大成建設の変貌、「再生エネ」企業へ脱皮…環境関連事業を矢継ぎ早に立ち上げ

 建設大手の大成建設が新しいビジネスへの展開を狙って、再生可能エネルギー関連事業などへの取り組みを強化している。洋上風力発電に加えて、同社は二酸化炭素を利用した地熱発電にも取り組み始めた。その他にも、同社は建設分野での計画・調査、施工管理などにデジタル技術を導入するなど、新しい取り組みを加速している。

 その背景には、“このままでは生き残れない”という同社経営陣の危機感の高まりがある。特に、脱炭素という世界経済のゲームチェンジの影響は大きい。世界的に見て日本の脱炭素への取り組みは遅れてしまった。その状況が続けば、日本経済は世界経済の変化から取り残されるだろう。

 そうした危機感が大成建設を自己変革に向かわせたといえる。大成建設は製造過程での二酸化炭素排出量が7割少ないコンクリートを実用化するなど、脱炭素に対応して生き残る力を強め、さらなる成長を目指そうとしている。そうした企業の増加が日本経済の中長期的な成長実現に不可欠だ。

大成建設が直面する世界経済のゲームチェンジ

 2012年以降、世界経済の回復を背景とした建設、土木需要の増加に支えられて、大成建設の業績は緩やかに拡大した。ただし、2018年以降の受注額は減少傾向にある。その背景には複数の要因がある。日本では経済が縮小均衡に向かい、建設需要は徐々に減少している。他方、アジアの新興国を中心に建設需要は増加しているが、中国共産党政権が「一帯一路(21世紀のシルクロード経済圏構想)」を推進し、中国の国営・国有企業などの海外進出が加速した。その結果、国内外で大成建設は競争の激化に直面している。その上にコロナ禍が発生し、同社の収益環境は不安定化している。

 競争激化の要因として、脱炭素の影響は大きい。世界経済全体で化石燃料の消費を減らし、再生可能エネルギーの利用を増やそうとするゲームチェンジが加速している。それは、21世紀版の産業革命といっても過言ではない。欧州では洋上風力や水力など再生可能エネルギーを用いた電力供給が増えている。電気自動車(EV)など自動車の電動化も加速している。欧州委員会は車載バッテリーなどの原材料の調達、生産、廃棄・リサイクルまで製品のライフサイクル全体で排出される二酸化炭素の量によって製品を評価するライフ・サイクル・アセスメント(LCA)や炭素の国境調整の導入に取り組んでいる。

 米国でも、バイデン政権が1.75兆ドル規模の歳出法案によって気候変動対策などを強化し経済成長につなげようとしている。その状況下、日本の脱炭素への取り組みは遅れている。2030年度時点の国内の電源構成に占める石炭火力の割合は19%と見積もられており、廃止のめどはたたない。

 逆に言えば、技術とコスト面で事業化が可能な再生可能エネルギーの利用手段を増やすことは、大成建設が新しい需要を生み出したり、再生可能エネルギーの利用を念頭に置いたインフラ改修や整備需要を取り込んだりするために欠かせない。大成建設にとって、建設以外の分野で新しい需要創出に取り組む重要性が日ましに高まっている。

地熱発電と洋上風力分野などでの具体的取り組み

 大成建設の具体的な取り組みの一つが、地熱発電だ。2000年代に入り、世界的に地熱の利用は増加した。国ごとにみると、米国、インドネシア、フィリピンなどで地熱発電能力が引き上げられている。トルコやケニアでも地熱発電が急速に増えている。脱炭素の加速によって、発電などのための地熱利用は増加するだろう。

 他方で、日本の地熱資源保有量は世界第3位といわれているが、利用は増えていない。その理由として、地熱がある地域が国立公園周辺に多く開発に規制がかけられていることや、温泉旅館業界からの協力取り付けといった課題がある。

 そうした状況下、大成建設は地熱で二酸化炭素を温め、それを用いてタービンを回して発電する技術の開発に取り組み、収益源を多角化しようとしている。具体的なポイントは2つ指摘できる。一つ目は、地下水を利用せず、二酸化炭素を発電の手段として循環的に利用する技術の確立だ。アジア新興国では地熱利用に関する技術力が十分ではない。二酸化炭素を用いた地熱発電技術の確立は、同社が脱炭素分野での需要をより効率的に取り込むために重要だ。

 もう一つが、地域産業の育成だ。欧州などでは、地熱を利用したリゾート施設が運営されている。また、コロナ禍によって都市から地方へ生活の拠点を移す人が増えた。大成建設が規制当局や地域との交渉を重ねて地熱利用により多くの理解と協力を取り付けることは、新しい収益源と地域産業の育成につながる可能性を秘める。

 大成建設は洋上風力発電事業にも取り組む。日本にとって、洋上風力発電は再生可能エネルギーの利用増加の切り札に位置づけられる。しかし、日本には、洋上風力発電に用いられる大型の風車を生産する企業がない。

 その状況下、大成建設は浮体式洋上風力発電に必要な部品開発への進出を表明した。中長期的な展開を考えると、大成建設が本格的な洋上風力発電システムの開発、それによって得られた電力の配送電、蓄電技術の開発に取り組む展開もあるだろう。大成建設は脱炭素を新事業育成のチャンスに生かそうとしている。

重要性高まる事業運営のスピード向上

 新しい事業の育成のために、大成建設は事業運営のスピードを引き上げなければならない。競合相手より先に新しい技術を生み出し、需要を獲得できるか否かが問われる。

 脱炭素やデジタル化など、大成建設を取り巻く事業環境の変化は一段と加速化する。たとえば、欧州委員会はLCAなどによって世界経済の脱炭素関連のルールを策定し、世界各国がEUの価値観に従う環境を整備しようとしている。国際ルールの策定をめぐる主要国間の覇権争いは激化する。石炭火力発電を重視する日本はそうした国際的な議論に乗り遅れ、企業の競争力は一段と低下する恐れが高まっている。

 その状況下、大成建設は実力を高めて、長期の存続力を磨かなければならない。建設や土木分野では、生産工程で二酸化炭素排出量の少ないコンクリートの利用や、建機の電動化、省人化の重要性が増す。

 既存、新規分野での新しい取り組みを強化して、収益源を多角化するためには、アライアンス結成や買収戦略の実施、強化の重要性が一段と高まる。その上で大成建設は各分野の専門家(プロ)を獲得し、組織の集中力と士気を高めなければならない。それが、迅速な技術面の課題克服や事業運営体制の強化に不可欠だ。反対に、新しい取り組みが他社に遅れると、大成建設が脱炭素の加速化などに対応することは難しくなるだろう。その場合、同社の組織全体に現状維持の心理が強く浸透し、事業構造の変革を進めることはかなり難しくなる恐れがある。

 見方を変えると、大成建設の事業変革は、日本経済がこれまでの発想を続けるか、改革を進めて新しい経済運営を目指すかの分水嶺を迎えたことを示唆する。1990年代初頭のバブル崩壊後、日本は公共事業関連の予算を積み増し、建設・土木分野などでの雇用の維持を重視した。その結果として、日本経済全体で在来分野からITや脱炭素など成長期待の高い先端分野への生産要素の再配分は難しくなった。

 大成建設は過去の発想から脱し、組織全体のダイナミズムを高めて新しいビジネスモデルを確立しようとしている。同社経営陣が世界経済の環境変化にしっかりと対応する組織を作り、どのようなペースで自己変革のギアを上げるかが見ものだ。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

●真壁昭夫/法政大学大学院教授

一橋大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学大学院(修士)。ロンドン証券現地法人勤務、市場営業部、みずほ総合研究所等を経て、信州大学経法学部を歴任、現職に至る。商工会議所政策委員会学識委員、FP協会評議員。

著書・論文

『仮想通貨で銀行が消える日』(祥伝社、2017年4月)

『逆オイルショック』(祥伝社、2016年4月)

『VW不正と中国・ドイツ 経済同盟』、『金融マーケットの法則』(朝日新書、2015年8月)

『AIIBの正体』(祥伝社、2015年7月)

『行動経済学入門』(ダイヤモンド社、2010年4月)他。

経営戦略から見たクリエイティブ

クリエイティブの技術は、マス広告に代表される広告表現だけに活用されるものではない。言葉、デザイン、考え方。伝え方を設計し、実現する。そうした技術を、経営のあらゆる局面で活用し、ビジネスにドライブをかけていく。正しく伝えることはもちろん、心を揺さぶる。みんなの気持ちを束ねて、進むべき方向を定める。

この連載では、そんなクリエイティブの事例を、さまざまな企業の、さまざまなセクションの方々からの声をもとに、紹介していきます。

第1回は、森永製菓。創業120周年を機に新たに策定したグループの企業理念を表すムービーにまつわるエピソードを、経営戦略部 森加誉子(もりかよこ)氏に伺った。

文責:ウェブ電通報編集部

 森永製菓グループ「OUR PHILOSOPHY ~ムービー~」の一場面
森永製菓グループ「OUR PHILOSOPHY ~ムービー~」より

 新たに企業理念を策定

「創業120 周年という節目に、従前の企業理念を見直しました。新たに策定した企業理念は、多くの従業員の声を集め、経営陣で議論を重ね、出来上がったものです。森永製菓グループ従業員の想いがこもったものとなっていると思います。」と森氏は語る。「さらなる発展を遂げていくためには、創業の精神や足跡を見つめ直したうえで、目指すべき未来像を描き出し、全従業員で共有することが大切」という太田栄二郎社長の考えのもと、社長自身が全社員に呼び掛け、意見を集めたのが企業理念策定のきっかけだったという。
 

森永製菓グループの企業理念
森永製菓グループの企業理念

■森永製菓グループの企業理念はこちら

目指したのは、グループ全従業員への企業理念の共有

「企業理念を知ってもらうためのツールとして、大きく4つの制作物を作成しました。特設サイト、社長のメッセージ動画、OUR PHILOSOPHY ~ブック~(企業理念を表すブック)、そしてOUR PHILOSOPHY ~ムービー~(企業理念を表すムービー)です。」と森氏は振り返る。制作物作成の一番の目的は、「企業理念浸透のファーストステップとして、まずは企業理念が新しくなったことをその内容とともに従業員に知ってもらうこと」。そこでこだわったのは、「全従業員にくまなく伝えること」と「しっかりと記憶にとどめてもらうこと」だったという。「さまざまな職種や立場の社員がいる中で、いかに全従業員に伝えることができるか、という観点からWEB媒体、紙媒体、さまざまな制作物を作成することを考えました。そして、いかに従業員の記憶にとどめてもらうか、という点から、何か印象に残る伝え方はないだろうか、と悩み、電通様に相談を持ちかけたことが、ムービー作成のきっかけでした」
 

 森永製菓グループ「OUR PHILOSOPHY ~ムービー~」の一場面
森永製菓グループ「OUR PHILOSOPHY ~ムービー~」より

クリエイティブの魅力は、「発想の幅」 

ムービー作成は、電通のクリエイティブチームと共に進めることになる。森氏によれば、経営戦略という普段は広告クリエイティブと接していない部門であるがゆえに、当初は戸惑いがあったという。「実は、最初はこちらの要望した内容と違ったモノが出てきたんです」と森氏は語る。「先ほどもお話しした通り、今回のムービー作成の目的は、企業理念が新しく変わったこととその内容を従業員にしっかりと伝えたいということでした。パーパス、ビジョン、バリューと体系化した新たな企業理念を明確に伝えること。それが我々の最も重要な課題だと捉えていました。ですが、クリエイティブの方からご提案があったのは、従前から掲げている『おいしく、たのしく、すこやかに』という言葉を主軸にした内容だったのです」

電通クリエイティブチームからの提案は次のようなものだった。「森永製菓が長年掲げてきた『おいしく、たのしく、すこやかに』は食品企業にとって非常に素敵な言葉だと思う。森永製菓の資産でもあるこの言葉をもっと大事にされては?キャッチ―で社外の方にも伝わりやすいこの言葉を使って、社内はもちろん、社外に向けても発信できるようなムービーも選択肢としてありなのではないか」

森氏自身、「おいしく、たのしく、すこやかに」の重要性は分かっており、これからも大切にしていきたい言葉だと思っていた。今回の企業理念においてもコーポレートメッセージとして掲げている。「ただ、今まで当たり前のように使用していたこの言葉をクリエイティブの方にそのように言っていただき、『おいしく、たのしく、すこやかに』の大切さ、重要さを実感した気がしました。また、当初は社外発信という視点もあまりなかったので、新たな視点に気付くことができました」と当時を振り返る。

その後は、〈確実に伝えたい新しい要素〉と〈変化はしていないけれど伝えていかなければならない要素〉をうまく組み合わせた作品になるよう、クリエイティブと議論を交わし、試行錯誤し、現在HPに掲載しているムービーが出来上がった。

■森永製菓グループ「OUR PHILOSOPHY ~ムービー~」はこちら

ムービーの締めのナレーションは「おいしく、たのしく、すこやかに。この言葉が持つ無限の可能性を信じ、変わらない言葉とともに、変わり続けていきます」というものだ。「とても素敵だな、と。短い文章に、無駄なく、思いを詰め込む。その言葉の紡ぎ方に、これがプロの技術なんだなぁ、と感心しました」と森氏は語った。

当初は戸惑いがあったものの、結果として良いものになったと森氏はプロジェクトを振り返る。「クリエイティブチームの方々の『発想の幅』の広さにも、助けられましたね。企業理念の内容を事細かに説明したいなら、こんな表現方法。情緒的なイメージを伝えたいなら、こんな表現方法。その中間なら……みたいな感じでさまざまな提案をしてもらえたので、ああ、このあたりがイメージに近いかも。という具体的なモノが湧きました」
 

 森永製菓グループ「OUR PHILOSOPHY ~ムービー~」の一場面
森永製菓グループ「OUR PHILOSOPHY ~ムービー~」より

心に響くものを作る

「心に響かせるテクニックにもいろいろあるんだな、と学ばせてもらいました」と、森氏は言う。ムービーのナレーション一つをとっても、男性にするのか、女性にするのか、その声のトーンを高くするのか、低くするのか?によって伝わり方が違ってくる。さまざまなパターンを試していく中で、「ああ、これが伝えたいイメージに合うなぁ」というふうに答えが見つかっていく。「イメージに合うものを見つけるまで、クリエイティブの方々には辛抱強く付き合っていただき、とてもありがたかったです。心に響くものを作るために、常に真摯(しんし)に業務に向き合っている方々なんだと感じました」

森永製菓 経営戦略部 森加誉子氏
森永製菓 経営戦略部 森加誉子氏

食文化の担い手として

インタビューの最後に、森氏に「食文化」について質問してみた。「歴史的な建造物とか、高価な絵とかが文化として認められるのは、なんとなく分かりますが、命をつなぐための、毎日の食が文化になるって考えてみれば、不思議なことですよね?」と。

森氏の答えは、こうだ。「『食文化』って普通に使っている言葉なので、あまり不思議と感じたことはないのですが……。ただ、今まではなかったものが新しく作り出され、お客さまに受け入れられ、いつの間にか当たり前に日常に溶け込んでいき、なくてはならないものになる、ということが文化なのであれば、総合食品メーカーである我々は、常に食文化の担い手であり続けていきたいな、とは思いますね」

森永製菓を代表する商品に「inゼリー」がある。パウチ型なので、片手で手軽に飲めるゼリーだ。今では、ゼリー飲料シェアトップのこの商品も、1994年の発売当時は、世の中になかった。でも、今はもう当たり前に存在している。食欲がないときや栄養バランスが偏ったときの栄養補給、忙しく時間がないときの小腹満たしなど、現代のライフスタイルに実にマッチしている。

振り返ってみれば、ミルクキャラメル一つをとっても、日本の人々に栄養価の高いお菓子を届けたいという創業者の強い想いをきっかけに、当時はまだ日本になかった西洋菓子を広めるところから始まった。森永製菓は、間違いなく日本の食文化の担い手であったし、これからもそうしたものを生み出してくれるだろう。これは、お世辞でもなんでもない。歴史的な事実であると同時に、未来への希望だと思う。

森永製菓 企業ロゴ

(了)

DOOHの新潮流~エレベーター・サイネージ編

東京エレビGO

デジタル化が進み、市場規模が広がっているOOH(Out Of Home:屋外広告・交通広告)。

最近では、さまざまなDOOH(Digital Out Of Home:デジタルサイネージを活用した広告)が話題になっています。DOOHは、アナログのOOHと比べて、出稿が容易にできる、即時性が高い、狙ったターゲットに届けられる、広告効果が測定できる……など、さまざまなメリットがあります。

今回は、DOOHの新潮流を探るべく、エレベーター・サイネージ「東京エレビGO」と「エレシネマ」を手掛ける、株式会社東京の羅悠鴻(Youhong Luo)氏にお話を伺います。
 

東京エレビGO

 

乗り物から空間へと捉え直し、エレベーター広告を進化させる

──どのようなDOOHを手掛けていますか?

当社は2017年創業の東大発ベンチャー企業で、都内のSクラスやAクラスのハイエンドなオフィスビルのエレベーターホール、およびエレベーター内に自社開発のサイネージやプロジェクターを設置し、広告配信できるサービスを提供しています。エレベーターを待っているときや乗っているときは、スキマ時間が生まれます。そのタイミングで、情報コンテンツやビル管理者からのお知らせ、広告の配信を行います。配信するコンテンツをウェブ上で簡単に管理できるシステムがあるので、柔軟に配信ができます。

設置台数はシリーズ累計で1000台(2021年11月時点)に上ります。今後は、人口の多い東京、大阪、名古屋のオフィスビルやタワーマンションを中心に、日本全国のエレベーター約67万台の5%にあたる約3万台を目標に拡大していきたいと考えています。

──サービスを始めて反響はいかがですか?

サイネージの設置料金は無料で、ビルオーナー側の告知や、ニュースなど番組自体の費用も弊社で負担しコンテンツを提供しています。導入しやすいので、エレベーターホールサイネージ「東京エレビGO」や、エレベーター内プロジェクション「エレシネマ」は歓迎されることが多いです。

設置のクオリティを追求するため、内製のチームでオペレーションをしていますが、ありがたいことに引き合いが多く設置が間に合っていない状況です。設置する際には、ビルのオーナー様やテナント様と密にコミュニケーションを取りながら、ビルの意匠との調和を考えています。そのため、ちょっとしたスキマ時間に彩りを加える「東京エレビGO」と「エレシネマ」はビル全体のイメージ向上に役立っています。

実際に設置していただいたお客さまからは「エレベーターの雰囲気が良くなり、間接的な賃料アップにも役立った」とお褒めの言葉をよく頂きます。また、「エレシネマ」は導入したところ、「ビルにテクノロジーのスパイスがふりかけられた気がする」とお言葉をいただくことも多いです。

東京エレビGO
エレベーターホールの意匠と調和している「東京エレビGO」のサイネージ。
エレシネマ
テック感のある「エレシネマ」のプロジェクター。

──広告主は、どのような会社が多いですか?

商材単価が高いBtoB企業や、SaaS(Software as a Service:クラウドで提供されるソフトウエアサービス)を手掛ける会社が多いです。オフィス環境はセキュリティが厳しいため、これまでビジネスパーソンは会社で広告に接触する機会はほとんどなかったと思います。ですが、エレベーター広告であれば、仕事に注力しているオフィスアワーのタイミングで接触させることができます。

広告主は、自社のターゲット企業が入居するオフィスビルのエレベーター・サイネージへピンポイントに広告を打つことで、その後の営業の効率をあげることが期待できます。特に、商材単価の高い商談をする前に商品広告を流しておくとあらかじめターゲット企業の経営層や社員の方々の認知が取れるので、その後の営業やサービス導入がスムーズになるというメリットがあります。

家具メーカーや引っ越し会社といったオフィス環境をサポートする企業の出稿もあり、社名を想起させることで問い合わせにつながっているようです。エレベーター・サイネージは、マーケティングファネルにおける「認知」というより「契約や購買」といった顧客の刈り取りに寄与する役割が大きいです。また、広告予算ではなく営業の販促予算で発注を頂くこともあります。

──コロナ感染症の拡大によりリモートワークが進みましたが、広告販売の影響はいかがですか?

オフィス出勤率が4~5割に落ちてしまったため、広告枠の販売価格を下げました。ただ想定外だったのは、SaaSやDX(デジタルトランスフォーメーション)の製品を扱う会社が営業対象とする企業にはリモートワークを導入していない企業が多かったことです。そのためターゲットに合致していることも後押しし、事実上リーチ単価が単純に半額になるという現象が発生し、広告効果が顕著に表れるようになりました。某人事系クラウドサービスの会社が、緊急事態宣言中に電車の媒体をたくさん買い、出社している人に向けて、「ハンコを押すために出社した。」という広告を出したときと同じ効果が出ました。また、経営陣や総務など決定権を持つ層が多く出社しているため、よりターゲットに接触させやすい環境になっています。結果、5月以降から軒並み満枠とご好評をいただいております。

──今後の課題や抱負を教えてください

エレベーターの4つの壁面を使うことや、タッチ操作などの技術面の強化を視野に入れながら、エレベーターを乗り物から空間へと捉え直し、エレベーターに乗る体験をもっとアップデートしていくことを目指しています。

コンテンツの内容も改良を図っていきます。例えば夢物語のようですが、エレベーターのドアが閉まった後に顔認証がされて乗客一人一人にあったリコメンドを出し、中でランチが購入でき、決済までされるようになるといいですね。僕たちは、パブリックな空間でスマートフォンを持たず、手ぶらで同じことができる世界を目指しています。

また、僕らは今あるビルを仮想的にWeWork(※)化していっています。
コワーキングスペースを提供する会社の中でも、WeWorkは入居者同士でのコミュニティを形成するような仕掛けが一線を画した価値となっています。

不動産会社としても、入居した企業に直接コミュニケーションを取り、入居している企業内でコミュニティを形成、機能させることができれば、そのビルに居続けるインセンティブを生む可能性があると可視化された事例ではないでしょうか。広告会社であれば、サービスの導入先が分かれば、このビルのA社とC社が導入しています、とお知らせして、他社に「少し話を聞いてみようかな」と思わせることもできますよね。

リモートワークが普及しつつありますが、オフィスでしか生み出せないものもあるはずです。 オフィスには、リアルなつながり、コミュニティがあることが価値なので、その一助として、テナント間コミュニケーションツールをつくっていきたいと思っています。

※WeWork:世界各地にシェアオフィス・コワーキングスペースを展開している米国企業。

インタビューを終えて……

トライアルしやすいビジネスモデルが面白く、BtoB商材をセールスする一つの合理的な手法だと感じました。同じOOHでもBtoC商材では広告費として予算を頂くところが、BtoB商材であれば営業費や販促費など費目が変わるところもユニークです。コロナ禍によって働き方に変化がありましたが、より狙いたいビジネスターゲットに当たりやすくなったという点も興味深いです。

今後、エレベーター広告がビルオーナーとテナントのコミュニケーションツールとして寄与したり、WeWorkのように中に入るテナントや企業間の活性化を図る、そんなオフィスサポート事業まで手掛けるようになった姿を想像すると新しいオフィスや働き方が見えてきそうです。

DOOHの新潮流を紹介する記事では、ヘアサロン・サイネージ編も公開中(記事は、こちら

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ゆうちょ銀行、ATMでの硬貨入出金に最大330円の手数料導入…“小銭貯金”は消滅?

 子どもの頃、貯金箱に小銭をせっせと貯めた経験がある人は多いだろう。小さな子だけではない。主婦雑誌の定番節約術と言えば、500円玉貯金だ。財布に残った500円玉をせっせと貯め、それを使って家族でディズニーランドに行きました、なんて体験談を何度も読んだものだ。

 しかし、残念ながら、小銭貯金はこの先消滅してしまうかもしれない。そのきっかけになりそうなのが、2022年1月から新設される、ゆうちょ銀行の「ATM硬貨預払料金」だ。文字通り、硬貨の預け入れ(入金)と払い戻し(出金)に、いちいち手数料を取るという。

 硬貨の入金については、すでに3大メガバンクも手数料を取っている。三菱UFJ銀行では100枚までは無料、101枚以上500枚までが550円~、三井住友銀行は300枚までは無料だが、やはりそれ以上は550円~、みずほ銀行も100枚までは無料、それ以上は550円~と、500円以上を課してくる。とはいえ、この手数料がかかるのは有人窓口での取引に対してであり、ATMは対象外だ。

 ところが、ゆうちょ銀行は無慈悲にも、ATMでの入出金にも手数料をかけると決めたのだ(むろん窓口での硬貨取り扱いも有料で、なんと51枚以上から550円~となる)。

 このゆうちょATM手数料は、見れば見るほど容赦がない。まず入金では、1~25枚までが110円、26~50枚までは220円、51~100枚までは330円も取る。しかし、出金はもっと驚きだ。1枚でも硬貨を払い戻せば、それだけで110円払わなくてはいけない。自分の預金を下ろす際に、うっかり端数が混じったら、はい110円かかりますよ、ということだ。これを払わない限り、預金の端数は引き出せないのだ。

110円の利息を得るには、いくら預金すればいい?

 普通は、ここで疑問がわく。110円を預金の利息で稼ぐには、いくら預ければいいのだろう。数字が苦手な筆者だが、ざっと計算をしてみた。

 ゆうちょ銀行の通常貯金(普通預金)の金利は年0.001%、定期貯金1年ものは年0.002%だ(2021年12月現在。税引前)。まず、1年間0.002%の定期で預けた場合、手取りで110円に達する利息を得るためにはいくら必要だろうか。概算では、なんと689万円となる(※小数点以下切り捨て、利子にかかる税金は復興税等を除く20%で計算)。

 もし定期ではなく通常貯金(0.001%)だと、この倍の1378万円の預け入れが必要ということだ。1枚の硬貨を引き出すために目減りしない預金額は1000万円以上――これは、さすがに非現実的な数字だろう。

 ゆうちょ銀行と言えば、全国津々浦々に支店があり、郵便局時代の昔からずっと愛用している高齢者の利用者も多いはずだ。そういう世代の方はまだ現金派が多く、せっせと小銭貯蓄にいそしみ、貯金箱がいっぱいになると郵便局に持って行って預けている方もいるのではないか。そういう方々が、その都度110~330円もの手数料を引かれると思うと、心が痛くなる。もし、身近にいるようなら、今年中に預けてしまった方がいいよと教えてあげてほしい。

永遠に下ろせなくなっている小銭たち

 とはいえ、小銭がなかなか下ろせないのは今に始まったことではない。自前のATMを持たないネット銀行はコンビニATMでの入出金が多くなるが、そこでは硬貨の取り扱いができないからだ。1000円以下の端数を下ろすためには、硬貨の取り扱いができるATMを持つ銀行の自分名義口座へと振り込むしかない。もし、振込手数料の優遇がない場合は、それが実費でかかる。そもそも、預金の利息では絶対端数が出るはずなのに、その端数分を下ろせないのはおかしいだろうと常々思っているのだが……。

 現在のところ、3大メガバンクはATMでの入出金に手数料をかけるとは言っていない。融資業務をしていないゆうちょ銀行だからできる荒業かもしれないが、他行も追随しないとは言い切れず、楽観は禁物だろう。

 コツコツと小銭貯金にいそしんでも、それを入金すると目減りする時代になるとすれば、貯金意欲も半減してしまいそうだ。これも、一種の消費喚起策だろうか?

 むろん、硬貨だけでなく現金の取り扱いを減らそうと、政府も銀行もキャッシュレス化を推進している。ATMからの引き出しではなく、デビットカードやスマホを使った銀行ペイを推奨し、その半面でATMの利用手数料は上がる一方だ。この動きは、今後も後戻りすることはないだろう。ついつい溜めてしまった小銭は、今後どうすればいいのか。悩ましい。

回り回って返ってきそうな「小銭処理代」

 現実に日々財布に溜まっていく小銭たちを、どう使えば目減りさせずに済むだろうか。

 今はスーパーやコンビニでもセルフレジが導入されている。現金を取り扱っている機種なら、どんどんそこで使うべきだろう。また、SuicaやPASMOなどの交通系電子マネーも、10円単位から硬貨でチャージができる。硬貨で財布が重くなってきたら、駅に向かうのがひとつの方法だ。

 とはいえ、世の中の流れを見れば、早晩このチャージができなくなる可能性も否定できない。銀行でさえ硬貨をなるべく扱いたくないのだ。それを持ち込む店や事業者に対しても、何らかの負担を求めてもおかしくないだろう。そうなると、硬貨扱い自体がなくなったり、回り回って硬貨取り扱いコストが我々利用者側に付け替えられてもおかしくない。どちらにしても、何らかの負担をすることになるのだろう。

 政府が旗を振っている以上、デジタル化の流れはやまず、世の中の支払いはどんどんキャッシュレスへと突き進む。現金を持つことでペナルティを課せられるのだから、今回のATM硬貨手数料はその表れと言えなくもない。

 とはいえ、もしそうなら、銀行はちまちました年0.001%とか0.002%なんて利息をつけている場合ではないだろう。切りが良くて端数が出ないような、ちゃんと高い金利にしてほしい。もしそうしてくれるなら、喜んで手数料を払っても――いや、やっぱり払うのは悔しい。

 紙の通帳に発行手数料を取ったり、稼働していない口座に手数料がかかったりと、銀行は次々我々に負担を求めてくる。利用者は「そんなの知らなかった」と悔しい思いをしないように目を配っていなくてはならないし、損をしないための対策を考えたい。1円玉も5円玉も、小銭だって貴重なお金だ。なんとか有効活用できる方法を、引き続き考えていきたいと思う。

(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

●松崎のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。Facebookページ「消費経済リサーチルーム

還元率10%超も、年末はクレカが意外にお得度高い?Pay系・電子マネーと比較

 QRコード関連の話題が続き、いまやすっかりキャッシュレス決済といえば「Pay」というイメージが強い。しかし、ここにきて元祖キャッシュレス決済といえるクレジットカードが、物理的なカードを持たない「カードレスカード」の発行を開始しており、存在感を示している。これは、従来のプラスチック製のカードが発行されず、スマホアプリ内にある会員番号や有効期限といった情報使って決済する新たなクレジットカード。ATMでのキャッシングなどプラスチックカードが必要な取引はできないが、紛失やスキミング被害などの心配がなく、かつ従来のクレジットカードの利便性が活かせるのが特徴だ。

 三井住友カードでは「CLタイプ」として発行しており、主にネット決済などでクレジットカードを使っている層の利用を想定している。また、三井住友カードは「ナンバーレス(NL)カード」も発行している。これはプラスチックカードは発行されるが、その券面にカード番号が印字されておらず、盗み見などの被害を防ぐことができる。カードにはICチップが搭載されているので、タッチ決済にも対応。タッチ決済を多用している人向けといえるカードだ。

 ナンバーレスカードはセゾンカードが手掛けているが、こちらはセキュリティ面と共に「シンプルで美しい」とカードのデザイン性もアピールしている。

「CL」も「NL」も、従来のクレジットカードと同じポイントシステムが導入されており、使えば使うほどポイントが貯まる仕組みだ。カードがなく、スマホだけで決済できるとなると、QR決済や電子マネーと利便性的にはほとんど変わらない。となると選ぶ基準はお得度になってくる。

 そこで、出費が増えるこの年末に、どのキャッシュレス決済を使えばお得なのかを簡単に比較してみた。

クレジットカード

 2020年6月に一般社団法人キャッシュレス推進協議会が行った「キャッシュレス調査」では、クレジットカードを「週一回以上利用している」と答えた割合が33.8%となり、キャッシュレス決済の中ではもっとも割合が大きかった。新たな決済方法が次々と誕生しているが、現状ではクレジットカードが日本で一番普及しているキャッシュレス決済といえよう。

 クレジットカードの特徴は、基本的に支払いが後払いになること。実店舗のほかネットショップ、公共料金の支払いなどどこでも使え、何よりも海外でも手軽に使えるのが大きなアドバンテージだ。

 お得度を見てみると、各社ごとにポイント還元率は異なるが、最低0.5%から最大10%以上までと広がりがあり、さらに最近では使う店によってボーナスポイントがつくなど、かなり細分化されてきている。

 例えば、前述の三井住友カード(NL)の基本還元率は0.5%。しかし、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、マクドナルドで利用すると2.5%にアップする。その時に、Visaのタッチ決済かMastercardコンタクトで支払うとさらにボーナスが付き、合計5%還元となる。さらに今なら新規申し込みで最大7000円相当のポイントがもらえるので、相対的なお得度はかなりのもの。

 とはいえ、クレジットカードは年会費がかかるものもあり、そのぶんを相殺すると考えると、お得度は下がる。しかし、年会費のかかるカードは各種損害保険や空港ラウンジ利用などの優待プランがついてくることが多いので、これらをどう換算するかも重要だ。

電子マネー

 電子マネーは、現金の代わりに電子データで決済する方法で、事業者によって大きく3種類に分けられる。

 1つめがSuicaやPASMOなど鉄道会社が提供する交通系サービス。2つめはWAONやnanaco、楽天Edyなど流通事業者が提供する流通系サービス。3つめはドコモが提供するiD、JCBによるQUICKPayなど、クレジットカードとスマホを紐づけるクレジットカード系だ。

 電子マネーはカードを機器にかざすだけで決済ができるというスマートさがメリット。最近では電子マネーカードを取り込めるスマホも普及しているので、利便性は他のキャッシュレス決済とほぼ変わらない。ただし、いずれも事前にお金をチャージする手間が必要だ。

 ポイントは決済時での還元はほとんどなく、現金やカードからのチャージ時に付与される。還元率が上がるケースは、相性の良いクレジットカードからのチャージで、例えばイオンカードセレクトからWAONにチャージすればWAONポイントの二重取りができ、還元率は合計1%に。同じく楽天Edyも楽天カードからのチャージで還元率が合計1%となる。電子マネー単体ではあまりお得度がないともいえる。

QRコード決済

 QRコード決済はスマホで読み込むだけの簡単さがメリット。チャージ時にポイントが付与されることが多いが、基本的には同じグループのクレジットカードと紐づけたほうが還元率も高まる。例えば楽天ペイと楽天カードの組み合わせなら1.5%、PayPayとYahoo! JAPANカードの組み合わせで1.5%という具合だ。また、使用頻度によって還元率がアップするプログラムなどを各社が行っており、使い方次第で高還元率を目指すことができる。

 また、電子マネーやクレジットカードとは異なり、大型キャンペーンやクーポン配布などが随時実施されていることも大きい。例えば、PayPayなら抽選で全額還元したり、上限はあるものの、支払いが半額となるクーポンが随時発行されるなど、ターゲットを絞った時のお得度は随一だ。基本還元率はクレジットカード単体よりも低くなるケースもあるが、キャンペーンによってお得になるため、利用するメリットは大きい。

 このように三者三様のメリットがあるが、いまトータルで利便性とお得度に優れるのは、やはりQRコード決済だろう。クレジットカードでチャージを経由することでポイントの2重取りや還元率アップが狙え、しかもスマホひとつで決済が完結するので利便性も高い。また、楽天であれば楽天市場、PayPayであればPayPayモールなど同事業者のネットショップを使うことで、そのシナジーはさらに高まる。

 また、QRコード決済は口座から直接チャージも可能なので、与信審査の必要なクレジットカードを持っていない人でもポイントの恩恵にあずかれる。

 状況によって3種の電子マネーを細かく使い分けるのがベターなのだが、現実的にはクレジットカードでチャージ→QR決済コード決済というパターンがいま最もお得度が高いと言えそうだ。

(取材・文=清談社)

日興アセットマネジメント「ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)」の魅力に迫る

 従来のアナリスト調査では困難な100万超に及ぶビッグデータを分析し、これまで見過ごされてきた新興国小型株の新たな投資機会を追求する「ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)」。

 2019年10月31日に設定された同ファンドの特徴や魅力について、日興アセットマネジメントの山本氏と、実質的な運用を担当するビッグデータ運用の先駆的存在「アクサ・インベストメント・マネージャーズ」斎藤氏に話をうかがった。

山本

昨今、投信業界では米国を中心とする先進国の株式ファンドが売れ筋ファンドとなっています。もちろん過去にはインド株やブラジル債券ファンドなども人気がありましたが、「新興国」と言うより、単一資産への投資ですよね。

まずお聞きしたいのが、現在の環境下で新興国株式への投資機会はあるのか、ということです。

齋藤

確かに、これまで新興国への投資というと、比較的分かりやすい単一国、単一資産に注目が集まっていたと思います。ただ、最近の中国株などが例に挙げられると思いますが、少し状況が悪くなると、新興国は一気に人気が下がってしまうことがあります。価格変動が非常に大きいがために、投資家はなかなか長く持ち続けられないというのが、実のところなのかもしれません。

一方で、新興国全体の経済成長率は、先進国に比べて高くなるであろうと、多くの投資家の皆さまは考えていらっしゃるのではないでしょうか。にもかかわらず投資に躊躇してしまうのは、短期の値動きと長期の成長期待という両側面で悩ましいと思われたり、あるいは新興国全体を広く見渡してもあまり色が見えず分かりづらいから、ということなのかもしれません。

「新興国株式」投資の魅力とは?

山本

新興国への投資では、やはり経済成長の“伸び代”であったり、成長企業の増加であったり、消費の拡大などに期待した長期投資という観点が大事だと私も考えます。

齋藤

足元の新型コロナウイルスをめぐる動きは、あと数年は付き合っていくことになると思いますが、長期的な視点に立つと、新興国ではダイナミックな変化が起きています。人口が14億人を超える中国や13億人を超えるインドでも、これまで貧困層の人たちの消費活動というものは経済規模として還元されませんでしたが、ここへ来て経済に参加できる人の数が劇的に増えてきています。

ですから、まさに新興国の人口がそのまま経済規模へと変わっていくような変化が、ここ10~20年の間に一気に起こる可能性があります。

山本

新興国では、インフラが整っている日本や先進国などとは全く違った過程を経て、様々なサービスなどが浸透し経済活動を拡大させている様子が見られますよね。

例えば、銀行口座を持っている人は少ないけれど、世界的なデジタル化の流れを先取りし、携帯電話の普及率や配車アプリの利用数などは日本を上回っています。もともとインフラが整っていなかったから、これまでの慣習にとらわれないんですよね。

全く新しいサービスも、躊躇なく人々に受け入れられて一気に拡がりをみせる。若い世代の消費に下支えされた成長は大きなポテンシャルですね。

齋藤

米国の高成長企業の“伸び代”も、実はそうした新興国の成長力に依存しているのではないかと思います。実は、当社がビッグデータを利用してリサーチしている新興国の小型株には、地元の“おらが自慢”企業といいますか、地力のある地元企業が含まれています。

先進国の成長企業と世界的に名の知られていない地元企業は、あまり競合関係にないので、双方がともに成長していくことができる領域だと思います。

山本

日本のホンダもソニーも、元は小さな町工場からスタートして大企業になりました。新興国の中にも、いまは小さいけれど今後大きく成長する企業があるはずで、おそらく日本よりもそうした企業は多いのではないかと思いますよね。ユニコーン企業の数も、日本より東南アジア諸国のほうが現状でも多いですし、そういった中小企業を発掘できるというのは、ビッグデータを利用したリサーチならではですね。

齋藤

そうですね。まだ名の知られていない新興国小型株を見つけ、投資をしていく魅力はそこにあります。ただ注意したいのは、全ての企業に伸び代がある訳ではないということです。そのため、常に銘柄をウォッチし続けることが大事です。

中国のように、自国の需要だけでいきなり世界的大企業にまで成長した事例というのは、他の新興国では今後ほぼ出て来ないと思います。

山本

新興国全体の株式時価総額を見ると、中国株が占める比率が圧倒的に大きいですよね。

齋藤

はい。新興国全体を捉えようとすると、どうしても時価総額が大きい中国や台湾、韓国の大手テクノロジー企業などの大型株が大部分を占めるため、大企業へのエクスポージャーを取らざるを得ない、という問題にぶつかります。そこで、当社では、新興国の小型株に限定してリサーチ・運用することにしたのです。すると当然ながらですが、ビッグプレーヤーは少なくなって、非常に多くの国の様々な業種に分散投資できるということが確認できたのです。

 

「ビッグデータ新興国小型株ファンド」について

山本

新興国株投資で、ユニークかつ高いパフォーマンスが期待できるファンドを組成できないかと考えていた時に、齋藤部長からそうしたお話を聞き、実にユニークで面白そうだと思いました。そして、2019年10月31日に設定したのが、「ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)」です。

「先進国の大企業をリサーチしているアナリストの数は大体20~30名、GAFAMではそれ以上いて、もう十分に調べ尽くされている。対して、新興国の小型企業をリサーチしているアナリストは多くても3~4名程度、ゼロという場合も珍しくない。そんな銘柄がざらにあるからこそ、定量のビッグデータ分析が効果を発揮する」という説明を受けました。

また、過去のデータを元に行なったシミュレーションの結果において、リターンだけでなく、投資効率(シャープ・レシオ)が優れていたのも魅力でした。一般的に、新興国は『ハイリスク・ハイリターン』になりがちですが、この「ビッグデータ新興国小型株ファンド」は、リスクがコントロールされていて、投資効率が非常に良いことが分かりました。そんな経緯で「是非、一緒にやりましょう」となった訳です。

ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)の費用・リスク等はこちら

齋藤

高度な数学的手法やモデルをベースにマーケットを数量的に分析して行なわれる「クオンツ運用」は、最近あまり注目されることがありませんが、私どもアクサ・インベストメント・マネージャーズ(以下、アクサIM)は、元々こうした定量モデルを開発したり、リスク分析を行なったりということをかなり早い段階から行なっていました。新興国の小型株にはとくに自信を持っているので、ご提案させていただきました。

投資効率で言うと、ビッグデータで優良企業を見つけることももちろん大事ですけど、その組み合わせをどう作るかというところも、定量的な判断、クオンツの判断が重要なポイントとなってきます。

良い銘柄を全部買うとか、一番いいものだけを買うという訳では当然ありませんので、マーケットの環境も踏まえた上で、それを常に最適化して持っておくということも同じくらい大事だと考えています。

新興国小型株投資のポイント① ~リスクをコントロールする~

山本

このファンドの良さの一つに、リスクを抑えるために業種をかなり分散しているということが挙げられます。例えば、最近はITなど特定の業種に偏っているファンドも多く見られますが、この「ビッグデータ新興国小型株ファンド」については、国や業種がかなり分散されています。限定されたセクター、国、銘柄だけにバイアスをかけることなく、リスクを薄く広く分散した運用を行なうファンドだと思います。

齋藤

そうですね。新興国の企業は若い企業がほとんどですから、いきなり世界を席巻するような技術がポンと出てくるようなことはあまり期待できません。また、新興国は、政府の支援もあり金融セクターの時価総額が大きい傾向にありますが、小型株ということで限定すると、金融セクターがそんなに多くは入ってきません。結果として、非常にバランスが取れたポートフォリオになってきます。

山本

確かに、新興国株投資は「金融」と「不動産」セクターに偏ってしまうイメージがありますが、このファンドは違いますよね。

齋藤

はい。「金融」も「不動産」も、コングロマリット(=複数の事業を運営する多角化経営企業)化していくと、あまり特徴的なものは出てこない。キラリと光る部分に加え、しっかりした利益成長が期待できる企業を探していくと、そういった業種は上がってこないんです。むしろ、財務内容が分かりやすく、シンプルな事業モデルの企業が相対的に多く含まれるという傾向があります。

山本

確かに、複合的な事業を運営する企業だと、仮にPER(株価収益率)が低かったとしても、本当にそれが正しく実態を反映しているかは分かりにくいですね。これはリスクを抑えるという点においても、かなり大事なことだと思います。2019年10月31日に設定された「ビッグデータ新興国小型株ファンド」の設定来の運用実績(1.5年シャープ・レシオ)を見てみると、公募株式投信の新興国株式カテゴリー*計224ファンドの中で、当ファンドは第1位(2021年9月末時点)となっています。

新興国小型株投資のポイント② ~ポートフォリオを管理する~

齋藤

流動性もかなり意識しています。おそらく、ビッグデータで新興国の小型株というジャンルを運用している会社は、私どもくらいではないでしょうか。ビッグデータと聞くと、データがあればどこでもできるだろうと思われがちですが、データそのものをしっかり自分たちで持てていないと、データ処理すらもできないと思っています。このビッグデータ運用では、想像以上のリターンが出やすいということも実績から出てきており、先進国のモデルではあまり想像ができないようなプレミアム感というか、α(市場平均に対する超過リターン)の追求ができると考えています。

山本

当ファンドは2021年9月30日現在で473銘柄に投資しており、組入銘柄のうち比率が最も大きい銘柄でも0.9%と、かなり分散されています。他のファンドでは、組入比率が大きいもので9%といったものも最近目にしますので、当ファンドの組入銘柄は本当に細かい!と思います。しかも、この上位10銘柄について、私自身あまり聞いたことがない銘柄です(笑)。

齋藤

実のところ、私も聞いたことがないような銘柄が次から次へと出てきます(笑)。ですので、恐らくそこがなかなか人気化しにくい、まだまだこれからの領域かなと思っています。有名な企業であれば、かなり多くのアナリストが分析していて、その情報が世の中に広まっているということですから、それらを出し抜いてリターンをより大きく取るということは、なかなか簡単ではない領域だと言えます。

山本

投資家や運用会社の人間が、その名前やビジネスモデルをよく知らなくても、投資するに値する会社というのは世界にはまだまだいっぱいある。とりわけアナリストがカバーしていない新興国には、私たちの知らないところでそんな銘柄が豊富に存在している。そういう理解でいいですよね?

齋藤

はい。逆に「ビッグデータから上がってくる銘柄を見ていると、こんなことをやっている企業がこの国にはあるんだ」といった“新興国再発見”みたいなアプローチができるはずですので、非常に面白いと思います。

ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)の費用・リスク等はこちら

山本

私がもう一つ面白いと思うのは、組入上位銘柄が頻繁に入れ替わっているところです。機敏に利益を取りながら、上手くリスク管理をされているという印象ですね。

齋藤

組入比率が低い銘柄ばかりということで、ちょっとした株価変動でも組入上位の銘柄が比較的頻繁に変わってしまいます。株価や企業の財務状況によって銘柄の良し悪しは変わりますし、この分野では10~20年確信を持ってというのは難しいので、足元の環境を見つつ、いい銘柄を常に見極めながら組み入れていくというプロセスです。母集団の中に魅力的な銘柄はいっぱいありますから、それを常に見直していくと、結果的に銘柄の入れ替わりが多くなるものだとお考えいただきたいです。

山本

ポートフォリオ構築プロセスについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

齋藤

考え方としては、個別銘柄を積み上げていくボトムアップ・アプローチです。対象とする企業は5,500社ほどです。企業ごとに約200項目の財務データを分析し、それぞれの財務データがその業界の平均値に比べていいのかどうかということを一つずつ相対評価していった結果、この銘柄は買ってもいいよ、少し高いよというシグナルが出てくるとお考えいただければいいと思います。

約5,500銘柄を集計していくと、場合によっては、ある業種だけが買いシグナルが多く出るといったことも当然あります。それをある程度ポートフォリオとして組んだ時のリスクがコントロールされるように、業種や国、通貨などを分散し最適化するモデルというのを、もう一つ別に走らせています。基本はボトムアップ・アプローチですから、マクロの判断はここには入れません。すべて個別の企業の財務状況から判断し、業種や国、通貨などを調整しながら、銘柄を絞り込んでいくという考え方です。

ビッグデータを使う分析の手法というのは、ファンドマネージャー個人の裁量が一切働きませんので、思い入れというものがありません。データでバサッとやってしまうというのも、リスクを抑えるポートフォリオを組むという意味では、非常に強みとなる要素だと思います。

山本

ファンドマネージャーが定性運用を行なうファンドとは真逆ですね。

齋藤

定性判断と定量判断にはそれぞれの良さあると思います。このファンドが投資対象とする新興国小型株という領域は、人が定性で評価するには大きすぎるマーケットであり未知の領域です。だからこそ、まずデータで切り込むという考えが充分に機能するのだと思います。

山本

現在、国内の公募株式にもビッグデータを利用したファンドはありますが、ほぼ先進国や日本株を対象としたものです。新興国の小型株を対象とした当ファンドはまさに、ユニークでかつ、フロントランナーですね。

「ビッグデータ新興国小型株ファンド」を資産運用の選択肢に

山本

投資家の皆さまにとって、新興国小型株への投資はメインディッシュとはなり得ないかもしれませんが、サテライト的に一定比率を長期的視点で取り入れてみるという考え方は、ぜひご検討いただきたいですね。現在、先進国にのみ投資されている投資家の方には、ぜひお持ちいただきたいファンドです。

齋藤

そうですね。特に、長期で構えられている個人の投資家の方にぜひ注目していただきたいです。長く持った時のリターンの期待というのは、他の市場よりも圧倒的に高いだろうと思います。

「気づいたらこんなに上がっていた」ということも十分期待いただけると思いますし、積立投資でもいいかもしれません。

 

「ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)」の詳細はこちら(日興アセットHP)」

ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)の費用・リスク等はこちら

※個別の銘柄の取引を推奨するものではありません。また、将来の組入れを保証するものではありません。

※対談に掲載されている各種数値・データは対談時の日時(2021年10月16日)時点のものとなります。

 投資者の皆様の投資元金は保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元金を割り込むことがあります。ファンドの運用による損益はすべて投資者(受益者)の皆様に帰属します。なお、当ファンドは預貯金とは異なります。 当ファンドは、主に株式を実質的な投資対象としますので、株式の価格の下落や、株式の発行体の財務状況や業績の悪化などの影響により、基準価額が下落し、損失を被ることがあります。また、外貨建資産に投資する場合には、為替の変動により損失を被ることがあります。

 主なリスクはつぎの通りです。【価格変動リスク】【流動性リスク】【信用リスク】【為替変動リスク】【カントリー・リスク】 ※ファンドが投資対象とする投資信託証券は、これらの影響を受けて価格が変動しますので、ファンド自身にもこれらのリスクがあります。※詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。※基準価額の変動要因は、上記に限定されるものではありません。

 当資料は、投資者の皆様に「ビッグデータ新興国小型株ファンド(1年決算型)」へのご理解を高めていただくことを目的として、日興アセットマネジメントが作成した販売用資料です。

 当ファンドをお申込みの際には、投資信託説明書(交付目論見書)などを販売会社よりお渡ししますので、内容を必ずご確認の上、お客様ご自身でご判断ください。

【手数料等の概要】投資者の皆様には、つぎの費用をご負担いただきます。<申込時、換金時にご負担いただく費用>購入時手数料:購入時の基準価額に対し3.3%(税抜3%)以内 ※購入時手数料は販売会社が定めます。詳しくは、販売会社にお問い合わせください。※収益分配金の再投資により取得する口数については、購入時手数料はかかりません。換金手数料:ありません。信託財産留保額:ありません。 <信託財産で間接的にご負担いただく(ファンドから支払われる)費用>運用管理費用(信託報酬):純資産総額に対し年率1.892%(税抜1.72%)程度が実質的な信託報酬となります。信託報酬率の内訳は、当ファンドの信託報酬率が年率1.1825%(税抜1.075%)、投資対象となる投資信託証券の組入れに係る信託報酬率が年率0.7095%(税抜0.645%)程度となります。 その他の費用・手数料:目論見書などの作成・交付および計理等の業務に係る費用(業務委託する場合の委託費用を含みます。)、監査費用などについては、ファンドの日々の純資産総額に対して年率0.1%を乗じた額の信託期間を通じた合計を上限とする額が信託財産から支払われます。組入有価証券の売買委託手数料、借入金の利息および立替金の利息などがその都度、信託財産から支払われます。

※運用状況などにより変動するものであり、事前に料率、上限額などを表示することはできません。

※投資者の皆様にご負担いただくファンドの費用などの合計額については、保有期間や運用の状況などに応じて異なりますので、表示することができません。※詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。

 

※本記事はPR記事です。

原辰徳、落合博満…ビジネスでも使える、歴代名将の“人をやる気にさせる”名言

 新庄剛志“ビッグボス”の躍進が止まらない。11月4日に行ったド派手すぎる記者会見で周囲の度肝を抜くと、その翌週には北海道日本ハムファイターズの秋季キャンプ先である沖縄へ向かい、選手たちを電撃視察。午前中は真っ赤なジャージ、午後は真っ黒なジャージというファッションに身を包み、選手たちに熱血指導を行った。練習後には選手たちがグラウンドを去る中で、トンボを携え整備にいそしむなど、その一挙手一投足が注目されている。

 派手なファッションに代表されるように、新庄の行動は常に周囲を引き付けているが、同時に感じたのは言葉の強さ。「優勝は狙わない」という発言の裏には、全選手が横並びであることを示唆する“レギュラー白紙”の意図があるのだろう。そして、「全国区の選手が3~4人出てくれば強くなる」など、派手さだけでなく事の本質を捉えたコメントで、早くも話題になっている。

 その秋季キャンプでは早速、悩めるスラッガー、清宮幸太郎に対し「ちょっとデブじゃね?」から始まる減量指令を出したことでも話題に。文字にすると少々厳しく見えるが、選手をやる気にさせるには十分な言葉と言える。

 名将と言われる監督に必須の条件とも言えるのが、言葉の強さ。選手たちの眠った闘志を奮い立たせ、いかにやる気にさせるかはもちろん、ここ一番というところでチームをまとめ上げるために、重みのある一言をスッと言えることが肝要となる。少なくとも現時点の新庄には、そんな名将の素養を感じる。

 そこで、歴代の名将たちが残した名言を振り返ってみよう。

サラリーマンにも通じる、名監督の優れた言葉

 ここから紹介するのは、球界を代表する歴代監督の主な名言。いずれも、部下を率いてチームをまとめ上げるリーダーとしての発言と考えると、実に優れたものが多い。

「『どうするか』を考えない人に、『どうなるか』は見えない」(野村克也)

 プロ野球史上に残る名将として名高い野村克也。監督時代は選手自らに考えさせることを常に徹底していたが、その理由がこれだ。自ら目的意識を持つことで、やるべきことが明確になり、ひいては目指している目標や夢に近づくということを表している。

 ただ漠然と日々を過ごすのではなく、常に目的意識を持つべき、という考えは新庄の発言にも通じるところがある。

「人は教えるということ、教育するということで育つものなのだ」(広岡達朗)

「管理野球」を標榜し、ヤクルトスワローズ、西武ライオンズを強豪チームへと変身させた広岡達朗。文字通り軍隊式の野球スタイルが印象深いが、この言葉が生まれたのは広島東洋カープの内野守備コーチ時代のこと。

 当時、外野手だった苑田聡彦の内野へのコンバートが決まり、広岡はその指導につきっきりに。まるでセンスがないと判断した広岡は何度もさじを投げそうになったが、監督である根本陸夫の指示に従い最後まで指導した結果、苑田は広島の内野守備の要にまで急成長。その際、広岡は選手指導の際に根気強く教える、教育することの大切さを痛感したという。

「働き場を与えれば、人は動く」(落合博満

 落合博満は中日ドラゴンズの監督を8年も務め、2007年には53年ぶりの日本一へと導いた、近年きっての名将。そんな彼の名言と言えばこれだ。どんな選手にも働き場所を与えなければ行き場を失い腐ってしまうし、一方で働き場所を与えることで選手は成長を遂げる、ということを表している。

 中日監督時代の落合を振り返ると、要所要所で起用した選手がピタリとハマる采配が印象深いが、そのベースとなっていたのはこの考えなのかもしれない。

「オレも人間。君たちも人間なんだ」(原辰徳

 現役の読売ジャイアンツ(以下、巨人)監督で屈指の実績を誇る原辰徳もまた、こんな名言を残している。

 自分自身を過信しすぎないこと、あくまでただ一人の人間であるということを明確にした上で、選手たちもまた同じ人間であると語っているが、それゆえ「お互いに平等」という考えにつながっていくと言える。

「お前は気が弱いんじゃない。気が優しいんだ」(藤田元司)

 巨人を二度の日本一へと導いた藤田元司。長嶋茂雄、王貞治といったスター監督のつなぎとして指揮を執ることが多かったが、その実績は折り紙付き。中でも、選手育成に長けていたことで知られる。

 プロ入り以来、「ノミの心臓」とも言われた気の弱さが大成を阻んでいた斎藤雅樹に藤田がかけたのが、この言葉。気が弱い=優しい性格と言い換えたことで斎藤自身の意識も変わったか、以降はエースとして急成長。通算180勝を挙げた「平成の大エース」は、この名言なくしては生まれなかったといってもいいだろう。

 ちなみに、藤田は西武からトレード移籍してきた直後の大久保博元に体重を絞らせる際、あえて「痩せろ」という直接的な言葉を使わず、「その体を保つにはうんと走らないとな」と遠回しに伝えた。同じ減量指令でも、清宮に対して真逆の言い方をした新庄ビッグボス。その結果がどうなるか、注目される。

(文=福嶌弘/フリーライター)

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「直ちに違法とはいえない」パチンコ独自の“交換システム”… その起源と実態を大御所ライター2人が解説

 我が国日本では、基本的に「博打・ギャンブル」は法律によって禁止されている。ただし、一部の例外はあり、競馬や競輪、ボートレースやオートレースといった公営競技は、それぞれの目的で収益を使用することで認められている。

 もちろんパチンコは、その例外に含まれていない。では、なぜ換金システムが許されているのか。ヒロシ・ヤング氏が主宰するYouTubeチャンネル「ヤングちゃん、寝る」内の動画「誰でも分かる【換金システム】講座!違法!?合法!?三店方式の起源と実態をベテラン2人が教えます!」では、この疑問について詳しく解説している。

 刑法185条賭博罪の中には「一時の娯楽に供するものは賭博罪の適用を除外する」といった一文がある。ヤング氏及び共演した大崎一万発氏曰く、パチンコはこれに該当するようで、国内で「遊んで景品を出す」というのが許されているのはパチンコのみ。その理由は、パチンコは現行の法律が整備される前からお菓子などを景品として提供しており、それを追認の形で風営法が確立されたことで、パチンコの景品交換は除外されたそうだ。

 だが、そのうち沢山得た景品を買い取る業者が出現。これに反社会的勢力が関与するようになったことで、ひねり出された策が「三店方式」というパチンコ独自の換金システムだという。

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 つまり、この三店方式は法律的に認められて始まったわけではなく、実質的に横行していた換金を「グレー」から「白」へ移行させるための策。大阪府警OBで退官後に心斎橋でパチンコ店を開業した水島年得氏が1961年に考案したもので、反社会勢力の資金源を断ち、戦争未亡人や障害を持った方々の雇用場所を確保する目的もあったそうだ。

 当時におけるパチンコの規模や出玉性能は、「ギャンブル」と言えるほどのものではなかった。それが、パチンコのフィーバー機などの台頭で規模や出玉性能が大幅にアップするも、法整備が追い付いていないのが現状で、この三店方式は「直ちに違法とは言えない」という位置付けなのだそうだ。

 ちなみに、三店方式とはホールで客が出玉を特殊景品に交換→その特殊景品を近所にある専門の古物商に売却→その古物商は貯まった特殊景品を問屋に売却→その問屋は買い取った景品をホールに卸す…といった仕組み。3つの業者を介していることから三店方式と呼ばれ、仮にホールと古物商が直接取引をした場合は違法となる。

 ぼんやりと理解はしているものの、多くの人は詳しく知らないパチンコ独自の換金システム。興味のある方は、是非とも動画をチェックしていただきたい。

【香港ヴァーズ(G1)展望】父ステイゴールドの感動20年ぶり再現なるか。“善戦マン” ステイフーリッシュがたどり着いた「黄金旅程」の果て

 12日には香港のシャティン競馬場で4つのG1からなる「香港国際競走」が開催される。最初に行われるのは2400mの距離で争われる『香港ヴァーズ』。日本からはグローリーヴェイズとステイフーリッシュの2頭が出走を予定している。

 先月のジャパンC(G1)に出走したアイルランドのブルームが故障で回避したため、今年は8頭立てという少頭数となった。

 2年前の覇者グローリーヴェイズ(牡6歳、美浦・尾関知人厩舎)は、2年ぶりのG1制覇に向けて満を持して登場する。鞍上には2年前と同じJ.モレイラ騎手が配された。

 香港ジョッキークラブが発表するレーティングでは出走8頭中2位となる「120」を獲得。昨秋の京都大賞典(G2)を制して以降は勝ち鞍こそないが、4戦して掲示板を外すことなく堅実に走っている。

 今年は金鯱賞(G2)で4着した後、今回と同じシャティン競馬場が舞台のQE2世C(G1)に挑戦。日本馬が上位を独占するなか、勝ったラヴズオンリーユーに3/4馬身差の2着に入り、デアリングタクトとキセキには先着した。

 この秋はオールカマー(G2)で始動。スタートで立ち遅れ、後方からの競馬となったが、向正面で一気に捲って見せ場を作ると、3着に粘り込んだ。

 その後はジャパンCとの両睨みだったが、陣営は実績がある香港への遠征を選択。12年レッドカドー以来となる6歳馬による勝利を手繰り寄せることはできるか。

 グローリーヴェイズを上回る「121」というレーティングを誇るのはパイルドライヴァー(牡4歳・イギリス)だ。

 デビュー以来、1390m~2410mという幅広い距離で勝ち鞍があるが、最も安定しているのが2400m前後。今年初戦こそ2着に敗れたが、その後はG1とリステッド競走を2連勝中。

 今年は春2戦、秋1戦の計3戦しかしておらず、力を出し切れるフレッシュな状態にあるのは好材料だ。イギリス調教馬として、12年のレッドカドー以来となる当レース制覇を狙う。

 レーティングだけを見ればグローリーヴェイズとパイルドライヴァーの2強という様相だが、2頭目の日本馬ステイフーリッシュ(牡6歳、栗東・矢作芳人厩舎)にもチャンスがある。

 出走を予定している8頭中レーティングは4位タイの「112」。3年半前の京都新聞杯(G2)を最後に勝利から遠ざかっているが、G2レースを中心に好走を続けている。

 今年2戦目の京都記念(G2)では、香港カップでG1・4勝目を狙う僚馬ラヴズオンリーユーの2着。休み明けの札幌記念(G2)では心房細動で競走中止というアクシデントはあったが、すぐに立て直され、すでにこの秋3戦を消化している。

 そのタフネスぶりは父を彷彿とさせる。父のステイゴールドは種牡馬として数多くのG1馬を送り出したが、現役時代はなかなかG1制覇には届かず、稀代のシルバーコレクターとして名を馳せた。唯一のG1制覇が引退レースとなった01年の香港ヴァーズだった。

 あれから20年。その息子ステイフーリッシュは父の記憶を呼び起こすことはできるか。そして、今年の米ブリーダーズCで2勝した世界の矢作厩舎が再びその名を轟かせることはできるか。鞍上は地元・香港のC.ホー騎手が務める。

 日本馬が不在だった昨年の当レースの覇者モーグル(牡4歳、アイルランド)も怖い存在だ。4歳となった今年は4戦して「0-0-1-3」と調子を落としているが、1年ぶりの香港で、07-08年ドクターディーノ以来の連覇を狙う。

 他には、紅一点で、2走前のサンクルー大賞(G1)ではブルームと1馬身差の2着に健闘したエベイラ(牝4歳、フランス)、昨年の当レース3着馬コロンバスカウンティ(セ6歳、香港)などが上位をうかがう。

 やや寂しい頭数となった今年の香港ヴァーズ。グローリーヴェイズが2年ぶり制覇を遂げるか、それともステイフーリッシュの親子制覇はあるか。発走は12日15時(日本時間)を予定している。