JRA秋華賞(G1)2着「絶好調厩舎」の確変ストップ!? 目前に迫った「調教停止処分明け」も“生え抜き馬”の躍進に期待!

 先週は秋華賞(G1)2着のファインルージュを筆頭に、美浦の岩戸孝樹厩舎が絶好調。土・日に出走した管理馬16頭の成績は3勝、2・3着がそれぞれ2回。勝率18.8%で、複勝率は驚異の43.8%を記録した。

 この好調ぶりは、近走だけではない。2017年から昨年まで、それぞれ年間16勝を記録した岩戸厩舎だが、今年は既に23勝をマーク。重賞成績も“確変中”で、9月には札幌2歳Sと紫苑S(ともにG3)を、それぞれジオグリフとファインルージュで勝利。同厩舎の平地競走の重賞勝利は2008年、ゲットフルマークスで制した京王杯2歳S(G2)以来、実に約13年ぶりとなった。

 岩戸厩舎といえば今夏、同じ美浦所属の木村哲也厩舎の管理馬を受け入れたことを覚えているファンも多いだろう。

 木村師の弟子に対する暴行事件に端を発して下された、同師への調教停止処分。JRA公式HPには「木村哲也調教師の調教停止処分に伴い、全管理馬が転厩となります」と記されており、7月28日には67頭もの馬が岩戸厩舎へ転厩することが発表された。

 前出のファインルージュやジオグリフらは、木村厩舎からの転厩馬。近いところではサウジアラビアRC(G3)2着のステルナティーアも岩戸厩舎の管理馬だが、デビュー前は木村厩舎に入厩。つまり岩戸厩舎の「躍進」は、木村厩舎からの転厩馬の存在が大きいことは否めない。

 ところがこの「躍進」ぶりが近々、ストップする懸念もある。JRA公式HPに記されている通り、木村師の調教停止期間の期限は10月31日まで。処分停止は目前まで迫っており、11月以降、転厩馬たちは岩戸厩舎から木村厩舎の管理馬へと“出戻り”することが予想される。

 そうなると、岩戸厩舎の成績はガタ落ちしてしまうのだろうか。しかし、そう考えるのは早計かもしれない。同厩舎が元々管理していたいわゆる“生え抜き馬”も、転厩馬を受け入れた期間を経て、大きな“変わり身”を見せている例があるのだ。

 岩戸厩舎が管理する生粋の“生え抜き馬”ゼログラヴィティは、今年3月27日の未勝利戦でデビューするも12着。間隔を空けて挑んだ7月10日の次走も6着と、なかなか勝利を挙げることができなかった。

 ところが、転厩馬とそのスタッフを受け入れた後、8月8日に未勝利を脱出。次走の小樽特別(1勝クラス)では昇級戦に挑戦して2着。そして9月の中山4Rでは見事、1勝クラスの壁を突破する“変わり身”を見せた。

 転厩馬の調教は木村厩舎のスタッフが引き続き行っているというが、好調な厩舎成績が生え抜きの馬たちにも好影響を与えているのかもしれない。木村師の処分が明ける日が目前に迫っている中で、今後は両厩舎の勝ち星がどのように変化していくのか。管理馬たちの行方はもちろん、両厩舎の動向に注目したい。

(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。

一味違うN-BOX、ルパンが乗ったフィアット500…珠玉のコンパクトカー5車

 中古車情報メディア『カーセンサー』(企画・制作 株式会社リクルート)は7月号で「三ツ星コンパクトカー」を特集し、読者から好評を得たという。今回、その中からさらに珠玉の5車を選んでもらい、その魅力について、リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に聞いた。

プロが選ぶコンパクトカー5選

――三ツ星コンパクトカーとして選んだ29モデルから、さらに厳選した5車を教えてください。

西村泰宏氏(以下、西村) 個人的な好みも入りますが、以下の通りです。

1.フィアット「500(現行型)」

2.ルノー「トゥインゴ(現行型)」

3.ホンダ「N-BOX スラッシュ(初代)」

4.BMW「i3(現行型)」

5.フォルクスワーゲン「ザ・ビートル(初代)」

――まず、フィアット「500」の魅力から教えてください。

西村 旧型は、アニメ映画『カリオストロの城』でルパン三世が乗っていたことでも知られている名車です。カラーリングが豊富で、特別仕様や限定モデルも多く用意されています。自分に合った“オンリーワン”が見つかりやすいことが特徴です。コンパクトカーのエースといえる存在でしょう。中古車価格も30万~300万円という水準で、老若男女を問わず幅広い世代から人気があります。

 また、『カーセンサー』7月号の表紙を飾っているフィアット「500」は、グッチが内外装をドレスアップした特別仕様車です。限定生産のため、流通台数は20台ほどで、見つけるのも難しいモデルです。

――2番目から4番目についてはいかがでしょうか。

西村 2番目のルノー「トゥインゴ」は乗りやすく、RR(リヤエンジン・リヤドライブ)という、あのポルシェ「911」と同じ機構を持っているので、軽快なハンドリングで小道をスイスイとドライブできることが特徴です。

 一方、3番目のホンダ「N-BOX スラッシュ」はシートの内装が多様で、車内でくつろげるクルマがほしいというニーズに応える1台です。ベースとなっているN-BOXはもともと人気がありますが、もう少し個性的なクルマを選びたいという人はN-BOX スラッシュを選択するのがオススメです。

 4番目はBMWの電気自動車(EV)の「i3」で、未来の街を走るクルマというのがコンセプトです。乗り味、見た目、内装など、ほかのモデルと一線を画しているクルマです。今後は、同じEVでも自動車メーカーによって打ち出す方向性によって、さまざまなモデルが登場するでしょう。

――最後はフォルクスワーゲン「ザ・ビートル(初代)」です。

西村 丸みを帯びたデザインでメインのユーザーは女性と思われがちですが、走りがしっかりしており、スピードを出したり長い距離を走る分にも申し分ありません。デザインだけでなく、フォルクスワーゲンのロングセラーモデルがベースとなってつくられている、いいクルマです。

 今回ご紹介した5台はいずれも流通台数が安定しており、入手しにくいということはありません。コロナ禍で海外旅行などが楽しめなくなる中、ちょっとした贅沢を楽しむ方が増えており、移動時間をより豊かにしてくれるコンパクトカーの人気が高まっています。

(構成=長井雄一朗/ライター)

一味違うN-BOX、ルパンが乗ったフィアット500…珠玉のコンパクトカー5車

 中古車情報メディア『カーセンサー』(企画・制作 株式会社リクルート)は7月号で「三ツ星コンパクトカー」を特集し、読者から好評を得たという。今回、その中からさらに珠玉の5車を選んでもらい、その魅力について、リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に聞いた。

プロが選ぶコンパクトカー5選

――三ツ星コンパクトカーとして選んだ29モデルから、さらに厳選した5車を教えてください。

西村泰宏氏(以下、西村) 個人的な好みも入りますが、以下の通りです。

1.フィアット「500(現行型)」

2.ルノー「トゥインゴ(現行型)」

3.ホンダ「N-BOX スラッシュ(初代)」

4.BMW「i3(現行型)」

5.フォルクスワーゲン「ザ・ビートル(初代)」

――まず、フィアット「500」の魅力から教えてください。

西村 旧型は、アニメ映画『カリオストロの城』でルパン三世が乗っていたことでも知られている名車です。カラーリングが豊富で、特別仕様や限定モデルも多く用意されています。自分に合った“オンリーワン”が見つかりやすいことが特徴です。コンパクトカーのエースといえる存在でしょう。中古車価格も30万~300万円という水準で、老若男女を問わず幅広い世代から人気があります。

 また、『カーセンサー』7月号の表紙を飾っているフィアット「500」は、グッチが内外装をドレスアップした特別仕様車です。限定生産のため、流通台数は20台ほどで、見つけるのも難しいモデルです。

――2番目から4番目についてはいかがでしょうか。

西村 2番目のルノー「トゥインゴ」は乗りやすく、RR(リヤエンジン・リヤドライブ)という、あのポルシェ「911」と同じ機構を持っているので、軽快なハンドリングで小道をスイスイとドライブできることが特徴です。

 一方、3番目のホンダ「N-BOX スラッシュ」はシートの内装が多様で、車内でくつろげるクルマがほしいというニーズに応える1台です。ベースとなっているN-BOXはもともと人気がありますが、もう少し個性的なクルマを選びたいという人はN-BOX スラッシュを選択するのがオススメです。

 4番目はBMWの電気自動車(EV)の「i3」で、未来の街を走るクルマというのがコンセプトです。乗り味、見た目、内装など、ほかのモデルと一線を画しているクルマです。今後は、同じEVでも自動車メーカーによって打ち出す方向性によって、さまざまなモデルが登場するでしょう。

――最後はフォルクスワーゲン「ザ・ビートル(初代)」です。

西村 丸みを帯びたデザインでメインのユーザーは女性と思われがちですが、走りがしっかりしており、スピードを出したり長い距離を走る分にも申し分ありません。デザインだけでなく、フォルクスワーゲンのロングセラーモデルがベースとなってつくられている、いいクルマです。

 今回ご紹介した5台はいずれも流通台数が安定しており、入手しにくいということはありません。コロナ禍で海外旅行などが楽しめなくなる中、ちょっとした贅沢を楽しむ方が増えており、移動時間をより豊かにしてくれるコンパクトカーの人気が高まっています。

(構成=長井雄一朗/ライター)

水田の病害虫チェック、人間なら14万人必要→AI活用なら「年2万円」で実現?

 以前の記事『5万円でできるのに1千万円も費用投下?“過渡期のAI”導入がDXを遅らせる!』、そして『真のDX推進を実現する正しいAI導入のコツ…人間は人間にしかできない仕事をして利益を最大化』では、旧来の非効率なワークフロー、特に紙や黒板・白板に書かれた文字をテキスト化するようなAIが、本格的なDXを阻害しがちだ、と書きました。本格的なDX、言い換えれば、業務や取引のフルデジタル化とは、劇的に生産性、正確さを向上させ、ひいては数十倍速水準のスピードの向上や省力化を達成するものです。

 一方、「では正しいAI導入とは?」といわれたときに、「従来人間にできなかったことをAIにやらせる」というひとつの勝ちパターンがあることを具体例で示しました。人間には物理的に無理な稼働中のガス管や水道管に入り込んで管の内壁を検査する仕事とか、あるA4用紙1枚の文章と似ている記述を100万件の文章から漏れなく見つけ出す(その裏返しに不存在の証明=悪魔の証明も可能)とかです。

 今回は、人海戦術で莫大な時間、コストをかければできなくはなかったが、従来は【経済的に事実上不可能】だったのを、AIや周辺の自動化ツール群が可能にする事例を取り上げます。

従来は不可能だった水田の稲の予防的大規模検査

 前回、自動化の先にある課題として「人間は人間にしかできない仕事を」しましょう!と提唱。「AIには機械、道具(=AI)にしかできない高速・大容量の作業をさせよ!」の裏返しです。特に、「なぜ?」を5重、6重に問うて、因果関係を深堀りするなど、AIには不可能な課題を、拙著『AIに勝つ!』を引いて紹介しました。この『AIに勝つ!』の「第6章 新たに生まれる仕事群を楽しむ」には、AI導入以前には【経済的に事実上不可能】だった、おもしろい事例を詳述しています。少し長いですが、その全体を引用します。

AI利用の意義を水田農家の病害虫チェックの例で考える

 最近の講演で、数字を使って好んでプレゼンしているのが、水田の葉の病害虫を毎日チェックする、という仕事です。10ヘクタールの水田の稲の葉のほぼ全部を、何百種類もの病害虫にかかっていないか毎日チェックするのにどのくらい時間がかかるでしょうか。株式会社アスクの「たわら蔵」という米作りを解説したホームページに、計算に必要な数字がありました。一部引用します:

(ホーム>お米の話>お米を作る>葉・茎・根の成長

「こうして苗として植えられた一本の稲は数十本もの茎に増える。しかし、田植では一株として5〜6本の苗を植えるし、株数も平方メートル当たり20株程度ですから、多くの分げつの芽は退化します。一本から7〜8本の分げつが出るだけで、ふつう一株では30〜35本くらいの茎に増

えます。

……中略…

 1平米当たりの稲の葉の枚数を、簡単な算数で計算してみましょう。

20株×33茎×12.5枚=8250枚

 1万枚に足りないくらいの数だとわかります。1アール(100平方メートル)当たりでは、82.5万枚、1ヘクタール(1万平方メートル)当たりでは、1億枚に近い8250万枚です。IoT農家がめざすべきレベルといわれる10ヘクタールなら10億枚に近い規模になります。仮に、数百種類のすべての病害虫に精通したスーパー農民が1人で1枚の葉を5秒でチェックできたとして(1茎分を1分間で精査できるとしても同じ)、41億2500万秒=1145万833時間=47万743日=130.8年

 これではもちろん、毎日水田のどこかに病害虫が忍び寄っていないかチェックするのにスピードが足りません。そこで、人海戦術をとってみましょう。1日8時間で完了するのに何人が必要か。上の計算式の途中を拝借して1回割り算すれば事足ります。

1145万833時間÷8時間=14万3229人

 彼らを収容する施設を用意して法人税、社会保障費の法人負担分を払うなどのコストを含めて1人当たり年間約1000万円のコスト増とすれば、年間経費が1兆4323億円増大します。これに対して、10ヘクタールの水田を耕作して得られる年収は700〜1000万円(ブランド米以外)です。 (引用終わり)

 売上の10万~20万倍の経費をかけて持続可能なビジネスなど存在しません。上記は、【経済的に事実上不可能】な事例として間違いないでしょう。同じパターン認識(画像認識)AIでも、前々回紹介の悪い応用例と違って、経済的に正しく活用できる見込みがあるわけです。毎秒30コマ撮影できる8Kカメラ(約3000万画素)を搭載したドローンに8K動画の1コマ1コマでちょうど、みっしりと稠密に10haの水田を撮影できるように飛行させるのに、画角(広角~望遠)や速度にもよりますが、1コマが1平米を撮影するとして、10haは10万平米、1時間は60分ですから、10万÷30÷60 = 55分33秒。

 これを約1時間として、1日10時間、週7日稼働させれば、10haの農家を毎週70軒、カバーできます。学習済のAIが判定処理をするのは、そこそこの性能のコンピュータで、文字通り1瞬(0.02秒以下)で終えられるので、計算機のコスト、電気代などは、AIクラウド管理の人件費に比べれば無視できるくらいのコストで収まります。

 すると、初期投資は別として、1人フルタイムで雇ったとしても、年間1400万円でAIクラウド運営者は十分に利益が出ます。同じAIをコピーして700軒分の水田を1人で監視すれば農家1軒当たり、年間2万円。これで、10~20年に一度の凶作を予防したり、収量をアップしたりができるなら格安ではないでしょうか?

おわりに

 AIには、人間みたいな振る舞いをさせたい、鉄腕アトムをつくりたいという夢を抱く人が多いのはわかります。その裏返しとしての恐怖心を抱く人も、最近は減ってはいるものの、一定数いるのは仕方ありません(是非本連載を最初から読んで「怖くない!」と思い直してください(笑))。しかし、AI=道具を本当にうまく使いこなしたいと考えるなら、上記のように算盤はじいて活用するのが産業応用で成功する秘訣だと思います。高性能化した計算機上のAIの超高速性、自動化率大幅向上がもたらすのは低コスト化です。従来、人間がやるのは経済的に不可能だった仕事が、実施可能になるわけです。

 どうせAIをやるなら、知能、学習などのキーワードに惑わされずに、超高速性、自動化率大幅向上がもたらす経済性に着目し、算盤勘定をしませんか? それこそが産業界をリードする経営者の使命ではないかと思います。

(文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

●野村直之

AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員。

1962年生まれ。84年、東京大学工学部卒業、2002年、理学博士号取得(九州大学)。NECC&C研究所、ジャストシステム、法政大学、リコー勤務をへて、法政大学大学院客員教授。05年、メタデータ(株)を創業。ビッグデータ分析、ソーシャル活用、各種人工知能応用ソリューションを提供。この間、米マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所客員研究員。MITでは、「人工知能の父」マービン・ミンスキーと一時期同室。同じくMITの言語学者、ノーム・チョムスキーとも議論。ディープラーニングを支えるイメージネット(ImageNet)の基礎となったワードネット(WordNet)の活用研究に携わり、日本の第5世代コンピュータ開発機構ICOTからスピンオフした知識ベース開発にも参加。日々、様々なソフトウェア開発に従事するとともに、産業、生活、行政、教育など、幅広く社会にAIを活用する問題に深い関心を持つ。 著作など:WordNet: An Electronic Lexical Database,edited by Christiane D. Fellbaum, MIT Press, 1998.(共著)他

水田の病害虫チェック、人間なら14万人必要→AI活用なら「年2万円」で実現?

 以前の記事『5万円でできるのに1千万円も費用投下?“過渡期のAI”導入がDXを遅らせる!』、そして『真のDX推進を実現する正しいAI導入のコツ…人間は人間にしかできない仕事をして利益を最大化』では、旧来の非効率なワークフロー、特に紙や黒板・白板に書かれた文字をテキスト化するようなAIが、本格的なDXを阻害しがちだ、と書きました。本格的なDX、言い換えれば、業務や取引のフルデジタル化とは、劇的に生産性、正確さを向上させ、ひいては数十倍速水準のスピードの向上や省力化を達成するものです。

 一方、「では正しいAI導入とは?」といわれたときに、「従来人間にできなかったことをAIにやらせる」というひとつの勝ちパターンがあることを具体例で示しました。人間には物理的に無理な稼働中のガス管や水道管に入り込んで管の内壁を検査する仕事とか、あるA4用紙1枚の文章と似ている記述を100万件の文章から漏れなく見つけ出す(その裏返しに不存在の証明=悪魔の証明も可能)とかです。

 今回は、人海戦術で莫大な時間、コストをかければできなくはなかったが、従来は【経済的に事実上不可能】だったのを、AIや周辺の自動化ツール群が可能にする事例を取り上げます。

従来は不可能だった水田の稲の予防的大規模検査

 前回、自動化の先にある課題として「人間は人間にしかできない仕事を」しましょう!と提唱。「AIには機械、道具(=AI)にしかできない高速・大容量の作業をさせよ!」の裏返しです。特に、「なぜ?」を5重、6重に問うて、因果関係を深堀りするなど、AIには不可能な課題を、拙著『AIに勝つ!』を引いて紹介しました。この『AIに勝つ!』の「第6章 新たに生まれる仕事群を楽しむ」には、AI導入以前には【経済的に事実上不可能】だった、おもしろい事例を詳述しています。少し長いですが、その全体を引用します。

AI利用の意義を水田農家の病害虫チェックの例で考える

 最近の講演で、数字を使って好んでプレゼンしているのが、水田の葉の病害虫を毎日チェックする、という仕事です。10ヘクタールの水田の稲の葉のほぼ全部を、何百種類もの病害虫にかかっていないか毎日チェックするのにどのくらい時間がかかるでしょうか。株式会社アスクの「たわら蔵」という米作りを解説したホームページに、計算に必要な数字がありました。一部引用します:

(ホーム>お米の話>お米を作る>葉・茎・根の成長

「こうして苗として植えられた一本の稲は数十本もの茎に増える。しかし、田植では一株として5〜6本の苗を植えるし、株数も平方メートル当たり20株程度ですから、多くの分げつの芽は退化します。一本から7〜8本の分げつが出るだけで、ふつう一株では30〜35本くらいの茎に増

えます。

……中略…

 1平米当たりの稲の葉の枚数を、簡単な算数で計算してみましょう。

20株×33茎×12.5枚=8250枚

 1万枚に足りないくらいの数だとわかります。1アール(100平方メートル)当たりでは、82.5万枚、1ヘクタール(1万平方メートル)当たりでは、1億枚に近い8250万枚です。IoT農家がめざすべきレベルといわれる10ヘクタールなら10億枚に近い規模になります。仮に、数百種類のすべての病害虫に精通したスーパー農民が1人で1枚の葉を5秒でチェックできたとして(1茎分を1分間で精査できるとしても同じ)、41億2500万秒=1145万833時間=47万743日=130.8年

 これではもちろん、毎日水田のどこかに病害虫が忍び寄っていないかチェックするのにスピードが足りません。そこで、人海戦術をとってみましょう。1日8時間で完了するのに何人が必要か。上の計算式の途中を拝借して1回割り算すれば事足ります。

1145万833時間÷8時間=14万3229人

 彼らを収容する施設を用意して法人税、社会保障費の法人負担分を払うなどのコストを含めて1人当たり年間約1000万円のコスト増とすれば、年間経費が1兆4323億円増大します。これに対して、10ヘクタールの水田を耕作して得られる年収は700〜1000万円(ブランド米以外)です。 (引用終わり)

 売上の10万~20万倍の経費をかけて持続可能なビジネスなど存在しません。上記は、【経済的に事実上不可能】な事例として間違いないでしょう。同じパターン認識(画像認識)AIでも、前々回紹介の悪い応用例と違って、経済的に正しく活用できる見込みがあるわけです。毎秒30コマ撮影できる8Kカメラ(約3000万画素)を搭載したドローンに8K動画の1コマ1コマでちょうど、みっしりと稠密に10haの水田を撮影できるように飛行させるのに、画角(広角~望遠)や速度にもよりますが、1コマが1平米を撮影するとして、10haは10万平米、1時間は60分ですから、10万÷30÷60 = 55分33秒。

 これを約1時間として、1日10時間、週7日稼働させれば、10haの農家を毎週70軒、カバーできます。学習済のAIが判定処理をするのは、そこそこの性能のコンピュータで、文字通り1瞬(0.02秒以下)で終えられるので、計算機のコスト、電気代などは、AIクラウド管理の人件費に比べれば無視できるくらいのコストで収まります。

 すると、初期投資は別として、1人フルタイムで雇ったとしても、年間1400万円でAIクラウド運営者は十分に利益が出ます。同じAIをコピーして700軒分の水田を1人で監視すれば農家1軒当たり、年間2万円。これで、10~20年に一度の凶作を予防したり、収量をアップしたりができるなら格安ではないでしょうか?

おわりに

 AIには、人間みたいな振る舞いをさせたい、鉄腕アトムをつくりたいという夢を抱く人が多いのはわかります。その裏返しとしての恐怖心を抱く人も、最近は減ってはいるものの、一定数いるのは仕方ありません(是非本連載を最初から読んで「怖くない!」と思い直してください(笑))。しかし、AI=道具を本当にうまく使いこなしたいと考えるなら、上記のように算盤はじいて活用するのが産業応用で成功する秘訣だと思います。高性能化した計算機上のAIの超高速性、自動化率大幅向上がもたらすのは低コスト化です。従来、人間がやるのは経済的に不可能だった仕事が、実施可能になるわけです。

 どうせAIをやるなら、知能、学習などのキーワードに惑わされずに、超高速性、自動化率大幅向上がもたらす経済性に着目し、算盤勘定をしませんか? それこそが産業界をリードする経営者の使命ではないかと思います。

(文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

●野村直之

AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員。

1962年生まれ。84年、東京大学工学部卒業、2002年、理学博士号取得(九州大学)。NECC&C研究所、ジャストシステム、法政大学、リコー勤務をへて、法政大学大学院客員教授。05年、メタデータ(株)を創業。ビッグデータ分析、ソーシャル活用、各種人工知能応用ソリューションを提供。この間、米マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所客員研究員。MITでは、「人工知能の父」マービン・ミンスキーと一時期同室。同じくMITの言語学者、ノーム・チョムスキーとも議論。ディープラーニングを支えるイメージネット(ImageNet)の基礎となったワードネット(WordNet)の活用研究に携わり、日本の第5世代コンピュータ開発機構ICOTからスピンオフした知識ベース開発にも参加。日々、様々なソフトウェア開発に従事するとともに、産業、生活、行政、教育など、幅広く社会にAIを活用する問題に深い関心を持つ。 著作など:WordNet: An Electronic Lexical Database,edited by Christiane D. Fellbaum, MIT Press, 1998.(共著)他

GU、今、買わない理由がない“神コスパ”な商品5選…リアルレザーシューズ、ブルゾン

GU(ジーユー)」は2006年10月に1号店が誕生したため、今月でちょうど15周年。「ユニクロ」の姉妹ブランドとして誕生し、ユニクロよりもさらにリーズナブルな価格設定で人気を集め、442店(21年5月31日現在)を展開している。

 どんな時代でもファッションは不滅であるという理念をもとに、「YOUR FREEDOM 自分を新しくする自由を。」というコンセプトを掲げるGUは近年、衣服以外にも注力しており、今年は男性用リアルレザーシューズも発売している。10月時点でダービーシューズやストレートチップなどのドレスシューズを5商品展開しているが、驚くべきはその値段。牛革の本革使用であるにもかかわらず、3990円というリーズナブルな価格設定となっているのである。

 今回はそんな攻めの姿勢を忘れないGUの秋アイテムを紹介。「この秋、買うべきGUの服5選」をリストアップし、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーである堺屋大地氏に、おすすめポイントを解説していただいた。

 今回、以下の5つを基準として選定した。

・ファッションビギナーでも比較的に着こなしやすいこと

・難易度の高い“最先端のおしゃれ”は目指さないこと

・“ダサい”と思われるぐらいなら無難な着こなしにすること

・女子ウケが良く“ちょっとおしゃれ”と思われること

・無理に若ぶるのではなく、年相応に大人っぽく見られること

コーデュロイシェフジャケット/2990円(税込、以下同)

 近年GUが推し出しているシェフシリーズのコーデュロイ仕様ジャケット。肩を落としたビッグシルエットになっており、トレンド感を演出している。タフな見た目ながらカジュアルから“きれいめ”までフレキシブルに対応する一着。カラーバリエーション(カラバリ)は、ブラック、ピンク、ナチュラル、ダークブラウン、ブルーの5色展開。

「コーデュロイにヴィンテージ感があって大人っぽい仕上がりになっていますね。秋のデートコーデに最適でしょう。カラバリが豊富なのもうれしいポイント。大人男性は、ピンクは避けたほうがいいでしょうが、ダークブラウンやブラックは誰が着ても似合いそう。ちょっと攻めたい人はブルーやナチュラルが狙い目です」(堺屋氏)

ユーティリティオーバーサイズブルゾン/3990円

 前身頃に大きなポケットを4カ所備えたスタンドカラータイプのブルゾン。タフな素材を使っており、タウンユースだけでなくアウトドアシーンなどでも活躍できる。カラバリはブラック、ベージュ、ダークグリーンの3色展開。

「『買うべき』というポイントは、見た目のカッコよさと利便性を両立しているところ。ユーティリティポケットが実用的であり、デザイン性の高さも底上げしていますね。ポケットの収納力が高いので、なるべくバッグなどを持たずに手ぶらで出かけたいという人にピッタリのアウターでしょう。ブラックは無難でカッコいいですが、個人的には円熟味のあるベージュとダークグリーンが大人っぽくていいなと感じました」(堺屋氏)

ウォッシャブルアゼカーディガン(長袖)/2490円

 中肉の糸を使用して畦(あぜ)編みで仕上げたVネックカーディガンで、冬到来前の涼しい季節のアウターとして重宝。カラバリはオフホワイト、ブラック、ダークブラウンの3色展開。

「カーディガンは大人コーデの定番なので、攻めずにちょいオシャレを目指したい人は買いでしょう。こちらは洗濯機で洗えるウォッシャブルタイプになっているので、扱いがラクなのもうれしいところ。カラバリのなかではブラックとダークブラウンが、良い意味で奇をてらっておらず、失敗しないですむのでおすすめです」(堺屋氏)

イージーアンクルパンツ/1990円

 テーパードシルエットのアンクルパンツで、特徴はなめらかな肌触りと適度な落ち感。イージーウエストを採用し、ドローコードで調整ができるようになっており、ラクに穿ける一本となっている。カラバリはライトグレー、グレー、ブラック、ワイン、ベージュの5色展開。

「一般的なパンツよりも丈がやや短いアンクルパンツは、足元を軽やかな印象にできるので秋コーデに最適。それをこのリーズナブル価格で買えるというのはありがたいです。カラバリのなかでワインはちょっと冒険なので買う際に注意が必要ですが、グレーやブラックは手堅い色味でいろいろなトップスと合わせやすいでしょう」(堺屋氏)

リアルレザーダブルモンクストラップシューズ+E/3990円

 アッパーに牛革を使用したダブルモンクストラップデザインのリアルレザーシューズ。本革ならではの独特な経年変化も楽しめるアイテムだ。カラバリはブラック、ダークブラウンの2色展開。

「『買うべき』理由は、かなりコストパフォーマンスが良いことですね。牛革仕様で約4000円という価格に驚きで、さらに見た目は高級感もあります。デート時のきれいめコーデに合わせやすいでしょう。10月現在、GUではリアルレザーシリーズが5種あり、このダブルモンクストラップシューズ以外にもダービーシューズ、コインローファー、オペラシューズ、ストレートチップシューズがあります。5種すべてコスパ上々なのでどれもおすすめですが、なかでもこのダブルモンクストラップシューズのデザイン性は頭ひとつ抜けて渋いのでGOODです」(堺屋氏)

 GUは若者向けのアイテムが多かったが、今回紹介したリアルレザーシューズなどは大人男性に向けられたデザインとなっており、30代以上のビジネスパーソンの獲得も狙いにきている印象を受ける。若々しすぎるアイテムもあるが、ベーシックでファッションビギナーでも着こなしやすい服は増えてきているので、今回の記事を参考にぜひGUでの買い物を楽しんでいただきたい。

(文・取材=A4studio)

※情報は2021年10月10日現在のものです。

パチスロ新台「万枚突破」マシンに続く超ビッグタイトルが間もなくデビュー!

「遊べるA×AT」という触れ込みながら、終日で「万枚突破」という快挙を達成。爆発力も兼ね備えたサミーの最新タイトル『パチスロツインエンジェル PARTY』は10月4日の導入以降、全国のホールで絶賛稼働中だが、そんな本機を送り出した同社は、この秋大注目のシリーズ最新作『パチスロANEMONE 交響詩篇エウレカセブン HI-EVOLUTION』をまもなく投入予定だ。

 スぺックは純増約2.5枚のATタイプ。出玉増加の軸はAT「Dive To Eureka Seven」で、通常時のチャンス役や特定ゲーム数消化などで突入するミッション「ダイブシミュレーションミッション」を成功させ、クリア後に発動するボーナス(4種類)でAT当選、という流れが王道ルートとなる。

 ATはG数不定型の完全自力バトルで、攻撃パートの「バスクードドライブ」と引き戻しパート「セブンス・トレイサー」をループさせつつ、最終ジャッジで勝利し、高い報酬獲得を目指すゲーム性。その報酬はAT継続、ビッグボーナス、ビッグボーナスバースト、エアリアルボーナス、V3ボーナスなどがあり、その報酬期待度は撃破した敵の種類で変化するようだ。

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 ビッグボーナス(バースト)はAT中のアネモネを強化できる「バースト保留」獲得のチャンスで、エアリアルボーナス中はベル以上でバースト保留を獲得。V3ボーナスは最上位のバースト保留特化ボーナスで、エアリアルボーナスとV3ボーナスについては残り0Gになってもベル以上を引き続ければ継続していくという。

 そしてこれらのチャンスを活かし、見事敵を10回撃破することができれば、1セット10G+αの上位AT「クライマックスモード」へ昇格。継続期待度は約89%で、最終的にエウレカ撃破でエンディングへと発展するようだ。なお、クライマックスモード昇格時のエンディング到達率は約82%だという。

 これまでのシリーズ機と同様、小役のヒキやタイミングなどを重視した自力感溢れるゲーム性を実現。11月、いや今年下半期要注目の新台となりそうだが、そんな本機のデビューを盛り上げるべく、同社は「『パチスロANEMONE』コラボイベント」を実施中だ。

 新感覚リズムファンタジーRPG『ナナリズムダッシュ』とのコラボを記念した本キャンペーンは、アネモネ役を演じる人気声優・小清水亜美のサイン色紙が計7名に当るという内容。気になる応募方法は公式Twitterアカウントをフォローし、対象のツイートをリツイートすれば完了だ。

 なお、締め切りは11月2日まで。ここでしか手に入らないレアアイテムだけに、ご興味ある方はぜひ応募してみてはいかがだろうか。

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反田恭平さん、ショパンコンクールの演奏は何が凄かった?入賞翌日から始まる学びの日々

 ポーランドの首都ワルシャワで開催されていたショパン国際ピアノコンクールで、反田恭平さんが2位、小林愛実さんが4位に入賞した。今回のショパンコンクールでは、日本人初の優勝者が出るのではという期待があって、予選から配信動画をできる限りライブで視聴していたのだが、反田さんの演奏は叙情的で美しく、聴衆に何を伝えたいかもはっきりしていた。また、ファイナルで弾いたピアノ協奏曲では、オーケストラと息がぴったり合っていて、一体感が素晴らしかった。

 一方、小林さんは、第2次予選で弾いたバラードやポロネーズ、第3次予選で弾いたマズルカやプレリュードで、寂寥感や絶望感、悲哀といったショパンの影の部分を見事に表現していて、非常に強い感銘を受けた。ショパンの影の部分を弾きこなしたという点では、今回の出場者のなかでピカイチといっても過言ではない。

 ショパンの曲はいずれも美しく華やかであるがゆえに、影の部分が忘れられがちだが、その人生は悲哀に満ちていた。ワルシャワで生まれ、パリに出て、サロンピアニストとして人気を博し、社交界の寵児としてもてはやされた一方、20代で肺結核を発病し、喀血を繰り返した。また、ひどい神経亢進症にも悩まされ、砂糖やシロップに混ぜたアヘンをしばしば服用した。

 つまり、若い頃から病魔と闘い、死神の影におびえていた。大作が少なく、小品が圧倒的に多いのは、体力的な限界によるのかもしれない。39歳で亡くなっていることから、ピアノソナタ第2番、第3楽章の有名な葬送行進曲は自分自身の葬儀のために作曲したのではないかと疑いたくなる(ちなみに、この曲は、反田さんが第3次予選で弾いて、とても美しかった)。

 それだけではない。ポーランドを離れた後も、死ぬまで祖国への熱い思いを持ち続けていたが、それが叶うことはなかった。もしかしたら、ワルシャワ革命の直前に祖国を捨てたことへの罪悪感が帰国を阻んだのかもしれない。もちろん、革命が敗北したことによる絶望感は、作曲の大きな原動力になったはずだ。

 さらに、社交界で絶大な人気を誇ったショパンは、女性関係が華やかそうな印象を与えるが、体の弱さが原因で破局したこともある。女流作家ジョルジュ・サンドとの恋愛でも有名だが、9年間同棲した末に破局している。サンドとの別離後は一文無しになってしまい、経済的にも苦しかったようだ。

 このように、ショパンの人生を振り返ると、影の部分が少なからずあり、それが作品に大きな影響を与えているように見える。それを見事に弾き切ったという点で、小林さんの演奏は素晴らしかった。もちろん、反田さんをはじめとする他のピアニストが影の部分を表現できなかったというわけではない。ショパンの影の部分を表現するという点で、小林さんの演奏が図抜けていたというだけの話である。

悲哀こそ芸術の神髄

 私が小林さんを高く評価するのは、悲哀こそ優れた芸術作品を生み出すからだ。『幸福な王子』『サロメ』などで有名な19世紀のイギリスの作家、オスカー・ワイルドは、同性愛のかどで投獄されたのだが、牢獄から同性愛の相手にあてて書いた書簡集である『獄中記』の中で次のように述べている。

「私は悲哀が人間の感得しうる最高の情緒であるので、それが、あらゆる偉大なる芸術の典型であり、同時に試金石でもあることを、いまにして知った」

 これは名言だ。ある作品が、ただ美しいだけでなく、心の糧となるだけの深みをそなえているか否かは、作者がどれだけ身体的・精神的な苦悩を経験したか、どれだけ不幸な体験をしたかによるところが大きい。この点で、ショパンは短い人生でありながら十分すぎるほど悲哀を味わったといえる。この悲哀を見事に表現した小林さん、そして光と影のコントラストを美しく弾きこなした反田さんに心から「ブラボー」と叫びたい。

 ショパンコンクールは幕を閉じた。だが、ここからが本当の始まりだ。今回のコンクールの審査員を務めたワルシャワ音楽大学の教授、ピオトル・パレチニ氏は、インタビューで次のように話している。

「たとえコンクールで良い結果が出なくても、一部のピアニストはのちに成功することになると思います。優勝だけが重要な目標ではありません。本当のコンクールは、結果が出たその翌日からスタートする。それは、優勝したとしても同じです。コンクール後も長年にわたり芸術的に最高レベルの演奏を保つことは、入賞するよりもずっと難しいのです。コンクールの真の結果は時の流れによって決められ、私たちはその結果を何年もあとに知ることになります」( https://ontomo-mag.com/article/interview/chopin-piano-competition02/

 実に名言だと思う。コンクールで優勝しても、上位入賞しても、その後鳴かず飛ばずのピアニストはいくらでもいる。逆に、コンクールでは良い成績を残せなくても、その後活躍したピアニストも少なくない。ちなみに、パレチニ氏は反田さんのお師匠さんらしい。実に素晴らしい先生についていると思う。

 パレチニ氏の言葉通り、今日が始まりだと思って、これからも研鑽を積んでほしい。いずれ、「時の流れ」が反田さんも小林さんも優れたピアニストだと証明してくれることを切に祈る。

 最後に、みなさん、クラシックのコンサートに行ってください。日本にはこんなに素晴らしいピアニストがいるのです。とくに知識は必要ありません。音楽は、耳で聴き、魂で感じればいいのですから。

(文=片田珠美/精神科医)

参考文献

三枝成彰『大作曲家たちの履歴書(上)』中公文庫

オスカー・ワイルド『獄中記』田部重治訳 角川文庫ソフィア

●片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

 

JRA 伸び悩む「5億円馬」の姉がダートへ転向!? G1・3着の実績馬に一体何が

 2019年のセレクトセール当歳において、歴代5位の5億760万円(税込)で落札されたリアド(牡2歳、栗東・友道康夫厩舎)が、今週末の菊花賞当日に行われる阪神5R・2歳新馬戦(芝1800m)でデビュー予定だ。

 管理する友道師は『日刊スポーツ』の取材で「セリの時からバネがあって柔らかかった。追い出してスピードに乗るといい動き。いかにもディープ産駒っぽい」と答えており、5億円の価値に相応しい風格が出ているようだ。

「リアドの評判はとても高いです。菊花賞もそうですが、リアドのデビュー戦もとても楽しみです。

一方で、明るい話題が絶えないリアドに対して、姉のギルデッドミラー(牝4歳、栗東・松永幹夫厩舎)は最近不調に陥っています」(競馬記者)

 ギルデッドミラーは現在まで通算13戦2勝のオルフェーヴル産駒で、昨年のNHKマイルC(G1)で3着の実績がある。他にもアーリントンC(G3)と京都牝馬S(G3)で2着に入るなど、短距離で活躍している馬である。

「2勝と勝ち星は少ないですが、2歳から3歳春までは7戦して6戦が馬券圏内と安定感がありました。唯一馬券圏外になったレースは適性外と言える1800m戦でしたし、それでも5着と掲示板は確保しています。

ただ、3歳夏以降はそれまでの安定感から一転して、馬券圏外が目立つようになりました。2桁着順などの大敗も珍しくありません」(同)

 3歳のNHKマイルCまで【2-2-2-1】だったが、それ以降は【0-1-0-5】と馬券圏外が大幅に増加。距離は1200m~1600mに限定されているため、それが原因で敗れたとは考えにくい。古馬の壁にぶち当たった感じもあるが、それ以外にも原因があるらしい。

「現役時代に『金色の暴君』と呼ばれた父オルフェーヴルの影響を受けているのか、テンションが高くレースで行きたがる面があります。また、一時期はモタれる癖も出ていました。とても扱いづらい馬で、気性面のモロさがレースの結果に反映してしまっているのではないでしょうか」(同)

 陣営も同馬の気持ちが高ぶらないよう、日頃から調教などを工夫して調整しているが、なかなか結果に結びついていないようだ。そんなギルデッドミラーは、今秋に180度方針転換するという。

「ギルデッドミラーの次走候補の1つに31日のオータムリーフS(阪神ダート1400m)が挙がっています。初めてのダート戦になりますね。

父のオルフェーヴルは現役時代にダートを走っていませんが、ダート重賞を複数勝っているマルシュロレーヌやジャスティンを輩出しています」(同)

 ディープインパクト産駒のリアドが「ディープインパクト産駒らしい」と、評価を受けているなら、ギルデッドミラーはオルフェーヴル産駒らしい力強い走りで、新境地のダートで活躍してくれることに期待したい。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……