愛媛県の外国人宿泊者数、なぜ2倍に急増?県が積極的に誘客策、海外インフルエンサーにも働きかけ

●この記事のポイント
・愛媛県の2024年の外国人延べ宿泊者数が19年比で2倍以上に増加
・韓国からのゴルフ客の獲得に注力
・Airbnbと包括連携協定を締結し、古民家の宿泊施設化などを推進

 今年1~6月の訪日外国人数(推計値)が2151万8100人(日本政府観光局発表)となり、過去最も速いペースで年間2000万人を超えるなど、引き続きインバウンドの増加傾向が続いている。各都道府県の外国人延べ宿泊者数の増加率にはムラがあるが、愛媛県の2024年の外国人延べ宿泊者数が19年比で+109.1%、2倍以上の増加と、都道府県別の伸び率では東京都や福岡県を抑えて2位になるなど、大幅に伸長していることが注目されている。その背景には愛媛県の積極的かつ地道な取り組みがあることは、あまり知られていない。同県に取材した。

●目次

韓国からのゴルフ客の獲得

 なぜ愛媛県の外国人延べ宿泊者数は大きく伸びているのか。愛媛県観光国際課は次のように説明する。

「前提として、松山空港に発着する国際線の便数が大きく増えたというのが大きな要因です。24年はソウル線が2019年の週3便から週14便になり、台北線が復活し、新たに23年から釜山線も加わりました。そうしたなかで県としては大きく2つのフェーズで取り組みを行ってきました。

 まず、国際線の直行便の就航による旅行客の増加は一過性で終わらせては意味がないので、新規旅行客とリピーターの確保のために、旅行会社やメディアを通じたプロモーションに力を入れてきました。特に力を入れてきたのが、韓国からのゴルフ客の獲得です。

 韓国ではコロナ禍でゴルフをする人が急増するという現象が生じており、プレイ料金が日本の3倍ぐらいするため、訪日してゴルフをしたいという需要は増えてくるとの予想があったのですが、愛媛県は道後温泉や松山市の中心地から1時間圏内にゴルフ場が16カ所もあるんです。この利点を活かさないわけにはいかないということで、コロナ禍が明ける前くらいから、ゴルフ場や韓国の旅行会社などとゴルフ旅行者の誘客について話し合いをさせていただき、旅行会社向けに県内ゴルフ場の視察ツアーを実施したり、愛媛県ゴルフ協会の協力をいただき、旅行会社とゴルフ場をつないでいくような取り組みを行ってきました。これによって、ゴルフ場の韓国からの旅行者の受け入れ態勢の整備も進み、現在では日本人の利用者が少ない平日に多くの海外の方が来ていただけるようになっています。

 このほか、松山市中心地はコンパクトシティになっているので、ホテルや道後温泉、松山城、大きな商店街を行き来しやすく、狭い範囲で買い物も観光も温泉も楽しむことができるということで、韓国語の飲食店マップを作成したり、カフェやパンのお店など、韓国からの旅行者の趣味趣向にあったマップを作成するといった細かい取り組みも行っております」

古民家などをリノベーションして街一つ丸ごとホテルに

 従来からある観光資源の活用にも積極的に取り組んでいるという。

「欧米豪(欧米・オーストラリア)からの旅行者も増えているのですが、その要因の一つに、24年に愛媛県とAirbnb Japanが包括連携協定を結ばさせていただいことがあります。これまで県内にはAirbnbに登録している宿泊施設は少なく、また愛媛県のような小さい県に欧米豪からあらゆるタイプの旅行者に来てもらうというのは非常にハードルが高かったので、どこかに絞った形でプロモーションしなければならないと考えていました。

 いろいろと調査してみると、2019年に広島県に来られたオーストラリアの方は約13万3000人だったのに対し、愛媛県は約3000人しかいませんでした。広島から愛媛まではフェリーで1時間くらいなので、まず広島から観光客を引き込んでくる方策を検討しました。また、オーストラリアの方は旅行日数が非常に長くて消費単価も高く、サイクリングやトレッキングが好きな方が一定数いるということが分かりまして、トレッキングですと四国遍路、サイクリングですと、しまなみ海道があるので、そこを観光資源としてPRの強化をしていきました。

 また、サスティナブルツーリズムに関心を持つ方も多いということで、サスティナブルの国際的な表彰を受けた大洲市も有力なコンテンツとして、オーストラリアに特化したプロモーションを推進してきました。そうしたなかで宿泊場所の確保や認知度向上という観点でAirbnbさんと連携させていただくことになり、セミナー開催等により多くの宿泊施設に登録していただきました。

 さらに、本県単独事業として古民家等を活用した宿泊施設の整備などの観光集客に繋がる取組みに支援を行うなど、宿泊客の引き込みに努めてきました。

 大洲では空き家であった古民家などを活用してリノベーションし町一つを丸ごとホテルに見立てて、町の中を回遊してもらうというコンセプトで、地元自治体や金融機関、観光事業者等が連携し、NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町として30室以上の宿を整備してインバウンドの方々に泊まっていただいているほか、県内の島では宿泊施設に2~3週間泊まれられるようなインバウンドの方々も多くいらっしゃるので、昔ながらの町並みやゆったりと流れる時間の魅力というのを伝えていくプロモーションも進めております」

 愛媛県はインバウンドの受け入れの環境整備として補助金制度を設けており、外国人観光客の誘客のための古民家改装やレストラン開業などを支援している。

海外のインフルエンサーにも働きかけ

 プロモーションの強化という面ではSNS上での情報発信やインフルエンサーへの積極的な働きかけにも力を入れているという。

「海外の旅行会社さんの視察やインフルエンサー、メディアの方に来ていただいた際には、広島から入るルートを紹介したり、しまなみ街道を実際に走っていただいたり、さまざまな体験を実際にしていただくことで、積極的にPRしていただけるように取り組んでおります。

 具体的には、たとえば韓国のゴルフ関連メディアやインフルエンサーの方に実際にゴルフ場に来て体験していただいたり、オーストラリアの大手旅行雑誌に来ていただいて大きく取り上げていただいたり、視察に来た旅行会社に商品造成していただいたりといった、地道な活動を行っております」

 気になるのは、外国人旅行者の増加が県の経済にどのような影響をもたらしているのかという点だ。

「これまでインバウンドが0人だったゴルフ場に多くのインバウンドが来られるようになったり、ホテルや飲食店からは韓国の方の利用が非常に増えたというお話もお聞きしています。松山市の街中では、ハングル語のメニューや看板を用意する飲食店も増えており、夜遅い時間帯に大手ディスカウントストアなどでたくさんのお土産を購入する光景もみられるようになりました。JRさんが鉄道での周遊県内観光地を散策するフリー切符を扱い、韓国の方の購入が関東で販売が大幅に増えているというお話もお聞きしており、さまざまなかたちで経済効果が生まれていると考えております」

 愛媛県としては、さらなるインバウンド誘客に向けて、大洲などの県南部や東部のしまなみ海道をはじめ広い範囲を周遊するルートの造成などにも取り組んでいくという。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

自転車事故の根本解決に挑む…スマートフォンGPS技術と段階的成長戦略

●この記事のポイント
・wakabar株式会社が事故を根本的に無くす走行サポートアプリで自転車事故ゼロ社会を目指す
・スマートフォンアプリで危険箇所警告と安全教育を両立するシステム構築
・自治体連携による実証実験から全国展開へ、交通事故根本解決に挑戦

 自転車事故の根本的解決を目指すスタートアップ、wakabar株式会社(代表取締役:杉山誠一郎氏)が注目を集めている。同社は「自転車の乗り方意識を変え、自転車事故ゼロの社会にする」をビジョンに掲げ、GPS技術を活用した自転車用安全アプリとデバイスの開発を進めている。従来の事後対策ではなく、事故の事前予防に焦点を当てた逆転の発想で、交通安全分野に新たな風を吹き込もうとしている。

●目次

スマートフォンGPSで危険予測する技術基盤

 wakabar株式会社の技術的な核心は、スマートフォンに内蔵されたGPSと危険箇所を収集した マップを活用した危険感知システムにある。

「基本的にスマートフォンの GPS などを使って、スマートフォンアプリで実装している。自転車の安全業界でGPSを使って危険を感知するという分野は、今ちょうど研究が始まっているところで、私たちは多くの人に使ってもらって属性データを集め、独自の仕組みを作ろうと取り組んでいる」と杉山氏は説明する。

 同社では専用デバイスの開発も進めているが、現段階ではスマートフォンで完結させることを優先している。

「デバイスも作っているが、一度出してしまうとロットの関係で修正が難しい。修正期間中はスマートフォンで全て完結させ、いずれはデバイス化、さらには自転車への内蔵まで発展させたい」と将来展望を語る。技術開発を担うのは、東京大学大学院でテクノロジーと人間の未来を研究する南田桂吾氏(CTO)だ。杉山氏と南田氏は近畿大学のスタートアッププログラムで出会い、4~5年にわたって協働している。

「彼の研究テーマであるテクノロジーと人間の未来という観点から、wakabarは人間のライフスタイルを助ける仕組みとして彼の興味を引いている」と、杉山氏は技術陣への信頼を示す。

ヒューマンエラー削減への独自アプローチ

 自転車事故の多くが運転者の不注意や危険予測不足に起因することを踏まえ、wakabarは独特のアプローチでヒューマンエラー削減に取り組んでいる。

「システムは危険な運転をしていたら警告音を鳴らす仕組みと、帰宅後に警告された理由を学習するという二段構えで対応している。今の社会では事故があると車が悪いという風潮だが、自転車に乗る人もより安全意識を持って乗るべきだ。最終的な事故削減には自転車に乗る人たちの意識改革が不可欠」と、杉山氏は問題意識を語る。

 特に基本的な交通ルールの徹底に重点を置いている。「自転車に乗る際に左側通行・右側通行といった本当に基礎的なところを理解するだけで、事故が半分以上減っていく。ヘルメットだけでは、結局事故があった際の抑止にしかならない。根本的に事故をなくすためには、自転車の乗り方意識を変えるためのアプローチが必要。また、来年の青切符に備えてルールもしっかり分かってもらう」と説明する。

 事故データの収集・分析については、警察の公開データ、自治体との実証実験で得られる地域 のヒヤリマップ、法的規制エリアの情報を総合的に活用している。「これらのデータは製品開発と啓発活動の 両方に活かしている」と実用性を強調する。

自治体・警察との連携で実証実験を推進

 wakabarの社会実装に向けて、行政機関との連携が重要な役割を果たしている。

「正式に連携していたのは滋賀県守山市で、実証実験の募集で採択をいただいた。また公表は できないが、大阪の自治体や保険会社、警察とも何度も意見交換を重ね、連携を強化している」と杉山氏は関係 構築の進捗を報告する。

 一方で、株式会社として収益性も追求しなければならない現実もある。「自転車というだけでVCの反応率が圧倒的に悪くなるのは承知している。市場としてはまだ小さい部分だが、最終的には全国の皆さんが一人1台持つ自転車に500円の付加価値がつけば大きな市場が生まれる。意識改革することが市場改革につながる一歩だと信じている」と市場創出への確信を示す。

段階的成長戦略で市場創出を目指す

 wakabar の企業成長シナリオは、段階的なアプローチで構築されている。

「まず楽しく自転車に触れるライト層を巻き込むため、自転車セルフツアーガイドというサービスを展開している。ヨーロッパでは一般的なアクティビティで、ガイドさんの同行なしで自転車ツアーを行う仕組みだ。このアクティビティをデジタル化した上で、日本に普及させようと、滋賀県からスタートした。ここは売上につながりやすいので基盤作りに活用している」と短期戦略を説明する。

 中長期的には本格的な安全システムへの展開を計画している。「次はルールを理解したい層、一般の大人にwakabarの安全システムを使ってもらい、いずれ子供へと踏み込んでいく。最終的には自転車への内蔵まで段階的に進めたい」と展望を語る。

 収益の柱としてはBtoCサービスを基盤とし、競合については「現状では見当たらない。安全システム分野への参入企業がないのは、そもそもこの分野が研究中で、一年単位では到底できるものではないため、企業が参入したいと思えない領域だから」と分析する。競合優位性については「ネットワーク力と、東京大学で研究するエンジニアによる最先端技術の活用、そして早期スタートによるデータ蓄積とブランド構築が強み」と自信を示している。

 wakabarが目指すのは、単なる事故防止を超えた社会変革だ。「パーソナルモビリティがより活躍する社会が望ましい。日本では自転車が歩行者の延長として認識されているが、一つの乗り物としての立ち位置を確立したい。4人乗り、6人乗りの車に1人しか乗らないもったいない状況から、1人でもふらっと動けるモビリティが安全に走行できる環境を整えていく」と、交通事故ゼロの先にある未来社会への構想を描いている。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)

抜け毛対策シャンプーからの脱却——安定を壊してでも挑む「スカルプD」のブランド革命 

●この記事のポイント
・発売から20年を迎えるメンズシャンプーのトップブランド「スカルプD」が、安定的な売上を誇りながらも、ブランドコミュニケーションを刷新。
・刷新の背景には、競合の増加やAGAクリニックの台頭に加え、消費者が「薄毛・抜け毛対策」だけでなく「なりたい自分」を追求する意識の変化がある。
・ブランドの持つ多岐にわたる機能を「髪と地肌をメンテナンスする」というメッセージで伝え直し、幅広い世代の理想の自己表現をサポートすることを目指している。

 発売から20年が経ち、いまだメンズシャンプーのトップブランドとして走り続ける「スカルプD」。
 今回、ブランドコミュニケーションの刷新を行い、ボトルデザインの変更とともに、プロダクトが発信するメッセージも消費者の悩みにアプローチした「育毛・発毛」から、「なりたい自分」に目を向けるものへと大きく刷新しています。 

 安定的な売り上げや盤石なブランド認知があるにもかかわらずなぜ? 

 社内からも、疑問の声が上がったという今回のブランドコミュニケーションの刷新。アンファー株式会社の狙いとはどのようなものなのでしょうか?
 アンファー株式会社 スカルプDブランドマネージャー 吉川 竜司氏に、「スカルプDが安定を超えていく理由」をお聞きしました。 

●目次

市場を切り拓いたパイオニアの現在地

——まずはじめに、改めてスカルプDについて教えてください。 

 私たちアンファーは、”予防医学”の啓発と普及を目的に大学病院や各分野の専門医とともに共同研究を行っており、医療×プロダクトの商品開発を強みとしています。実はスカルプDも、頭皮、頭髪の医師と共に頭皮環境を整えるシャンプーとしてクリニック専売品として販売したのがブランドのはじまりなんです。 

 2005年、一般市場への販売を開始。幾度かリニューアルを重ねつつも、“頭皮を洗う”というキーワードの軸はぶらさず、今年ブランド誕生20年目を迎えました。お陰様で多くのお客様にご愛顧いただき、今年でメンズシャンプー売上16年連続NO.1※を獲得しています。 
※富士経済「化粧品マーケティング要覧2025 No.3」 メンズシャンプー・リンス メーカーシェア(2024年実績) 

——今回、大きくブランドとしてのコミュニケーションを刷新したスカルプDですが、まずは現状の顧客層や市場でのポジションを教えてください。 

 大きな割合を占めている顧客層は、30代後半から40代の方々です。スカルプDがすでに20年続いているブランドで、長く継続している方も多いため、少し高い年齢層の方にも使っていただいていますね。 
 市場においても「薄毛や抜け毛という悩みにアプローチできる商品」と、年代問わずに認知していただいていると理解しています。 

——スカルプDが高い認知度を獲得し、発売から20年経っても安定した売り上げを保っている要因は、どこにあると考えていますか? 

 要因はおもに2つあると考えています。 

 まずは、当時まだ競合他社がほとんどいなかったことです。 
 我々がスカルプDを発売した2005年当時、メンズシャンプーは存在していたものの、頭皮環境に着目したスカルプシャンプーはまだジャンルとして確立されていませんでした。アンファーがスカルプDを発売することで、市場のパイオニアとしてジャンルを切り開くことができたことが、現在の認知度や売り上げの安定化に大きく寄与していると感じます。 

 そして、当時黎明期だったECとプロダクトの相性がよかったことです。 
 スカルプD発売時、ECモールは主流ではなく、シャンプー市場はドラッグストアやバラエティショップなどのリアル店舗が主戦場でした。 
 そんな中、アンファーはいち早く自社ECサイトへの誘導を行っています。その動きが当時の「髪の毛や頭皮の悩みを人に話しづらい」「なるべく人目に触れずに購入したい」というニーズに合致しました。 
 当時の価値観が、スカルプDの持つプロダクトの性質とうまくハマったのだと思います。 
 これが、自社ECサイトでの売り上げを大きく躍進させ、現在も自社定期継続率が7割と、強いファンづくりの基盤となっています。 

——一方で、現在のスカルプDの売り上げは一時期の伸び率よりもやや緩やかになっているようにも見えます。 

 その要因のひとつとして、他社の参入が増加し、消費者の選択肢が増えたことがあります。メンズシャンプー市場の拡張のみならず、近年はユニセックスシャンプー市場も急成長しています。それにともなって、市場に中価格帯のシャンプーも増えましたね。 

 また、AGAクリニックの台頭で、薄毛や抜け毛に対して「治療する」という考えが一般的になってきていることも、スカルプDの売り上げや市場の変化に大きく影響してます。 

 こうした消費者の価値観や意識の変化がある今、薄毛や抜け毛にアプローチするイメージがあるスカルプDが市場において、どうポジショニングしていくかを考えていくべき転換点にきていると考えています。 

「薄毛・抜け毛対策」だけでは立ち行かない!?消費者の意識変化とは

——実際に、消費者の髪の毛や頭皮に対する意識変化は感じますか? 

 感じますね。やはり、これまで髪の毛の悩みには「触れられないこと」という感覚があり、会話に上がりづらい話題でした。 
 しかし、SNSでもケア方法の情報が増えていたり、企業側でも抜け毛や薄毛に関する情報を発信したりと、以前よりもオープンになっている印象です。 

 また、若年層の意識の変化が、スカルプDを購入するような年齢層の意識変化にも影響しているのではと考えています。 
 若年層の方々を見ていて感じるのは、自己表現に対する意識が非常に高い、ということ。自分がなりたい姿になる、つまり自分のマイナスポイントやコンプレックスをカバーするだけでなく、よりプラスアルファになる要素を求めて、プロダクトを選ぶ傾向があります。
 そういった若年層の持つ価値観を、上の世代の方々も日々感じることで、抜け毛や薄毛といった悩みの解決だけでなく、身だしなみや清潔感など、いかに自分自身が理想とする要素を積み上げていくかという部分への意識の高まりを感じます。 

——消費者の意識の改革とそれにともなう市場の変化が、すでに磐石にも思えるスカルプDブランドコミュニケーションの刷新のきっかけになっているのですね。 

 抜け毛や薄毛に対する認知度やアプローチという点において、スカルプDは非常に強いプロダクトであると感じる一方、これまでのように悩みに対する対策というだけでは市場でのシェアは維持できないと考えています。 

 先ほどお話したように、若年層の自己表現や美に対する意識の高さに、引っ張られる形で、上の世代の意識も自分自身に対するプラス要素を求める形に変化しています。 

 時代の変化に合わせてコンセプトを見直し、プロダクトに反映していかなければ時流についていくことはできません。 

 多くの世代に拡大しつつある新たな価値観に対し、スカルプDではむしろ「スカルプシャンプー」の原点に立ち返り、頭皮の油分と水分のバランスを整え、頭皮環境を整えることで薄毛抜け毛だけでなく、様々なミドル男性特有の髪悩みにマルチにアプローチできることをコミュニケーションしていくチャレンジを決めました。 

 実際、継続してスカルプDを利用している顧客の方々は、ただ薄毛や抜け毛対策としてスカルプDを使っているのではなく、頭皮のケアやフケ、ニオイ対策など、デイリーケアとして使っている方が多くいます。こういった「これまでもあったはずの価値」を、新たな価値観やトレンドに合わせて提案するというイメージです。
 もちろんこういったコミュニケーションのあり方の変更は、今回だけでなく、今後も続けていくべき挑戦であると考えています。 

多角的アプローチでプロダクトの価値を再定義

——実際に、今回刷新を行ったポイントを教えてください。 

 シャンプーは毎日の習慣だからこそ、できるだけストレスなく使っていただきたいですよね。そこで、詰め替えではなく外側のボトルから中身の容器を“付け替え”するだけのパッケージにしたり、使うたびに中の容器が収縮していくエアレスポンプを採用することで最後まで無駄なく使いきれたりと、パッケージの変更を行っています。 

 実はこのパッケージ変更は2022年に行ったものなのですが、今回のブランドコミュニケーションの刷新に合わせて、ボトルをよりスリムにし、スマートな印象に変えています。 

 しかし、やはり大きく変更したのは消費者に対するメッセージですね。 
 多くの方がデイリーケアに使っていることにも表れているように、スカルプDの機能は多岐に渡っています。 
 これまでは発毛・育毛という領域の機能を強くメッセージとしていたのですが、今回キャッチコピーを「髪と地肌をメンテナンスする。」と変更しました。髪や地肌の悩みや状態に広くアプローチし、理想の自己表現を可能にするプロダクトであることを消費者に伝えるコミュニケーションを目指しています。

 ブランドコミュニケーションの刷新にともない、ホームページで発信するメッセージやデザインも変更しました。 
 これまではやはり、薄毛や抜け毛といった悩みへの訴求を前面に打ち出していましたが、消費者へのメッセージを「頭皮の健やかさ」や「薄毛や抜け毛以外のミドル男性の髪悩み」に訴求するものに変えています。
 ページデザインも、これまではフォントや黒っぽいカラーで男性らしさを強調したものでしたが、今回からは洗練されスタイリッシュさを意識したカラーやトーンになっています。 

——しかし、すでに「発毛や育毛に強い」というイメージが定着しているスカルプDにおいて、新たなメッセージや提供価値の浸透は難易度が高いことのように感じます。 

 そうですね。実は今回のリニューアルは、「顧客とギャップが生まれるのではないか」「消費者へのメッセージを変えることで売り上げに影響するのではないか」など、社内からもややマイナスな反応が多かったのです。 
 我々も前提として、提供する価値を広げていくことやそれにともなうメッセージの刷新などは時間がかかることだと理解しています。 

 スカルプDに対する固定イメージを変えていくためには、プロダクト単体ではなくシリーズ全体での消費者へのコミュニケーションが必要です。実は、今年3月に若年層をターゲットとしたシャンプーシリーズ「スカルプD ネクストプラス」が登場しています。「スカルプD ネクストプラス」は、「自分をデザインする」をコンセプトとし、シャンプーでスタイリングしやすい髪を作るヘアスタイリングシャンプーです。 

 ターゲットに合わせてアプローチを変え、幅広い層にスカルプDの持つ機能性や価値を提供することで、新規の消費者層にも、既存の消費者層にも「スカルプDとはどういうブランドなのか?」を再認識してもらう。 
 結果としてシリーズやプロダクト全体の価値を再定義し、さまざまな商品や接点を通じて再注目してもらうという戦略を考えています。 

 実際、スカルプD ネクストプラスの登場によって、20代の顧客も増えていますし、トレンドに沿った価値提供ができていると感じます。
 そういった現状を目の当たりにして、最初はリニューアルに否定的な意見が多かった社内の雰囲気も、前向きなものに変化しています。 

アンファーの挑戦が市場の価値観を変えていく

——今回の提供価値の拡大やメッセージの刷新は、今後のアンファーや市場にどのような影響を与えるものだと考えていますか? 

 世の中のトレンドとして、問題や課題だけに目を向けるというものから、自分をどう表現していくのか? という方向に熱量が向いていくという流れは、今後も確実に広がっていくものだと感じています。 
 今回のスカルプDのリニューアルは、悩みや理想と向き合うことをプラスに捉え、それを自己表現として昇華していくきっかけを多くの方に与えられるものだと思っています。 
 実は我々は、育毛や発毛という領域に強みを持っているからこそ、人を真に魅力的に見せる要素は「髪の毛の量や状態」ではなく、「どれだけ自分に向き合い、ケアしているか」だと感じているんです。リニューアルがこういった新たな気づきを提供し、皆が頭皮の健康やケアに対してオープンに発信したり情報を得たりできる世の中になるための一翼になればと考えています。
 企業としても、常にトレンドの先を見ながら柔軟に価値提供を行い、消費者の方々を牽引していく存在になりたいですね。 

* 

 アンファーが今回のリニューアルで示すのは、新たな価値観を支えるブランドとして、挑戦を続ける姿勢。 

 既存のイメージや安定に留まらず、変化していく時代に合わせて自分たちの価値を柔軟に変化させるアンファーは、これからも人々が持つさまざまな可能性を引き出し、自己表現を後押しする存在であり続けるのではないでしょうか。 

 スカルプD、そしてアンファーの挑戦は、単なるヘアケアを超え、人々が自分らしく生きる未来を形づくっていきます。 

※本稿はPR記事です。

購入はこちらから
https://item.rakuten.co.jp/angfa/cp_set5/

不動産会社、お客への初期対応を丸投げ…「楽トス」導入企業が急増の理由…アポ取得率が3倍に、「追客」も代行

●この記事のポイント
・不動産業界では問い合わせからの初動対応が契約可否を左右するが、人手不足や休日対応の遅れが課題となっている。株式会社ROUND TOSSの「楽トス」は、不動産会社に代わり問い合わせから約80秒以内で折り返し電話を行い、購入・売却希望者の希望条件や背景を丁寧にヒアリングし共有するサービス。
・AIを活用し、メール配信や検討度合い分析による効果的な「追客」も実施、アポイント取得率を大幅向上させる事例もある。現在約100社が導入し、大手顧客も抱える。将来的には蓄積データを活用したAIオペレーター化も視野に入れており、人手依存の強い不動産業界におけるDX推進の切り札となる可能性がある。

 物件を買いたい・売りたい客から不動産会社にコンタクトがあった場合、初動の対応が契約の可否を決めるといわれる。不動産会社からのレスポンスが遅ければ、客は他社に流れてしまうためだ。だが、人手の少ない中小業者が迅速な対応を取るのは難しく、大手でも対応が遅くなってしまうこともある。そんな貴重ともいえる初期対応を“丸投げ”できるサービスが「楽トス」だ。ネットからの問い合わせに対し、わずか80秒以内で折り返しの電話をかけ、客へのヒアリングを行うサービスである。売買を検討している客に対し、後日「追客」も行う。楽トスは不動産会社のニーズにどう合致し、どの程度の効果があるのか。株式会社ROUND TOSSの代表取締役CEO・林大輔氏に取材した。

目次

コンタクトからわずか80秒で電話をかける

 現代では、物件の売買を検討している客はネットでコンタクトを取るのが一般的だ。不動産会社はコンタクトを受けたあと、客に電話をかけ、ヒアリングを進めていく。だが初動が遅いと客は他社に流れたり、売買意欲が低下したりしてしまう。それを防ぐため、不動産会社に代わって「初期対応」を行うのが「楽トス」である。

「楽トスはコンタクトがあった際、不動産会社に代わって70~80秒でお客さまに電話をかけるサービスです。購入目的者に対しては、希望のエリアや予算、新築か中古かといった概要を聞きます。『子どもが大きくなった』『転勤に伴って』といった背景も重要な情報なので、購入検討者の動機までヒアリングします。売却検討者に対しても同様、物件の概要や希望の売却額、動機などを聞いていきます」(林氏)

 

 特に売却希望者は、多数の企業にコンタクトを取れる一括査定サイトを使う場合があり、ライバルが多いため初動のスピードが重要になるという。ヒアリング内容は不動産会社に共有される。

「コールセンターは自社で内製化しており、コンシェルジュ並みの対応ができるよう教育しています。売却希望者の場合は『ローンが支払えなくなった』などのマイナス因子もあるため、丁寧に対応しなければなりません」(同)

背景に人手不足対応

 不動産会社は大手から零細までさまざまだ。個人経営の場合、客との面談中にコンタクトがあっても気が付かず、すぐに対応することはできない。大手でも休日のコンタクトには対応が遅れてしまう場合がある。リリースから1年が経ったが、現在では約100社が楽トスを利用しており、上場企業の顧客もいるという。

「不動産業界は人手不足という課題を抱えているうえに、離職率が高い業界です。そして社員は営業から契約まで一気通貫で行うのが一般的です。経営陣から見た場合、新入社員には電話対応から契約締結まで教えなければなりません。しかし、共通した教育機関がなく、大学の不動産学部も国内では7校しかないのが現状です。せっかく社員を育てても離職すると無駄になります。反響に対する初期対応や見込み客への追客対応だけでも外部に任せられれば全体の業務は楽になる。ニーズがあるのではと考え、楽トスの開発に至りました」(同)

 楽トスを端的に表現すれば「インサイドセールスのアウトソーシング」であると林氏は言う。インサイドセールスとは、電話やメールなど、会社の室内にいながら行う営業活動のことだ。楽トスに任せることで、不動産会社は対面での商談に専念できるようになる。

AIをつかって「追客」を行う

 楽トスでは初期対応だけでなく、売買検討者に対して定期的に追客も行う。過去にコンタクトがあった購入検討者には普段から物件情報のメールを送信し、売却検討者に対しては相場情報をメールで送り続ける。その後、タイミングを計って電話をかけ、購入・販売の検討状況をヒアリングする。

「メールは物件情報や相場情報を自動で送るシステムを構築しています。電話に関しては、頻繁にかけてしまうと客は嫌がってしまいます。そのためタイミングを見極めることが重要です。メールには顧客専用のリンクが貼られているため、リンクを踏んだ回数・タイミングなどを元にAIで検討者の売買意欲を計測し、高まったところで我々から電話をかけます」(同)

 売却検討者に送られるリンクは、検討者専用の物件査定サイトとなっている。AIをもとにその場で売却金額を予想できる。

「楽トスの導入によって不動産会社は歩留まり率が向上します。例えば、コンタクトに対してアポイント取得率が10%程度しかなかった会社が、楽トスを利用したことで30%まで向上したという事例もあります。不動産業界はそもそもアポ率が低いので、画期的といえます」(同)

オペレーターのAI化も

 全国に不動産会社(宅地建物取引業者)は約13万社以上あり、その数はコンビニより多い。現状約100社と契約する楽トスも顧客数を増やす余地は大きいが、質を維持したいため、やみくもな拡大はしないと林氏は語る。コールセンターのオペレーターを育てるのに1カ月半から2カ月程度要する。主軸とする不動産売買仲介のほか、コンシェルジュ並みの対応能力を活かして注文住宅のヒアリングや、リゾート・ヴィラなど富裕層向けの架電サービスも展開している。そして現在はシステムやメールでAIを活用しているが、オペレーターのAI化も検討しているという。

 不動産業界は人手に頼る業界であり、他業界のようにDXが進まなかった。依然としてFAXで物件情報をやり取りする企業も多い。一方で、自社単体でDXを行うのはコスト的に難しく、アウトソースする必要がある。楽トスが不動産業界のDXで一翼を担うかもしれない。

(取材・文=山口伸/ライター)

ボトムアップ型のDEIを育む、いくつかのヒント。

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DEI(Diversity, Equity, Inclusion)は今や、多くの企業で「経営課題」の文脈で語られています。鍵となるのはトップの「リーダーシップ」。とはいえ、リーダーがいくら旗を振っても、現場が動かなければ何も変わりません。現場の従業員一人一人がいかにDEIを自分ゴトとし、自ら行動していくか。多くの経営層が頭を悩ませています。

今回は「ボトムアップ型のDEI」をテーマに、障害福祉施設や企業の現場にeラーニングコンテンツを提供している株式会社Lean on Meの志村駿介氏と、dentsu Japanのチーフ・ダイバーシティ・オフィサーである口羽敦子氏が対談。同じくdentsu JapanでDEI推進を担当する濱崎伸洋氏の司会で行いました。

アンコンシャスバイアスも虐待も、「無知」から始まる。

濱崎:お二人は初対面ですよね。まずは自己紹介をお願いします。

志村:2014年に株式会社Lean on Meを設立し、現在まで代表取締役をつとめています。もともと弟がダウン症で、母が福祉施設で働いていたこともあり、障害者の支援が人生の早い時期から自分ゴトとなりました。大学を卒業して自らも施設で働いた時、ダウン症以外の障害の方への支援について悩み、いろいろ勉強したり試行錯誤したりといったことを、同じように悩んでいる人たちにも共有したいと思い、会社を設立しました。

口羽:電通グループはグローバルに事業を展開していますが、私はその中の日本グループ、dentsu JapanのDEIとサステナビリティを担当しています。また、電通グループの特例子会社である電通そらりの取締役もつとめています。

電通でのキャリアの出発点は、タイ電通の現地社員です。その後、東京でプランナーとして仕事をする中で、そろそろ本当にやりたいことをやりたい、それって障害のある人と仕事をして、その人しか見えない世界、可能性を世の中に見せることじゃないか、と思って、今に至ります。

濱崎:志村さんは施設で働いていた時のご経験からeラーニングコンテンツを提供する会社を設立したとのことですが、なぜ「eラーニング」なのでしょうか?

志村:家族に障害者がいる身として、施設では専門的な知識のある職員が支援を行っていると当然期待するわけですが、必ずしもそうでなかった。もちろん適切な支援を行っている方もいますが、そうでない方もいて、虐待まがいの行為を目にすることもありました。もちろん全ての施設がそういうわけではありません。ですが、自分が実際に目にしたことも事実です。そもそも、支援の方法に個人でバラつきがあるのはなぜだろう、と考えたのですが、障害者、とくに知的障害者の支援の公的な資格ってないんですよね。研修も受講しているのは管理職ばかりで、現場の職員、とくに非正規雇用の方は受講したくても忙しくて受講できない。でも、現場で支援に当たるのはそういった方なんです。

その結果、個人の思い込みでバラバラな支援を提供し、障害者本人が困ってしまう。個々人の問題というより知識を得る仕組みや体制に問題があるのではと思ったんです。

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口羽:原因のひとつに知識不足がある、という志村さんのお話は、よくわかります。企業の現場でもDEIを推進しようとすると、必ず反発したり自分には関係ないと言う人が出てくるのですが、そういう人に限って知識不足だったりします。無意識の偏見や思い込みで誰かを傷つけてしまう「アンコンシャスバイアス」が、まさにそれです。知識不足といいますが、本人が知ろうとしなかった、というより、知るための時間や機会がなかった、という方が正しいかもしれません。

「知る」を、仕組み化する。

志村:知識が必要な方に限って切れ目なく忙しい、というのはどこも同じですね。

濱崎:だから、忙しい合間でも学べる「eラーニング」なのですね。とはいえ、語学やビジネススキルの研修ではおなじみの「eラーニング」も福祉の現場ではあまり聞いたことがありません。事業を立ち上げて、まわりの反応はどうでしたか?

志村:最初はなかなか理解してもらえなかったですね。この業界は人と人の対面がベースですから、動画で何を教えられるんだ、と言う声もよく聞きました。転機になったのは、コロナ禍でした。あの時期、対面での研修が困難になり、また自宅待機の施設や企業も多かったことから、会社への問い合わせが一気に増えました。

口羽:あのコロナ禍は、いろいろな意味で、社会をガラッと変えましたよね。DEIでも、あの時期にリモートワークが普及したおかげで、育児と仕事の両立がラクになり、全員活躍のハードルがうんと低くなりました。

志村:コンテンツの受講者数が増えるにつれて、新たな課題も見えてきました。例えば、優秀な職員ほど、時間があれば目の前の障害者のことを考えてしまい、自分のことは後回しにしがちなんです。なので、単にコンテンツを提供するだけでなく、年間計画もセットで提供し、継続的に学ぶ「仕組み」からお手伝いするようになりました。ある施設長さんからは「最近は、障害特性の知識をベースに職員と会話するようになった」といった声が届きました。

口羽:本当に学んでほしい人ほど自分のことは後回し、というジレンマは私も同じです。そのためにdentsu JapanのDEI推進でも「知る」ことを、「仕組み」として回していくことを重視しています。

グループ横断でDEIについて学び、考える「DEIパーク」という取り組みでは、正しい知識の共有と当事者との対話をメインにプログラムを組んでいます。今では「子育て中の女性は管理職が務まらない」などといった発言も聞かなくなりました。知識をインプットするだけで、かなり多くの社員の意識と行動が前向きに変わるということを実感しています。

この取り組みのポイントは、業務時間として年間でプログラムを設定していることです。毎回各部署から参加者をアサインして半期に1回のペースで回しています。DEIに興味のない人も「業務」として参加し、気がつくと「無知」から脱却しているわけです。

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ボトムアップの決め手は、「レンズ」のインストール。

濱崎:口羽さんは以前より、「ボトムアップ型のDEI」を提唱されていますね。

口羽:DEIって結局、自分の中に「レンズ」があるか、に尽きると思うのです。目の前にある違いや違和感に気づく「レンズ」。それがあって初めて、自分ゴトになります。自分ゴトにならないと、どれだけトップダウンでやっても行動につながらない。だから、一人一人が「レンズ」をインストールすることが大切だと思っています。

志村:DEIって結局、人と人とのコミュニケーションの問題。人との適切な関わり方の探求ですよね。人と人との間のことだから、課題も悩みも人それぞれ。私たちが約2000本のコンテンツを用意しているのも、「レンズ」に合わせて探求できるようにしたいからかもしれません。

口羽:DEIは人との関わり方の探求って、まさにそうですね。すべては目の前の一人から始まる。「DEIは大切」と上から言われるより、隣の人が何に困っているかを知るほうが、よっぽど行動につながる気がします。

濱崎:お二人とも、現場の探求心にきちんと応える環境作りにこだわっているのですね。

先ほど志村さんは、人と人との間のことだから課題も悩みも人それぞれ、とおっしゃっていましたが、作成するコンテンツのテーマは、どのように抽出しているのでしょうか?

志村:もちろん、現場の方々の声を聴いてというのが一番ですが、それ以外にも、行政や法改正の動きをチェックしたり、世の中のマクロな動きに対応したりといったこともします。最近も当事者の高齢化に対応した「看取り」のコンテンツを作成しました。また、コンテンツをAIでテキスト化する試みも始めています。

口羽:実はAI活用は電通そらりでも新たなチャレンジを始めようとしています。担当従業員の過去の記録をAIに読み込ませて、対応に悩んだときの一次回答に活用することにトライしようとしています。自分ひとりでは思いつかなかった支援アプローチのヒントが得られるのでは、と期待しています。

志村:問題が起きるときは必ず予兆があるわけですが、AIのいいところは、当人が気づかなかった予兆まで、読み込まれている過去データを反映してアドバイスしてくれることですね。

口羽:Lean on Meさんのコンテンツを全部読み込んだAIに、現場で起きた問題を読み込ませれば、まさに最強ですね!

「日本モデル」のよさと限界を、突破したい。

濱崎:志村さんは米国の施設で働いた経験もおありですが、障害者に対する向き合い方で、日本と海外ではどんな違いがありますか?

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志村:日本はつい「効率性」で物事を判断しがちですよね。オレゴンで働いていた時、ダウン症の女性の移動支援でジムに行ったのですが、その方が入館に必要な暗証番号をなかなか打ち込めない。そういうとき、日本では支援員が代わりにやってしまうことが多いのですが、米国では本人にやらせる。その方も何度もトライして、ようやくできるようになりました。米国では「失敗する権利」「成長する権利」を奪うことがないんですよね。

口羽:それは興味深い話です。その違いは一体どこから生まれるのでしょうかね。

志村:日本では、障害者はまだまだ「支援」の対象なのかもしれません。弟と海外に行っても、海外の空港職員は弟に話しかける。ところが、日本の空港職員は私に話しかけるんです。障害者は家族やヘルパーが支援するもの、という思い込みがあるようです。

大阪・関西万博では、公式アドバイザーとして、職員向けのアクセシビリティ研修をお手伝いしたのですが、そこで強調したのは「まずご本人に話しかけてください」ということです。

濱崎:それは素晴らしい。もちろん、合理的配慮について一つ一つ学ぶことも大切ですが、そういったことのすべてが「まずご本人に話しかけよう」の一言で解決する気がします。

志村:重度の障害者向けの支援という点では、日本は世界でも類を見ないほど行政がしっかりしています。例えばタイでは、行政ではなく人々がお互いに助けあっています。どっちがいいのか、難しいところですね。

口羽:企業就労についても、同じことがいわれています。障害者雇用に特化した「特例子会社」という制度は日本にしかないモデルで、海外から見ると障害者の隔離だと捉えられているようですが、じつはよさもあって、日本のように知的障害のある方を企業が直接雇用することは、世界ではあまり例がないように思います。

濱崎:特例子会社があるから、企業に知見もたまっていくわけですしね。

口羽:先日、カンヌライオンズ2025の審査員を務めたのですが、審査委員長がGoogleのアクセシビリティ担当のリーダーでした。聴覚障害があるのですが、彼女の「私は支援されるためではなく、社会を変えるためにここにいる」という一言がとても印象に残っています。

志村:いいですね。海外の人って、刺さる言葉がうまいな。以前、ニュージーランドの障害者庁のトップの方にヒアリングした時も、「ナレッジ・イズ・パワー」という一言がとても心に残っています。

口羽:そういう意味では、志村さんの「まずご本人に話しかけてください」も、心に刺さるワンフレーズですよ。たった一言、本人に話しかけることから、世の中が変わっていく気がします。

濱崎:ボトムアップとは、一人一人のちょっとした革命の積み重ねで、世の中を変えていくことなんですね。志村さん、口羽さん、本日はありがとうございました。

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・dentsu JapanのDEIサイトはこちら
https://www.japan.dentsu.com/jp/deandi/


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メタプラネットQ2決算—ビットコイン運用益468%、“アジア最大の保有企業”が描く次の一手

 日本のメタプラネット(東証:3350)が2025年Q2の決算資料を公表し、年初来のBTC Yield(後述)が468%に達したこと、保有量が18,113BTCとなったことを明らかにしました。

 数字だけを追うと派手に見えますが、実際は「どう稼いだのか」「どんな資金調達を進めるのか」というビジネスの骨格が見えてくる内容です。

 公式スライドでは、Q2の売上高は123.9億円、営業利益は8.17億円とされ、ビットコイン関連の収益化事業が伸びの主因になりました。

 また、このように伸びた時は、投資家だけでなく、ハッカーの目も輝きを増します。そのため、投資を始めてみようという方はBest Wallet 公式サイトなどの安全で信頼性の高いウォレットの開設をおすすめします。

 Q2のメッセージをひと言でまとめるなら、「価格頼みではなく、仕組みでビットコインを増やす企業設計へと舵を切った」という点に尽きます。

決算で何が起きたのか

 Q2の売上高は123.9億円で前四半期比41%増、営業利益は8.17億円で同38%増となりました。純利益は111.1億円と示され、総資産は2,382億円、純資産は2,010億円に拡大しています。

 決算サマリーの内訳を見ると、売上の約9割を「Bitcoin Income Generation(ビットコイン収益化)」が占め、宿泊・メディアは補助的な位置づけです。単純な評価益だけではなく、収益構造として“稼ぐ”パートが立ってきた点が今回の最大のトピックです。

BTC Yieldとは?

 資料で強調されるBTC Yieldは、「保有BTC÷完全希薄化後株式数」という比率の期間変化率を指標化したものです。企業価値を株式の希薄化も踏まえて“どれだけBTCを積み増せているか”で評価する考え方で、純粋な会計上の利益でも資金繰りでもありません。

 2025年の年初来では+468.1%まで伸び、同社はこの指標をKPIとして掲げています。“利益”というより“1株あたりBTCの増殖度”を測る物差し、と理解すると本質がつかみやすくなるでしょう。

保有枚数18,113BTC—世界順位をどう読むか

 8月12日時点の保有量は18,113BTC。企業別の世界順位は情報源により差が出ています。ビットコイントレジャリーズの公表リストでは現時点で「7位」に位置づき、RiotやBullishなどの上位に続く規模です。

 一方、いくつかの海外メディアは「6位」と報じています。Cryptonewsは「4位」とする見出しを掲げましたが、同日付のランキングサイトと整合しない箇所があり、集計基準(対象企業の範囲、更新タイミング)でブレが生じた可能性も。実務的には“上位グループに入った”という把握で十分で、指標を見る際はソースの更新時刻と定義を併読するのが安全です。

どう稼いだのか:「収益化エンジン」

 Q4 2024に始動した「Bitcoin Income Generation」は、現金担保付きプットオプション(キャッシュ・セキュアード・プット)の引受けが柱です。Q2単体ではこの部門だけで113.1億円の売上を計上し、四半期ベースで約47%増と伸長しました。

 会社側は「BTCの評価益は業績予想から除外」と明記し、あくまでプレミアム収入など反復可能なキャッシュフローで通期の売上(340億円)と営業益(250億円)見通しを支える姿勢を示しています。“ボラティリティを怖がらず、むしろ保険料収入に転換する”のがメタプラネットの現在地です。

資金調達の新機軸:「Metaplanet Prefs」と555億円の枠組み

 同社は優先株による恒久的な資本調達「Metaplanet Prefs」を検討中です。スライドでは、クラスA/クラスBあわせて5億5,500万株の優先株を“認可枠”として想定し、棚卸し登録ベースで各2,775億円、合計5,550億円の発行余地を掲げました。

 これは国内の固定利回り需要に合わせ、BTCを裏づけとしたクレジット商品を段階的に組成する構想で、具体化には当局・取引所・引受との協議を要する旨も併記。加えて、海外報道ではこの優先株構想を「日本の債券市場にBTC連動のイールドカーブを持ち込む挑戦」と紹介しています。

 要するに、株式でも債券でもない“BTC担保の永続的な調達ライン”をつくり、買い増しの加速度を上げたい狙いです。この買い増しによって、価格が上昇する波に乗り遅れないように常に最新の情報にアンテナを張っておきましょう。

“1%クラブ”宣言:2027年に21万BTCという野心

 同社は2025年末3万BTC、2026年10万BTC、そして2027年に21万BTC(ビットコイン総供給の約1%)という工程表を示しています。これが達成されるかは市場次第ですが、目標の明文化は資本市場との対話において効果的。大胆なマイルストーンを公開し、資金と人材を呼び込む“磁力”として機能させるのがこの種のトレジャリー戦略の肝です。

背景にある潮流:なぜ日本企業がビットコインに振り切るのか

 メタプラネットは本来ホテル事業から出発した企業ですが、2024年以降は“ビットコイン・トレジャリー・カンパニー”として戦略転換を進めてきました。英フィナンシャル・タイムズは、同社がマイクロストラテジー(現Strategy)の路線に学びつつ、BTCを担保にM&Aなどキャッシュ創出事業を取り込み、長期的な積み増しを狙う構想を解説しています。

 国内外での資金調達環境や米国の政策ムードも追い風となり、株価面でも話題を集めてきました。国内市場の低金利・過剰貯蓄という構造の中で、“BTCを基軸資産に据える企業”が出てきたこと自体がニュースだといえます。

投資家が押さえたい数字の“意味”

 まず、BTC Yieldは会計上の利益ではありません。希薄化を含む株式構造に対してどれほどBTCを積み増せたかを見る、企業特有のKPIです。

 次に、ランキング報道は“対象の取り方”で順位が動きます。ETFや非公開企業、関連当事者を含むか否か、データの更新時刻の違いで変動しやすいのが実情です。最後に、メタプラネットの収益化はオプション・プレミアムに依存する度合いが高く、相場のボラティリティと資金管理が鍵に。

 華やかな数字の裏側にある“定義・前提・反復性”を確認してから評価する姿勢が、Q3以降のニュースを読み解く力になります。

今後の注目ポイント:Q3〜Q4で見るべきチェック項目

 年内3万BTCというマイルストーンに向け、同社がどの程度のペースで買い増せるかが最初の焦点です。優先株による調達は市場環境の影響を強く受けますし、発行条件の設計次第で希薄化耐性も変わります。さらに、オプション収益はボラティリティの低下局面で伸び悩むことがあります。

 会社側は評価益を業績見通しから外していますが、投資家心理には評価損益が影響しやすいのも事実です。“買えるだけ買う”ではなく、“調達—運用—リスク管理”の循環を回せるかが、来期以降の信認を左右します。

保有枚数と世界順位の“食い違い”はなぜ起きる?

 同時点でも、ビットコイントレジャリーズでは7位、複数メディアは6位、Cryptonewsは4位と表現しました。背景には、

①対象の母集団(上場企業のみか、関連会社・SPVを含むか)

②BTC保有のソース(法定開示かSNSか)

③更新タイミングのズレが関係します。

 読者としては、一次情報となる決算資料や開示を優先し、ランキングは「参考」として眺めるのが実務的です。順位の数字に過度に寄りかからず、保有量・調達余地・収益化の持続性という“実体”で企業を比べる視点が重要です。

※【PR】本原稿はインフォメーションです。

“好きの呪縛”を考える~数字で読み解く「好き」と幸福のリアル

電通デザイアデザイン(DDD)は消費と欲望の関係から、さまざまなソリューション開発や情報発信を行う組織です。

第21回からは、DDDが2025年5月に実施した「心が動く消費調査」を分析。調査結果から得られたインサイトやファインディングスをお伝えしています。

前回の記事では、物価高も相まって、したいことや欲しいものがあっても、そのためのお金がないと感じる人が多いことが明らかになりました。今回はまた切り口を変えて、人々の持つ「○○が好き」という気持ちにフォーカスした分析をお届けします。

「好きなことを仕事に」「好きで生きる」。ポジティブな言葉が飛び交う一方で、「好き」を大切にする生き方・働き方にとらわれている人も多いのでは?「好き」に時間を割ける大人は限られているのでは?また、好きが見つからない人は逆に肩身が狭い状況もあるのでは?総じて、人々は今、自身の「好き」とどう結びついているのか。

DDDの山田茜がそんな「好き」からくる“呪縛”を仮説に掲げ、2025年5月の調査をひもといてみました。

「仮説:好きの呪縛」とは?
「推し活疲れ」という言葉に見られるように、「好きなこと」があるのに、時間の制限や精神面でその「好き」とうまく向き合えない自分にストレスを感じる、あるいは、「推し」(好きな人やこと)ブームが盛り上がる中「好きなことがない自分」を気にしてしまう、といったように“好きな人やこと”が逆に人の行動や考えを縛ってしまうのではないかという考え方。

好きなことに使う時間を「最優先」する大人たち

私は趣味でキャリアコンサルタントの国家資格を取得し、活動をしています。キャリア相談でも非常に多いのが「好きなことを仕事にしたい」という言葉。検索エンジンで「就職」と検索すると、「就職 好きなこと」との予測が上位に出ることもあるくらいです。

また、SNS上では実際に好きなことを仕事にした人々の声が数多く発信されています。さらに、関連書籍の出版点数増加や若年層の調査結果からも、「好き」「やりたいこと」「自己実現」といったキーワードを軸とした生き方・働き方への需要が現在、確実に可視化され高まっていると言えるでしょう。

調査で好きなことに使う時間を「最優先」しているか否かを聞いたところ、なんと全年代の63.8%が 「好きなことのために使う時間を最優先している」と回答。

15〜19歳は男性が78.2%、女性が80.3%、70〜74歳は男性72.5%、女性74.8%と、若年層とシニアが高いのは、「学校や仕事、子育てに追われる時間が少ないから」と考えれば驚きは少ないかもしれませんが、面白いことに働き盛りも大きな隔たりはありません。30〜49歳でも6割前後をキープしているのです。

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仕事・家事・子育てに多くの時間を割かれているはずの層が、それでも半数超は好きなことのために使う時間を“最優先”していることになります。それを可能にしている背景には昨今のタイパ意識 やデジタル短尺文化が関係しているのではないかと推測できます。

気晴らしにスマホで推し動画を1本だけ見る、深夜に5分だけDIYアカウントを眺める……隙間に好きなコンテンツを楽しめるすべが進化した結果、忙しさを言い訳に「好き」を疎遠にしなくなったのではないでしょうか。

今回(2025年5月)の調査では特に探求心・創造意欲などに起因する「腕試し欲望」の増加が顕著だったこともあり、忙しい層でも「好き」に向き合う時間を取り入れる傾向が増高まっているのかもしれません。

「好きなこと」への優先度は幸福度に影響するか

次に、「好きなことのために使う時間を最優先している」人と「最優先していない」人が、それぞれどんな人なのか知るべく、違いを見てみました。

特に興味深い違いが表れたのが「自分は幸せだと思う」という設問への回答です。好き時間を最優先している人の70.2%が 「自分は幸せだと思う」 と答えている一方、好き時間を優先しない人の同回答は54.3%にとどまり、差は約16ポイント。生活の中で、好きなことを最優先にできないことが、生活者の幸福感を低下させる要因となっている可能性があります。

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「好き」がないことへの不安は

ここで、さらに疑問が湧きました。「好きなこと」に充てる時間を確保できない人の方が、幸福度が低くなるのは、なぜなのでしょうか?

鍵は“好きの有無”そのものにあるのかもしれません。その疑問を探るため、次の設問に目を向けたところ「自分にこれといった個性や趣味がないことに不安を感じる」という質問に「そう思う・ややそう思う」と答えた人は37.5%。つまり、6割以上は「好きがなくても平気」だと感じている計算です。

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「好き」時間を最優先できない層は幸福度が低めな一方で、「好き」がなくても平気な人の方が多数派です。このギャップの理由を求め、「自分にこれといった個性や趣味がないことに不安を感じる」人と「自分にこれといった個性や趣味がないことに不安を感じない」人の特徴を考えるべく両者を比較し、今回の調査の各設問にどのような回答の違いがあるかを比較してみました。

すると、特に顕著な違いとして「批判を避けるために周りに合わせてしまいがち」という特徴が見えてきました。

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「自分にこれといった個性や趣味がないことに不安を感じる」人の中で 「批判を避けるために周りに合わせてしまう方だ」と答えた割合は68.4%に上ります。一方「自分にこれといった個性や趣味がないことに不安を感じない」人では41.2%にとどまり、差は 27ポイントでした。

この結果から、好きがないことへの不安を感じる層は“目立ちたくない”“浮きたくない”という思いが強く、同調圧力にも敏感になりやすいことが読み取れます。

こうした層は、「好き」への時間を確保できないというより、「好き」なことがない、または「好き」なことが分からないから、時間を確保しようとしていないのかもしれません。ただ、本当に「好き」がないのかは、いったん立ち止まって確認したいところです。周囲に合わせる性格ゆえに自分の「好き」のハードルを上げてしまったり、「好き」を抑え込んでしまっているケースもあるからです。

「もしかしたら好きかも」レベルのことでも優先してみる、意識して時間を確保してみる。続けてみて合わなければ切り替える。刺さったら少し伸ばす。こうした小さな積み重ねで、「好きがないから時間を取らない」という循環が変わります。結果として、「好きなことのために使う時間を最優先している人」との幸福ギャップを縮める余地は十分にあるのではないでしょうか。好きは対象への想いの“深さ”よりも先に、“そのための時間を確保するか”が鍵になりそうです。

「好きの呪縛」よりも大きな「好きの恩恵」

6割超が好きなことのために使う時間を最優先し、そのうち4人に3人が幸福を実感している。

このデータは「好き」への時間を確保している人ほど幸福度が高い傾向を示しており、「好き」時間を最優先できていない少数派との幸福差を可視化しました。

一方で、好きなことがないことに不安を感じる層は想定外に少ない、という面白い発見がありました。近年マーケティング業界では推し活や趣味のコミュニティなど、「好きがある」人への探究にフォーカスが当たりがちですが、この結果をふまえると、「好きがないものの、それに対して不安を感じていない」人の行動実態をひもとくのも面白いかもしれません。

また、「好きの呪縛」とは、当初仮説として立てた “好きがないこと”そのものではなく、“好きはこうでなければ”という思い込みだったのではないでしょうか。好きの大きさも形も人それぞれ。小さな「好き」でも、「好き」を持っている人が隙間時間に優先的に向き合うことで、幸せを実感できるようになる層が増えるかもしれません。

「好き」に時間を割ける大人は限られているのでは?また、「好き」が見つからない人は逆に肩身が狭い状況もあるのでは?そんな仮説を基にデータを分析した結果、見えてきたのはそうした「好きの呪縛」は幻想で、やはり好きなことにかける時間が幸福度へとつながる。すなわち、「好きの恩恵」の方が大きいという事実でした。

【第10回「心が動く消費調査」概要】
・対象エリア:日本全国
・対象者条件:15~74歳男女
・サンプル数:計3000サンプル(15~19歳、20代~60代、70~74歳の7区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
・調 査 手 法:インターネット調査
・調 査 時 期:2025年5月13日(火)~ 5月16日(金)
・調 査 主 体:電通 DENTSU DESIRE DESIGN
・調 査 機 関:電通マクロミルインサイト
 

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政府、AI活用による人権侵害の実態を調査へ…企業の人事採用基準で差別、著作権侵害の懸念

●この記事のポイント
・日本のAI法は努力義務のみでEUと比べ規制が弱く、開発促進と人権保護の中間的立場
・AIによる人権侵害は大きく3つの分野で懸念され、現行法では対応が不十分
・著作権保護、クリエイター保護、選挙・政治への影響が今後の重要課題

 政府はAI(人工知能)による人権侵害リスクについて実態調査を開始する。7月3日付日本経済新聞記事によれば、6月に施行されたAI関連技術の研究開発・活用推進法(AI新法)に基づき、企業の人材採用における差別の実態などを調査するという。日本企業の間でも採用におけるAI活用が広がるなか、見直しの動きが生じる可能性がある。海外企業ではAI活用により採用面で男女差別が生まれている事例が明らかになっている。

 また、生成AIによってつくられたコンテンツが、クリエイターの著作権を侵害したり、フェイク画像・動画がそこで使用された人物の人権を侵害するケースも想定され、そうした行為に一定の歯止めがかかる可能性もある。日本のAI新法の現状と課題、そして今後必要となる取り組みについて、識者への取材をもとに追ってみたい。

●目次

 

「規制がない」日本のAI新法の実情

 政府がAI活用による人権侵害の実態調査に乗り出した背景について、明治大学専門職大学院ガバナンス研究科教授の湯淺墾道氏は次のように解説する。

「直接的な要因は、6月に施行されたAI新法ですが、AI新法はEUのAI法と異なり、AIの開発をする側、あるいはそのAIを利活用する側両方に対して、特に規制がありません。要するに努力義務しかないんです」

 EUのAI法には、リスクベースなアプローチにより、非常にリスクの高い使い方については禁止規定があり、リスクに応じて慎重な使用を求める罰則を伴った規制が設けられている。これに対し日本のAI新法には罰則規定がないという。

「EUのような厳しい罰則付きの規制を求めていた人たちからすると、人権を守るということについて不十分だということになります。日本政府としては日本がAI技術の開発で遅れをとっている現状を踏まえ、できるだけ開発者に対する規制は入れたくなかったのではないでしょうか。EUのように厳しい罰則も伴ったAI規制を求める声と、逆にAI開発をできるだけ促進したいという声の、いわば真ん中を取るかたちで、政府がAIによる権利侵害を調査して場合によっては指導・助言を行うというかたちで落ち着いたという印象です」

想定される3つの人権侵害分野

 AIの活用による人権侵害としては、大きく3つの分野があるという。

 第1の懸念は、プライバシー情報の収集問題だ。

「AIは学習のためにプライバシー情報、個人情報を幅広く収集するという問題がまず第1点です。第2は、監視・追跡システムへの応用による懸念です。AIと監視カメラを組み合わせることで、例えば個人が特定されて追跡される懸念や、収集した情報を使ってプロファイリングが行われる懸念があります。

 実際にアメリカの一部の裁判所では、AIによるプロファイリングが刑事事件の量刑判断に活用されています。有罪か無罪かは陪審員が決めますが、懲役10年にするのか20年にするのかという量刑は裁判官が決めます。その時にAIで、被告人が再犯する確率を出すわけです。それだけに基づくわけではないですが、それも材料にして裁判官が判断するかたちになっています。

 そして第3には、AI生成による違法コンテンツの問題です」

個別法での対応が日本のアプローチ

 日本では、AI新法に具体的な規制を盛り込まず、個別法で対応するというアプローチが取られているという

「EUのAI法には、リスクに応じて“こういう使い方をしてはならない”“こういう使い方をする時には本人の同意を取らないといけない”といったかたちで、個別の使い方に対する規制が定められています。これに対して日本のAI新法には罰則を伴う規制が定められておらず、個別領域に規制できる法律で対応していくというのが日本のアプローチです」

 「学習天国」と呼ばれる著作権法の課題

 著作権保護との兼ね合いという面でも問題があるという。

「日本の著作権法は非常にAIに甘い規定になっており、学習のためなら事実上、著作物を利用し放題といえる状況です。一部では“学習天国““学習パラダイス”という言葉があるほどで、一部の例外を除きAIの学習のためには著作権者の許諾なく著作物を利用できます。営利・非営利を問わないなど、諸外国に比べてもかなり甘い規定になっているにもかかわらず、日本のAI開発は遅れているわけなので、AI開発と著作権保護のバランスをどう取るかというところは、もう1回考え直す必要があるかもしれません」

 今、AIで“ジブリっぽいイラスト”や“声優さんのような声”を生成することが流行っていますが、こうした“●●っぽい”ものを生成するということは規制されていません。こうしたものがAIでどんどん作られてしまうと、クリエイターやアニメ会社などが成り立たなくなる恐れがあり、作風や声をAIによって模倣するという行為をどう考えるかというのは、クリエイターの業界にとっては死活問題です」

 政治・選挙への影響についても湯淺氏は警鐘を鳴らす。

「将来的にSNSの力で選挙の結果が大きく左右されるようになると、SNS上でAIを使った特定の情報や偽情報の拡散、拡散が、ますます激しくなっていくと予測されます。そのため、AIによって選挙や政治に影響が出るということが明らかになった場合、それにどう対処するのかということは、非常に大きな問題になってくるかもしれません」

 日本のAI新法は、技術開発の促進と人権保護のバランスを取ろうとする法律だが、具体的な規制力に欠けるという課題を抱えている。今後、個別法の整備や運用の強化とともに、AI時代に適応した新たな法的枠組みの構築が求められることになりそうだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

ベンチャー企業支援拡大へ=融資など1000億円目標―りそな銀社長

 りそな銀行の岩永省一社長は4日までにインタビューに応じ、ベンチャー企業向け支援を拡大させる方針を明らかにした。新株予約権と融資を組み合わせた「ベンチャーデット」などの実行額を、2029年3月までに累計1000億円まで引き上げる。岩永氏は「日本経済はベンチャー企業なしには成長できない」と強調した。

 ベンチャーデットは、新興企業の将来性を評価し、あらかじめ定めた価格で株式を取得できる新株予約権を付けてもらうなどして融資する手法。企業にとっては株式の希薄化を抑えられるため、新株を発行して資金調達するより経営の自由度を保ちやすい点が特長だ。

 りそな銀は今年7月末までに計約57億円のベンチャーデットを実行している。現在は創業直後の企業への融資が中心だが、今後は新規株式公開(IPO)などを見据える成熟期企業への支援にも力を入れ、ベンチャー企業を支援するファンドへの出資も積極化する。

 岩永氏は「企業の成長に伴走し、段階的に資金供給を大きくしていく。将来的には銀行取引にもつながってほしい」と話した。

(記事提供元=時事通信社)
(2025/09/04-18:04)

デジタル身分証「次世代の当たり前」は誰が作る?「GAFAも狙う」データ主権をめぐる熾烈な戦い

●この記事のポイント
・デジタル証明の新しい国際標準「DID/VC」が、従来の信頼モデルを変えつつある。不要な個人情報を渡さずに、必要な事実だけを証明できるのが特徴。
・この技術で、個人データは企業やサービスに紐づかず、データそのものが信頼される時代になる。EUは2026年までの基盤整備を義務化するなど、世界で普及が加速している。
・Receptは、このDID/VC技術の基盤を提供。自治体との連携や海外展開も視野に入れ、「技術インフラ」として社会実装を支えている。

 いま世界的に、「データを誰が持ち、誰が信頼を担保するのか」という根源的な問いが突きつけられている。

 アップルのウォレットにマイナンバーカードを格納できるようになったことは、その象徴的な出来事だろう。その裏側には、DID(分散型ID)やVC(Verifiable Credentials)という国際的に普及が進む新しいデジタル証明の仕組みがある。

 この技術に特化し、事業者向けの発行・検証基盤とユーザー向けウォレットアプリを提供しているのが、スタートアップの株式会社Recept(リセプト)だ。

 従来の中央集権型の証明モデルに比べ、セキュリティやプライバシーの扱い方が大きく変わるこの技術を、どのように社会実装しようとしているのか。Recept代表取締役の中瀬将健氏に、経営者にとっても示唆の多い話を伺った。

●目次

デジタル証明の「次の当たり前」

 Receptが提供するのは、一見するとインフラ的な技術だ。SIer(システムインテグレータ)や大手企業がまだ内製できていないDID/VC技術をパッケージ化し、APIやSDKとして利用できるようにしている。公共案件や新規事業で「DID/VCを使いたい」という要件が出てきたとき、Receptの基盤を活用すれば短期間で安全なサービスを立ち上げられる。

 その強みを理解するには、従来の電子証明の仕組みとの違いを押さえておく必要がある。たとえば飲酒時の年齢確認を考えてみよう。

 従来は免許証やマイナンバーカードを提示するが、その際には氏名や住所、顔写真など不要な個人情報まで一緒に開示してしまう。これに対してVCでは「20歳以上である」という事実だけを証明できる。不要なデータを開示しない──これがGDPR(EU一般データ保護規則)に象徴される欧州のプライバシー規制とも親和性が高く、国際標準化が急速に進む背景となっている。

信頼を「サービス」から「データ」へ

 さらに大きな転換は、「信頼の担い手」が変わるという点だ。従来は「あるサービスがデータを保持しているから、その人を信頼できる」というモデルだった。しかしReceptが扱うVCでは、ユーザーが持つ証明書そのものに「改ざん防止」「発行元の正当性」を示す仕組みが組み込まれている。

 つまり「データがあるサービスに紐づいているから信頼できる」のではなく、「データ自体が信頼できる」世界になる。これはプラットフォーマーに個人データを独占されることへの懸念が強い欧州で特に歓迎され、EUは2026年までに加盟国全てがVC基盤を整備することを義務化している。

ウォレットの安全性をどう担保するか

 もちろん、ユーザーが証明書を持ち歩く以上、秘密鍵管理やアプリの安全性は死活的なテーマだ。

 Receptではスマホのセキュア領域に鍵を格納し、平文のままデータを保存しない。アプリ自体も難読化や暗号化を徹底し、逆コンパイルからの脆弱性悪用を防ぐ。クラウドに鍵を置く方式を取る事業者もあるが、同社は「基本は端末内で完結させる」設計思想を貫いている。

 このあたりは一見すると当たり前のようだが、攻撃や漏洩の多くは「基本の徹底不足」から生まれる。最先端の技術であっても、アプリケーション設計の地道な積み重ねが不可欠だ。

自治体との共創──データ活用の“次の一歩”を支える

 Receptは自治体との連携にも力を入れている。来年度予算に組み込まれる実証実験も控えているが、背景には行政が抱えるデータ活用の課題がある。

 マイナンバーカードから得られる基本情報は本人確認には有効だが、新しいサービス創出には不十分な場合が多い。自治体が保有する多様なデータを組み合わせ、市民向けサービスや地域マーケティングに活用するには、安全に連携するための仕組みが必要だ。

 そこでDID/VCが役に立つ。市民が自らのデータを管理し、必要なときにだけ必要な情報を開示できる。自治体にとっても「持ちすぎないこと」が逆に安心材料となる。課題は法制度よりも、むしろ「サービス設計」にあるという。新技術を既存システムに組み込むにはコストと手間がかかる。その投資に見合うメリットをどう示すか、自治体職員や市民にどう理解してもらうか。ここはスタートアップの伴走力が問われる領域だ。

ビジネスモデル──インフラからエコシステムへ

 Receptが見据えるのは「自社サービスの拡大」ではなく、「基盤を通じて他社サービスが立ち上がること」だ。

 同社が提供するAPIやSDKを使って取引先が作るサービスが増え、ユーザーがそのウォレットで複数の証明書を管理できるようになって初めてエコシステムが回り出す。つまり、Recept自身がプラットフォーマーになることを狙っているわけではない。日本でDID/VCを最も実用的に扱える技術提供者であり続けることが、同社の立ち位置だ。エンタープライズにとっては「内製していない先端技術をパッケージで導入できる」ことが大きなメリットだ。

 一方で自治体や市民にとっての価値提供は、まだ設計段階の議論が多い。ここをどう具体化できるかが、Receptの成長の次の焦点になるだろう。

普及に必要なのは「制度の後押し」

 技術の優位性があっても、市場が動くには制度的な後押しが欠かせない。たとえば金融業界では「犯罪収益移転防止法」に基づき、口座開設時の本人確認方式が法で定められている。海外ではすでにデジタル証明によるKYC(本人確認)が認められ、VCが活用されているが、日本ではまだ限定的だ。

 国内でもメガバンク主導のコンソーシアムが普及に向けて取り組んでいるが、成果はこれからだ。

 もし法制度で「VCを本人確認方式の一つとして認める」動きが出れば、市場は一気に拡大するだろう。

マイナンバーカードとの関係、そして海外展開

 日本ではマイナンバーカードという強力なインフラがある。本人確認のユースケースではVCと競合関係になる部分もあるが、国際展開を考えると話は別だ。

 教育分野では、単位の国際互換をVCで実現する取り組みが進んでいる。留学した学生の履修データを、国境を越えて信頼できる形で証明できるようになる。こうしたグローバルユースケースでは、国内に閉じたマイナンバーでは対応できない。ReceptもEUとの相互接続を視野に入れ、すでに実証実験を始めている。

 Receptの取り組みから得られる学びは、単なる技術論にとどまらない。

・信頼の構造転換
従来は「組織にデータを預ける」ことで成り立っていた信頼を、「データそのものが信頼できる」構造に変える。この発想は、業界を問わずサービス設計の前提を揺さぶる。

・サービス設計の壁
新技術を導入する際、制度よりも「既存システムに組み込むコスト」と「メリットの見せ方」が最大の障壁となる。スタートアップはそこに伴走力を発揮できるかどうかが鍵になる。

・制度と市場の連動
技術の普及は、規制や標準化の後押しによって大きく加速する。技術だけでなく、政策環境をどう読み解くかが経営戦略の重要な一部になる。

「Receptはプラットフォーマーになろうとしているわけではない。DID/VCという領域で、日本で最も実用的な技術提供者でありたい」

 中瀬氏の言葉は、スタートアップとしての潔さを示す。見えにくいインフラ領域であっても、その上に立つユースケースが広がれば、やがて誰もが当たり前に使う存在になる。信頼を「サービス」ではなく「データ」そのものに委ねる世界。その基盤を支える企業として、Receptの挑戦は始まったばかりだ。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)