カテゴリー: 暮らしの情報センター
安倍首相が施政方針演説でフェイク! 地方創生支援策の成功例として実名を出した移住男性が既に仕事を辞め転居していた
第58回「JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」受賞作が決定
日本アドバタイザーズ協会(JAA)は1月16日、第58回「JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」の結果を発表した。対象作品は2018年10月1日から19年9月30日までに放送・掲出・掲載された広告。
同広告賞の特徴は、審査に広告関係者を含まず、消費者が生活の視点から審査を行い受賞作が決定されること。111人の消費者審査員が約1カ月間にわたり選考を行った。
「新聞」「雑誌」「テレビ」「ラジオ」「デジタル」「屋外・交通」の6部門に寄せられた応募総数は1544点。その中から70作品が入賞し、さらに部門別のJAA賞グランプリ6点、経済産業大臣賞1点が選ばれた。また、グランプリ6作品に携わった企業または個人にベストパートナー賞が贈られた。
審査員長を務めた青山学院大の芳賀康浩教授は、受賞作の傾向について「平成から令和へという時代の変わり目にあっても、消費者は懐古主義的というよりむしろ未来志向であると感じた。企業が製品・サービスやビジネスを通じて消費者に提供しようとしているのはどのような未来なのか。広告が共感を得られるかどうかは、そこにかかっているのかもしれない」と総括した。
JAA賞グランプリ、経済産業大臣賞は次の通り。
■新聞広告部門
味の素「非常においしく食べられます。」

非常食をおいしく食べられるようアレンジレシピを紹介しているのが斬新で面白い。非常食の始末の悩みを解消してくれる有用な広告。これを機に非常食の賞味期限を確認しようと思った。(審査員:女性)
■雑誌広告部門
味の素「シニアこそ、お肉。」

キャッチフレーズとおじいちゃんおばあちゃんの表情がインパクト大。高齢化社会の現代を反映している。おじいちゃんおばちゃんの笑顔がサイコー!!!(審査員:男性)
■テレビ広告部門
クボタ「壁がある。だから、行く。『Try For Dreams. 』篇」

貧困と社会貢献をテーマにしているがつらい内容ばかりでなく未来がしっかり見える感動的なCM。企業の取り組みがうまく表現されていて企業イメージがアップした。(審査員:女性)
■ラジオ広告部門
パナソニック「温度を聞く」

温度と音の視点がユニーク。音の違いなど意識していなかったが音の魅力を最大限に生かしていて面白い。そうなんだ!と新たな発見とともに友達に話して聞かせたい。(審査員:女性)
■デジタル広告部門
東日本高速道路「父と母の卒業旅行 ~The Last Long Drive~」

高齢者ドライバーという社会問題に一石を投じる、時代にマッチした秀逸な作品。免許返納をポジティブに捉えているのがいい。いろんな人に見てもらい家族で話し合うキッカケになればいい。(審査員:男性)
■屋外・交通広告部門
南海電気鉄道「世界初!?で超めでたい!電車の夫婦にこどもが誕生」

町や鉄道だけでなく人々の心も元気にしてくれる。人より鯛の方が多いというところからのアイデアの凄さに完敗。めでたい電車に乗ってみたくなったし応援したくなる。(審査員:女性)
■経済産業大臣賞
テレビ広告部門
東海テレビ放送「見えない障害と生きる。」

発達障害で苦しむ人たちを圧倒的なリアリティーで問題提示している。この事実を多くの人に知ってもらうことは問題解決の第一歩であり、テレビメディアの今後の役割ともいえるのではないか。(審査員:男性)
フィンランド流“サウナスタイル”な思考法〜ダイバーシティー時代に忘れてはならない三つの視点
多くの企業で「新規事業」立ち上げの機運が高まる昨今。そのための部署ができたり、ある日突然「新しいビジネスを考えよ」というミッションを与えられたり、というケースが増えているようです。
でも、何をしたらいいのだろう。正解はどこにある?そのヒントを探るため、実際に新規事業開発と向き合い模索する日本企業5社の皆さんと共に、2019年11月、私たちはフィンランドを視察しました。この連載では現地で得た気付きや視点を日本でも生かすべく、考察していきます。
世界最年少の女性首相が生まれたのは偶然じゃない。フィンランドの底力とは
自然豊かな観光地としてのイメージが強いフィンランド。他にオーロラやムーミン、そして最近日本でもブームに火がついたサウナも人気ですが、実は真の魅力はもっと奥深いところにあります。世界幸福度ランキング2年連続1位(2019年時点)。5歳から性教育が開始されるほどの先進的な教育やダイバーシティーへの寛容度。世界最年少34歳の女性首相が誕生したのは記憶に新しいニュースですが、それは決して偶然ではなく、多様性を尊重し、若いときから一人一人が主体性を持って考え、行動することが重要視されるフィンランドの教育方針が具現化した形といえます。

私たちが今回、さまざまなビジネス視察の中でもフィンランドを選んだのには理由があります。今のフィンランドを成り立たせている価値観やマインドが、“起業家の宝庫”として同地が注目を集める大きな要因となっていると考えたからです。さて、フィンランドの人々は一体、何を考えているのでしょうか?
「企業にも、大学にも、優劣はない」は、本音か建前か
フィンランドの中心地は、国際空港があるバンター、首都ヘルシンキ、その西にあるエスポーの3都市。車で1時間もあれば回れるこの一帯に、政治や経済の主要な拠点が集まっています。まず私たちは、特に重要な鍵を握るエスポー市へと向かいました。

エスポーは北欧のイノベーション拠点として世界的に注目を集めていて、多くの若い起業家が育つ場所。中でも数々のイノベーションが生まれる起点となっているアールト大のデザインファクトリーを訪れ、話を聞くことに。
「フィンランドでは、大学にも企業にも、優劣はない。一つ一つに個性があるから」
「パートナーを組むときにもお互いの規模の大小は一切関係ない。ヒエラルキーはなく、どこと組んでもいい」
こう話すのは、エスポー市役所で国際関係の任務を担当する陶芳兰(Fanglan Tao)氏。上海出身ですが1998年からフィンランドに移り住み、ヘルシンキ工科大(現アールト大)で修士を取得。アメリカと中国にて多国籍企業に勤めた後、2015年からエスポー市役所で勤務しているという国際派の彼女は母でもあり、上海とフィンランドの育児環境の大きな違いについてこう話しました。
「フィンランドでは、育児が働くことの妨げになることはない。必ず保育園が終わる時間に仕事は終わる。フィンランドでは、人のホリデーを邪魔しないことがとても大事!」
彼女が実際に感じているように、ワークライフバランスが充実した男女平等の国としても名高いフィンランドですが、教育にも事業開発にも“平等主義”の考え方が浸透しているといいます。果たしてそれは真実なのか、それとも…。半信半疑の心持ちで、学内を見学することにしました。
東京藝大と、一橋大と、東京工業大が合併!?
アールト大は、フィンランドの国策によりヘルシンキ芸術大、ヘルシンキ経済大、そしてヘルシンキ工科大の3校が合併し2010年に誕生しました。多分野、多国籍の学生たちが共に学ぶことで革新的なアイデアを生み出し、イノベーションを起こすことが目的です。それはまさにフィンランドの起業家を育てる“土壌”。日本で例えるなら、東京藝術大、一橋大、東京工業大が一つになるほどのこの大胆な試みは、フィンランドの学生たちにどう影響しているのでしょうか。

私たちが訪れた「アールト大デザインファクトリー」は、この3大学のコラボレーションの象徴ともいえる施設のひとつ。クリエイティブ人材を育てるプログラムが用意され、学生たちを刺激するさまざまな工夫が盛り込まれています。中でもユニークなのが、忽然と出現する“Hugging point(ハギングポイント)”。そこでは誰とハグしてもOK。壁にはハグの種類が書かれたメニュー表が掲げられ、ハグメーターなる計測器まであります。学生の壁を取り払い、コミュニケーションを促すデザインが各所に仕掛けられているのです。
多様な価値観が集う“サウナ”は、イノベーションの拠点
さらに目玉となる学内の施設が、「スタートアップサウナ」。起業家を目指すさまざまな若者が集う場です。多様な学生たちが同じ場に集まり、それぞれ多様な価値観に触れるその光景はまるで本当の“サウナ”のよう。
フィンランド人にとってサウナは、日本人にとってのお風呂のように身近なものであり、家族団らんの場、そして社交場でもあります。公共のサウナでは多様な価値観、多様な人種が同じ空間に集まる中でコミュニケーションが交わされ、時にはサウナの中で、スタートアップと投資家が出資の相談をすることもあるそうです。
彼らはさまざまな価値観が集まるからこそ、イノベーションが起こると信じています。多様な人々、そして多様な価値観を認め合う“サウナスタイルな思考”が根っこにあると、何かと何かを比べて優劣をつけることに意味はなく、自分とは異なる相手を尊重することこそ、生産的かつ効率的であるという結論が導かれます。「優劣はない」、まるで理想論のように感じられるこの考えは、実はイノベーションへの最短距離になり得るのです。
“大企業志向”だったフィンランドの学生が変わったワケ
果たして今の日本はどうでしょう。各国のジェンダー平等が数値化された「ジェンダー・ギャップ指数」は121位と史上最低を記録(2019年12月発表)。男女の賃金格差はいまだに高く、シングルマザーに社会は厳しく、企業のトップはほとんどが男性、女性政治家も依然少ないまま。一方で日本における自殺者の約7割が男性です。治安が圧倒的に良く、医療も充実した長寿大国の日本が、世界幸福度ランキングは58位(2019年3月発表)と良いとはいえないスコアなのはなぜなのか。その答えのひとつが、「固定化された価値観」なのではないでしょうか。理想の男性像、理想の女性像、理想の幸せが固定化され、そこから外れると「負け組」と見なされます。正解の価値観が固定化されると、必然的に「不幸」に位置付けられる人が増えることになります。その分かりやすい事例の一つが日本の厳しい「就活戦線」です。
今でこそ多くの若者たちに起業文化が息づいているフィンランドでも少し前までは、学生たちは“大企業志向”だったといいます。それが変化した背景の一つとして見逃せないのが、2013年、マイクロソフトによるノキアの買収劇でしょう。それまで優秀な学生たちは大企業ノキアへの就職を望みましたが、ノキア衰退の過程で多くのフィンランド人が解雇され、職を失うことに。そしてそれが分岐点となりました。失業した人たちが次々と起業し、やがてスタートアップブームが生まれたのです。
大企業への就職だけが道ではない。多様な価値観を認め合い、イノベーションを起こしてこそ新しい未来が開ける。そう信じる若者たちが果敢に立ち上がりました。そしてそれが、私たちがこの後行くことになるSLUSH(スラッシュ:ヘルシンキで2008年に始まったスタートアップイベント。詳細は連載第2回にてご紹介)の立ち上げにもつながることとなります。3校が合併して誕生したアールト大やスタートアップサウナにおける“共創(コ・クリエーション)”が重んじられる環境は、学生が柔軟な思考でスタートアップを始めるための大きな後押しとなっているのです。
ダイバーシティーは福祉にとどまらない、ビジネスを広げる“可能性”だ
さて、新しいビジネスを起こすための“サウナスタイル”な思考法とは何なのか。三つにまとめると、
- 多様な価値観を受け入れる「寛容度」
- 異なる価値観を融合させ、さらに新しい価値を生み出す「クリエイティビティー」
- 失敗を恐れず、失敗から学ぶ前提で進める「プロセス重視型」
フィンランドの学生たちが失敗を恐れない背景として、幼いころからプロセス重視の教育を受け、失敗こそ次への学びへとつなげる力があるからだけではなく、失敗した人に対する手厚い支援が整っていることも重要な側面です。つまり、このような三つの思考法を生み出す背景には国策が大きく寄与していることがうかがえます。
男女平等、LGBTQ、障がい、働き方、家族の形など“ダイバーシティー”が叫ばれる時代になってきましたが、今はまだそれが“福祉施策”と捉えられ、企業の関わり方もCSR施策の一環にすぎないケースが多いようです。しかし、多様性を認め合うことは福祉の枠組みを超えてビジネスを拡張する可能性があることを、フィンランドは教えてくれます。教育やビジネス開発などあらゆる側面で“多様な価値観の融合”が行われ、それが新たなイノベーションを生み出しているこの状況から学ぶべきことは多々あります。次回は、そんなフィンランドでさまざまなスタートアップが出展する“SLUSH”視察のレポートを中心にお伝えします。
“サウナスタイル”な思考法〜ダイバーシティー時代に忘れてはならない三つの視点
1.多様な価値観を受け入れる「寛容度」
2.異なる価値観を融合させ、さらに新しい価値を生み出す「クリエイティビティー」
3.失敗を恐れず、失敗から学ぶ前提で進める「プロセス重視型」
【参加者募集】「北欧オープンイノベーション」カンファレンスを開催!
本イベントでは、オープンイノベーション先進国となった「フィンランド」のエコシステムについて、文化・地政学・経済的背景や社会課題への取り組み事例を紹介。さらに現地を視察した日本の事業会社による、ファインディングスや日本での事業への生かし方についてのパネルディスカッションを実施、それぞれの視点から自社のアセットを活用したオープンイノベーション・新規事業の在り方を考えていきます。
【開催概要】
主催:株式会社電通
開催日時:2020年1月27日(月) 16:00~17:30(開場:15:45)
会場:電通14階 オープンセッションラウンジ (東京都港区東新橋1-8-1 電通本社内)
定員:50名(※事前登録制。応募者多数の場合、先着順)
参加費:無料
カンファレンスの内容やお申し込み方法などの詳細は応募フォームへ
フィンランド流“サウナスタイル”な思考法〜ダイバーシティー時代に忘れてはならない三つの視点
多くの企業で「新規事業」立ち上げの機運が高まる昨今。そのための部署ができたり、ある日突然「新しいビジネスを考えよ」というミッションを与えられたり、というケースが増えているようです。
でも、何をしたらいいのだろう。正解はどこにある?そのヒントを探るため、実際に新規事業開発と向き合い模索する日本企業5社の皆さんと共に、2019年11月、私たちはフィンランドを視察しました。この連載では現地で得た気付きや視点を日本でも生かすべく、考察していきます。
世界最年少の女性首相が生まれたのは偶然じゃない。フィンランドの底力とは
自然豊かな観光地としてのイメージが強いフィンランド。他にオーロラやムーミン、そして最近日本でもブームに火がついたサウナも人気ですが、実は真の魅力はもっと奥深いところにあります。世界幸福度ランキング2年連続1位(2019年時点)。5歳から性教育が開始されるほどの先進的な教育やダイバーシティーへの寛容度。世界最年少34歳の女性首相が誕生したのは記憶に新しいニュースですが、それは決して偶然ではなく、多様性を尊重し、若いときから一人一人が主体性を持って考え、行動することが重要視されるフィンランドの教育方針が具現化した形といえます。

私たちが今回、さまざまなビジネス視察の中でもフィンランドを選んだのには理由があります。今のフィンランドを成り立たせている価値観やマインドが、“起業家の宝庫”として同地が注目を集める大きな要因となっていると考えたからです。さて、フィンランドの人々は一体、何を考えているのでしょうか?
「企業にも、大学にも、優劣はない」は、本音か建前か
フィンランドの中心地は、国際空港があるバンター、首都ヘルシンキ、その西にあるエスポーの3都市。車で1時間もあれば回れるこの一帯に、政治や経済の主要な拠点が集まっています。まず私たちは、特に重要な鍵を握るエスポー市へと向かいました。

エスポーは北欧のイノベーション拠点として世界的に注目を集めていて、多くの若い起業家が育つ場所。中でも数々のイノベーションが生まれる起点となっているアールト大のデザインファクトリーを訪れ、話を聞くことに。
「フィンランドでは、大学にも企業にも、優劣はない。一つ一つに個性があるから」
「パートナーを組むときにもお互いの規模の大小は一切関係ない。ヒエラルキーはなく、どこと組んでもいい」
こう話すのは、エスポー市役所で国際関係の任務を担当する陶芳兰(Fanglan Tao)氏。上海出身ですが1998年からフィンランドに移り住み、ヘルシンキ工科大(現アールト大)で修士を取得。アメリカと中国にて多国籍企業に勤めた後、2015年からエスポー市役所で勤務しているという国際派の彼女は母でもあり、上海とフィンランドの育児環境の大きな違いについてこう話しました。
「フィンランドでは、育児が働くことの妨げになることはない。必ず保育園が終わる時間に仕事は終わる。フィンランドでは、人のホリデーを邪魔しないことがとても大事!」
彼女が実際に感じているように、ワークライフバランスが充実した男女平等の国としても名高いフィンランドですが、教育にも事業開発にも“平等主義”の考え方が浸透しているといいます。果たしてそれは真実なのか、それとも…。半信半疑の心持ちで、学内を見学することにしました。
東京藝大と、一橋大と、東京工業大が合併!?
アールト大は、フィンランドの国策によりヘルシンキ芸術大、ヘルシンキ経済大、そしてヘルシンキ工科大の3校が合併し2010年に誕生しました。多分野、多国籍の学生たちが共に学ぶことで革新的なアイデアを生み出し、イノベーションを起こすことが目的です。それはまさにフィンランドの起業家を育てる“土壌”。日本で例えるなら、東京藝術大、一橋大、東京工業大が一つになるほどのこの大胆な試みは、フィンランドの学生たちにどう影響しているのでしょうか。

私たちが訪れた「アールト大デザインファクトリー」は、この3大学のコラボレーションの象徴ともいえる施設のひとつ。クリエイティブ人材を育てるプログラムが用意され、学生たちを刺激するさまざまな工夫が盛り込まれています。中でもユニークなのが、忽然と出現する“Hugging point(ハギングポイント)”。そこでは誰とハグしてもOK。壁にはハグの種類が書かれたメニュー表が掲げられ、ハグメーターなる計測器まであります。学生の壁を取り払い、コミュニケーションを促すデザインが各所に仕掛けられているのです。
多様な価値観が集う“サウナ”は、イノベーションの拠点
さらに目玉となる学内の施設が、「スタートアップサウナ」。起業家を目指すさまざまな若者が集う場です。多様な学生たちが同じ場に集まり、それぞれ多様な価値観に触れるその光景はまるで本当の“サウナ”のよう。
フィンランド人にとってサウナは、日本人にとってのお風呂のように身近なものであり、家族団らんの場、そして社交場でもあります。公共のサウナでは多様な価値観、多様な人種が同じ空間に集まる中でコミュニケーションが交わされ、時にはサウナの中で、スタートアップと投資家が出資の相談をすることもあるそうです。
彼らはさまざまな価値観が集まるからこそ、イノベーションが起こると信じています。多様な人々、そして多様な価値観を認め合う“サウナスタイルな思考”が根っこにあると、何かと何かを比べて優劣をつけることに意味はなく、自分とは異なる相手を尊重することこそ、生産的かつ効率的であるという結論が導かれます。「優劣はない」、まるで理想論のように感じられるこの考えは、実はイノベーションへの最短距離になり得るのです。
“大企業志向”だったフィンランドの学生が変わったワケ
果たして今の日本はどうでしょう。各国のジェンダー平等が数値化された「ジェンダー・ギャップ指数」は121位と史上最低を記録(2019年12月発表)。男女の賃金格差はいまだに高く、シングルマザーに社会は厳しく、企業のトップはほとんどが男性、女性政治家も依然少ないまま。一方で日本における自殺者の約7割が男性です。治安が圧倒的に良く、医療も充実した長寿大国の日本が、世界幸福度ランキングは58位(2019年3月発表)と良いとはいえないスコアなのはなぜなのか。その答えのひとつが、「固定化された価値観」なのではないでしょうか。理想の男性像、理想の女性像、理想の幸せが固定化され、そこから外れると「負け組」と見なされます。正解の価値観が固定化されると、必然的に「不幸」に位置付けられる人が増えることになります。その分かりやすい事例の一つが日本の厳しい「就活戦線」です。
今でこそ多くの若者たちに起業文化が息づいているフィンランドでも少し前までは、学生たちは“大企業志向”だったといいます。それが変化した背景の一つとして見逃せないのが、2013年、マイクロソフトによるノキアの買収劇でしょう。それまで優秀な学生たちは大企業ノキアへの就職を望みましたが、ノキア衰退の過程で多くのフィンランド人が解雇され、職を失うことに。そしてそれが分岐点となりました。失業した人たちが次々と起業し、やがてスタートアップブームが生まれたのです。
大企業への就職だけが道ではない。多様な価値観を認め合い、イノベーションを起こしてこそ新しい未来が開ける。そう信じる若者たちが果敢に立ち上がりました。そしてそれが、私たちがこの後行くことになるSLUSH(スラッシュ:ヘルシンキで2008年に始まったスタートアップイベント。詳細は連載第2回にてご紹介)の立ち上げにもつながることとなります。3校が合併して誕生したアールト大やスタートアップサウナにおける“共創(コ・クリエーション)”が重んじられる環境は、学生が柔軟な思考でスタートアップを始めるための大きな後押しとなっているのです。
ダイバーシティーは福祉にとどまらない、ビジネスを広げる“可能性”だ
さて、新しいビジネスを起こすための“サウナスタイル”な思考法とは何なのか。三つにまとめると、
- 多様な価値観を受け入れる「寛容度」
- 異なる価値観を融合させ、さらに新しい価値を生み出す「クリエイティビティー」
- 失敗を恐れず、失敗から学ぶ前提で進める「プロセス重視型」
フィンランドの学生たちが失敗を恐れない背景として、幼いころからプロセス重視の教育を受け、失敗こそ次への学びへとつなげる力があるからだけではなく、失敗した人に対する手厚い支援が整っていることも重要な側面です。つまり、このような三つの思考法を生み出す背景には国策が大きく寄与していることがうかがえます。
男女平等、LGBTQ、障がい、働き方、家族の形など“ダイバーシティー”が叫ばれる時代になってきましたが、今はまだそれが“福祉施策”と捉えられ、企業の関わり方もCSR施策の一環にすぎないケースが多いようです。しかし、多様性を認め合うことは福祉の枠組みを超えてビジネスを拡張する可能性があることを、フィンランドは教えてくれます。教育やビジネス開発などあらゆる側面で“多様な価値観の融合”が行われ、それが新たなイノベーションを生み出しているこの状況から学ぶべきことは多々あります。次回は、そんなフィンランドでさまざまなスタートアップが出展する“SLUSH”視察のレポートを中心にお伝えします。
“サウナスタイル”な思考法〜ダイバーシティー時代に忘れてはならない三つの視点
1.多様な価値観を受け入れる「寛容度」
2.異なる価値観を融合させ、さらに新しい価値を生み出す「クリエイティビティー」
3.失敗を恐れず、失敗から学ぶ前提で進める「プロセス重視型」
【参加者募集】「北欧オープンイノベーション」カンファレンスを開催!
本イベントでは、オープンイノベーション先進国となった「フィンランド」のエコシステムについて、文化・地政学・経済的背景や社会課題への取り組み事例を紹介。さらに現地を視察した日本の事業会社による、ファインディングスや日本での事業への生かし方についてのパネルディスカッションを実施、それぞれの視点から自社のアセットを活用したオープンイノベーション・新規事業の在り方を考えていきます。
【開催概要】
主催:株式会社電通
開催日時:2020年1月27日(月) 16:00~17:30(開場:15:45)
会場:電通14階 オープンセッションラウンジ (東京都港区東新橋1-8-1 電通本社内)
定員:50名(※事前登録制。応募者多数の場合、先着順)
参加費:無料
カンファレンスの内容やお申し込み方法などの詳細は応募フォームへ
天才プログラマー2人が語る、高度IT人材の採用のポイントとは?
時価総額10億ドルを超える未上場のベンチャー「ユニコーン企業」。日本に数社しかありませんが、そのうちの一社がPreferred Networksです。同社は、約280人の社員のうち8割がエンジニア・リサーチャー。それも世界レベルのトッププログラマーが多数在籍するという異色企業です。
今回は、競技プログラミングコンテストを開催するAtCoder代表・高橋直大氏とPreferred Networksの執行役員・秋葉拓哉氏との対談が実現。高度IT人材の採用事情や、人材育成のために必要なことについて語っていただきます。88年生まれの同い年で、ともにプログラミング少年だったお二人の対談は大いに盛り上がりました。
最も競争の熾烈なAIの分野で能力を発揮し、社会課題解決に貢献したい
高橋:僕は学生時代に競技プログラミングに熱中し、その後AtCoderを立ち上げました。秋葉さんはどのようにしてPreferred Networks(以下、PFN)に行き着いたのでしょう。
秋葉:中3か高1からプログラミングコンテストに参加しはじめ、高橋さんと同じように競技プログラミングに熱中していたのですが、やがてアルゴリズム自体に面白さを感じるようになりました。大学から博士課程までアルゴリズムの研究に没頭し、そのままアルゴリズムの専門家になろうと思って国立情報学研究所(※1)でアルゴリズムの研究を続けることにしました。しかし研究を続けるうちに、自分が培ってきた技術を使って、社会的な課題解決や価値創出に生かしたいと思うようになったのです。
自分の技術力を生かして勝負できる分野はどこかと考えてみたとき、AIの領域がいいと思いました。AIは最も競争の激しい分野で、グーグルなど世界を代表する企業と熾烈な開発競争を繰り広げていますし、深層学習(※2)の技術も日々進化しています。この世界で自分の技術力をフルに発揮できれば、社会課題の解決に貢献することにもつながると思い、PFNに入社しました。
※1=国立情報学研究所
日本唯一の情報学の学術総合研究所。ネットワーク、ソフトウェア、コンテンツなど情報関連分野の総合的な研究開発を推進するとともに、全国の大学や研究機関、民間企業などと連携し、最先端学術情報基盤 CSIの構築や提供などの事業を行なう。
※2=深層学習(ディープラーニング)
機械が大量のデータから特徴や法則性を自動で抽出する技術。特に深層学習は画像認識・音声認識などの特定タスクにおいて飛躍的に精度を高め、AI関連技術の急速な進化の原動力となっている。
高橋:僕の場合、競技プログラミングの世界で競争する楽しさを味わっていますが、秋葉さんは実業の中で競争に励んでいる。フィールドは違うけれど、根っこは似ているのかもしれませんね。
秋葉:おっしゃるとおりです。入社後も、競争に勝つことで価値を生み出すプロジェクトに積極的に取り組んでいます。例えば深層学習の学習速度において、世界最速記録を樹立してニュースになったり、画像認識のコンテストで世界2位になったりという、実績も出しています。会社にとって価値ある技術をつくりつつ、世界に対して勝負を挑み続けているんです。
高橋:PFN の社内にもAtCoderのユーザーは多いですよね。
秋葉:PFNは、社員280名のうち約8割がエンジニアとリサーチャーです。AtCoderを含む競技プログラミングの経験者も20人以上いると思います。参加を公言せずに、勉強のため、ひそかに参加している人もいるのではないでしょうか。当社社長の西川徹も、ICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト)の世界大会経験者です。僕がPFNを選ぶ時も、プログラミング能力が世界トップレベルの人と一緒に働けるということは大きかったです。
高橋:PFNのエンジニアは、どのような分野で活躍されている方が多いのでしょうか。
秋葉:PFNは、最先端技術を実用化し、現実世界のさまざまな分野でイノベーションを実現させることを目指しています。その領域は、自動運転、ロボット、バイオ、ケミカル、工場最適化など多岐にわたりますが、軸となっているのは深層学習です。深層学習の基礎技術やモデル開発を行うエンジニアもいれば、ロボットエンジニア、製品化・サービス化を行うエンジニアもいます。
客観的指標を用いて、人材採用のミスマッチを防ぐ
高橋:非IT企業では、エンジニアの採用がなかなかうまくいかないと耳にします。人事担当にプログラミングの知識がない、スキルを可視化しづらいという意見もよく聞きますよね。PFNでは僕らが作問したコーディングテスト(出題された課題に対し、実際にプログラムを書くテスト)をエンジニアの採用試験に採り入れていただいていますが、どのような形で活用しているのでしょうか。
秋葉:面接前にコーディングテストの問題を解いていただき、その結果をもとに面接を行います。その後は他社と同じように、数回の面接を経て、経営陣の面接にあがっていきます。
高橋:面接では、どんなことを聞くんですか?
秋葉:コーディングテストで書いてもらったコードを題材にしながら対話をするのですが、このとき必ずしも「正解できたかどうか」だけを見るわけではありません。ある課題に対してプログラミングする時、さまざまな選択肢がありますよね。「ここはなぜこう書いたんだろう」という箇所があったら、その人はきちんと検討した上でそう書いたのか、単に他に思いつかなかっただけなのか。そういう「意図」を面接時に掘り下げると、考え方や知識の深さが分るので、スキルを測るうえで大きなポイントになります。
高橋:チェックするのは「実装力」と「アルゴリズムの能力」、どちらの比重が高いのでしょうか。
秋葉:どちらかというより、もっと基本的なプログラミング能力を見ていますね。テストでは短めのルーチンだけど込みいった処理を正しく書けるかという能力を見ています。
もちろんアルゴリズムの能力も見ていますが、「難問を解けるか」ということよりも、どちらかと言うと「普通の問題におけるアルゴリズムの設計力」を見ています。例えば計算量(※3)をしっかり意識しているかどうかという点ですね。
※3=計算量
アルゴリズムの性能を評価するための指標。アルゴリズムが問題を解くまでに必要とする処理ステップ数(時間計算量)と、アルゴリズムを動かすために必要となるコンピューターの記憶容量(空間計算量)の2つの指標がある。計算量が小さいほど性能がいいアルゴリズムと評価される。
高橋:AtCoderではPFN以外の企業にもプログラミングの試験問題を提供していますが、実は相手企業によって内容を変えています。PFNのようにエンジニアがコードまでチェックして面接の材料にする企業では、不正解の場合でもコードをしっかり見てくれるので「ひっかけ問題」も入れられますが、コードが分からない人事担当者が点数だけで評価する企業に対しては、できるだけ実力が素直に表れるような問題をつくっています。
いずれにせよ「AtCoderのテストはアルゴリズムの設計能力、実装能力を問うもの」という根本的な思想は変わりません。ただ、アルゴリズムの設計能力を問う際に、計算量の改善を主軸に置くのですが、あまりに数学的過ぎる問題など、実務で要求されるプログラムの実装能力から遠い問題を作成してしまうと、企業が求める人材からズレることがあるので、なるべく実装能力がわかるように意識して作問することが多いですね。
秋葉:もちろんコーディングテストで分かるのは、あくまでも能力の一側面にすぎません。点数が高いのに採用されない方もいれば、逆もまたしかりです。それでも、プログラミングコンテストなどのレーティングは非常に客観的な指標ですよね。アルゴリズムの能力、短いルーチンの実装能力が、正確に表れていると思います。
高橋:AtCoderでは、2019年12月から「アルゴリズム実技検定」をスタートさせました。先ほどの話にも挙がったように、エンジニアの採用に当たってコードの意図まで見る企業はごくわずか。多くの企業ではプログラミングスキルを把握する方法がなく、採用のミスマッチ問題も発生しています。そこで、実践を想定したプログラミング能力を問うスキル認定サービスとして、アルゴリズム実技検定を始めたんです。秋葉さんは、この検定についてどう思いますか?
秋葉:多くの企業にとって有用な、素晴らしい取り組みだと思います。これまでのAtCoderのレーティング同様、客観的な指標になるのではないかと期待しています。
高橋:ありがとうございます。この検定だけで実業に必要な能力をすべて測れるわけではありませんが、相関は十分あると考えています。
僕もNASAのプログラミングコンテストで上位5人に入り、アルゴリズムがスペースシャトルの技術に使われたことがありました。プログラミングコンテストが実業につながるケースは少なくありませんし、AtCoderでも実業の課題を解決するコンテストを複数開催しています。競技プログラミングと実業にはギャップがありますが、だからといって両者はかけ離れているとも言えませんよね。
秋葉:競技プログラミングで培った能力は、実業でも大いに発揮されると思いますよ。その最たる能力が、実装が早くて正確であること。ディープラーニングは実装して終わりではなく、試行錯誤の連続です。論文を読んで実装して…を何度も行うんですね。そのサイクルを素早く正確に回せれば、それだけ結果的に優れたモデルにたどりつける。そういう意味では、競技プログラミングのスキルはあらゆるケースで役立つでしょう。
プログラミング教育のカギは“競争”にあり
高橋:2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されます。僕の場合、ひたすらプログラミングコンテストに出場し続けることでスキルを磨いていきましたが、周囲に優秀な仲間がいたことが、とても良かったと思います。秋葉さんはどのようにプログラミングスキルを磨いてきましたか?
秋葉:プログラミングを始めた中高生の頃は、独学しか選択肢がありませんでした。運よく先輩に教えてもらえる部活に入り、そこからは本を読んだりゲームを自作したりしていましたね。でも最初はそこまで深く学べず、夢中になれませんでした。その後、コンテストで優秀な方々を見たり、ライバルに出会ったりして一気に能力が伸びたという実感があります。
高橋:やっぱり競争、協力関係にある人と一緒に学ぶ環境だと、能力も伸びるんですよね。そう考えると、学校教育の場でも、プログラミングスキルで競争させるのはアリだと思います。
秋葉:僕は東大でプログラミングの授業を受け持ったことがありますが、高橋さんもプログラミングを教える機会がありますよね。どういう教え方をしていますか?
高橋:多人数相手にプログラミングを教える時は、教科書は事前に全部読んでいる前提で、教えるときはいきなり実践問題を解いてもらいます。本は自分ひとりで読めるのだから、僕が教科書の内容を順に教えてもしょうがない。そのほうが、教えるべきポイントを絞れるので効率が良いです。
秋葉:結構スパルタですね。でも、僕も近いものがあります(笑)。僕が教えるときに目指したのは、「全員に理解してもらう」ことではなく、「本気で夢中になってくれる人をひとりでも増やす」こと。競技プログラミングの問題を紹介したり、「良いコードとは何か」を話したり、高度な話題を交えつつ、面白いと感じてもらえそうなポイントを授業にちりばめたんです。
というのも、僕自身も「夢中になれるもの」を発見できた時にいちばん伸びたから。プログラミングは経験が重要な分野で、夢中になってひたすら経験を積むことが最も成長につながると思います。
高橋:そういう意味では、興味を持てない生徒が授業についていくのは難しいかもしれませんね。
秋葉:そうですね。なので、これから授業が始まる小学校などでは、興味を持ってもらえるように先生方に頑張ってもらえるとうれしいなと思います。最近はビジュアルプログラミング言語(※4)も進歩し、プログラミングを学ぶには良い環境だと思います。僕らの頃は学ぶ環境が整っていなかったので、今の小学生がうらやましいです。
※4=ビジュアルプログラミング言語
プログラムをテキストで記述するのではなく、プログラムに必要な要素をグラフィカルなパーツにし、ドラック&ドロップなどの操作でプログラミングできるようにしたもの。MITメディアラボが開発した「Scratch」、文部科学省が開発した「プログラミン」などがある。
高橋:ただ、僕らの時代も良いところはありましたよね。昔は市販のゲームもそこまでクオリティが高くなかったので、自分でも市販品と比べて引けを取らないレベルのゲームを作ることができたんです。でも、今は絶対に無理ですよね。つまり、良いものを作るハードルは下がっているけれど、ひとりでものづくりをして世の中に発信して反響を得るのは難しい時代になっていると思います。「ものづくり」をモチベーションにプログラミングのスキルを磨くのは難しいかもしれません。
だからこそ、「競争」をモチベーションにするのは良いと思うんです。それこそ僕の母校のパソコン研究会のメンバーは、全員競技プログラミングをやっているそうです。
秋葉:情報オリンピックにせよ、アルゴリズム実技検定にせよ、目標ができるとみんなで一緒に頑張ろうという流れができ、プログラミング人口も増えますよね。そういう機会が増えることを願っています。競技の成績だけがすべてではありませんが、コンテストに夢中になることはその後のキャリア、人生にとってプラスになると思います。

高橋:そうやって高度IT人材が増えたとして、彼らの活躍の場を増やすために何が必要だと思いますか?
秋葉:企業の経営層に、技術への理解を深めていただくことでしょうか。
高橋:確かにそうですよね。高度IT人材はまだまだ人手不足で、需要が高まっているのにもかかわらず、報酬を上げている企業は一部ですよね。エンジニアを求める企業は多いのに、総合職の枠で募集をかけている企業もあったり、採用の仕方にも課題が残りますし、いざ入社しても技術職の部署がなかったりすることも。我々が高度IT人材を増やす活動を行うことも大事ですが、それと同時に企業が優秀なエンジニアを受け入れ、活用する体制を整えないと活躍の場は増えていかないと思います。
秋葉:おっしゃるとおりです。高橋さんの意見に付け加えるとしたら、エンジニアが面白いと思える仕事を企業が提供できるかどうかも重要だと思います。それは僕がPFNに入社を決めた理由の一つでもあります。「ここには面白い仕事がある」「技術的にチャレンジングで、新たな価値を創出できそうだ」「この技術を突き詰めれば、社会的課題を解決できるかもしれない」と思わせてくれる企業は、エンジニアにとっても魅力的ですから。
レイ・イナモト氏、佐々木康晴氏が審査員視点で語る、「これからの広告に必要なこと」(動画あり)
世界の広告賞の受賞作を俯瞰すると、時代の潮流や人々の関心の方向を見て取ることができます。またそれは、企業がこの先何を考えどう進むべきかの道しるべにもなり得ることでしょう。
2019年、カンヌライオンズDigital Craft Lions審査委員長を務めたレイ・イナモト氏、同Creative Data Lions審査委員長の佐々木康晴氏が、現在の潮流と今後のクリエイティビティーの可能性を読み解きます。
前編は、審査委員長ならではの目線で、世界の広告賞の傾向から、「これからの広告に必要なこと」について語ります。
キャッシュレス・ジャパン〜風穴が開いた現金の壁
2019年10月1日。
消費増税スタートを期に、政府がキャッシュレス還元施策を導入。
世界的に見て「キャッシュレス後進国」といわれる日本。
政府のキャッシュレス推進も本格化する中、いよいよ「キャッシュレス・ジャパン」の幕が開けたといってもよい状況になりつつあります。
モバイル決済が急拡大する中、カード会社や銀行といった既存業界のみならず、さまざまな業界の主要プレーヤーに実装され、マネタイズが進んでいます。特に「3通」と呼ばれる、通信・流通・交通業界のプラットフォーマーは、キャッシュレスをてこに経済圏ビジネスを進めようと意欲的に展開しています。
そうした中、まさにこのタイミングを「キャッシュレス・ジャパン」のスタートと位置づけ、電通ビジネス共創ユニット キャッシュレスプロジェクトでは、「キャッシュレスに関する意識調査」を独自で実施。今回は、この調査結果をベースに、生活者のキャッシュレスがどう変化しているか、「キャッシュレス・ジャパン」の現況について、見ていきます。
生活者の約7割は、「キャッシュレス決済の頻度が増えた」
政府が消費税増税対策としてキャッシュレス還元施策をスタートして以降、「キャッシュレス決済の利用頻度が増えた」という生活者は71.0%となり、順調に広がっていることが分かりました。中でも、注目したいのは、「現金派」の動向。日本人はよく現金好きといわれる。そういった人たちがどう動いたのか。
調査結果の中でも、
「これまで現金しか使わなかったが、キャッシュレス決済を使うようになった」(5.6%)
「これまで現金がキャッシュレス決済より多かったが、キャッシュレスが増えた」(18.1%)
と全体の23.7%を占め、「現金派」のキャッシュレスシフトが着実にうかがえます。タイトルでも「風穴が開いた現金の壁」と書きましたが、こうしたキャッシュレスシフトが「日本の現金好きにも風穴が開いた」状況を示しているようにも見て取れないでしょうか。

では、生活者のキャッシュレスが順調に伸びている理由は何か。
キャッシュレス決済の利用頻度が増えた理由を聞くと、「政府のキャッシュレス還元施策を受けたいから」(49.3%)、「決済会社のキャンペーンや特典が魅力的だったから」(40.0%)、「レジでの決済スピードが速いから」(36.4%)の順で高い結果となりました。

政府やキャッシュレス事業者のインセンティブ、さらにはキャッシュレス本来の提供価値であるスピードが、生活者のキャッシュレスを後押ししているのがよく分かる結果となりました。
キャッシュレスが増えたのは、身近なコンタクトポイント
生活者のキャッシュレスは、一体どこで伸びたのでしょう。
キャッシュレス決済回数が増えたのは、「コンビニエンスストア」(69%)、「スーパー・ショッピングモール」(60.3%)、「ドラッグストア」(49.0%)の順で高い結果となりました。
生活者が日常よく利用するコンタクトポイントでの決済で増えており、キャッシュレスが、生活者にとって身近な存在になリつつあり、日常生活にも浸透している状況がうかがえます。

最も増えたキャッシュレスは、スマホ決済
では、どんな決済手段が伸びたのか。
最も増えたという回答が多かったのが、「モバイルQR決済」(58.1%)、次いで、「クレジットカード」(55.7%)という結果。
キャッシュレス決済手段として長らく存在しているクレジットカードを押しのけて、モバイルQR決済が、最も伸びたということになります。
一方で、過去10年を振り返ると、世界では2010年のGoogle Walletに始まり、14年のApple Payで加速。日本においても16年の楽天Payや18年のPayPayと、2010年代のキャッシュレスは、まさにスマートフォンが変えていったとも見えます。こうした状況を鑑みると、「スマホ決済」は、まさにキャッシュレス・ジャパンのけん引役になっているといえるでしょう。

スマホ決済で伸びる小口決済
増えているスマホ決済は、通常、どのくらいの金額帯で決済が行われているのか。
平均利用単価で見ると、クレジットカードが6747円なのに対して、例えばモバイルQR決済では、1957円と小口決済となっています。元々、高額決済においては、現金よりもクレジットなどのキャッシュレス利用が多く、比較的少額決済では、キャッシュレスよりも現金の決済が多かった状況の中で、こうした変化が足元で出てきていることも、小口決済で「風穴が開いた現金の壁」を象徴している傾向といえるかもしれません。

生活者の約8割は、「継続してキャッシュレスを使い続ける」
足元のキャッシュレスが好調に推移している状況はこれまで見た通りですが、今後、生活者のキャッシュレス動向はどうなるのでしょうか。
今回の調査結果では、政府のキャッシュレス還元施策が終了する20年6月以降も、全体の82.8%の生活者がキャッシュレス決済を利用し続けると回答し、今後もキャッシュレス決済の継続利用意向が高いことが分かりました。この調査結果を見ても、現状のキャッシュレスの成長は一過性ではなく、今後も好調に推移していくことを暗示しているように見えます。
2020年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される。また、厚生労働省が省令改正の方針で推進している電子通貨の給与払いなどの検討を進めています。電通キャッシュレスプロジェクトでは、こうした動向を背景に、「キャッシュレスジャパン」が、「スマホ決済」をけん引役として今後もますます高まっていくと見ています。

<電通 キャッシュレスプロジェクト>
キャッシュレスに関するナレッジについては、データベース「ZUNO」にて一部公開しています。より詳細については、BD&A局 事業基盤開発部 吉富(cashless@dentsu.co.jp)までお問い合わせ下さい。
【調査概要】
◇調査手法 :インターネット調査
◇調査時期 :2019年11月16~17日
◇調査エリア :全国
◇調査対象 :① 一般生活者、② 中小企業※経営者
①20~69歳男女500人(人口構成に基づきウェイトバック集計を実施)
②20~69歳男女335人(出現率によるウェイトバック集計を実施)
※従業員数100名以下、資本金5000万円以下の飲食もしくは小売業の中小企業
レイ・イナモト氏、佐々木康晴氏が審査員視点で語る、「これからの広告に必要なこと」(動画あり)
世界の広告賞の受賞作を俯瞰すると、時代の潮流や人々の関心の方向を見て取ることができます。またそれは、企業がこの先何を考えどう進むべきかの道しるべにもなり得ることでしょう。
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前編は、審査委員長ならではの目線で、世界の広告賞の傾向から、「これからの広告に必要なこと」について語ります。