年収1億円から困窮生活へ――芥川賞作家・柳美里が告白「なぜ、私はここまで貧乏なのか」

「お金を得る手段は書くことしかないけれども、お金のために書いているわけではない」(柳氏)/写真:山本宏樹
 芥川賞作家の柳美里氏が、3月に上梓した『貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記』(双葉社)が話題になっている。昨年10月に柳氏が公表して話題となった雑誌「創」(創出版)の連載エッセイの原稿料未納問題や、困窮のためネット回線が止められ、公共料金や仕事の電車賃、あげく食費にも困るという作家の実情がつぶさに書き綴られているのだ。柳氏ほどの著名な作家がなぜここまで生活に苦しむことになったのか……その理由を自らが語った。

--いつから、なぜ、困窮するようになったのでしょうか。

柳美里(以下、柳) 困窮の理由はふたつあります。ひとつは、2004年ごろから断続的にひどい鬱状態に陥ることがあり、その間はトイレに行くにも起き上がれず、幻覚・幻聴も強く、「書かなければ」と思ってもまったく書けない状態になってしまいました。

 もうひとつの理由は、携帯電話の普及に伴い本が読まれなくなり、だんだんと収入が減っていったことです。20代で出版した『ゴールドラッシュ』(新潮社)は、初版5万部だったと記憶していますが、最近出版するものは初版1万部前後。これは私だけの問題ではなく、一握りの超ベストセラー作家以外の作家は総じて初版部数を絞られています。電車に乗るたびに、絶望的な気分になりますね。昔はたくさんの人が文庫や週刊誌を読んでいたのに、今はスマホ。それも電子書籍が読まれているわけではありませんからね。

--多くの作家が経済的に困っている状態ということですか。

 「書くことだけで食べている作家は30人ぐらいではないか」という話を聞いたのですが、かなりリアルな数字だと思います。ただ「貧乏は恥ずかしい」と考えている方が多く、公にしないだけだと思います。

 友人の作家は、1作当たりの販売部数が減ったことの対処として、出版点数を増やすことにしたそうです。私はそんなに量産できません。今回の『貧乏の神様』の前に出版したのは、1年前の『JR上野駅公園口』(河出書房新社)です。ある程度知名度のある作家の中には、大学や専門学校やカルチャースクールで教えたり、講演会やトークショーを頻繁に開いたりして、原稿料や印税以外の副収入に頼っている人もいます。私は講演会はほとんどしません。聞くところによると、講演会のギャランティもバブル期に比べて半分以下に減っているそうです。講演会収入で生計を立てていた作家も苦しくなっているようですね。

--柳さんの最も多かったときと少なかったときの年収を教えてください。

 多かったときは1億円以上、少ないときは400~500万円です。少ないときでも日本の平均収入くらいはありますが、1億円あったときに購入した神奈川県鎌倉市の家のローンと維持費が生活を圧迫し、水道や電気などの公共料金すら支払えない事態となりました。その家は現在売りに出していて、4月に引っ越した福島県南相馬市の借家は月額6万円の家賃なので、今後は食うに困るという状況には陥らないと思います。

--収入が多かったときに貯金はしていなかったのでしょうか。2000年に亡くなった元恋人の東由多加氏が闘病されていた際は、アメリカの病院での毎週500万円もの高額ながん治療費を柳さんが工面されていたそうですが。

 貯金はしていませんでした。東さんががんになる前は、浪費、乱費をしていましたね。ブランド品や貴金属など後に残るモノを買うわけではないんです。例えば、タクシーに乗るんですが、目的地に向かうために乗るのではなく、ただ2時間走り回る。そうやってお金を無目的に無意味に使うということに意地になっていました。20代から抗鬱剤を服用し、出血性胃炎や十二指腸潰瘍などで入退院を繰り返していたので、長く生きられるとも、長く生きたいとも思っていなかったんです。

●お金のために書くわけではない

--収入が減って、講演会や講師など“書く”以外の仕事をしようとは思わなかったのですか。

 もともと人前に出て話すことが苦手だから書く仕事を選んだんです。ほかの方法でお金を得ることは考えられません。ただ、一時期、小説家を辞めてドッグトレーナーになろうと学校に通っていたことはあります。犬を相手にするドッグトレーナーなら、人間とは話さないで済みそうだと思って。

--「小説家を辞めて」? 副業ではなく?

 はい。でも、実際相手にするのは、犬よりも、その飼い主でした。かなり理不尽なオーダーもあると知って、私には向いていないとあきらめました(笑)。

--「芥川賞受賞」という名誉があれば、テレビ番組やCMなどの声もかかりそうですが、そういった仕事もダメですか。

 テレビ番組の出演依頼は何度かありましたね。引き受けると返事をしても、番組のスポンサー側から「待った」がかかるんです。そのたびに、私は依頼してきた担当者を「あぁ、やっぱり。仕方ないですよ。気にしないでください」と慰めています。ネットで「柳美里」と検索すると、ロクなものが出てこないんで。昔は人の噂も七十五日と言いましたが、ネットにいったん出回った風評や噂話は、ある人が聞き飽きたとしても、ある人が初耳である限り拡散され続けます。でも、「柳美里」のイメージが最悪だということは嘆くことではなく、逆によかったと思っているんですよ。「私には書くことしかない」と、書くことに追い詰めてくれますからね。

--講師に講演会にテレビに、うまくやって儲けている作家がうらやましくなることは?

 まったくありません。私がお金を得る手段は書くことしかないけれども、お金のために書いているわけではないのです。作品を書いているときは、“その作品への奉仕”の気持ちしかありません。私には10年、20年とずっと読み続けてくれる方がいらっしゃるので、とてもありがたいです。読者の方に支えられていると思っています。

--子どもへの貧困の影響はありませんでしたか。例えば、子どもから貧しさを責められるとか、柳さん自身が罪悪感に苛まれるとか。

 なかったですね。食べるものがないときは、うちの母が近くに住んでいるので、息子に「食べものがない」とは言わず、「ばあばのところでごはんを食べてきなよ」と言って行かせることは何度もありました。そうやって子どもには食べさせて、私と同居人の村上くんは食べないか、食べてもチキンラーメンとか。

--シングルマザーの貧困が問題となっています。

 私の場合、「シングルだから子どもに手が回らないんだ」と思われたくなくて、肩肘を張ってしまったことも鬱になった原因のひとつです。幼稚園のお弁当だけは絶対に手を抜きたくないと思い、執筆で徹夜が続いても冷凍食品は一切使わず、毎朝お弁当の中身をポラロイドに撮って、帰ってきたら何は食べた、何は残したなどと細かくノートに記録していたら、あるとき気持ちが崩れてしまいました。やはりシングルマザーは、経済的に余裕がないか、もしくは時間的、精神的に余裕がないか、どれかに陥りがちだとは思います。

--貧しさそのものが原因で悩んで鬱になることはなかったんですか。

 子どものころから貧乏に慣れていたので、それはありませんでした。おかずがないので、きょうだいでノビルやハコベなどの野草を採ってきておひたしにして食べたり、ごはんに麦茶をかけて食べたりしていましたからね。うちは、子どもだけで夜を過ごさなければならなかったんです。母親がキャバレーのホステス、父親がパチンコ屋の釘師で、ふたりとも夜間の仕事でしたからね。

●「創」の原稿料未払いをブログに書いた理由

--例えば、単行本を書き下ろすとすると、出版されるまで、書いている間は長期間無収入となりますね。印税を先払いするなど、作家への待遇を改善すべきだと思いますか。

 出版社自体、経営難に陥っているので、それは難しいと思います。かつてはノンフィクションであれば執筆前に取材費が出ていましたが、今は自腹です。執筆期間中は無収入で取材費も出ないとなると、経済的な基盤がある人でないとノンフィクションは書けないということになりますね。かつて新潮ドキュメント賞の選考委員を10年間務めていたのですが、NHKでテレビ番組化した主題を放送後にノンフィクション化した作品がたびたび最終選考に残っていました。確かに受賞作として相応しい作品ではあるのですが、潤沢に取材費を使える恵まれた環境にあるテレビマンによる作品と、フリーのノンフィクション作家の作品を、取材力で比べるのは酷だと思います。

--その点は出版界全体で考えていく必要がありますね。

 しかし、出版業界には、お金の話はおおっぴらにはしないという暗黙の了解がありますよね。原稿料も印税率も初版部数も、公にすることはルール違反とされています。

--その中であえて「創」の原稿料未払いの件を金額も含めて公にしたのはなぜですか。

 作家や出版業界は儲かっているという世間的な誤解を解きたかったんです。もちろん、いきなり公表したわけでなく、「創」編集部には、何年間も催促し続けています。催促するとたまに数万円振り込まれたりして、まったく払う意志がないわけではなさそうでした。そんなこんなで延ばし延ばしになっていたので、もうこのまま書き続けることはできないと判断しました。

--未払い騒動は、当初の概算約1136万8078円から柳さんが大幅に譲歩し、140万8706円が支払われる形で解決しました。そのお金も健康保険の支払いなどに消え、生活が楽になったわけではないそうですね。今、貧乏を脱出するためには、どうすればいいとお考えですか。

 書くしかありません。お金を稼ぐ手段は書くことしかない。この4年間、『警戒区域』というノンフィクション作品を抱えていて、これは雑誌掲載ではなく、単行本書き下ろしなので、原稿料がもらえないんです。ですから、非常に厳しいんですが、『警戒区域』を書き上げて出版して、すぐに原稿料をもらえる小説を書き始めれば、“いける”んじゃないかという気はしています。“いける”といっても、余裕ができるわけではないけど、やりくりしていける自信はある。『貧乏の神様』という本書のタイトルはこのこと。“貧乏”は私を書かせる神様なんです。
(構成=安楽由紀子)

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コマツの“最強コンピュータ”はなぜ狂った?予測不能な新興国で需要読み違え、本社で悲鳴

コマツ 公式サイト」より
 千里眼のように需要を先読みしてくれるはずだった、コマツ自慢のコンピュータ需要予測システムが狂った。

 コマツは4月27日、2016年3月期連結決算は純利益が前期比10.4%減の1380億円となり、2期連続で減益になる見通しだと発表した。同社は、記者会見で2期連続減益の要因を「中国経済減速で建設・鉱山機械の市場が20~25%縮小した。新興国でも需要が減少している」と説明した。

 同日に発表された15年3月期連結決算は、売上高が前期比1.3%増の1兆9787億円、営業利益が同0.7%増の2421億円、純利益が同3.5%減の1540億円だ。ほかの輸出企業と同様、円安の恩恵を十分に受けながら、売上高も営業利益も前年比横ばいを保つのがやっとだった。

 同社は、12年度に策定した中期経営計画(13~15年度)で、建設・鉱山機械需要は13年度を底に徐々に回復すると予測していた。ところが、中国の経済成長減速、新興国の経済成長鈍化、鉱山資源価格下落などの影響で、14年度から主力事業の建設・鉱山機械が大幅な売り上げ減少に陥った。

 特に、12年度まで好調だった鉱山機械・車両の14年度売り上げは前年度比26%減だ。石炭などの価格低迷を受け、体力のない中小資源開発事業者だけではなく、資源メジャーまで新規購入を控え、手持ち鉱山機械・車両を修理しながら使い続ける状況が続いている。

 このため、同社は決算説明会で「現在の経営環境は中計策定時の想定から大きく乖離しており、中計目標の進捗に多大な影響を及ぼしている」と、得意の需要予測の誤りを認めざるを得なかった。

 自信を喪失したかのように、同社が期初から決算の減益予想を発表するのは、リーマン・ショックの影響を受けた09年度以来6年ぶりのことだ。「ダントツ商品、ダントツサービス、ダントツソリューション」の「ダントツ経営」で着実な成長を続け、今や「製造業の優等生」とまでいわれる同社に、いったいなにが起こっているのだろうか。

 関係者への取材から深層を探ると、今はやりのビッグデータを活用したコンピュータ需要予測システム「KOMTRAX(コムトラックス)」に対する過信が見えてきた。

市場の変化をつかめなかった、自慢のコンピュータシステム


 同社の需要予測が狂う兆候は、13年9月から表れていた。ある日、本社の一角で突然、悲鳴のような声が上がる。

「なに、鉱山で使う大型ダンプや油圧ショベルの商談が、国全体でも数件しかないだと?」

 その日、インドネシアの現地法人から送られてきた営業報告は、同国の鉱山機械・車両の冷え切った需要状況を伝えるものだった。本社サイドが分析した「回復基調」の予測は、完全に外れていた。

 その後も需要は回復せず、13年10月下旬、同社は14年3月期の連結営業利益予想を約1000億円下方修正した。

 13年5月、前月に就任したばかりの大橋徹二社長は、インドネシアの首都・ジャカルタにいた。インドネシアは資源バブルの崩壊以降、石炭採掘に使う鉱山機械・車両の需要が減退しており、大橋社長の最大の懸念事項になっていた。そこで、「いつになれば、需要の前提となる石炭市況が回復するのか」を直接確かめたいという思いを抑えきれず、社長就任直後の超多忙な状況にもかかわらず、現地視察を敢行したのだ。

 大橋社長は、現地のコマツ販売代理店や石炭開発会社のトップと面会し、石炭市況の先行きを聞いて回ったのはもちろん、石炭採掘現場に足を延ばし、現場管理者にも石炭市況の見通しを聞いた。

 すると、返ってきたのは、いずれも「しばらくすれば、市況は回復する」という答えだった。「市況の先行きは不安だ」の声は誰からも聞かれなかった。東京で深刻な状況を心配していた大橋社長は、現地関係者のあっけらかんとした反応に拍子抜けする思いだったようだ。

 だが、9月になっても鉱山機械・車両需要回復の兆しは見えなかった。大橋社長が、現地関係者の根拠のない楽観的な見通しを真に受けたことを悔やんだ時は、すでに万事休すだった。同社は、業績予想の下方修正に追い込まれた。

 実は、インドネシア事業の予測外れは、新米社長の判断ミスだけが原因ではなかった。同社が頼りにしていたコムトラックス自体が、変化をつかめなかったのだった。

ビッグデータ収集と製販一体のデータ分析で「万全の需要予測」


 コムトラックスは、通信衛星や携帯電話の回線を使い、コマツが世界中で販売した建設機械や鉱山機械の稼働状況を、リアルタイム監視できる遠隔管理システムだ。

 このシステムに伴い、同社の建設・鉱山機械は、稼働状況を監視するセンサーや稼働場所を特定するGPSを標準装備しており、大阪工場のオペレーションセンターで一元管理されている。

 センターの正面壁には4台の大型モニターが並び、世界各地の工場ラインなどの映像が24時間リアルタイムで映し出されている。オペレータはそれを見ながら、自席のパソコンでコムトラックスを通じて世界中から集まる34万台以上の機械の稼働状況、流通在庫、日々の販売台数などをチェックしているのだ。

 同社は、これらの分析結果などを判断材料に、毎月開催する全社販生会議で、生産台数の増減を月次で決める。ビッグデータ活用の巧拙が、同社の収益を大きく左右しているのだ。

 全社販生会議は、販売部門と生産部門が一体となった同社独特の組織だ。議長は、篠塚久志取締役と、高橋良定専務執行役員が共同で務めている。同会議には、社内から選出された販売・生産の管理職と、藤塚主夫CFOが参加する。

 同会議は、建設・鉱山機械の稼働状況、日次販売状況などのビッグデータ分析に基づき、世界中の同社工場の生産台数を決め、流通在庫最適化を図る、司令塔の役目をしている。

 同社が同会議を設置したのは、11年だ。08年のリーマン・ショックによる世界的な景気後退により、建設機械の在庫が膨れ上がってしまった反省がきっかけだった。当時も、コムトラックスにより機械の稼働状況はリアルタイムで把握していたものの、流通在庫や日次販売状況までは把握できなかったからだ。

 当時の社長だった野路國夫会長の指示で、流通在庫はすべてコマツの資産にした。代理店の資産にしてしまうと、流通在庫を正確に把握できないからだ。その結果、一時は1万8000台もあった流通在庫を約1万台まで削減、以後は適正化を実現している。

 コムトラックスの威力は、それだけではない。さまざまな経済指標と機械の販売データ、機械の稼働データなどをチャート分析すれば、国別の需要予測ができる。さらに、各国の経済成長についても、かなりの精度で予測できるといわれている。当然、それらのデータを販促に活用することもできる。

 例えば、建設機械の稼働時間が半年前より長くなっていれば、それだけ消耗している証拠であり、更新時期が近づいていると推測できる。それにより、同社は競合他社よりも先に営業ができるというわけだ。

 業界内で、コムトラックスが単なる遠隔管理システムではなく「コンピュータ需要予測システム」と見られているゆえんだ。

コンピュータには荷が重すぎた、新興国の需要予測


 そのコムトラックスが、なぜインドネシア市場の変化をつかめなかったのだろうか。

 インドネシアでは13年夏以降、現地関係者が揃って楽観視していたように市況が回復、石炭採掘量が増えていた。当然、コマツの鉱山機械の稼働時間も短縮されていなかった。「全社販生会議でも、コムトラックスの分析からインドネシアの石炭市況は回復に向かっており、鉱山機械の買い替え需要は減らないと判断された」と、同社の関係者は打ち明ける。

 この判断を打ち砕いたのが、インドネシアの通貨であるルピアの急落だった。同年7月以降、ルピアの対ドルレートは約20%も下落した。鉱山機械の取引は、その大半がドル建てだ。現地の石炭開発会社に、コマツの鉱山機械を買い替える余裕はなかった。

 前出の関係者は「インドネシアのように、想定外の要素が絡んでくると、いくら賢いコムトラックスでもお手上げだ」と、コンピュータ需要予測の限界を認めている。

 コマツが「伝統市場」と位置付けている日米欧の先進国市場と、「戦略市場」と位置付けている中国をはじめとする新興国市場は、事業環境がまるで異なる。同社が古くから事業展開を行ってきた先進国では、すでに営業ネットワークが張り巡らされている。このため、マクロの経済データはもとより、顧客個別の経営状況など、生の市場データもつかみやすい。

 一方、同社売上高の過半数を占める新興国では、営業ネットワークが未整備な上、政府発表の経済統計ですら水増しがあるなど、マクロのデータ自体の信憑性が低い。加えて、「販売代理店の販売計画は『やってみなければわからない』というずさんさで、マージン稼ぎの水増し報告も多い。顧客の購入計画も、猫の目のようにコロコロ変わります。そもそも、何が起きるかわからない新興国で、1年先の需要予測をするのは不可能に近い」(建設機械業界関係者)といわれている。

 つまり、不確実な要素が多すぎるため、コンピュータでは需要予測が困難な事業環境といえる。インドネシア市場の需要予測が狂ったのは、インドネシア個別の事情によるものではなかったのだ。

 前出の建設機械業界関係者は、自らの営業経験から、「新興国の需要予測で頼りになるのは、本社の分析ではなく現場の皮膚感覚です」と断言する。

 ビッグデータを活用したコンピュータ需要予測に頼る経営から、人間が需要変化に即応できる経営へ。今回の2期連続減益予想は、コマツにそんな教訓をもたらしたようだ。
(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)

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