京都「1万円以下」のホテル続出の真相…中国ショックで中価格帯は崩壊、二極化進む

●この記事のポイント
・中国政府の渡航自粛要請を受け、京都の宿泊価格が急落。ビジネスホテルや簡易宿は正常化する一方、高級ホテルは堅調で、価格と客層の二極化が鮮明になっている。
・中国客減少でインバウンド4,000万人目標は困難視されるが、欧米豪の富裕層は支出額が高く、量から質への転換が進行。観光業への経済的影響は限定的との見方も強い。
・今回の「京都ホテル1万円以下」続出は不況ではなく調整局面。中価格帯の脆弱性が露呈し、日本が安売り観光から脱却するための“インバウンド選別”の始まりといえる。

「一時は1泊3万円まで跳ね上がったビジネスホテルが、今や数千円で泊まれる。やっと、まともな出張ができるようになった」

 そう語るのは、週に一度は京都を訪れる都内IT企業の役員だ。中国政府による日本への渡航自粛要請が報じられてから数週間。インバウンド狂騒の象徴だった京都の宿泊市場で、目に見える異変が起きている。

 街を歩けば、かつて観光客で埋め尽くされていた四条河原町や祇園周辺に、わずかながら「余白」が戻った。宿泊予約サイトを覗けば、かつては考えられなかった1万円以下の京都市内ホテルが並ぶ。これは単なる「不況」なのか。それとも、過熱の反動としての「正常化」なのか。

 本稿では、京都の宿泊価格が急変した背景をひもときつつ、日本のインバウンドビジネスが迎えつつある質的転換点を読み解く。

●目次

「暴落」か「正常化」か──二極化する宿泊価格

 12月に入り、京都市内の宿泊価格は急激な調整局面を迎えている。

 本来5,000円前後が相場だったドミトリーや簡易宿所は、インバウンドバブル期には1万円超えが常態化していたが、足元では再び5,000円前後に回帰。ビジネスホテルも、一時は2万〜3万円台という異常水準に達していたが、現在は1万円前後、なかには3,000〜5,000円台という、いわば「投げ売り」に近い価格を提示する施設も珍しくない。

 一方で、ラグジュアリーホテルの動きはまったく異なる。

 河原町周辺や東山エリアの高級ホテルでは、中国客のキャンセルが出る一方で、欧米豪の富裕層や、混雑を嫌って京都を避けていた日本人富裕層の予約が流入している。結果として、最上位層の需給は崩れず、中価格帯だけが「ごっそり抜け落ちた」構図が浮かび上がる。

 京都へのツアーを中心に取り扱う観光業者は、次のように指摘する。

「これは景気後退ではなく、価格形成の歪みが是正される過程だ。特に京都では、供給過多の中価格帯が、特定国籍の需要に過度に依存していた。その脆弱性が一気に露呈した」

中国客減少は「致命傷」か──数字が示す実態

 中国人観光客の減少により、政府が掲げてきた『年間インバウンド4,000万人』『中国人客1,000万人』という目標達成は、現実的に厳しくなりつつある。

 一部では、長期化すれば日本全体で1兆〜1.7兆円規模の経済損失になるとの試算も出ている。

 だが、この数字を額面通りに受け取るのは早計だ。

 観光庁やJNTOの公開データを見れば、1人あたりの旅行支出額は、すでに欧米豪が中国を大きく上回っている。中国客は買い物消費の比率が高い一方、欧米豪の旅行者は滞在日数が長く、宿泊・体験・飲食への支出が厚い。

 前出の観光業者は、こう語る。

「団体バス10台分の中国客より、欧米の富裕層10組のほうが利益率は高い。騒音や交通負荷も小さい。今回の騒動は、客層をアップグレードする好機でもある」

 量から質へ。数字の“人数”は減っても、経済的な実入りが必ずしも比例して減るわけではないという現実が、徐々に業界内で共有され始めている。

なぜ「ビジネスホテル」だけが崩れたのか

 今回の価格調整で最も打撃を受けたのは、明らかにビジネスホテルゾーンだ。背景には、構造的な問題がある。

 第一に、京都ではこの数年、中価格帯ホテルの新規開業が集中した。インバウンド需要を見込んだ投資マネーが流入し、「どこも満室」「いくらでも値上げできる」という前提で供給が膨らんだ。

 第二に、その需要の中核を担っていたのが、中国人団体・個人客だった点だ。特定市場への依存度が高いほど、外部要因による変動リスクは大きくなる。

 前出の観光業者は次のように分析する。

「高級ホテルはブランド力と顧客基盤があり、価格決定権を持つ。一方でビジネスホテルは、需給が崩れた瞬間に価格競争へ陥りやすい。京都では、その歪みが一気に表面化した」

 つまり、今回の“暴落”は、偶発的な事故ではなく、脆弱なゾーンが真っ先に調整された結果なのだ。

市民とビジネスパーソンにとっての「恩恵」

 皮肉なことに、今回の変化を歓迎している層も少なくない。京都市民からは「バスに座れるようになった」「道が歩きやすい」といった声が聞かれる。

 また、日本人ビジネスパーソンや出張族にとって、宿泊費の適正化は明確なプラスだ。これまで「京都出張=高コスト」という歪んだ状況が、ようやく是正されつつある。

 経済ジャーナリストの岩井裕介氏はこう語る。

「観光都市が生活機能やビジネス機能を失えば、長期的には競争力を失う。今回の調整は、都市としてのバランスを取り戻す過程ともいえる」

 春節を控え、京都の宿泊市場は再び動き出すだろう。ただし、その主役がかつてのような『数の中国』に戻るかどうかは不透明だ。

 むしろ今後は、多国籍・高付加価値・長期滞在という方向へ、ゆっくりと重心が移っていく可能性が高い。

 今回の価格急落は、インバウンドバブルの崩壊ではない。日本が「安売り観光地」から脱却し、持続可能な観光立国へ移行するための、手痛いが必要な洗礼だ。

 京都で起きているのは、静かな失速ではない。それは、観光の質を問う選別の始まりなのである。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

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