JRA武豊、横山典弘が「投げ出した」お転婆を激変させた競馬の心臓。桜花賞「まぐれ勝ち」スターズオンアースがオークス(G1)でも要注意なワケ

 今週末、連続開催の第5戦となる天皇賞・春を迎えるが、今春のG1は何故か「あと一歩」という馬の戴冠が目立つ。

 高松宮記念(G1)を勝ったナランフレグ、大阪杯(G1)を勝ったポタジェ、桜花賞(G1)を勝ったスターズオンアース、そして皐月賞(G1)を勝ったジオグリフ。すべて2走前、前走と重賞を走って善戦したものの勝ち切れておらず、さらに本番でかつて敗れた馬に逆転してG1制覇を飾っている。

 無論、「逆転」は競馬では日常茶飯事の出来事だが、近走の成績を頼りに予想を組み立てている大多数からすれば、あまりに「ファン泣かせ」と言わざるを得ない。彼らの「1着」を予想することは極めて難しいと感じたファンも少なくないはずだ。

 しかし、だからこそ当たった時に配当は美味しいケースが多い。今回は先日の桜花賞で見事、三連単72,700円を的中させた話題の競馬予想プロ集団『あしたの万馬券』の関係者に話を伺った。

 一体何故、惜敗続きだったスターズオンアースを本命視できたのか。驚きの答えが返ってきたので、馬券で勝ちたいファンはぜひご一読いただきたい。

 下馬評では上位拮抗ながら「堅いレースになる」と思われていた今年の桜花賞。当初、『あしたの万馬券』も注目度の高いG1レースということで情報収集を行っていたものの「勝負レース」に据えるつもりはなかったという。

 しかし、枠順が発表されてから状況が一変。1番人気に予想されたナミュールが大外の18番に入っただけでなく、2歳女王のサークルオブライフも16番、クイーンC(G3)を勝ったプレサージュリフトも14番と有力馬の多くが外枠に入り、一気に波乱のムードが高まったのだ。

 この春の阪神開催では内の馬場が絶好のコンディションで、桜花賞当週も「イン有利」という報道が相次いだ。従って、枠順が発表された時点で、消去法的に3枠6番という内目の枠を引いた3番人気ウォーターナビレラの「◎」を決意したファンは少なくないはずだ。

 そうなると1枠1番という絶好枠を引いたナムラクレアの評価も自然と高まる。だが、『あしたの万馬券』は、スターズオンアースにこの2頭以上の評価を下していたというから驚きだ。

 桜花賞までに5戦して、わずか1勝。ましてやスターズオンアースは赤松賞(1勝クラス)でナミュールに、フェアリーS(G3)でライラックに、クイーンC(G3)でプレサージュリフトに完敗している馬だ。“物差し”で測っても7番人気は川田将雅騎手が騎乗していたからという要因が大きく、場合によってはもっと下位人気になってもおかしくなかった存在だった。

「過去の戦績だけを見れば、スターズオンアースを1着で買うのは難しいでしょうね。我々としても1着固定したわけではありませんし、最終的にウォーターナビレラよりハナ差前に出てくれたことは配当面で幸運でした。

ただ、スターズオンアースがナミュールやライラック、プレサージュリフトに敵わないと判断するのは早計だったと思いますね」(あしたの万馬券関係者)

 関係者があえて早計だと指摘したのは、スターズオンアースに「明確な敗因」があったからだという。

「あまり注目されていませんでしたが、スターズオンアースはずっと右にモタれてしまう癖がありました。特に最後の直線でモタれてしまう面が強く、ジョッキーがまともに追えないこともしばしば……。それであれだけ安定した成績を残していたのですから、能力は紛れもなく世代トップクラスでした。

そこで陣営は桜花賞本番を迎えて、異なるハミを使用することを決意。具体的には、これまで使っていた柔らかいハミから、標準的なハミに替えるとのことでしたが、これが効果テキメン。モタれる面が緩和されただけでなく、操縦性も上がって、川田騎手もかなり手応えを掴んでいる様子でした」(同関係者)

 実際に、2走前のフェアリーSで騎乗した石橋脩騎手が「最後にのめって右にモタれました」といえば、前走のクイーンCで騎乗した横山武史騎手に至っては「右に行ってしまい、まともに追えなかった」とモタれ癖を大きな敗因に挙げている。そんな状況で、重賞を連続2着しているのだから、関係者が話した通り、まともに走りさえすれば桜花賞馬に相応しい能力の持ち主だったのだろう。

「ハミといえば、普段あまり注目されていない馬具ですが、車で言えばハンドルとギアのようなもの。競馬では馬に合図を送るための極めて重要な『心臓』といえる馬具でしょう。最近では、昨年の桜花賞にも出走したメイケイエールがハミを替えたことで、見事に復活しています」(同関係者)

 メイケイエールといえば、前の馬を抜かないと気が済まない“暴走娘”として有名で、武豊騎手や横山典弘騎手といった名手でさえ手を焼いた存在だ。昨年の桜花賞でも暴走してしまい、鞍上だった横山典騎手がレース後に過怠金処分を受けている。

 あれだけのお転婆が一転して“お嬢様”になったのは、新パートナーの池添謙一騎手の手腕が大きいと言われているが、その裏で陣営の懸命な努力があったのは間違いないだろう。試行錯誤の末、ハミを従来の物から替えたことが大きく功を奏したというわけだ。

 また、スターズオンアースが桜花賞を勝てたのは、やはり川田騎手の存在も大きかったという。

「ファンの皆さんもご存知の通り、桜花賞当日の阪神は絶対的に内に行った馬が有利な馬場コンディションでした。従って枠順はもちろん、ジョッキーがどういったエスコートをするのかも肝心なレースでしたが、川田騎手は完璧に馬場が読めていましたね」(同)

 関係者曰く、注目すべきは桜花賞の騎乗も然ることながら、その約1時間前に行われた忘れな草賞(L)の川田騎手の騎乗にあるという。

 素質馬のアートハウスが3馬身差で圧勝し、オークス(G1)の筆頭候補に挙がったこのレース。本馬は8頭立ての7番という外枠だったが、川田騎手はあえて最後の直線で内を突いて馬群を割るような競馬をしている。これが「桜花賞への良いシミュレーションになったのでは」というわけだ。

 我々のような一般の競馬ファンの大多数は、基本的に新聞やネットの馬柱を参考にし、近走の着順を見て優劣を判断している。しかし、それは『あしたの万馬券』のようなプロからすると「非常に危険な行為」だという。

 何故なら、その多くは「すべてのレースにおいて、馬が同一のコンディションで走っている」ということを前提にしてしまっているからだ。

 無論、冷静に考えれば馬は生き物であり、そういったことは起こりえない。しかし、実際に予想する際、過去の戦績で我々が気にするのは、せいぜい休み明けや馬体重といった表面的なものばかり……。

 その時、その時の馬のコンディションまでは、どうしても手が回らない。しかし、逆に言えば「だから競馬で勝てない」のだろう。

 そういった点で『あしたの万馬券』のようなプロ集団は、まず予想にかける「エネルギー」が異なる。関係者を通じ、過去から現在まで出走全馬の状態を隅々まで把握できるだけのマンパワーを確保しており、その上で馬場コンディションやジョッキーの思惑といった予想に欠かせない要素も十二分に把握しているのだから、我々素人が勝てるわけがないのだ。

「ちなみに余談ですが、ナムラクレアに騎乗していた浜中騎手は先日、競馬学校の同期で10年来の付き合いのある丸田恭介騎手が高松宮記念でG1初制覇を飾ったことで、かなり燃えている様子でしたね。『(かつて主戦を務めた)ミッキーアイルの仔で勝ちたい』と話していましたし、桜花賞はあと一歩のレース(3着)だっただけに本人も悔しそうでしたよ」(同関係者)

 インターネットが発達し、様々な情報を知ることができるようになったが、やはりこういった情報をレース前に入手するのは、現場に直接的なコネクションを持っている「プロじゃないと無理」と言わざるを得ない。

 残酷な話だが、『あしたの万馬券』の関係者から話を伺って「このままでは一生競馬で勝つことはできない」と改めて思い知らされた次第だ。競馬は全員の賭け金を的中者だけが山分けする、いわゆるオッズゲームであり、その勝者の中にはプロを名乗る猛者たちがひしめいているのだ。

 しかし、幸いなことに『あしたの万馬券』は現在会員を募集しており、簡単な手続きだけで入会が可能。入会費や年会費なども一切かからず、プロの情報提供を受けられるというなら、これに乗らない手はないはずだ。

 本来、競馬に限らず「リスクゼロ」で大金を手にするなど、あまりに虫のいい話だ。だが、「競馬に100%はない」というものの、穴馬レクチャーやMIRAIといった実績のある企画こそ、まさに「情報のプロ」の手を借りて馬券を的中させることは、限りなくそれに近い“裏ルート”ともいえるだろう。

※本稿はPR記事です。

JRA戸崎圭太「悪夢」の再現VTRがクラシックを直撃!? ドゥラドーレスに続く有力馬脱落に「被害馬」のファン呆然

 サラブレッドにとって一生に一度きりとなるクラシック。多くの競馬関係者が出走を夢見る日本ダービー(G1)をはじめ、引退後の評価にも影響する舞台でもある。

 どんなに実力のある馬でも、出走条件をクリアできなければ戴冠する資格はない。実力馬がひしめき合う頂上決戦に出走するため、各馬の関係者は最適となるローテーションの検討や賞金確保に奔走している。

 しかし、一歩間違えればそんな関係者の努力を水泡に帰してしまうのが、勝負の大一番で手綱を任せられた騎手の存在だ。これまでにも好騎乗で権利をつかみ取ることに貢献する好騎乗もあれば、パートナーの足を引っ張るミスで辿り着けなかったケースも少なくない。

 馬主、生産者、調教師が描いた青写真も騎手が期待通りに乗ってくれてこそ。力を出し切った上での敗戦なら納得できても、不完全燃焼のまま終戦ともなれば、将来を左右することもある。騎手がミスをして敗れた場合、関係者やファンが不満に思っても不思議ではないだろう。

 権利取りの懸かるレースだけでなく、重賞などでは最悪オーナーサイドから乗り替わりのリクエストが出て、別の騎手で仕切り直しとなるケースもある。

 良好な関係を続けるためには、せめて全力を尽くしたけれども力及ばずといった印象を残しておくことが求められる。負けられない一戦で騎乗依頼をされた騎手側も、勿論大きなプレッシャーが懸かることは間違いない。

 しかし、この春に悪い方の意味で目立ってしまったのが戸崎圭太騎手だ。

 昨年、毎日杯(G3)2着からダービーに進んだグレートマジシャンと同じローテーションで挑んだドゥラドーレス(牡3、美浦・宮田敬介厩舎)だが、3着に敗れて賞金の加算に失敗。道中で内枠から後方に下げたものの、最後の直線でスムーズな進路を取ることが出来ずに、脚を余す格好でダービー出走の夢は潰えた。

 追い出しが遅れたことに対し、騎乗していた戸崎騎手は「人気に応えられず、申し訳ありませんでした」と謝罪するとともに「力はあるところは証明出来ました」と前向きなコメントを残している。

 これにより、前走のセントポーリア賞(1勝クラス)をイクイノックスが制した昨年の東京スポーツ杯2歳S(G2)やダノンベルーガが勝った共同通信杯(G3)を上回る時計で快勝していた素質馬は春全休が決定。ネットの掲示板やSNSでも戸崎騎手の騎乗を責める声も少なくなかった。

有力馬脱落に「被害馬」のファン呆然

 ただでさえ、そういった状況下にあった戸崎騎手だが、先週末のフローラS(G2)でコンビを組んだルージュエヴァイユ(牝3、美浦・黒岩陽一厩舎)は、奇しくも毎日杯のドゥラドーレスと同じ1枠1番の最内枠。道中で後方から競馬を進めたまではよかったものの、最後の直線で前の馬が邪魔になって追い出しが遅れる誤算があった。

 逃げ先行勢が上位を占めた展開の不利があったとはいえ、道中の不利がなければもう少し際どいレースに持ち込めたと思える5着。こちらも優先出走権が付与される2着以内が絶対条件だったため、権利を取れなかったことでオークス(G1)出走に黄色信号が点灯することになる。

 まるで毎日杯の再現VTRといえそうな敗戦となった上、「届きませんでしたが力のあるところを見せてくれました」というほぼ同じ内容のコメントを残した戸崎騎手に対し、ファンの風当たりが強くなったのも無理はない。

 戸崎騎手自身も決して意図的に不利を受けた訳ではなく、勝利を目標にベストの騎乗を試みたはずだが、結果的に2度の悪夢を経験してしまった。「いい加減にして欲しい」「戸崎じゃなければなあ」「クラシックの本命馬がいなくなった」といった厳しい意見もあったが、結果を残して見返すのもまたプロの仕事である。

 まだまだ続く上半期のG1シリーズ、不満を漏らしたファンも唸るような好騎乗でかつてのリーディングジョッキーの手腕を発揮して欲しい。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

JRA天皇賞・春(G1)タイトルホルダーは苦戦濃厚!? 過去11年で64頭すべてが“陥落”した「絶望データ」とは

 5月1日、阪神競馬場では天皇賞・春(G1)が行われる。下馬評では昨年の2着馬ディープボンドと菊花賞馬タイトルホルダーの2強対決が濃厚。「焦点は3着争い」という声すら聞こえてくる。

 ところが今年のJRA平地G1はことごとく人気馬が期待を裏切っているのはご存じの通り。1番人気に支持された馬は、皐月賞(G1)でドウデュースが辛うじて3着を確保しただけで「0-0-1-4」。2番人気馬も「1-0-0-4」と、カフェファラオのフェブラリーS(G1)制覇があるだけだ。

 6年ぶりにフルゲートでの開催が見込まれる今年の天皇賞・春も、流れ的には一波乱ありそうだが……。血統を専門とするある競馬誌ライターは2強が崩れるとすれば、タイトルホルダーの方だろうと指摘した。

タイトルホルダーは苦戦濃厚!?

「長距離実績という点で、ディープボンドとタイトルホルダーの2頭が抜きんでていることは間違いありません。昨秋の菊花賞(G1)を5馬身差で圧勝しているタイトルホルダーは当然ながら、人気になるでしょう。

ただし、血統的には強く推せないのも事実です。タイトルホルダーの父は2冠馬ドゥラメンテ、その父はキングカメハメハなので、同馬はキングマンボ系に分類されます。実はキングマンボ系は昨年までのべ31頭が天皇賞・春に出走していますが、1頭も勝てていません」(競馬誌ライター)

 調べてみると、キングマンボ系の通算成績は「0-1-1-29」。07年にエルコンドルパサー産駒のトウカイトリックが3着、11年にキングズベスト産駒のエイシンフラッシュが2着しているが、馬券に絡んだのはこの2回だけである。

 ドゥラメンテ産駒は今回のタイトルホルダーが初出走となるが、その父キングカメハメハ産駒は「0-0-0-17」。また、キングカメハメハの直仔ルーラーシップ産駒も「0-0-0-2」である。キングカメハメハ系という括りなら「0-0-0-19」となり、血統的にタイトルホルダーを強く推せないというのは合点がいくだろう。

 一方、血統的に優勢なのがキズナ産駒のディープボンドの方なのは間違いない。11年にマンハッタンカフェ産駒のヒルノダムールが勝利したのを皮切りに、昨年のワールドプレミアまでサンデーサイレンス(SS)系の馬は11連勝中なのだ。

「非SS系は過去11年間でのべ64頭が挑戦しましたが、2着が最高着順でした(11年エイシンフラッシュ、12年トーセンジョーダン)。最後の非SS系による勝利は10年ジャガーメイル(ジャングルポケット産駒)までさかのぼらなければいけません。とにかく、春の天皇賞はサンデー系以外を頭では買いづらいレースなんです」(同)

 11年以降の血統データを鵜呑みにすれば、確かにタイトルホルダーに全幅の信頼は置きづらい。ちなみに、今年は登録18頭中10頭がSS系。残る8頭のうち7頭がキングマンボ系だ。タイトルホルダー以外にはテーオーロイヤル(父リオンディーズ)、ヒートオンビート(父キングカメハメハ)などもキングマンボ系である。

 今年の天皇賞・春もSS系が強さを見せるのか。それともキングマンボ系が殻を破るのか。血統的な視点からも楽しめるレースとなりそうだ。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

新築マンション、東京23区の平均価格9千万円超え…富裕層の節税対策で高騰続く

 東京五輪・パラリンピックの選手村と主要な競技会場を結ぶ都道環状2号線は五輪ロードと呼ばれる。五輪ロードでは五輪後、コロナ後をにらみながら都市開発が進んだ。マンションの建築も加速した。

 三方を海に囲まれた東京・晴海に広がるエリアで、東京都が開発しているのが晴海フラッグだ。一部を選手村として活用し、環境先進都市のモデルの実現に向け整備を進めてきた。三井不動産レジデンシャルなど民間の11社が開発を担う。

 五輪後、一部解体工事と新築工事を再開し、2023年には分譲2690戸と賃貸住宅の入居が始まる。24年春にはエリアのシンボルとなる50階建てのタワー2棟が完成し、全24棟、5632戸(分譲4145戸、賃貸1487戸)に約1万2000人が暮らす新しい街が誕生する予定だ。

 三井不動産レジデンシャルは選手村のあった晴海に隣接する勝どきエリア、勝どき東地区で再開発を進めている。都営地下鉄大江戸線、勝どき駅に直結する一等地に3棟のタワーマンションを建てる。地上58階建ての超高層マンション、パークタワー勝どきサウス(1665戸)の販売が始まった。地上29階建てのB棟(464戸)と合わせて最終的に3250戸を供給することになる。このうち1072戸を先行して発売した。21年秋に販売を開始した地上45階建てのタワーマンション、パークタワー勝どきミッド(1121戸)は3億円超の物件を含め第一次分譲分の507戸すべてが契約済みとなった。いずれも23年8月下旬に竣工の予定で24年4月下旬に入居する。三井不動産レジデンシャルの22年3月期には、価格が1億円以上の“億ション”の販売が1000戸を超える見通しだという。

 三井不動産レジデンシャルは2億円超の物件も好調で、1億円が高級物件の目安でなくなってきたと超強気だ。不動産経済研究所によると21年の首都圏新築マンションの発売戸数は前年比23.5%増の3万3636戸。3年ぶりに前年実績を上回った。平均価格は前年に比べて2.9%上昇し、6600万円とバブル期を超え過去最高を更新した。東京23区は7.5%高くなり、8293万円と30年ぶりに8000万円の大台を突破した。価格上昇を牽引したのは、港区や千代田区など都心部の高額物件だ。発売戸数に占める1億円以上の割合は8.2%と最高水準になったと不動産経済研究所は分析している。

 21年の実績を見ておこう。三井不動産レジデンシャルが売り出したパークコート千代田四番町などが富裕層の人気を集めた。高級住宅街である千代田区四番町の敷地面積4589平方メートルに、全168戸の大規模レジデンスが建てられた。第一次分譲の販売価格が8000万円~7億5000万円で平均価格が1戸2億円以上となった。販売開始からわずか3カ月という、高額物件としては超スピードで完売した。

 高額マンションに対する人気は今年に入っても続いている。不動産経済研究所によると2月の首都圏新築マンションの販売価格は、平均で7418万円。前年同月比で1038万円(16.3%増)上昇した。2月としては過去最高。東京23区を中心に20階建て以上の超高層マンションの販売が増えたという。

 2月の東京23区の平均価格は前年同月比30.3%増の9685万円と大きく上昇した。平均価格1億円超の三井不動産レジデンシャルの超高層マンション、パークタワー勝どきサウスは2月発売分157戸が即日完売となるなど絶好調だった。

経営者や起業家が節税目的で億ションを購入

 東京五輪後は、「高級タワマンブームは終わり、価格は暴落する」(不動産担当のアナリスト)との見方が多かった。だが、そうはならなかった。新型コロナ禍の最中に億ション人気が高まり、マンション価格の上昇に拍車がかかった。

「億ションの購入者は、湾岸のタワマンブームの頃のように転売目的の投資家ではない。富裕層がセカンドライフ目的で購入している。新型コロナの感染拡大で、経済は大きなダメージを受けたが、足元の株価は高値を維持し、資産家の財布は傷んではいない」(前出のアナリスト)

 15年の相続税法改正が富裕層を億ション買いに向かわせたとの指摘もある。現金ではなく不動産で資産を所有するケースが増加したという。不動産投資で相続税の負担が軽減されるだけでなく、家賃収入を得ることもできる。節税目的だけでなく老後の安定収入源の確保のためにマンションを購入することが行われている。

 相続税対策としてマンションの需要が増えれば、自然の成り行きでマンションの価格は上昇する。「億ションの購入者は株高の恩恵を受けた経営者や起業家」(前出のアナリスト)。

 国税当局は課税を強化する動きを見せている。不動産投資による節税を抑えるためのきめ細かい対策が取られ、大規模な税制改革が行われれば、空前の億ションブームは終焉を迎えるが、「この間にひと稼ぎ」と考える資産家は減りそうにない。

(文=Business Journal編集部)

 

コロナ禍で売上ゼロから、成長率323%の大逆転を遂げたアソビューの挑戦

本連載では、スタートアップ企業の起業家、経営者、投資家、CMOなどが、会社や事業の成長過程で直面した課題をどのように乗り越えたのか、スタートアップ支援を行なっている電通社員との対談形式でお届けします。

前回に続き、遊びの予約サイト「アソビュー!」を運営するアソビュー株式会社代表取締役CEOの山野智久氏に、電通の廣田元章がインタビューを実施。コロナ禍で会社存続の危機に直面する中、経営者として意思決定の拠り所にしていたこととは?

sgp05


【アソビュー!とは】
全国各地の娯楽施設やレジャー体験など、“遊び”を検索・予約できるウェブサービス。450種類の遊びを7000施設以上紹介し、登録ユーザー数は約〇〇万人と、国内最大級の規模を誇る。
sgt

「社員の解雇」という合理的判断に背き、打開策を捻り出す

廣田:ミッションの改訂とともに、コーポレートロゴやサービスロゴも刷新し、アソビューの新しいブランドアイデンティティをいよいよお披露目するぞ!というタイミングで新型コロナウイルスの流行が起こりました。

言わずもがな、遊び産業は外出自粛による大打撃を受けてしまいます。会社の存続自体が危ぶまれる状況にどう立ち向かい、どう乗り越えていったのかについては山野さんの著書『弱者の戦術』(ダイヤモンド社)に詳しく書かれていますが、僕が特に印象的だったのが、売上がゼロになる中、経営者の合理的判断としては「社員の解雇」が妥当だったにもかかわらず、「社員を解雇しない」という決断をされたことです。そのほかにも、51%対49%でどちらかの決断が正しいというギリギリの意思決定が続いていたと思うのですが、その判断の拠り所はどこにあったのでしょうか?

山野:まず、サービス開発に関しては顧客起点でニーズがあるかどうかを判断すれば良いので、意思決定は比較的簡単です。ただ、おっしゃるとおり、そもそもの戦略策定など大きな判断は相当悩みましたね。

もちろん、ロジックで突き詰めて考えるのですが、その上で最終的には自分がどうしたいのかを大切にしました。社員の解雇がロジックとしては妥当ではあるが、僕は社員を解雇しない未来を選択したい。とにかく解雇が嫌だったので、解雇をしないことを決めて、その上でコストを減らす方法を必死で考えました。

sgt05
アソビュー 山野智久氏

廣田:そこから、一時休業やアソビューに在籍しながら他社に出向する「在籍出向」といった施策が生まれたのですね。しかも、出向のスキームは自社のみならず、一般社団法人の活動を通じて他社の支援にも展開されていました。会社存続の危機という有事に直面しているにもかかわらず、どうして他社の支援に意識を向けられたのでしょうか?

山野:有事だからこそ、社会の中でどのように立ち振る舞い、課題解決に貢献できるかを考えなければならないと思ったんです。ひと昔前はスタートアップといえばリスクが大きく、いかがわしい存在だと捉えられることもありました。そこからみんなで徐々に社会的な評価を高めていき、ようやくムーブメントの兆しが見えてきたところです。ここでスタートアップの経営者たちが解雇を選択してしまうと、「やっぱりスタートアップってリスクあるよね」と、また昔の印象に戻ってしまいかねません。だからこそ、あらゆる企業の中でも最先端だと胸を張れるぐらいの意思決定を行い、社会にも積極的に関与すべきだと考えました。

廣田:すごい。スタートアップ業界全体を背負う気持ちがあったのですね。

山野:勝手に背負っていました(笑)。アソビュー自体、10年の歴史の中でスタートアップ界隈における認知度はかなり高まっていたので、なおさら責任感を感じていたんです。

電通の廣田元章
電通 廣田元章

政府、事業者、ユーザーのニーズをいち早く捉え、成長率323%を達成

廣田:そのように社会貢献を行いながら自社の戦術も次々と打ち出していく中で、BtoB向けサービス「日時指定電子チケット」が大当たりしました。このサービスはどのような経緯で生まれたのでしょうか?

山野:顧客起点に立ちニーズやお困りごとを解決するに尽きます。レジャー施設の方々に話を聞いてみると、彼らが一番恐れていたのは施設内でクラスターが発生してしまった時のレピュテーション(風評)リスクでした。そこで、疫学の専門家と複数の業態の営業オペレーションを把握しているアソビューで、施設向けの感染防止ガイドラインを作成することにしました。

その制作過程で省庁にヒアリングしたところ、感染拡大防止のための一丁目一番地は密回避、すなわち「敷地面積あたりの人数の管理」であることが分かったのです。それならば、オンラインで時間帯ごとの入場者数を制限する機能を提供すれば、専門家や政府の方針と事業者のニーズがマッチし、ユーザーも安心して施設を利用できると考えました。2020年4月に緊急事態宣言が発令され、プロジェクトがスタートしたのは5月頭。6月にはどこよりも早く、このサービスをローンチしました。

廣田:とてつもないスピードですよね。

山野:僕自身、エンジニアではありませんが、通常であれば半年から1年近くかかるシステムであることは理解していました。でも、そのスピード感だと、レジャー施設の事業者もわれわれも潰れてしまうかもしれない。緊急事態宣言が解除される6月のタイミングで、少しでも早く安心して営業再開できる状態を提供しなければならなかったのです。世の中全体で大きなゲームチェンジが起きているこの瞬間こそが、アソビューが逆転するチャンスだとも捉えていました。だから、既存のシステムをなるべく流用し、システムで補えない部分は人力で対応するなど、最初から完璧なプロダクトを作り込むのではなく、限られた時間内で可能な限りの品質を目指すことにしました。

廣田:しかも、導入費用無料という、これまた大きな意思決定をされました。

山野:そうですね。会社としては1日でも早く売上が欲しいところでしたが、システムを一気に広めるためのマーケティングコストだと割り切って、市場シェアを拡大するチャンスに賭けることにしました。

廣田:その判断が功を奏し、3カ月後には前年比成長率232%というすさまじい記録を打ち出しました。コロナ前の業績と比較してこの比率ですから、V字回復どころではないですよね。

山野:とてもうれしかったですね。アソビューを支えてくれた仲間たち、企業の皆さまに本当に感謝しています。

asobiew

TVCMを通じて、“遊び”を楽しめる世の中を取り戻したい

廣田:脅威のV字回復を遂げてから1年後、アソビュー初となるTVCM展開を決断されました。その背景にはどのような狙いがあったのでしょうか?

山野:マーケット分析を行いながら顧客認知度をどう獲得していくのかを検討する中で、やはりカテゴリー認知とサービス認知の伸び代はまだ大きいことが分かりました。ちょうど資金調達を実施したタイミングだったので、広告マーケットの中で一番大きなマス広告にトライアルしようと考えたのが主な経緯です。

廣田:最初は福岡でトライアルを行い、2022年4月からはエリアを拡大して、関東・関西・東海・福岡で行います。トライアルの手応えはいかがでしたか?

山野:純粋な認知獲得のみならず、ブランド選好の観点でも消極的な意向から積極的な意向に数字が上がることが分かりました。また、リピート利用の促進にもつながるなど、複数の項目で効果が確認できたので、費用対効果に関して一定のエビデンスが得られたことは良かったです。

なので、今回のエリア拡大でも数値的な効果はある程度得られるのではないかと期待しています。もう一つ、気持ち的な側面で期待していることとして、この2年間、みんな常に行動制限がかかった生活を過ごしてきたのですから、今回のCMをきっかけに、社会全体がこの2年間のことも噛み締めつつ、遊びを楽しめるような空気になっていくと良いなって思っています。

https://www.youtube.com/watch?v=7Hn5_2fo-dg
アソビュー!テレビCM「ライオントラック」篇
https://www.youtube.com/watch?v=7Hn5_2fo-dg

廣田:「週末、なにする?」というコピーには、旅行や遠出だけでなく、身近なお出かけも含めて、遊びを楽しんでもらいたいという思いが込められていますよね。そういえば、ヨーロッパの一部の国では週休3日制をテスト導入しているそうです。もし今後、日本でも週休3日を導入する企業が増えれば、余暇市場も現状の1.5倍に増えるわけですから、そう考えるとアソビューの伸び代はすさまじいですよね。

山野:伸び代しかないと信じています(笑)。

廣田:ぜひ、末長くお付き合いいただけるとうれしいです(笑)。

山野:僕はもはや、チームの一員だと思っています。電通と仕事でお付き合いする前はもう少し合理的な付き合いと言いますか、大企業と比べれば小規模の案件なので、どこまで熱量を持ってくれるのか不安だったんです。でも、その考えは180度変わりましたね。本当にわれわれの思想に共感して、グロースを願ってくれているし、泥臭いところや辛いところまで一緒に寄り添って解決してくれますからね。

廣田:そこはやはり、会社のビジョンや山野さんのリーダーシップ、人柄に心が動かされているからだと思います。これからもぜひ同じチームとしてアソビューの成長に貢献していきたいと思います。引き続き、よろしくお願いします!

tw

ビジネス成功を左右する、「調べ方」のコツとは?

電通の現役戦略プランナー・阿佐見綾香氏の新著『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる「調べ方」の教科書』をもとに、ビジネスの成功に“直結”するリサーチの方法をお伝えする本連載。

今回は、本屋B&Bで行われたトークイベント「ヒットは調べることから始まる」より、日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長で、出版マーケティングコンサルタント/ビジネス書評家の土井英司氏と阿佐見氏の対談をお届け。なぜ、今の時代に「調べ方」が必要なのか、そしてビジネスの成功を左右する「調べ方」のコツを語り合いました。

3ga

意見のインフレが進む今の時代こそ、「調べ方」が武器になる

阿佐見:土井さんは国内160万部、世界1300万部を突破した『人生がときめく片づけの魔法』をはじめ、『年収200万円からの貯金生活宣言』、『「超」入門 失敗の本質』など、多数のベストセラーをプロデュースされていらっしゃいます。何を隠そう、『「調べ方」の教科書』も土井さんにプロデュースしていただいた本です。

土井:早くも3刷増刷(※1)、おめでとうございます。僕自身がマーケターでもあるので、電通のマーケティングの秘密は前々から気になっていました。特に第一線で活躍されている現役のマーケターがここまで踏み込んだ本を書いてくれることはレアなので、思いっきりハードな内容をリクエストさせていただいて、最終的にとんでもない分厚さの本になりましたね(笑)。

※1=2022/4/22現在は6刷増刷、1万5000部突破
 

阿佐見:いわゆる“鈍器本”ですね(笑)。土井さんは「調べ方」というテーマについてどのような印象をお持ちでしょうか?

土井:近年、インターネットを中心に“意見のインフレ”が起きています。オピニオンリーダーはもちろん、一般の方々も含めていろんな意見がメディア空間の中を飛び交っていますよね。しかし、その中には個人の思い込みがあったり、理解しやすいものが流通される傾向にあったりと、事実=ファクトと意見の乖離が起きているケースも少なくありません。このギャップが大きくなりやすい時代だからこそ、調べ方の技術を磨くことが大切だと思うんです。

阿佐見:まさにファクトと思い込みのギャップを埋める作業は、マーケティングリサーチでも重要なポイントです。よくインサイトという言葉を聞くと思うんですけど、これは顧客や生活者自身でも言語化できていない本当の悩みや欲求、気持ちのことを指します。インサイトを深く捉えずに表層的な部分だけでプランニングをすると、誰でも思いつくようなアウトプットや、ターゲットに深く刺さらない施策になってしまいます。

有名な事例を一つ紹介すると、あるビルのオーナーが「エレベーターが来るのが遅い」というクレームに悩まされていたのですが、エレベーターをこれ以上速くすることはできません。そこで、エレベーターの横に鏡を付けたところ、クレームが来なくなりました。なぜなら、鏡を見て身だしなみを整えていたりすると、エレベーターの待ち時間が気にならなくなるからです。つまり、人はエレベーターが来ないことにイライラしているのではなく、無駄な待ち時間を過ごしていることにイライラしていたのです。

調べ方にはコツがある!

土井:何が因果関係で結ばれているのかを見極めることが重要ですよね。一方で、今はどの企業もリサーチの材料になるデータをたくさん持っているにもかかわらず、うまく生かしきれていないケースもあります。

阿佐見:私はリサーチに取り掛かる前に、仮説をつくっておくことが大切だと考えています。仮説とは、現時点で把握している情報から導き出す仮の答えです。経験による肌感覚的な部分はありますが、あてずっぽうということでもなく、「現時点で一番ありえそうな結論」を仮説として考えます。

「先に結論を出して調べると、視野が狭まって大事なデータを見逃すのでは?」と聞かれることがあるのですが、逆に結論を出しているからこそ、異なる傾向が出てきた時に違和感を感じることができます。なんで思っていたのと違うんだろう?意外と響かないのはどうしてだろう?という違和感を起点にリサーチを進めていくことで、より深いインサイトにたどり着くことができるのです。漫然とリサーチをしていると、結局何も見つけられないことも多々あります。

土井:なるほど、まずは仮説を立ててデータやファクトと照らし合わせながら、仮説をブラッシュアップしていくイメージですね。

阿佐見:それから、調べ方の手段を組み合わせることも重要です。大きく分けると、デスクリサーチとフィールドワーク、定量調査と定性調査の4つです。とある健康食品のマーケティングに携わらせていただいた際、相性が良さそうな40代女性をクライアントがターゲットから外していたので理由を聞くと、定量調査で40代女性の反応が悪かったのだそうです。

しかし、実際に定性的なヒアリングをしてみると、この商品に含まれている栄養素に対する意識は高いのですが、それゆえに普段の食事でその栄養素は摂れていると勘違いしていたのです。そう考えると、40代女性はターゲットの範囲外どころか、むしろ有望ターゲットですよね。

土井:面白いですよね。ちなみに本書では老舗化粧品メーカー、コージー本舗の商品「10秒マツエク」がヒットするまでのリサーチ過程が、かなり詳しく踏み込んで書かれています。そのパッケージデザインの選定でも、調べ方の手段がうまく使い分けられていましたよね。

阿佐見:そうですね、方向性の異なる4つのパッケージデザイン案を提案した上で調査を行った結果、そのうちの2案はいろんな層の方々から好評が得られました。でも、デザインを担当したアートディレクターから「満遍なく評価されている案だけど、これが一番好きって言っている人はいないですよね?」と指摘されて、確かにそうだなと。最終的に好き嫌いの意見は分かれるものの、好きな人はものすごく好きなデザイン案にしたところ、つけまつげとしては異例の110万個の出荷を突破するヒット商品になりました。

土井:調べ方のアプローチは異なるものの、いずれも感覚や勘ではなく根拠に基づいて仮説を立てている点がポイントですよね。

後編では、『「調べ方」の教科書』制作過程で行われたリサーチの裏側や、土井さんのベストセラーを生み出す調べ方の技術に迫ります!


調べ方

『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる「調べ方」の教科書』の詳細はこちらから

tw

「渋沢栄一」は大ヒット…茨城サザコーヒー、偉人が飲んだ珈琲を次々に再現し話題

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数ある経済ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

 4月8日、茨城県の県立歴史館(同県水戸市)でメディア発表会が行われた。当日は、茨城にゆかりのある歴史上の偉人・賢人が楽しんだコーヒーを再現した「茨城ヒストリアカフェ」(1杯取りのドリップコーヒー×7種の詰め合わせ)も披露された。

 県立歴史館と連携して開発したのは、サザコーヒー(本店:同県ひたちなか市)だ。同社は茨城県と首都圏に16店舗を展開する個人系チェーン店で、真摯なモノづくりと意外性のあるコトづくりが持ち味だ。本連載では、そのユニーク性に注目して、これまでも紹介してきた。地方の中小企業の発想や柔軟性が、読者の参考になると思うからだ。

 今回、なぜ歴史上の人物を打ち出したのか。仕掛け人である同社会長に話を聞いた。

茨城土産として、偉人・賢人に光を当てた

「きっかけは、歴史館の山口やちゑ館長(当時、元茨城県副知事)から『県の歴史に関連したお土産品をつくりたい』と相談を受けたことです。当社は、これまでも歴史上の人物が飲んだであろう、コーヒーの味を再現してきたので、さっそく商品開発にとりかかりました」

 サザコーヒーの創業者でもある鈴木誉志男会長は、こう語る。

茨城ヒストリアカフェ」(7種類で1200円、税込み)に登場するのは、次の7人(左は商品名、右は人物)だ。商品は同歴史館やサザ本店で先行販売されている。

(1)「将軍珈琲」(徳川慶喜)
(2)「渋沢栄一仏蘭西珈琲物語」(渋沢栄一)
(3)「プリンス徳川カフェ」(徳川昭武=慶喜の弟で最後の水戸藩主)
(4)「五浦コヒー」(岡倉天心)
(5)「ローガン・J・ファクス コーヒー」(ローガン・ファクス=茨城キリスト教学園初代学長)
(6)「鷹見泉石珈琲物語」(鷹見泉石)
(7)「サムライ小野友五郎珈琲物語」(小野友五郎)

 上記の(1)~(3)は同社のヒット商品で、(4)と(5)も一定のファンがいる。今回、新たに(6)と(7)を、歴史館の提供した資料なども踏まえて開発した。だが、失礼ながら鷹見泉石と小野友五郎は決して著名とはいえない。なぜこの2人に注目したのか。

コーヒーは「舌」と「アタマ」で楽しむ

「私は、コーヒーは舌で味を楽しみながら、歴史や文化を思い描いて、脳内でも楽しむ飲み物だと思っています。昔からコーヒーは、いわゆるインテリ層に支持されてきました」

 鈴木氏はこう話し、この2人を選んだ理由を説明する。

「鷹見泉石は古河藩の家老で、長崎のオランダ商館や蘭学者とも付き合いがありました。鎖国時代の日本において、最先端の情報に接していたのです。当時、世界のコーヒー豆を支配していたオランダからコーヒー豆をもらい、コーヒーミルで焙煎して飲んでもいた。“蘭癖(らんぺき=オランダかぶれ)”ともいわれた人物です。

 小野友五郎は笠間藩の下級武士でしたが、天文学を学び、江戸幕府の軍艦『咸臨丸』の航海長を務め、無事に太平洋横断に導いた人。維新後は鉄道建設の測量に尽力しています。官僚ゆえに目立たないのですが、幕末・明治期の日本を陰で支えた人物です」(同)

 前者は、当時オランダが領有していたインドネシア産のマンデリンを軸に浅煎りに焙煎。後者は、渡米当時の米国のコーヒー事情を調べ、米国に輸入されたブラジル産やコロンビア産の豆を配合して中深煎りに焙煎した。いずれも当時の味を再現したという。

 鈴木氏は、新商品の開発では“ストーリー性”も重視する。今回もその手法だ。

大河効果で大ヒット、「渋沢栄一仏蘭西珈琲物語」

 史実を踏まえた商品開発で、サザコーヒーには実績がある。最近では、2021年1月に発売した「渋沢栄一仏蘭西珈琲物語」(1杯取り×5袋は税込み1000円)が大ヒットした。数字は非公開だが、一般のコーヒー店とはケタ違いの数が売れるという。

「NHK大河ドラマ『青天を衝け』で描かれたように、渋沢栄一は、幕末までは徳川慶喜に仕えた藩士。慶喜の弟で最後の水戸藩主だった昭武に随行して、1867年に渡仏しています。欧州歴訪中にコーヒーを飲んだことが日記にもあり、商品は当時のフランスで使われていたエチオピアとイエメン産のモカを用い、深煎りのフレンチローストにしました」(同)

 大河ドラマも商品の売れゆきを後押しした。2021年7月11日放送の同番組では、渋沢らが滞在先のパリのアパルトマン(アパート)でコーヒーを抽出するシーンがあった。

 実は、ここで使われたコーヒー器具や食器を提供したのも同社だ。番組の最後に流れるエンドロール(クレジット表記)では「コーヒー指導・鈴木誉志男」と記された。商品は大河ドラマを意識して開発したが、コーヒー指導は「たまたま依頼を受けて」だという。

「地方のコーヒー屋」の生き残り策だった

 これら“歴史コーヒー”の開発に力を入れるのは、単なる郷土史の掘り起こしではない。

「地方のコーヒー屋が生き残るために、いつも大手や他店との差別化を考えてきました。コーヒーやコーヒー豆は、今でも産地や銘柄、農園別といった訴求が一般的です。そうではなく、『歴史上の人物が飲んだコーヒー』というストーリー性を持たせれば、別の魅力が打ち出せると気づいたのです。そのきっかけが『将軍珈琲』でした」(同)

 2004年に発売した「将軍珈琲」(当時は「徳川将軍珈琲」)は、「サザスペシャルブレンド」と並び、同社の大黒柱のひとつだ。

 商品開発の発端は、1998年のNHK大河ドラマ『徳川慶喜』の放送だ。江戸幕府最後の将軍・慶喜は、水戸徳川藩の第9代藩主・徳川斉昭(なりあき)の七男。将軍時の1867年にはフランス人の料理人を雇い、大坂(現大阪)の晩餐会で欧米の公使をもてなし、コーヒーを提供した。

 商品は、この逸話を基に企画。慶喜の直系のひ孫・徳川慶朝(よしとも)氏に焙煎を依頼した話題性もあり、大ヒットとなった。濃厚な味には固定ファンも多い。

「『将軍珈琲』『プリンス徳川カフェ』『渋沢栄一仏蘭西珈琲物語』によって、歴史・物語系コーヒーの3本柱ができました。もちろん当社だけの力ではなく、たとえば時代考証では、千葉県松戸市の戸定歴史館や名誉館長・齊藤洋一氏に大変お世話になりました」(同)

「モラ」や「仮面」を飾るのは、文化の紹介

 サザコーヒーの本店を訪れると、さまざまな異空間が広がる。「ギャラリーサザ」も併設されている。営業時間中なら、喫茶コーナーを利用しないお客でも無料で見学可能だ。3月21日まで開催されたのが、中米パナマの伝統品「モラ」約600枚の企画展だった。

 モラは、もともとパナマ・サンブラス諸島のクナ族の女性が手縫いでつくる刺しゅうで、鈴木会長と長男の鈴木太郎社長が、コーヒー買い付けの際に購入してきた収集品を紹介した。普段は本店奥の壁にも一部が展示されている。また、本店にはアフリカの仮面も展示している。初めて訪れた人は驚くかもしれない。

「世界でコーヒーが栽培される“コーヒーゾーン”は、見方を変えれば“アートゾーン”です。そうしたコーヒー文化も伝えたいと、これまで本店ではトークショーなども数多く行ってきました。お客さまからは、『いつも何かをやっている店』と言われます」(同)

 コロナ禍となり、「遠出ができないご時世だから、近くのサザコーヒーに来た」と話すお客もいた。本店は、「マイクロツーリズム」(地元・近隣観光)でも支持されるのが興味深い。

コーヒー屋として、「もてなす心」を持ち続けたい

 サザコーヒーが開業したのは1969年で、今年で53年となる。創業者の鈴木会長が「伝統や文化」を掘り下げ、長男の太郎社長は「流行や意外性」を仕掛ける。

 今年3月にはJR新橋駅構内に「サザコーヒー エキュートエディション新橋店」がオープンした。地上波テレビの情報番組で紹介されるなど、話題となっている。

 昭和時代の個人系喫茶店は、繁盛店でも店舗の老朽化や店主の高齢化などで、のれんを下ろした例が多い。創業半世紀を超えても“血気盛ん”なサザコーヒーは、数少ない存在なのだ。

 一方で、一時的にもてはやされても、その後は失速した飲食店も多い。創業者として鈴木氏は、自社の現状をどう見つめているのか。

「あくまでもコーヒー屋ですから、お客さまを『もてなす心』を持ち続けたい。飲食の味もそうですが、提供する器も、従業員の接客にも、その気持ちを込めてきました。

 本店には、薪ストーブもあります。毎年、乾燥させた薪を、寒い季節になるとストーブに入れます。燃える炎は幻想的で、それがいいと手紙をくださるお客さまもいます」(同)

 サザという名前は、茶道の「且座」(表千家では“さざ”、裏千家では“しゃざ”と読む)から来ており、「且座喫茶=まさに座ってお茶を飲みませんか」が由来だという。

 伝統や文化をレトロモダンに訴求する。「茨城ヒストリアカフェ」もその一環だった。

(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

東谷義和氏“金勘定と今後”…ドクターAの4000万融資でBTS詐欺被害者に弁済開始?

 2022年2月14日のチャンネル開設後たった50日で登録者数100万人を突破した、ご存じ「東谷義和のガーシーch【芸能界の裏側】」。

 チャンネルを主宰する東谷義和氏は27年間にわたってさまざまな芸能人たちを“アテンド”し、ときにはトラブルをもみ消すなどギョーカイの便利屋として暗躍してきたことから得た独自情報をもとに、暴露系YouTuberとして芸能界に激震を走らせ続けている。城田優、綾野剛、新田真剣佑といった人気俳優たちが続々と過去のスキャンダルを暴露され、この「ガーシーch」の名が参議院行政監視委員会で読み上げられるほど、いまや国家も認める大人気チャンネルに成長しつつあるわけである。

 ある週刊誌の芸能記者は、ガーシーchの“スゴみ”をこう語る。

「最近でこそ暴露ネタをやや小出しにし始め、『それはまたゆっくりやります』などと先延ばしをするようになってますが、それでもギョーカイの内部にいた者ならではの圧倒的な情報量には目を見張るものがある。我々メディアの側が絶対に裏取りができなかったり写真を撮れなかったりしてなかなか掲載にまではいたれないようなネタでも、彼はLINE画面やプライベート写真を証拠とし、自身の実体験として暴露できてしまう。見せ方としても非常にうまいし、説得力もありますよね。

 ただ、最大瞬間風速としてはすさまじいですが、YouTube側からいつBAN(アカウント停止)されてもおかしくないため、有料のメンバーシップ会員を募ったり生配信で投げ銭をもらったりと、マネタイズにも余念がない。そもそも、自分が働いた詐欺行為の被害者に弁済するために自身のチャンネルを立ち上げたとみずから認めており、一説にはその弁償金額は1億円以上ともいわれています。チャンネルの収益化は一応グーグルから認められたようですが、計算上、彼のもとにお金が入ってくるのは5月中旬。それまでは絶対にチャンネルをBANされないよう、薄く長くネタを引き延ばしていくでしょうね」

ドクターAから融資を受け、4000万円を弁済? 新たな芸能ネタも持ち込まれ、もはや“ひとり文春砲”

 4月21日の生配信では、ネット上で「ドクターA」としてブレイク中の東京美容外科統括部長・麻生泰氏とコラボ。麻生氏より融資を受け、「被害者に対し4000万を弁済する」と明言したガーシー。実際、一部では「3億円の懸賞金がガーシーの首にかかっている」などともいわれているが……。

「それも本人がチャンネル内で話しており、少々大げさだとは思いましたが、あながち嘘でもないのでは。4月21日にNEWSポストセブンが報じた内容が事実だとすれば、真剣佑からの借金だけで少なくとも6000万円ですからね。ガーシーがチャンネルを開設した当初は、芸能関係者や暴露を恐れた有名人の側近たちは血眼になって彼の行方を探っていたということですが、なかなかシッポをつかめないため、最近は半ばあきらめ気味だとか。実際は側近スタッフとともにドバイに潜伏しているという話もありますが、本当にどこにいるのかわからないようですね。

 有名人の“お世話係”として長く影の存在だった男が、暴露系YouTuberとして突然表舞台に。今やLINEのスタンプができたり、ガーシーのロゴが入ったTシャツを作るなど、有名人気取りです。また、彼のもとには多数の暴露ネタが証拠写真とともに送られてきているようで、芸能界の闇を暴くため、今後はそうした持ち込まれネタも投下していくと豪語しています。もはや“ひとり文春砲”な無双状態ですが、そもそも、いったいいかなるモチベーションでこうした行為に及んでいるのか、ここまでくるともはや理解不能(笑)。いつの間にやら本人の詐欺行為は棚上げされた状態になっているようで、視聴者からの熱い声援を受け、ガーシー本人はダークヒーローにでもなったつもりなんでしょうね」(前出の芸能記者)

ネット上でこそ大盛りあがりはするものの、対世間に関していえば“不発”状態

 この4月7日に登録者数が100万人突破した際には、新田真剣佑の「ステマ疑惑」や「淫らな女性関係」の暴露爆弾が投下され、再び芸能界を震撼させることに。

 あるスポーツ誌の記者はこの爆弾の余波をこう分析する。

ガーシーの暴露に慣れてきた視聴者にとって、ステマ疑惑、脱税、淫らな女性関係は想定内。真剣佑さんはすでに撮影が完了しているハリウッド映画『Knights of the Zodiac(聖闘士星矢)』で主演を、またネットフリックスで制作される『ONE PIECE』にも出演するとあって、ガーシーは『この2本をお蔵入りにするまで暴露を続ける』と鼻息を荒くしていましたが、真剣佑さんが逮捕でもされない限り、実際問題その可能性は極めて低いでしょう。真剣佑さんは海外に拠点を移しており、ガーシーがどれだけ証拠LINEをYouTubeにアップするなどしても、明確な犯罪行為でもない限り、刑事事案として警察が捜査に乗り出すなどといったことはまずないでしょうしね。

 そもそもガーシーにも詐欺疑惑があることもあって、一般の芸能プロや大手主要メディアも、いまだに彼のことを黙殺状態。国会で名前が出たのも、NHK党の議員が『スキャンダルを暴露された城田優を朝ドラで使うのはいかがなものか』と糾弾したかっただけで、これも世間的には黙殺されています。つまりガーシーの一連の爆弾投下行為は、ネット上でこそ大盛りあがりはするものの、一般社会にまで影響を与えているかというと、“不発”状態なわけです。

 暴露を続けて芸能界の闇に光を当て“世直し”をたくらむガーシー自身はダークヒーロー気取りでも、結局のところまずは、みずからがしでかした詐欺行為を解決することが先決ということでしょう。5月中旬に無事に換金できれば、月の売り上げは1500~2000万円は堅いはず。このままのペースでいけば、年収2億も夢ではないでしょう。ただ、ガーシーの暴露にも徐々に新鮮みが失われつつあるので、ここからこの勢いをどう存続させていくかが、彼にとって勝負では。登録者数は100万人を超えていても、再生回数がまったくともなってないチャンネルはたくさんある。つまりガーシーchは、暴露される芸能人にとってのみならず、本人にとってもまだまだ予断を許さない状況にあるわけです」

 YouTube界に颯爽と現れた色黒中年ダークヒーロー、ガーシーこと東谷義和。数々の暴露爆弾でネット民を歓喜させてきたが、ガーシーに課せられた“ハードル”は上がるばかり。彼が過去を清算し、真のヒーローになる日は訪れるのか? まだまだしばらく目が離せそうにない。

(文=藤原三星)

●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara

奇数を体内に取り込む、ポケットに直カツ… クズ芸人界の“巨匠”が見せた「パチンコへの異常なこだわり」

クズ芸人界の「巨匠」が見せた異常なパチンコ愛

 インターネットテレビ局・ABEMAの人気番組「チャンスの時間」。お笑いコンビの千鳥が司会を務める同番組では、パチンコに魂を燃やすプロフェッショナルにスポットを当てた「パチフェッショナル 仕事の遊戯」なる不定期のコーナーがある。

 3月末に放送された「#173」では、同コーナーにピン芸人・岡野陽一が登場。その独特な思考で共演者たちを爆笑させた。

「クズ芸人界の巨匠」とされ、現在、1,000万円の借金がある岡野の1日は、「彼女の家に転がり込む形でかれこれ1~2年」住むという街・中目黒のおしゃれなカフェで始まった。「普段は甘い物、全然いらない」とした岡野が食べていたのは、いちごがふんだんにトッピングされたパンケーキ。曰く、このいちごが大事だそうで、「いち(1)」と「ご(5)」、「パチンコでめちゃめちゃ大事な奇数を体内に入れちゃう」ことで「確率が全然変わってくる」のだそうだ。

 そんな岡野がホール入店後に選んだのは、SANKYOの『Pフィーバーマクロスフロンティア4』。着席後に全財産だという1万円札数枚を取り出すと、続けて1万円札の「番号」をチェックし始めた。

 どうやら紙幣の番号にもこだわりがあるようで、例えば「UM」ならば「うまい棒(『Pうまい棒4500~10500』)でこのお札を使えば絶対出る」と断言。「札によって出方が違うそう」そうで、このメッセージを「気にするかしないかでは勝率が全然違う」と続けた。

直カツ、服にコーラを垂れ流し……これらもパチンコ必勝法

「SANKYOさんの台は形がめちゃめちゃカッコいい」。他のメーカーは派手な筐体が多い中、「見た目じゃなくて中身で勝負してる感が本当に好き」と打ちながらパチンコ愛を語った岡野。おもむろに「今日、これもやってんですよ」と切り出すと、なんと、ポケットからトンカツを取り出した。

 その理由は、「カツを食べてゲン担ぎは、あまり意味がない」とのことで、「直でポケットにカツを入れると、今のところそんなに負けたことがない」と発言。撮影スタッフに「衣がめちゃくちゃついてますけど」と指摘されても、「これで出るんだったらいいでしょ」とし、「洗って取れない衣はない」と言い切った。

 それでもなかなか当りを引けない岡野は、ついに飲んでいたコーラを服にこぼし始める奇行。この奇行は「なにかを得るってことは、なにかを失わないといけない」との考え方からあえて「代償を払っている」そうで、「僕もこれだけ苦しんでるんだよ」というのを見せることが「一番の必勝法」なのだという。

 結果、戦績は1万5,000円のマイナス。「やることやって、この結果はきついですね」としたが、世の中の理不尽さを「パチンコで全部教えてもらった」と語った岡野は、「この、うまく行かないのも人生」と、どこか納得の様子だった。

【注目記事】
【パチスロ攻略情報】5号機ロングヒットタイトルを思わせるゲーム性を実現… 推測要素もしっかりと継承!?
パチンコ「磁石&回転体」が最高のV入賞を演出…名機の激アツ要素を取り込んだ新台が登場!! 
パチンコ店で起こった「衝撃的な出来事」…果たしてアノ言葉の意味は!? 【松戸檸檬の人生ちらみせ道中膝栗毛】

JRA 天皇賞・春(G1)が一人のサッカー少年の運命を変えた…菱田裕二騎手がテーオーロイヤルとともに狙う恩返し

 5月1日、阪神競馬場で開催される第165回天皇賞・春(G1)。現役最強ステイヤーを決する芝3200mの戦いに、今年は18頭がエントリーしている。

 人気の中心となりそうなのが、昨年の2着馬で、暮れの有馬記念(G1)でもエフフォーリアの2着と健闘を見せたディープボンドと昨年の菊花賞(G1)を制したタイトルホルダーの2頭。芝3000m以上のG1レースで実績を挙げている両馬による2強ムードが漂う中、待ったをかけるのが長距離界の新星・テーオーロイヤル(牡4歳、栗東・岡田稲男厩舎)である。

 ちょうど1年前の青葉賞(G2)で15番人気ながら4着に入る激走を見せると、休養を挟んで迎えた10月に中京と阪神で1勝クラスと2勝クラスを連勝したテーオーロイヤル。11月に3勝クラスも難なく突破してオープン入りを果たすと、今年2月のダイヤモンドS(G3)でも、2着馬に0.4秒の差をつけて重賞初制覇を飾った。

 破竹の4連勝中と勢いに乗った状態で迎える初めての大舞台。キャリア3走目の未勝利戦から継続して手綱を取る菱田裕二騎手にとって、この馬とともに挑む天皇賞・春にかける想いは人一倍強い。

 今年がキャリア11年目となる菱田騎手は、9月に30歳を迎える。G1は今回が通算24回目の騎乗となるが、これまでの最高成績は4着(2回)となっている。

 とはいえ、今まで有力馬で大舞台に挑んだ経験はなく、最も人気を集めたのは6番人気アドマイヤリードで挑んだ2015年阪神JF(G1)の9着程度。G1での有力馬への騎乗は今回が初めてと言っていい。

一人のサッカー少年の運命を変えた天皇賞・春

 2012年の3月、競馬学校・騎手課程の28期生として岡田厩舎から騎手デビューした菱田騎手。小学生時代はJリーグのチームが運営する下部組織に在籍していた有望なサッカー少年で、当然ながら夢はプロサッカー選手だったという。そんな少年の運命を変えたのが、他でもない天皇賞・春だった。

 小学生の時、家の近くの競馬場で大きなレースがあるからと、家族とともに足を運んだ京都競馬場で目の当たりにした競馬の魅力に取りつかれ、サッカーひと筋だった少年は騎手になることを志した。

 住まいは競馬場の近くだったが、競馬とは縁遠い家庭。むしろ父は「ギャンブル嫌い」で、最初は猛反対を受けたという。「競馬学校に入学したら勘当するつもり」とまで言われながら、それでも騎手を目指したいと訴え続けた熱意が実り、2008年に競馬学校・騎手課程の27期生として騎手への道を歩み始めた。

 しかし、繰り返しになるがもともと競馬とは縁遠い家庭。乗馬の練習も中学3年の4月から通いはじめたとあって、入学直後から大きな壁にぶつかる。技術不足だけでなく、「恐怖心が拭えない」というメンタル面も指摘を受け、競馬学校1年時には“留年”を言い渡された。

 同期が先輩になり、後輩だったはずの年下が同期に。それでも、父からは「留年してまで訓練させてもらえるのは感謝すべきこと」と励まされ、こうした苦境を乗り越えた末に、1年遅れの“28期生”として騎手デビューという夢を叶えたのだった。

 そして、デビュー後の菱田騎手を支えたのが所属厩舎の岡田調教師。家族ぐるみでサポートを受け、厩舎スタッフにも様々な手助けをしてもらいながら10年の騎手人生を歩んできた。

 こうして迎えた11年目、ひとつの恩返しを果たしたのが2月のダイヤモンドS。恩師が手掛けるテーオーロイヤルでG3を勝ち、これが自厩舎の馬での重賞初制覇。レース後には「日頃から感謝しかない。師匠の馬で勝てて、僕自身本当に嬉しいです」と喜びを口にしている。

 そんな師匠の馬とともに挑むG1の大舞台。勝てば菱田騎手にとっても初のG1制覇となるが、実は岡田厩舎としても開業20年目にして悲願のG1初制覇となる。自身を競馬の世界に導いた思い出のレースで、騎手人生を支えてくれている恩師に大きなプレゼントを持ち帰ることができるか。キャリア最大の大一番と言っても過言ではないだろう。

 ただし、ライバル勢も強力。中でも注目は、同世代の菊花賞馬・タイトルホルダーとの激突だ。

 実は昨年秋、菊花賞に登録をしていたテーオーロイヤルだったが、1/5の抽選に漏れて無念の除外に。菊花賞前日に行われた兵庫特別(2勝クラス)を快勝すると、その強さから“幻の菊花賞馬”と呼ばれたりもした。

 菊花賞馬と幻の菊花賞馬がついに激突……。しかも、タイトルホルダーの鞍上・横山和生騎手は、競馬学校・騎手課程の27期生。入学時は同期だった“先輩”と、ともに初めてのG1勝利をかけて戦うことになる。

 さらに付け加えると、“菱田少年”が騎手を志すキッカケとなった2004年の天皇賞・春。このレースを制したのが、イングランディーレに騎乗した横山典弘騎手であった。

 騎手を志すキッカケとなったレースに師匠が管理する馬で挑み、人生を変えるほどの衝撃をもらった憧れの騎手の血を引く息子と、キャリア初のG1制覇をかけて激突……。

こんなドラマのようなシナリオを、ハッピーエンドで結ぶことができるか。菱田裕二騎手とテーオーロイヤルの挑戦から目が離せない。

(文=木場七也)

<著者プロフィール>
29歳・右投右打。
 本業は野球関係ながら土日は9時から17時までグリーンチャンネル固定の競馬狂。
ヘニーヒューズ産駒で天下を獲ることを夢見て一口馬主にも挑戦中。