間同士なのでお酒を飲みながら語ることも大事でしょう。

そうした今までの日本的な営業に、デジタルセンサーという武器を加えます。デジタルセンサーとは、今回お話ししてきたようなウェブデータやMAの活用により、今まで見えなかったことが見えるようになることを「センサー」と表現しています。GNP×デジタルセンサーで、営業活動のプロセスは大きく変わります。

デジタルセンサーを活用した新たなデジタルセールスの形(=デマンドジェネレーション)
デジタルセンサーを活用した新たなデジタルセールスの形(=デマンドジェネレーション)

我々電通グループは、変わろうとする営業担当者やマーケティング担当者のサポートをしたいと考えています。そして、電通グループ横断組織である「電通B2Bイニシアティブ」という70人ほどのB2Bプロフェッショナルチームがいます。

今、事業部に所属していて、

「どうやって展示会の代替案となる新たな戦い方をしていくべきか?」

「ウェブをどうやって活用したらいいか?」

「MAを導入したけど活用できない」

などの悩みを抱えている営業の方。

またはマーケティング担当として

「どうやって営業との連携をとしていくべきか?」

「手段と目的が逆転してしまっているがなかなか上層部の理解が得られない」

などと悩んでいる方。

ぜひ、お気軽にご連絡ください。この記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

連絡先:電通B2Bイニシアティブ事務局
b2b-initiative@dentsu.co.jp
 

twitter

B2B事業「デジタルセールスシフト」のススメ

はじめまして。電通の梅木と申します。私は転職も含めて営業業務を8年、マーケティング業務を12年やってきました。

今回は私と同世代である40代を中心とした営業担当の方に読んでいただきたく、記事を書かせてもらいました。テーマは、法人向けビジネスの営業のデジタル化、すなわち「デジタルセールスシフト」です。

<目次>
平成の営業で学んだ「質より量」と「量を達成するための生産性向上」
2014年アメリカで見た「完全分業制営業」の衝撃
インターネット普及による、購入者側の意思決定プロセスの変化
「GNP(義理、人情、プレゼント)」の日本型営業をコロナ禍が変えていく
「デジタル投資の多寡」によって企業の格差は広がっている
事業の成長戦略において日本企業に必要な「二つのこと」
これからの日本のB2B営業は「GNP×デジタルセンサー」!?

 



平成の営業で学んだ「質より量」と「量を達成するための生産性向上」

私は現在、電通といわれてイメージされるであろう「広告」「キャンペーン」「CM」といった生活者向けの仕事(B2C)ではなく、法人向けビジネスを展開する企業(以下B2B)へ向けた「デジタルセールスシフト」の支援を中心に活動しています。

あらゆる業種で起こっているデジタルシフトですが、そもそもB2Bの営業はもともとどんなもので、どう変わっていこうとしているのかをひもとくため、まずは私の経験則にはなりますが「平成の営業」を振り返ってみましょう。

2002年の新卒当時、私は電通ではなく、ある求人広告会社に就職をしました。1週間ほどのビジネスマナー研修を受けると、教育担当者から「はい、これ」と以下のものを渡されました。

  • 黒いビジネスバッグ
  • 名刺の束を500枚
  • 会社のロゴが入った手提げ袋に大量の商品カタログチラシ

そして、「名刺獲得キャンペーン」と呼ばれる、その会社に代々続く伝統行事が始まりました。朝から夕方までの決められた時間の中で飛び込み営業を行い、名刺を100枚獲得したら会社に戻ってきてもよいという、全ての新人が経験する通過儀礼のようなものです。

二度とやりたくないですが、その中で多くのことを学びました。例えば限られた時間の中で、どうやって100枚の名刺を獲得するかという行動計画の立て方、エレベーターで一緒になる30秒間で伝えたいことを端的に伝えるプレゼン力など……。

続いて始まったのが、テレフォンクリーニング(通称:テレクリ)、すなわち電話営業です。NTT(当時)の「タウンページ」を使い、担当エリアの企業に片っ端から電話をかけて声が枯れるまでアポを獲る特訓でした。

非対面の中で、どうやって受付担当者を乗り越えて人事担当者につないでもらうか。何百回もガチャ切りされ続ける中で、強い精神や根性を養いました。

「量は質に勝る」ということを若いうちに経験できたことは、今でも財産です。「数」や「量」をこなす営業活動で最も学んだことは、「行動の生産性を上げること」でした。

売上目標に対してまず「平均受注単価」を割り出し、そこから「目標契約件数」を計算し、それを達成するまでに何件の商談、アポイントメント、架電数が必要かを逆算していくゴールから逆算した行動計画の立て方。

そしてもう一つ学んだのが「GNP」(義理、人情、プレゼント=おもてなしのような心遣い)です。足を運んだ回数や、怒られても耐え抜き人間関係をつくり上げる中で信頼関係が生まれ、お客さまに気に入っていただき、お仕事を頂くということを身に染みて学びました。

私はこのように社会人デビューしましたが、同世代の営業職の皆さんも、似たような経験があるのではないでしょうか? 

2014年アメリカで見た「完全分業制営業」の衝撃

ここで時が飛躍しますが、2014年、初めての海外出張でアメリカのニューヨークとボストンに行ったときの話です。このときには私は電通で働いていました。

それまで私は営業職とマーケティング職を何度か行き来していましたが、このアメリカ出張の際に、日本とアメリカの営業プロセスの根本的な違いを知りました。

私が最も驚いたのは、営業が「完全な分業制」で行われていたことです。

まず、ウェブサイト、テレマーケティング、ウェビナー、SNS(特にLinkedInやブログ)、そしてマーケティングオートメーション(以下MA)というシステムを使った、非対面を中心とした見込み客(以下リード)の獲得をマーケティング担当者が行います。

そのリードを受け取った営業担当者が、対面または非対面で商談、クロージングを行うという「完全な分業制」だったのです。自分が営業の基本として教わった、「足を使った飛び込み営業」のような気合や根性論はそこにはありませんでした。

さらに営業はSFA(セールスフォース・オートメーション)というシステムで取引管理まで行い、マーケティング担当者との情報共有をリアルタイムで行っているというのです。

私が常識と考えていた「顧客との人間関係づくり」や「経験や勘による営業活動」とは全く異なり、データを駆使して無駄な動きを徹底的に排除し、効率的かつ科学的に案件創出活動をしている、それが2014年に見たアメリカの営業プロセスでした。

インターネット普及による、購入者側の意思決定プロセスの変化

2014年のアメリカで私が体験したような一連の活動を、B2Bマーケティング用語で「デマンドジェネレーション」(案件創出)といいます。デマンドジェネレーションが普及した背景には、インターネットの普及による「購入者側の意思決定プロセスの変化」があります。

ポイントになる数字が「57%」です。これはアメリカのシンクタンク企業Corporate Executive Boardが2012年に、1400 社以上の B2B 顧客を対象に実施した調査結果に出てくる数字です。

下図にあるように認知から購入までのプロセスを100%とした場合、購入側が初めて売手側である営業担当に接触するのが、全体の57%の地点だというのです。

取引先担当者の購買検討プロセス 
つまり、今の顧客は購入検討プロセスのかなり後の段階になって初めて営業と接触するということです。

ネットが普及したため、購入者は営業に接触する前にウェブサイトやSNSを通じて情報を入手してしまっている状態にあります(Self-Educating buyer=自ら学ぶ購買者)。

つまり、ネット上での情報発信を十分に行えていないと、購入の選択肢にも入らないし、いつの間にか「既存顧客が他の業者に声をかけていた」などという状態になり得る、それが現在です。

営業マンに情報提供されて初めて商品やサービスを知っていた顧客が、ネット普及後には自分の自由なタイミングで知りたいことを探すことができる時代になりました。

しかし、逆の見方をすれば、「購入者側がウェブで情報を探す」という行為は、デジタル技術により「データ化」できるということでもあります。

アメリカでは、2014年どころか2000年初め頃から、ウェブ上のデータを用いた購入者の研究が進んでいました。そして、このようなデータ化やマーケティングオートメーション等のデジタル戦略は、営業経験者よりもマーケティング経験者のほうが長けていることが多かったため、役割が変化し、分業されていきました。

従来の営業活動の大部分をマーケティング担当者が担うようになり、営業担当者はマーケティング担当者が入手したリードデータで受注確度を事前に把握し、それに基づいて商談をする体制に変化したのです。

もともとアメリカ大陸は西と東で時差が異なるほど広大なので、商談に至る前の前工程のために「移動する」時間を圧縮する意味でも、この考え方が浸透していったようです。

この新たな営業方法は「デジタルセールス」という表現をすると分かりやすいかもしれません。

「GNP(義理、人情、プレゼント)」の日本型営業をコロナ禍が変えていく

「マーケティングオートメーション等を活用したデジタルセールス」は、アメリカでは2000年頃に原型ができて、急速に成長したわけですが、日本では2014年がマーケティングオートメーション元年といわれています。外資系のマーケティングオートメーション(ここからはMAと略します)が進出してきたことがきっかけといわれています。

この2014年、電通デジタル(当時は電通イーマーケティングワン)も、米国Marketo(2018年にアドビシステムズが買収)と共同出資で、MAに特化したマルケトを設立しています。

しかしこのB2B事業におけるMAが、2014年以降国内で急速に普及したのかというとそうではなく、一部の企業でしか採用されませんでした。もちろん多くのB2B企業が、MAを使いこなそうとチャレンジを繰り返してきましたが、なかなか定着しなかったのが実情です。

理由は、MAを使ったやり方が、「対面」や「人間関係」を尊重する“日本型営業”には馴染まなかったことです。私は従来の日本型営業の良さをGNP(義理、人情、プレゼント=おもてなしのような心遣い)と呼んでいます。営業には、足で稼いだ信頼と築き上げた人間関係で売り上げをつくってきた自負があります。デジタルだか、DXだかよく知らんが、数字をつくっているのは自分たちだ!と思っています。

前述の通り営業歴が長かった私も、同じように考えており、このMAというものが日本で浸透するのはまだまだ時間がかかると考えていました。外国のことだし……とも思っていました。

ところが2020年、否応なく世界のビジネス構造が変化する出来事が起こります。コロナ禍です。未曽有の天変地異によって、営業が置かれている状況も一変しました。

コロナ前後のセールスシフト

最近、ZoomやTeams等のリモートツールを使ったミーティングやウェビナーは日常的なものとなっていますが、コロナ禍以前に想像できたでしょうか。

新規開拓のために電話をしても、飛び込み営業をしても、そもそも相手が会社にいません。「ルート営業(既存顧客の担当営業)だから自分には関係がない」と思う人もいるかもしれませんが、競合企業や新興のベンチャー企業はデジタルセールスを駆使して挑んできます。

従来型の対面営業の現場においても、デジタル投資を検討しなければならないときがまさに今なのです。

「デジタル投資の多寡」によって企業の格差は広がっている

本当にデジタル投資が必要なのかを、数字でひもといてみましょう。「無形固定資産」の指標をみると、その企業がデジタル投資をどれくらい行っているのかという参考になります。

無形固定資産には、ソフトウエアや特許、著作権、M&A(合併・買収)に伴うのれんなどがあり、日本ではシステム会社や製薬会社などの計上が多い傾向にありました。

日本経済新聞社が日経500種平均株価を構成する企業(金融など除く)の20年1~3月期決算を調べたところ、無形固定資産(のれんを除く)が有形固定資産のどのくらいに当たるかを示す「無形固定資産倍率」が低い企業ほど、業績の落ち込みが大きくなっていたといいます(※)。

※出典:日本経済新聞「デジタル投資 格差鮮明 積極企業、落ち込み小さく」 
 

つまり、コロナ禍での厳しい経営環境においても、デジタル/ITへの投資比率が高い企業ほど業績に耐性が見受けられたのです。

今後、コロナ禍以前のように対面での人間関係づくりや商談をすることは戻ってくるのでしょうか?日本国内でもワクチンの接種が急速に進んでいます。

しかし、在宅勤務、リモート営業でも業務は成立してしまいますし、逆に作業の効率が上がり働き方が豊かになったり、逆にさぼれなくなったりした方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「あんな時代もあったよね」という時が必ず来ると私自身は信じていますが、たとえコロナ禍が完全に終息したとしても、リモートという働き方、この非対面によるビジネス環境は、残り続ける可能性は高いと思います。

営業の在り方が、まさに変わらなくてはならない時がきているのではないでしょうか。

事業の成長戦略において日本企業に必要な「二つのこと」

以下は「アンゾフのマトリックス」という事業の成長モデルを整理したものです。

アンゾフのマトリクス

 「GNP」を主体とする①市場浸透戦略は日本の企業の得意とするところです。しかし、②新商品開発戦略、つまり既存の顧客に新商品を購入してもらう、または③新市場開拓戦略、つまり未取引の新規の顧客リストを収集し、既存の商品を購入してもらうという領域には、気合と根性だけでは進出するのは難しく、マーケティング戦略が必要になります。

②新商品開発戦略の領域では営業としての肌感覚という経験や勘だけでは相手にされません。現在はいわゆる「デジタルセンサー」(MA等のDXツールやウェブサイト、広告)を使うことで、より正確な顧客ニーズを知ることができます。

③新市場開拓戦略の領域はどうでしょうか。特定の市場を対象とするB2B商材の場合、戦略なくただリストを集めても無意味です。この領域もデジタルセンサー(MAや外部で提供されている顧客データベースの活用や自社購買データ分析)を使うことで、効率的に特定領域の見込み客リスト収集や受注確度を把握していくことが可能になります。

これからの日本のB2B営業は「GNP×デジタルセンサー」!?

先に触れた通り、従来の日本型営業のことを私は「GNP」(義理、人情、プレゼント)と表現しています。私は今でも、これらが間違っているとは思っていません。

一方で、2014年頃から、外資系のMAプロバイダーが多数進出してきた流れもあり、だいたいのB2B関連のコンサルタントやシステム会社はこう言います。「日本の営業は古い、マーケティングが10年遅れている」

そしてB2B企業はその言葉を信じて、デジタルセールスシフトにチャレンジしてきました。しかし残念ながら、明確にデジタルセールスシフトを実現できている企業はまだ少ないのが現状です。

先端に立ち続けている営業は馬鹿ではありません。皆、今のままではまずいと分かっています。しかし「過去の成功体験からなかなか抜け出せない」という生の声を、私は数多く聞いてきました。

そこで私が推奨しているのは、「GNP×デジタルセンサー」という考え方です。

我々は今までのやり方を全てシフトするということだけが正しいとは思いません。特に北米で起きているはやりのやり方が正しく、日本は古いという論調はおかしいですし、この8年間ほどの間で何度も失敗している事業会社を見てきています。商談するときの営業トークや経験は普遍的に必要です。人間同士なのでお酒を飲みながら語ることも大事でしょう。

そうした今までの日本的な営業に、デジタルセンサーという武器を加えます。デジタルセンサーとは、今回お話ししてきたようなウェブデータやMAの活用により、今まで見えなかったことが見えるようになることを「センサー」と表現しています。GNP×デジタルセンサーで、営業活動のプロセスは大きく変わります。

デジタルセンサーを活用した新たなデジタルセールスの形(=デマンドジェネレーション)
デジタルセンサーを活用した新たなデジタルセールスの形(=デマンドジェネレーション)

我々電通グループは、変わろうとする営業担当者やマーケティング担当者のサポートをしたいと考えています。そして、電通グループ横断組織である「電通B2Bイニシアティブ」という70人ほどのB2Bプロフェッショナルチームがいます。

今、事業部に所属していて、

「どうやって展示会の代替案となる新たな戦い方をしていくべきか?」

「ウェブをどうやって活用したらいいか?」

「MAを導入したけど活用できない」

などの悩みを抱えている営業の方。

またはマーケティング担当として

「どうやって営業との連携をとしていくべきか?」

「手段と目的が逆転してしまっているがなかなか上層部の理解が得られない」

などと悩んでいる方。

ぜひ、お気軽にご連絡ください。この記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

連絡先:電通B2Bイニシアティブ事務局
b2b-initiative@dentsu.co.jp
 

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コロナ禍で居場所を失う子どもたちに、大人ができることとは?

日本NPOセンターと電通で設立した「課題ラボ」。

日本NPOセンターのネットワークを通じて全国から集めた最前線の課題を、異なるスキルや業種の人たちで集まって考える。そんな、“ありそうでなかった”課題発見のシンクタンクです。

本連載では、さまざまなテーマにまつわる「課題」を見つけて、解決のヒントを模索していきます。

連載第2回のテーマは「子ども」。2018年に実施したイベントで取り扱った課題を振り返りつつ、コロナ禍で子どもたちが新たに直面している課題について、日本NPOセンターの上田英司氏と電通の鳥巣智行氏が語り合いました。

上田氏と鳥巣氏


 

「修学旅行をきっかけに問題?」

鳥巣:課題ラボでは、他業種の人々が混ざり合ってディスカッションする「QROSS SESSION」というイベントを開催しています。その記念すべき第1回のテーマが「子ども」でした。これは上田さんからの提案だったと記憶しているのですが、どうして「子ども」を選んだのですか?

上田:私は日本NPOセンターで企業とNPOの協働事業を担当しているので、さまざまな企業の皆さまから社会貢献に関するご相談を頂いていました。その中で業界問わず最も問い合わせが多かったのが、実は「子ども」に関するテーマだったのです。

鳥巣:その背景にはどんな理由があったのでしょうか?

上田:まず、企業が社会貢献活動に参加する際は、多くのステークホルダーからの理解を得る必要があります。その点、「子ども」は共通理解を作りやすいテーマだったのではないかと思います。また、当時は子どもの貧困問題が報道で大きく取り上げられ、社会からの注目が一気に高まった時期だったことも要因のひとつだと考えられます。

鳥巣:そうでしたね。さまざまな角度から数多くの課題を集め、最終的にイベントでは8つの課題を取り扱いましたよね。

子どもの課題

上田:課題ラボの特徴として、エビデンスやファクトなどの裏付けが確かな課題だけでなく、最前線の現場にいるNPOの方々が感じている課題も扱うようにしています。

鳥巣:正直、全然認識していなかった課題がたくさんあって驚きました。「修学旅行をきっかけに問題」なんかは、まさに現場ならではの気づきですよね。

上田:修学旅行の持ち物(カバン・パジャマ・小物など)は自己負担なので、家庭の経済環境が明るみになってしまったり、また地方の旅館には個室シャワーがなく集団で温泉を利用するケースが多いので、LGBTの子どもたちにとって大きなハードルになってしまう、という問題です。

鳥巣:私は修学旅行の温泉で無邪気にはしゃいでいた子どもだったので、この視点はなかったとドキッとさせられました。

コロナ禍でSOSを出せなくなった子どもたち

鳥巣:もうひとつ、印象に残っているのが「読み書きができない問題」。この課題が議題に挙がった時、新宿区の新成人の半数近くが多文化を背景に持つ方だと聞いてびっくりしたことを覚えています。

上田:新宿に限らず、日本に暮らす外国籍の方は増加しています。例えば、15歳を超えて来日した子どもは義務教育を受けることが制度上難しいため、日本語を学ぶためにはNPOがやっている日本語教室や夜間中学校に通うなど、機会が限られています。加えて、外国にルーツを持つ保護者が日本語を読めないケースもあります。学校から配布されるプリントひとつとっても、その方々にとっては非常にハードルが高く、子どもに対して十分な準備やサポートができなかったりするんです。その結果、本当は教育熱心なのに、語学や情報伝達の壁で「教育に関心がない」とレッテルを貼られてしまい、ますます学校教育への参加が難しくなるという悪循環が生じています。

鳥巣:そもそも学校教育のシステム自体が、外国にルーツを持つ保護者や子どもが増えているという現実に即していない、という課題があるかもしれませんよね。上田さんが気になった課題はありますか?

上田:「遊び場減少問題」ですね。公園自体は増えているのですが、それが本当に子どもたちにとって遊びやすいものになっているかというと、必ずしもそうではないと感じています。

鳥巣:ボール遊び禁止、大声禁止など、禁止事項やルールが多くて逆に子どもたちのストレスになっている、という指摘がありましたよね。

上田:それから、地方では学校の統廃合が進んだ結果、遠方からスクールバスなどで学校に通う子どもが増えたので、放課後にみんなで遊ぶ機会が減っているようです。外遊びには「アポイントを取る」「集合場所や時間を調整する」「何をして遊ぶか決める」といった基本的な社会スキルを身につける役割もありますから、大事な成長プロセスが失われてしまうのではないかと危惧しています。

鳥巣:「遊び場減少問題」や「夜間の居場所がない問題」は、コロナ禍でも改めて浮き彫りになった課題ですよね。

上田:おっしゃる通りです。1回目の緊急事態宣言で行政が管理している公園が閉鎖され、ただでさえ遊び場が少ない子どもたちが、いよいよ居場所を失ってしまう事態に陥りました。品川区で子どもの居場所づくりをしているNPOの方に話を聞くと、「コロナ禍で大人が大騒ぎしていると、やがて子どもは黙ります。苦しさを誰にも言えなくて、子どもたちの心はギューっと抑圧されている」と言っていて、これは本当に深刻な状況が続いていると痛感しました。

鳥巣:家庭にも子どもたちの居場所がないのでしょうか?

上田:子どもへのケアが足りていないシーンは増えていると思います。例えば両親がリモートワークで同時に会議が入ってしまうと、子どもは騒ぐと怒られるから静かにしないといけないし、親にも十分に構ってもらえないですよね。コロナ禍で親が感じているストレスが、子どもにも影響を与えている可能性も少なくありません。

鳥巣:なるほど、本当はSOSを出したいけれど言いにくかったり、自分自身も何が苦しいのか分からないこともありそうですよね。

上田:コロナ禍で、ファーストプレイスである家庭や、セカンドプレイスである学校に自分の居場所が見いだせない子どもたちにとって、先述した品川区のNPOのようにサードプレイスだった居場所が、子どもたちのファーストプレイスになっているケースもあるようです。子どもたちのSOSをキャッチするのが“居場所”の役割のひとつになっています。

鳥巣:ちなみに、品川区のNPOではどのような工夫をされているのでしょうか?

上田:彼らは「社会的点呼」と呼んでいるのですが、子どもたちに電話をかけて「元気?」とか「困っちゃうよね」といったコミュニケーションを取っていたようです。この声かけの仕方はポイントのひとつですね。「困っていることはありますか?」と聞くと、「大丈夫」と返されたり、いざ困りごとを聞いても自分たちでは対応できないことだと、結果的に不信感につながってしまいます。

鳥巣:それは興味深いお話ですね。マーケティングの調査でも、「どんな商品が欲しいですか?」と質問されても、その人自身が本当のニーズに気づいていないこともありますよね。

特定非営利活動法人教育サポートセンターNIRE代表 中塚史行氏   

 

まずは課題を知ってもらうことから。企業連携の可能性

鳥巣:今はちょうど夏休みの時期ですが、夏休みならではの子どもの課題はありますか?

上田:長期休暇で給食がなくなることが、子どもに十分な食事を与えられない家庭にとって大きな問題になっています。

鳥巣:極端な話、1日の中で十分な食事を取れるのが給食一食だけという家庭もあるのでしょうか?

上田:実際にそのケースを聞くこともありますし、3食食べていても量や栄養バランスが適切でない場合もあるのです。

鳥巣:周囲のサポートで改善できることもありそうですよね。そこは行政やNPOだけでなく、企業も取り組むべき領域だと感じています。

上田:同感です。実際に先駆的なチャレンジや社会的ニーズを捉えたアイデアを提案する企業も少しずつ増えています。「遊び場減少問題」についてハウスメーカーの方とディスカッションした際も、「家づくりの段階から、子どもが思いっきり体を動かしたり、騒音を出しても大丈夫な設計ができるかもしれない」というアイデアが出てきました。

鳥巣:家やスマホなど、生活者との身近な接点を活用して企業が発信できるものはいろいろとありそうですよね。

上田:課題ラボもTikTokと連携し、「障害のある方への配慮」に関するテーマや、若者たちがデジタル性被害に巻き込まれないためのメッセージ動画を作成しました。

TikTokの課題ラボの動画

鳥巣:TikTokのような若者に波及力のある媒体でメッセージを発信することは非常に大きな意義があると思っています。「子ども」の課題は深刻なものも多いので一朝一夕で解決できることではありませんが、まずは課題の存在自体を知ってもらうことから始めるのがとても大切ですよね。

上田:私もそう思います。そして、課題への取り組みは単なる社会貢献にとどまることではなく、例えば多文化背景を持つ方が増えているということは、ビジネス的にも新たなマーケットの可能性が生まれていると捉えることもできます。私たちも企業の皆さんと積極的につながることが重要だと思っているので、「子どもをテーマに何かしたい」というふんわりしたご相談でも歓迎いたします。

鳥巣:ぜひ新しい課題解決の方法を一緒に考えていきたいですね。本日はありがとうございました。


課題ラボロゴ

課題ラボ
電通と日本NPOセンターが協働し、 2018年に設立。NPOと企業が「支援される側、支援する側」の関係でなく、「ともに社会課題の解決を目指す協働体」となることを目指し活動するラボ。

「課題解決の前に課題発見あり。会議室でなく現場にヒントあり」をコンセプトに、全国の社会課題に対して、最先端の現場と接続できることを特徴とする。

コンサルティングサービスと事業開発の両面で、サービスを提供中。

  1. コミュニケーション/ブランディング(サスティナブル+現場の視点)
  2. 商品・事業開発/プラットフォーム開発(ダイバーシティ&インクルージョンをテーマにしたサービス開発など)
  3. 「課題発見」志向の人財開発プログラム
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7月のブルーインパルス飛行で航空法違反?過去に墜落など事故多発、雲中の飛行は危険

 航空自衛隊の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」が東京オリンピック(五輪)開会日の7月23日、東京上空で五輪を描いた際とその前後の編隊飛行時に、航空法違反が生じていた可能性がある。

 航空法施行規則第5条は、飛行高度が3000メートル以下の管制区域で、操縦士が目視で位置を判断する有視界飛行の場合、飛行条件を「飛行視程5000メートル以上、航空機から垂直上方に150メートル、下方に300メートル、水平距離600メートルに雲がないこと」と定めている。つまり曲技飛行のような有視界飛行では、雲のなかに入ったり、雲のすぐ近くを飛んではならないのである。理由は、一時的にでも他の航空機を視認できないと、ニアミスや空中衝突の危険があるからだ。

多くの映像でも一部の機体が雲に隠れるのを確認

 当日の都心の気象状態は大気が不安定で、映像を見ても、国立競技場付近上空には積雲が発生してその雲底は約1000メートルであった。ブルーインパルスは当初は飛行高度2500~5000フィート(762~1524メートル)を計画していたものの、突然発生した積雲の影響を受けたため2500~3500フィート(762~1067メートル)に下げ、雲の下を飛ぶことにした。しかし、五輪を描く飛行は僚機との間隔を保つ意味でも、上昇、降下、旋回を伴うことや都心の高層ビル群に接近しないために、あまり高度を下げることができないという制約を受けていた。

 そのために、いくつかの機体が一時的に雲に入ったり雲との間隔を十分に取らずに飛行せざるを得なかったのである。それは、地上から見ていて機体が一瞬姿を消すことで確認できたのである。五輪を描いた飛行以外にも、編隊で移動したときにも雲の下を飛行していた全機の姿が一時的に見えなくなることがあり、これは雲の中に入ったと考えるのが自然である。

雲中飛行での事故が多発

 ブルーインパルスが起こした事故は決して少なくない。1961年、65年、82年、91年、2000年に墜落し、14年には2機が接触して緊急着陸している。このうち1991年と2000年の事故は海霧の中を飛行したために起きたもので、有視界飛行の基本が守られていなかったものだ。自衛隊機の飛行は戦闘行動にも対処する必要から、たとえ雲があっても一瞬ならすぐ雲から出るだろうといった考えが定着していると危惧している。

 それを裏付けるように、2016年4月6日に鹿児島県の鹿屋で起きたU-125双発ジェット機の事故が記憶に新しい。当事故は鹿屋航空基地を離陸した後、検査飛行中に有視界飛行状態にもかかわらず雲中飛行をして高隈山に衝突し、隊員6名全員が死亡したものだ。このときの機長は元ブルーインパルスの編隊長も務めたベテランパイロットであった。自衛隊機も航空法を順守する義務があり、前方に雲を発見したときにはそれを回避するか、難しければ反転、あるいは管制に計器飛行を要請する必要がある。

 当時この航空法違反に加えて、パイロットが山に接近したときに出されるGPWS(対地接近警報装置)の音声警報のスイッチを切っていたことも判明した。GPWSは1975年から導入されたソフトであるが、世界のパイロットはその警報音を無視して山や丘に衝突する事故が続いて、多くの人命が失われた。パイロットは自分こそが正しくGPWSが誤っていると考えがちで、その習慣を直すのに多くの時間が費やされた。

 私は日本空港(JAL)で安全推進部に所属していた1990年代後半、まさにパイロットにこの点の教育を行うことが主な任務であった。その内容は「GPWSが作動したら、それを誤作動と考えたりほかのパイロットと議論することなく、すぐに一旦ゴーアラウンドする」ということであった。それから相当の年月を経て今日では、どの民間パイロットもGPWSに一義的に従うようになった。

 鹿屋自衛隊機の事故は、今よりわずか5年前の出来事である。ほかにも飛行マニュアルがJALなど民間航空のものをコピーしたように使用しており、基本的な安全教育は民間航空より約20年は遅れていると思う。

政府が航法違反の指摘に答弁

 このブルーインパルスの飛行について、メディアの指摘もあり政府が公式に答弁する事態となった。8月10日、加藤勝信官房長官は東京新聞の記者から「報道によると航空専門家から航空法違反との指摘があるが」との質問に「航空法違反にあたるとの事実はありません。雲に入らない飛行をして、気象観測員を配置して法令を遵守し飛行が行われた」と答弁した。だが、官房長官は映像などを使って証拠を示したものではなかった。

 7月23日のブルーインパルスの飛行は、多くの人々がYouTube等で投稿した映像が残されており、それを一つひとつ確認していくと、一部の飛行で航空法に定めた飛行方式を逸脱していたことが十分に読み取れる。

 ここで誤解のないように述べておきたいが、有視界気象状態(VMC)と有視界飛行方式(VFR)との違いである。いくら天候が良くて有視界飛行ができる状態であっても、小さな雲にも入ったり接近したりしてはならないのである。7月23日当日の国立競技場上空の天候データは示されていないが、羽田空港での実測では視程、雲底共にVMCであった。各種映像から国立競技場の天候もVMCと類推される。だからといってVFRは維持されなければならないのである。

 さて、今回政府が航空法違反の事実を証明することなく言葉だけで否定したものの、その疑いが公になった意義は大きい。当然この経緯は自衛隊、ブルーインパルスのパイロットたちにも伝わり、今後のフライトにおいても影響を与えることになるからだ。今後は、雲中飛行はもちろんのこと、雲からの距離にも神経をとがらせ、メディアや観客の目もより厳しくなるだろう。

 ちなみに私は日頃から、実際に自衛隊の部隊に対し安全に関する話をしたり、事故を削減するためのマニュアルを提案しており、自衛隊に対して批判的なスタンスを持っているわけではないことを付言しておきたい。

(文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長)

●杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

1969年慶應義塾大学法学部卒、日本航空入社。 DC-8、ボーイング747、エンブラエルE170に乗務。首相フライトなど政府要請による特別便の経験も多い。ボーイング747の飛行時間は1万4051時間という世界一の記録を持つ。2011年10月の退役までの総飛行時間は2万1000時間超。日本航空在籍時に安全施策の策定推進の責任者だったときにはじめた「スタビライズド・アプローチ」は、日本の航空界全体に普及し、JAL御巣鷹山事故以来の死亡事故、並びに大きな着陸事故ゼロの記録に貢献している。 航空問題と広く安全問題について出版、新聞、テレビなどメディア、講演会などで解説、啓蒙活動を行なっている。著書多数。社会学、国際政治の分野でも『日本人はなぜ足元を見られるのか?』(アスキー新書)などの著書がある

ウマ娘の快進撃が止まらない本当の理由とは?クラブハウス“爆死”の裏で音声配信が活況

 ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。

 本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。

 前編に続き、同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2021年第2四半期(4~6月)のアプリ利用動向について聞いた。

ウマ娘の驚異の継続率

――21年4~6月期は、ゲームについてはいかがだったでしょうか。

日影耕造氏(以下、日影) 以前お伝えした「ウマ娘 プリティーダービー」(以下、ウマ娘)が、依然好調です。4~6月もゲームのMAU(Monthly Active User:App Ape上の定義では月に一度でもアプリを立ち上げたユーザー)ランキングで4位に入っていますが、着目は継続率です。リテンション(顧客維持)はアプリ事業者が頭を悩ませるポイントですが、ウマ娘は7日後もアンインストールをしないで使っている人が30%台と、継続率がツイッターやインスタグラム並みに高いんです。

――ツイッター、インスタグラムレベルの「神アプリ」ですら継続率が30%台ということは、7日以内にアンインストールする人が半数以上いる、というのが驚きです!

日影 アプリで7日後の継続率が30%台というのは、「かなりいい方」ですよ。一般的なアプリでは20%がいいところです。つまり、8割近くの人が1週間もちません。よくゲームのアプリでは、7日後のログインボーナスがリッチだったりしますよね。これも、継続率を上げたいからなんです。

――私のスマートフォンはハイスペックでなく容量も乏しいため、新規にアプリを入れたいなら、何か既存のアプリを削除しないといけない自転車操業状態が続いています。以前はSDカードにアプリを移動できたのですが、Androidの仕様変更で、それができなくなってしまったんですよね。私のように「何か入れ、何か削除して」のやりくりをしている人もけっこういるのではないかと思います。

TikTokでウマ娘のオマージュ動画が増加

――ウマ娘と言えば、実在の馬がモデルになっているからと、運営側が「娘」たちのR-18の二次創作を実質禁止していますね。「R-18」という大きな起爆剤を禁じられたので、あまり伸びないのかなと思っていました。

日影 R-18については規制していますが、ウマ娘は二次創作を応援している部分もあります。ゲームで使われているロゴが「TikTok」でステッカーとして提供されているんです。ウマ娘は競馬と同じ「走る」ゲームなので、真似しやすい。TikTokでは、ユーザーたちが走っている動画にウマ娘のロゴや音楽を入れたオマージュ動画を多く見ることができます。そういった動画にウマ娘ファンや競馬ファンからコメントがついたりするので、配信者にとっても注目されやすいというメリットがあるんですね。

 なお、そういったコンテンツはマーケティング用語では「UGC(User Generated Content/一般ユーザーによってつくられたコンテンツ)」と呼びますが、この場合は「二次創作」といった方がなじみやすいかもしれませんね。

――従来型の二次創作は「絵やマンガが描ける」などの高等技術が前提でしたが、ウマ娘の場合は二次創作のあり方に新風を巻き起こしていますね。スマホで撮影した走る動画を活かした、かなり気軽で、ライトに発信できる二次創作というか。

日影 いわゆる「絵師」でなくてもできる二次創作ですね。こういったつくりやすい二次創作がミーム(文化の中で人から人へと広がっていくアイデア)として広がっていっているわけです。また、今の若い方はこういったオタク趣味に対して「負い目」的なものがない、という時代の雰囲気も追い風になっていますね。こういった動画をきっかけにウマ娘を知り、ゲーム本体に流れていく……という動きも生まれていくかもしれません。

クラブハウス“爆死”の裏で躍進アプリも

日影 また、4~6月は「Voicy」「Spoon」という2つの音声配信アプリがユーザー数を伸ばし、過去最高を記録しています。ただ、それぞれ雰囲気や利用状況は異なります。Voicyは日本経済新聞や毎日新聞のチャンネルがあるなど「勉強、学習」色があり、視聴時間も朝7時くらいが多く「朝活」での利用が推察されます。一方、Spoonは「歌ってみた」などのオタク系エンタメコンテンツが多いため、利用時間帯は夜間が多いですね。

――音声配信といえば、前回は「クラブハウス」の“爆死”がありましたよね……。

日影 はい。ですが、クラブハウスの影響で音声配信の認知が高まり、他の音声配信アプリの裾野が広がった感はありますね。

――ツイッターの音声サービス「Spaces」がアプリ上で本格展開され、YouTubeでも静止画しか映さずに音声コンテンツのように配信している人もいます。すでに使われているメジャープラットフォームでも「事足りている」環境で、独自の音声アプリが気を吐いている、というのはおもしろいですね。

日影 やはり、プラットフォーム独特の雰囲気や文化に惹かれて、というのはあるでしょうね。YouTubeやツイッターのような巨大プラットフォーマーが音声コンテンツを始めたからといって、全員がそちらに流れるわけではありません。前編でSNS「Gravity」の話をしましたが、プラットフォームは巨大になればなるほど、その反動で別のサービスに流れるユーザーが増える、という動きも生まれます。そういう意味では、ニッチなアプリが増えていくのは必然とも言えます。日本ではわずかなように見えても、世界で積み上げればたくさんのユーザーになりますからね。

(構成=石徹白未亜/ライター)

宮迫博之の功罪…天然素材での活躍、ひな壇システムの一般化、吉本興業契約システムの改変

 8月17日、突如として特別番組『アメトーーク特別編 雨上がり決死隊解散報告会』が配信され、32年間におよぶ歴史に終止符を打つこととなった雨上がり決死隊。同番組では蛍原徹の口から「宮迫博之がYouTubeを始めたことが解散を決意したきっかけ」と説明され、今やネット上では「宮迫が諸悪の根源」「雨上がり決死隊をつぶしたのは宮迫」と宮迫バッシングが吹き荒れている。

 しかし、「とはいえ、雨上がり決死隊の人気をここまでのものにしたのもまた、宮迫さんでした」と語るのは、数多くのお笑い番組を手がけるある放送作家だ。

「雨上がり決死隊は、ポストダウンタウン世代の急先鋒として頭角を現し、吉本印天然素材(1991年に結成された、吉本興業所属の当時の若手芸人等によるユニット)時代にはそのリーダーとしてメンバーを引っ張ったのも宮迫さんでした。その後、宮迫さんは、演出家と揉めて天然素材を抜けることになった際、東京ではまだ何ひとつ仕事がなかったにもかかわらず、『東京で勝負する』と決意。すると蛍原さんは、『雨上がり決死隊は宮迫やから、おれはお前についていく』と語ったという逸話はあまりにも有名。だからといって闇営業騒動以降の宮迫さんの罪が消えるわけではないですが、雨上がり決死隊という屋号をここまで大きくしたのはまぎれもなく宮迫さんであり、宮迫さんがいなければ、雨上がり決死隊の存続など不可能。それは蛍原さんも理解しているはずで、だからこその解散……という側面もあったはず。

 また、コンビ初の冠番組として『アメトーーク!』(テレビ朝日系)が始まったのが2003年、今から18年前ですが、当時の雨上がりさんといえばまだ若く、芸人として脂がのりまくっていた時期。普通の芸人なら番組内で我こそはと目立とうとするであろうところを、雨上がりさんは回し役に徹し、ひな壇芸人たちを盛り立てるという選択をした。

 結果、今や一般的となった『ひな壇システム』を世に広めることにも成功し、その結果として『アメトーーク!』は大人気長寿番組に成長したわけです。番組演出の加地さん(加地倫三・テレビ朝日プロデューサー)が優秀だったというのはもちろんあるでしょうが、宮迫さんが番組に出演する多くの芸人たちの“ハブ”となり、面白い話を引き出す才能に長けていたことも間違いない。しかし、そのことをみずからも意識し、それが芸人としての驕りとなり、今回の解散につながったともいえなくもないでしょうね」

YouTubeを始めずおとなしく謹慎していれば、今頃とうに『アメトーーク!』MCとして復帰していたはず

 2019年6月に闇営業騒動が発覚すると、みずから記者会見を開き、罪を認めながらも吉本興業側を批判。騒動に連なった他の芸人とは違って謹慎生活を受け入れることなく、翌2020年1月には自身のYouTubeチャンネル『宮迫ですッ!』を開設。しかしその第1回配信が、ともに記者会見を開いたロンドンブーツ1号2号の田村亮の復帰会見の前日であったことが、批判を浴びるなどした。

「あれも本当に宮迫さんらしいというか……。売れっ子芸人としてのプライドがあるから、騒動に巻き込んでしまった後輩たちに配慮し、ただ黙って謹慎するということが彼にはできなかったのでしょう。しかしまさにそのことが、彼が心から願った芸能界復帰をさらに遠ざけ、むしろ蛍原さんとの溝を深める結果となっていった。YouTuberとしてはチャンネル登録者数140万人超と堂々の結果を残しているのに、なんとも皮肉な話ですよね。

 改めて考えれば、2年前の闇営業騒動にかかわった芸人で、クビになった入江さん(カラテカの入江慎也)を除けば、一般芸能界に復帰できていないのは今や宮迫さんだけなんですよね。ロンブーの亮さんのように、半年か1年かきちんと謹慎してさえいれば、おそらく今頃はなんの問題もなく復帰できており、蛍原さんの横で『アメトーーク!』MCに返り咲いていたはず。しかし、その道を選ばなかったというか“選べなかった”のは、ある意味、宮迫さんの芸人としての能力が突出していたからともいえる。だからこそじっとしておられずにヘタに動いてしまい、その能力の高さゆえにYouTuberとしてそれなりの結果を出してしまい、そのせいで結局は相方から愛想を尽かされてしまった……」(前出の放送作家)

期せずして宮迫は、“ガメつい”吉本興業に大きな変化をもたらした

 また、この闇営業騒動が、お笑い帝国・吉本興業の内部システムに大きな変化をもたらしたことも忘れてはならないだろう。吉本興業に近いある雑誌編集者はこう語る。

「この闇営業騒動をきっかけに、今までは契約書も交わさずになんでも口約束が多かった吉本興業がきちんと所属芸人と向き合い、契約システムを明確にし、タレントに配慮したプロダクションとして生まれ変わろうともがき始めたのは特筆すべきこと。実際あの騒動以降、吉本と契約書を交わした芸人たちはみな、非常に居心地がよくなったとささやき合っていますからね。今や、お笑い系のプロダクションのなかでも、芸人にとっての最優良企業として認識されているのでは。

 一方で、極楽とんぼの加藤浩次さんやキングコングの西野さん(西野亮廣)、オリエンタルラジオのふたりなど、さまざまな事情で吉本を離れる芸人も続出しました。と同時に、あの“ガメつい”で有名な吉本が『エージェント契約』という新たな契約形態を認めるにいたったのも、もとを正せば宮迫さんのあの騒動がきっかけです。

 つまり宮迫さんは、期せずしてそのような“新しい時代”を吉本にもたらしたともいえる。まあご本人としては不本意でしかないでしょうが、『吉本を変えた』という意味では、これも彼の功績のひとつとして、後世に語り継がれていくのかもしれません」

 身勝手な判断を繰り返し、相方から三下り半を突き付けられた形の宮迫博之。彼がお笑い界に残した功績が正しく評価されるには、まだまだ時間がかかるのかもしれない。

(文=藤原三星)

●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara

櫻井よしこ、西岡力ら日本の右派と韓国の諜報機関が癒着と韓国メディアが報道! 櫻井は否定も両者をつなぐキーマンの存在

 櫻井よしこと韓国・情報機関との癒着疑惑が一部で話題になっている。櫻井といえば、極右の女神として、嫌韓を煽る言論をおこなってきた一人。ところが、8月10日、韓国のテレビ局MBCの報道番組『PD手帳』で、韓国の情報機関である国家情報院(以下、国情院)の元職員が、国情院と櫻井よ...

パチンコチェーンが「夢のある」報奨金。所属金メダリストに「1億円」贈呈

 夢のある話に、多くの人々が沸いた。パチンコホール「D’STATION」などを展開するNEXUSグループは、同社フェンシングクラブに所属する見延和靖選手に報奨金を授与した。

 見延選手は東京五輪の男子エペ団体に加納虹輝選手・山田優選手・宇山賢選手と共に出場し、日本勢として初の金メダルを獲得。2008年北京五輪で太田雄貴が獲った男子フルーレの銀メダルと、2012年ロンドン五輪で男子フルーレ団体が獲った銀メダルを上回る快挙を成し遂げた。

 エペ団体は、1チーム3名(プラス交代選手1名)による総当たり戦で、1試合3分×9対戦で45点先取、もしくは試合終了時に多く得点を獲得していたチームが勝者となるルール。そのエペ団体を引っ張ったのが2016年リオデジャネイロ五輪にも出場し、2019年には世界ランクで初めて年間1位を獲得した、最年長の見延選手だ。

 8月10日、群馬県高崎市で行われた同社グループのメダル報告会に出席した見延選手は、同社グループの代表より報奨金が贈られた。各スポーツ紙によると、その際、見延選手は一瞬、目を疑ったとのこと。それもそのハズ、受け取った報奨金は何と「1億円」だったそうだ。

 過去には、2004年アテネ五輪の柔道女子48キロ級で2連覇した谷亮子が、所属先のトヨタ自動車から同じく1億円と、特別限定車を贈呈されたことがある。また、同五輪の柔道男子60キロ級で五輪柔道初の3連覇を達成した野村忠宏は所属先のミキハウスから総額5000万円、2018年平昌冬季五輪の女子スピードスケート団体追い抜きとマススタートで2冠に輝いた高木菜那は所属先の日本電産サンキョーの親会社・日本電産と同社会長から計4000万円が贈られた。

 これらと比べても異例と言える高額報奨金に対して、自身もフェンシング選手だった同社グループの代表は、マイナー競技からの脱却を見据えて「(競技を)続けても夢を掴めるというのを実現させたかった」と語ったとのこと。「緊張とは違う、体の震えを感じている」とした見延選手も、「活躍すると、こんな夢があると後輩に伝えたい」と思いを込めたそうだ。
 
 NEXUSフェンシングクラブは2009年、窮地にあった企業スポーツに貢献すべく、スポーツ選手を社員として雇用することで創設。ロンドン大会での男子フルーレ団体には、所属の千田健太選手と淡路卓選手が出場した。

 今大会では、同じく所属の敷根崇裕選手も男子フルーレ個人で4位入賞を果たした。

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 2021年9月、いよいよパチスロ6.2号機がホールに登場する。

 新内規「6.2号機」では有利区間を3000Gまで設けることができるため、従来の6号機では実現できなかったゲーム性が可能となる。それだけに、ファンからは「9月以降の新台が楽しみ!」「5号機のようなゲーム性な復活!?」といった声があがるなど、6.2号機に対する期待感は日に日に高まっている状況だ。

 そんな中、大手サミーは8月16日、シリーズ最新作となる『パチスロANEMONE 交響詩篇エウレカセブン HI-EVOLUTION』が保通協の型式試験で「適合を受けた」と発表した。

 同マシンは、サミーのキラーコンテンツ『交響詩篇エウレカセブンシリーズ』最新作。適合の報告とともにメインビジュアルを公開した他、YouTube公式チャンネル「サミーチャンネル」では同日よりプロモーションムービーも公開された。

 ムービー内では美麗なアニメーション映像とともに、「進化した自力感」「BURST LOOP」「エピソードモード」「エアリアルボーナス」「制御不能AT」といった本機のセールスポイントが紹介されている。

 スペックなどの詳細はまだ不明だが、動画の内容から前作『パチスロ交響詩篇エウレカセブン3 HI-EVOLUTION ZERO』のようなオーソドックスなATタイプか、あるいは絶賛稼働中の『パチスロ 頭文字D』『パチスロコードギアス 反逆のルルーシュ3』で採用されている「A+ATタイプ」の可能性が高そうだ。

 また、動画内では「押し順当て」や「3000ダメージ」などの演出もあり、5号機ATで人気を博した『モンスターハンター 月下雷鳴』のような「勝ったら継続」「勝利の一部で特化ゾーン」といったバトル的な要素もあるかもしれない。

 今回の新作発表で思い出したが、『エウレカシリーズ』といえば、筆者にとって因縁深いコンテンツ。始まりは初代『パチスロ交響詩篇エウレカセブン』で、1/65536のフリーズが500枚で終了という苦い思い出もあり、お世辞にも相性が良いとはいえなかった。

 後継機の『交響詩篇エウレカセブン2』では2回もフリーズさせたが、どちらも700枚という不甲斐ない結果に終わり、友人に腹を抱えて笑われた記憶がある。

 しかし、6号機『パチスロ交響詩篇エウレカセブン3 HI-EVOLUTION ZERO』ではフリーズの経験こそないものの、5回の完走経験があり収支もプラスだ。

 徐々に相性が高まっている本シリーズ。どのようなスペックであれ、ホールのメイン機種になるような抜群の完成度であることを期待したい。

(文=大松)

<著者プロフィール>
 4号機『大花火』でホールデビューし、『パチスロ北斗の拳』でドハマリ。6号機は『パチスロ モンスターハンター:ワールド™』がお気に入り。G&Eビジネススクール卒業後、プログラマーや事務職を経験。現在はライティング業務に従事する傍ら「パチスロガチ勢」として活動中。パチMAXでは主にハイエナ実戦記事や動画レビュー記事を担当。常に攻略情報に注目しており、「6号機でも勝てる」を心情に有益な情報を紹介中。

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アフガン崩壊で近づく中国の崩壊、中国内で「タリバン警戒論」…日本、揺らぐ米国依存の防衛

 8月15日、首都カブールをタリバンが制圧し、米国を中心とする国際社会が支援してきたアフガニスタン・イスラム共和国が事実上崩壊した。米国が支援したガニ政権が崩壊した問題をめぐって、バイデン政権は国内外から批判にさらされている。2500人近い兵士の命を失い、2兆ドル以上の戦費を費やしてきたにもかかわらず、米同時多発テロから20年となる9月11日を仇敵タリバンがアフガニスタンを再び支配下に置いた状態で迎えることになるからである。

 タリバンの電撃的なアフガニスタン制圧は、ベトナム戦争末期のサイゴン陥落の記憶を蘇らせる。米国の国際的なイメージは地に落ちたことから、日本でも「自国の防衛を米国に委ねる日本も対岸の火事ではない」という危機感が高まっている。

 国際社会の狼狽ぶりを尻目に中国政府は、米国の外交政策の失態に乗じて「米国は自己の利益のため同盟国を見捨てる信頼できないパートナーだ」との宣伝戦を展開している。「米軍撤収により中国が巨大経済圏構想『一帯一路』をさらに拡大するチャンスが到来した」とする論調も出ているが、果たしてそうだろうか。

中国にとって安全保障上の課題

 政治的に大きな代償を払うことを覚悟してでもアフガニスタンという長年の不良資産を「損切り」したのは、米国政府がインド太平洋地域に本格的に関与しようとする意思の表れである。米軍が長年アフガニスタンの治安を担ってきたことで、中国をはじめ近隣諸国はその恩恵に浴してきたが、その安全装置が突然なくなってしまったのである。

 アフガニスタンの隣国である中国にとって、将来の戦略的利益よりも、タリバンの突然の復権による安全保障上の課題のほうがはるかに大きいのではないだろうか。

 中国国内の世論は当初「米国の敗走」を嘲笑するムードが支配していたが、その後「タリバン警戒論」が噴出し始めている。中国政府は7月28日、タリバンのナンバー2であるバラダル氏を招き、その関係の良好さをアピールしているが、アフガニスタンに潜在する東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)を名乗る武装グループの動向に神経を尖らせていることは間違いない。

 国内の弾圧を逃れてタリバンの下にやってきた中国新疆ウイグル自治区の若者の数は約3500人、内戦が続くシリアなどでも実戦経験を磨いているといわれている。米国政府は2002年にETIMをテロ組織に指定したが、昨年その指定を解除している。

 ETIMのメンバーがアフガニスタンとの国境をくぐり抜けて国内でテロを行うことを恐れる中国政府は、タリバンから「ETIMとの関係を絶ち、同勢力が新疆ウイグル自治区に戻ることを阻止する」との言質を取っているが、タリバンがその約束を守ることができるとは思えない。

 タリバンは当初強硬姿勢を控え、より穏健なイメージの構築に努めていたが、徐々にその本性をあらわし始めている。タリバンにとって誤算だったのは、アフガニスタン政府の約90億ドルの外貨準備を手に入れることができなかったことである。同国の外貨準備の大半は海外の口座に預託されており、タリバンがアクセスできるのは全体の0.2パーセント以下にすぎないという。

 勝利に貢献した兵士への恩賞に事欠くばかりか、政府が銀行に十分なドルを供給できないことから、通貨アフガニが急落、食品価格などが高騰する事態になりつつある。資金不足のなかでタリバン兵が、麻薬の原料であるケシの栽培に走り、住民への略奪や暴行を本格化させれば、再び国際社会から見放されてしまうだろう。

 そもそもアフガニスタンには近代的な意味での「国」が成立する政治風土がない。戦国時代の日本のように諸勢力が分立する状態にあり、外部から強力に支援して中央政府をつくったとしても国全体を統治できないことは米国の20年に及ぶ統治が教えてくれる。

中国にとって最凶のテロリスト

「テロリストにとって反米というスローガンはもはや時代後れである」との指摘もある。アラブ首長国連邦(UAE)などのアラブ諸国とイスラエルとの間で国交が樹立した現在、「反米」はアラブの富豪からテロ活動資金を引き出せる「錦の御旗」ではなくなっている。かつてのようにタリバンがアフガニスタンを制圧したからといって、ただちにテロリストが米国に押し寄せるわけではないのである。

 面子を捨てた米国がタリバンと秘密裏に和解するようなことになれば、アフガニスタンに潜在するテロリストを恐れなければならないのは中国ということになる。タリバンの首脳部は中国の意向に従うそぶりを示しているが、中国で生活するウイグル人たちへの圧政を看過すれば、イスラム原理主義を標榜する存在意義があやうくなる。烏合の衆であるタリバンの中央の指令が末端まで徹底されるという保証もない。

 米ホワイトハウスは17日、アフガニスタン政府に支援した武器などの相当数がタリバンの手に渡ったことを認めた。カネに困ったタリバン兵が最新鋭の米国製兵器をETIMのメンバーに横流しすれば、中国にとって最凶のテロリストが誕生することになる。中国人民解放軍は18日から、タジキスタン領内で同国軍と共にアフガニスタンからのテロリスト潜入を防ぐための軍事演習を開始した。タジキスタンにはロシア軍が駐留しており、中国の軍隊が同国内で演習を行うのは極めて異例のことである。中国が「混乱の矢面に立たされている」という危機意識を持っていることの証左であろう。

「サイゴン陥落は米国時代の終わり」と嘯いていた旧ソ連だったが、15年後に崩壊したのは自らだった。「『大国の墓場』であるアフガニスタンに派兵しない」とする中国だが、英国、旧ソ連、米国と同様の失敗を繰り返すのは時間の問題なのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職