ものづくりへの情熱と生命力を宿した “動きだすドレス”の制作秘話

次世代のアートディレクションを模索するため、新進のアートディレクターが自由な表現のプロトタイプを発表する“NEWSPACE”プロジェクト。第5弾は、まるで生きているように動きだす不思議なドレス、“ZOETROPE DRESS”です。

作品を手掛けたのは、グラフィック・空間デザイン・商品開発など、ジャンルにとらわれずさまざまなアートディレクションを行う、くぼたえみ。
“ZOETROPE DRESS”が誕生したバックボーンと制作過程を詳細に明かします。


“アート”と“ファッション”の間にある“装置”をつくる

まずは、実際にドレスが動く様子を収めた映像をご覧ください。

 

紀元前、人は“道具”として服を生み出しました。
やがて人々は着るものに影響され、気持ちや態度を変化させるようになりました。
もしもドレスに命が宿って、人間を翻弄しだしたら?
そんな空想を作品にしました。

─ ZOETROPE DRESSの構想は、どのように考えついたのでしょうか?
ZOETROPE DRESSは、まるで生きているように動くドレスです。
ゾートロープというアニメーション技法を応用して制作しており、ストロボを規則的に当てると肉眼でも動いているように見えます。

今回の作品の発想の背景には、学生時代から続く個人活動が大きく影響しています。昔から装飾の持つ影響力にとても興味があり、テキスタイルのシリーズや“装い”をテーマにした立体作品などを制作してきました。

過去の作品
過去の個人作品

また休日には、より考えを深めたいという思いから、服飾の勉強会や染めや織りの職人さんのお話を聞かせていただく会などに参加しています。
そんな活動をしていく中で、紀元前から人々を魅了し続けてきた“衣服”が持つ原始的なパワーを表現してみたいと思うようになりました。

でも私はファッションの専門家ではないし、美しいお洋服はすでに世の中にたくさんある。そこで、アートディレクターの技術と、服づくりのプロフェッショナルの方の技術が掛け合わさった時に初めて実現できる、“アート”と“ファッション”の間にある“装置”のようなものをつくりたいと思いました。


古典的なアニメーション技法を応用した“動くドレス”

─ 作品名にもある「ゾートロープ」について詳しくお聞かせください。
 “ゾートロープ”とは、ギリシャ語で“生命の輪”という意味。まだ映像技術がなかった時代に発明された、原始的なアニメーション技法を指します。連続性のある絵を環状に並べて回転させ、隙間からのぞくことで、絵が動いているように見えるというものです。
現代では立体を用いたアニメーションをつくる手法にも発展。人の視線を断続的に遮断すると、目の前で立体自体が動いているような効果が得られます。

今回の作品
今回の作品。ドレスのパーツひとつひとつがアニメーションになるように連続した形になっている

“衣服に応用できそうな私の技術は何があるだろう?”と考えていた際に、学生時代アニメーションを制作していた経験からこの技法を思い出しました。もしかして、ゾートロープとドレスを組み合わせてみたら、誰も見たことがない不思議なものができるのではないか?そんな仮説のもと、本当に実現可能なのか、試行錯誤の旅が始まりました。


鬼才クリエイターとの協働で想像とジャンルを飛び越える

─ 今回ニットを担当したファッションデザイナーの方とはどのようにつながったのでしょうか?
企画書を書き、coromozaの西田拓志さんに一緒につくってくださる方がいないか相談をしたところ、圧倒的な存在感のニットの作品で国内外から注目を集めている丹治基浩さんをご紹介いただきました。

丹治基浩さんの作品
丹治基浩さんの作品

私は他者と協働する中で生まれる相乗効果やエネルギーにとても魅力を感じています。今回も丹治さんやカメラマンの山崎彩央さん、プロデューサーの錦木稔さんをはじめ、各分野のプロフェッショナルの方たちと制作したことにより、自分の想像を超えた作品を完成させることができました。
家庭用編み機と手編みを駆使して描かれるパワフルなニットの表情に、ぜひ注目してご覧いただけたらうれしいです。


約半年間におよぶ制作は試行錯誤と手作業による検証の繰り返し

─ 試行錯誤の連続だったとのことですが、具体的なプロセスを教えてください。

 

まずはじめに、ニットでアニメーションを作った時の見え方の検証をしました。ドーム状の立体に、アバウトに連続した形状のニットパーツを取り付け、回転させました。(Step 1)

次に、ドレスの形状×ゾートロープの仕組みが成立するか検証するため、実際の約1/6サイズで実験をしました。ドレスの型紙を作成し、円周率などを使いながら、ドレスのパーツが連続して動くための配置を決めていきました。(Step 2)

その後、どんな形状のパーツがアニメーションになった時に効果的か、粘土を使用して模索しました。(Step 3)

そして、原寸大での調整。実寸のパーツで実験したところ、1/6サイズでは成立していた尖った形状が、本番の大きさだと重力によって垂れてしまうことが分かりました。(Step 4)

さまざまな形を試し、最終的に渦巻きの形状にたどり着きました。(Step 5)

そうして出来上がったドレスを使用し、映像と写真に収めました。

今回の作品

まだこの世界にない、カテゴライズできないものづくりを

─ アートディレクターという職業は、これからどのように進化していくと思いますか?
アートディレクターの役割や求められるスキルは、人々の生活環境の変化に伴い年々広がってきていると感じます。
平面や立体、空間などの包括的なディレクションを求められる案件も増えてきました。
例えば、食品会社さんのオリジナルスイーツブランド創設のお仕事では、コンセプトから店舗デザイン、グラフィックやパッケージ、ホームページなど総合的につくらせていただいたり、パティシエの方と商品を一緒に考えるなどしました。

パティスリーGIN NO MORIの事例

お仕事や作品づくりを通じて、さまざまな職業の方と協働していく中で感じるのは、柔軟であることの大切さです。

例えば、真面目なものと緩いものを掛け合わせてみる。
自国の文化の素晴らしさを知った上で、他国のすてきな文化を取り入れていく。
先入観を捨てて、まずは踏み出してみる。

そうやって物事の境界を飛び越えながらできるものは、まだどの世界にもない、唯一無二のものではないかと思います。
仕事でも個人制作でも、やったことのないことに挑戦しながら、カテゴライズできないものたちをつくり続けたいです。

今回の作品“ZOETROPE DRESS”も、発展・展開していきたいと思っています。舞台演出や映像作品への活用など、興味を持っていただいた方はぜひinfo@newspace.galleryまでご連絡ください。

「ZOETROPE DRESS」STAFF LIST
・Art Director:くぼたえみ
・Knit Designer:丹治基浩(motohiro tanji)
・Photographer:山崎彩央(amana inc.)
・Producer:錦木稔(amana inc.)
・Director:小野聖史
・Hair&Make:扇本尚幸
・Retoucher:首藤智恵(amana inc.)
・Music:佐藤牧子、佐藤教之(Heima) 敬称略

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通年採用時代のセルフブランディングって?(動画あり)

東京・港区の電通ホールで12月10日に開催されたセミナー、「通年採用時代の就活デザイン ~就活ルール廃止元年!どうなる?これからの就活~」の模様を動画でお送りします。

登壇者は、電通のクリエーティブ・プランナーのアーロン・ズー(Aaron Z. Zhu)氏。

南カリフォルニア大在学時に米空軍ROTC(予備役将校訓練課程)に所属、卒業後には大手通信企業、大手IT企業、ベンチャー企業を経験するなどアメリカ、中国、日本の3カ国で特異な経歴を持つ同氏が、「採用後進国、日本」で就活する上での「セルフブランディング」の極意を語ります。

 


アーロン氏、書籍『通年採用時代の就活デザイン』発売記念連載
 
第1回 通年採用時代の就活は、「ショートケーキ思考」で自分の魅力を引き出せ![2019.10.30]
第2回 就活の軸とESは、「ショートケーキ思考」で組み立てよう![2019.11.06]
第3回 ショートケーキのイチゴのような「バズワード」をつくろう![2019.11.14]

 

「地方課題」と「テック」を結ぶカギ、架橋人材とは?

SNSやスマホアプリなど、すでに世の中にあるIT/ICTサービスを住民が活用することで地域活性化を図る、いわば「広義のシビックテック」の事例を紹介してきた本連載。

最終回となる今回は、それらの事例に携わった電通デジタルの加形拓也と、街づくりやコミュニティーについて研究する、東京大学の小泉秀樹教授(東京大学 先端科学技術研究センター 共創まちづくり分野)が対談。

「共創イノベーションラボ」(※1)でさまざまな取り組みを行う両者が、広義のシビックテックの可能性と、この手法が普及するための課題を考えます。

<目次>
地域課題にSNSやスマホを使うだけで新しい展開が生まれる
シビックテックの好事例!住民が気軽に参加できる「FixMyStreet」
地域と企業を“架橋”するコーディネーターが求められる
 
東京大学・小泉秀樹教授
東京大学・小泉秀樹教授

地域課題にSNSやスマホを使うだけで新しい展開が生まれる

加形:テクノロジーで地域課題を解決するなら、すでにある“こなれた技術”を使うことが有効だと感じています。特に地方の高齢者は、普段デジタルツールを使い慣れていないケースが多いので、こなれた技術の有効活用だけでも新しい展開が起きます。使い方を覚えていただくのが大変だったりはしますが(笑)。

小泉:同感です。まず、今の地方におけるまちづくりの主流は、地域が門戸を開き、外部と連携する「開放的なまちづくり」です。つまり「関係人口」(※2)を増やし、地域住民と外部のつながりをつくって、それを軸に地域を変えていくやり方ですね。

その際、物理的に遠方にいる外部の人々と地域がつながるために必須なのが、まさにSNSや各種デジタルツール。地域の人たちがデジタルを使いこなせるかどうかで、地域との連携の強さや、物事の進む速さが変わります。

加形:外部と地域とのコミュニケーションが、スピーディーかつ強固になるということですね。

小泉:そうです。これはネットが普及し始めたばかりの1990年代後半の話ですが、東大の私の研究室で、ある地域を支援することになりました。そのとき真っ先に私たちが取り組んだのが、地域の方々のパソコン購入や、インターネット契約のお手伝いです。パソコンの使い方から始まって、地道に支援しました。

それまでは地域のキーパーソンとつながろうと思ったら対面か電話しかなかったのが、メールで手軽にコミュニケーションできるようになったのは、本当に画期的でしたね。

加形:連載で紹介した富山県上市町の例も、同じパターンです。70~80代の方々が、スマホにLINEをインストールするところから始めて、今では私たちと日々普通にやりとりをしています。

小泉:私も拝見しました。今はスマホやSNSが普及し、遠方の住民とさらに密に連携できるようになりましたね。デジタルツールを市民が使いこなせば、まちづくりのいろいろな面が進む。まずはこの「広義のシビックテック」に着目することが、開放型のまちづくりに有効だと思います。

加形:住民がテクノロジーを使いこなすと、副次的効果として、プライベートにもプラスになりますよね。上市町の70代女性は、LINEを覚えたことで、遠くに暮らす大好きなお孫さんといつでも簡単にやりとりできるようになりました。

シビックテックの好事例!住民が気軽に参加できる「FixMyStreet」

加形:長年まちづくりに取り組んでこられた小泉先生から見て、日本のシビックテックの参考になりそうな事例を教えていただけますか。

小泉:イギリスのmySocietyという非営利団体が始めた「FixMyStreet」というデジタルサービスがあります。「道路の破損」「危険箇所の発生」「ごみの放置」といった地域の問題について、気づいた市民が、写真と位置情報を付けてスマホアプリ内で報告できるというもの。インターネット掲示板のようなシステムで、やりとりはすべて公開されており、投稿に対して他の市民が助言するなど、誰でも参加しやすいのが特徴です。これを行政担当者も閲覧しているので、書き込みをもとに行政が対応したり、その結果も掲示板で市民に報告します。

加形:ネット掲示板にせよ位置情報にせよ、使われている技術は珍しいものではないですし、スマホアプリなら市民にも親しみがある。これなら参加するハードルが低そうですね。

小泉:実は、このサービスの原型は1990年代後半〜2000年代初めにできたもので、かなり歴史があり、スマホの進化に伴ってどんどん便利になっているんです。日本でも「FixMyStreet Japan まちもん」というサービスがあるほか、似たシステムで、千葉市が運営する「ちばレポ/My City Report」というものもありますね。

FixMyStreet Japan まちもん
https://www.fixmystreet.jp/

FixMyStreet Japan まちもん
道路や街灯、公園の遊具などの損傷、公共施設へのいたずら書きなど、街の中で気になったことがあったら、スマホで撮影してアプリ上でレポート。市民だけでなく、行政も参加している、というのが大きなポイントだ。

加形:行政としても、過去に投稿された問題を掲示板の中で振り返れるので、「ここは市民の手を借りた方がいい」「過去の例を参考に対処する」といった蓄積も生まれますよね。

小泉:そのほか、最近では地域限定のSNSも盛んです。それらの特徴は、コミュニティーの盛り上げ役というか、投稿しやすい雰囲気をつくる“コミュニティーオーガナイザー”がいることです。オーガナイザーが、積極的にメンバーのコメントにレスをしたり、コミュニティーイベントを企画したりしているんです。

地域限定SNSの代表例「PIAZZA」(ピアッツァ)
https://www.lp.piazza-life.com/

PIAZZA(ピアッツァ)
暮らしに関する情報や、困りごと相談、不用品の譲り合いに加えて、行政からのお知らせなども掲載される。

加形:岐阜県郡上市の事例では、地域のフェイスブックコミュニティーをつくったのですが、このコミュニティーのオーガナイザーを地元の主婦の方たちにお願いしました。これもやはり、新規層がコミュニティーに参加しやすくする狙いがあります。


地域と企業を“架橋”するコーディネーターが求められる

小泉:このように、市民一人一人の力はわずかでも、幅広くいろいろな人が関わり、集合的に運用すると大きな変革の力になります。シビックテック成功のカギは、個々のテック施策やシステムを、いかに広く多くの市民が使えるかにかかっているかもしれません。

加形:シビックテックに関わる人が多くなればなるほど、大きな変化を生む可能性がありますよね。

小泉:はい。だから多数の市民と外部支援者が関わり、共創を生む必要がある。そういう意味で、新たなシステムを文字通り「シビック(=市民の)」なものにするためには、なるべく地域の人が手軽に活用できるようなアレンジが必要なんですよね。

加形:先生は、共創をテーマにした研究組織「共創イノベーションラボ」も運営されています。私もメンバーとして参加していますが、やはりシビックテックでは「共創」がカギになるのですね。

小泉:シビックテックに限らず、地域施策全体に言えることかもしれませんね。共創する上で大切なのは、市民や外部支援者をつなぎ、参加者の輪を増やしていく存在、いわば“架橋”する存在です。

加形:先ほどの、地域SNSのオーガナイザー役は、その例かもしれません。

小泉:まさにそうです。さらに、企業と地域が連携する際のコーディネーターも重要です。企業と地域の連携事例は増えていますが、「その企業がもともと持つリソースやサービス」を地域に当てはめていることが多い。その結果、施策が地域や市民のニーズ、生活に根差していないこともあります。ここは現状の大きな課題で、市民のニーズや地域の実情を深く理解し、そこにどう企業の技術を組み合わせられるか考えられるコーディネーターが必要です。

加形:順番としては、まずきちんと地域のニーズを捉えて、それからそこにマッチする企業の技術をコーディネートしていく。先生がおっしゃるコーディネーターとは、この一歩目となる「地域のニーズ×企業の技術」の組み合わせを考えられる存在ですよね。そして生まれる施策やシステムは、なるべく市民が参加しやすい形にすると。

小泉:はい。そしてシビックテックの先には、IoTなどで街を形成する「スマートシティー」という未来像があります。その未来を身のあるものにするには、地域と外部、地域と企業をコーディネートできる架橋人材がもっと増えないといけません。それこそが今やらなければならないことだと思います。


※1 共創イノベーションラボ
オープンイノベーションの実現をテーマとする研究組織。小泉教授の東京大学先端科学技術研究センターと、電通デジタルの共同研究となる。企業、行政、大学の研究機関など、さまざまな人材が参加し、スマートシティーなどのテーマについて、各々の視点で捉えた情報を共有している。お互いの課題やノウハウを交換することで新しいアイデアの創出を目指すほか、人材育成にも注力。企業側・地域側などさまざまな視点を持ち、それぞれの知見をうまくつないでコーディネートできる人材の育成プログラムを提供していく。

↑本文へ

※2 関係人口
移住した“定住人口”でも、観光という一時的な“交流人口”でもない、地域外の人が持続的に地域と関わり続けるケースのこと。地域と外部の接触点を増やし、地域づくりの担い手になることが期待される。

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「地方課題」と「テック」を結ぶカギ、架橋人材とは?

SNSやスマホアプリなど、すでに世の中にあるIT/ICTサービスを住民が活用することで地域活性化を図る、いわば「広義のシビックテック」の事例を紹介してきた本連載。

最終回となる今回は、それらの事例に携わった電通デジタルの加形拓也と、街づくりやコミュニティーについて研究する、東京大学の小泉秀樹教授(東京大学 先端科学技術研究センター 共創まちづくり分野)が対談。

「共創イノベーションラボ」(※1)でさまざまな取り組みを行う両者が、広義のシビックテックの可能性と、この手法が普及するための課題を考えます。

<目次>
地域課題にSNSやスマホを使うだけで新しい展開が生まれる
シビックテックの好事例!住民が気軽に参加できる「FixMyStreet」
地域と企業を“架橋”するコーディネーターが求められる
 
東京大学・小泉秀樹教授
東京大学・小泉秀樹教授

地域課題にSNSやスマホを使うだけで新しい展開が生まれる

加形:テクノロジーで地域課題を解決するなら、すでにある“こなれた技術”を使うことが有効だと感じています。特に地方の高齢者は、普段デジタルツールを使い慣れていないケースが多いので、こなれた技術の有効活用だけでも新しい展開が起きます。使い方を覚えていただくのが大変だったりはしますが(笑)。

小泉:同感です。まず、今の地方におけるまちづくりの主流は、地域が門戸を開き、外部と連携する「開放的なまちづくり」です。つまり「関係人口」(※2)を増やし、地域住民と外部のつながりをつくって、それを軸に地域を変えていくやり方ですね。

その際、物理的に遠方にいる外部の人々と地域がつながるために必須なのが、まさにSNSや各種デジタルツール。地域の人たちがデジタルを使いこなせるかどうかで、地域との連携の強さや、物事の進む速さが変わります。

加形:外部と地域とのコミュニケーションが、スピーディーかつ強固になるということですね。

小泉:そうです。これはネットが普及し始めたばかりの1990年代後半の話ですが、東大の私の研究室で、ある地域を支援することになりました。そのとき真っ先に私たちが取り組んだのが、地域の方々のパソコン購入や、インターネット契約のお手伝いです。パソコンの使い方から始まって、地道に支援しました。

それまでは地域のキーパーソンとつながろうと思ったら対面か電話しかなかったのが、メールで手軽にコミュニケーションできるようになったのは、本当に画期的でしたね。

加形:連載で紹介した富山県上市町の例も、同じパターンです。70~80代の方々が、スマホにLINEをインストールするところから始めて、今では私たちと日々普通にやりとりをしています。

小泉:私も拝見しました。今はスマホやSNSが普及し、遠方の住民とさらに密に連携できるようになりましたね。デジタルツールを市民が使いこなせば、まちづくりのいろいろな面が進む。まずはこの「広義のシビックテック」に着目することが、開放型のまちづくりに有効だと思います。

加形:住民がテクノロジーを使いこなすと、副次的効果として、プライベートにもプラスになりますよね。上市町の70代女性は、LINEを覚えたことで、遠くに暮らす大好きなお孫さんといつでも簡単にやりとりできるようになりました。

シビックテックの好事例!住民が気軽に参加できる「FixMyStreet」

加形:長年まちづくりに取り組んでこられた小泉先生から見て、日本のシビックテックの参考になりそうな事例を教えていただけますか。

小泉:イギリスのmySocietyという非営利団体が始めた「FixMyStreet」というデジタルサービスがあります。「道路の破損」「危険箇所の発生」「ごみの放置」といった地域の問題について、気づいた市民が、写真と位置情報を付けてスマホアプリ内で報告できるというもの。インターネット掲示板のようなシステムで、やりとりはすべて公開されており、投稿に対して他の市民が助言するなど、誰でも参加しやすいのが特徴です。これを行政担当者も閲覧しているので、書き込みをもとに行政が対応したり、その結果も掲示板で市民に報告します。

加形:ネット掲示板にせよ位置情報にせよ、使われている技術は珍しいものではないですし、スマホアプリなら市民にも親しみがある。これなら参加するハードルが低そうですね。

小泉:実は、このサービスの原型は1990年代後半〜2000年代初めにできたもので、かなり歴史があり、スマホの進化に伴ってどんどん便利になっているんです。日本でも「FixMyStreet Japan まちもん」というサービスがあるほか、似たシステムで、千葉市が運営する「ちばレポ/My City Report」というものもありますね。

FixMyStreet Japan まちもん
https://www.fixmystreet.jp/

FixMyStreet Japan まちもん
道路や街灯、公園の遊具などの損傷、公共施設へのいたずら書きなど、街の中で気になったことがあったら、スマホで撮影してアプリ上でレポート。市民だけでなく、行政も参加している、というのが大きなポイントだ。

加形:行政としても、過去に投稿された問題を掲示板の中で振り返れるので、「ここは市民の手を借りた方がいい」「過去の例を参考に対処する」といった蓄積も生まれますよね。

小泉:そのほか、最近では地域限定のSNSも盛んです。それらの特徴は、コミュニティーの盛り上げ役というか、投稿しやすい雰囲気をつくる“コミュニティーオーガナイザー”がいることです。オーガナイザーが、積極的にメンバーのコメントにレスをしたり、コミュニティーイベントを企画したりしているんです。

地域限定SNSの代表例「PIAZZA」(ピアッツァ)
https://www.lp.piazza-life.com/

PIAZZA(ピアッツァ)
暮らしに関する情報や、困りごと相談、不用品の譲り合いに加えて、行政からのお知らせなども掲載される。

加形:岐阜県郡上市の事例では、地域のフェイスブックコミュニティーをつくったのですが、このコミュニティーのオーガナイザーを地元の主婦の方たちにお願いしました。これもやはり、新規層がコミュニティーに参加しやすくする狙いがあります。


地域と企業を“架橋”するコーディネーターが求められる

小泉:このように、市民一人一人の力はわずかでも、幅広くいろいろな人が関わり、集合的に運用すると大きな変革の力になります。シビックテック成功のカギは、個々のテック施策やシステムを、いかに広く多くの市民が使えるかにかかっているかもしれません。

加形:シビックテックに関わる人が多くなればなるほど、大きな変化を生む可能性がありますよね。

小泉:はい。だから多数の市民と外部支援者が関わり、共創を生む必要がある。そういう意味で、新たなシステムを文字通り「シビック(=市民の)」なものにするためには、なるべく地域の人が手軽に活用できるようなアレンジが必要なんですよね。

加形:先生は、共創をテーマにした研究組織「共創イノベーションラボ」も運営されています。私もメンバーとして参加していますが、やはりシビックテックでは「共創」がカギになるのですね。

小泉:シビックテックに限らず、地域施策全体に言えることかもしれませんね。共創する上で大切なのは、市民や外部支援者をつなぎ、参加者の輪を増やしていく存在、いわば“架橋”する存在です。

加形:先ほどの、地域SNSのオーガナイザー役は、その例かもしれません。

小泉:まさにそうです。さらに、企業と地域が連携する際のコーディネーターも重要です。企業と地域の連携事例は増えていますが、「その企業がもともと持つリソースやサービス」を地域に当てはめていることが多い。その結果、施策が地域や市民のニーズ、生活に根差していないこともあります。ここは現状の大きな課題で、市民のニーズや地域の実情を深く理解し、そこにどう企業の技術を組み合わせられるか考えられるコーディネーターが必要です。

加形:順番としては、まずきちんと地域のニーズを捉えて、それからそこにマッチする企業の技術をコーディネートしていく。先生がおっしゃるコーディネーターとは、この一歩目となる「地域のニーズ×企業の技術」の組み合わせを考えられる存在ですよね。そして生まれる施策やシステムは、なるべく市民が参加しやすい形にすると。

小泉:はい。そしてシビックテックの先には、IoTなどで街を形成する「スマートシティー」という未来像があります。その未来を身のあるものにするには、地域と外部、地域と企業をコーディネートできる架橋人材がもっと増えないといけません。それこそが今やらなければならないことだと思います。


※1 共創イノベーションラボ
オープンイノベーションの実現をテーマとする研究組織。小泉教授の東京大学先端科学技術研究センターと、電通デジタルの共同研究となる。企業、行政、大学の研究機関など、さまざまな人材が参加し、スマートシティーなどのテーマについて、各々の視点で捉えた情報を共有している。お互いの課題やノウハウを交換することで新しいアイデアの創出を目指すほか、人材育成にも注力。企業側・地域側などさまざまな視点を持ち、それぞれの知見をうまくつないでコーディネートできる人材の育成プログラムを提供していく。

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※2 関係人口
移住した“定住人口”でも、観光という一時的な“交流人口”でもない、地域外の人が持続的に地域と関わり続けるケースのこと。地域と外部の接触点を増やし、地域づくりの担い手になることが期待される。

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強制捜査受けた河井前法相と案里議員は菅官房長官以上に安倍首相のお気に入りだった! トランプ会談に同行、安倍秘書が選対に

「刑事事件として捜査が始まっているので、差し控える」──。公職選挙法違反疑惑が浮上して約2カ月半。昨日15日に広島地検がようやく河井克行・前法相と、妻で参院議員の河井案里氏の事務所に家宅捜索に入ったことから、昨晩、ふたりが別々にメディアの前に姿を現したが、飛び出した発言は説...