地味に世界トップ級の企業、宇部興産の未来志向経営…世界の半導体生産を化学で支える

 化学などの事業を展開する宇部興産は、半導体シリコンウエハーの洗浄などに使われる薬液の生産能力を2倍に引き上げる。それによって、半導体の先端分野での成長を目指す計画という。宇部興産は先端分野での製造技術の強化によって、世界トップクラスの半導体関連部材供給者としての地位を目指そうとしている。

 一方、同社は、これから世界全体で加速する脱炭素にも対応しなければならない。自社の製品のライフサイクル全体で排出される温室効果ガスを抑えつつ、より高純度の化学品を生み出す体制を迅速に整備できるか否かが、中長期的な事業展開に大きく影響するだろう。

 先行きは楽観できないが、同社の技術力をもってすれば、脱炭素に対応してビジネスチャンスを手に入れることはできるだろう。そのために求められるのが、個々人が集中して新しい化学品の創造に取り組む組織体制の整備だ。宇部興産が事業運営のスピードを高めて、より迅速に、より純度の高い半導体部材を創出することができるかに注目したい。

近年の宇部興産の事業運営の状況

 宇部興産が半導体洗浄薬液の生産能力を強化することが報じられた。新しいモノの創造によって生き残りを目指そうとする経営陣の決意は一段と高まっているようだ。それは、同社の中長期的な事業運営に決定的な影響を与える。

 リーマンショック後、宇部興産は成長の柱となる事業を確立することが難しかった。2000年代に入ってからの株価推移を確認すると、2007年末の高値が更新されていない。2016年半ばから2017年末にかけては、公共工事の積み増しなど中国の景気対策を背景に同社の成長期待は高まったが、2018年以降は中国経済の減速懸念や米中対立の先鋭化、コロナショックの発生によって株価は不安定に推移している。

 その要因として、宇部興産が化学に加えて、建設資材や機械など、どちらかといえば在来分野での事業運営を重視したことがあるだろう。他方で、中国では共産党政権が工場建設用地の提供や産業補助金の支給によって国有・国営企業などの事業運営体制を支援し、中国企業の価格競争力が高まった。その他の新興国でも、企業の技術習得が進んだ。その結果、宇部興産は競争の激化に直面し、持続的に収益率を高めることが難しくなった。その上に、コロナショックが発生し、宇部興産はより強い逆風に直面した。

 その状況下、宇部興産は事業構造の転換を進め、長期存続を目指す力を強化しようとしている。その象徴として、宇部興産の祖業の一つに位置づけられるセメント事業の分離がある。それに加えて、同社は商号の変更も発表した。

 経営陣は、これまでの発想で事業を運営して収益を獲得することは困難な時代を迎えたとの危機感を強めている。経営陣は退路を断って改革に取り組み、成長期待の高い化学品分野での選択と集中を進めている。その一つとして、高純度の半導体洗浄薬液の生産能力が引き上げられる。また、同社は半導体などの絶縁、保護膜の原材料であるポリイミドの生産能力の引き上げにも着手した。

成長が期待される半導体部材事業

 言い換えれば、宇部興産の経営陣は、高付加価値の化学品分野には勝機があると考えているようだ。理論的に考えると、中長期的な成長が期待される分野に経営資源を集中的に再配分して新しいモノやサービスを創出する能力を引き上げることは、企業の成長実現に不可欠だ。

 今後、世界経済のデジタル化は一段と加速する。世界各国の社会、企業、家庭にIoT=インターネット・オブ・スィングスの技術が浸透するだろう。具体的に考えると自動車の使い方が変わる。EVシフトなどの電動化に加えて、コネクテッド技術の開発と実用化によって自動車に搭載される半導体の数と種類が増える。スマートフォンなどのITデバイスの小型化とデータ処理速度の向上、メモリ容量の増大も進む。ファクトリー・オートメーションや家事のためのロボット需要も高まるだろう。脱炭素のためにも、消費電力の少ない半導体や、パワーマネジメントを行うチップの需要は増す。ロジック半導体の回路の線幅を小さくする微細化など最先端の半導体の製造技術の重要性は高まりこそすれ、低下することはないだろう。

 微細化などのためには、より高純度の半導体関連部材の供給能力が欠かせない。つまり新しい化学品の創造こそが、新しい半導体の開発を可能にする。そこに宇部興産は成長のチャンスを見出し、洗浄薬液などの生産能力を引き上げる。

 それに加えて、世界経済全体でゲームチェンジが加速し、新しいモノを生み出す力を持つ企業をめぐる争奪戦が過熱している。半導体の製造分野では台湾積体電路製造(TSMC)によるシェアの拡大が鮮明だ。米国や欧州委員会などTSMCに最先端の半導体工場を建設するよう求め、サプライチェーンの強化を目指している。そのために米欧は補助金政策を重視し始めた。また、自動車分野では、テスラやリヴィアンなどの新興企業が成長している。事業環境の変化が加速する中で宇部興産は微細かつ高純度な化学品の製造技術を強化し、最先端分野での収益力を高めたい。

重要性高まる脱炭素の対応

 デジタル化に加えて、宇部興産脱炭素にも対応しなければならない。鉱業からスタートして宇部興産にとって、脱炭素は組織全体にしみ込んだ発想からの脱却を迫っている。

 時間軸を分けて考えると、短期的に、宇部興産が脱炭素に対応するためには再生可能エネルギー導入などのコストを負担しなければならないだろう。わが国ではエネルギー政策の転換が遅れている。そのなかで企業が自力で風力や太陽光などを用いて電力を調達するためには、風車や太陽光パネルの設置が必要だ。既存の生産設備を改修し、温室効果ガスの排出量を減らすためのコストも増えるだろう。コスト増加に対応しつつ事業運営の効率性を高めるために、異業種との提携、さらには関連する技術を持つ企業を買収する重要性も高まる。買収資金を得るために資産売却が増える展開もあるだろう。

 中長期的な目線で考えると、脱炭素の加速を背景に宇部興産のビジネスチャンスは増加する可能性が高い。まず、半導体洗浄薬液のような高純度の化学品を生み出す力をもってすれば、同社が脱炭素に活用できる二酸化炭素を吸着する素材や、化学プラントで使われる温室効果ガス回収の装置を開発し、自社内外での活用を目指すことは可能だろう。そうした取り組みの強化によって、宇部興産はデジタル化と脱炭素の両面で競争力を持つ化学品メーカーとして存在感を発揮する可能性がある。このように考えると、新しい需要創出を目指して、宇部興産はさらなるスピード感で事業体制を変革し、新しい取り組みを増やそうとするはずだ。

 ただし、急速な事業運営体制の変化は、時として組織に属する人々に不安を与える。組織に動揺が広がることを防ぎつつ成長戦略を実現するためには、まずは半導体の洗浄薬液で世界トップの製造技術を実現するなど、短期間のうちにニッチな分野で成長を実現することが大切だ。成功体験が組織全体に自信を与え、さらなるチャレンジを支える。

 今後の展開によっては、さらなる事業運営体制の見直しと改革が必要になることもあるだろう。経営陣があきらめずに改革を貫徹して早期に成長を実現する展開を期待したい。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

●真壁昭夫/法政大学大学院教授

一橋大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学大学院(修士)。ロンドン証券現地法人勤務、市場営業部、みずほ総合研究所等を経て、信州大学経法学部を歴任、現職に至る。商工会議所政策委員会学識委員、FP協会評議員。

著書・論文

『仮想通貨で銀行が消える日』(祥伝社、2017年4月)

『逆オイルショック』(祥伝社、2016年4月)

『VW不正と中国・ドイツ 経済同盟』、『金融マーケットの法則』(朝日新書、2015年8月)

『AIIBの正体』(祥伝社、2015年7月)

『行動経済学入門』(ダイヤモンド社、2010年4月)他。

JRA 武豊「年末の大一番」終わってもヘビーローテ!?ジョッキーだけじゃない!レジェンドの意外な一面は「公営ギャンブル三昧」

 12日の阪神JF(G1)で史上初の兄弟タッグによるG1勝利を目指すも3着に惜敗した武豊騎手。「思い通りのレースは出来ました。状態も良かったですし、惜しかったですね。もう一歩でした」と、理想通りの騎乗は出来たものの、勝ち馬サークルオブライフの決め手に屈してしまった。

 惜敗だけに気持ちを引きずってしまいそうだが、そう落ち込んでもいられないのが現在の武騎手。今週末の朝日杯FS(G1)は自身初勝利をかけて、デビュー2連勝中の新星ドウデュースへの騎乗が控えている。

 そして、2週間後に控えた年末の大一番の有馬記念(G1)ではアリストテレス、2021年の中央競馬最終日に行われるホープフルS(G1)はアスクワイルドモアにそれぞれ騎乗予定だ。年末にかけて大レースが続くが、どのレースでも騎乗馬を確保しているのは流石トップジョッキーの武騎手といったところだろうか。

 そんな大レースに騎乗依頼が相次いでいる武騎手だが、ホープフルSを終えた後もジョッキーとして以外の“依頼”が複数あるのをご存知だろうか。

 その1つが日本テレビ系列で放送される競輪中継番組『坂上忍の勝たせてあげたいTV』だ。武騎手は競輪が趣味の1つと公言しており、毎年12月30日に行われる「KEIRINグランプリ」を同番組が中継する際にゲストとして出演を続けている。

「KEIRINグランプリは例年ホープフルSや東京大賞典(G1)が終わった後に開催されています。そのため、ジョッキーとして年内の仕事を終えた状態で楽しめる状況で中継に出演することは、とても楽しみにしているそうです。

また、武騎手は村上義弘選手といった近畿の競輪選手と交流が深いことで有名です。16年に村上選手が優勝した際は中継で大喜びしていたのが印象的で、かなりの払い戻しを受けたともいわれていますね。

今年は残念ながら村上選手は出場しませんが、同じ近畿から古性優作選手が出場しますから、古性選手を中心に車券を買うのではないかという気がします。ただ、親交のある元競輪選手の山口幸二さんの息子である山口拳矢選手の補欠出場が叶えば、山口選手から買うかもしれませんね」(競馬誌ライター)

 競輪中継の出演は毎年恒例でもあり、武騎手のファンなら特に驚くことでもないだろう。驚くべきはその翌日だ。大晦日にオートレースの中継にもゲスト出演することが決まったようなのだ。

 武騎手が出演するのは、YouTubeチャンネル『川口オートレース公式チャンネル』で放映予定の『オッズパークPresents スーパースターフェスタ2021 超星LIVE』。このライブは27日から5日連続で行われるスーパースター王座決定戦(SG)を中継するのだが、その最終日のゲストに武騎手が登場する。

「共演するのは、現役時代は相手打者の内角をグイグイ突く『ケンカ投法』で通算251勝を上げた元西武ライオンズの東尾修氏です。現在は解説者として、投法さながらに歯に衣着せぬトークで活躍していますから、物腰が柔らかい武騎手がどう対応するか注目ですね」(同)

「ジョッキー武豊」として、3つのG1でどのような勝負をしていくかも見物だが、30日・31日の「ギャンブラー武豊」の腕前にも注目だ。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

若い人の可能性を芽吹かせる「人事」とは?

経営戦略としての「人事」

ご自身のキャリアをベースに、企業のあるべき姿、形を提言しつづける八木洋介氏。八木氏が説くテーマを、一言で表すなら「人事改革」だ。人事改革なくして、企業の持続的成長などあり得ない。「人材こそが、わが社の宝である」と多くの企業は言う。しかしながら、その宝を「持ち腐れ」させてはいないだろうか?記事化にあたっては、八木氏ウェビナー(※)を聴講し、独自のインタビューも試みた。

老いも、若きも、男も、女も、他国の人々も。さまざまな個性が、ひとつの企業に集う。そのことの意味、そのことの楽しさ、そこから生み出される未来というものを、八木氏が顧問を務めるサイコム・ブレインズの取り組みからひもといてみたい。私たち一人ひとりは、ただ単に企業という「箱」に押し込められた「道具」ではないという思いを込めて。

文責:ウェブ電通報編集部

(※)サイコム・ブレインズによる「八木洋介氏と考える、これからの会社をリードする人事に必要な学び~ポスト・パンデミックの世界で勝つ~」と題されたウェビナー。詳細は、こちら

八木洋介氏: people first 代表取締役(前LIXILグループ執行役副社長) サイコム・ブレインズ顧問 1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。96年National Steelに出向し、CEOを補佐。99年にGEに入社し、複数のビジネスで人事責任者などを歴任。2012年にLIXILグループ 執行役副社長に就任。Grohe, American Standard, Permasteelisaの取締役を歴任。17年 people firstを設立して、代表取締役。TBSホールディングス 社外取締役、GEヘルスケア・ジャパン 監査役。その他複数の会社の顧問に就任。著書に『戦略人事のビジョン』。
八木洋介氏:
people first 代表取締役(前LIXILグループ執行役副社長)
サイコム・ブレインズ顧問
1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。96年National Steelに出向し、CEOを補佐。99年にGEに入社し、複数のビジネスで人事責任者などを歴任。2012年にLIXILグループ 執行役副社長に就任。Grohe, American Standard, Permasteelisaの取締役を歴任。17年 people firstを設立して、代表取締役。TBSホールディングス 社外取締役、GEヘルスケア・ジャパン 監査役。その他複数の会社の顧問に就任。著書に『戦略人事のビジョン』。
タイトル1

「新規事業へのチャレンジ」「○○トランスフォーメーション」といったようなことを、多くの企業が掲げてはいるものの、その多くが「精神論」になってはいないだろうか?と八木氏は警鐘を鳴らす。「経営を、文化と捉えてはダメなんです。カルチャーというものは、自然発生的に生まれるものではありません。誰かが、明確な意識をもって形にする。それを、世の中に投げかける。それに共感した人たちが多ければ多いほど、文化が出来上がる。茶の湯でも、歌舞伎でも、なんでもそうだ」。そして、その際に必要なクリエイティビティというものを、八木氏はこう定義してくれた。「とっぴなこと、奇抜なことをやることが、クリエイティブということではないんです。誰もが目にしていて、誰もが普通に相対しているものの価値に改めて気づかせてくれる力。それが、クリエイティブというものの本質だと思います」
大事なことに気づかせてもらうと、人は驚くと同時に、ありがとうという気持ちになるものだ。「気づかせてくれた相手には、リスペクトの感情が芽生えませんか?そこに付加価値というものが生まれる」。八木氏の指摘によるクリエイティビティとは、一流アーティストによるものであろうが、普段、なにげなく使っている生活用品に込められたものであろうが、その本質は変わらないものだと思う。

タイトル2

「これは人事部門に限ったことではなく、現在マネジメント職に就いている人間、将来マネジメント職を志している人間、すべてに言えることですが、オーセンティックリーダーシップというものが求められているんです。分かりやすく言うなら、自分らしく、自分をリードできることが、指導者としての一丁目一番地。それができていない人間が、人をリードできるわけがないでしょう?」。八木氏による指摘は、連載の最後まで刺激的だ。
「経営は、多数決じゃない。みんなで手をつないでいきましょう、ではダメなんです。この指、止ーまれ!と言える勇気をもつこと。その提案に、どれだけの説得力を持たせられるかということが、リーダーにとって大事なことだと思います」。人事畑(ひとのはたけ)に、どんなタネをまいてみせるのか。そこにリーダーとしての資質が問われる、ということだ。

タイトル3

「繰り返しになりますが、経営や人事は、民主主義で成立するものではありません」。そう、八木氏は強調する。「そもそもこの時代に、なんのために働くのか。それは、『ただ生きる』のではなく『よく生きる』ため、なんです」。そこから逆算して物事を考えてみれば、未来への道筋は、おのずと見えてくる。「みんなで肩を寄せ合うこと」が目的なのではない。よりよく生きるために、お互い助け合うという手段を共有しているだけのことだ、と。
それには、個々人がとにかく「自立」することだ、と八木氏はインタビューを締めくくった。「自律、ではありませんよ。自立です。だって、そうでしょう?自分の力で立っていられない人間が、自分を律することなんかできませんから。もちろん、制度だの、肩書だのといった、印籠のようなものの力で他人を律しようとするなど、論外です」
マネジメントという言葉は、ある程度、社会に根付いた。でも、その本質を、私たちは本当に理解しているのだろうか。制度をつくって、人を縛り付けるのは簡単だ。だが、豊かな人材を育もうとするときに、果たして「管理」を徹底することだけが、正解への道筋なのだろうか。その答えを模索し、もがくことが、今、すべての人間に等しく課せられている宿題のように思えてならない。

サイコム・ブレインズによる講座は、こちら。

CCBP育成講座
~個のキャリアを支援し組織を強くする変革リーダーを育成する~

次世代戦略人事リーダー育成講座

■講師コメント(酒井章氏)

新型コロナによって起こったことは「キャリア・ショック」と呼ばれています。働き方をめぐるさまざまな環境変化に加え、在宅を余儀なくされたことで、多くの人がこれまでの、そしてこれからの人生や働き方を深く考えたのではないでしょうか。誰もが自分のキャリアに不安を持ついま、キャリア支援を行う人の役割がますます重要性を増しています。本講座は、このようなニーズに対応し、他の講座には見られないような多彩な講師陣からの豊富で多角的なインプットに加え、職種も世代も多様な参加者との刺激的な切磋琢磨(せっさたくま)によって、これからのキャリア支援職に必要とされるマインドとスキルをアップデートすることができます。

■講師コメント(山口周氏)

これまでの「正解」も「定石」も通用しなくなったいま、人に求められる要件も劇的に変化しました。それは、問題を自ら発見できる「意味」のある人です。一方、仕事に対するやりがいでは世界でも最低ランクに位置づけるなど、日本人の働き方は異常な状態に陥っています。そして、新型コロナという未曽有の事態の到来によって、潜在的に起こっていたこのような問題があらわになりました。いまこそ、企業における最大の資源である人財を生かすキャリア支援職の皆さんの出番ではないでしょうか。こうした問題意識に基づいて立ち上げられた本講座の理念に賛同し、講師として参加させていただきます。これからの働き方やキャリアをより良くする志を持った皆さんとディスカッションさせていただくのを楽しみにしております。


本記事の作成にあたっては、八木洋介氏に筆を入れていただくとともに、電通OB酒井章氏(クリエイティブ・ジャーニー 代表/電通アルムナイ・ネットワークマネージャー)に監修を依頼しました。

酒井章氏が代表を務めるクリエイティブ・ジャーニーのHPは、こちら

酒井章氏:
電通に入社後、コピーライター、営業(自動車担当)、マーケティングプロモーション部門を経て2004年よりシンガポール(アジア統括オフィス)に駐在。11年帰任後はグローバル部門を経て人事局、キャリア・デザイン局でキャリア開発施策を担当。19年3月定年退職後、4月に起業。

酒井章氏と電通キャリア・デザイン局(当時)大門氏によるアルムナビでの対談記事は、こちら

DXの鍵を握るのは出産や育児でキャリアを離れた“潜在人材”だ!

潜在人材のリスキリングと「ワーク・ライフ・インテグレーション」

「DX(デジタルトランスフォーメーション)人材が不足している」と言われる一方で、既存職種の多くがコンピューターやロボットに置き換えられていくこれからの時代。

この表裏一体の二つの課題への本質的な解決策が、「既存人材のデジタルトランスフォーメーション」、すなわちリスキリング(能力再開発)です。

……というのが前回のお話でしたが、リスキリングは既存人材(社員)のトランスフォーメーションや満足度の向上だけに貢献するものではありません。

今回は「出産」「育児」「配偶者の転勤」「介護」などさまざまな事情で今はキャリアの第一線から一歩引いている“潜在人材”たちのトランスフォーメーションについて、電通のデータ・テクノロジーセンターで海外の先端データソリューション企業の事業開発に携わる小栗亜樹がお話しします。

特に鍵を握るのは、出産などのライフイベントのためにキャリアを離れる女性たちです。

【第1回】“DX騒ぎ”に隠された、既存人材リスキリング(能力再開発)の重要性

<目次>
家庭事情でキャリアを離れた“潜在人材”の活躍促進が日本の成長の鍵
企業はどうしたら“潜在人材”を獲得し、生かすことができるのか?
コロナ禍で加速する「ジョブ型雇用時代」。生き抜くスキルを習得するには?
働き方が劇的に変わる!「ワーク・ライフ・インテグレーション」の時代へ

家庭事情でキャリアを離れた“潜在人材”の活躍促進が日本の成長の鍵

2021年4月、私は2度目の育児休業からフルタイム社員として現職に復帰しました。

少し古いデータですが、国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」によると、私のような出産後に「戻る職場のある人」は、出産前に仕事をしていた人の53.1%(2015年時点)、つまり約半数の有職女性は、出産を機に「退職」しています。

日本経済の活性化に女性の活躍推進が不可欠と叫ばれる一方、約2人に1人が現場から消える。この大きな落とし穴は深刻です。しかし、その理由は「出産」といったライフイベントに起因しているため、単純に落とし穴をふさぐことが解決につながるわけではありません。

彼女たちが復帰を望む時に再び戻れるような「扉」が求められています。小さなマリオがひょこっと不安げに戻るのではなく、スター状態のマリオのように、希望と自信と共に開かれるべき扉が。

その「扉」こそが、リスキリングです。自分に合った働き方を選べるようなデジタルスキルを身につけることが、一度キャリアを離れた人たちの、人生の可能性と選択肢を拡張するのです。

冒頭で出産を機に2人に1人が現場から消える状況は深刻とお伝えしましたが、パートタイムや派遣社員など非正規雇用者の第1子出産後の就業継続率は25.2%とさらに低く、4人のうち3人が現場から消えているというのが現状です。

内閣府の男女共同参画局による「男女共同参画白書 平成30年版」によれば、女性は全労働者の55.5%が、男性は全労働者の21.9%が「非正規雇用」です。女性の非正規雇用者率は男性の2倍以上と多く、さらに今後は第四次産業革命に伴う「事務職」の減少も、女性の選択肢に大きく影響を及ぼすと考えられます。

ここで、私自身のお話をさせてください。私は過去に一度、夫のアフリカへの海外赴任により、上司に辞職を申し出たことがあります。

「辞めなくてもいいんじゃない?」と休職を勧められましたが、当時の電通にはまだ配偶者の海外赴任に伴う休職制度や再雇用制度がありませんでした(現在は導入されています)。私費留学による休職制度が使えないか調べましたが、夫の赴任先の近くに通えそうな大学はありません。結局このときは夫が転職することになり、アフリカ行きは立ち消えに。私はキャリア継続に至りました。

その後、2度の産休・育休期間中にキャリアブレイクを経験し、復帰する場所があるにも関わらず焦燥感に悩まされました。出産後数カ月間は特に、育児に忙殺されて、まともに何かを考える時間はなく、インプットする余裕は全くない体力勝負の毎日。

時間の経過とともに、自分の持つ仕事関連の知見は時代遅れのものになり、仕事において自分が出せる価値はもうないように感じ、完全に自信を失っていました。なんとかその焦燥感を打破しようと、「家にいながらにして復帰後に生かせそうなスキルを習得する方法」を探しましたが、なかなか見つかりません。

そのため、業務領域とは全く関係なかったのですが、“ママ”という新しい肩書にしがみつく形で、第1子育休中に独学で保育士資格を取得しました。コロナ渦だった第2子育休中には、国際モンテッソーリ協会が発行するアシスタント教師資格をオンラインで取得し、結果的に保育業界で「リスキリング」していました。

以上は私という一個人の例ですが、同じようなキャリアブレイクの悩みを抱える女性は多いのではないでしょうか。

求められるスキルが常に変わり続ける現代において、ビジネスの現場で必要とされるDXスキルを習得することが、多くの女性たちにとって自信や自己肯定感につながり、本来の自分の強みや魅力を再発見する重要な機会となります。そして、後述しますが、自分の「理想の働き方」の実現にも一歩近づけるのです。

なお、「育児」「介護」「配偶者の転勤」に関しては、これまで主に女性の問題として語られてきました。しかし、男性の育休取得推進等による男性の働き方の変化もあり、本当の意味での男女平等が推進された近い将来においては、多くの男性もこれまでの女性同様に直面する問題です。

今回の記事では、あくまでも現状に即して女性にフォーカスしていますが、本来は男女を問わないトピックであることは留意したいところです。


企業はどうしたら“潜在人材”を獲得し、生かすことができるのか?

リスキリングで最新のDXスキルを身につけた人材が新しいステージとして目指す企業の側にも、新たな課題が突き付けられています。

日本では配置転換しながら経験を積ませる「ポテンシャル採用」「メンバーシップ型雇用」が中心でしたが、最近では職務や勤務場所などが事前に決まっている「ジョブ型雇用」を提示するケースが、大手企業でも増えてきています。

そしてジョブ型雇用への挑戦者たちは、「名のある企業に所属すること」や「与えられた仕事をすること」よりも、「やりたい仕事をやりたい形で実現すること」や「家庭や趣味などのプライベートを含めた総合的な人生の充実」を求めています。

例えば、引っ越しを伴う転勤を会社から命じられた場合、あなたはどうするでしょうか?これまでの日本社会においては、たとえ単身赴任であったとしても、辞令を受け入れるのが多数派だったと思います。

一方、私が大学時代を過ごしたアメリカの場合、「引っ越しを伴う望まない転勤」を求められた人は、辞職を選択し、その街で生活を続けられる方法を模索することが多いのです。

この選択の違いは、まさに「ジョブ型雇用の人材」と「メンバーシップ型雇用の人材」の思考の違いだと私は考えています。

ですから、企業が“優秀な人材”を獲得するためには、多様な雇用の形が求められているのです。

多様な雇用の形は、新型コロナウイルスの影響で導入が進んだ「リモートワーク」をはじめ、「副業」「兼業」「フレックスタイム制」「短時間勤務」「アプレンティスシップ(※)」など多岐にわたります。

※アプレンティスシップ
賃金をもらいながらスキルを学ぶ、職人的な「徒弟制度」システムを、幅広い企業や職種に応用する制度。


アメリカでは新型コロナウイルスの影響で、長期間にわたり学校がオンライン授業へと切り替わり、多くの子育て世帯において、子どもたちが1日中家で過ごすようになりました。また、保育施設が長期間にわたり休園したことで、家庭内での保育が必要になりました。全体的に日本よりも子育て世帯の日常への負担と影響は大きく、結果として多くの人が退職に追い込まれました。

アメリカの経済学誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」(※)によれば、新型コロナウイルスを引き金とする家庭事情でキャリアを離れた人たちを対象に、「Return-to-Work Programs」(仕事への復帰プログラム)を提供するアメリカ企業が増えてきています。

参考記事:Jennifer Jordan and Michael Sorell, "Return-to-Work Programs Come of Age," Harvard Business Review,  September–October 2021.(邦訳「優れた専門人材のキャリア再開をどう支援すべきか」、DHBR2021年12月号) 
 

コロナ禍以前から、出産や育児をきっかけに仕事を離れた人材をターゲットとした「リターンシッププログラム」を提供するアメリカ企業は増えていましたが、新型コロナウイルスが原因で退職したスキル人材の獲得のため、多くの企業が動き出していることがうかがえます。

「仕事への復帰プログラム」は、通常8週間~半年という期間で実施されます。実務を行いながら、オリエンテーション、専門性の向上を目的としたトレーニング、シニアリーダーとの交流、メンターセッション、バディーセッションなどを行います。

プログラム修了後は、雇用者とプログラム参加者の双方が希望する場合、正社員として採用するという、「段階を踏んだ雇用」を可能にしています。

雇用者は「本当に欲しい人材なのか」、プログラム参加者は「本当にやりたい仕事なのか」を確認する「試用期間」を設けることで、期待値のずれやカルチャーフィットに起因するトラブルを避けることができます。

両者の具体的なメリットは以下の通り。

  • 雇用者……スペックの定義づけが難しい新しいスキルが求められるポジションへも積極的に雇用を検討できる
  • プログラム参加者……自分のスキルにマッチした最適なポジションに積極的にアプローチできる

また、結果として不採用となった場合でも、「仕事への復帰プログラム」を通して得た業務経験から、止まっていた履歴書に新しい項目を追加でき、次の一歩へとポジティブにつなげられるわけです。

かつては「親が決めた縁談で、初めて会う人と結婚する」なんて時代もありましたが、自分で結婚相手を決める時、結婚からではなくデートから、もしくはカジュアルなチャットから始まるものではないでしょうか?

就職も結婚と同じように、企業と人材がお互いを知るための「期間」が求められるようになっていくのだと思います。

コロナ禍で加速する「ジョブ型雇用時代」。生き抜くスキルを習得するには?

「現場で求められるスキル」と「企業の既存人材が現在持っているスキル」。この間にギャップのあるものこそが、今後転職市場においてニーズの高いスキルと考えられます。

オンラインで自分の好きな時に学習を進められる「GLOBIS」「TECH CAMP」「Udemy」などのオンライン学習プラットフォームは既に知名度が高いですが、ビジネスの現場で求められるDXスキルは“高い専門性”だけではありません。「コミュニケーション力」「プレゼンテーション力」「交渉力」「課題解決力」などの、いわゆる“ソフトスキル”も求められます。

前回ご紹介したオンライン学習プラットフォーム「OpenClassrooms」は、各コースにおいて「求められるスキルを習得できていると証明すること」で修了資格が得られる「Competency-based education」(能力ベースの教育)という考え方に基づいています。

具体的には、課題解決型の実戦形式において、受講生はゼロから提案を組み立てることが求められ、インプットしたことを「評価者に対しての英語でのプレゼンテーション」という形でアウトプットする訓練をしていきます。

デジタルをごく当たり前のものとして自在に使いこなせるように、“高い専門性”と“ソフトスキル”を同時に獲得できるプラットフォームと言えます。

そんなOpenCrassroomsのカリキュラムを活用して、未経験者でも家にいながらにしてDX人材に「リスキリング」できる学習コースと就職の機会をセットで提供するプログラム「STAIRGE」(ステアージ)も登場しています。詳しくは本記事末尾をご参照ください。

働き方が劇的に変わる!「ワーク・ライフ・インテグレーション」の時代へ

内閣府は令和2年第2回経済財政諮問会議において、女性の活躍推進の加速に向けて「男女が共に仕事と育児・介護等の二者択一を迫られることなく、能力を発揮し、働き続けることのできる環境整備が重要」と明言しています(参考URL)。

シャカリキに働くことが求められた昭和から平成を経て、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉は日本においてようやく市民権を得てきています。しかし、働き方の変化に伴い、アメリカではさらに進んだ、「ワーク・ライフ・インテグレーション」という考え方が浸透し始めています。

ワーク・ライフ・バランスとは異なり、生活を「仕事の時間」「プライベートの時間」とはっきり分けるのではなく、緩やかな境界線を設けることで、個人の幸福や健康により良い相乗効果を生み出すアプローチとされています。

例えば、小さな子どもを持つ親の1日を想像してみましょう。

朝、家で一緒に朝食をとり、子どもたちと公園でひとしきり遊んでから保育園に送ります。

始業前の10分間のヨガで心も体も整えて、正午までリモートワークで仕事をし、昼食をとり食材の買い物に行き、午後は仕事の打ち合わせにZoomで参加。

夕方早めに子どもたちを保育園に迎えに行って、一緒に夕食をとり、子どもたちが就寝後、数時間はリモートワークで仕事をする……といった感じです。

スキルを得ることで、仕事や働き方を「選べる」ようになる。それにより、「自分と子ども」「自分と介護を必要とする親」「自分と大切にしたい趣味」など、仕事以外の活動と向き合い、持続的に両立させること。それがワーク・ライフ・インテグレーションです。

持続的に何かと何かを両立させるには、限られた貴重な時間の中で、明確な優先順位を持って向き合う必要があります。その時々の「人生の優先順位」が明確だからこそ、そして「求められるスキル」を持っているからこそ、新しい働き方が実現できるのです。

リスキリングは企業にとっても、企業で働く“既存人材”にとっても、そして今は自信や自分自身を見失いかけているかもしれない “潜在人材”にとっても、さまざまな可能性と選択肢を提供します。

今は“潜在人材”である多くの女性たちが、それぞれが理想とするキャリア形成を目指して、最適な領域でのリスキリングを経て、スター状態のマリオのように、希望と自信を胸に新しい扉を開ける未来を願っています。

リスキリングプログラム「STAIRGE」(ステアージ)
受講者募集中!(2021年12月31日まで)

STAIRGEhttps://stairge.accelerators.jp/

※電通グループはOpenClassroomsの事業開発パートナーとして日本での事業拡大の支援を行っています。事業開発支援の一環として、DAS株式会社と共に「STAIRGE」の企画・運営を担当しています。
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OOHの統合メディアプランニング

OOH(Out Of Home:屋外広告・交通広告)もデジタル広告が普及するにつれ、他媒体と広告効果を比較して、数字に基づくプランニングや効果検証が求められるようになっています。さらに、コロナ禍では、人流に基づく媒体の金額設定や掲出効果を広告主から求められることが増えてきました。

今回は、これまでのOOHの課題を振り返り、業界の動き、そして、テレビ、OOH、デジタルなど複数メディアを組み合わせた、電通の統合プランニングについて紹介します。

広告価値を計測するOOH業界としての共通指標がなかった 

テレビCMであれば視聴率、デジタル広告であればインプレッション数やクリック数などといったように、多くの広告媒体では、期待した露出量が獲得できたか、出稿後に確認することができます。しかし、OOHでは長年そういった指標がありませんでした。

OOHは掲出環境がさまざまで、サイズも接触シーンも媒体ごとに異なるため一律に評価しにくい上、国内のOOH媒体社の数が多いのも理由です。どんな人(オーディエンス)がどれくらいその広告を見たか(インプレッション)という広告価値の計測を、共通の指標のもとで任意の期間・媒体で把握することをなかなか実現できずにいました。 

OOH全体を網羅する共通指標が欠如しているために、広告会社が広告主にOOHを薦める際は、数値的な根拠がないので“経験知”で提案するケースが主でした。特に統合プランニングの観点、例えば、テレビやデジタルに加えてOOHを追加出稿する効果を、数値的根拠により説明することが困難でした。効果の可視化が不十分なため、広告主のメディア全体予算から最適なメディアプランを提案する際に、OOHが出稿媒体から外されてしまうケースが多く見られました。

広告価値指標の標準化に向けたOOH業界の取り組み 

「OOHの広告価値を測る共通指標がない」という課題を解決するために、近年ではさまざまな取り組みが進んでいます。

交通広告業界においては、2015年からビデオリサーチのSOTO/ex(ソトエクス:路線・駅・街の詳細な利用状況などを聞くアスキング調査) をベースにした推定広告到達人数の算定システムが稼働しています。これまで共通指標化を進めてきましたが、現在は、他のOOH媒体を含めた横断的な共通指標の整備が求められています。

また、近年では、位置情報計測サービスを提供する企業が増えていて、この技術を活用しながら、オーディエンスメジャメント(視認条件の下、スクリーン視認エリア内に滞在かつ視認していると推定される個人の人数を測定すること)の整備が進みつつあります。

OOH LIQUID


日本広告業協会は2021年2月10日、OOH 媒体の価値向上を目的として「OOH 新共通指標策定プロジェクト」を発足させました。交通広告、屋外広告、空港広告、タクシー・バス広告など、各メディアの紙媒体とデジタル双方を含む全OOH 媒体を対象に、広告主がメディアを横断した統合プランニングを行う際、他メディア(特にテレビ・デジタル)と同じ粒度で、プランニングや効果の比較が可能な新指標の策定を目指すものです。

このプロジェクトのゴールは広告価値指標をベースとした国際標準に準拠した統一指標の策定としていますが、まずは広告出稿時の実接触者数(アクチュアル)の媒体視認指標の整備と、媒体効果を十分に説明するためのデータ整備に取り組んでいます。

また、2021年3月に一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアムは、オーディエンスメジャメントガイドラインを発表しました。これは近年増加している DOOH(Digital Out Of Home:デジタルサイネージを活用した広告)の効果を可視化するためのガイドラインです。こちらも国際標準に準拠する形で、オーディエンスの標準的な計測方法とプロセスチェックにおける推奨事項やベンチマークの指針を発表しました。

ユーザの位置情報データを活用した、プランニング・効果計測「OOH LIQUID」

電通は、2020年12月にスマートフォンアプリの位置情報を用いてOOHに接触した生活者の実行動分析を行い、統合メディア視点でOOHのプランニングから効果検証までを行うことができる「OOH LIQUID」というツールを開発(リリースはこちら)。関東・関西の2地区においてOOH媒体ごとに定量的な広告効果を把握できるようになりました。

「OOH LIQUID」は、電通が資本業務提携している米国の位置情報データ会社・GroundTruthの高精度な位置情報データを、ビデオリサーチのアスキング調査結果に掛け合わせることで、OOHの媒体単位(媒体社が販売しているメニュー単位)で人流を分析し、媒体単位でのユニークユーザー数、リーチ数などの数値確認、メディアプランの作成、媒体の効果検証を行えるようにしました。特にコロナ禍では、日々人流に変動があるため、「OOH LIQUID」は、広告主のOOH検討に大きく貢献できます。

この他にも電通は年に1回、約4万人に交通の利用状況を聞く大規模調査を実施しています。路線利用や関東主要駅の利用状況を捕捉することで、より正確な分析を行い、プランニングができるようになりました。また、各種人流計測ツールを広告提案の用途に応じて使い分けています。

広告出稿によって獲得できるリーチの大きさをコロナ発生前と比較することで、OOH媒体社が出している媒体料金が割高か否か、妥当性を確認することができます。定量的なデータがあることで、コロナ禍においてもOOH媒体ごとに、どの程度のリーチを獲得できそうか直近のデータに基づきOOHの出稿を検討することが可能になりました。

さらに、実際の出稿期間で獲得できたであろうユニークのリーチ数を事後に確認することができます。またGroundTruth社が独自に推定する性年代情報を活用することで、デモグラ(※1)別の獲得リーチなども確認が可能に。個人全体としてのリーチだけでなくデモグラ別に見直して、次の出稿を検討することもできます。

※1 デモグラ:デモグラフィックの略語。デモグラフィックとは、性別、年齢、居住地域、所得、職業、家族構成など人口統計学的な属性。

 

OOH LIQUID

リーチの回復推移を1年間で表示し、どれくらいの人数に接触できるか推定ができます。特価(期間限定で値下げした特別価格)に対しての妥当性や、狙ったデモグラのリーチ人数も確認することができます。

STADIAデータを活用した統合プランニング

OOHは、テレビ広告のリーチ補足手段として組み合わせて出稿することがあります。テレビ広告ではリーチしにくい若年層やテレビ視聴時間が短い層でも、首都圏であれば外出時にOOH に接触するのでリーチを伸ばすことができます。

電通のSTADIA(※2)のデータを活用すると、ターゲットのテレビ視聴傾向が分かるので、ターゲットがどの駅・路線に多いのかを推定し、そのエリアでのOOHを提案することができます。効果計測は、推計リーチの他、事前に、クライアントアプリにIDタグの埋め込みが可能であれば、アプリのDLやサイト来訪率などをキャンペーンの効果指標にすることもできます。

※2 STADIA:テレビをはじめとする“オフライン”メディアと、スマートフォンやPC上の“オンライン”メディアのデータを統合し、より効果的なマーケティングを実現させるオンオフ統合ソリューション。2020年6月時点で約580万台のテレビの視聴ログデータと、約1,200万台のモバイル広告IDや約1.2億件のCookie IDのオーディエンスデータ規模を有する。

 

OOH LIQUID
リーチ最大化のため、テレビCMにOOHを追加提案する場合、テレビ視聴傾向が短い層の駅・路線を特定し、媒体を提案します。掲載後、実際どれくらいリーチしたかデモグラ別に推計。効果検証では、OOH接触によってどれくらいサイト来訪率を伸ばしたか、非接触・接触の2群に分けて分析します。

さらに、2020年にローンチした「docomo data square™(dds)」というオンオフ統合分析基盤を活用すると、ドコモのd払いやdポイントデータを用いて「購買」をKPIとした効果計測も可能になっています。これまで、テレビ、デジタル、OOHの3メディアを統合して分析ができるデータ基盤はなかったのですが、OOHも含めて、ID単位での効果検証が可能になったということが特徴です。 ddsを活用した事例は、電通報で連載をしていますので詳しく知りたい方はご確認ください。

ここまでご紹介したように、OOH業界として3メディアの統合プランニングに向け、オーディエンスメジャメントや効果計測の取り組みが始まっています。電通では、OOH LIQUIDという新しいソリューションによって、さまざまなデータを定量的に推定し可視化することができるようになりました。またSTADIAデータを活用して視聴傾向に基づくOOH出稿や効果計測ができる体制を整えています。

これまでのOOHは感覚や経験知に頼ることが多かった媒体ですが、そこに定量的なデータを加えて出稿検討を行うことが、ニューノーマルになるのかもしれません。

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次期首相、茂木敏充氏が最有力か…パワハラ体質に官僚が「取り扱いマニュアル」作成

 衆院選後、自民党の派閥は新人議員などの入会で勢力図が変わったり、領袖が交代するなど大きな動きが続いている。

 最大派閥は95人の「清和政策研究会(清和会)」。党籍を離れた細田博之衆院議長に代わって安倍晋三元首相が派閥に復帰し、会長に就任した。第2派閥は麻生太郎副総裁が率いる「志公会」で53人。第3派閥は51人の「平成研究会」で、故竹下亘氏の後任会長に茂木敏充幹事長が就いた。第4派閥は二階俊博元幹事長の「志帥会」で44人。第5派閥が総裁派閥の「宏池会」で42人。岸田文雄首相は派閥会長に留まったままだ。

 第6派閥だった石破茂元幹事長の「水月会」は所属議員減少を受け、派閥を解消し、グループへ移行した。会長の石原伸晃元幹事長が落選した「近未来政治研究会」は8人。すでに石原氏が辞意を表明し、近く新会長が決まる。後任には森山裕前国対委員長が有力だ。

 派閥の新たな勢力図が固まり、永田町の関心事は早くも「ポスト岸田」の行方にある。岸田首相の任期は3年後の2024年秋までながら、来夏に参院選があり、その結果次第では「ポスト岸田」の出番となるからだ。

「数は力」からいえば安倍派だが、派内には下村博文元文科相、西村康稔前コロナ担当相、萩生田光一経産相らがいるものの、まだ誰が総裁候補なのか絞り込めていない。安倍氏本人が3度目の首相を目指すのかについては、12月7日に出演したBS番組で「そんなことは誰も考えていない」と否定している。9月の総裁選で安倍氏が推した高市早苗政調会長は、無派閥のままだ。

 麻生派には河野太郎前ワクチン担当相が所属しているが、派内は「次は河野氏」とはなっていない。

「現状、『ポスト岸田』の先頭を走るのは茂木幹事長です。派内の参院議員らの抵抗を押し切って強引に派閥会長に就いた。幹事長の権限は絶大ですし、もともと首相を目指してきた茂木氏はやる気満々ですよ。茂木氏の対抗馬と目されるのは、岸田派ナンバー2の林芳正外相でしょう。岸田首相は、宏池会支配の長期継続のためにも、自分の次は林氏と考えているようです。林氏は首相になるために参院から衆院へ鞍替えしたぐらいですから鼻息は荒い」(自民党関係者)

経歴が似ている茂木氏と林氏

 この「ポスト岸田」最右翼とされる茂木氏と林氏の2人は、実は経歴も性格もそっくりだ。茂木氏は日本新党から初当選、林氏は自民党世襲の4代目という出自こそ異なるものの、政治家になるまではともに、東大→商社勤務→米国留学の道筋をたどっている。

 茂木氏は1955年生まれの66歳。東大経済学部を卒業後、丸紅と読売新聞社に勤め、米ハーバード大ケネディ行政大学院に留学。帰国後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、同社幹部の大前研一氏が代表を務めた平成維新の会で事務総長だった。

 林氏は1961年生まれの60歳。東大法学部を卒業後、三井物産で勤務した後、地元、山口県下関市にある実家のファミリー企業に入社。その後、米ハーバード大ケネディ行政大学院に留学した。父の林義郎元蔵相の秘書を務めてから政界入りしている。

「2人とも英語が堪能で政策通。野心を表に出すことをいとわない自信家で、常に上から目線。エリート臭をプンプン出しています。だから、あまり人望はありません。ただ、茂木氏は、霞が関の官僚たちに『取り扱いマニュアル』を作成されるほどのパワハラ体質ですが、林氏はパワハラはしないので茂木氏ほど嫌われてはいない」(政治部デスク)

 先頭を走る2人を追い抜く逸材が出てくるのか、それとも岸田長期政権があるのか。

(文=編集部)

韓国、すでに日本を一人当たり購買力平価GDPで追い抜き…数年内に名目でも逆転か

「1990年以降、日本経済の低成長が恒常化し、格差が拡大しているのではないか」という認識が広がっている。本当に格差が拡大しているか否かは精緻な分析が必要だが、この象徴として最近話題となったのが「一人当たりGDPで日本は韓国に抜かれた」という情報だ。「日本のほうが先進国なので韓国に追い抜かれたというのは間違いだ」といった情報もあり、どちらが真実なのか判断がつかない人々も多いと思われる。

 そこで、今回は、中国・日本・韓国・アメリカに関するIMFデータを概観することにより、論争の真偽を明らかにしてみたい。

 まず、購買力平価での一人当たりGDPの推移を確認してみよう。購買力平価とはある国で購入する財・サービスの価格が別の国で購入する場合にいくらの金額になるかの比率を示す。通常の為替レートは外国為替市場で取引される異なる国との間の通貨の交換比率を表すが、購買力平価は異なる国との間の財・サービス価格の交換比率を表す為替レートである。各国の為替レート(対ドルレート)の代わりに、この購買力平価を利用して対ドル換算したものが「一人当たり購買力平価GDP」であるが、この推移が以下の図表1となる。

 このデータ(一人当たり購買力平価GDP)の推移を眺めてみると、確かに日本の一人当たり購買力平価GDPは韓国に2019年に追い抜かれている。なお、2000年から2018年において、一人当たり購買力平価GDPの成長率は、中国が9.4%、日本が2.3%、韓国が5.3%、アメリカが3%となっている。

 2021年以降においても4カ国の一人当たり購買力平価GDPがこの成長率で伸びていくなら、中国が日本を追い越すのは2037年、中国がアメリカを追い越すのは2045年となることも簡単な計算で確認できる。仮に中国の一人当たり購買力平価GDPがアメリカ並みの水準になれば、日本の安全保障にも大きな影響を及ぼすのは確実で、注意が必要だろう。

通常の為替レートでの一人当たりGDPの推移

 では、通常の為替レートでの一人当たりGDPの推移はどうか。まず、通常の為替レートで対ドル換算した一人当たり名目GDPの推移が、以下の図表2である。

 こちらのデータ(一人当たり名目GDP)の推移を眺めてみると、韓国の一人当たり名目GDPは現時点ではまだ日本を追い抜いていない。しかしながら、2000年から2018年における一人当たり名目GDP成長率は、中国が12.9%、日本が0.7%、韓国が5.7%、アメリカが3%であり、日本が最も低い。

 すなわち、「一人当たり購買力平価GDP」では2019年に日本は韓国に追い抜かれているが、名目ではまだ日本の水準が韓国を上回っている。だが、2000年から2018年の成長率で伸びていくなら、2030年に韓国は日本を追い抜いてしまう可能性がある。2030年は、いまから10年もない。

 なお、2021年以降においても4カ国の一人当たり名目GDPが2000年から2018年の成長率で伸びていくなら、中国が日本を追い越すのは2036年、アメリカを追い越すのは2044年となるという計算になる。

 もっとも、いま中国経済は減速し始めており、本当に中国の一人当たりGDPが日本やアメリカを追い抜くかはまだわからない。しかしながら、中国の一人当たりGDP成長率のほうが日本よりも高い状態が続くなら、いずれ追い越される可能性があることも否定できない。

 いま岸田政権は「成長と分配の好循環」を掲げているが、格差是正や分配のためだけでなく、安全保障の観点を含め、潜在的な経済成長率の引き上げが必要となっている。低金利を利用した国債発行の増発や、日銀の大規模緩和による金利抑圧も未来永劫できるとは限らず、財政や金融政策のみでの分配がいずれ行き詰まるのは明らかだ。

 経済成長の底上げには、企業の競争力を高める政府の環境整備が最も重要であり、痛みを伴う構造改革(例:徹底的な規制緩和)や政府予算における思い切った資源配分の見直しを断行する必要があろう。

(文=小黒一正/法政大学教授)

●小黒一正/法政大学経済学部教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。

京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。

1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。

坂上忍『バイキング』打ち切りはフジ上層部による政権批判潰しだ!安保法制反対から東京五輪批判まで安倍・菅政権に異を唱え続けた軌跡

 打ち切り報道が出ていた『バイキングMORE』(フジテレビ)だが、本日13日、来年3月いっぱいで番組終了すると一斉に報道。本日放送の番組内でも、MCの坂上忍が「本当にみなさんにかわいがっていただいて8年も続けられたことに感謝しかない」と述べた。  スポーツ紙などの報道では...

パチンコ新台「10万発オーバー」報告に続く激アツ!究極闘神スペックの必見情報!!

 12月も激アツの新台が続々と降臨。パチスロ分野では『マイジャグラーV』や『SLOT牙狼-黄金騎士-』といった大物がデビューを果たした。

 前者は遊びやすさが際立ったスペックながら、設定6の機械割は「109.4%」と6号機『ジャグラー』シリーズ最高峰。ホールでは5000枚レベルのデータも確認されるなど、期待を裏切らない出玉性能を見せ付けている。

 サンセイR&Dと大都技研によるコラボ作『SLOT牙狼-黄金騎士-』も上々の稼働を実現。1G純増約2.8枚のセット管理型AT機能「魔戒RUSH」が出玉増加の主軸で、突入時は継続率80%の上乗せ特化ゾーン「絶頂ホラーバトル」からスタートする。開始時から大量ストックの獲得に期待できる仕様だ。

 様々な反応が見られるものの「4000枚レベルは普通に出ている」「低設定でも事故が狙えそう」といったポジティブな意見も存在。今後の展開に注目である。『番長&牙狼』の強力タッグが、どのような評価を得られるか楽しみだ。

【注目記事】

業界初「スマートハンドル」搭載のシリーズ最新作、RUSH継続率「最大91%」のラブコメパチンコなどが登場! 12月20日パチンコ導入リスト

パチスロ「伝統の名を冠した初のBタイプ機」~4号機名機伝説~ 『トロピカーナ』前編【アニマルかつみの回胴青春時代Vol.73】

 反響の大きさではパチンコ分野の新台も負けてはいない。こちらも業界を代表する大物シリーズが登場し、ホールを盛り上げている状況だ。

 ますは「C時短」をフル活用することでライトミドル限界へ迫った『P真・花の慶次2~漆黒の衝撃~EXTRA RUSH』。「1/199×約81%×ALL1500発」に新たなゲーム性が加わった本機は、8万発データが確認されるなど早くも存在感を示している。2022年1月に引退する『CR真・花の慶次2 漆黒の衝撃』のような活躍を見せられるかに注目したい。

 同日にはサミーが誇る『北斗の拳』シリーズ最新作もデビューを果たした。こちらも景気の良い出玉情報を量産しており、ホールへ熱狂を呼び込んでいる。

■大当り確率:約1/319.7
■右打ち時図柄揃い確率:約1/29.5
■バトルモード突入率:約66%
■バトルモード継続率:約81%
■転落小当り確率:約1/105.1
■賞球数/カウント:1&4&7&15/10C
■時短回数:1回or900回
■大当り出玉:10R約1500発+秘孔チャッカー 3R約450発+秘孔チャッカー
○○〇

 究極闘神スペックと銘打たれた『P北斗の拳9 闘神』は、「約81%継続×ALL1500発」の現行機最高峰のRUSHを搭載。秘孔チャッカーによる出玉のアシスト機能も実装されるなど、高い安定感と爆発力を併せ持った仕上がりだ。

 トータルRUSH突入率は約66%と「高突入」「高継続」「高出力」を徹底追求した本機。導入後の反響は上々で、まずまずのスタートを切ったという印象だ。「12万発」データも浮上するなど、ポテンシャルの高さを証明していると言えるだろう。

 次世代の「闘神」となるか。「シリーズ最高峰スペック」と宣言する『P北斗の拳9 闘神』の動向が気になるところだが、本機に関連する興味深い情報は他にも存在する。

 サミーは「P北斗の拳9 闘神 導入記念 9日間毎日キャンペーン」を実施中だ(12月15日まで)。応募は「公式Twitterアカウントをフォロー」→「キャンペーンツイートから好きなバトルモードを選択してツイート」で完了。期間中毎日50名、総勢450名にQUOカードPay500円分が当るという内容だ。興味のある方は参加してみてはいかがだろうか。

福永祐一「鎖骨骨折」だけでなく香港馬2頭が予後不良、阪神JFの裏で今年の香港スプリント(G1)は大惨事

 12日、シャンティイ競馬場で行われた香港スプリント(G1)は、B.シン騎手のスカイフィールドが優勝。日本の馬券販売で9番人気の伏兵が勝利したことにより、馬連は万馬券の決着となり、3連単の払戻は30万円を超える波乱となった。

 ただ、そんな波乱の決着以上に注目を集めたのが、レースの4コーナーにおける事故だった。

 現地時間では14時40分の発走も、香港と日本の時差は約1時間ということもあり、電撃のスプリント戦は、ちょうど阪神JF(G1)と同じタイミングで始まった。2歳女王決定戦を観戦したファンも香港のレースを気にしながらの観戦となった訳だが、衝撃的なシーンを目撃することとなる。

 香港馬コンピューターパッチが緩みないペースを刻み、勝負が後半へ差し掛かる場面。3番手のアメージングスターが突如バランスを崩して転倒すると、すぐ後ろを追走していたラッキーパッチ、ナブーアタック、ピクシーナイトが相次いで巻き込まれて競走を中止するアクシデントが発生したのだ。

 また、父ロードカナロア以来の同レース連覇を狙ったダノンスマッシュは、間一髪で落馬こそ免れたものの、落馬した馬たちの煽りを受けて外へ大きく回避。何とか無事にゴール板を通過したが、ラストランの舞台で勝ち馬から約70馬身差離れた8着というほろ苦い結果に終わってしまった。

 日本馬で唯一の馬券圏内の2着だったレシステンシアも例外ではない。幸い、他馬に比べて影響は小さかったこともあり、体勢を立て直してからの直線で猛然と追い込んで日本馬の意地を示した。

 当日の香港では香港スプリントのほか3つのG1競走があった。グローリーヴェイズが香港ヴァーズ、ラヴズオンリーユーが香港カップを優勝し、それぞれが栄冠を手にしたとはいえ、SNSのトレンドは、瞬く間に香港スプリント一色となった。。それとともに、被害に遭ったピクシーナイトに騎乗して落馬した福永祐一騎手の容態を心配する声も多かった。

 同馬を所有する「シルク・ホースクラブ」は、レース当日の16時17分にTwitterで中間の状況を発信。ピクシーナイトの命に別条はない旨を報告し、ファンからは安堵の声が漏れた。

 しかしピクシーナイトも無傷では済まなかったようだ。後に行った検査で、左前膝の骨折など複数箇所を負傷していることが判明し、予断を許さない状況が続いている。

 また、鞍上の福永騎手も意識はあるが、左鎖骨を骨折するなどの大怪我を負って、現在は現地の病院へ入院中という情報も入ってきた。

 日本の人馬が、無事だったことは、不幸中の幸いだったとはいえ、アメージングスター・ナブーアタックの2頭が予後不良となる深い傷跡を残した落馬事故。世界中の注目が集まった中で、想定外の大惨事となってしまった。

 「香港ジョッキークラブ」のブレスゲスCEOは、会見で「事故が発生した香港スプリントでは不幸で悲劇的な事象がありました。負傷した騎手にお見舞い申し上げます。このようなアクシデントは誰も見たくありません。オーナーと馬たちにもお見舞い申し上げます」と、悲痛な表情で述べた。

 日本馬2頭が勝利した快挙の裏で、このような想定外のアクシデントに見舞われてしまったことは非常に残念な限りだ。負傷した福永騎手を含め、日本馬全頭が無事に帰国できることを祈りたい。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……