ラジオのプロデューサーもIVS運営も…深いエンゲージメントをビジネス化することが重要

●この記事のポイント
・IVS2025が直前に迫った。2022年の開催では2000人規模だったIVSが、翌年には1万人参加を目標として掲げた。いきなり5倍規模への成長は、どのようにして成し遂げられたのか。長年アドバイザーを務めてきた萩原慶太郎氏は、IVSとの距離感など、どのようにかかわるべきか悩みながら、運営陣にアドバスを送ってきた。
・まったく共通点のなさそうなラジオとIVSの運営だが、実は大きな共通点があると萩原氏は語る。

 日本最大級のスタートアップイベント「IVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)」が、今年も7月2日から京都で開催される。2007年の初開催以来、日本のスタートアップシーンの成長とともに、その規模を拡大してきた。特に2023年から2年連続で京都で開催され、1万人を動員する巨大イベントへと進化した。

 そのIVSで長年アドバイザーを務めてきた萩原慶太郎氏。2年連続京都で開催された2023年と24年では、イベントオペレーションを企画・統括した。その萩原氏にIVSへの想いとこれまでの関わり方、そして起業家精神や次世代へのメッセージなど幅広く聞いた。

目次

IVSとの出会い

――IVSに関わるようになった経緯を教えて下さい。

萩原氏 2016年からです。インフィニティ・ベンチャーズ立ち上げメンバーである小野裕史(現:小野龍光)からイベント運営の相談を受けたことがきっかけでした。そこで大学時代の友人、岡田隆太朗(現日本ディープラーニング協会理事)にも声をかけてIVS事務局を作りました。ただ当時、私はTBSラジオの社員で兼業禁止だったので、ボランティアスタッフという形で参加することにしました。IVS現代表の島川敏明も同じ頃にボランティアスタッフでIVSに関わるようになりました。その他にも現在の中心メンバーがこの頃からIVSに参加しています。

 その後、小野・岡田・私の3名が中心になってIVSを運営していた時期を第2期と呼んでいます。島川がIVS代表になってからの現体制を第3期です。IVSは、ボランティアスタッフの活躍がめざましいのがひとつの特徴で、ボランティアスタッフからIVSの代表になったり、ファンドを立ち上げたり、事業を興したりなどの例が多くあります。

――萩原さんはどんな想いでIVSに関わっていましたか。

萩原氏 第2期の3人(小野・岡田・萩原)が意識していたのは、「どのようにスタートアップのエコシステムをアップデートするか」ということでした。IVSが評価された理由のひとつは、ベンチャーキャピタルのHeadline Asiaが運営母体でありながらも単一のベンチャーキャピタルが自分の得になるようなイベント開催をする発想にならなかったことだと思っています。

 エコシステムのアップデートが根底にあるからこそ、海外での開催(台湾)や、百戦錬磨の経験を乗り越えてきた経営者から経験を学ぶ「IVS DOJO」などのコンテンツを作るなどの挑戦をしてきました。

 ただ、当時は招待制だったので、我々3人が運営を続けていたら、いわゆるスタートアップの“同窓会”になるのではという不安がありました。そこで、運営すべてを一度若手に任せ、それを支えようという決断をしました。そこから島川体制の第3期がはじまります。ちょうどそのタイミングで、TBSラジオの編成部長になったのでIVSに携わることが難しくなり、2020年に中心メンバーから退きました。

――TBSを退職されたのは昨年ですが、それまでもIVSへのアドバイスを続けてこられたのですか。

萩原氏 神戸(2019年)から那須(2021年)ぐらいまでは全く関わっていません。ちょっとした助言をする程度です。しかしきっかけになったのは那覇です。ちょうど、編成部長の任を終えた時期だったので、夜のネットワーキングパーティーのお手伝いをしたことがきっかけです。

 それから、島川代表らから大規模に成長させたいという相談を受けまして。2000人規模の「IVS2022 NAHA」から5倍規模となる1万人目標の「IVS 2023 KYOTO / IVS Crypto 2023 KYOTO」のタイミングでまた深く関わらせてもらっています。

 私自身はTBSで体験型エンタメ公演や数万人の大規模イベントの実施経験がありました。しかしIVSのスタッフや関係者には1万人規模のイベントの経験のある人がいませんでした。ただ、あくまでも若いスタッフが前面に出るべき組織であり、シニアの自分がどのように参加すべきか悩みました。

 あくまでも若手がやりたい発想を実現するために、私が経験してきたリソースを提供して、制作会社や音響照明の会社までは接続させるのですが、単にプロを接続しただけだと普通のイベントになってしまうし、数倍の成長なんかできない。

 基本的な方向性は彼らが打ち出し、具体的なやり方がわからないときに戦略的に組み立ててプロの施策をもって提案をする。そこの段取りやバランスをするのが私の基本的な役割でした。発想があっても具体策が無い場合などは、このように二人三脚でやりました。

 ある意味、通常のイベントでは「非効率」「不安定」と思われる要素も、敢えて取り入れることで、爆発力に繋がる。それを毎回一定数取り入れることはとても大切です。

ラジオとIVSに共通するビジネスの本質

――イベント実務でIVSの運営を牽引してきて、仕事で根底に通じるものはありますか。

萩原氏 TBS時代の仕事は基本的にはマーケティングや、新規事業の立ち上げでした。両方とも「誰に対して、何を、どのように与えて、何を生み出したか」ということを明確にし、具現化することです。IVSが、誰にどんな体験を与えるのかというところを突き詰めていくと、自ずと私たちの立ち位置と私たちの強みと弱みを追求していかなければ、戦略が練れません。

 例えば、ラジオはオールドメディアですが、驚くほど強いエンゲージを産み出す「コミュニティーメディア」です。大手放送局に勤務し、長くこのメディアに携わっていながら、一方ではスタートアップの世界に片足を突っ込み、ライフワークになっていた。しかしこの「深いエンゲージメントを発生させる」という点では、ラジオの経験がIVSには活きていると感じています。特に体験設計やコミュニティー作りという面です。

 どうスタートアップや投資家がコミュニケーションをし、深いエンゲージメントを産み出すのか。深いエンゲージメントをどう生かしてマネタイズしていくかという点で、とても共通していると思います。

 例えばポイントは「集う」場所とタイミングの設計です。ステージの横には必ずBARやコミュニケーションをするスペースを用意する。セッションに参加する人はある意味「#(ハッシュタグ)」で繋がっている人達なので登壇者と交流したいし、参加者同士でも繋がる絶好の機会。そこを細かく作っていく。ラジオも同じで本編よりもそのあとの「仲間との会話」が大切なエンゲージを産み出すのです。同じ方向を向いていると少しでも実感したときにエンゲージは高まります。

 これまでやってきたイベント実務や、メディア運営、マーケティング。そして新規事業経験といった複合的な経験は少しIVSの拡大に役に立っている気がしています。

――萩原さん自身はいわゆる大手の有名企業にずっと所属されていたわけですが、その萩原さんからベンチャーやスタートアップはどのように見えたのでしょうか。

萩原氏 最初はイベントのお手伝いという気持ちでしたが、関わればかかるほどスタートアップの面白さが身に染みてきました。事務局で一緒にやっていたボランティアや後輩たちが起業家・事業家として成長していく姿を真横で見ていたからです。

 彼らは事業を成長させて何十億円も扱うような会社を作っていくんですね。僕には単なる後輩だったわけですが、そんな年齢も違う彼らが、社会に新しい価値を提供し続けるメンバーのど真ん中に身を置いていたわけです。

 一方で本業のラジオのほうは、遅々として進まない伝統産業みたいなところです。70年の歴史がある業界ですからね。このギャップがものすごいんです。

 私はこの10年間、スタートアップと伝統産業のどちらも見てきましたが、そういう人間は実は珍しいのではないかと思っています。

――ご自身でも起業されたと聞きました。

萩原氏 はい、会社を辞めて2社立ち上げたので、IVSで一緒にやっていた若い彼らと同じ土俵に立っています。実際に資金がショートしそうになったこともあるので、資金繰りの大変さを今味わっています。だから頑張らないといけないし、私自身も会社をやりながら、ようやく憧れのスタート地点に立ったばっかりなのです。苦しくも楽しい日々を過ごしています。

IVSの将来性

 2007年から開催されている日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS」は、国内外の経営者や投資家、起業家が集まり、ビジネス機会、提携、資本提携を促進することを目的とする。

 IVSは、参加者が適切な人々に出会えるプラットフォームへと進化しており、資金調達やビジネスパートナーシップ、人材獲得といった具体的な成果をもたらすよう設計されている。テーマ別のゾーンやラウンジ、ミーティングエリアを通じて、集中的な高水準の会議の場を提供し、スタートアップがビジョンを共有し、潜在的な投資家やパートナーとつながる機会を提供する。

 IVSは、今後も日本のスタートアップ業界を牽引する重要なイベントとして、さらなる発展が期待されている。主催者であるIVS代表の島川敏明氏は、「日本のスタートアップエコシステムが大きく変わる激動の時代」を迎えていると認識しており、IVSを通じて「日本の経済、中長期、危険ですので、必要なことは仕込んでいこうかなとは思っている」と述べる。

 今年のIVSでも、新たな出会いがあり、世界に羽ばたく企業やコンテンツが生まれる可能性は高い。スタートアップ経営者や投資家、企業の意思決定者はぜひ参加を検討すべきだろう。

(文=横山渉/ジャーナリスト)

IVS2025開催概要
正式名称:IVS2025
日程
 メインイベント:2025年7月2日(水)〜4日(金)
 IVS Youth:2025年7月5日(土)
場所:京都市勧業館「みやこめっせ」、ロームシアター京都 他
主催:IVS KYOTO実行委員会 (Headline Japan / 京都府 / 京都市)
公式サイト:https://www.ivs.events/
公式SNS:https://x.com/IVS_Official

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AI時代に“リアルな出会い”が勝つ理由…IVS AIで実感する、未来を創る「偶発性」

●この記事のポイント
7月2日に開幕する「IVS2025」において、「AI」は大きな注目テーマとなっている。「IVS AI」ステージの共同ディレクターである國本知里氏は、AIを単なる技術としてではなく、「文化」として社会に定着しつつあると語る。同じく共同ディレクターの金子晋輔氏は、IVSはAIの目が届かない情報が得られる場所であると強調する。

 オンラインで何でも手に入る時代に、なぜ多くのビジネスパーソンが京都を目指すのか――。今年も京都で開催される国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS」。今年の目玉のひとつである「7つのテーマゾーン」。そのなかの「IVS AI」の仕掛け人たちが語るのは、AIが文化となり、そして「リアルな出会い」こそが未来を切り拓く鍵となるという、衝撃の事実だ。

 あらゆる業界がAIと交わり始めている今、その最前線で何が議論され、何が生まれようとしているのか──。今年の「IVS AI」ステージの共同ディレクターの國本知里氏(Cynthialy CEO)と、金子晋輔氏(法律事務所Verse弁護士)に話を聞いた。

目次

AIは進化を越えて「文化」になりつつある

 國本氏はこれまで7年以上にわたりAI領域に関わり、自らもAIを活用したワークトランスフォーメーションの実現を掲げる起業家として活躍してきた。「すべての女性がAIを使いこなせる社会」を目指す活動など、多様な分野でAIの普及に貢献している。

 そんな國本氏が語るのは、単なる技術としてのAIではなく、「文化」として社会に定着しつつあるAIの存在だ。

「昨年のIVS2024で『Generative AI 起業家ピッチ』というLaunchpadの裏イベントをやったのですが、立ち見が出るほど盛況でした。当時は日本では話題の“端っこ”にあった生成AIが、今ではあらゆる業界と結びつき始めている。その変化の速さを肌で感じています」

 今回の「IVS AI」ステージでは、新たに「NEOCREA(ネオクリエ)」というAIクリエイティブコンテストを開催。動画・画像・音声などの生成AIによる作品を募集し、トップAIクリエイターが、一堂に会する試みだ。

「日本は“アニメ大国”とも言われるほど、もともと優れた創作力を持っています。今や、AIというツールが一人一人に“武器”として与えられ、趣味レベルからプロフェッショナルまで一気に裾野が広がっている。そうしたAIクリエイターたちが産業と出会う場を作りたいと思ったんです」

法と創造性の“交差点”としてのIVS AI

 このネオクリエの背景には、AIの進化だけでなく、それを支える制度や社会的土壌の未整備という課題もある。そこに切り込むのが、弁護士として長年テクノロジーと法律の交差点に立ち続けてきた金子晋輔氏だ。

「生成AIの普及には、法制度の整備が必須です。著作権やデータ使用など、これまでの法律では対応できない問題が次々に生まれている。IVSでは、AI推進法などAI政策をリードする議員や法律家のセッションや、「人間中心のAI」の社会実装に関する博報堂のCAIO(最高AI責任者)やAIスタートアップGaudiyを招いたセッションなど、AIのグローバル展開に伴うおける法規制や戦略を議論するセッションを行います」

 金子氏自身、シリコンバレーのテック企業を支援してきた経験を持ち、日本のAIスタートアップがグローバルに挑戦するための法的・戦略的な視点を発信している。

 今回のIVS AIは、単なる技術イベントではなく、出会いとコラボレーションを促進する“仕掛け”が随所に張り巡らされている。そこには、AIの裾野が広がる今だからこそ必要な「多様性」への配慮がある。

「“平日に京都まで来て良かった”と思える体験を用意したい。AIビジネスの第一線にいる人はもちろん、これからキャリアや起業を考えている人にも次に繋がるヒントが得られる場にしたい」(金子氏)

 ペルソナ設定も非常に幅広い。エンタープライズ企業のAI担当者、AIスタートアップの起業家、ジェンダーや地域を超えてAIでキャリアを切り拓こうとする個人、そして資金提供者や大企業の新規事業担当まで、多様な参加者が交わる設計だ。

 さらに、グローバルAIハッカソン、「京都×AI」をテーマにしたAIスタートアップのピッチ登壇者との交流セッションなど、偶発的な出会いを“必然”に変えるための設計も進化している。

「生成AI時代の差別化」は“リアルな出会い”にある

 生成AIによって、あらゆる情報がオンラインで即座に取得可能になった時代。──いや、だからこそ、リアルな場での出会いや会話には、計り知れない価値があると國本氏は言う。

「生成AIで得られるのは“公開情報”ばかり。でも起業やスタートアップのリアルな失敗談、M&Aの裏話なんて、ネットには出てこない。つまり、AIの目が届かない情報です。IVSにはそれがあるんです。目の前の人から生で聞ける情報こそ、生成AI時代の差別化になると思っています」

 IVSには、普段は登壇しないような専門家や、企業に所属しない個人のキープレイヤーが数多く集まっているという。しかも彼らの多くが「話しかければ話してくれる」フラットな空気が流れている。

 金子氏がIVSに期待するのは、“次の世代を担う人材”がロールモデルを見つける場となることだ。

「スタートアップの成功者たちも、かつては誰かを真似るところから始まっています。IVSで、本気で起業を考えている人が“あの人のようになりたい”という出会いを得られたら、それがエコシステムとして最高の成果です」

 その背景には、金子氏自身が学生時代に運営に参加していたビジコンで出会った仲間たちが、今や日本を代表する起業家になっているという実体験がある。「その場にいれば、それが起こることを知っている。でも、いなければ想像すらできない」と彼は語る。

AIスタートアップのM&A戦略も明らかに

 今年のIVS AIでは、成長と出口戦略のリアルにもフォーカスする。金子氏は、AIスタートアップのバイアウトやグロース支援をテーマにしたM&Aセッションにも力を入れている。

「DeNAやみずほ、KDDIなど大企業が“グループインしてほしいAIスタートアップ”を語るセッションもあります。また、グロース投資を受けたAIスタートアップの当事者が語るセッションもあります。IPOだけでなくM&Aも積極的な選択肢に入っている時代であり、多くの起業家に様々な可能性を知ってほしい。こうした情報はなかなか表に出ないけれど、まさに今、動きが加速している領域なんです」

 1〜2年で急成長し、次のステージへ進むAIスタートアップが次々に現れている今、日本発のAIプロダクトがグローバルで勝つための“座組み”や“仕掛け”を、IVSで先取りすることができる。

「IVSは“お祭り”です。立場関係なくフラットになれる場。だからこそ、会いたかった人と出会えるし、新しい挑戦が生まれる。そういう“嗅覚の良い人”たちに集まってほしい」(金子氏)

 國本氏も続ける。

「地方にある大手製造業と、東京のAIスタートアップがここで出会って、現実的なコラボが生まれることも多い。スタートアップだけのイベントではない、企業の人たちにとっても“偶然の出会い”が価値を生むんです。AIに少しでも関心があるなら、IVSに来ないのは本当にもったいない。東京のイベントにはない“偶発性”や“濃度”がここにはある。しかも、それは今年しか体験できないかもしれない。ぜひ自分なりの目的を持って参加してほしい」(國本氏)

 リアルで人と会い、語り合い、未来のヒントを持ち帰る──。生成AI全盛時代において、それこそが最大の差別化となる。2025年の夏、京都IVSは“未来を加速させる出会い”を待っている。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)

日本の未来を共創する熱狂の現場へ――IVSが繋ぐ地域と多様性、その進化の軌跡

●この記事のポイント
・IVS2025において、「IVS JAPAN」と「Empower HER」という二つの重要ステージを牽引する藤本あゆみ氏へのインタビュー。スタートアップエコシステム協会代表理事も務める同氏は、「IVS JAPAN」において地域の魅力を可視化したいと語る。
・一方の「Empower HER」のステージにおいては、今のスタートアップに必要な変化の力をもたらす。ダイバーシティの視点をエコシステムに溶け込ませることが狙い。

 日本最大級のスタートアップカンファレンスとして、その熱量を年々増しているIVS。今回は「IVS JAPAN」と「Empower HER」という二つの重要ステージを牽引するキーパーソン、藤本あゆみ氏にインタビューを実施。彼女のキャリアパスから、IVSへの深い思い、そして日本のスタートアップエコシステムの未来像まで、その熱いメッセージに迫る。

目次

「今、IVSに関わる意味」――日本のスタートアップの“現場感”を持ち帰る

「IVSは日本のスタートアップエコシステムを体感できる、いわば“現場の集大成”のような場所です。世界中のカンファレンスを見て回った私にとっても、ここでしか得られない熱量と視点があります」

 そう語るのは、一般社団法人スタートアップエコシステム協会代表理事であり、「IVS JAPAN」のテーマゾーンおよび「Empower HER」ステージのディレクターを務める藤本あゆみ氏だ。

 大学卒業後、キャリアデザインセンター、そしてGoogleで法人営業を経験。その後、2016年にat Will Workを設立し、続いてお金のデザインでPR・マーケティングを、Plug and Play JapanではCMOを勤め、在籍中の2022年にはスタートアップエコシステム協会を設立し、代表理事に就任。さらに、Plug and Play退社後、2024年11月からはA.T. カーニーのアソシエイテッドスペシャリストアドバイザーも兼任。現在は、東京都スタートアップ戦略フェロー、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使、内閣府規制改革推進会議スタートアップ・イノベーション促進ワーキンググループ専門委員など、多岐にわたる要職を務め、政府のスタートアップ政策策定にも深く関わっている。

 藤本氏のキャリアにおいて、最も長く携わったGoogleでの経験は、現在の活動の原点となっている。2007年から2015年までGoogleに在籍し、YouTube買収直後の変革期に立ち会った彼女は、「検索だけの会社」から「人々の世界を変える会社」へと成長するGoogleの姿に深く感銘を受けました。この経験こそが、「Googleのような会社をもっと多く生み出す仕組みを作りたい」という強い思いにつながり、スタートアップ支援の道へ進むきっかけとなった。

「一人で一つの会社に関わるだけでは、その会社の成長スピードをどう上げるか、という点にフォーカスしてしまいます。しかし、私自身が支援側に回れば、より多くのスタートアップに関わり、その成長に貢献できると思っています」

 彼女の活動は、まさに日本のスタートアップエコシステム発展の最前線を走るものだ。そんな彼女のIVSとの関わりは2023年から。IVS代表の島川敏明氏との出会いがきっかけで、コミュニティイベントから1万人規模のカンファレンスへと進化を遂げたIVSを「グローバルのカンファレンスと遜色ないものにする」という目標に共鳴し、その運営に参画したという。GoogleやPlug and Play Japanなどで培ったグローバルとローカル両面の知見を武器に、今やIVSの“多様性と地域創生”という両輪を牽引する立場にいる。

「IVS JAPAN」――地域の可能性を、スタートアップの力で“可視化”する

 今回、藤本氏がディレクターとして力を入れるのが、「IVS JAPAN」ステージだ。

「地域には大きな可能性があるのに、それがまだ“見える化”されていないことが課題だと感じています。だからこそ、今回の『IVS JAPAN』ステージを通じて、各地域のスタートアップエコシステムの魅力を、より多くの人に知ってもらう場にしたかったんです」

 このステージには、京都府・京都市に加え、全国の自治体、地銀、研究機関が登壇する。東京と京都がタッグを組むセッションや、地方銀行が一堂に会するパネルなど、地域と都市、官と民を横断する構成になっているのが特徴だ。

 特に注目すべきは、京都府知事、東京都副知事、京都銀行頭取が登壇するセッションだ。

 ここでは、地域間の共創を軸としたスタートアップ政策、東京と京都の連携による国内外へのPR戦略、そして10年間で1000億円のスタートアップ投資を通じた地域経済とエコシステムへの還元について議論が交わされる。

「日本の最大の魅力は、47都道府県それぞれに異なるアセットがあることです。技術、文化、研究、人的ネットワークなど、多種多様な強みが全国に点在しています。これら全てを繋ぎ合わせられるのが、まさに今のIVSだと信じています」と、藤本氏は力強く語った。

 藤本氏自身、東京に住み、東京都のスタートアップ戦略アドバイザーも務めている。しかし、彼は「東京だけで日本のスタートアップエコシステムが作られるわけではない」という強い思いがある。地域の歴史、技術、ネットワークがあってこそ、日本全体の魅力が引き出され、東京と地方の相乗効果が生まれると考えている。IVS JAPANの3日間は、まさにこの思想に基づいた明確なストーリー構成を持っている。

1日目:「現在地を知る」 各地域のエコシステムで何が起きているのかを「知る」ことに焦点を当てる。

2日目:「深める」 地域金融機関が一堂に会する機会を設けるなど、カテゴリーを絞って「理解を深める」。東京と京都のような2地域が連携することで何が起こるのか、その可能性を探るセッションも組まれている。

3日目:「未来を描く」 自動運転やAIが地域の課題解決にどう貢献するのかなど、新技術を地域にどう活かすか、といった未来志向のセッションが展開される。内閣府が発表した「スタートアップエコシステム拠点」の新拠点の紹介もあり、エコシステムの今後の発展を知る機会となる。
 「IVSは“何を見つけに行くと、何が得られるのか”が明確になりつつあり、3年目の今ようやくそれができるようになってきた」と、藤本氏はその進化に自信を覗かせた。

「Empower HER」――ダイバーシティの視点をエコシステムに溶け込ませる

 一方、「Empower HER」は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に特化したステージだ。しかし、「女性だけのための場」ではないと、藤本氏は強調する。

「『Empower HER』という名前だけ見ると、“女性向け”と思われがちですが、本質は“多様な人々が活躍できるエコシステムをどう作るか”にあります。年齢、性別、国籍、立場…あらゆる壁を越えていくための議論の場なんです」

 このステージのユニークな点は、「IVS本体の運営チームが企画していない」ことだ。D&Iに取り組む外部団体が主導して企画しているため、現場の課題感や課題解決のストーリーがリアルに共有される。

「Empower HER」の根底には、日本のスタートアップエコシステムにおける多様性の促進がある。藤本氏は、「グローバルカンファレンスと日本のドメスティックなカンファレンスの大きな違いはダイバーシティにある」と指摘する。かつてのIVSが「男子校」的であったことを踏まえ、今年は、登壇者の選出基準に「すべてのセッションに必ず女性を一人以上登壇させる」というルールをIVS全体で導入したという。これは、昨年まで藤本氏が担当していた一部セッションでの取り組みが全体に広がった成果であり、グローバルスタートアップカンファレンスへと向かうIVSの大きな一歩といえるだろう。

「セッションに女性がいないと、それだけで視点が偏ってしまいます。視聴者にも“その話ならもう知ってる”と思われてしまうでしょう。多様な視点があることが、参加者のエンパワーメントにつながると考えています。」

「託児所完備」――IVSは“社会全体で支える場”を目指す

「起業家は一人ではありません。家庭やパートナー、子育て環境がある人も多くいます。だからこそ、IVSでは託児所を設けることにしました。それは“女性のため”だけではなく、誰もが参加できる空間を作るため、すべての人のためなのです」

 藤本氏は、こうした配慮が「誰もが参加できる空間」を生むと語る。託児サービス導入は、これまでパートナーのどちらかが子どもの面倒を見るためにカンファレンスに参加できなかった状況を解消し、誰もが参加するチャンスを生み出すものと捉えている。IVSは今、誰もが何かを得られる“場のデザイン”を進化させているのだ。

「オープン化されたIVS」だからこそ、価値がある

 かつてのIVSは「男子校的」で「限られた人しか参加する権利がない」ような雰囲気だったと藤本氏は振り返る。

「正直、昔のIVSは“選ばれた人の場”で、自分とは無縁だと思っていました。でも今は違います。誰もが参加でき、誰もが発言でき、誰もが成長できる場。それを肌で感じられるのが、今のIVSです」

 IVSが毎年「ゼロからつくり直す」カンファレンスであることも、彼女が特徴的だと思う点だ。

「IVSは非効率なほど、毎年すべてゼロからつくっています。前例にとらわれず、必要な議論を必要な形で届ける。その姿勢が、日本のスタートアップに必要な“変化の力”を体現していると思います」

 一般化され誰もが参加できるようになってから、IVSは今年で3年目を迎える。藤本氏は、この「3年目だからこその変化」に大きな期待を寄せる。これまでは、さまざまなセッションがごちゃ混ぜになり「おもちゃ箱」のような楽しさがあったIVSが、今年はテーマ別のセッション構成となり、「どこで何を得たいのか」「自分はどうするのか」といった問いを参加者に投げかける場へと進化している。

「見たことがないなら、来てください」

 最後に、藤本氏から読者へのメッセージを紹介したい。

「IVSに来たことがない人は、ぜひ一度覗いてみてほしいです。“スタートアップ関係ないし”と思っている人にこそ、見てほしい。そこには、熱があります。成長したいという想いがあります。そして、それを実現する仲間がいます。日本の未来をつくるエネルギーを、ぜひ感じてほしい。『来て損はさせない』と言い切れる場所です」

「日本のスタートアップエコシステムに関わるのであれば、IVSを見ておかないともったいない」とまで言い切る藤本氏。そして、何度も参加したことがある人に対しても、「毎年すべてゼロから運営しているIVSは、過去の経験だけでは測れない“今年の面白さ”が必ずあります」と断言する。代表の島川氏が最も大切にしている「参加者全員にとって実利があること」という考えのもと、参加者にとって必ず何か得られるものがあるように、運営チームが心を込めて作り上げているのがIVSなのだ。

 藤本氏の言葉からは、IVSが単なるイベントではなく、日本のスタートアップエコシステムの未来を共創する、生きたコミュニティであるという強いメッセージが伝わってくる。今年のIVSがどのような熱狂と発見を生み出すのか、期待せずにはいられない。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)

“日本式”の枠を超えた選択肢を。エンデバー・ジャパンが示す起業家支援とは

●この記事のポイント
・世界最大級の起業家支援コミュニティ「エンデバー」の日本法人の代表理事とオペレーションマネージャーにインタビュー。なぜ日本企業にはユニコーンが少ないのか、また海外進出する企業が少ないのか、それには日本のスタートアップ独自の事情があるという。
・そのなかでエンデバーが支援するスタートアップはグローバルを見据えるケースが多い。エンデバーはVCとの姿勢の違いに、起業家の「人間性」をかなり重視している点を挙げる。

 日本では、起業家の数こそ多いものの、ユニコーン企業の数では世界に大きく後れを取っている、グローバル進出が少ないという印象があります。先人が少ない状況に、次のアクションに迷いが出る起業家も少なくありません。

 そうした状況に一石を投じる存在が、1997年に設立された非営利団体「エンデバー」。現在、2900人を超える起業家と3000人以上のメンターをつなぐ、世界最大級の起業家支援コミュニティです。世界最大の起業家支援コミュニティとして地域経済にインパクトを与えうるハイインパクトアントレプレナーを選考し支援することで、46以上の市場に活動地域を拡大し、起業家支援とエコシステムの構築とサポートを行っています。

 今回は、エンデバーの日本活動拠点、一般社団法人エンデバー・ジャパンの代表理事 大塚 莉菜氏と、オペレーションマネージャー 小田嶋 アレックス太輔氏に、日本のスタートアップが抱える課題やグローバルに活躍する起業家を生み出すためのカギをお聞きしました。

目次

日本人起業家はグローバルを見ていない!?

——日本では企業数に対してユニコーン企業が登場しづらいといわれていますが、海外のスタートアップ事情などを知るおふたりから見ると、その原因はどこにあると感じますか?

大塚:「ユニコーン企業」という言葉の定義に当てはまる企業が少ない、ということが原因のひとつにあると考えています。

 ユニコーン企業とは、企業評価額が10億ドル以上、さらに未上場の企業を指します。日本は創業数年で上場してしまうケースが多いため、ユニコーン企業の定義に当てはまらない場合が多いのです。

小田嶋:経済規模がほとんど同じドイツでは、現在ユニコーン企業が30社以上あります。日本とは違い、上場が容易ではないからです。

 また、海外の企業はアメリカでの資金調達を行い、企業の時価総額を上げているケースが多いですね。ドイツやフランスなどで時価総額が数十億ドル規模の企業は、大体そのパターンに当てはまるのではと考えています。

——日本の特殊な事情も原因にあるのですね。それでは、スタートアップにおける日本独自の課題などはありますか?

小田嶋:コロナ禍終了の前後からやや風向きは変化したものの、日本のスタートアップはあまりグローバルに出たがらない、という傾向があると感じています。日本の起業家の多くが、グローバルで事業を広げることを当たり前の動きとしていないのです。

 これは、日本の市場が大きく、よくも悪くもここで完結してしまうことが起因しています。もちろん、市場が大きいということは、日本市場での起業自体も非常にチャレンジングなことではあるのですが。

大塚:ほかの国は、国内の市場だけでは完結できないため、ビジネスをスタートする時点からグローバルを見据えて計画しているケースも多いですね。そうしないと、スケールするビジネスにならないのです。

 日本の企業は「まず日本で成功してからグローバルへ」という考え方なので、そもそものマインドセットに違いがあります。

小田嶋:日本のスタートアップ支援やVCも、基本は国内用にできあがっているので、「まず日本で成功してから」の方式でグローバルを見据えると、ゼロベースでグローバル仕様の事業展開をつくり上げなければなりません。

 こういった事情もあり、日本において最初からグローバルを見据えてビジネスをスタートする方は、やや考え方などが特殊な方が多いですね。

——エンデバーが支援する起業家には、そういった最初からグローバルを見据えている方が多いと思うのですが、その動き方や人物像にはどのような特徴があるのでしょうか?

大塚:エンデバーはグロース(成長)ステージにある企業のスケールアップを中心に支援しているのですが、その段階だと、創業者は日本人でありつつも本社をアメリカやシンガポールなどの海外に置いているケースは多いですね。最初からグローバル展開を見据えている場合、日本に本社を置いているとスケールアップが難しいと考えているためでしょう。

 あとは、グローバルでの資金調達を受けられる状況を最初から設計していて、日本のVCだけで株式構成がされていないというケースも多いです。

小田嶋:人物の特徴でいうと、出自も関係しているかもしれません。子どもの頃に海外に住んでいた、なんらかのタイミングで海外で生活していたという方は多いです。

 日本の外に世界があるという感覚にリアリティがある上に、言葉の壁がないのでグローバル展開をある程度「当たり前のこと」と捉えやすく、ハードルが低いのでしょう。

大塚:先日、ある日本人のファウンダーの方が、「アメリカで創業する起業家と戦おうとしたら、日本人は日本からインドあたりまでの規模感でビジネスを考えていないといけない」とおっしゃっていました。

 というのも、アメリカは国内だけでも、東海岸から西海岸まで飛行機で5〜6時間かかります。そもそも「国内」というものの規模感が違うのですよね。

起業家には周囲への影響力が不可欠

——それでは、エンデバーが支援対象となる起業家を選定する際、どういった部分を見ていますか? 日本、海外問わずVCの観点と大きく違う部分があれば教えてください。

小田嶋:VCとの決定的な違いは、起業家の「人間性」をかなり重視していることです。テイカーではなくギバーであるか、自身の成長が周囲にこう影響を与えられるか、などを見ています。

大塚:また、起業家としての資質とビジネスモデル、そのビジネス自体のインフレクションポイント(転換点)などを見て評価しているので、日本の市場で早々にIPOするかどうか、などの部分もあまり評価の基準にはなりません。

小田嶋:たしかに、それも大きな違いです。グローバル基準のため、日本のように「上場がゴール」という感覚はあまりないですね。

——エンデバーは「事業がスケールする」ということをどう定義しているのでしょうか? 人間性と事業のスケールアップをどうリンクさせているのかが気になります。

小田嶋:エンデバー起業家に選出された時点で、さらに売り上げ規模が10倍に増えるほどのポテンシャルがあるか? という、事業そのもののスケールアップももちろん重要ですが、エンデバーでは、その起業家、企業が存在することで「マルチプライヤーエフェクト」があるかどうかも「スケールするかどうか」という考え方に含まれています。

 つまり、起業家や企業が成長してネットワークを広げていくことで、周囲に新たな起業家や事業が増えていくかどうか、ということです。

 エンデバーでは、エンデバー起業家が創業した企業の数や従業員数、そのエンデバー起業家の出資額などを数値化しています。

大塚:最初にエンデバーが創設されたラテンアメリカでは、そのネットワーク構築の効果が顕著です。現在、ブラジルでユニコーン企業の創業者となっている方々の80%ほどが、エンデバーで支援しているスタートアップです。

 このように、傑出した個人は世界に並外れた影響を与えてくれます。彼らは社会をよりよくするだけでなく、周囲の起業家エコシステムの成長にも寄与します。並外れた個人の影響は一つの社会を超えて広がる、ということですね。

 起業家自身(個人)の人間性を重視しているのはそのためです。

日本が持つ、グローバルスタンダードとのギャップ

——日本において、エンデバーのネットワーク構築の障壁になりそうなことはありますか?

小田嶋:やはり、エンデバーはグローバル基準でエンデバー起業家を選出し、ネットワークを形成しているので、そこに対してギャップが大きい点が障壁になると考えています。

 具体的には、「失敗を許容しない文化」があることですね。日本は、金額的な意味ではなく、信頼性などの心理的部分で失敗からのリカバリーが非常に難しいと感じます。

 たとえば、トランプ大統領はこれまで4回も破産申請を行っています。日本ではあまりこういった形で起業を繰り返す方は多くないですよね。

大塚:この文化が、影響力を持つ存在になり得る企業が登場することの妨げになってしまう可能性はあると感じます。

 エンデバーでは昨年、ユニコーン創業者がどういった経歴をたどってきたのかという調査を行ったのですが、BIG5(※1)やBIG3(※2)での勤務経験のほか、「ユニコーン企業の前に少なくとも1つのほかの企業を立ち上げ経営」した経験がある方、いわゆる連続起業家が多いという結果が出ています。

 日本では、連続起業家といえばIPOを行って、また企業を創業して、というイメージが強いですが、海外では、必ずしも先に創業した事業がうまくいっているケースだけではありません。

小田嶋:日本ではIPOを評価する風潮はありますが、事業の失敗に対してポジティブに興味を持って会話することが少ないですよね。失敗を言いたがらないし、聞いてはいけない空気がある。これは大きく変えなければいけない部分だと思っています。

 これはネットワークの構築だけでなく、企業そのものにとっても大きな機会損失です。

 実際に、非常に面白いアイデアを持っていたはずの企業が、失敗のレッテルを恐れるあまり、いつの間にか下請けのシステム会社に甘んじてしまう、というもったいないケースを非常に多く目にします。

※1: GAFAM(Google、Apple、Meta(旧Facebook)、Amazon、Microsoft)
※2: マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、ベイン・アンド・カンパニー

各国に学ぶ、日本に必要な起業家支援とは

——今お話いただいたような日本の実情と、似た傾向を持ちつつも克服した、という国があれば教えてください。

小田嶋:まったく同じではないですが、フランスが似ていますね。10年ほど前までは今の日本とあまり変わらない状況だったと思います。

 フランスは、日本とは比べものにならないほどの学歴社会な上、当時は非常に失業率が高かったのです。30歳以下に限定すると失業率が20%を超え、給与水準が高い学士や博士ほど無職になってしまう状態でした。これを打開しようと2013年からフランス政府はスタートアップの支援プロジェクト「フレンチテック」を推進しはじめました。

 自分たちで起業しないと仕事がない、という切迫した状況からスタートしたプロジェクトですが、この10年でフランスは起業数も格段に増え、スタートアップ事情が急激に変化していますね。

 スタートアップが盛んになるきっかけは、国によってさまざまです。

 北欧などは、ガラケー時代の終焉によって市場にあふれてしまった優秀な人材がスタートアップに流れたことが起因しています。エストニアはSkype社の創業チームにエストニア人がいたことで、スタートアップの潮流が高まるという流れがありました。その方がきっかけで次の世代を育てていく、起業家による起業家のためのコミュニティが形成されています。現在のエストニアの起業家たちは、そのコミュニティで育っているのです。

——日本が参考にするとしたら、どの国のスタイルがよいのでしょうか?

大塚:エンデバーはまだオフィスを置いていないのですが、韓国でしょうか。商談にはスーツを着用していくなど、ビジネスの文化も近いものがありますね。

小田嶋:そうですね。国が支援のために支出できる予算額にしても、大学などの教育レベルにしても、英語習得の度合いにしても、非常に似ていると感じます。つまり、韓国にできることは日本にも可能なのです。

 ただ、違いがあるとすれば支援をする行政側に、イノベーション支援などの観点を持って横串で動ける人たちがいることですね。全体を把握してハンドリングできる人材がいるわけです。

 今の状況で真にどういった人材が必要なのか? という部分において、圧倒的に参考になる国だと思います。

「自分だけじゃない」と思える起業家支援

——日本のスタートアップ事情、起業家が抱えるこうした課題に対して、エンデバー・ジャパンはどのようにアプローチしていくのでしょうか?

小田嶋:最初は、日本の持つ課題に対して方法や思考を変化させるアプローチを考えていたのですが、そもそも日本でスタンダードとされる方法も、グローバル展開を見据える方法も、どちらも選択肢としてある状態でもよいのではないか、という結論になっています。

 選択肢がある中で、我々の思想に共感してチャレンジしたい、と考えている方に対して必要なネットワークにアクセスできる手段を提供することが、我々がやるべきことだと考えています。

大塚:そのために、本来のエンデバーの動きとは少し変えている部分があります。

 グロースステージにある起業家の事業のスケールアップを支援する、というのが我々のメインの活動なのですが、昨年、東京都との協定事業でアーリーステージ向けのプログラムを立ち上げました。早い段階から、エンデバーの持つグローバルネットワークにアクセスし、今のグローバルスタンダードやトレンドを把握できるようにするためです。グローバル投資家との接点の提供なども行っています。

小田嶋:グローバルのユニコーン企業創業者と話す機会はなかなかないですよね。なかなか出会うことがない国の起業家の話を聞けるだけでなく、日本人同士ではなかなか話題に上がらない、失敗の経緯や克服の秘話なども聞くことができます。

大塚:同じ志を持ったファウンダーが集まっているので、「自分以外にも同じマインドセットの日本人がいるのか」と感じていただくことが多いです。

 我々は非営利団体なので、競合という概念がありません。VCなどとはまた違った独自の視点でサポートすることが可能です。同じ目線で動く、視座が高いメンバーのネットワークを提供できる、ということはエンデバーの大きなメリットですね。

 日本の起業家にとっても、フィールドとしてグローバルを選ぶ道は、もはや遠い話ではなくなっています。しかし、グローバル展開を見据えたとき、日本にいながら世界とつながり、必要な情報やトレンドを捉えるのは難しい場合もあります。

 日本の起業家が選択する道に対して、最適なソリューションを提供し、自由に事業の展望を描ける場をつくる。そして、起業家が互いに影響し合い、起業家のエコシステムが形成する。

 エンデバー・ジャパンは、この日本を土壌にそんな未来を切り拓こうとしています。

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