パチスロ「累計10万Gオーバー」で初の“設定6濃厚台”を掴むも… ゴリゴリの高設定台を閉店まで粘った結果は?

 ひろ吉のパチスロ「実戦」紹介。今回はアクロスブランドの「A PROJECT」第9弾、初代4号機でも人気を博した『アレックス』について書いていきたい。

 本機はボーナスのみで出玉を増やすノーマルタイプ。ボーナスは「BIG(最大335枚)」と「REG(最大116枚)」の2種類で、どちらも一度だけ技術介入をすることで最大枚数を獲得できる。

 ボーナスは出目によるリーチ目の他、予告音や消灯、フラッシュの組み合わせによって察知。全体的な完成度は非常に高く、往年の名機をリバイバルするアクロスらしい仕上りとなっている。

 さて、さっさく本題の実戦内容を紹介しよう。

【注目記事】
パチンコ「最短決着の天国」に高まる期待感! 激アツ新台の最新情報!!
パチンコ2月も激アツ新台が続々…「RUSH突入率100%×平均7230発」の超大物にも熱視線!! 

 この日は夕方からの実戦。特に期待できる日ではなかったため、高確率で推定設定2を使ってくれている『アレックス』に着席した。なお、このお店で高設定が入ることはほとんどない。それゆえ、夕方でも朝イチ0回転からのスタートだ。

 実戦開始後、投資100枚でリーチ目が出現してREGをゲット。早い当りは嬉しいが、まずはBIGで出玉を確保したい……そう思っていると、ボーナス後わずか6GでBIGに当選。さらに、このBIG中になんとハズレが出現したのだ。(BIG中のハズレ確率、設定1.2:1/16384.0、設定5:1/595.8、設定6:1/1191.6)。いきなり設定5・6の期待度がグッと跳ね上がった。もちろん、確定ではないので安心はできないが、しっかりと設定判別をしながらぶん回そうと決意した。

 そこから100G以内にBIGを2回引き出玉を増やしていく。その後は大きなハマりこそないものの、浅いゲーム数で立て続けにREGを引き、900枚ほどあった出玉は飲まれかけてしまう。ただ、1200回転の時点で羽確率は「約1/10.9(羽確率:1/13.9~1/12.7)」とぶっちぎりの高設定域ということで、設定5・6の期待がさらに高まっていく。

 その後、BIG間ハマりが1000Gに近付いてきたところで、久々のBIGを引き、なんとか追加投資は回避できた。そしてこの「BIG」中に「JAC役E(JAC約E確率、設定2・6:1/595.8、設定5:1/1191.6)」を引き、設定2以上が確定した。

 設定推定要素だけを見ると、文句なしの高設定台だが、ボーナスだけはかなり重く肝心の出玉がなかなか伸びない。その後、BIG中のハズレがふたたび出現して設定5・6を確信するが、200G~300Gハマりのボーナス当選が続き、持ちメダルはついにゼロ……。閉店間際だったのでここで実戦を終えた。投資100枚、回収なしという非常に残念な結果だ。

 結果的に負けてしまったが、実戦データとしては、通常時5280GでBIG16回、REG17回、合算確率は「1/160(ボーナス合算確率:1/165.5~1/142.5)」、羽は447回で「約1/11.8」。

 BIG中(計384G消化)での数値については、JAC役Cが81回の「1/4.7(設定1・5:1/6.4、設定2・6:1/5.3)」、JAC役Dは14回で「約1/27.4(設定1・6:1/26.7、設定2:1/32.0、設定5:1/22.9)」、JAC役Eは1回、そしてハズレは2回。羽の確率やBIG中の成立役を見る限り、ほぼほぼ設定6と言っても良い数値となった。

 これまで 『アレックス』を10万回転以上回してきたが、いままで設定6と思える台を掴んだことはなかっただけに、今回の結果は残念だ。ただ、ボーナスのヒキが悪くても、すぐにコインが飲まれない点はさすが高設定といったところ。負けてしまったが、最後の最後で高設定を打つことができたので満足だ。

(文=ひろ吉)

<著者プロフィール>

 IT業界の世界に興味を抱き、iPhoneアプリの開発を4年程経験。その後、WEBマーケティングの知識や経験を重ねてきた。パチンコ・パチスロのヘビーユーザーであり、機種のスペック等の研究に時間を注いでいる。現在はパチMAXにて、パチンコやスロットの考察記事・実戦記事をメインに作成中。自身が好む低純増・低ベース機の動向にも注目している。

2月4日は世界対がんデー。自分らしく生きるがんサバイバーの笑顔と言葉を霞が関コモンゲートに展示

がんになっても笑顔で暮らせる社会を目指すプロジェクト「LAVENDER RING」は、48名の働くがんサバイバーの笑顔ポスターと、8名のリアルボイスの展示を霞が関コンモゲートにて行っている。「LAVENDER RING」は電通の社員有志が、資生堂・認定NPO法人キャンサーネットジャパンと共に参加しているもので、昨年の世界対がんデーにフォトブック『自分らしく、を生きていく。-がんとともに生きる206人の笑顔と想い-』を刊行。展示はこのフォトブックをもとにしている。展示は2022年1月31日(月)~2月10日(木)まで。

世界対がんデー 展示

書籍『自分らしく、を生きていく。がんとともに生きる206人の笑顔と想い』について
LAVENDER RINGの発足から約4年間の活動の軌跡と、発足と同時にスタートした人気イベント「MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」で制作したポスターを一冊にまとめたフォトブック。2021年2月4日世界対がんデーにハースト婦人画報社より刊行。

これまで参加された総勢206名のがんサバイバーは、子どもから、子育てに奮闘するママ、プロのフットサルプレイヤーやモデル、看護師・医師まで、実に多様。病気になってから「生きること」と向き合った結果、紡ぎ出されたそれぞれの哲学。がんサバイバーや、その家族やご友人などの支援者、そして人生に悩む人すべての人をも勇気づける一冊となっている。二人にひとりががんになる日本で、この本が関係ない人は、存在しないと言えるだろう。

世界対がんデー 展示本の詳細はこちら


LAVENDER RINGについて
LAVENDER RINGは、がんになっても笑顔で暮らせる社会を目指して2017年に発足。企業や人、行政、学校、病院など、活動の主旨に賛同した有志が自由に参加し、それぞれが「できること」を持ち寄りながら、がんになっても笑顔で暮らせる社会の実現を目指して具体的なアクションを起こしていく場である。がんは種類によって、国際的に定められたシンボルカラーがある中、LAVENDER RINGが掲げる「ラベンダー」は、すべてのがん種を示す色。LAVENDER RINGは「私たちの想いが、がん患者だけでなく、その輪が家族や医療関係者、友人や同僚を超えて広がっていくように」と願いつけた名前である。
 

パチンコ「最短決着の天国」に高まる期待感! 激アツ新台の最新情報!!

 パチンコ新台『P真・花の慶次3』が導入されたばかりのニューギンから、早くも次の新機種が登場するようだ。機種のホームページが公開されたのは、愛らしい動物たちが大活躍する癒やし系マシン『野生の王国』のシリーズ最新作『P野生の王国どらむサファリ』である。

 名前からもわかるように、あの横スクロール5ラインが特徴的だった『野生の王国』がドラム機に大変身。「史上最高峰のにぎやかな」ドラムマシンが完成したという。

 最大の特徴となるのはそのドラムの下に搭載された火山ギミック。リアルに再現された巨大な山が噴火すると動物群が盤面全体に出現する仕掛けも施され、信頼度と興奮が大爆発するのだ。

 ほかにもおなじみの「ピー助」が保留を変化させる役物として活躍したり、ビッグ肉球ランプやビッグSUNフラッシュといった光で演出を盛り上げたりと壮大なスケールのマシンとなっているようである。

【注目記事】
パチンコ初代『北斗無双』をラスト実戦! 人生最後の幻闘RUSHの結果は!?
パチンコ新台「約91%継続のRUSH直行!?」となる新エンジン搭載! 新時代に左打ち革命が巻き起こる!?

 また、『野生の王国』シリーズ初搭載となる懐メロソングも収録されている。その楽曲は川本真琴の「1/2」とLINDBERGの「今すぐKiss Me」、そしてclassの「夏の日の1993」の3曲だ。

 このラインナップをみると奥村遊機の甘デジを思い出すパチンカーも少なからずいそうだが、れっきとした令和4年製のP機。アナログ感は多少あるかもしれないが、ノスタルジックな要素はそれほどない!?

 また、同じく新機種『Pとある科学の超電磁砲』が好調の藤商事からまたまた新機種に関する情報が自身の公式You Tubeチャンネルにて公開された。

 新機種予告の第1弾として公開された動画はティザーPVで、「天国」の二文字を強調した映像が展開。そして「加速する最短決着(スピードゲーム)の時代へ」のキャッチコピーが追随する構成になっている。

 これは現在人気となっている3カウントで大当りが発生する超高速RUSHについて言及しているようにも思えるが、気になるのは「天国」の文字である。

 パチンコで連想するのは「天国モード」にほかならないが、多種多様なゲーム性が勃興しているP機。詳細は不明だが「ついに天国モードを再現?」と期待してしまう内容であった。

 他方、藤商事つながりで気になる情報もある。それは検定通過情報で、1月分のなかに『Pアレジンプレミアム』という名の機種が存在。かつて同社の十八番であったアレンジボールの名機がP機で復活。たしかにアレンジボールは出玉性能とスピート感が飛び抜けていた。伝説の復活を見ることができそうである。

(文=大森町男)

<著者プロフィール>

 羽根物によってパチンコの魅力にとり憑かれ、パチンコ雑誌を製作する編集プロダクションに入社。パチンコに関する記事作りや編集業務に携わる。編集長としてファン雑誌の制作に取り組むなどの経験を活かし、その後は携帯サイトやweb、動画コンテンツなど幅広いパチンコメディアに従事。現在はフリーランスのパチンコライターとして活動。パチMaxを中心に消極的に執筆の場を広げている。

JRA 牝馬クラシック「相棒不在」のC.ルメールが余裕の海外渡航!? 桜花賞トライアル「騎乗不可」でも平気なワケ

 今週末にきさらぎ賞(G3)が予定されているように、徐々にクラシックへつながる3歳重賞の開催が目立ってきた。来週にはクイーンC(G3)、共同通信杯(G3)も行なわれるだけに、各々の騎手はここで結果を出して、本番のお手馬確保といきたいところだろう。

 そんななか、パートナー確保に苦戦しているように映るのが、意外にも5年連続リーディングのC.ルメール騎手だ。

 同騎手は昨年11月の東京スポーツ杯2歳S(G2)をイクイノックスで制したのを最後に、現在3歳世代の重賞を6連敗中。トップジョッキーといえども、調子が上がらないケースは珍しくないが、連敗時の騎乗馬の人気が全て1・2番人気となれば、話は別になってくるだろう。

 特に深刻なのが牝馬のお手馬探しだ。ルメール騎手は昨年2歳重賞を3勝しているが、その全てが牡馬。一方、牝馬では未勝利で、馬券に絡んだのも2着1回と、なかなか勝てない状況が続いている。牡馬はすでにイクイノックスを確保しているが、牝馬は賞金面や能力面に不安の残る馬が多く、本番でどの馬に騎乗するかは不鮮明な状況だ。

 それゆえ、これから行われる桜花賞(G1)のステップレースである3歳牝馬重賞は、騎乗馬のクラシック出走を確実にするためにも、どれも落とせない一戦になってくるだろう。しかし、先日ルメール騎手が桜花賞と同じ舞台で行われるチューリップ賞(G2)に騎乗しないことが判明した。

 同騎手は今月26日、サウジアラビアで行われるサウジダービー(G3)に出走予定のコンシリエーレの鞍上に決まったのだ。サウジアラビアに渡航することは、すなわち帰国後に自宅または宿泊施設に待機する必要があるため、期間中のレースに騎乗できない。

 現在の待機期間は7日間と、以前から短縮されているため、比較的早い段階で復帰することができる。ただ、チューリップ賞はサウジダービーの翌週に控えているため、ルメール騎手は騎乗不可の見通しだ。

 ここでルメール騎手の牝馬クラシック相棒候補から一歩後退したと考えられるのが、阪神JF(G1)でコンビを組んだステルナティーア(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)だ。

 同馬はルメール騎手が不在のチューリップ賞で始動予定。また、デビュー2戦は福永祐一騎手が手綱を取り、前走は香港渡航で騎乗できずルメール騎手に渡った経緯も踏まえると、ステルナティーアでクラシックに臨む可能性は低いだろう。

 2歳牝馬G1で組んだパートナーが解消となると、いよいよルメール騎手といえども、乗り馬が限られてくる。

 ただ、来週の東京競馬場で行われるクイーンCでは、ソネットフレーズ(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)がスタンバイしている。

「ルメール騎手が昨年騎乗した2歳牝馬で、唯一馬券に絡む活躍をしたのがソネットフレーズです。昨年のデイリー杯2歳S(G2)では、2着と牡馬相手に好走しました。

ステルナティーア継続騎乗の可能性が低い今、ルメール騎手にはソネットフレーズの他に、フォラブリューテ、ラスールといった牝馬のクラシック候補がいます。

前者は紅梅S(L)で鮮やかな差し切り勝ちを収めましたが、アルテミスS(G3)で阪神JF覇者サークルオブライフらに完敗。また、後者は2月東京最終週の条件戦を使う予定ですから、オークス(G1)に照準を合わせているように思えます。

一方のソネットフレーズは、桜花賞と同じ舞台の重賞で、後にG1・2着になるセリフォスら相手に善戦しましたから、能力は相当高いはず。現時点におけるルメール騎手の牝馬クラシックの最有力候補はソネットフレーズだと思います」(競馬誌ライター)

 ソネットフレーズの収得賞金は1150万円と、例年の桜花賞出走ボーダーギリギリのライン。重賞で結果を出せず騎乗馬確保に苦慮したこともあって、クイーンCで是が非でも賞金加算し、桜花賞出走を確実にしたいはず。現在、重賞14連敗中の不調ルメール騎手だが、クイーンCのソネットフレーズに勝利を期待するのもいいかもしれない。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

アサヒビール「マルエフ」大ヒットの秘密…スーパードライに次ぐ看板商品誕生に成功

 アサヒビールは、新しいビール事業の成長戦略を強化し始めた。その一つとして、国内の酒類事業で同社は稼ぎ頭である「スーパードライ」に次ぐ、新しいヒット商品の創出に向けた取り組みがある。また、今後は海外での買収や提携戦略もさらに強化されるだろう。

 それらは、今後の事業環境の変化に対応するために欠かせない。当面の間は世界全体で新型コロナウイルス感染の再拡大が長引くだろう。それによって動線が寸断され、業務用ビール需要が減少する一方で、家庭でのアルコール飲料需要は増えるだろう。コロナ禍の発生によって世界の酒類市場の需要構造が激変する可能性が高い。

 事業環境の不確定要素が増加するなかで、アサヒビールはコスト削減を徹底しつつ、まずは国内の家庭用ビール需要を創出して事業運営の効率性を高めようとしている。今後の世界経済の展開次第では、世界的な業界の再編が進む可能性もある。そうした変化を成長のチャンスにすべく、アサヒビールは財務面のリスク管理を徹底し、事業運営のさらなる効率化に取り組むべき局面を迎えている。

ヒット商品の創出に取り組む経営姿勢

 アサヒビールが、スーパードライに次ぐヒット商品の創出に集中し始めた。その背景には、ビール事業がアサヒビールと親会社のアサヒグループホールディングスにとって稼ぎ頭であることと、国内外での需要構造の変化がある。

 まず、同社のビール事業の現状を確認する。2021年1~9月期の決算内容を確認すると、国際事業(欧州、オセアニア、東南アジアでのビール生産・販売などの事業)と国内の酒類事業は売上収益全体の76%を占める。国際事業に関して、アサヒビールは豪ビール最大手のカールトン・アンド・ユナイテッド・ブルワリーズ(CUB)を買収し、世界のビール市場での競争力を強化している。

 その取り組みの成果やワクチン接種の増加による動線の修復、外国為替市場での円安の進行などを背景に、同期間中の国際事業の収益は前年同期から増加した。その一方で国内の酒類事業は、感染再拡大の影響による飲食店向けのスーパードライの販売減少の影響が大きく、収益が減少した。アサヒビールは家庭用ビール需要の獲得を目指して販促を強化したが、業務用の販売減少を補うには至らなかった。

 次に、コロナ禍の発生によって、世界の酒類市場の需要構造は大きく、かつ急速に変化し始めた。その一例として、国内ビール市場では業務用の需要が減少する一方で、家庭用需要が増加している。感染再拡大は長期化し、家庭でのビール消費量は増加する可能性が高い。アサヒビールが家庭用ビール需要をより多く取り込むためには、新しい需要(スーパードライに次ぐヒット商品)を生み出し、より多くの消費者に、多様かつ満足度の高いビールなどの楽しみ方を提供しなければならない。

 それができれば、人口減少によって国内ビール市場全体が縮小均衡に向かうなかでも、同社が国内酒類事業の成長を目指すことは可能だ。そのために、2022年の事業方針にて同社は最重要ブランドであるスーパードライのフルリニューアルを打ち出した。フルリニューアルの真意は、新しいヒット商品創出を目指すことだろう。

「マルエフ」のヒットのインパクト

 2021年9月、アサヒビールが再販売を開始した「アサヒ生ビール」(通称、マルエフ)のヒットの影響は大きい。マルエフは人気が殺到してわずか3日で休売した。それは、多くの消費者が慣れ親しんだ、スーパードライの鮮烈な“のどごし”とは異なる新しい製品への渇望を示している。

 簡単にマルエフの歴史を振り返ると、1986年2月にアサヒビールはコクとキレを追求したマルエフを発表し、ビール愛好家から高く評価された。その後1987年3月には辛口を売りに発表したスーパードライが大ヒットを遂げた。アサヒビールはスーパードライの生産に集中するために、マルエフ缶の一般向けの供給を停止した。なお、2018年にアサヒ生ビールの缶が期間限定で販売されたことがある。その時は「マルエフ」の呼称は缶に印字されなかった。

 マルエフ投入の背景には、感染再拡大を背景とする消費者心理の変化が大きく影響しただろう。銀色と黒色と赤色の缶デザインによってシャープな味やアクティブな生き方を強調したスーパードライと異なり、マフエフの缶は金色とアイボリー色を基調にしている。その根底には深いコクの提供によってコロナ禍に直面する人々に“やすらぎ”や“癒し”を実感してもらおうという同社の想いがあっただろう。その考えにもとづいたマーケティング戦略も奏功し、マルエフはヒットした。

 また、コロナ禍によって業務用のスーパードライの販売が減少したことによって、アサヒビールはかつての成功体験に浸るのではなく、新しいビール体験の創造に取り組まなければならないという危機感を強くしただろう。コスト削減を進めつつ、「アサヒといえばスーパードライ」というブランド・イメージを変革する嚆矢として、同社はマルエフの復活に踏み切ったと考えられる。そのうえでスーパードライのフルリニューアルが発表され、より多くのヒット商品の創出が目指され始めた。アサヒビールはより迅速に新しい需要を創出する事業運営体制の整備に集中し始めたといってよいだろう。

海外ビール事業の成長に不可欠な買収戦略

 今後の展開として注目したいのが、アサヒビールが国内でさらなるヒット商品を実現して収益を稼ぎ、得られた資金を海外の買収戦略の加速につなげることだ。逆に言えば、同社が世界大手のビールメーカーとしての長期存続を目指すためには、これまで以上のスピードと規模感で海外事業を強化しなければならない。ポイントは、高値掴みを避けて各国・地域で成長期待の高いブランドを持つ企業、あるいは事業を取得することだ。

 徐々にではあるが、アサヒビールは海外で買収戦略を加速させるチャンスを迎えるだろう。米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は、早期の利上げと資産売却に着手する可能性が高い。それによって米国の金利は上昇し、世界的に株価は不安定化する可能性がある。リーマンショック後の世界のビール業界では、2015年に最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)が2位の英SABミラーを710億ポンド(当時の邦貨換算額で13兆円程度)で買収するなど、大型の買収が続いた。

 金利が上昇する環境下での事業運営資金の捻出や中国経済の減速が鮮明化することによる収益の落ち込みなどを背景に、資産の売却を検討する酒類企業は増える可能性がある。それは、アサヒビールが高値掴みを避けつつ成長期待の高い資産を取得してプロダクト・ポートフォリオの拡充と収益の多角化を進める好機になりうる。

 今後の展開を考えると、感染再拡大の長期化によって需要が減少し、収益が想定以上に悪化して過去の買収などに起因する減損を余儀なくされる酒類企業が出現する展開は排除できない。供給制約も深刻化するだろう。コロナ禍の収束後は、世界的に飲食店の酒類需要がコロナ禍以前の水準に戻らないなど、酒類の需要構造は激変するだろう。

 そうした環境変化に対応するために、アサヒビールはコスト削減とリスク管理を徹底する一方で、研究開発や買収戦略を強化してよりスピーディーなヒット商品の創出に取り組まなければならない。そのうえでアサヒビールがどのように国内外でヒット商品を生み出すか、多くの注目が集まるだろう。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

●真壁昭夫/法政大学大学院教授

一橋大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学大学院(修士)。ロンドン証券現地法人勤務、市場営業部、みずほ総合研究所等を経て、信州大学経法学部を歴任、現職に至る。商工会議所政策委員会学識委員、FP協会評議員。

著書・論文

『仮想通貨で銀行が消える日』(祥伝社、2017年4月)

『逆オイルショック』(祥伝社、2016年4月)

『VW不正と中国・ドイツ 経済同盟』、『金融マーケットの法則』(朝日新書、2015年8月)

『AIIBの正体』(祥伝社、2015年7月)

『行動経済学入門』(ダイヤモンド社、2010年4月)他。

 

JRA三冠馬コントレイルに続き、年度代表馬エフフォーリアも天皇賞・春(G1)は「眼中になし」、存在意義を問われる伝統の一戦

 昨年の年度代表馬エフフォーリア(牡4、美浦・鹿戸雄一厩舎)が、今年の始動戦として大阪杯(G1)を予定していることが分かった。

 同馬は現在、福島県のノーザンファーム天栄で放牧中。鹿戸師のコメントによると、大阪杯の結果と状態次第で宝塚記念(G1)参戦も視野に入れているとのこと。現役最強馬の一角を務めたクロノジェネシス、コントレイルらがターフを去った今、今年の競馬界を引っ張る存在として、大きな注目を集めることになる。

 その一方で、陣営が天皇賞・春(G1)について一言も触れなかったことは、当然といえば当然か。2500mという長距離に分類される有馬記念(G1)を圧勝。昨秋の始動戦には、中距離の天皇賞・秋(G1)を選択し、コントレイルやグランアレグリアらの強豪古馬を撃破した。
 
 天皇賞・秋を選択した理由に「体質的に間隔を開けた方がよく、距離延長に不安がある」とエフフォーリア陣営が認めているのなら、3200mの長距離戦を避けたのも、妥当な判断かもしれない。

 ただ自身が参戦しなかった菊花賞(G1)をタイトルホルダーが楽勝したものの、2頭が直接対決した有馬記念の結果を考えた場合、菊花賞回避を逃亡したというよりも、強力古馬と対戦する天皇賞勝利の方が価値のある挑戦だったともいえる。

 しかし、近年の長距離軽視の風潮を完全に決定づけた一因に、大阪杯のG1昇格の影響が、かなり大きかったのではないか。

 2014年から1着馬に天皇賞・春の優先出走権が与えられたように、G2時代の大阪杯は春の大一番に対するトライアルレース的なポジションだった。そのため、同レースをステップにする馬も多く、前哨戦としても少なからず機能していたように感じられる。

 だが、2017年に大阪杯がG1へと昇格して以降は、両レースの立場が逆転。大阪杯の存在は、中距離を求めていた馬にとっての新たなオアシスとなったが、天皇賞・春の存在意義は大きく揺らいだ。

 JRAも大阪杯、天皇賞・春、宝塚記念を春古馬三冠として、同一年にすべてを勝利した馬に対して、特別褒賞金を支給する手立てを用意していたとはいえ、これに挑戦したのはキタサンブラック(2017年に三冠リーチの宝塚記念で敗戦)くらいである。

「秋古馬三冠とされるG1の天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念に比べると、春に中距離馬が目標とするレースが乏しかったことも大きかったですね。距離に不安のある馬にとって天皇賞・春は長い上に、開催時期の遅い宝塚記念は梅雨のシーズン。開催も進んだ重い馬場で道悪のリスクもあるため、秋の調整を考えて回避する陣営も多いです。

これを避けてマイルの安田記念(G1)や、ドバイや香港への海外遠征を視野に入れる馬もいるくらいですから、そもそも現在のレース体系が、時代に合わなくなってきているのかもしれません。種牡馬としてもスタミナよりスピードを重視される昨今の傾向を考えると、天皇賞・春も菊花賞同様、嫌われ者の仲間入りのようになりつつありますね」(競馬記者)

 振り返れば、1984年から東京芝2000mで開催されている天皇賞・秋(G1)も、かつては春と同じ3200mで行われていたが、中距離戦にモデルチェンジしてから、秋の中距離NO.1決定戦の地位を確立している。

 昨年はコントレイルも回避し、一部ではとうとう「三冠馬からも嫌われた」という声も出た伝統の長距離戦。ステイヤーとして素質を開花させたタイトルホルダーやディープボンドが、出走意思を見せてくれていることは救いだ。

 いずれにせよ、年々影が薄くなっていることは紛れもない事実。そろそろ生き残りを懸けた分岐点を迎えつつあるのではないか。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

コミュニケーションの本質は、自身にあり

コミュニケーションの本質について、早稲田大学の村瀬俊朗氏に問う本連載。コミュニケーション、コラボレーション、リレーションシップ、エンゲージメントなど、とかく横文字のワードが並びがちなこの業界だが、その正体とは一体なんなのか?村瀬氏に分かりやすく解説してもらった。


「もどかしさ」から、逃げていないか?

インタビューの冒頭、村瀬氏はこんな話をしてくれた。「高校を卒業してすぐにアメリカに渡りました。そこで感じたことは、知識はあるのにアウトプットができない、というもどかしさでした。伝えたいのに、伝えられない。もちろん、稚拙な会話力のせいでもあるのですが、それだけではない。上っ面な英語力を身につけたところで、こちらの思いは相手には伝わらない。たとえば『日本の秋の素晴らしさ』といったものを、アメリカの人にどう伝えたらいいのだろう?といったような。どれだけ英語が話せるようになっても、この思いは伝わらない。ああ、もどかしい。そんな感情から、コミュニケーションというものを科学してみたい、と思ったんです」

村瀬俊朗(むらせ・としお)氏: 早稲田大学商学部准教授。1997年に高校を卒業後、渡米。2011年、中央フロリダ大学で博士号取得(産業組織心理学)。ノースウェスタン大学およびジョージア工科大学で博士研究員(ポスドク)を務めた後、シカゴのルーズベルト大学で教壇に立つ。17年9月から現職。専門はリーダーシップとチームワークの研究。
村瀬俊朗(むらせ・としお)氏:
早稲田大学商学部准教授。1997年に高校を卒業後、渡米。2011年、中央フロリダ大学で博士号取得(産業組織心理学)。ノースウェスタン大学およびジョージア工科大学で博士研究員(ポスドク)を務めた後、シカゴのルーズベルト大学で教壇に立つ。17年9月から現職。専門はリーダーシップとチームワークの研究。

こう発言しては、仕事上で伝えたいことがうまく伝わらないのではないか、といったことをいちいち考えるのは、本当にめんどくさい。そのめんどくささを「もどかしさ」と表現されると、なんだかしっくりとくる。初恋の相手に思いを伝えられないあの気持ち。それを克服するすべを身につけていないのだとしたら、どんなに年を重ねていても、どれほどの地位に就いていたとしても、コミュニケーション力という意味では中学生レベル、ということだ。

村瀬氏はこう指摘する。「人との付き合いでも、企業の経営でも、とにかく効率性が重視されていますよね?でも、大切なことは『相反するもの』の最適なバランスをとっていくということなのだと私は思います。言い方を変えるなら、この思い、なんで相手に伝わらないんだろう、というもどかしさを克服するということです。そこで重要なのが、コミュニケーション力なんです。流ちょうに英語を話せるようになったからといって、コミュニケーション力が身についたとは言えない」。なるほどなあ、と思う。秋に、実家の裏庭に実る柿のうまさを英語で表現しろ、と言われてもなかなかうまく伝えられない。もどかしい。そこで、どうすればいいのか。この連載のキモは、まさにそこにある。

万年筆

「のめり込む」という気持ちが、変革を生む

コミュニケーションの基本は、何かに「のめり込む」ことなのだ、と村瀬氏は言う。不思議な指摘だ。場の空気を読む、相手のことを傷つけないように配慮する、といったことがコミュニケーションの基礎中の基礎だ、と僕らは思ってしまう。「エンゲージメントみたいな言葉を、私はこれこれにのめり込んでいる人間なんです、私たちはこういったことにのめり込んでいる企業なんです、と翻訳すると、その本質が見えてくると思うんです」と村瀬氏は言う。

なるほど、と思った。そう言われたら、確かに好感が持てる。必ずしもそれは共感でなくていい。私は、私たちは、こうした信念をもって、あなたに、社会に尽くしていこうと思っているんです、という思いを伝えること。それが、エンゲージメントの本質なのだ。「人と、社会と、地球のために」みたいな定型のスローガンからは、なにも感じられない。筆者はコピーライターという仕事を20年以上してきたのだが、振り返ってみれば、そんなコピーを山ほど書いてきたなあ、と反省させられた。

たとえば「なになに菌の可能性に、私たちはのめり込んでいます」と言われるだけで、なんだか頼もしいし、なんだか信じられる。そこから、コミュニケーションが生まれる。心に響くメッセージからは、なんらかの「変革」が必ず生まれていく。ビジネスでも、恋愛でも、なんでもそうだ。(#02へつづく)

村瀬氏が准教授を勤める早稲田大学
村瀬氏が准教授を勤める早稲田大学

【編集後記】

「もどかしさ」「のめり込む」、この二つのワードが、新鮮だった。さまざまな横文字で、人と人の関わり方、企業やビジネスのあるべき姿などが説明される傾向にあるが、今ひとつしっくりこない。ダイバーシティ、コラボレーション、トランスフォーメーションなどなど。いずれも概念(コンセプト)であって、気持ちを表したものではない。

村瀬氏は、そうした概念を、心に響く簡単なフレーズで解説してくれる。「ああ、もどかしい。この思いは、どうしたら解消されるのだろうか?」というところからすべてが始まっているのだ、と言われると、なるほど、と思う。

恋愛でも、仕事でも、学問でも、子育てでも、なんでもそうだ。そうしたもどかしさを解消する上で重要なのがコミュニケーションなのだ、と村瀬氏は説く。

言われてみれば、すべてがそうだ。料理ひとつをとっても「お店のような仕上がりにならず、なんでこんなにカッピカピになってしまうのだろう?」と考え、素材との対話をすることで初めて、理想の姿が見えてくる。この連載の先にどんな世界が待っているのか。非常に楽しみだ。ポイントになるのは、連載のタイトルにある「チーム」というワードだと思う。

tw

企業がサーキュラーエコノミーに取り組むべき4つの動機

2021年11月9・10日、電通ジャパンネットワーク サステナビリティ推進オフィスと電通TeamSDGsは、オンラインセミナー「サーキュラーエコノミーを実現する新たな連携とビジネスの可能性」を開催しました。

サーキュラーエコノミーの実現に向けて、さまざまな企業・自治体が共同で実施した実証実験や事例などをもとに、今後の連携やビジネスの可能性を紹介した本ウェビナー。ウェブ電通報では3回にわたってその内容をダイジェストで紹介します。2回目は、「サーキュラーエコノミーの全容と世界の最前線」と題した基調講演をリポートします。

前回の記事はこちら
「サーキュラーエコノミー」で、消費や社会はどう変わる?


スピーカーとして、サーキュラーエコノミー・ジャパン代表理事の中石和良氏が登壇し、サーキュラーエコノミーの全体像や世界の動き、国内外の各産業の最新事例について講演しました。本稿ではその中から、企業がサーキュラーエコノミーに取り組む際に目指すべき方向性について一部をピックアップしてお伝えします。

Sustainable d Actions


 

サーキュラーエコノミーの3大原則とは?

現在、約79億人の世界人口は、2050年に約100億人に達すると国連は推計しています。世界銀行は、人口増などにより、2050年に約34億トンもの年間廃棄物が生じると推計(現在は約20億トン)しています。

すでに気候変動や資源枯渇を中心に地球規模でさまざまな影響が起きており、このままでは人類が安全で健康に暮らせない世界になってしまうことは明らかです。このような危機感から、世界は持続可能な社会の実現に向けて動き始めています。

ウェビナーの冒頭、中石氏は持続可能な世界を実現するために4つの目標があることを示しました。

①Planetary Boundaries(プラネタリー・バウンダリー)
地球の持続可能性に関わる要素を「気候変動」「成層圏オゾンの破壊」など、9つに分類し、それぞれの現在のレベルを「安定領域」「危険領域」「壊滅的領域」の3つに設定。相互関係を考慮しながら、各要素が安定領域にとどまることを目指す。

②Decoupling(切り離す)
経済成長と資源使用量の増加を切り離し、経済成長による人間の幸福を追求しながら、同時に資源の枯渇や環境負荷を低減することを目指す。

③2030 Agenda SDGs
2030年までに持続可能でより良い社会を目指す国際目標。17のゴール、169のターゲットから構成される。

④Paris Agreement(パリ協定)
気候変動問題に関する国際的な枠組み。人類最大の解決すべき課題としてカーボンニュートラルの実現を目指す。

この4つのゴールに向けて、いち早く支援を始めたのが投資・金融業界だと中石氏は述べます。実際にESG投資額は年々増加しており、2020年には3883兆円と世界全体の投資額の36%を占めるようになりました。こうした背景から、世界では政府や投資家、企業が中心となって4つの持続可能性ゴールの実現に向かっています。その実現の手段として注目されているのが、サーキュラーエコノミーです。

資源を採取し、製品を作って使用し、破棄して処分する「大量生産、大量消費、大量廃棄」というこれまでの「リニア(直線型)エコノミー」や、廃棄物をできるだけ減らそうとする「3Rエコノミー」とは異なり、「サーキュラーエコノミー」は、最初から破棄物や汚染を生み出さないように設計する経済システムです。

中石氏はサーキュラーエコノミーを理解する上で重要な下記の3原則を紹介しました。

①廃棄物・汚染・無駄を生み出さない設計
(人・環境への悪影響、経済の無駄、格差・人権など社会問題を含む)
②製品と原材料を使い続ける
③自然システムを再生する

「この3つの原則を常に念頭に置きながら、ビジネスモデルや事業のビジョンを設定していただきたい」と企業への期待を伝えました。

ビジネスモデルに固執せず、コンセプト設計から始めよう

企業がサーキュラーエコノミーに取り組む際、必ずと言っていいほど次の「5つのビジネスモデル」が参照されると中石氏。

・循環型原材料・素材供給
・シェアリングプラットフォーム
・サービスとしての製品
・製品寿命の延長
・資源回収とリサイクル

同氏は「これらにとらわれすぎると、間違ったビジネスモデルを構築してしまう可能性があるので、あまり固執しないでください」と注意を促しました。その理由として、上記5つのビジネスモデルは単独ではサーキュラーエコノミーが成り立たないことを述べ、企業や分野間の連携でライフサイクル全体を構築するビジネスモデルをつくらなければならないことを強調。まずサーキュラーエコノミーのコンセプトで設計されたプロダクトが必要で、それがあって初めてシェアリングプラットフォームや資源回収とリサイクルといったビジネスモデルが成り立つと解説しました。

特にサーキュラーエコノミーコンセプトによる製品は、リニア型の「プロダクトを作って売り切るという手法」ではメリットがないため、PaaS(Product as a Service:製品のサービス化)モデルを構築することが非常に重要だと述べました。

なお、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルを構築する上でのポイントとして、中石氏は「直線型のバリューチェーンからバリューリサイクルという循環型への発想の転換」や「競合も含めた他企業・他分野・他領域との連携」などを挙げています。

また中石氏は、「頭をフラットに切り替えて、持続可能性ゴールを達成することは“果たして目的なのか?”ということを考えていただきたい」と提起。SDGsや気候変動緩和、生物多様性回復、廃棄物管理といった取り組みは、国や企業の目的・目標として捉えられがちですが、本来の目的は「人類のウェルビーイング。幸せと健康」だと自身の論を述べました。

「目的と手段が逆になってしまっているケースが多いのですが、目的は人類の健康と幸せであり(Why)、その手段として4つの持続可能性ゴール(What)が存在します。さらに持続可能性ゴールを実現する手段(How)としてサーキュラーエコノミーがあるのです」

企業がサーキュラーエコノミーに取り組むべき4つの動機

では、企業としてはなぜサーキュラーエコノミーを事業戦略に取り入れる必要があるのでしょうか?中石氏は4つの動機を挙げて解説しました。

①リスク回避
資源価格の高騰や資源自体の供給不安定といったリスク、気候変動や持続可能な社会に向けて取り組まない国に対する規制やカーボンプライシング、コロナ禍でも顕在化したグローバルなサプライチェーンリスク、投資家や顧客の喪失リスク。これらを回避する手段としてサーキュラーエコノミーに取り組む必要があります。

②ブランド強化
サーキュラーエコノミーに取り組むことで、投資家や金融機関、顧客や消費者からのポジティブな評価が得られることに加えて、従業員からの期待も高まり、優秀な人材の確保にもつながります。

③コストダウン
サーキュラーエコノミー=コストアップという捉え方をする企業も多いのですが、実はグローバル有力企業はサプライチェーン最適化や資源・エネルギー使用の効率化、廃棄物コスト削減など、トータルでコストダウンに結びつくという発想で取り組んでいます。

④収益創出・成長戦略
サーキュラーエコノミーで新たな収益源や新規事業モデルをつくり、新市場/顧客の獲得や事業ポートフォリオ拡大を目指します。そのためには、サーキュラーエコノミーを単純に「資源を循環させて廃棄物を出さない経済」と捉えるのではなく、「人類が永続的に繁栄し次世代のウェルビーイングを実現するための、経済社会システムの変革」と再定義することが重要です。

なお、欧州やアメリカ、中国などの海外諸国では国と企業が連携してサーキュラーエコノミーへの転換を目指していますが、日本ではサーキュラーエコノミーは政策化されず、企業の自主的な取り組みを促進するソフトロー的アプローチを取っています。

中石氏は「サステナブル・ファイナンス促進に向けて、経済産業省や環境省、金融庁がしっかりとしたガイドラインを打ち出し始めています」と話し、現時点でのグローバルなカーボンニュートラル環境を網羅した内容であることを評価。こうしたガイドラインを参照しながら、カーボンニュートラルのリスクを回避するとともにチャンスを捉え、企業戦略に取り入れてくことの重要性を伝えました。

次回は、電通グループと企業が共創した3つのプロジェクトについて、トークセッションの模様をリポートします。

twitter

25年度のPB黒字化、実は十分に達成可能な見通し?コロナ禍でも目標堅持すべき

 現下の厳しい財政事情のなか、財政再建の旗を降ろしてはいけない。財政再建の具体的な目標として、現在、政府は国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB)を2025年度までに黒字化する目標を掲げている。

 しかしながら、コロナ禍のなか、財政再建の目標が本当に達成可能なのか、という疑問が出てきている。オンライン・ショッピングの活用などが増えて利益を増やす産業も存在するが、いわゆる「経済の二極化」で、旅行・宿泊業や飲食業といった対面中心の産業がコロナ禍で一定の損失を被っているためだ。

 このため、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(2021年6月策定)では、「骨太方針2018で掲げた財政健全化目標(2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す)を堅持する。ただし、感染症でいまだ不安定な経済財政状況を踏まえ、本年度内に、感染症の経済財政への影響の検証を行い、その検証結果を踏まえ、目標年度を再確認する」という文言が盛り込まれている。この検証を行うため、昨年12月、自民党は総裁直轄の財政健全化推進本部を立ち上げており、2022年早々にPB黒字化の目標年度に関する検証議論を行う予定だ。

 だが、結論から言う限り、2025年度のPB黒字化目標を見直す必要はない。

 その一つの理由は、内閣府の中長期試算と2022年度予算から読み取れる。まず、2022年度の当初予算(国の一般会計)のPB赤字は13兆円となっているが、この予算の中には一時的な支出であるコロナ対策予備費5兆円が含まれており、本当のPB赤字は8兆円とみるのが正しい。

 また、2025年度のPB黒字化目標の議論の土台となっているのは、内閣府の中長期試算だが、その2021年7月版では2022年度における国のPB赤字は約11兆円になっており、足元(2022年度)のPB赤字は現在3兆円も改善している。

 中長期試算の高成長ケース(成長実現ケース)では、2025年度に国・地方のPB赤字が2.9兆円になり、このケースでもPB黒字化が難しいと思われていたが、数年でコロナが収束してコロナ対策予備費が不要(=今後3兆円の改善が継続)となれば、PB目標の達成も不可能ではない状況になりつつある。

PB黒字化が達成できても、財政赤字は残る予測

 この現状を裏付けるように、内閣府が今年1月14日に公表した最新版の中長期試算では、成長実現ケースにおいては、PB黒字化が2026年度に達成できる予測になっている。このため、同日の経済財政諮問会議において、岸田首相は以下のように発言している(下線は筆者)。

「今回の中長期試算では、こうした取組により力強い成長が実現し、骨太方針に基づく取組を継続した場合には、前回同様、国と地方合わせた基礎的財政収支は2015年度に黒字化する姿が示される結果となり、現時点で財政健全化の目標年度の変更が求められる状況にはないことが確認されました

 もっとも、岸田首相はコロナ禍で財政再建の目標年度の見直しを絶対にしないとは言っておらず、この会議では「ただし、新型コロナウイルス感染症の影響を始め、種々の不確実性が払しょくできない状況であることを踏まえ、引き続き、内外の経済情勢等を常に注視しつつ、状況に応じ必要な検証を行ってまいります」とも発言している。

 しかしながら、ひとまず2025年度というPB黒字化の目標年度の変更は不要だと、岸田首相が発言した影響は大きく、自民党・財政健全化推進本部の議論にも一定の影響を及ぼすことは確実だろう。

 また、低成長ケース(ベースラインケース)でも、PB赤字が4兆円台にまで改善しており、歳出削減などの財政・社会保障改革をもう一段進めれば、このケースにおいても2025年度から2030年度の間でPB黒字化が達成できる可能性が出てきているという事実も重要である。

 2019年10月に消費税率を8%から10%に引き上げることにより、これまで進めてきた社会保障・税の一体改革はひとまず終了した。しかしながら、2025年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、医療費・介護費に一層の増加圧力が加わることは確実である。また、直近の中長期試算では、PB黒字化が達成できても、財政赤字は残る予測だ。

 コロナ禍のため、財政健全化の目標年度を先送り、あるいは財政再建を中止しようという議論が出てくる理由も分かるが、現在の目標でも現実的には十分に達成可能な領域にいることも念頭に置きながら、慎重な議論が望まれる。

(文=小黒一正/法政大学教授)

●小黒一正/法政大学経済学部教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。

京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。

1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。

 

マスク着用の弊害が顕在化…“マスク呼吸”のリスク対策はラジオ体操と深呼吸

 新型コロナウイルスとの共存も2年が過ぎ、マスクは我々の生活に手放せないアイテムとなっている。オミクロン株の感染者数が日々過去最多を更新するなか、誰もがマスクをしっかりとつけている。しかし、そのマスクによって、さまざまな不調を訴える人が増えている。

 その原因は、“マスク呼吸”にある。マスク呼吸の弊害と対策について、くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢医師に聞いた。

 一時期は布マスクやおしゃれマスクをする人も多く見かけたが、最近では圧倒的に「不織布マスク」をつけている人が多い印象だ。やはり、長引くコロナ禍に感染予防という点を重要視する人が増えているのだろう。しかし、不織布マスクをつけての生活は、時に息苦しさを覚える。

「医療現場でも、感染予防のために密閉度の高いマスクをつけますが、確かに息苦しくなるときはありますね。マスク呼吸では、自分の吐き出した二酸化炭素が、マスクの内側に多くある状態になります。マスクをつけていない状態であれば、息を吐いたら二酸化炭素を出して、次に息を吸うことで十分な酸素を取り入れますが、マスク呼吸では自分の吐き出した二酸化炭素をまた吸ってしまうことになります。そのため、酸素が十分に吸えていないということになり、息苦しさを感じやすくなると思います」

 さらに二酸化炭素は、体の不調を起こす原因となることがある。

「二酸化炭素を多く吸い込んでしまい二酸化炭素過多となると、偏頭痛のような症状を招くことがあります。二酸化炭素には脳の血管を拡張する作用があり、偏頭痛でも同様の現象がありますから、マスク頭痛を起こす人がいます」

 偏頭痛は脳の血管が拡張し、血管周囲を走る三叉(さんさ)神経を刺激し、その刺激によって発生する炎症物質がさらに血管を拡張するために発症する。普段から、頭痛を起こしやすい人は、マスクによって頭痛の頻度が高くなる可能性もある。

口呼吸のデメリット

 マスクをしていると無意識に口呼吸になってしまい、呼吸が浅くなる傾向にある。

「マスクをしていると、深呼吸をすることも減っていきます。深呼吸で酸素を取り込み、血液に乗って体の隅々まで酸素が運ばれることで血液が浄化され、血流も活発になります。しかし、酸素が不足すると血流も滞り、体温が低くなる傾向にあります。体温低下は免疫力を弱めるため、好ましいことではありません」

 また、口呼吸によって口腔内が乾燥すると、さまざまな弊害が起きる可能性がある。

「口を閉じていることで口の中は唾液で潤っています。唾液には自浄作用、殺菌作用があり、口内を清潔に保ち、虫歯や歯周病を防ぐ働きがあります。しかし、口呼吸によってこういった働きが低下する可能性があります」

深呼吸でリフレッシュ

 コロナ禍が続く以上、マスク生活を余儀なくされるが、マスク呼吸のデメリットを解消する方法がある。そのひとつは、深呼吸である。

「実は深呼吸によって自律神経のバランスが整うため、テストの前や人前で話す時、さまざまな緊張する場面で多くの人が無意識に深呼吸を行うのです」

 深呼吸をすると肺の横隔膜が刺激されるが、この横隔膜は自律神経が集まっている場所であるため、深呼吸によって自律神経のバランス改善が期待できる。

 そこで、手軽にできる健康法として窪田医師が勧めるのがラジオ体操だ。

「コロナ禍にリモートワークなどで運動量が減っている方も多いと思います。ラジオ体操には、正しい方法で深呼吸ができる動きもあり、コロナ禍に手軽にできるリフレッシュ法だと思います」

 また、深呼吸のみであれば、いつでもどこでもできる。正しい深呼吸の方法は、背筋を伸ばし左右の肩甲骨を寄せて胸を開き、息を吐き切ったら、おなかに息を吸い込むイメージで鼻からゆっくりと息を吸う。そして、息を吸った時の倍の時間をかけて、ゆっくりと息を吐き切る。1日に何度か深呼吸を行う習慣を持つことも良いだろう。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。