2019年は競馬界の大スター武豊騎手にとって、50歳の節目となるシーズンだった。
現役最年長の柴田善臣騎手が今年52歳、レジェンドといわれた岡部幸雄騎手でさえ56歳で引退……常識では、武豊騎手のキャリアはあと数年と述べざるを得ない。
だが2019年に、武豊騎手が示したパフォーマンスは、そんな不安を一切感じさせない素晴らしいものだった。
その筆頭にあるのが2015年以来の「年間100勝」超えだ。JRA騎手にとって、超一流の証でもある年間100勝。昨年、この記録をマークしたのは武豊騎手を含め、わずか6人しかいない。
無論、かつては当然のようにリーディングを獲っていた武豊騎手にとっては、決して満足できる数字ではないだろう。
だが、世界トップレベルの騎手が常駐する現在、50歳にしてのリーディング3位には驚異的以外の言葉は見つからない。
その大きな原動力となったのが、エージェントの交代だ。長年、武豊騎手のエージェントを務めた平林雅芳氏が2018年一杯をもって卒業。昨年から3年連続リーディングとなったC.ルメール騎手と同じエージェントと契約することになった。
武豊騎手はルメール騎手に次ぐ2番手の扱いだったが、開幕からいきなり6勝してリーディングトップに立つなど、その効果は絶大。
個人馬主を始めとした武豊騎手自身が持つ人脈の健在も相まって、勝ち星は前年の76勝から大きく飛躍した。
ただ、課題も残った。
2019年、フェブラリーS(インティ)、菊花賞(ワールドプレミア)と2つのG1を勝ち、大舞台でも存在感を示した武豊騎手。だが、その一方で重賞勝ち自体は2年前から13→8→6と右肩下がりで減少……。
現役最強馬だったキタサンブラック引退の影響に加え、G1勝ちがなかった前年を鑑みれば、昨年のG1・2勝、G2・3勝は復活を印象付けるものだった。だがその一方で、G3がわずか1勝に留まったのは「お手馬の層の薄さが起因している」といえるだろう。
その主たる原因は、今年も開催8割以上のG1を勝つなど、現在の日本競馬界を牛耳っているノーザンファームとの関係の弱さだ。
武豊騎手とルメール騎手、同じエージェントと契約しながらも勝ち星約50差、重賞にして10勝の差がついた大きな要因は、このノーザンファームが運営する一口馬主クラブとの関係性に尽きる。
ノーザンファーム系クラブは「ルメール・ファースト」という言葉が生まれるほど、ルメール騎手を中心に起用しており、その次が短期免許で来日する世界のトップジョッキー、そして日本人で最も優遇されているのがリーディング2位の川田将雅騎手だ。武豊騎手は残念ながら、その次のグループに該当する。
したがってノーザンファームが有力馬の大多数を支配する大レースになると、武豊騎手に回ってくるのは必然的に3番手、4番手以降の馬ということになる。これが、武豊騎手が昔のように大レースを勝ちまくることができない主な原因だ。無論、武豊騎手に限らず、ほぼすべての騎手に共通して言えることだろう。
逆に述べれば、現在の日本競馬で勝ちたければ「ノーザンファーム系クラブの有力馬に乗れ」ということだ。
実際に、昨年の武豊騎手の重賞6勝は、すべてノーザンファーム系クラブ以外の馬だっただけに、もし武豊騎手のノーザンファーム内での格付けが上がれば、全盛期に近い成績を収められる可能性は高い。
2020年も輝かしい活躍が期待される武豊騎手だが、その中で如何にノーザンファーム系クラブの馬で結果を出し、ルメール騎手のような絶大な信頼を勝ち取っていくか。それが「武豊完全復活」への大きな課題になるはずだ。