歴史をヒントに!「今」をつくった未来コンセプトを考察する

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グラフィックレポート&挿絵:甲斐千晴(電通グラレコ研究所 代表)

2025年6月、電通グループ横断組織「未来事業創研」の初の書籍「未来思考コンセプト―ポストSDGsのビジョンを描く」が刊行されました。本連載では、書籍のテーマでもある「未来コンセプト」について解説しながら、「未来」をビジネスに活用するヒントをお伝えしています。

2回目の今回は、時代をつくってきた歴史上の人物に焦点をあて、彼らがどのような未来を描き、社会を動かしてきたのか――。描いた未来を具現化するプロセスを未来事業創研の山田茜が考察していきます。

歴史は見えていること見えていないことがあり、人によってさまざまな捉え方が存在します。今回取り上げる歴史上の人物やエピソードはあくまで「未来思考に繋がるエッセンス」の一つとして紹介しています。

mirai07未来思考コンセプト―ポストSDGsのビジョンを描く
発行:クロスメディア・パブリッシング/編著者:電通未来事業創研

ポストSDGs時代を目前に、未来への期待よりも課題が語られやすい今だからこそ、「未来は予測するものではなく、つくるもの」という考えを大切にし、「つくりたい未来」を描くことの必要性を、ビジネスと未来の関係性を交えて実用的にまとめた一冊。

 

 

偉業を成し遂げた歴史上の人物は未来コンセプトをもっていた!?
 

第1回でもご紹介した通り、未来事業創研が提唱している「未来コンセプト」とは、「つくりたい未来像」を描き、その未来を実現するために必要な事業や活動をどのように進めていくかという指針を言語化したものです。

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「未来コンセプト」と聞くと、新しい発想のように思われるかもしれませんが、じつは時代や領域を問わず、人々を動かし、世の中を変えてきた歴史上の人物は皆、「どんな未来をつくりたいか、そのために何をするか」という考えを明確にしています。つまり、明確なビジョンと、そこに至る道筋=未来コンセプトが、人や社会を動かし、現実を変える原動力だったと考えられます。

例えば、聖徳太子は、争いを防ぐために十七条の憲法を制定しました。第一条にある「和を以て貴しと為す(わをもってとうとしとなす)」という言葉は、何事をするにも人々が仲良く和合することが大切であることを意味しています。まさに当時、聖徳太子が願った未来コンセプトとして捉えられるのではないでしょうか。

平和な世の中をつくりたいという信念で、天下統一という手段を取った徳川家康は、長く続いた戦乱を終わらせ、日本に安定と秩序の時代をもたらしました。

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こうして歴史を見渡すと、未来をつくるアプローチは一つではありません。“争いのない未来をつくりたい”と同じ未来を願っていても、力によって統一していく考え方もあれば、理解によって争いをなくしていこうとするアプローチもあります。つくりたい未来は同じでも、そこに至る未来コンセプトは人それぞれ多様であることもまた、未来を考える上での大切なヒントとなります。

今につながる未来を描いた「平和の人」

もう一人、今につながる未来を描いた先人の例を掘り下げてみましょう。それは、「つくりたい未来像」や未来コンセプトが明確だった元南アフリカ共和国大統領のネルソン・マンデラ(1918-2013)です。彼がつくりたい未来を実現していった過程は非常に学びがあり参考にできるポイントがいくつもあるため、未来思考につながるエッセンスの一つとしてご紹介します。

マンデラが描いていた「つくりたい未来像」は、肌の色や出自に関係なく、誰もが尊厳と自由をもって生きられる社会でした。当時の南アフリカでは、少数の白人が政治・経済の実権を握り、黒人を隔離・差別する人種隔離政策(アパルトヘイト)が長く実施されていました。そんな状況の中、反アパルトヘイト闘争を率い、27年間もの投獄生活を余儀なくされていたマンデラ。しかし彼が釈放後に選んだのは「勝者が敗者をねじ伏せる未来」ではなく、「支配者層と差別を受けていた側が同じ国をつくり直す未来」。つまり、報復ではなく「赦(ゆる)し」と「共存」であり、お互いの思想の違いを受け入れ、共に前に進むことを目指したのです。

これを私なりに解釈すると、マンデラが描いた未来コンセプトは、
「赦しと対話で平和と共生をつくる」
そして注目すべきは、このコンセプトをマインドで終わらせず仕組みに落とし込んだことです。


象徴の力を生かし、皆で共有

1948年に法制化されたアパルトヘイト政策は1994年に撤廃。同年、マンデラは南アフリカ初の民主的な普通選挙によって大統領に就任しました。しかし、これまでの人種差別の遺恨は根強く、依然として国内は支配層の抑圧に被支配層が闘争する状態が続いていたのです。

そこで当時のマンデラは、1995年に自国開催となったラグビーW杯をきっかけにして、人種的な分断を終わらせる努力をしたのです。

じつは、当時の南アフリカでは、ラグビーは支配層に人気のスポーツ。ラグビー代表チームも白人選手で構成されており、アパルトヘイト期の支配層を象徴するものでした。そのため、当時マンデラが率いていた与党内でもラグビー代表チームの廃止論が強かったようですが、マンデラはあえて存続を支持し、“One Team, One Country”という言葉を掲げました。

代表合宿を訪ねて選手やスタッフと対話し、代表チームには、被支配層の居住区訪問や学校・病院での交流を促し、支配層ファンには被支配層社会への敬意を、被支配層ファンには“このチームを一緒に応援しよう”というメッセージを発信したのです。

そして迎えたW杯の決勝戦当日。かつてはマンデラの存在に反発していた支配層の観客で埋まったスタジアムが「ネルソン!」の大合唱に変わり、南アフリカ代表チームは優勝。表彰式でマンデラが代表チームのジャージ姿でトロフィーを手渡す光景は、「分断の象徴」を「共有できる誇り」に再設計した瞬間でした。

支配層と差別を受けていた側が同じスタンドで同じチームを応援する体験を国家的にデザインし、人々に共有させたのです。

さらに真実和解委員会(Truth and Reconciliation Commission)(※)を設け、過去の暴力と不正を公に語り、謝罪と赦しのプロセスを制度として構築しました。理念を掲げるだけでなく、仕組みに落とし込む。ここが彼の未来コンセプト「赦しと対話で平和と共生をつくる」の核です。


※真実和解委員会=過去に起きた深刻な人権侵害や社会的対立を調査・記録し、被害者の声を聞くことで、社会の和解と再建を目指すために設置される委員会。

 

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「虹の国」という共通の物語づくり

マンデラの未来コンセプトのもう一つの核は、「共通の物語づくり」です。

マンデラは南アフリカを「虹の国」という言葉で呼ぶことにしました。さまざまな人種や文化が一つの国で共に生きていく多様性を、色とりどりの虹にたとえています。異なる色は混ざれば濁るのではなく、並ぶからこそ美しい。そう語るメッセージを国の旗に、歌に、スポーツに宿らせたのです。未来は我慢の積み上げではなく、皆で共有できる物語が引っ張っていく、これがマンデラの設計思想でした。

マンデラの未来コンセプトは、対立が常態化した世界で実装可能な方法論でした。彼の実績から、平和は願うだけではなく、赦しと対話、象徴の再設計、制度化、物語の共有……これらを設計して運用するものだという学びを得ることができます。

現代へのヒント、そして未来へ

ではマンデラがつくり出した「当時の未来」は、いま世界にどのように引き継がれているのでしょうか。私は3つの方向で、マンデラのつくりたい未来像が実現していると考えます。

1. 権利の明文化
南アフリカはアパルトヘイト終結後の新憲法(1996年採択)で、人種だけでなく性別や性自認および性的指向など広い差別禁止を明記しました。さらに、同性婚の合法化(2006年制定)も実現しました。法に明文化するアプローチでの差別禁止は各国で広がり、ヘイトクライム禁止や婚姻・雇用での差別禁止などが具体的に定着しつつあります。誰がどの場面で不利益を受けないようにするかを法律に落とし込んだことから、ダイバーシティがいっそう前進するようになりました。

2. 真実と和解の見える化
南アフリカの真実和解委員会の手続きは、カナダの先住民寄宿学校制度をめぐる問題や、南米・アフリカ・ヨーロッパ各地の人権侵害の検証にも応用されているといわれます。加害と被害の事実を公にし、記録し、必要な謝罪と補償を設計していく。差別の歴史を闇に葬ることなく「見える化」し、将来の再発防止に結びつける仕組みとしているのです。

3. 象徴と言語の再設計
南アフリカは11もの公用語を認め、国旗や国歌に多文化性を組み込みました。その後現在に至るまで、各国でも、先住民言語の公的表示や学校教育への導入、スポーツ代表や式典での多言語運用など、日常の場面に多様性を埋め込む工夫が広がっています。マンデラの取り組みは、その端緒です。

「差別を禁止する条文」「過去と向き合う制度」「多文化を可視化する象徴」。マンデラの描いた未来は、今も3つの具体として世界に受け継がれています。平和は願うだけでなく、この3つを積み重ねていくことで、ダイバーシティを「生きた現実」に変えていくのだと私は感じました。これからの未来に向けて、ますます差別が起きにくい社会を、感情ではなく仕組み化し、それを運用する流れが進んでいくと考えます。

マンデラが示した順番も明快です。どんな景色を誰と共有するかを具体化し、赦しと対話を手段に選び、象徴と制度に落として運用する。ダイバーシティは“掲げるもの”から“機能するもの”へ。理念だけでなく、未来コンセプトに基づいた取り組みが日常に浸透していく未来につながっていくのではないでしょうか。

未来コンセプトが次世代をつくる力に!

今回取り上げたマンデラや聖徳太子、徳川家康らの歴史上の人物は、それぞれ「こんな社会にしたい」という明確な未来像と、それを実現するための太い軸となる「未来コンセプト」を持っていました。全員の共通点は、社会や組織を良くしたいという未来への強い思いと、そのためのコンセプトややり方を自分なりに持っていたことです。「つくりたい未来像」が具体的で解像度が高いからこそ、実際の手段や制度策定に生かされ、次世代をつくる力になります。

書籍「未来思考コンセプト―ポストSDGsのビジョンを描く」でも、企業や自治体の成功事例を「つくりたい未来像・未来コンセプト・具体手法」という構造で整理し、紹介しています。今すでに面白い取り組みとしてご紹介できる事例は、過去のある地点で「つくりたい未来像」を描くことに向き合った結果です。

歴史を振り返り、当時の“当たり前”が、どう変化したのか?を考えることで、10年後、私たちは何を大切にしているだろう?今の“当たり前”は、未来にどう変化していくだろう?そして、自分や自社は、その未来にどう関わっていきたいのか?という部分も浮き彫りになると感じます。

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過去にとっての現在は、私たちにとっての未来とも言えます。先人たちが描いた未来像や未来コンセプトには、今を生きる私たちが学べる視点が詰まっています。ただ、こうした「つくりたい未来像」を描くためには、これから訪れる未来の変化を知り、向き合うことも欠かせません。

次回からは、未来事業創研のメンバーがテーマごとに未来の兆しを読み解きながら、「どうすれば人と社会にとってより良い未来が実現できるのか」を探っていきます。お楽しみに!

関連情報:
未来を可視化し、未来の事業をつくるプログラム Future Craft Process

参考文献:
・ネルソン・マンデラの生涯、終わりなき人種差別との闘い(ナショナル ジオグラフィック日本版サイト)
・リチャード・ステンゲル「信念に生きる ― ネルソン・マンデラの行動哲学 Kindle版」
・The Constitution of the Republic of South Africa
・South African Government
・南アフリカ:「虹の国」南アフリカ 故マンデラ大統領が目指した多様性は今(アムネスティ日本)
・Truth and Reconciliation Commission of Canada(カナダ政府:TRC)
・National anthems / Ngā ngaringari(ニュージーランド政府)
・ラグビーと南アフリカ(南アフリカ観光局)
・映画「イン・マイ・カントリー」(DVD)

 

【グラフィックレポートの制作:電通グラレコ研究所 代表 甲斐千晴】
電通グラレコ研究所は、グラフィックレコーディングやファシリテーションを中心としたビジュアライゼーションサービスの提供と研究を目的とする電通グループ横断プロジェクトチームです。本記事の著者が最も伝えたいことを、未来思考コンセプトの世界観の中で描き上げました。https://www.dentsu.co.jp/labo/grareco/index.htmlmirai09
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あなたの得た情報は「偏っている」?データで読み解く情報偏向への向き合い方

電通デザイアデザイン(DDD)は消費と欲望の関係から、さまざまなソリューション開発や情報発信を行う組織です。

第21回からは、DDDが実施している「心が動く消費調査」を分析。調査結果から得られたインサイトやファインディングスをお伝えしています。

今回は、2025年5月に実施した第10回の調査結果に基づき、DDDの千葉貴志が情報取得における認識と行動をテーマに調査の結果を考察します。

「情報の偏り」への意識と行動で、令和の消費者意識をひもとく

情報爆発といわれて久しい昨今において、われわれが日常生活において接している情報は、スマートフォンを中心に一人一人に向けてパーソナライズされています。自分がその日接した情報が隣の人と全然違うのは当たり前になっており、「みんなが知っていること」というものは昔と比べて少なくなっています。

しかし、「自分が普段得ている情報は、偏っている」と思うかを聞いたところ、「そう思う」「ややそう思う」と答えたのは52.1%、「そう思わない」「あまりそう思わない」が47.9%となり、半数近くの人が「偏っていない」と思っていることが明らかになりました。

DDD#24 自分が普段得ている情報は、偏っていると感じている 図版1

では、情報取得に向けた行動についてはどうでしょうか。「自分とは異なる立場の人の意見や考え、情報を知るための行動をとっている」かどうかを聞いた結果が以下のグラフです。

「そう思う」「ややそう思う」が46.0%、「そう思わない」「あまりそう思わない」が54.0%と、こちらは「そう思わない」「あまりそう思わない」がやや多いという結果になりました。


DDD#24 自分とは異なる立場の人の意見や考え、情報を知るための行動をとっている

そこで今回は、この「情報の偏り」について、「偏っているという意識」と「異なる意見や情報を知るための行動」という2つの軸を組み合わせることで、令和の消費者の情報に対する向き合い方を見ていきます。

情報への向き合い方は、年代によって顕著な差

はじめに、4象限で分類した時の割合を見てみます。一番多いのが「情報の偏り認識なし×自分と異なる意見や考えに対する積極的な情報の取得行動なし(以降、積極的な情報の取得行動なし)」で29.0%、次に多いのが「情報の偏り認識あり×積極的な情報の取得行動あり」27.1%となっています。

一番少なかったのは「情報の偏り認識なし×積極的な情報の取得行動あり」でしたが、それでも18.9%のボリュームがあります。多少の差はあるものの世の中全体として、4象限それぞれに一定のボリュームの消費者がいることが分かります。

DDD#24 偏りの認識有無と積極的な情報の取得行動の有無 図版3

一方で、象限別の年代構成を見てみると、大きな違いが見られます。

DDD#24 象限別年代構成比 図版4
※構成比(%)は小数点以下第2位で四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合や、テキストの記載と差が発生することがあります。


例えば、情報の偏りの認識があり、そのうえで積極的な情報取得のための行動をとっている「情報の偏り認識あり×積極的な情報の取得行動あり」層は、30代以下で47.0%と半数近くを占めますが、50代以上では31.2%にとどまります。

対して、「情報の偏り認識なし×積極的な情報の取得行動なし」層は、30代以下で25.8%とおよそ4分の1しかいない一方、50代以上では54.8%と過半数以上を占めています。

こうした状況から、情報の偏りと積極的な情報取得のための行動については明らかに年代による違いがあると言えます。

現代の消費者が抱える「欲望」は、情報偏向意識と行動に影響するか

次に、同じ4象限に対して、DDDが定義する「11の欲望」※を基に、各欲望を最も強く持つ人々ごとの違いを見てみましょう。

DDD#24 11の欲望

DDD#24 各欲望を最も強く持つ人々の違い 図版5

※「11の欲望」について詳しくは、こちらをご覧ください。
「新しい欲望に、名前をつけてやる。」( ウェブ電通報)
DENTSU DESIRE DESIGN、人間の消費行動に影響を与える「11の欲望」2024年版を発表 


レーダーチャートを見てみると、ほぼすべての欲望因子において、各象限の傾向が同じような形となっています。その中で、「情報の偏り認識あり×積極的な情報の取得行動あり」層(水色)は、他の象限よりもすべての欲望が強く、逆に「情報の偏り認識なし×積極的な情報の取得行動なし」層(薄いオレンジ)は全項目弱い様子が見てとれます。

つまり、情報の偏りに対する自己認識と積極的な情報の取得行動の有無は、各自が持つ「全体的な欲望の強さ」と相関があると言えそうです。

また、概ね同じような形のチャート図を示す中でも「承認&優越」「興奮&享楽」「収集&没頭」といった、比較的消費行動につながりやすい3欲望には各象限における、数値の差が比較的顕著にみられます。その点を踏まえると、各象限は全体的な欲望の強さに差があることに加えて、価値観や消費行動にもある程度の偏りや違いがあると考えられます。

幸せを感じやすいのはどのタイプ?情報への向き合い方と「価値観」の関連性

ここからは、象限ごとの価値観について見ていきます。「自分は幸せだと思う」かどうかを聞いた結果が以下のグラフです。

DDD#24 自分は幸せだと思う 図版6

「自分とは異なる立場の人の意見や考え、情報を知るための行動をとっている」と答えた「情報の偏り認識あり×積極的な情報の取得行動あり」層、さらに「情報の偏り認識なし×積極的な情報の取得行動あり」層のほうが、行動をとっていない2つの層よりも「幸せだ」と考えている人の割合が高い結果となりました。

情報があふれる社会においては、情報に対する向き合い方と幸福感は無関係ではないと言えるのかもしれません。

他の価値観項目についても見ていきます。

DDD#24 価値観項目 図版7

いくつか特徴的なところを詳しく見てみましょう。

「インターネット上の情報よりもテレビ局や新聞社などの大手メディアの情報を信頼している」と答えた人の割合が、全体平均では56.7%でしたが、「情報の偏り認識なし×積極的な情報の取得行動なし」層が60.3%と他の層と比べて大手メディアへの信頼度が高いことが分かります。これは図表4で示した年代構成の影響も大きいと考えられます。

「YouTubeなどの動画共有サービスでレコメンドされた動画コンテンツを見ていると、自分の興味関心が広がっている気がする」という項目については、「情報の偏り認識なし×積極的な情報の取得行動あり」層が63.3%と他の層より高くなっています。

レコメンドは多くの場合、ユーザーの検索内容や再生状況から、興味関心に近いものを深掘りしていく機能です。しかし、自分の得ている情報を偏っていないと捉えているこの層の人たちは、「興味関心の深掘り」ではなく「興味関心の広がり」の契機と捉えているのではないでしょうか。

「日常の裏に潜む誰かの苦労や不幸せを知る機会を得たい」という項目と「自分さえ幸せであればいいと思う方だ」という項目を組み合わせてみると、どちらも「情報の偏り認識あり×積極的な情報の取得行動あり」層が一番高い結果となっています。「誰かの苦労や不幸せを知りたい」と思いながらも、「自分さえ幸せであればいい」と答える人が多い点からは、「誰かの苦労や不幸せ」を見ることで、相対的に自分の幸せを確かめている可能性もあるのかもしれません。

情報の偏りは、単に世の中から「みんなが知っていること」が減っているというだけでなく、幸福感やさまざまな価値観の違いとも関連があることが分かりました。個人としても社会としても、どういった状態が「情報空間や情報摂取においてあるべき未来」なのかを考えながら、周囲を取り巻く情報と向き合っていく必要があるのではないでしょうか。

【調査概要】
第10回「心が動く消費調査」
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳男女
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2025年5月13日(火)~ 5月16日(金)
・調 査 主 体:株式会社電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調 査 機 関:株式会社電通マクロミルインサイト

 

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うんちが薬に。「腸内細菌ドネーション」から始まる健康の未来

「うんち創薬」という新しいビジネスをご存じでしょうか?

「うんち創薬」とは、優れた腸内環境を持つ「腸内細菌ドナー」から便を提供してもらい、腸内細菌を抽出して患者の腸に移植する「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)移植」などの医療や、創薬に取り組む事業です。同事業を推進するのが、日本発の医療・創薬スタートアップ「メタジェンセラピューティクス 」。

本連載では、メタジェンセラピューティクス代表取締役社長CEOの中原拓氏と、同事業に伴走する電通のクリエイティブ・ディレクター 佐々木瞭氏にインタビュー。「うんちのドネーション」を通じて構築される社会のビジョンや、事業の成長に電通のコミュニケーションノウハウがどう貢献できるかなどについて話を伺いました。

中原氏、佐々木氏
(左から)メタジェンセラピューティクス 中原拓氏、電通 佐々木瞭氏
<目次>
「うんち×創薬・医療」というビジネスを立ち上げたワケ

“バイオベンチャーの100均問題”を乗り越えるために必要なこと

「難病治療に社会全体が関わり合う場」を可視化するビジョンマップ

健康はおすそ分けして共有できるものに。「ヘルスシェア」という概念

「うんち×創薬・医療」というビジネスを立ち上げたワケ

──まず、本ビジネスを立ち上げたきっかけを教えてください。

中原:私は元々、情報科学を用いてゲノムやDNAなどの解析を行うバイオインフォマティクスの研究者でした。そこからビジネス寄りのキャリアにシフトしていったのですが、その中で、2018年ごろから腸内細菌のビジネスが急速に盛り上がっていく様子を目の当たりにしました。創薬の分野では、腸内細菌の研究を活用して難治性疾患の治療につなげようという動きが加速しており、アメリカでも腸内細菌を使った創薬を目指すベンチャーが次々と立ち上がっていました。

実は腸内細菌、つまりうんちの研究が進み始めたのは、2000年代前半ごろからなんです。昔はうんちなんてただの排泄物で何の役にも立たないと思われていましたが、次世代シーケンサー(NGS)(※1)を用いた解析によって、うんちに含まれる菌が実は人間の健康に寄与することがわかってきました。私自身、研究者として、まだ新しく開拓しがいがある腸内細菌という分野の研究に面白さを感じていたこともあり、ビジネスの力で研究を推進できないかと考えたんです。

※1=次世代シーケンサー(NGS)
DNAなどの塩基配列を高速かつ大量に解読する技術


ちょうどそれと同時期に、日本の腸内細菌研究の第一線で活躍する友人たちが集まって、山形県鶴岡市に「メタジェン」を立ち上げていました。その友人たちと、うんちを使った創薬事業を立ち上げようと思い、2020年にメタジェンの子会社という形でメタジェンセラピューティクスを立ち上げ、事業をスタートしました。その後、経営を分離し、現在は兄弟会社として独立して運営されています。

──腸内細菌ドネーションを、どのように医療や創薬とつなげていこうとしているのでしょうか。

中原:私たちが取り組んでいるのは、健康なうんちから取り出した腸内細菌を、腸内環境が著しく悪化している患者の腸内に、内視鏡を通じて移植するという新しい治療法の社会実装です。抗生物質を使って腸内の細菌を一度すべてリセットし、健康な腸内細菌に入れ替えることで、バランスを崩した腸内環境を正常な状態へと導いていくんです。

まだ日本には、うんちを原料とした薬はありませんが、実は、腸内細菌叢移植は指定難病である潰瘍性大腸炎や、アレルギー、ぜんそく、アトピー性皮膚炎といった免疫系疾患などに対する新たな治療法として期待が集まっています。

腸内細菌を用いた医薬品の原材料を作るには、健康な人からうんちを提供していただかなくてはならない。そこで私たちは、「腸内細菌ドネーション」という仕組みを通じて、献血のようにうんちを提供してもらう“献便”の取り組みを、電通さんと一緒に始めています。

中原氏

“バイオベンチャーの100均問題”を乗り越えるために必要なこと

──電通とプロジェクトを始めるきっかけは何だったのでしょうか?

中原:いわゆる「バイオベンチャーの100均問題」というものをご存知でしょうか?日本では、技術や商品が難解なバイオベンチャーは、上場する際、その実態にかかわらず時価総額が一律で約100億円程度に設定されがちだという問題です。たとえどんなにユニークで社会インパクトの大きいビジネスに取り組んでいても、前例主義に「右へ倣え」で100億円程度に「値付け」されてしまう。本来であれば、科学的なポテンシャルや臨床的な進展に応じて、企業の価値が評価されるべきですが、それを評価できる投資家が日本にはまだ少ないのが現状です。そこで、知人のクリエイティブ・ディレクターに相談を持ちかけたところ、佐々木さんをご紹介いただいたんです。

佐々木:「うんちから薬を作ろうとしている会社がある」という話を聞いたとき、こんな一見奇妙で面白いテーマに本気で取り組んでいる会社があることに驚き、興味を持ちました。初めて中原社長にお会いする前、6時間にも及ぶ経営合宿の映像をいただき勉強したところ、その興味は、このビジネスが日本から生まれる意義への深い理解に変わりました。それと同時に、自分が6時間かけて理解した、このインパクトのあるテーマの裏にあるポテンシャルを、短い言葉やコンセプトでぎゅっと凝縮することで、さまざまなステークホルダーに、この会社の圧倒的な「ちがい」をもっと早く、クリティカルに伝えることができないだろうか、とも思いました。「100均問題」は深淵な問題ですが、ある種のブランディングを通じてこれを解決できないだろうか?と。

中原:当初は、相談ベースのやりとりをしながら、中期経営計画の壁打ちなどを続けていましたが、話を重ねるうちに、IPOに向けた課題が明確になっていきました。腸内細菌叢移植を行うには、健康な便を提供してもらう必要がありますが、治療に使えるかどうかの厳しいチェックを通過できる「うんちエリート」に該当するドナーはなかなかいません。そのため、できるだけ多くの人に協力してもらう必要がありますが、「うんちを集めている団体がある」ということ自体、まだ世の中にはほとんど知られていませんでした。そんな中で、どうすればドナーとして協力してくれる人を集められるのか、ということも課題になっていたんです。

そのためには、私たちとしても、きちんとブランドを構築し、より多くの方の認知を得ていくことは重要だと考えていました。そこで、ブランディングのパートナーとして電通との関係性を再定義し、現在のような関係に発展していきました。

佐々木:メタジェンセラピューティクスは、いわば、健康な人のもつ潜在能力を、病を抱える人の治療に活かすことに挑戦する唯一の医療・創薬企業であるといえます。

この「患者だけでなく健康な人、つまり社会全体と向き合ってひろがる」事業の構造は、メタジェンセラピューティクスという会社の世の中への影響範囲を非常に大きなものへ化けさせています。しかし、その「健康な人から健康がひろがる」という社会意義が、投資家など社外のステークホルダーに十分に伝わりきっていないのではないかとも感じました。

佐々木氏

やはり、こういったディープイシューに取り組む企業は、自社のもつ商品やサービス、技術がすでに目の前にある企業と比べ、事業のインパクトを短期的な数字で語りづらいため、どうしても評価が難しくなります。しかし、描いているビジョンの輪郭をはっきりと可視化していくことで、事業の未来価値を評価する難しさという問題を解消していくことができるのではないかとも思います。

「難病治療に社会全体が関わり合う場」を可視化するビジョンマップ

──「ちがいを伝える」という問題意識から、どんなアウトプットが生まれていったのでしょうか。 

中原:当初は、「事業スキームの全体像をどう表現するか」という話からスタートしました。私たちのビジネスモデルには、ドナーからうんちを集めるバイオバンクという基盤事業の上に、腸内細菌を活用した創薬事業、腸内細菌叢移植を行う医療事業、研究機関や一般企業と連携した事業開発支援といった3つの事業があります。こうした構造をただ説明するだけでなく、私たちの価値や取り組みを正しく、そして効果的に伝えていくためには、事業全体の世界観そのものを表現することが有効なのではないかという仮説に至りました。

そこから、製薬や医療の関係者だけではないすべての人が、日常生活を通じて、難病治療のために関わり合っていく世界を作っていく、というビジョンが生まれてきたんです。そうした思いを、一枚の絵に可視化してみようというアイデアが生まれ、ビジョンマップの作成につながっていきました。

ビジョンマップ

佐々木:先進医療って、一般的には限られた専門領域の中で閉じているイメージがあるかもしれませんが、メタジェンセラピューティクスが実現する腸内細菌医療の営みは、さまざまな人との開かれた関係性の上に成り立っている。このこと自体が、すごく重要なファクトだと思っていて。それを世の中や投資家、そして今後パートナーになっていく企業に向けてしっかり伝えていく必要があるよね、という話になりました。

ビジョンマップを作れば、水戸黄門の印籠みたいに、この事業が何をしていて、どんな価値があって、どんな可能性があるのかが、一目で伝わるようなものとして機能する。そんなふうに考えて作りました。実際の“印籠”の効果はどうですか? 

中原:今いくつかの会社と将来の協業について話しているのですが、ビジョンマップを作ってからは、そうした話が格段にスムーズになりましたね。例えば私たちは広くドナーを募っていて、献便に協力してくださった方には、協力費として最大5000円分の金券をお渡ししています。ただ、これまでは事業の説明をして、「健康なうんちを5000円で買っているんですよ」と言っても、なかなか本質的な意義が伝わらないことも多かったんです。でも、ビジョンマップを見せると、そうした活動の背景や世界観が一気に伝わります。相手の理解も深まりますし、「こういうビジョンのイメージを持っていること自体がうらやましい」と言ってもらえることもあり、本当に強力なツールになったと実感しています。

健康はおすそ分けして共有できるものに。「ヘルスシェア」という概念

佐々木:このビジョンマップ作成の過程で行き着いた、健康の考え方における新しい言葉があります。それが「ヘルスシェア」という概念です。日々出している、究極の不要物であるうんちで、誰かが救われる可能性がある。献便は、自分の健康を“おすそ分け”するような感覚で、人と分かち合える行為なんです。これは、なにひとつ自己犠牲を伴わない、まったく新しいドネーションの形です。

そしてこの考え方は多分、健康そのものの概念を変えると思うんです。これまで健康とは、当たり前ですが、自分のために保つものでした。それが他の誰かと共有できるものになりうるというのは、すごく大きな価値観の転換だなと。健康を「利己」から「利他」の営みに変えていく未来をひとことで表す言葉とは、「ヘルスケア」ならぬ「ヘルスシェア」なんじゃないかと思いました。

──ビジョンマップの作成と同時に、企業リブランディングを行ったそうですが、これにはどんな目的があったのでしょうか。

佐々木:元々は親会社であるメタジェンと同じロゴを使っていたのですが、やはりメタジェンセラピューティクスとして独自のコーポレートアイデンティティを示すブランドシンボルが必要だと考えました。一見、不浄で不要なものに思えるうんちを全く新しい角度から科学し、新しい価値に還元するという着眼点のユニークネスを形にできれば、この企業の違いを表現する強力なツールになっていくんじゃないかと思い、進めていきました。

「自分のうんちを誰かに提供する」という行為を、とても意義のあるかっこいいこととして捉えてもらえるようにするには、デザインを含めたリブランディングの取り組みは重要だよね、という話を中原さんとも共有しながら、方向性を考えていきました。

ロゴデータ
新たなCIの開発にあたっては、4CRプランニング局 友田菜月氏がアートディレクションを行った。

ロゴ集合画像
中原:このブランドシンボルの核となっているのは、「人から人へと健康を受け継ぐ」聖火“Torch”と、「うんちの見方を変える」という新しい視点“New Perspective”です。うんちのアイコンを見る角度を変えて、上から見た形状をモチーフにしながら、そこに“Torch”のイメージを重ねることで、情熱と命のエネルギーを感じさせるビジュアルにしています。

私たちは普段、便をただのゴミとして、トイレで当たり前のように流していますが、見る角度を少し変えるだけで、そこにはまったく新しい価値が生まれることがある。それこそが、私たちがこのコーポレートアイデンティティに込めた、大きな意義です。

※後編につづく

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「AIがないと仕事が進まない」月1万7600時間の業務削減を見込むMIXIのAI活用

●この記事のポイント
・MIXIはChatGPT Enterpriseを全社導入し、月1万7600時間の業務削減を実現。AIを業務の共通基盤へ。
・法務対応や社内報、オンボーディングなど多様な領域で活用し、経営会議の質も大幅に向上。
・AIを効率化にとどめず文化変革や新規事業開発につなげ、競争優位と社員のキャリア形成を強化。

 生成AIの社会実装が加速するなかで、企業はどのようにAIを活用すべきかが問われている。SNSやエンタメ領域で知られる株式会社MIXIは、その問いに先駆的な答えを出しつつある。

 同社は2025年3月、ChatGPT Enterprise(エンタープライズ版ChatGPT)を全社導入。すでに月間で1万7600時間の業務削減を見込むなど、大きな成果を上げている。

 MIXIのAI推進をリードするのは、取締役・上級執行役員の村瀨龍馬氏だ。本稿では、同氏への取材をもとに、同社がどのようにAI活用を進め、どんな効果や文化的変化をもたらしているのかを掘り下げていく。

●目次

なぜChatGPT Enterpriseの導入に踏み切ったのか

 MIXIが生成AIの全社利用に踏み出したのは、2023年春にさかのぼる。まずは社員向けにChatGPT Plusの利用補助を行い、さらに自社開発の「Chat-M」という簡易的なLLMツールを導入した。

 しかしこの段階では、いくつかの課題が浮かび上がった。

 ・社員によって利用UIの慣れに差があり、浸透が進みにくい
 ・情報の取り扱い方が不明確で、セキュリティ面で不安が残る
 ・個人が得た知見を「横展開」できず、ノウハウが共有されない

 村瀬氏は語る。

「AIを使った本人は大きな効果を感じても、それを同僚に言葉で伝えるのは難しい。『AIは便利だよ』だけでは響かないんです。だからこそ、ワークフローや文化として定着させる仕組みが必要でした」

 そこで同社はAI委員会を立ち上げ、ルールや教育体制を整備したうえで、全社員が安心して利用できるChatGPT Enterpriseへの移行を決断したのだ。

複数AIを業務に応じて使い分ける

 導入したのはChatGPT Enterpriseだが、MIXIは単一ツールに依存していない。GoogleのGemini、AnthropicのClaude、さらにGoogle NotebookLMなども状況に応じて利用している。

 ・文章生成・要約・ワークフロー組込み → ChatGPT
 ・ソースコード生成 → Claude
 ・音声・ポッドキャスト風コンテンツ化 → NotebookLM

 つまり「用途に応じてベストなAIを選ぶ」方針をとっており、ChatGPTはその中核を担っている。

実際の活用領域

 MIXI社内でAIはどのように使われているのか。代表的な事例を挙げよう。

1. 法務対応の効率化
 契約関連のやりとりをAIが整理し、必要な手続きや承認フローを提示。
 従来は人に確認していた内容を、AIが自動で手順化してくれる。

2. 資料作成の効率化
 社内報の作成工数は最大50%削減。契約書ドラフトや会議資料も自動生成されることで、大幅な工数削減が実現している。

3. 新入社員オンボーディング
 社内制度や業務手順をAIに尋ねれば即座に回答が得られる。
 「今さら聞けないこと」もAIなら気軽に確認できるため、社員定着率の向上にも寄与している。

4. 経営会議の高度化
 経営会議でもAIが活躍している。
 各部署の最新データをAIが自動で取りまとめるため、会議は「事実確認の場」から「意思決定の場」へと進化。監督領域はAIに任せ、人間はより創造的な議論に集中できるようになった。

数字で見る効果

同社では毎月、AI活用による時間削減効果を各部門からレポートさせている。

 ・予算申請や問合せ対応業務のbot構築(1件あたりの所要時間を約50%短縮)
 ・発注書作成支援botの導入(発注書に関する法務相談件数を約70%削減)
 ・スタートアップ投資検討におけるレポート作成の自動化など、一部業務では80〜90%削減のケースも

 その積み重ねが「月1万7600時間削減」というインパクトにつながっている。

文化的変化:「AIがないと仕事にならない」

 業務効率化にとどまらず、AI導入は社内文化を大きく変えた。

 以前は「AIっぽい文章」を嫌う風潮もあったが、今では「長文メールはAIに要約させるのが当たり前」という状況に。社員同士の理解促進にもAIが介在するようになった。

 さらに、人事領域にも副次的な効果がある。社員はAIを使って目標設定や自己評価を言語化し、上司にアピールしやすくなった。結果として履歴書やキャリア形成にも活用できる仕組みが整いつつある。

 村瀬氏は次のように語る。

「AI活用を通じて、自分の市場価値を高められる。社員がそう実感できているのは非常にポジティブです」

教育とセキュリティ体制

 もちろん、全社導入にはリスクも伴う。MIXIは以下のような体制を整えた。

 ・禁止事項の明確化:個人情報や社外コラボ情報は投入不可
 ・専門部署によるチェック:法務・知財・セキュリティ・開発などがツールごとに利用可否を判断
 ・教育制度:eラーニングやGoogle/OpenAIと連携した研修を導入
 ・アンバサダー制度:各現場に推進担当を配置し、勉強会や「黙々会」で実践的に学習

 これにより、社員が安心してAIを活用できる環境を整えている。

今後の展望:「AIを共通言語にする」

 村瀬氏は今後の展望について、次のように語る。

「AIは一部の便利ツールではなく、会社を変革する共通言語です。AIを通じて部門間の壁を超え、情報透明性を高める。その延長線上に、新しいエンタメの創出や事業変革があると考えています」

 MIXIにとってAIは単なる業務効率化の手段ではない。組織の文化・働き方・経営の在り方を変革する力として位置付けられている。

 MIXIの事例から学べるのは、単にAIを導入するだけでは成果は出ないという点だ。

 ・ルールと教育体制を整備する
 ・部門横断で「共通言語」としてAIを位置付ける
 ・数値で効果を測定し、経営層と現場の双方にフィードバックする

 この3つを徹底することで、AIは「便利な補助ツール」から「企業変革のエンジン」へと進化する。

「AIがないと仕事が進まない」──村瀬氏が語った言葉は、決して誇張ではない。MIXIは生成AIを単なる効率化の手段にとどめず、経営・文化・個人キャリアのすべてをアップデートする仕組みへと昇華させた。

 AI活用に迷う企業にとって、その姿勢は大きなヒントとなるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

グーグル独禁法裁判、新たな競争の幕開けか…事業分割回避でもネット市場再編の兆し

 2025年10月、米連邦地裁が下した判断は、テック業界にとって大きな節目となった。米司法省が求めていたグーグルの「Chrome事業売却命令」を退け、事業分割を回避する内容だったからだ。検索エンジン市場での独占的地位を長年維持してきたグーグルに対する規制のあり方は、業界全体の競争の枠組みを左右する。だが、この判決は「グーグルの安泰」を意味するのか、それとも新たな競争の幕開けを告げるのか。

 テックジャーナリストでニューズフロントLLPパートナーの小久保重信氏は、「今回の判決そのものよりも、AIが市場構造に与える影響のほうが決定的」と強調する。本稿では小久保氏の分析を軸に、判決の背景、競争環境の変化、そして未来の展望を探る。

判決の読み方 ― グーグルは本当に「無傷」か

 判決を受け、「グーグルの競争優位は揺るがない」という見方と、「長期的には利益低下につながる」という見方が交錯している。小久保氏は次のように指摘する。

「現時点では“何の影響もない”といえるでしょう。グーグルは控訴の姿勢を示しており、法廷闘争は長期化します。今後数年にわたり、検索・広告事業が直ちに揺らぐとは考えにくいのです」

 一方で、判決は「将来のほころび」を示唆している。検索市場で圧倒的優位を誇るグーグルだが、生成AIの台頭によって、ユーザーが「検索結果に頼らない」行動様式を取り始めている。グーグルが直ちに経済的打撃を受けることはなくとも、AI競合の存在が中長期的に牙を剥く可能性があるのだ。

判決の背後にある政治的・経済的文脈

 今回の判決を「米国の産業戦略」と結びつける見方もある。もしグーグルが弱体化すれば、米国全体のAI産業の競争力も低下し、中国勢を利することになる。だが小久保氏は、対中戦略よりも「AI時代の国内競争構造」が焦点だったとみる。

「裁判所は、中国への対抗というより、米国内での検索市場の将来を考慮したはずです。AIが台頭する中で、グーグル一強体制が徐々に揺らいでいる。その現実を踏まえた判断といえるでしょう」

 つまり、米連邦地裁は「米国の国益」を守る意識を持ちながらも、AIがすでにグーグルの牙城を侵食し始めている事実を直視したのだ。

AIが変えるネット市場の力学

 小久保氏が強調するのは「今回の判決そのものではなく、AIの隆盛の影響」だ。AIは検索、広告、Eコマース、報道サイトへの集客など、ネット市場のあらゆる領域を変革しつつある。

 従来、グーグルの強みは膨大な検索データの独占にあった。しかし生成AIの進化は「検索という入口」を迂回させ、ユーザーが直接的にAIに答えを求める行動を加速させている。検索広告に依存してきたグーグルのビジネスモデルにとって、これは潜在的な脅威だ。

 さらに重要なのは「データ共有」の問題だ。もし他の企業や政府機関が検索データや行動ログを共有できる仕組みが整えば、AIサービスの質は急速に向上する。競争のカギは「どれだけ広範かつ多様なデータを扱えるか」に移りつつある。

市場競争の行方 ― データは共有されるのか

「データ共有」が新しい競争環境を形作るとすれば、その実効性をどう担保するかが最大の焦点だ。EUではすでに「デジタル市場法(DMA)」により、大手プラットフォーマーへの規制強化が進んでいる。米国でも同様の議論が加速すれば、グーグルは独占的データ保有という強みを削がれる可能性がある。

 しかし、データは単なる「量」だけではなく「質」も重要である。検索クエリ、ユーザー行動、購買履歴など、多層的なデータが統合されて初めて有効に活用できる。ここにグーグルの優位性は依然として残る。小久保氏も「競合がグーグルのデータに匹敵する資産を得られるかどうかが鍵」と語る。

日本企業にとっての教訓

 今回の判決は、日本企業にとっても示唆に富む。検索や広告市場における直接的な影響は限定的だが、AI時代の競争構造の変化はグローバルに波及する。特に、以下の2点は注視すべきだ。

・データ活用の民主化:巨大プラットフォームに依存せず、自社データやパートナーシップを通じて競争力を高める姿勢が不可欠になる。

・生成AIの活用による業務効率化:検索を前提とした旧来型の情報収集から、AIエージェントによる意思決定支援へ移行する流れは、企業経営そのものに直結する。

 つまり、日本企業も「AIをどう使うか」だけでなく、「AIを支えるデータをどう確保するか」が競争力を左右する時代に突入している。

今後の展望…グーグルの未来と市場の再編

 グーグルは控訴を続け、法廷闘争は長期化するだろう。その間に、生成AIを核とした新しい競争環境が加速度的に進展する。

 小久保氏は最後にこうまとめる。

「判決が意味するのは、グーグルが“これまでのように強い状態でいられなくなる”未来です。AIが市場を再定義する以上、今回の地裁判断は、その序章にすぎません」

 グーグルの独占禁止法訴訟は、単なる一企業の問題ではない。AIによって再編される世界のネット市場の象徴的事件であり、ビジネスの最前線にいるすべての人に「次の競争のルール」を考える契機を与えている。

 今回の判決は、グーグルが短期的に影響を免れたことを意味する。しかし、AIの進展とデータ共有の潮流は、いずれグーグルの優位性を削り取るかもしれない。むしろ注目すべきは「AIが市場支配を崩せるのか」という根本的な問いであり、世界の競争秩序は今まさに書き換えられつつある。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小久保重信/ニューズフロントLLPパートナー)

ショートドラマはプロモーション手法として定着するか?

TikTokが発表した2024年上半期のトレンド大賞で大賞を、通期のトレンド大賞で特別賞を受賞したのが「ショートドラマ」でした。SNSのタイムラインにショートドラマが流れてきたときに、「ついつい手を止めて見てしまった」ことがある人も多いのではないでしょうか?

この潮流の中で、すでに多くの企業が自社の商品プロモーションにショートドラマを取り入れ始めています。電通グループのデジタル総合エージェンシーであるセプテーニも、早い時期からこの手法に着目し、数々のプロモーション活用事例を創出してきました。

■セプテーニによるショートドラマに関する連載(電通報)
https://dentsu-ho.com/booklets/633

 

本記事ではセプテーニでショートドラマの事業プロデュースとプランニングを担当する江村雄一と村城太一、セプテーニのショートドラマのパートナーであるGOKKOの村田一馬が、ショートドラマのさらなる可能性と、プロモーションで活用するためのカギ、今後の展望についてお伝えします。

<目次>
若年層にも圧倒的に“届く”、ショートドラマのリーチ力
ショートドラマをプロモーションで最大限に活用する2つの鍵
ショートドラマの「これから」~偶然の出会いを「価値」に変えるには

若年層にも圧倒的に“届く”、ショートドラマのリーチ力

ショートドラマの魅力は、その圧倒的なリーチ力にあります。質の高いコンテンツはオーガニックで100万回以上再生されることも珍しくありません。実際にセプテーニが過去に制作・公開したショートドラマの平均再生数は、1話あたり165万回にも上ります。

さらに、オーガニックでの再生は、アドブロックやYouTube Premiumなどの広告非表示設定をしているユーザーも含め、あらゆるプラットフォームでコンテンツを通じてプロモーションを届けられるという大きな強みを持っています。若年層のテレビ離れが進み、広告が届きにくくなっている現代において、コンテンツを通じて消費者との新しい接点を作り出せるのがショートドラマの大きなポイントなのです。

ショートドラマ#4_図版01
※インクリメンタルリーチ:既存の広告に加えて、新たな媒体に広告を出した際にリーチの増加分を示したもの。

一方で私たちセプテーニは、ショートドラマを単なるリーチ力のあるコンテンツとしてだけでなく、より普遍的なプロモーション手法として確立する必要があると考えています。

リーチ力にとどまらないショートドラマの「効能」を最大限に引き出し、広告効果を適切に数値化することで、そのプロモーション効果を飛躍的に高められるはずです。

ショートドラマをプロモーションで最大限に活用する2つの鍵

ショートドラマをプロモーションで最大限に活用するための鍵として、特に重要なポイントが2つあります。

  1. プロモーション全体を踏まえた上でのプランニング
  2. 適切な評価設計と施策評価

まずは1つ目のポイント、プランニングについて詳しく見ていきましょう。

ショートドラマ単体でもそのリーチ力による商品やサービスの認知向上が期待できます。しかし、並行してキャンペーンといった他の施策を行うなど、立体的な施策を設計することで、商品を認知したユーザーを「態度変容」まで導ける可能性が高くなります。

以前ご紹介した、日本航空(JAL)のショートドラマ施策事例は、ショートドラマとTikTokやX上でのキャンペーンを並走させることで、実際のCVにつながった好事例といえます。

■JALはなぜ縦型ショートドラマで成果を出せたのか? 1000万回再生の裏側
https://dentsu-ho.com/articles/9062
 

この“立体的なプランニング”の考え方は、コミュニケーションの側面はもちろん、メディアプランニングにおいても同様に重要です。例えば、下図のようにショートドラマ単体で実施した場合よりも、同じ時期にテレビCMとショートドラマを同時実施することで、両方に接触したユーザーのブランドリフト率が相乗的に作用していることが示されています。

ショートドラマ#4_図版02

このように、単にショートドラマの施策を実施するだけでなく、商品やサービスに応じて他の施策や複数のメディアを組み合わせるといった立体的なプランニングを設計することで、より大きな効果を期待することができるのです。

次に、2つ目のポイントとなる評価設計と施策評価について解説します。

ショートドラマの再生数やリーチ数が、プロモーションKPIにどれだけ貢献するのかを的確に評価するためには、事前の目標設計が必要です。これをしておくことで、クリエイティブや施策の評価を正確に行い、PDCAサイクルを効率的に回すことが可能になります。こうした手法より、クリエイティブの改善はもちろん、施策全体の設計を見直すことで、費用対効果を格段に向上させることができます。

以下は、セプテーニが提唱する評価設計とPDCAサイクルのイメージです。

ショート動画#4_図版03ショート動画#4_図版04

ショートドラマの「これから」~偶然の出会いを価値に変えるには

少し視野を広げてみます。数年前に「インフルエンサーマーケティング」が台頭し、企業主語ではないメッセージが消費者に受け入れられることで、多くの企業がその手法を取り入れました。それは一過性の流行に終わらず、今やプロモーション手法として定着しています。

ショートドラマもまた、かつてのインフルエンサーマーケティングと同様に、新しいプロモーション手法としてその存在感を示し始めています。今まさに、この手法がプロモーションのスタンダードとして定着するか、あるいは一時的なブームで終わるかの岐路に立っていると言えるでしょう。

しかし、消費者の広告離れが加速し、AIによってレコメンドがさらに最適化されていく世界において、ショートドラマが実現する「ついつい手を止めて見てしまう」ような、偶発的な商品やサービスとの出合いを提供する力は、今後ますます価値が上がっていくのではないでしょうか。

ショートドラマをプロモーション手法として「攻略」し、最大限に活用することができれば、それはプロモーションにおける強力な武器を一つ手に入れることに他なりません。

そのために私たちセプテーニは、ショートドラマのクリエイティブな側面だけでなく、戦略的なプランニングと効果的な評価という側面からもアプローチを進めています。セプテーニおよび電通グループ各社では、縦型ショートドラマの制作からマーケティング活用まで一貫してサポートしていますので、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

【ショートドラマの活用にご興味がある方はこちら】
Email:sss@septeni.co.jp 担当:村城
 

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スマホで歩ける商店街? ECの“当たり前”を覆した「楽天おうちで商店街」の新しいお買い物体験

日々進化し続けるCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)領域に対し、電通のクリエイティブはどのように貢献できるのか?電通のCX専門部署「CXCC」(カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター)メンバーが情報発信する連載が「月刊CX」です(月刊CXに関してはコチラ)。

今回は、2024年10月7日にローンチした、楽天グループ(以下「楽天」)と電通が共同で開発したデジタル商店街「おうちで商店街 Powered by Rakuten」(以下「おうちで商店街」)についてご紹介します。

自宅にいながら、まるで現実の商店街を歩いているような没入体験が楽しめる今回の取り組み。どのようなきっかけで始まり、どのような体験設計を盛り込んだのか。発案者であり、CXを含めた全体のクリエイティブディレクションを担当した小田健児氏、UI/UXの設計から実装をリードした菅原太郎氏に話を聞きました。

小田氏、菅原氏

(左から)【小田健児氏プロフィール】
電通
カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター
クリエイティブ・ディレクター/クリエイティブプランナー
WOWのある表現から先端テクノロジーを活用した体験型のクリエイティブまで、時代の変化と課題に合わせて手口ニュートラルに幅広く対応。カンヌライオンズ審査員をはじめ、ACCグランプリ、ADFEST グランプリ、ONE SHOW ゴールドほか、国内外の主要な広告賞やアワードにて審査員経験多数。

【菅原太郎氏プロフィール】
電通
カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター
エクスペリエンス・デザイナー
UX/UI領域を中心にデジタル・イベント・PRを掛け合わせ企業と社会をつなぐ体験の設計から実装まで数多く手掛ける。つくりながら考えるR&D思考でモックアップ/プロトタイプなどを通じて仮説・検証を繰り返し、人が動くCXクリエイティブを追求。ADFEST グランプリ、SPIKES ASIA シルバー、広告電通賞、ACC 特別賞、PRアワードグランプリなど受賞。
 

オンライン商店街で“楽しいお買い物体験”をつくる

 月刊CX:まずは、「おうちで商店街」とはどのような取り組みなのかを詳しく教えてください。

メイン

小田:「おうちで商店街」は、地域経済の活性化を目的に、“まるで商店街を歩くかのような、まったく新しい買い物体験をつくろう”という自主提案から始まったプロジェクトです。

スマホの画面をスクロールしながら楽天オリジナルの商店街を進んでいくと、各店舗の店長のコメントやおすすめ商品の情報を見られます。もちろん、そこで気に入った商品があれば商品ページに遷移して、その場で購入できます。「楽天市場」に出店している30店舗が実験的に参画しており、店構えや店員の表情を見ながらより親しみを持ってお買い物を楽しめる施策です。

菅原:商店街のビジュアルは、全国各地の商店街を参考にしながら、区画ごとにデザインを変えています。古くて味のあるものから、お祭り感があるものなど、商店街ならではの魅力を楽しんでもらいたいなと考えました。

商店街のビジュアル

また、奥にスクロールしていくと自転車や人力車、阿波おどりをする人々が通りを横切るといった遊び心のある仕掛けを盛り込んだこともポイントですね。ソーシャルゲームからヒントを得て、商店街を歩くワクワク感をカジュアルに伝えられるようにこだわりました。

月刊CX:そもそもこの企画が生まれたきっかけは何だったのでしょう。

小田:コロナ禍での体験が大きく影響しています。当時は私も含め、多くの人が外出を控えてずっと家にいながら悶々としていたと思います。その中で、日常品の買い物で外に出たときに、一番気軽で気分転換にもなり、気持ちがワクワクしたのが商店街でした。

商店街は、ただ商品を買うだけではなく、お店の人と話して何かをおすすめしてもらったり、歩いていたらたまたまイベントに出くわしたりと、偶発的な出会いが生まれる場所ですよね。なんなら、物を買わなくても楽しめる。

日本全国には1万2000を超える商店街があり、どの商店街もオリジナリティであふれているのが魅力です。もともと、私は旅行で全国津々浦々の商店街を回るなど、商店街への思いが人一倍強かったんですよ。

そういった背景もあり、コロナ禍で商店街が打撃を受けて弱っている様子を目にしたときに、この企画を思いついたのです。オンライン上に商店街をつくることができれば、商店街の価値や意義をより多くの人に伝えられますし、リアルの商店街の価値を、「おうちで商店街」を通して、より高められるのではないかと考えました。

月刊CX:そこで楽天とタッグを組んだというわけですね。

小田:ええ。コロナ禍が明けて、さまざまなところでオンライン商店街の企画書を社内の人に見せていたら、楽天を担当しているマーケターから「この企画を楽天さんに提案したい」と声をかけてもらって。すぐに先方にアポを取って自主提案で持ち込んだところ、非常に喜んでいただいて、翌週からプロジェクトがスタートしました。

菅原:「楽天市場」は「地方の店舗でもECの仕組みを使って世界中で戦えるようにしたい」という思いから生まれたサービスで、今回の企画とも非常に相性が良かったようです。

月刊CX:楽天と組んだからこそ実現できた企画でもあったのですね。

菅原:そうですね。「楽天市場」は店舗ごとのページが独特です。それぞれのお店の店主の方々が工夫を凝らし、そのお店ならではの個性あふれるビジュアルをつくっているのが特徴です。あのページ自体が店舗の個性や店主の人となりを表すものになっていますし、“楽しいお買い物体験”につながっていますよね。企画を通して、そういった楽天の強みを別の形で表現できたのではないかと思います。

また「おうちで商店街」に出店していただくお店選びなどは、楽天と全国の店舗との深いつながりを感じました。出店の交渉については大変なところもあるかもしれないと思っていたのですが、とてもスムーズに進みましたね。

通常のECでは苦戦しがちな新規顧客の獲得にも貢献!

月刊CX:「おうちで商店街」の反響はいかがでしたか。

小田:想像以上の大成功でした。「おうちで商店街」では、商品の購入に使えるクーポンを配布していたのですが、ローンチしてわずか2日で1万人分のクーポンが完売し、事前に掲げていた売り上げ目標もすぐに達成しました。クライアントの皆さまにも喜んでいただけましたし、私たちも非常にうれしかったです。

「おうちで商店街」のサイトを訪れた方からは、「普段のネットショッピングでは感じられない楽しさがあった」「実際にお店にも行ってみたい」と数々のお褒めの言葉をいただきました。まさに私たちが求めていたリアクションでしたね。

月刊CX:「おうちで商店街」の出店者からの声はありましたか。

菅原:新規のお客さまから特に大きな反響があったようで、非常に喜ばれていましたね。

今まで「楽天市場」では基本的にランキングや口コミから購入するお客さまやリピーターが多かったのですが、今回の取り組みでは初回購入率が半数以上と非常に高い数値をたたき出していました。EC業界ではリピートよりも新規顧客の獲得が難しいといわれており、業界的にもこの数値は異例です。出店していただいた店舗と新しいお客さまとの接点をつくることができてよかったなと思っています。

テーマは「単位時間あたりの豊かな体験」と「人の介在」

月刊CX:今回の「おうちで商店街」で、より良い買い物体験を提供するためにCX的にこだわったところを教えてください。

小田:今回は売り上げ最大化ではなく、買い物による「単位時間あたりの豊かな体験」「人の介在」を大きなテーマとして取り組んでいました。

例えば現在のECでは、ワンクリックでシームレスに買えるような合理的な購買が定石です。しかし、それでは滞在時間あたりのワクワク感や買い物に対する気持ちの高まりがそぎ落とされているように感じます。

一方で、商店街を歩いているときや、自分の記憶に残っている買い物の体験を振り返ると、そこには“人との関わり”があったと思います。そのため、今回の施策では店主の人となりを伝えるビジュアルと会話コメントにこだわりました。

店主の人となりを伝えるビジュアル
菅原:例えば、店主がお客さまに語りかける言葉は、本人にヒアリングしたコメントを編集して載せています。コメントの文字数に大きな差が生まれないように全体を調整したり、店主の人柄に合わせてフォントを調整したりしました。

これまでの仕事で培ってきた知見を生かせましたし、私たち電通が関わる意味があったなと感じていますね。ただワクワクさせるだけではなく、楽天というブランドに即した本質的な購買体験をつくることができたと自負しています。

月刊CX:サイト設計についてはいかがでしょうか。

菅原:「おうちで商店街」は、画面をスクロールして前に進んだり、ときには後ろに戻ったりして、商店街を歩いているように感じられる体験設計にしています。進むスピードもどれくらいがベストなのか、綿密な検証を重ねました。

オートとマニュアルのイメージ動画


またスクロールについて、今回はお客さま自身が操作する「マニュアル」と自動で進む「オート」の2種類を用意しました。自分で進む楽しさと、自動で動く様子を眺める楽しさの両方があったほうが、お客さまにとって親切ではないかと思ったのです。

そうした点も没入感を高める一助になったのではないかと。店舗同士の間隔やコメントが表示されるインターバルなども、訪れた人が心地よく感じるバランスを探りながら落とし込みました。

当たり前を問い直し、誰かの記憶に残るCXを

月刊CX:今回のプロジェクトを踏まえて、今後の展望を教えてください。

小田:ローンチ後に、今回は出店されていなかった店舗から「『おうちで商店街』に出店したい」というお声をいただきました。そういった声に応えていきたいですね。

月刊CX:最後に、おふたりが今後CX領域で挑戦したいことを教えてください。

小田:私は地球全体をバズらせるようなCXに挑戦したいです。例えば、双方向のインタラクションによる参加性や身体性は、顧客との結びつきをいっそう強固にすることができます。

自分が体験して受け取ったことは強く記憶に結びつきますし、インパクトも大きい。そうしたCXを自分の強みであるノンバーバルなクリエイティブを武器に、地球上の一人でも多くの人に伝えられたら、地球規模でさらに楽しい取り組みができるはずです。

菅原:視点を変えることで既存のものから新しい体験をつくるようなことをやっていきたいです。今回の施策では、ECが効率良く最短距離で買うことが是とされていることに対して、非合理的な部分をあえて取り入れることで新しいお買い物体験をつくれましたし、滞在時間が延びたり購買目的でなくても楽しんでもらえたり、新たな発見がありました。

今の“当たり前”を問い直して新しい体験を生み出し、誰かの記憶に残るようなものをつくっていきたいですね。


(編集後記)

今回は、2024年10月7日にローンチした、楽天と電通が共同で開発したデジタル商店街「おうちで商店街」についてお話を聞きました。

現実の商店街の価値を問い直し、オンラインで実装。そしてまた現実へエンパワーメントさせる今回の施策は、つくり手のこだわりと商店街への愛が詰まったものでもありました。また、楽天というクライアントの特性を存分に生かしていたことも印象的です。

今後こういう事例やテーマを取り上げてほしいなどのご要望がありましたら、下記お問い合わせページから月刊CX編集部にメッセージをお送りください。ご愛読いつもありがとうございます。

月刊CXロゴ
月刊CX編集部
電通CXCC 木幡 小池 大谷 奥村 古杉 イー 齋藤 小田 高草木 金坂
 
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高市早苗政権でAI政策はどうなる?世界は規制強化の傾向、日本は推進か規制か

●この記事のポイント
・高市早苗政権が誕生すれば、日本のAI政策は規制より推進に傾く可能性が高いと見られている。
・世界では欧米が包括的規制を進める一方、日本は経済安全保障の観点から対中国戦略を重視する方向へ。
・日本企業には成長機会が広がるが、国際基準やリスク対応を欠けば長期的競争力を失う懸念も残る。

 新しい自民党総裁に高市早苗・前経済安保相が選ばれた。衆参ともに少数与党ということもあり、一筋縄にはいかないとの指摘もあるものの、新首相に指名される公算が高く、10月15日には日本初の女性首相になるとみられている。

 高市氏が新たに首相となる可能性が高まるなか、日本のAI政策がどのように転換するかという点も注目されている。世界では欧州連合(EU)のAI法案をはじめ、米国も安全性や透明性を確保する規制の動きを強めている。一方で日本はこれまで「過度な規制よりも産業振興を優先する」という立場を取ってきた。高市政権が誕生すれば、その傾向がさらに鮮明になるとの見方が強まっている。

 本稿では、世界的なAI規制の潮流と日本の立ち位置を整理しつつ、高市政権下でのAI政策がどのように展開し得るのかを、専門家のコメントを交えながら展望する。

世界のAI規制情勢:安全性と倫理を重視する流れ

 欧州連合(EU)は2024年に「AI法案(AI Act)」を可決し、世界で初めて包括的なAI規制枠組みを確立した。これはAIをリスクベースで分類し、高リスク分野に厳しい透明性・説明責任を課すものだ。例えば自動運転や医療AIは「高リスク」とされ、利用者への説明義務や第三者検証が必須となる。

 米国では、バイデン政権が2023年に「AI権利章典(Blueprint for an AI Bill of Rights)」を発表し、公平性や説明責任を強調。さらに2024年には大手テック企業に自主的なセーフティ基準を導入させる動きを進めた。欧州のような法制化には慎重だが、国家安全保障や軍事用途では規制を強化している。

 中国は国家AI戦略の下で積極的に研究開発を推進する一方、生成AIの利用に関しては「内容の健全性」を名目に厳格な統制を行っている。国内で提供されるAIサービスには登録制や検閲が課され、政治的に不適切な表現は排除される仕組みが敷かれている。

 こうした世界の動向を総合すると、「AIの経済的メリットを享受しつつ、リスクを抑えるための規制」が共通の課題となっていることがわかる。

日本の現状は規制より支援を優先

 日本政府はこれまで、AI規制において欧米のような包括的な法制度を持たず、事業者による自主規制やガイドライン整備にとどめてきた。背景には、AI人材不足や研究開発投資の遅れがあり、「規制よりまずは競争力の確保を優先すべき」との危機感がある。経済産業省や内閣府はAI活用を推進する支援策を矢継ぎ早に打ち出してきたが、国際的には「規制が遅れている」との批判も根強い。

 明治大学専門職大学院の湯淺墾道教授は、高市政権下でのAI政策について次のように指摘する。

「高市政権に代わって、AIというのは規制のほうに進むのか、それとも推進のほうに進むのかというと、やっぱり推進のほうに進む可能性が高いでしょう。高市さんの持論である経済安全保障やスパイ防止法の文脈から見ると、むしろ中国への対抗という方向でAI政策が組み込まれていくのではないかと思います」

 つまり、日本独自の規制強化ではなく、「対中国戦略の一環としてのAI推進」が軸になる可能性が高い。湯淺教授は続けて次のように述べている。

「例えば日本国内で中国製のAIサービスや製品の使用を制限する。公的部門から排除したり、セキュリティクリアランスを強化して中国人技術者や留学生を研究現場から遠ざけるといった動きはあり得ます」

 実際、米国ではすでに政府機関で中国製のIT機器やアプリの利用を禁止しており、日本も同様の道をたどる可能性が高い。特にAI関連システムに中国製が含まれることは、情報漏洩やスパイ活動への懸念を招くため、まずは行政システムや防衛関連で排除が進むとみられる。

 湯淺教授が指摘するように、研究現場においても「経済安全保障」の名の下にセキュリティクリアランスが強化され、中国人研究者や技術者の参加が制限される可能性がある。これは人材流動性を抑制する一方で、日本国内の研究力を高める契機ともなり得る。

 さらに、AI関連技術の輸出規制が導入されることで、中国への技術流出を防ぎつつ、日本企業には政府の支援を伴う開発投資が集中する可能性がある。

日本企業へのインパクト

 高市政権がAI推進に舵を切れば、日本企業にとっては大きな成長機会となる。特に生成AI、半導体、クラウド基盤などの分野で研究開発支援が強化される可能性が高い。

 一方で、国内規制が緩やかなままでは、個人情報流出や著作権侵害といったリスク対応が不十分になる懸念もある。世界市場で競争力を確保するには、推進と規制のバランスが欠かせない。

 欧州や米国が規制を強めるなか、日本が「推進一辺倒」に見えると、国際協調から孤立するリスクもある。日本企業がグローバル市場で取引する上で、国際基準に適合したAI倫理やガバナンスが求められることは避けられない。

 高市政権下で日本が目指すべきは、単なる規制緩和や支援の拡大ではなく、「支援型規制」というバランスモデルだろう。すなわち、研究開発と産業競争力を後押ししつつ、安全性や倫理を担保する最低限の規制を整備するアプローチである。

 湯淺教授の指摘する「対中国戦略」の要素は今後も色濃く反映されるだろうが、それに加えて国際社会との足並みを揃える取り組みがなければ、日本のAI産業は孤立する可能性がある。

 世界がAI規制を強化する流れの中で、日本は高市政権の下、「推進」に重きを置く可能性が高い。ただし、それは単なる緩和ではなく、経済安全保障や対中国戦略の一環としての色合いを帯びることになるだろう。日本企業にとっては追い風となるが、国際基準との整合性やリスク対応を欠いたままでは、長期的な成長は難しい。

 いま日本に求められるのは、AIを国家戦略の中核に据えつつ、国際的な規範形成にも積極的に関与する姿勢である。高市政権がその舵取りをどう行うか、日本の未来を左右する重要な局面に差し掛かっている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

2050年、カーボンニュートラルは幻想か現実か ―― 高校生が投げた鋭い問い

ある日、Green Carbon株式会社(以下、GC)に届いた1通のメール。

内容は「『カーボンプライシングによる脱炭素』という気候変動対策の中核的政策について、経済効果と環境インパクトの両面から実証的な研究に取り組んでいるので、話を聞きたい」というものでした。

大人でも専門知識がないと難しいほどの質問。その差出人は、なんと高校1年生だったのです。

今の環境に対する取り組みが、ダイレクトに影響する高校生世代は今、何を考え、取り組もうとしているのか。GCと高校生らのインタビュー現場に潜入取材しました。

高校生の口から飛び出した、大人顔負けの専門的な問い

取材当日、最初に口を開いたのは高校生たち。

―― GCのAWD(間断灌漑、水田の水管理方法)技術やバイオ炭による温暖化ガス削減の測定にあたって、国際基準モデルだけでなく現場でのデータ活用が重要だと思います。貴社はモデルとデータの誤差をどう修正して、どのようにクレジットを発行していますか。

国際基準と実地データの整合性に踏み込む鋭い質問に、GC海外事業部 マネージャー横山治生氏は驚きながらも、丁寧に答えます。

横山「AWDではチャンバー(温室効果ガスを測定する装置)を水田に配置し、ガスを直接採集して成分を分析します。カーボンクレジット認証機関が承認する方法論に従い、現地の大学や農家さんの協力を得て公平に評価しています。

バイオ炭は、これまで放置されるか焼却されていた農業残渣(もみがらなど)を無酸素で熱分解して作ります。二酸化炭素を大気に出さず、炭素を炭に固定する技術です。その炭素固定量については大学に依頼し、成分分析と評価を受けています。第三者の研究機関が関与することで、恣意的な操作はできません」

背景にある高校生たちの探究心

なぜ高校1年生がこれほど高度な問いを投げかけられるのか。

彼らは神奈川県相模中等教育学校に在籍する4年生(高校1年に相当)。探究学習で「脱炭素」をテーマに研究し、日本経済新聞社主催の金融・経済学習コンテスト「日経STOCKリーグ」に参加しているそうだ。

高校生たちは、学校での環境に対する学びや問題意識についてこう語ります。

「環境についての調べ学習の機会が多く、問題意識は持っています。ただ、日常で、環境に優しい商品を選ぶかどうかなど、環境意識を生活に反映させるか否かは人それぞれだと思います」

「学校で環境の話題を提示される機会はありますが、社会が本当に危機感を持って早急に対応をしているかといえば、実感できない部分があります」

「委員会を通じて節電を意識することがあります。また運動部では、外での活動の際に地球温暖化の話題が出ることもあり、ニュースなどを見てそれを実感しています」

環境以外にも、興味の幅は広い。

「AIなどのテクノロジーの進歩に興味があります」

「私は量子コンピューターにすごく興味を持っていて、学校では疑問が解決できず、自分で大学の先生に聞きに行ったこともあります」

社会の動きと好奇心、そして問題意識を携え、彼らはカーボンクレジットの現場で起きている生の話を聞きたいとGCを訪れていました。

次々と繰り出される専門的な質問

高校生たちは、さらに踏み込んだ質問を続けます。

――植物のゲノム情報の研究開発で、炭素の固定能力を高めるアプローチもあると思いますが、いかがですか。

研究の最前線に踏み込む問いに、広報室 室長である井家良輔氏が応じます。

井家「社外秘の部分もありますが、植物のゲノム編集については長期的視野での研究を進めています。

一方で、当社で今一番進んでいるのが微生物の研究です。メタンガスを抑制する新種の微生物をスクリーニングし、それを稲に付与することでCO2の削減量を増やし、より多くのカーボンクレジットを作ることを目指しています。なぜ水田でCO2が出るのかと言えば、稲そのものではなく、水田の生成菌と呼ばれる菌によるもの。当社の研究はこれを抑制する事に焦点を当て、研究開発の分野からも差別化を図ろうと考えてます」

――バイオ炭に関して、炭素の固定効果は数百年ほど続くと言われていますが、土壌のPHや微生物の分解速度、降水パターンによって変わると思います。貴社はそうした環境変数をどうモデルに組み込み、クレジットの信頼性を確保していますか。

横山「観点は2つあります。Jクレジットではバイオ炭の方法が認められていますが、排出量の算定は排出係数のように定められており、数値はあらかじめ決まっています。

例えば間伐材を使う場合、伐採で出た枝を炭にして農地にまくと窒素量が減り、その差分がクレジットとして認められます。つまり『何をどれだけ燃やし、どのくらい撒けばどのくらい削減できるか』は制度上の前提として定められているのです。当社は基本的に第三者機関に委託して公平な評価を得るようにしています。

他社では、バイオ炭に微生物を入れて、高機能バイオ炭のような形にして使うところもあります。今後は既存のJクレジット技術を最大化する方法も出てくるかもしれません」

高校生が問う、Green Carbonの展望

――貴社が事業として取り組むプロジェクトはどのような視点で決めていますか。

横山「GCの大前提のビジョンは『生命の力で地球を救う』です。機械を作ってCO2をどんどん吸収する、というようなことではなく、自然由来のものを活用して脱炭素を進めていきます。

ビジネスとしては収益性も大事です。水田のプロジェクトは、大規模な初期投資を必要とせず、農家さんに水の管理方法を指導することで進められるため、事業としてはやりやすいです。

一方でバイオ炭のプロジェクトは初期投資がかかりますが、バイオ炭とバイオオイルを有機肥料や土壌改良材として販売でき、回収も早い。クレジット量は少ないけど収益性は高いのです。さらに農家のコスト削減やN2O削減、米の品質向上にもつながる。農業全体の振興にどう貢献できるかというのも重要な視点です」

―― GCの一番の強みは何ですか。

井家「勿論、海外展開スピードやカーボンクレジットの創出規模日本No.1の強みはありますが、“立体性”だと思います。ネイチャーベースのカーボンクレジット全般を扱える技術と実績、植物や微生物の研究開発、国内外33大学や研究機関との連携、衛星データとの連携、クレジット創出のDX化など、さまざまな要素を組み合わせて事業を立体的に運営しています。それこそがGCの唯一無二であり、強さですね。

目指している世界観は楽天さんに似ているかもしれません。楽天さんが、通信や電気、ECなどで楽天経済圏を作っているように、私たちもカーボンクレジットを中心に、“GC経済圏”を構築したいと考えています。今後は取引所、金融、人材派遣、コンサルティングなど、さまざまな領域に派生していきます」

2050年、カーボンニュートラルは実現できるのか

GCからの質問も続く。

――数ある企業の中から、なぜGCに注目してくれたのでしょうか。

高校生「生成AIを使って関連する企業を調べる中で、自分たちのテーマに最もマッチしていると感じたのがGCでした。先ほども“立体性”とお話されていましたが、さまざまなプロジェクトを手がけているので、何でも質問にお答えいただけるだろうと思いました。『生命の力で地球を救う』というスローガンにも惹かれました」

さらに、高校生とGCの会話は、今から25年後の未来にまで及んでいく。

―― 日本は2050年までにカーボンニュートラルを実現していくと表明していますが、実現に向けて順調に進んでいるという話はあまり聞きません。実現には、今後どのようなことが必要なのでしょうか?

難しい問いに、横山氏が少し考えながら慎重に答えます。

横山「難しいですね。GCとしての目線でいえば、GXを加速させ、カーボンクレジットの需要を高めていく。それによってカーボンニュートラルに近づけていくというのが、ビジネス上では理想的ではあります」

井家氏も続く。

井家「一方で、政府や国、そして環境に対する世界的な動きは不可欠です。『脱炭素への取り組みはやらなければいけない』という世界観に変わりつつある今、それをさらに加速させる必要はあると思います」

横山「あとは消費者の意識を高めていくことですね。環境配慮型の商品を選ぶ動きが広がれば、企業は必ず対応せざるを得なくなる。就職活動でも『環境に配慮している企業を選ぶ』流れができれば、大きなムーブメントが生まれます。

中高生の皆さんの世代にかかっているところも大きいですよね。2050年にカーボンニュートラルを達成できなければ、気候変動はさらに加速すると言われています。その未来を生き抜くのは、まさに僕らも含めたみなさんの世代です。だからこそ環境に配慮していくという価値観を持つことが重要です。

そして今回のように、高校生がカーボンクレジットを真剣に調査し、発表すること自体が社会を動かす大きな意義を持つと思います」

2050年を見据えて、カーボンニュートラルへの挑戦はすでに始まっています。Green Carbonのように、科学とビジネスの力で脱炭素を進める企業が現れているのは、その証。

未来世代の真剣な声と、スタートアップの挑戦。両者の努力に、私たち大人社会と消費者がどう応えるのか――。

未来は、まさに私たちの「これから」にかかっています。


取材時の様子

※本稿はPR記事です。

高利回りだけじゃない、ドバイ不動産が資産家を惹きつける本当の魅力…弁護士が選んだ海外投資先

●この記事のポイント
・税制優遇や人口増加を背景に、ドバイ不動産が投資先・移住先として注目を集める。
・国際弁護士が、経験を活かし、透明で安全な取引を実現する海外不動産ビジネスへ取り組んでいる。
・海外進出では人脈づくりが成功の鍵。現地でのつながりが新たなチャンスを生む。

「ドバイ不動産」と聞くと、派手な高層ビル群や高利回りの投資対象を思い浮かべる人は多いだろう。しかし実際に参入する際には、法規制・取引の信頼性・現地文化など多くの壁がある。

 そのなかで、弁護士資格を持ち、暗号資産や海外ビジネスに精通する人物が日本人投資家のための“安全なゲートウェイ”を築いている。ドバイで不動産事業を展開するEminence Luxe CEO・森和孝氏に、事業の背景と投資家にとってのドバイの可能性を聞いた。

弁護士から投資家、そしてドバイ不動産へ

 森氏は2010年に日本で弁護士登録し、2016年から移住先のシンガポールを拠点に弁護士業務を展開。2021年後半にはドバイへ渡り、現地での法律業務を担うなかで不動産投資に出合った。

「もともとエンジェル投資をしていて、ドバイの不動産も面白いと感じました。現地で信頼できるエージェントと出会い、一緒に会社を立ち上げたのがEminence Luxeの始まりです」

 弁護士業務を続けつつ、不動産は“二つ目の本業”。自身も投資家として物件を購入し、その経験を顧客へのサポートに生かしている。

 ドバイ不動産市場には魅力がある一方で、規制を無視した取引やグレーな慣習も少なくない。

「例えば仮想通貨での決済を独自に処理する業者や、広告規制を守らない業者もあります。私は弁護士として法的にクリアな取引に徹し、淘汰(とうた)の中で信頼を勝ち取る戦略を取っています」

 契約書の精査やセカンダリー取引でのトラブル回避など、弁護士としての専門性が大きな強みになっている。特に暗号資産での不動産購入に対応できる点は、ドバイでもほぼ唯一の存在だ。

 森氏が重視するのは、購入後のサポートだ。

「多くの業者は売ったら終わりで、賃貸管理や転売、支払いが滞ったケースまで私のところに相談が集中します。私たちはチームを組んで賃貸や転売をサポートし、場合によっては私自身が物件を引き受けることもあります」

 購入から賃貸・転売、移住に関わるビザ取得や法人設立まで、法務・実務を一括で支援できる体制は、スタートアップ経営者や投資家にとって大きな安心材料だ。

ドバイ不動産の投資妙味

 ドバイ不動産の魅力は、税制と成長ポテンシャルにある。

 ・キャピタルゲイン税・所得税・固定資産税なし
 ・過去数年で年10%以上の値上がり実績
 ・賃貸利回りは7〜8%を狙える水準

 さらに人口増加が政策的に支えられており、毎年10万人以上が流入。東南アジアの主要都市が人口減少に転じる中、2035年頃までは堅調な需要が見込まれる。

「値上がり期待と安定的な賃貸利回りを両立できる点で、ドバイはポートフォリオのなかでも独自の位置づけになる」と森氏は語る。

 投資先として注目を集める一方、盲点もある。

 空室リスク:夏場は人口が減少。ただし年間払い家賃が主流のため平準化可能。
 外国人依存:人口の92%が外国人。政治的に不確実性をはらむ。
 セカンダリー取引リスク:契約条件の誤解で紛争に発展しやすい。

「政治リスクや戦争リスクは日本より低いほど。ただ、外国人依存の構造は独特のリスクとして見ておく必要があります」

 Eminence Luxeの顧客は経営者やエグジット経験者が中心。医師の購入も多い。当初は資産運用目的が大半だったが、近年は「移住・事業展開」を目的とするケースが増えている。

「寿司店が日本の倍の単価で成立するように、ビジネスチャンスを求めて移住する人が増えています。資産運用から事業展開へ、投資目的はシフトしています」。

弁護士と経営者、二つの顔をどう両立するか

「弁護士時代からビジネス感覚が強く、暗号資産やスタートアップ支援で自然に投資家としても動いていました。不動産も同じ文脈で、弁護士の知見を活かして業界を支える。両立というより、根っこは一つです」

 顧客の契約書作成やビザ取得、法人設立まで一気通貫で支援できるのも、弁護士経験と投資家経験が交差しているからこそ可能なことだ。

 森氏が強調するのは「つながり」の重要性だ。

「ドバイやシンガポールに来て失敗する人は、オフィスにこもって外に出ない人。言語に不安があっても、交流を重ねればビジネスチャンスは広がります。特にドバイは政府や大企業と仕事をしやすい環境が整っている」

 自身も現地政府と連携するスタートアップに投資しており、起業家にとっての可能性を肌で感じている。また、森氏は、日本とドバイの架け橋となるべく、さまざまな活動を展開している。先月には、日系起業家約400名を集める過去最大規模のイベントの実行委員長を務めて大成功を収めた(参考記事https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000158381.html)。

「海外進出を考えるなら、最初のアクセスポイントをどう作るかが最大のカギです。ドバイは日本に比べて過度な競争社会で、油断をすればすぐに騙されます。安心してビジネスに専念できる環境整備が私の使命と考えています」

 ドバイ不動産は、投資利回りや人口動態に支えられた成長市場であると同時に、法的リスクや取引上の盲点も多い。そのなかで、弁護士であり投資家でもある森氏が提供する「合法性」と「アフターフォロー」は、日本人投資家にとって安心して参入できる希少なゲートウェイだ。

スタートアップ経営者や投資家にとって、資産形成だけでなく新規事業の舞台としてのドバイは、今後ますます無視できない存在となるだろう。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)