日本発スタートアップが描く商用EV革命!東南アジア市場を席巻する「脱炭素と経済性」両立の秘策とは?

●この記事のポイント
・日本発のスタートアップが、東南アジアで商用EV革命を起こそうとしている。eMotion Fleetは、商用EVの導入から運用までをワンストップで支援する。EVの運行状況や充電状況をリアルタイムで可視化・管理できる独自システムを提供。
・さらに、月額制でEV車両や充電器、ソフトウェアまで一括提供。経済性と脱炭素を同時に叶える仕組みを実現。「アジアNo.1」のEVフリートソリューションプロバイダーを目指す。

 世界の電気自動車(EV)市場は急拡大を続けている。2024年の世界の全新車販売台数に占めるEV比率は22%に達し、販売台数は前年比25%増の1750万台を記録した。国際エネルギー機関(IEA)は、2030年に世界で販売される新車の40%がEVになると予測している。

 特に注目すべきはバスやトラックなどの商用EV市場だ。商用EVの2023年の世界販売台数は約105万台で、2035年には956万台に達するという予測もある。さらに、日本政府は2030年までに小型商用車の電動化20~30%、2040年までにゼロエミッション車100%を目標に掲げている。しかし現状、日本のEV普及率はおよそ2%と、世界の平均を大きく下回っている。

 この格差を商機と捉えるのが、2023年9月に創業したeMotion Fleet株式会社だ。代表取締役社長CEOの白木秀司氏と代表取締役副社長CTOのデニス・イリッチ氏は、前職での国内最大規模の商用EV導入支援の経験を生かし、商用EVフリート(EVの車両群)導入のワンストップサービスを提供するべく同社を共同創業した。

 2025年6月末には、シリーズAラウンドとして2.5億円の資金調達を発表。インキュベイトファンドが主導し、四国電力、九州オープンイノベーションファンド、首都圏ホールディングスが参画した今回の調達は、同社が目指す「アジアNo.1のEVフリートソリューションプロバイダー」への布石だ。白木氏とデニス氏の2人に、話を聞いた。

目次

商用EVフリート管理の全工程をワンストップで提供

 2人の出会いは前職にさかのぼる。世界的な物流大手DHLの傘下にあったストリートスクーターという車両メーカーの日本法人で、ドイツ製の商用EV500台をヤマト運輸に納入するという国内最大級のEV導入プロジェクトを手掛けた。しかし、「電気自動車は車両の入れ替えだけではなく、システム全体に対するアプローチが必要」という課題に直面。充電インフラから運用管理まで含めた、包括的なソリューションの必要性を痛感した。

 転機となったのは2023年。ドイツの国際輸送物流会社DHLが車両製造部門を売却したあと、新たな親会社となったB-ONが清算手続きに入ったことだった。この出来事が独立の決断を後押しし、2人はeMotion Fleetを創業。ハードメーカーからソリューションプロバイダーへ転身した。

 eMotion Fleetが提供するのは、商用EVの計画・導入・運用をワンストップで支援するソリューションだ。計画段階では企業全体のEV導入戦略設計から各拠点の実行計画策定、電動化シミュレーションまでを手掛ける。導入段階ではプロジェクト管理、車両納車・充電設備設置調整、運用講習を実施。そして運用段階では、同社独自の「EV運行・エネルギー管理システム(FMS/EMS)」による一元管理を提供する。

 FMS/EMSの最大の特徴は、マルチベンダー対応である点だ。EV・内燃車両を問わず、あらゆるメーカー・車種を単一プラットフォームで管理できる。車両の運行状況、充電率、燃費・電費、バッテリー健康状態、CO2排出量をリアルタイムで監視し、充電制御によるピーク電力抑制も実現する。

「お客様のEV導入のステージに応じたソリューションを提案できるのが我々の強みです」と白木氏は説明する。

「最初は充電の可視化。EVは夜間に充電するのが一般的ですが、次の日に使おうと思ったら充電できていなかったということがよくあります。プラグの接続不良や充電器の故障をリアルタイムで確認できるシステムで解決します。

 台数が5台、10台と増えると、今度は電力料金の問題が出てきます。EVを同時に充電すると電力消費量が急激に上がり、企業の電力料金が跳ね上がってしまう。そこで夜間に分散して充電することで電力のピークを抑え、コストを削減するソフトウェアを提供しています」(白木氏)

 さらに同社は、月額制のアセットマネジメントサービスも提供。車両・充電器・ソフト・サービスをすべて包括的に提供することで、顧客の初期投資を抑制し、経済性とCO2削減の両立を実現する仕組みを整えている。

大企業から中小企業へ、段階的な市場攻略

 現在のeMotion Fleetの主要顧客は大企業が中心だ。特に東証プライム上場企業は、そのほとんどが2030年までのCO2削減目標を掲げており、残り5年という期限を前に危機感を持つ企業が多いという。大企業ではコンサルティングサービスから始まり、一つの営業所で実証後、他拠点に展開されていくケースが多いという。

 一方、同社が将来的に展開を目指す主な対象は中小企業だと白木氏は説明する。

「物流、バスやタクシーの運行会社など、物と人を運ぶ事業者の95%以上は100台未満の車両を保有する中小事業者です。脱炭素化の波は必ず来ますが、CO2削減という理想論だけでは響きません。EVのほうが維持費を含めて安くなるという経済性をセットで示す必要があります」(白木氏)

 ただし、中小事業者は全国に分散しており、一社一社への直接営業は効率が悪い。そこで同社は販売パートナー戦略を展開。2025年4月には常陽銀行のアクセラレーションプログラムに採択されるなど、北関東3県の取引先への脱炭素化提案を進めているほか、リース会社や電力会社とも連携。地域密着型のネットワークを活用することで、人員を増やすことなく効率的な案件獲得を実現している。

 この戦略を後押ししているのが、大企業の脱炭素化要請による波及効果だ。大手運送会社では委託先の脱炭素化も求められる「Scope3」への対応が必要となり、そうした企業からの紹介による案件が増加している。元請けや荷主からのいわゆる「グリーン物流」への要請も相まって、対応しなければ“選ばれない時代”への危機感を持つ中小事業者が増えている。

「社内にEVの専門知識を持つ人材がいない」。そうした中小事業者にとって、導入から運用まで包括的に支援するワンストップサービスへのニーズが高まっているのが現状だ。

「2万台超の商用EV導入実績」という国内に例のない強み

 eMotion Fleetの最大の強みは、 創業者2人が前職時代を含めて、累計2万3000台以上のEV導入・運用実績を持つことだ。日本のEV普及率がおよそ2%という現状では、これほどの規模で商用EV導入を経験した人材は極めて少ない。

「まだ日本は黎明期なので、EVを少しずつ導入している事例はありますが、数万台という規模で運用されている事例はほぼありません。私たちは導入から運用までの肌感覚があるため、プロダクト開発の際も導入先の現場の目線で、どういう情報をどう見るべきかが経験値からわかっていました」(デニス氏)

 この現場感覚に基づくプロダクト開発により、同社は導入先企業にとって真に必要な機能に特化したソリューションを提供しているという。

 さらにeMotion Fleetは、「商用EVにまつわるプロ集団」として組織を構築。自動車業界出身者やコンサルティング業界、商社出身者など多様なバックグラウンドを持つグローバル人材が加わり、エンジニアチームの会議は英語で行われている。

 こうした専門性が同社の機動力を生み出し、顧客からの信頼獲得に直結している。実際、「(顧客からは)『何を聞いてもその場で即座に答えてもらえる』という評価を得ている」と白木氏は話す。

「日本2%、東南アジア10%」EV普及のギャップに見いだす商機

 日本でのサービス導入を着実に進める一方で、同社が注力し始めたのが海外展開だ。2024年7月にタイ・バンコクで開催されたビジネスカンファレンスにブース出展したところ、現地企業からの引き合いが強かったことから東南アジアへの進出に着手。現在、同社が商談を進めるおよそ300社のうち1割が海外の事業者で、その反応は国内企業とまったく異なる。

「海外での商談はスピードも規模感も全然違います。スタートアップにとって必要なスピードとスケールが、どうしても日本は劣るところがある」(白木氏)

 その理由は市場環境の違いにある。日本のEV普及率はおよそ2%の一方、タイではすでに10%ほどまで増加。「インドネシアやマレーシアのEV普及率も、2024年からガッと上がってきています」と白木は説明する。

「例えばタイでは30・30政策(2030年までに国内で生産される自動車の30%をEVにすることを目指す政策)が掲げられるなど、東南アジアでは政府の脱炭素化に対する指針やEVの導入目標が、日本とは比べものにならないくらい高い目線で取り組まれています。そこに対して産業界もついてきている」(白木氏)

 さらに同氏は、「東南アジアでのEV普及率上昇の背景には、中国製のEVがどんどん流れ込んでいるという実情もあります」と付け加える。

 現在、マレーシアではオンデマンド交通事業者がeMotion Fleetのサービスを導入済みで、タイやインドネシアでも実証に興味を示す事業者が複数現れている。「需要が急速に増えているのに、その商機をみすみす逃したくない」と、同社は東南アジア市場での事業拡大を本格化させる方針だ。

アセットライトで攻める海外展開戦略

 eMotion Fleetの海外展開戦略の核となるのは、アセットライトなアプローチだ。

「ハードウェアを軸にした企業の場合、各国での販売に向けた認証の取得に時間とお金が必要です。しかし我々のようなソフトウェア中心のアセットライトなビジネスモデルなら、複雑なプロセスなしで迅速に事業展開できます」(白木氏)

 また、同社のソリューションがマルチブランドに対応できる点も海外展開において威力を発揮する。東南アジアで普及が進む中国メーカーのEVにも対応可能なため、その普及に合わせてサービスの導入を加速させることができるのだ。

 海外展開において重要な役割を果たしているのが、株主でもある自然電力との連携だ。

「我々は創業からまだ2年弱のスタートアップなので、あっちにもこっちにも人を分散して配置するのが難しい。その点、自然電力はタイ、インドネシア、マレーシアに現地法人があります。各地の現地法人にそれぞれの国の事業者に対するきめ細かな対応をお願いするなど、連携しています」(白木氏)

 海外展開についても日本と同様、ソフトウェアを起点にして段階的に事業を拡大。将来的には各国にeMotion Fleetの現地法人を設立しながら、包括的な“Fleet as a Service”としてのサービス提供を目指す。

シリーズAで2.5億円調達、アジアNo.1への道筋

 今回のシリーズAラウンドで調達した資金をもとに、事業成長を加速させるeMotion Fleet。同社の計画は明瞭だ。

「2029年までに、アジアNo.1のEVフリートソリューションプロバイダーになりたい。具体的には5万台の車両が我々のソリューションの管理下にある状態を目指しています」(白木氏)

 日本、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールを主な対象国として、日本で半分、残りの半分がアジアという売上構成を展望。またサービスの導入先として、物流やバス事業者に加え、空港や港湾も視野に入れる。

 特に国内の空港はカーボンニュートラルの実現に向けて、国土交通省や経済産業省、各地の空港事業者が率先して取り組みを進めている。白木氏は、「空港内で稼働する車両をどんどん電動化していこうという話が進んでいるのが現状。1つの空港で導入事例が生まれれば、横展開もしやすい」と、スケーラブルな市場だと見ている。

 最後に同社が掲げるミッション「脱炭素化と経済性の両立」について、白木氏はその重要性を強調した。

「CO2削減という綺麗な目標を掲げるだけでなく、しっかりと現場の課題を解決しながら経済性を追求し、結果として脱炭素化も実現する。Win-Winの関係を作りながら、会社を成長させていきます」(白木氏)

 対象市場の急拡大、現地での引き合いの強さをもとにした機動的な判断、ソフトウェアが軸のアセットライトな事業展開、そしてそれを可能にするグローバル人材で構成された組織。eMotion Fleetの挑戦は、日本発スタートアップが海外で勝負するための新たなモデルケースとなりそうだ。

(文=加藤智朗/編集者、ライター)

イオン、なぜベトナムで出店攻勢?計300店舗規模へ…一店舗当たり販売力は日本のGMSを上回る

●この記事のポイント
・イオンがベトナムで出店攻勢、GMS大型店の売上は、日本の平均的店舗よりも高い販売力
・来店するお客の数が非常に多いのが、ベトナムにおける大型店の特徴
・2030年の店舗規模の目安として、GMS/SSMを100店舗、SMを200店舗という目標

 大手小売り企業・イオンがベトナムで出店攻勢をかけている。すでに20拠点以上を擁する中国に加え、ベトナム、インドネシア、カンボジアなどアジアに展開するイオンモールをはじめ、イオングループの海外事業は一定の規模を誇る。イオングループの2024年度の国際事業の営業収益は5489億円、全営業収益に占める比率は5.4%。海外店舗としては世界10カ国以上に1200店舗以上を展開する。そんな同社がなぜ今、ベトナムで出店攻勢をかけているのか。そして今後のアジアを含めた海外事業の成長戦略をどう描いているのか。イオンベトナムに取材した。

●目次

「デリカ」は食品売上の2割を超える売上構成比を実現

 イオンがベトナムで展開しているのは、ショッピングセンター、GMS(総合スーパー)、GMSと食品スーパーの中間にあたる業界・スーパー・スーパーマーケット(SSM)、スーパー(SM)、コンビニエンスストア、専門店。出店を加速している理由について、イオンベトナムは次のように説明する。

「イオンは一貫して、生活者の幸福な暮らしと地域社会の発展への貢献を企業の中核的な目的として、企業活動を行っております。ベトナムにおいては経済発展に伴い国民が中間層へと成長するなか、より豊かな暮らしの実現が強く求められています。一方、まだまだウェットマーケットや個人商店などの伝統小売業の構成が6~7割と高い市場でもあります。ウェットマーケットでは食の安全安心に不安を感じられている生活者も多く、個人商店では、多様な品揃えから選択できる楽しみ、時間消費的なお買い物の楽しみなど、発展する中間層が希求されているショッピングを通じた豊かな暮らしの実現が困難な状況です。

『生活者の幸福な暮らし』の実現を通じて『地域社会の発展』に貢献することを企業の目的としている我々は、いち早くこの課題に着目し、2008年よりベトナム市場参画のプロジェクトを立ち上げ、14年にホーチミンに1号店(タンフー・セラドン)を開店いたしました。翌年にはハノイにも出店、現在ではイオングループとしてショッピングセンター7店舗、GMS/SSM13店舗、SM37店舗、コンビニエンスストア182店舗、専門店24店舗を展開しています。また、エンターテイメントや金融サービスにおいても事業展開を行っており、ベトナムの生活者の生活全般の『豊かさ』の実現をグループの総合力により追求する体制を講じております」

 ベトナムでは現地で「パパママストア」と呼ばれる小規模な個人経営の小売店が主流だが、大手資本によるスーパーやコンビニエンスストアが増えつつある。イオンがベトナムで展開している店舗は、どのような特徴・タイプの店舗なのか。日本のイオン店舗とは異なるのか。

「我々のGMS大型店の売上は、日本の平均的店舗よりも高い販売力を有しています。つまり、来店されるお客さまの数が非常に多いのが、ベトナムにおける大型店の特徴です。これはイオンの提供する価値が伝統的小売業のみならず、近代小売業の競合と比べても差別化されているからだと考えます。例えば『デリカ』は食品売上の2割を超える売上構成比を実現していますが、日本の食品小売と比べると2倍の水準です。レストランのような高品質の独自商品をお求めやすくご提供させていただいていることが、イオン固有の付加価値となり、ベトナムにおける新しい食市場の創造につながっているものと考えます。

 また、イオンのプライベートブランド『トップバリュ』の取り組みも進めています。日本からの輸入だけではなく、ベトナム国内や他のアセアン諸国での商品開発をベトナムのチームで行っており、イオンが保証する安全安心かつ高品質のPBを、お求めやすくご提供する体制を構築しています。このような独自開発商品については、GMS/SSMのような大型店のみならず、SM、コンビニエンスストアへも供給を行っており、マルチフォーマットによる多様な立地ニーズへの適合と、グループ共通での商品開発と供給による規模のメリットの追求を両立させる、グループの総合力による新たな成長モデルの構築に取り組んでおります」(イオンベトナム)

小売市場は2030年までに現状の2倍程度に成長すると予想

 イオンは今後、ベトナムおよび海外でのさらなる成長を描いている。

「中間層の発展により、ベトナムの小売市場は2030年までに現状の2倍程度に成長すると予想されています。また、伝統的小売業からモダントレードへのシフトも進むことで、モダントレード市場はさらなる成長スピードで拡大するものと思われます。このような成長市場に対し、ベトナム資本の小売業に加えて、アジア発のグローバル・リテーラーも強い関心を示し、成長競争が過熱しております。

 この成長市場において、イオンがイニシアチブを取れるポジションであるためには、少なくとも現状の5~6倍の事業規模に成長する必要があると考えています。このような認識から2030年の店舗規模の目安として、GMS/SSMを100店舗、SMを200店舗という目標感を持っておりますが、業態別の出店目標については2026年からスタートする中期経営計画の中で精緻化させていただきたいと考えております」(イオンベトナム)

更年期をしなやかに“乗りこなす”、「ホルモンハグプロジェクト」とは?

フェムテックを、女性のみならず社会全体に関係するものとして捉え、さまざまな取り組みを推進する電通の社内横断組織「Femtech and BEYOND.」(フェムテックアンドビヨンド)。

この連載では、本組織の取り組みを通して、フェムテックの潮流の変化やそこに関わる意義などを多彩な企業・メディアなどと意見を交わしながら考えていきます。

今回は、「Femtech and BEYOND.」とアンファーの出会いから始まった、更年期をはじめとするホルモン変化とともに歩むための取り組み、「ホルモンハグプロジェクト」のメディア向け説明会をリポート。更年期の基礎知識やインフルエンサーによる更年期体験談、世界の更年期ビジネストレンドなど、幅広いテーマが網羅されたこちらのイベントの、気になる内容についてお届けします。

ホルモンハグプロジェクトとは
業界業種の垣根を越えた有志が運営する、ホルモンバランス変化に伴う生理痛やPMS、男女双方の更年期などの健康課題に向き合うプロジェクトです。「Femtech and BEYOND.」とアンファーが中心となり2025年3月に活動をスタートし、同年5月22日に電通ホールでメディア向け説明会を開催しました。活動を応援していただける方、協賛していただけるブランド・メーカーさまを随時募集しています。
ステートメント

更年期による経済損失は年間約3.1兆円!苦しさを分かち合い乗りこなそう!

まずはホルモンハグプロジェクト発起人メンバーでもある電通の石本藍子氏が登壇。「早速ですが、皆さんは、日常生活のなかで、男性ホルモン・女性ホルモンを意識する瞬間ってありますでしょうか?」と切り出すと、ホルモンについて「年代性別関係なく影響するもの」「思春期、反抗期、生理、出産、更年期など、あらゆる時期に揺れ動くもの」と説明しました。

石本氏

さらに、このホルモンの変化が、「働き盛りの男女が直面する隠れ社会課題である」ことに言及。会場前方のスクリーンにスライドを投影しつつ、「更年期に対する不安を抱える女性が約88%もいる」という事実、「50代女性の約半数が自覚症状として更年期を感じている」こと、加えて「男性更年期の潜在患者数が600万人にも及ぶ」というデータを明らかにしていきました。

続いて、更年期の症状について説明。不眠、パフォーマンスの低下、いら立ち、突然顔のほてりや発汗が発生するホットフラッシュと呼ばれる症状、さらにはドライマウスやドライアイなど、多岐にわたる症状が出ると話しました。

女性の更年期症状

「これだけさまざまな症状があるにもかかわらず、多くの方は、『年齢のせいかな?』と我慢してしまう。誰にも相談できず、正解もわからないまま、一人で闘い、抱え込んでしまうんですよね。しかもこうした症状が出てくる更年期と呼ばれる時期は、職場であれば役割が重くなる、まさに働き盛りのタイミングです。最前線でバリバリ働かなければいけないときに更年期による不調が重なると離職しなければならない事態に陥ることもあり、その経済的損失は年間約3.1兆円にものぼるといわれています。

こうした深刻な状況があるにもかかわらず、まだ国内では、更年期に焦点を当てた大きな動きは起きていません。プロダクトやサービスも少なく、市場としてもポテンシャルがあるのではないかと考えています。私たちができることが、きっとたくさんある。苦しさを分かち合い、乗り越えるのではなく共存して一緒に“乗りこなして”行きたい。そんな思いで、このホルモンハグプロジェクトを立ち上げました」(石本氏)

こう話すと、続いて、「こうしたセンシティブな情報には、地域格差がある」と説明。医療や情報のそろった都市部だけの活動にとどめるのではなく、地域に広げていく、むしろ地域から始めていくことが重要だと力を込めました。

「地域では、更年期というだけで偏見を持たれ、婦人科に行くだけでうわさになってしまうこともあると聞きます。だからこそ、話せる場、つながる場が必要なんですよね」と石本氏。「私は地域の力こそ日本の可能性だと、マジで、マジで、信じています。皆さまの力をお借りして、ぜひ地域に、場を作っていきたいと思っています」と語り、参加した企業に協力を求めて、第1部を締めくくりました。

更年期は50歳前後の10年間。親の介護や子の思春期など問題が重なる時期

本イベントのメインセッションとなる第2部では、クレアージュ東京レディースドッククリニック総院長の浜中聡子医師、更年期に関する情報発信を積極的に行うファッションエディターでスタイリストでもある大草直子氏、ファッション・ディレクターの龍淵絵美氏が登壇。まずは浜中医師が、更年期やホルモンの基礎知識をレクチャーしました。

浜中氏、大草氏、龍淵氏
(左から)浜中聡子医師、大草直子氏、龍淵絵美氏

男性ホルモンがテストステロン1種類であるのに対し、女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンの2種類があり、これらが増減しながら生理や排卵が起こります。2種の女性ホルモンのバランスが整ってくるのが20代前半ぐらいで、バランスが崩れてくるのが更年期の時期。特にエストロゲンは変動が大きく、更年期に差し掛かるとガクンと減少するそうです。日本人女性の更年期は、50歳を真ん中にして前後5年の10年ぐらいといわれており、48歳から50歳ぐらいで始まることが多いようです。現在は、ライフスタイルの変化や晩産化の影響もあり、生理が長引く女性も多く、55歳過ぎまで閉経を迎えない女性もいるのだとか。「更年期の期間も、少し後ろ倒しになっているように感じます」と浜中医師は話します。

浜中氏

一方の男性も、閉経という節目こそないものの、更年期に差し掛かるとガクンとテストステロンが減ることがあるそうです。誰でも必ずホルモンが減り閉経する女性とは異なり、男性の場合は、ホルモンが減る人・減らない人でかなり個人差があるといいますが、「個人差が大きい分、実は自分が更年期だと気づいていない男性が多い」と浜中医師。男性更年期が見えにくい、気付かれにくいことを説明しました。

「男女ともに更年期の時期は、親の介護や子どもの思春期など家族間の問題が多く出てくる時期です。これらのストレスが更年期症状を悪化させてしまうことも多くあります。また、最近では、生真面目な方に症状が強く出やすいなど性格的な因子が関係していることもわかってきました。いくつもの複雑な要素が絡み合って現れる更年期症状。誰ひとりとして同じということはないですし、同じ人であっても時期によって症状が違うということもあります。ですから、個に合わせて、しなやかに対処していくということが大切なんですよね」(浜中医師)

更年期症状の図

更年期とうまく付き合うには、個人差があることを理解し、柔軟な姿勢で“乗りこなす”ことが重要だと語りました。

人が信用できない、お風呂に入れない……。更年期の赤裸々な実体験とは

第2部後半のテーマは、「私の更年期」。大草氏、龍淵氏が中心となり、更年期に関する赤裸々なトークが展開されました。

まずは大草氏の体験談から。スクリーンに大草氏の更年期のヒストリーグラフが表示されると、それをもとに、さまざまなエピソードが語られていきました。

大草氏グラフ
大草氏

「私は健康で体力もあるほうなので、最初はあまり更年期の症状を感じていませんでした。ところが40代後半で、とっても眠りが浅くなってしまった。そのうちに気分が大きく落ち込むようになって、周りの人が信じられなくなっていきました。これはまずいということで、同年代の友人や専門家の方に相談して、合成ホルモンの摂取を開始。これがあまり身体に合わず動悸(どうき)やむくみが出てきてしまい、のちにナチュラルホルモンに変更しています。現在はだいぶ更年期の症状が落ち着いて、普通に日常生活を送ることができています」(大草氏)

続いて、龍淵氏も更年期のヒストリーグラフを披露。「48歳のときに親しい友人が亡くなり、メンタルが一気に落ちてしまった」「涙が止まらず、お風呂にも入れない状態だった」と、揺らぎの始まりについて振り返りました。

龍淵氏グラフ
龍淵氏

「私はずっとモード誌で働いているので、それでも外ではおしゃれをして、香水を振りまいて、気取った感じで過ごしていました。でも本当は、お風呂にも入っていないし、服も着替えないような状態で。そんなときに父が亡くなって、これはいよいよどうにもならないという状態になってしまった。それで、病院でホルモン値を測って、そこから自分の状態をこまめにチェックするようになりました。その後は、更年期に効果があるといわれているサプリを飲んだり、運動を始めたり……。あとは毎日500文字程度で自分の歴史を振り返っていく“ジャーナリング”と呼ばれる手法を取り入れたりして、自分を取り戻して行きました」(龍淵氏)

おふたりとも紆余(うよ)曲折を経て、更年期を“乗りこなせる”ようになってきたとのこと。「更年期は自分と向き合い、生活を見直す時期」「自分なりの治療法や付き合い方を見つけ、自分をリカバーするタイミング」だと話しました。

その後も、「更年期は100人いれば100通りの症状がある、なにが出てくるかわからないガチャのようなもの」「なんでも話し合える“更年期フレンズ”が大切」(大草氏)、「更年期は“ホルモンの乱”。予想外のことが起きるけれども、つらいことを笑いに変えるのが大事」(龍淵氏)と、さまざまなアドバイスや名言が飛び出しました。

最後に「みんなで更年期を乗りこなすには、正しい情報を発信すること、話せる場を作ることが欠かせない」と大草氏。特に地方に住む女性が、家族から「更年期は病気ではない」と言われ我慢をしていたり、誰にも相談できず悩んでいたりする現状を紹介し、「なんとかしてこの状況を変えたい」と力強く話しました。

アメリカでメノテック市場が拡大中。日本はこれから開拓が進む段階

続く第3部のテーマは、「世界の更年期のビジネストレンド」。Femtech and BEYOND.メンバーの奥田涼氏が登壇し、「更年期の問題をテクノロジーで解決する事業のことを“メノテック”と呼ぶ」ことを紹介。メノテックはフェムテックの一部であり、「フェムテック市場はアメリカがもっとも大きく、全体の51%を占めている」こと、「アジアのフェムテック市場はわずか8%にすぎず、日本に至っては何%かもわからない未開拓な状況である」ことを解説しました。

奥田氏

次に、世界で注目されるユニークなメノテックプロダクトを紹介。ホットフラッシュをコントロールする腕時計型のデバイスや、メノポーズ(更年期)モードを搭載したエアコンなどが紹介されました。

海外で加速するメノテックの流れ。この潮流は、そう遠くないうちに、日本にもやってくることでしょう。

最後に「ぜひ一緒に、ホルモンに注目し、この領域を盛り上げていきましょう」と石本氏。満席となった会場の参加者たちも納得した様子で、大きな拍手を送っていました。

会場の様子
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【2025年最新】購買管理システムおすすめ10選を徹底比較!企業規模・業種別の最適な選び方も解説

購買管理システムの導入で企業の調達業務は大きく変わります。コスト削減だけでなく、業務の透明性向上や意思決定の迅速化にも直結するこのツールは、今や企業の競争力を左右する重要な要素となっています。

しかし、多くの企業がシステム選びで失敗し、結局使われないツールになってしまうケースも少なくありません。

本記事では、業種別・規模別に最適な購買管理システムを徹底比較。費用対効果も交えながら、あなたの会社に最適なシステム選びをサポートします。

購買管理システムとは?

購買管理システムとは、企業が行う物品やサービスの「仕入れ」に関する一連の業務プロセスを効率化し、最適化するために開発されたITツールです。具体的には、見積依頼から発注、検収、支払いに至るまでの購買サイクル全体をデジタル化することで、人為的ミスや業務の属人化を防止し、組織全体の調達活動の質を向上させることができます。

従来はExcelシートや紙の伝票で管理されていた複雑な購買業務を、明確なワークフロー化・可視化することにより、承認漏れ、重複発注、納期遅延などのオペレーショナルリスクを大幅に軽減することが可能になります。

また、システム内に蓄積される発注履歴データや単価の変動推移、仕入先ごとの対応品質や納期順守率などの情報を一元管理できるため、戦略的な調達判断が可能になり、結果としてコスト削減や予算管理の徹底、内部統制の強化といった経営課題の解決にも直接的に貢献します。さらに、定期的な発注パターンの分析により、発注の最適化や調達先の見直しも容易になります。

特に最近では、初期投資を抑えられるクラウド型のサービスが充実してきており、ITリソースが限られた中小企業でも短期間で導入できる環境が整っています。また、ユーザーインターフェースの改善により、専門知識がなくても直感的に操作できるシステムも増えており、導入ハードルが大きく下がっています。

購買管理システムを導入するメリット

購買管理システムは、業務効率化だけでなく、企業の経営戦略にも大きく貢献する可能性を秘めています。以下では、具体的なメリットを詳しく解説していきます。

内部統制・監査対応の強化

購買管理システムを導入することで、見積依頼から発注、納品確認、支払処理までの一連の購買プロセスがすべて記録として残ります。これにより、誰がいつ何を発注し、どのようなプロセスで決裁されたのかを明確に追跡できるため、不正発注や不適切な取引の抑止力となります。

また、監査時に必要な証跡を迅速に提示できるため、会計監査や内部監査の対応効率も向上。とくにコンプライアンスが重視される上場企業やグローバル企業では、購買業務におけるガバナンス強化の観点からも、購買管理システムの導入は重要な施策といえます。

業務効率の大幅な改善

従来の購買業務では、Excelやメールを使った見積取得や発注作業、請求書との突合といった手作業が多く、時間と手間がかかるうえにミスの温床になりがちです。購買管理システムを導入すれば、見積依頼・発注書作成・納品確認・請求処理までの流れを標準化・自動化でき、担当者の作業負荷を大幅に軽減できます。

業務効率化の具体的な効果

  • テンプレート化により、発注書作成時間を大幅短縮
  • 自動通知によるチェック漏れ・入力ミスの防止
  • 少人数でも安定した購買業務の運用が可能
  • 限られた人員でも高効率な体制の構築

グループ全体の購買戦略強化

複数の拠点やグループ会社で個別に購買を行っていると、調達条件や取引先がバラバラになり、価格交渉力の低下や契約の非効率が生じます。購買管理システムを使って全社的に購買情報を集約・統合すれば、同一の取引先に対する調達量を可視化でき、ボリュームディスカウント交渉などに活かすことが可能になります。

また、社内での最良の事例・調達手法を共有し、購買ルールや価格基準を全社に展開することで、全体最適の調達戦略を推進できます。現場ごとの最適化から企業全体の調達効率化へと転換するための基盤として、購買管理システムは有効な武器となります。

購買管理システムを導入するデメリット

購買管理システムの導入には、業務効率化や透明性向上などの多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。特に中小企業では、システム導入コストや運用負担が課題となるケースもあるため、自社の状況に合わせた検討が重要です。

購買の自由度が失われ、現場の柔軟な判断を阻害することがある

システム導入により、承認フローや発注ルールが明確に設定されることでガバナンスは強化されますが、その反面、緊急対応や柔軟な値引き交渉など、現場の判断で対応していた調達がしづらくなるケースもあります。

「この部品が今日中に必要なのに、発注申請が間に合わない」
といった声が現場から上がることも少なくありません。業務フローを標準化することの裏返しとして、一定の自由度が犠牲になる点には注意が必要です。

運用に乗せるまでの設計力が求められ導入が空回りしやすい

購買業務のプロセスは企業ごとに異なるため、システム導入時には自社の業務フローに合わせた綿密な設計が必要です。しかし現実には、要件定義が不十分だったり、現場の意見を取り入れないまま導入を進めると、「結局Excelに戻った」「使いこなせない」といった失敗例が少なくありません。

導入失敗を避けるための重要ポイント

  • 事前の業務フロー整理の徹底
  • 主要ユーザーの巻き込みと合意形成
  • 段階的な移行計画の策定
  • トライアル期間の設定

価格比較ばかりが重視され取引先との信頼関係が損なわれる可能性がある

購買管理システムでは、見積書を一括で比較したり、過去価格を一覧表示する機能が一般的です。これにより調達コストの可視化と比較が容易になる一方で、運用方針によっては価格面のみが重視され、品質や納期の安定性、緊急対応力といった長期的な価値が軽視される恐れがあります。

長年の付き合いがある業者との関係性を大切にしてきた企業ほど、この点には敏感です。取引先との間に築いてきた相互理解や暗黙の協力関係は、数値化できない価値を持っていることが多く、単純な価格比較だけでは測れません。効率性と信頼性のバランスをどう取るかは、導入後の運用ポリシーに大きく左右されます。

購買管理システムの選び方

購買管理システムを選定する際は、自社の業務フローや規模、予算などを踏まえて総合的に判断することが重要です。以下では、基本的な選定ポイントとビジネスモデル別の選び方を解説します。

基本の選定ポイント|導入前にチェックすべき5つの観点

購買管理システムを選ぶ際にまず確認すべき5つのポイントは以下の通りです。

観点 チェックポイント
導入形態 クラウド型は自社サーバー不要で素早く導入可能
他システムとの連携性 既存の会計ソフトや在庫管理システムとの連携を確認
操作性 IT初心者でも使いやすいUI/UXが重要
サポート体制 マニュアルや問い合わせ窓口の充実度が定着に影響
導入実績 同業他社での実績や口コミで導入後のイメージが明確に

選定時の重要ポイント

  • 自社の業務体制や運用環境に合うかを事前に見極める
  • クラウド・オンプレミスの選択は慎重に検討する
  • 外部システムとの連携性を確認する
  • 使いやすさとユーザビリティを重視する
  • サポート体制の充実度を確認する

おすすめの購買管理システム10選【比較表あり】

ここからは、購買管理システムの具体的な製品を比較しながら紹介します。各製品の特徴や価格体系、向いている企業タイプなどを詳細に解説していきます。

製品名 導入形態 対応業種 特徴 料金
楽々ProcurementII クラウド/オンプレミス 大企業・中堅企業 直接材/間接材対応、豊富なワークフロー 要問合せ
Hi-PerBT 購買管理 クラウド/オンプレミス 大企業・多拠点企業 全社集中購買、Web EDI取引対応 要問合せ
PROCURESUITE クラウド/オンプレミス 製造・流通・インフラ 購買プロセス見える化、下請法対応 要問合せ
パーチェスワンクラウド クラウド(SaaS) 大手企業・製造業 直感的なECサイト風UI、3クリック発注 要問合せ
SOLOEL購買システム クラウド(SaaS) 幅広い業種・規模 34の外部カタログサイト連携 要問合せ
べんりねっと クラウド 業種業態問わず コクヨグループ、独自Webカタログ構築 要問合せ
intra-mart Procurement Cloud クラウド(SaaS) 中堅~大手企業 150種以上の見積書フォーマット標準提供 初期70万円+年額600万円~
リーナー購買 クラウド(SaaS) 幅広い業種 主要ECサイト横断検索、専任サポート 要問合せ
楽楽販売 クラウド(SaaS) 業種業態問わず 購買申請~支払まで一元管理 初期15万円+月額7万円~
購買管理プラットフォーム クラウド 業種問わず 14,000社導入、5,000万点の商品調達 基本利用料無料

楽々ProcurementII(住友電工情報システム)

出典:公式サイト

「楽々ProcurementII(らくらくプロキュアメント・ツー)」は、住友電工情報システムが提供する企業向けの購買管理システムです。見積依頼から発注、検収、支払いまでの一連の購買業務を効率化し、業務の見える化と内部統制の強化を支援します。

主な特徴

  • 直接材/間接材を含む購買プロセス全体(購入依頼~見積~発注~検収)をシステム化
  • 残タスク数表示やステータス管理、予算消化確認など豊富な機能で効率化を支援
  • 過去の見積データ参照や無制限の相見積機能で属人化を防ぎ、価格交渉力を強化
  • 会計システム連携や在庫管理に対応(標準機能)
  • カタログ購買とスポット購買を一元管理
  • クラウドとオンプレミス両方に対応

料金プラン

プランについてはクラウド版とオンプレミス版の2種類。具体的な価格については要問合せ。

Hi-PerBT 購買管理(日立ソリューションズ西日本)

出典:公式サイト

「Hi‑PerBT 購買管理」は、大規模企業の購買業務に特化した高機能パッケージで、製造業や建設業など複雑な購買フローを持つ企業に適しています。見積依頼・発注・検収・承認など、一連のプロセスをブラウザ上でペーパーレス化でき、複数拠点や海外拠点にも対応。

主な特徴

  • 全社集中購買・コンプライアンス厳守・Web EDI取引を実現する高機能パッケージ
  • 購買に必要な機能を標準搭載し、直接材・間接材いずれの調達にも対応
  • 承認ワークフローや検収漏れ防止機能で内部統制を強化
  • 多言語対応により海外拠点でも利用可能
  • バーコード読み取りや分割検収、カタログ購買機能も標準搭載
  • 電子帳簿保存法(電帳法)への対応や、「JIIMA認証」による法的要件のクリア

料金プラン

プラン 初期費用 ライセンス形態 特徴
標準版 約400万円〜(税抜) サーバー単位 無制限ライセンス。基本購買機能+承認・検収ワークフロー
EDIオプション追加版 約700万円〜(税抜) 同左 見積~検収のWeb-EDI対応強化版
Lite版(小規模向け) 約150万円〜(税抜) 基本20ユーザーまで 少人数向け低コスト構成

価格はあくまで目安で、詳細は見積もりベースとなります。

PROCURESUITE(DAIKO XTECH)

出典;公式サイト

「PROCURESUITE」は、購買担当者が行う、発注・検収・支払までの間接材購買業務に特化したクラウド型購買管理システムです。直感的なECライクなUIで、キーワード検索→商品選択→発注までわずか3クリックで完了できる操作性を追求しています。

主な特徴

  • 購入依頼から検収まで一連の購買業務プロセスを網羅し、情報の一元化・可視化を実現
  • 頻繁に購入する商材をカタログ化しWeb発注に統一することで工数削減・ミス防止
  • 購買プロセスの見える化で内部統制を強化。下請法遵守のワークフロー機能も搭載
  • 外部の購買サイト/カタログとの柔軟な連携が可能
  • グローバル展開企業での利用にも対応(多言語・海外拠点対応)
  • 法制度対応も充実しており、電子帳簿保存法やインボイス制度に対応、JIIMA認証も取得済み

料金プラン

プラン/形式 初期費用の目安 月額費用の目安 特徴・ポイント
オンプレミス型 パッケージライセンス:1,600万円〜 保守費用あり(年額の10~15%程度想定) ID無制限/サーバー購入型。導入支援やカスタマイズ込み
クラウド型 個別見積(規模・ID数・発注件数により変動) システム利用料:発注件数に応じて課金 初期費用なし〜数百万円、利用開始後に従量課金

SOLOEL購買システム(アスクルグループ)

出典:公式サイト

「SOLOEL(ソロエル)購買システム」は、アスクルグループが提供する間接材(文具、日用品、工具、IT機器など)の購買管理を効率化するクラウド型システムです。全国1,500社以上のカタログサイトと連携し、複数の取引先から商品を横断検索・一括注文できるのが特長です。

主な特徴

  • アスクル株式会社の子会社が提供する間接材購買システム。物品材・サービス材の両方に対応
  • 外部カタログサイトと接続し、横断検索で最安の商品を効率良く調達
  • 購買手段の統一と可視化で不正購買を防止
  • 34の外部カタログサイトとシステム連携(パンチアウト)
  • 会計ソフトとのデータ連携にも対応(※有料オプション)
  • 長年のノウハウを活かした購買業務代行サービスも提供

料金プラン

プラン 初期費用 月額利用料 備考
Lightプラン 220万円~ 30万円~ 会計ソフト連携はオプション。一部機能制限あり
Enterpriseプラン 1,000万円~ 要問い合わせ 購買統制機能・複数拠点対応などが利用可能カスタマイズによる機能拡張可能

※価格は目安です。正式にはアスクル営業窓口でのヒアリングにより決定されます。

べんりねっと

出典:公式サイト

「べんりねっと」は、文具・工具・事務用品などの間接材調達に特化したクラウド型購買管理システムです。全国1,500社以上のカタログと連携し、複数サプライヤー商品を一括検索・比較できます。

主な特徴

  • コクヨグループのカウネットが提供する間接材・消耗品購買システム
  • 独自Webカタログを構築可能。複数サプライヤーからの相見積取得や承認ワークフロー設定など機能も充実
  • 主要サプライヤのカタログ商品+自社専用カタログ品を一括管理
  • 発注~検収データを一元化し購買ボリュームの集約・コスト抑制を実現
  • 承認ワークフロー、見積商談、検収機能などを標準搭載
  • 最短2週間で導入でき、スモールスタートが可能

料金プラン

プラン 初期費用 月額利用料 備考
べんりねっとL(ライト) 0円 0円 間接材購入。承認・検収・購買データ管理など
標準プラン 要問い合わせ 要問い合わせ ライトプランに加え、既存取引先の登録、ERPシステム連携など本格機能あり

intra-mart Procurement Cloud(NTTデータ イントラマート)

出典:公式サイト

「intra‑mart Procurement Cloud」は、見積依頼から発注・検収・支払いまでの購買業務をクラウド上で一元管理できるシステムです。150種類以上の見積書テンプレートを標準搭載し、複数サプライヤーへの一括見積依頼が可能。

主な特徴

  • 見積機能に強み(150種以上の見積書フォーマットを標準提供)
  • 購入品目に応じた適切な見積依頼のデータ蓄積で属人化を防止
  • カタログ比較機能でより良い商品を安価に調達
  • 適格請求書番号チェックや下請法対応機能で内部統制を強化
  • 見積~発注~契約~支払までワンストップ対応(S2P)
  • キーワード検索やERP連携で効率を高め、請求業務を自動化することで最大90%の工数削減効果が期待可能

料金プラン

プラン名 初期費用の目安 年間利用料(税別) 特徴
スタンダードプラン 約70万円(審査・導入準備含む) 約600万円/年 部署単位/品目単位のスモールスタートに最適。導入支援とトレーニング込み。無料トライアルあり

※各社の利用規模・要件に応じてカスタマイズされるため、正式価格は個別見積が必要です。

リーナー購買

出典:公式サイト

「リーナー購買(Leaner Technologies)は、ECサイトや商社カタログを横断検索し、企業の間接材(文具・消耗品・工具など)の購買を一元管理できるクラウド型システムです。直感的なEC風UIで誰でも使いやすく、見積依頼、発注、承認、検収、支払いまでの購買プロセスをすべてデジタル化。

主な特徴

  • 商品選定から発注・承認・検収まで間接材購買の窓口をクラウド上に集約
  • Amazonビジネスやモノタロウ等、主要ECサイトや商社の法人カタログをリアルタイム横断検索可能
  • 企業推奨品の登録、柔軟な承認ワークフロー、見積購買とスポット購買の使い分けなどニーズに応じた購買を支援
  • AmazonビジネスやMonotaRO等の外部ECサイトにパンチアウト連携
  • 既存の社内システムともAPI連携可能(※要個別調整)
  • 従来のExcel管理や紙での処理から脱却し、購買業務の効率化と内部統制を実現

料金プラン

プラン名 初期費用 月額費用 備考
無料プラン なし 無料 簡易利用/限定機能のみ
スタンダードプラン 要問い合わせ(企業規模・機能で変動) 要問い合わせ 中堅〜大手企業向け、本格導入支援付き
大規模/カスタムプラン 要問い合わせ 要問い合わせ EC接続強化・承認フロー拡張など柔軟な設定対応可能

楽楽販売(ラクス)

出典:公式サイト

「楽楽販売」は、販売管理だけでなく購買申請・発注・支払いまで一元管理できるクラウド型システムで、現場にも経理にもやさしい操作性が魅力です。ノーコードで自社業務に合わせたカスタマイズが可能で、Excelのように直感的にデータや帳票を扱える点が優れています。

主な特徴

  • Excel/メールで管理していた社内業務をシステム化するクラウド型販売管理システム
  • 販売管理だけでなく購買申請~発注~支払まで一元管理し、進捗状況を見える化
  • 帳票発行やデータ更新の自動化、画面項目のノーコードカスタマイズにより現場ニーズに柔軟対応
  • 他のクラウドサービスや基幹システムとのデータ連携に対応(API/CSV連携)
  • 電子帳簿保存法対応や柔軟な承認ワークフロー機能など、内部統制にも対応
  • 導入企業では「帳票自動化で月270時間削減」といった生産性向上の事例も多数報告

料金プラン

プラン 初期費用(税抜) 月額費用(税抜) 内訳・備考
スタンダードプラン 150,000円 70,000円〜 DB数・ユーザー数で追加課金(他プランも同様)
プロプラン 250,000円 要問い合わせ ユーザー100名~、DB容量拡張、長期運用向け
エンタープライズプラン 要問い合わせ 要問い合わせ 大規模利用・複数拠点対応、カスタム機能含む

パーチェスワンクラウド(SB C&S)

出典:公式サイト

「パーチェスワンクラウド」は、ソフトバンクグループが開発した間接材購買クラウド。大手企業向け支援ノウハウを10年以上蓄積し、直感的なECサイト風UIでキーワード検索から3クリックで発注完了できます。

主な特徴

  • ソフトバンクグループが開発した間接材購買クラウド。大手企業向け支援ノウハウを10年以上蓄積
  • 直感的なECサイト風UIでキーワード検索から3クリックで発注完了
  • カタログ横断検索や定期購入アラート、見積比較表の自動作成など多彩な機能でコスト・工数削減
  • ダイレクト発注、概算発注、契約購買、請求書取り込みなど様々な購買業務を一元管理
  • 請求書レス決済にも対応し社内承認~支払処理までペーパーレス化
  • 導入企業ごとに専任チームが伴走し、長期運用を支援するアフターフォロー体制

料金プラン

料金については要問い合わせとなっており、企業規模や利用範囲によって個別見積もりが提供されます。

購買管理プラットフォーム(ビズネット)

出典:公式サイト

「購買管理プラットフォーム」は、14,000社以上での導入実績を持つ、大企業~中堅企業向けに特化した間接材購買サービスです。オフィス用品や工具・医療用品など最大5,000万点の商品を主要サプライヤーから特別価格で調達可能。

主な特徴

  • 14,000社以上での導入実績。大企業~中堅企業向けに特化した間接材購買サービス
  • オフィス用品や工具・医療用品など最大5,000万点の商品を主要サプライヤーから特別価格で調達可能
  • 複数拠点の請求を一本化し振込手数料を削減。電話/FAX注文も含め購買情報を可視化しガバナンス強化
  • 複数の大手BtoBカタログを横断検索し最安値を自動比較
  • ユーザーカタログ機能により非EC取引先の商品も電子カタログ化して一元管理
  • 管理者向け運営支援サイトで予算設定や購入制限など運用ルールを細かく設定可能

料金プラン

基本利用料無料※(一部オプション有料、詳細要問い合わせ)

購買管理システムの導入に関するよくある質問(FAQ)

購買管理システムの導入を検討されている企業様から、よくいただく質問をまとめました。システム選定の参考にしてください。

Q1. 購買管理システムと販売管理システムの違いは何ですか?

購買管理システムは企業の仕入れプロセス全体を管理するためのツールです。主に発注・検収・支払いなどの機能を提供し、調達業務の効率化とコスト最適化を実現します。対して販売管理システムは、企業が顧客に商品やサービスを販売する際のプロセスを管理します。

受注処理、出荷指示、請求書発行などの機能が中心となります。両システムは似たような構造を持ちますが、購買管理は「仕入れる側」の視点、販売管理は「売る側」の視点で設計されています。

購買管理システムでは仕入先や発注品目のマスタ管理、予算管理、承認ワークフローなどが重視される一方、販売管理システムでは顧客管理、在庫連携、売上分析機能などが重要視されます。ただし最近では両方の機能を統合したERP的なシステムも増えています。

Q2. 中小企業でも購買管理システムは導入できますか?

はい、中小企業でも導入可能です。特にクラウド型システムは初期投資を抑えられるため、経営資源が限られた企業にも適しています。「楽楽販売」「べんりねっと」などは直感的な操作性で、ITに詳しくないスタッフでも使いこなせるよう設計されています。

まずは購買量の多い部門や、問題が発生しやすい調達カテゴリーに限定して導入し、効果を確認しながら徐々に拡大するアプローチが一般的です。システム選定時は、将来的な拡張性や既存システム(会計ソフトなど)との連携性も考慮すると良いでしょう。

多くのベンダーは無料トライアルや相談会を実施しているので、実際に操作感を確かめてから判断することをお勧めします。初期費用10万円台から始められるサービスも増えており、投資対効果の高いDX施策として注目されています。

Q3. 購買管理システムの導入にはどれくらいの期間がかかりますか?

製品選定や企業規模により導入期間は大きく異なります。クラウド型システムであれば、比較的短期間(1〜3か月程度)での本番稼働が可能です。

ただし、この期間内には「要件定義」「マスタデータ整備」「業務フロー調整」「テスト運用」などの工程が含まれます。特に重要なのは事前準備の充実度で、自社の購買プロセスや承認フローを明確化しておくことで、スムーズな導入が実現します。

また、ユーザー教育や既存システムとの連携設定にも時間を要するため、計画的な準備が必要です。一方、オンプレミス型システムや、複雑な業務フローが絡む大規模導入の場合は、半年から1年程度の期間を見込むことが現実的です。多くのベンダーは導入スケジュールの目安を提示していますので、事前に確認しておくことをお勧めします。

Q4. 既存の会計ソフトや在庫管理システムと連携できますか?

現代の購買管理システムの多くは、業務効率化のために既存システムとの連携機能を備えています。主要な会計ソフト(弥生会計、freee、MFクラウド会計など)や在庫管理システム、さらにはERPとのAPI連携やCSVデータ連携が標準装備されていることが一般的です。

特に「PROCURESUITE」「リーナー購買」「楽楽販売」などは、幅広いシステムとの連携実績があり、導入事例も豊富です。発注データを会計システムの仕入データとして自動連携させることで、二重入力を防ぎ、業務効率向上とミス削減を実現できます。

ただし、連携できる項目や同期タイミング、双方向連携の可否などは製品によって差があるため、自社の業務フローに合わせた連携が可能かどうか、導入前に必ずベンダーへ確認することをおすすめします。多くのベンダーは無料相談やデモ環境で検証機会を提供しています。

Q5. 導入後のサポートはどこまで受けられますか?

ほとんどの購買管理システムベンダーは充実したサポート体制を提供しています。初期導入から操作説明、日常的なトラブル対応、定期的なアップデート対応まで幅広くカバーしています。

サポートレベルはベンダーによって異なり、電話やメールによる基本的な問い合わせ対応のみの場合もあれば、専任のカスタマーサクセス担当者が付いて運用定着までしっかりとサポートするプレミアムなサービスを提供するケース(例:リーナー購買、パーチェスワンクラウド)もあります。

どのタイプが自社に合っているかは、社内のIT知識レベルや導入規模によって判断すべきでしょう。いずれにしても、契約前にはサポート範囲(無償/有償の区分)、対応時間帯、連絡手段(電話/メール/チャット/訪問)などの詳細を必ず確認することをおすすめします。特に業務クリティカルな用途では、緊急時の対応体制も重要なチェックポイントです。

Q6. 自社に合った購買管理システムをどう選べばいいですか?

購買管理システム選定のポイントは、まず自社の課題(業務効率化・コスト削減・内部統制強化など)を明確にすることから始めましょう。

次に、システム形態(クラウド型・オンプレミス型)、既存システムとの連携可能性、業種別対応機能、操作性などを比較検討します。予算規模や導入スケジュール、将来的な拡張性も重要な判断基準です。理想的には複数のベンダーからデモを受け、実際の使用感を確認することをおすすめします。

また、本記事で紹介した「選び方のポイント」や「タイプ別おすすめ製品」も参考に、貴社に最適なシステムをお選びください。

まとめ

本記事では、2025年最新の購買管理システムを徹底比較し、業種別・規模別に最適なソリューションを紹介しました。企業の調達業務を効率化するこれらのシステムは、単なるコスト削減ツールではなく、業務の透明性向上や迅速な意思決定を可能にする戦略的投資であることがお分かりいただけたでしょう。

クラウド型とオンプレミス型、それぞれの特性や、既存システムとの連携可能性、導入期間や費用感についても解説しました。多くのシステムが無料トライアルを提供しており、実際に操作感を確かめてから判断できる環境が整っています。

最適なシステム選びの鍵は、自社の課題を明確にし、業務フローに合った機能を備えた製品を選定することです。今回紹介した10の製品は、それぞれ特長が異なるため、貴社の優先課題に合わせて検討していただければ幸いです。

購買管理システムの導入は、単なるDXではなく、企業の競争力を高める重要な一歩です。本記事が皆様の最適なシステム選びの一助となれば幸いです。

介護サービスで官民連携促進=モデルケース創出へ補助―経産省

 経済産業省は、高齢化の進展で需要の増加が見込まれる介護・高齢者支援サービスの安定供給に向け、企業と自治体の連携促進に乗り出す。各地で求められているサービスを企業が把握できるようにして、事業展開を後押しする狙いだ。2025年度は、自治体の協力を得ながらニーズ調査を行うなど、地域の特性に応じたサービスの開発に取り組む企業に補助。他の地域が参考となるような官民連携のモデルケースを創出する。

 高齢化に伴い、働きながら介護をする人の割合が増加傾向にあり、買い物代行や見守り、病院の付き添いをはじめとした保険適用外のサービス需要が伸びると見込まれる。これに対し企業側では、介護や高齢者支援に関するニーズの把握に不安を抱え、新規参入に慎重となる場合も少なくないという。

 経産省は、十分な量のサービスが提供される必要があるとして、企業と自治体の連携促進に着手。高齢者数のデータや住民要望といった情報を自治体から得た上で、民間バスの運行ルート作成に利用している事例などを参考に、地域ごとの特性を反映させた持続可能なサービスの展開を促す。

 25年度は、モデルケース創出に向けた補助事業を実施。企業が自治体と連携して行う新たなサービスの開発などにかかる費用について、600万円を上限に支援する。補助は複数に対して行う計画で、8月中旬に採択結果を発表。事業終了後には成果報告書の提出を企業に求め、26年度以降の効果分析に役立てる。 (了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/07/22-04:14)

スタートアップが老舗企業をM&A…Shippioが挑む貿易DX、業界の常識破り

●この記事のポイント
・新規参入の難しい貿易・国際物流の分野に果敢に乗り込み、さらに老舗の通関企業をM&Aするという異例の取り組みで、業界に驚きを与えたShippio。
・DXが遅々として進まない業界にあって、どのように変革をもたらそうとしているのか。同社CEOの佐藤孝徳氏は、アナログな国際物流の状況をDXでなめらかに変革するとの壮大なビジョンを掲げる。

 島国日本にとって、貿易は重要な社会インフラであり経済活動の要である。しかし今、この貿易の「あたりまえ」が揺らいでいる。トランプ関税の影響に加え、越境ECの発展による輸出入量の急増。その一方で、貿易の現場は数十年変わらず、電話・メール・紙・Excelによる属人化したアナログな業務が続いている。他業界と同様、人材不足も深刻化し、生産性向上は待ったなしの状況だ。

「ものが届く日常があたりまえではなくなるかもしれない」ーー。このような、ある種の危機感を抱き、貿易DXを推進するのがShippioだ。

 Shippioは、船で運ばれている貨物のリアルタイムトラッキングや遅延状況の把握、貿易業務の進捗管理、そして社内外の関係者との書類共有やチャットをクラウド上で完結できるサービスを展開している。これらはすべて、これまで人が手間と時間をかけ、メールや電話、個別のExcelなどあらゆる手段を横断しながら属人的に管理してきた業務である。

 現在、Shippioはメーカー・商社などの荷主企業向けと国際物流事業者向けに3つのサービスを提供している。

 貿易の業務管理をShippioのクラウドで実施することで自動的に蓄積される貿易データ。その活用によって、業務の仕組みを根本から変革(Transformation)し、企業の競争力強化に貢献したいと語る、Shippio CEOの佐藤孝徳氏。

 貿易という重厚長大かつ複雑な領域で起業し、自らフォワーダー免許を取得しての業界参入、そして前例の少ないスタートアップによる老舗企業のM&Aまで。貿易の変革に挑むShippioは、どのような課題を捉え、どんな未来を描いているのかーー。佐藤氏に聞いた。

参入が難しそうな貿易・物流分野に乗り込んだワケ

ーーまず、Shippioを立ち上げた背景から教えてください。

佐藤氏:私は2006年に新卒で三井物産に入社し10年ほど勤務した後、2016年にShippioを設立しました。社会に本質的なインパクトを与える仕事がしたいという思いが、私の起業の原点です。

 三井物産では直接的に物流の仕事に関わっていたわけではありませんが、物流は社会にとって不可欠なものであり非常に面白いテーマだと感じました。

ーーなぜ、難易度の高い国際物流という領域を選んだのですか?

佐藤氏:当時、国内物流のDXに取り組むスタートアップはいくつか存在しましたが、貿易や国際物流に特化したスタートアップはほとんどありませんでした。

 日本は四方を海に囲まれており、貿易は不可欠です。それにもかかわらず、この領域に挑戦するスタートアップがいないのはなぜだろうと思って調べてみると、法律、規制、国際的な枠組み、古くからの業界慣習が複雑に絡み合っていて、参入障壁が非常に高いことがわかったのです。

 しかし、そこにこそ挑戦する意義があると思いました。「この領域をスタートアップが変革するのは、並大抵の覚悟では無理だ。だからこそ、やるべきだ」と、貿易の領域で起業する決意を固めました。

―その後、どのように事業を進めていったのでしょうか。

佐藤氏:多くのスタートアップは、SaaSなどのITソリューション開発から入りますが、私たちはまず現場の実務を経験するところからスタートしました。ステークホルダーが多く、国を超えて複雑な業務と手続きが絡み合う国際物流。その現場を自ら知って初めてテクノロジーで解決すべき「眠れる課題」に気付けると考えたからです。

 そこで、まずはスタートアップでは初めて「貨物利用運送事業」という免許を取得し、フォワーダー事業(輸出入に伴う運送手段の手配や通関などの手続き代行業)に参入しました。例えば、通関士が手作業で行う煩雑な書類チェックや、船の到着遅延を電話で確認するような属人性の高い業務を、実際に自ら経験しました。

 業務の現場に身を置きながら、同時にテックの力で仕組みを変えるシステム開発を並行する。これまでのスタートアップではほとんど前例のない挑戦でした。

――大手や歴史ある企業も多そうですし、スタートアップが参入するのはなかなか難しそうですが。

佐藤氏:正直、最初は本当に苦しかったです。まだプロダクトも整っていない中、理想だけを語っても信用していただけない。「実績は? 前例は?」と聞かれ、うまく答えられない日々が続きました。しかし、自分たちの志を信じて1社ずつ泥臭く扉を叩き、会話を続けました。

 そんなある日、ある企業の方が「佐藤さんが言っていることが全部実現したら、たしかに業界は変わるかもしれないね」と言ってくれたんです。その言葉が、今も私の支えになっています。

貿易DXの未来

――貿易DXの可能性を実感したのはいつ頃ですか?

佐藤氏:コロナ以前は、まだまだ貿易DXは現実味が薄いと捉えられていました。しかし、パンデミックが全てを変えました。

 物流の現場ではそれまで、毎朝出社して顔を合わせ「あの書類はどうなってる?」「船は予定通り入港する?」と口頭で確認しながら業務を進めていましたが、それがいきなりできなくなってしまった。パンデミックの影響で業務のやり方の前提が崩壊し、情報共有の方法を変えなければならないという喫緊の事態に直面し、業界全体の意識が一変したのです。

 それを契機に”デジタルフォワーディング”という概念や、クラウドで業務進捗、情報、コミュニケーションを一元管理できるShippioの仕組みに興味を示していただける方が増え、導入企業が拡大していきました。パンデミックは、ある意味で、貿易業界のデジタル化を大きく加速させる契機となったと言えるでしょう。

―― そして2022年には老舗通関会社のM&Aも実行しています。この狙いは?

佐藤氏:狙いは通関事業への参入です。当初フォワーダー事業参入と同様に自社で免許(通関業許可)を取得しての参入を考えていました。しかし非常に難易度が高く時間も要しそうでした。そこで通関業許可を持つ企業と一緒になる、”アクライセンス”を狙ったM&Aを考え始めました。

 スタートアップが60年の歴史ある老舗企業をM&Aする。当時としてはあり得ない発想だったかもしれません。M&Aは相手がある話です。実際、M&A対象企業の経営陣や社員の方々は「よくわからないスタートアップに、自分の会社の社員や顧客を引き継いでいいものなのか」と、最初は困惑されたと思います。

 私たちのような新しい企業が、歴史ある企業の意志や文化を尊重しながらも変革を推進できるか? それを問われる挑戦でもありました。

――M&Aを進めるにあたって、対象企業の経営陣やVCなどとの関係構築はどのように進めていきましたか。

佐藤氏:まずは対象企業に関してです。似たようなテック系企業をM&Aするのであれば、相手も慣れているので話は進めやすいと思いますが、老舗企業の場合「御社がうちを買う? なんで?」というところから話が始まるわけです。まず、ここで信頼を得る必要があります。交渉時には、先方に対して当社のビジョンや技術力、そして社員のキャリアプランまで具体的に提示し、丁寧に説明を重ねました。信頼関係を構築するために何度も足を運び、互いの共通点や未来への展望を語り合いました。

 投資家に関しては、シリーズBで調達した資金をM&Aに使うわけですから、投資家に理解をしてもらえるよう話し合いを重ねる必要があります。ましてや、あまり前例のないスタートアップによる老舗のM&Aですから。当初は懐疑的な意見もありましたが、事業計画の緻密さと私たちの強い意志を伝え続けることで、最終的に理解を得ることができました。

 商社での自分の経験や、ベンチャーでのM&A、PMI推進経験のある当社役員の存在、そしてこの異例とも言えるM&Aの可能性を信じてくれた方々のご支援もあり、実現にこぎつけました。

――貿易事業においては行政とのやり取りも含まれると思います。この辺りについてはいかがですか。

佐藤氏:行政とのやり取りもM&Aと同様に、こういったスタートアップの前例がなかったため、理解を得るのに最初は苦労しました。しかし粘り強くデジタル化によって得られる効率性や透明性、そして日本の貿易競争力向上への貢献といったメリットを、具体的なユースケースを交えながら説明しました。

 2023年からは経済産業省が主導して推進している貿易手続きのデジタル化推進に向けた議論に参加し、連携を深めています。経産省から2024年6月に公表された貿易手続きデジタル化に向けたアクションプランでは「令和10年度までに貿易PFを通じてデジタル化された貿易取引の割合を10%とする」という明確な目標が示されています。貿易DXのプラットフォーマーとして、Shippioもこの目標達成に向けて貢献できればと考えています。

 また、2022年にM&Aした老舗通関事業者の協和海運と共同で、DXコンテスト「日本DX大賞2025」(主催:日本DX大賞実行委員会)において、「事業変革部門」の大賞を受賞いたしました。

――それでは最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

佐藤氏:まずは貿易の総合プラットフォーム「Shippio platform」を構築し、私たちのビジョン「国際物流を、アドバンストに」を実現していくことです。

 従来のアナログな国際物流の状況をDXでなめらかに変革することが当社の出発点です。しかし、国際物流は関係者も複雑なプロセスも多いため、一気にすべてをデジタル化することは困難です。そこで、まずは船の遅延状況をリアルタイムで把握できるトラッキングシステムや、関係者間のコミュニケーションを円滑にするツールなど、部分的なデジタル化から着手しました。次のステップとして、足元では貿易データの活用を推進しています。

 こうしてデジタル化を順番に推進してきて、Excelや電話、メール、手書きといったアナログなツールから脱却するモデルケースとなる企業が徐々に増えてきています。

 業界全体に貿易DXを啓蒙する目的で今年から当社が始めた「Shippio Advanced Award」では、貿易DXのモデルケースとなる企業6社を表彰しました。

 将来的には、物流・商流・金流そして情報の流れを「Shippio Platform」に集約し、貿易に関わるあらゆる業界の人々が参画することで、その利便性を享受できる状態を目指します。その先に、アドバンストされた貿易を起点に「産業の転換点をつくる」という私たちのミッション実現を見据えています。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)

森と生きるリゾート「東急リゾートタウン蓼科」の地域連携・環境発信の拠点「TENOHA蓼科」が第二期オープン

SDGsの浸透により、環境保全に対する意識は、ますます私たちの暮らしの中に浸透しつつある。しかし、企業が行う森林保全活動と聞いて、どのようなイメージを持つだろうか。CSRの一環として植樹活動に取り組む企業を思い浮かべる人も多いかもしれない。

森をまもり、つかい、つなぐ「もりぐらし」の思想

東急リゾーツ&ステイ株式会社が掲げる「もりぐらし」とは、「森をまもる」「森をつかう」「森をつなぐ」というサイクルを通じて、持続可能な環境を創出しようという取り組みである。この取り組みは、同社が運営するリゾート施設を通じても具体化されている。

2017年7月には、同社が運営する「東急リゾートタウン蓼科」の一部を大規模にリニューアルし、長野県で初となるグランピング施設「もりぐらしエリア」を開業した。「森で食べる、森と遊ぶ、森に泊まる」というテーマのもと、豊かな自然を満喫しながら多様な過ごし方が楽しめる場所を提供している。

同時に、敷地内に広がる660ヘクタールに及ぶ森林では、定期的な間伐を実施しており、発生した間伐材は施設の燃料として有効活用されるなど、サステナブルな運営が実現されている。

東急リゾートタウン蓼科での「もりぐらし」の取り組みは、森林循環を軸に据え、環境保護と地域社会の発展というサステナビリティと、訪れる人にとっては心身の健康に良い影響をもたらすウェルネスという現代的な価値を包含しているといえる。

「森の力実験都市」へ──「もりぐらし」を科学的に探求

2025年、東急リゾートタウン蓼科は「森の力実験都市」として、森の恵みを科学的に探求し、その効果を最大限に活かしたリゾートとして深化を遂げている。「森あそび」「森まなび」「森いやし」「森ねむり」「森ごはん」という5つの森の力に着目し、最新の研究に基づいたプログラムで、森が秘める力が心と体にどんな変化をもたらすかを体感できる。

環境の価値創出および発信拠点の「TENOHA蓼科」が第2期オープン

2025年7月26日には、東急リゾートタウン蓼科内の「TENOHA蓼科」エリアが第2期オープンする。

「TENOHA蓼科」は、「地域環境」「自然環境」への意識を“日常”に持ち帰ってもらうきっかけとなることを目的として、2024年7月26日に東急リゾートタウン蓼科に開業した「地域環境」と「自然環境」の価値創出および発信拠点だ。ビジターセンターとしての役割を担いながら、地域の住人が自由に訪れ、遊びや仕事の話が自然と生まれる地域共創拠点ともなっており、地域事業者らと“まちびらきマルシェ”などを開催してきた。

森林資源の循環やサステナブルな取り組みを発信する「TENOHA TATESHINA Lab.」誕生

1周年を迎えての第2期オープンでは、研究所・アトリエ・ギャラリーの3つの機能を備える、森の素材研究室「TENOHA TATESHINA Lab.」が新たに誕生する。森林資源の循環やサステナブルな取り組みを発信しながら、間伐材を活用した精油蒸留や草木染め、植物標本づくりなど、自然の豊かさを五感で学べる体験プログラムが充実。また、地域や自然とのつながりを育む創作活動の場として、ワークウェアブランド「MARU TO atelier」がアトリエ機能を担うという。こうした体験や展示を通じて、訪れる人が蓼科の森の多様性に触れ、樹木に関する知識・関心を深め、身近な自然に目を向けるきっかけをつくっていく。

東急リゾートタウン蓼科内に魅力的な施設が続々オープン

さらに、⾧野県茅野市を拠点に、地域の林業事業体と提携しながら森林資源の利活用に取り組む「yaso(株式会社ヤソ)」が手がけるグローサリーショップがオープンするほか、遊歩道には木製水車が登場し、「魚つかみ」エリアも営業を開始する。そして、TENOHA蓼科に隣接するワーキングスーペース「ワークラボMORIGURASHI」もリニューアルオープン。東急リゾートタウン蓼科内の蓼科東急ホテルでも地域の“カラマツ”をコンセプトとする新たな客室が誕生するなど、東急リゾートタウン蓼科全体で「TENOHA蓼科」2期オープンを盛り上げる。

 

「もりぐらし」が示す未来のリゾート像

「もりぐらし」の価値は、単なる環境保全にとどまらない。森林循環を促しながら、リゾート地としてのリッチで娯楽性のある体験価値の提供はもちろんのこと、地域社会との連携、人々のウェルビーイングの実現といった多角的な価値を創出しているといってよいだろう。また、慈善事業ではなくビジネスとして成立させることで、持続可能なモデルとして展開していることも特筆すべき点だ。自然とともに生きるリゾートの未来像として、「もりぐらし」には今後も注目したい。

リゾートタウン蓼科
https://www.tateshina-tokyu.com/

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日本の2.5次元ミュージカル、世界進出で市場拡大…漫画・アニメに続く日本の重要ソフト産業に

●この記事のポイント
・2.5次元ミュージカルが日本発のコンテンツとして大きな産業に成長
・2023年は上演作品数236作品、動員数289万人と2000年を起点とした集計データのなかで過去最高
・ニューヨーク、ロンドン、ソウルを始め、北米、ヨーロッパ、中国など海外での上演も活発化

 2.5次元ミュージカルが日本発のコンテンツとして大きな産業に成長しつつある。ぴあ総研の調べによれば、2023年の2.5次元ミュージカル市場は前年比7.9%増の283億円であり、一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会によれば、23年の上演作品数は236作品、動員数は289万人に上る。観劇目的のインバウンドも増えており、アメリカやイギリス、韓国など海外での上演も増えつつある。昨年にはイギリス・ロンドンで舞台『千と千尋の神隠し』が約4カ月にわたるロングラン上演され、メディアでも大きく取り上げられていた。日本が世界に誇るコンテンツである漫画・アニメ・ゲームを起点とする2.5次元ミュージカルの現状、そして、さらなる市場拡大の可能性について追ってみたい。

●目次

「2.5次元ミュージカル」の定義

 まず、「2.5次元ミュージカル」の定義について、日本・海外における2.5次元ミュージカルの認知拡大と普及に向けた活動に取り組んでいる日本2.5次元ミュージカル協会は次のように説明する。

「当協会は2014年3月、世界中が注目する日本の新しいカルチャーとしての2.5次元ミュージカルをより多くのお客様にご覧いただくことを目的として設立されました。協会が定める2.5次元ミュージカルの定義は、日本の2次元の漫画・アニメ・ゲームを原作とする3次元の舞台コンテンツの総称で、音楽や歌のない演目、ストレートプレイも含めてそう呼んでいます。『2.5次元』という言葉自体は、早くからこのジャンルに注目し、育ててくださったファンの間で使われてきた呼称です。協会が設立された2014年は、今でもこのジャンルの代表作の一つであるミュージカル『テニスの王子様』が初演から10年以上を経て、継続的な人気舞台シリーズとして広く認知され、さらに多くの人気作品が次々と舞台化されるようになっていた時期でした。こうした背景のもと、日本が誇る演劇ジャンルの一つとして、2.5次元ミュージカルを一過性のブームで終わらせることなく、国内外に広く認知されることを目指して、当協会は設立されました。当協会の会員は、演劇制作会社のみではなく、原作となる漫画の出版社やゲーム会社、各種メディアをはじめ、チケット関連会社、グッズ関連会社、最近では配信に関わるネットワーク関連企業など多種他業種の団体で構成されています。

 当協会の主な活動としては、会員が主催・制作する演目を中心に、2.5次元ミュージカルの認知拡大と普及を目的としたプロモーション支援や、会員に向けた各種情報の提供などを行っています。年間作品数、動員数などの市場規模の統計も実施し、会員や各種メディアに提供しています。基本的にはBtoBの事業ですが、一般ファン向けには『2.5フレンズ』という無料メルマガ組織の運営を通じて、チケット情報をはじめとした作品に関する各種情報を発信するBtoCの取り組みも行っています。

 海外に向けては、インバウンド対応として、協会設立当初より海外向けチケットの販売システムを確立し、販売会社等と連携したサービス提供を行っています。また、海外における2.5次元ミュージカルの認知を広め海外公演のサポートやプロモーションなども積極的に行っています」

配信、グッズ販売など周辺市場も拡大

 現在の国内における2.5次元のミュージカルの年間の上演本数や観客動員数、配信やグッズ販売などの市場はどのような状況なのか。

「当協会では毎年、ぴあ総研と連携し、2.5次元ミュージカルの上演作品数および観客動員数を統計・発表しています。現時点では2024年のデータは集計中ですが、2023年の数字は上演作品数236作品、動員数289万人と、どちらも2000年を起点とした集計データのなかでも過去最高の数字を記録しました。先にご紹介した無料メルマガ組織『2.5フレンズ』の登録者数も25万人を超え、関心の高まりを裏付ける数字となっています。

 配信については、協会設立時はリアルな公演のみの演目が多く、人気公演が千秋楽に映画館でのライブビューイングを実施するといった事例はありましたが、コロナ禍をきっかけにさまざまな形態の配信を活用する公演も増え、国内外問わずその市場は拡大しているといえると思います。また、2.5次元ミュージカルにおいて、公演のチケット収入に加えてグッズ販売による収益は当初より大きなものでした。現在も演目に応じたグッズ開発や販売経路の拡大が継続的に行われています。これら周辺市場の拡大も、2.5次元ミュージカルの持続的な発展を支える要素となっています」

コロナ禍での漫画の購読者数の増加やアニメ配信の広がりも影響

 今、2.5次元のミュージカルが盛り上がり、注目されている理由は何であると考えられるのか。

「最大の要因は、やはり原作となるコンテンツの圧倒的な人気にあると考えています。日本が世界に誇る、漫画、アニメ、ゲームが原作である2.5次元ミュージカルは、コロナ禍において、原作である漫画の購読者数の増加、アニメ配信の拡大、ゲームユーザーの増加を背景に、それらを舞台化した2.5次元ミュージカルにも、より多くより幅広い層からの関心が集まるようになったのだと思います。

 また、演劇である2.5次元ミュージカルは、劇場で自分たちが好きな原作の世界観をリアルに体感・共有できる点も大きな魅力かと思います。好きなキャラクターが目の前で言葉を発し動く、原作の世界観を再現する舞台は、演劇初心者であっても入りやすく、感動を得られるコンテンツとなっています。海外のお客様が字幕なしでも日本語のセリフに一喜一憂している姿を見ると、原作の持つ力を実感します。そうした原作への共感や没入感こそが、今の2.5次元ミュージカルの盛り上がりを支える要素になっていると考えています」

 海外におけるファンの広がりや人気、市場規模は、どのような状況なのか。

「当協会の設立時より、日本の漫画・アニメ・ゲームに対する海外からのリスペクトは高く、これらを原作とした舞台化の総称である2.5次元ミュージカルの海外での成功の可能性は非常に高いと感じていました。コロナ禍以前には、日本文化の一つとしてフランスのパリやアメリカのニューヨークなどで実施された、日本文化イベントに招聘されることも多く、実際に海外の日本の漫画・アニメ・ゲームファンの2.5次元ミュージカルへの期待、熱量を感じることができ、その可能性はますます高くなっていました。

 そうした反応を受け、さらなる海外公演への勢いをつけたところではありましたが、パンデミックとなり海外での公演については一時的に困難な状況となりました。ただ、先にお話ししたように、コロナ禍においては漫画の購読者数の増加やアニメ配信の広がり、ゲームユーザーの拡大など、原作コンテンツの浸透が進みましたが、こうした動きが海外にも広がったことで、日本の漫画・アニメ・ゲームへの関心はさらに高まり、結果として2.5次元ミュージカルの海外公演の現実味も高まりました。現時点ではまだ『市場規模』といえるような明確な数字を出すことはできていませんが、昨年から今年にかけて確実に認知度は広がり、人気も着実に伸びています。今後のさらなる展開が期待される分野です」

ロングラン公演が可能となる劇場環境や仕組みの整備が重要

 日本発のミュージカルの海外公演は増えているのか。

「漫画・アニメ・ゲームを原作とした日本発の舞台作品の海外公演は増加しています。昨年はイギリス・ロンドンで舞台『千と千尋の神隠し』が4月から8月まで約4カ月間上演され、アメリカ・ニューヨークでは『進撃の巨人 -the Musical-』が上演されました。これらは日本人キャストによる公演でしたが、現地スタッフ・キャストによる上演として、ミュージカル『四月は君の嘘』がイギリス・ロンドンおよび韓国・ソウルで公演を行っています。今年に入ってからは、『美少女戦士セーラームーン』を原作とした『Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live』がイギリス・ロンドンで2月から3月まで約2カ月間上演され、さらに3月から4月にかけてシアトル、シカゴ、ニューヨークなど21都市を巡る北米ツアーを実施しました。

 そして、この夏には舞台『千と千尋の神隠し』の中国・上海公演と、漫画『ハイキュー!!』を原作とした舞台、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』の中国ツアーも予定されています。欧米での公演が増えるとともに、これまで実施されてきたアジアでの公演も継続しており、海外公演は確実に増加しています」

 では、今後さらに 2.5次元のミュージカルが活性化していくためには、何が必要であると考えられるか。

「今後、2.5次元ミュージカルがさらに活性化していくためには、より多くのお客様に作品を届けられる環境づくりが必要だと考えています。現在、国内外のファンの方々にご支持いただき、観劇の機会も少しずつ広がってきていますが、作品によってさまざまな事情がある中で、劇場の確保をはじめとした環境面の要因も影響し、多くの作品は比較的短期間での上演となることが少なくありません。人気作品ではチケットが取りづらく、『観たいのに観られない』という状況が生じることもあります。今後は、2.5次元ミュージカルをより多くの方に届けられるよう、ロングラン公演が可能となる劇場環境や、それを支える仕組みの整備が重要になってくると考えています。観劇機会の拡大は、作品の魅力を継続的に発信していくためにも、欠かせない要素です」

 課題や障害は何であると考えられるか。

「前の質問とも重なりますが、やはり劇場の確保が大きな障壁となっています。たとえば、常に2.5次元ミュージカルを上演しているような専用劇場があれば、インバウンドのお客様にも公演情報をわかりやすくご案内できますし、『その場所に行けば必ず2.5次元作品が観られる』といったアメリカ・ニューヨークのブロードウェイのような情報発信も可能になります。こうした拠点の存在は、国内外を問わず、より多くの方に継続的に楽しんでいただくための重要な要素だと考えています。

 しかし実際には、2.5次元ミュージカルだけでなく、他の演劇作品や音楽ライブなども含めた全体の劇場需要が高く、限られた劇場数の中で公演スケジュールを確保するのは容易ではありません。さらに、専用劇場の創設となると、土地の確保や資金面、運営体制の整備など、さまざまなハードルがあります」

アマゾン、物流業務で75万台のロボット導入…ヒト型ロボットも導入、人間と置き換えコスト削減か

●この記事のポイント
・米アマゾン・ドット・コムが全世界の物流業務で75万台以上のロボットを運用していると公表
・AIを搭載したヒト型ロボットの導入について実験中
・アマゾンは公式には従業員の労働災害の削減と処理コストの削減が目的だと説明しており、人員削減によるコスト削減だとは明言していない

 米アマゾン・ドット・コムが全世界の物流業務で75万台以上のロボットを運用していると公表した。同社は今月、AIの導入によって今後数年間で従業員の数を削減するとの見通しを示したが、積極的なロボット活用の目的は大幅な人員削減によるコスト削減なのか。また、同社は物流拠点などでAIを搭載したヒト型ロボットの導入について実験中であることも明かしたが、米半導体大手・NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・フアンCEOは「次のAIの波はフィジカルAI(物理AI)」だと強調するなど、同領域ににわかに注目が集まっている。同社は開発基盤モデル「Cosmos」やロボット向け開発環境「Isaac」を、米Google(グーグル)はロボット工学向けAIモデル「Gemini Robotics」を運用するなど、有力テック企業が注力し始めているが、ヒト型ロボットは従来のロボットとは何か違うのか。そして、その普及は社会にどのような影響をおよぼすのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

多くの場面でヒト型ロボットが増えていく

 ニューズフロントLLPのパートナーの小久保重信氏によれば、アマゾンの物流業務で使われているロボットは多岐にわたる。

「アマゾンは2012年に米スタートアップのキバ・システムズを買収して、当初は倉庫内で搬送用ロボットを運用していましたが、現在では進化して完全自律走行型搬送ロボット『プロテウス』が稼働しています。AIによる画像認識によって従業員との衝突を回避し、人間による操作が不要で自動で搬送を行うことができます。ロボットアーム型の『カーディナル』や『ロビン』は、荷物を持ち上げて宛名のところに仕分けする機能を持っており、これも進化して現在では梱包箱ではなく商品パッケージそのものをピックアップして仕分けする『スパロー』も使われています。ラックの高い場所から商品をピッキングして別の場所に格納するロボットもあります。

 そして23年にはアジリティ・ロボティクスというスタートアップが開発した二足歩行型ロボット『ディジット』を導入しましたが、これはまだ実験段階で、現時点では空のコンテナを回収して任意の場所に搬送するということを検証している段階です」

 従来型のロボットとヒト型ロボットは何が違うのか。

「ロボットアームなど従来のロボットは、人ができないことをやるというのが大きな意義でしたが、人ができることを代替するのがヒト型ロボットです。従来の大規模なロボットとは異なり、ヒト型ロボットはサイズが小さく手先で細々した作業を行うことができ、移動もできて、ヒトがやることをより正確に行えるというのが特徴です。大型ロボットが入れない場所に入れたり、階段を昇り降りできるように改良されていけば、どんどん人と置き換わっていくでしょうし、搭載されるAIの性能も向上していくので、物流・製造現場に限らず多くの場面でヒト型ロボットが増えていくと考えられます」

AIによるホワイトカラー職の代替が始まった

 アマゾンがロボットの導入を進める大きな目的は、やはり人員削減によるコスト削減なのか。

「アマゾンは公式には従業員の労働災害の削減と処理コストの削減が目的だと説明しており、人員削減によるコスト削減だとは明言していません。処理コストについては25%削減されたと言っていますが、結果的にはコスト削減効果が生じると考えられます。

 先日、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOが従業員宛ての書簡で、今後はオフィス勤務のホワイトカラーの従業員の数も減っていくと記していますが、多くの人がいつか来る未来と予想されていた『AIによるホワイトカラー職の代替』が、ついに世界最大級のIT企業によって具体的に経営戦略として公言されたとして議論を呼んでいます。ジャシーCEOは従業員に対して、AIに好奇心を持って自己研鑽に励み、可能な限りAIを使い実験してほしい、それが会社が生き残っていくための原動力になるといった主旨のことを言っていますが、アマゾンに限らず、これは今では世界共通でいえることでしょう。

 多くの人が生成AIを使うようになって、AIエージェント同士が連携して自発的に動作するようになり、あらゆる領域で『人がいらない』という時代に向かっていくでしょう。その一方で、新しい職業が生まれるという現象が起きるのではないでしょうか」

 企業へのAI導入支援を手掛ける企業の役員はいう。

「すでに製造現場ではファクトリーオートメーション(FA)といったかたちでロボットの導入により省人化が進んでいるが、現状ではヒト型ロボットの導入はあまり進んでいない。物流拠点は規則的ではない動きが多いため自動化が難しく、ヒト型ロボットがどれほど速いスピードで導入が進んでいくのかは予測が難しいものの、中長期的には導入が進んでいくことは確かだろうし、それによって人件費が削減されなければ導入する意味がないので、当然ながら現場に従事する人の数は減ることになる。もっとも、人手不足解消につながる面もあり、どうとらえるのかは難しい」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小久保重信/ニューズフロントLLPパートナー)

青島空港、山東省初の静岡直行便開設=中国

 中国メディアの海報新聞によると、青島膠東国際空港は17日、山東省では初となる日本・静岡への直行定期便を開設した。新路線は、青島航空(山東省青島市)が運航を担い、毎週木曜日に1往復する。

 青島空港では近く、韓国・清州、名古屋との新規路線も開設し、ソウルや大阪線も増便するなど、日韓市場への運航体制強化を進めており、今回の静岡線開設もその一環。

 現在、青島空港の日本路線は東京(成田・羽田)、大阪、名古屋、福岡などとの間で毎日14往復が運航されている。静岡線の就航により、北東アジア、特に日本への路線網が一層強化された。(時事)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/07/21-13:30)