JRA グランアレグリア最終追い切り「抜群」もC.ルメールとは相性最悪!? ヴィクトリアマイル(G1)に一抹の不安

 大阪杯(G1)4着から巻き返しを期す、昨年の最優秀短距離馬・グランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)が16日に東京競馬場で行われるヴィクトリアマイル(G1)に出走する。

 昨年は間隔を空けながら短距離G1・4レースに出走。一流マイラー・スプリンター相手に3勝2着1回という成績を残した。特に圧巻だったのは6月の安田記念(G1)。女傑アーモンドアイに2馬身半差をつける圧勝劇を演じたのは記録に新しい。

 ところが今年の始動戦に選んだ大阪杯では、約2年ぶりの馬券圏外に沈む4着。コントレイルに次ぐ2番人気に支持されたものの、結果はレイパパレが余裕の逃げ切り勝ち。グランアレグリアは0秒9離され、最後はコントレイルにも交わされた。

 コーナーを4回走る内回り、初めての距離、さらに道悪馬場が自慢の切れ味を削ぐ形となったのは言うまでもないだろう。

 今回は距離を1600mに戻し、良馬場での開催が濃厚。牝馬限定戦なら負けるわけにはいかない。

 状態も前走から明らかに良化。12日の水曜追い切りは、美浦南WでC.ルメール騎手を背に追い切られ、馬なりのまま6ハロン82秒1-3ハロン37秒9-ラスト12秒7の好タイムをマークした。

 跨ったルメール騎手は「すごく良い追い切りをしてくれました。最初は我慢していて、3、4コーナーからは自分から動いて行きました。元気いっぱいでした。直線ではよく伸びて、息もフットワークも全部良かったです。いい状態だと思います」と手放しで絶賛。藤沢調教師も「一度使って、順調にきています」と上積みを強調した。

 一見、死角らしい死角は見当たらないグランアレグリアだが、抜群の動きを見せた最終追い切りに不安要素が隠されているという。

「確かに水曜の(最終)追い切りは馬なりのまま時計も理想的でした。文句なしの状態でレースを迎えることになると思います。ただ気になるのは、最終追い切りにルメール騎手が跨ったことです。

ルメール騎手がグランアレグリアの最終追い切りに跨るのは今回で5度目ですが、実はこれまであまりいい結果が出ていません」(競馬誌ライター)

 これまでグランアレグリアの最終追い切りに最も多く跨ったのは藤沢厩舎に所属する杉原誠人騎手で、乗り役を合計5回こなしている。その時のグランアレグリアの成績は「4-1-0-0」で、唯一の黒星が昨年の高松宮記念(G1)だった。一方、ルメール騎手が追い切りに跨った時は、「1-0-1-2」。偶然か必然か、3着以下に沈んだ3度(朝日杯FS、NHKマイルC、大阪杯)は全てルメール騎手が最終追い切りで乗り役を務めていた。

 この2人以外には上野翔騎手(デビュー戦)と北村宏司騎手(阪神C)も最終追い切りに1度ずつ跨っているが、ともにレースではルメール騎手が勝利に導いている。

「騎手としては日本一のルメール騎手ですが、追い切りはまた勝手が違うのでしょう。グランアレグリアは従順な性格と言われていますし、ルメール騎手が跨ると必要以上にスイッチが入ってしまうのかもしれません。調教であまり負荷をかけたくない藤沢厩舎にとって、これが微妙な狂いを生じさせているとも言い切れません」(同)

 前走に続いて調教に駆け付け、勝利への意気込みを見せたルメール騎手。それがレースで悪い方向に出なければいいのだが……。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

米国経済、早くもコロナ脱出で好景気真っただ中…政府、日本と真逆の大胆&迅速な対応

 4月25日に、東京・大阪・京都・兵庫の4都府県で緊急事態宣言が発令されました。その他の地域でもまん延防止等重点措置が適用されているところがあり、飲食業や観光業にとっては大きな打撃です。コロナ禍で昨年は景気が大幅に悪化しましたが、今年も変異種の感染拡大で、景気回復には時間がかかりそうです。

 ところが、海外に目を転じると、すでに“好景気”となっている国もあります。IMF(国際通貨基金)の4月時点での予想によると、2021年のアメリカのGDP(国内総生産)の成長率は6.4%となっています。昨年のマイナス成長(▲3.5%)から回復しているのはもちろん、コロナ前の4年間(2016-2019年)の平均(2.3%)と比べてもかなり高い数値です。

 中国も2021年は8.4%と高い予想です。ヨーロッパや日本も、その国の平均と比べると高い予想となっていますが、最近の変異種による感染拡大を踏まえると、下方修正が懸念されます。

 アメリカではコロナ禍による景気低迷はすでに過去のものとなっていて、今は好景気の真っただ中です。3月には供給管理協会(ISM)が調査している製造業景気指数が37年ぶりの高い数値になりました。半導体を中心に部品や原材料の需給がひっ迫し、価格が上昇しています。3月の消費者物価の上昇率は8年ぶりの高水準となりました。昨年に15%近くまで上昇した失業率も、今年の2月には6.2%と半減しています。景気が良すぎてインフレが心配されているなんて、日本にいるとにわかには信じられないのですが。

日本は「景気が二極化」か

 アメリカの景気が急激に回復している要因の1つは、新型コロナウイルスワクチンの接種が進んでいることです。アメリカではすでに4割以上の人が1回はワクチン接種を受けています。巣ごもり消費だけでなく、ワクチン接種を受けた人による外食やレジャーなどの経済活動が回復し始めています。日本でのワクチン接種はまだ始まったばかりですので、この差は経済にも表れています。

 バイデン政権による大型の経済対策も要因に挙げられます。就任早々、1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナ対策を打ち出しました。それによって3月には1人当たり最大1,400ドル(約15万円)が支給されました。昨年3月と12月にも現金給付が実施されましたが、今回のほうが金額は大きく、ワクチン接種済みの人が増えたことで消費の拡大につながりそうです。さらに3月末にもバイデン大統領は、8年間で2.3兆ドル(約255兆円)のインフラ投資を行うと発表しました。

 アメリカでは景気が回復しているなかで大型の公共投資が発表され、早くも物価や金利の上昇など、景気の過熱が心配されるようになっています。すでに金利は少しずつ上昇に向かっていますが、日本の日銀に相当するFRB(連邦準備理事会)は当面の間、金融緩和を続けると明言しています。

 それに対して、ワクチン接種が遅れている日本。3回目の緊急事態宣言が発令され、まだ本格的な景気対策を打ち出せる状況にはありません。当分は、飲食業、観光業、小売業にとって厳しい状況が続きそうです。

 ただ、一方で、アメリカや中国の景気拡大で、電子部品や工作機械などを中心に輸出は増加が見込まれます。実際にこれらの業種では企業業績が回復しています。史上最高益を更新する企業も相次いで出てくることでしょう。

 2021年の日本経済は、コロナ後を見据えて「景気が回復する」というよりは、「景気が二極化する」という方向に進みそうです。株式相場でも、好業績を受けて上昇する銘柄と、低迷が続く銘柄に分かれていくことが考えられます。

(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)

●村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)、

宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、証券アナリスト、

国際公認投資アナリスト

神奈川大学大学院 経済学研究科卒業

大和証券に入社し、法人営業、個人営業、投資相談業務に13年間従事する。

ファイナンシャル・プランナーとして独立し、個人の生活設計・資金計画に取り組む。

個別相談、講演講師、執筆などで活躍。

メンタルダウンの仕組みが見えてきた

メンタルダウンの仕組みが見えてきた

「withコロナだからこそ必要な『感情のコントロール』を、ホルモン変動と脳波から考える」と題したウェビナーが、2021年4月19日に開催された。講師は、脳波から感性を可視化する研究の第一人者である慶應義塾大学・満倉靖恵教授。20年近く生体信号の研究に携わる満倉教授は、電通サイエンスジャムと共同開発した、脳波計測技術を活用したリアルタイム感性把握ツール「感性アナライザ」でも、注目を集めている。
ヒトの感情に重要な働きを及ぼすホルモン変動と脳波の関係とは、一体、いかなるものなのか。そしてその計測方法は、人間社会やその未来にとって、いかなる可能性を秘めているものなのか。コロナ禍におけるさまざまな抑制で感情への負荷が強いられている今、「医工連携」をテーマとする満倉教授の講義の内容は必見である。

満倉靖恵氏:慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授/慶應義塾大学医学部精神神経科学教室兼担教授/電通サイエンスジャム CTO 満倉研究室では医工連携に注力。工学だけでも医学だけでもできない研究を行っている。脳波をはじめとした生体信号解析、脳波によるリアルタイム感情認識、脳神経科学、認知症発生メカニズムの解明、遺伝子解析、ゲノム編集、睡眠解析、音声認識・画像処理などをキーワードとした幅広い分野での研究は、医療のみならず、商品開発や企業のブランディングなど、さまざまな応用が期待されている。
満倉靖恵氏:慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授/慶應義塾大学医学部精神神経科学教室兼担教授/電通サイエンスジャム CTO
満倉研究室では医工連携に注力。工学だけでも医学だけでもできない研究を行っている。脳波をはじめとした生体信号解析、脳波によるリアルタイム感情認識、脳神経科学、認知症発生メカニズムの解明、遺伝子解析、ゲノム編集、睡眠解析、音声認識・画像処理などをキーワードとした幅広い分野での研究は、医療のみならず、商品開発や企業のブランディングなど、さまざまな応用が期待されている。

「定性的」な事象を「定量化」することで、物事の本質が見えてくる

ウェビナーの冒頭、満倉教授は「37%」という数字を提示してみせた。果たしてこの数字、なんだと思いますか?と。答えは、質の高い睡眠をとれている日本人の割合。よく眠れているか、ということはしばしば「定性的」なこととして処理される。でも、「37%」という具体的な数字(=定量的なデータ)を提示されると、ちょっとドキッとするのではないだろうか?

たとえば、ストレスや高揚感といったものを「定量化」できたとしたら、それは今日という日を生きる上での大いなる指針となる。「なんだか気分が乗らないな。でもまあ、今日も頑張るか」ではなく、その「なんだか」の正体を具体的な数値で示す、ということだ。

そもそもストレスとは、何なのか?満倉教授の講義は、ここから始まった。「端的に言うと、自律神経の働きを乱すものなんです」。ここまでは分かる。でも、「人間の脳は、これはイヤだなと思うものを視床下部で判断し、交感神経を刺激します。その興奮状態は、脊髄を通って副腎に達し、その副腎で生成された、ストレスと戦うためのエネルギーとなるアドレナリンやコルチゾールが血液に入って全身に届けられ……」となってくると、素人にはもう、お手上げだ。

ここで、迷える受講者に対して満倉教授から、救いの手が差し伸べられた。「要するに、人間というものは、強いストレスを感じると体の平衡状態を保とうとするんです」。落ち着かなきゃ、というときに深呼吸をする。人前であがらないように、てのひらに人という字を書いて飲み込んでみる。これらに「科学的な根拠」があるのだとしたら、ぜひ、教えていただきたい。「定性的」な指摘ではなく、あくまで「定量的」な分析として、だ。

「ホルモン」が変わると、「気持ち」は変わる

「ものすごく共感していただけるのは、女性の生理の話だと思うんです」という満倉教授。生理周期によって、女性がイライラするということは、男性でもなんとなく分かる。でも、それを「定量的」に示すデータを見た記憶はない。だから、女性特有のヒステリーなんだろう、とか、これだから女性の上司は扱いづらいんだよ、みたいなことになったりする。いわゆるジェンダー問題の難しさの、一つの大きな要因だ。「違うんですよ。科学的にそれは、明らかなことなんですよ。ということを、ぜひご理解いただきたいんです」

「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」のサイクル図

女性の生理は一般に、およそ27日周期で「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」というサイクルを繰り返す。ここまでは、男性でもある程度、理解できる。「でも、明るく前向きな気分になりやすい『卵胞期』とイライラがつのる『黄体期』では、物事に対する集中度が8%も変化するのだ、という定量的なデータに触れたことは、おそらくありませんよね?」

満倉教授によれば、たかが8%ではないのだという。「企業でいえば、売り上げが前年比で8%ダウンした、となったら役員が解任されるくらいの話ですよね?それくらいのことが、女性の体では、27日のサイクルで起こっている、ということなんです」

なぜ、そんなことが起こるのか。それには、本ウェビナーのテーマである「ホルモン」が密接に関係している。そしてその「ホルモン」は、女性に限らず「人の気持ち」というつかみどころのないものの正体にも、大いに関与しているというのだ。

「更年期障害」「うつ病」「アルツハイマー」など、人類が克服すべき課題は、まだまだたくさんある。

女性の生理の話を入り口に、満倉教授の話は、どんどん広がっていく。「現代医学は万能であるといった認識は、妄想です。『更年期障害』『うつ病』『アルツハイマー』など、その原因や完璧な治療法が確立されていないものは、山ほどあります。それらを突き詰めていくと、そもそも人間の感情とは、どうやって生まれるのか?ということに行き着くんです」

感情は科学できるものではない、と思われてきた。良性腫瘍のように、外科的な措置をほどこして除去してしまえばとりあえず安心、というものではない。でも、脳波は確実に、なんらかの信号を発している。それを解析できれば、人類がいまだ解明できていない病気も克服できるのではないか。それが、満倉教授の研究の本丸ともいうべきものなのだ。

満倉教授の研究室で開発された「感性アナライザ」は、興味、好き、集中、ストレス、沈静度などを「定量的」なデータとしてはじき出すことに挑戦したものなのだという。

世界初の脳波によるリアルタイム感性把握ツール「感性アナライザ」
世界初の脳波によるリアルタイム感性把握ツール「感性アナライザ」

「もちろん、これをもって完成だ、というレベルには達していません。でも、たとえば、普段は心を閉ざしている人が、ふとした瞬間にみせるとびっきりの笑顔、みたいなことってありますよね?そのとびっきりの笑顔の正体が分かれば、人生をよりよく生きるための術が、具体的に見えてくると思うんです。これは、対症療法のような話でも、精神修養みたいな話でもありません。人の感情には、ホルモンが深く関与している。そのホルモンをより深く知り、解析することができれば、人生を、社会を、あるいはビジネスというものを、より豊かにできるということなんです」

脳波は、人の脳細胞の活動により生じる電気信号であり、頭皮上に電極を装着することで計測される。一般的に使用される脳波計が、機器の大きさから実環境での計測が困難とされているのに対して、「感性アナライザ」はコンパクトな単極型の脳波計測機を用いることで実環境での脳波計測が可能。
脳波は、人の脳細胞の活動により生じる電気信号であり、頭皮上に電極を装着することで計測される。一般的に使用される脳波計が、機器の大きさから実環境での計測が困難とされているのに対して、「感性アナライザ」はコンパクトな単極型の脳波計測機を用いることで実環境での脳波計測が可能。

「医工連携」は、ある意味「文学」「芸術」への挑戦である

人の心を揺さぶるのは、数字でもなんでもなく、たとえば「文学」であったり「芸術」であったり「スポーツ」であったり、といったものだと思う。でも、そうしたものに人はなぜ感動するのだろう、なぜ心を癒やされるのだろう、ということを「定量的」に分析したものは、これまでになかったように思う。

「例えば、お年寄りの女性がメークをするだけのことで、驚くほど若々しくなることがあります。定性的な分析でも、ある程度、そうなんだろうな、ということは分かりますし、ホルモンがどうしたと難しいことを言わなくても、それはまあ、そんなものでしょう、という話です。でも、ポイントは、そこにこそあるんです」

満倉教授の説明を、分かりやすく解説するならば、「それはまあ、そんなものでしょう」の、それって、何だ?まあって、何だ?そんなものの正体とは、一体何なんだ?ということ。確かに、お年寄りがメークをすることで、何の数値がどれほど上がったのか、という「定量的」な分析は、あまりなされていない。「いくつになっても、女性だもの。メークをすれば、そりゃ、気持ちもあがるってものでしょう」の「そりゃ」って何なのだ?ということだ。

「更年期障害にしても、そうです。女性の多くが『崖から突き落とされる感じ』、男性の場合でいうと『坂道を転がり落ちる感じ』と表現されるその感じを、具体的なデータとして明らかにすることができれば、不快さを克服するための手段も見えてくるはず。ハラスメントにまつわる問題もそうですが、たとえば『心の痛み』(=メンタルダウン)は、これまで『文学的』なものとして扱われてきました。昨今では『法的』なさばきがそこに入るようになってきましたが、根本的な問題が解決されたとは言えません。そもそも人は、どうして興奮するのか。どうして心に痛みを覚えるのか。その鍵は、『ホルモン』の分析にこそある、と私は考えています」


失恋したとき、海を眺めたくなる気持ち。震えるほど切ないとき、星に願いをかける気持ち。その気持ちを、最先端の科学が救ってくれるのだとしたら、これほど心強いものはない。

「感情アナライザ」については、こちら
電通サイエンスジャムのHPは、こちら

全国12000人に聞く、日本の「個人」と「家族・コミュニティー」と「社会」の現在地

電通総研電通未来予測支援ラボは、東京経済大学・柴内康文教授の監修のもと、「クオリティ・オブ・ソサエティ調査2020」を、昨年11月に日本全国1万2000人を対象に実施しました。この調査は、社会に関する人びとの意識・価値観を把握することを目的として、2019年12月に第1回調査を実施。今回が2回目の調査となります。今後も毎年データを収集・蓄積していく計画です。

本連載では、調査から得られた主要なファインディングスから、社会に関する人びとの意識・価値観の現在地と、人が生きがいを感じられる社会の実現に向けた道筋を探ります。

今問われる「クオリティ・オブ・ソサエティ」

少子高齢化、さまざまな格差、地域の過疎化など、日本社会にはその存続基盤を危うくする課題が山積しています。また、人がつくりだしたICT(情報通信技術)やAIは、人の生活や社会のあり方に、想像を超える速度で大きな変化を迫っています。AIによって人の役割が代替されようとしている中、人はどのように生きるのかが問われています。 

こうしたさまざまな課題に対し、社会の未来へつづくオルタナティブ(選択肢)を発見し、人びとが考え、よりよい道を選ぶこと。それは現代に生きる私たちの、次世代に対する責任ではないでしょうか。「人」が生きがいを感じられる「社会」のために、「クオリティ・オブ・ソサエティ」(社会の質)が今まさに問われています。

「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」3つの視点

「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」では、次の3つの視点で人びとの社会に関する意識・価値観を調査しました。
 

  1. 個人視点:人びとは、よりよい人生のために前向きで自律的であるか(個人の能動性・自律性)
  2. 家族・コミュニティー視点:人びとは、よりよい社会のために協力し合えているか(社会集団の協調性・互助性)
  3. 社会視点:人びとのよりよい人生のために、社会制度・システムは機能しているか(社会制度の信頼性・耐久性)
調査の対象領域

「人」が生きがいを感じられる「社会」のために、個人の意思や努力は大切です。一方で、一人一人の力には限界があり、人と人とが支え合っているか、さらに社会システムがどれだけバックアップできているかが、重要な視点となります。

3つの視点から人びとの意識を捕捉することで、個人、家族・コミュニティー、社会のそれぞれのレイヤーにどのような課題があり、どんな解決の糸口があるのかを明らかにします。

少し説明が長くなりました。まずは調査結果を見てみましょう。多岐にわたる調査結果の中から、本稿では、上記の3つの視点からそれぞれ一つずつ、人びとの意識の現在地を象徴する特徴的なデータを紹介します。

【社会視点】求められる情報の正しさ・信頼性

下の図表は、情報源やメディアに期待することについての回答を集計したものです。上位2項目は「常に正しい情報を提供してほしい」84.6%、「信用できる情報を提供してくれることを期待している」78.9%。

以下「お金を払うからには価値ある情報を提供してほしい」72.0%、「世の中の問題や課題を伝えてくれることを期待している」72.0%、「物事を考える情報やきっかけを期待している」71.2%と続きます(数値は「そう思う」「ややそう思う」の合計)。

※グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。
 
情報メディアに対する考え方

未知のウイルスに直面し、社会が大きく変化していく中で、人びとが自ら考え、判断していくために、正確で信頼できる情報が求められています。これは現在の社会にあふれる情報の正確性に対する懸念の表れとも読みとれます。

マスメディアから個人のSNS投稿まで、人びとが得られる情報の選択肢は大きく拡大してきました。コロナ禍が一つの契機となり、今後の情報メディアには、多様性と同時に情報そのものの質の担保が求められていくでしょう。

【家族・コミュニティー視点】男性の育児・家事参画に前向きな意識の拡大

次は、「新しい家族の形」の受容度について、2019年と2020年の調査結果を比較したものです。

新しい家族の形に対する考え方

2019年に比べて2020年は各項目で受容度が高まりましたが、特に男性の育休取得や主夫に対する社会の受容度の高さが注目されます。「男性の育休取得」を受け入れられると回答したのは78.8%(+6.5ポイント)、「主夫」は70.4%(+8.0ポイント)で(「受け入れられると思う」「どちらかというと受け入れられると思う」の合計)、いずれも2019年に比べて増加しています。

外出自粛やリモートワークが普及する中で、自宅に滞在する時間が増加した男性が増えたことが影響してか、家庭での男性の役割について意識が急速に変化する兆しが見てとれます。

【個人視点】コロナによって生まれた人びとの未来への眼差し

最後に、個人の視点に関連するデータを紹介します。2020年11月調査時点から1年前(コロナ禍前)と比較して、人びとの行動や生活上のさまざまな機会の増減について質問したものです。

1年前と比較して増えたもの・減ったもの

1年前と比較して増えたのは「自宅で過ごす時間」61.8%、「自分の将来について考えること」50.0%、「社会について考えること」47.1%、(「増えた」「やや増えた」の合計)。その一方で減ったのは、「人と直接会う頻度」65.8% 、「金融資産」25.3%、「子どもが教育を受ける機会」24.7%(「減った」「やや減った」の合計)という結果となりました。

コロナ禍は対人関係、家計、教育の機会について負の影響があった一方で、人びとに、自分の将来のみならず、社会全体について考える契機を与えたようです。一人一人が社会について考えることは、行政任せになることなく、自律的でよりよい社会の実現に向けた第一歩となります。課題が山積する日本において、これは一つの希望ではないでしょうか。

「人」が生きがいを感じられる「社会」の実現に向けた道筋を探る

2019年と2020年の調査結果を比較したところ、一部にコロナ禍による影響と考えられる意識の変化が見られました。ただし一口に影響といっても、ネガティブなことばかりではないようです。生活の大きな変化を余儀なくされた中で、人びとは自分と社会について考える機会を得て、より正確に世の中を知りたいと願い、新しい価値観のもとに新しい社会のあり方を模索し始めていると言えるでしょう。

個人、家族・コミュニティー、社会の各視点を重ね合わせることで、人びとが社会に対して、何を課題と感じ、未来に何を求めているのか、大きな潮流のようなものが見えてきます。

本稿で紹介したデータは「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」のほんの一部にすぎません。次回以降、個人、家族・コミュニティー、社会の各視点からデータを通じてより詳細に人びとの意識の現在地を捉え、「人」が生きがいを感じられる「社会」の実現に向けた道筋を探っていきます。

次回のテーマは「よりよい人生のために、人びとは前向きで自律的であるか?」です。

調査概要
タイトル:「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」
調査時期:第1回 2019年12月11日~18日、第2回 2020年11月11日~17日
調査手法:インターネット調査対象地域:全国
対象者:18歳~74歳の男女 12,000名
調査会社:株式会社電通マクロミルインサイト
 

損失は数千億円…日本のブランド果物、苗木が海外流出、盗んだ韓国・中国産の品質向上

 甘くて皮ごと食べることのできる高級ブドウ「シャインマスカット」を筆頭に、ブランド果物などの苗木や種子の中国や韓国への流出が後を絶たない。シャインマスカットは中韓で無断栽培されたものが香港などで流通し、日本産の輸出の機会損失は数千億円に上るとの見方がある。国の研究機関「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」のお粗末ぶりが国益を損なっている。

発見時には手遅れ

 シャインマスカットはおよそ30年の開発期間を経て、2006年に国の品種保護制度に登録された。国内外で人気が高く、1房1万円以上の値が付くものもあり、農家にとってはドル箱。しかし、農家の所得向上に水を差すような出来事が数年前に判明した。それは、中韓での無断栽培の横行だ。どのように流出したかは不明だが、ホームセンターで誰でも購入が可能。農家から譲り受けた小さな苗木を基に増殖することもできる。当時の種苗法は苗木や種子を国外へ持ち出すことを禁じていなかった。

 中韓両国にも苗木や種子を保護する制度は存在するが、無断栽培が発覚した時点では申請期限が過ぎていた。このため、日本側は販売差し止めといった対抗策は打てず、無断栽培を甘受せざるを得なかった。日本の技術者が指導しているとみられ、中国のシャインマスカットの品質は向上している。割安なため、輸出拡大を狙う日本産にとっては脅威だ。

輸出意識せず

 なぜシャインマスカットの苗木の流出を許してしまったのか。21世紀初頭の日本には農産物を輸出していこうという意識が欠けていたことが理由。農研機構は当時、模倣品などが国内への流入を防ぐことに重きを置いていたため、日本国内の保護制度には登録申請したが、中国や韓国など現地の制度にエントリーしようという考えはなかった。

 日本の農産品を世界に売り込んでいく動きが活発になったのはここ最近の話。いざ本腰を入れて取り組もうとしたときに、海外で生産された日本産の品種が第三国に出荷されるリスクを初めて思い知らされた格好だ。月日やコストを掛けて育て上げた品種だとしても、海外に盗まれてしまえば、何の意味もない。公的機関である農研機構の責任が厳しく問われる。

もぐもぐタイムで話題のイチゴ

 3年前の平昌五輪でカーリング日本女子代表が休憩時間「もぐもぐタイム」でおやつを食べる姿は印象的だった。そのなかで彼女たちが食していた韓国産イチゴのルーツが日本の品種だったことが話題になった。実際、韓国で生産されているイチゴの多くは日本由来のものという。「とちおとめ」「章姫」「レッドパール」といった品種が流出し、これらを交配させた韓国産イチゴがアジアに積極的に輸出されている。日本産の輸出機会損失は年間約44億円に上るという。

狙われる日本ブランド

 農林水産省のまとめによると、かんきつやモモ、サクランボ、サツマイモ、ブドウなど計36品種が中韓のインターネットサイトで販売されている疑いが浮上。日本の果実などブランド農産品が常に狙われている実態が明るみになった。サイトで販売されている苗木がすべて本物かどうかはわからないが、日本産のブランド価値を著しく傷つけていることは間違いない。36品種の流出疑いは氷山の一角にすぎず、これまで管理が緩かったため、より多くの品種が中韓などに渡っているとの見方が根強くある。

 政府は農林水産物・食品の輸出拡大を重要な国家戦略として位置付けており、足元のブランド保護が急務となっている。今年4月には品種の国外持ち出しを規制する改正種苗法が施行された。規制強化することで、開発者が安心して研究に取り組める環境をつくり、優良な品種をより多く誕生させることが究極の目的。ただ、近年、品種開発は停滞気味。研究基盤が弱体化している可能性もあり、農業の競争を高めるという政府の狙いが実現するかは不透明だ。

 しかも、中韓のブローカーが日本産品種を狙い続けており、規制の網をかいくぐるためのあらゆる企てを行うことは容易に想像できる。法律を改正してそれで終わりとはいかない。重要なことは国内での保護を徹底した上、中韓でも保護制度に登録するなど重層的な対策を講じていくことに他ならない。高い意識を持って臨まないと、日本の農業の未来がなくなる。

(文=編集部)

夏、ガソリン価格高騰の予兆…深刻なトラック運転手不足、インフラへのサイバー攻撃

 米石油パイプライン最大手のコロニアル・パイプライン(本社はジョージア州、ロイヤル・ダッチ・シェルなどが出資)は5月7日、「サイバー攻撃を受けてすべての業務を停止した」とする緊急の発表を行った。

 コロニアルが保有するパイプラインの全長は8850キロメートル、メキシコ湾岸(米南部テキサス州)から北東部(ニューヨーク州など)をつなぐ大動脈である。このパイプラインにより1日当たり約250万バレルの石油製品が輸送されている。東海岸の燃料消費の45%を賄う量であり、ガソリンやディーゼル燃料など幅広い用途に使われ、主要空港や米軍施設にも供給されている。

 サイバー攻撃が仕掛けられたのは6日である。犯行を行ったグループは、ランサムウェアを使ってわずか2時間のうちに100ギガバイト近いデータをコロニアルのネットワークから抜き取った。ランサムウェアは、データを暗号化してシステムを停止させ、金銭を要求するマルウェア(不正かつ有害に操作させる意図で作成されたソフトウェアの総称)の一種である。

 7日になってサイバー攻撃に気づいたコロニアルは、関連システムをオフラインに切り替え、すべての業務を一時的に停止し、8日には「ランサムウェアが関係している」とコメントした。犯行グループは暗号通貨で身代金を要求していたといわれている。

 米連邦捜査局は10日、「攻撃を実施したのは『ダークサイド』と呼ばれる集団だった」との見解を明らかにした。昨年になって存在が明るみになった集団であり、企業を恐喝する巧妙な手口で知られている。ダークサイドは10日、「私たちは政治とは無関係だ。目的は金稼ぎである」との声明を出したが、ロシア政府との関係が取りざたされている。

 米国家情報長官室は4月公表の報告書で、ロシアや中国、イラン、北朝鮮を名指しした上で「国家やその仲間が行うサイバー攻撃の脅威は深刻だ。攻撃対象に基幹インフラが含まれ、一般市民に悪影響が及ぶ可能性が高まっている」と警告していた。その背景には近年、マイクロソフトのメールシステム(中国が関与)やソフトウェア会社ソーラーウィンズへの大規模なサイバー攻撃(ロシアが関与)が発生していたからだが、エネルギー分野でも天然ガス関連施設がランサムウェアによる攻撃で2日間操業が停止した事例がある。

 コロニアルのパイプラインは1960年代から操業しており、「サイバー攻撃に対してシステムが脆弱だったのではないか」と指摘されている。

 今回のパイプライン攻撃は、新型コロナウイルスのパンデミックが影響しているとの見方もある(5月10日付BBC)。パンデミックにより自宅からパイプラインの制御装置を操作するエンジニアが増加したことから、ダークサイドがアクセスしやすい環境が生じたというわけである。ダークサイドは、パソコンを遠隔操作できるソフトウェアなどに関係するログイン情報を買い取り、ポータルに大量のユーザー名とパスワードを投入することによりパイプラインの遠隔操作ができるようになったのではないかと推測されている。

パンデミックとガソリン価格

 5月8日付ウォール・ストリート・ジャーナルが「数日以内に復旧しなければ、商品市場は大荒れになるだろう」と報じたように、燃料需要が増加する夏の旅行シーズンを前に発生した今回のサイバー攻撃によりパイプラインの稼働停止が長引けば、原油価格が高騰し、国民生活や経済活動に大きな影響が出ることが懸念されていた。

 操業停止が長引く場合に備え、燃料取引会社がガソリンを輸送・貯蔵するためのタンカー確保に動くなどガソリン価格が高騰する兆しが出ていたことから、米連邦当局は9日、「地域的な非常事態」を宣言した。ガソリンを輸送するトラック運転手は通常、1日当たりの運転時間が11時間に制限されているが、影響を受ける17州とワシントン向けにガソリンを輸送するトラック運転手に対して「1日当たりの運転時間が規定を超えても構わない」とする規制の緩和を行ったのである。 

 市場関係者は固唾を飲んで10日月曜日を迎えたが、米WTI原油先物価格が高騰することはなかった。コロニアルが「週末までにパイプラインの操業再開を目指す」と発表したことで、「数日以内に再開すれば東部への燃料供給や価格への影響は限定的だ」との観測が広がったからである。パンデミックによる航空機燃料の需要減などで東海岸の石油製品の備蓄量が例年の1.5倍の水準だったことも幸いした。

 しかし「これで一件落着」にはならないかもしれない。今回のサイバー攻撃が起きる前から「今年の夏のガソリン価格は高騰するかもしれない」との危惧が生じていたからである(5月6日付OilPrice.com)。

 パイプライン稼働停止の代替手段として期待されていたトラック運転手の不足がその理由である。ガソリントラック運転手の高齢化が長年進んでいたが、パンデミックにより仕事が激減したことで大量の運転手が早期退職してしまったのである。過去のパンデミックでは資産価格の下落を伴うことが多かったが、コロナ禍では株価と住宅価格が高騰したことで老後の備えができたとして、パンデミック以降に引退を決めた高齢者の数は全米で120万人に上るとされている。

 一方、パンデミックにより訓練施設が閉鎖され、新たな担い手が生まれないことから、時給を大幅に引き上げてもトラック運転手の確保が難しいという構造的な問題から、「現在1ガロン=2.9ドル前後のガソリン価格が夏までに3.5ドルにまで上昇する」との予測が出ている。米国のガソリン価格が3ドルを超えると消費者に影響が出るといわれている。バイデン政権の悩みの種がまたひとつ増えてしまったのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職

新型「GR 86」大騒ぎへの違和感…トヨタ「もっといいクルマ」の方向性への根本的疑問

 4月5日、TOYOTA GAZOO Racingは、SUBARUとのオンライン合同イベントにおいて新型「GR 86」を世界初披露した。

 ご存じのとおり、初代「86」は「直感ハンドリングFR」をコンセプトに、提携先のSUBARUとの共同開発車として、2012年に発売した2ドアスポーツクーペである。2代目となる新型も、基本的には同じ流れとして「SUBARU BRZ」と同時に公開されたわけだが、その派手で熱い発表ぶりと、一部メディアの大歓迎な感じが僕にはどうもピンと来ないのである。このモヤモヤは一体何なのか? ちょっと頭を整理してみようと思う。

 まず、これは以前クラウンのときにも書いたことだけど、最近のトヨタ自動車がやたらに発する「もっといいクルマ」への疑問である。実は今回の新型の開発に当たっても、2019年にSUBARUとの間で合意された「新たな業務資本提携」のなかで、「もっといいクルマづくりへ共に取り組む」と謳っている。

 いや、メーカーが「いいクルマ」を作ることに異論はないけれど、その発信があまりにスポーティ方向に偏っているのが気になるんである。もちろん、今の社長さんがレース好きなのは知っているけど、だからといっていいクルマが「汗をかいて走る」的な発想なのはどうなのかと。

 その代表的な例が「GR」ブランドだ。日産自動車の「NISMO」やホンダの「Modulo」など、他社でもスポーティブランドはあるけれど、トヨタがGRにかけるパワーはその比じゃない。たとえば「スープラ」は新型でGRブランドになったし、「ヤリス」もGRバージョン推しが凄まじい。

 そうして今回、86もまたGRブランドとなった。けれども、一般のユーザーには縁遠い「GAZOO Racing」などという組織に、これほど注力するのはどうにもバランス感覚を欠いているような気がする。一部メディアや評論家が「GR最高!!」と騒ぐのも違和感いっぱいだ。

内輪受け的な世界からの脱出

 もうひとつは、そもそも86なんて車名を付けてしまう感覚自体もどうなのかと。これまたご存じのとおり、86の名は4代目「カローラレビン」「スプリンタートレノ」の形式名から採ったもの。このクルマ自体はグッドデザインで魅力的なクーペだったが、しかし「ハチロク」の名を有名にしたのは漫画での活躍だった。

 公道ドリフトを描くその漫画が、一部の走り屋に「神」と崇め立てられるのはいいとして、大メーカーがそのノリで新型車の名前にしてしまう感覚が実に残念なのである。その発想の次元の低さが僕には到底信じられない。

 たとえばF1が世界的なイベントであるように、レース自体は社交場にもなるスポーツだけど、日本でいまだ広く認知、普及しないのは、レース=走り屋、ドリフト族といったイメージが一般層への浸透を阻んでいるように思える。実際、国内レース関係者やメディアの言動は、そういう空気を今も醸し出しているのだ。

 86という名前を付けたり、GRだGAZOO Racingだとやたら打ち出すのは、それらと同じ次元でクルマを語っている気分が感じられるのである。大メーカーの社長さんが「いいクルマ」として熱く語れば語るほど、だから違和感がますます強くなっていく。

 昨年、日産がフェアレディZのプロトタイプを発表したように、メーカーがスポーツカー、スポーティカーをラインナップに揃えるのは魅力的なことだ。けれども、それはイメージリーダーとして、抑制の効いた大人の存在であってほしい。

 いや、マツダはすでに「ロードスター」でそれを実践しているから、決して国産メーカーでも難しいことではないのだろう。メーカー、メディアとも、一部のマニアに向けた内輪受け的な世界から、そろそろ脱してはどうかと思うのである。

(文=すぎもと たかよし/サラリーマン自動車ライター)

ノートPCの出荷量1.5倍、大型テレビは1.4倍…空前の家電バブル、一瞬で崩壊か

 2020年度の白物家電の国内出荷額は、前年度比6.5%増の2兆6141億円で過去最高を記録した。10万円の特別定額給付金でルームエアコン、電気冷蔵庫、電気洗濯機など大型家電が好調だったほか、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要で電子レンジなど調理家電も大きく伸びた。なかでも突出して伸び率が高かったのが空気清浄機だった。営業時間を短縮した家電量販店に代わってネット販売が支持された。

【2020年度白物家電の出荷金額上位10位】

品目             出荷金額      前年度比(%)

1.ルームエアコン       8182億円      3.5%

2.電気冷蔵庫         4525億円      3.1%

3.電気洗濯機         3995億円      8.4%

4.換気扇           1278億円      3.0%

5.空気清浄機         1094億円      2.0倍

6.ジャー炊飯器        1067億円     ▲3.2%

7.電気掃除機          995億円      7.6%

8.電子レンジ          944億円      5.7%

9.IHクッキングヒーター    743億円     ▲3.9%

10.電気シェーバー        434億円     ▲13.1% 

(▲はマイナス)

10万円の特別定額給付金効果で大型家電が伸びる

「1人1律10万円」の特別定額給付金が大型家電に追い風となった。ルームエアコンは在宅勤務でニーズが高まり、出荷台数は前年度比5.5%増の1009万台。年度ベースで初めて出荷台数が1000万台の大台を超えた。エアコンの出荷金額は全出荷金額の31.3%を占めた。

 電気洗濯機は乾燥機能が付いたドラム式など高価格帯が人気で、洗濯乾燥機の出荷金額は10.1%増と大きく伸びた。電気洗濯機の出荷台数は487万台(5.2%増)、洗濯乾燥機は123万台(7.6%増)である。

 電気冷蔵庫は401リットル以上の大型冷蔵庫の出荷金額は同4.1%増。冷蔵庫の出荷台数は392万台(1.3%増)、大型冷蔵庫は180万台(4.4%増)となった。一方で“マイナス成長”となった製品もある。外出機会が減り、身だしなみを整えるための家電は売れ行きが鈍化した。電気シェーバーの出荷台数は747万台(6.7%減)、アイロンの出荷台数は107万台(7.6%減)。ヘアドライヤーもホテルなど業務用が落ち込み出荷台数は536万台(13.1%減)だった。

空気清浄機が爆発的に売れた

【出荷金額の伸び率の高い製品群】

品目         出荷金額  前年度比(%)

1.空気清浄機     1094億円  2.0倍

2.ホットプレート    116億円  56.8%

3.加湿器        100億円  34.1%

4.トースター      147億円  22.4%

5.除湿機        214億円  16.4%

 室内の環境を良くしたり生活を楽しくする家電は絶好調だった。空気清浄機の出荷台数は前年度比76.9%増の358万台となり、年度で初めて300万台を突破。過去最高の出荷数量となった。出荷金額は前年度から倍増の1094億円と初めて1000億円を突き抜けた。空気清浄機の国内市場はシャープパナソニック、ダイキン工業の3社で大半を占める。メーカー各社は増産に追われた。

 パナソニックは生産能力を3倍に増強。ダイキンは国内生産を始めるほか、シャープも需要増に対応するため中国やタイでの増産を継続する。加湿器の出荷台数は60.3%増、出荷金額は34.1%増、除湿機も出荷台数は12.1%増。出荷金額は16.4%増だった。

 自宅で食事する機会が増えたため調理家電も健闘した。ホットプレートの出荷台数は56.1%増、出荷金額は56.8%増の116億円と初めて100億円に乗せた。初もの尽くしがかなりの品目で見られるのが大きな特徴といえる。

 トースターの出荷台数は14.9%増。台数増より金額の伸びのほうが大きかったのは、価格が高い高級機種がシェアを伸ばしているからだ。高級トースターブームに火をつけたのはバルミューダの「ザ・トースター」。2万円を超える価格にもかかわらず「おいしくパンが焼ける」と人気を集めた。

「黒物」も大型テレビ・ノートパソコンが売れた

 テレビなど「黒物」も出荷を伸ばした。電子情報技術産業協会によると、20年度の薄型テレビの国内出荷台数は前年度比18.1%増の572万台。出荷台数は12年以来、8年ぶりの高水準となった。特に50型以上の大型テレビは38.2%増だった。巣ごもりで、家庭で映画などを観る機会が増加し、大型・高画質の製品が売れた。

 ノートパソコンも在宅勤務の広がりと、小中学生に1人1台のPCやタブレット端末を配備する国の政策に後押しされ、出荷台数は前年度比56.1%増の1077万台。1000万台を超えた。テレビ、ノートパソコンとも出荷金額の発表はない。

 10万円特別定額給付金とコロナ禍がもたらした「白物」「黒物」家電の特需は20年度限り、とみられている。時ならぬ家電バブルは終わりを告げ、21年度は出荷台数、出荷金額とも反動減が必至の情勢である。

(文=編集部)

朝の韓国ドラマが『ラヴィット!』より高視聴率…民放最下位でも光るテレ東の別次元の戦法

 視聴率“民放最下位”をひた走るテレビ東京。最近はTBSと最下位争いを繰り広げているが、それでもその位置は揺るがない。しかし、近年はその振り切った番組手法が「テレ東ブランド」として信奉され、熱心なファンも多いという。そんなオンリーワンの局の直近の視聴率を覗いてみた。

太川と出川が支える旅バラエティは堅調

 まずはバラエティを見ていこう。近年のテレ東のヒット番組といえば、太川陽介と漫画家・蛭子能収の迷コンビで人気を博した『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』だろう。現在、このシリーズは終了し、後継番組として、田中要次と芥川賞作家・羽田圭介による『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』が放送されている。

 ただし、最近は太川を新たに据えてスタートした『バスvs鉄道乗り継ぎ対決旅』のほうが話題のようだ。

「5月5日に放送された『対決旅』第8弾の個人視聴率は4.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。『1周回って知らない話&今夜くらべてみました「芸能界の気になる」合体3時間SP!』(日本テレビ系)、『くりぃむクイズ ミラクル9 ~2時間SP~』(テレビ朝日系)、『世界くらべてみたら3時間SP』(TBS系)の個人視聴率が6%の中、よく健闘したほうでしょう。ちなみに、フジテレビ系の『逃走中~こどもの日4時間SP~』には0.1ポイント差で勝利しています」(テレビ局関係者)

 また、太川が始めた新たなシリーズも人気だという。

「4月14日には『ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦』の第4弾がオンエアされました。この『陣取り合戦』企画は、あるエリアの市町村を“陣地”に見立て、スタートからゴールをバスで乗り継ぎながら目指す間に、どちらのチームが多くの陣地をとれるかを競うもの。このときは太川チームとA.B.C-Z・河合郁人率いる河合チームが茨城県を舞台に戦い、視聴率は世帯6.7%、個人3.8%でした。『対決旅』よりは劣るとはいえ、いまだにテレ東の旅番組は太川が支えているといえるでしょう」(同)

 太川のほかにもうひとり、テレ東ではおなじみのタレントがいる。

「5月1日放送の『出川哲朗の充電させてもらえませんか?絶景“古宇利島”から沖縄縦断145キロSP』は世帯7.9%、個人5.2%。ちなみに、セレブモデル・マリエによる枕営業疑惑の告発で騒がれていたさなかの4月17日に放送された『充電』も、世帯8.4%、個人5.2%と堅調でした。世代別でみると50歳以上が圧倒的ではありますが、この日のM2(男性35~49歳)は3.5%、F2(女性35~49歳)も3.8%と、確実に取れています」(同)

『ラヴィット!』より高視聴率の韓国ドラマ

 そんなテレ東だが、平日朝の時間帯はいったい、何を放送しているのだろうか? 7時5分からは子ども番組『おはスタ』、7時30分からは同じく子ども番組『きんだーてれび』、7時35分からは赤ちゃんが楽しめる知育番組『シナぷしゅ』と、完全にキッズと母親層を取り込もうとしている。

 そして、8時からは旅番組『ハーフタイムツアーズ』、裏のNHK連続テレビ小説が終わる8時15分からは韓国ドラマが9時11分まで放送されるなど、徹底した差別化を図っている。

 同じ朝の時間帯、TBSで始まった生活情報バラエティ『ラヴィット!』はニュースを一切取り扱わないという方針を定めているようだが、テレ東の前述の流れはニュースを挟みようがないプログラムが組まれている。もはや他局とは別次元で戦っている気さえしてくる編成だ。

 その中でも功を奏しているのが、韓国ドラマだという。

「手元にあるデータでは、4月16日に放送された宮廷ロマンス時代劇『カンテク~運命の愛~』の視聴率は世帯3.3%、個人1.6%で、裏の『ラヴィット!』よりも高い数字を記録しています。『ラヴィット!』の開始当初、SNSでは『ドラマの再放送をしたほうが視聴率を取れるのでは』と揶揄する意見も散見されましたが、テレ東はまさに、他を排しながら熱狂的なファンを取り込む戦法をとっています」(同)

 これと同じことは、昼間の時間帯にも言えるという。

「平日昼の11時40分から1時間放送されている『昼めし旅~あなたのご飯見せてください~』は世帯2%と、他局に比べるとだいぶ見劣りしますが、固定ファンがついています。さらに特徴的なのが、その後の映画枠『午後のロードショー』。これが、どの日を見ても50歳以上の男性の個人視聴率が3%と、常に楽しみにしているファンがいることがわかります。テレ東ならではのコアターゲットを獲得しているのです」(同)

テレ東深夜の隠れた人気番組とは?

 そのほかに、俯瞰で見て際立ったトピックスを挙げてもらおう。

「深夜帯の隠れた人気番組が、TOKIO・松岡昌宏と博多大吉によるトーク番組『二軒目どうする?~ツマミのハナシ~』です。これを見たさに合わせる視聴者がいるのでしょう、前番組から必ず数字が上がります。放送は土曜の深夜0時50分からと遅いですが、世帯1.7%、個人0.7%は確実に取ります。

 日曜の昼13時は『開運!なんでも鑑定団』の再放送をオンエアしているのですが、『新婚さんいらっしゃい!』(テレビ朝日系)とほぼ同じ世帯5~7%、個人でも3%を稼いでいます。同時間帯で高齢の視聴者をクギづけにしていた『噂の!東京マガジン』(TBS系)が4月からBS-TBSに移行したことも影響しているのかもしれません」(同)

 また、業界人気も高いと言われるオードリー司会によるトーク番組『あちこちオードリー』は、この春から放送時間帯が繰り上げとなったが、その影響はあるのだろうか。

「これまでは火曜の深夜1時35分に放送され、人気を集めていましたが、3月31日からは水曜23時6分という目立つ場所に移動。この“栄転”については若林正恭も番組の中で危惧していましたが、初回は世帯1.7%、個人0.8%、2回目の4月7日も世帯2.1%、個人1.1%と寂しい数字が続いています。裏が『news zero』(日本テレビ系)、『TOKIOカケル』(フジテレビ系)と強敵が揃う中、深夜時代の視聴者以上の上積みがないようです。番組的に言えば、“店”を裏路地から路面の目立つ場所に移転しただけでは難しいということでしょう」(同)

 これまでみてきたように、ほかのキー局が似たような番組で争う中、一味違った戦法を取り続けるテレ東はファンにとってはうれしい存在と言えるだろう。これからも、その“らしさ”だけは失わずにいてほしいものだ。

(文=編集部)

木下優樹菜ステマ疑惑、ECサイト側が否定「誠に遺憾」「疑い持たれる表現を行った」

 この人が“炎上”という言葉と縁が切れる日は、来るのだろうか――。

 タピオカ店主への“恫喝DM”騒動を経て、昨年7月に所属していた事務所のプラチナムプロダクションから契約解除と芸能界引退が発表された木下優樹菜。今年3月にはアパレルブランド「GALFY(ガルフィー)」の「2021 Limited Collection」のモデルに抜擢され、全国に店舗を展開するパーソナルトレーニングジム「CHICKEN GYM(チキンジム)」のイメージキャラクターも務めるなど、“最強の一般人”として精力的に活動を続けている。

 そんな木下だが、3度目となる緊急事態宣言が発令された4月25日、自身のInstagramのストーリーに、知人らとバーベキューを楽しむ様子を投稿。かなり酔っている様子で笑顔でピースサインするショットや、服が乱れたまま眠っている写真などが投稿された。翌26日には、「@inaseri_toyosuさんお取り寄せ海鮮たち 美味しすぎて みんなに飲まされて 酔幸」と綴り、マスクなしで酔っ払った様子の自身の写真も投稿し、批判を浴びている。

 そして事態は別の面にも飛び火。このインスタ投稿内の「@inaseri_toyosu」には海鮮専門のECサイト「いなせり市場」のインスタへのリンクが張られており、さらに「いなせり市場」のインスタ上では1月に、マグロの刺身と日本酒を持つ木下の写真と共に以下コメントが投稿されていることから、ステルスマーケティング、いわゆるステマが行われているのではないかとの指摘が相次いでいるのだ。

<今日は先週ご紹介いただけたびっくり投稿です?? @yukina1204xoxo(編注:木下のインスタのアカウント名)様に食べていただけました?? 美女と獺祭といなせり市場のコラボレーション?? どんどん有名な方に気に入っていただいき、食べていただけたら嬉しいです?? 私みたいな一般人にとって有名人の方がご紹介していただけるのは本当にびっくりで嬉しかったです? @yukina1204xoxo さんご紹介ありがとうございました>

 ステマとは、メーカーやサービス提供事業者から報酬を受け取っているにもかかわらず、個人や企業などがそれを隠すかたちで事実上の広告活動を行うことだが、2012年に発覚したペニオク事件が記憶に新しい。ペニーオークションサイト「ワールドオークション」で高額商品を格安で落札購入したという内容を自分のブログで投稿していた複数の芸能人が、実際には落札していないのに落札したかのように偽ってサイトを紹介し、運営会社から報酬を受け取っていたことが判明した。

「なかでも小森純、永井大、ほしのあき、熊田曜子、綾部祐二(ピース)などはバッシングを浴び、その後の芸能活動に大きな影を落とす結果となった。一方、菜々緒もブログで『友達から聞いたサイトですがかなり面白いので紹介します。普通のオークションと違って見ていて欲しいものが沢山。とりあえず見てみてください』などと投稿していたものの、所属事務所は『落札したとは記しておらず、物品もお金も受け取っていません』と関与を全面否定し、現在の活躍に至っています」(週刊誌記者)

「いなせり市場」運営元の見解

「今、メディア業界ではステマは犯罪行為に等しいと認識されている」(テレビ局関係者)とのことだが、木下に浮上しているステマの疑いについて、「いなせり市場」運営元の親会社、日本エンタープライズは、「Business Journal」の取材に対し、次のように否定する。

「弊社から木下さんに金銭的報酬や物品・食品などの提供の事実はございません。

 いなせりが運営しております『いなせり市場』は、豊洲市場の仲卸が厳選した美味しいお魚を、一般のお客様に提供することを目的としたECサービスです。現場では、一人でも多くのお客様に、美味しいお魚をお届けしたい一心で、スタッフは注文を受け付け、梱包し、発送しておりますので、今回のようなステマの疑いをもたれていることは、率直に申し上げまして誠に遺憾でございます。

 しかしながら、疑いを持たれるような表現をインスタ上で行ったことは事実です。今後におきましては、本件を真摯に受け止め、常に誤解されない情報発信に努めたいと思います」

 芸能界引退宣言後も、たびたびインスタ上での投稿が物議を醸している木下。現在も木下と同じマンションの別住戸で生活し、木下と愛娘2人を陰で支え続ける元夫・藤本敏史(FUJIWARA)の仕事に影響を及ぼさないことを、願うばかりである。

(文=編集部)