ハノイで和牛イベント=ベトナム顧客に知識や技術を提供―サクラフーズ

【ハノイ時事】香港を拠点に和牛の卸売業を手掛けるサクラフーズは16日、ベトナムのハノイで和牛の知識を深めるイベントを開催した。日本人シェフが和牛の各部位を使用した調理方法を紹介し、鮮度や品質を保つための保管方法などを解説した。

 サクラフーズはハノイに支店を構え、熊本産ブランド肉「和王(WAOH)」をベトナム国内のレストランに販売している。今回のイベントには、同社と取引のある企業10社25人が参加した。

 イベントを主催したサクラフーズの薗田昌己社長は、「ベトナムでは和牛の人気が高まっているが、和牛と言えばステーキのイメージが強く、レストランが仕入れる部位には偏りがある」と説明。「イベントを通じて、より多くの部位やそれぞれの部位に適した料理への知識を深めてもらいたい」と語った。

 ハノイ市内の日本食レストランのシェフ、ダオ・バン・ロアートさんは「肉をゆでてサラダにする調理方法は新しい発見であり、多くのことを学ぶことができた」と感想を述べた。すしレストランのシェフであるファム・ミン・クアンさんは「ベトナムの一般人にとって和牛は高価であり、多くの人に広めることは難しいが、和牛のさまざまな部位を使用すれば手頃な価格で提供できるかもしれない」と期待した。

 サクラフーズは今後もベトナム顧客に向けて、和牛の知識や調理方法などを伝えるイベントを定期的に開催する。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/07/21-14:33)

人を育てられない現場を変える…人手不足時代の“技術継承”を救うマニュアル革命

●この記事のポイント
・人口減少が進む日本にあって、企業が生き残るためには、属人的なノウハウを誰もが教えられる「再現性のある仕組み」に変えることが不可欠。多くの地方企業では、OJTに頼った教育が中心で、熟練者の技術やノウハウが言語化されておらず、新人が育ちにくい状況にある。これが離職率の高さや、教える側の疲弊にもつながっている。特に多国籍化が進む現場では、この問題がより深刻化している。
・スタディストは、「人が減っても事業が回る社会」の実現を目指している。同社が提供する「Teachme Biz」は、動画や画像を使ってマニュアルを簡単に作成・共有できるツール。これを利用することで、属人化していたノウハウを「形式知」として可視化し、新人が短期間で業務を習得できるようになる。

 人口減少、採用難、技術継承の断絶──。地方企業が直面する人手不足の裏には、「仕組みがない」ことによる悪循環がある。長く続いてきた属人化されたオペレーションは、今や新しい担い手を遠ざけ、世代交代をも阻んでいる。

 現場の熟練の技術をテクノロジーの力で継承することはできるのか。現場のマニュアル化の実態を、スタディスト代表取締役の鈴木悟史氏に聞いた。持続可能な地方の技術継承のヒントを探る。

目次

昭和のプロセスが残る現場──地方企業の構造的課題

「地方ではどの業種でも、『人が足りない』どころではなく、もはや“人材の奪い合い”です。それに伴い、給与水準が上昇し、収益性が悪化。業績に直接打撃を与えています」

 スタディスト代表取締役の鈴木悟史氏は、現場で目にする課題をそう語る。

 同社は、業務マニュアルの作成・共有ツール「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」を提供するスタートアップだ。人手が不足する現場において、無駄のない合理的な業務オペレーションを実現するためのサービスである。これまで主に都市部で使われてきたが、近年は地方での導入も急速に進んでいる。

 とりわけ引き合いが多いのは、昭和時代に設計された非効率なプロセスや、属人的な手順が色濃く残る現場だ。変化に向けた第一歩すら見えないまま、OJT(On-the-Job Training/実地訓練)に頼った教育が常態化している。マニュアル自体は存在していても形骸化し、業務が手書きのノートで共有されているケースも珍しくない。

 たとえば、食品製造の工場は外国人労働者が多く集まる代表的な現場のひとつだ。かつては技能実習生の受け入れによって特定の国の出身者が多かったが、現在は国籍もばらばらな“多国籍軍”の様相を呈している。

属人化と「仕組みの空白」が生む負の連鎖

 地方の現場では、マニュアルの整備が進まず、属人的な業務のやり方が続いている。新人への教育も、ベテランの経験や勘に頼ったOJTが中心だ。技術や手順を言語化できないまま、「見て覚えろ」と伝えるしかない状況が続く。その結果、外国人や未経験者には十分に伝わらず、教える側も疲弊してしまう。

 店舗や工場では、教育に人手が割かれ、通常業務との両立が難しくなる。店長が育成にかかりきりになることで、他の従業員がフォローを受けられず、不満が高まるケースも多い。

 属人化された環境では、新人の教育に時間がかかり、結果として離職が相次ぎ、教える側まで離脱してしまうケースもある。こうした“負のループ”が、地方の現場に深刻な構造的課題として広がっている。

「制服の着方や手の洗い方から教えなければならない。でも、教える人の手が足りない。やり方がわからないまま教えられ、教える側も疲れて辞めていく。こうした現場には、“仕組みの空白”が広がっています」と、鈴木氏は語る。

 製造現場だけではない。たとえば鈴木氏は、地方の飲食店で貼られた「担々麺やめます」の張り紙に、危機感を抱いたという。

「地方に行くと、『今日は人が足りないので、担々麺やめます』といった張り紙を見かけることがあります。人手不足のため、注文数を制限せざるを得ないのだと思います。さらに、インバウンド需要の高い地域では、より条件のよい仕事に人が流れてしまい、店舗が立ち行かなくなりつつあります」

 外国人労働者や短期のスポット労働者を頼るとしても、教える人の手が空かなければ何もできない。「人手不足」と一言で語られがちだが、その本質は「雇っても業務を引き継げる人がいない」ことにある。

 経営者が採用に動いても、外国人材やパートタイム人材の受け入れには教育コストがかかる。現場は疲弊し、教える側も含めて人が辞めていく。この悪循環が繰り返されている。特に属人化が進んだ職場では、新人の教育に手がかかり、定着せずに辞めていく。教育に割ける余力も限られ、教える側も疲れ果てていく。

キーパーソンは「声の大きな人」

 新人が辞めるだけでなく、教える立場のベテランまで離脱すれば、現場に蓄積されてきたノウハウの喪失は避けられない。とはいえ、テクノロジーの導入は決して簡単ではないと、鈴木氏は指摘する。

「社長がいくら積極的でも、現場のスタッフが実際に使わなければ意味がありません。システムを導入しても、現場の人たちがその意義を感じなければ、なかなか根づかないんです」

 スタディストでは、こうした現場の反応の壁を超えるため、実際に現地へ赴き、作業風景を撮影。動画からマニュアルを生成し、その場で見せることで、納得感を得てもらう工夫をしている。

「実際にその場でやって見せると、『これなら自分にもできそうだ』と感じてもらえます。現場の“声の大きな人”を納得させることができれば、組織は一気に動き出すんです」

 こうした現場に寄り添った支援があってはじめて、テクノロジーの力が真に活きてくる。

 たとえば、ある部品メーカーでは、新人の5割が1年以内に離職していた。熟練技術者が新人に技術を教えるのに1年を要し、習得も難しいうえに定着しない状況が続いていた。そこで同社は、「Teachme Biz」を活用して業務をすべて可視化し、マニュアルとして形式知化することを決断した。

 ただし、シニア層の技術者にとっては、マニュアルを一つひとつテキストで入力する作業は非常に負担が大きい。そこで「Teachme Biz」を使い、日常の作業を動画と音声で記録。その内容をシステムに取り込み、実行ボタンを押すだけで、動画マニュアルが自動で生成される仕組みを導入した。

 動画には文字起こしが付き、さらに自動翻訳機能により、外国人労働者でも母国語でマニュアルを確認できる。「Teachme Biz」の導入で、1年かけていた工程がおよそ1カ月で習得可能になった。従業員の定着率も50%から90%へと大きく改善したという。

「頭の中にしかなかった非構造的な手順を可視化できることが、何よりの強みです。こうして蓄積されたノウハウは、将来的にはチャットボットからも検索できるようになり、教育コストはさらに下がっていきます」

脱・属人化は避けられない流れに

「『Teachme Biz』はあくまで手段であり、私たちが目指すのは“人が減っても事業が回る社会”です」

 鈴木氏が掲げるのは、人口が4割減ってもGDPが上がる日本の実現だ。本当に付加価値を生む業務を見極め、マルチスキル化と再現性のある仕組みによって業務を効率化するためには、個人の熱意ではなく“仕組みそのもの”が不可欠だという。

「自動翻訳や読み上げ機能、AIによる支援など、どんどん機能は増えていますが、それは“どんな課題をどう解くか”を一つひとつ考えてきた結果です。テクノロジーは、利用者の課題に寄り添って進化しているのです」と鈴木氏は語る。

 最近、鈴木氏が地方でよく耳にするのは、「スキルアップに応じて給与を払いたいが、その原資がない」という経営者の悩みだ。人件費の上昇、採用競争の激化、そしてノウハウの流出。多くの企業が今、初めて“仕組みの必要性”に本格的に向き合い始めている。

 こうした中で、「Teachme Biz」のようなツールを導入する企業も着実に増えている。さらにスタディストは今年、BPO事業者(Business Process Outsourcing/業務プロセスを専門的に外部委託する事業者)をM&A(合併・買収)し、マニュアル整備にとどまらない“業務の合理化支援”にも乗り出した。

 重要なのは、「テクノロジーを導入すること」そのものではない。人口減少が進むなかで、再現性のある仕組みをどう構築し、いかに業務を回していくかという発想を、企業が本気で受け止められるかが問われている。

 現場に埋もれている知識を形式知として残す。人に頼らずに、誰もが教えられる仕組みを持つ。それは今、あらゆる企業にとって“生き残るための前提条件”になりつつある。

(寄稿=相馬留美/ジャーナリスト)

東京23区、高層ビル開業ラッシュでオフィス供給過多の懸念→逆に空室率が低下の不思議…「魅力的なオフィス」求める企業が増加

●この記事のポイント
・東京23区のオフィス空室率、前月比0.05ポイント低下の2.15%。千代田区は0.97%
・オフィス需要は一時的な調整局面を経て、着実に増加基調へと転じた
・企業による立地・設備面で優れた物件への移転・増床ニーズが上昇

 渋谷駅周辺や東京駅周辺などで大規模開発が進み高層オフィスビルの建設・開業が相次ぎ、オフィスの供給過多を懸念する見方もあった東京。そうした予測を裏切るかのように、オフィス空室率が極めて低い水準で推移している。ザイマックス総研が発表した6月の「オフィス空室マンスリーレポート」によれば、東京23区のオフィス空室率(対象:延床面積300坪以上のオフィスビル)は、前月比0.05ポイント低下の2.15%であり、賃貸面積のうちの募集面積の割合を示す募集面積率は3.28%(同0.03ポイント低下)だった。なかでも都心5区の空き室率は1.79%(同0.06ポイント低下)と低さが際立っており、千代田区(0.97%)のように1%を切る区も出ている。コロナ禍でリモートワークが拡大・定着し、人々の働き方が変容して“オフィス離れ”が加速するとの見方もあったが、なぜ逆の現象が起きているのか。また、今後も空室率低下が進んで企業が“オフィスを借りにくい”状況になるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

対面での打ち合わせやチームでの協働作業が再び重視

 同研究所の調査によれば、大規模なビルのほうが空室率が低い。大規模ビル(延床面積5,000坪以上)は2.01%、中小規模ビル(延床面積300坪以上5,000坪未満)は2.31%となっている。東京23区では大規模開発が進行中だ。渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内では、東急不動産などが「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)」と定めた大規模再開発が進行。「渋谷ストリーム」「渋谷スクランブルスクエア」「渋谷ソラスタ」「渋谷フクラス」「Shibuya Sakura Stage(サクラステージ)」など高層オフィスが次々と開業。東京駅周辺では八重洲、日本橋地区の開発が進行中であり、23年に「東京ミッドタウン八重洲」が開業し、28年には高層ビルとしては日本一の高さとなる「トーチタワー」が開業予定。日本橋1丁目中地区でも高層ビルが開業予定だ。

 これ以外にも、数年前にひと段落ついた丸の内地区の再開発でも多くの高層ビルが開業し、2年前には港区に「麻布台ヒルズ」が開業。都内ではオフィス供給過多による空室率の上昇を予想する見方も強かったが、なぜ逆に低下しているのか。ザイマックス総研は次のように説明する。

「現在の空室率の低下は、複数の要因が重なっていると考えられます。まず、コロナ禍を経て、企業の人員構成や働き方の見直しが進み、オフィス需要は一時的な調整局面を経て、着実に増加基調へと転じています。出社回帰の流れが強まっていることに加え、対面での打ち合わせやチームでの協働作業が再び重視されるようになったことで、物理的なワークスペースの重要性が再評価されているのが背景にあります。出社回帰の動きは、必ずしも100%出社ではなくても着実に強まる傾向にあります。

 こうしたなか、社員の生産性を高めるための『より良いオフィス環境』を求める動きが活発になっており、企業による立地・設備面で優れた物件への移転・増床ニーズが高まっています。採用活動の観点でも、快適かつ魅力的なオフィス空間を持つことが企業の競争力につながると考える企業が増えているという面もあります。製造業でさえ、地方立地の工場に併設された研究所では研究職の採用が厳しいという声があります。

 また、出社回帰に伴い、入居企業内での会議室不足が顕在化しており、外部の貸会議室を一時的に利用するケースも増加しています。こうした需要も、オフィスの有効活用やスペース拡張の下支えになっています」

空室率や賃料、成約ペースに格差が生まれていく可能性

 では、今後も低い空室率が続くと予想されるのか。

「短期的には、空室率は現在の低水準で安定的に推移すると見込まれます。ただし、先行きについては以下の点に注意が必要です。例えば、米国の通商政策をめぐる不透明感などにより世界経済の先行きに対する警戒感が高まれば、企業の投資意欲が抑制され、オフィス需要にも影響が及ぶ可能性があります。また、今後も都心部では大規模オフィスビルの新規供給が続く予定であり、大型ビル間の競争はより一層激化していくと考えられます。こうしたなかで、立地やビルスペックなどで明確な差別化が図られている物件と、それ以外の物件との間で、空室率や賃料、成約ペースに格差が生まれていく可能性もあります」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=ザイマックス総研)

メディアが大変革期を迎える中、人々が「頼り」にするメディアとは

「情報メディア白書2025」(電通メディアイノベーションラボ編、ダイヤモンド社刊)が4月23日に発行されました。情報メディア産業の全貌を明らかにするデータブックとしてまとめられた本白書の発行は、今年で32年目となります。

巻頭特集の「メディアの大変革期、未来を形作る新たなコミュニケーションの地平」では、以下の4つの記事において情報メディア市場や人々の行動のトレンドを解説しています。

  1. メディアの多様化が進む中、人々はどのようなメディアを「頼り」にしているのか
  2. 現代的インフルエンサーの転回:マーケター化、ポッドキャスト、小さなプラットフォーム症候群
  3. 「推し活」を広告・マーケティングに活かすヒントを探る
  4. メディアスタディーズ~新聞の今とこれから~

本連載では、この巻頭特集の内容を一部紹介します。今回は「メディアの多様化が進む中、人々はどのようなメディアを『頼り』にしているのか」をもとに、人々のメディアとの関与の様子をひも解いていきます。

<目次>

大変革期を迎えるメディア

年齢を重ねるにつれて「個人」から「社会」へ。幅広い興味関心ジャンルの中、移り変わる対象

全ての年代が、ニーズに合わせて新旧さまざまなメディアや情報源を利用する

若年層のメディア利用の中核を占めるSNS・ブログ、動画・音声配信

40代が「分水嶺」!?年代によって大きく異なる「“頼り”にするメディア」

多様化するメディアと人々のつながりの未来

大変革期を迎えるメディア

日本のラジオ放送は1925年に始まりました。音声情報を電波でリアルタイムかつ多くの人に届けるメディアの登場が、人々の生活や娯楽を大きく変えたことは想像に難くありません。ラジオ誕生から100年の節目を迎えた現在、メディアはどのような時代を迎えているのでしょうか。

通信インフラやデジタル機器の進化を背景に、2000年代より急速に浸透したインターネットは、人々の情報取得、娯楽、そしてコミュニケーションのあり方を変貌させました。これは日本に限ったことではなく、例えば2024年9月の英国のOfcom(放送通信庁)の発表を見ても明らかです。

16歳以上を対象とする最新調査において、71% は何らかの形でオンラインのニュースを利用すると回答し、その比率が初めてテレビ(70%)を上回りました。Ofcomはこの状況を、「テレビはニュースの主要な情報源としての王座を失う(”TV loses its crown as main source for news”)」と表現しています(※1)。

※1 出典:Ofcomウェブサイト、2024年9月10日付発表記事”TV loses its crown as main source for news”

 

直近では、私たちは日常生活への大きな制約を伴うコロナ禍を経験しました。この局面においてインターネットは多くの人にとって不可欠な生活インフラとしても機能しました。メディアとしての役割もさることながら、生活の利便性向上のためにもインターネットの重要性は増しています。このような時代の変化に応じて新聞、雑誌、ラジオ、テレビも進化を続けています。

他方、近年ではインターネットに関連するさまざまな課題が指摘されています。例えば、利用者の興味・関心に基づきコンテンツを表示するアルゴリズムは、パーソナライズされた体験を実現する一方、過度に最適化された情報に接し続けることによるフィルターバブルやエコーチェンバーが懸念されています。

また、行き過ぎたアテンション・エコノミー(※2)による情報空間のゆがみも指摘され、多様な意見や価値観に触れる機会をいかに確保できるか、各所で議論が進行しています。

※2  アテンション・エコノミー = 情報過多の社会において、(各情報に対する)生活者の興味や関心自体が経済的な価値をもつとされる経済モデル。

 

現在、メディアはかつてない変革の時代を迎えており、その将来像を明確に描くことは容易ではありません。しかし、現時点における人々とメディアとの関係性を深く理解することで、未来を見通すための重要な手がかりが得られるはずです。

年齢を重ねるにつれて「個人」から「社会」へ。幅広い興味関心ジャンルの中、移り変わる対象

ここからは、電通メディアイノベーションラボが2024年6月に実施した「頼りにするメディアに関する調査」の結果をもとに、人々とメディアの関係性について考察します。多くの人は自身の興味関心を満たすような情報や体験を得るためにメディアを利用するのではないでしょうか。本調査では、人々がどのようなジャンルの事象に興味関心を持っているかをたずねました。

図表1は主要な興味関心ジャンルと属性の関連を可視化する目的で、男女10歳刻みの属性についてコレスポンデンス分析(※3)を行った結果を示しています。

※3 コレスポンデンス分析=カテゴリーデータの関係を視覚化する解析手法。カテゴリーデータ間の「距離」を測定し、その「関係性」を視覚化してデータのパターンや構造を視覚的に理解することができる。関連性が強いものは近くに、弱いものは遠くにプロット(布置)される。

 

横軸は、右に「国の政治・行政」、「外交・安全保障」などがあり、左に「美容・コスメ」「アイドル」「ファッション」など個人の嗜好が大きく影響するジャンルを配置することから、<個人⇔社会>を表すと解釈されます。

縦軸は上に「美容・コスメ」「医療・介護」「ドラマ」「料理・レシピ」などソフトなジャンル、下に「ゲーム」「自動車・バイク」「テクノロジー・IT」などのハードなジャンルがあり、<ソフト⇔ハード>を表すと捉えられます。

情報メディア白書2025#1_図版01

属性別の傾向を見ると、女性はより上側の象限(ソフトな領域)のジャンルと関係性が近いようです。年齢層別では、若い女性ほど「個人」の嗜好性が強く反映されるジャンルに近く、年齢が上がるに伴い、右側のより社会性の強い領域のジャンルへの関心をもつことがわかります。男性は総じて下側の象限(ハードな領域)のジャンルに近く、年齢層別では女性と同様に若年層ほどより身近で趣味性の高いジャンル、高年齢層になると社会事象に関心がシフトします。

このように年齢によって人々の興味関心の対象が異なるのは、個人の嗜好性もさることながら、ライフステージの変化やそれまでの経験が影響していると考えられます。この幅広い興味関心を満たすような情報や体験を求めて人々はメディアに接していると考えられます。

全ての年代が、ニーズに合わせて新旧さまざまなメディアや情報源を利用する

テレビ、新聞、ラジオ、雑誌は幅広いニーズに応える多彩なジャンルのコンテンツを長らく届けてきました。加えて、インターネットではさまざまな主体がテキスト、画像、音声、動画という形式でコンテンツを発信しています。そこで本調査では、78のメディアや情報源(テレビの主な番組ジャンルを加えると82)の利用状況を確認しました。

図表2はふだん利用するメディアや情報源の上位20項目をその利用頻度とともに示したものです。

情報メディア白書2025#1_図版02

1位は「ポータルのニュースサイト」(70.8%)、次いで「民放の番組」(69.8%)、「NHK(総合・Eテレ)の番組」(53.2%)、「ネットショッピング・ECサイト」(44.4%)、「一般紙」(34.3%)が続きます。上位には従来型メディアとネット系メディアが混在し、その内容はニュースや商品・サービス情報、音楽など多岐にわたります。

また、動画共有サイト(YouTube、ニコニコ動画、TikTokなど)の「有名人(ユーチューバー、ティックトッカーなど)のチャンネル」、「友人・知人のSNS投稿やブログ」など、個人が発信する情報もよく利用されています。このような状況から、人々は情報取得や娯楽など、その時々の目的に適したメディアや情報源を選び、利用しているといえるでしょう。

若年層のメディア利用の中核を占めるSNS・ブログ、動画・音声配信

続いて、年齢ごとに日常的に利用するメディアにはどのような特徴があるのかを見ていきます。図表3は、各メディア・情報源の利用頻度シェアを「テレビ・ラジオ(放送)」、「新聞・雑誌(印刷版)」、「ネット・デジタル」、「動画・音声配信」、「SNS・ブログ」のサービス類型別に集約した結果です。

情報メディア白書2025#1_図版03

50代、60代は「テレビ・ラジオ(放送)」を最も頻繁に利用しており、電波系メディアへの依存が強いといえます。しかし年齢層が下がるに従い、「テレビ・ラジオ(放送)」のシェアは縮小し、代わって20代~40代では「ネット・デジタル」(一般的なインターネットサイトやアプリの利用)が最大です。

さらに若い15~19歳は「SNS・ブログ」のシェアが最大である点が特徴的で、これは同じ若者でも20代とは異なる傾向です。「SNS・ブログ」には個人や企業等によるSNS投稿やブログが含まれますが、15~19歳が最もよく利用するのは、友人・知人、芸能人、SNS・ネット上の有名人、ブロガー、インフルエンサーによるものです。この年代のメディア利用においては、個人が発信する情報が重要な位置を占めていることが認められます。

若者に特徴的な傾向はもう一つあります。15~19歳、20代においては「動画・音声配信」のシェアが2番目に大きいのです。その内訳をみると、やはり多く利用しているのは動画共有サイト(YouTube、ニコニコ動画、TikTokなど)の「有名人(ユーチューバー、ティックトッカーなど)のチャンネル」や「音楽配信サービス」でした。中高年層が電波系メディアによく接しているのとは対照的に、若年層はネット経由でさまざまな動画や音楽を楽しんでいる様子です。

40代が「分水嶺」!?年代によって大きく異なる「“頼り”にするメディア」

これまでどのようなメディアがよく利用されているかを年齢層別に見てきました。それでは、それらのメディアはどの程度「頼り」にされているのでしょうか。

本調査では、利用しているメディアが自分にとってどれくらい頼りになっているのかをたずねました。メディアに対する「信頼」ではなく「頼り」を切り口とした理由は、一般的なメディアイメージではなく、自身の体験に引き寄せた回答を通して、個人によって大きく異なるメディアとの向き合いの様子を明らかにするためです。

図表4は年代別に各メディア等を頼りにする度合を示したものです。調査対象メディアは回答傾向に応じて12グループに集約されています。年齢階層別にどのメディア群を頼りにしているのかはスコアと色で表され、スコアが「正」(オレンジ)であれば当該メディア群をより頼りにし、「負」(水色)であれば当該メディア群への依存度は希薄と解釈できます。

情報メディア白書2025#1_図版04
頼りにする度合(非利用者を加えた4段階)に関する回答傾向に従ってカテゴリカル因子分析を実施。図表内の数値は標準化した因子得点を表す。

50代、60代では「BS・CS/CATV」「民放番組」「NHK/新聞(一般紙)」など、従来型メディアにおけるスコアが高いという特徴が見られます。60代においてより顕著ですが、長年接してきたメディアへの信頼が厚く、若いころのメディア接触スタイルを維持していることが推測されます。

30代以下ではスコアの正負が逆転し、「音楽・音声/動画配信」「SNS・ブログ」「ネタ・まとめサイト」などのネット系メディアが頼りになっていると回答する傾向です。中でも15~19歳ではこれらのメディア群のスコアが突出して高いのに対して、30代は「比較・評価/ショッピング/フリマ/Q&A・口コミ」、従来型メディアによるネット展開を含む「ニュースサイト・テレビ・新聞・出版社の公式動画チャンネル」に加え、雑誌に由来するメディア群など、テレビ・ラジオの従来型メディアを除く幅広いメディア群において正の傾向を示すという違いがあります。

両者の間に位置する40代は、新旧いずれのメディア群への強い依存を示すことがない点が特徴的です。1975年~1984年生まれのこの世代は、学生・若手社会人のころにWindows95の登場を契機とするPC、インターネットの普及を体験し、その後のiモード、写メールなどのガラケー文化を含め、デジタル技術に真っ先に触れてきた「デジタルネイティブ世代」に相当します。

その一方で、前の晩に見たテレビ番組が友人との話題になるような子ども時代を過ごし、家では家族が新聞を読む姿に接していたことでしょう。こうした経験から40代は新旧メディアになじんでいた世代にあたり、メディアとの向き合い方において分水嶺ともいえるポジションを確立していると考えられます。

多様化するメディアと人々のつながりの未来

かつてマスメディアが主要な情報源であった時代と比べ、現代はメディアの多様化が進み、情報の発信主体も個人を含め多岐にわたっています。一方で、オーディエンスを取り巻く環境にも大きな変化が見られます。スマートフォン、タブレット、スマートテレビ、スマートスピーカー、スマートウオッチなど、情報端末の進化により、さまざまな生活シーンにおいてニーズに応じたメディア接触が可能となっています。

こうした状況の中、本調査により年齢層によって新旧メディアとの向き合い方に顕著な違いがあることが明らかになりました。マーケティングにおいて情報やメッセージを届けるためには、こうした傾向を的確に捉えた上、メディアを効果的に組み合わせたコミュニケーションの設計がこれまで以上に重要になっていると言えるでしょう。

現在、真偽不明な情報の流通やなりすましによる詐欺広告の拡散等などを背景に、インターネット上の情報空間の健全性をいかに維持・確保するかが重要な社会的課題として議論されています。この局面でメディアが果たす役割は大きいと考えられ、マスメディアに対してもコンテンツの質やネットを活用していかに情報を広く届けられるかが問われています。メディアに関わるあらゆる業界が、人々が安心して情報を活用できる環境整備への貢献を期待されているといえるでしょう。

同時に、受け手側のリテラシーの重要性もこれまで以上に高まっています。今後のメディア体験の変化によっては、人々の「頼り」を切り口とするメディア評価が現在のものから変わる可能性も否定できません。人々がどのようなメディアをよりどころとしていくのか―その動向を今後も継続的に注視していく必要があると考えます。

【調査概要】
電通メディアイノベーションラボ「頼りにするメディアに関する調査」
・全国インターネット調査
・対象:15~69歳(有効サンプル数:4,727)
・実査時期:2024年6月

 

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「熊本から脱炭素を進める!」地銀の挑戦

政府が2050年カーボンニュートラルの実現を掲げて以降、企業における脱炭素への取り組みは年々重視され、その強化が求められています。

現在では、中小企業も取引先をはじめとしたステークホルダーからCO2排出量の算定と情報開示を求められるケースが増加。一方で、近年提供されているCO2排出量算定ツールは大企業の利用を想定したものが多く、中小企業は予算や使いやすさの点からなかなか導入が進んでいません。

こうした状況の中、熊本県を代表する地銀「肥後銀行」は、安価で使いやすいCO2排出量算定ツール「zero-carbon-system炭削(たんさく)くん」(以降「炭削くん」)の開発・展開プロジェクトを実施。その全国販売に向けた戦略策定とマーケティングを電通が担当しています。

「炭削くん」
https://www.higobank.co.jp/business/tansaku/

地方銀行が、なぜ自らCO2排出量算定ツールを開発しようと考えたのか?また、熊本から全国へこのツールを展開するにあたってカギとなったものは?本プロジェクトを中心となって進めた肥後銀行経営企画部サステナビリティ推進室の玉木孝次郎氏、西村奈未氏、電通第1ビジネス・トランスフォーメーション(第1BX)局の槙谷吉紘に聞きました。

肥後銀行#1_メインカット
(写真左より)肥後銀行・玉木氏、西村氏、電通・槙谷

中小企業による脱炭素への第一歩を、安価な算定ツールでサポートしたい

──まずは皆さんの自己紹介をお願いします。

西村:肥後銀行経営企画部のサステナビリティ推進室に所属し、SDGsと経営品質に関わる業務を担当しています。肥後銀行内に限らず、地域のお客さまに対する取り組みも含んだ仕事です。炭削くんプロジェクトでは、主に企画・開発・プロモーションなどをメイン担当者として進めました。

玉木:同じくサステナビリティ推進室で副企画役を務めています。炭削くんプロジェクトには本推進室に所属する9人のメンバーが関わっており、私はプロジェクトマネージャーとして取りまとめやディレクションを行いました。

槙谷:電通の第1BX局は広告領域以外のコンサルティングなどでお客さまをご支援している部署です。本プロジェクトでは、戦略立案チーム、プロモーションチームなどに分かれて支援を行っており、私は電通側全体の取りまとめとディレクションを担当しました。

──地銀である肥後銀行が、企業のCO2排出量の算出ツールを開発しようと思われた背景についてお聞かせください。取引先企業や肥後銀行自体が、脱炭素の取り組みにおいて抱えていた課題も含め、お話しいただけますか。

玉木:同じ地方と言っても、SDGsや脱炭素への取り組み状況は、地域によって大きく異なります。2024年に行われた帝国データバンクの調査によると、熊本県はSDGsに積極的な都道府県の1位でしたが、これも地域としての取り組みの影響が大きいと考えています。

2021年に当行は熊本県と共同で「熊本県SDGs登録制度」を創設しました。この制度を活用しながらSDGsや脱炭素への取り組みを進めていきたいという取引先企業に対して、当行は、「SDGsコンサルティング」や「カーボンニュートラルコンサルティング」を通してサポートをしています。

これまでにコンサルティングサービスを通して約300社をご支援してきたのですが、近年は特に脱炭素に対しての課題を感じているお客さまが増えており、

「まず何から脱炭素への取り組みを始めればいいのかが分からない」
「さまざまな算定ツールがあるが、いずれも利用コストが高く導入が難しい」

といった声を多くお聞きしていました。脱炭素に向けた取り組みの第一歩は、自社のCO2排出量を把握することです。お客さまの中には、Excelなどを使って算定していた企業もありますが、その計算に必要な「排出係数」が年に複数回更新されることもあり、ヒューマンエラーを誘発したり作業負荷を高めたりする原因になっています。

そこで、算定ツールをわれわれが開発し、お客さまに低価格で提供できれば、地域のカーボンニュートラルの実現に向けて貢献できるのではないかと考え、炭削くんプロジェクトがスタートしました。

肥後銀行#1_玉木さんソロカット

「金融面の支援」だけで終わらない。地銀が旗振り役となり、脱炭素を進める意義とは

──地域の支援が地方銀行の大きな役割となる中で、特に脱炭素・SDGs推進の重要性を感じられていたということでしょうか?

西村:そうですね。肥後銀行は「私たちは、お客様や地域の皆様とともに、お客様の資産や事業、地域の産業や自然・文化を育て、守り、引き継ぐことで、地域の未来を創造していく為に存在しています」というパーパスを掲げています。

当行は金融機関ですが、金融の枠を超えてあらゆる可能性を追求し、地域課題解決に貢献するグループを目指すため、あえて「金融」という言葉を入れていません。当行の頭取は常に「地域にどのような金融機関があるかによって、その地域の未来は変わる」と話しています。だからこそ私たちは「銀行だから金融面を支援」するだけではなく、銀行分野以外でもお客さまを支援し、地域を守り育てていかなければならないと思っています。そのため、サステナビリティ推進室には全体で15人ものメンバーが配属されているのです。

玉木:とはいえ、SDGs分野の取り組みにおいて特に中小企業のネックとなってしまうのは、ファイナンスの部分です。この点を併せて支援できるのがわれわれの強みだと考えています。最初はCO2を「測る」ところからですが、その次にどう削減するかを考えるフェーズに入ります。例えば企業内設備をCO2排出量が少ないものに更新したり、サステナブルな原料への変更を検討したりする場合に資金の問題は無視できません。

炭削くんを使ってCO2排出量が分かったら、次は排出量が増える一番のポイントは電気なのか、社用車のガソリンなのかを見つける。当行ではそうしたホットポイントと企業ごとの状況に応じた削減方法をご案内し、取り組みに必要な資金面のご相談も併せて、一気通貫でサポートできます。そのためのフックとして「炭削くん」を使っていただけたらと考えています。

槙谷:中小企業の場合、資金面の問題などもあって、利益に直結しないこうした分野の取り組みを進めるのが特に難しい状況にあります。誰かが旗振り役になって推進する必要がある中で、そこを担えるのが地方銀行だと考えています。

その中で、肥後銀行ほどサステナビリティ領域に人員を割いているところは、銀行でも他業種の企業でも多くありません。また、自行でこうしたツールの開発を手掛けていること自体が、かなりレアなケース。脱炭素は、電通にとっても非常に重要なアジェンダです。今回のプロジェクトのように、地方銀行が進めるSDGsの取り組みをご支援することには大きな意味があります。

月額2200円で「Scope3」の算出にも対応! サプライチェーン全体での導入も含め4000社以上が利用する「炭削くん」の魅力

──炭削くんの概要と、独自性を教えてください。

西村:一番のポイントはやはり、中小企業の皆さまの課題として大きかった価格面だと考えています。

炭削くんの場合、Scope1・2・3※を全て測ることができ、いくつ拠点を登録しても5IDまで月額2200円です。一方で機能面は他のツールと変わらず、PCやスマートフォンから自社で使用する電気やガソリンなどの使用量を入力するだけで、下記の通りCO2排出量の“見える化”ができます。

※ Scope1・2・3:「Scope」はCO2などの温室効果ガス(GHG)の排出量を測定する範囲を表したもの。大まかに以下の3つに分けられる。

・「Scope1」
 燃料の燃焼や、製品の製造などを通じて企業・組織が「直接排出」するGHG
・「Scope2」
 他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで、間接的に排出されるGHG
・「Scope3」
 自社事業における原材料仕入れや販売後など、サプライチェーンを通して排出されるGHG

 

① 企業活動全体の CO₂排出量算定(Scope1・2・3)および可視化
② 排出量削減目標の設定および進捗管理
③ 算定結果のレポート出力
④グループやサプライチェーン全体の排出量管理

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「炭削くん」から出力できるレポート(イメージ)

西村:現在、プライム上場企業十数社を含めた4000社以上にご利用いただいています。上場企業に関しても、Scope3は自社だけでは算定できません。炭削くんは、サプライヤーの中小企業にも利用してもらえれば、そのデータをシステム内でひもづけて自社のScope 3の算定にそのまま使うことができます。当初は中小企業に向けて開発したツールでしたが、炭削くんを通してサプライヤーから集めたデータを自社のサプライチェーン排出量算定に活用される上場企業も増えてきています。

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サプライチェーン排出量算定に関わる画面(イメージ)

槙谷:炭削くんは、安価でありながら機能面では競合ツールと遜色ありません。これは、先ほどのお話どおり、肥後銀行さんは事業として、炭削くんシステム利用料による利益化を目指しているのではなく、あくまで地域の企業の脱炭素を進める入り口として利用していただくために開発したからこそだと思います。

上場企業単体でしたら、多少コストのかかるツールでも導入できますが、サプライチェーン全体に同じツールを入れてデータをひもづけようとしたとき、高価なツールの利用をサプライヤーに勧めるのは難しくなります。炭削くんでしたら月に2200円なので広く活用をしやすいということですね。

肥後銀行#1_槇谷さんソロカット

全国の金融機関と連携するために開発した、新たな機能

──「炭削くん」では、中小企業に加え、貴行と同じ地方の金融機関にも使いやすい機能があるそうですが、どのようなものでしょうか?

西村:金融機関においては、Scope3の中でも「投融資先」のCO2排出量が対象となるカテゴリー15の排出量が多くを占めます。例えば肥後銀行の場合、自行で担うCO2排出量の9割が投融資先のもの。つまり、取引先企業の排出量もきちんと算定しなくては、カーボンニュートラルを進められない状況なのです。炭削くんは、金融機関が投融資先の排出量を確認しながら、地域のカーボンニュートラルに向けて取り組むことを目指してFE(ファイナンスド・エミッション)機能を途中で追加しました。

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ファイナンスド・エミッション機能に関わる画面(イメージ)

玉木:こちらは槙谷さんから提案をいただいて追加した機能です。金融機関の取引先は多岐にわたり、自社のCO2排出量を算出できていない企業も多く含まれます。そのため金融機関はこのカテゴリーについては、売り上げ規模や融資残高といった数値を掛け合わせた推計で算出せざるをえません。自行の9割を占めるこの項目のCO2を減らすためには、お客さまの実データを知る必要があり、さらにそれをきちんと算定する機能が必要なのです。

西村:当初は熊本県内の中小企業に向けて開発を進めていたのですが、途中から他県の金融機関にも導入、活用していただくことも考えるようになりました。理由として、各地域のカーボンニュートラルを実現するためには、例えばお客さまが算定したデータを基に、「自治体と一緒に進められる施策」を考えるといった目線も必要だと感じたことがあります。他県の金融機関に、炭削くんをホワイトラベルとして導入していただき、さらに各地域の企業への導入が進めば、熊本県以外でも同じような取り組みができると考えたのです。

肥後銀行#1_西村さんソロカット

玉木:他の地域で「炭削くん」を導入し、地域内の企業へ展開している金融機関を「パートナー銀行」と呼んでいます。現在、福岡銀行、鹿児島銀行、東北銀行がパートナー銀行ですが、本年中にあと5行は増やしていきたいと考えています。

カーボンニュートラルの取り組みは、熊本県だけが進んでも目標に届きません。その意味で、日本全国の金融機関と連携して取り組んでいけたら、われわれとしてもメリットがあります。金融機関に対しては、同じ立場として自行と地域の脱炭素推進における課題を抱え、対応してきたノウハウや成功・失敗事例なども共有できますし、より近い目線でサポートできます。また、パートナー銀行からの案内で「炭削くん」を導入していただいた企業へのヘルプデスクはすべて肥後銀行が担当するなど、サービスを充実させています。

徹底的な情報収集と分析によって、「炭削くん」の位置付けを明確に。約4000社の導入を実現した戦略とは?

──「炭削くん」を全国に展開するにあたり、電通に戦略設定やプロモーションを依頼した理由をお聞かせください。

西村:地銀である肥後銀行が全国に向けたサービスを提案、展開する機会は「炭削くん」が初めてだったため、ノウハウがほとんどなく、やりたくても方法が分からない状況でした。地銀がサービスを展開するときの基本は直接お客さまに会いに行き、対話することです。全国を対象とした場合、面識のないお客さまに商品を提案していくことになるので、この方法では無理がある。そこで、全国展開における知見が豊富で、営業戦略や有効性の高い方法をご相談できる電通さんに、伝手をたどってお願いすることにしました。

──実際に電通からどのようなご提案がありましたか?

西村:プロモーション部分だけではなく、競合ツールがある中で炭削くんを「どんなシステムに育て上げていくか」や、今後目指すポジションに必要な機能といったところを選評していただきました。もちろん、電通さんの強みである全国地域に対する広報戦略も含めてのご提案がありました。

玉木:特に印象に残っているのは、他社の情報収集と分析をたいへんスピーディーに、膨大な情報量をもって対応してくださった点です。その情報と分析を基に、炭削くんが目指すべきポジションなど戦略策定の部分で、かなりお力添えをいただきました。プロモーションにおいても、われわれは「とりあえずCMを……」と考えていたのですが、「それは無駄金になります」とハッキリ言っていただきました(笑)。

肥後銀行#1_玉木さん西村さん

──電通側がサポートするにあたり、ポイントとしたのはどのような部分でしたか?

槙谷:こうしたツールを開発・提供している全国のプレーヤーと戦っていく必要もあると考えたときに、まずきちんとした状況分析が必要だと考えました。この場合の「状況」には、競合ツールについてだけではなく、利用してくださる金融機関やエンドユーザーとなる企業も含まれます。そうした方々の状況が分かって初めて、炭削くんの営業戦略やポジショニングが考えられます。基本的なことではありますが、オンラインのリサーチだけではなく、生の声を集めてくることも含めて最初に分析や診断を約2ヵ月かけてしっかりやりました。

西村:他社ツールにはあって、炭削くんにはない機能ももちろんあります。その場合、「機能を追加してください」と言われることもあるのですが、「その機能は果たして『炭削くん』のユーザーや目的を考えたときに追加開発する必要があるのか?」と俯瞰する目線を、電通さんが伴走してくださったことで持つことができました。

炭削くんが目指すポジションや営業戦略に合わせて機能に優先順位をつけ、必要かどうかといったことを何度も話し合い、自行で開発した方が強みになる部分と、他社ツールと連携するなどの方法にした方が強みになる部分をアドバイスしていただいたのもありがたかったです。価格は変えない前提でしたので、その中での取捨選択ができました。

炭削くん自体は、2024年1月にリリースしましたが、その後の4~9月の間に電通さんの分析を基にした戦略を立てられていなければ、1年で約4000社の導入には至っていないと思います。

“見える化”の次は実現可能な削減案を!日々状況が変わる中でも、日本全体に脱炭素の流れをつくりたい

──今後の展開について考えていることを教えてください。また、肥後銀行が電通に対して期待されていることなども併せてお願いします。

玉木:炭削くんはあくまでCO2を「算定」し“見える化”するツールです。カーボンニュートラルのためには、“見える化”して終わりではなく「削減」していかないと意味がありません。そこで、今後はAI等を活用して企業ごとに実現可能な削減施策を提案するような機能をつけていきたいと考えています。

脱炭素分野を取り巻く状況は、お客さま企業も、国の方針も含めて日に日に変わっています。そうした中で炭削くん自体も戦略も常にブラッシュアップしていかないといけません。電通さんはこの分野の知見と経験をたくさん持っていらっしゃるので、最新の情報と併せてご提示いただきながら引き続き相談していきたい。われわれもアンテナを高く張って推進していけたらと考えています。

西村:電通さんに対しては日本を代表する企業の1つとして、私たちへの情報提供だけではなく、「日本全体で脱炭素を推進していく流れ」をつくっていただけるよう期待しています。

槙谷:ありがとうございます。脱炭素に対する取り組みは、地域によって推進状況が、はっきりと2極化しています。電通は、生活者はもとより、さまざまなお客様との接点があるので、B to Bの側面でもムーブメントをつくっていける点が強み。クライアント企業と脱炭素を推進していくような団体を組織したり、流れをつくることで、引き続き脱炭素を推進していきたいですね。

肥後銀行#1_集合カット

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【参加者募集】電通×電通マクロミルインサイト 共催ウェビナー「どうなる?ポストSDGs!未来の人々が望む商品・サービスとは? 市場をリードする新たな価値のつくり方」9月3日開催

電通と電通マクロミルインサイトは、9月3日(水)に開催するウェビナー「どうなる?ポストSDGs!未来の人々が望む商品・サービスとは? 市場をリードする新たな価値のつくり方」の参加者を募集している。

SDGsのゴールイヤーである2030年が近づき、ポストSDGsのアジェンダに関する議論が、国連をはじめとする国際機関、各国政府や経済界において始まっている。Beyond GDPといった概念も提唱され、経済成長だけでは捉えきれない「実感できる豊かさ」を新たな指標とする動きが広がりつつある。「より良い社会や暮らし」に向けて、企業はこれから何を届けていくべきか。SDGsのその先を見据えた、新たな価値創造のあり方が問われている。

本ウェビナーは、未来視点からのバックキャスト型アプローチにより新規事業・サービス開発やビジョン策定を支援する電通「未来事業創研」と、生活者の主観的なWell-beingなどのインサイト研究を行う電通マクロミルインサイト「人と生活研究所」が共催する。最新の“幸せ調査”の結果も踏まえ、「ポストSDGs」および「Well-Being」を軸に、これからの価値創造の方向性を探る。未来に選ばれるブランド・事業を構想するうえで、未来の生活者視点に立って何が必要か、そのヒントを共有する。
 
「未来の人々が望む商品・サービスとは?」

【概要】
日時:
9月3日(水)13:00~14:00
形式:オンライン
費用:無料
申し込み締め切り:9月1日(月)12:00
主催:電通、電通マクロミルインサイト

■参加登録・ウェビナー詳細はこちらから


【プログラム】

・ポストSDGsとWell-Being
・生活者の主観的Well-Beingについて
 「人と生活研究所」主観的幸せの9因子のご紹介
・最新の調査結果から読み解く“幸せを感じる”商品・サービスとは
・ポストSDGs時代を意識した、あるべき未来の可視化方法
・あるべき未来からバックキャストで考えるこれからの人々が望む商品・サービスとは

【登壇者プロフィール】

電通  シニア・ディレクター/未来事業創研 ファウンダー
吉田 健太郎

モバイル事業、スマホアプリ領域を中心とした市場分析、戦略プランニング、コンサルティングなどに従事。電通モバイルプロジェクトリーダーとして、CES/MWCに2011年から毎年参加し、TECHトレンドを把握。2021年、国内電通グループ横断組織「未来事業創研」設立。未来の暮らしの可視化からのバックキャストでの事業開発を得意とする。消費者庁 新未来ビジョンフォーラム フェロー、経営管理学修士(MBA)、日本デジタル空間経済連盟 2045年の社会像検討委員。

電通マクロミルインサイト リサーチャー/ファシリテーター
工藤 陽子

“人“を基点に、インサイトやトレンドに関するメソッド開発や、情報発信をしていく窓口「人と生活研究所」所属。企業活動におけるWell-Being促進のための研究や、クライアントワークでは、エスノグラフィのような質的調査やワークショップデザインに主に従事。JPPI認定ポジティブサイコセラピスト。

女性起業家とAIの挑戦が交差する瞬間…「RAISE HER」デモデイが示した未来への一歩

●この記事のポイント
・Women AI Initiative Japan(WAIJ)が主催する女性起業家支援プログラム「RAISE HER」第1期のデモデイが開催され、24名の起業家がAIを活用したサービスを発表した。このイベントは、半年間のプログラムの集大成であり、「卒業発表」として位置づけられた。
・受賞者たちは、自身の原体験や経験から事業アイデアを考案したと語っている。また、プログラムを通じて「挑戦する勇気」や「仲間の大切さ」を得たと振り返った。特に、AI技術の活用法を学び、事業化に向けて具体的なアドバイスやサポートを受けたことが大きな影響を与えたと述べている。

 Women AI Initiative Japan(WAIJ)が主催する、女性起業家支援アクセラレーションプログラム「RAISE HER」の第1期生によるデモデイが開催された。この日、ステージに立ったのは全24名。AI技術を活用しながら、自らの原体験をプロダクトに昇華した起業家たちが、自信と情熱に満ちたピッチを披露した。事業化の段階は様々で、すでに事業を立ち上げ複数の企業と連携している人もいれば、まだ事業化に至っていない人もいたが、いずれも自身の経験や強みを生かしたアイデアを披露し、聴衆を感心させた。

 本記事では、イベントの概要、注目プロダクト、そして受賞者たちの声を通じて、「RAISE HER」が起こした変化をレポートする。

目次

プログラムの全体像:「RAISE HER」とは何か

 RAISE HERは、女性起業家によるAIスタートアップを支援するためのプログラム。WAIJが掲げるミッションは「女性のアイデアとAIの力で、社会課題を解決する」。このビジョンのもと、起業未経験の女性でもプロダクト開発・事業化に挑戦できるよう、4か月間にわたりメンタリングや資金支援が行われた。

デモデイの見どころ:個性と社会課題が交差するプロダクト群

 今回のデモデイでは、以下のように多様な分野にわたるプロダクトが登場。共通していたのは、「自分自身の課題・関心」を原点とし、AI技術を活用して社会の困りごとを解決しようという姿勢だ。

● 教育・キャリア支援系
STEM GATE:理工系女子のキャリア支援プラットフォーム
BeShift:AIでキャリア診断と習慣化を支援
KakerAI:研究成果をベースに授業を生成するAIツール

● 子育て・家庭向け
HuGlow:親子の自己肯定感を育む投稿アプリ
キラフル:夫婦関係改善を支援するアプリ
図書AI:近隣図書館の本をLINEと連携してAIが推薦

● 地域・観光・グローバル展開
DriVoice:AI音声観光ガイド
Omiisay:飲食店の海外展開支援プラットフォーム
InnoDrops:地方の人材育成支援

● その他の革新的プロダクト
肩代わり:部下育成を支援するAIツール
Edit:資産の活用をサポートするプラットフォーム
KnoVelo:タブやURLを効率管理するブラウザ拡張

 このような多様性こそが、RAISE HERの最大の魅力といえるだろう。

注目の受賞者たち:起業ストーリーに見る“挑戦”の本質

 数多くの登壇の中から、審査員が選んだ優秀プロダクトには以下の女性起業家たちが選ばれた。

●1位:渡邉 茜さん「推し活のスケジュール・タスク管理アプリ」

 15年にわたる“2.5次元オタク歴”と生成AIの知見を活かし、ライブのチケット応募やグッズ管理、当落確認までを一元化できる「推し活管理アプリ」を開発。チケットの応募や当落確認、グッズ交換、ファンクラブ情報など、煩雑になりがちな推し活の情報管理をサポートすることを目的としている。

 渡邉さんは「自分の“困りごと”を、自分の技術で解決したかった」「RAISE HERで得たのは、挑戦する勇気と仲間の存在」と語る。現時点で事業化は考えていないとしつつ、まずは目の前の一人のファンを救うことを大切にしたいという。

●2位:平下 ひかるさん フラダンス振り付け自動解析アプリ「Hula Note」

 14年間のフラダンス経験を背景に、動画から振り付けをキャプチャし、自動でノート化するアプリを開発。

「起業なんて自分には無理だと思っていた。でも、RAISE HERで“起業がリアルになった”」と語る平下さんは、育休中にプログラミングを学び、管理栄養士から一転、開発者に。フラダンスだけでなく、他のダンスや幼稚園のお遊戯会などにも応用できる可能性があると評価されており、多様な展開をみせる可能性もある。

●3位:河畑 えりさん 親が子どもの投稿にリアクションできるアプリ「HuGlow(はぐろう)」

 病気を経験し、自らの子ども時代を振り返ったことから誕生したプロダクト。

「子どもの自己肯定感の低さは、社会全体の問題。小さな褒め言葉を積み重ねたい」「RAISE HERで出会えた“共感し合える仲間”が何よりの財産」と河畑さんは語る。

 将来的には、情緒教育の第一人者として、世界中の子どもと親を支援するユニコーン企業を目指す。

●同率3位:南 恵子さん AI音声ガイド「DriVoice」

 地方観光の課題に着目し、外国語が苦手なガイドでも質の高い案内ができるAIガイドを開発。地方観光の移動課題を解決するため、特定の条件を満たせば自家用車での送迎も可能とする観光マッチングサイトとも連動している。

「自分の地域の課題を解決したいという想いから生まれた」「自治体や観光協会と話す中で、応援してくれる人が増えた」と南さんは語る。宮崎から始め、全国へと展開を目指す。

終わりに:RAISE HERが生んだもの

「RAISE HER」は、単なる“起業支援”にとどまらない。参加者の多くが「挑戦する勇気」「仲間の存在」「共感の力」を挙げており、それは女性起業家に必要な「安心して飛び込める土壌」がまだ足りていないという裏返しでもある。

 このデモデイが証明したのは、「誰もが自分の課題から、社会を変えるサービスを生み出せる」という事実だ。AIはその背中を押すツールであり、起業は“選ばれた人だけの道”ではない。

 今後のRAISE HERの展開、そしてこれらのプロダクトの進化に、引き続き注目したい。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)

高齢者も乗りやすい電動新車両=三輪で安定、来年度実証へ―Luup

 電動キックボードなどのシェアリング事業を展開するLuup(ループ、東京)は5日、高齢者でも乗りやすいユニバーサルデザインの新車両「Unimo(ユニモ)」を初公開した。三輪で安定性が高く、年齢や体格に関係なく利用できる。2026年度中に公道での実証実験を始め、早期の本格導入を目指す。

 新車両は自動車部品製造のアイシンなどと共同開発した。速度やハンドルの傾きを検知し、自動で車体を安定させる技術を搭載。カーブでも姿勢が安定し、身体能力によらず安心して走行できるという。 

 また全長130センチとコンパクトで、貸し出し・返却拠点「ポート」にも置きやすい。今月下旬から大阪・関西万博の会場にも展示し、デモ走行などを実施する。岡井大輝社長は「若者も乗りたいと思えるデザイン。いずれは自動運転機能も実装したい」と自信を示した。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2025/08/05-16:35)

AI翻訳・DeepL、東証プライム上場企業の半数以上が導入の理由…業界特化型の高精度が強み

●この記事のポイント
・DeepL、36言語に対応、228の市場で有償版が利用されており、世界の企業・政府機関合わせて20万社以上に採用されている
・独自開発のLLMと7年以上の専用データ、および1,000名以上の言語専門家による人間チューニングが特徴
・製造、自動車、製薬、法務、IT など主要業界向けに、事例を交えた導入ガイドやテンプレートを提供する計画

 AI翻訳ツールの利用が拡大し、新たなサービスが次々と登場するなか、日本では東証プライム市場上場企業の半数以上が利用しているのがDeepLだ。2017年という早い段階でAI文書翻訳サービスを始め、市場では草分け的な存在でもあるDeepLは、現在は36言語に対応。世界228の市場で有償版が利用されており、世界の企業・政府機関合わせて20万社以上に採用されている。7月にはビデオコミュニケーションツール「Zoom」でリアルタイム翻訳機能を使えるようにすると発表。独自のLLM(大規模言語モデル)を開発し、各業界に特化した製品を強みに顧客網を広げている。新興勢が次々と参入する日本市場におけるシェア拡大に向けた戦略について、DeepLジャパンに取材した。

●目次

多言語コミュニケーションの効率が5~6倍に改善

 前述のとおり日本では多くの大企業が導入しているが、導入企業では具体的にどのような効果が出ているのか。DeepLジャパンは次のように説明する。

「具体的な導入事例としては、パナソニックコネクト様がDeepLを活用し、多言語コミュニケーションの効率を5~6倍に改善したほか、日立産機システム様では、PowerPoint資料の翻訳時間を2〜3日から1日に短縮するなど、翻訳品質の向上と業務効率化に大きく貢献しています。また、NEC様ではMicrosoft Teamsと連携した音声翻訳ソリューション『DeepL Voice』の実証導入が進められており、グローバル会議におけるリアルタイム翻訳の活用が期待されています。さらに、東京都教育委員会では、都立高校における英語教育や教職員の業務支援を目的にDeepLの翻訳・ライティング機能が導入され、教育現場でのAI活用の先進的な取り組みとして注目を集めています」

 AI翻訳サービス市場では新規参入が活発化するなか、DeepLのサービスの強み・特徴は何か。

「翻訳品質の高さ:独自開発の大規模言語モデル(LLM)と7年以上の専用データ、および1,000名以上の言語専門家による人間チューニングで、競合比2~3倍少ない編集量でご利用いただけます。

カスタマイズ性:企業用用語集(Glossary)を使い、自社独自の表現や業界用語の一貫性を維持可能です 。

豊富な製品ラインナップ:テキスト翻訳(DeepL Translator)、AIライティング支援(DeepL Write)、リアルタイム音声翻訳(DeepL Voice)を提供し、一気通貫で『書く』『話す』を支えます 。

エンタープライズ対応:ISO 27001/SOC2 Type 2取得の堅牢なセキュリティ、SSO/チーム管理/利用状況レポートなど管理機能を備え、機密性の高い業務にも安心してご利用いただけます」

シェア拡大に向けた施策

 DeepLは2023年に日本法人を設置しているが、今後の日本市場におけるシェア拡大に向けた計画・施策について、同社は次のように説明する。

「パートナー連携強化:新規チャネルパートナーやシステムインテグレーターと協業し、API 経由での大規模展開を支援します。

業種特化ソリューション:製造、自動車、製薬、法務、IT など主要業界向けに、事例を交えた導入ガイドやテンプレートを提供し、業務効率化を推進します。

カスタマーサクセス:専任の顧客担当者による24時間×365日サポート、定期トレーニングやオンボーディングセッションで利用促進を図ります。

ローカル開発・研究投資:日本語特有のニュアンスや敬体・常体の対応精度向上に向けた研究開発を継続し、市場ニーズに合わせた機能拡張を行います」

 現在、AI翻訳サービスをめぐっては低価格の新規参入組も増えており、かつ米国の大手IT企業が実質無料でサービスを提供したりと、市場競争が激しくなってきているが、そうしたなかで、どのようにシェアを拡大させていく戦略を描いているのか。

「DeepLは、単なる価格競争ではなく、『品質』と『信頼性』による差別化を重視しています。特に企業向けでは、正確性が求められる法務・金融・製造などの分野で、DeepLの高精度な翻訳が強みを発揮しています。また、価格面でもサブスクリプション+従量課金モデルを採用し、エンタープライズ向けにはボリュームディスカウントも提供した柔軟な価格体系と競争力のある価格設定で、多様な顧客ニーズに対応しています。生成AIとの共存を見据えた機能強化や、NVIDIAとの連携による技術基盤の強化など、長期的な競争力の確保にも注力しています」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

電通ライブがトータルプロデュースをした埼玉初のイノベーション創出拠点「渋沢MIX」がオープン

電通ライブが、埼玉県と共に開設の準備を進めてきたイノベーション創出拠点「渋沢MIX(シブサワミックス)」が、7月25日にオープンした。

※電通ライブは2024年夏に渋沢MIXの施設構築、開設後の運営・管理業務を受託した

 

「渋沢MIX(シブサワミックス)」

本施設は、さまざまな業種・規模の企業や起業家などの交流・マッチングにより共創を行う、埼玉初のイノベーション創出拠点。「オープンイノベーションの創出・促進」「スタートアップの創出・成長支援」「イノベーションを担う人材の育成」の3つをコンセプトに、イノベーション創出のためのさまざまな取り組みを展開する予定。

電通ライブは、同社が持つ高度なプロデュース能力と、これまで培ってきた“にぎわい”を生み出すノウハウを生かし、「渋沢MIX」の継続的な活性化を目指す。

【渋沢MIXの利用について】
1.会員区分

渋沢MIXは、原則として会員登録制(無料)の施設。会員の区分や利用可能な主なサービスについては、以下のとおり。

渋沢MIXの利用について 会員区分

2.会員登録
会員登録に当たっては審査を行う。なお、渋沢MIXで開催されるセミナーなどのイベントへの参加は、会員登録不要(会員限定のイベントを除く)。
①申し込み
申し込みフォームはこちら
https://shibusawa-mix.pref.saitama.lg.jp/membership/
②面談
書類審査終了後、面談を実施(オンライン)。
③登録~利用開始
審査を通過された方は渋沢MIX施設にて利用契約・入退室管理システムの登録を行い、利用開始となる。

3.専門人材
渋沢MIXの会員は施設利用だけでなく、各専門人材への相談も可能。さまざまな専門人材を配置し、利用者同士の出会い・交流の促進やイノベーションの創出・成長を支援する。
●コミュニテイマネージャー
渋沢MIXに常駐し、利用者の相談対応やイベントの企画・運営に従事する。
●共創コーディネーター
企業同士、企業と県内外機関などをつなぎ合わせることで共創を支援する(予約制)。
●スタートアップアドバイザー
スタートアップに対する専門的な助言やベンチャーキャピタルなどへの橋渡しを行う(予約制)。

4.イベントについて
渋沢MIXでは、コンセプトに基づいたさまざまなテーマによるセミナー、勉強会、交流会などのイベントが開催される。
 
【施設概要】
渋沢MIXは、約500もの企業の創立に携わった埼玉県出身の偉人である渋沢栄一翁が、適切な人や企業をマッチングすることで企業を成長に導いたことに倣い、人々が出会い、つながり、共創することで新たなイノベーションが創出される場を目指している。

渋沢MIXのロゴ

名称:渋沢MIX(シブサワミックス)
場所:埼玉県さいたま市大宮区吉敷町4丁目262番18
   「ekism(エキスム)さいたま新都心」5階
開館:平日 10時~21時
   土曜 10時~18時
   ※日曜日・祝日等除く/イベントでなど延長の場合あり
機能:コワーキングスペース、イベントスペース、ラウンジ、個別ブース(打ち合わせスペース)、受付、情報掲示スペース  など

【施設構築・運営】
埼玉県
統括・トータルプロデュース
 電通ライブ
運営・管理
 電通イベントオペレーションズ 
 コミュニティコム
 アドリブワークス
施設構築
 日展
 テイクアーキテクツ
ロゴデザイン
 TM