アート×資本主義の未来とは?(椿昇×岩崎かおり)

2020年12月7日から五夜連続で「アートとビジネスがつくる未来を妄想する夜」と題するウェビナーが「アートとビジネスをつなぎ、豊かな未来を描く」をテーマとした電通社内ラボ、Dentsu Art Hubの主催により開催された。アート×ビジネスにそれぞれの立場で深く関わる猛者たちによる対談&鼎談は、いずれの回も「三つのキーワード」のもとで行われた。ご本人により事前に設定された「妄想トーク」のテーマは、それだけで聴く側の妄想が掻き立てられる。
この連載では、ウェビナーを通じて見えてきたアートの本質、ビジネスの本質、さらにはそのアートとビジネスが「掛け算」されることで創造される未来という大きなテーマに、編集部ならではの視点から切り込んでみたい。

第一夜にあたる本稿では、京都芸術大学教授(同大学院付属ギャラリーディレクター)椿昇氏とTHE ART代表取締役岩崎かおり氏の対談内容から、アートと資本主義の関係性について掘り下げていく。

文責:ウェブ電通報編集部


「僕の感覚でいうと、アートビジネスは農業に近い」(椿昇)

「アート×資本主義」というテーマを聞いて、「金持ちの道楽」「法外な値段で売りさばく悪徳画廊」「ゴッホの名画がうん百億円で落札」といったことをイメージされる方が、ほとんどではないだろうか。一言でいうなら「ウサンくさい」といったイメージ。恥ずかしながら、筆者もその一人だ。正確に言うならば、その一人であった。

インストーラーという職業をご存知だろうか。アート業界では「アーティストの構想を視覚化、具現化する専門職」を差すもので、ウェビナーの冒頭、自己紹介がわりに、と紹介されたアートフェアの数々に、椿氏はインストーラーという立場で参画しているのだと言う。「言ってみれば、塩のふり加減から最後の味つけ、盛りつけ、そのすべてを任されたシェフのような感覚ですね」。のっけから、なにやら不思議な話がはじまった。

ウェビナー時の椿氏
ウェビナー時の椿氏

後ほど紹介する「三つのキーワード」のネタバレにならぬよう、言葉を選びつつ話を進めるが、仕事でも、恋愛でも、「食べ物」や「料理」で例えられると、なんだか妙に納得させられてしまうのは筆者だけだろうか。シェフに続いて椿氏から飛び出したのは、「アートビジネス=農業」という例えだった。丹精こめてつくられた作物(作品)のおいしさ(価値)を、より多くの人に知ってほしい。そうした、これから展開されるであろう話の流れには、そう簡単には騙されないぞ、と編集者魂を奮い立たせる筆者であった。

「金融資本主義は、もはや絶対正義ではありません」(岩崎かおり)

つづく岩崎氏の指摘にも、大いに心がぐらついた。「バンカーである私が、こんなことを言うのはどうかと思いますが、この世のすべての価値をおカネが決定するという価値観そのものが、この時代、もはや成り立たなくなっていると思います」。金融業界の最前線に立つ岩崎氏にそう断じられては、ポカンとするばかりだ。

ウェビナー時の岩崎氏
ウェビナー時の岩崎氏

あらためて「アート×資本主義」というテーマ、それも、資本主義というかつては「絶対正義」のように思われていたものの揺らぎに、思いが及ぶ。コロナ禍で露呈した「閉塞感」は、経済面、精神面だけの話ではない。資本主義という社会システムそのものが、どうにも行き詰まっているのではないか?という不信感に、誰もが押しつぶされそうになっている現実。そうした現実から救い出してくれるのがアートなのだということなら、これほど興味深く、ありがたい話はない。

今宵のキーワード (その1)「買いましょう」

「私自身のアートに対する考え方がガラリと変化したのは、アートというものが『見るもの』から『買うもの』になった、その瞬間だったと思います。きっかけは、一つの出会いなんです」。最初のキーワードが紹介されるやいなや、岩崎氏はこう話を切り出した。岩崎氏の言う出会いとは、作品との出会いもさることながら、作者との出会いを指すものだ。「作家のことを知れば知るほど、その作品が生まれた背景や、その作品に込められた思いのようなものが見えてくる。もっともっと、その作家のことが知りたくなる。気がつけば、アートコレクターであり、アートラバーになっていた。そんな感じです」。

椿氏のコメントも、興味深い。いわく「椿に(まんまと)買わされた」が、このところの沸騰ワードなのだと言う。椿氏の周囲の人々が、なぜ「椿に買わされてしまう」のか。そこにあるのはトラスト(信頼)だと思う。それが、椿氏の見立てだ。たとえばネットなどを通じて作者とダイレクトにやりとりが出来る。そのダイレクトな関係を支えているものは、信頼に他ならない。アートを買うという行為には、なによりダイレクトな信頼関係が必要で、そこから「交換価値」を超えた「体験価値」が生まれるというのだ。

「僕はねえ、作品を買わない人とは、口をきかないんです」と冗談めかして椿氏は言うが、お二人の「買いましょう」には、明確な共通点がある。それは、「買ってみないことには、何も始まらない、何もわからない」ということで、だとすれば、多くの人がアートに対して、食わず嫌いをしていることになる。それが、次なるキーワードへとつながっていく。

椿昇 (京都芸術大学教授 同大学院付属ギャラリーディレクター)  1989年全米巡回した”Against Nature”展。1993年ベネチアビエンナーレ・アペルト。2001年横浜トリエンナーレ《インセクト・ワールド-飛蝗》。2003年水戸芸術館「国連少年展」。2009年京都国立近代美術館「椿昇 2004-2009:GOLD/WHITE/BLACK」。2012年霧島アートの森「椿昇展“PREHISTORIC_PH”」。2019年「パレルゴン:1980年代、90年代の日本の美術」BLUM & POE LA USA。瀬戸内国際芸術祭2013,2016小豆島ディレクター、青森トリエンナーレ2017ディレクター。ARTISTS’FAIR KYOTOディレクターなど多数。
椿昇 (京都芸術大学教授 同大学院付属ギャラリーディレクター) 
1989年全米巡回した”Against Nature”展。1993年ベネチアビエンナーレ・アペルト。2001年横浜トリエンナーレ《インセクト・ワールド-飛蝗》。2003年水戸芸術館「国連少年展」。2009年京都国立近代美術館「椿昇 2004-2009:GOLD/WHITE/BLACK」。2012年霧島アートの森「椿昇展“PREHISTORIC_PH”」。2019年「パレルゴン:1980年代、90年代の日本の美術」BLUM & POE LA USA。瀬戸内国際芸術祭2013,2016小豆島ディレクター、青森トリエンナーレ2017ディレクター。ARTISTS’FAIR KYOTOディレクターなど多数。

今宵のキーワード(その2)「買いましょう」の次は、「食べましょう」

椿氏によれば、日常的にアートと触れ合うということは、食べ物を摂取するという行為に近いのだという。「食料は、なにかを一点だけを買って、それで終わりということはない。来る日も、来る日も、食べつづけなければならない。いったん口に運んだら、それこそ死ぬまで、食べつづけないといけない。そうでしょ?」椿氏の説明はつづく。「食べて、食べて、食べ続けているうちに、おいしいものとそうでないものがわかってくる。アートもそう。体験して、味わって、我が身にどんどん取り込んでく。僕にとっては、アートは買うというより、食べているとう感覚のほうがしっくりくるんです」。

ややあって、岩崎さんはこう感想を述べた。「食べ物つながり、と言えるかどうかはわかりませんが、私の場合は、誰かと『シェアする』ことも、アートの味わい方というか、楽しみ方の一つなんです。ちょっと、味見してみて。ね、おいしいでしょう。というときのあの感覚。より多くの人に、あっ、ホントだ。と言ってもらえたら、うれしいじゃないですか」。

岩崎かおり (THE ART 代表取締役) 愛媛県生まれ。アートコレクター(コレクション歴:約4年、所有数:120点)。大学院修士課程においてモノづくりの経営学を学ぶ。アート鑑賞と旅行が趣味の両親のもとで育ち、幼少のころから国内外のアート鑑賞が習慣となり、社会人となってからは海外のアートフェアにも訪れるようになる。アートバーゼルにて名和晃平のPixCell作品を購入して以来、アートコレクションの魅力を知り、アートコレクターとなる。世界のアート関係者とのつながりを通じ、海外市場との格差やアートがもっと活性化する余地が大きい国であることを強く感じ、日本のアート市場を活性化するための活動に励む。2018年社内にて行内有志によるアートクラブを発足(現在90名程度) 。2019年SMBC信託銀行日本橋支店にて、国内金融初となる日本人現代アート作品を一堂に展示する「アートブランチ」をスタートさせ、アート市場活性化に繋がる企画、運営を行なう。現在は株式会社THE ART 代表取締役を務める。
岩崎かおり (THE ART 代表取締役)
愛媛県生まれ。アートコレクター(コレクション歴:約4年、所有数:120点)。大学院修士課程においてモノづくりの経営学を学ぶ。アート鑑賞と旅行が趣味の両親のもとで育ち、幼少のころから国内外のアート鑑賞が習慣となり、社会人となってからは海外のアートフェアにも訪れるようになる。アートバーゼルにて名和晃平のPixCell作品を購入して以来、アートコレクションの魅力を知り、アートコレクターとなる。世界のアート関係者とのつながりを通じ、海外市場との格差やアートがもっと活性化する余地が大きい国であることを強く感じ、日本のアート市場を活性化するための活動に励む。2018年社内にて行内有志によるアートクラブを発足(現在90名程度) 。2019年SMBC信託銀行日本橋支店にて、国内金融初となる日本人現代アート作品を一堂に展示する「アートブランチ」をスタートさせ、アート市場活性化に繋がる企画、運営を行なう。現在は株式会社THE ART 代表取締役を務める。

今宵のキーワード(その3) そして、「伝えましょう」

「そのシェアのお話、我々が事前に用意した最後の話題に、すでになっちゃってますよね?」そんな椿氏によるツッコミから、三つ目のキーワード「伝えましょう」に話がおよぶ。

「岩崎さんはご自身のことをアートラバーだとおっしゃいましたが、たとえばスイーツ女子のような感じでアート女子が増えていってくれたら、こんなにうれしいことはないです」。岩崎氏もこれには納得で、スイーツを見たとき、食べたときの、なんとも言えないほっこり感、幸せ感こそが、アートの魅力なのだ、という。スイーツのように、ついついSNSでその魅力を誰かに伝えたくなってしまう。そんな衝動を駆り立てるものがアートのもつポテンシャル(秘められた力)だとしたら、その経済効果ははかりしれない。ここから一気に、話は大詰めへと向かっていく。

「そんなアートの価値は、時間によってさらに磨かれるんです。それも、並の時間ではない。500年、1000年といった時間が、アートの価値を高めてくれる。逆にいうと、時を経ることでその価値が失われてしまうものは、本物のアートではなかったということになりますね」。そう語る椿氏への岩崎氏の返しが、筆者には鮮烈だった。いわく、「時間」というものは、資本主義にとってもっとも怖い、あるいは残酷な存在なのだ、と。

対して、アートは「時間」を怖がらない。浮世絵にしても、そもそもは銭稼ぎのためにつくられた日常づかいの「工業製品」に過ぎなかった。アートというものの本質を考えるとき、そうした日常品を特別なものへと昇華する「魔法」の存在が、どうやら重要なもののようだ。でも、その「魔法」の正体は、椿氏や岩崎氏でもわからない。人類が手に入れた最先端の科学をもってしても、いまだに宇宙の謎のほとんどが解明されていないように。
「先送り行政」「先送り外交」など、とかく「先送りにすることは、悪いこと」のように思われがちだが、500年、1000年といったスパンで先送りをされると、人はただ「参りました」と白旗をあげるしかない。そこにロマンを見出す能力もまた、人類のもつ偉大なる叡智の一つなのかもしれない。

本連載は、「アートとビジネスがつくる未来を妄想する夜」と題されたウェビナーの内容を主催者であるDentsu Art Hubの笠間健太郎氏(株式会社アーツ・アンド・ブランズ代表取締役)監修のもと、ウェブ電通報独自の視点で編集したものです。

開催決定!オンライントークイベント
「アートとビジネスがつくる未来を妄想する夜 ART PUB NIGHT #1」

主催:Dentsu Art Hub/一般社団法人アートハブ・アソシエーション 協賛:株式会社アーツ・アンド・ブランズ
主催:Dentsu Art Hub/一般社団法人アートハブ・アソシエーション 協賛:株式会社アーツ・アンド・ブランズ

実施日時:2021年4月28日(水) 19:00-21:30
(10分前にZoomウェビナーを開場いたします)
参加費:無料
開催形式:Zoomウェビナー    
申込先:各回先着500名まで参加可能。
 お申し込みは、こちら。(事務局より視聴用URLをお届けします)
応募締切:4月28日(水)

こどもになって、4メートルの自分に怒られてみた

TOP画像

自分はもっと子育てがうまくできると思ってた。

これは息子のイヤイヤ期真っ盛り、床に転がって泣き散らかす彼に呆然としながら私が感じていたことです。「靴を履こうね」と言っただけで「イヤッ!」と靴を投げられる。歩道橋で電車が通り過ぎるのをただただ眺めるのに2時間つきあわされる。いいかげんに帰ろうと抱っこすると、活きのいい巨大マグロのようにのけぞって暴れる。雨の通園時、機嫌が悪くなって水たまりに座り込んで動かない。

時間がない朝などにはどうしてもイライラして、ついカッとなって大きな声で怒ってしまったことが何度もあります。怒りたくないのに怒ってしまう。泣きたいのはこっちだよ、という気持ち。その後で襲ってくる罪悪感。その無限ループは息子が6歳になった今でも相変わらず続いています(むしろ怒り方がどんどんキツくなっている気が……)。

つい怒ってしまう自分は、息子からどんなふうに見えているんだろう?きっと怖いんだろうな。ということで、今回はこどもになって大人に怒られてみたいと思います。

<目次>
大人がこどもになって、大人に出会ったら?
厳しいしつけで、こどもの脳のカタチが変わってしまう!?
そもそも子育ては、みんなでやるものだった
こどもを叱る時は、60秒以内に。それ以上叱っても意味がない
親はこどもにとっての安全基地

大人がこどもになって、大人に出会ったら?

幼児と大人のスケール図

この図は、前回の研究で作ってみたものです。身長75センチのこどもにとって身長180センチの大人は、自分の2.4倍。身長180センチの大人を子どもと仮定すると、大人はなんと432センチ(180×2.4)という計算になります。

うーん、でかい。幼児からすると大人は驚愕の大きさです。でも4メートルの人間が周りにいるわけではないので、まだいまいちピンときません。そこで生活の中に4メートルのものがないか、いろいろ調べてみました。

キリンスケール図
※息子の1歳4カ月当時の身長/キリンの体長 参考文献:小学館の図鑑NEO+ぷらす『もっとくらべる図鑑』

はい、いました。キリンです。キリンかー。いやだなぁ、キリンに「ほら、はやくして!」「コラ、やめなさい!」とか頭上から言われるの。ちなみに信号機も4メートルくらいのものが多いようです。信号機に怒られる……。うーん、まだ実感が湧きませんね。

そこで、Dentsu Lab Tokyoのテクノロジスト・斧涼之介くんに協力してもらって、仮想空間上で巨大な私を作ってもらうことにしました。

まず訪れたのは、ワントゥーテンさんの東京オフィス。ここにある3Dアバター生成プラットフォーム「ANATOMe TM (アナトミー)」で、まず自分を3Dスキャンしてもらいます。あっという間にできました。すごい!

 
協力:株式会社ワントゥーテン(https://www.1-10.com/
3Dアバター生成プラットフォーム「ANATOMe  TM  (アナトミー)」
※ANATOMeは、VRCとワントゥーテンイマジンの共同開発です。


次にこの3Dデータを3DCGを制作するためのアプリケーションであるBlenderに取り込み、身長165センチの私を75センチのこどもに見立てます。すると大人の私は2.2倍、3メートル63センチという計算に。でかい、でかすぎ。そこに4メートル32センチ(実際は180センチ)のお父さん役、沓掛光宏くんも登場させてみました。う、立っているだけでものすごい威圧感です。

仮想空間イメージ1
仮想空間イメージ2

画面上で見るだけでもなかなかの迫力ですが、ここからが本番。VRゴーグルを装着してこどもになってみます。

仮想家庭に入ってみると、目の前にあるのは大人の足と股あたり。ちょっと目線を上げてもお腹までしか視界に入りません。すると「コラ!やめなさい!やめなさいって言ってるでしょ!」と怒鳴る声。見上げると腕組みをした巨体の自分。真上を見るように首を曲げないと表情までは分かりません。顔はかなり遠いです。表情が見えたと思ったら怒ってる。うわ~嫌な感じ。

さらにお父さんを登場させます。で、でかいっ!!ムリです。立ってるだけなのにめちゃくちゃ怖い。背の高いお父さん、こどもの前での仁王立ちはほんとやめてください。

もう一つ「こどもの前での夫婦げんかってついやっちゃうよね?」という話になり、それも体験してみました。実はこれが衝撃的に怖かったです。目の前にも巨人。振り返っても巨人。その2人が怒鳴りあっている。このまま取っ組み合いにでもなったら、きっと世界が壊れてしまう。そんな絶望的な気分になりました。
怒る自分がこんなに巨大で恐ろしい生き物だったとは……。


 

厳しいしつけで、こどもの脳のカタチが変わってしまう!?

私たちはこの動画をもって、小児神経科医であり福井大学・子どものこころの発達研究センター教授である友田明美先生のもとをオンラインで訪ねました。先生はマルトリートメント(避けたいかかわり)がこどもの脳に与える影響について長年研究されていて、私はその内容に衝撃を受け、以前からお話を伺いたいと思っていたのです。

石田:先生、4メートルの自分に怒られるという体験は、数分でもぐったりしてしまう嫌なものでした。もしこれが日常だったとしたら、とてつもない影響があるんだろうなぁと。実際に、こどもの脳にどんなことが起こってしまうのでしょう?

友田先生(以下、先生):まずは体罰についてお話ししましょうか。私が米国にいた頃にアメリカ人を対象にした研究で分かったことです。日常的に厳しい体罰を受けて育った人たちの脳は、前頭前野の一部が小さくなっていることが分かりました。

沓掛:脳の一部が小さくなるんですか!? 

先生:前頭前野は感情をつかさどる部分。そこが萎縮してしまうと、犯罪抑制力にも影響がでます。素行障害、うつ病にもなりやすく、強い攻撃性が現れることもあります。けんかばかりして手がつけられない、とかね。

石田:それって素行を正そうとして行った行為が、逆に素行を悪くしてしまうということですか?

先生:その通りです。皮肉なことに「愛のむち」といって、悪い行いを正そうと体罰を与えるのですが、望ましくない影響しか与えないことが分かったんです。

昨年の4月から日本でも家庭での体罰が禁止されました。(※1)日本は59カ国目の体罰禁止の国になったわけです。早くから体罰禁止を法律化したスウェーデン、フィンランドなどでは、着々とこども虐待が減っています。親を罰するわけではなく、体罰に代わる育て方を子育て支援者と一緒に考える。苦労している親がどうしたらたたかないで子育てができるか、相談しながら進めていることが実ってきているんです。

※1
令和元年6月に改正児童虐待防止法が成立し、親権者等は児童のしつけに際して、体罰を加えてはならないことが法定化され、令和2年4月から施行に。


石田:59カ国目というのは、先進国としてはとても遅い感じがしますね。

先生:日本はまだスタートポイントですね。いまの親や、とくに祖父母世代になると「体罰は必要だ」と思っている人がまだまだ多い印象です。昭和には、ちゃぶ台をひっくり返してスパルタ教育をする人気アニメがあったくらいですから、それが正しいという意識が根強く残っています。

沓掛:自分が実際に体験すると、頭上から降り注ぐ怒鳴り声がつらかったです。大きな声で怒ってしまう、ということも脳に影響があるんでしょうか?

先生:日常的に繰り返される暴言は、ちょうど耳の脇あたりにある聴覚野を肥大させることが分かりました。聴力に影響がでて、小さな音が入らなくなります。そのためコミュニケーション力も低下しますし、学力低下の原因にもなっていきます。

石田:日常的に「勉強しなさい!」とキツく言えば言うほど学力が低下する、ということも起こってしまいそうですね……。実験をしている中で、夫婦げんかがとても怖いな、と感じました。

先生:目の前で両親の言い争いや暴力を見せることは面前DVと言いますが、その場合は視覚野という部分が小さくなってしまいます。視覚野が萎縮すると、他人の表情が読めず、対人関係がうまくいかなくなります。

脳の図
提供:福井大学・友田明美教授

石田:お話を伺っていると、たたかれても耐えられるように前頭前野が、聞きたくないことを聞かなくて済むように聴覚野が、見たくないものを見ないために視覚野が変わってしまうように感じます。

先生:そうですね。本当に不思議な現象なんですが、何度も何度も同じようなことが起こると、それに耐えるために脳が変わってしまう。「悲しい適応」だと私は考えています。

石田:いま生きるために、自分のこころが折れてしまわないための「適応」なんですね。とても切ないです。

先生:こどもの脳は未成熟で発達途上です。「悲しい適応」をしないためにも「体罰は百害あって一利なし」ということをもっと啓発していかないと。

そもそも子育ては、みんなでやるものだった

先生:お二人も実験されていますけど、親も一生懸命なんですよね。けれど「1回くらいおしりをパチン」というのは、エスカレートすることがあります。とくに親がストレスを抱えている時、余裕がない時ほどね。大人ってストレスがたくさんあるでしょう? 締め切りに間に合わない。職場で嫌なことがあった。リストラされた……。ヒトという生き物はストレスに弱いので、そういう時ほど弱い立場のこどもをはけ口にしてしまうんです。

石田:余裕がない朝ほどイライラするし、声が大きくなります……。耳が痛いです。

沓掛:「いつもじゃないから」は、どんどんエスカレートしてしまうんですね。

先生:必ずします。私はこどもを虐待してしまう親御さんとたくさん接してきましたが「世間にでた時にこどもが恥をかかないように。こどものための“しつけ”だった」とみんな判で押したように、まったく同じせりふをおっしゃいます。最初から虐待しようとしている親なんていないんです。

石田:今はワンオペ育児が問題になるなど、親自身も大変です。ストレスをぶつけず子育てしていくためにはどうすればいいでしょう?

先生:できない時は「できない」と開き直って、誰かに頼ることです。周囲の人、頼れる人がいない場合は子育て支援もあります。そもそも人間のこどもは共同で育てるものなんです。他の動物のこどもは自立が早いですよね?人間だけが歩きだすのに1年もかかる。それだけ子育てのストレスもかかる。だから狩猟民族の頃から共同で子育てをする動物だったんですよ。

石田:みんなで育てるはずのものだったのが、どんどん核家族化が進んで「孤育て」になってきている。

先生:いまは息を抜く時間がないにもかかわらず「完璧な子育て」をやらないといけない、と親御さんたちが思っている。大変な時代です。

友田先生とのオンラインインタビューの様子
友田先生とのオンラインインタビューの様子

こどもを叱る時は、60秒以内に。それ以上叱っても意味がない

石田:親がついカッとなってしまわないための秘訣はありますか?

先生:アンガーコントロールですね。私は親御さんたちに「カッとなったら、こどもから離れてトイレに行きなさい。そこで深呼吸をしてから戻りなさい」と言います。あと「こどもに注意する時は60秒以内にしなさい」と。

沓掛:くどくど長く怒らない方がいいと?

先生:はい。私は60秒以上叱っても効果がないと思います。こどもが泣いている時には何も耳に入りません。こどもが落ち着いてから話してください。それから、親が落ち着いていることが大切です。まずは自分がカムダウンすること。

あとは他の子と比べないこと。「なぜこの子はこんなこともできないんだろう?」ではなく、できたことを認めてあげる習慣をつけてください。こどもには個人差があります。その子なりに、昨日できなかったことが今日できたら拍手。毎日お祝いしてあげればいいんです。

石田:昨日できなかったことが今日できたらお祝い。いいですね!

先生:そうすると、親も肩の荷がおりてラクになるでしょう? そもそも人間は最初から“養育脳”を持ち合わせているわけではありません。妊娠、出産、授乳、抱っこなどによって、赤ちゃんもお母さんも幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌される。目と目を合わせ、スキンシップを繰り返すことで養育脳になって親になっていくんです。

石田:目と目を合わせることでもオキシトシンが分泌されるんですか?

先生:されます。だから授乳の時などにお母さんが赤ちゃんの顔を見ないでスマホをいじっていると「もったいないなぁ」と思ってしまいます。

沓掛:男性の場合はどうなんでしょう?

先生:男性も赤ちゃんを抱っこしたりスキンシップをすることでオキシトシンなどが分泌され“養育脳”になっていきます。どんどん抱っこしてあげてください。お風呂に入れてあげるのもいいですよ。

親はこどもにとっての安全基地

石田:もう一つ、「愛着障害」についてお伺いできますか。

先生:アタッチメント(愛着、絆)の話ですね。必要な養育をこどもに与えないで放置するネグレクトはとくに愛着障害につながりやすい。愛着障害には「内向き」「外向き」があって、内向きの子は「おどおどしている、集中できない、眠れない、学習の伸びが悪い」などの特徴が。外向きの子は「人見知りしない、暴力的、落ち着きがない、けんかが絶えない、人との距離感が保てない」などの特徴があります。報酬(ご褒美)に対する反応がにぶく、ドーパミンがほとんど出ないことも特徴です。

石田:褒めてもらうはずの時に褒めてもらえなかったからでしょうか?

先生:それもあるでしょうが、ストレスによって脳の働きが落ちてしまってうれしさを感じなくなるんです。親から適切な愛情を与えてもらえないとセルフメディケーションに走ります。自分で自分を癒やそうとして、将来薬物などに手を染めてしまう可能性が高くなります。

沓掛:大人の問題行動や犯罪も、小さい時の経験が原因になってしまう確率がとても高いということでしょうか?

先生:そうですね。例えば「マルトリートメント(避けたいかかわり) を取り除けば、静脈注射の薬物乱用は8割近くなくなる」という研究結果もあるくらいです(※2)。

※2
Dube, S.R., Felitti, V.J., Dong, M., Chapman, D.P., Giles, W.H., and Anda, R.F. (2003) Childhood abuse, neglect, and household dysfunction and the risk of illicit drug use: the adverse childhood experiences study. Pediatrics 111, 564-572


石田:8割!それはすごいですね。

先生:親はこどもにとっての安全基地、もしもの時の避難場所であるべきなんです。それは父親・母親でなくてもいい。おじいちゃん、おばあちゃんでもいい。こどもは親を港として出ていく船です。なにか危険があった時に「港に戻ればいい」と思えるかどうか。船出して大嵐になった時、港も危険だと船は行き場を失って沈没してしまいます。

石田:ほんとにそうですね。

沓掛:最後にお伺いしたいのですが、一度傷ついてしまったこどもの脳は回復しないものなんでしょうか?

先生:昔はそう思っていたんですけどね。実はこどもの脳は可塑性があって回復するんです。親が問題のある行動を改めれば回復していきます。もちろん早ければ早いほどいい。

沓掛:それがお聞きできてよかったです。

先生:まず褒めてあげる習慣をつけてください。例えば、1歳半くらいからお手伝いをさせればいいんです。自分の食べた食器を流しにもっていくだけでいい。それを褒めてあげる。
ポイント制もいいですよ。お手伝いができたらシールやスタンプをポン!それが10個たまったら、あなたが好きなカレーにしよう。100個たまったら回転ずしにしよう!ってね。私たちもマイルを貯めて喜んだりするでしょう?

石田:確かに。お手伝いを増やすと、こどもの自立を促すだけじゃなく自分がやることもどんどん減らせて、イライラも減っていきそうですね。

先生:大人だって何もなしにモチベーションなんて上がらないじゃないですか。給料のベースアップやボーナスが増えるなどがないとね。「認められる」「褒められる」ことがやる気につながるのは、こどもだって同じです。

石田:お手伝い作戦、今日からやります!(笑) 

先生:私も娘が2人いますが、いっぱい失敗してきました。完璧な親なんていないんですよ。とにかくこどもを抱きしめてあげましょう。まずそこからです。

沓掛:本当にそうですね。驚きのあるお話ばかりで、なんだか心臓がドキドキしています。自分もいろいろ反省するところがありました。

石田:貴重なお話、本当にありがとうございました。


親の不適切な行為によって、こどもの脳が変わってしまう。とても衝撃的な内容ですが、それを知っていること自体が抑止力になると強く感じました。今回のまとめです。

●厳しいしつけ、体罰はこどもの脳を変えてしまう。素行を正そうとして、素行をさらに悪くしてしまうなど、百害あって一利なしだということを知っておきたい。

●カッとなってしまったら(こどもの安全は確保しつつ)こどもから一旦離れて、トイレなどで深呼吸。こどもを叱る時は60秒以内に。

●他の子と比べない。その子なりの成長、「昨日できなかったことが今日できたら褒める」という習慣をつけたい。

●人は赤ちゃんとスキンシップをとることで、幸せホルモン・オキシトシンが分泌されて“養育脳”になっていく。お父さんもどんどん抱っこして“養育脳”になってほしい。
どこまでが適切な“しつけ”なのか迷ってしまった時は「自分はこの子にとって安全な港かどうか」を判断基準にすればいいのかな、と思いました。こどもが困った時、例えばおもらししちゃった、服を汚しちゃった、お友達とけんかしちゃったなどを、ちゃんと話してくれるか、怒られるから黙っていたいと思ってしまうか。

……と書きながら、この前トイレを失敗した息子が中から鍵をかけて「なんでもないから!」と言いながら自分で拭き掃除をしていたことを思い出しました。よっぽど怖いんだな……。「安全な港」を意識して、私もアンガーコントロールをがんばりたいと思います!
 

友田先生のプロジェクト「防ごう!まるとり マルトリートメント」でさまざまな情報が無料でダウンロードできます。「marutori.jp」で検索を。  

どんなに多忙でも絶対に実践できるインプット術、教えます。

こんにちは、コピーライターの橋口幸生です。

「100案思考」という本を発売しました。コピーライターの思考法を、すべてのビジネスパーソン向けに解説したものです。

100案思考
「100案思考 『書けない』『思いつかない』『通らない』がなくなる」
橋口幸生:著、マガジンハウス刊、256ページ、1650円(税込)ISBN:9784838731497
<目次>
アイデアを出すだけでは、アイデアは出ない。
「観察」すれば、目にする全てがインプットになる。
次回予告!  

「100案思考」 では、「アイデアは質より量」だという態度でアイデアを発想します。

いいアイデアを出そう、という考えを捨てる。つまらないアイデアも出せない人に、いいアイデアが出せるわけがない。才能なんてあっても無くても、100案出せば、いい案のひとつやふたつは必ず含まれている。

肩の力を抜いて発想を広げよう、というわけです。(詳しくは連載第1回をご覧ください)

アイデアを出すだけでは、アイデアは出ない。

しかし、やってみると、つまらないアイデアであってもたくさん出すのは意外と大変です。慣れないうちは10案もいかないのではないでしょうか。

安心してください。これはあなたの能力とは関係ありません。

アイデア出しには手順があります。その通りにやれば、誰でも数を出せるようになるのです。

その手順とは

(1)インプットする
(2)アイデアを出す
(3)アイデアを選ぶ

というものです。

ほとんどの人は、

「(1)インプットする」

をすっ飛ばして、いきなり

「(2)アイデアを出す」

にいこうとします。

だから、悶々とするだけで何も思いつかない、という状態になってしまうのです。

なぜアイデア出しにインプットが必要なのか?その理由を説明する前に、まず「アイデアとは何か」を考えてみましょう。

アイデアを、「クリエイターやアーティストがパッとひらめいた、斬新な思いつき」のような意味でとらえている人が多いと思います。とんでもない誤解です。アイデアはひらめくものではありません。斬新さも、一切必要ありません。

アイデアとは

既存の要素の組み合わせや、その一部を変えたもの

なのです。

ためしに、身近にある、いいアイデアを分析してみてください。

  • iPhone=携帯電話+インターネット
  • ルンバ=掃除機+宇宙探査ロボ
  • スター・ウォーズ=SF+神話

このように、革新的なアイデアであっても、新しい要素は一切ありません。既存の要素の組み合わせでしかないことが分かります。

「既存の要素」をインプットしないと、アイデアが出てこないのは当たり前なのです。

コピーライターも、いきなりコピーを書いたりしません。まず担当する商品や、それを使う人々のことなど、周辺情報をひたすらインプットします。

僕自身は、8割の時間をインプットに使い、残りの2割でコピーを書く、という配分でやっています。十分なインプットをすれば、アイデアが全く出てこないという状態には決してなりません。

ここでは、「100案思考」で紹介している6個のインプット術の中から、もっとも手軽で、もっとも効果的なひとつを解説します。

「観察」すれば、目にする全てがインプットになる。

「忙しい中、インプットはどうやっているんですか?」

講演などで、本当によく聞かれる質問です。多くの人が時間に追われ、インプットがままならないことに焦っています。

でも、安心してください。どんなに激務で多忙でも、インプットは可能です。なぜなら、

あなたが目にするものの全てがインプット

だからです。

仕事ができる人ほど、インプット=読書ととらえていると思います。書店にいけば多読のノウハウ本が山積みされています。ビジネス書の要約サービスも人気です。

もちろん、本は読んだほうがいいのは、言うまでもありません。しかし、それだけがインプットではないのです。

会議前の雑談、友人から来たメール、駅で見かけた看板など。アイデアのタネはあらゆるところに落ちています。

小さなことであっても、それはあなた自身が見て、聞いて、感じたことです。会ったこともない他人が書いたビジネス書より、ずっとアイデアにつながりやすいのです。

筆者も、友人のFacebookの投稿や、子どもに読み聞かせた絵本をヒントに、コピーを書いたことがあります。具体例は書籍内で紹介しているので、ぜひ読んでみてください。

目にする全てをインプットに変えるには、身の回りをただ眺めるのではなく、「観察する」ことを心掛けてください。すると、いつもの風景にも、たくさんの発見があることに気づきます。

ここで言う観察とは何か。それは

課題意識を持って、世の中を見る

ことです。

僕の場合、自分に子どもができた瞬間から、街中にベビーカーや親子用自転車があふれていることに気づいた経験があります。駅にある段差や、交通量が多いのに横断歩道がない道路なども、気になるようになりました。

逆に言えば、それまでの僕には、「ある」はずのものが見えていなかったのです。

これからはどんな時でも、「自分が今取り組んでいる仕事や課題」のことを意識してみてください。

いつもの通勤路も。
退屈な会議も。
友達のツイートも。
スーパーでの買い出しも。

「観察」の習慣が付けば、全てをインプットに変えることができるのです。

次回予告!

この記事は全4回連載のうち、第2回です。シリーズ構成は下記を予定しています(スイマセン、前回から変更しています)。

第1回:「100案思考」とは何か? 
第2回:どんなに多忙でも絶対に実践できるインプット術、教えます。 ※今回です
第3回:「アイデア出し」:ダメなアイデア大歓迎!質より量でいこう
第4回:「アイデア選び」:好き嫌いや多数決は禁止
第5回:「アイデア選び」:好き嫌いや多数決は禁止

 

次回はいよいよ「100案思考」の本丸である「アイデア出し」です!

ご期待ください。

フェムテックのトレンドから学ぶ、Z世代のセルフケアとは?

「一条の光の中」 Photo by 中村正樹
「一条の光の中」 Photo by 中村正樹

女性の健康をテクノロジーで解決するフェムテックが、欧米だけでなく、日本・アジアでもますます注目を集めています。

SDGs17の目標の5つ目にある「ジェンダー平等と女性支援」を後押しするものとして、キャリアと子育てを両立するサポートから、メンタルヘルス、ホルモンバランス、そしてセクシャルヘルスまで、女性の心身の健康問題を解決するテクノロジーが登場しています。そしてアプリ管理などデジタルサービスにとどまらず、商品開発そのものまでを変化させています。

また新型コロナウイルス感染症の流行による生活変化も、フェムテック市場を拡張させるきっかけとなりました。今回は、未来の消費を担うZ世代の視点からフェムテックのトレンドをお伝えします。

<目次>
フェムテックとは?
Z世代とフェムテック。関心の高い3つの領域
 ①月経〜妊娠・産後ケア
 ②セクシャルウェルネス
 ③メンタルヘルス
よりオープンな社会へ。Z世代の価値観とニーズ 


 

フェムテックとは?

フェムテックとは、Female Technologyの略で、別名Women’s Health Techとも言われており、女性の心身の健康ニーズに取り組む幅広いテクノロジーの総称です。デジタルデバイスでないサービスや商品の場合には、「フェムケア」と呼ばれることもあります。

フェムテック関連企業数は2012年から増え始め、2017年時点では50社程度でしたが、2020年には484社まで急増。その市場規模は、2025年には500億ドル規模になるとも言われています(※1)。例えば、Appleも月経周期トラッキング機能をApple Watchに搭載したことで注目を集めました。

※1
出典:Frost Sullivan Femtech—Time for a Digital Revolution in the Women’s Health Market


女性の健康問題といってもその種類は幅広く、

  • PERIOD HEALTH /月経
  • WELLNESS /ヘルスケア全般
  • SEXUAL WELLNESS /セクシャルウェルネス
  • FERTILITY SOLUTIONS /妊孕(にんよう)性・不妊
  • PREGNANCY & MOTHER CARE /妊娠・産後ケア
  • MENOPAUSE /更年期
  • MENTAL HEALTH /メンタルヘルス

など多岐にわたります。

2014年、IT業界を席巻する2社FacebookとAppleは、福利厚生のひとつとして従業員の卵子凍結費用を負担することを発表しました。アメリカでも、高学歴が多いSTEP業界で働く母親のうち43%がキャリアから脱落すると言われ、仕事と子育ての両立は大きな社会課題となっています(※2)。女性が経済的地位を維持し、キャリアと出産の両立を選択できる環境を提供することは、企業のアピールポイントとなります。若い世代を中心に注目が集まり、雇用へも大きな影響を与えています。

※2
出典:The changing career trajectories of new parentsin STEM , New York University


今後、女性の活躍人口を増やすためにも、これまで個人の問題として抱えてきた女性の健康問題を、所属するコミュニティーや社会でサポートしていく仕組みが必要だと認識され始めているのです。

経営者やマネジメント層、パートナー、友人、家族、同僚などが、女性でなくても、女性特有の状態とニーズを理解し、サポートすることが求められています。

Z世代とフェムテック。関心の高い3つの領域

Z世代とは、1995年ごろ以降に生まれ、リーマンショック以降の不安定な社会で育った世代です。ソーシャルメディアを駆使して失敗を回避しながら、将来のための自分磨きにも高い関心を持つと言われています。

身体的にも精神的にも成長過程にあるZ世代は、不安や悩みをSNSなどのオンライン上で相談し、不安を解消する傾向があります。コロナ禍の到来で、その傾向は広がり、健康や性に関する不安や悩みも、SNS上のコミュニティーや投稿を参考にするケースが増加しました。

ここでは、特にZ世代の関心が高いフェムテックの3つの領域を紹介します。

①月経〜妊娠・産後ケア

フェムテックといえばまず出てくるのは、月経や妊娠・出産に付随する問題を解決するための商品やサービスです。日本でも先日ファッションブランドの「GU」から吸水ショーツが発売されました。

アメリカの生理用ナプキンのサブスクサービス「Cora」は、購入すると、インドなどの少女達に生理用品が寄付される仕組み。生理用品が買えず休学・退学せざるを得ない少女たちをサポートすることができます。生理用品で、貧困地域の少女の自立を支援することができるというブランドコンセプトは、社会貢献に生きがいを感じるZ世代に強く響いています。

他にもアメリカでは、吸収経血量を確認できるBluetoothタンポンや、より正確な基礎体温を測定する膣内体温計、生理痛・PMS(月経前症候群)を軽減するお菓子のサブスクサービス、CBD(※3)使用の商品、妊娠検査キットもロックダウンで産婦人科へ通うことが困難になったことで需要が高まりました。

※3=CBD
ヘンプやマリファナ由来の成分カンナビジオール。自律神経や女性ホルモンを調整する働きがあるとされ、生理痛やPMS(月経前症候群)を和らげる効果がある。


またパーソナライズ・サービスとして、産後の女性が栄養士に母乳を送って、必要な栄養素などを診断してもらう食生活のアドバイスサービス「Lactation Lab」や「My Milk Labs」も登場しています。

②セクシャルウェルネス

「ME TIME!」「Self Pleasure(セルフプレジャー)」「Sexual Communication(セクシャルコミュニケーション)」は、自分自身を大切にする過ごし方や、性行為の同意などを含んだパートナーとのコミュニケーションのあり方を指します。日本ではオープンにされにくい女性のセックス・ライフの話題も、セクシャルウェルネスとして注目されています。

2020年、イタリアやスペインでは、セックストイの売り上げが急増し、ニュージーランドではロックダウン後に遠距離カップルでも使える商品や女性向けマッサージ器をはじめとする製品の売り上げが3倍近く増加しました(※4)。2025年までにセクシャルウェルネス市場は400億ドル規模に成長するとも言われています(※5)。インフルエンサーによるSNS投稿でも、以下のような情報が、知っておくべき知識として広くシェアされています。

※4
出典:The Guardian, Sex toy sales triple during New Zealand's coronavirus lockdown, 9Apr2020
 
※5
出典:ReserchandMarkets, Sexual Wellness Market - Global Outlook and Forecast 2020-2025, Jul2020

 

  • パートナーとのコミュニケーションの取り方(ロックダウン中のデートや性生活の送り方)
  • 自分を楽しませる、Self Pleasureの考え方や、正しい知識の提供

「関心はあるが、なかなか話せる相手がいない」分野だったものが、対面でのコミュニケーションが減った分、SNSを通じてやりとりされるようになりました。また、Clubhouseなどのコミュニティーの流行も相まって、なんでも相談できるオンラインの場が増えてきています。

女性の快感を導き出すテクニックを紹介する「OMGYes」は、専門家によって行われた2000人の女性に対する大規模リサーチにもとづき、性について正しい知識を学ぶ動画を配信しています。世界的な女優であり女性の活躍を牽引するエマ・ワトソンも学校では教えられない性の実態について学べる場の必要性を唱えています。

③メンタルヘルス

世界で約10億人が抱えているメンタルヘルスの問題は、多くが10代から始まっていると言われています。世界経済フォーラムが公表するグローバルリスク報告書でも、世界経済リスクとして、“若者の社会への幻滅感”というキーワードが取り上げられました。労働力の減少による経済損失はもちろん、メンタルヘルスが経済のシステムや政策、運用にまで影響を及ぼす可能性も示唆されています。

コロナ禍以前から問題視されていたZ世代のFOMO(フォーモ)(※6)も、オンラインコミュニケーションが増加し、ますます深刻化しています。

※6=FOMO
 the Fear Of Missing Outの略。自分が居ない間に他人が有益な体験をしているかもしれない、と言う不安に襲われることを指す。


自分と似た趣味思想をもつユーザーをフォローする結果、特定の意見を正しいと思い込んでしまう「デジタル・エコーチェンバー」や、ネット上の行動履歴に合わせユーザーの好みにあう情報が優先的に表示され、偏った情報しか見えなくなる「フィルターバブル」も懸念されています。

昨年ボディー石鹸を販売するLUSHは、YouTuberやインフルエンサーを中心に、メンタルヘルスキャンペーンDDD(Digital Detox Day)を開催しました。デジタル機器を一切オフにして健康と向き合う日を設定し、50カ国以上の60億人にリーチする結果となりました。

イギリスではメンタルヘルスの問題を深刻に捉え、「孤独は1日たばこを15本吸うのと同じくらい、健康に害を与える」と指摘し、「孤独担当大臣」というポストも設立されました。人に隠れて精神科医にかかる対処法ではなく、語り合い、感情をよりオープンにしていくべきとして、接触制限と景気悪化で孤立している若者へも政府として対策を講じています。

メンタルヘルスを解決するフェムテックとしては、陣痛をやわらげるVRセラピーや、パートナー男性もふくめて妊娠中・産後うつの早期発見に取り組むアプリ「Moment Health」があります。また、呼吸管理から自律神経にアプローチすることでストレスに対処するウェアラブル商品「iBreve」や、催眠療法からアプローチしたメンタルケアアプリ「Clementine」などが登場しています。

よりオープンな社会へ。Z世代の価値観とニーズ

Z世代は、あふれる情報の中で自分と社会の関係に常に意識を向けており、健康や性についても、さまざまな価値観や考え方を持ち合わせています。生理痛・PMSの改善法やSelf Pleasureの方法がSNS上で並ぶようになった背景には、もっとオープンにしたいというZ世代の価値観やニーズが映し出されているのではないでしょうか。

対面のコミュニケーションでは話題にしにくい、女性ならではの健康や性の問題をテクノロジーで解決する重要性が増しています。フェムテックが解決する問題は社会問題です。長引く在宅生活で問題が深刻化している可能性を考慮することが、次世代を担うZ世代への援護にもつながります。進化するフェムテック商品やサービスは、ジェンダーを超え、多様な人々の理解と働き方、そして人類の命のサイクルにもつながっているのです。


電通では、事業共創拠点engawa KYOTOのプロジェクト「Femtech and Beyond」として、クリエイティブチームと事業開発チームとが一体となり、フェムテック市場自体の意識向上のためのイベントや、新規事業・製品・サービス開発などの活動をしています。プロジェクトに関するお問い合わせは、info@femtechandbeyond.comまで。

東京五輪組織委が看護協会に「看護師500人を動員」要請する横暴! “国民の命より五輪ファースト”は検査やワクチンでも

 ついに開催まで3カ月をきった東京五輪。開催に反対する声は日に日に高まっているが、そんななか、目を疑うようなニュースが飛び込んできた。  なんと、東京五輪組織委員会が、日本看護協会に対して「約500人の看護師を大会スタッフとして動員しろ」と要請していたことを、25日にしん...

アイドル本人に聞く。推し活時代のコンテンツづくり

「推し活」が盛んな今、「推される」側のアイドルや、アイドルとともにコンテンツをつくるクリエイターはどのようなことを意識しているのか? SNS時代におけるファンとの繋がり方とは?

アイドルをテーマに、メディアやコミュニケーション、さらにはエンターテインメントのあり方を考える本連載。最終回は、コンテンツプロデューサーの電通・佐藤祐亮氏が、ラストアイドルのメンバー・間島和奏さんと、楽曲の振付を担当するakane先生に話を聞き、 エンターテインメント分野におけるアイドルの現在地を探ります。

アイドル論4回目

アイドルは、いろんな料理が楽しめる「フードコート」のような存在

佐藤:今日はいろいろお話を聞かせてください。まずはお二人の自己紹介からお願いします。

間島:ラストアイドルの間島和奏です。ラストアイドルは、秋元康先生が企画したアイドルオーディション番組から生まれたグループで、2017年から活動しています。「プロアマ問わず兼任可能」の条件で募集したり、番組の中でデビューをかけたメンバー入れ替えバトルを行ったりと、これまでにない形でメンバーが選抜されているのが特徴です。デビューをかけたバトルに敗れた場合には「セカンドユニット」を結成するチャンスが与えられ、私はそのセカンドユニット「Someday Somewhere」の一員としてデビューしました。

akane:振付師のakaneです。代表的な仕事としては、大阪府立登美丘高校ダンス部のコーチとして「ダンシング・ヒーロー」の振付をしたり、同部がハリウッド映画「グレイテスト・ショーマン」のPR大使に選ばれた際にプロモーションビデオの振付などを担当してきました。現在は登美丘高校ダンス部のコーチは引退し、CMやアーティストの振付、ラジオのDJなどで活動しています。ラストアイドルとは2019年から一緒に仕事をしています。

佐藤:ラストアイドルとつくってきた作品の中で、特に印象に残っているものはありますか?
 
akane:私が初めて振付を手掛けたシングル曲「青春トレイン」です。今あらためてMVを見ると、こんなに複雑で難しいフォーメーションのダンスだったのかと自分でも驚きます。3、4カ月かけてメンバーとつくり上げていきましたが、当時は皆泣きながら練習していましたね。でもこの作品を経験したからこそ、今では振付を覚えるのが皆早くなりましたし、練習もスムーズにいくようになったと思っています。

間島:「青春トレイン」は本当に大変な作品でした。朝から晩まで毎日ダンスの練習をしてノイローゼになりかけるくらい……。それまではユニットごとにバトルをすることが多く、ラストアイドル全員で一つの作品をつくることにまだ慣れていない時期でした。メンバー同士のすれ違いもありましたし、「皆で他のアイドルグループと戦うぞ!」という意識がまだまだ薄かった。

でも、これまでたくさんのチームをつくってこられたakane先生が来てくれてから、ラストアイドルにも徐々に「チーム感」が生まれていきました。皆、akane先生のことはメンバーの一員のように思っています。

佐藤:間島さんは、アイドルという仕事のどこに魅力を感じて、自分もなりたいと思ったのでしょうか。

間島:私はAKB48さんに憧れてアイドルを目指しました。小学3年生のときに、「ヘビーローテーション」のMVを見て、私もあんなふうにかわいい服を着て「キラキラ」したいなと思ったんです。

「キラキラ」を言葉で説明するのはとても難しいのですが、アイドルって歌やダンスのパフォーマンスはもちろん、バラエティー番組に出演したり、お芝居をしたりもしますよね。そういう、なんでも挑戦できる無敵な存在ってアイドルだけだと私は思っているんです。そしてグループでは、メンバー一人一人の個性を評価してもらえるところも魅力だと思います。

佐藤:なるほど。ただ、一般的には歌だったら専業の歌手のほうが、演技だったら専業の役者のほうが上手いですよね。そういう意味で言うと、間島さんが言う「アイドル」は、ある種の「不完全さ」も魅力の一つで、応援したくなるポイントなのでしょうか。

間島:そう思います。私はアイドルって「フードコート」みたいだと思っているんです。高級イタリアンを毎日食べると飽きちゃうけど、フードコートだったら気軽に行けていろんな料理が楽しめる。完成された料理ではないかもしれないけれど、まだまだ美味しくなる可能性があって、どんどん「味」が磨かれていくところも、楽しいところだと感じますね。

ファンとのコミュニケーションを意識して、振付に「仕掛け」をつくる

佐藤:akane先生は、本格的にアイドルの振付をするのは、ラストアイドルが初めてだそうですね。大変だと感じたことはありますか?

akane:ラストアイドルには地方のメンバーもいて、全員でそろって練習できる期間がとても少ないので、毎回大変です。限られた期間の中で振付や立ち位置を全部覚えて、歌の練習もしなくてはなりません。さらにメンバーたちは、配信イベントの出演などほかの仕事もあり、それらにも全力で取り組んでいるのはすごいなと感心します。

佐藤:ラストアイドルと関わるようになってakane先生ご自身には何か発見や変化はありましたか?

akane:ライブでラストアイドルファンの方々を見たときには、その熱量に驚きましたね。お客さんがコール&レスポンスしたり、サイリウムを振って一緒に踊ったり、そういったことでアイドルとコミュニケーションを取っていて、この両者の距離感がとても大切なのだと感じました。

そういうこともあって、ラストアイドルの振付は、楽曲の雰囲気にもよりますが、「ファンとのコミュニケーションが取りやすいパフォーマンス」を心掛けています。「こういう振付をしたらファンはどんなリアクションをしてくれるかな」と考えて、「仕掛けポイント」をつくったりしていて……。それが受けることもあるし、変だと言われることもあるのですが、どんな反応が返ってきてもすごく面白くて楽しいんですよね。

だから私はパフォーマンス中のラストアイドルだけではなく、「パフォーマンスを見るファン」も普段からよくチェックしています。他のアイドルグループのライブDVDもよく見ていて、アイドルのパフォーマンスについては今も日々研究中です。

また、ラストアイドルは他のアイドルグループがやっていないことにチャレンジしている印象があります。毎回楽曲の雰囲気が全く違うので、振付にとても苦労するのですが、私自身も「まだ誰もやったことのないような新しいものをつくりたい」と思っているので、ラストアイドルとのお仕事はいつもとても楽しいです。

9作目のシングル「何人(なんびと)も」では殺陣を使ったダンスを、4月28日にリリースする10作目のシングル「君は何キャラット?」では、インドのボリウッドダンスの要素を取り入れるなど、毎回振付のなかに「初めてトライする要素」を、必ず一つは入れるようにしています。

SNS時代の今、アイドルの「自己プロデュース力」は必須

佐藤:間島さんはアイドルファンから自分が「推される」立場になって、気を付けていることや意識していることはありますか?

間島:ファンの皆さんに「どう推し活をしたらいいのか」を自分から提示するよう意識しています。例えば、歌番組に出演した際に、番組のホームページから感想を送ってほしいとか、雑誌のアンケートに答えてほしいとか……。握手会やオンラインイベントの券を購入して参加してもらえることはとてもありがたいのですが、金銭的に難しい方もいると思います。そういう方々にも推し活をしてもらえるような具体的な方法を、積極的に発信するようにしていますね。

佐藤:アイドルと言えばCDを買って投票するようなイベントもありますよね。そうしたアイドルとファンとの「協力型イベント」にはどういった心持ちで取り組んでいるのでしょうか。

間島:協力型イベントはファンの皆さんにお願いをしないといけないので、自分もその分頑張らなくてはという気持ちは常にありますね。でも「ファンの皆さんは、私たちの3倍大変だ」と思うようにしているんです。学業や仕事があるなかで、配信を見るための時間をやりくりしてくれたり、CDを購入してくれたり……。私たちアイドルももちろん大変だけど、それ以上にファンの皆さんも大変な思いをしながら応援してくれているということは、いつも忘れないように心掛けています。

そして、応援してくださるファンの皆さんには、「アイドル」と「ファン」の一体感を味わっていただきたいなと思っています。SNSや配信する動画の内容も一方通行のコミュニケーションではなくて、ファンの皆さんが「一緒に時間を共有している」と感じてもらえるよう工夫しているんです。私もまだまだ試行錯誤をしているところなのですが、そうした「自己プロデュース」が上手な子は、どんどん人気が上がってくる印象がありますね。

佐藤:アイドル自身が自分なりにできることを考えて精いっぱいやっていくことで、ファンもより応えてくれるということでしょうか。

間島:そう思いますね。今はSNSが盛んで、自分からどんどん発信できる時代だからこそ、個々のプロデュース力が本当に大切になっていると感じます。次回のシングル「君は何キャラット?」のセンターは、「ラスアイ、よろしく!」の番組視聴者投票で1位を獲得した西村歩乃果に決まりました。彼女はInstagramやTwitterのフォロワーがとても多く、自己プロデュース力がとても高い子なんです。

今後も彼女のように、ダンスや歌などのパフォーマンス力に加えて、自己プロデュース力が高い子が選抜メンバーになったり、センターに選ばれたりしていくのかなと思っています。

アイドルとファンは対等。両者の歯車がうまく嚙み合えば、大きなパワーが生まれる

佐藤:ここまでのお話を聞いて、アイドル文化はやはり「アイドル」と「ファン」が一緒につくりあげていくものだと感じました。応援してくれる人のパワーを上げていくのはアイドル側の頑張りで、アイドルのパワーを上げていくのはファンの熱量。両者が対等であることが、今のアイドルの特徴なのかもしれません。最後に、お二人が今後挑戦したいことを教えてください。

間島:オンラインライブのやり方をもっと工夫できないかなと考えています。アイドルのライブってパフォーマンスに対してファンの皆さんがコール&レスポンスしてくれたり、サイリウムを振ってくれたり、アイドルとファンで一緒にライブをつくりあげるところが魅力の一つだと思うんです。それが今のオンラインライブでは、双方向のコミュニケーションが取りづらくなっていると感じます。

例えばリアルタイムでファンの皆さんのコメントをステージの演出に使うとか、ギフティング量に応じて火花やスモークなどの演出を変化させるとか、ファンの皆さんが能動的に参加できるライブを今後つくっていけたらいいなと思いますね。

akane:私はいつかラストアイドルの皆とダンス作品を映像で残したいなと思っています。メンバーと過ごした時間も長くなってきて、それぞれの「この表情がいい!」とか、「ここを見てほしい!」というポイントを、私は一番わかっているつもりなので、他の人には表現できないような作品をつくれる気がしています。

また、今のアイドルの子たちは常にSNSをチェックして、いろいろなことにアンテナを張っているので、情報をキャッチする力がすごいですよね。だからこそ、彼女たちから面白いアイデアがたくさん出てくることにも期待しています。その意見を積極的に取り入れて、これからも楽曲やライブを一緒につくっていきたいですね。アイドル自身の意見を取り入れてつくりあげたものは、ファンにもきっと楽しんでもらえると思います。

佐藤:アイドルと言えば、昔はプロデューサーが絶対で、そこにファンが入り込む余地はなく、つくられたものをテレビで観て楽しむエンターテインメントでした。でもSNSが出てきたことで、大人たちが用意したメディアやイメージで売り出すだけではなく、アイドル本人たちが自分自身をプロデュースする時代になっていると感じます。

そのなかでアイドルたちから、これまで思いつかなかったような考えや面白いアイデアが生まれることもあって、それを運営側が積極的に取り入れていくことが、今後大切になってくるのではないでしょうか。

そして、応援するファンや協賛する企業など、「アイドル」という一つのコンテンツに関わる人たち皆が同じベクトルを持つことで、アイドルのパワーは何倍にもなり、どんどん面白いものが生まれてくるのだと思いました。お二人とも、本日はありがとうございました!

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パチンコ店「オリンピック」中の入れ替えはどうなる?「旧規則機」の入れ替え撤去の継続を要請

 新型コロナウイルス感染拡大の観点から国家公安委員会は昨年5月、「遊技機の規則に関する経過措置」を従来の3年から4年に変更した。この施行を受けて、「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」は旧規則機の取り扱い内容をすぐさま決議した。

 この決議によると、高射幸性機は従来通りの撤去が義務付けられたものの、2021年に検定切れを迎える遊技機は最大2021年11月30日までの設置が可能。ただし、これら旧規則機の取り扱いについては、パチンコ・パチスロ産業21世紀会に計画的な撤去の旨を記した「誓約書」と、入れ替えの際にその都度、所轄警察署へ「新旧遊技機設置比率明細書」を提出する必要がある。

 元々、旧規則機の計画的撤去に関しては、遊技機のタイプ別に「オリンピック・パラリンピック期間中を考慮して順次撤去」、もしくは「オリンピック・パラリンピック期間を除く」とされていた。

 だが、現状はパチンコ機が80万台以上、パチスロ機が70万台以上の旧規則機の設置があるとされ、定番の『海物語シリーズ』や『ジャグラーシリーズ』だけでも相当数に及ぶという。

 これらの入れ替えや撤去が短期間に集中すると、その対応が非常に懸念されるとし、日本遊技機工業組合と日本電動式遊技機工業協同組合は4月12日、全日本遊技事業協同組合連合会、日本遊技関連事業者協会、MIRAIぱちんこ産業連盟、余暇環境整備推進協議会の4団体に対して、オリンピック・パラリンピック期間中においても旧規則機の入れ替え撤去を継続するよう文書を通じて協力を要請したそうだ。

 これについて、全日本遊技事業協同組合連合会は4月19日、各都県方面遊協に対してオリンピック・パラリンピック機関の遊技機の入れ替えについて通知した模様。業界各誌が報じている。

 通知文書では、パチンコ・パチスロ産業21世紀会の決議時点では、オリンピック・パラリンピック期間中の入れ替えは難しいと行政に要望していたとのこと。しかし今年2月~3月の旧規則機の撤去状態は約1%と低く、4月以降の新規則機導入予定も低調と説明。

 この状況下では11月末までの完全撤去は困難と予想されることから、オリンピック・パラリンピック期間中における計画的撤去継続の要望が出されたと述べたそうだ。

 その上で、オリンピック・パラリンピック期間中が撤去期限の遊技機は10月以降の入れ替えもあり得るとした昨年の想定とは状況が異なり、新規則機の導入が大幅に遅れていると説明した。

「業界としては、11月には旧規則機の完全撤去を完遂しなくてはならない」と協力を呼び掛けているという。

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