「新しいふつう」をつくる。広告の枠を超えた、サントリーの取り組みとは?

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center(FCC)」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティ」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

クリエイターの領域が拡張しています。広告コミュニケーションを超えて、新事業の立ち上げや社会課題の解決といった幅広い領域に携わるケースが増えているのです。

サントリーが行ったプロジェクトでも、広告の枠を超えたアイデアが世の中に届けられたケースが出ています。サントリー天然水が防災継承プロジェクトとして公開した「3.11あの日、助けてくれたものリスト」や、コロナ禍の家飲みをハレにする、旅をテーマにしたミールキットサービス「table trip」はその代表。

これらのプロジェクトや新事業には、電通FCCのクリイターが参加。そこで今回、サントリーコミュニケーションズ宣伝部・岡ゆかり氏と谷口彩香氏、電通FCCメンバーの小野総一氏(クリエーティブディレクター/ストラテジスト)が、プロジェクトの振り返りとクリエイティブの領域拡張について語り合いました。

岡氏、谷口氏、小野氏
※この取材は、オンラインで行われました。

「若年層のお酒離れ」を解決するために、遺伝子から誕生したグラス

岡:小野さんと初めてお会いしたのは、2017年にローンチした「DNA GLASS 」のときでした。ローンチまで1年半ほどかかっているので、2015年頃ですかね。このときはクリエイティブ表現だけにとどまらず、 ストラテジーや事業開発も含めてトータルでコミュニケーションデザインできる方として小野さんをご紹介いただいたんですよね。

谷口:私たちは、普段は飲料やお酒のブランドコミュニケーションやコーポレートの広告を担当していて、それぞれのブランドの目的に沿って広告制作をしています。しかしDNA GLASSを作るときは、成果物のゴールを決めず、「若年層のお酒離れ」という大きな課題に対してサントリーで何かできないかを小野さんと考え始めました。

小野:そうですね。その課題に対して、広告の外側にやれることがあるかもと作ったのがDNA GLASSでした。これは、一人一人のDNA情報をもとに作られるビールグラスで、いわば自分だけのグラスです。

人がお酒を飲める量や麦芽の感受性は遺伝子レベルで決まっているという話があり、「それなら一人一人の遺伝子にもとづいた、自分だけの世界一おいしくビールが飲めるグラスを作ったら面白いのでは」と考えたのがきっかけです。僕は全然お酒を飲めないのですが、そういう人はすごく小さなグラスができたり、岡さんと谷口さんはすごく大きなグラスになったり(笑)。

DNAからグラスを造形するのはサントリーも電通も初めてのことなので、その技術を持つ企業や3Dプリンターでグラスを造形できる企業を探すところから始めて、1年半ほどかかりましたね。その間に皆さんとお酒を飲んだり話したりする中で、僕自身どんなことで貢献できるかをお伝えしていきました。

DNA GLASS_1

DNA GLASS_2

サントリー天然水が、なぜ防災プロジェクトを行うことになったのか

谷口:このDNA GLASSがきっかけで、のちの「3.11あの日、助けてくれたものリスト」につながっていきましたよね。小野さんが広告を超えた解決策を出すのを見る中で、私たちも、広告だけではない手法で世の中にすべきことがあるなと感じてきて。

今までのように、ブランドの課題や「この商品を売りたい」という気持ちを起点に考えるのではなく、世の中の課題を起点にして、サントリーができることは何かを考える。それをクリエイターの方とワンテーブルで一緒に模索したいと思い始めて。その話を小野さんにしたら「いいっすね」と言ってくれて(笑)。

岡:サントリー天然水は「水」という性質上、生命に直結するものであり、清涼飲料水No.1ブランドとしても社会インフラの役割を果たす責任があると考えています。特に災害時には重要な存在になり得るなと。だからこそ、東日本大震災から10年のタイミングで、サントリーとしてすべきことを考えたのが始まりでした。

小野:僕も含め、防災用の備蓄が大切だとはわかっているのですが、なかなか行動に移せないものです。一方、実際に被災を経験した方に話を聞くと、自分が被災しているからこそ、被災未経験の方に備蓄の大切さを伝えたいという思いがありました。

そこで、被災者の方に話を伺いながら、震災時に自分たちを助けてくれたものをリスト化していこうと。防災グッズや備蓄品の情報は数多くありますが、なかなか人は動かない。ただ、被災者が実際に救われたもの、あって良かったものなら興味も湧くと思ったのです。

岡:小野さんには天然水の事業戦略にも携わってもらっていて、そのひとつとして出てきたアイデアです。大切なのは、天然水を売るための広告活動ではなく、社会課題へのブランドアクションとして防災情報を発信しようと。被災時に何が支えになるかを共に考えることに意味がありますし、そのアクションをサントリー天然水が推し進めることで、結果的に世の中に必要とされ、信頼していただけるブランドになりたいと考えました。DNA GLASSの発売から4年以上たった2021年の3月に「3.11あの日、助けてくれたものリスト」を公開しました。

「3.11あの日、助けてくれたものリスト」_1
小野:プロジェクトでは、400人以上の被災者のリストを新聞やウェブサイトに掲載。ムービーなども作りました。当時9歳だったある男性は、被災時に家族でやったトランプが鮮明に記憶に残っていると話していて。一人一人の支えになったものは違うので、教科書的に「これを備蓄しよう」と勧めるのではなく、各々の多種多様なリストを見て、自分なら何が必要か考えるきっかけを作れたのが良かったと思います。

「3.11あの日、助けてくれたものリスト」_2

家飲みをハレの場にし、旅体験そのものを新しくする「table trip」

谷口:2021年8月にスタートした新サービス「table trip」も、小野さんと作ったものです。コロナ禍で家飲みが増えていますが、その家飲みを“ハレ”の場にできないかという課題から始まりました。小野さんが話していたのは、家飲みと外飲みの違いは「非日常が存在するかどうか」ではないかと。家飲みをハレの場にするには、本来、家の外にある想定外の非日常を持ち込むことがカギになると話していて。その視点が腑(ふ)に落ちました。

table trip_1

小野:家の中をハレにしたいというのは、コロナ禍における社会課題といえます。それをサントリーのバリューでどう解決するか考えたときにtable tripが生まれました。

谷口:table tripは、世界各国の料理(ミールキット)とお酒、さらに現地の景色や文化を感じられる本「トリップブック」を一緒に届ける新サービスです。サントリーも電通もミールキット事業は初めてで、しかも今回はブックの製作もあり、雑誌「ELLE gourmet」をはじめ複数社が力を合わせて生まれました。各社の個性や力を融合させて家中の「ハレ」を作り上げたような、合わせ技一本のサービスになったかなと思っています。

小野:家の中で旅の感覚を少しでも味わったり、ミールキットも定番の海外料理だけでなく、現地の家庭で食べられている料理を用意したり。旅に行けない気持ちを晴らすサービスは、コロナ禍においてたくさん生まれ、ニーズもあると思いますが、その中でも、ご自宅での食を通じて、かつて旅行で訪れた国を思い出す、あるいは、これから旅に行く場所のガイドブックの形として食べる。そんな、旅体験の拡張という時流に添ったものでもあります。

table trip_2

「新しいふつう」をつくるためには、手段を広告領域に限定しない

谷口:小野さんと仕事をしていると、プロジェクトが進行するうちに“増幅”していく感覚が楽しいですね。通常、企画を進めるといろいろなハードルが出て縮小することがありますが、小野さんとの仕事は、ハードルを回避するより、もっと大きな視点で見て、まったく違う分野で解決方法を提案いただくことがあります。広告を超えてさまざまな領域でプロジェクトが広がっていきますよね。

サントリーは広告コミュニケーションを得意にしてきた会社だと思いますが、そこから拡張することも求められています。複層的にアンテナを張って考える時代になっていて、広告に特化しないクリエイターの方は今後頼もしい存在になると思います。

小野:僕は10年間ストラテジストをやって、その後10年ほどクリエイティブにいるので、クリエイティブ一筋の人に比べると専門性や得意領域がないと思っています。その分、広告に限定せず、本当に必要な解決策を選ぼうという気持ちは強く、フラットに手段を選択することは意識しています。

岡:これからの時代、コロナも環境問題も含め、大きく難しい課題がある中で、今までの延長線上で企業活動を行ってもなかなか未来は見通せません。その中では、新しい視点が大切になると思います。ただ、新しい視点を一人・一社で出すには限界がある。どうしても自分たちの会社の視点から抜け出せませんから。その点、今回のように、小野さんと私たちが同じテーブルで共にじっくり考えられたのはよかったですね。

小野:本当にそう思います。日本にはたくさんの「変えるべきふつう」があって、それを「新しいふつう」に変えていくのが、僕個人やFCCの目標でもあります。かつて広告全盛の時代は、広告だけでそれを解決しようとしていたかもしれません。ただ、広告以外でもできることはあるし、企業と伴走型で一緒に行えれば、最終的に生活者の企業に対する印象が変わり、売上にも貢献できるでしょう。そんな思いで、これからも「新しいふつう」をつくっていきたいと思います。

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食料自給率37%の日本、輸入が途絶えた場合の「一日の食事の献立」が衝撃的

 政府は2020年の食料自給率(カロリーベース)が過去最低の37%であったと公表した。食料自給率が減少した原因として、政府は「米の需要が長期的に減少していること、小麦が特に作柄が良かった前年に比べて単収が減少したこと」を挙げている。いずれにせよ、これで30年には食料自給率45%に引き上げるという政府目標の達成は困難になってきているといえる。

 日本の食料自給率の世界的な位置はどうなのか、主要先進国で見てみると、各国のデーターが揃っている18年で比べると、トップはカナダ266%で以下、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、スペイン100%、ドイツ86%、イギリス65%、オランダ65%、スウェーデン63%、イタリア60%、スイス51%、韓国35%で、日本は韓国をやっと上回る37%と、主要先進国では最下位に次ぐ位置となっている。韓国はこれまで日本を上回っていたが、米韓FTAを締結してから自給率が急速に低下している。

 カロリーベースの食料自給率は、私たちが食事を通じて摂取するカロリーの自給率を意味している。例えば、国産牛肉や国産豚肉を食べたとしても、その牛や豚が餌としている飼料がすべて輸入飼料に依存したとすると、摂取カロリー自給率は0カロリーとなる。日本の飼料自給率は25%と飼料の4分3を輸入飼料に依存しているため、牛肉の自給率は9%、豚肉6%、鶏肉8%、鶏卵12%、牛乳・乳製品26%となる。これは、輸入飼料の輸入が途絶したら、日本の畜産酪農生産は家畜に餌を与えることができず、たとえば牛肉生産は現状の9%の水準になるということを意味している。

 政府が2003年に発表した「不測時の食料安全保障マニュアル」では、日本で食料輸入が途絶した場合、私たちの食卓がどうなるかを例示している。生きていくために必要な1日当たりの摂取カロリーは2020キロカロリーといわれているが、食料輸入が途絶した場合、そのカロリー量を供給する食事メニューは次のようになっている。

・朝食:茶碗1杯のご飯、蒸しジャガイモ2個、糠漬け1皿

・昼食:焼き芋2本、蒸しジャガイモ1個、りんご4分の1個

・夕食:茶碗1杯のご飯、焼き芋1本、焼き魚1切れ

・その他:2日に1回1杯のうどんと味噌汁、3日に1回2パックの納豆、6日に1回コップ1杯の牛乳。7日に1回1個の卵、9日に1回108グラムの食肉

 食事は、ご飯、ジャガイモ、焼き芋主体で、食肉は9日に1回、それも108グラムしか食べることができない。

地球温暖化と農業生産

 今、政府が2003年に「不測時の食料安全保障マニュアル」で描いた食料輸入途絶の危機が迫っているともいえる。それが地球温暖化による食料生産への影響である。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は8月9日、第5次報告書以降8年ぶりに第6次評価報告書と第1作業部会報告書の概要を公表し、世界に大きな衝撃を与えた。

 報告書は、地球温暖化の原因を人間の影響と断定し、これまでの予想より10年早く、世界の気温上昇が21〜40年に1.5℃に達するとの予測を明らかにした。また、報告書は地球温暖化の脅威の実態を新たに明らかにした。

・もっとも暑い日、気温がもっとも上昇するのは一部の中緯度帯、半乾燥地域および南米モンスーン地域で、地球温暖化の約1.5〜2倍の速度になる

・熱波と干ばつの同時発生、火災の発生しやすい気象条件(高音、乾燥、強風)、複合的な洪水(極端な降雨や河川氾濫と高潮の組み合わせ)

・温暖化した気候では、極端な雨期又は乾期、並びに気象の極端現象の深刻さが増大。世界規模では、地球温暖化が1℃進行するごとに極端な日降水量の強度が約7%上昇

 これらが世界の農業生産に深刻な打撃を与えることは、論を待たない。今年、熱波でカナダとアメリカで小麦生産が減少し、その影響で今、日本の小麦価格が上がっている。今後さらに深刻な影響が日本を襲うことになるであろう。

(文=小倉正行/フリーライター)

●小倉正行

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。

主な著書に、『よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答』『輸入大国日本変貌する食品検疫』『イラスト版これでわかる輸入食品の話』『これでわかる TPP 問題一問一答』(以上、合同出版)、『多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴』『放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る』(以上、新日本出版)、『輸入食品の真実 別冊宝島』『TPP は国を滅ぼす』(以上、宝島社)他、論文多数。

【江川紹子の提言】ウィシュマさん死亡、強制送還「違憲」判決…入管行政の改革が必要だ

人権意識に乏しい日本の入管行政

 日本の入管行政のあり方が問われる出来事が相次いでいる。

 名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが、適切な医療を受けられず、33歳の若さで死亡した事件では、その後の遺族への対応も含め、当局の人権感覚への信頼は地に落ちた。

 また9月15日、大阪出入国在留管理局に、2017年に収容されていた日系ペルー人の男性が、職員の暴行で腕を骨折したとして国に損害賠償を求めた裁判では、国側が所内の監視カメラ映像を提出。そこには、後ろ手に手錠をかけられたまま床に横たわっている男性が、職員5人に押さえつけられたり、14時間にわたって放置されたりする場面が映っていた。

 代理人が映像の一部を公表し、それを見た多くの人が衝撃を受けた。

 さらに9月22日、スリランカ人の男性2人が、難民不認定の処分を通知された翌日に強制送還されたため、処分取り消しの裁判を起こせなかったと訴えていた件で、東京高裁は、出入国在留管理庁の対応は「憲法32条で保障する裁判を受ける権利を侵害した」として、原告逆転勝訴の判決を出した。

 2人はいずれも不法残留として警察に逮捕され、検察の起訴猶予処分を受けて、東京入管収容場に収容された。難民申請を行ったが不認定となり、異議申立の行政手続きを行っている最中に仮放免となった。異議申立は棄却となったが、入管当局は40日以上もそれを伝えなかった。仮放免延長の手続きで2人が訪れた機会にも伝えていない。そして、2014年12月17日、仮放免延長のために出頭した2人に、延長不許可を伝えて再収容し、異議申立の棄却を伝え、翌日のチャーター便による一斉強制送還で帰国させた。

 難民不認定に対しては、行政手続きとしての異議申立のほか、処分取り消しを求める裁判を起こす司法手続きがとれる。2人は裁判を起こす意思を示し、1人は担当弁護士との連絡を要求した。入管職員は、弁護士に電話をすることは許したが、弁護士は事務所に不在で連絡がとれなかった。入管が弁護士との連絡を認めたのはわずか30分間で、その後は携帯電話を取り上げ、連絡をさせなかった。

 憲法第32条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と明記している。判決は、それに加えて、国の行為は適正手続きの保障を定めた憲法第31条などにも違反していると断じた。

 こうした出来事からは、当局が不法残留と認定した外国人は、とにかく早く追い返すことばかり一生懸命で、その人権には頓着しない入管行政のありようが浮かんでくる。

被収容者への人権侵害によって日本のお粗末な人権状況が海外に知れわたり、国益を損なうのでは

 入管行政を担う出入国在留管理庁は法務省の外局だが、法律が定める同省の所管事務は、「人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関すること」など、39項目のうち4項目が「人権」にかかわる仕事だ。その所轄下にある、入管庁職員の人権意識が相当に危ういといわざるをえない。

 東京高裁の違憲判決を受けて、上川陽子法相は「対象となる外国人の人権を尊重し、適正手続きを順守した運用の徹底に取り組んでいきたい」と述べ、難民不認定の場合は、「送還は告知から2カ月以上してから」とする内部通知を出したことを明らかにした。

 しかし、そのような弥縫策で済むような問題ではないだろう。

 入管行政を巡る問題の根本にあるのは、その不透明さではないか。難民認定や非正規在留者への在留特別許可、仮放免の可否の判断など、権限は大きいのに、その基準は明確でなく、曖昧なまま絶大な裁量権を当局が握る。そのうえ、プロセスや職員の言動に問題が疑われても、外部の目が入らず、事実が十分明らかにならない。

 ウィシュマさんの件で、遺族が真相を知りたいとして公文書の開示を求めたのに対し、名古屋入管が開示した行政文書1万5113枚のほとんどが黒塗りされていたことは、入管行政の不透明さを象徴的に示している。

 出入国在留管理庁は、ウィシュマさんが収容中の監視カメラ映像の一部を遺族(妹2人)が視聴することは認めたものの、代理人の同席は認めなかった。病気で苦しんでいる姉が職員から粗雑に扱われる様子を見て、妹2人は衝撃を受けたため、視聴は途中で中断したままになっている。代理人による視聴や付き添いを許さない同庁の対応は、人道をひどく外れたものといわざるをえない。

 同庁は、ウィシュマさんの死について、内部で検証を行い、最終報告書を公表したが、これも十分なものとはいえない。明らかに体調が悪化し、本人から訴えがあったのに、誰もまともに取り合わなかったのはなぜなのか、という一番大事な点も疑問が残ったままだ。遺族は到底納得できないだろうし、ことの詳細が明らかにならなければ、有効な対策も打てないのではないか。

 今の状況は、被収容者にとって深刻な問題であるに留まらない。日本の国のお粗末な人権状況が海外にも知られ、大いに国益を損なっている、というべきだろう。

 ただ、一連のことを、個々の職員だけの責任に帰するのは適切ではないだろう。国が、難民を受け入れようとせず、「技能実習」の名目で外国人を“安い労働力”として搾取する制度を続け、不法残留となった外国人は徹底して帰国させる方針を示している中で、現場の職員の労働状況や精神状態に、どのような影響を及ぼしているかも吟味する必要があるのではないか。

外部有識者会議を設置し、入管行政の改革や入管法改正の方向性も議論せよ

 そこで、提案がある。

 2003年に刑務所改革の提言をまとめた行刑改革会議のような外部有識者らによる会議を作り、入管行政の実態と人権にかかわる事柄について真相を検証し、問題の所在を分析し、改善策を提言するようにしたらどうか。

 行刑改革会議は、2001~02年にかけて、名古屋刑務所で刑務官の行為によって受刑者が死傷する事件が相次いだことを受けて、法務大臣の私的諮問機関として発足した。弁護士や大学教授などの専門家のほか、メディア関係者、作家などもメンバーとなり、法務当局には日頃、批判的な人も含まれた。私も委員を務めた。

 8カ月に10回の全体会のほか、3つの分科会をそれぞれ8~9回開き、国内外の刑務所の視察を重ね、元受刑者や刑務官へのヒアリング、受刑者と刑務官双方へのアンケートなどさまざまな形で調査活動を行った。委員が行いたいと提案した調査が、法務省によって拒まれることはなかったように記憶している。

 提言は、受刑者の処遇だけでなく、刑務所の透明性確保に力点を置いた。刑務所医療や刑務官ら職員の働き方の改善など多岐に及び、明治時代から続いていた監獄法の改正も求めた。これを受けて、法務省はさまざまな改革を行い、法律も現在の「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(刑事収容施設法)へと改められた。

 その結果、各刑事施設に民間人からなる視察委員会を設置したり、被収容者の不服申立制度もできるなど、透明性はかなり改善した。かつては閉鎖的でメディアの取材に応じることはめったになかった刑務所にも、テレビのカメラが入り、受刑者のプライバシーに配慮しながら、インタビューも行えるようになった。

 職員の厳しい労働環境や受刑者の高齢化など困難な問題が社会に伝わり、受刑者の更生プログラムに、外部の専門家が直接関与することも増えている。透明性が高まることは、職員らにとっても悪いことではない、という認識も深まっていったのではないだろうか。改善を進めるには、外部から押しつけるだけでなく、関係者の納得も大事だ。

 それでも、刑務所や拘置所を巡っては、さまざまな課題はあり、個別に問題が発生することもある。さらなる改善が必要なのは言を俟たないが、20年前とは、そのありようは大きく変わっている。

 入管行政を巡っては、法務省は入管施設での長期収容の解消を掲げ、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正を急いだ。しかし、裁判所の関与も収容期間の上限もない不透明な収容手続きが放置されるなど、さまざまな問題点が指摘されたうえ、ウィシュマさんの事件が明らかになって、先の通常国会での採決は見送られ、事実上の廃案となった。

 行刑改革会議と同様、入管に関する有識者会議の議論のなかで、法改正の方向性も議論し、それを踏まえて新たな法改正を目指せばいいのではないか。

 その不透明さを改善するためには、まずは外部の目で現状を検証し、一般の人権感覚をもって、改善策を検討することだ。

(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)
東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か – 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。
江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

20歳でマルチ商法、月収100万超えるが……借金700万円に転落! 『マルチの子』作者がアノ世界の“表と裏”、明かします

 サイゾーウーマンとWEZZYが合同でトークイベントを開催することになりました!

 今回はゲストとして、マルチ商法にハマった女性を描く話題のサスペンス小説『マルチの子』(徳間書店)の著者・西尾潤さんが登場。自身もマルチ商法にハマり、月収150万円を稼いだ一方、700万円もの借金を背負ったという西尾さんに、マルチのオモテとウラをいろいろ聞いちゃいます。

 また、会場では西尾さんによるマルチ勧誘の実演も。手強い勧誘を断る方法や、マルチに誘われやすい人の特徴など、“護身術”として知っておきたいことも聞けちゃいます。ご興味ある方は、ぜひお越しください。

■「呪われ注意報」マルチの“表と裏”、明かします

開催日:10月3日(日)
時間:15時開演(14時半開場)/17時終演予定
場所:LIVE STUDIO LODGE(ライブスタジオ・ロッジ) 東京都渋谷区代々木1-30-1 代々木パークビルB1
料金:アーカイブ配信付き/1,800円、アーカイブ配信なし/1,300円(どちらもワンドリンク制)

★チケット販売ページはこちら★

【ゲスト】
・西尾潤『マルチの子』(徳間書店)著者。小説家、ヘアメイク・スタイリスト。

【出演者】
・黒猫ドラネコ
:サイゾーウーマンで「スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコの“教祖様”注意報」連載中。怪しいスピリチュアルや自己啓発セミナーなどの監視と注意喚起を行う。

・山田ノジル:wezzyで「スピリチュアル百鬼夜行」を連載中。同連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。

【司会】
・三浦ゆえ
:フリー編集&ライター。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに取材、執筆活動を行う。

◉ 質問受付中!
 ゲストの西尾潤さん、出演者の山田ノジル氏、黒猫ドラネコ氏に直接聞いてみたい質問、疑問、身の上話まで、下記よりどしどしお寄せください!
※ ご質問は、チケットご購入済みの方限定にて募集しております。

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総裁選中に自民党が発表「河井夫妻の選挙買収に党本部の1億5000万円は使われず」の嘘! 誰が総裁になっても安倍の責任は闇に

 こんな幕引きが許されるはずがない。河井克行・元法相と河井案里・前参院議員が有罪となった2019年参院選における大規模買収事件で、自民党本部が投入した1億5000万円の選挙資金について、今月22日、自民党の柴山昌彦幹事長代理が会見をおこなって「(買収に)使った事実がない」と...

パチスロ6号機「万枚マシン」も好調! ヒットメーカー「完走率97%」プレミアムAT搭載機を投入!!ー新台分析パチスロ編

『ミリオンゴッド』『バジリスク』など、多くのヒット作を発表しているユニバーサルエンターテインメント(以下、ユニバーサル)。パチスロ業界をけん引するトップブランドは、2021年もホールを大いに盛り上げている。

 7月に導入されたパチスロ新機種『新ハナビ』は、フル攻略ならば設定1でも機械割は「102%」に到達する仕様。秀逸な出目演出などを組み込んだゲーム性を称賛する声も多い。

 8月には初代を踏襲したゲーム性に、初当り=AT以上という安心感をプラスした『SLOT劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語/[後編]永遠の物語』が登場。ホールでは万枚の報告も飛び出すなど、高い破壊力を有している点も話題となった。

 そんなファンから注目を集めた両機に続く新台が、10月4日よりホールへ降臨する。人気作品を題材にした話題作が、最大継続率90%のJAC・ATを搭載して登場だ。

『SLOTタブー・タトゥー』(ミズホ製)

 通常時は規定ゲーム数消化や「呪紋ストック」でボーナス抽選が行われる仕様。純増約2.0枚の「トリガーボーナス」と、純増約5.5枚のJACゲーム「VOID DRIVE(VD)」とのループが出玉増加の軸となる。

 ボーナスはトリガーボーナスとレギュラーボーナスの2種類(どちらも1G純増約2.0枚、1セット20G継続)。前者は7揃いor演出成功でAT機能VDが濃厚だ。後者はシャッターの色が昇格するほど「ドライブチャレンジ」突入期待度が変化する。

 基本30G継続のドライブチャレンジ中は毎ゲーム、成立役に応じて内部ポイント獲得抽選が行われる仕様。トータル引き戻し期待度は約55%で、特殊ステージが選択された場合の期待度は80%以上だ。

 VDは8Gのセット管理型で継続率は約75%or90%。8G以内に呪紋絵柄が揃えば次セット継続が濃厚となる。消化中は押し順による出目を楽しめる点もポイントだ。

 注目のフリーズは2種類で、本機最強の一撃トリガー「起源体(ソース)フリーズ」の恩恵は「エピソードボーナス」+「起源体バトル」へ突入。完走率は脅威の97%と最高峰の性能を実現した。

 もう一つの「オーディションフリーズ」の恩恵は「エピソードボーナス」+「VD HYPER」が確定。VD HYPERは継続率90%に期待できるとのことで、大量出玉の獲得も十分に狙えそうだ。

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甘デジ「50%約2400発」「約90.5%RUSH」マシンに続き激熱タイトル始動!!

 9月21日からの週を振り返ってみると、パチンコ分野には多くの甘デジ新台が登場していた。

 その中の1台である『P女神ドリーム』は、約1/39.9という破格の確率で右打ちが発生するという遊びやすさが特徴。ひとたびRUSHへ突入すれば、約90.5%継続の強力な連チャンを楽しめる点も大きな武器だ。

 出玉面に関しては様々な意見があったが、初当りの軽さや連チャン性能を高く評価しているユーザーは多い印象。手軽に多くの大当りを体験できるのは魅力的であろう。

 本機のように、スペックの特色が強い新台は他にも存在する。『P絶超電役ドラドラ天国2400』は、大当り確率1/99.9ながら50%で約2400発の出玉を獲得できるのがストロングポイント。電サポや確変といった連チャン要素のない一般電役で、導入前から注目を集めていたマシンだ。

 実際に遊技したユーザーからは「思ったより出玉が穏やか」「パチスロのノーマルタイプみたい」といった意見が多く見受けられた。「約2400発」のインパクトは強烈だが、実際は遊びやすさが際立つマイルド仕様という印象である。

 また大手メーカー藤商事は、人気タイトルの甘デジ版となる『PA FAIRY TAIL2 JWA』、『PA遠山の金さん2 遠山桜と華の密偵JWD』をリリース。どちらも初回突破型で、強力なRUSHを搭載している点が特徴だ。

 前者は、リーチがかかる度に大当り期待度が上昇する「ランクアップバトルシステム」を継承。RUSH継続率は約75.3%を誇り、右打ち中は半数以上が10R大当りとなる。連チャン・出玉とも優れたスペックとして導入から好稼働を実現している。

 対する後者は、初当り後に付与される時短やC時短で大当りを引くことができれば、約83%ループのSTへ突入。ここでは6R・500発以上の大当り比率が約68%となっており、十分な出玉を獲得することも可能だ。

 チャレンジ精神あふれる特徴的なスペック機や、人気シリーズ最新作などの甘デジ新台が数多く登場。ホールを盛り上げているわけだが、この流れでパチンコの絶対王者『海物語』シリーズ最新作が満を持して始動した。

 三洋物産が「【速報】海物語シリーズ最新作」と題した動画を公開。『PA海物語3R2』に続く新スペック『3R2スペシャル』に関する内容が確認できる。

 スペックやゲーム性は後日公開されるようだが、動画では「ラストを飾る特別な海」「甘海史上初 確変ループ×高継続」「快速“SPループ”」といった興味深いワードを確認。これまでとは一味違った新たな『海物語』を提供してくれそうな気配だ。

 果たして、どのようなスペックでユーザーを楽しませてくれるのか。今後も目が離せない再注目のマシンである。続報は追って報告させていただく。

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JRA アグネスタキオンと「究極の選択」は呆気ない結末!? 幻の三冠馬「最大のライバル」アグネスゴールド逝く

 また1頭、名馬が逝ってしまった。

 2001年のきさらぎ賞(G3)、スプリングS(G2)を勝利したアグネスゴールドが、繋養先であるブラジルで天国へと旅立ったことが分かった。現役引退後は南米で種牡馬として活躍していたが、23歳でその生涯を終えた。

 サンデーサイレンスを父に持つアグネスゴールドは、デビューから無傷の4連勝で重賞連勝をした実力馬。同世代には後のダービー馬ジャングルポケットをはじめ、ソダシの父としても知られるクロフネ、マンハッタンカフェ、ダンツフレームなど個性豊かな役者が揃っている。

 なかでも突出した評価を受けていたのが、「幻の三冠馬」とも評されるアグネスタキオンだった。

 そして、このアグネスタキオンと同等の評価をされていたのが、主戦騎手に河内洋、長浜博之厩舎、父サンデーサイレンスというところまで一致していたアグネスゴールドである。

 タキオンが無傷の3連勝ならゴールドは無傷の4連勝。どちらもアグネスの冠名ついていることからも分かる通り、オーナーまで同じ。さらには生産者も同じだったのだから、関係者には嬉しい悲鳴というより悩ましい限りだったのではないだろうか。こちらについては、ファンの間でも2頭のどちらが強いのかと話題に上がることも珍しくなかった。

 ただ、2頭の背中を知る男である河内騎手の胸中は、タキオン優勢と考えていたかもしれない。

 全兄に前年のダービー馬アグネスフライトのいたタキオンに比べ、ゴールドの血統は陣営も懸念していたようにマイラー寄り。皐月賞(G1)2着のダンツフレームをきさらぎ賞で負かしていたように、戦ってきた相手は決して弱くはなかったものの、距離延長への不安はあった。

 対するタキオンはラジオたんぱ杯3歳S(G3・当時)で世代トップ級の評価だったジャングルポケット、クロフネをレコード勝利で一蹴。不良馬場で行われた弥生賞(G2)を、2着馬に5馬身差で楽勝をしたにもかかわらず、河内騎手からは「良馬場ならもっと強い競馬を見せられた」と強気なコメントも出ていた。

 両馬を管理する長浜師は「河内に委ねる」としたものの、三冠馬候補の声も出たタキオンに底知れない強さを感じていたのは、陣営もファンも同じだったのだろう。ともかく、皐月賞の最終的な決断は陣営からの発表を待つばかりだった。

 しかし、誰もが注目したであろう無敗馬同士の「究極の選択」は、あまりにも呆気ない結末が待っていた。

 なんと、スプリングS勝利の翌日になってゴールドの右前脚骨折が判明。その結果、河内騎手の決断を待つ前にタキオンへの騎乗が決定する。最大のライバルが離脱したことで、タキオンは単勝オッズ1.3倍の圧倒的1番人気に応えて皐月賞を優勝。日本ダービー(G1)での二冠を目指すこととなったが、左前浅屈腱炎を発症して出走を断念し、競走生活を終えた。

 結局、両馬の直接対決が実現することはなかったものの、現役を続行したゴールドもかつての輝きを取り戻せず、秋の復帰戦で精彩を欠いた。そして、同馬もまたタキオン同様に左前浅屈腱炎を発症し、現役引退へと追い込まれてしまった。

 競馬ファンにとって究極の選択といえば、的場均騎手のエルコンドルパサーORグラスワンダーや岡部幸雄騎手のシンボリルドルフORビゼンニシキが有名だが、このアグネス2頭がもし無事に競走生活を送れていたら……。そう思わずにいられないほど魅力的な2頭だった。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

JRA  C.ルメール、クロノジェネシスはディープボンドより期待大!? 前哨戦快勝した馬よりも評価が上の「理由」と膨らむ日本馬勝利の「可能性」

 10月3日にパリロンシャン競馬場で凱旋門賞(G1)が行われる。世界最高峰のレースに日本からは、ディープボンド(牡4歳、栗東・大久保龍志厩舎)とクロノジェネシス(牝5歳、栗東・斉藤崇史厩舎)が挑戦する。

 クロノジェネシスに関しては当初、前走で騎乗したC.ルメール騎手が引き続きコンビを組むのではないかとも噂されたが、最終的にO.マーフィー騎手が騎乗することとなった。

 「乗せていただけるのであれば行きます」と継続騎乗に意欲を見せていたルメール騎手は、元々フランスのトップジョッキーである。06年2着になったプライドをはじめ何度も凱旋門賞へ騎乗し、凱旋門賞の雰囲気・重みを誰よりも理解している騎手の1人だ。

 JRA騎手となって以降も16年マカヒキ、19年フィエールマンと2度、凱旋門賞へ騎乗をしている。それゆえ、日本定住以降も母国の大一番には注目しているようで「マスコミの報道からレースが近づいているというのを感じます」と、日刊スポーツの取材に応じている。

 英国のブックメーカー『bet365』によると、現時点の日本馬のオッズはクロノジェネシスが5番人気で10.0倍、ディープボンドが7番人気で21.0倍となっている。追加登録を含めると現在まで同レースへ16頭が出走予定となっているため、比較的人気を集めていることになる。

 それらを受けて、フランスの競馬専門チャンネル『エキディア』がルメール騎手へディープボンド・クロノジェネシスが凱旋門賞を好走する可能性についてインタビューを行った。

 そんな凱旋門賞を知るトップジョッキーでもディープボンドのフォワ賞(G2)激走には、驚いた様子を見せていた。ルメール騎手自身はディープボンドへ騎乗経験はないが、同馬とは何度も対戦しており、「G1でも好走を続けていましたが、違いを生むには少しスピードが足りない」と評価していた。そのため、「あのような逃げ切り勝ちは驚きでした」と、答えている。

 一方、ルメール騎手がディープボンド以上に好走を期待しているのが、前走の宝塚記念(G1)で騎乗したクロノジェネシスだ。

 クロノジェネシスについて、ルメール騎手は「凱旋門賞で輝くことのできる、より多い資質を持っています。ディープボンドと比較しても彼女は明らかに高いレベルにあると言えます」と、大いに期待している様子を見せた。

 ルメール騎手は輝ける根拠として、主に2点を挙げている。1点目は、血統が凱旋門賞に向いているということだ。

 クロノジェネシスは04年の凱旋門賞を制したバゴの産駒である。また、ルメール騎手が「緩い馬場が得意です」と、話すように重馬場・稍重馬場での勝率は100%だ。そのため、日本と異なる品種で時計が掛かるタフな欧州の芝にも対応できる可能性が高い。

 2点目は、クロノジェネシスが海外で好成績を挙げていることだ。同馬は今年の3月にドバイ・メイダン競馬場で行われたドバイシーマC(G1)へ出走。惜しくも仏ダービー馬のミシュリフにクビ差で敗れたが、「日本以外の場所でも才能を発揮しました」と、2着に好走したことをプラスに捉えている。

 また、クロノジェネシスが現地での前哨戦を使わないことについては、「日本馬が海外に遠征して勝つときは、彼らはレース10日前に現地入りします。日本で準備を行い、現地で最終調整を行うことがうまく機能していますから」と、陣営が選んだローテーションへ肯定的な意見だ。

 ルメール騎手から見れば、ディープボンドよりクロノジェネシスの方が評価は高い。そして、ディープボンドが前哨戦とはいえフォワ賞を快勝したのだから、クロノジェネシスも好走できるのではと期待が膨らむ。強力なメンバーが揃った第100回凱旋門賞だが、果たして日本馬が頂点に輝けるのか。固唾を飲んでその時を待ちたい。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

楽器がすり替わり?“違和感”がネット上で話題のCM動画、河合塾さんの納得の回答

 河合塾が8月16日からYouTubeなどで公開していたCM動画『2021年度「大学入学共通テストトライアル告知篇」』がひょんなことからインターネット上で話題を集めている。

女子生徒が持っている楽器がトランペットからトロンボーンに?

 動画(下記)は、どこかの高校の屋上で合奏する吹奏楽部のシーンから始まる。女子生徒がトランペットを吹いている後ろ姿が映し出された後、振り向いてカメラに向けて「志望校決まっていないけど、共通テストは受けるし……」と語りかける。教室でゲームに興じる男子生徒らが「受けずに本番はまずいでしょ」と呼びかける場面を挟み、冒頭の女子生徒らが下校する姿で締めくくられている。

 一見、なんら問題はなさそうなCMに見えるのだが、この動画が“ネット上で盛り上がっている”と当編集部に連絡してきた40代の男性スタジオミュージシャンは次のように話す。

「下校中の女子生徒が手に持っている楽器ケースがトロンボーンのものです。どうやら、そのことで『違和感を覚える』という声がSNS上で上がっているみたいなんです。

 京都アニメーションさんが制作したアニメ『響け!ユーフォニアム』(原作:武田綾乃、宝島社)が一世を風靡したこともあって、最近は現役の吹奏楽部員や経験者じゃなくても、どの楽器がどんなケースに入っているか知っている人が多くなってきているのかもしれません。昔だったら、そんな細かな“違い”はスルーされていたんじゃないでしょうか」

 確かにTwitter上では、冒頭と終盤で女子生徒が持っている楽器が異なることについて、「実は双子の姉妹」「きっと楽器修理を頼まれたんだろう」「人数少ない吹奏楽部で、フルートとチューバ兼任してる男子とか見たことあるなぁ…よその学校の子だけど…」(いずれも原文ママ)などと深読みして盛り上がっていた。前述のミュージシャンは語る。

「プロは演奏中に複数の楽器、たとえばジャズミュージシャンに多いですが、サキソフォン奏者がクラリネットやフルートに持ち替えて演奏することが多々あります。同様にトランペットとコルネット、トロンボーンとバストロンボーンの持ち替えなんかも見かけますね。

 マウスピースの扱い方が同様なので人数の少ない吹奏楽部の部員なら、“ペットとトロンボーンを掛け持ちで担当する”なんてこともあり得えるでしょう。ただ、そこまで深い設定がこのCMにあるのかはわかりませんが……」

 こうしたSNS上での指摘に関して、TV番組制作会社関係者は語る。

「この手の“間違い”に関する指摘は年々増えていますよね。例えば、昭和の時代劇では荒唐無稽な設定や、その時代に存在しない衣装や小道具、大道具などが大量に登場したものです。少なくとも全身タイツ姿の“くのいち”が活躍している時点でおかしいですよね。それに対してすら、批判はありませんでした。 良かったのか、悪かったのかはわかりませんが細部のディティールより、とにかく“物語の大枠”や“テーマ”を楽しむことを視聴者が求めていたのではないかと思います。

 一方、最近はおかしなところがあれば、SNSに“これはこの時代には存在しなかったはずだ”と書き込まれてしまいます。医学とか科学とか、教育や実生活に関わるような番組やCMなら細部に至るまで正確なコンテンツを作るべきだと思いますし、制作側も細部までこだわったものをつくるよう気を付けるべきでしょう。

 ただ、完全なフィクションや今回の河合塾さんのCMのような作品に対して、そこまでの正確性が必要なのかというのは少し疑問です。正確な指摘ではあるけれど、作品の主題やテーマと関係ないんじゃないかな、ということがままある気がするのです」

河合塾「複数の楽器演奏シーンを撮り、ベストな表情を選んだ」

 SNS上での同CMの盛り上がりに関し、河合塾経営戦略担当グループ広報チームに見解を聞いたところ、以下のような回答があった。

「現場では、トランペットやトロンボーンなどいろいろな楽器を演奏しているシーンをいくつか撮影し、モデルさんの表情がもっとも良く、“姿勢が前向き”というテーマが表現できているベストなシーンを選んだところ、今回の内容になりました」

(文・構成=編集部)