「グランメゾン東京」より「ササミフライ一本」が強い! ――メニューを絞り込んだ飲食店の強み – 君はなぜ学ばないのか?

シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、『君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。

恵比寿の「顔」が外資の手に…サッポロ不動産売却で露呈した、国内デベロッパー「完敗」の構造的欠陥

●この記事のポイント
・サッポロHDが恵比寿ガーデンプレイスを含む不動産事業を外資ファンドへ売却。国内大手も入札に参加したが、価格面で完敗した。背景には建設費高騰と、外資との投資手法・資金調達力の差という構造問題がある。
・日本の一等地が外資に渡る理由は「円安」だけではない。低金利を生かした高レバレッジ投資と、日本企業の保守的な採算規律が、国内デベロッパーを自国市場で不利にしている実態を検証する。
・「街を守る」とは所有し続けることではない。世界基準で価値を最大化できなかった企業から、不動産は市場原理で移転する。恵比寿の主役交代は、日本企業の経営姿勢そのものを問う出来事だ。

 2025年のクリスマスイブ、日本の不動産業界に激震が走った。サッポロホールディングス(HD)が、傘下のサッポロ不動産開発を米投資ファンドのKKRとPAGの連合に売却すると発表したのだ。譲渡額は約4,770億円。対象には、東京・恵比寿のランドマークとして知られる「恵比寿ガーデンプレイス」一帯が含まれる。

 かつてサッポロビール工場跡地を再開発し、山手線沿線の一角に新たな街のブランドを築き上げたこのエリアは、国内デベロッパーによる“街づくり”の成功例として語られてきた。その「虎の子」が、ついに外資の手に渡る。この事実は、単なる一企業の資産売却にとどまらない。日本の一等地が、構造的に「外資に勝てない市場」へと変質した現実を浮き彫りにしている。

●目次

「価格面で話にならない」国内勢の早期脱落

 今回の入札には、三菱地所、三井不動産、住友不動産といった国内大手デベロッパーも名を連ねた。しかし関係者の証言によれば、勝負は早々に決していたという。

「外資が提示してきた価格は、国内勢の想定レンジを大きく上回っていた。事業計画以前に、価格面でテーブルに着けなかった」(不動産投資会社幹部)

 なぜ、日本の一等地で、日本企業が外資に完敗するのか。背景には、大きく二つの構造的な壁が存在する。

壁① 建設費高騰と「自前開発モデル」の限界

 一つ目は、建設費高騰と採算性のジレンマだ。国内デベロッパーの多くは、土地を取得し、自ら再開発・長期保有することで安定収益を得るモデルを採用してきた。しかし、資材価格の高騰、人手不足による人件費上昇により、再開発の採算ラインは年々厳しくなっている。

 不動産ジャーナリストの秋田智樹氏は、次のように指摘する。

「今の建設費水準では、高値で土地を取得すれば将来の減損リスクが避けられない。国内勢は“街を作る責任”を負っている分、無理な価格では手を出せない」

 結果として、長期視点を持つ国内勢ほど、入札で不利になる逆転現象が起きている。

壁② レバレッジを極限まで効かせる外資の投資設計

 もう一つの壁が、投資リテラシーとレバレッジ活用の差だ。外資ファンドは「Capital Stack(資本の積み上げ)」と呼ばれる多層的な資金調達を駆使し、自己資本を極限まで抑える。買収資金の70〜80%以上を借入(デット)で賄うLBO(レバレッジド・バイアウト)は、その典型だ。

 さらに、通常の銀行融資と自己資本の間に「メザニン」と呼ばれる高利回りの中間資金を挟み込むことで、自己資本利益率(IRR)を飛躍的に高める。

「表面的な利回りは低く見えても、レバレッジをかければ投資家へのリターンは成立する。国内勢の保守的な社内規定では、同じ計算はできない」(外資系不動産ファンド関係者)

「日本の銀行の金で、日本を買う」という現実

 皮肉なのは、こうした外資の買収資金の多くが日本のメガバンクからの低利融資で賄われている点だ。世界的に金利が高止まりするなか、日本は依然として例外的な低金利国である。円安局面で外貨を円転し、日本の金融機関から借り入れることで、外資は二重の恩恵を享受する。

「実態としては、日本の資産を、日本の銀行の金で、日本人に代わって買っている構図です」(秋田氏)

 これはもはや一企業の問題ではなく、日本の金融・不動産市場全体の構造問題といえる。

 今回の売却劇を語るうえで欠かせないのが、サッポロHDに対する物言う株主の存在だ。シンガポール拠点の3Dインベストメント・アソシエイツなどは、長年にわたり「不動産に眠る含み益」を問題視してきた。

「本業が低迷するなか、不動産収益で帳尻を合わせる経営は、資本効率の観点から許されなくなっている」(金融アナリストの川﨑一幸氏)

 かつての「土地を持っていれば安泰」という日本的成功体験は、グローバル資本の前では通用しない。今回の売却は、その終焉を象徴する出来事だ。

次のターゲットはどこか

 同様の動きは、西武HDによる「東京ガーデンテラス紀尾井町」のブラックストーンへの売却でも確認された。今後、外資の標的になりやすいのは次の領域とみられる。

 ・私鉄各社のターミナル周辺不動産
 ・飲料・製造業が保有する工場跡地
 ・福岡、名古屋など地方中核都市の一等地

 建設費高騰で国内勢が足踏みする隙に、外資が「街の顔」を押さえる流れは加速するだろう。

 外資ファンドの参入は、市場の流動性を高めるという側面もある。しかし懸念されるのは、投資期間3〜5年を前提とする短期的な出口戦略だ。都市計画の専門家からは、「街の価値は数十年単位で育つ。だがファンドの評価軸はIRR(内部収益率)だ。そこに齟齬が生まれる」といった声も漏れる。

 恵比寿という街のアイデンティティは、効率を最優先する管理のもとで、無機質な「金融商品」へと変質するリスクを孕んでいる。

 一方で、「日本人は、自分たちの街の“値段”を知らなすぎたのではないか」との指摘もある。外資による“侵略”と嘆くのは簡単だ。しかし彼らは、日本の法律の下で正当な対価を払っている。問われるべきは、日本企業が一等地を「世界基準で使いこなす努力」を怠ってこなかったか、という視点だ。

「街を守る」とは、所有し続けることではない。価値を最大化し続ける覚悟を持てなかった企業から、土地が市場原理によって引き剥がされている。恵比寿の主役交代は、日本全体に突きつけられた痛烈な問いにほかならない。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

恵比寿の「顔」が外資の手に…サッポロ不動産売却で露呈した、国内デベロッパー「完敗」の構造的欠陥

●この記事のポイント
・サッポロHDが恵比寿ガーデンプレイスを含む不動産事業を外資ファンドへ売却。国内大手も入札に参加したが、価格面で完敗した。背景には建設費高騰と、外資との投資手法・資金調達力の差という構造問題がある。
・日本の一等地が外資に渡る理由は「円安」だけではない。低金利を生かした高レバレッジ投資と、日本企業の保守的な採算規律が、国内デベロッパーを自国市場で不利にしている実態を検証する。
・「街を守る」とは所有し続けることではない。世界基準で価値を最大化できなかった企業から、不動産は市場原理で移転する。恵比寿の主役交代は、日本企業の経営姿勢そのものを問う出来事だ。

 2025年のクリスマスイブ、日本の不動産業界に激震が走った。サッポロホールディングス(HD)が、傘下のサッポロ不動産開発を米投資ファンドのKKRとPAGの連合に売却すると発表したのだ。譲渡額は約4,770億円。対象には、東京・恵比寿のランドマークとして知られる「恵比寿ガーデンプレイス」一帯が含まれる。

 かつてサッポロビール工場跡地を再開発し、山手線沿線の一角に新たな街のブランドを築き上げたこのエリアは、国内デベロッパーによる“街づくり”の成功例として語られてきた。その「虎の子」が、ついに外資の手に渡る。この事実は、単なる一企業の資産売却にとどまらない。日本の一等地が、構造的に「外資に勝てない市場」へと変質した現実を浮き彫りにしている。

●目次

「価格面で話にならない」国内勢の早期脱落

 今回の入札には、三菱地所、三井不動産、住友不動産といった国内大手デベロッパーも名を連ねた。しかし関係者の証言によれば、勝負は早々に決していたという。

「外資が提示してきた価格は、国内勢の想定レンジを大きく上回っていた。事業計画以前に、価格面でテーブルに着けなかった」(不動産投資会社幹部)

 なぜ、日本の一等地で、日本企業が外資に完敗するのか。背景には、大きく二つの構造的な壁が存在する。

壁① 建設費高騰と「自前開発モデル」の限界

 一つ目は、建設費高騰と採算性のジレンマだ。国内デベロッパーの多くは、土地を取得し、自ら再開発・長期保有することで安定収益を得るモデルを採用してきた。しかし、資材価格の高騰、人手不足による人件費上昇により、再開発の採算ラインは年々厳しくなっている。

 不動産ジャーナリストの秋田智樹氏は、次のように指摘する。

「今の建設費水準では、高値で土地を取得すれば将来の減損リスクが避けられない。国内勢は“街を作る責任”を負っている分、無理な価格では手を出せない」

 結果として、長期視点を持つ国内勢ほど、入札で不利になる逆転現象が起きている。

壁② レバレッジを極限まで効かせる外資の投資設計

 もう一つの壁が、投資リテラシーとレバレッジ活用の差だ。外資ファンドは「Capital Stack(資本の積み上げ)」と呼ばれる多層的な資金調達を駆使し、自己資本を極限まで抑える。買収資金の70〜80%以上を借入(デット)で賄うLBO(レバレッジド・バイアウト)は、その典型だ。

 さらに、通常の銀行融資と自己資本の間に「メザニン」と呼ばれる高利回りの中間資金を挟み込むことで、自己資本利益率(IRR)を飛躍的に高める。

「表面的な利回りは低く見えても、レバレッジをかければ投資家へのリターンは成立する。国内勢の保守的な社内規定では、同じ計算はできない」(外資系不動産ファンド関係者)

「日本の銀行の金で、日本を買う」という現実

 皮肉なのは、こうした外資の買収資金の多くが日本のメガバンクからの低利融資で賄われている点だ。世界的に金利が高止まりするなか、日本は依然として例外的な低金利国である。円安局面で外貨を円転し、日本の金融機関から借り入れることで、外資は二重の恩恵を享受する。

「実態としては、日本の資産を、日本の銀行の金で、日本人に代わって買っている構図です」(秋田氏)

 これはもはや一企業の問題ではなく、日本の金融・不動産市場全体の構造問題といえる。

 今回の売却劇を語るうえで欠かせないのが、サッポロHDに対する物言う株主の存在だ。シンガポール拠点の3Dインベストメント・アソシエイツなどは、長年にわたり「不動産に眠る含み益」を問題視してきた。

「本業が低迷するなか、不動産収益で帳尻を合わせる経営は、資本効率の観点から許されなくなっている」(金融アナリストの川﨑一幸氏)

 かつての「土地を持っていれば安泰」という日本的成功体験は、グローバル資本の前では通用しない。今回の売却は、その終焉を象徴する出来事だ。

次のターゲットはどこか

 同様の動きは、西武HDによる「東京ガーデンテラス紀尾井町」のブラックストーンへの売却でも確認された。今後、外資の標的になりやすいのは次の領域とみられる。

 ・私鉄各社のターミナル周辺不動産
 ・飲料・製造業が保有する工場跡地
 ・福岡、名古屋など地方中核都市の一等地

 建設費高騰で国内勢が足踏みする隙に、外資が「街の顔」を押さえる流れは加速するだろう。

 外資ファンドの参入は、市場の流動性を高めるという側面もある。しかし懸念されるのは、投資期間3〜5年を前提とする短期的な出口戦略だ。都市計画の専門家からは、「街の価値は数十年単位で育つ。だがファンドの評価軸はIRR(内部収益率)だ。そこに齟齬が生まれる」といった声も漏れる。

 恵比寿という街のアイデンティティは、効率を最優先する管理のもとで、無機質な「金融商品」へと変質するリスクを孕んでいる。

 一方で、「日本人は、自分たちの街の“値段”を知らなすぎたのではないか」との指摘もある。外資による“侵略”と嘆くのは簡単だ。しかし彼らは、日本の法律の下で正当な対価を払っている。問われるべきは、日本企業が一等地を「世界基準で使いこなす努力」を怠ってこなかったか、という視点だ。

「街を守る」とは、所有し続けることではない。価値を最大化し続ける覚悟を持てなかった企業から、土地が市場原理によって引き剥がされている。恵比寿の主役交代は、日本全体に突きつけられた痛烈な問いにほかならない。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

恵比寿の「顔」が外資の手に…サッポロ不動産売却で露呈した、国内デベロッパー「完敗」の構造的欠陥

●この記事のポイント
・サッポロHDが恵比寿ガーデンプレイスを含む不動産事業を外資ファンドへ売却。国内大手も入札に参加したが、価格面で完敗した。背景には建設費高騰と、外資との投資手法・資金調達力の差という構造問題がある。
・日本の一等地が外資に渡る理由は「円安」だけではない。低金利を生かした高レバレッジ投資と、日本企業の保守的な採算規律が、国内デベロッパーを自国市場で不利にしている実態を検証する。
・「街を守る」とは所有し続けることではない。世界基準で価値を最大化できなかった企業から、不動産は市場原理で移転する。恵比寿の主役交代は、日本企業の経営姿勢そのものを問う出来事だ。

 2025年のクリスマスイブ、日本の不動産業界に激震が走った。サッポロホールディングス(HD)が、傘下のサッポロ不動産開発を米投資ファンドのKKRとPAGの連合に売却すると発表したのだ。譲渡額は約4,770億円。対象には、東京・恵比寿のランドマークとして知られる「恵比寿ガーデンプレイス」一帯が含まれる。

 かつてサッポロビール工場跡地を再開発し、山手線沿線の一角に新たな街のブランドを築き上げたこのエリアは、国内デベロッパーによる“街づくり”の成功例として語られてきた。その「虎の子」が、ついに外資の手に渡る。この事実は、単なる一企業の資産売却にとどまらない。日本の一等地が、構造的に「外資に勝てない市場」へと変質した現実を浮き彫りにしている。

●目次

「価格面で話にならない」国内勢の早期脱落

 今回の入札には、三菱地所、三井不動産、住友不動産といった国内大手デベロッパーも名を連ねた。しかし関係者の証言によれば、勝負は早々に決していたという。

「外資が提示してきた価格は、国内勢の想定レンジを大きく上回っていた。事業計画以前に、価格面でテーブルに着けなかった」(不動産投資会社幹部)

 なぜ、日本の一等地で、日本企業が外資に完敗するのか。背景には、大きく二つの構造的な壁が存在する。

壁① 建設費高騰と「自前開発モデル」の限界

 一つ目は、建設費高騰と採算性のジレンマだ。国内デベロッパーの多くは、土地を取得し、自ら再開発・長期保有することで安定収益を得るモデルを採用してきた。しかし、資材価格の高騰、人手不足による人件費上昇により、再開発の採算ラインは年々厳しくなっている。

 不動産ジャーナリストの秋田智樹氏は、次のように指摘する。

「今の建設費水準では、高値で土地を取得すれば将来の減損リスクが避けられない。国内勢は“街を作る責任”を負っている分、無理な価格では手を出せない」

 結果として、長期視点を持つ国内勢ほど、入札で不利になる逆転現象が起きている。

壁② レバレッジを極限まで効かせる外資の投資設計

 もう一つの壁が、投資リテラシーとレバレッジ活用の差だ。外資ファンドは「Capital Stack(資本の積み上げ)」と呼ばれる多層的な資金調達を駆使し、自己資本を極限まで抑える。買収資金の70〜80%以上を借入(デット)で賄うLBO(レバレッジド・バイアウト)は、その典型だ。

 さらに、通常の銀行融資と自己資本の間に「メザニン」と呼ばれる高利回りの中間資金を挟み込むことで、自己資本利益率(IRR)を飛躍的に高める。

「表面的な利回りは低く見えても、レバレッジをかければ投資家へのリターンは成立する。国内勢の保守的な社内規定では、同じ計算はできない」(外資系不動産ファンド関係者)

「日本の銀行の金で、日本を買う」という現実

 皮肉なのは、こうした外資の買収資金の多くが日本のメガバンクからの低利融資で賄われている点だ。世界的に金利が高止まりするなか、日本は依然として例外的な低金利国である。円安局面で外貨を円転し、日本の金融機関から借り入れることで、外資は二重の恩恵を享受する。

「実態としては、日本の資産を、日本の銀行の金で、日本人に代わって買っている構図です」(秋田氏)

 これはもはや一企業の問題ではなく、日本の金融・不動産市場全体の構造問題といえる。

 今回の売却劇を語るうえで欠かせないのが、サッポロHDに対する物言う株主の存在だ。シンガポール拠点の3Dインベストメント・アソシエイツなどは、長年にわたり「不動産に眠る含み益」を問題視してきた。

「本業が低迷するなか、不動産収益で帳尻を合わせる経営は、資本効率の観点から許されなくなっている」(金融アナリストの川﨑一幸氏)

 かつての「土地を持っていれば安泰」という日本的成功体験は、グローバル資本の前では通用しない。今回の売却は、その終焉を象徴する出来事だ。

次のターゲットはどこか

 同様の動きは、西武HDによる「東京ガーデンテラス紀尾井町」のブラックストーンへの売却でも確認された。今後、外資の標的になりやすいのは次の領域とみられる。

 ・私鉄各社のターミナル周辺不動産
 ・飲料・製造業が保有する工場跡地
 ・福岡、名古屋など地方中核都市の一等地

 建設費高騰で国内勢が足踏みする隙に、外資が「街の顔」を押さえる流れは加速するだろう。

 外資ファンドの参入は、市場の流動性を高めるという側面もある。しかし懸念されるのは、投資期間3〜5年を前提とする短期的な出口戦略だ。都市計画の専門家からは、「街の価値は数十年単位で育つ。だがファンドの評価軸はIRR(内部収益率)だ。そこに齟齬が生まれる」といった声も漏れる。

 恵比寿という街のアイデンティティは、効率を最優先する管理のもとで、無機質な「金融商品」へと変質するリスクを孕んでいる。

 一方で、「日本人は、自分たちの街の“値段”を知らなすぎたのではないか」との指摘もある。外資による“侵略”と嘆くのは簡単だ。しかし彼らは、日本の法律の下で正当な対価を払っている。問われるべきは、日本企業が一等地を「世界基準で使いこなす努力」を怠ってこなかったか、という視点だ。

「街を守る」とは、所有し続けることではない。価値を最大化し続ける覚悟を持てなかった企業から、土地が市場原理によって引き剥がされている。恵比寿の主役交代は、日本全体に突きつけられた痛烈な問いにほかならない。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

箱根駅伝、もう一つの闘い…ナイキ転落、アディダスを猛追アシックス・プーマの戦略

●この記事のポイント
・箱根駅伝2026は、もはや正月の風物詩ではなくスポーツメーカーの主戦場だ。ナイキの後退、アディダス首位、アシックスとプーマの台頭が、足元の勢力図激変を物語る。
・厚底シューズの進化で駅伝は高速化し、着用モデルは多極化。走法別設計のアシックス、安定感のアディダス、体験重視のプーマなど、各社の戦略差が鮮明になっている。 
・急成長するプーマは、Z世代ランナーに寄り添う「体験と囲い込み」で存在感を拡大。箱根の足元は、次世代ランニング市場の覇権を占う重要な指標となっている。

 2026年1月2日、東京・大手町から箱根・芦ノ湖へ――。第102回を迎える東京箱根間往復大学駅伝競走(通称「箱根駅伝」)が号砲を迎える。沿道観客は延べ100万人規模、テレビ中継の平均視聴率は20%超。正月三が日の“国民的行事”として不動の地位を築いてきた箱根駅伝だが、近年その性格は大きく変質している。

 いまや箱根路は、スポーツメーカーにとって「年間最大の実走広告塔」であり、ブランドの命運を懸けた戦場だ。背景にあるのが、シューズ性能による「駅伝の高速化」である。元日のニューイヤー駅伝では区間新記録が相次ぎ、「厚底+高反発」が競技の前提条件になったことを改めて印象づけた。

 かつてはナイキの「厚底革命」が大学駅伝を席巻し、箱根での着用率が9割を超えた年もあった。しかし2026年大会を前に、選手たちの足元はかつてないほど多極化している。

 スポーツマーケティングに詳しい戦略コンサルタントの高野輝氏はこう指摘する。

「箱根駅伝は単なる競技会ではなく、“視聴率20%超のBtoC実証実験”です。ここで履かれたシューズは、翌日から市民ランナーの購買行動に直結する。各社が数億円単位の投資を惜しまない理由です」

2026年大会を左右する「主要4強」の主力モデルを比較

 今大会、各メーカーのシェア争いを左右するのは、トップエリート向けのフラッグシップモデルだ。大学生ランナーは「支給されたから履く」のではなく、自身の走りに最適な一足を極めてシビアに選ぶ。その選択の積み重ねが、勢力図を形づくる。

アディダス:アディゼロ アディオス プロ 4 / Adizero Adios Pro 4
 昨年大会の着用率トップを誇る“現王者”。超軽量ミッドソール素材「ライトストライクプロ」と、洗練されたエナジーロッド構造による安定した推進力が武器だ。クセが少なく、区間を問わず対応できる汎用性が、首位を守った最大の要因とされる。

アシックス:METASPEED TOKYO Series
 日本ブランドの逆襲を象徴するモデル。「ピッチ型」「ストライド型」という走法別設計を徹底し、日本人ランナーの身体特性に真正面から向き合った。パリ五輪仕様に開発したPARISシリーズよりさらに約15g軽く、エネルギーリターンが約18.8%向上。箱根仕様に落とし込み、首位奪還を狙う。

ナイキ:Alphafly 4/Vaporfly 4
 かつての絶対王者は、現在3番手に後退。圧倒的な反発性能は健在だが、「履きこなすための筋力・フォーム」を要求する尖った設計が、大学生ランナー全体への適合性を下げているとの指摘もある。

プーマ:FAST-R NITRO ELITE 3
 最も勢いのある“挑戦者”。前足部と後足部を分離した独創的構造による爆発的な反発力が特徴で、2021年の着用率0%から、わずか数年で10%超へと急伸している。

 シューズ開発に詳しいスポーツ工学の専門家は、次のように分析する。

「性能差は紙一重ですが、大学駅伝では“扱いやすさ×信頼感”が重要です。ナイキはピーキー、アディダスは安定、アシックスは最適化、プーマは体験価値。この違いが数字に表れています」

なぜプーマはZ世代の学生ランナーの心を掴んだのか

 今回の勢力図で、最も注目すべきはプーマの急伸だ。単なる製品力だけでは説明できない背景がある。

「体験」と「コミュニティ」を売る戦略

 プーマが力を入れているのが、合宿地に設けた「PUMA RUNNING HOUSE」だ。ここは単なる展示スペースではない。水素吸入、サウナ、栄養サポートなど、最高水準のリカバリー体験を提供する拠点として機能している。

「Z世代の選手は、モノより“自分を理解してくれる環境”を重視します。プーマは“君たちの成長を支える場所”を用意した。それが刺さった」(大学陸上部コーチ)

「ブランドの民主化」で心理的距離を縮めた

 ナイキが「勝者の象徴」として高みに君臨する一方、プーマは選手の目線まで降りてきた。担当者が合宿に常駐し、微細な違和感や練習の悩みに向き合う。こうした積み重ねが、「この人たちのブランドを履きたい」という情緒的価値を生んでいる。

上下を押さえる“青田買い”戦略

 大学生だけでなく、実業団OB、有力高校生にも早期からアプローチ。SNSでの発信力が高い若年層を巻き込み、「プーマ=新しい」「勢いがある」というイメージを形成した。

「強豪校の先輩が履き、後輩が憧れる。この“伝統の連鎖”に入り込めたのは大きい」(高野氏)

外資の資本力か、国内の現場力か。「日本人の足」を巡る攻防

 箱根駅伝の舞台裏では、「グローバルvsローカル」の戦いも激化している。プーマやアディダスは、選手を欧米の開発拠点に招き、最先端の知見をフィードバック。一方、アシックスは日本人の足型をミリ単位で分析し、きめ細かな微調整を重ねる。

「日本の駅伝は世界でも特殊な競技文化。アシックスの現場密着型開発は、今後さらに評価される可能性があります」(同)

 加えて、オン(On)やホカ(HOKA)といった新興勢力も虎視眈々と箱根を狙う。“4強時代”は、すでに過渡期に入りつつある。

 2026年1月2日、選手たちが踏み出す一歩一歩は、各社の技術力と数億円規模のマーケティング投資の結晶だ。アディダスは王座を守れるのか。アシックスは日本ブランドの意地を見せられるのか。プーマは勢力図をさらに塗り替えるのか。

 中継所ごとに映し出される「足元のカウント」は、単なるデータではない。それは、次世代ランニング市場の覇権を占う、最もリアルな指標なのである。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

箱根駅伝、もう一つの闘い…ナイキ転落、アディダスを猛追アシックス・プーマの戦略

●この記事のポイント
・箱根駅伝2026は、もはや正月の風物詩ではなくスポーツメーカーの主戦場だ。ナイキの後退、アディダス首位、アシックスとプーマの台頭が、足元の勢力図激変を物語る。
・厚底シューズの進化で駅伝は高速化し、着用モデルは多極化。走法別設計のアシックス、安定感のアディダス、体験重視のプーマなど、各社の戦略差が鮮明になっている。 
・急成長するプーマは、Z世代ランナーに寄り添う「体験と囲い込み」で存在感を拡大。箱根の足元は、次世代ランニング市場の覇権を占う重要な指標となっている。

 2026年1月2日、東京・大手町から箱根・芦ノ湖へ――。第102回を迎える東京箱根間往復大学駅伝競走(通称「箱根駅伝」)が号砲を迎える。沿道観客は延べ100万人規模、テレビ中継の平均視聴率は20%超。正月三が日の“国民的行事”として不動の地位を築いてきた箱根駅伝だが、近年その性格は大きく変質している。

 いまや箱根路は、スポーツメーカーにとって「年間最大の実走広告塔」であり、ブランドの命運を懸けた戦場だ。背景にあるのが、シューズ性能による「駅伝の高速化」である。元日のニューイヤー駅伝では区間新記録が相次ぎ、「厚底+高反発」が競技の前提条件になったことを改めて印象づけた。

 かつてはナイキの「厚底革命」が大学駅伝を席巻し、箱根での着用率が9割を超えた年もあった。しかし2026年大会を前に、選手たちの足元はかつてないほど多極化している。

 スポーツマーケティングに詳しい戦略コンサルタントの高野輝氏はこう指摘する。

「箱根駅伝は単なる競技会ではなく、“視聴率20%超のBtoC実証実験”です。ここで履かれたシューズは、翌日から市民ランナーの購買行動に直結する。各社が数億円単位の投資を惜しまない理由です」

2026年大会を左右する「主要4強」の主力モデルを比較

 今大会、各メーカーのシェア争いを左右するのは、トップエリート向けのフラッグシップモデルだ。大学生ランナーは「支給されたから履く」のではなく、自身の走りに最適な一足を極めてシビアに選ぶ。その選択の積み重ねが、勢力図を形づくる。

アディダス:アディゼロ アディオス プロ 4 / Adizero Adios Pro 4
 昨年大会の着用率トップを誇る“現王者”。超軽量ミッドソール素材「ライトストライクプロ」と、洗練されたエナジーロッド構造による安定した推進力が武器だ。クセが少なく、区間を問わず対応できる汎用性が、首位を守った最大の要因とされる。

アシックス:METASPEED TOKYO Series
 日本ブランドの逆襲を象徴するモデル。「ピッチ型」「ストライド型」という走法別設計を徹底し、日本人ランナーの身体特性に真正面から向き合った。パリ五輪仕様に開発したPARISシリーズよりさらに約15g軽く、エネルギーリターンが約18.8%向上。箱根仕様に落とし込み、首位奪還を狙う。

ナイキ:Alphafly 4/Vaporfly 4
 かつての絶対王者は、現在3番手に後退。圧倒的な反発性能は健在だが、「履きこなすための筋力・フォーム」を要求する尖った設計が、大学生ランナー全体への適合性を下げているとの指摘もある。

プーマ:FAST-R NITRO ELITE 3
 最も勢いのある“挑戦者”。前足部と後足部を分離した独創的構造による爆発的な反発力が特徴で、2021年の着用率0%から、わずか数年で10%超へと急伸している。

 シューズ開発に詳しいスポーツ工学の専門家は、次のように分析する。

「性能差は紙一重ですが、大学駅伝では“扱いやすさ×信頼感”が重要です。ナイキはピーキー、アディダスは安定、アシックスは最適化、プーマは体験価値。この違いが数字に表れています」

なぜプーマはZ世代の学生ランナーの心を掴んだのか

 今回の勢力図で、最も注目すべきはプーマの急伸だ。単なる製品力だけでは説明できない背景がある。

「体験」と「コミュニティ」を売る戦略

 プーマが力を入れているのが、合宿地に設けた「PUMA RUNNING HOUSE」だ。ここは単なる展示スペースではない。水素吸入、サウナ、栄養サポートなど、最高水準のリカバリー体験を提供する拠点として機能している。

「Z世代の選手は、モノより“自分を理解してくれる環境”を重視します。プーマは“君たちの成長を支える場所”を用意した。それが刺さった」(大学陸上部コーチ)

「ブランドの民主化」で心理的距離を縮めた

 ナイキが「勝者の象徴」として高みに君臨する一方、プーマは選手の目線まで降りてきた。担当者が合宿に常駐し、微細な違和感や練習の悩みに向き合う。こうした積み重ねが、「この人たちのブランドを履きたい」という情緒的価値を生んでいる。

上下を押さえる“青田買い”戦略

 大学生だけでなく、実業団OB、有力高校生にも早期からアプローチ。SNSでの発信力が高い若年層を巻き込み、「プーマ=新しい」「勢いがある」というイメージを形成した。

「強豪校の先輩が履き、後輩が憧れる。この“伝統の連鎖”に入り込めたのは大きい」(高野氏)

外資の資本力か、国内の現場力か。「日本人の足」を巡る攻防

 箱根駅伝の舞台裏では、「グローバルvsローカル」の戦いも激化している。プーマやアディダスは、選手を欧米の開発拠点に招き、最先端の知見をフィードバック。一方、アシックスは日本人の足型をミリ単位で分析し、きめ細かな微調整を重ねる。

「日本の駅伝は世界でも特殊な競技文化。アシックスの現場密着型開発は、今後さらに評価される可能性があります」(同)

 加えて、オン(On)やホカ(HOKA)といった新興勢力も虎視眈々と箱根を狙う。“4強時代”は、すでに過渡期に入りつつある。

 2026年1月2日、選手たちが踏み出す一歩一歩は、各社の技術力と数億円規模のマーケティング投資の結晶だ。アディダスは王座を守れるのか。アシックスは日本ブランドの意地を見せられるのか。プーマは勢力図をさらに塗り替えるのか。

 中継所ごとに映し出される「足元のカウント」は、単なるデータではない。それは、次世代ランニング市場の覇権を占う、最もリアルな指標なのである。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

箱根駅伝、もう一つの闘い…ナイキ転落、アディダスを猛追アシックス・プーマの戦略

●この記事のポイント
・箱根駅伝2026は、もはや正月の風物詩ではなくスポーツメーカーの主戦場だ。ナイキの後退、アディダス首位、アシックスとプーマの台頭が、足元の勢力図激変を物語る。
・厚底シューズの進化で駅伝は高速化し、着用モデルは多極化。走法別設計のアシックス、安定感のアディダス、体験重視のプーマなど、各社の戦略差が鮮明になっている。 
・急成長するプーマは、Z世代ランナーに寄り添う「体験と囲い込み」で存在感を拡大。箱根の足元は、次世代ランニング市場の覇権を占う重要な指標となっている。

 2026年1月2日、東京・大手町から箱根・芦ノ湖へ――。第102回を迎える東京箱根間往復大学駅伝競走(通称「箱根駅伝」)が号砲を迎える。沿道観客は延べ100万人規模、テレビ中継の平均視聴率は20%超。正月三が日の“国民的行事”として不動の地位を築いてきた箱根駅伝だが、近年その性格は大きく変質している。

 いまや箱根路は、スポーツメーカーにとって「年間最大の実走広告塔」であり、ブランドの命運を懸けた戦場だ。背景にあるのが、シューズ性能による「駅伝の高速化」である。元日のニューイヤー駅伝では区間新記録が相次ぎ、「厚底+高反発」が競技の前提条件になったことを改めて印象づけた。

 かつてはナイキの「厚底革命」が大学駅伝を席巻し、箱根での着用率が9割を超えた年もあった。しかし2026年大会を前に、選手たちの足元はかつてないほど多極化している。

 スポーツマーケティングに詳しい戦略コンサルタントの高野輝氏はこう指摘する。

「箱根駅伝は単なる競技会ではなく、“視聴率20%超のBtoC実証実験”です。ここで履かれたシューズは、翌日から市民ランナーの購買行動に直結する。各社が数億円単位の投資を惜しまない理由です」

2026年大会を左右する「主要4強」の主力モデルを比較

 今大会、各メーカーのシェア争いを左右するのは、トップエリート向けのフラッグシップモデルだ。大学生ランナーは「支給されたから履く」のではなく、自身の走りに最適な一足を極めてシビアに選ぶ。その選択の積み重ねが、勢力図を形づくる。

アディダス:アディゼロ アディオス プロ 4 / Adizero Adios Pro 4
 昨年大会の着用率トップを誇る“現王者”。超軽量ミッドソール素材「ライトストライクプロ」と、洗練されたエナジーロッド構造による安定した推進力が武器だ。クセが少なく、区間を問わず対応できる汎用性が、首位を守った最大の要因とされる。

アシックス:METASPEED TOKYO Series
 日本ブランドの逆襲を象徴するモデル。「ピッチ型」「ストライド型」という走法別設計を徹底し、日本人ランナーの身体特性に真正面から向き合った。パリ五輪仕様に開発したPARISシリーズよりさらに約15g軽く、エネルギーリターンが約18.8%向上。箱根仕様に落とし込み、首位奪還を狙う。

ナイキ:Alphafly 4/Vaporfly 4
 かつての絶対王者は、現在3番手に後退。圧倒的な反発性能は健在だが、「履きこなすための筋力・フォーム」を要求する尖った設計が、大学生ランナー全体への適合性を下げているとの指摘もある。

プーマ:FAST-R NITRO ELITE 3
 最も勢いのある“挑戦者”。前足部と後足部を分離した独創的構造による爆発的な反発力が特徴で、2021年の着用率0%から、わずか数年で10%超へと急伸している。

 シューズ開発に詳しいスポーツ工学の専門家は、次のように分析する。

「性能差は紙一重ですが、大学駅伝では“扱いやすさ×信頼感”が重要です。ナイキはピーキー、アディダスは安定、アシックスは最適化、プーマは体験価値。この違いが数字に表れています」

なぜプーマはZ世代の学生ランナーの心を掴んだのか

 今回の勢力図で、最も注目すべきはプーマの急伸だ。単なる製品力だけでは説明できない背景がある。

「体験」と「コミュニティ」を売る戦略

 プーマが力を入れているのが、合宿地に設けた「PUMA RUNNING HOUSE」だ。ここは単なる展示スペースではない。水素吸入、サウナ、栄養サポートなど、最高水準のリカバリー体験を提供する拠点として機能している。

「Z世代の選手は、モノより“自分を理解してくれる環境”を重視します。プーマは“君たちの成長を支える場所”を用意した。それが刺さった」(大学陸上部コーチ)

「ブランドの民主化」で心理的距離を縮めた

 ナイキが「勝者の象徴」として高みに君臨する一方、プーマは選手の目線まで降りてきた。担当者が合宿に常駐し、微細な違和感や練習の悩みに向き合う。こうした積み重ねが、「この人たちのブランドを履きたい」という情緒的価値を生んでいる。

上下を押さえる“青田買い”戦略

 大学生だけでなく、実業団OB、有力高校生にも早期からアプローチ。SNSでの発信力が高い若年層を巻き込み、「プーマ=新しい」「勢いがある」というイメージを形成した。

「強豪校の先輩が履き、後輩が憧れる。この“伝統の連鎖”に入り込めたのは大きい」(高野氏)

外資の資本力か、国内の現場力か。「日本人の足」を巡る攻防

 箱根駅伝の舞台裏では、「グローバルvsローカル」の戦いも激化している。プーマやアディダスは、選手を欧米の開発拠点に招き、最先端の知見をフィードバック。一方、アシックスは日本人の足型をミリ単位で分析し、きめ細かな微調整を重ねる。

「日本の駅伝は世界でも特殊な競技文化。アシックスの現場密着型開発は、今後さらに評価される可能性があります」(同)

 加えて、オン(On)やホカ(HOKA)といった新興勢力も虎視眈々と箱根を狙う。“4強時代”は、すでに過渡期に入りつつある。

 2026年1月2日、選手たちが踏み出す一歩一歩は、各社の技術力と数億円規模のマーケティング投資の結晶だ。アディダスは王座を守れるのか。アシックスは日本ブランドの意地を見せられるのか。プーマは勢力図をさらに塗り替えるのか。

 中継所ごとに映し出される「足元のカウント」は、単なるデータではない。それは、次世代ランニング市場の覇権を占う、最もリアルな指標なのである。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)