ファストリ、空前の好業績の理由…止まらないユニクロ事業の拡大、国内売上1兆円が視野に

●この記事のポイント
・ファストリの2024年9月~25年5月期連結決算、純利益は前年同期比8%増で最高益
・日本、欧州、北米、東南アジア・インド・豪州地区、韓国のユニクロ事業が好調
・気温に左右されにくいビジネスを展開でき、期を通して通年商品の販売が好調

 ファーストリテイリングは10日、2024年9月~25年5月期連結決算を発表。純利益は前年同期比8%増の3390億円と同期間としては最高益となった。25年8月期通期の業績予想は売上収益(売上高に相当)が前期比10%増の3兆4000億円、純利益は同10%増の4100億円で据え置かれ、過去最高の業績になる見込み。日本、欧州、北米、東南アジア・インド・豪州地区、韓国のユニクロ事業が好調であり、通年商品の在庫を十分にもつことで気温に左右されにくいビジネスを展開でき、期を通して通年商品の販売が好調。店舗販売員の時給アップや正社員の報酬引き上げにより人件費は増加したものの、店舗オペレーションの効率化による生産性向上でそれを吸収している点が注目される。ファストリ好調の理由について、識者への取材を交えて追ってみたい。

●目次

国内ユニクロ事業の売上が1兆円の大台に

 今回発表された業績で注目すべき点について、アパレル業界でトレンドリサーチやコンサル事業などを手がけるココベイ社長の磯部孝氏はいう。

「7~8月に失速せずにこのままでいくと、国内ユニクロ事業の売上が1兆円の大台に乗るほどの勢いです。日本のアパレル市場は年間8~9兆円といわれており、そのうちの1兆円を一つのチェーンが占めるという状況になります」

 ファストリの業績拡大の要因は何か。

「私が観察している限り、東京都心の大型店、例えば銀座や有楽町などの旗艦店には連日、ものすごい数のインバウンドが押し寄せており、それが売上を押し上げている面もあるでしょう。また、感謝祭やゴールデンウィーク商戦などの大型商戦が非常に盛況でして、ファストリが打ち出す施策が今のところ当たっているという印象があります。このほか、海外ブランドのANYA HINDMARCHとのコラボレーションをはじめ、さまざまな仕掛けがファストリの読み通り、もしくは読み以上に成功しているという印象を受けます」(磯部氏)

懸念はグレーターチャイナ

 逆に懸念材料はあるのか。

「米国トランプ政権の高関税政策の影響が指摘されていますが、北米市場はファストリが非常に重要視している市場とはいえ、ユニクロの店舗数は74店(25年6月30日現在)であり、全世界の約2500店舗のうちの数%にすぎないため、全体でみれば影響はほぼないといっていいでしょう。一方、海外ユニクロ事業の柱であるグレーターチャイナが減収減益となっている点は、やや心配の種かもしれません」(磯部氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=磯部孝/ファッションビジネス・コンサルタント)

吉野家HDの業績をラーメン事業が牽引?利幅の確保しやすさ、ラーメン店へのM&Aが活発化

●この記事のポイント
・吉野家HD、25年3~5月期連結決算では苦戦した牛丼事業を、うどん・ラーメン事業の伸長で補う
・「ラーメン世界一」を目指すと宣言し、ラーメン事業の売上高400億円、店舗数500を目標に
・「吉野家」初の麺メニューが好評、新規客層の拡大を狙う

 吉野家ホールディングス(HD)のラーメン事業が伸びている。2025年3~5月期連結決算の事業別の営業利益では牛丼の「吉野家」が前年同期比9.5%減だった一方、うどんチェーン「はなまる」は同9.3%増、ラーメン事業が入る「その他」は同約5倍に増加。全社の営業利益としては同20%増の約10億円となっており、苦戦した牛丼事業を、うどん・ラーメン事業の伸長で補うかたちとなった。「ラーメン世界一」を目指すと宣言し、ラーメン事業を第3の事業ドメインと定めて2029年度に売上高400億円、店舗数500を目標とする吉野家HD。その背景には何があるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

低価格競争が続く牛丼業界とは対照的

 7月4日、同チェーンとしては初の麺メニューとなる「牛玉スタミナまぜそば」(税込767円/店舗によって異なる)が発売され、話題を呼んでいる「吉野家」。その吉野家を展開する吉野家HDは現在、急速に“ラーメン企業化”を進めている。ここ数年、全国各地の比較的小規模なラーメン店・チェーンなどの買収を重ね、2024年にはラーメンに必要な原材料をひととおり製造してラーメン店に販売している宝産業を買収。中長期的にはラーメン事業を牛丼、うどんと並ぶ柱の事業に成長させていくシナリオを描いている。

「大きな背景としては、牛丼チェーンとして競合する『すき家』の運営元であるゼンショーホールディングス、『松屋』の運営元である松屋フーズホールディングスは今や総合外食企業となった一方、吉野家HDは牛丼とうどんの2本に依存している傾向があります。現在のように米と牛肉の価格が高騰して牛丼事業が苦しくなると、それをリカバリーする事業がなく、会社全体として業績が悪化してしまうリスクがあります。少し前から『吉野家』チェーン内で第2の柱として鶏の唐揚げに注力していますが、やはり『吉野家』というチェーンのほかに柱をつくっていく必要があるということでしょう。

 低価格競争が続く牛丼業界とは対照的に、今やラーメンは1000円超えが当たり前になっており、高い付加価値を付けることで比較的高価格帯の設定が可能になり、利幅を確保しやすいのも運営企業側としてはメリットです。また、全国では各地域で知名度の高い小規模なラーメン店・チェーンへのM&Aが活発化していることで、買収を進めやすい土壌が整ってきているといえます」(外食チェーン関係者)

「既存客を飽きさせない」「新規客層の拡大」「話題性」

「吉野家」がラーメン系メニューを発売した理由について、自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「その理由は、

・既存客を飽きさせない
・新規客層の拡大
・話題性

を考慮したためだと考えられます。私たちは日々の食事で『何を食べようかな』と考えますが、ずっと同じものばかり食べる人は少なく、『昨日は〇〇を食べたから、今日は〇〇を食べよう』といったようにバリエーションを求める傾向があります。そのため町場の飲食店は日替わりランチを用意したりして、来店回数増加のための工夫をしています。本来はメニュー数を絞り、オペレーションを簡略化したほうが効率的ですが、お客さんに飽きられないよう、来店頻度を上げるために『茹でる』というオペレーションくらいなら加えられると判断してラーメン系のメニューを用意したのでしょう。

 また、麺のようなメニューの選択肢が増えると、女性や家族連れのお客さんが来店しやすくなります。女性にもラーメン好きは多いです。私のクライアント店では日替わりランチでラーメンを出すと女性客が多く来店されますし、子供たちはもちろん麺類大好きです。今までとは違った客層の拡大も狙っていることと思います。

 そして、吉野家のような大手チェーン店が新しいことを始めると、ニュースで取り上げられ、SNSでも話題となります。話題を耳にした人のなかで一定割合の人は来店します。存在を忘れられてしまうと他のお店にお客さんを取られてしまいますので、絶えず自分たちの存在をお客さんに意識してもらう必要がありますが、新商品は『試しに行ってみよう』『最近行ってなかったから久々に行ってみよう』と来店へのきっかけを生み出します。

 このように今回の吉野家の新商品投入は、どんな商売でも大事な『既存客を飽きさせない』『新規客層の拡大』『話題性』を狙ったものであり、『牛玉スタミナまぜそば』が絶対的なエースといえる商品になるかは分かりませんが、そのような試みが重要であることは間違いないと思います。この先に発売される新商品の中から、もしかしたらヒット商品が生まれるかもしれませんし、期待したほどの反応なく麺商品の提供が終わってしまうかもしれませんが、テスティングを込みにして絶えずチャレンジすることが大事ではないでしょうか」

コスパ的には妥当

 ちなみに、「牛玉スタミナまぜそば」は767円という価格を勘案すると、そのクオリティやコスパはどう評価できるのか。

「パッと見た感じでは、牛丼のお肉と刻みネギ、天かすが麺の上に乗せられ、シンプルなつくりです。それに玉子が別盛で提供されました。途中、お好みで備え付けの紅しょうがもトッピング。味は、だし粉のような節系が効いた濃い醤油だれが特徴的です。ちゃんと絡めると牛肉の味を包み込むほど塩味の強い醤油だれで、あっさりしたライスが欲しくなる方も多いのではないでしょうか。麺は細すぎず太すぎず、ほどよく醤油だれに絡みます。コシもまずまずあって良い食感です。

 コスパに関しては、他のラーメン店との比較や吉野家の他メニューとの比較がポイントになると思います。町場のラーメン店が1000円の壁を超え始めた昨今、今回の『まぜそば』は安いといえます。また、日高屋のような他チェーンには600円台後半くらいで各種麺商品を選べるところもあるので、牛丼のお肉がトッピングされていることを考慮すれば、他チェーンとはいい勝負かなと思います。

 一方、吉野家の他商品との比較としては、私の好きな『ねぎ玉牛丼 並』(660円)とトッピングの内容が似ており、約100円の差は米か麺かの違いと、天かすや調味料が加わったことによるものでしょう。よって、吉野家の他商品と比較としても、ほどよい値決めといえるのではないでしょうか。以上より、牛丼屋の麺商品としてはコスパ的には妥当といえ、麺好きがオーダーしやすい商品だと思います」(江間氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

観光地で地価が大幅上昇=訪日客から人気―路線価

 国税庁が公表した2025年の路線価の全国平均は4年連続で上昇し、10年以降では最大の上げ幅になった。特にインバウンド(訪日客)に人気の高い観光地などでは、20%を超える大幅な地価の上昇が見られた。

 全国各税務署の最高路線価で上昇率トップだったのは、2年連続で長野県白馬村だった。上昇率は32.4%で、前年の32.1%を上回った。

 村の観光統計によると、21年に約141万9000人だった観光客数は、24年には約1.9倍の約271万人まで増加。白馬村観光局の福島洋次郎事務局長(50)は「オーストラリアや欧米などからパウダースノーの雪質を求めて多くのスキー客が来る。最近は夏でも外国人観光客が訪れる」と語る。

 全国2位は北海道富良野市北の峰町の30.2%。スキー場の麓にあり、ペンション、ホテルなどの宿泊施設や飲食店が集まる。周辺では近年、リゾート地として別荘などの建設もあり、25年の公示地価では住宅地の上昇率で全国トップとなった。

 東京・浅草の雷門通りは上昇率29.0%で全国3位となった。前年の16.7%から大幅に上昇した。コロナ禍前は30%を超える上昇率を記録したエリアで、平日でも多くの訪日客の姿が見られる。

 江戸時代の町家や造り酒屋といった伝統的な街並みの残る岐阜県高山市上三之町は28.3%で全国4位の上昇率だった。 (了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/07/01-11:09)

マイクロソフトが建設計画中止…「AI期待予測低下→データセンター需要減速」は起きるのか?

●この記事のポイント
・マイクロソフト、一部のデータセンター建設・拡張計画を止めている
・生成AIを軸とした演算需要の急激な拡大は明確
・データセンター需要の減速は、短期的には考えづらい

「Microsoft Azure」を手掛ける米マイクロソフトや米Amazon Web Services(アマゾン ウェブ サービス:AWS)など世界の大手クラウドサービス事業者が、データセンター建設の計画を相次いで中止・見直ししていると伝えられている。AIの開発競争の活発化や利用の広がりにより世界的にデータセンター需要が増大していくと予測されてきたが、電力・水の供給不足が新設のネックになったり、AI関連市場の成長が予想を下回ることで需要が下押しされる可能性も指摘されている。実際のところ世界ではデータセンターの建設にブレーキがかかっているのか。また、将来のデータセンター需要に大きな影響を与える変化が起きているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

マイクロソフト、依然としてデータセンターへの投資に積極的

 マイクロソフトはアメリカや欧州で一部の建設・拡張計画を止めていると伝えられており、電力供給の制約などが要因とみられている。LLM(大規模言語モデル)の開発競争が落ち着き始めて、データセンター需要が予想されていたほど伸びないという見方も出ている。電力不足や水不足、立地エリアでの反対運動、さらには生成AIの事業化(収益化)の遅れなども需要を下押しするという見方もあるが、今後も建設ラッシュは続くと予想されるのか。

 ITジャーナリストの西田宗千佳氏はいう。

「本質的にはそこまで大きく状況が変化しているとは認識していません。マイクロソフトは指摘の地域『以外』では、いまだにデータセンターへの投資を積極的に行っています。

 また、マイクロソフト以外に大きな投資見直しの話はありません。データセンターを構築する上での課題は過去から多く、現状も大きな解決策は得られていません。一方で、生成AIを軸とした演算需要の急激な拡大は明確で、『建築せねば競争に置いていかれる』状況であるのも変わりません。アメリカにおいてはトランプ政権の方針が『AI推進』である以上、個々の事案に変更はあるでしょうが、全体としての流れに変更はありません。

 現状は過剰投資懸念よりも、AI以外も含めたクラウド事業全体の伸びの鈍化や、すでにある設備の見直しといった要因が大きいです。AI事業から見た収益性問題はあり、単純に増やすだけでは効率が見込みづらいです。特に、OpenAIとの関係見直しもあり、マイクロソフトはアセットの最適化から投資見直しを行っていると考えられますが、これを全体傾向と見るのは『まだ』難しいです」

全体傾向は、少なくとも数年は変化しない

 国内では建設予定地周辺の住民による反対運動が相次いで起きており、建設業界全体が抱える問題として、人手不足や建設資材の高騰などの影響で着工やスケジュールの遅れ、さらには建設着工のメドが立たない事例が相次いでいる。

「仮にデータセンターの建設が予想どおりには増えないとすれば、AI自体の需要減速予測が大きな要因になるでしょう。ただし、繰り返しますが、短期的には考えづらいです。予想に比して伸びない(減速ではない)場合、立地や電力需要などの条件が考えられますが、個々の事案に依存すると考えられます。

 そもそもAIの需要減速が原因であれば、戦略自体がその前に変更されるわけで、ビジネスモデル上の変更が出てきます。AIを軸にした成長戦略以外を検討することになりますが、現状のトレンドではそれは考えづらいです。当然、半導体需要は下がるでしょうが、現状も需要を満たせていない状況なので、少々の変化では調整・吸収されてしまうでしょう。

 米NVIDIA(エヌビディア)などのHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向け半導体に『明確な影響が出るほど』の変化だとすれば、それはデータセンター需要の減速以前に、全体戦略の見直しという大きな波が先に見えるはずです。

 ただし、AIのニーズが学習ニーズから推論ニーズに移行していくことで、求められる半導体の性質が変わる可能性はありますが、あくまで比率の問題であり、全体傾向は、少なくとも数年は変化しないと予測されます」

 AIの領域ではLLMに加えて、SLM(小規模言語モデル)やAIエージェントの開発・導入も活発化している。そしてAIの活用が進めば他の業務システムや外部システムとの連携は増大し、一方で企業によるAI以外のシステム投資は世界的にみれば大きく冷え込む気配はない。こうした状況を踏まえると、今後も当面の間はデータセンターへのニーズが高まってくると予想される。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=西田宗千佳/ITジャーナリスト)

訪日中国人旅行者の実像② プロファイリングから読み解く

訪日中国人旅行者のリアル③

データをフル活用して、インサイトを深堀りし、訪日中国人旅行者の実像に迫る本連載。前回は、電通が中国最大手のオンライン旅行代理店「Ctrip(シートリップ)」の協力を得て独自に実施した訪日中国人旅行者オンライン調査から得られた変化も踏まえ、旅行目的や購買傾向、消費パターンなど、ビジネスに活用できる重要なポイントを明らかにしました。

今回は、電通中国のデジタル・オーディエンス・データ・プラットフォーム「Merkury」による、訪日中国人旅行者の日常のデジタル行動の情報に基づいた0次分析を通じて、その特徴を深掘りしていきます。日頃からお問い合わせの多い、「旅行客のプロファイル」「旅行時期」「関心の高い人気の旅行先・検索キーワード」、そして「日常的に利用しているアプリの傾向」などについて分析しました。

◼️Merkuryについて
電通中国が運用する12億を超えるデバイスIDを保有するデジタル・オーディエンス・データ・プラットフォーム。そのデータを活用して、中国人旅行者の旅行前・旅行中・旅行後のインサイトや行動を分析し、効果的なカスタマージャーニーの策定、マーケティング戦略の立案、コミュニケーションの実行・実施をサポートしている。

 


訪日中国人旅行者のプロファイルのポイント

・    訪日中国人旅行者セグメントに占める女性の割合が高い
・    年齢層は31~50歳が中心で、居住地は大都市(中国の都市区分でいう、1級・新1級・2級都市)に集中しており、高所得・高学歴
・    その中でも、新1級都市の割合とTGI(Target Group Index)※は1級都市をはるかに上回っており、新1級都市の住民は日本旅行の潜在的なターゲット

※TGI(Target Group Index)とは:
Merkuryの全デバイスIDの平均を100とし、ターゲット層の含有率が平均に対してどれだけ上回っているか、下回っているかを示す指標。100より大きいほど、ターゲット含有率が高いことを示す。

 

訪日中国人旅行者のプロファイル(Merkuryデータから)
※中国の都市区分:
中国では、都市を人口や経済レベルなどさまざまな観点から1級(北京・上海など)・新1級(青島・成都など)〜5級までの6つに分けられている。習慣的なものであり法律などで定められた正式な行政区分ではないが、一般的には中国の大手経済誌「第一財経」とその傘下のシンクタンクが発表する「都市魅力ランキング」が基準とされ、毎年少しずつ顔ぶれが変わる。
参考サイト;中国広播電視台「第一财经发布《2025新一线城市魅力排行榜》 ,刷新过往重新发现」
https://www.smg.cn/review/202505/0166469.html

 

旅行時期:夏休み(7〜8月)・国慶節(11月)・労働節(5月)が多くの人が旅行をする時期

2024年の主要な連休の海外旅行のタイミングの傾向を集計したところ、「夏休み」が最も多く、「11月の国慶節」「5月の労働節前後の連休」「春節」「クリスマス・新年」と続きます。

訪日中国人旅行者の主要旅行時期ごとのボリューム(Merkuryデータから)

人気の旅行先

日本旅行に関連した検索キーワードの傾向をみると、東京を中心とした関東地方(横浜、川崎、鎌倉、千葉、日光)、大阪京都奈良に代表される関西地方、名古屋北海道が日本旅行の主要人気旅行先となっています。

主要旅行時期ごとの傾向をみると、上位の旅行検索先として「東京・大阪・京都・北海道・高山」といった地域の関心が高くなっています。

主要旅行時期における旅行先検索ワード(地域名)

主要旅行時期における旅行先検索ワード(地域名)

季節や時期によって、関心が高まる旅行先にも変化がみられます(例えば、松本石川の関心がクリスマス・新年の期間に高まるといったことなど)。同じ場所を訪れる場合でも、その時期によって旅行者は異なる嗜好(しこう)と旅行ニーズを持っているので、それを踏まえた施策や対策が重要となってきます。

人気検索キーワード

訪日旅行者の検索キーワードは、旅行先の検索行動と比べると、時期による差異はあまりありませんでした。上位25の検索キーワードをみると、主に「①東京・大阪の商業地域」「②日本のローカルブランド」「③定番観光地や人気観光地」が中心となっています。

飲食関連キーワード:
日本のレストランチェーンである「牛角」は、最も検索された飲食関連キーワード。次に多く検索されている飲食関連キーワードは「松屋」。

ブランド関連キーワード:
「資生堂」「花王」「CPB(クレ・ド・ポー ボーテ)」はブランド関連キーワードで上位にランクされ、人気が高く、「Curel」「ライオン」「canmake」などがそれに続く。

旅行期間における違い:
クリスマス・新年期間中は、ブランド関連キーワードの検索数がより高くなる。クリスマス・年末年始の日本旅行はショッピング(プレゼント)への関心が高まる時期であることが想定される。

 テーマパークのトレンド:
「ディズニーリゾート」や「USJ」が検索されており、「ディズニーリゾート」の検索数はどの時節でも上位にあがっている。

主要旅行時期における検索キーワード

主要旅行時期における検索キーワード


 

興味・関心嗜好とメディアコンタクトポイント

日本を旅行中の中国人が、どのようなスマートフォンアプリを利用しているのかについて、Merkuryのデータをつかって分析をしたのが以下の図表です。

訪日中国人旅行者が利用するスマホアプリ・カテゴリー(上位20)


カテゴリーとしては、「SNS」「デリバリー・テイクアウト」「旅行」「学習ツール」関連のアプリ利用率が高く、旅行中の情報収集や旅行を便利なものとするツールが普段よりも積極的に利用されているということがわかります。

具体的には、小紅書(シャオホンシュー、英語名“rednote”)・微博(ウェイボー)・bilibili(ビリビリ)といったSNSアプリ、NetEase Cloud Music(ネットイース・クラウド・ミュージック)の音楽アプリ、Ctrip(シートリップ)などのオンライン旅行プラットフォームは訪日中国人旅行者の利用嗜好性が高いアプリになっています。

特に小紅書は、全体の50%以上が利用しており、訪日中国人旅行者セグメントにとって非常に重要なプラットフォームだといえます。旅行中のコンタクトポイントとして、こうした利用度の高いアプリ・プラットフォームを積極的に活用して、訪日中国人旅行者の認知・行動意思決定に影響を与えるようなアプローチが重要です。

訪日中国人旅行者が利用するスマホアプリ(上位20)

訪日中国人旅行者の主要プロファイル

以上のMerkuryが持つデータを駆使して、訪日中国人の主要旅行者層を特徴的なグループ・ペルソナに分類し、それぞれのグループにおける特徴を掘り下げると、以下のような5つのグループが訪日中国人旅行者の主要プロファイルとして現れてきました。

グループ1:短期間で自由気ままに訪問する層 
グループ2:とにかく日本での買い物を楽しむ層
グループ3:文化的で優雅な旅を楽しみたい層
グループ4:趣味や興味を満たすことを重視する層
グループ5:裕福でゆとりのあるシニア世代

グループ1:短期間で自由気ままに訪問する層
グループ2:とにかく日本での買い物を楽しむ層

グループ3:文化的で優雅な旅を楽しみたい層
グループ4:趣味や興味を満たすことを重視する層
グループ5:裕福でゆとりのあるシニア世代

例えば、グループ1の「短期間で自由気ままに訪問する層」の属性や意識をデータから読み解くと以下のようなことが推察されます。

グループ1「短期間で自由気ままに訪問する層」属性や意識
 
・    上海市や江蘇省、浙江省といった、日本から比較的近い距離の都市に住む人
・    日本旅行は単なる観光地ではなく、地理的に近く、文化的な共感からの慣れ、親しみを持っている
・    特に具体的な目的がなくても、思い立ったら週末など短期間でも訪問する場所になっている

また、SNSなどの投稿内容などのコンテンツからは、以下のようなキーワードに関連付けられる内容に関心があるグループです。

#庭 #週末旅行 #弾丸ツアー #数次ビザ #安い航空券 #夜行便
#エコノミーホテル #魚市場 #omakase #おみくじ #お守り

このようにそれぞれが特徴的なポイントを持ったプロファイルであり、多様化する訪日の目的やデモグラフィックに対応したコミュニケーション設計やメディア選定・キャンペーン展開が求められます。

電通は、このようなデータを駆使して、企業の商品やサービスに対して訪日中国人旅行者のターゲットセグメントを設定し、適切なコミュニケーションについて、メッセージとチャネルの両面からご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先:dentsu-gbc@dentsu.co.jp


次回は、中国人の間で幅広く利用されている SNSプラットフォーム「小紅書」から電通に提供されたデータを用いて、訪日旅行者の興味・関心についてさらに深掘りしていきます。


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対日投資拡大で日英が覚書=脱炭素化や生命科学で呼び込み

 内閣府は9日、英国政府と対日直接投資の拡大を目指す協力覚書を締結した。脱炭素化や生命科学などの戦略分野を中心に、英国の政府や企業、投資家と情報共有や交流を促進する。2024年末の対日直接投資残高は53兆円で、このうち英国は9兆円と米国に次ぐ2番目の規模だった。日本は30年に120兆円の対日投資目標を掲げており、目標達成に向けて資金の呼び込みを図る。

 覚書は、日英包括的経済連携協定(CEPA)や「包括的および先進的な環太平洋連携協定」(CPTPP)の意義を強調。技術革新や人的交流を通じて「直接投資がもたらすメリットについて共通認識を持つ」と明記した。 (了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/07/09-18:42)

快適なハイエンド体験ができるスマホで8万円台、「arrows Alpha」の破壊力…従来のハイエンド機種と遜色なし

●この記事のポイント
・10万円台後半~20万円台と高価格なハイエンドスマホ市場に一石を投じる8万円台の「arrows Alpha」が登場
・ハイエンド体験を行うために必要なスペックと機能はひととおり揃えた上で、IP6Xの防塵性能、IPX6/8/9の最高水準の防水性能、MIL規格23項目への準拠、独自の画面が割れにくくなる構造など、高い耐久性も備えている
・90Wの急速充電を導入でも電池にやさしく、2日間の電池持ちが5年間続く

 10万円台後半~20万円台も当たり前になったハイエンドスマホ。そのジャンルにFCNTが8万円台という低価格の新型スマートフォン「arrows Alpha」を8月に投入すると発表し、話題を呼んでいる。ハイエンド体験を享受するのに必要なスペックと機能をひととおり揃え、防水・防塵性能で高い耐久性を備えているにもかかわらず、なぜ圧倒的な低価格を実現できたのか。また、より高価格帯のハイエンドスマホと比較して「こういう点は我慢する必要がある」といった点はあるのか。FCNTへの取材を交えて追ってみたい。

●目次

まず「9万円以下」という目標価格設定

 今回、8万円台という低価格のハイエンドスマホを投入するに至った背景について、FCNTは次のように説明する。

「15~20万円のスマホは一部の人は買えますが、多くの人は手に届きづらいという価格帯になっており、ハイエンドスマホのマーケット規模は縮小傾向にあります。2サイクルくらい前の時代には10万円ほどで買えたのですが、今の価格は高過ぎて以前はハイエンド端末を購入していた人でも購入を控える、ということも起こっています。ハイエンドモデルでこそ享受できる、AI機能や進化したゲーム体験などのイノベーションを端末価格が高いから体験できないという状況は、日本のデジタル発展を阻害する社会課題でもあるという認識を弊社は持っていました。そうしたなかで、消費者の方々の経済的事情や支払いの壁などを考慮した際に、実売価格で9万円以下のスマホをお届けするには、どういうものを作ればいいのかというところにもっとも重きを置き、FCNTが9万円以下でハイエンドモデルを投入することには大きな社会的意義があるという認識に立ち、チャレンジをしたという経緯です。

 価格を高くすればするほど、当然、より高スペックのものをつくれますが、まず上限を9万円と決めて、どういう仕上がりにすればいいのかと、とことん突き詰めて考えていったというのが今回のプロジェクトであり、『価格もスペックの一つである』ととらえて全体的に検討してまいりました」

 なぜ8万円台という価格を実現できたのか。

「弊社はレノボグループの傘下になり、従来と比較して部品の調達コストを抑えられるようになり、グローバルモデルと共通の部品選定を一部することによって、コスト効率性を上げることができました。また、8万円台を実現するために、お客様に対して還元していきたいという思いから、戦略的に価格を設定している部分もあります。

 弊社は継続してお客様のニーズをリサーチしていますが、CPU性能と同じくらい堅牢性やRAM・ROMの容量、耐環境性へのニーズが高いので、それらのバランスをいかに取るのかを重要視しました。新しいテクノロジーやAI機能を取り入れるなかで、“使いやすさ”というところに対して何か手当てをできないかという点も注力しました。今回の機種では、左側面に物理キーとしてアクションキーを用意していますが、単押しと長押しとダブルクリック、それぞれにAIだけではなく、ユーザーがダウンロードしたアプリも含めてショートカットで起動できるようにしております。AI利用において、従来のホームキーや電源キーの長押しという動作には心理的敷居があるのではないかと捉えており、商品企画の最初の段階から、長押しという障壁をなくしたいという思いがあったためです。そういった考え方から、AIの使い勝手をアクションキーという形で昇華させました。

 AI以外の利用においても、例えば、アクションキーにQR決済アプリを割り当てて、スマートに決済するなど、個々のユーザーにとって使い勝手が良いかたちにカスタマイズできるように仕立てております。(FCNT)

単純にCPU性能だけでは測れない快適さ

「arrows Alpha」はSoC(プロセッサ)としてミドルハイスペック端末向けのMediaTek製「Dimensity 8350 Extreme」を採用しており、メモリはハイエンドモデルでも一般的な12GBを搭載している。より高価格帯のハイエンドスマホと比較して、「こういう点はやや我慢していただく必要がある」という点はあるのか。

「弊社がターゲットとしているユーザー層は、これまではハイエンドスマホを使っていたけれども価格が上がってもう手が届きづらいと感じているユーザー様が多いです。そのようなユーザー層の方々は、CPU性能の優先順位が相対的には高くはなく、長期利用に資する仕立てやRAM・ROMの大容量へのニーズが高い傾向と捉えています。『arrows Alpha』のように512GBのROMがついて、さらにSDカードで拡張性が持てるという機種は他にほとんどなく、単純にCPU性能だけでは測れない快適さをご提供できると考えております。

 また、ハイエンドクラスのユーザー様には2~3年ぐらいで買い替えるサイクルの方が多いですが、arrows Alphaは5年間のセキュリティ更新を保証して長期利用の間も快適にお使いいただけるように、電池の持ちの改善、高い堅牢性・防水性の確保にも注力しております。

 より高い性能のSoCを採用する意味というのを改めて考えたときに、その実質的なメリットをどれだけの方々が享受できているのかというのは、非常に難しい面もあります。SoCも多数のバリエーションが出てきて、以前と比べてかなり複雑化しており、ベンチマークとして高いスコアを取ったとしても、それが実利用にどこまでリンクしてるのかは評価が難しいです。

 今回私たちが『Dimensity 8350 Extreme』を採用した理由の一つとして、オンデバイスでAIを動かせるというのが大きなポイントとなっています。例えばベンチマークテストでスコアが高くても、オンデバイスでAIが動かなければ、私たちが提供したい体験の広がりを実現するためには理想的ではないということになります。ワンランク上のSoCと比較してCPU性能は落ちるものの、AIパフォーマンスがでるということになれば、実勢品質としては劣っているとはいえないのではないでしょうか。

 今回、私たちはSoCに対してさまざまなチューニングを個別でやらせていただいており、『このチップセットだったら我々が提供したいユーザー体験というものを実現できる』というレベルにまで引き上げています。そういう意味も含めて、かなり魅力的なチップセット性能にできたと自負してるところでもあります」

2日間の電池持ちが5年間続く

 そのほかにも「arrows Alpha」には魅力的な特徴が多く詰まっているという。

「日本人は外国の方々と比較して少し手が小さいので、幅72ミリ以下にするという点にはこだわりました。そのなかで最大限のフラグシップ性能のディスプレイを用意したいといことで、今回6.4インチのディスプレイを採用し、LTPOという可変のリフレッシュレートも採用しております。1Hzから144Hzまでシーンに応じて変えられ、ユーザー様が滑らかに動いてほしいところに対しては滑らかに動くようにし、静止画は1Hzで動くようにしたりして、高い省電力性を実現しております。画面も明るく、解像度も高く、お客様が常に見て触って感じるディスプレイに関してはコストをかけています。

 2日間の電池持ちが5年間続くという点を実現しつつ、90Wの急速充電も可能になっており、充電1%状態から35分で100%まで持っていけるようにしました。全体的にスペックに関しては10万円を優に超えるハイエンドモデル級のスペックになっていると考えております」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

2025年のパリでAIの多様性を考える(中編)

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こんにちは、Dentsu Lab Tokyoのなかのかなです。ラボのR&D活動の一環として、2025年6月11日〜14日にフランス・パリで開催されたヨーロッパ最大級のテックイベント「Viva Technology 2025」を視察してきました。中編は、VivaTech本会場のスタートアップ展示を中心にお届けします。

※前編はこちら

 

暮らしの中に溶けこむAI

会場の目玉のひとつが「AI AVENUE」と呼ばれるエリア。一般入場口から奥まで会場を斜めに横切るように配置された小径です。主催者が選んだAIに関連する注目企業6社が並びました。

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最も人が集まっていたのが二足歩行ロボットのUnitree G1を展示していたUnitree Robotics(宇樹科技)社です。2016年の設立で、最近では人を交えての集団演舞の動画でも話題になっていました。価格は1万6000ドルからで、エンターテインメント、製造、高齢者介護などに応用できるとしています。日本では2000年に発表された本田技研工業(以下Honda)のASIMOが二足歩行ロボットとしては先駆的な役割を果たしていましたが数年前に開発が終了し、日本科学未来館での業務も2022年に引退しています。

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そのHonda発のスタートアップAshiraseの姿も「AI AVENUE」にありました。自動運転技術などを応用した視覚障害者向けのナビゲーションシステムで、スマートフォンで事前にセットした目的地まで歩きやすいルートを提案、靴の内側にセットしたデバイスが振動することで曲がる方向やタイミングをナビしてくれます。アプリは看板やメニューなどを読み上げるAI画像認識にも対応しているそうです。

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にっこり笑顔を振りまいていたのは、フランスのスタートアップBodyoが提供する家庭向け健康管理ロボット。小型のテレビのような見た目をしていますが、画面の奥には血圧計がついており、腕を差し込むと血圧を測ることができます。側面ポケットに収納された体温計や心電図計などと併せたバイタルデータから、未病に役立つアドバイスや運動、健康的な食事のレシピ動画などを視聴したり、医療機関と連携してオンライン診療を受けることができるとのこと。

その他にも商品タグの画像から偽物を見分けるアプリ、需要と共有の最適化によってCO2排出量や交通量を削減するモジュール式EV車、気分障害を早期に発見する診断AIなどが展示されており、買い物、移動、健康などさまざまな分野で、これからの生活の中にAIが活用されていく様子がわかる展示となっていました。

社会を支えるAIの力

今年からスタートした「Tech for Change」アワードは、テクノロジーが生活、仕事、民主主義に与える影響が拡大する現代社会で、テクノロジーで「何ができるか」だけでなく「何をするべきか」を問いかけることが必要だとの考えから創設されました。出展しているスタートアップを対象とするもので、環境や社会にポジティブな影響を与えているか、イノベーションがあるか、スケーラビリティがあるかの3つの軸で評価されます。500以上の応募の中から、325社以上が「Tech for Change」として公式に認定され、会場内で認証マークを掲出していました。

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グランプリに選ばれたGenesisは、世界の国内総生産(GNP)の50%以上が依存する「土壌」の健全性に特化したソリューションを提供しているパリ発のスタートアップです。サンプリングなどを通じた現場データと衛星画像を統合し、土壌の健康状態を評価するAIプラットフォームを開発。企業が持続可能なサプライチェーンを構築し、再生型農業プログラムを管理するのを支援します。現在すでに、繊維、化粧品、食品、ソーラーパネルなど多様な企業と提携し、世界20カ国以上で活動しているそうです。また、LVMHのテックパートナーズ15社にも選ばれており、モエ・ヘネシーのブドウ栽培を支援しています。

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増え続ける森林火災の早期発見にAIを用いた例もありました。ニューカレドニアのFire Trackingによるこのソリューションは、通信用の鉄塔や給水等など、高所に設置した40倍光学ズームカメラからの映像を解析、最長20km離れた場所から、3分以内に火災を検知することができ、誤作動率も10%未満に抑えられるそうです。火災発生時には延焼シミュレーションと給水所や道路情報を提供し、消火活動を支援します。消防署や地方自治体向けに販売されており、農業や住居など人の生活だけではなく、貴重な生態系の保護に貢献できるとしています。

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大手通信会社Orangeは、OpenAIおよびMetaと提携し、アフリカの地域言語に対応するAIモデルを開発しています。セネガルやギニア、モーリタニアなど西アフリカで使用されているウォロフ語とプラール語からスタートし、将来的にはサービスを展開している18カ国全てをカバーするとしています。主にカスタマーサポートなどでの利用を想定していますが、教育や公衆衛生などの非営利目的の場合にはオープンソースとして無償提供されるとのこと。西欧を中心とした書き言葉をベースに開発されてきたLLM(大規模言語モデル)の偏りやデジタルディバイドの解消策として良い取り組みだと感じました。

工場のオートメーションや自動運転といった分野だけでなく、農業や生態系保全、さらにはコミュニケーションなどのテクノロジーとは縁遠いと思われている領域でも、AIが社会を支え始めていることを実感しました。

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日本の中小企業を元気にする、経営者の「壁打ち相手」

左から中村誠氏(電通)、磯部武秀氏(磯部塗装)。大学卒業後も、週に一度は会って互いの事業について相談し合うほどに仲が良かったという二人。「経営者以外の友人に相談しにくいことも、中村さんには本音で話せる」と、磯部社長。
左から中村誠氏(電通)、磯部武秀氏(磯部塗装)。大学卒業後も、週に一度は会って互いの事業について相談し合うほどに仲が良かったという二人。「経営者以外の友人に相談しにくいことも、中村さんには本音で話せる」と、磯部社長。

経営者の仕事は、組織運営の意思決定を行い、責任を負うこと。会社の業績や成長が大きく左右されるとあって、経営者による判断の質が問われます。

2025年2月に提供が始まった「電通エイトアイズ」は、電通の各領域の専門人材が、中堅・中小企業の経営者の壁打ち相手となって経営課題の気づきや視点を提示する、定額制の相談サービスです。

関連ニュース:
中堅・中小企業向け、定額制の経営相談サービス 「電通エイトアイズ」提供開始

 

課題に応じて電通の有する多様な知見やネットワークを活用できるため、経営者にとってはより効果的な意思決定を行うことができると好評です。

この電通エイトアイズのベースとなっているのは、第6マーケティング局の中村誠氏が、家業再生に挑戦していた大学時代の後輩に伴走し続けていた取り組みでした。当時のことを二人にふり返っていただきました。

<目次>
どん底からの挑戦。27歳で負債50億円の家業を継ぐ

新・磯部塗装の第二章。中村氏が果たした役割とは?

「拡大フェーズ」に向けた組織づくりの舞台裏

どん底からの挑戦。27歳で負債50億円の家業を継ぐ

磯部塗装

──お二人の出会いについてお聞かせください。

中村:われわれは学生時代、同じ立命館大学でそれぞれベンチャー企業を立ち上げ、経営していたことをきっかけに知り合いました。2000年代の初頭、まだ学生起業なんて珍しい時代ですが、意気投合しましたね。事業について大いに議論し、大いに遊んだ同志であり、親友です。大学卒業後は、私は事業を売却して、電通に就職。磯部社長は大学時代に立ち上げたサイト制作やECコンサルの会社を中心にビジネスを展開されていました。

そんなある時、磯部社長の実家の家業がピンチを迎えたわけですが、本人から「跡を継ぐ」と聞いた時は驚きました。

磯部:50億円の負債を抱えた家業を継ぐため、大阪から東京に引っ越すことになり、中村さんを含め、何人かの友人で送別会を開いてくださいましたね。私が自己破産して大阪に帰ってくる可能性があったので、食うに困らないようにと皆がそれぞれ仕事を用意してくださっていました。それがうれしく、心強かったのをよく覚えています。

その後、私が磯部塗装の社長に就任してから、再生を経て成長し、拡大期に突入した現在に至るまで、中村さんにはずっと伴走していただいています。

中村:最初のうちは純粋に友人としてのアドバイスをしていましたが、2015年からは正式に電通に仕事をいただくようになり、今年で10年目となりました。これまで、会社の成長フェーズに合わせて一緒にさまざまな施策を打ってきましたね。

──50億円もの負債を抱えるに至ったのには、どのような経緯があったのでしょうか?

磯部:磯部塗装は明治40(1907)年に創業し、間もなく120年がたとうとしている老舗企業です。創業以降、東京タワーや皇居の二重橋、関門橋など、日本を代表する建築物の塗装工事も請け負ってきました。

磯部塗装
磯部塗装株式会社は、建築物の塗装工事を行う会社。社会インフラからマンションまで、さまざまな塗装工事を手掛けてきた。全国6カ所の拠点と、製品塗装を目的とした2カ所の自社工場を有する。

そして塗装事業と並行して進めていたのが、塗料の販売事業です。私が社長に就任する直前、塗装事業の売り上げが60億円だったのに対し、塗料の販売事業の売り上げは100憶円にも上る事業になりつつありました。

ところが、磯部塗装が100周年を迎えた翌年の2009年、その塗料の販売事業に50億円の焦げ付きが生じて、会社が実質破綻に陥ったのです。社長だった叔父は責任を取って辞任。父も旧経営陣だったこともあり、当時27歳の私が、会社再建のために跡を継いで社長に就任することになりました。

中村:東京へ行き、実際にふたを開けてみると、会社は想像以上に大変なことになっていたのですよね。

磯部:はい。銀行取引が停止され、売上げは激減、材料の仕入れもストップして、協力業者も下請けの職人さんも「磯部塗装は危ないらしい」と仕事を引き受けてくれなくなりました。そして与信調査の点数が下がり、大手を中心にクライアントとの取引も停止し、未来を悲観した社員の離職も相次ぐ状況でした。

中村:磯部社長が東京に行ってからは、月に一度は連絡を取り合っていましたね。当時の磯部社長は、悩む暇さえないほど山積みされた課題に向き合っていたと思います。

磯部:危機のさなか、会社の状況が目まぐるしく変化していた当時は、とにかく打ち手のスピードが重要だったので、困ったらすぐに中村さんに連絡して、“壁打ち”に付き合っていただいていましたね。中村さんと話すと、自分の考えや次のアクション、方向性を客観的に整理できたのです。

──社長就任後、会社再生に向けて具体的にどのようなことをしていったのですか?

磯部:私が最初に着手したのは、朝から晩まで過去3年分の工事データをひたすらに読み込んで、組織の課題を洗い出していく作業でした。目に付いたのは、業界に残る古い体質の中で、優秀な若手社員の能力が生かされていなかったこと。会社に残ってくれた有望株の数人を中心に、組織図を再構築しました。そのメンバーの何人かは、現在の幹部になっています。

収益体質にも改善の余地がありました。お付き合いを重視した採算度外視での受注が多数あり、一見すると売り上げが上がっていながらも、支出も非常に多く、利益が出ていなかったのです。社内にはびこっていた過度な売り上げ至上主義から脱却するため、案件の詳細をチェックしてから決裁を通す受注管理システムに変更しました。

そうした変革を行いつつも、離職を踏みとどまってくれた社員たちと毎日のように食事をしては、業界のことや会社のことについてのインプットを繰り返していました。

中村:絶望的な状況からのスタートでしたが、磯部社長が繰り返し口にしていたのは「世界で一番良い会社にしたい」という言葉。厳しい決断を迫られ、悩んだり怖さを感じたりすることもあったと思いますが、その強い信念が再建を後押ししたのだと思います。

磯部:その後も幾度かの危機はありましたが、地道な変革の甲斐があり、会社は徐々に信用を取り戻して、2012年に大手取引先との取引が再開。2013年時点で売り上げが23億円と、過去実績から半減してはいましたが、営業利益がしっかりと残る正常な営業体制に改善しました。

2014年からはついに金融機関との取引も再開して、再生は完了。業績回復に伴って社内のモチベーションも上がり、磯部塗装は以前よりも“筋肉質”で、良い状態になっていったのです。

新・磯部塗装の第二章。中村氏が果たした役割とは?

磯部武秀氏
学生時代にサイト制作やECコンサルの会社を起業し、磯部塗装を継ぐまで同社を経営。著書に「周りが自然に助けてくれる人の仕事術 ―27歳で借金50億を抱え、5年でゼロにした私の『透明貯金』」(合同フォレスト株式会社)がある。

──会社再生後、磯部塗装は順調に業績を伸ばしていますが、社内でどのような施策を打っていたのでしょうか。

磯部:再建のめどが立った2013年、私の中から湧き上がってきたのは「これで終わりじゃないぜ」という思いでした。まずは、20億円ほどだった当時の売り上げを2倍にまでもっていこうと決意。そのためには、社員の意識の足並みをそろえる必要があります。

この段階まで、中村さんには大学時代の友人としてさまざまなアドバイスをいただいていましたが、さらなる協力を求め、「電通の」中村さんに仕事を依頼することにしたのです。

中村:世間で塗装業界のイメージが良いものとはいえなかった中、業界の枠にも、過去にもとらわれない、磯部塗装の新しいイメージを打ち出したいと磯部社長はおっしゃっていましたね。私がその時に提案したのは、CI (コーポレートアイデンティティ)とVI(ビジュアルアイデンティティ)の刷新です。

コーポレートロゴ
コーポレートロゴ
磯部塗装の技術力(タテ軸)と従業員やお客さまの絆(ヨコ軸)を(+)で表現し、塗装(PAINT)と社是「信」と共に(together)を組み合わせたステートメントは、創業115年来の実績と信頼、これからの未来に向けて、全てのステークホルダーと共に歩んでいくブランドメッセージとして策定。
橋梁(きょうりょう)とグローバルイメージを曲線で表現した[ベーシックタイプ]と、多様なビルディングとランドマークなどの実績をイラスト化した [ランドマークタイプ]の、2種類をデザイン。

磯部:「再生の完了」を社内外にアピールするためには、門構えから変える必要があると感じていたので、中村さんのご提案はありがたかったです。ロゴは、中村さんやデザイナーさんとディスカッションしながら5パターンほどつくっていただきましたね。最終的には社内投票をして、現在の2つのロゴに決定しました。そして、次に中村さんに依頼したのが、社員旅行先での研修の講師でした。

中村:「うちの社員に何か研修をしてくれないか」と突然言われて、焦りました(笑)。そこで、「再生が完了して成長のフェーズに入った会社の社員」に適切なテーマを考えた結果、「経営計画の自分ゴト化」を促す研修を実施することになりました。

会社の将来やビジョンは、頭で理解できても、それをどう目の前の仕事に落とし込めばよいかが分からなかったりするものです。研修では、「5年後に会社の目標が達成されたら、自分(社員)は、家族や取引先、同僚からどう思われていたいのか」を想像するようなワークショップをしました。

磯部:中村さんは、会社員生活で培った “現場主義”的な感覚をとても大切にされていて、「会社員としての責務」と、「個人としての幸せ」をリアルに結びつけて磯部塗装でのキャリアを考える研修にしてくださいました。そういうことは、社内の人間が言うとうまく伝わらなかったりするものなので、ありがたかったです。

中村:研修前、社員たちは磯部塗装のことを「磯部」と言っていたのですが、研修が終わった頃から「うちの、自分の会社」という言い方をすることが増えたのが印象的でした。これは当事者意識が芽生えた証しです。

磯部:社員の当事者意識こそが会社の利益の源泉なので、うれしいですね。さすがに社長である私に対しては、みんなあまりそういう言い方(=自分の会社)はしないと思いますが(笑)。

中村:次に磯部社長にご相談いただいたのが、人事制度改革です。社員研修を通して、私にも社員の顔が見えてきていたので、着手しやすかったです。

磯部:中村さんは、電通で数多くの企業を担当する中で、多様な人事施策や制度に触れてこられていますよね。その経験を生かして、さまざまな事例を用いて磯部塗装の人事思想について一緒に議論してくれました。

中村:私がさまざまな経営者と話をする中で知ったのは、戦略的に人材育成をする会社、属人的な人事を実施する会社など、良い・悪いではなく、さまざまなケースがあるということ。これらを提示しながら、磯部塗装にとってベストな人事思想を模索するところから始めましたね。

磯部:はい。最終的に、人事制度改革で顕著に現れた結果が、離職率の改善です。旧態然とした育成方法から、現場での育成をむらなく効果的に実施するためのOJTツールを作成しました。これは、入社3年で一人前になるために、いつまでに何をクリアするべきかということが具体的に記された表です。属人性を排し、社員のスキルや成長を底上げすることにつながっています。

結果として、社員は、自分の未来像を描くことができて、成長が実感できるようになり、簡単に会社を辞めなくなりました。

人事制度改革以前は、採用も社員の定着も思うようにはいっていませんでしたが、社員が着実に成長できる仕組みづくりをしていくと、離職率が1%にまで落ち着きました。

中村:その後、2017年には磯部塗装創業110周年を記念し、周年誌を制作しました。そして2018年、またしても磯部社長から突然、「磯部塗装の社是、経営理念、行動指針を整備したい。社員研修で発表するから、中村さん、書いてくれないか?」というご依頼をいただきました。

その頃には、研修や人事制度改革を通じて社員の皆さんと話す機会が増えており、彼らの言葉の根本に同じ思いが流れているということに気付いていました。その思いと、磯部社長の考えを言語化しながら「社是、経営理念、行動指針」を作成。2018年、社内外に発表されましたね。

社是、経営理念、行動指針

磯部:社員が少ないうちは、みんなが同じ方向を向くことが比較的やりやすいんです。でも社員が増えてくると、考えややり方が多様になってきます。そこで、磯部塗装の行動指針を評価制度に連動させて、行動指針を実践した社員が昇格する仕組みにしました。それにより、社員一人ひとりが会社の価値観を日々の業務に落とし込み、自然とみんなが同じ方向を向けるようにしているのです。

ちなみに、今年の春に入社してくれたある女性社員は、「磯部塗装の社是、経営理念、行動指針がカッコいいから入社を決めた」と話してくれたんですよ。

中村:なんと、それはうれしいですね!

「拡大フェーズ」に向けた組織づくりの舞台裏

中村誠氏
学生時代にインターネット調査会社を起業し、ライブドアグループに売却した後、電通に入社。クライアントのビジネス開発や海外進出、イベント事業、PR領域など各種のプロジェクトを担当してきた。現在は、中小企業の事業拡大や地方創成プロジェクトのサポートに従事する。

──現在、磯部塗装が強化しているのはどのような部分ですか?

磯部:人材を十分に確保することと、幹部を育てることです。この2つが、今後、業界で勝っていくために必要な条件だと考えております。

塗装会社の重要な役割の一つが、インフラの整備です。今、国内では橋梁など、交通インフラを中心とした建造物が老朽化してメンテナンス需要が高まる一方、建設業界はプレーヤーが激減し、工事をすること自体が難しくなってきています。そこで重要になるのが、全国の拠点における人材の確保です。

また、磯部塗装は、2023年には売り上げが54億円、社員数は264人までに増えました。人を増やしていく中で重要になってくるのが、「経営の文脈を理解したうえで現場を運用できる幹部」の育成です。その幹部になるべき人の採用も、課題の一つ。中村さんに相談して、2024年からは電通の採用ブランディングチームに入っていただくことにしました。

中村:電通のチームメンバーは、磯部社長だけではなく、現場の社員にも話を聞き、採用のコンセプトメーキングを行っています。

磯部:そう、ものすごく丁寧に社員の生の声を聞いてくれていますよね!実は、そういう細やかなヒアリングをしてくれるのは中村さんだけかと思っていました(笑)。地道で地に足のついた仕事ぶりを拝見し、私の中で電通へのイメージがだいぶ変わりました。

中村:マーケティングの専門家である電通は、買っていただくお客さまと、作り手の思いをつなぐことを仕事にしています。徹底的にお客さまの視点に立つには、地道にヒアリングを重ねるのは当然のことなんです。これを採用に置き換えると、経営のステークホルダーである社員の皆さんの声を聞くということになります。人の心情や本質、気持ちに寄り添っていくのは、私たちの得意分野ですから(笑)。

――磯部塗装はどのような未来像を描いているのでしょうか?

磯部:当社は、再建のめどが立ち始めた2013年時点では売り上げ約23億円、社員数は60人ほどでしたが、2024年時点で売り上げが65億円、社員数は280人ほどにまで増えました。M&Aを重ね、グループ6社の合計売り上げも今期見込みで200億円、社員数は500人になります。

現在は、買収した会社も含めて一貫した経営を行うために、ホールディングス化を見据えて次の一手を電通に相談し始めています。中小企業の私たちは、どうしても思考の限界があり、枠の捉え方が狭くなってしまいますが、中村さんはじめ電通の皆さんは、毎回、視座を上げてくれるような話をしてくださいます。

中村:ありがたいお言葉です。磯部塗装さんとの取り組みが評価されて、2025年に「電通エイトアイズ」という、中小企業経営者をサポートする新サービスをリリースしました。電通エイトアイズは、各専門領域の社員が経営者の“壁打ち相手”になるサービス。私たちならではの強み、例えば経営者の言葉を分かりやすく言語化する力や、マーケティングのノウハウを活用して、一般的な経営コンサルタントとは異なる視座を提供できます。今まで見えていなかった会社の課題や、成長を早めるポイントなどの気づきが得られるはずです。

磯部:うれしいのは、中村さんをはじめ電通の皆さんは、私たちのことをただの取引先ではなく、仲間・身内という認識で接してくださることです。それが伝わってくるので、私自身も、社員も自分の中の思いを正直に伝えられる。そして、電通の皆さんはその思いに確実に応えてくれる。そんな好循環があると思っています。

中村:そう言っていただけるとうれしいです。電通の取引先は大手企業、という先入観をおもちの方も多いと思いますが、まったくそんなことはありません。私たちが、大企業や中小企業など、あらゆる経営者とのコミュニケーションにより培ってきた経験や知識をフル活用していただくことで、日本の中小企業を元気にしていきたいと思っています。

磯部:今後とも、私たちの良き兄貴分として、ご協力をよろしくお願いします!

中村氏、磯部氏

中堅・中小企業支援プログラム「電通エイトアイズ」
先行事例紹介セミナーを2025年8月7日(金)開催

 
●実施日時 :2025年8月7日(木) 15:00~16:30
●登壇者  :磯部武秀様(磯部塗装株式会社 代表取締役社長)
       中村誠(株式会社電通 第6マーケティング局プロジェクト開発部プロデューサー)
●実施方式 :会場リアル参加 or  ウェブ参加(Teamsでの実施/URLは後日送付します)
●実施会場 :電通関西オフィス
      (大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト)
●会場定員 :約30人(お申込み多数の場合は抽選となります)
●参加費  :無料
●申込先  :下記URLより申込みください。
       https://forms.office.com/r/tE2kyySE23
●申込締切 :2025年7月25日(金)17:00
●その他  :参加者が極端に少数な場合などは中止の可能性があります。
       中止の場合は、7月30日(水)までにご連絡します。
●問い合わせ:電通 第6マーケティング局:6mk_prokai@group.dentsu.co.jp
 

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当たり前を超えていく。持続的な事業成長と駅の未来とは?

企業として変えてはいけないものを守りながら、変化していくために大切なこととは?

駅を基点に、地域とつながる新しいビジネスが続々と生まれています。2025年4月に誕生した「エキュート秋葉原」は、ロボットの活用、オールキャッシュレスの集中レジ、駅の忘れ物の傘をアップサイクルした買い物かご、遊ぶと地域貢献ができるゲーム機などを導入した次世代型の新しいエキナカ商業施設。また、翌5月に高輪ゲートウェイ駅のイベントスペース「マチアイ」に期間限定でオープンした「earth song」は、「地域と花が循環する仕組み」をテーマに、地域と資源の新しい循環をつくるアップサイクル事業に取り組んでいます。

本記事では、前述の2つのプロジェクトを推進したJR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニー(以下、JR-Cross)常務執行役員 営業部長 新事業戦略部担当の江越弘一氏、新事業戦略部長の播田行博氏と、プロジェクトに伴走した電通第1ビジネス・トランスフォーメーション局の加藤剛輔氏、三浦旭彦氏が、持続的な事業成長をテーマに語り合います。

こちらからインタビューのダイジェスト版をご覧いただけます。

 

電通 加藤氏、JR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニー 播田氏、江越氏、電通 三浦氏
(左から)電通 加藤氏、JR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニー 播田氏、江越氏、電通 三浦氏

常に地域に熱い想いを注いできた。これまでの20年間の延長上にある未来の姿

三浦:本連載ではJR-Crossさんが推進し、電通グループが伴走して開業した新しいコンセプトのエキナカ商業施設「エキュート秋葉原」と、高輪ゲートウェイ駅に誕生した地域と資源の循環を生み出すお店「earth song」を軸に、各プロジェクトの成功のカギをひもといてきました。今回は双方を横断して、プロジェクトの背景や事業戦略、想いにフォーカスして議論できればと思っています。

最初に、JR-Crossさんが思い描いている成功のイメージをお伺いします。例えば、今から10年後、新事業が次々に話題となり、テレビをはじめとするメディアからたくさんの取材を受けるようになっていたとしたら――。どのような内容の取材になっていると思いますか?

江越:率直に言うと、10年後くらいにはあえてメディアに取り上げられなくなっているくらいのほうが良いなと思っているんですよね。毎年新しい施策を打ち出し続けて、「またJR-Cross?」「JR-Crossならそれくらい当たり前でしょ」という社会的認識をされているのが理想です。

ただ、10年後となると、時代は相当変化していますよね。当然、現在実施している施策をそのまま続けていても、お客さまにはまったく響かないと思います。だから10年後も、今と同様10年後の若手を中心とした新しい世代が自由な発想で各施策にチャレンジしている未来を想像しています。

江越氏

三浦:組織内で世代交代しながら、企業としての視座を永続的につないでいくことを目指されているわけですね。今回、電通は「エキュート秋葉原」と「earth song」のプロジェクトをご一緒させていただきましたが、JR-Crossさんは若手や中堅社員を含めて、全員が地域に対して非常に熱い想いを持っていることに驚きました。

江越:地域への熱い想いは、JR-Crossの原動力ですね。今年度、エキュートは20周年を迎えましたが、実は20年前、「新しいエキナカ商業施設をつくろう!」と新事業を立ち上げて初代店長となったのが私です。それ以来、「地域と一緒に成長していきたい」という揺るぎない想いをずっと持ち続けていました。

地域のにぎわいに貢献したい。この一心で、さまざまなアイデアを出し、施策を打ってきました。この経験を積み重ねてきたことが、JR-Crossの財産なのだと感じています。

加藤:20年の間に、各地域はかなり変化しましたよね。ですから、単に現在の課題にフォーカスするだけでなく、「その次にどう変わるか」を見据えた施策が求められます。地域全体を見つつ、多様なステークホルダーにも目を向け、一歩先を行く新しいアジェンダをどのように作れば、地域全体がハッピーになれるのか。電通としても、常に意識しているポイントです。

播田:また、10年後といえば、エキュートが30周年を迎えるタイミングです。一般的な経営サイクルを考えると、場合によっては一度何らかの危機を迎えることもあり得ると思います。そのときに重要になってくるのが、「なぜ、この地域にエキュートがあるのか?」「その価値は、地域にしっかり受け入れられているのか?」という視点です。常に地域に溶け込み続け、地域の中に存在する必然性を確立していかないと、10年後の成功は成し得ないと考えています。

播田氏

江越:地域によって、必然性の要因はまったく違いますからね。だから今回も、「秋葉原らしさ、高輪ゲートウェイらしさとは何だろう?」という根っこの部分から、徹底して探究しました。

播田:特に現場メンバーは、「街を歩いて、地域の方々が何を求めているのかに耳を傾ける」ことを実践しています。その上で、何度もディスカッションを重ねて、アイデアを広げていくんです。

三浦:歩いてみないと、分からないことがたくさんありますからね。この視点にはとても共感しますし、大事なことだと思います。私もメモを取りながら秋葉原を歩きまくって、アイデアを考えました。

「安全・安心を守る」という使命感を土壌に、パーパスの大幹を育てる

三浦:地域の生活者と一緒に新しいビジネスを創造してきたJR-Crossさんと、人の心が動く生活者発想で新しい視座のビジネス発想を創発する電通が、ワンチームで取り組めたことはとても良かったと思います。

JR-Crossさんのメンバーも、播田さんが所属する新事業戦略部だけでなく、開発や営業など、さまざまな領域からプロフェッショナルが集まりました。立場が違うがゆえに、「これは違うんだ!」と白熱した論議を繰り広げたこともありましたよね。

その様子に触発されて、「電通も負けていられない!」と私たちからも新しいアイデアをたくさん出させていただいて、2社のアイデアを共鳴させながら、一つの答えを導き出すプロセスはとても刺激的でした。

播田:そうですね。現場サイドの視点で議論するだけでなく、電通さんならではのイノベーティブな生活者発想の視点や地域に新事業を生み出すノウハウを融合させることができました。だからこそ、地域に本当に必要とされる施策が打てたのだと思っています。

三浦:電通としては、JR-Crossの皆さんが「安全・安心を守る」という使命感を強く持たれていたことにも心を打たれました。「駅という、国民の移動の要となるプラットフォームで、安全・安心が損なわれたらまったく価値はない」「この施策で、安全・安心を本当に守れるのか?」といった議論も多かったのが印象的でした。

三浦氏

江越:「安全・安心を守る」という意識は、JR-Crossに浸透する全施策の核となる考え方です。特に、デベロップメントカンパニーのパーパス「エキのひととき ちょっと、もっと、ずっと、」を実現させるためには、絶対に必要だと感じています。

例えば、事業の中心にパーパスという大きな幹があるとすると、その幹から伸びている枝葉が各施設によるさまざまな施策。まっすぐ伸びる枝もあれば、ユニークな形に曲がっている枝もあるんです。

また、幹を太く成長させるために欠かせないのが、「安全・安心を守る」という土壌です。何か迷ったときには幹の存在意義に立ち返り、安全・安心を実現する枝葉を広げていくといったサイクルで事業を成長させているんです。

播田:パーパスが真ん中にあるから、最初に聞いた段階では採用に至らないと思う意見が出ても、一度はすべてを受け入れざるを得ないんですよね。「自分が気づいていないだけで、パーパスを守るためにこの意見も重要かもしれない」「重要なら実現させないといけないし、難易度はかなり高くても実現できる方法があるかもしれない」といった議論が巻き起こり、あらゆる可能性を模索する。だから、変革するための新たな視点が生まれやすいのだと思います。

江越:このように電通さんと異なる視点を掛け合わせた刺激的なディスカッションを重ねることで、われわれのアイデアの引き出しは確実に増えましたね。地域が違うと、施策の向き合い方やアウトプットの仕方はまったく異なります。秋葉原の施策としてはお蔵入りしたけれども、アレンジ次第では別の地域のプロジェクトに応用できる可能性は十分ありますから。

三浦:それは良かったです。今回、面白いアイデアがたくさん生まれたので、皆さんから出た70個以上の施策案を、「アイデアブック」として1冊にまとめさせていただきました。業務中にパラパラめくるだけでも刺激になるし、視点を集中させたり、逆に拡散させるための材料になったらいいなと思って作りました。

播田:アイデアブック、本当にありがたかったです。JR-Crossでもこれまでのノウハウを蓄積しているとはいえ、内部で積み上げたものだけに固執していたら変化はありません。「外部の意見を取り入れると、どう変化するのか?」という視点の重要性を、改めて感じることができました。

変化を恐れない、パートナーとのイノベーティブな新しい化学結合で当たり前を超える

三浦:では、未来の事業に目を向けてみたいと思います。これまでの“当たり前”を超えていくための課題は、何だと思いますか?

江越:時代とともに、われわれのスキームも変化させなければいけませんよね。これまでの20年間に積み上げてきたものは当然、「是」だと思っていますが、だからといって、企業の成長が未来永劫(えいごう)に約束されているわけではありません。

大切なのは、変化を恐れないこと。そして、良質なアイデアを数多く出していくことこそが、今、われわれが問われている進化のかたちだと思っています。そのために、電通さんをはじめとする外部パートナーの方々とのコミュニケーションを通して、お互いのアイデアを掛け合わせていく。この引き出しの多さが、新規事業を開拓していく上での生命線だと感じています。

播田:その取り組みの一つとして今回、アイデア出しのフレームワークを電通さんと一緒に開発できたのは、非常に有効だったと思います。「ひらけ、エキナカ」というキーワードも、ワークを通じた議論の中で生まれましたから。

江越:そして、一つの成功事例が生まれると、その手法をJR-Cross内で共有して他のプロジェクトに横展開させていくことも可能になります。例えば、エキュートの店長ミーティングで施策事例の報告があると、「なぜ、この施策がうまくいったのか?」「自分たちも挑戦してみよう!」といった議論が始まるんです。

その数カ月後、似た手法の施策が別の店舗で立案されることも多くありますが、単なる模倣ではないんですよね。絶対に、その地域らしくアレンジされている。だから、お客さまからは違う施策に見えると思います。

加藤:それは、JR-Crossの皆さんがそれぞれの地域を深く理解しているからですよね。何が課題で、どういった施策が受け入れられるのか。店長だけでなく現場の若手メンバーも含めて、全員で同じ目線で取り組んでいるのもポイントだと思います。

加藤氏

若手の自由な発想を生かし、アイデアを広げる方法

江越:理想は、アイデアフラッシュも含めて全て若手に任せること。グループ外ともコミュニケーションを取って情報収集をして、もっと自発的に発信してもらいたいですね。そのために、「まだまだいける!」「ほかにアイデアはないの?」と彼らをたきつけるのが、われわれの仕事だと思っています。

播田:例えば、「この人と話をしてみたい」というキーパーソンがいたら、迷わずに行動してみる。実際に飛び込みで扉をたたき、話を聞きに行ったことをきっかけにディスカッションが始まり、立案・実施に至った施策もあります。

江越:東京・神奈川の複数店舗で実施したフェア「MATCH-UP MATCHA -抹茶に出会うひととき-」も、その一つです。新橋エリア担当が、地域に新しくできた伊藤園さんのミュージアムに、「何か面白いことができるかもしれない。行ってみよう」と訪ねたのが最初の一歩でした。

当の本人はそこまでの広がりを想像していなかったようですが、その裏では、上長が「もっと面白いことができるんじゃないの?」とたきつけていたんですよね。その流れで、「新橋だけでなく、有楽町、渋谷、横浜、藤沢などのチームにも話して、合同でやってみよう!」と、どんどん広がっていったという経緯があります。

加藤:自ら仕掛けていく姿勢が素晴らしいですね。自分から率先して仕事をつくっていく。従来、飛び込み営業というとネガティブなイメージがあったと思うんですが、JR-Crossの皆さんは完全に楽しんで実践していますよね。

三浦:同感です。既存の方法にとらわれずに常に変化し、挑戦し続けることは本当に大事だと思います。今後、例えば地域の皆さんにJR-Crossさんのアイデアを公示して、「一緒にやりませんか?」と声をかけてみるとか……。オープンイノベーション型で地域とのつながりをつくっていくのも良いかもしれませんね。

江越:それは、とても面白そうですね!今後も電通さんとJR-Crossのアイデアを掛け合わせて、次々と“当たり前”を超える取り組みを仕掛け、「エキのひととき ちょっと、もっと、ずっと、」というパーパスを実現していきたいと考えています。

播田:地域の方々にお話を伺うたびに感じるのは、駅への期待の大きさです。だからこそ、その期待以上のものをご提供しなければなりません。われわれのアイデアと、地域の方のご要望を融合させて、本当に喜ばれる施策を考えたいと強く感じました。

三浦:今後、ますます、AI含めたDXが加速する世界で、リアルの価値がより重要になっていくと予想しています。デジタルではできないもの――人と人との温かいコミュニケーション、地域に根差す交流のプラットフォームを駅という日本国民のプラットフォームを基盤に、JR-Crossさんだからこそできる唯一無二な提供価値を創っていけば、日本全体がもっと元気になるはずです。そういう新しい日本の未来づくりに電通もご一緒できたらと思っています。

座談会風景
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