『ハコヅメ』は“新しい刑事ドラマ”になるか?光る永野芽郁のコメディエンヌとしてのうまさ

 東京オリンピックとぶつかることもあってか、夏クールの民放ドラマは驚くほど不作だ。

 宮藤官九郎、森下佳子、坂元裕二といった人気脚本家の最新作は冬クールと春クールに出尽くしてしまい、NHKも連続テレビ小説の『おかえりモネ』以外は元気がない。ある程度予想はしていたが、ドラマ周りは寂しい状況だ。

 だが、こういう時期こそ意外なダークホースが現れるものである。そんな期待を持って見守っているのが、日本テレビ系で水曜夜10時から放送されている『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』だ。

 週刊漫画雑誌「モーニング」(講談社)で連載されている秦三子の漫画『ハコヅメ~交番女子の逆襲』(同)を原作とする本作は、交番(通称・ハコヅメ)勤務の新人警察官・川合麻依(永野芽郁)と、問題を起こして刑事課から異動してきた警察官・藤聖子(戸田恵梨香)が主役のコメディドラマ。

 警察官になった川合は、真面目に仕事をしているだけで忌み嫌われる職業に嫌気が差し、早くも辞めたいと思っていた。しかし、元刑事の藤と出会ったことで、少しずつ成長していく。

 脚本を担当するのは根本ノンジ。最近では『監察医 朝顔』(フジテレビ系)のヒットが記憶に新しいが、幅広いジャンルを手がける多作の脚本家で、今クールは『ハコヅメ』の他にも『サ道2021』(テレビ東京系)に参加している。

 物語は、川合の視点で交番勤務の仕事を丁寧に追っていく。一癖も二癖もある市民や体育会系の男刑事たちに川合が翻弄される様子は、ドラマというよりはシチュエーションコントが連なっているような印象だ。

 これは、基本的に1話完結の原作漫画の複数のエピソードを並び替えて、ひとつの物語としてまとめているからだろう。1話、2話終了後に漫画『ハコヅメ』の公式ツイッターでは、各話の原作となったエピソードを漫画アプリ「コミックDAYS」で1週間限定の無料公開を行っているのだが、見比べると、ドラマ版が別々のエピソードをつなげてうまくひとつの話にまとめていることがよくわかる。

 そのため、交番のような限定された空間で短いやりとりをする場面が続くのだが、こういう場面は役者同士の楽しい掛け合いを見せるにはもってこいである。

 交番所長の伊賀崎秀一を演じるムロツヨシは、名バイプレイヤーぶりをいかんなく発揮。藤を演じる戸田恵梨香は、落ち着いた雰囲気のある大人の女性を好演している。何より、2人と対峙しても見劣りしない永野芽郁のコメディエンヌとしてのうまさが印象に残る。

 連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)で主演を務め、10~40代までを演じきった永野は、すでにベテランの風格が漂っているが、まだ21歳の若手。考え方こそ未熟だが優しい川合を好演している。

 また、女子校出身で新選組に憧れて刑事になった牧高美和を演じる西野七瀬は華奢な佇まいを見せており、川合、藤、牧高の女子会シーンは一服の清涼剤となっている。

『ハコヅメ』が描く“警察官の仕事”

 警察官と一般市民の関係を見せることにドラマは焦点を当てており、事件を題材にした刑事ドラマではなく、警察官の日常を丁寧に追いかけるドラマだというのが、ここまでの印象だ。全体的にユルいトーンだったため、バラエティ番組を見るような気持ちで気軽に眺めていたのだが、次第にテーマが見えてきた。

 ひとつは、川合の成長を見守る大人たちのあり方だ。失敗するたびに落ち込む川合を、大人たちが優しく受け止める。特に藤が川合と接するときの距離感は絶妙で、むやみに叱ったりはしないが、かといって甘やかすわけでもない。鋭い観察眼で状況を分析するクールさと、クレームを浴びせられたら警察にあるまじき暴言をこっそり言うというバランス感覚が見事で、「こんな大人でありたいなぁ」と思わされる。

 同時に本作は、避けては通れない「警察官の仕事」とも真摯に向き合っている。第2話の後半、コミカルなムードと打って変わり、シリアスで重苦しい展開となる。

 同棲する恋人が連続窃盗犯だった女性の家を調べるために、川合と藤は刑事たちのガサ入れに同行する。しかし、藤がタンスを開けて女性の下着を一枚一枚広げる様子を見た川合は、「無理です」「できません」と仕事を拒否してしまう。

 謝る川合に対し、「別に謝ることないさ。それが普通だから」「他人の家にズカズカ入って手当たり次第、調べるなんて、普通ならできない」「川合の反応が正常」「慣れちゃった私たちの方がおかしいよ」と言って、藤は川合を仕事から外すが、悩んだ末に川合は仕事に参加。部屋にひとり残される女性に悲しい思いをさせたくないから「犯罪に関するものは一つだって置いて帰りたくないんです」と言って、最後まで丁寧に家宅捜索に取り組む。

 この2話の後半で、『ハコヅメ』の印象は大きく変わったように感じる。

 市民の安全を守る警察官は、プライベートを暴く仕事でもあるため、恨まれることが多い。そんなつらい場面にぶつかった川合が、何を考え、受け止めるのか? そこを描ききることができれば、本作は新しい刑事ドラマとなるのではないかと思う。

(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)

JRA M.デムーロ「なぜ下げた」から約8カ月……ジェンティルドンナ弟・メトセラに“汚名返上”の使命!? 新潟新馬戦で「G1・2勝コンビ」がついに復活!

 今もなおコロナ禍の最中であるが、今週いよいよ東京オリンピックが開幕する。

 21日には開会式に先がけて、女子サッカーなどの競技がスタート。オリンピック開催への対応および暑さ対策の観点から、中央競馬は函館と新潟の2場開催で行われる予定だ。

 今週は重賞がアイビスSD(G3)のみと寂しい感じはあるが、新潟の新馬戦からは後のG1馬が多数誕生。JRA芝G1最多勝を誇るアーモンドアイを筆頭に、オルフェーヴル、ロジャーバローズのダービー馬を含め、ジャスタウェイ、サトノアラジン、ラッキーライラックなど多くの活躍馬が、新潟からデビューした。

 そんな夏の新潟新馬戦で、今週大きな注目を集めそうなのがメトセラ(牡2歳、栗東・矢作芳人厩舎)だ。

 同馬の母はドナブリーニで、姉にはジャパンC(G1)などG1を7勝したジェンティルドンナがいる。

 父も母と同じくG1を7勝したキタサンブラックで、18日に行われた小倉2R(2歳未勝利)で産駒が初勝利。2019年のセレクトセール当歳セッションで1億7280万円(税込)と高額取引された同馬も、期待は高まるばかりだ。

 鞍上にはM.デムーロ騎手が予定されており、矢作芳人調教師とのコンビは意外にも今年初。昨年以来の騎乗で、ジョッキーも“汚名返上”に気合が入るところだろう。

 というのも、昨年の有馬記念(G1)では矢作調教師が管理するラヴズオンリーユーに騎乗した際、10着と惨敗した内容が物議を醸したからだ。

「スタートが速いので前へ出たい」

 そのように語ったデムーロ騎手であったが、いざレースが始まってみると好スタートを切るも中団待機。スタート後、追っ付けていくどころか抑え気味に手綱を引っ張り、勝負所の3コーナーでは後方から外を回る競馬で敗れた。

 先頭でゴールを駆け抜けたのは、1番人気のクロノジェネシス。2着には11番人気のサラキア、さらにラッキーライラックが4着、カレンブーケドールが5着(同着)と牝馬5頭のうち実に4頭が掲示板に載ったが、牝馬で唯一掲示板を外したのがラヴズオンリーユーだった。

 先行宣言をしたはずのデムーロ騎手だったが、想定外の騎乗にSNSなどでも一部のファンから「なぜ下げた」という失望や不満の声も出た。レース後、デムーロ騎手は「馬場が良くなくて、特に内が悪いので、4頭分外を走りたかった。ただ、外からのプレッシャーがきつくて出せませんでした」と語った。

「昨年の有馬記念は日曜日に馬場が一変し、外伸び馬場になっていました。実際に上位3頭は道中外目を進んでいましたし、ラヴズオンリーユーは2枠4番でしたから、結果的に有馬記念で例年なら有利とされる内枠がかえってアダとなってしまいましたね。

それでも好スタートを切ったのですから、矢作師にも『もう少し何かあったんじゃないか……』という気持ちがあったのかもしれません。今回の新馬戦では久々のコンビとなりますが、厩舎期待の良血馬です。デムーロ騎手にも期待していると思いますよ」(競馬記者)

 過去にはグランプリボスで朝日杯FS(G1)を勝利し、ラヴズオンリーユーでも一昨年のオークス(G1)を制したコンビ。再結成した2人とともに、メトセラがG1戦線に駆け上がることを期待したい。

(文=北野なるはや)

<著者プロフィール>
 某競走馬育成牧場で働いた後、様々なジャンルの仕事で競馬関連会社を転々とする。その後、好きが高じて趣味でプログラミングを学習。馬券には一切のロマンを挟まないデータ派であるが、POG(ペーパーオーナーゲーム)では馬体派という奇妙な一面も持つ。

回転寿司王者「スシロー」が国内600店舗目を開店、ユニクロ浅草とのコラボ「UTme!」も話題!

生活をもっと楽しく刺激的に。 オトナライフより】

スシローの勢いが止まらない。株式会社あきんどスシローは、記念すべき600店舗目となる「スシロー浅草六区店」を7月15日にオープンしたことを発表。オープンを記念して、15日~20日までの5日間、脂のり抜群の大とろ通常300円(税込330円)を、スシロー浅草六区店限定の特別価格120円(税込132円)で提供したほか、ユニクロ浅草とコラボレーションした企画も実施するなど、大型企画も話題だ。

スシロー600店舗目は、快適、利便性、安心をとことん追求

 浅草1店目であるスシロー浅草吾妻橋店が住宅街への出店だったが、今回オープンするスシロー浅草六区店は、東京の人気観光スポットが集まるエリアへの出店で、先日オープンした「ユニクロ浅草」や47都道府県の厳選した産品が購入できる「まるごとにっぽん」と同ビルにオープンすることとなった。店舗内には、専用システムでチェックインすると自動で席を案内してくれる「自動案内」や、商品の提供スピードを追求し、専用レーンを使って注文した商品が直接席まで届く「Auto Waiter(オートウェイター)」などを導入し、利便性に特化した快適な店舗環境になっている…

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ターゲットは楽天モバイル潰しと格安SIMの全滅か? LINEMO「ミニプラン」投入の破壊力とは

生活をもっと楽しく刺激的に。 オトナライフより】

ソフトバンクの「LINEMO(ラインモ)」が、2021年7月15日から月3GBで月額990円の「ミニプラン」を開始した。これによって月20GBも使わないライトユーザー層を一気に取り込む作戦だ。しかし、これで窮地に立たされたのが、小容量プランに活路を見出してきた「格安SIM(MVNO)」と、第4のキャリア「楽天モバイル」である。果たしてLINEMOの小容量プランの投入で、スマホの料金プラン争いは今後どうなっていくのだろうか?

どうしてLINEMOは月3GBの小容量プランを投入したのか?

 2021年7月15日、ソフトバンクの「LINEMO(ラインモ)」は、月20GBで月額2,728円の「スマホプラン」とは別に、月3GBで月額990円の小容量プラン「ミニプラン」を開始した。もちろん、LINEが使い放題となる「LINEギガフリー」がついており、1回5分かけ放題の通話オプション(月額550円)が1年間無料になるキャンペーンも適応される。月3GBを超過したときの通信速度は300Kbpsに制限されるほか、「10,000円相当あげちゃうキャンペーン」は適用されないが、ソフトバンク(MNO)回線を…

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パチスロ「128G以内」に必ずAT当選!?「破格の短期決戦型」マシンが爆誕!!

『ジャックポットシリーズ』や『トラッド』シリーズでお馴染みの岡崎産業。どちらかと言えば硬派なイメージが強い中で、昨年には天才少女「みう」を主人公に据えた『みうのおしゃべりパチスロ』を同社初の6号機としてリリースし、世間をざわつかせたことは記憶に新しい。

 当機は1G純増約2.7枚の疑似ボーナスAT機で、びっぐぼーなすは60G継続・約160枚、れぎゅらーぼーなすは30G継続・約80枚の払い出し。すぺしゃるは111G~555G継続で、見事555Gが選択されれば一撃で約1,500枚の獲得が狙える。

 主な疑似ボーナス当選契機はチャンス役で、当選期待度は複数あるモードで変化。「わたわた」突入はAT当選期待度が一気に高まり、最終的にみうから告白されればAT当選が約束される。

 このように、萌え要素を組み込みながらも、軸となるゲーム性はシンプルで遊びやすい。これこそが同社の真骨頂であり、このほどプロモーションムービーを公開した最新タイトル『HIT128』も同様に遊びやすい仕様と言えそうだ。

 短期決戦型スロットと銘打たれた当機は、128Gを消化すれば必ずATへ突入する模様。このAT突入までの128G間にどれだけ「MIXモード」をアップさせられるかが勝利へのカギを握り、8G間のMIXモードアップ特化ゾーン「MIXING BOOST」なる状態もあるようだ。

 MIXモードはドット演出やサイドランプの色で察知が可能。首尾よくMIXモード「5」まで上昇させられれば、AT突入時のゲーム数「3桁」が約束されると思われる。

 128G消化後は最大3ゲームの告知演出「BREAK THE LIMIT」が始まり、開始時は揃うボーナス絵柄に注目。レバーON時にリールシェイクが発生すればBREAK THE LIMIT継続で、ATゲーム数がさらに加算されるようだ。

 AT「GALAXY PARTY」は押し順ナビに従うだけで1Gあたり約2.5枚の増加が見込め、消化中は毎ゲーム、ストック抽選。リール右の「みう」ランプ点灯はストック濃厚で、1ストックごとに50G以上の上乗せに期待できるようだ。

 また、中リール上段BAR狙いからスタート→第3停止時のドットが重要となるスクラッチ、AT終了後に移行する8G間の引き戻しゾーン「COME AGAIN」といったシステムも紹介されている。

 このほか、本機はフリーズも搭載しており、揃った絵柄でゲーム数期待度が変化するようだ。

 破格の短時間でチャンスを引き寄せられる、究極のゲーム性。気になるプレイヤーは、是非ともプロモーションムービーをご覧いただきたい。

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 爆裂マシンが星の数ほど登場した4号機におけるAT・ストック機時代。豪華絢爛の名機群のなかでもトップクラスの知名度と評価を受けた覇権タイトル『獣王』は、パチンコとしても人気を博し多くのシリーズ機を生み出した。

 最近リリースされた『P超ハネ獣王』など、権利物・羽根物にまでなった同シリーズであるが、初めてパチンコ化された『獣王』は『CR猛獣王』で、これはパチスロ『獣王』の大ヒットを受けて登場した正統後継機『猛獣王」をモチーフに作られたものとなる。

 少しややこしいのが、この『CR猛獣王』の次につくられたパチンコシリーズは『ぱちんこCR獣王』でパチスロの先代の名称が使用されているのである。つまり、パチスロでは『獣王』→『猛獣王』という順番だが、パチンコでは『猛獣王』→『獣王』と逆になっている。

 パチンコの初代『獣王』シリーズは『CR猛獣王』という多少入り組んだ状況だが、パチスロも『猛獣王』の次が『パチスロ獣王 王者の帰還』と『獣王』にサブタイトルをつける方式になっているのが興味深い。このへんのタイトル決めに関するあれこれを聞いてみたいところである。

 さて、『CR猛獣王』。大当り確率が1/348.6のハイミドルと大当り確率が1/306.2となるミドルタイプが同時リリースされたが、連チャンシステムは突入率50%で時短100回が付与される次回ループタイプの確変が搭載された王道スペックとなる。

 そして、その直後には『CR猛獣王ST』として、大当り後に7回転の高確率状態に移行するST機能を搭載したバージョンも登場。大当り確率も1/225.2とだいぶ当りやすく設計された、上記2機種とはまったく違うゲーム性を楽しめる機種である。

 演出面では、パチスロのリールとドットが表示される「獣王モード」やサバンナチャンスランプ、狙う図柄を表示する演出をパロディにした「15枚告知」など、パチスロに関する演出も多く採用されているが、基本はパチンコの要素を詰め込んだオリジナルのもの。

 パチスロを知らないパチンコファンでも楽しめるような工夫も満載で、ステージとモードがそれぞれ3種類ずつ用意されているなど豊富な演出が特徴のひとつとなっている。

 ステージがある「ライオン」「ゴリラ」「ダチョウ」を中心にイーグルやゾウといった動物が大活躍するさまはパチスロと同様で、発展パターンのない「ライオンリーチ」がもっともアツいSPリーチとなる。

 本機が登場した2004年はファーやムートン、レオパード柄など動物チックなファッションが流行した年でもあるが、パチンコでも成功を収めた『獣王』ブランドは第4弾まで継続する人気シリーズとなり、改めてそのコンテンツパワーを知らしめたのである。

(文=大森町男)

<著者プロフィール>

 羽根物によってパチンコの魅力にとり憑かれ、パチンコ雑誌を製作する編集プロダクションに入社。パチンコに関する記事作りや編集業務に携わる。編集長としてファン雑誌の制作に取り組むなどの経験を活かし、その後は携帯サイトやweb、動画コンテンツなど幅広いパチンコメディアに従事。現在はフリーランスのパチンコライターとして活動。パチMaxを中心に消極的に執筆の場を広げている。

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JRA 「ミスター千直」襲名へ!? 西田雄一郎でも村田一誠でもない、アイビスSD(G3)“隠れ千直巧者”に一発の期待

 JRAで唯一、直線のみのコースで行われる重賞・アイビスサマーダッシュ(G3)が25日、新潟競馬場で開催される。

 前哨戦ともいえる5月の韋駄天S(OP)で人気馬を蹴散らして優勝したのが、タマモメイトウ(牡5歳、栗東・藤岡健一厩舎)だ。

 本馬にとって初の“千直”となった一戦は、新潟連続開催の最終日。雨の影響が残り、かなり時計の掛かる馬場で行われた。

「スタートは速くないので」とテン乗りの津村明秀騎手がレース後に話したように、前半は後方に控えて末脚を温存。「後ろから行って外ラチに寄って行くことを考えていました」という鞍上の言葉通り、内目の3枠6番からやや後手を踏んだタマモメイトウは道中大外に位置を取り、馬群を縫うように進出。メンバー最速となる上がり3ハロン33秒4の末脚で、最後は有力各馬をまとめて差し切った。

 14番人気馬での勝利に津村騎手は「ゴール前ではグイグイ伸びて、際どい勝負になりましたが、良く伸びて交わしてくれました」とパートナーを褒め称えた。

 そのレースで1番人気に支持され9着に敗れたのが、今回も最有力候補と目されるライオンボスだ。前走はタマモメイトウが1秒1の差をつけたとはいえ、現役屈指の“千直巧者”相手に2連勝することは簡単ではないだろう。

 まず、前走で5kgあったライオンボスとの斤量差が今回は1kgに縮まる。そして、前走とは打って変わって高速決着が見込まれる開幕週の開催は“百獣の王”にはうってつけの馬場になるだろう。鞍上を務める鮫島克駿騎手も新潟の直線コースを得意としており、昨年2着の雪辱を果たすためにも、気合十分で臨むはずだ。

 しかし、タマモメイトウと2度目のコンビを組む津村騎手も実は隠れた“千直巧者”である。千直マスターといえば、現調教師で元騎手の西田雄一郎師や村田一誠師が有名だが、2015年以降の成績で西田師の11勝に次ぐ10勝を挙げているのが津村騎手である(藤田菜七子騎手とタイ)。

 そして、この1年で津村騎手の千直巧者ぶりにはさらに磨きがかかっている。昨年9月の雷光特別(1勝クラス)で、4番人気のトミケンルーアを2着に導いたのを皮切りに韋駄天Sまで6機会連続で馬券圏内を継続中。勝利はタマモメイトウの韋駄天Sだけだが、12番人気のリュッカで3着など人気薄での激走も目立つ。脚質も逃げから追い込みまで実に多彩。現役ではこのコースを最もよく知る騎手かもしれない。

「津村騎手に限ったことではないですが、千直コースでは外ラチを頼ることが必勝法の一つです。レース後のコメントでは津村騎手の口から『外ラチ』というワードが出ることも多く、意識していることがわかります。

前走(韋駄天S)は6番枠から外に寄せていった分、結構な距離ロスが生じました。今回は、斤量・馬場など条件は厳しくなりますが、外枠を引けば2連勝があってもおかしくないと思いますよ」(競馬誌ライター)

 かつて千直競馬でツートップ的な存在だった西田雄一郎現調教師と村田一誠元騎手(現調教師)は、ともに昨年末で騎手を引退。津村騎手が、不在となった「ミスター千直」襲名に名乗りを上げる。

「息子の正幸氏を社長に」…パナソニック、経営混迷を招いた“創業家=松下家の世襲への我執”

 松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏の長女・幸子さんが2月22日、心不全のため大阪市守口市の病院で死去したと報じられた。99歳。夫は松下電器の2代目社長の正治氏。喪主は長男でパナソニック特別顧問の正幸氏(75)。

 幸子さんら幸之助ファミリーの歴史を、改めて振り返ってみよう。丁稚奉公から身を起こし、億万長者になった松下幸之助氏は「経営の神様」と賞賛された。その幸之助氏を“神格化”し、家電業界の雄として君臨した松下電器は、同時に幸之助神話に呪縛された。松下電器にとって松下家は「神の一族」だった。

 松下電器の新任の取締役は、真っ先に松下家に就任の挨拶に出向くのが慣例だった。上座に幸之助氏のむめの夫人、長女の幸子さんら一族が居並び、取締役は「おかげさまで、就任させていただきました」と礼を述べ、祝いの杯を受ける。時代錯誤としかいいようのない儀式だが、松下家の人々にとっては取締役といえども使用人でしかなかった。

 幸之助氏は1989年4月27日、94歳で亡くなった。松下家の人々は、一族の総領となった幸之助氏の長女の幸子さんの夫の正治氏を先頭に立て、正治・幸子夫妻の長男・正幸氏の社長就任を何度も試みた。1990年代には、大政奉還を迫る松下家と世襲に反対する経営陣との暗闘が続いた。松下電器の歴代社長にとって、最重要の仕事は世襲経営を阻止することになった。端的に言えば「正幸氏を社長にしないこと」だ。

世襲経営の封印

 正幸氏は1945年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業して松下電器産業に入社。洗濯機事業部長などを経て、86年、40歳の時に取締役に就任。常務、専務を経て96年に副社長となる。正幸氏を副社長にした森下洋一社長は「(正幸を)社長にしようとした」(松下電器の元役員)。正治氏に社長にしてもらった恩義に森下氏が応えようとしたため、といわれている。

 正幸氏が“ポスト森下”の有力候補となった。これに松下電器の重鎮・山下俊彦相談役(当時)が激怒。97年7月15日夜、大阪市内で開かれた関西日蘭協会のパーティーの席上、「創業者の孫というだけの理由で松下正幸氏が副社長になっているのはおかしい」「年内にしかるべき措置をとりたい」とぶち上げた。

 山下発言が導火線となり、猛烈な世襲批判が社内外から巻き起こった。正治氏は「松下家だから社長になれないというのはおかしな理屈」と猛烈に巻き返し、森下社長も同調した。松下電器には企業の自律性が残っていた。正幸氏が社長になることはなかった。

 最大のヤマ場は2000年の社長人事だった、と言い伝えられている。森下氏は、最終的に中村邦夫氏を6代目社長に指名し、世襲問題は決着した。森下氏の英断と賞賛された。正治氏は名誉会長に退き、正幸氏は副会長に祭り上げられた。

 世襲経営は封印された。その総仕上げが、08年、松下電器からパナソニックへの社名変更である。社名から松下の名前が消えた。12年、正治氏は99歳で死去。正幸氏は17年、代表権を返上するなどして、松下家の影響力はほぼなくなっていたが、「パナソニックが松下家の会社だった時代が長かった」のは歴然たる事実である。

パナソニック改革の象徴

 副会長の正幸氏は19年6月27日開催の定時株主総会で取締役を退任し、特別顧問となった。18年3月、パナソニックは創業100周年の節目を迎えた。これを期に「正幸氏が退任を自分から申し出た」とされる。創業家出身の取締役がいなくなるのは創業以来初めてのことだった。正幸氏の取締役退任はパナソニック改革の象徴でもある。

 正幸氏の功績とされているのが、彼が洗濯機事業部長になった折、「御曹司に恥をかかせられない」ということで松下は「愛妻号」という、とても頑丈な製品を世に送り出したことだ。「愛妻号」は白物家電の傑作といまだにいわれている。

 正幸氏の長男・幸義氏は11年春、パナソニックに入社している。慶應義塾大学卒。しかし、今や松下家の影響力はない。再び、松下家がパナソニックに君臨することはなさそうだ。 

 正治氏と幸子さんが、あれほど執念を燃やした正幸氏の社長就任は果たせなかった。松下電器の1900年代の経営の迷走は、松下家、とりわけ幸子さんの「息子の正幸氏を社長に就けたい」という我執から引き起こされたものであるという声もある。

(文=編集部)

JRA「G1・3頭出し」の夢潰えた名伯楽が残した秘密兵器に復活の兆し! 名牝ダイワスカーレット、ダートの怪物クロフネも回避となった因縁、北の大地で実力馬復活の期待

 昨年の夏は、松田国英厩舎の馬がダートで快進撃を遂げていた。

 芝からダートに路線変更した2017年のホープフルS(G1)勝ち馬タイムフライヤーが、マリーンS(OP)でダート初勝利を挙げると、続くエルムS(G3)も連勝してダート重賞を初制覇した。芝のG1馬がダートG1を制した例は、過去にもアグネスデジタルやモズアスコットが二刀流を達成しており、タイムフライヤーにもこれらに続く期待もあった。

 また、7月に1勝クラスを卒業したキズナ産駒ハギノアレグリアスは、10月の白川郷S(3勝クラス)まで怒涛の3連勝。カフェファラオの勝利したシリウスS(G3)の勝ちタイム1:57.8は白川郷Sで4着だったウェルカムゴールドの走破時計と同じ。時計だけの単純比較ならハギノアレグリアスから約10馬身近く離されていたという”仮説”も成り立つほどだった。

 そして、7月に3歳未勝利を大差勝ちしたハギノリュクスは、10月の2勝クラスまで同じく3連勝。同馬が圧勝した3歳未勝利戦は、函館ダート1700mを1:43.6の快時計。このタイムは、タイムフライヤーのマリーンSと同じだったことでも注目された。

 以上を踏まえても、当時のダート戦線で最も勢いがあったのは松田国厩舎といっても過言ではない。翌年、定年による調教師引退の近づいていた松田国師にとっては、2月のフェブラリーSが、現役最後となるG1の舞台。3頭が揃っての出走が叶えば、引退の花道を飾るに相応しいラストG1となるかもしれなかった。

 しかし、そんな名伯楽の思いとは裏腹に、過酷な現実が待ち受けていた。フェブラリーSを前に、期待の3頭が揃ってアクシデントに見舞われてしまったのである。

 大将格のタイムフライヤーは、前走後に体温が上がるなど体調不良により、あえなく回避。両前肢に屈腱炎を発症したハギノアレグリアスは、秋に戦列を離脱。唯一、無事だったハギノリュクスは、3連勝後に出走した栞S(3勝クラス)を3着に敗れて連勝がストップすると、その後の3勝クラス2戦を11着と連敗し、G1挑戦どころではなくなってしまった。

 終わってみれば、3頭出しどころか1頭も出走が叶わず、クロフネ、キングカメハメハ、ダイワスカーレットら歴史的な名馬を育てた名伯楽としては、淋しさの残る結末だったといえるだろう。

 そもそも、フェブラリーSと松田国調教師の相性は、決していいとはいえない過去もあった。出走を予定していたダートの怪物クロフネは右前浅屈腱炎で引退、名牝ダイワスカーレットは、坂路調教中に跳ね上がったウッドチップで右目を負傷。創傷性角膜炎と診断されて回避した。

 過去、出走した馬は【0.1.2.4/7】と勝利には至らず、最後の最後でも相性の悪さが目立つ結果となってしまった。

 松田国師はすでに引退したものの、スランプに陥っていた感のあるハギノリュクスが、前走の夏至S(3勝クラス)で2着に入り、復調気配を見せつつあるのは朗報だ。

 今週出走を予定しているUHB杯(3勝クラス)は、昨年大差勝ちした3歳未勝利と同じ函館ダート1700mと同じ舞台。思い出の地で復活勝利を飾り、秋のダートG1戦線、さらには昨年挑戦が叶わなかったフェブラリーSに向け、今度こそ好結果を期待したいところである。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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皆さんが、ダイバーシティに興味を持つようになったきっかけは何でしょうか?

家族や友人との会話、ニュースやドラマの影響、または企業活動の中での出会いなど、そのきっかけは多種多様でしょう。

例えば、LGBTQ+についての意識が変わったきっかけや、理解が深まった理由として、メディアや海外コンテンツ、著名人の影響を挙げる人は多いという調査結果(※)があります。また、アイドルやアーティストをきっかけに人種やジェンダーなどの複雑な課題に向き合う人も増えていると言われますが、その代表的な例が、いまや世界的な人気を誇る韓国の7人組グループ・BTSです。

今回は、書籍「BTS オン・ザ・ロード」(玄光社)をピックアップし、ダイバーシティ&インクルージョン領域の研究を行う電通ダイバーシティ・ラボ(以下:DDL)が、「BTSとダイバーシティ」という視点から紹介します。

※DDLが2020年12月に行った「LGBTQ+調査2020」結果を参照。

(この記事は、DDLが母体となり運営するウェブマガジンcococolorに掲載されたコンテンツを一部編集してお届けします。)
 
「BTS オン・ザ・ロード」
BTS オン・ザ・ロード」(著 ホン・ソクキョン、訳 桑畑優香/玄光社)
発売日:2021年6月11日

BTSと言えば、一躍世界のポップアイコンとなり、日本でも先日発売されたベストアルバムの売り上げが初週78.2万枚と大ヒットとなっている、韓国発のアイドルグループです。

本書ではそのBTSの人気を社会的・メディア的な観点から読み解き、彼らが拓いた新たな世代・文化・人種・ジェンダー観が世界の人々に与えた影響について、客観的に深く掘り下げています。それもそのはず、著者のホン・ソクキョン氏はソウル大学言論情報学科教授で、過去10年以上「世界の韓流」に関する論文を発表している専門家なのです。

今回はDDL的切り口のブックレビューとして、「BTS オン・ザ・ロード」の第3章から第6章で論じられている、BTSが変えたダイバーシティを中心に紹介します。

「防弾少年団」というマイノリティー

まず、「BTS」という名称で世界的に活躍している彼らですが、正式なグループ名は「防弾少年団(ぼうだんしょうねんだん)」といい、その名前には「10代・20代に向けられる社会的偏見や抑圧を防ぎ、自分たちの音楽を守り抜く」という意味が込められています。

韓国社会は、

親の世代が整えた学校や学閥という競争システムのなかで一生懸命に努力して名門大学に入学しても、もはや夢も自由も得られない(P.128)

という厳しい状況ですが、BTSのメンバーはそれぞれ韓国の地方で生まれながら10代でソウルにひとり上京し、当時無名だった芸能事務所の練習生になっています。両親に反対されつつも、学歴よりもアイドルの道を選んだ彼らはまさに韓国社会のマイノリティーだったのであり、いまのような世界的スターになる姿は誰も想像していませんでした。

自らの言葉で語りかけるロールモデル

そんな彼らが自分たちの人生から湧き出すメッセージを音楽に乗せて届けているのが、BTSの熱狂的な人気の根源であるようです。事務所から与えられた曲をただ歌うのではなく、メンバー自らが作詞作曲をしているBTSは、同世代の若者たちに「夢がなくても大丈夫」「あるがままの自分を愛そう(Love yourself)」と歌いました。そんな一貫性のあるメッセージを地道に発信し続けたことにより、BTSは単なるエンターテインメントを超えて人々を惹きつけています。

過去のトップアーティストたちが「ファンから遠いスター」だったのに対し、BTSはファンと親しい「友だちのような存在」であり、ロールモデルや規範である(P.147参照)、というホン・ソクキョン教授の指摘も興味深いです。その要因の一つは、BTSメンバーのソーシャルメディアの活動であると書かれています。

メンバーがファンに直接語り掛けているような投稿やライブのあとにホテルの部屋で韓国のカップラーメンを食べている配信動画は、「まるでメンバーと個人的に近い関係のように感じる」と話すファンが多く、メンバーの素の姿を見れば見るほど人としての魅力に惹かれるのだそうです。

BTSとARMYの「善良な影響力」

本書にはBTSは世界の音楽シーンで絶賛されただけでなく、「善良な影響力」を持っていると書かれており、まさにそのポイントはマーケティング的視点でいま押さえておくべき現象とも言えます。

BTSの所属事務所であるHYBEは「We Believe in Music」というキャッチコピーを掲げており、「Music and Artist for Healing」を理念としているのです。また、BTSのファンは「ARMY」と呼ばれていて、世界中のARMYがBTSのメッセージや活動に呼応して、それぞれの国・コミュニティーで社会活動をしていることも特筆すべき点です。ここからは、BTSが世界の人々に「善良な影響力」となった事例を3つ紹介します。

① 自発的に広がる慈善活動
1つ目は、BTSのチャリティー活動などを知ったARMYたちがそれに追随して行動を起こしていったことです。BTSのメンバーはいままで児童支援団体や教育機関などに多額の寄付をしていることが知られています。

2020年、BTSは所属事務所とともにBlack Lives Matterを支援するためグローバル・ネットワーク財団に100万ドル(約1.1億円)を寄付しましたが、そのニュースを受け、今度はARMYたちがTwitterでその寄付金を倍額にするキャンペーンを自発的に開始し、24時間以内に100万ドル以上もの寄付金が集まったということがありました。

そのほかにも、メンバーの誕生日になるとARMY同士が呼びかけて動物愛護団体への寄付や緊急救援食糧支援、献血活動などを行い、ARMY自身もBTSと同じように「善良な影響力」になろうと実行に移しており、まさに循環が生まれています。

② 差別や抑圧に立ち向かう
2つ目は、BTSが「肌の色やジェンダー意識に関係なく、自分を愛そう」というメッセージを発信したことです。2017年、BTSはユニセフとタッグを組み、若者を暴力から守る「Love Myselfキャンペーン」を立ち上げます。

BTSのリーダーRMが2018年にニューヨークの国連本部で行ったスピーチは、世界各国でニュースとなりました。RMがスピーチの中で語った、「肌の色やジェンダー意識は関係ない」「いまの僕は、過去の全ての失敗やミスと共にある。自分自身を愛することを学ぼう」という言葉は、黒人コミュニティーやLGBTQコミュニティーへの支持を示し、若者世代に希望を与えたとして絶賛されました。特に欧米のファンは、BTSの政治的立場の表明と参加をとても歓迎し、より彼らを信頼するようになったと言われています。

ちなみに、2021年にアメリカでAsian Hateの問題が深刻化していた矢先、BTSが「MTV Unplugged」に出演してColdplayの曲を歌ったことにたいしてドイツのラジオ局の司会者が人種差別的な発言をした際には、世界中のARMYがSNSで批判し謝罪を求めました(P.266参照)。

こうしてBTSが差別や抑圧に直面するたびに、ARMYたちは問題の背景や原因について真剣に学び、それに対して連帯してアクションを起こすという機会を得ているのです。

③ 新たなジェンダー観
3つ目は、BTSが欧米的なジェンダー観に「オルタナティブな男らしさ」を提示したことです。

欧米が作った「世界基準の美」とは別の価値観を生んだ要素として、ホン氏はメンバーがメイクをしていること、彼らがカメラの前でものびのびと自然で自由に気持ちを表すこと、同性同士でも親密で仲が良いことなどを挙げています(P.243〜246参照)。

本書執筆のためのインタビュー調査に答えたアメリカのファンたちは、BTSの男らしさを、トランプ前大統領に象徴される権威主義的な男らしさとは異なる「ソフトな男らしさ」と評価したそうです。また、

メンバー間のコミュニケーションは、「同性同士の友情と愛情表現は“異常”ではなく、きわめて人間的で正常だ」という思いを代弁してくれる(P.252)

として、BTSはLGBTQのジェンダーアイデンティティーを自由に解き放っているとも書かれています。

BTSと変わるダイバーシティへの意識

ダイバーシティの問題に向き合うとき、自分ごととしてインプットするだけでなく、アウトプットをし続けるということはたやすいことではないと思います。しかしBTSは世界の人々のダイバーシティへの姿勢を、少しずつ変えているようです。

これまでは、アイドルを応援する活動と政治的・社会的な活動との間には遠い距離がありましたが、それらを近づけこの社会で生きる全ての人々へのポジティブなメッセージを発信しているのがBTSなのです。また、ARMYたちの高い行動力と連帯力も相まって、この「善良な影響力」は今後も全世界的に勢いを増していくのか、注目です。

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