政府が検討進めるワクチンの「交差接種」、本当に安全?予防効果は?海外の事例を検証

 今年2月、待望のワクチン接種が始まり、新型コロナウイルス収束へ向けて大きく前進するのではないかと、誰もが期待を寄せた。しかし、2回目のワクチン接種後にもかかわらず、コロナに感染する“ブレイクスルー感染”が相次いで報告され、ワクチンへの期待が大きく挫かれた。

 さらに、熊本総合病院と国立国際医療研究センターの共同研究によると、ファイザー製ワクチンを接種した医療従事者およそ220人について、2回目接種後の1週間から2週間で抗体量がピークに達し、2カ月後にはその2分の1になっていたという報告があり、国民を落胆させた。

 国内外の研究報告から、ワクチンを2回接種後の抗体価が時間の経過とともに低下することは認めざるを得ない。そこで政府は、「ブースター」と呼ばれる、3回目のワクチン接種を検討している。政府は、ブースター接種の前に、希望する全国民に2回目のワクチン接種を終えたい意向を示しているが、現在、ワクチンの1回目の接種を終えたのは全人口の約60%であり、いまだ1800万人もの人が1回目の接種を待っている状況だという。

 しかし、2回目の接種完了までのワクチン安定供給も危うい状況であり、そこで検討されているのが「交差接種」である。交差接種とはどのようなものか、函館陵北病院総合診療科の医師でYouTubeチャンネル「YouTube医療大学」でも医療について発信する舛森悠医師に聞いた。

なぜ交差接種が検討されているのか

「コロナワクチンは、いずれの製薬会社のワクチンも、2回の接種が推奨されています。さらに、原則、1回目と2回目のワクチンは同種のものを接種することが推奨されています。これに対し、1回目と2回目で異なるワクチンを接種することを交差接種といいます。しかし、WHO(国際保健機関)は『他のCOVID-19ワクチンと互換性に関するデータはない』と提言していますので、交差接種に関しては慎重に検討すべきと思います」

 WHOの提言にもかかわらず、なぜ日本政府は交差接種の有効性・安全性に関して検討しているのだろうか。

「その理由は、速やかに安定したワクチンの供給が見込めないなかで、少しでも早く国内のワクチン接種を普及させるためです。現在、国内生産が可能なアストラゼネカ社のワクチンは供給の目処がたっています。しかし、アストラゼネカ社製ワクチンは、1回目と2回目の接種の間隔を8週間以上あける必要があるので、スピード感としては他社ワクチンに劣るというデメリットがあるのです。そのため、1回目のワクチン接種をアストラゼネカ製で接種し、その4週後にモデルナ社やファイザー社製のワクチン接種が可能になれば、供給が安定していないモデルナ社・ファイザー社製のワクチンを温存しつつ、スピーディーに国内のワクチン接種を進めることが可能になるのではという狙いがあります」

交差接種の目的

 日本においては検討段階の交差接種だが、海外ではすでに実施している国もある。

「実は、その試みがカナダ、ドイツ、スペインで、すでに行われています。これらの国では1回目にアストラゼネカ製を打ち、2回目はファイザーやモデルナが製造したワクチンを接種しています」

 しかしながら、交差接種を実施する目的が日本とは大きく異なる。ひとつは、アストラゼネカ社のワクチンで、まれに報告されている“血栓症”のリスクを避けるため、もうひとつは、より強い予防効果を得るためである。

「一個人の意見としては、アストラゼネカ製のワクチンによる血栓症などの有害事象を避けるという意味での交差接種は検討できるかもしれませんが、ワクチンを速やかに普及させるために、現段階で交差接種を検討するのは時期尚早と言わざるを得ないと考えます」

 すでに交差接種を行っている海外では、その安全性・有効性についての報告がなされているが、十分な内容とはいえない。

「イギリスで行われた臨床試験(Com-COV試験)で、50歳以上の463例(平均年齢57.8歳、女性46%)を対象に、1回目と2回目でそれぞれ次の4パターンに分けて接種が行われました。

(1)アストラゼネカ→アストラゼネカ
(2)アストラゼネカ→ファイザー
(3)ファイザー→ファイザー
(4)ファイザー→アストラゼネカ

 この試験の結論としては、国内で採用しようとしている交差接種パターンである(2)のアストラゼネカ→ファイザー(接種間隔4週間)は、従来の世界的に承諾されているアストラゼネカによる2回接種(接種間隔によらず)よりも、抗スパイクIgG濃度(≒中和抗体)が同等以上に高くなる、つまり予防効果が高くなることがわかっています。しかし、対象者が50歳以上に限定した試験のため、若年者に対しての有効性は不明であり、さらなる報告が待たれます」

交差接種のメリット・デメリット

「交差接種により、希望する全国民への2回のワクチン接種を早急に進めることができるのはメリットではありますが、そもそも抗体価が低下しなければ本当にコロナウイルスにかかりづらいのか、重症化しにくいのかに関する一定した見解は得られていません。つまり、異なるメーカーのワクチンを体内に入れることが本当に安全かつ有効であるかについては、次なる研究結果が待たれるところであり、交差接種の予想がつかないことがデメリットだといえます」

 デルタ株の出現によって、集団免疫の獲得が難しいとみられている。ワクチン接種後にも感染するブレイクスルー感染の報告も相次いでいる。せめて、重症化や死に至ることを免れるためにもワクチン接種は重要だが、安全性を第一に進めることを政府に望みたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)



吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

政府が検討進めるワクチンの「交差接種」、本当に安全?予防効果は?海外の事例を検証

 今年2月、待望のワクチン接種が始まり、新型コロナウイルス収束へ向けて大きく前進するのではないかと、誰もが期待を寄せた。しかし、2回目のワクチン接種後にもかかわらず、コロナに感染する“ブレイクスルー感染”が相次いで報告され、ワクチンへの期待が大きく挫かれた。

 さらに、熊本総合病院と国立国際医療研究センターの共同研究によると、ファイザー製ワクチンを接種した医療従事者およそ220人について、2回目接種後の1週間から2週間で抗体量がピークに達し、2カ月後にはその2分の1になっていたという報告があり、国民を落胆させた。

 国内外の研究報告から、ワクチンを2回接種後の抗体価が時間の経過とともに低下することは認めざるを得ない。そこで政府は、「ブースター」と呼ばれる、3回目のワクチン接種を検討している。政府は、ブースター接種の前に、希望する全国民に2回目のワクチン接種を終えたい意向を示しているが、現在、ワクチンの1回目の接種を終えたのは全人口の約60%であり、いまだ1800万人もの人が1回目の接種を待っている状況だという。

 しかし、2回目の接種完了までのワクチン安定供給も危うい状況であり、そこで検討されているのが「交差接種」である。交差接種とはどのようなものか、函館陵北病院総合診療科の医師でYouTubeチャンネル「YouTube医療大学」でも医療について発信する舛森悠医師に聞いた。

なぜ交差接種が検討されているのか

「コロナワクチンは、いずれの製薬会社のワクチンも、2回の接種が推奨されています。さらに、原則、1回目と2回目のワクチンは同種のものを接種することが推奨されています。これに対し、1回目と2回目で異なるワクチンを接種することを交差接種といいます。しかし、WHO(国際保健機関)は『他のCOVID-19ワクチンと互換性に関するデータはない』と提言していますので、交差接種に関しては慎重に検討すべきと思います」

 WHOの提言にもかかわらず、なぜ日本政府は交差接種の有効性・安全性に関して検討しているのだろうか。

「その理由は、速やかに安定したワクチンの供給が見込めないなかで、少しでも早く国内のワクチン接種を普及させるためです。現在、国内生産が可能なアストラゼネカ社のワクチンは供給の目処がたっています。しかし、アストラゼネカ社製ワクチンは、1回目と2回目の接種の間隔を8週間以上あける必要があるので、スピード感としては他社ワクチンに劣るというデメリットがあるのです。そのため、1回目のワクチン接種をアストラゼネカ製で接種し、その4週後にモデルナ社やファイザー社製のワクチン接種が可能になれば、供給が安定していないモデルナ社・ファイザー社製のワクチンを温存しつつ、スピーディーに国内のワクチン接種を進めることが可能になるのではという狙いがあります」

交差接種の目的

 日本においては検討段階の交差接種だが、海外ではすでに実施している国もある。

「実は、その試みがカナダ、ドイツ、スペインで、すでに行われています。これらの国では1回目にアストラゼネカ製を打ち、2回目はファイザーやモデルナが製造したワクチンを接種しています」

 しかしながら、交差接種を実施する目的が日本とは大きく異なる。ひとつは、アストラゼネカ社のワクチンで、まれに報告されている“血栓症”のリスクを避けるため、もうひとつは、より強い予防効果を得るためである。

「一個人の意見としては、アストラゼネカ製のワクチンによる血栓症などの有害事象を避けるという意味での交差接種は検討できるかもしれませんが、ワクチンを速やかに普及させるために、現段階で交差接種を検討するのは時期尚早と言わざるを得ないと考えます」

 すでに交差接種を行っている海外では、その安全性・有効性についての報告がなされているが、十分な内容とはいえない。

「イギリスで行われた臨床試験(Com-COV試験)で、50歳以上の463例(平均年齢57.8歳、女性46%)を対象に、1回目と2回目でそれぞれ次の4パターンに分けて接種が行われました。

(1)アストラゼネカ→アストラゼネカ
(2)アストラゼネカ→ファイザー
(3)ファイザー→ファイザー
(4)ファイザー→アストラゼネカ

 この試験の結論としては、国内で採用しようとしている交差接種パターンである(2)のアストラゼネカ→ファイザー(接種間隔4週間)は、従来の世界的に承諾されているアストラゼネカによる2回接種(接種間隔によらず)よりも、抗スパイクIgG濃度(≒中和抗体)が同等以上に高くなる、つまり予防効果が高くなることがわかっています。しかし、対象者が50歳以上に限定した試験のため、若年者に対しての有効性は不明であり、さらなる報告が待たれます」

交差接種のメリット・デメリット

「交差接種により、希望する全国民への2回のワクチン接種を早急に進めることができるのはメリットではありますが、そもそも抗体価が低下しなければ本当にコロナウイルスにかかりづらいのか、重症化しにくいのかに関する一定した見解は得られていません。つまり、異なるメーカーのワクチンを体内に入れることが本当に安全かつ有効であるかについては、次なる研究結果が待たれるところであり、交差接種の予想がつかないことがデメリットだといえます」

 デルタ株の出現によって、集団免疫の獲得が難しいとみられている。ワクチン接種後にも感染するブレイクスルー感染の報告も相次いでいる。せめて、重症化や死に至ることを免れるためにもワクチン接種は重要だが、安全性を第一に進めることを政府に望みたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)



吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

政府が検討進めるワクチンの「交差接種」、本当に安全?予防効果は?海外の事例を検証

 今年2月、待望のワクチン接種が始まり、新型コロナウイルス収束へ向けて大きく前進するのではないかと、誰もが期待を寄せた。しかし、2回目のワクチン接種後にもかかわらず、コロナに感染する“ブレイクスルー感染”が相次いで報告され、ワクチンへの期待が大きく挫かれた。

 さらに、熊本総合病院と国立国際医療研究センターの共同研究によると、ファイザー製ワクチンを接種した医療従事者およそ220人について、2回目接種後の1週間から2週間で抗体量がピークに達し、2カ月後にはその2分の1になっていたという報告があり、国民を落胆させた。

 国内外の研究報告から、ワクチンを2回接種後の抗体価が時間の経過とともに低下することは認めざるを得ない。そこで政府は、「ブースター」と呼ばれる、3回目のワクチン接種を検討している。政府は、ブースター接種の前に、希望する全国民に2回目のワクチン接種を終えたい意向を示しているが、現在、ワクチンの1回目の接種を終えたのは全人口の約60%であり、いまだ1800万人もの人が1回目の接種を待っている状況だという。

 しかし、2回目の接種完了までのワクチン安定供給も危うい状況であり、そこで検討されているのが「交差接種」である。交差接種とはどのようなものか、函館陵北病院総合診療科の医師でYouTubeチャンネル「YouTube医療大学」でも医療について発信する舛森悠医師に聞いた。

なぜ交差接種が検討されているのか

「コロナワクチンは、いずれの製薬会社のワクチンも、2回の接種が推奨されています。さらに、原則、1回目と2回目のワクチンは同種のものを接種することが推奨されています。これに対し、1回目と2回目で異なるワクチンを接種することを交差接種といいます。しかし、WHO(国際保健機関)は『他のCOVID-19ワクチンと互換性に関するデータはない』と提言していますので、交差接種に関しては慎重に検討すべきと思います」

 WHOの提言にもかかわらず、なぜ日本政府は交差接種の有効性・安全性に関して検討しているのだろうか。

「その理由は、速やかに安定したワクチンの供給が見込めないなかで、少しでも早く国内のワクチン接種を普及させるためです。現在、国内生産が可能なアストラゼネカ社のワクチンは供給の目処がたっています。しかし、アストラゼネカ社製ワクチンは、1回目と2回目の接種の間隔を8週間以上あける必要があるので、スピード感としては他社ワクチンに劣るというデメリットがあるのです。そのため、1回目のワクチン接種をアストラゼネカ製で接種し、その4週後にモデルナ社やファイザー社製のワクチン接種が可能になれば、供給が安定していないモデルナ社・ファイザー社製のワクチンを温存しつつ、スピーディーに国内のワクチン接種を進めることが可能になるのではという狙いがあります」

交差接種の目的

 日本においては検討段階の交差接種だが、海外ではすでに実施している国もある。

「実は、その試みがカナダ、ドイツ、スペインで、すでに行われています。これらの国では1回目にアストラゼネカ製を打ち、2回目はファイザーやモデルナが製造したワクチンを接種しています」

 しかしながら、交差接種を実施する目的が日本とは大きく異なる。ひとつは、アストラゼネカ社のワクチンで、まれに報告されている“血栓症”のリスクを避けるため、もうひとつは、より強い予防効果を得るためである。

「一個人の意見としては、アストラゼネカ製のワクチンによる血栓症などの有害事象を避けるという意味での交差接種は検討できるかもしれませんが、ワクチンを速やかに普及させるために、現段階で交差接種を検討するのは時期尚早と言わざるを得ないと考えます」

 すでに交差接種を行っている海外では、その安全性・有効性についての報告がなされているが、十分な内容とはいえない。

「イギリスで行われた臨床試験(Com-COV試験)で、50歳以上の463例(平均年齢57.8歳、女性46%)を対象に、1回目と2回目でそれぞれ次の4パターンに分けて接種が行われました。

(1)アストラゼネカ→アストラゼネカ
(2)アストラゼネカ→ファイザー
(3)ファイザー→ファイザー
(4)ファイザー→アストラゼネカ

 この試験の結論としては、国内で採用しようとしている交差接種パターンである(2)のアストラゼネカ→ファイザー(接種間隔4週間)は、従来の世界的に承諾されているアストラゼネカによる2回接種(接種間隔によらず)よりも、抗スパイクIgG濃度(≒中和抗体)が同等以上に高くなる、つまり予防効果が高くなることがわかっています。しかし、対象者が50歳以上に限定した試験のため、若年者に対しての有効性は不明であり、さらなる報告が待たれます」

交差接種のメリット・デメリット

「交差接種により、希望する全国民への2回のワクチン接種を早急に進めることができるのはメリットではありますが、そもそも抗体価が低下しなければ本当にコロナウイルスにかかりづらいのか、重症化しにくいのかに関する一定した見解は得られていません。つまり、異なるメーカーのワクチンを体内に入れることが本当に安全かつ有効であるかについては、次なる研究結果が待たれるところであり、交差接種の予想がつかないことがデメリットだといえます」

 デルタ株の出現によって、集団免疫の獲得が難しいとみられている。ワクチン接種後にも感染するブレイクスルー感染の報告も相次いでいる。せめて、重症化や死に至ることを免れるためにもワクチン接種は重要だが、安全性を第一に進めることを政府に望みたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)



吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

政府が検討進めるワクチンの「交差接種」、本当に安全?予防効果は?海外の事例を検証

 今年2月、待望のワクチン接種が始まり、新型コロナウイルス収束へ向けて大きく前進するのではないかと、誰もが期待を寄せた。しかし、2回目のワクチン接種後にもかかわらず、コロナに感染する“ブレイクスルー感染”が相次いで報告され、ワクチンへの期待が大きく挫かれた。

 さらに、熊本総合病院と国立国際医療研究センターの共同研究によると、ファイザー製ワクチンを接種した医療従事者およそ220人について、2回目接種後の1週間から2週間で抗体量がピークに達し、2カ月後にはその2分の1になっていたという報告があり、国民を落胆させた。

 国内外の研究報告から、ワクチンを2回接種後の抗体価が時間の経過とともに低下することは認めざるを得ない。そこで政府は、「ブースター」と呼ばれる、3回目のワクチン接種を検討している。政府は、ブースター接種の前に、希望する全国民に2回目のワクチン接種を終えたい意向を示しているが、現在、ワクチンの1回目の接種を終えたのは全人口の約60%であり、いまだ1800万人もの人が1回目の接種を待っている状況だという。

 しかし、2回目の接種完了までのワクチン安定供給も危うい状況であり、そこで検討されているのが「交差接種」である。交差接種とはどのようなものか、函館陵北病院総合診療科の医師でYouTubeチャンネル「YouTube医療大学」でも医療について発信する舛森悠医師に聞いた。

なぜ交差接種が検討されているのか

「コロナワクチンは、いずれの製薬会社のワクチンも、2回の接種が推奨されています。さらに、原則、1回目と2回目のワクチンは同種のものを接種することが推奨されています。これに対し、1回目と2回目で異なるワクチンを接種することを交差接種といいます。しかし、WHO(国際保健機関)は『他のCOVID-19ワクチンと互換性に関するデータはない』と提言していますので、交差接種に関しては慎重に検討すべきと思います」

 WHOの提言にもかかわらず、なぜ日本政府は交差接種の有効性・安全性に関して検討しているのだろうか。

「その理由は、速やかに安定したワクチンの供給が見込めないなかで、少しでも早く国内のワクチン接種を普及させるためです。現在、国内生産が可能なアストラゼネカ社のワクチンは供給の目処がたっています。しかし、アストラゼネカ社製ワクチンは、1回目と2回目の接種の間隔を8週間以上あける必要があるので、スピード感としては他社ワクチンに劣るというデメリットがあるのです。そのため、1回目のワクチン接種をアストラゼネカ製で接種し、その4週後にモデルナ社やファイザー社製のワクチン接種が可能になれば、供給が安定していないモデルナ社・ファイザー社製のワクチンを温存しつつ、スピーディーに国内のワクチン接種を進めることが可能になるのではという狙いがあります」

交差接種の目的

 日本においては検討段階の交差接種だが、海外ではすでに実施している国もある。

「実は、その試みがカナダ、ドイツ、スペインで、すでに行われています。これらの国では1回目にアストラゼネカ製を打ち、2回目はファイザーやモデルナが製造したワクチンを接種しています」

 しかしながら、交差接種を実施する目的が日本とは大きく異なる。ひとつは、アストラゼネカ社のワクチンで、まれに報告されている“血栓症”のリスクを避けるため、もうひとつは、より強い予防効果を得るためである。

「一個人の意見としては、アストラゼネカ製のワクチンによる血栓症などの有害事象を避けるという意味での交差接種は検討できるかもしれませんが、ワクチンを速やかに普及させるために、現段階で交差接種を検討するのは時期尚早と言わざるを得ないと考えます」

 すでに交差接種を行っている海外では、その安全性・有効性についての報告がなされているが、十分な内容とはいえない。

「イギリスで行われた臨床試験(Com-COV試験)で、50歳以上の463例(平均年齢57.8歳、女性46%)を対象に、1回目と2回目でそれぞれ次の4パターンに分けて接種が行われました。

(1)アストラゼネカ→アストラゼネカ
(2)アストラゼネカ→ファイザー
(3)ファイザー→ファイザー
(4)ファイザー→アストラゼネカ

 この試験の結論としては、国内で採用しようとしている交差接種パターンである(2)のアストラゼネカ→ファイザー(接種間隔4週間)は、従来の世界的に承諾されているアストラゼネカによる2回接種(接種間隔によらず)よりも、抗スパイクIgG濃度(≒中和抗体)が同等以上に高くなる、つまり予防効果が高くなることがわかっています。しかし、対象者が50歳以上に限定した試験のため、若年者に対しての有効性は不明であり、さらなる報告が待たれます」

交差接種のメリット・デメリット

「交差接種により、希望する全国民への2回のワクチン接種を早急に進めることができるのはメリットではありますが、そもそも抗体価が低下しなければ本当にコロナウイルスにかかりづらいのか、重症化しにくいのかに関する一定した見解は得られていません。つまり、異なるメーカーのワクチンを体内に入れることが本当に安全かつ有効であるかについては、次なる研究結果が待たれるところであり、交差接種の予想がつかないことがデメリットだといえます」

 デルタ株の出現によって、集団免疫の獲得が難しいとみられている。ワクチン接種後にも感染するブレイクスルー感染の報告も相次いでいる。せめて、重症化や死に至ることを免れるためにもワクチン接種は重要だが、安全性を第一に進めることを政府に望みたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)



吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

セブンやモスバーガーも参入の「大豆ミート」は“第4の肉”になるか?栄養豊富な便利食材

 タンパク質含有量の豊富さから「畑のお肉」と呼ばれる大豆を主原料に、肉のような食感や味が楽しめる代替肉「大豆ミート」が店頭に並ぶようになった。今後、大豆ミートは“食肉”の一種として私たちの生活に根付いていくのだろうか。大豆ミートの今後について、食の総合コンサルタントの小倉朋子さんに話を聞いた。

実は利便性が高い食材の大豆ミート

 2020年以降、食のトレンドに名を連ねるようになった大豆ミート。日本能率協会総合研究所の発表によると、19年には15億円程度だった大豆ミート市場は、21年現在で20億円ほどに成長しているという。

「以前は菜食主義の人や、体を鍛えていて植物性タンパク質を摂りたい人、ダイエット中の人など、食にこだわりがある消費者が大豆ミートを選ぶ傾向がありましたが、この1年でライトな層も購入するようになりましたね。さまざまな要因がありますが、直近では巣ごもり需要の影響が大きいです。外出を控えて自宅にいる時間が長くなり、自炊のバリエーションを増やしたいというニーズから、大豆ミートを選ぶ人が増えているようです」(小倉さん)

 食肉と違ってたくさん食べても罪悪感を覚えないことなども、ライト層に受け入れられている理由だという。実は、大豆ミートの市場が拡大しているのは日本だけではない。

「特に欧米では『SDGs(持続可能な開発目標)』の観点で、大豆ミートのみならず代替肉全般が大きく注目されています。家畜の飼育や食肉の生産には大量の温室効果ガスを排出しますが、大豆ミートの環境負荷は食肉よりも軽い。環境への配慮という意味で大豆ミートを選ぶ人もいますね」(小倉さん)

 小倉さんは、20年ほど前から肉や魚と同じようにタンパク源として大豆ミートを食べているという生粋の愛好家。大豆ミートといえば、低カロリー・低糖質・低脂質、豊富なタンパク質など、栄養面での特徴が挙げられるが、そのほかにも食材としての強みがあるという。

「大豆ミートは、とても利便性が高い食材です。乾燥タイプの大豆ミートは常温で保存でき、水につければやわらかくなるので、非常時にも貴重なタンパク源になります。独特なにおいはありますが、さっぱりしていて味付けしやすいので食肉に近い味わいも再現できます」(小倉さん)

 また、動物の肉はしっかり火を通さなければ食べられないが、大豆ミートは加熱時間が短くても問題ない。加熱調理のストレスが少ないのも強みだという。一度、大豆ミートを食生活に取り入れてみると、その使いやすさを実感できそうだ。

セブンやモスバーガーも参入

 日本のマーケット全体の変化としては、ファストフード店やコンビニ、大手食品メーカーが市場に参入している状況から、大豆ミートが「大衆化している」と小倉さんは話す。

モスバーガーやロッテリアなどのファストフード店では、パティに大豆ミートを使ったハンバーガーを展開しています。ハンバーガーはパティだけでなくパンやソース、野菜類など、複数の具材が同時に口に入るので、大豆特有のにおいが気にならないというメリットがあります。もちろん、ハンバーガーが大衆に愛されるメニューである点も重要です」(小倉さん)

 大衆向けという意味では、より食べやすさを意識した商品も登場している。セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド「セブンプレミアム」では、20年末に大豆ミートと牛ばら肉を合わせた「大豆ミートと牛肉のハンバーグ」を発売。大豆ミートだけでなく、牛肉の肉汁も楽しめる味になっている。

「大豆ミートには独特な風味があるので、実際のお肉を合わせると、より親しみやすい味になりますよね。全員が環境への配慮や健康目的で買うわけではないので、食事のバリエーションとして大豆ミートを購入する人にとっては、手に取りやすい商品になっています」(小倉さん)

 活況を迎えつつある大豆ミート市場だが、小倉さんは「日本で“第4の肉”として定着するかどうかは未知数」と話す。

「海外では宗教上の理由で肉が食べられない人でも大豆ミートが食べられたり、肉食中心の国では健康志向の人に響いたり、と大きなインパクトがあります。しかし、日本人にとって大豆食品は豆腐や納豆、油揚げなど、長年さまざまなバリエーションで食べてきた食材です。今は目新しさから大豆ミートを手に取る人もいますが、見慣れたときにどうなるのかは現状では見極めにくいですね」(小倉さん)

 昔から大豆食品が身近な日本とそうでない国とでは、状況が異なるようだ。

世界的な食糧難に陥るという試算も

 諸外国と日本の環境に対する意識の差も、大豆ミートの定着に影響しているという。

「個人的な印象ですが、海外に比べると、日本は環境問題に対する意識が高いとは言いがたい国です。そのため、ブームが落ち着いた頃には『やっぱり普通の肉がいい』『豆腐でもいいか』というように、元の食生活に戻るかもしれません。今後は食事の選択肢のひとつとしてじわじわ浸透する可能性も考えられますが、海外のような一大ブームになるとは考えにくいです」(小倉さん)

 その一方で、さらに将来を見据えたときに大豆ミートは無視できない存在になる、と小倉さん。

「遠くない将来、世界的な食糧難に陥るという試算が出ています。現代の私たちは肉と大豆ミートの食べたいほうを選ぶことができていますが、このまま何の対策も講じなければ、大豆ミートしか食べられない未来が来るかもしれません。食事を自由に選べる今のうちに、一人ひとりが食生活を見直す必要がありますね」(小倉さん)

 現代の私たちが大豆ミートを食の選択肢に入れるだけで、未来の食肉文化が救われるかもしれない。スーパーやファストフード店で大豆ミートを見かけた際は、ぜひ実食してみてほしい。

(文=真島加代/清談社)

●食の総合コンサルタント 小倉朋子 http://totalfood.jp/
株式会社トータルフード代表取締役。亜細亜大学・東京成徳大学講師、食輝塾主宰。24時間食一色の生粋の食の探求家。メニュー開発、マナー、トレンド、箸文化やダイエット、食育などあらゆる分野の食に精通、提案をしている。

セブンやモスバーガーも参入の「大豆ミート」は“第4の肉”になるか?栄養豊富な便利食材

 タンパク質含有量の豊富さから「畑のお肉」と呼ばれる大豆を主原料に、肉のような食感や味が楽しめる代替肉「大豆ミート」が店頭に並ぶようになった。今後、大豆ミートは“食肉”の一種として私たちの生活に根付いていくのだろうか。大豆ミートの今後について、食の総合コンサルタントの小倉朋子さんに話を聞いた。

実は利便性が高い食材の大豆ミート

 2020年以降、食のトレンドに名を連ねるようになった大豆ミート。日本能率協会総合研究所の発表によると、19年には15億円程度だった大豆ミート市場は、21年現在で20億円ほどに成長しているという。

「以前は菜食主義の人や、体を鍛えていて植物性タンパク質を摂りたい人、ダイエット中の人など、食にこだわりがある消費者が大豆ミートを選ぶ傾向がありましたが、この1年でライトな層も購入するようになりましたね。さまざまな要因がありますが、直近では巣ごもり需要の影響が大きいです。外出を控えて自宅にいる時間が長くなり、自炊のバリエーションを増やしたいというニーズから、大豆ミートを選ぶ人が増えているようです」(小倉さん)

 食肉と違ってたくさん食べても罪悪感を覚えないことなども、ライト層に受け入れられている理由だという。実は、大豆ミートの市場が拡大しているのは日本だけではない。

「特に欧米では『SDGs(持続可能な開発目標)』の観点で、大豆ミートのみならず代替肉全般が大きく注目されています。家畜の飼育や食肉の生産には大量の温室効果ガスを排出しますが、大豆ミートの環境負荷は食肉よりも軽い。環境への配慮という意味で大豆ミートを選ぶ人もいますね」(小倉さん)

 小倉さんは、20年ほど前から肉や魚と同じようにタンパク源として大豆ミートを食べているという生粋の愛好家。大豆ミートといえば、低カロリー・低糖質・低脂質、豊富なタンパク質など、栄養面での特徴が挙げられるが、そのほかにも食材としての強みがあるという。

「大豆ミートは、とても利便性が高い食材です。乾燥タイプの大豆ミートは常温で保存でき、水につければやわらかくなるので、非常時にも貴重なタンパク源になります。独特なにおいはありますが、さっぱりしていて味付けしやすいので食肉に近い味わいも再現できます」(小倉さん)

 また、動物の肉はしっかり火を通さなければ食べられないが、大豆ミートは加熱時間が短くても問題ない。加熱調理のストレスが少ないのも強みだという。一度、大豆ミートを食生活に取り入れてみると、その使いやすさを実感できそうだ。

セブンやモスバーガーも参入

 日本のマーケット全体の変化としては、ファストフード店やコンビニ、大手食品メーカーが市場に参入している状況から、大豆ミートが「大衆化している」と小倉さんは話す。

モスバーガーやロッテリアなどのファストフード店では、パティに大豆ミートを使ったハンバーガーを展開しています。ハンバーガーはパティだけでなくパンやソース、野菜類など、複数の具材が同時に口に入るので、大豆特有のにおいが気にならないというメリットがあります。もちろん、ハンバーガーが大衆に愛されるメニューである点も重要です」(小倉さん)

 大衆向けという意味では、より食べやすさを意識した商品も登場している。セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド「セブンプレミアム」では、20年末に大豆ミートと牛ばら肉を合わせた「大豆ミートと牛肉のハンバーグ」を発売。大豆ミートだけでなく、牛肉の肉汁も楽しめる味になっている。

「大豆ミートには独特な風味があるので、実際のお肉を合わせると、より親しみやすい味になりますよね。全員が環境への配慮や健康目的で買うわけではないので、食事のバリエーションとして大豆ミートを購入する人にとっては、手に取りやすい商品になっています」(小倉さん)

 活況を迎えつつある大豆ミート市場だが、小倉さんは「日本で“第4の肉”として定着するかどうかは未知数」と話す。

「海外では宗教上の理由で肉が食べられない人でも大豆ミートが食べられたり、肉食中心の国では健康志向の人に響いたり、と大きなインパクトがあります。しかし、日本人にとって大豆食品は豆腐や納豆、油揚げなど、長年さまざまなバリエーションで食べてきた食材です。今は目新しさから大豆ミートを手に取る人もいますが、見慣れたときにどうなるのかは現状では見極めにくいですね」(小倉さん)

 昔から大豆食品が身近な日本とそうでない国とでは、状況が異なるようだ。

世界的な食糧難に陥るという試算も

 諸外国と日本の環境に対する意識の差も、大豆ミートの定着に影響しているという。

「個人的な印象ですが、海外に比べると、日本は環境問題に対する意識が高いとは言いがたい国です。そのため、ブームが落ち着いた頃には『やっぱり普通の肉がいい』『豆腐でもいいか』というように、元の食生活に戻るかもしれません。今後は食事の選択肢のひとつとしてじわじわ浸透する可能性も考えられますが、海外のような一大ブームになるとは考えにくいです」(小倉さん)

 その一方で、さらに将来を見据えたときに大豆ミートは無視できない存在になる、と小倉さん。

「遠くない将来、世界的な食糧難に陥るという試算が出ています。現代の私たちは肉と大豆ミートの食べたいほうを選ぶことができていますが、このまま何の対策も講じなければ、大豆ミートしか食べられない未来が来るかもしれません。食事を自由に選べる今のうちに、一人ひとりが食生活を見直す必要がありますね」(小倉さん)

 現代の私たちが大豆ミートを食の選択肢に入れるだけで、未来の食肉文化が救われるかもしれない。スーパーやファストフード店で大豆ミートを見かけた際は、ぜひ実食してみてほしい。

(文=真島加代/清談社)

●食の総合コンサルタント 小倉朋子 http://totalfood.jp/
株式会社トータルフード代表取締役。亜細亜大学・東京成徳大学講師、食輝塾主宰。24時間食一色の生粋の食の探求家。メニュー開発、マナー、トレンド、箸文化やダイエット、食育などあらゆる分野の食に精通、提案をしている。

セブンやモスバーガーも参入の「大豆ミート」は“第4の肉”になるか?栄養豊富な便利食材

 タンパク質含有量の豊富さから「畑のお肉」と呼ばれる大豆を主原料に、肉のような食感や味が楽しめる代替肉「大豆ミート」が店頭に並ぶようになった。今後、大豆ミートは“食肉”の一種として私たちの生活に根付いていくのだろうか。大豆ミートの今後について、食の総合コンサルタントの小倉朋子さんに話を聞いた。

実は利便性が高い食材の大豆ミート

 2020年以降、食のトレンドに名を連ねるようになった大豆ミート。日本能率協会総合研究所の発表によると、19年には15億円程度だった大豆ミート市場は、21年現在で20億円ほどに成長しているという。

「以前は菜食主義の人や、体を鍛えていて植物性タンパク質を摂りたい人、ダイエット中の人など、食にこだわりがある消費者が大豆ミートを選ぶ傾向がありましたが、この1年でライトな層も購入するようになりましたね。さまざまな要因がありますが、直近では巣ごもり需要の影響が大きいです。外出を控えて自宅にいる時間が長くなり、自炊のバリエーションを増やしたいというニーズから、大豆ミートを選ぶ人が増えているようです」(小倉さん)

 食肉と違ってたくさん食べても罪悪感を覚えないことなども、ライト層に受け入れられている理由だという。実は、大豆ミートの市場が拡大しているのは日本だけではない。

「特に欧米では『SDGs(持続可能な開発目標)』の観点で、大豆ミートのみならず代替肉全般が大きく注目されています。家畜の飼育や食肉の生産には大量の温室効果ガスを排出しますが、大豆ミートの環境負荷は食肉よりも軽い。環境への配慮という意味で大豆ミートを選ぶ人もいますね」(小倉さん)

 小倉さんは、20年ほど前から肉や魚と同じようにタンパク源として大豆ミートを食べているという生粋の愛好家。大豆ミートといえば、低カロリー・低糖質・低脂質、豊富なタンパク質など、栄養面での特徴が挙げられるが、そのほかにも食材としての強みがあるという。

「大豆ミートは、とても利便性が高い食材です。乾燥タイプの大豆ミートは常温で保存でき、水につければやわらかくなるので、非常時にも貴重なタンパク源になります。独特なにおいはありますが、さっぱりしていて味付けしやすいので食肉に近い味わいも再現できます」(小倉さん)

 また、動物の肉はしっかり火を通さなければ食べられないが、大豆ミートは加熱時間が短くても問題ない。加熱調理のストレスが少ないのも強みだという。一度、大豆ミートを食生活に取り入れてみると、その使いやすさを実感できそうだ。

セブンやモスバーガーも参入

 日本のマーケット全体の変化としては、ファストフード店やコンビニ、大手食品メーカーが市場に参入している状況から、大豆ミートが「大衆化している」と小倉さんは話す。

モスバーガーやロッテリアなどのファストフード店では、パティに大豆ミートを使ったハンバーガーを展開しています。ハンバーガーはパティだけでなくパンやソース、野菜類など、複数の具材が同時に口に入るので、大豆特有のにおいが気にならないというメリットがあります。もちろん、ハンバーガーが大衆に愛されるメニューである点も重要です」(小倉さん)

 大衆向けという意味では、より食べやすさを意識した商品も登場している。セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド「セブンプレミアム」では、20年末に大豆ミートと牛ばら肉を合わせた「大豆ミートと牛肉のハンバーグ」を発売。大豆ミートだけでなく、牛肉の肉汁も楽しめる味になっている。

「大豆ミートには独特な風味があるので、実際のお肉を合わせると、より親しみやすい味になりますよね。全員が環境への配慮や健康目的で買うわけではないので、食事のバリエーションとして大豆ミートを購入する人にとっては、手に取りやすい商品になっています」(小倉さん)

 活況を迎えつつある大豆ミート市場だが、小倉さんは「日本で“第4の肉”として定着するかどうかは未知数」と話す。

「海外では宗教上の理由で肉が食べられない人でも大豆ミートが食べられたり、肉食中心の国では健康志向の人に響いたり、と大きなインパクトがあります。しかし、日本人にとって大豆食品は豆腐や納豆、油揚げなど、長年さまざまなバリエーションで食べてきた食材です。今は目新しさから大豆ミートを手に取る人もいますが、見慣れたときにどうなるのかは現状では見極めにくいですね」(小倉さん)

 昔から大豆食品が身近な日本とそうでない国とでは、状況が異なるようだ。

世界的な食糧難に陥るという試算も

 諸外国と日本の環境に対する意識の差も、大豆ミートの定着に影響しているという。

「個人的な印象ですが、海外に比べると、日本は環境問題に対する意識が高いとは言いがたい国です。そのため、ブームが落ち着いた頃には『やっぱり普通の肉がいい』『豆腐でもいいか』というように、元の食生活に戻るかもしれません。今後は食事の選択肢のひとつとしてじわじわ浸透する可能性も考えられますが、海外のような一大ブームになるとは考えにくいです」(小倉さん)

 その一方で、さらに将来を見据えたときに大豆ミートは無視できない存在になる、と小倉さん。

「遠くない将来、世界的な食糧難に陥るという試算が出ています。現代の私たちは肉と大豆ミートの食べたいほうを選ぶことができていますが、このまま何の対策も講じなければ、大豆ミートしか食べられない未来が来るかもしれません。食事を自由に選べる今のうちに、一人ひとりが食生活を見直す必要がありますね」(小倉さん)

 現代の私たちが大豆ミートを食の選択肢に入れるだけで、未来の食肉文化が救われるかもしれない。スーパーやファストフード店で大豆ミートを見かけた際は、ぜひ実食してみてほしい。

(文=真島加代/清談社)

●食の総合コンサルタント 小倉朋子 http://totalfood.jp/
株式会社トータルフード代表取締役。亜細亜大学・東京成徳大学講師、食輝塾主宰。24時間食一色の生粋の食の探求家。メニュー開発、マナー、トレンド、箸文化やダイエット、食育などあらゆる分野の食に精通、提案をしている。

セブンやモスバーガーも参入の「大豆ミート」は“第4の肉”になるか?栄養豊富な便利食材

 タンパク質含有量の豊富さから「畑のお肉」と呼ばれる大豆を主原料に、肉のような食感や味が楽しめる代替肉「大豆ミート」が店頭に並ぶようになった。今後、大豆ミートは“食肉”の一種として私たちの生活に根付いていくのだろうか。大豆ミートの今後について、食の総合コンサルタントの小倉朋子さんに話を聞いた。

実は利便性が高い食材の大豆ミート

 2020年以降、食のトレンドに名を連ねるようになった大豆ミート。日本能率協会総合研究所の発表によると、19年には15億円程度だった大豆ミート市場は、21年現在で20億円ほどに成長しているという。

「以前は菜食主義の人や、体を鍛えていて植物性タンパク質を摂りたい人、ダイエット中の人など、食にこだわりがある消費者が大豆ミートを選ぶ傾向がありましたが、この1年でライトな層も購入するようになりましたね。さまざまな要因がありますが、直近では巣ごもり需要の影響が大きいです。外出を控えて自宅にいる時間が長くなり、自炊のバリエーションを増やしたいというニーズから、大豆ミートを選ぶ人が増えているようです」(小倉さん)

 食肉と違ってたくさん食べても罪悪感を覚えないことなども、ライト層に受け入れられている理由だという。実は、大豆ミートの市場が拡大しているのは日本だけではない。

「特に欧米では『SDGs(持続可能な開発目標)』の観点で、大豆ミートのみならず代替肉全般が大きく注目されています。家畜の飼育や食肉の生産には大量の温室効果ガスを排出しますが、大豆ミートの環境負荷は食肉よりも軽い。環境への配慮という意味で大豆ミートを選ぶ人もいますね」(小倉さん)

 小倉さんは、20年ほど前から肉や魚と同じようにタンパク源として大豆ミートを食べているという生粋の愛好家。大豆ミートといえば、低カロリー・低糖質・低脂質、豊富なタンパク質など、栄養面での特徴が挙げられるが、そのほかにも食材としての強みがあるという。

「大豆ミートは、とても利便性が高い食材です。乾燥タイプの大豆ミートは常温で保存でき、水につければやわらかくなるので、非常時にも貴重なタンパク源になります。独特なにおいはありますが、さっぱりしていて味付けしやすいので食肉に近い味わいも再現できます」(小倉さん)

 また、動物の肉はしっかり火を通さなければ食べられないが、大豆ミートは加熱時間が短くても問題ない。加熱調理のストレスが少ないのも強みだという。一度、大豆ミートを食生活に取り入れてみると、その使いやすさを実感できそうだ。

セブンやモスバーガーも参入

 日本のマーケット全体の変化としては、ファストフード店やコンビニ、大手食品メーカーが市場に参入している状況から、大豆ミートが「大衆化している」と小倉さんは話す。

モスバーガーやロッテリアなどのファストフード店では、パティに大豆ミートを使ったハンバーガーを展開しています。ハンバーガーはパティだけでなくパンやソース、野菜類など、複数の具材が同時に口に入るので、大豆特有のにおいが気にならないというメリットがあります。もちろん、ハンバーガーが大衆に愛されるメニューである点も重要です」(小倉さん)

 大衆向けという意味では、より食べやすさを意識した商品も登場している。セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド「セブンプレミアム」では、20年末に大豆ミートと牛ばら肉を合わせた「大豆ミートと牛肉のハンバーグ」を発売。大豆ミートだけでなく、牛肉の肉汁も楽しめる味になっている。

「大豆ミートには独特な風味があるので、実際のお肉を合わせると、より親しみやすい味になりますよね。全員が環境への配慮や健康目的で買うわけではないので、食事のバリエーションとして大豆ミートを購入する人にとっては、手に取りやすい商品になっています」(小倉さん)

 活況を迎えつつある大豆ミート市場だが、小倉さんは「日本で“第4の肉”として定着するかどうかは未知数」と話す。

「海外では宗教上の理由で肉が食べられない人でも大豆ミートが食べられたり、肉食中心の国では健康志向の人に響いたり、と大きなインパクトがあります。しかし、日本人にとって大豆食品は豆腐や納豆、油揚げなど、長年さまざまなバリエーションで食べてきた食材です。今は目新しさから大豆ミートを手に取る人もいますが、見慣れたときにどうなるのかは現状では見極めにくいですね」(小倉さん)

 昔から大豆食品が身近な日本とそうでない国とでは、状況が異なるようだ。

世界的な食糧難に陥るという試算も

 諸外国と日本の環境に対する意識の差も、大豆ミートの定着に影響しているという。

「個人的な印象ですが、海外に比べると、日本は環境問題に対する意識が高いとは言いがたい国です。そのため、ブームが落ち着いた頃には『やっぱり普通の肉がいい』『豆腐でもいいか』というように、元の食生活に戻るかもしれません。今後は食事の選択肢のひとつとしてじわじわ浸透する可能性も考えられますが、海外のような一大ブームになるとは考えにくいです」(小倉さん)

 その一方で、さらに将来を見据えたときに大豆ミートは無視できない存在になる、と小倉さん。

「遠くない将来、世界的な食糧難に陥るという試算が出ています。現代の私たちは肉と大豆ミートの食べたいほうを選ぶことができていますが、このまま何の対策も講じなければ、大豆ミートしか食べられない未来が来るかもしれません。食事を自由に選べる今のうちに、一人ひとりが食生活を見直す必要がありますね」(小倉さん)

 現代の私たちが大豆ミートを食の選択肢に入れるだけで、未来の食肉文化が救われるかもしれない。スーパーやファストフード店で大豆ミートを見かけた際は、ぜひ実食してみてほしい。

(文=真島加代/清談社)

●食の総合コンサルタント 小倉朋子 http://totalfood.jp/
株式会社トータルフード代表取締役。亜細亜大学・東京成徳大学講師、食輝塾主宰。24時間食一色の生粋の食の探求家。メニュー開発、マナー、トレンド、箸文化やダイエット、食育などあらゆる分野の食に精通、提案をしている。

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パチンコ「アイドル店員」戦国時代…新たな可能性を!?

 この1年でもはやすっかり聞きなれた感のあるパチンコ店の『アイドル店員』。

 TwitterなどのSNSによる集客ツールのひとつとして定着しつつあるが、その中でもTOPの人気を誇るのが都内にある店舗の広報マネージャーという肩書を持つ元祖アイドル店員『あんこ』さん。

 その名を耳にすることが増えてきた1年前には1万人だったそのフォロワー数も今では1.7万人となっている。2万人を超えるのはもはや時間の問題だろう。

 この影響により現在は実に多くのアイドル店員が乱立する現状となっているが、1万人を超えるアカウントはほとんどない様子。そもそもTwitterで1万人を超えるフォロワーを持つアカウントは10%以下というのだから、物凄いことである。

 しかも、この『あんこ』さん。実際に集客にも大きく貢献しているようだ。

 店内には『あんこグッズ』が一般景品として販売されており、あまりの人気に最近はとうとう通信販売も始めたそうだ。当該ホールには日々『あんこファン』がその姿を一目見ようと訪れるそうで、中にはパチンコユーザーでない人もいるくらいだと言う。ここまで来ると『アイドル店員』という言葉に偽りはないだろう。

 今月の初めのこと、『パチンコ客の¨ながら遊技¨にソシャゲが目をつけた。業界初のコラボの内容とは』というタイトルのYahooニュースを見かけたのだが、その内容というのが『あんこ』さんがソーシャルゲームとコラボするということで非常に驚いたのだが正に前代未聞の出来事だ。

 パチンコ店の新たな集客ツールとしてパチンコ業界だけにとどまらず、ひとつのビジネスチャンスとして異業種からも注目されているのも頷ける話。だが、その乱立するアイドル店員の中には、実際の店舗スタッフではない方もいるという。

「そこまでしてアイドル店員を作る必要があるのか」というのも疑問ではあるが、実際にも稼働に直結しているホールがあるのだから必要不可欠なツールになりつつあるのかも知れない。

 もはや全国のパチンコ店は、正にアイドル店員戦国時代の様相を呈していると言えるだろう。いずれは落ち着いていく気もするが、しばらくは注目したいところである。

 しかしながら、個人的にはアイドル店員よりも少し異質な立ち位置だったり、個性あふれるtweetで人気を獲得しているフォロー必至のアカウントに注目している。次回はそういった方達をご紹介したい。

(文=オーハナB)
<著者プロフィール>
元ホール店員、店長経験者。パチンコ店の裏側で起きた出来事や、人間関係を題材にしたコラムを担当している。過去に話題になった業界ネタなど、時代背景を感じる記事も作成中。自身の思い入れのあるシリーズの動向にも熱い視線を注ぐ。

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