「地方課題」と「テック」を結ぶカギ、架橋人材とは?

SNSやスマホアプリなど、すでに世の中にあるIT/ICTサービスを住民が活用することで地域活性化を図る、いわば「広義のシビックテック」の事例を紹介してきた本連載。

最終回となる今回は、それらの事例に携わった電通デジタルの加形拓也と、街づくりやコミュニティーについて研究する、東京大学の小泉秀樹教授(東京大学 先端科学技術研究センター 共創まちづくり分野)が対談。

「共創イノベーションラボ」(※1)でさまざまな取り組みを行う両者が、広義のシビックテックの可能性と、この手法が普及するための課題を考えます。

<目次>
地域課題にSNSやスマホを使うだけで新しい展開が生まれる
シビックテックの好事例!住民が気軽に参加できる「FixMyStreet」
地域と企業を“架橋”するコーディネーターが求められる
 
東京大学・小泉秀樹教授
東京大学・小泉秀樹教授

地域課題にSNSやスマホを使うだけで新しい展開が生まれる

加形:テクノロジーで地域課題を解決するなら、すでにある“こなれた技術”を使うことが有効だと感じています。特に地方の高齢者は、普段デジタルツールを使い慣れていないケースが多いので、こなれた技術の有効活用だけでも新しい展開が起きます。使い方を覚えていただくのが大変だったりはしますが(笑)。

小泉:同感です。まず、今の地方におけるまちづくりの主流は、地域が門戸を開き、外部と連携する「開放的なまちづくり」です。つまり「関係人口」(※2)を増やし、地域住民と外部のつながりをつくって、それを軸に地域を変えていくやり方ですね。

その際、物理的に遠方にいる外部の人々と地域がつながるために必須なのが、まさにSNSや各種デジタルツール。地域の人たちがデジタルを使いこなせるかどうかで、地域との連携の強さや、物事の進む速さが変わります。

加形:外部と地域とのコミュニケーションが、スピーディーかつ強固になるということですね。

小泉:そうです。これはネットが普及し始めたばかりの1990年代後半の話ですが、東大の私の研究室で、ある地域を支援することになりました。そのとき真っ先に私たちが取り組んだのが、地域の方々のパソコン購入や、インターネット契約のお手伝いです。パソコンの使い方から始まって、地道に支援しました。

それまでは地域のキーパーソンとつながろうと思ったら対面か電話しかなかったのが、メールで手軽にコミュニケーションできるようになったのは、本当に画期的でしたね。

加形:連載で紹介した富山県上市町の例も、同じパターンです。70~80代の方々が、スマホにLINEをインストールするところから始めて、今では私たちと日々普通にやりとりをしています。

小泉:私も拝見しました。今はスマホやSNSが普及し、遠方の住民とさらに密に連携できるようになりましたね。デジタルツールを市民が使いこなせば、まちづくりのいろいろな面が進む。まずはこの「広義のシビックテック」に着目することが、開放型のまちづくりに有効だと思います。

加形:住民がテクノロジーを使いこなすと、副次的効果として、プライベートにもプラスになりますよね。上市町の70代女性は、LINEを覚えたことで、遠くに暮らす大好きなお孫さんといつでも簡単にやりとりできるようになりました。

シビックテックの好事例!住民が気軽に参加できる「FixMyStreet」

加形:長年まちづくりに取り組んでこられた小泉先生から見て、日本のシビックテックの参考になりそうな事例を教えていただけますか。

小泉:イギリスのmySocietyという非営利団体が始めた「FixMyStreet」というデジタルサービスがあります。「道路の破損」「危険箇所の発生」「ごみの放置」といった地域の問題について、気づいた市民が、写真と位置情報を付けてスマホアプリ内で報告できるというもの。インターネット掲示板のようなシステムで、やりとりはすべて公開されており、投稿に対して他の市民が助言するなど、誰でも参加しやすいのが特徴です。これを行政担当者も閲覧しているので、書き込みをもとに行政が対応したり、その結果も掲示板で市民に報告します。

加形:ネット掲示板にせよ位置情報にせよ、使われている技術は珍しいものではないですし、スマホアプリなら市民にも親しみがある。これなら参加するハードルが低そうですね。

小泉:実は、このサービスの原型は1990年代後半〜2000年代初めにできたもので、かなり歴史があり、スマホの進化に伴ってどんどん便利になっているんです。日本でも「FixMyStreet Japan まちもん」というサービスがあるほか、似たシステムで、千葉市が運営する「ちばレポ/My City Report」というものもありますね。

FixMyStreet Japan まちもん
https://www.fixmystreet.jp/

FixMyStreet Japan まちもん
道路や街灯、公園の遊具などの損傷、公共施設へのいたずら書きなど、街の中で気になったことがあったら、スマホで撮影してアプリ上でレポート。市民だけでなく、行政も参加している、というのが大きなポイントだ。

加形:行政としても、過去に投稿された問題を掲示板の中で振り返れるので、「ここは市民の手を借りた方がいい」「過去の例を参考に対処する」といった蓄積も生まれますよね。

小泉:そのほか、最近では地域限定のSNSも盛んです。それらの特徴は、コミュニティーの盛り上げ役というか、投稿しやすい雰囲気をつくる“コミュニティーオーガナイザー”がいることです。オーガナイザーが、積極的にメンバーのコメントにレスをしたり、コミュニティーイベントを企画したりしているんです。

地域限定SNSの代表例「PIAZZA」(ピアッツァ)
https://www.lp.piazza-life.com/

PIAZZA(ピアッツァ)
暮らしに関する情報や、困りごと相談、不用品の譲り合いに加えて、行政からのお知らせなども掲載される。

加形:岐阜県郡上市の事例では、地域のフェイスブックコミュニティーをつくったのですが、このコミュニティーのオーガナイザーを地元の主婦の方たちにお願いしました。これもやはり、新規層がコミュニティーに参加しやすくする狙いがあります。


地域と企業を“架橋”するコーディネーターが求められる

小泉:このように、市民一人一人の力はわずかでも、幅広くいろいろな人が関わり、集合的に運用すると大きな変革の力になります。シビックテック成功のカギは、個々のテック施策やシステムを、いかに広く多くの市民が使えるかにかかっているかもしれません。

加形:シビックテックに関わる人が多くなればなるほど、大きな変化を生む可能性がありますよね。

小泉:はい。だから多数の市民と外部支援者が関わり、共創を生む必要がある。そういう意味で、新たなシステムを文字通り「シビック(=市民の)」なものにするためには、なるべく地域の人が手軽に活用できるようなアレンジが必要なんですよね。

加形:先生は、共創をテーマにした研究組織「共創イノベーションラボ」も運営されています。私もメンバーとして参加していますが、やはりシビックテックでは「共創」がカギになるのですね。

小泉:シビックテックに限らず、地域施策全体に言えることかもしれませんね。共創する上で大切なのは、市民や外部支援者をつなぎ、参加者の輪を増やしていく存在、いわば“架橋”する存在です。

加形:先ほどの、地域SNSのオーガナイザー役は、その例かもしれません。

小泉:まさにそうです。さらに、企業と地域が連携する際のコーディネーターも重要です。企業と地域の連携事例は増えていますが、「その企業がもともと持つリソースやサービス」を地域に当てはめていることが多い。その結果、施策が地域や市民のニーズ、生活に根差していないこともあります。ここは現状の大きな課題で、市民のニーズや地域の実情を深く理解し、そこにどう企業の技術を組み合わせられるか考えられるコーディネーターが必要です。

加形:順番としては、まずきちんと地域のニーズを捉えて、それからそこにマッチする企業の技術をコーディネートしていく。先生がおっしゃるコーディネーターとは、この一歩目となる「地域のニーズ×企業の技術」の組み合わせを考えられる存在ですよね。そして生まれる施策やシステムは、なるべく市民が参加しやすい形にすると。

小泉:はい。そしてシビックテックの先には、IoTなどで街を形成する「スマートシティー」という未来像があります。その未来を身のあるものにするには、地域と外部、地域と企業をコーディネートできる架橋人材がもっと増えないといけません。それこそが今やらなければならないことだと思います。


※1 共創イノベーションラボ
オープンイノベーションの実現をテーマとする研究組織。小泉教授の東京大学先端科学技術研究センターと、電通デジタルの共同研究となる。企業、行政、大学の研究機関など、さまざまな人材が参加し、スマートシティーなどのテーマについて、各々の視点で捉えた情報を共有している。お互いの課題やノウハウを交換することで新しいアイデアの創出を目指すほか、人材育成にも注力。企業側・地域側などさまざまな視点を持ち、それぞれの知見をうまくつないでコーディネートできる人材の育成プログラムを提供していく。

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※2 関係人口
移住した“定住人口”でも、観光という一時的な“交流人口”でもない、地域外の人が持続的に地域と関わり続けるケースのこと。地域と外部の接触点を増やし、地域づくりの担い手になることが期待される。

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聖火リレー公式アンバサダー 聖火ランナーに決定

東京2020組織委は1月15日、東京2020聖火リレー公式アンバサダーを務めるオリンピアン・田口亜希さんと、女優・石原さとみさん、お笑いコンビ・サンドウィッチマンの伊達みきおさん、富澤たけしさんの4人が、東京オリンピック聖火ランナーに決定したと発表した。
(画像=19年6月に開催された「東京2020オリンピック聖火リレーイベント~みんなのTokyo 2020 Olympic Torch Relay~」でのユニホーム姿)

大阪出身の田口さんは、2020年4月15日に同府を走行。田口さんは「大阪には、たくさんの思い出がある。聖火ランナーとして、地元の皆さんと一緒に大会を盛り上げ、希望が託された聖火をつなぎたい」とコメント。

長崎の被爆者との交流がある石原さんは、5月8日に同県を走る。石原さんは「被爆の記憶を残す長崎での聖火リレーは、心から平和を願う世界の人をつなげられると思う。核廃絶・反戦を願う多くの思いを胸に走りたい」とコメント。

宮城県出身のサンドウィッチマンの2人は、6月20日にそれぞれが県内の別な場所を走行する。2人は「東日本大震災で甚大な被害を受けた地元で、住民の方々を盛り上げながら走りたい」「国内外から寄せられた、震災からの復旧・復興に対する援助に感謝し、今の東北の姿を見て理解してほしい」などとコメントした。

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宮城県出身のサンドウィッチマンの2人は、6月20日にそれぞれが県内の別な場所を走行する。2人は「東日本大震災で甚大な被害を受けた地元で、住民の方々を盛り上げながら走りたい」「国内外から寄せられた、震災からの復旧・復興に対する援助に感謝し、今の東北の姿を見て理解してほしい」などとコメントした。

「定義」から始めよう

高松式 雑煮

ことしの我が家は来客も多く、にぎやかなお正月でした。そこで鉄板ネタとなっているのが、妻の故郷、高松式の「あん餅のお雑煮」。あんこ入りのお餅を白みそで味わうお椀なのですが、皆さん恐る恐る口を近づけては、意外な取り合わせにお顔をほころばされます。

なんで新年から「雑な煮もの」を食べるんだろうと、昔から不思議に思っていましたが、あれ、正式には「雑煮餅」。お餅を色とりどりの食材と煮たものを意味するそうです。そして「雑」という字は「いろいろな布を集めて作った衣」が由来なのだとか。確かにどの地域のお雑煮も、丸かったり、四角だったり、必ずお餅を中心に華やかな色彩をまとった、「おせち」に相応しい仕立てになっていますよね。

おせち

そういえば「おせち」というのも、そもそも、中国の陰陽五行説による季節の節目、つまり桃の節句(3月3日)、端午の節句(5月5日)、七夕の節句(7月7日)、重陽の節句(9月9日)を含む、年五回の節句を寿ぐ祝儀料理全般を意味する言葉でした。「懐石 辻留」の辻嘉一さんがご著書の中で「正月料理」という書き方をなさるのも、こういった背景を踏まえてのことでしょう。

やはり言葉の意味を正確に知り、使うことが大切です。そしてもし曖昧な言葉にぶつかったら、そのままにしたり、自分で勝手に決めつけたりせず、何かしら信用できる「定義」を手に入れるべきです。しかし残念なことに、広告業界も、場合によってはビジネス界全般も、こうした「定義」に無頓着なことが多いようです。

その結果、本質的な議論は進まず、いろいろな概念をいたずらに消費するだけになるのです。いまから9年前、そんな状態に対する危機感から、最初の著作である『〈アイデア〉の教科書』を執筆しました。

ぼくは「アイデア」を「ビジョンの実現に向けて、課題を解決する新しい視点」と定義しています。そして「コンセプト」と「アイデア」を同じものだと考えています。これは、ビッグアイデアやコアアイデアなど、中核となる新しい視点のことを「アイデア」と呼んで世界中で大切にしてきた広告業界の伝統に則っています。

一方、「コンセプト」の世界的権威である野中郁次郎先生は、個々人の主観的な「アイデア」と誰もが納得する「理論」の中間に「コンセプト」を位置づけています。そして多分、これがビジネスの世界で一般的な「定義」です。このアイデアの定義を曖昧にしたまま、「日本にはアイデアにお金を払う習慣がないよなぁ…」と嘆いてみても、あまり意味はなさそうです。

サーチライトの図

ちなみに。このコラムでは何度も「コンセプト」や「アイデア」を「サーチライトみたいなもんだ!」としたアメリカの社会学者、タルコット・パーソンズのお話を紹介していますが、これは定義ではなく、あくまでたとえ話(メタファー)の類。それがどんなものなのか、直感的に理解する助けにはなりますが、「コンセプト」と「サーチライト」にある明らかな差異には目をつぶる曖昧さがあります。

さて。

「戦略」
「デザイン」
「イノベーション」
「地方創生」
「共創」
「デジタルトランスフォーメーション」

ぼくらの身の回りにあるこういった概念を、皆さんはどのくらいきちんと「定義」し、腹落ちできていますか?正直、ぼくはなんとか言葉で整理しても、そのたびに何か大切な本質がスルリと抜け漏れていくことの繰り返し。まるで永遠のイタチごっこを繰り返しています。でも無駄かと言えばそうでもなくて、そのたびにほんの少しずつですが、何かしら真理に近づいているように感じるのです。今年も「概念の定義」と「実務のぬかるみ」の狭間で七転八倒しようと覚悟しています。

奥付


最後にひとつだけ、御礼を。

このたび、拙著『コンセプトのつくり方 たとえば商品開発にも役立つ電通の発想法』に重版がかかり、発売4年目で第4版を出すことになりました。ずいぶんのんびりとした足取りです。ご愛顧いただきました皆様に感謝を申し上げますとともに、まだお読みでない方々は是非、刷りたての新刊をお楽しみください!
 

どうぞ、召し上がれ!

書籍

超高齢社会の課題解決ビジネスの芽をいかに発見し、開発するか?

「超高齢社会の課題解決ビジネス」連載の第1回では、超高齢社会の全体像と、ビジネスとして取り組む意義についてお話ししました。今回は、これをいかにビジネス化していくかについて紹介します。

課題解決ビジネスのシーズをいかに発見するか

超高齢社会における社会課題は多数存在しますが、それらの中で、まずどのテーマを対象とし、ビジネス化に取り組もうと考えるかが第一歩となります。テーマ選定に当たって重要なポイントは、自分の業種・業態もしくは関心領域にできるだけ近いテーマを選んだ方がよいという、ある意味では当たり前のように思えることです。

著書『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』では20社以上のベンチャー企業にヒアリングを行いましたが、彼らがビジネス発想の起点として口々に語ったのは、自分や自分の両親が直面した生活課題や、事業を進めている中で直面した顧客課題でした。机上の空論ではなく、自らが遭遇した課題であったことが、課題解決に向けた取り組みを本気にさせたのだ、といっていいかもしれません。その意味でまず探索すべきは、自らの業種・業態の周りを探索せよ、といえるでしょう。

とはいっても、技術シーズ先行で課題解決に取り組むというケースも当然あり得るでしょう。しかし技術シーズ先行で進める場合、後ほどお話しするように対象市場をきちんと理解することが重要になります。

課題解決ビジネス手法の考え方

課題テーマが決まったら、次は解決のための具体的な手法を考えていかなくてはなりません。課題が顕在しているということは、すなわちその問題はまだ解決できていないということを意味します。また解決方法は明確なのだけれども、何らかの理由がハザードとなり、解決できないということもあるでしょう。そこに横たわるのは、制度の問題、お金や人の問題、技術の問題などです。ハザードの中身を因数分解することで課題解決の糸口を見つけることができます。

解決の手法としては、いくつかのアプローチ方法が考えられます。

まず一つは、テクノロジーやイノベーションによる解決手法です。近年、著しい進化を遂げているIoT・センサーやAI、ロボットなどのテクノロジーを活用することで解決できる場合があるでしょう。

従来の課題解決手法の多くは、人手による解決が多数を占めていました(例えば、行方不明認知症者の発見は、認知症サポーターの養成や、地域のコンビニや郵便局と協定を結ぶ、など)。しかし、これには地域での協力体制の構築など、どうしても制約がかかります。それらを上手くテクノロジーを活用することで効率的に解決につなげるというアプローチです。このタイプの解決手法は、技術的知見が必要とされる、プロトタイピングにコストと時間がかかるなどのデメリットがある一方、海外での事業展開については大きな可能性が広がります。

2番目の手法は新しいビジネスモデルの開発です。例えば、介護業界サービスの多くは、2000年の介護保険導入以前からのサービスの在り方を踏襲しているところも多いのですが、この分野での新サービス開発は、まだまだ多くの余地が残されていると感じます。

最後のアプローチ方法は、地域社会ネットワークの組み替えで解決につなげるという方法です。高齢社会における社会課題の発生場所は、主に家庭内や地域が中心です。しかし地域においては高齢化とともに人口減少も進行しており、地域における共助の仕組みは崩壊寸前といってもいいでしょう。こうした失われつつある共助の仕組みをビジネスの一環として立て直すという試みは、社会関係資本の再興という視点からも意義深いテーマであるといえます。

課題解決ビジネス手法

課題解決ビジネスを失敗させないいくつかのポイント

シニアマーケットの過去の歴史を見ても、課題解決にチャレンジしてもうまくいかなかった事例は数多くあります。そうした過去の失敗に学びつつチャレンジしていく姿勢が重要です。

うまくいかなかった最も多い理由は、利用者本人の受容をあまり考えないまま開発を進めてしまったケースです。例えば、いくつかの「見守りサービス」がそうです。何らかのセンサーや通信技術を使うことで、遠く離れた親を見守るサービスは、数多くの企業がチャレンジしていますが、なかなかうまくいったケースを目にすることがありません。それは、子どもたちは見守りたいと思う一方、実は親は見守られたくないと感じているからです。こうした意識を理解しないままに、一方的に「シニアは…だ」という勘違いでビジネスを進めることは危険です。

これ以外にも、補助金・助成金ビジネスモデルから脱却する、介護保険制度に頼りすぎない、モノマネ文化から脱却する、実証実験サイクルをきちんと回す、などのポイントを挙げることができます。

事業を失敗させない五つのポイント

ビジネスモデルを検討する

課題解決方法が、経済メカニズムに乗らなければ、それはボランティアや社会貢献の範ちゅうであり、「ビジネス」ではありません。したがって、提供する商品やサービスを、いかに顧客から支持され、利益を生み出す商品として市場に提供できるかが問われてくるわけです。その際、最初に検討すべきは、「それは受益者が対価として払える金額になっているか」ということです。

実際の高齢者は、若い人々が一般的に考えるほど裕福ではありません。価格の問題は非常に重要です。例えば、個人世帯向けが難しいならば、業務需要ニーズを狙うというのも選択肢として考えるべきでしょう。

また、最も重要なポイントとして指摘できるのは、「そのサービス・商品が、高齢者自身や家族・ステークホルダーの喜びにつながっているか」、ということです。

単に課題が解決されるだけでなく、解決されることが、本人もしくは誰かの喜びやうれしさ楽しさにつながること。そこに人々は価値を見いだし、お金を払ってもいいと考えるようになるのです。そこを外さない形での商品、サービス開発が望まれます。

警視庁公安部が「しばき隊」と誤認・微罪逮捕した男性が明かす取り調べの中身!「どの政党がついているのかと尋問され…」

「朝の7時くらいでした。マンションの玄関からノックする音が聞こえて。早朝だし、あれ? なんだろうと思ったんですが、寝ぼけてボーッとしながらドアを開けたら、黒服や作業服っぽい男たちが立っていた。見たことのある顔が何人かいて。ヘイトデモのカウンターの場所で見覚えのある、警察の人...