“同志”型ブランディングに欠かせない、「小さな効力感」を持つ生活者とは?

過去2回の連載では、コロナ禍をきっかけに人々の意識が“サステナビリティ”へとシフトし、「コロナ以前に戻るのではなくこれを機により良い世の中になってほしい」という意識が高まっていること、また、そのような生活者の想いを企業が“いかに自社のパーパスに反映し、社会を変革していけるか”が、その企業の評価やブランド力に影響することを紹介しました。加えて、コロナ禍によって「企業と生活者が“同志”として共創する環境が整っていく」ことについても述べました。

第1回:よりサステナブルな世の中へ。コロナ禍がもたらした生活者意識の「5つのシフト」

第2回:“志す力”がアフターコロナの企業を強くする。社会変革のパーパス・デザイン

では、企業は自社のパーパスに基づき、どのように生活者と共創すれば、“社会変革”を実現していくことができるのでしょうか。

第3回は、企業にとって重要な共創パートナーとはどのような人々か、そして、より多くの生活者に参加してもらい、ブランディングにもつなげるヒントについて考えます。

「人々」の力が世界を変え始めている。消費も「社会変革消費」の時代へ

世界中で「より良い世の中」を求めて声を上げる人々の動きが後を絶ちません。環境問題への取り組みを訴える欧米の若者たちの動き、Black Lives Matterを合言葉にした人種差別撤廃への動き、性的マイノリティの人々が社会の偏見をなくし、平等な権利を訴える動き、などなど。

どの社会課題も複雑で深い問題であるだけに表層的な議論だけで解決することはできず、当然それぞれの活動には賛否両論があります。が、いずれにせよ、自らの意思で立ち上がった人々の動きが、結果的に規制や社会システムの再考を促し、世の中の変革を加速させていく様子には目を見張るものがあります。

この潮流は、街に出て実際に社会的な活動を起こすことだけにとどまりません。日々の消費生活や購買行動においても、意思が問われる時代になりつつあります。「商品を選ぶたび、私たちは、ありたき世の中に投票している」とは、欧米のある著名な企業が唱えている言葉です。今後、そのように、商品選択が社会変革のアクションの一つとなる、「社会変革消費」とでも言えるような現象が増えていくかもしれません。

■生活者の「小さな効力感」が社会を動かしている

この時代の流れは、少しずつ日本にも浸透し始めています。それを踏まえて、今回実施した調査では次のような設問を入れました。

「一人一人の力は小さくても、想いがあれば世の中を良い方向に変えていくことができると思う」

私たちはこの意識を、生活者の社会に対する「小さな効力感」と名付けました。塵も積もれば山となるように、この「小さな効力感」こそが先述したような世界を動かす大きなうねりを生んでいる源であり、これからの購買行動を左右するものになり得ると考えたからです。

調査結果を見ると、この問いに対し、日本の生活者全体の64.5%が「そう思う」もしくは「ややそう思う」と回答したことが分かりました(「そう思う」19.9%、「ややそう思う」44.6%)。

01
(図1)

「小さな効力感」を持つ人々とはどんな人?

「小さな効力感」を抱く生活者のうち、「そう思う」と回答したTop1層(全体の約20%)について、以下の傾向があることが分かりました。

傾向その1:社会・環境問題への関心が高く、特に環境問題で、全体との差が大きい

「社会全体が本気になって取り組む必要があると思う社会問題や環境問題」で見ると、全体に比べて概ねどの項目でも反応が高く、特に「地球環境(自然環境保全・地球温暖化)」で関心が高い。

傾向その2:企業のサステナビリティへの対応への期待が高く、取り組みを行っている企業に対しては高く評価する

「企業に期待すること」では、サステナビリティに関連する項目で全般的に高い傾向にある。

02
(図2)

ちなみに、サステナビリティへの期待に応えられれば、企業は高く評価される傾向にあります。実際に、企業各社に対する評価を見ると、環境・社会課題解決の取り組みに熱心との定評がある企業に対しては、全体に比べてより高く評価している結果も出ているのです。

傾向その3:情報感度や発信力が高い

「良いと思った情報はできるだけ多くの人と共有することが多い」「自分がいいと思ったものは他人にすすめる」といった項目でも全体を20ポイント程度上回る。

03
(図3)

以上のことから分かるのは、「小さな効力感」を持つ人々は、まさに企業と同じ志を持つ“同志”として、社会変革を共に推し進める共創パートナーとなり得る人々だということです。情報発信力が高い人々なので、応援したい活動であれば、周囲にも協力を呼び掛けてくれる可能性もありますし、その企業のファンになってもらえれば、力強いブランド推奨者になってくれるかもしれません。

「“同志”型ブランディング」に向けて。人々の心のスイッチをどう入れる?

ここからは、より多くの生活者に参加してもらい、ブランディングにもつなげるヒントについて考えてみたいと思います。パーパス・ブランディングには数多くのアプローチがありますが、その一つを、私たちは「“同志”型ブランディング」と名付けています。

これは企業と生活者が、同じ志の実現を目指し、共に一つのことを成し遂げる体験を共有する(=共創する)ことで、結果的に両者の絆も深めていく、という考え方です。今回紹介した「小さな効力感」を抱く人々との共創は、まさにこのブランディングの第一歩であるともいえるでしょう。

とはいえ、より大きな社会的インパクトの創出を目指す上で、現在「小さな効力感」を持つ人々を巻き込むだけでは決して十分ではありません。それらの人々に味方になってもらいつつ、ムーブメントを共に、さらに広げていく視点が重要です。では、より多くの人々を社会変革に向けた共創に誘うためにはどうしたら良いでしょうか。

今回の調査結果を電通独自の生活者データベース(PDM Tunes 2020)のデータと掛け合わせて分析した結果、「小さな効力感」を持つ人々の心のよりどころとなっている時間として、「感動する時」「気の合った友人や仲間と過ごす時」「何かを達成する、実現する時」「人から愛されている時」「ワクワクしている時」などの項目が、全体に比べて特に高いことが分かりました。

04
(図4)

注目すべきポイントは、「感動する時」を心のよりどころとする人に、「小さな効力感」を持つ人が多いという事実。私たちは、ここに“同志”型ブランディングを実現するための大きなヒントがあると考えています。

例えば、外から与えられた知識や頭で考えた「べき論」を超えて、一人の人間として純粋に感動したときこそ、「小さな効力感」を駆動する目的意識が芽生える。小さなことであっても、何かを成し遂げられたという達成感が新たな感動を生み、次の「小さな効力感」につながっていく。そして、「仲間」の存在や「ワクワク」「知識・教養を高める喜び」といった好奇心を満たす要素、「愛情(心のふれあい)」などが、この循環をさらに加速させる。このような仮説が考えられます。

05

生活者の心の中でこのような良い循環が生まれる体験を設計することができれば、より多くの人々に参加してもらい、さらに持続可能な取り組みへと進化させていくことができるのではないでしょうか。

これは、通常私たちマーケターが考えるカスタマージャーニーと少し異なる「心のジャーニー」です。生活者を顧客ではなく、「社会の中で生きる一人の人間」として捉え直すと、自然にその企画は顧客層以外の人々の共感にもつながり、社会に対してもより大きなうねりを生み出していけるものになる、と考えられます。

社会変革、そしてパーパス・ブランディングを行う際に必要なのは、「CX(顧客体験)」ならぬ、「HX」。つまり、一人の人間としての体験=「Human Experience」とも呼べるような事柄に対する感性と視点なのかもしれません。


調査概要 

“サスティナビリティ”や企業/ブランドの“パーパス(社会に対する志・社会的存在意義)”に関する意識調査

  • 調査手法:インターネット調査
  • 調査時期:2020年10月26~28日
  • 調査エリア/対象:全国20~74歳男女2000人
  • 調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト

 

多様化する価値観の時代に、広告はどう向き合えるのか?

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center」(FCC)は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティーでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティー」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

緊急事態宣言による“自粛疲れ”が顕著だった昨年のゴールデンウィーク。このとき、ドラえもんが日本中に届けたメッセージが話題になりました。新聞広告などで展開された「ドラえもん STAY HOME PROJECT」です。新聞広告は8ヶ国語に翻訳され、世界にも発信されました。

ドラえもん①

 

ドラえもん②
8ヶ国語に翻訳された新聞広告

この取り組みに携わったのが、電通FCCメンバーの有元沙矢香氏(電通 zero コピーライター/プランナー)と、根本陽平氏(電通パブリックリレーションズ PRプロデューサー)です。誰もが不安な日々を過ごす中、ドラえもんという国民的キャラクターのメッセージはどのように生まれたのでしょうか。このプロジェクトの経緯と、2人の広告コミュニケーションに対する考え方について話を聞きました。

電通、有元氏、電通パブリックリレーションズ、根本氏
※この取材は、オンラインで行われました。

不安が蔓延する中、ドラえもんだからこそ伝えられたメッセージ

有元:「ドラえもん STAY HOME PROJECT」のきっかけになったのは、自粛期間が始まってすぐの根本くんの行動でした。世の中が大きく変わる中で、私たちがクリエイティビティーやアイデアを生かしてできることはないか、根本くんがさまざまなスタッフに相談していました。その中で、私が以前お仕事をさせていただいた方が藤子・F・不二雄プロ(藤子プロ)にいらっしゃって、そこからこの企画につながりました。

根本:2020年の春は、自分のようなコミュニケーションを生業にする人間の無力さを感じた時期でした。とはいえ、僕にはそれしかできないので、コミュニケーションによって何かしらの支援ができないかという気持ちがありました。

有元:2020年はドラえもんの50周年でもありました。しかし、映画の公開延期など春の状況下ではとてもお祝いムードではなくなっていました。ただ、日本中に愛されてきたドラえもんだからこそ、この状況でできることがあるのではと思い、藤子プロさんに提案。プロジェクトがスタートしました。

このプロジェクトでは、ゴールデンウィーク初日の4月29日の新聞広告のほか、5月5日のこどもの日には、子どもたちに向けて「のび太になろう。」というメッセージを掲載しました。

5月5日掲載、新聞広告「のび太になろう。」
5月5日掲載、新聞広告「のび太になろう。」

ほかにも、飲食店や配達員の方を応援するポスターを作成。無料でダウンロードできる仕様にし、テイクアウトやデリバリー対応を始めた飲食店での活用や、配達員の方への感謝のメッセージとして掲示していただきました。

ドラえもん③
飲食店や配達員の方々への、応援ポスター

私がコピーを考える上でこだわったのは、ドラえもんという国民的キャラクターからの発信である以上、誰かを傷つけるメッセージになってはいけないということでした。当時はウイルスが今以上に未知のものであり、誰もが大きな不安を抱えていました。世の中全体がセンシティブな中で、ドラえもんが特定の誰かだけを応援したり、間接的にでも誰かに辛い思いをさせることになることは避けたかったんです。そこでコピーを精査していく上で行ったのが、ソーシャルハンティングでした。

人間の奥深くにある“インサイト”は、SNS上(=アウトサイド)に表面化している

根本:ソーシャルハンティングとは、SNS上にあふれている言葉を分析し、どんなことが今の人たちの怒りや悲しみ、あるいは喜びにつながるかを洗い出す手法です。本来、人間の本音や奥深くにある感情といった“インサイト”は、表に現れず、これまで様々な手法で調査されるものでした。しかし、SNSが普及した今は、SNS上にインサイトが表面化しています。この現象はよく「アウトサイド・インサイト」という概念で表されますが、そういった手法も参考にしながら、ドラえもんが送るメッセージを受け取った方がどんな反応が起きるかを想像していきました。

また、今の時代のメディアは、ターゲットという言葉が通じなくなっていると思います。新聞広告にせよ屋外広告やTVCMにせよ、SNSの力によって(よくもわるくも)本来届けたい層を超えて拡散される、届ける相手を限定することは非常に難しい世の中です。さらに価値観が多様化している。何かを発信するときに「目の前にいない誰か」をどこまで想像できるかがとても重要になっています。本来届けたい層に深く刺さり、さらにその外側にいる人たちを不快にしない、これは決して簡単なことではないですが、この時代に最も必要な技術の一つだと感じてます。

有元:たとえば今回の「のび太になろう。」というコピーは、当時の状況下で仕事を休めない方にとっては気持ちに逆行する言葉です。そこでみんなで話し合い、このメッセージは子どもの日に、子どもたちに向けて届けようということになりました。まだまだ遊びに行けないけれど、のび太くんみたいに一生懸命のんびりしようね。それが世界を救うことになるんだよ、とエールを送りました。漢字にはルビも振り、おうちでステイホームを頑張る子どもたちが家族と一緒に読める原稿にしました。原稿全体でそのスタンスを明確にすることが、ターゲット以外の人が原稿に触れた時にも誤解を生まない大切なポイントだと考えました。

根本: なお、ソーシャルハンティングは近年さまざまなマーケティングで使われています。そのひとつが、ライオンの取り組みです。洗濯物に関する悩みをソーシャルハンティングで分析すると、3大ニオイ悩み(部屋干し臭・干し忘れ臭・戻り生乾き臭)に対しての不満が散見されました。それらに共通するのは、きちんと洗ったのに臭ってしまうという点です。しっかり洗ったのにも関わらず、家族から「クサいけどこれ洗ったの?」と言われてしまう。ということでそのセリフに関する不満を吐露している人が複数いました。

ライオン「トップ クリアリキッド抗菌」プロモーション
ライオン「トップ クリアリキッド抗菌」プロモーション

SNS上で表面化されている本音を発見したことから、決してその人のせいではなく、ニオイに焦点をあてることで、その家族間の分断をなんとかチャーミングに解消できないかと考え、ライオンはこのニオイを「ゾンビ臭」という愛称で呼ぶことにしました。まだ一般化されていないテーマでも、問題を提起すると「あ、これ私の話だ!」と多くの人がその指にとまりたくなる。そういったイシューを探すのにもソーシャルハンティングは役立ちます。

コミュニケーションの深さは「考察」から生まれる

有元:根本くんと一緒にやっている日本花き振興協議会の「okulete gommen(オクレテゴメン)」プロジェクトもそのひとつです。コロナ禍で人と会えず、記念日や節目にお祝いができずにいる人をたくさんSNSで見かけました。そんな人たちに、遅れたってきっと喜んでもらえるはずだからお花でお祝いしてみませんか?と背中を押せればと考えた企画です。

日本花き振興協議会の「okulete gommen(オクレテゴメン)」プロジェクト

日本花き振興協議会の「okulete gommen(オクレテゴメン)」プロジェクト
日本花き振興協議会の「okulete gommen(オクレテゴメン)」プロジェクト

根本:コロナ前から友達への誕生日おめでとうLINEを送り忘れるなど、祝いそびれ自体はありました。ただ、コロナ以降は、祝いそびれに対するSNSでの言及が急増していました。それは流行の明確なサインです。
 
こういった分析は、価値観が多様化するほどより重要になります。ただ、有元さんのようなコミュニケーションをつくる人からすると、価値観の多様化は難しさも生むのではないでしょうか。誰かの喜ぶ言葉は誰かを傷つける可能性があります。その中で、いかにコミュニケーションの深度を高めるかは難しさもあると思います。深さを生もうとすれば、どうしてもメッセージの対象を限定する必要が出てきますから。

有元:そこは難しい部分ですが、1つ大切なのは誠実さだと思っています。ターゲットに対して、どこまで本気でメッセージを届けているか。そこに嘘がなければターゲット以外の人も納得してくれる。そして、ターゲットとの深度を増すヒントになるかもしれないと感じたのは、「情報の余白」と「過度な情報」です。正反対の事象ですが、どちらかに振り切ることで「考察」が始まる。

それを感じたのが、M-1グランプリのプロモーション映像の制作でした。この映像では熱量を伝えたかったので、情報量を増やす方へ振り切って制作しました。2019年のものは動画では追いきれない量のコピーを、2020年のものは映像自体の情報量を増やしました。すると、YouTubeのコメント欄にそのコピーを書き起こしたり、編集に対する考察などが繰り広げられ、コメント欄がひとつのメディアとして機能するなど、とても興味深い現象が起きていました。

M-1グランプリ2019「前前前夜」×「前前前世」プロモーション
M-1グランプリ2019「前前前夜」×「前前前世」プロモーション
M-1グランプリ2020 ×Creepy Nuts「板の上の魔物」スペシャルムービー
M-1グランプリ2020 ×Creepy Nuts「板の上の魔物」スペシャルムービーより

根本:CMに詰め込んだ大量の情報をもとに、ファンの方々が自発的に議論し始めたということですよね。

有元:はい。その議論のために何度も映像を見てくださる方がいて、これは深さにつながると感じました。余白も同じで、制作物に余白を作ると、「こういうことなんじゃないか」と一人ひとりが想像し、話し始めてくれます。広告は一方通行に言いたいことを言って終わりのゴールではありません。見た人たちが同じテーマで議論できる問いにもなる。広告単体で完結するのではなく、見ている人たちの想像力によって、発信者との深度を深めていくアイテムとして捉えられたら、広告は絆を深めるための大事なツールになるのではないかと信じています。

CR×PR、表現クリエイティブと情報クリエイティブを標準装備するチームへ

有元:いろいろと話が飛んでしまいましたが、今日はこの二人の掛け合わせで広告の可能性が広がるということが伝わったらいいなと思っていたのですが、伝わったのかな・・・?PR視点なしに広告を作ることはできなくなった昨今ですが、根本くんのようなPRのプロとがっつり組んで仕事したのは最近のことで、いろんな発見がありました。

PR概念図

根本:パーソナル担当とパブリック担当って感じですかね。僕(のチーム)が発見したパブリックなインサイトを有元さん(チーム)がよりパーソナルに届くようにアイデアに落として、最後にリスクがないか改めてパブリックな視点でチェックする。表現クリエイティブと情報クリエイティブと言いますか。

有元:一人で想像する範囲よりも、二人で想像する範囲の方が広がるし、その掛け合わせが、PRとクリエイティブはとてもいい気がします。

根本:マス向けに広告をしていく場合は特に、目の前にいない人をどれだけ想像できるか。どれだけ多くの人の置かれている環境や対峙している問題を想定して企画をブラッシュアップできるか。これらは価値観が多様化する中で、できたらいいね。ではなく、必須のスキルになってきていることを日に日に痛感します。私自身も無意識に固定化されてしまっている価値観を自己修正していくには、本当に日々勉強しかなく・・・。
その想像の範囲と深さを、分野が違うもの同士でより広げ、深めていく。広告がちゃんと世の中の人の心を動かし続けるものであるために、それを諦めずにやっていきたいです。

新たな兆し。ウェルビーイングを高める、男性×料理のおいしい関係

新型コロナウイルスの影響もあって生活様式が大きく変化している今、「Well-being(ウェルビーイング、イタリア語のベネッセレを始原とする“よくある状態”を意味する)」をより高める鍵は「料理」にあるのかもしれません。

男性の調理支援を目的としたプロジェクト、「世の中が変わるときは、料理をしよう。」が「BRUTUS.jp」と「AJINOMOTO PARK」でスタートしました。Withコロナ時代に幸福度を上げていくための新たな兆しとなりえる、男性×料理の魅力とは何でしょうか。

同プロジェクトの発起人である味の素社執行理事の岡本達也氏、その志に共感し、企画を立案した「BRUTUS」編集長の西田善太氏、岡本氏が料理とウェルビーイングの関係へ着目するきっかけを作った予防医学研究者の石川善樹氏の鼎談からヒントをお届けします。

(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行役員の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏
(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行理事の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏

「食」への行動が生み出す「居場所」。コロナ禍でも幸福度が高い人の特徴とは?
 

西田:今40~50代の男性の多くは、おそらくあまり料理をしていません。しかしそれは、社会と本人、双方にとっての新たな“鉱脈”が潜んでいることでもあると思います。

BRUTUSでは2011年に「最高の朝食を」という特集を組み、東日本大震災で多くの人が苦しんだ時期に、さまざまな思いを込めて朝ご飯だけは自分で作ってきちんと摂ろうと発信しました。レシピもたくさん載せ、コア読者である男性に朝ご飯から料理への意識を向けたいと考えたのです。

昨年から新型コロナの先行きが見えず不安な状況が続いていますが、簡単に抜け出せないのは、世の中が変わるときだからだと私は考えています。そういった時代に、足元を見直したり、根幹に立ち返ったり、アクションを変えてみることがプラスになるなら、男性にとっての料理はとてもいい素材です。ノウハウがたくさんたまっているし、簡単にも深くも追求できるカルチャー。今回はそれを提案するチャンスをいただけたので、BRUTUSなりに紹介していきたいと思っています。

西田氏

岡本:近年は、どちらかといえば“調理をすることは面倒だから可能な限り簡単に”といった風潮があったと思います。完全栄養食のような物を作るなど、商品の中にすべてそろっていることが当たり前という流れだったのですが、私はそこに違和感を覚えていました。

私自身は料理が楽しく、作ったものを誰かに「おいしい」と言ってもらえればうれしい。買い物に行き、旬の食材を見つければ気分が上がります。そこで「調理を簡単にすることだけが本当に“絶対”なのだろうか?」という思いがあったのです。

その後、石川さんから「料理をすることや食にまつわる時間が人生を豊かにする」と複数のエビデンスを基にしたお話を伺い、「私が求めていたものはこれだ!」と直感しました。現状、日本ではまだ料理の楽しさや充足感に気づいていない男性が多いように思います。この企画ではそこをお伝えできればいいですね。

岡本氏

石川:そうですね。近年は特に男性の料理頻度がとても低くなってきています。2019年に世界116カ国で「人々がどれくらいの頻度で料理をしているのか」という調査が行われました。すると、一国の例外もなくすべての国で男性よりも女性の方が料理をしていることが明らかになりました。それに驚くと同時に、料理頻度の男女格差は国ごとにばらつきがあることも分かりました。そして、格差が小さい国ほど、ウェルビーイング度が高い傾向がみられました。

また昨年、コロナ禍での苦境や大変さが話題に上がる中、僕は逆の視点を持とうと考え、この状況にもかかわらず幸福度やウェルビーイング度が上がった人の特徴を調べました。すると、共通していたのが料理でした。例えば在宅勤務で料理をするようになった人ほど、ウェルビーイング度が上がったという傾向がみられました。

西田:僕は食べることって「居場所」につながる行為だと考えています。例えば、飲食店に行き、食事をすることでそこにひとときの居場所ができますよね。今はそれが一気にできなくなってしまってたいへんつらい状況。

では、家で男性が居場所を作るにはどうしたらいいかというと、料理をするのがとても有効なんです。ただ座って料理を待っているだけではなく、参加しないと家では居場所ができません。食事を作るのは、そこで一歩先に進む大きなチャンスとも言えます。

岡本:時間をいい形で使えると人は幸せになる。食材を集めたり、料理をしたり、家族や気を許せる相手に食べてもらいながら話をするのはすごく幸せな時間ですよね。

西田:今、調理器具は非常に発達しています。そういった道具を使うのは手抜きではありませんし、機能やスペックなんかを見比べるのも男性には面白いはず。それに今ほど世の中にたくさんのレシピが出回っている時代はありません。好みの料理を作るシェフが、自分の料理の秘密を本でもインターネットでも動画でも簡単に明かしてくれている。料理を始めるのに、これほどいい時代はないのではと感じています。

料理は現代のキーワードすべてを象徴するアクション

石川:新型コロナの影響に限らず、今の時代は生活様式や概念に幅広く変化が生じているタイミング。「ダイバーシティー」や「サステナビリティー」「ウェルビーイング」といった時代のキーワードが次々生まれている中で、それらすべてを象徴するのが料理ではないかと考えています。

例えば料理をする過程で「食材ってどこから来て、どこに行く?」と考えることはサステナビリティーにつながるし、男性が料理をすることでダイバーシティーが推進され、女性がもっと自分の時間をしっかり持てるようにもなる。だから「世の中が変わるときは、料理をしよう。」という話なのですが、特にこれから料理はもっと今の時代の象徴になっていく期待感があります。

サステナビリティーを象徴する行為として脱プラやエコバッグを持ち歩くことが挙げられますが、もっと広い視点で“今の時代を象徴する行為”を考えたときに僕は料理だなと。入り口が広い半面、少し踏み込むととても奥深い世界が待っています。

石川氏

岡本:料理は基本的にクリエイティブな作業。やってみると楽しい部分がすごくたくさんありますよね。少しの工夫がどこかに現れてきますし、そういった検証をしていくのが好きな男性は多いと思います。

石川:一概には言えませんが、食べてくれる人が自分以外にいなくても、料理という行為自体がウェルビーイング度を上げる可能性は高いですね。買い物、調理、片づけをすべてするのは手のかかることではありますが、それをせずにファストフードで食事をしたとして、空いた時間に何をしているものでしょうか?

これは私自身もそうですが、何となくスマホを見たり、ぼんやりして時間をつぶしている場合、きっと本人が本当にしたくての行動ではないですよね。それに代わる時間の過ごし方として、料理はよりウェルビーイングを高める所作と言えるはずです。

西田:料理をすることで、自分の生活をきちんと管理してコントロールしている感覚もつきますね。

石川:そうですね。加えて達成感もあります。今は仕事も分業が進んでいるので、一つの事案を最初から最後まで全部自分で手掛けることはなかなかありません。“部分”の仕事に意味合いややりがいを感じるのは難しいものです。そういう意味でも料理は最初から最後まで自分が関われるので、すごく充実した時間の過ごし方になります。この企画を通して料理を食におけるニューノーマルと捉え、それも含めた新たな生活のバランスを見つけてもらえればと。

西田:世の中を変えていくのはやはり“能動”。外出自粛が続く中で、例えば動画サービスなどを受動的に見続けていた人たちは、コンテンツ疲れを起こしているように感じます。与えられるコンテンツに疲れたら、自分のコンテンツを作ればいい。それが料理だと思うんです。自分の料理は唯一無二の作品ですから。

料理をしなかった時間が長い人ほど最初の下ごしらえのハードルが高いと思ってしまうようですが、みじん切りが難しいなら切られた野菜を買ってきて、そこから始めることもできます。

岡本:私自身仕事に没入していた時期が長く、その当時は物質的な豊かさの方ばかりを追いかけていたように思います。けれど、石川さんとお話をする中で、一番大切なものはやはり「時間」だと気づきました。

時間はプライスレス。だからこそ、何に使うかということが非常に大切です。時間をいい形で使えると人は幸せになる。それがウェルビーイングなのではないかと思います。ウェルビーイングを生み出すのに一番いい時間の使い方が食と調理なのではという思いでこの企画を始めましたが、こういった取り組みは、すぐ終わってしまっては意味がありません。長期にわたって続けていくものとして携わっています。まずは日本の男性が料理の良さに気づき、始めることで周りも幸せになれるような動きのお手伝いが少しでもできたらうれしいです。


「世の中が変わるときは、料理をしよう。」

「BRUTUS.jp」の特集ページはこちら

「AJINOMOTO PARK」の特集ページはこちら

<コンテンツ詳細>

①Talk ~俳優・永山絢斗の『聞くレシピ』~
「料理×ウェルビーイング」をテーマに俳優・永山絢斗氏が各界の有識者と対談。予防医学研究者の石川善樹氏、作詞家の児玉雨子氏、情報学研究者のドミニク・チェン氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/talk01/

Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?
Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?

②Fun Cooking ~作りたくなるレシピ(動画付き)料理ってこんなに楽しかったのか!~
簡単で誰でも作りたくなるようなレシピを動画付きで紹介するコンテンツ。「ごはんと旅は人をつなぐ。」をテーマにレシピ開発を行う山田英季氏と、「Bistro Rojiura」「PATH」「LIKE」を経営するシェフ原太一氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/funcooking01/

③Recipe Archive ~作りたくなるレシピ 今はなきあの名店の味を自宅で!~
“最強料理芸人”の愛称で知られるクック井上氏が「BRUTUS」で連載していた「十中八九同じ味!思い出巡りの料理レシピ」から、選りすぐりのベストレシピ30を掲載。クック井上氏の料理術も紹介する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/recipearchive01/

④Book 美味求真2021 ~もっと食を知るためのブックリスト~
日本の美食文化の礎となった大正時代の名著「美味求真」(木下謙次郎著)へのオマージュとして、食にまつわる書籍を紹介。食文化研究家の畑中三応子氏が日本屈指の食の専門図書館(「食の文化ライブラリー」)から11冊を選書する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/book01/
 

新たな兆し。ウェルビーイングを高める、男性×料理のおいしい関係

新型コロナウイルスの影響もあって生活様式が大きく変化している今、「Well-being(ウェルビーイング、イタリア語のベネッセレを始原とする“よくある状態”を意味する)」をより高める鍵は「料理」にあるのかもしれません。

男性の調理支援を目的としたプロジェクト、「世の中が変わるときは、料理をしよう。」が「BRUTUS.jp」と「AJINOMOTO PARK」でスタートしました。Withコロナ時代に幸福度を上げていくための新たな兆しとなりえる、男性×料理の魅力とは何でしょうか。

同プロジェクトの発起人である味の素社執行理事の岡本達也氏、その志に共感し、企画を立案した「BRUTUS」編集長の西田善太氏、岡本氏が料理とウェルビーイングの関係へ着目するきっかけを作った予防医学研究者の石川善樹氏の鼎談からヒントをお届けします。

(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行役員の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏
(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行理事の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏

「食」への行動が生み出す「居場所」。コロナ禍でも幸福度が高い人の特徴とは?
 

西田:今40~50代の男性の多くは、おそらくあまり料理をしていません。しかしそれは、社会と本人、双方にとっての新たな“鉱脈”が潜んでいることでもあると思います。

BRUTUSでは2011年に「最高の朝食を」という特集を組み、東日本大震災で多くの人が苦しんだ時期に、さまざまな思いを込めて朝ご飯だけは自分で作ってきちんと摂ろうと発信しました。レシピもたくさん載せ、コア読者である男性に朝ご飯から料理への意識を向けたいと考えたのです。

昨年から新型コロナの先行きが見えず不安な状況が続いていますが、簡単に抜け出せないのは、世の中が変わるときだからだと私は考えています。そういった時代に、足元を見直したり、根幹に立ち返ったり、アクションを変えてみることがプラスになるなら、男性にとっての料理はとてもいい素材です。ノウハウがたくさんたまっているし、簡単にも深くも追求できるカルチャー。今回はそれを提案するチャンスをいただけたので、BRUTUSなりに紹介していきたいと思っています。

西田氏

岡本:近年は、どちらかといえば“調理をすることは面倒だから可能な限り簡単に”といった風潮があったと思います。完全栄養食のような物を作るなど、商品の中にすべてそろっていることが当たり前という流れだったのですが、私はそこに違和感を覚えていました。

私自身は料理が楽しく、作ったものを誰かに「おいしい」と言ってもらえればうれしい。買い物に行き、旬の食材を見つければ気分が上がります。そこで「調理を簡単にすることだけが本当に“絶対”なのだろうか?」という思いがあったのです。

その後、石川さんから「料理をすることや食にまつわる時間が人生を豊かにする」と複数のエビデンスを基にしたお話を伺い、「私が求めていたものはこれだ!」と直感しました。現状、日本ではまだ料理の楽しさや充足感に気づいていない男性が多いように思います。この企画ではそこをお伝えできればいいですね。

岡本氏

石川:そうですね。近年は特に男性の料理頻度がとても低くなってきています。2019年に世界116カ国で「人々がどれくらいの頻度で料理をしているのか」という調査が行われました。すると、一国の例外もなくすべての国で男性よりも女性の方が料理をしていることが明らかになりました。それに驚くと同時に、料理頻度の男女格差は国ごとにばらつきがあることも分かりました。そして、格差が小さい国ほど、ウェルビーイング度が高い傾向がみられました。

また昨年、コロナ禍での苦境や大変さが話題に上がる中、僕は逆の視点を持とうと考え、この状況にもかかわらず幸福度やウェルビーイング度が上がった人の特徴を調べました。すると、共通していたのが料理でした。例えば在宅勤務で料理をするようになった人ほど、ウェルビーイング度が上がったという傾向がみられました。

西田:僕は食べることって「居場所」につながる行為だと考えています。例えば、飲食店に行き、食事をすることでそこにひとときの居場所ができますよね。今はそれが一気にできなくなってしまってたいへんつらい状況。

では、家で男性が居場所を作るにはどうしたらいいかというと、料理をするのがとても有効なんです。ただ座って料理を待っているだけではなく、参加しないと家では居場所ができません。食事を作るのは、そこで一歩先に進む大きなチャンスとも言えます。

岡本:時間をいい形で使えると人は幸せになる。食材を集めたり、料理をしたり、家族や気を許せる相手に食べてもらいながら話をするのはすごく幸せな時間ですよね。

西田:今、調理器具は非常に発達しています。そういった道具を使うのは手抜きではありませんし、機能やスペックなんかを見比べるのも男性には面白いはず。それに今ほど世の中にたくさんのレシピが出回っている時代はありません。好みの料理を作るシェフが、自分の料理の秘密を本でもインターネットでも動画でも簡単に明かしてくれている。料理を始めるのに、これほどいい時代はないのではと感じています。

料理は現代のキーワードすべてを象徴するアクション

石川:新型コロナの影響に限らず、今の時代は生活様式や概念に幅広く変化が生じているタイミング。「ダイバーシティー」や「サステナビリティー」「ウェルビーイング」といった時代のキーワードが次々生まれている中で、それらすべてを象徴するのが料理ではないかと考えています。

例えば料理をする過程で「食材ってどこから来て、どこに行く?」と考えることはサステナビリティーにつながるし、男性が料理をすることでダイバーシティーが推進され、女性がもっと自分の時間をしっかり持てるようにもなる。だから「世の中が変わるときは、料理をしよう。」という話なのですが、特にこれから料理はもっと今の時代の象徴になっていく期待感があります。

サステナビリティーを象徴する行為として脱プラやエコバッグを持ち歩くことが挙げられますが、もっと広い視点で“今の時代を象徴する行為”を考えたときに僕は料理だなと。入り口が広い半面、少し踏み込むととても奥深い世界が待っています。

石川氏

岡本:料理は基本的にクリエイティブな作業。やってみると楽しい部分がすごくたくさんありますよね。少しの工夫がどこかに現れてきますし、そういった検証をしていくのが好きな男性は多いと思います。

石川:一概には言えませんが、食べてくれる人が自分以外にいなくても、料理という行為自体がウェルビーイング度を上げる可能性は高いですね。買い物、調理、片づけをすべてするのは手のかかることではありますが、それをせずにファストフードで食事をしたとして、空いた時間に何をしているものでしょうか?

これは私自身もそうですが、何となくスマホを見たり、ぼんやりして時間をつぶしている場合、きっと本人が本当にしたくての行動ではないですよね。それに代わる時間の過ごし方として、料理はよりウェルビーイングを高める所作と言えるはずです。

西田:料理をすることで、自分の生活をきちんと管理してコントロールしている感覚もつきますね。

石川:そうですね。加えて達成感もあります。今は仕事も分業が進んでいるので、一つの事案を最初から最後まで全部自分で手掛けることはなかなかありません。“部分”の仕事に意味合いややりがいを感じるのは難しいものです。そういう意味でも料理は最初から最後まで自分が関われるので、すごく充実した時間の過ごし方になります。この企画を通して料理を食におけるニューノーマルと捉え、それも含めた新たな生活のバランスを見つけてもらえればと。

西田:世の中を変えていくのはやはり“能動”。外出自粛が続く中で、例えば動画サービスなどを受動的に見続けていた人たちは、コンテンツ疲れを起こしているように感じます。与えられるコンテンツに疲れたら、自分のコンテンツを作ればいい。それが料理だと思うんです。自分の料理は唯一無二の作品ですから。

料理をしなかった時間が長い人ほど最初の下ごしらえのハードルが高いと思ってしまうようですが、みじん切りが難しいなら切られた野菜を買ってきて、そこから始めることもできます。

岡本:私自身仕事に没入していた時期が長く、その当時は物質的な豊かさの方ばかりを追いかけていたように思います。けれど、石川さんとお話をする中で、一番大切なものはやはり「時間」だと気づきました。

時間はプライスレス。だからこそ、何に使うかということが非常に大切です。時間をいい形で使えると人は幸せになる。それがウェルビーイングなのではないかと思います。ウェルビーイングを生み出すのに一番いい時間の使い方が食と調理なのではという思いでこの企画を始めましたが、こういった取り組みは、すぐ終わってしまっては意味がありません。長期にわたって続けていくものとして携わっています。まずは日本の男性が料理の良さに気づき、始めることで周りも幸せになれるような動きのお手伝いが少しでもできたらうれしいです。


「世の中が変わるときは、料理をしよう。」

「BRUTUS.jp」の特集ページはこちら

「AJINOMOTO PARK」の特集ページはこちら

<コンテンツ詳細>

①Talk ~俳優・永山絢斗の『聞くレシピ』~
「料理×ウェルビーイング」をテーマに俳優・永山絢斗氏が各界の有識者と対談。予防医学研究者の石川善樹氏、作詞家の児玉雨子氏、情報学研究者のドミニク・チェン氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/talk01/

Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?
Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?

②Fun Cooking ~作りたくなるレシピ(動画付き)料理ってこんなに楽しかったのか!~
簡単で誰でも作りたくなるようなレシピを動画付きで紹介するコンテンツ。「ごはんと旅は人をつなぐ。」をテーマにレシピ開発を行う山田英季氏と、「Bistro Rojiura」「PATH」「LIKE」を経営するシェフ原太一氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/funcooking01/

③Recipe Archive ~作りたくなるレシピ 今はなきあの名店の味を自宅で!~
“最強料理芸人”の愛称で知られるクック井上氏が「BRUTUS」で連載していた「十中八九同じ味!思い出巡りの料理レシピ」から、選りすぐりのベストレシピ30を掲載。クック井上氏の料理術も紹介する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/recipearchive01/

④Book 美味求真2021 ~もっと食を知るためのブックリスト~
日本の美食文化の礎となった大正時代の名著「美味求真」(木下謙次郎著)へのオマージュとして、食にまつわる書籍を紹介。食文化研究家の畑中三応子氏が日本屈指の食の専門図書館(「食の文化ライブラリー」)から11冊を選書する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/book01/
 

なぜ名門企業・日本製鉄は、売上80分の1の東京製綱に敵対的TOBを仕掛けたのか?

 ワイヤロープの最大手、東京製綱は3月末、田中重人会長(78)が辞任した。「中期経営計画の未達に対する経営責任を取る形で辞任の申し出があった」という。日本製鉄による東京製綱への敵対的TOB(株式公開買い付け)が成立したことを受けて辞任を申し出たものだ。

 日本製鉄のTOBは、東京製綱の経営権を握ることが目的ではなかった。持ち分法適用会社にすらしなかった。日本製鉄OBの田中会長の首をとるためTOBを仕掛けたというのが真相だ。「グローバル企業の日本製鉄が東京製綱にそこまでやるのか」(TOBに詳しいアナリスト)と物議を醸した。

 日本製鉄は官営八幡製鐵所を源流とし、新日本製鐵時代には「鉄は国家なり」と言ってはばからなかった。そんな大企業が、なりふりかまわず東京製綱を力でねじ伏せた。東京製綱は1887年、艦船用のマニラ麻のロープを国産化するために設立された。「日本資本主義の父」と言われ、2021年のNHKの大河ドラマ『青天を衝け』の主人公である渋沢栄一が創業メンバーの株主に名を連ね、渋沢が初代会長に就いたことで知られる。

 ロープの素材が鉄に移った。東京製綱はエレベーターやロープウェー、クレーンなどに使われるワイヤロープを製造するようになり、1970年1月、富士製鐵が資本参加した。同年3月、八幡製鐵と富士製鐵が合併して新日本製鐵が誕生した。新日鐵は住友金属工業との経営統合後、日本製鉄となり、現在も東京製綱の筆頭株主である。日本製鉄は東京製綱に原材料を供給している。

「ガバナンスの機能不全」と責任を追及

 日本製鉄は1月、東京製綱に対するTOBを発表した。TOB価格は1500円。36.5%のプレミアムを付けた。出資比率をTOB直前の9.9%から19.9%まで高める。これに対し、東京製綱は「事前に何らかの通告も連絡もなく、一方的にTOBが開始された」と反発。2月初旬にTOBに「反対」を表明したことから経営陣が同意しない敵対的買収へと発展した。

「トップ指名プロセスの形骸化」「独立性・多様性が不足した取締役会」─。日本製鉄が公表したTOBの説明書は辛辣な言葉のオンパレードだった。田中会長の名前を挙げ、「代表取締役の在任期間が20年に及ぶ」ことを問題視した。報道陣に対して日本製鉄の幹部は「退任は必須」と言い切った。日本製鉄が「もの言う株主」になったようだと、市場関係者を驚かせた。

 日本製鉄は2017年春から東京製綱に経営改善を促してきたという。「ガバナンス体制の機能不全等の問題を抱えているにもかかわらず、それらの問題に対する有効な対応策を講ぜず、業績が継続して悪化している状況をこれ以上看過することはできない」(日本製鉄)と、かなり強い調子で不信感を露わにした。「ガバナンス体制の機能不全」の元凶として田中会長を名指ししたことになる。

 TOBの目的が田中会長の追い落としにあることが明白になった。TOBが成立したのだから田中会長の辞任は当然の帰結であろう。

TOBの背後に個人的確執が存在

 田中氏は1943年1月生まれの78歳。67年、富士製鐵に入社。合併後の新日鐵で取締役大阪支店長だったのを最後に退任。2001年6月、旧富士製鐵の出資先である東京製綱の副社長に転じ、翌02年4月に社長に就任した。2010年から会長の座にある。この間、代表取締役をずっと続けてきた。

 日本製鉄の前身の新日鐵住金時代から確執があったようだ。だから、東京製綱の定時株主総会での田中氏の取締役再任の賛成率は低かった。18年6月総会の賛成率は79.47%、19年6月総会は80.2%、20年6月の総会は82.21%。浅野正也社長の賛成率が94.90%あったのと比べ、かなり低い。日本製鉄が田中氏の再任に一貫して反対票を投じてきたことを示している。

 19年4月、新日鐵住金は社名を日本製鉄に変更。1950年の旧日本製鐵解体後、69年ぶりに日本製鉄という名前が復活した。1970年、八幡製鐵と富士製鐵合併で発足した旧新日本製鐵の歴代社長の悲願がやっと実現した。

 社名変更に伴い、橋本英二副社長が社長に昇格、進藤孝生社長が代表権のある会長に就いた。橋本社長は79年に新日鐵に入社、進藤会長は新日鐵発足の3年後の73年に入社した生え抜きである。

 これに対して、東京製綱の田中会長は新日鐵発足以前の富士製鐵に入社した長老である。個人的確執が今回のTOBの背後にあるとの指摘もある。

 東京製綱の21年3月期の連結決算の売上高は前期比8%減の580億円、最終利益は2億円(20年3月期は24億円の赤字)にとどまる見通し。たしかに業績はよくない。日本製鉄の21年3月期の連結決算(国際会計基準)は、売上収益が前期比18%減の4兆8500億円、最終損益は1200億円の赤字(20年3月期も4315億円の赤字)を見込んでいる。日本製鉄も決して褒められた業績ではない。

 日本製鉄の経営陣が出資先に対して、大株主として経営改善を厳しく要求するのは間違っていない。ただし、今後は自分たちの経営についても厳しく責任を問われることになるのは自明のことである。

(文=編集部)

日本のコロナワクチン接種率、英米の30分の1…先進国のなかで経済回復が大幅な遅れ

はじめに

 年明け以降、米国の景気指標は改善傾向が強まっている。代表的な指標の一つであるマークイットPMIは、2020年4月の最悪期から21年3月には60前後まで上昇し、米国の景気は昨年4月をボトムに回復基調をたどっている。

 これは、3月11日に成立した1.9兆ドルの財政刺激策のうち、総額4,100億ドルの現金給付が支払われ始めたことが一因だろう。しかし、それに加えてワクチンの接種が進み、集団免疫獲得の期待の高まりを背景に、米国の景況感回復の勢いが強まった側面も大きいことが推察される。

 中国の購買担当者景気指数(財新PMI)も、新型コロナウィルス感染者数の再増加を受けて2月の旧正月にかけて経済活動への規制が強化されたことで感染抑制に成功し、3月は改善している。さらに欧州でも、一部の国では3月半ば以降に新規感染者数が急増したことから規制を強化拡大したが、春になりワクチン接種が加速するとの期待等を追い風に、ユーロ圏のPMIが改善傾向にある。

よりサービス業で強いワクチン接種率と景況感の関係

 対照的なのは日本だ。新型コロナウィルスの感染拡大に伴う消費者のリスク回避姿勢継続からサービス業の悪化が続いた結果、日本の総合PMIは主要国で唯一、分岐点の50を下回っている。

 日本の総合PMIは20年4月に25.8と過去最悪の水準まで落ち込み、その後は上昇傾向にあるものの、特にサービス業では依然として50を大きく下回っている。これは、日本の脆弱な医療提供体制に伴う経済活動の抑制が頻発しているだけでなく、国内で新型コロナウィルスワクチンが開発されていないこと等を背景に、ワクチン接種が米中欧に比べて圧倒的に遅れていることもある。つまり、主要先進国で日本だけがワクチン確保に苦しめられる構図となっている。

 GDP(国内総生産)や鉱工業生産指数などの経済統計の先行指標として注目されるPMIとワクチン接種率の連動性の高まりは、定量的にも示される。こうした構図を考える一つのよりどころは、単回帰分析である。これは2つのデータの関係性の強さを表す指標を計算し、数式化する分析手法である。そして、単回帰分析によれば、相関係数を二乗した決定係数が、回帰分析によって求められた目的変数の予測値と実際の目的変数の値がどの程度一致しているかを表している指標とされる。

 そこで、人口当たりワクチン接種率を説明変数、PMIの水準を被説明変数として単回帰分析をするにあたり、問題になるのはワクチン接種が業種に及ぼす影響が異なることだ。すなわち、コロナ禍では移動や接触を伴うビジネスがダメージを受ける一方で、非接触や移動を伴わないビジネスが恩恵を受ける。いわゆるK字型回復の特徴がある。

 この状態では、PMIを製造業とサービス業に分けないと、ワクチン接種率の影響がわかりにくい。そして、こうした特徴は世界的にみられることから、製造業とサービス業に分けて単回帰分析を実施した。これによると、業種にかかわらず、統計的に優位な正の相関関係があり、ワクチン接種率と景況指数に関係があることが指摘できる。つまり、ワクチン接種率が世界経済の格差を広げていることが示唆される。

日本のワクチン接種率は英米の30分の1

 しかし、業種別PMIのワクチン接種率弾力性を見ると、製造業が0.12に対してサービス業が0.15、決定係数も製造業が0.2111に対してサービス業が0.3024となり、よりワクチン接種率とサービス業の関係が深いことがわかる。この背景には、ワクチン接種により移動や接触を伴うサービス関連産業がより恩恵を受けることがあろう。

 特に筆者が、日本のPMIの回復が諸外国に比べて遅れてきた理由は、脆弱な医療提供体制とみている。すなわち、表面上の人口当たり病床数などは世界トップレベルにあるが、いざコロナショックのような有事になると、当局がコントロールしやすい公営病院の割合が低いこと等から、諸外国より圧倒的に少ない感染者数でも医療がひっ迫してしまう。また、日本人の良い意味でも悪い意味でも慎重な国民性も影響していよう。

 このように、効率的な医療提供体制の構築が遅れ、慎重な国民性の日本経済を正常化に近づけるには、諸外国以上にワクチン接種に伴う集団免疫獲得の必要性が高まろう。しかし、人口当たりのワクチン接種率の国際比較をすると、日本の接種率が圧倒的に低いことがわかる。医療提供体制の差がある一方で、ワクチン接種率が圧倒的に遅いとなると、日本経済の回復が諸外国に比べて大幅的に遅れることが必然となっている。

 一方で、ワクチン接種率が進んでいる欧米諸国を中心に集団免疫が獲得されれば、経済政策が出口に向かうことになる。そうなると、日本でも経済政策を出口に向かわせる議論が高まり、欧米経済と違って経済の正常化からほど遠いにもかかわらず経済政策が出口の方向に向かう。その結果、日本経済は正常化に向かうチャンス失うことになる。

 日本は他国と異なり、コロナショック前から景気後退下の消費増税などにより、経済は正常化していなかった。このように日本は、バブル崩壊以降に経済が少し好転すると、経済が完全雇用に達成する前に金融・財政政策を引き締めてしまったことが、失われた30年の主因と筆者は考えている。

ワクチン普及後は国・地域間でK字型回復

 一般的にコロナショック後の景気回復局面でよく指摘されるのが、K字型回復だ。K字型回復とは、人の移動や接触を伴う宿泊・飲食や運輸等のいわゆるサービス関連産業の回復が遅れる一方で、人の移動や接触が減ることの影響が少なかったり、逆に恩恵を受ける情報・通信等に関連する産業は大きく回復するため、回復がK字のように二極化することを示す。

 しかし、WHOによると、世界全体でワクチン接種は7億回を超えており、高所得国と中所得国がそのうち9割近くを占めている。このため、特におよそ4人に1人がワクチンを接種しているとされる高所得国では早晩集団免疫が獲得され、サービス関連産業の回復も期待される。

 これに対し、高所得国にもかかわらずワクチン接種が遅れている日本では、まだ100人に1人しかワクチン接種が進んでいない。そのため、他の高所得国がK字型回復を脱したとしても、日本は当面K字型回復から脱却できないだろう。このため、世界経済はワクチン接種が進んでいる多くの高所得国が正常化に近づく一方で、ワクチン接種が遅れる日本や500人に1人しか接種が進んでいない途上国の回復が遅れるK字型回復になることが推察される。

 以上をまとめると、コロナショックは移動や接触需要を急激にシュリンクさせたことで業種や産業間でK字型回復をもたらしたが、今後はワクチン接種率の格差により、国間でのK字型回復をもたらそう。そして、特に日本の現状を考えると、高所得国の中で数少ないワクチン接種が遅れる国であることから、他の先進国に比べて経済の正常化が大幅に遅れ、デフレ克服がより困難になるだろう。

(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

●永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。

日本の漁業を歪めるドン、岸会長の全漁連“私物化”、不正が次々発覚…使途不明金も

  強引な手法から「漁業団体の金正日」とも揶揄される全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長の足元が揺らいでいる。漁業協同組合「JFしまね」(松江市)の会長も務める岸氏による私物化疑惑などが浮上。一部の同組合員が同氏に対し、6000万円の損害賠償を組合に支払うよう求めて、松江地裁に提訴している。

不要な出張繰り返す?

 漁業団体は本来、漁業者の所得向上などに寄与するために存在する。仮に大幹部が組織を私物化していることが事実ならば、団体の存在意義が根本から問い直されることになりそうだ。

 地元報道などによると、岸氏をめぐる疑惑の具体的な内容は、関西方面への不要な出張を繰り返したこと、法人税の申告遅延といった法令違反、すでに閉店した直営鮮魚店の預金が使途不明となっていることなどが挙げられる。こうした行いがJFしまねに損害を与えているというわけだ。

 岸氏は全漁連の会長を8年、JFしまねのトップを15年務めている。両組織の幹部連中は誰も岸氏にもの申すことができず、統治能力は著しく欠如している。しかも、JFしまねの怠慢から、漁業補助金を島根県内の漁業者が受けることができていないという。一方、今に始まったことではない法令違反などに対し、組合員が公然と声を上げたこと自体が終わりの始まりといえそうだ。岸氏は騒動が明るみになって以降、公の場に幾度となく姿を現しているが、疑惑には口をつぐんだまま。

 島根県は今年3月、一連の法令違反を受け、水産業協同組合法に基づく業務改善命令をJFしまねに対して行った。同組合は県に業務改善計画を提出することになる。業務改善命令が下されるのは異例。

信念なき知事の遺恨

 ただ、この改善命令は漁業者ファーストで出されたものではなく、知事の私的な恨みが背景にあるとの指摘もある。同県の丸山達也知事は2019年、激しい保守分裂選挙を制して初当選。事情通は「丸山知事は信念のかけらもない人。誰が選挙のときに自分を応援したかということを物事の判断基準にしている」と切り捨てる。JFしまねが対立候補を応援したことが、今回の決断につながったとみられる。

 丸山知事をめぐる評判は芳しくない。先の事情通は「メディアを都合のいい広報機関にしか思っていない」と指摘。裏で特定のメディアを懐柔したり意に沿わない報道には露骨に不快感を示したりするという。ポリシーがないただの人気取りなのか、東京五輪聖火リレーの中止検討をぶち上げておきながら、一転して容認した。本当に県民の命を守り抜く覚悟があるなら、中止を強行すべきだったのではないか。霞ヶ関の経済官庁幹部は「ただ目立ちたかっただけだろう」と一笑に付す。

予算をむしり取るだけ

 氏のことに話を戻そう。政府が漁業資源管理の強化を柱とした水産改革を推し進めるなか、同氏は「水産予算3000億円」を毎年のように声高に求めている。水産改革では、減少が続く漁獲量を回復させて中長期的な漁業所得の向上につなげるため、科学的根拠に基づいた漁獲枠導入などを進めている。漁獲枠を設定すれば、一時的に漁業者が収入減に直面するリスクがあることを踏まえ、手厚い予算が必要というのが同氏のロジックだ。

 しかし、予算を付けたはいいが、岸氏をはじめとした全漁連幹部は資源管理の推進に「まったく非協力的」(農林水産省キャリア)なのだから、開いた口がふさがらない。こうした状況を是認している政府・与党の胆力のなさもあきれかえるばかりだ。

自民水産部会に不要論

 水産政策に大きな影響力を持つ自民党水産部会は機能不全といえよう。政府関係者は「水産部会の幹部は『岸さんの言う通りにやればいい』と平気な顔で言う」と証言。岸氏の背後には、参議院のドンとして君臨し、議員引退後も絶大な影響力を持つ島根県出身の青木幹雄・元自民党参院会長、加藤勝信官房長官がおり、対立は避けたいという思いが透ける。

 そうはいっても、全漁連が投げかける無理難題を押し返したり、政府の政策に協力するよう説得したりするのが、自民党水産部会の本来の役目だ。全漁連の言いなりになっている部会は「潰すべきだ。要らない」(経済官庁幹部)との意見も多い。

 この状態を放置し続ければ、予算が膨張し続けるだけで一向に水産行政の改善が図られない。岸会長をはじめとした大幹部、そして全漁連を押さえつけられない国会議員には一刻も早くご退場願いたい。

(文=編集部)

北朝鮮、韓国との関係破局を警告…米国の敵国化を宣言し対話断絶、中国と交易活発化

 2019年2月のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談終了後、北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長(当時)が側近の党高官に対して「もう米国は相手にしない。われわれは自力でやっていく。核武装を強力に進めるのみだ」と強調していたことが明らかになった。その後、昨年11月の米大統領選で勝利したバイデン大統領は、今年2月中旬から北朝鮮政府との接触を試みているものの、北朝鮮側から反応がなく、北朝鮮は対米強硬路線に回帰していることは明らかだ。

 中国共産党指導部は19年10月、朝鮮戦争における中国人民志願軍参戦69周年記念の中国軍代表団を平壌に派遣。団長の苗華・中国中央軍事委員会政治工作部主任は、当時の朝鮮労働党の外交責任者である李洙●(リ・スヨン、●は土へんに庸)党国際部長と会談した。

 李氏は席上、「2月のベトナム・ハノイにおける米国との会談で、トランプは無礼にも、途中で席を蹴った」などと述べて、トランプ氏を非難したという。中国共産党指導部は当時、米朝ハノイ会談後の北朝鮮の対米政策を懸念しており、中国軍代表団の平壌派遣時に、金氏の真意を探ろうとしていたとみられる。

 その後、李進軍・駐平壌中国大使が昨年2月、北朝鮮の外相に就任したばかりの李善権(リ・ソングォン)氏を表敬訪問した際、李外相は米国側から北朝鮮側に首脳会談の再開の呼びかけがあったが、金氏は無視し、返書さえ送らなかったことを明らかにしたという。金氏は今年1月の党大会で7000人もの参加者を前に「米国は最大の敵」と表明しているほか、軍事パレードでも新型弾道ミサイルを披露するなど、対米不信感が根強く残っているのは間違いないようだ。

中朝両国と米国の対立

 それを裏付けるように、金氏の妹の金与正党副部長は3月16日、朝鮮中央放送と朝鮮労働党機関紙の労働新聞で、3月8日に始まった韓米合同軍事演習を非難し、南北軍事合意書の破棄や対韓国窓口機関の廃止などに言及し、「南朝鮮(韓国)当局が望む3年前の春に戻ることは難しい」と述べて、南北関係破局の可能性を警告する談話を出している。

 それ以前の3年前の18年には、2月に韓国で開催された平昌冬季五輪で両国指導者が交流、4月と5月には南北首脳会談が開かれるなど南北融和が進んだかに見えていた。しかし、与正氏のこの談話で、韓国について「再び『暖かい3月』ではなく『戦争の3月』『危機の3月』を選んだ」と非難。今回の韓米軍事演習の規模が縮小されたことに関しては、「われわれはこれまで同族を狙った演習自体に反対し、演習の規模や形式について論じたことは一度もない」とし、「50人が参加しようと100人が参加しようと、そしてその形式が変わっても同族を狙った侵略戦争演習という本質と性格は変わらない」と指摘。さらに、「われわれを敵とする南朝鮮当局とは今後いかなる協力や交流も必要がないため、金剛山国際観光局をはじめとする関連機関もなくすことを検討している」とも明らかにした。

 与正氏はバイデン米政権に対して、「米国の新しい政権にも一言忠告する」として、「今後4年間、安心して眠ることが望みなら、初めから眠れない材料をつくらないほうが良い」と述べた。北朝鮮がバイデン政権発足後、米国に対するメッセージを出すのは初めてで、韓国に対する警告よりトーンを抑えたが、北朝鮮のバイデン政権への強い不信感を裏付けているのは間違いないようだ。

 一方の中国は、今月から凍結していた空路と鉄路の北京・平壌ルートを1年3カ月ぶりに再開したのに加え、国連の北朝鮮制裁決議にも一部反して、公海上での両国間の交易も活発化している。

 中国税関総署は4月18日、北朝鮮との3月の貿易総額は1428万5000ドル(約15億5000万円)だったと発表。総額が1000万ドルを超えるのは昨年9月以来、半年ぶり。北朝鮮は新型コロナウイルス対策で国境を封鎖しているが、中国から必需品の輸入を一部再開したとみられており、中朝両国と米国の対立という図式も復活したようだ。

(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)

●相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

AOKIのパジャマスーツが在宅ワークに最適!着心地&コスパ抜群、体型をカバーする効果も

 新型コロナの感染対策によりテレワークが推進され、会社に出社するという従来の働き方が変化している。それに伴い、大きな影響を受けているのがスーツ量販店だ。これまでは「通勤」「社内作業」「外回り」といった仕事に対応する「出社型スーツ」がデザインのメインだったが、コロナ禍を受けて、各社ともテレワークや自宅作業用の「在宅型スーツ」を揃える必要が出てきている。

 そこで、今回はラインアップが揃いつつある「在宅型」の中でも、コストパフォーマンスが良くスタイリッシュな商品を独断で5つ選んでみた。

 今回紹介するのは、スーツ業界シェア2位で全国519店舗(2020年3月末時点)を展開するAOKI。青山、コナカと並びスーツ量販店御三家と言われるが、他の2社よりも細身のスーツが多いなど若者向けという印象を受ける。シンプルなデザインに加え、美しいシルエットと通気性の良いジャケットなど機能性にも優れている(価格はウェブ税込み)。

 そんなAOKIで見つけた、おすすめ商品5選を紹介していく。

【パジャマスーツ】ダンボールニットカーディガンジャケット/5489円

 まずは「パジャマ以上・おしゃれ着未満」をコンセプトにしたAOKIのパジャマスーツシリーズをおすすめしたい。ニット素材の楽な着心地でありながら、スタイリッシュなデザインでカッチリ見えるという優れものだ。

 ハリがあるのが特徴なダンボールニットを使用することで体のシルエットが出にくいため、体型をカバーできる効果もある。また、ダンボールニット特有の特殊な編み込みで生地の間に空気をためることができ、その空気層が外気からの影響を低くするため、保温性にも優れているのがポイントだ。

 従来のニットよりもスウェットに近い感覚なので、ストレッチ性に優れ、またシワもできにくいので、存分に動いても問題ない。特有の光沢感で上品な印象も醸し出すこのジャケットは、カジュアルからビジネスまで幅広く活用が可能なのだ。

【パジャマスーツ】ダンボールニットパンツ/5489円

 前述のパジャマジャケットとセットアップ着用が可能なパンツも、ぜひ紹介したい。ジャケットと同様にダンボールニットを使用しているので、体型のカバーや着心地はお墨付きである。

 ノータックシルエットでスッキリな見た目ではあるものの、ウエストにはゴム、さらにヒモで調整が可能なので、長時間の座り作業でも窮屈さは感じないだろう。このような着心地を重視するジャージーパンツでは前開きファスナーは少ないが、この商品はしっかり前にファスナーがついている。さらに、ベルトループもついているので、ベルトをしてスラックスのように見せることもできる。

 このように多くのシーンで着こなすことができ、しかも5000円台のパンツはそうそうない。世界20カ国以上で報道され、海外からも注文が入っているというAOKIのパジャマスーツシリーズ。この春に揃えてみるのもいいかもしれない。

洗えるストレッチ 2ボタンジャケット/1万6390円

 テレワークの普及に伴い、自宅などでのオンライン会議やオンライン商談も増加している。その際に必須なのは、緩すぎず、堅すぎないジャケットだろう。前述のパジャマスーツよりもかっちりしたジャケットが欲しい人には、この商品がおすすめだ。

 ニットジャケットでありながらも、肩線を大きく後ろに逃がすことで肩のラインを美しく見せている。さらに、丸みを帯びた肩のラインとノーパッドで、見た目も着心地も追求した一品になっている。

 さらに、やや短めの着丈と高めに設定されたウエストラインでスタイリッシュなシルエットが演出され、スラックスにはもちろん、ジーンズと合わせても違和感なく着ることができる。

 ニットとしてのストレッチ性能もありながら、表地・袖裏ストレッチのダブルストレッチで伸縮性は抜群だ。洗濯機でも洗えるこのジャケット、自宅作業用に1着あれば安心だろう。

【nano・universe DESIGN】ウォッシュドコットンワイドカラーシャツ/6490円

 AOKIとセレクトショップ「nano・universe」のコラボシャツ。光沢がありながらしなやかな質感の「サイロパスコットン」を使用した今作は、製品洗いをして風合いや肌馴染みが良くなったワイドカラーシャツである。

 体に当たる縫い目は不快なザラザラ感がない本縫いで仕上げ、ボタンは見栄えが良く着脱もしやすい「鳥の足付けボタン」になっている。裾の前身と後身が合わさった部分を補強するための「ガゼット」もついているなど、細かいこだわりが光る。

 この1着があれば、在宅時はもちろん、出勤時やプライベートもカバーできる。さらに、ビジネス用のネクタイにもカジュアルなニットタイにも、どちらと合わせても違和感のないシャツなので、ヘビーローテーションしたい一品だ。

iMoov Astuto スタンド/7832円

 最後はファッションアイテムではないが、在宅ワークの効率が上がること請け合いの商品を紹介したい。それが、ノートパソコンやタブレット、スマホまで対応したポータブルスタンドである。

 デスクだけでなくソファで仕事をしたい人もいると思うが、これ一台あれば可能。デバイスが目の高さにピッタリくるように人間工学的なデザインがされており、膝や机の上での作業時に起きやすい、背中の痛みや肩こり、腰痛を防いでくれる。

 レザーストラップも足にしっかりフィットするので、どこに座っても使うことができ、安定性も抜群だ。あらゆるデバイスがフィットするつくりになっているので、仕事だけでなく普段のスマホ使用などでも使える。

 さらに、折りたたむとタブレットほどの大きさになるので、持ち運びがしやすいのもありがたい。家での作業に行き詰まったら、このスタンドを携えて公園や喫茶店などでノマドワークするのもアリだ。

(文=清談社)

フジ系ドラマ『最高のオバハン』が結婚詐欺師の名を「小室敬」に…小室圭氏と一字違いの役名は原作になく悪質なバッシングへの便乗

 小室圭さんバッシングがまったく止まらない。遺族年金問題を蒸し返したり、なんの新事実もない元婚約者の婚約当時の日記が公開されたり、週刊誌やワイドショーは飽きもせず“小室叩き”を繰り広げている。  そんななか、現在放送中の連続ドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』で、小室氏と...