世界で無料・民間PCR検査拡大が常識、日本のみ逆行…厚労省「検査拡大で医療崩壊」堅持

 新型コロナウイルス感染症の拡大に対し、菅義偉首相は8日、首都圏の各自治体に向けて2回目となる緊急事態宣言を発出した。もはや首都圏で収まる事態ではなく、緊急事態宣言の対象地域はさらに拡大する様相だ。

 一連の政府対応の遅さに世論の批判が高まる中、日本テレビのニュースサイト「日テレNEWS24」は11日、記事『不特定多数にPCR検査へ 3月にも無料で』を報じた。記事は「政府は3月にも、不特定多数を対象にしたPCR検査を始める方針です。都市部の繁華街や空港など多くの人が集まる場所で、唾液などの簡単な方法で無料で検査します」と報じているのだが、インターネット上からは「1年経って、この対応って……」「政府ってどこの誰?」などと困惑の声が上がっている。

PCR検査を抑制するのか」「大規模実施するのか」に関しては、日本国内で感染者が初めて確認されて以来、国会の内外を問わず議論されてきた。その中で政府や厚生労働省、国立感染症研究所は頑なにPCR検査の拡大を拒んできた。なぜ、このタイミングで無料かつ大規模実施に舵を切ったのだろうか。

格安民間検査の登場が方針転換のトリガー?

 今回の報道に関し、なぜか厚生労働省関係者の歯切れは良くない。

「昨年末に木下グループさんが東京都区内で始めた民間格安PCR検査が発端だというふうに聞いています。財務省から歳出抑制の指示を再三受けているので、うちで立ち上げた施策というより、世論の突き上げに焦った官邸主導ではないでしょうか」

 一方、自民党衆議院議員秘書はこう話す。

「東京オリンピックを開催するには、不特定多数を対象としたPCR検査の実施は不可避という考えが首相官邸にはあるようです。現状ではデータが不足しすぎていて、いくら国際オリンピック委員会や出場予定国に『大丈夫だ』と言っても『水際対策に失敗し、感染者が多発している繁華街の検査も満足にせず、全容を把握できていないのにどこが大丈夫なのか』と突っ込まれる。

 やはり木下グループをはじめとする民間PCRの拡大が大きかったと思いますよ。今回の決定が官邸主導かどうかはわかりません。厚労省は頑強に反対していましたが、このままだとまずいと理解したのではないですか」

 それぞれが指摘しているように木下工務店を中心とする木下グループは昨年12月2日、同グループ内の医療法人の監修のもと株式会社新型コロナ検査センターを設立した。同月4日に同社が運営するかたちで、JR新橋駅前に店舗来店型の「新型コロナPC 検査センター 新橋」を開設し、2900円(税別)という検査価格に抑えた。これまで1万数千円かかっていた従来の民間PCR検査より格安で受診できることもあり、年末年始の帰省を控えた首都圏の人々の間で注目されたことは記憶に新しい。

 ちなみに検査は、自分自身で唾液をとる「唾液検体」方式で、政府や自治体が実施する「鼻咽頭ぬぐい液」を検体として採取するより簡単だ。同グループのプレスリリースによると、検査精度は「感染研法との陽性一致率及び陰性一致率ともに100%という。そのうえで新橋駅前店や新宿歌舞伎町店など、「店舗来店型の『新型コロナPCR検査センター』の開業を進め、併せて配送・集配式にて企業団体への検査の提供を強化しながら、2021年1月には、店舗来店型検査と配送・集配式検査の合計で 1日2万件の検査実施を目指します」(同リリース)としている。

厚労省はなぜ民間PCR検査の拡大に懐疑的なのか

 こうした民間の動きに厚生労働省はこれまで懐疑的な見解を示していた。当サイトが12月25日に配信した記事『帰省前に人気殺到、民間PCR検査サービスを受けてみた…2900円、たった5分で終了』から厚労省関係者の談話を引用する。

「カタログスペックでは検査は国立感染症研究所の検査法と陽性一致率及び陰性一致率ともに100%となっています。保健所の指導の下、受ける検査と大きな差は出ないとは思います。つまり、どうしても偽陽性、偽陰性の誤差が出ます。

 それにこうした店舗来店型の検査ですと、医療機関で受診するのと違い、どうしても検査に携わるスタッフの質の問題や、会場に来る受診者間での感染防止に不安が残ります」

 厚労省の関係者による似たような見解は朝日新聞デジタルでも紹介されていた。昨年12月10日に配信された記事『格安の民間PCR検査に予約殺到 その「陰性」過信禁物』で「ただ、タイミングや精度によっては実際に感染していても『陰性』と判定されることがあり、厚生労働省は注意を呼びかけている」と記載されていた。

 また毎日新聞インターネット版で同月22日に配信された記事『格安民間PCRが乱立 陽性でも届け出義務なし 精度は? 感染対策は?』でも、「こうした施設は陽性判定が出ても都道府県への届け出義務がなく、感染対策上の問題も指摘される。現場からは検査精度のばらつきを懸念する声も上がる」と民間PCR検査に疑念をはらむ書き方がされていた。

 立憲民主党の参議院議員は、一連の政府や厚労省の場当たり的な対応や当事者間の横槍に不快感を示す。

「規定の感染防止ガイドラインに基づいて、適正に検査が実施されるのであれば実施主体が医療法人であろうと民間企業だろうと問題はないのではないですか。

 今回報道にあった大規模検査を提案したのが、首相官邸でも厚生労働省でも、そんなことはもうどうでいい。自分たちの小さな手柄や利権を確保しようと躍起になり、一方で失敗の責任を押し付けあっているに過ぎません。

 本来であればもっと早く医療機関主体の検査を、大規模に行う体制の検討が行われていれば良かったというだけです。こうなってしまっては民間でもなんでも使わざるを得ません。少なくとも首都圏では感染者の受け入れと治療で、保健所も医療機関も限界です。彼らに新たに大規模なPCR検査を実施する余力があるのかは疑問です」

 この混沌とした状況の原因はなんなのか。PCR検査の大規模実施と、これまでの厚労省の取り組みに関し、特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏に聞いた。

上昌広氏の解説

 まず、無症状感染者対策が現在は世界のコロナ対策のコンセンサスになっていることを考えなければなりません。

 今回のPCR検査の政府方針は、厚生労働省や専門家のアリバイ作りだと思います。しかし、政府主導で保健所を介して検査をするのは現実的ではありません。保健所の代表者の集まりでは、「濃厚接触者の調査をやめさせてくれ」との声が上がっています。この状況下で新たな仕事を課すのは無理です。

 いずれにしても、大規模検査をやるということは、これまでの対策がダメだったということを改めて検証しないといけません。

 上の表はPCR検査数を感染者の数で割ったものです。1人の感染者を見つけるために、検査数がどれくらい必要だったのかを表しています。中国では、感染者1人を見つけるために1000件以上検査をやっています。つまり無症状感染者が0.1%街中にいるのであれば、1人を見つけるためには1000人検査をしなくてはならないのです。

 グラフにある感染者が多い国は検査数が足りないんです。日本では武漢に対して、中国政府が命じた厳しい都市封鎖にばかり、関心が集まりましたが、注目すべきは再燃を許さなかったことです。PCR検査を徹底して、感染が小規模なうちに封じ込んだのです。

 欧米先進国は感染者数に比して、検査数が足りませんでした。多くの無症状感染者を見落とし、彼らが市中で感染を拡大させています。しかし、中国とは政治体制が異なる欧米先進国でも、中国とは異なる方法で検査数を増やそうとしています。

 例えばアメリカです。カリフォルニア大学サンディエゴ校は1月に入り、11台のPCR検査自動販売機をセットしました。今後、1~2週間でさらに9台を追加するそうです。同大学の学生はIDカードをスワイプするだけで、無料で検査を受診できます。これまでの2週間に1回から、毎週1回検査を受けるように推奨されるといいます。

 アメリカ国内では各地で無料あるいは定額で検査が受けられますが、多忙な現役世代はわざわざ検査を受けに行けない。このような人たちへの商品開発も進んでいます。

 昨年11月17日に、自宅で利用できる検査キット(Lucira COVID-19 All-In-One Test Kit)に緊急使用許可が与えられました。30分程度で結果がでるものですが、このキットを入手するには医師の処方箋が必要でした。そこで12月15日には処方箋不要の抗原検査(Ellume COVID-19 Home Test)に対して緊急使用許可が与えられました。そして、1月6日には、アマゾンがデクステリティ社の検査キットのオンライン販売を開始しました。1パック約1万1300円です。

 企業も検査体制強化に協力しています。ネットフリックスやゴールドマンサックスなどの一部の企業は、無症状の感染者を判別するために、企業が費用を負担し、検査を提供しはじめています。グーグルは9万人の社員に対して、毎週検査を実施することになりました。

 この病気の本質と抜本的な対策は、『無症状感染者がうつす。数が増えてどうしようもなくなったらロックダウンする。そうでなければ徹底的に検査をして、無症状感染者を家あるいは医療施設にいてもらう』ということです。

 日本は第一波をうまく抑制したので、そのあとうまくできれば中国みたいに感染を再燃させずに済むはずでした。感染者が少ないうちは、1000倍やるのも簡単です。アメリカやヨーロッパのように感染者が膨大に出れば、もうロックダウンするしかありません。

 政府や専門家会議が提案するように、飲食店の営業規制だけやって、感染抑制がうまくいくのなら、世界中どこでも飲食店の規制だけでやめています。無症状感染者を同定できないので、全員まとめて家にいるよう求める。それがロックダウンです。

 日本はそれでもまだ感染者は少ないので、検査だけでやれる可能性はあるとは思います。

 これまで日本が重視してきた『クラスター対策』は発熱者と濃厚接触者を明らかにするものでした。しかしここに無症状感染者の同定はふくまれません。欧米が大量の検査に着手し、無症状感染者の同定をはじめているのに、日本の厚労省や専門家会議は『検査を増やすと医療現場が混乱する』と主張し続けています。そして、もはやそんなことは世界の誰も言わなくなっています。

 アメリカなどが産官学を挙げて、検査体制の構築を図っているのに、日本の厚生労働省は民間PCR検査の拡大などに、なおも懐疑的な主張をしています。理由は『検査』そのものを厚生労働省の管理下に置きたいのだと思います。また、一連の対策の責任を追及されるのが嫌なのではないでしょうか。いずれにせよ、政府の専門家会議のメンバーや、一連の対策を起案していた厚労省の医系技官の責任は追及されるべきだと思います。

(文・構成=編集部)

 

JRA「消えた6勝」武豊痛いのは腰だけじゃなかった!? C.ルメールに意外な恩恵も、今週はレジェンドが大爆発の予感。3勝スタートはまだまだ序の口か……

「鬼の居ぬ間(ルメールが留守)にの感はありますが、リーディング首位に名前がある気分は悪くありません」

 JRA開催初日に3勝を挙げた武豊騎手。デビュー35年目を迎える大ベテランだが、その腕が衰えることはまだまだなさそうだ。自身のホームページの日記で喜びを語っているように、今後もトップジョッキーとして熾烈な戦いを繰り広げていくだろう。

 今年は順調な滑り出しに思われたが、先週末の3日間開催は突発性の腰痛により騎乗をすべてキャンセル。出馬表確定後の発表ということで、計23鞍が急遽乗り替わりとなった。多くの有力馬に騎乗を予定していただけに、かなりの痛手となったに違いない。

 乗り替わりとなった馬の成績を確認すると、衝撃の事実が浮かび上がった。

9日(土) 中京競馬場
2R 1番人気ウラエウス 2着
3R 4番人気シーニッククルーズ 3着
5R 9番人気タガノイグナイト 11着
7R 8番人気スカイナイル 13着
9R 3番人気ウォーターエデン 4着
10R 1番人気セラン 14着
11R 3番人気トゥラヴェスーラ 1着

10日(日) 中京競馬場
2R 2番人気クリノクラール 1着
3R 2番人気チカリヨン 1着
5R 5番人気カバーガール 5着
6R 7番人気パロットビーク 7着
9R 7番人気ヒルノダカール 8着
10R 1番人気スギノヴォルケーノ 1着
11R 7番人気ダディーズビビッド 11着
12R 4番人気シンゼンブースター 4着

11日(月) 中京競馬場
1R 1番人気トップザビル 1着
2R 4番人気チェックメイト 6着
5R 5番人気マイプレシャス 1着
6R 6番人気スーパーウーパー 8着
8R 3番人気エブリワンブラック 2着
9R 1番人気テンテキセンセキ 4着
10R 1番人気パラスアテナ 4着
12R 9番人気ソルトキャピタル 15着

 日曜日はC.ルメール騎手が3勝の大活躍だったが、そのうち2勝は武豊騎手からの乗り替わりによるもの。また、M.デムーロ騎手は乗り替わりの馬で待望の今年初勝利。その一方で、川田将雅騎手は1番人気2頭に騎乗するも、結果を残せなかった。武豊騎手から騎乗馬を譲り受けたジョッキーでも明暗を分けている。

 そして上記の成績をまとめると、[6-2-1-14/23]となる。競馬においてタラレバは禁物だが、もし予定通りに騎乗していたら6勝の大活躍だった可能性があるのだ。

 乗り替わりの騎手による好騎乗で勝った馬もいれば、武豊騎手が騎乗すれば勝てていた馬もいるかもしれないため、必ずしも同じ勝ち星を挙げたとは限らない。だが、単純に馬質だけを考えれば、かなり期待が持てる3日間だったと言えるだろう。

 仮に6勝を加算していれば、武豊騎手は9勝。そうなれば、松山弘平騎手の7勝を超えて、リーディング単独トップに躍り出ていたことになる。まさかの戦線離脱でビッグチャンスを逃したのだ。

 だが、今週からは騎乗再開を予定しており、この悔しさを晴らすことが十分にあり得そうだ。

 日経新春杯(G2)では6億円ホース・アドマイヤビルゴの手綱を取る予定。同コンビは4戦4勝の好相性で、目標である大阪杯(G1)に向けて負けられないレースとなるだろう。

 有力馬はこれだけでなく、京成杯(G3)と紅梅S(L)にダブル登録をしているオンラインドリームも注目の1頭だ。父は言わずと知れた名馬フランケル、母は凱旋門賞(G1)などG1・4勝を挙げたデインドリームという超良血馬。新馬戦を危なげない走りで制しており、武豊騎手もその走りを好評価した。紅梅Sの出走が有力視されており、2戦目も熱い視線が注がれるだろう。

 また、梅花賞(1勝クラス)ディープモンスターも大物の雰囲気が漂う注目馬だ。デビュー戦は放馬して競走除外という衝撃の初陣となったが、仕切り直しの新馬戦を快勝。エリカ賞(1勝クラス)は半馬身差の2着に敗れたが、まだまだ見限れない。

 注目馬が勢ぞろいの今週末は武豊騎手の逆襲が見られるかもしれない。“幻のリーディング”の鬱憤を晴らすことに期待したいところだ。

コロナ経済対策、歪む財政…短期国債急増で自転車操業、国債市場の不安定化が懸念

 2021年1月7日、菅義偉首相は東京など1都3県に対する緊急事態宣言を再び発令した。期間は約1カ月の予定だ。緊急事態宣言は、周知のとおり、東京都の感染者数が2020年12月31日で1337人、2021年1月5日で1278人に達したことなどが原因である。

 いま国会では、2021年度予算案や新型コロナ特別措置法の改正に関する審議などを行っているが、緊急事態宣言の発令がマクロ経済や財政に対して一時的にネガティブな影響を及ぼすことは確実だろう。

 実際、コロナ危機のための経済対策により財政は急激に膨張してきた。2020年度における国の当初予算(一般会計)は約103兆円であったが、第3次補正予算までを組み、最終的に175.7兆円の歳出になった。この結果、2020年度の国債発行総額は約263兆円になった。2019年度の発行総額は約154兆円なので、2020年度の国債発行は約110兆円も増加したことを意味する。

 では、2021年度における国債発行額はどうか。まず、2021年度の当初予算では、通常の予備費0.5兆円のほか、新型コロナウイルス感染症対策予備費(以下「コロナ予備費」という)を5兆円計上したものの、歳出総額を約107兆円に抑制した。「抑制」というのは、2020年度(当初予算)の予備費も0.5兆円であり、仮にコロナ予備費を2021年度予算に計上しない場合、歳出総額は2020年度の当初予算よりも1兆円減の約102兆円となり、むしろ2021年度予算は緊縮的な予算となっているためである。すなわち、財務省がコロナ禍の下でも財政規律を何とか維持しようと努力した姿が読み取れる。

21年度の国債発行総額は約236兆円

 しかしながら、コロナ対策の財政的な歪みが存在しないわけではない。それが2021年度の国債発行総額に表れている。2021年度の当初予算を2020年度(当初予算)並みに抑制したにもかかわらず、2021年度の国債発行総額は約236兆円となる計画だ。歳出が約100兆円であった2012年度から2019年度の国債発行の平均は約162兆円だが、それよりも70兆円以上も増加している。

 この理由は何か。それは償還期限が1年以内の「短期国債」の急増だ。これは図表1の「国債の市中発行額」の推移から読み取れる。国債の市中発行額とは、各年度の国債発行総額から個人向け販売分などを除いたものをいい、2019年度の市中発行額は129.4兆円、2020年度(第3次補正予算後)は212.3兆円、2021年度(当初)は221.4兆円になっている。また、2019年度の短期国債は21.6兆円にすぎないが、2020年度(第3次補正予算後)は82.5兆円、2021年度(当初)は83.2兆円に急増している。

 すなわち、2020年度のコロナ対策により、2012年度から2019年度の平均で約26兆円しか発行していなかった短期国債を2020年度は82.5兆円も発行したが、これは1年以内に返済しなければいけない。しかし、その償還の財源がないため、2021年度においても短期国債を83.2兆円も発行する必要性に迫られたのである。

 短期資金繰りの自転車操業は金利上昇リスクに脆弱であり、国債管理の安定化を図るためには、短期国債を徐々に償還が10年の長期国債や20年以上の超長期国債に借り換える必要がある。その際、長期国債の買い手として期待できるのは、資産負債のデュレーション(平均残存期間)管理のために長期国債の購入ニーズがある生保などの金融機関だが、人口減少や少子高齢化が進むなかで保険契約が減少する場合には一定の限度もあろう。

海外投資家の国債保有割合が上昇

 また、図表2のとおり、日本の国債市場も構造的な変化が起こっている。まず、これまで海外投資家の国債保有割合(ストック)は2004年で約4%であったが、2019年では約13%に上昇してきている。加えて、国債流通市場における売買シェア(現物)についても2004年12月で約14%であったが、2019年12月では約39%に上昇してきている。特に、売買シェア(現物)は日銀が異次元緩和を開始した2013年以降から急上昇している。

 海外投資家の拡充は国債の引き受け先に関する多様化を図るためには望ましいが、ギリシャの財政危機でも明らかなとおり、海外投資家は危機時に躊躇なく国債を売却するため、海外投資家の割合が増すと国債市場が不安定化する懸念がある。国債市場の安定化を図るためには、できる限り国債の国内消化に努めるとともに、日本財政に対する信認を向上させる必要があることを意味する。

 緊急事態宣言は再び発令された今、まずは感染症対策の強化と経済の再生が優先であることは言うまでもないが、コロナ禍にあっても財政再建の目標を堅持し、中長期的な財政規律を示す必要があろう。

(文=小黒一正/法政大学教授)

かくれた思い込み「アンコンシャス・バイアス」は、なくすものではなく、気付くもの

「アンコンシャス・バイアス」という言葉を最近よく耳にしませんか?

私たちには、思い込みがないという「思い込み」がある

電通ダイバーシティラボ(以下DDL)は、アンコンシャス・バイアスをテーマとした体験型企業研修プログラム「アンバス・ダイアログ」を開発しました。

舞台演出メソッドを取り入れ、研修参加者が実際にさまざまな役割を演じる「ロールプレイ」が大きな特徴です。

今回は、アンコンシャス・バイアスという概念と、研修の目的について、DDLメンバーの江口露美が紹介します。 

<目次> 
今の時代、なぜアンコンシャス・バイアスという概念が注目されているのか?
「あって当たり前」なアンコンシャス・バイアスとの付き合い方
役を演じながら学ぶ研修プログラム「アンバス・ダイアログ」へ

今の時代、なぜアンコンシャス・バイアスという概念が注目されているのか?

人間にはさまざまな「かくれた思い込み」がある。相手の属性や、考えていることなど、目に見えない要素は、ほとんどの場合、自分の中で解釈してつくり上げている「思い込み」だったりする。「自分には思い込みがある」と気づくことが、研修の目的だ。
人間にはさまざまな「かくれた思い込み」がある。相手の属性や、考えていることなど、目に見えない要素は、ほとんどの場合、自分の中で解釈してつくり上げている「思い込み」だったりする。

2018年ごろから徐々に広まりつつある「アンコンシャス・バイアス」という言葉。

「無意識の偏見」と訳されることが多いようですが、私たちDDLでは「かくれた思い込み」という日本語の方が、ニュアンスとしてより本質に近いのではないかと考えています。

実際にどんな“思い込み”があるのでしょうか。具体例を見てみましょう。

子どもがいる女性社員に対して、上司から「お子さんがいるから、出張は他の人にお願いするね」という言葉。

思いやりや気遣いから発せられた言葉であることは予想できます。しかし、この優しい言葉の中には

「家事・育児は母親の役割のはず」
「子どもがいる女性社員は育児で忙しいから出張したくないはず」


というアンコンシャス・バイアスが存在していることにお気付きでしょうか。

そして受け手側がこの気遣いに対して感じる思いも、一様ではありません。

「育児が大変だから助かった!よかった…」

と思う人もいる一方で

「私のプロジェクトだから、最後までやりたいのに…」
「夫が一緒に育児しているから問題ないのに…」


と思う人もいるかもしれません。
このように、自分の中にある「きっとこうだろう」という、かくれた思い込みがアンコンシャス・バイアスです。これに気付かずにコミュニケーションを行うと、たとえそれが善意であっても、受け取る側には不満が残ってしまう可能性があります。

特にビジネスにおいて、アンコンシャス・バイアスは女性活躍やコミュニケーションの阻害、モチベーションの低下につながりかねない、

解決されるべき課題

として扱われるようになってきました。

コミュニケーションの中で、「この相手はきっとこうに違いない」「どうせこう思っているだろう」などと無意識に決めつけてしまうこと自体は、もともと人類の歴史上ずっとあったものでしょう。

それが「アンコンシャス・バイアス」という概念として確立され、注目されるようになったのは、2000年頃からです。特にアメリカのシリコンバレーという、さまざまな人種、職種、宗教が交わる社会において、必要な概念として研究されてきました。

さらにこの考え方が世界的に注目されるきっかけとなったのは、2018年5月にスターバックスが行った、人種差別に関するアンコンシャス・バイアスのトレーニングです。

事の発端はスターバックスの店舗において、人種による接客・対応の差が発覚したこと。それも「悪意を持った意識的な差別」ではなく、「無意識の偏見による悪気のない差別」が問題になったのです。事態を受け、スターバックスはアメリカ全店舗の一斉閉鎖を決定しました。

スターバックス、ハワード・シュルツ会長の声明文
https://stories.starbucks.com/stories/2018/an-open-letter-to-starbucks-customers-from-howard-schultz/


店舗閉鎖中には、17万人以上の従業員を対象に、人の意識の深いところに眠る偏見を見直すための研修を実施。ニュースでも話題となり、より多くの人々が、善意でも悪意でもなく人の意識の中に自然に存在する「アンコンシャス・バイアス」という概念を知る第一歩となりました。

さて、アンコンシャス・バイアスは一部の人にだけあるものではなく、私たちの誰の中にもあって当然のものです。悪意のない思い込みが招いてしまった人間関係のこじれや、仕事のミスなど、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。

ダイバーシティとインクルージョンをテーマとするDDLでも、多様な個性をいかす社会づくりを目指す一環としてアンコンシャス・バイアスに注目。より多くの人にその認知を広めるための発信方法を模索し続けてきました。

「あって当たり前」なアンコンシャス・バイアスとの付き合い方

ソフトバンクとの越境ワーカープロジェクトがきっかけで、DDL内にアンコンシャス・バイアスに向き合うチームが生まれた。
ソフトバンクとの越境ワーカープロジェクトがきっかけで、DDL内にアンコンシャス・バイアスに向き合うチームが生まれた。

少しさかのぼって、DDL内にアンコンシャス・バイアスを考えるチームができた経緯をお話しします。実は、2年以上の長い構想期間がありました。

もともとのきっかけは、電通とソフトバンクの共同プロジェクトである2018年の“越境ワーカー”(※)です。このとき、多様な個性を“価値”として生かす社会に向けたアクションを考える中で、「アンコンシャス・バイアス」という言葉に出合い、この概念と向き合うことになったのです。

※越境ワーカー
参加企業が相互に社員を受け入れて課題解決を目指すオープンプロジェクト。電通とソフトバンクは、本社所在地が近隣であることを縁に、お互いの社内のプロジェクトチームに相手企業の社員を受け入れ、課題解決に取り組んだ。


アンコンシャス・バイアスとは一体どんなものなのか。どうして広めたいのか。何を広めたいのか。

当初私たちは、

「アンコンシャス・バイアスは良くないものだ」
「アンコンシャス・バイアスのことを教えて、やめてもらうための研修をつくろう」

と考えていました。

しかし、資料を集め、何度も話し合いを重ねる中で、チームにひとつの疑問が生まれました。

「そもそもアンコンシャス・バイアスは、単に“良くないもの”なのか?」

アンコンシャス・バイアスは多くの場合、セクハラやパワハラ、人種差別などと同様に、

「とにかくいけないもの」
「なくすべきもの」

として扱われています。しかし、チームで話し合えば話し合うほど、アンコンシャス・バイアスは

「人間が生きていくために必要なこと」
「本能的に持っていること」

だという理解に変わってきました。完全になくすことなどできないし、無理に根絶しようとすると、別の障害が出てくるのではないかと考えるようになったのです。

ここで、前述の例をもう一度見てみましょう。

お子さんがいるから、出張は他の人にお願いするね

という言葉は「お子さんがいるから、女性社員は大変だろう」という思い込みであると同時に、気遣いや思いやりでもあります。実際、前述の例では「ありがたい、子どもの面倒を見なくてはならないので、出張がなくて助かった」と感じる人もいるわけです。

もしアンコンシャス・バイアスを全て「悪いもの、なくすべきもの」とした場合、この上司は「相手の性別や暮らしのハンディキャップなど特に考慮せずに、同じ指示を出す」のが正しいことになってしまいます。しかしそれでは世界は良くならず、別の不満やトラブルが増えることでしょう。

私たちは、本当に改善すべきなのは、

「アンコンシャス・バイアスを持っていること」

ではなく、

「お互いのアンコンシャス・バイアスの可能性に気付かないままコミュニケーションを終わらせてしまうこと」

なのではないかと考えるようになりました。

みんなが「自分にもアンコンシャス・バイアスがあるはず」と気づき、意識できるようになれば、
  • 発言する側は……「最初から決めつけずに確認してみよう」
  • 受け取る側は……「誤解をされているかもしれないから伝えてみよう」

といったケースが増え、コミュニケーションの活性化につながります。

ちなみに、アンコンシャス・バイアスは対人コミュニケーションに限った概念ではありません。イノベーションにおいても「かくれた思い込み」によって可能性が阻害されてしまっているケースは多々あります。

新しい企画の立案、商品開発、営業など、さまざまなビジネスシーンで、多くのアンコンシャス・バイアスが働いています。多数の人が、当たり前だと信じて疑わない“かくれた思い込み”で、新しい発想に歯止めをかけてしまう可能性もあります。

つまり、「自分の中にはアンコンシャス・バイアスがある」と気付き、意識することは、人間関係の改善だけでなく、新しいビジネスアイデアや発見のきっかけにもつながるはずです。

アンバスはなくすことはできない。

役を演じながら学ぶ研修プログラム「アンバス・ダイアログ」へ

 世の中にはアンコンシャス・バイアスのチェックテストや研修が多数あります。その多くは、アンコンシャス・バイアスをネガティブなものと捉え、思い込みを「なくす」ために実施されています。

また、企業で行われる研修は「部下とのかかわり方」のような視点から、経営者や管理職に向けて「こういうシーンではこう対処すべき」というものが主流です。

しかし、DDLの考えるアンコンシャス・バイアスは、ネガティブなだけでなくポジティブな要素も含むもの。そして、立場が上の人に限らず、どんな人でも持っているもの。

そこで、この概念を広めるために最適な発信方法は、新人やベテラン関係なく参加できる研修なのではないかという結論に。

いろいろ方法を検討した末に、「シアターラーニング」に出合いました。舞台演出のメソッドを生かしたワークショップ的な研修形式です。この手法を提唱する音楽座ミュージカルの協力を得て、研修「アンバス・ダイアログ」の開発を進めました。

最初にプロ俳優によるスキットが行われ、それを参考に受講者もロールプレイに挑戦します。ロールプレイの後には受講者同士の振り返りパートがあり、

「自分にはこう見えていたが、相手は本当はこう考えていたのか」

ということを知り、自然と自分の中のアンコンシャス・バイアスの存在に気付いていくことができます。

「ロールプレイ」と「振り返り」をセットにしたことによる「気付き」の経験は、思った以上に新鮮かつインパクトのあるもので、まさに私たちの考えていた「受講者のその後の人生に影響を与える研修」にぴったりな手法でした。

その後、企業研修の知見やコネクションを多く持つ日本マンパワーにも加わってもらい、3社の提携という形で研修「アンバス・ダイアログ」をリリースすることができました。

今の世の中にあるアンコンシャス・バイアスの研修は、ネガティブへの「ブレーキ」として生まれたものだと思います。対して、今回私たちが開発したアンバス・ダイアログは、視点を変えて、コミュニケーションの「アクセル」として機能できればうれしく思います。

次回は研修開発の道のりと、予想以上だった成果について、音楽座ミュージカルの藤田将範氏と、DDLの海東彩加氏の対談でお届けします!

かくれた思い込み「アンコンシャス・バイアス」は、なくすものではなく、気付くもの

「アンコンシャス・バイアス」という言葉を最近よく耳にしませんか?

私たちには、思い込みがないという「思い込み」がある

電通ダイバーシティラボ(以下DDL)は、アンコンシャス・バイアスをテーマとした体験型企業研修プログラム「アンバス・ダイアログ」を開発しました。

舞台演出メソッドを取り入れ、研修参加者が実際にさまざまな役割を演じる「ロールプレイ」が大きな特徴です。

今回は、アンコンシャス・バイアスという概念と、研修の目的について、DDLメンバーの江口露美が紹介します。 

<目次> 
今の時代、なぜアンコンシャス・バイアスという概念が注目されているのか?
「あって当たり前」なアンコンシャス・バイアスとの付き合い方
役を演じながら学ぶ研修プログラム「アンバス・ダイアログ」へ

今の時代、なぜアンコンシャス・バイアスという概念が注目されているのか?

人間にはさまざまな「かくれた思い込み」がある。相手の属性や、考えていることなど、目に見えない要素は、ほとんどの場合、自分の中で解釈してつくり上げている「思い込み」だったりする。「自分には思い込みがある」と気づくことが、研修の目的だ。
人間にはさまざまな「かくれた思い込み」がある。相手の属性や、考えていることなど、目に見えない要素は、ほとんどの場合、自分の中で解釈してつくり上げている「思い込み」だったりする。

2018年ごろから徐々に広まりつつある「アンコンシャス・バイアス」という言葉。

「無意識の偏見」と訳されることが多いようですが、私たちDDLでは「かくれた思い込み」という日本語の方が、ニュアンスとしてより本質に近いのではないかと考えています。

実際にどんな“思い込み”があるのでしょうか。具体例を見てみましょう。

子どもがいる女性社員に対して、上司から「お子さんがいるから、出張は他の人にお願いするね」という言葉。

思いやりや気遣いから発せられた言葉であることは予想できます。しかし、この優しい言葉の中には

「家事・育児は母親の役割のはず」
「子どもがいる女性社員は育児で忙しいから出張したくないはず」


というアンコンシャス・バイアスが存在していることにお気付きでしょうか。

そして受け手側がこの気遣いに対して感じる思いも、一様ではありません。

「育児が大変だから助かった!よかった…」

と思う人もいる一方で

「私のプロジェクトだから、最後までやりたいのに…」
「夫が一緒に育児しているから問題ないのに…」


と思う人もいるかもしれません。
このように、自分の中にある「きっとこうだろう」という、かくれた思い込みがアンコンシャス・バイアスです。これに気付かずにコミュニケーションを行うと、たとえそれが善意であっても、受け取る側には不満が残ってしまう可能性があります。

特にビジネスにおいて、アンコンシャス・バイアスは女性活躍やコミュニケーションの阻害、モチベーションの低下につながりかねない、

解決されるべき課題

として扱われるようになってきました。

コミュニケーションの中で、「この相手はきっとこうに違いない」「どうせこう思っているだろう」などと無意識に決めつけてしまうこと自体は、もともと人類の歴史上ずっとあったものでしょう。

それが「アンコンシャス・バイアス」という概念として確立され、注目されるようになったのは、2000年頃からです。特にアメリカのシリコンバレーという、さまざまな人種、職種、宗教が交わる社会において、必要な概念として研究されてきました。

さらにこの考え方が世界的に注目されるきっかけとなったのは、2018年5月にスターバックスが行った、人種差別に関するアンコンシャス・バイアスのトレーニングです。

事の発端はスターバックスの店舗において、人種による接客・対応の差が発覚したこと。それも「悪意を持った意識的な差別」ではなく、「無意識の偏見による悪気のない差別」が問題になったのです。事態を受け、スターバックスはアメリカ全店舗の一斉閉鎖を決定しました。

スターバックス、ハワード・シュルツ会長の声明文
https://stories.starbucks.com/stories/2018/an-open-letter-to-starbucks-customers-from-howard-schultz/


店舗閉鎖中には、17万人以上の従業員を対象に、人の意識の深いところに眠る偏見を見直すための研修を実施。ニュースでも話題となり、より多くの人々が、善意でも悪意でもなく人の意識の中に自然に存在する「アンコンシャス・バイアス」という概念を知る第一歩となりました。

さて、アンコンシャス・バイアスは一部の人にだけあるものではなく、私たちの誰の中にもあって当然のものです。悪意のない思い込みが招いてしまった人間関係のこじれや、仕事のミスなど、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。

ダイバーシティとインクルージョンをテーマとするDDLでも、多様な個性をいかす社会づくりを目指す一環としてアンコンシャス・バイアスに注目。より多くの人にその認知を広めるための発信方法を模索し続けてきました。

「あって当たり前」なアンコンシャス・バイアスとの付き合い方

ソフトバンクとの越境ワーカープロジェクトがきっかけで、DDL内にアンコンシャス・バイアスに向き合うチームが生まれた。
ソフトバンクとの越境ワーカープロジェクトがきっかけで、DDL内にアンコンシャス・バイアスに向き合うチームが生まれた。

少しさかのぼって、DDL内にアンコンシャス・バイアスを考えるチームができた経緯をお話しします。実は、2年以上の長い構想期間がありました。

もともとのきっかけは、電通とソフトバンクの共同プロジェクトである2018年の“越境ワーカー”(※)です。このとき、多様な個性を“価値”として生かす社会に向けたアクションを考える中で、「アンコンシャス・バイアス」という言葉に出合い、この概念と向き合うことになったのです。

※越境ワーカー
参加企業が相互に社員を受け入れて課題解決を目指すオープンプロジェクト。電通とソフトバンクは、本社所在地が近隣であることを縁に、お互いの社内のプロジェクトチームに相手企業の社員を受け入れ、課題解決に取り組んだ。


アンコンシャス・バイアスとは一体どんなものなのか。どうして広めたいのか。何を広めたいのか。

当初私たちは、

「アンコンシャス・バイアスは良くないものだ」
「アンコンシャス・バイアスのことを教えて、やめてもらうための研修をつくろう」

と考えていました。

しかし、資料を集め、何度も話し合いを重ねる中で、チームにひとつの疑問が生まれました。

「そもそもアンコンシャス・バイアスは、単に“良くないもの”なのか?」

アンコンシャス・バイアスは多くの場合、セクハラやパワハラ、人種差別などと同様に、

「とにかくいけないもの」
「なくすべきもの」

として扱われています。しかし、チームで話し合えば話し合うほど、アンコンシャス・バイアスは

「人間が生きていくために必要なこと」
「本能的に持っていること」

だという理解に変わってきました。完全になくすことなどできないし、無理に根絶しようとすると、別の障害が出てくるのではないかと考えるようになったのです。

ここで、前述の例をもう一度見てみましょう。

お子さんがいるから、出張は他の人にお願いするね

という言葉は「お子さんがいるから、女性社員は大変だろう」という思い込みであると同時に、気遣いや思いやりでもあります。実際、前述の例では「ありがたい、子どもの面倒を見なくてはならないので、出張がなくて助かった」と感じる人もいるわけです。

もしアンコンシャス・バイアスを全て「悪いもの、なくすべきもの」とした場合、この上司は「相手の性別や暮らしのハンディキャップなど特に考慮せずに、同じ指示を出す」のが正しいことになってしまいます。しかしそれでは世界は良くならず、別の不満やトラブルが増えることでしょう。

私たちは、本当に改善すべきなのは、

「アンコンシャス・バイアスを持っていること」

ではなく、

「お互いのアンコンシャス・バイアスの可能性に気付かないままコミュニケーションを終わらせてしまうこと」

なのではないかと考えるようになりました。

みんなが「自分にもアンコンシャス・バイアスがあるはず」と気づき、意識できるようになれば、
  • 発言する側は……「最初から決めつけずに確認してみよう」
  • 受け取る側は……「誤解をされているかもしれないから伝えてみよう」

といったケースが増え、コミュニケーションの活性化につながります。

ちなみに、アンコンシャス・バイアスは対人コミュニケーションに限った概念ではありません。イノベーションにおいても「かくれた思い込み」によって可能性が阻害されてしまっているケースは多々あります。

新しい企画の立案、商品開発、営業など、さまざまなビジネスシーンで、多くのアンコンシャス・バイアスが働いています。多数の人が、当たり前だと信じて疑わない“かくれた思い込み”で、新しい発想に歯止めをかけてしまう可能性もあります。

つまり、「自分の中にはアンコンシャス・バイアスがある」と気付き、意識することは、人間関係の改善だけでなく、新しいビジネスアイデアや発見のきっかけにもつながるはずです。

アンバスはなくすことはできない。

役を演じながら学ぶ研修プログラム「アンバス・ダイアログ」へ

 世の中にはアンコンシャス・バイアスのチェックテストや研修が多数あります。その多くは、アンコンシャス・バイアスをネガティブなものと捉え、思い込みを「なくす」ために実施されています。

また、企業で行われる研修は「部下とのかかわり方」のような視点から、経営者や管理職に向けて「こういうシーンではこう対処すべき」というものが主流です。

しかし、DDLの考えるアンコンシャス・バイアスは、ネガティブなだけでなくポジティブな要素も含むもの。そして、立場が上の人に限らず、どんな人でも持っているもの。

そこで、この概念を広めるために最適な発信方法は、新人やベテラン関係なく参加できる研修なのではないかという結論に。

いろいろ方法を検討した末に、「シアターラーニング」に出合いました。舞台演出のメソッドを生かしたワークショップ的な研修形式です。この手法を提唱する音楽座ミュージカルの協力を得て、研修「アンバス・ダイアログ」の開発を進めました。

最初にプロ俳優によるスキットが行われ、それを参考に受講者もロールプレイに挑戦します。ロールプレイの後には受講者同士の振り返りパートがあり、

「自分にはこう見えていたが、相手は本当はこう考えていたのか」

ということを知り、自然と自分の中のアンコンシャス・バイアスの存在に気付いていくことができます。

「ロールプレイ」と「振り返り」をセットにしたことによる「気付き」の経験は、思った以上に新鮮かつインパクトのあるもので、まさに私たちの考えていた「受講者のその後の人生に影響を与える研修」にぴったりな手法でした。

その後、企業研修の知見やコネクションを多く持つ日本マンパワーにも加わってもらい、3社の提携という形で研修「アンバス・ダイアログ」をリリースすることができました。

今の世の中にあるアンコンシャス・バイアスの研修は、ネガティブへの「ブレーキ」として生まれたものだと思います。対して、今回私たちが開発したアンバス・ダイアログは、視点を変えて、コミュニケーションの「アクセル」として機能できればうれしく思います。

次回は研修開発の道のりと、予想以上だった成果について、音楽座ミュージカルの藤田将範氏と、DDLの海東彩加氏の対談でお届けします!

菅首相のポンコツが止まらない!「変異種」という言葉さえ忘れ、患者を「お客さん」と呼び、やたら机を叩く謎パフォーマンス

 またも菅義偉首相の後手後手ぶりがあらわになった。この間、緊急事態宣言を大阪・兵庫・京都の3府県からも要請を受けていたのに、菅首相は「もう数日、状況を見る必要がある」と言い張っていたが、昨日11日夜になって、政府が緊急事態宣言を出す方向で調整に入ったと伝えられたのだ。  ...

脳波計測で分かったYouTubeクリエイターの“引き付ける”力

YouTube動画は「効く」といわれることが多いですが、何にどう効いているのか分からない方も多いのではないでしょうか。前回の記事では、YouTubeクリエイターの強みには「信頼性」(社会的な信用、伝統)と「信望性」(親しみ、好感、共感性)が関係していることを紹介しました。信頼性はメディアへの露出などにより広く知られことでスコアが上がり、信望性はもっとパーソナルな心の距離感が関係します。

では実際にYouTubeクリエイターがつくった動画は、どのように視聴者との心の距離を縮めているのでしょうか。また、動画を見ることで、視聴者の感情にどのような変化が起きているのでしょうか。

私たちはこの「信頼性」と「信望性」を生み出すファクトをひもとくべく、多くのYouTubeクリエイターが所属するUUUMの協力を得て、「脳波」を用いた感性評価を実施しました。今回は、その調査結果を紹介します。

脳波から感情の変化が分かる!最新のニューロマーケティングを活用

人はさまざまな感情を持った上で判断を行い、行動を起こします。感情が変化する際、大脳では電気が発生します。この電気活動を頭皮表面上に置いた電極で計測するのが脳波です。脳波の周波数の出方は感情の種類によって異なるので、周波数のパターンから感情を定義することができます。

電通サイエンスジャムはこの脳波測定による感性把握技術を活用し、ニューロマーケティングを行っています。「ストレスを感じている」「集中している」「興味を持っている」といった感性を1秒単位で計測し、0~100で数値化します。

今回のような動画コンテンツの評価にはアンケートやインタビューを逐一行う方法もありますが、視聴者の気持ちが頻繁に変動するため、質問される側の負担も大きく、本来の感情の変化が取得できない可能性があります。また、あれこれ思考した上で回答を行うため、本音の部分が見えてこないことも考えられます。

脳波測定は、脳波計を着けているだけでリアルタイムにデータを取得できるので、視聴者も映像に集中することができます。さらに、脳波という自己操作の難しい媒体を介することにより、本能的評価を知ることができます。

以前は脳波計測機も高価かつ大掛かりでしたが、昨今の技術革新により大幅に小型化。いつでもどこでも簡単に計測ができるようになりました。

「Brain Behavior Insight」
「Brain Behavior Insight」

今回の調査では「Brain Behavior Insight」という、電通サイエンスジャム独自のニューロリサーチプラットフォームを活用しました。

協力者の自宅に計測装置を配布し、在宅中のリラックスした状態で動画を楽しんでいただき脳波データを取得、専用サーバーで解析するアプローチです。YouTubeの実際の視聴形態に近い環境で脳波取得が可能で、スピーディーかつコストパフォーマンスに優れた調査を実現しています。

ちなみに、この在宅型の調査プラットフォームは、新型コロナの影響で会場調査がスムーズにできなくなっている中、企業の研究開発やマーケティング支援でも有効活用されています。対象者のリクルーティングから脳波計の装着、実験の実施まで全てリモートで行い、生活者のストレス度、家庭内でのリアルな製品の使用時の感情などを、安全・安心な状態で把握することができます。

脳波測定イメージ
ダッシュボードのイメージ
ダッシュボードのイメージ

YouTubeクリエイターの動画でCM以上に脳が活性化!?

今回は56人に協力いただき、調査を行いました。対象としたのは、UUUMに所属するYouTubeクリエイター2人の動画です。動画A(クリエイターAさん制作:7分弱)はスポンサー協賛によるチャレンジ企画を行い、最後にその協賛会社のサービスを紹介するもの。動画B(クリエイターBさん制作:10分強)は新製品を実際に使ってみた様子を解説し、製品の機能紹介も行うもの。

つまり、YouTubeクリエイターの動画パターンとして王道ともいえる「やってみた系」と「製品レビュー」が題材です。また、比較参考として、同じカテゴリーのサービス・製品のCM動画2本(いずれも30秒)も視聴してもらいました。

まず、最初にポジティブ―ネガティブの感情(Valence)と、脳の活性―不活性の状態(Arousal)を2軸にとり、動画を見ている間1秒ごとの感情の分布比率をマッピングしました。

結果、YouTube動画は視聴者がとても活性的かつポジティブな感情で見ていることが分かりました。一緒に検証したCMも非常にクオリティーの高いもので、極めてポジティブな反応だったのですが、YouTube クリエイターの動画はそれよりも好反応であったことが分かります(四象限時における第一象限の含有率より)。

動画を見ている間1秒ごとの感情の分布比率をマッピング動画を見ている間1秒ごとの感情の分布比率をマッピング_四象限

また、長い動画では通常、飽きてきて後半に集中力が下降するのですが、動画Bは後半も集中が持続し、最後の製品紹介パートまでしっかり見られていたことが分かります。なお、動画Aでは後半に集中度が上昇するという結果になりました。

集中度の時間変化

さらに、動画Aの中で最も活性化したシーンは絶叫系チャレンジ企画のクライマックスシーンで、その前と直後は活性度が低くなっており、まるで本人の感情と連動しているように変化しました。Aさんの動画ではこのような起承転結に沿って、集中するタイミングと感情の起伏にもはっきりとしたメリハリが見られました。

活性度時系列変化

なお、別の調査で「認知度が高いタレント」(=信頼性が高い)が出ている動画は、興味度と満足度が高くなる傾向がありましたが、今回のAさんの動画では、それと同じような効果が表れました。

動画種類による興味度と満足度

さらに、製品やサービスをPRする部分については、通常明らかに「広告メッセージだな」と感じると脳の活性度が落ちるのですが、YouTubeクリエイターの動画はその部分でも高位置を維持。非常にポジティブな反応が見られました。動画後半のPR訴求部分のみを切り取ってCM動画と比較しても、その数値は高く、かつ集中して見られており、これは訴求内容が視聴者の前向きな反応を引き出し、効果的に機能したことを意味しています。

PR訴求部分のみを切り取ってCM動画と比較PR訴求部分のみを切り取ってCM動画と比較_四象限

YouTubeクリエイターの、「信望性」を生み出す能力

第1回で「限定合理性(※)」という考え方に触れましたが、これはできるだけ省エネでいようとする脳の仕組みとしても理にかなっています。脳は、何かを決定付けるときに、自分の中で「条件を満たすもの」を探します。

※=限定合理性
生活者は、“常に選択肢をすみずみまで検討して最適なものを選んでいる”わけではなく、知識・時間・体力の制約から、最初に出合った「条件を満たすもの」に満足して探索を中断しているという考え方。


同じく第1回では、インフルエンサー影響層は、自分に合うかどうかという基準で比較検討する「慎重な買い手」という結果も出ていました。彼らに対して「この人が言うことなら大丈夫」という「信望性」は、まさにその比較検討の際、大きな「条件を満たすもの」となり、購入への後押しとなり得ます。

また、PRの部分においてもポジティブかつ集中して視聴できていることは、「この人の話はいいな、参考にしよう」という「信望性」が影響していると考えられます。おそらく“やらされている感”がない能動的な動画であり、本人が本当にその製品を楽しんでいる・良いと思っていることが視聴者側にも届くからこそ、その感覚を共有でき、インフルエンサーを身近な存在だと感じるのではないでしょうか。視聴者との「感情の共振」を呼び起こしていることが、今回見えたYouTubeクリエイターの“すごさ”のひとつといえるかもしれません。

インフルエンサーと呼ばれる人のうち今回調査したYouTubeクリエイターは、人を引き付ける動画、より面白い構成のコツを知っていて、視聴者の感情をうまく揺さぶっています。その作用を脳波により可視化したことで、いくつかの「証拠」がつかめました。実験実施者としても、想定していたことがはっきり見えた部分、想定以上に表れた意外な特徴、比較して初めて分かった類似・違いなど、大変興味深い結果でした。今後、動画の検証・評価方法のひとつとして応用していければと考えています。

次回は、UUUMでインフルエンサーマーケティングを統括している市川義典氏に話を伺います。どうぞお楽しみに。


【調査概要】
調査会社:株式会社電通サイエンスジャム
調査時期:2019年12月下旬(Brain Behavior Insightを活用した定量調査)
サンプル構成:20〜39歳の男女56人
 

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パチンコホール最大手が「活動と理念」に共感して支援。「心を救う医療」動画が公開

 パチンコホールを中心に総合エンターテイメント事業を展開するマルハンはこのほど、特定非営利活動法人「ジャパンハート」が大切にする「心を救う医療」をより多くの人々に伝える手段としての動画の制作費用を支援し、その動画「わたしたちが大切にしていること-心を救う医療-」が公開されたことを発表した。

 ジャパンハートは2004年の団体設立以来、「医療の届かないところに医療を届ける」をミッションに揚げ、日本国内外で医療、教育、福祉、災害支援等幅広く活動を続ける国際医療NGO。活動を通じて患者の「命」を救うことはもちろん、患者や家族、活動に携わる医療者やボランティアなど、すべての人の「心」を救うことを大切に、活動に取り組んでいる。

 海外活動地のミャンマー、カンボジア、ラオスでは貧困等が理由で十分な医療を受けられない人々に対し、年間約35,000件の治療を無料で実施。日本国内での小児がんの子供と家族との旅行や外出に医療者が付き添いサポートを行う「SmileSmilePROJECT」の運営など、多岐に渡る活動を行っている。

 マルハンは「人生にヨロコビを」という経営理念のもと、明るく楽しい社会づくりに貢献することを目指している。63年の年月を経て培ったオペレーション力を活かし、地域支援、災害被災地支援、国際支援、スポーツ・文化・芸術分野への支援など、社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

 カンボジア・ラオス・ミャンマーなどでは、貧困という社会的課題の解決と輝かしい未来に貢献したいという想いから、2008年にカンボジア初の日系商業銀行として「マルハンジャパン銀行(現・サタパナ銀行)」、2013年にラオス初の同銀行「マルハンジャパン銀行ラオス」、2015年にミャンマー初の日系総合マイクロファイナンス機関「サタパナ・リミテッド」を開業。いずれも多くの支店を持つまでに成長し、各国にて国民の生活・仕事の向上と地域経済の発展を支えている。

 そんなマルハンだからこそ、ジャパンハートの活動や理念に共感したとのこと。動画制作費の支援を決め、無事、公開されたというわけだ。

 動画では実際に心が救われたと語る患者や家族、医療活動に携わる医療者の言葉を紹介。「心を救う医療」の意義や大切さを伝えている。