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富士フイルムHD、バイオ薬受託生産の売上7千億円へ…卓越した戦略、米国の関税政策も追い風に
●この記事のポイント
・富士フイルムHD、2011年にバイオ医薬品の受託製造事業に参入し、約10年で年間売上高2000億円規模に
・4月、米製薬大手との間で総額30億ドル(約4200億円)超の契約を締結したと発表
・製薬会社の幅広いパイプラインを開発初期段階から商業生産まで一貫して支える「End-to-End」のサービスを提供
米国トランプ政権が医薬品への関税導入の検討を進め、世界の製薬業界が大きな影響を受ける可能性が増すなか、早い段階から米国内に製造拠点を稼働させている富士フイルムホールディングス(HD)の存在感が高まっている。同社は2011年にバイオ医薬品の受託製造事業に参入し、約10年で年間売上高2000億円規模にまで急成長を遂げ、現在はバイオ医薬品の受託生産で世界4位に位置するとみられている。4月には米製薬大手リジェネロン・ファーマシューティカルズとの間でバイオ医薬品の受託生産について総額30億ドル(約4200億円)超の契約を締結したと発表。富士フイルムHDの米ノースカロライナ州の工場で生産する。同社は2030年度にバイオ医薬品の受託生産事業の売上高を7000億円にまで引き上げる計画を掲げているが、いかにして同社は短期間で同事業の世界的大手にまで上り詰めることができたのか。また、なぜ同社は競合他社に先駆けて米国における製造拠点稼働を進めて、結果的に米国政府による関税導入の影響を受けないかたちになりそうなのか。富士フイルムHDに取材した。
●目次
写真フィルムの製造で培った技術も活用
バイオ製薬受託生産事業の急成長の背景には、どのような取り組みがあるのか。富士フイルムHDは次のように説明する。
「当社は2000年代前半における写真フィルム市場の急激な縮小を受け、主力であった写真フィルム事業からの大胆な事業構造の変革を実施しました。新規事業の創出の一環として、まだバイオCDMO(開発製造受託)市場の黎明期であった2011年にこの事業に参入しました。主要市場である欧米を中心にM&Aを活用し、対応モダリティ(抗体医薬品・遺伝子治療薬などバイオ医薬品の種類)も拡充してきました。
今後の市場成長を見据え、2020年にデンマーク拠点での大型設備投資を決めて以降、自社設備への大規模な投資を次々と決めており、事業参入以来の累計投資額は、現在進行中の設備増強計画を含め、1兆円を超えています。顧客である製薬会社が立地し、バイオ医薬品の需要が大きい主要市場の欧米を中心に製造拠点を持ち、中小から大規模の製造設備を揃え、製薬会社の幅広いパイプラインを開発初期段階から商業生産まで一貫して支える、『End-to-End』のサービスを提供できるのが当社の強みです。
細胞を扱うバイオ医薬品の製造は、小さな環境変化にも影響を受けるため、高度なバイオ技術に加え、品質管理技術を含むさまざまな技術や大規模な設備が求められます。当社は、M&Aで獲得した設備に加え、写真フィルムの製造で培った『一定条件下で同一品質のものを製造し続ける技術(一定条件製造技術)』や高度なプロセスエンジニアリング技術を応用することで、高い生産性を実現し、このバイオCDMO分野においても高い競争力を発揮しています」
顧客の製薬企業に近い場所に開発・製造拠点を構える
米国の高関税政策で世界的に医薬品業界は影響を受けるとみられているなか、富士フイルムHDが2011年の段階からノースカロライナ州で工場の建設を進めてきた理由は何か。
「2011年参入当時からノースカロライナに拠点を有し、その地域でバイオ産業のエコシステムが良く機能していることを知っていました。また、当社は、事業参入当初から、顧客の製薬企業に近い場所、主要市場の欧米を中心に開発・製造拠点を構えることで、迅速かつ効率的な生産体制を構築し、顧客ニーズに柔軟に対応することを戦略としてきました。米国はバイオ医薬品の最大の需要地である一方、米国内でのCDMOによる生産能力は小さく、当社の戦略上、米国に設備投資を投じるのは自然な選択でした」
米国の高関税政策による影響はあるのか。
「当社のノースカロライナの新拠点の商談が順調に進んでおり、米国関税の動きは短期的には、米国内で生産能力増強を進めてきた当社にとって追い風となっています。ただし、関税政策は一つの契機にすぎず、前述のとおり、当社は関税政策が話題に上る以前から米国への大型投資を進めてきており、需要地の近隣で不足している生産能力を補うという当社の施策が結果的に時流に合致したと考えています」
「Kojo-X」のアプローチが高く評価
ノースカロライナ州の工場における製造分の受注は順調に積み上がっている。
「2021年に発表した第一次投資設備は、今年の第2四半期(10~12月)の稼働開始に向けて順調に準備を進めています。第一次投資で導入する大型細胞培養タンク(2万ℓ)×8基は全て、すでに発表したジョンソン&ジョンソングループのヤンセンサプライグループ、リジェネロンとの製造契約締結により、長期にわたって成約済みとなりました。昨年4月に発表した追加投資分(2万ℓ×8基)は、2028年の稼働を予定しており、順調に商談を進めています。
当社のノースカロライナ州の工場は、高い生産性と各種認証取得実績(トラックレコード)があるデンマークの拠点と設計・設備、生産フロー、システムを共通化することで、拠点間の迅速な技術移管を実現するアプローチ『Kojo-X(コージョーエックス)』による設備増強です。高い品質を保ちながら建設リードタイムの短縮化を実現しています。ノースカロライナの新拠点の稼働前に、大型の受注をいただけたのは、我々の『Kojo-X』のアプローチが高く評価されたと考えています」
富士フイルムHDは2030年度にバイオ医薬品受託製造事業の売上高を7000億円に引き上げる計画を発表しているが、今後のさらなる成長に向けた取り組みに衰えは見えない。
「まずは進行中の設備投資による生産能力増強と顧客の獲得を確実に完遂します。その上で、これまでイメージングや医療分野で培ってきたAIやセンシング等の独自技術をベースに、生産性向上を中心とした研究開発を自社の研究所で取り組み、差別化を図っています。
2027年に、富士フイルム富山化学の工場内(富山県)に、当社国内初の大規模なCDMO拠点の稼働を予定しています。富士フイルム富山化学の医薬品(低分子医薬)の知見・技術と、当社バイオCDMO事業のバイオ医薬品の知見・技術を融合し、将来的な成長が見込まれる次世代の抗体医薬品である『ADC(抗体薬物複合体)』にも対応していきます」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)
動画興隆期!マガジンハウスの動画戦略とは?
雑誌や書籍作りで培った出版社のクリエイティブ力やブランド力が、いま注目されています。本連載では、世の中のマーケターに向けて、さまざまなテーマでいまの時代における出版社のアセットやコンテンツ作りを紹介しながら、出版業界を活用するためのヒントをお届けします。
前回は、「動画」をテーマに、雑誌「BRUTUS」の取り組みを紹介しました(記事はこちら)。今回は、多様な雑誌ブランドの名のもと、個性的な動画を世に出し、業界をリードするマガジンハウスの動画戦略について事例を交えながらお伝えします。
ゲストは、雑誌「BRUTUS」編集長の田島朗(たじま・ろう)氏と、マガジンハウスのビジネスプロデュース部部長の長勲(ちょう・いさお)氏。聞き手は、動画をはじめとしたデジタルソリューション開発を進めている、電通出版ビジネス・プロデュース局(以下、出版BP局)の中村一喜(なかむら・かずき)氏です。
マガジンハウス
anan、POPEYE、クロワッサン、BRUTUS、Tarzan、Hanako、GINZA、CasaBRUTUS、ku:nel、&Premiumの定期刊行雑誌をはじめ、書籍、ムック、ウェブマガジンなどを幅広く手掛ける、日本を代表する出版社。

マガジンハウスの雑誌ブランドは、「メディアも持っているクリエイティブ・ブティック」
中村:いま動画に力を入れるメディアが増えていますが、マガジンハウスは雑誌ブランドにおいて、どのような動画戦略を描いているのか、お話を伺わせてください。
長:当社では、2年前にBRUTUSが先陣を切って動画制作に取り組み、「BRUTUS ORIGINAL MOVIE」をスタートしました。これが成功したことで、anan、POPEYEなど動画に力を入れる雑誌ブランドが増えてきました。
マガジンハウスは、定期刊行している10の雑誌ブランドを有しており、さまざまなライフスタイルに合わせて多彩な動画を作れることが強みです。僕たちは、広告主に向けて、マガジンハウスの雑誌ブランドは、「メディアも持っているクリエイティブ・ブティック」だと考えてほしいというお話をしています。

長:通常、企業がCMを打つ場合、制作と、流す媒体の両方を考えなければなりません。そこをマガジンハウスは一括で引き受けられる。さらに、広告を出すプラットフォームも、すでにある程度のファンがいるのでリーチも望めます。
中村:広告において、いまでも主要な動画広告コンテンツというとテレビCMですが、多くのファンがいるマガジンハウスのメディアに広告を出すということは、テレビCMとはまた違った価値がありますよね。
長:そうですね。広告という点で雑誌の価値を突き詰めて考えると、世界観と影響力の2つがあると考えています。世界観とは、雑誌で紹介されると、商品やサービスがよく見えて、すてきだな、欲しいなと思ってもらいやすい。影響力とは、雑誌に載ると商品やサービスのサイトのページビューが得られるといった、数字的な価値です。
動画に力を入れることで、マガジンハウスの雑誌ブランドは、SNSのフォロワーも大幅に増えています。InstagramなどMeta系のプラットフォームは、これまでの運用方法ではフォロワー数が伸びにくい環境なのですが、BRUTUSのInstagramは、平均して毎月約5000〜6000人のフォロワーが増え続けていて、この1年では、前年比で約130%増加しました。他の雑誌でも、ananは約150%、POPEYEは約120%と、いずれも如実に成長スピードが上がっています。YouTubeチャンネルについては、BRUTUSのフォロワーは、以前は2000人程度だったのが、2年間で10万人を狙えるところまで成長しています。
中村:動画施策の効果が、マガジンハウスのさまざまなメディアに好影響を与えているわけですね。広告主目線で見ると、自社商品を自社メディアで紹介するのは「自己紹介」で、出版社とのタイアップは「他己紹介」です。自己紹介はどの企業も行いますが、それだけだと限界がある。そのときに他己紹介を加えることで、商品やサービスへの興味喚起が図れることは、データでも表れています。ですから、私たちも広告主に対して、出版社とのタイアップコンテンツがいかに重要かをどんどん伝えていきたい。そのとき、マガジンハウスは広告主にとって頼りになるパートナーの一社であると考えています。
田島:他にも、BRUTUSはBtoB事業として、2022年にクリエイティブ・ブティック「PB」を始動しました。これは、BRUTUS編集部が持つクリエイティブ力を、企業のさまざまな課題解決に生かしていこうという取り組みです。BRUTUSと外部クリエイターが共創しながら、広告プロモーションやイベントの企画、商品開発、メディアの企画・運営を手掛けています。
中村:こちらは、BRUTUSを全面的にアピールしていくわけではなく、BRUTUSがこれまで培った経験や人脈を生かしていくわけですね。
田島:おっしゃる通りです。「PB」は、すでに大きな売り上げを上げていて、現在は新規受注ができないほどです。また、BRUTUS発の新しいメディアとして「BRUTUS mapzine」もスタートしました。「地図連動型アプリメディア」と呼んでいるのですが、BRUTUSが過去に取材したスポットが地図で検索できるものです。
なぜ「メディア」なのかというと、編集部からアプリに向けて定期的にスポットがマッピングされたマイクロコンテンツが届く仕組みになっている。雑誌ができるいままでになかった取り組みとして、力を入れているプロジェクトの1つです。

人間のいろいろな欲望に根ざしている雑誌であることを、動画で端的に表現
中村:動画について、マガジンハウスは、社内でオリジナルコンテンツを制作するだけでなく、企業との共創にも力を入れていらっしゃいますね。例えば、KDDIが運営する「ヒルミルマガジン」。これは、いろいろな雑誌の企画を動画形式で配信するもので、BRUTUSは、2024年4月から参加されています。
田島:2023年5月に「BRUTUS ORIGINAL MOVIE」をスタートして、1年が経過しようとしているころに、「ヒルミルマガジン」のお話をいただきました。ちょうど特集連動のオリジナル動画制作が一周したタイミングで、いままでとは違った表現のコンテンツを作りたいと思ったのですが、予算とリソースの課題があったのです。
「ヒルミルマガジン」はKDDIと複数の媒体が参画しているコラボレーションですが、「ちょっとしたひとやすみに すきなものに出会えたら それは特別な時間になる」をコンセプトに、スマホでの新たな体験価値の創出を目指して、その雑誌ならではのコンテンツを「動く雑誌」として発信しています。商品を直接的に動画内で訴求するのではなく、番組提供のような形でスポンサードしていただいています。おかげさまで、BRUTUSらしい動画を自由に企画制作できています。
中村:珍しいケースですよね。どのようなコンテンツを作っていますか?
田島:すでに50本ほど制作したのですが、「観るBRUTUS」をテーマに、同誌の人気特集である「居住空間学」や、連載「自分史上最多ごはん」を動画にしました。さらに、これまで雑誌では行っていない新たな企画として「一問即答!」を配信しています。

田島:特に、「一問即答!」は、大きな反響がありました。このコンテンツは、シェフ、スタイリスト、作家など、いろいろなジャンルの人が登場し、さまざまな質問に答えていくものです。人選のバリエーションや動画のトーンがBRUTUSらしく、人間のいろいろな欲望に根ざしている雑誌であることがとても端的に表現できていると思います。再生回数も非常に伸びて、KDDIさんからも高い評価をいただきました。

マガジンハウスの一番の武器は、ブランドポートフォリオが多様であること
中村:他の動画事例としては、サントリーの「ジャスミン焼酎〈茉莉花(まつりか)〉」(以下、茉莉花)のキャンペーン「あたらしい心地いいに会いにいく。」に、マガジンハウスはクリエイティブパートナーとして参加していますよね。
長:茉莉花はいろいろなライフスタイルの人に積極的に楽しんでほしいという狙いがありました。積極的に心地いい生活を体現している人たちを介して茉莉花を表現するという方針の元、電通のクリエイティブチームの方々に声をかけていただき、サントリーさんが単独で施策をやるよりも、多様な雑誌があるマガジンハウスと共にコンテンツ施策を実施した方が良いのではないかということから実現しました。本キャンペーンには、マガジンハウスが刊行する8つの雑誌が参加しています。
マガジンハウスの一番の武器は、ブランドポートフォリオが多様であることです。ラグジュアリーもあれば、日常的なものもあれば、男性向け、女性向け、ウェルビーイングのメディアもある。マガジンハウスの雑誌ブランドそのものが、さまざまな切り口で積極的に心地いい生活を体現しているという考えの下、普段各雑誌ブランドに出演してくれている方々を起用しました。それぞれの雑誌のキャラクターが横並びであり、全体で1つの世界観が表現される。この案件を通してマガジンハウスがどういう会社なのかよく分かったと言われることがとても多いです。われわれとしても、マガジンハウスの各雑誌のブランド力を改めて確認できました。
中村:ライフスタイルの多様化がより進む中で、マガジンハウスのいくつかの雑誌を組み合わせて表現する企画が増えていると感じます。アサヒ飲料の新「Wonda」とマガジンハウスの3雑誌(anan・POPEYE・BRUTUS)がコラボレーションしたショートドラマも、その1つですよね。
長:これは、「Wonda」のブランド刷新のタイミングでいただいた案件です。クライアント案件のドラマ仕立ての動画は初めての試みでした。動画では、架空の「マガジンハウス編集部」を舞台に、若手、ベテラン編集者、インフルエンサーが「Wonda」をきっかけに新しい生活に一歩踏み出していく様子を描いています。
ドラマのタイトルは、「マガジンハウス、Wondaはじめる。」です。普通、広告企画のタイトルに社名を入れないですよね。ユニークな企画で、マガジンハウスだからできた企画なのかなと思います。

動画を通して、グローバルにマガジンハウスのクリエイティブを伝えたい
中村:マガジンハウスは今年80周年を迎えるわけですが、どのような企画を考えていますか?
田島:これまでマガジンハウスがどのように世の中のカルチャーをリードしてきたかを伝えることはもちろん、今後未来に向けて私たちがどのようなコンテンツを作って、どのように届けていくのかが感じられるイベントにしたいと考えています。その手段の1つとして動画制作もあると考えています。
長:アワードなどのイベント配信を予定しています。各ブランドから80周年関連の動画をどんどん配信していく予定です。
田島:動画の良いところはわれわれのクリエイティブを海外の読者にもすぐに届けられることです。紙を作るのと同じ感覚で編集部が動画を作れるようになり、国内外にマガジンハウスのクリエイティブを届けるのが次に目指すステップです。そういう意味では、80周年の企画としてグローバルを見据えた施策も実施できればと考えています。
中村:今後ますます、マガジンハウスの各雑誌のカラーが、より明確に打ち出された動画が広く配信されていきそうで楽しみですね。本日はありがとうございました。

アートの世界を覗いたら、マーケティングの世界の景色が変わった。

電通・宮川裕による連載「マーケティングの世界の住人が、アートの世界を覗いてみた。」
キュレーターの南條史生さんは、「ヨーゼフ・ボイスが社会を変える行為を社会彫刻と名付けたように、極めてクリエイティブな仕事を“現代アート”だと定義するなら、それはもはや絵画や彫刻に限らない。マーケティングの仕事も、日々の業務も、思考のプロセスも、創造的であれば現代アートたり得る」と言った。
東京国立博物館の松嶋雅人さんは、「マーケティングや広告の仕事だけではなく、博物館も含めて共通して言えることだが、本来、“枠や制限のないはずの場所”が、いつのまにかこうあるべきみたいな前提に縛られてしまっている。でも今、世界中の博物館や美術館が変わろうとしている」と言った。
2人が指摘するのは、美術業界にとどまらないところでの、価値観のアップデート、原動力となるクリエイティビティ、そして実行力の重要性。僕にとって、それはあたかも垣根を超えた予言のように感じた。
では、マーケティングの世界の住人は今どうしているのか。気心の知れたマーケティングプランナー、僕の同期の佐藤尚史と平嶋雅にマーケティングの現在地、そしてこれからを聞いてみた。
◆社会の変化とマーケティング
宮川:電通は、事業会社であるクライアントに対しマーケティングサービスを提供するマーケティング支援会社という側面を持っています。その中において、僕ら3人の所属部署は、ずばり“マーケティング”の名を冠しているわけだけど、その立場で今のマーケティングというものをどう捉えているのか、そんなところから聞いてみたいです。
佐藤:まず僕らが入社した2001年って、まだスマホもなければ、ロボット掃除機も普及していなかったよね。生活の不便を解消する余地が、まだ多く残されていた時代。生活のマイナスをゼロにするような機能のイノベーションが続々と出てきた。そのニュースをどうやって最適に届けるかが主流だった。でも今はそうじゃなくて……。モノが世の中にあふれていて、アジア圏からも似たような商品が安価に入ってくる。つまり、多くの人がもう満たされている状態。
そのような中、われわれはクライアントのプロダクトなりサービスのことを伝えなければならない。マーケティングプランナーとして、昔であれば「お困りごと、ありますよね」「それを解消するのがこのプロダクトですよ」と、ある種のペインポイントを起点にプランニングできた。ところが満たされた時代である今は、そうはいかない。マーケティングは“ゼロからプラスへ”。つまり、人生をより豊かにするとは何か?を考え、リードしなきゃいけない。そこが大きな転換点であり、面白い挑戦だと思っています。
宮川:マーケティングプランナーとしての振る舞い方も変わったと?
佐藤:昔はセオリーというものがあった。インサイトを掘って、商品の最適な見せ方を考えて、それをクリエイティブメンバーに伝え、表現としてジャンプさせるという型。それが、ゼロからプラスへという時代になると、そのやり方が通じないところがあって、まず自分でやり方をつくるところから始めなければならないという感覚がある。既存のフレームだけでは太刀打ちできなくなってきていて、異種格闘技のような状態というか。そして、どのツールを使ってどのデータを見るとどんな幸せを探り当てられるか、その方法論もたくさんある。この複雑性は僕らが若手だった頃とはまったく違う。
平嶋:ゼロからプラスの話を聞いて思い出したけど、今回の連載第1回で、文明と文化の対比について書いていたよね。文明は不便を克服するための技術や知恵の蓄積、文化は地域性や多様性の発露、という話。あれはすごく面白かった。マーケティングも、かつては文明的なもの、つまり課題解決や効率化を重視していたと思う。でも今は、より“文化的な方向にシフト”してきているんじゃないかな。多様な価値観の中で、どう意味や価値をつくっていくか。そういう仕事になってきたと肌で感じています。
少し話はそれるけど、あだち充先生の「クロスゲーム」という漫画があって。甲子園を目指している主人公の幼なじみの女の子が凄腕のピッチャーなんだけど、男子の硬式野球部では試合に出られないから、バッティングピッチャー(バッティング練習の時にボールを投げるピッチャー)としてチームを支えるんだよね。仲間の弱点や良さを見つけて、それを改善したり伸ばしたりするような球を投げることで、チームを強くしていく。
今のマーケティングプランナーって、そういうバッティングピッチャー的な立ち位置が求められていると思う。昔は電通のプランナーとして「打席に立つ」という言い方をよくしていて、バッターに例えることがよくあったよね。そして如何にホームランを打てるかという価値観での評価が多かったと思うのだけど、むしろ今は、クライアントの強みや課題に合わせてボールを投げることで、それが最終的にクライアントのホームランにつながるかどうかが勝負。そういう伴走型のバッティングピッチャー的な在り方こそ本質的に必要になってきたと感じています。対社会においても同様に文化の多様性をひもとき、ここに投げてみよう、ここに投げてみようと模索し、大きなうねりをつくっていくのもマーケティングの仕事だと思っています。文明的というより、まさに文化的。
佐藤:従来はインサイトといえば、おおむね消費行動にまつわるインサイトを指すことが多かった。商品が売れるための消費者としてのツボ。でも今はそれだけじゃ足りないと感じています。文明から文化へ、という話にもつながるけれど、社会に根付いている価値観や文化的な背景、「カルチャーインサイト」とか「ヒューマンインサイト」と言ってもよいものと、プロダクトをどうつなげていくか、そういうところを探索していく仕事に変わりつつあると言ってもいいのかもしれない。世の中のニーズに応えるというよりも、世の中への提案という在り方。
平嶋:まさに、僕も同じようなことを考えていた。今回の連載で「現代アートに向き合うとは、正解を求めることではなく自分はどう考えるのかという意見表明をすること」とか、「作品そのものより、それを見た人がどう感じたか、どう考えたかのほうがずっと大事」といったインタビューコメントがあったよね。そこにプロダクトと顧客の関係性に似たものを感じて共感した。われわれの仕事も、もっと現代アートのように既存の枠組みを超えていくことで、人の新しい意識や行動を生み出すものでありたい。宮川の書いた連載を読んでいて、そんなことを思った。
宮川:南條さんも、「クリエイティビティを発揮する仕事はすべて現代アートである」といった主旨のことをおっしゃっていた。マーケティングの世界の人がアートの世界を参照することで、新しい視座を得られることはいろいろとあると思っています。
◆マーケティングの時間軸
宮川:僕はアートというものと関わるようになって、長いスパンで考えることの意義をとても意識するようになりました。松嶋さんの受け売りなんだけど、僕たちはどうしても自分の人生が100年程度なので、せいぜいそのくらいのスパンで考えがち、自分の人生という長さの中に閉じがち。だけどアートの世界ではもっともっと長い時間軸で物事を捉えていて、「われわれは歴史の途中にいるにすぎない」と。
佐藤:その話に被せるとすると、僕らが入社した当時ってマスメディア全盛の時代だったよね。シェア・オブ・ボイスの確保が主要な勝ち筋だった。でもそれって、今振り返るとちょっと特殊な時代だったのかもしれないな、と。僕はむしろ今のやり方のほうが本来の姿に近いんじゃないかと思っている。
平嶋:本当は当時も今のようなアプローチをとるべきだった?
佐藤:そうかもしれない。メディアの質や量だけに頼るのではなく、プロダクトごとにゼロベースで考えて、生活者にどう伝えるのが最適なのか一つ一つのコミュニケーションをつくっていく。そういう手づくり感というか、細やかな個別対応こそが本来のマーケティングのあり方なんじゃないかと思うんです。
宮川:そう考えると、マスが台頭した時代、一億総○○時代というのは、ほんの一時期に過ぎないのかもしれず、佐藤が言っている考え方のほうが時代の状況として自然なのかもしれないね。アートの世界の人たちの、何千年という単位で文化財を受け継いでいく価値観から学べることって、僕たちマーケティングプランナーにとっても大きいのではないかと思う。一時的な時代の熱狂だけを見るのではなく、もう少し長い目で物事を捉えることの大切さというか。
佐藤:そうだね。ロングスパンで物事を見ると、マーケティングも目の前の成果を追いつつ、「今のやり方をどう磨き、突き詰めていくのか」という長期視点が当然生まれてくる。その上で、僕はマーケットという意味においてもカルチャーがより重要になってくる気がしていて。大衆が常に同じ番組を見る、同じ広告を見るという時代ではないけれど、でも「鬼滅の刃」が映画で400億円の興行収入を叩き出すようなマスレベルのヒットは、確かに生まれている。コンテンツや文化そのものがマスになり得る時代。だから僕は、マーケティングにおいてカルチャーというレイヤーにももっと目を向けるべきだと感じているんです。

宮川:長いスパンで物事を俯瞰する。その上で大事なこととして、“持続可能性”の観点が必然的に現れてくると思っています。われわれは、クライアントありきの立場ではあるけれど、この一つの地球における持続可能性を前提とするならば、伴走者として提案すべきこと、そして提案すべきではないことという、ある種の審美眼みたいなものも生まれてくるのではと思っていて。
平嶋:CX(Customer Experience Transformation:顧客体験の変革)領域でも、時間軸で価値を考えるのが基本。今この商品がどんな意味を持つのか、そして将来的にその人の人生にどんな影響を与えるのか。CXと社会の未来像は不可分なので「どんな社会を目指していくか?」の設計も必要になってくる。
佐藤:電通グループは「B2B2S」(Business to Business to Society)を掲げているけれど、最後のSを「ソサエティ」ではなく「サステナビリティ」と読み替えてもいいんじゃないかな。もちろん現実的に短期の成果にしっかりと向き合いつつ、長期の視点を織り込んで社会に対してどんな影響を与えるのか。その意義を可視化することで、クライアントのビジネス自体の持続可能性を高めていく。そんな提案がますます求められるようになるのかなって思います。
それに加えて、たとえば自分がSNSで「社会をよくしていこう!」と発信しても、なかなか届かない。でも、企業やプロダクトのメッセージに乗せれば、遥かに大きな形で発信することができる。そこに生活者の気持ちがピタッと重なって、社会に届いたときの手応え。それってマーケティングプランナーとして働くからこそ味わえる醍醐味の一つなんじゃないかな。
◆マーケティングプランナーの持続可能性
宮川:今までの話を踏まえて、マーケティングプランナーとしての存在価値、その発揮の仕方について。マーケティングプランナーの役割や立ち位置をどう捉えるか、それは人によってずいぶん違うのだろうなぁと思っていて。

佐藤:今のマーケティングのスタンダードって、客観的なデータを使って精緻に最適化していくアプローチだよね。たとえば行動ログを分析してインサイトを導き出すとか、A/Bテストを繰り返して成果を改善していくといったある種サイエンス主導のやり方。それ自体は必要不可欠だし、僕自身も学び続けているけれど、これを突き詰めていくと、個性が埋没していく側面もあると思っている。どの会社も同じようなスキルを持ったマーケティングプランナーがいて、同じようなフレームで戦略を立てていく。結果的にアウトプットも似通ってしまうかもしれない。
だから僕はあえて、そこにもう一つ別の軸を掛け合わせたいと思っていて、それが“人文知”なんだよね。歴史や哲学、心理学、行動経済学など、人間の思考や行動の本質を知るための知識。たとえば「ホモ・サピエンスはこういう場面でこう動く傾向がある」といった視点を、自分の中にナレッジとして持っておく。そういった教養が、データとは異なる文脈から発想を飛躍させるためのジャンプ力になると考えています。
マーケティングプランナーはクリエイターとは違ってニュートラルでいなければならない、という暗黙の了解みたいなものがなくはない気もする。個性が立ってはいけない、みたいな。だけど僕はめちゃくちゃ個性を立てて、「人文知にもとづいたジャンプは任せて!」というフラグの立て方はしている。

平嶋:電通の強みはそうした多様さの“マッチング力”だと思っていて。何かと何かをつなぐことで生まれるインパクト。それに気づいたのはクライアント先に出向していた頃。異なるミッションを持った部門同士が噛み合わずにいたとき、それぞれの目指す方向を一段上の概念でまとめてみたら、不思議と協力関係が生まれたことがあった。そういう経験から、一見相容れないものをどうつなぐかという視点を持つようになりました。
電通のある役員が「電通の強みは“矛盾吸収力”だ」と言っていてすごく共感した。合うもの同士をマッチングするというよりも、相反するように見えるもの同士をうまく包み込んで新しい概念として再構成していく。部門間のアサインの調整でも、社会とサービスの接続でも、そうしたマッチングを意識して設計している。僕自身、建築学科出身ということもあって、物事を立体的に積み上げて一つの価値構造にしていくのが好きで。
佐藤:電通も最近は本当に多様な人材が入ってきていて、背景もスキルもそのバラバラさたるや。運動部出身もいれば起業経験者もいるし、プログラミングに特化していた人や、カルチャー寄りで広くつながりを持っている人もいる。多様性って耳ざわりはいいけれど、実際にチームで何かを決めようとすると全然まとまらない(笑)。
矛盾吸収力というのを僕なりに引き寄せて考えると、「山の頂上、ゴールイメージは共通させる」こと。ただ、メンバーの山の登り方、各々アプローチの仕方は違っていてよくて、目的が明確に共有された上で登り方が違うからこそ化学反応が起こり得る。それがディレクションする、ということだと思っています。
平嶋:そのゴール設定が、全員にとって「目指したい」と思えるものであることが重要ですよね。その設計が、まさにマッチング力の見せどころ。
宮川:そこに大きな構えで俯瞰する価値観が備わっていれば、メンバー全員にとっての目指したいものと、「社会のため」ということが合致するのかもしれない。
平嶋:さらにマッチング力の応用、経営にも通じる視座として、必ずしも全員が「同じゴールを目指している」と自覚しておらず、メンバーそれぞれが「自分のゴール」に向かって走っているつもりでも、結果的にそれが組織や社会全体にとって望ましい方向に作用させるという設計もある。そこでも包括的な大きな視野が欠かせない。
佐藤:冒頭の、人生をより豊かにするために「ゼロからプラスへ」、文明的というよりも「文化的な方向にシフト」、先ほどの、ゴールを共有しアプローチは各々で「結果的に化学反応を起こす」こと、それから宮川の以前の記事にもあった「アーティストが探究の根を伸ばす」こと、これらはすべて通底していると感じていて、まだ見ぬ価値、「こういうことはどうですか」と提案するということ。僕らが若手だった頃とは明らかに異なる在り方は、“アート思考”と言っていいんじゃないかな。
宮川:僕らもきちんと年をとっていると(笑)。ではこの流れで、今の若手メンバーとの接し方や、伝えていることは?
平嶋:僕はもう完全にバッティングピッチャー。そして繰り返しになるけど、常にマッチングを考えている。
佐藤:僕は「自分なりの世界の見方、スタンス、それは如何なく発揮していいんだよ」と伝えている。「それが戦略のユニークさにつながっていくんだよ」と。それから、雑談の中から相手の強さを引き出していったりする、予定調和ではないファシリテーション力。
宮川:模範解答みたいなものが存在している前提で、そこに向かって最速で到達するスキルと、偶発性も肯定し探究していく在り方、いわばアート思考の実践みたいなことはだいぶ違うからね。多くの人に培っていってほしいですね。
◆アートの世界を覗いたら、マーケティングの世界の景色が変わった。
宮川:同期ということもあって、つい話しすぎてしまったけれど、そろそろクロージングということで。
平嶋:「どんな社会をつくりたいのか?」という視点って本当は大事なのに、日々の業務に向き合っているとつい見失いがち。そういう中で、自分の仕事が社会にポジティブな影響を与えるものになったらいいなと思って、局内の有志メンバーで立ち上げた「おじ活研究所」っていうプロジェクトに参加しています。「おじ活」=おじさんの活動を研究するプロジェクト。40代の男性が社会的にもっとも幸福度が低いという調査結果があって。その要因の一つとして、家庭や仕事、後輩の育成など、いろんなものを背負っていて、自分の時間や楽しみが後回しになりがちなところがある。だから、「もっと楽しんでいい」「趣味に励んでもいい」という空気を社会に広げられたら、社会全体として幸福度が上がるんじゃないかと考えています。これは一つの企業で実現できることではないので、それこそ異なる立場や思惑を持つ複数の企業と一緒に、それぞれのやり方で同じゴールに向かって歩んでいけば、やがて社会が変わっていくかもしれない。そうした長期的な視点で、前向きなムーブメントをつくっていきたいと思っています。
佐藤:僕は「DENTSU DESIRE DESIGN(通称:DDD)」というプロジェクトに関わっていて、生活者の「欲望」を深く掘り下げる研究をしています。その中でも、僕が担当している分科会「FUKAYOMI」では、映画や小説、漫画といった物語を題材に、「なぜ多くの人の心を打ったのか」を読み解いている。大ヒットコンテンツは単に話題性やキャスティングだけで成功しているわけじゃなくて、クリエイターの個人的な「こうあったらいいな」という欲望があり、そこに観客が共感したり、価値観の変容が生まれたりするからこそ広がるんだよね。僕らはそうした欲望の変化を見つけて、定性的・定量的に読み解いていくことで、「未来に生まれるであろう欲望」の兆しを捉えようとしています。この研究の成果は、7月に書籍として出版される予定なので、ぜひ気になる方は手に取ってみてください、という宣伝でした(笑)。で、宮川は?
宮川:特に宣伝はないけど(笑)。僕はマーケティングプランナーという仕事柄、常に「相手にとって最適な答えは何か」が基本スタンスにあった。でもアートの世界に触れていると、「あなた自身はどう思うの?」って問いが常に飛んでくる。そこに戸惑いながらも、まあ楽しくやってます。だからこそ、今日こうして対話してみたかったわけで。
平嶋:今回宮川の書いた連載を読んで、「もっと創造的に枠を飛び出していい」って背中を押された気がする。
佐藤:僕らは普段、アートを意識して仕事しているわけじゃないけど、休日に美術館へ行ったり映画を観たりすること自体が、自分の思考の外へと出かけていく行為なんだよね。そこで感じたものを意識的に取り込むことって、すごく大切だと思う。そしてそれを仕事に還元することも、もっとやっていきたいと思った。マーケティングプランナーって、表現をつくるという意味でのクリエイターではないかもしれないけれど、企業やプロダクトが社会にどんな価値を提供できるかを考える上では、クリエイティブであるべき職種だと考えています。だから、マーケティングプランナーこそアートの視点も取り入れて、もっと大きな未来に導くような提案をしていくべきだなって思いました。
宮川:僕はアートの世界を覗いてマーケティングを捉え直すことをやっているのだけれど、今回マーケティングの世界の住人である平嶋と佐藤の話を聞いていて、南條さんや松嶋さんがおっしゃっていたことともつながっているなとあらためて感じました。今後もアートの世界の方々とお会いする予定なので、そこで得たものをまた持ち帰ってきたいと思います。

画像制作:岩下 智
【参加者募集】Do! Solutions Webinar「人的資本の活かしかた」7月24日開催
電通が運営する、ビジネス課題を解決する情報ポータルDo! Solutionsは、7月24日(木)に開催するウェビナー「経済学者とクリエイティブディレクターが紐解く 人的資本の活かしかた」の参加者を募集している。
変化の激しい時代、多くの企業が現状を打破し、新しいプロジェクトを成功させるための一手を模索している。しかし、「新たな挑戦を担う従業員がいない」と悩む経営者が少なくなく、「どうしたら人が動くのか」「従業員の力を最大限に引き出すにはどうすればよいのか」といった課題も浮かび上がっている。
本ウェビナーでは、経済学のビジネス活用を推進し、さまざまなメディアでも活躍中の大阪大学の安田洋祐教授と、“戦略”と“伝える力”で多くの経営者の伴走をしてきた電通 サステナビリティコンサルティング室のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター小野 総一氏が、それぞれの視点から「人的資本の活かしかた」を徹底解説する。

【概要】
日時:7月24日(木)14:00〜15:00
費用:無料
形式:Zoomウェビナー
登録締め切り:7月21日(月)17:30
定員:先着500人
■参加登録・セミナー詳細はこちらから
【プログラム】
第1部
戦略CDによる経営伴走アプローチについて
電通 サステナビリティコンサルティング室 小野 総一
サステナビリティコンサルティング室のご紹介/経営伴走アプローチのご紹介/個別事例のご紹介
第2部
SDG仮説 :人的資本を活かす新たな視点
大阪大学経済学部 教授 安田 洋祐
第3部
トークセッション「人的資本の活かしかた」
【登壇者プロフィール】
大阪大学経済学部 教授/エコノミクスデザイン 共同創業者
安田 洋祐(やすだ ようすけ)
1980年東京都生まれ。2002年東京大学卒業。最優秀卒業論文に与えられる大内兵衛賞を受賞し経済学部卒業生総代となる。米国プリンストン大学へ留学して07年Ph.D.(経済学)取得。政策研究大学院大学助教授などを経て22年から現職。専門はゲーム理論およびマーケットデザイン。政府の委員やテレビのコメンテーターとしても活動。20年に「経済学のビジネス活用」を目指してエコノミクスデザインを共同創業。編著「学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ」(NTT出版、2010年)、共著「日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議」(日本実業出版社、 2024年)など。
電通 サステナビリティコンサルティング室
エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター/シニア・ビジネス・コンサルタント
小野 総一(おの そういち)
マーケティング戦略を10年、クリエイティブを10年担当するハイブリッド人材として、事業戦略・商品開発からCM・プロモ・ウェブ・店頭・戦略PR・イベントをプランニングニュートラルに企画し、解決策を提供。直近は、経営層に伴走する取り組みや、事業開発・施設開発に携わるなど、広告以外の取り組みに領域を広げているのも特徴。受賞歴:ACCグランプリ、ADCグランプリ、ギャラクシー賞、カンヌ広告祭、アドフェスト、One Show、クリオ、モバイル広告大賞、デジタルサイネージアワード、交通広告グランプリ、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞。
外資系による日本企業の買収や大量株式保有で、日本の経済安保が危機に陥ることはあるのか?
●この記事のポイント
・外資系企業・ファンドによる日本企業のM&Aや大量株式保有の事例が増え、経済安保というキーワードが注目
・政府と東証は、外国人投資家による日本企業への投資増大を促進してきた
・外資系企業に大量の株を取得されそうな企業が、それを回避するために経済安保という言葉を持ち出しているケースも
近年、外資系企業・ファンドによる日本企業のM&Aや大量株式保有の事例が増え、経済安保というキーワードが注目されつつある。現在、日本航空(JAL)の持ち分法適用会社で空港の電力供給などを担うエージーピー(AGP)が豪金融サービス大手マッコーリー・グループからTOB(株式公開買い付け)の提案を受けていることが注目されているが、5月には太陽ホールディングス(HD)が株主である海外投資ファンドらから株式非公開化の提案を受けていることが明らかとなっている。2月にはエレベーター大手のフジテックの株式の約30%を香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントが取得していることも判明。日本のインフラやIT、防衛などに携わる日本企業に対する外資系企業の支配力が強まると、日本の安全保障が脅かされる懸念があるという見方が広まっているのだ。2022年には経済安全保障推進法が成立するなど政府も対応の動きをみせているが、背景には何があるのか。そして、経済安保の観点から、外資系企業による日本企業の株取得には警戒を要するのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
●目次
外国人投資家による日本企業への投資増大で株価上昇
まず、外資系企業・ファンドによる日本企業のM&Aや大量株式保有が増えた背景について、元ボストンコンサルティンググループ・経営コンサルタントで百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏は次のように説明する。
「日本では長きにわたり、企業経営者が株主のほうを向いた経営をせずに、従業員向けの経営を行い、現金があれば投資に使わずに、もしもの時に従業員に給料を払えるように内部留保をため込んでキープするといったことがまかり通る時代が続き、ある意味で経営者が企業を私物化してきました。そういう経営をしている限りは日本企業の株価が上がらないということで、2010年代頃から政府や東京証券取引所が主導するかたちで『もっと社外取締役を入れましょう』『ガバナンス改革をしなければならない』『PBR1倍を超える経営をしなければならない』『そういう努力をしないと上場廃止になりますよ』と言って“改革”を進めてきました。
その結果、外国人投資家による日本企業への投資が増えてきたおかげで株価が上昇したわけですが、今度は逆に『日本企業が外資系企業に乗っ取られる』という声が強まり経済安保という言葉が注目されるようになりました。こうした過去の経緯を踏まえると、ことさらに経済安保というキーワードが盛り上がっている点については、やや違和感を感じます。
また、過去の話ではありますが、かつて日本は日産自動車が経営危機に陥った際にフランスのルノーに約6000億円もの出資をしてもらい救済してもらい(1999年)、日本を代表する銀行だった日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)が経営破綻して一時国有化されていたところを、米国投資ファンドのリップルウッドに買い取ってもらったことがあります(2000年)。これによって経済安保が危機に陥るという状況は生まれなかったでしょう」
個々の企業と国全体の動きは、分けて考えるべきだという。
「外資による支配というものを制限しようという話が起きていますが、国全体で起きている危機というよりは、外資系企業に大量の株を取得されそうな企業が、それを回避するために経済安保という言葉を持ち出しているケースも多いように感じます。セブン&アイ・ホールディングス(HD)がカナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けていることをめぐり、『コンビニエンスストアは日本のインフラなのだから、経済安保の観点で買収を阻止しなければならない』という議論も出ていますが、そうした考えは正しいのか、もしくは今までの経営に問題があるので買収を仕掛けられているのかというのは、意見が分かれるところでしょう。
また、今年2月に香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントが約30%の株式を保有していることが判明したエレベーター大手のフジテックは、フジテックと創業家が不適切な取引をしていたとオアシスに指摘され、2023年に創業家出身の会長が取締役会で解任されるなど経営混乱が続いていましたが、結果的に創業家の色が一掃されて株価が大幅に上昇しています。そして、香港の投資ファンドがエレベーター大手という日本のインフラを担う企業の約30%の株式を保有することになったことで、日本経済全体にとって経済安保上の危機が増したのかといえば、微妙なところでしょう。個別企業の問題にすぎないという印象を受けます」(鈴木氏)
日本企業も海外にインフラを輸出
もっとも、すでにインフラや公共事業を担う事業者のなかには、外資系企業を株主に持つ事業者は少なくない。国内の航空業界で使用される航空機の多くが米国のボーイングやエアバスなど外資系企業のものであるし、個人や企業が使う生成AIモデルも、多くの場合、米国テック企業が運営するクラウドサービスのプラットフォーム上で動いている。
「例えば日立製作所はアジアや欧州の各国に鉄道インフラを輸出していますが、輸出先の国で経済安保の危機だという話にはなっていません。また、国内の公共施設にフジテックのエレベーターが数多く導入されているとは思われますが、日本の設備会社やインフラ関連のメーカー、工事事業者のなかには外資系企業・ファンドを株主に持つところは珍しくなく、だからといって現在、日本経済が危機に陥っているということはないでしょう。また、何千社もある上場企業のうちのわずか一部が外資系企業に支配されたからといって、日本の経済安保が危機に陥るとは考えにくいです。
もっとも、防衛やITの領域に関していえば、経済安保の観点から注意すべきであると考えます」(鈴木氏)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表)
