JRA弥生賞(G2)の全貌。打倒ダノンザキッドを狙う下剋上馬の“虎視眈々”と皐月賞の行方!

 先週の中山記念(G2)はヒシイグアスが破竹の4連勝を達成し、阪急杯(G3)はレシステンシアが復活の勝利を決めた。そして今週は注目の皐月賞トライアル弥生賞(G2)、そして桜花賞トライアルのチューリップ賞(G2)、さらに高松宮記念最後の前哨戦となるオーシャンS(G3)が行われる。

 中でも弥生賞の注目度は別格だろう。出走するダノンザキッドは昨年のJRA最優秀2歳牡馬で、ここまで重賞2連勝を含む3戦3勝、ホープフルSを快勝した実力馬。昨年無敗で3冠を達成したコントレイルを彷彿させる道のりを歩んでいる。この弥生賞も勝利すれば4戦4勝、そして次の本番である皐月賞も勝てば無敗の1冠達成となる。その復帰戦となるこの弥生賞でどんなレースを見せるか、誰もが注目する存在だ。

 もちろん他の馬も虎視眈々と逆転を狙っている。弥生賞は3着以内に入れば皐月賞の優先出走権が得られるレースで、賞金的に皐月賞の出走が確定しているのはダノンザキッドのみ。タイトルホルダー、タイムトゥヘヴン、シュネルマイスターなど他の出走予定馬に関しては、現時点で皐月賞の出走権は確定とは言えない。ゆえに弥生賞で3着以内に入ることが、皐月賞に出走するための絶対条件だ。つまりどの陣営も皐月賞に向けた強い思惑があり、人気薄でも下克上を狙っているのである。実際に過去も賞金的に出走権を持っていなかった人気薄馬が何頭も激走しているレース。今年もどんな馬がまさかの走りを見せるのだろうか、今からその穴馬探しがとても興味深い。

 しかし忙しい現代人において、その穴馬を探すのはかなりの難易度。競馬は表面的な実績ではなく、様々な関係者の思惑やこのレースだけの騎乗作戦など、表に出ない要素が多々ある。それらすべてを一般の競馬ファンが把握するのは不可能。なぜなら競馬ファンは競馬関係者に直接取材することができないし、一方で現在JRAの取材規制でマスコミは満足な取材ができない状況となっている。加えて皐月賞の出走馬をかけたこの重要な一戦で、その作戦や本音を明かす関係者がいるとは思えない。そういった状況を踏まえるとこの弥生賞は、表に出ない関係者の思惑が隠されているのは間違いなく、そしてそれを把握できるかどうかが的中の鍵を握っている。

 では核心の情報を入手するにはどうすればいいのか。それは関係者から直接本音を聞き出すことができ、さらにJRAの取材規制の影響を受けない、プロの競馬関係者が入手する情報を活用すること。この方法以外に関係者の思惑を正確に把握することは不可能だ。

 ではそんな情報はどこにあるのか。様々な競馬情報がこの世には存在するが、その中で特に多くのファンから支持を集め、実際にその情報で実績を残しているプロ集団がある。それが「マスターズ」だ。

 昨年以降、JRAによる新型コロナウイルスの感染防止対策で取材規制が続き、それが影響してか重賞レースは波乱が続出。しかしありとあらゆる情報を把握するマスターズは、なんと現在7週連続で予告した重賞の的中を達成している。その配当も見事なもので、例えば愛知杯(7万9590円)、アメリカJCC(1万4640円)、シルクロードS(2万5250円)、そして先週の中山記念では2万2270円、阪急杯でも2万690円と万馬券を連発させているのだ。

 特に先週の中山記念はバビットやクラージュゲリエに人気が集中したが、マスターズは人気薄で好走したケイデンスコールやウインイクシードの勝負情報を入手し的中。阪急杯でも10番人気で2着に好走したミッキーブリランテの激走情報で万馬券的中と、その実力はまさに業界トップレベル。多くの競馬記者やファンがバビットやダノンファンタジー、インディチャンプといった人気馬で不的中となったが、マスターズを利用した競馬ファンはまさに競馬の勝ち組を謳歌しているのである。

 そんなマスターズは、実際の競馬関係者が所属し運営している会社。これならJRAの取材規制の影響を受けず、レースの結果に直結する勝負情報を入手できるのは当然。そしてそれがスポーツ紙や競馬専門紙といった競馬マスコミとの徹底的な差となっており、その差は今後埋まることなく拡大していくだろう。

 今週は弥生賞が行われるが、マスターズはすでに激走穴馬を含めた核心情報を入手し、的中を確信しているという。つまり先週の中山記念や阪急杯に続く高配当の的中も視野に入っているのだ。今回特別にマスターズが入手した弥生賞について、その情報の一部を聞くことができたので公開しよう。

弥生賞は現在2年連続で完全的中を達成していますが、今年は過去を超える確信度であり、的中に向けて揺るぎない自信があります。そして注目は、実績的に人気薄ながら、この弥生賞で激走が見込まれている穴馬の存在。陣営は本音を表に出さず、マスコミにも曖昧な対応しかしていません。これは他の権利取りを狙う陣営からのマークを避けるため。マスコミはその裏事情を把握できていませんから、かなりの配当も期待できます。

 本来この情報は内部だけで処理するレベルのものですが、競馬をさらに盛り上げるため、そしてファンがコロナ禍を乗り切るため、特別に無料公開を実施することになりました。お届けする情報は【弥生賞・厳選馬連3点勝負】となります。好配当も期待できる必見の情報です。完全無料ですので、ぜひ遠慮なくご利用ください」

 この話からもわかるように、今週の弥生賞は、様々な事情があって一筋縄ではいかないレースだ。特にスポーツ紙や競馬専門紙といった競馬マスコミの情報や予想は、まず参考にならないとみていいだろう。逆に既存のマスコミが入手できない、関係者の本音を知るマスターズが提供する情報こそが、この弥生賞で“美味しい払い戻し”を狙うために必須なのである。

 幸運なことに今週は、マスターズが自信を持つ弥生賞の「確信の馬連3点馬券」を無料で入手できる。このチャンスを逃さず活用し、本物の情報とは何か、競馬界の真実をその目で確かめよう。そしていよいよ始まる春のG1シーズンに向けて、何が本当に必要なのか、その現実をしっかり見届けよう。※本稿はPR記事です。

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JRA福永祐一「失言」疑惑で今年も偉業達成はおあずけ!? 蛯名正義も成しえなかった記録…… チャンスは来年に先延ばしも

 10年前の悪夢を思い起こさせる被災だけに、一刻も早い復旧を願いたいものである。

 4日、JRAは来月の4月10日からスタートを予定していた1回福島(4月10日から5月2日)の開催を見合わせることが明らかになった。

 先月13日の地震で福島競馬場が被災し、競馬場内の施設が損傷するなどの大きな被害を受けている。これにより、今後の余震への懸念や安全面の確保を考慮した上で、開催断念という結論に至ったとのこと。

 今回の被害は11年3月の東日本大震災に匹敵するとも言われている。このときは復旧まで時間を要し、新潟や中山で代替によるレース施行となった。今年も代替開催には新潟競馬場が選ばれる見込みで、以降の開催については復旧具合によって調整される見通しだ。

 状況によっては夏の福島開催も危ぶまれる痛恨事だが、別の意味で影響を受けそうなのが福永祐一騎手だろう。

 2月に引退した蛯名正義騎手が現役時代に果たせなかった代表的な夢として、ダービー制覇と凱旋門賞制覇が有名だ。そして、あと一歩のところで達成することが叶わなかったのが、残すは小倉競馬場のみとなっていたJRA全10場重賞制覇である。武豊騎手ら史上6人しか該当しない大記録は、騎手生活34年の大ベテランを以てしても達成できなかった偉業でもあった。

 昨年7月、この偉業に挑んだのが福永騎手だ。残る福島開催の重賞である七夕賞(G3)でブラヴァスに騎乗したが、勝利まであと一歩のところでクレッシェンドラヴに阻まれて2着に惜敗。11月の福島記念(G3)をバイオスパークで制した池添謙一騎手に先を越されることになった。

 トップクラスのジョッキーは、どうしても4大競馬場での騎乗が主軸となる。ローカル競馬では重賞に騎乗する機会も限られる上に、勝利が必要と条件は厳しい。

 1996年にデビューし、今年で25年目を迎える福永騎手は44歳と、もうベテランジョッキーの一人でもある。まだまだ一線級で活躍しているとはいえ、残された現役生活を考えると早めにクリアしておきたい記録には違いない。

 その一方、福永騎手と福島競馬場についてはちょっとした因縁もある。

 遡ること14年前、2007年秋の天皇賞(G1)での発言だ。武豊騎手がメイショウサムソンで1番人気に応えたこのレースで、福永騎手は6番人気のカンパニーに騎乗。勝負どころとなった最後の直線で、前にいたコスモバルクが左右にヨレたため、進路をカットされるという致命的な被害を被った。

 レース後、「スピードが乗ったところで前をカットされた。あの不利がなければ2着があったかもしれない」と、不満を述べたように福永騎手も怒り心頭だったことは想像に難くない。

 だが、とあるメディアで福永騎手が「コスモバルクは毎回、毎回やっている。五十嵐さんはG1に乗る騎手じゃない。(ローカルの)福島にでも行っていればいい。勘弁してくれ」とコメントしたと報じられたことにより、思わぬ方向に波紋が広がった。一部のファンからは「福島に失礼だ」「何様だ」と、福永騎手に対し辛辣な意見も出た一方で、「本当に発言したの?」といった真偽を疑う声もあった。

 実際、他メディアでこのような発言を報じられた記事はなく、物議を醸していたことに気付いた福永騎手本人も事あるごとに、そのようなことを口にした覚えはないと否定している。

 予期せぬ”風評被害”に見舞われることとなった福永騎手だが、その対象となった福島競馬場で重賞勝利に手が届かないせいで、JRA全10場重賞制覇に手が届かない現状は皮肉な結果でもある。

 そして、福島開催の重賞の少なさも偉業達成の難易度を押し上げている原因だ。春の福島牝馬S(G3)、夏のラジオNIKKEI賞(G3)、七夕賞(G3)、福島記念(G3)と4レースのみ。

 今年は被災の影響によって春の開催が中止となり、状況によっては夏の開催もままならない可能性がある。秋の福島記念はエリザベス女王杯(G1)の裏開催ということもあり、トップジョッキーの一人である福永騎手ならG1に騎乗している可能性も高いだろう。

 となると、場合によっては今年の記録達成がほぼゼロとなる可能性も、現実的な話となりそうだ。福永騎手が”福島の呪い”から解放されるのは、もしかしたら来年以降に先延ばしとなるかもしれない。

なぜソニーは、どん底から9年で完全復活できた?「利益1兆円・時価総額10兆円」達成

 ソニーが完全復活を印象付けた。東京株式市場の時価総額ランキングでソニーは約14兆円で第3位。トヨタ自動車(約26兆円)、ソフトバンクグループ(約21兆円)の後を追う(2月25日現在)。時価総額が10兆円に回復したのは1年前の2020年1月10日のこと。IT(情報技術)相場に乗って株価が上昇した2000年以来の快挙だった。

 ソニーの時価総額の推移を見ておこう。2000年に14兆円までアップしたが、テレビなどエレクトロニクス(エレキ)の不振で12年には一時、7000億円台まで下落した。

 その後、ゲームや音楽事業などエンタメ部門を中心に経営を立て直した。21年3月期の純利益は1兆円超を確保する見通し。19年3月期の9162億円を上回り過去最高となる。21年3月期の第3四半期(累計)の決算発表翌日(2月4日)の株価の終値は1万1650円。前日比1015円高と暴騰した。時価総額も14兆6913億円と21年ぶりに過去最高を更新した。

新型ゲーム機PS5が好調

 21年3月期連結決算(米国会計基準) の純利益は過去最高の1兆850億円(前期比86.4%増)となる見通し。従来予想は8000億円だった。売上高は従来予想から3000億円増の8兆8000億円(前期比6.5%増)、営業利益は2400億円増の9400億円(同11.2%増)を見込む。

 主力のゲーム事業(ゲーム&ネットワークサービス分野)が快走する。売上高が従来予想から300億円増の2兆6300億円、営業利益は400億円増の3400億円を予想している。20年11月、7年ぶりとなる新型ゲーム機プレイステーション5(PS5)を発売したのが追い風となった。

「PS5の初年度(21年3月末までの)販売台数はPS4の初年度実績である760万台以上を目指す」。十時裕樹副社長兼CFO(最高財務責任者)は20年10月の決算説明会で、こう述べた。21年2月にはPS5について「350万台を突破したが、世界的に半導体不足もあり、需要に対しこたえられていない」とし、改善に努めたい、とした。

「初年度760万台以上という数字は、最低限のライン。どれだけ上積みできるかが勝負となる」(ゲーム業界に詳しいアナリスト)

 証券各社の初年度の販売台数予想は760万~1100万台とバラツキがあり、平均で900万台といったところだ。半導体不足が、どう影響するかは見通せない。

 巣ごもり消費によるソフトウエアの販売増や、ネット対戦などができる定額サービス「PSプラス」(月額850円など)の会員増などが寄与し、ゲーム部門の収益を押し上げた。リカーリング(継続課金)と呼ばれる方式をとり、事業の収益安定化につながるPSプラスの会員は20年末で4740万人に達した。この1年で900万人弱増えたことになる。PS5の購入者の87%がPSプラスに加入しているという。ゲーム事業は今や営業利益全体の36%を稼ぐ大黒柱となった。

「鬼滅の刃」のヒットも寄与

 音楽分野(アニメ事業を含む)も売上高は500億円増の9000億円、営業利益は280億円増の1800億円に上方修正した。子会社、アニプレックスが配給する『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のヒットが大いに寄与した。

 これに対して映画は売上高を従来予想から100億円減額して7500億円とした。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う劇場閉鎖が続き、作品の公開延期が相次いだためだ。広告宣伝費を絞ったことや前年度に公開した作品などをホームエンターテイメントやテレビなどへ配信することで得られるライセンス料もあって、営業利益は240億円増の720億円に上振れする。ゲーム・音楽・映画の3事業(エンタメ部門)の営業利益の合計は5920億円。全体の営業利益の63%を占める。収益構造からみるとソニーは、もはやエンタメ会社なのだ。

 半導体事業(イメージング&センシング・ソリューション分野)の売上高は500億円増の1兆1000億円、営業利益は550億円増の1360億円とした。昨年、米中摩擦の激化でファーウェイのモバイル機器向けのセンサーの出荷を一時中止したことから、売り上げが落ち込んだ。しかし、出荷は再開され、ファーウェイ以外の顧客からの引き合いも活発だ。

 デジカメやスマートフォンの電機事業(エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野)の売上高は200億円増の1兆8900億円、営業利益は580億円増の1250億円となりそうだ。金融分野も生命保険の特別勘定における運用益増で金融ビジネス収入を1400億円上乗せし1兆6000億円、営業利益は150億円増の1700億円に増額した。

“ソニーらしさ”を具現化する製品

 ソニーとパナソニックは宿命のライバルだったが、近年、業績は、はっきり明暗を分けた。ソニーが明、パナが暗である。ソニーの時価総額は過去最高の14兆円を更新したが、パナソニックのそれは3.4兆円。4倍超の開きができてしまった。

 リーマンショックで両社とも巨額な赤字を抱え、水面下に沈んだ。パナソニックはプラズマテレビからの撤退などの構造改革を進めて巨額赤字から脱却を果たした。だが、その後は低迷が続くデジタル家電事業を引きずり、電気自動車(EV)向けの電池でも大口顧客の米テスラに振り回されている。

 ソニーは4月に社名を「ソニーグループ」に変更し、エレキ中心だった組織体制を刷新する。22年3月期から始まる新たな中期経営計画でどのような施策を打ち出すかが、今後を占うカギとなる。ゲームを中心とするエンタメ事業への依存を強めており、コアとなる新たな事業の育成が急務だ。

(文=編集部)

シブツタ名物店長、企画力の秘密は他者のB面を「ザッピング」する能力

本業(=A面)と全く異なる「B面」を持った電通社員によるクリエイティブチーム「電通Bチーム」(以下、Bチーム)。2020年夏、結成6年目にして、偶然にも2冊の「Bチーム本」が同時期に発売されました。

そしてこれらの発売を記念し、時代の変化を映し続ける渋谷という街のランドマーク・SHIBUYA TSUTAYAに、BチームメンバーのそれぞれのB面に関するおすすめ本を集めた特設コーナー「B面の本棚」が設置されました(2020年10月に終了)。

この企画を考えたBチームの“古着”担当リサーチャー飛田ともちか氏と“発明”担当リサーチャー高橋鴻介氏が、企画を快諾してくれたSHIBUYA TSUTAYAの名物店長・清水悠佑氏と、「あたらしいことはB面から生まれる」をテーマに(リモート会議で)熱く語り合いました。

<目次>
「B面の本棚」は“面白い”で即実現、メディアからの反響も!
清水さんのB面は、渋谷で生かせ る“ザッピング力”だった
魅力的な企画は“熱量ファースト”で生まれる
B面の活動を厚くする「A面の引き出し」        
本来の「A面」が「B面」に変化!?新たな発想を生みだすBチームメイキング術

「B面の本棚」は“面白い”で即実現、メディアからの反響も!

2020年10月までSHIBUYA TSUTAYAで開催されたBチームによる選書企画「B面の本棚」の様子
2020年10月までSHIBUYA TSUTAYAで開催されたBチームによる選書企画「B面の本棚」の様子

飛田:最初に僕たちが「B面の本棚」の企画を相談したときは、どんな印象を持たれましたか?

清水:シンプルに「面白いな」と(笑)。Bチームの皆さんも、発想力や企画力を含めて人として楽しい方たちだと思いましたね。

飛田:僕は、最初のご相談で、「じゃ、やりましょう」と即答されたのがすごく印象的で、「こんな簡単に実現しちゃうの⁉」と驚きました。そのレスポンスの速さ、決断力に、Bチームと近いノリを感じました。

高橋:SHIBUYA TSUTAYAはファッションショーや、これからの渋谷と働き方を考えるプロジェクト「ニューシブヤパラダイス」など、突拍子もないことを企画してサラッと実施できるのが、書店として個性的だと感じます。お店として新しいことをどんどんやっていきたい気持ちが強いのでしょうか?

清水:はい。やはり今は個性の時代。個人も、企業も、自己表現を思いきりしていかないと気づいてもらえないし、支持してもらえないと思うんです。イチ店舗としても「個性を磨いていかないと」という思いがあって、小さな取り組みを積み重ねています。

高橋:「B面の本棚」に対する反響はどうでしたか。

清水:売り上げ的にはコーナー全体で100冊以上売れていて、まず「ニューコンセプト大全」はSHIBUYA TSUTAYAのビジネス本ランキングで2週連続1位。さらに売り場自体を「王様のブランチ」に取り上げてもらえるなど、メディア的にもウケが良い企画でした。

飛田:Bチームメンバーが選んだ本では、どれが人気でしたか?

清水:一番売れたのが、中谷俊介さん(Bチーム“未来予測”担当リサーチャー)が選んだ「銀河の片隅で科学夜話」です。2位が、小林昌平さん(“哲学”担当リサーチャー)が選んだ「その悩み、哲学者がすでに答えを出しています」。全体的に、哲学や建築の本が人気でしたね。SHIBUYA TSUTAYAは自己啓発系の本が強いのですが、そこと哲学に通ずるものがあるのかな。

Bチームメンバーが、それぞれの「B面」のおすすめ本を1冊ずつ推薦。「B」形のポップに、各メンバーからの「その本の紹介文」が書かれている。
Bチームメンバーが、それぞれの「B面」のおすすめ本を1冊ずつ推薦。「B」形のポップに、各メンバーからの「その本の紹介文」が書かれている。

高橋:この企画で面白かったのは、売り場に置かれた各書籍の紹介文が、Bチームメンバーの“B面の解像度”で書かれていたこと。例えば建築担当リサーチャーの奥野圭亮が、「階段空間の解体新書」という本の紹介をするときに、建築に詳しくない人にも分かるように見どころを書いていたのが印象的でした。

清水さんのB面は、渋谷で生かせる“ザッピング力”だった

SHIBUYA TSUTAYA では2020年11月、未DVD化映像作品を含む約6000タイトルを取りそろえたビデオテープコーナー「渋谷フィルムコレクション」を展開。また、VHSブームをひも解いたドキュメンタリー映画「VHSテープを巻き戻せ!」無料上映会などのイベントも開催した。
SHIBUYA TSUTAYA では2020年11月、未DVD化映像作品を含む約6000タイトルを取りそろえたビデオテープコーナー「渋谷フィルムコレクション」を展開。また、VHSブームをひも解いたドキュメンタリー映画「VHSテープを巻き戻せ!」無料上映会などのイベントも開催した。

高橋:清水さんご自身には、何かB面ってありますか?

清水:僕の場合、仕事ばかりでこれといったB面はないです。ただ何にでも興味はあるので、例えば今は劇団四季にドはまりしています。それもきっかけは仕事。少し前だったらエロとかフェチとかにすごく興味をかきたてられて、「デパートメントH」という、鶯谷で開催されている日本最大級のフェチのイベントに行ってきました。

飛田:その興味のスイッチというのは、どんなときに入るものなのですか?

清水:それはやっぱり人と話をしていてです。それしかないですね。

飛田:じゃあ、その時もエロとフェチの権化みたいな人が目の前に現れた?(笑)

清水:そう、そう。仕事の話をしている中で、メインの話と離れた雑談の中から「そんな世界があるんですね」と教えてもらって、すぐ行きました。

飛田:清水さんはある種、人のB面をたどっていくような、流動的なB面を持っているのかもしれないですね。漫画の「HUNTER×HUNTER」で人の能力をコピーできる能力者が出てきましたけど、それに近い印象を受けました。出会った相手のB面を取り込んで、少しずつモノにしていく能力者みたいな(笑)。

清水:(笑)

高橋: 確かに。B面って「何かに決めなきゃ」みたいなところがあるけど、清水さんの話を聞いていると一つじゃなくてもいいのかなって思えます。そんな流動的なB面を持つ清水さんの、“今”のおすすめ本があればお聞きしたいです。

清水:今みんなにおすすめしているのは「独学大全 絶対に『学ぶこと』をあきらめたくない人のための55の技法」という、知識のザッピングみたいな内容の本です。

高橋:「ザッピング」って、清水さんらしいですよね。いろんな人と話して、その人たちのB面をザッピングしながら、どんどん企画を考えているという。SHIBUYA TSUTAYAって、いつもいろんな企画をやっていますよね。例えば、「渋谷フィルムコレクション」と称して、映画やドラマのVHSビデオテープを店舗内で展開してみたり、渋谷のシアターとコラボした企画「渋谷シネマナビ」では、近隣で上映する作品の「観賞前後に見てほしい作品」を集めたコーナーを設けたり。それはその時その時の、清水さんやスタッフさんの興味関心事を企画にしているんですか? 

清水:VHSの企画は、どちらかといえば、TSUTAYAの“メインストリート”である「映画をより楽しんでいただく」ということが、どうしたらできるかなと考えたときに行き着いた手段ですね。やっぱり映画好きのスタッフが多いので、みんなを巻き込んでいきました。

高橋:清水さんで興味深いのは、「面白いな」と感じたら「はい、それやってみよう」ってスピード感を持って実現しちゃうところですね。やろうとなったらすぐ実践という意識が常にあるのでしょうか?

清水:そう意識しています。とにかく実践して、良い結果か悪い結果か、どちらかを出さないと成長していかないので。渋谷って「面白いものないかな」って探しているお客さんがたくさんいて、この渋谷という舞台で挑戦したいと思っている人もたくさんいる。お店を使って、面白いものを探す人と、面白いと思うことに挑戦したい人とのマッチングをうまくできたらという思いがあります。

例えば“お琴くん”っていう「お琴一本で武道館ライブしたい!」って言っているやつが、よく店の前で琴を弾いているんですけど、なぜおまえはここでそんなパフォーマンスをしているの?という(笑)。「なんで?」って興味関心が尽きない街で、出会う人の数も多い。もちろん商売なので、もうけないといけないのですが、その中でもできる限り、面白そうなことに挑戦していきたいです。

魅力的な企画は“熱量ファースト”で生まれる

飛田:清水さんが外から企画を持ち込まれたとき、「やってみよう」と判断される基準はどこにあるのでしょうか? 

清水:大まかに三つあります。一つ目は、企画を持ち込んでくれた人たち自身に熱量があるか。その人たちが本当にやりたいと思っているか、楽しんでいるのかというのが大事。二つ目は、お客さんが喜んでくれるかという視点。どの層のお客さんが喜んでくれそうかを想像します。三つめは、収益的に「マイナスになるリスク」がどのくらいあるかを考えた上で最終的な判断をしています。

高橋:収益の話が最後に来るというのがすごくいいと思ったのですが(笑)。

飛田:僕も、最初に熱量の話から始まったことにグッときました。

高橋:今、自然と(話す順序が)そうなっていましたよね。今の三つの基準は、「B面を持つ人たちを組織の中で生かすためのマインドセット」としても捉えられるなって感じました。

飛田:SHIBUYA TSUTAYAの取り組みがどれもエッジーで面白いのは、企画者の熱量を一番大事にされているからなんですね。熱量ファースト、というか。

高橋:熱量ファースト!たしかに!

清水:ちなみに僕は、「お金もうけ」と「面白さ」は、全く別のスキルだと思っています。「お客さんにとって面白い」ことがコンテンツの魅力の根源。まずそれがあって、もうけ方については頭の良い人がいろいろ考えれば、たくさん出てくる。その二つはある程度分けて考えていいのかなと。

高橋:へー、面白い!そこにマーケットがあるから面白い企画を考えるという順番ではなく、「これが面白いから、何とかもうけ方を考えようぜ」でも成立しているんですね。

B面の活動を厚くする「A面の引き出し」

飛田:清水さんから見た、電通Bチームの印象を聞いてもいいですか?

清水:前提としてA面でのスキル、経験、リソースのレベルが高くて、その上でB面も本気でやっているところが稀有な存在だと思います。

以前、Bチームに「どうしたらSHIBUYA TSUTAYAをもっと面白くできるか?」というアイデアを出す会を設けてもらいましたよね。「SHIBUYA TSUTAYAの価値はこういうところです」と客観的に教えてくれた上で、もっと多くの人に店の魅力を伝える手法を提案していただきました。

そういう、広告会社ならではのA面の引き出しもいっぱい持っていると同時に、「“お客さんにとって面白いこと”なら、こんな視点もあります」というB面的な引き出しもたくさんある。何を投げかけても的を射た答えが返ってくる印象でした。

飛田:SHIBUYA TSUTAYAの中で、スタッフの“B面”から生まれた企画もあるんですか?そもそもTSUTAYAですから、A面の仕事である「映画」自体が、B面でもあるという人が多いのかなという気もしますが……。

清水:確かに、B面がA面になっているスタッフが多いですね。それで、どちらかといえば商売がへたくそ(笑)。「この映画が好きだから伝えたい!」と売り場をつくったりするのですが、それがそのままA面の仕事になってしまうので、逆に「いかにもうけるか?」を一生懸命やる人が、SHIBUYA TSUTAYA ではB面的な存在になっているところがあります。

飛田:たくさんの企画を発信されていますが、企画会議はどんなふうに進めているんですか?

清水:基本的に多いのは、「テーマ」だけスタッフに投げ込んで、後は僕とセッションしながら決めていくやり方です。例えば「ジャニーズの公式グッズはもちろん自分たちじゃつくれないけど、正攻法じゃなくて、ジャニーズファンに買ってもらえるグッズのつくり方、ない?」みたいな。

飛田:それはまずテーマが秀逸ですね!(笑) 

清水:ジャニーズが大好きなスタッフもたくさんいるし、今までも店として一生懸命おすすめしていて、SHIBUYA TSUTAYAの企画から発生した現象が、メディアにも多く取り上げられていました。そこで、もっとジャニーズ好きなお客さんに喜んでもらいつつ、商売にもしていきたくて、テーマとして投げかけてみました。

飛田:テーマに対するアイデアがスタッフから出てきたときに、どれをピックアップして実現するかがまた難しいと思うのですが、清水さんの中で「こういうアイデアなら残す」という基準はありますか? 

清水:小さくてもいいので“勝ち筋”が見えそうなところですかね。やはり最終的にはビジネスにつなげたい。これが大きくなっていけばお金の匂いがするとか、そこは考えます。

高橋:面白さの先で「ちゃんとお金になるか」の視点は非常に大事ですよね。B面は熱量だけど、A面はビジネスとしてちゃんと着地させる力が必要だと思うので。

飛田:SHIBUYA TSUTAYAがうらやましいのは、全員B面がA面になっている職場であることですね。熱量をそのまま出せる。

高橋:映画でもジャニーズでもそうですが、いろんな熱量を持ったスタッフが集まる職場だからこそ、ザッピング担当の清水さんがいると最終的にビジネスまで落とし込めるのだと思うし、店長の興味の幅が広いことで、うまく組み合わせていろんな切り口の企画を出せるのかもしれませんね。

本来の「A面」が「B面」に変化!?新たな発想を生みだすBチームメイキング術

 

2020年8月、SHIBUYA TSUTAYAの非公開Facebookグループや、企画会議にも参加できるオンラインコミュニティー「SHIBUYA NEST」が発足した。
2020年8月、SHIBUYA TSUTAYAの非公開Facebookグループや、企画会議にも参加できるオンラインコミュニティー「SHIBUYA NEST」が発足した。

高橋:最後に、この連載のテーマである「今、日本にBチームが必要な理由」を語っていただいていいでしょうか。

清水:Bチーム的な考え方は絶対に必要ですよね。それは間違いない。われわれの企画でいうと、2020年8月に「SHIBUYA NEST」というオンラインコミュニティーを立ち上げたんです。 “シブツタを私物化しよう”というキャッチコピーの元、30人くらいのメンバーがコミュニティー内で活動してくれています。福岡の糸島に住んでいる野菜ソムリエ、名古屋のエステティシャン、行政関係、デザイナー、美容師……全国のいろんな職種の人がメンバーになってくれていて、そこから今までになかった発想が生まれています。

例えば、同時期にYouTubeで「シブツタchannel」というものも立ち上げていたのですが、中身のコンテンツを僕たちスタッフが考えようとしたとき、「TSUTAYAのブランドを大事にしないと」「かっこいいものじゃないと出せない」という変なハードルが勝手に自分たちの中にあって、何も動けなかったんです。だけど、「SHIBUYA NEST」のチャンネルをつくって、コミュニティーメンバーにコンテンツを考えてもらったら、面白いことがどんどん出てきて、僕ら自身も「おかしなハードルをなくして、やってみよう」と思えた。

SHIBUYA NESTはまさにSHIBUYA TSUTAYAにとっての「Bチーム的な存在」で、われわれがA面の正攻法で解決できなかったことを解決できたんです。

飛田:つまり、農家や美容師といったコミュニティーメンバーの「A面」のお仕事が、SHIBUYA NESTという場では「B面」として作用して、今までになかった発想が生まれてきたということですね。もともとのA面が、ある空間に集うことでB面になる構造が、新しいBチームのつくり方という気がしました。

高橋:SHIBUYA NESTの事例は、「私物化しよう」というワードが重要なのかなと思います。それぞれが熱量を傾けたくなるような“旗印”というか。その言葉のもとにBチームができて、実際に新しい企画やコンテンツが生まれてきているところが本当に面白い。

今日一番心に残っている言葉が「熱量」なんですけど、何かを私物化しようとするときに、熱量が高まる気がする。そういうふうにチームをつくっていくと、新しいものが生まれるんですね。めちゃくちゃ勉強になりました(笑)。

飛田:一人一人がB面を探さなくても、チームメイキングの時点で共通のA面をつくってあげれば、集まってきた人の本来のA面がB面に変わるっていうね。日本にいろんな発想が生まれるような面白いチームづくりができる一個の事例だなと思いました。いろいろと興味深いお話をありがとうございました!

清水:こちらこそありがとうございました!

ソーシャルイシューをアイデアに変換する8つのアプローチ

前回のコラムでは、やがて生活者の関心事となるような兆しやインサイトを、ソーシャルメディア上で“捕獲”するソーシャルハンティングについて、その「7つの鬱憤」を紹介しました。

ソーシャルハンティングは、企業やブランドが取り組むべきイシューを発見するための新たな手法です。では、イシューを見つけたとき、解決のためのアイデアをどう生み出すのか?今回はアイデアのヒントとなる8つのアプローチを紹介します。

なお、イシューという言葉について。一般には、社会的環境や政治的背景などに紐付く大きな課題を指すことも多いのですが、本コラムでは、前回に続き「個々人の不具合を感じる生活者視点の課題」と定義します。

誰のどのような意識・行動を伴うイシューなのか、具体的に設定する

アイデアを考える前に、まずはイシューを「世の中に起こっている(または起こり得る)“事象”」と、「それに伴う生活者の“意識”や“行動”」の組み合わせとして、具体的に整理するのがポイントです。

例えば、「マスクの熱中症」に着目した場合、より具体化して「小学生が、真夏日の通学時もマスクを着けたまま長時間歩くことで、熱中症になる危険が高い問題」と設定してみましょう。そうすることで、「通学時の熱中症」という事象がどう変化し、誰の意識や行動が変わっていくとよいのか、考えやすくなります。

イシューをアイデアに変換する8つのアプローチ

では、本題の8つのアプローチ「CORE IDEA」を紹介します。過去にあったイシュー起点のコミュニケーションを大きく8つのアプローチとして分類し、それぞれの頭文字をつなげたものです。

COREIDEA画像

C  Clarify(可視化する)
O  Open(開放する)
R  Replace(置換する)
E  Expand(拡張する)
I  Invert(逆転する)
D  Disagree(対立する)
E  Entrust(代弁する)
A  Align(協調する)

C  Clarify(可視化する)

 “可視化”は目に見えないものを分かりやすくすること。数字やデータで表現したり、擬人化・疑似体験化したりといったアプローチです。

例えば、クラフトビール会社・ヤッホーブルーイングは、「飲み会で、会社の上司が飲み会で“先輩風”を吹かせ、会話を占有してしまう」というイシューに対し、先輩風を「扇風機付きの椅子」としてリアルに“可視化”させることで、ユニークに啓発するというアクションを行いました。

O  Open(開放する)
オープンという言葉の通り、前例やルールなどの制限を取り払って“開放”したり、これまでブランドや企業が秘密にしていたことを“公開”したり、ノウハウを“オープンソース化”するといったアプローチです。

例えば、コロナ禍の外出自粛で「飲食店に行って、人気メニューを食べたいけれど、今は外出できない」というイシューに対し、飲食店が家でも作れるように「秘密のレシピ」をソーシャルメディアで“公開”。お店のファンから好意的な反響が多く寄せられるといった事例がありました。

R  Replace(置換する)
従来の方法を一部だけ“入れ替え”たり、言葉を“組み替え”たりするアプローチです。アクションを考えていく過程で「伝わりづらい」懸念があった場合、Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、How(どのように)の1点をどこか“ズラして”みると、新たな視点が生まれることがあります。

例えば、「オンライン結婚式」や「オンライン帰省」なども、これまでのリアルをオンラインに“入れ替え”たアプローチのひとつといえます。

E  Expand(拡張する)
言葉としては“拡張”ですが、ここでは逆の“縮小”も含めて、Expandとします。スケールを変えるという視点で、大きさ・長さを半分にしたら、倍にしたら……と考えてみるとよいかもしれません。

例えば、日本花き振興協議会は、2020年の「母の日」を、「母の月」へと“拡張”し、「5月の1カ月間を通じて、感謝の気持ちを伝えよう」と呼びかけました。これは、コロナ禍における「生花店の店頭もお客さまで混み合い、遠方に住むお母様に贈るため宅配便での受注も多いため、配送業者も多忙を極める状況」(プレスリリース参照)というイシューに対する取り組みでした。

I  Invert(逆転する)
先述の「Replace(置換する)」と重なる部分もありますが、本来ネガティブなことをポジティブな意味に“真逆”にしたり、立場を“逆転”させたり、これまでの慣習に“逆行”したりするアプローチです。

例えば、海外の海洋環境保護団体が、北太平洋に浮遊する海洋ごみを「Trash Isles」(ごみ諸島)として、公式の国家として認めるよう国連に申請しました。ごみを「国」へ、概念を“真逆”に変えることで、海洋ごみ問題の深刻さに気づかせました。

D  Disagree(対立する)
シンプルにいうと“対立構造”をつくることです。それにより、生活者が立場を表明しやすくなったり、議論や賛否を巻き起こしたり、あえて“仲たがい”することで、自社やブランドの立場を際立たせるアプローチです。

対立構造といっても、対立する相手は競合他社だけではありません。例えば、食品メーカーが自社の商品同士でフレーバーや商品を競わせるアイデアも、このアプローチといえます。

E  Entrust(代弁する)
ブランドや企業が意思表明し、人に寄り添って気持ちを“代弁”していく、強い者に“立ち向かう”、困っている人を“支援”するといったアプローチです。

例えば、新聞広告で企業やブランドがスタンスを表明し、それに対して生活者が賛同したり、ソーシャルメディアで議論が巻き起こったり。ここで注意したいのは、“代弁”といっても「言いっぱなし」で終わらず、企業の行動が伴っていること。代弁するだけでは解決できないイシューに対しては、実体を伴ったアクションもセットで考えるとよいでしょう。 

A  Align(協調する)
Allianceの動詞形がAlign。業種の異なる企業やライバル企業が、イシューを解決するために“協調”したり、“仲間”となったりするアプローチです。最近では、競合同士のコラボレーションや、業種を超えた取り組みも増えています。

例えば、コロナ禍で休業中の飲食店の従業員をデリバリー会社が臨時雇用する“協業”の取り組みや、環境負荷を減らすパッケージをライバル企業が“共同”開発するといった動きも出てきています。

ここ最近目立つアプローチは?

最近では、「Open(開放する)」「Entrust(代弁する)」「Align(協調する)」のアプローチが目立っている印象です。この3つの視点は、大きく捉えると、分断が加速する社会において、企業やブランドが生活者に寄り添い、パートナーとして一緒に解決を目指していく取り組みともいえます。

今回、8つのアプローチを紹介しましたが、この型にはめることがゴールではありません。アイデアを生み出すには多様なアプローチがあり、この「CORE IDEA」も、そのひとつの視点です。さまざまな角度からイシューを捉えることが、課題を突破するアイデアにつながるのではないでしょうか。

日本の消された領土問題・北方領土、返還は絶望的…ロシア、交渉の意思すらなし

 もう北方領土交渉というものは消えたのか――。

 新聞報道などによれば、ロシアのプーチン大統領は2月14日に公開された露メディア幹部とのインタビューで「日本との関係は発展させたいが、ロシア憲法に反することは行わない」と述べたという。昨年7月にロシアは改正憲法に「領土の割譲禁止」を盛り込んだ。同大統領が憲法を盾に日ロ関係の考えを示したのは初めてだが、事実上、日本への北方領土引き渡しを拒否したと見られ、領土交渉の実現はもはや絶望的なレベルになってしまった。

 改正憲法は「領土の割譲に向けた行為やその呼びかけは認められない」とする一方で、国境の策定は除外するとの項目もあるため、日本では「領土交渉はできる」との楽観論もある。しかし、国境画定とは歴史的に国境が決まっていない地域の境界線を策定すること。ロシアは北方4島について「第二次大戦後に正当にロシアの領土になった」としており、改正憲法が例外とする範疇に入らない。

 日ロ交渉について聞かれたプーチン大統領は「ラブロフ外相に聞いてほしい。どこで国境画定作業が行われているか説明してくれるだろう」と言っただけで、およそ領土交渉をするつもりはなさそうだ。最近の日ロ交渉で同外相が言っていた「領土問題は話し合っていない」という言葉は既成事実化してしまった。メドベージェフ前首相は2月1日のインタビューで「我々には領土の主権を引き渡す交渉をする権限がない」とも発言している。

 とはいえ、これらの発言はある程度は「国内向け」だろう。一時期、人気が凋落していたプーチン大統領は2014年のクリミア併合で人気がV字回復した。反プーチンの動きが強まる今、「領土を絶対に他国へ渡さない」という姿勢が再び切り札になっているようだ。

 一方で、対日強硬派とされるラブロフ外相は「1956年の日ソ共同宣言は有効」と明言している。平和条約締結後に色丹島と歯舞群島を日本に引き渡すことを明記した宣言だ。プーチン大統領としては、領土交渉の可能性を完全に否定してしまえば、日本から4島への投資拡大などが期待できなくなる。領土問題を棚上げにしたままで、経済関係だけで日本から利益を得たい。こうした戦略の下地をつくってしまったのが、外務省をソデにして経産省主導で4島での経済交流ばかりを前面に出してしまった安倍外交である。

菅政権、具体的な対応は「なし」

 プーチン発言について加藤勝信官房長官は15日の記者会見で、「引き続き粘り強く取り組みたい」としただけで具体的な対応は何も明かさない。明かさないというより、「ない」のだろう。北方領土交渉を菅政権になってどう進めるのかは、さっぱりわからない。

「千島歯舞諸島居住者連盟」根室支部長で国後島出身の宮谷内亮一さん(78)は、「北方領土問題と国内問題を絡めるのは疑問。これまで積み上げてきたものをないがしろにする発言だ」と怒る。さらに「日本で政権が代わってから領土問題に対する発信力や熱意が伝わってこない」ともどかしそうだ。 

 プーチン大統領の「絶望的発言」を受けて、筑波大学の中村逸郎教授(ロシア史)は2月20日に『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(テレビ朝日系)に出演し、領土返還について「今がチャンス」と語った。「暴君になり果てた」(中村氏)プーチン大統領が歴史上のロシアの独裁者同様、暗殺されるなどしてロシアがソ連崩壊後の混乱のようになればチャンスだという。

 北方領土返還については「1991年にソ連が崩壊して経済混乱に陥っていた時がチャンスだった」という声は強い。エリツィン大統領時代、ルーブル紙幣は紙屑同然になった上、北方四島が大地震に見舞われた。日本の経済支援や人道支援で「ロシアではなく日本になりたい」と望むロシア人も多かった。当時、橋本龍太郎首相がエリツィン大統領と釣りを楽しむ姿をアピールした1997年の「クラスノヤルスク会談」などで、返還に向けて日本国民に大いに期待させていた。「1993年の東京宣言に基づき、平和条約を締結し2000年までに領土問題を解決する」と合意されていた。だが結局、チャンスも生かせなかった。その当時から日本外交のレベルが上がっているとはまったく思えない。むしろ下がっている。

「低レベル外交」の極めつけが「外交の安倍」を自負した安倍政権だ。パフォーマンスばかりなのに、忖度する官僚とメディアにより「返還期待論」が横行した。当然、返還交渉は進展しなかったどころか後退した。安倍氏は「ウラジミール、シンゾウとファーストネームで呼び合う仲」とか「歴代首相の誰よりも多くロシアのトップに会った」とやたら会談回数を自慢していた。そんなに親しいなら、カーター米大統領が引退後にも前大統領として北朝鮮外交を展開したように、ロシアと「院政外交」でも展開して返還させてほしい。

風化する領土問題

 1992年から行われてきた4島との北方四島交流事業(ビザなし交流)も新型コロナの影響で昨年は中止だった。船内での密集や参加者に高齢者が多いことなど、条件は非常に悪い。歯舞群島の多楽島出身で千島歯舞居住者連盟の河田弘登志副理事長(86)はいう。

「エトピリカ号(4島交流事業や墓参に使われている約1100トンの船舶)は今、改修工事をしています。5月からは無理としても、夏の交流参加者の募集ができるのかどうか。(首相の)菅さんはコロナで余裕もないのか、領土問題には無関心のようにも見える。墓参や交流事業がなくなれば必然、北方領土のことがニュースになることも少なくなる。今でもものすごく減っている。このまま領土問題が風化してしまいかねない」

 2月7日、「北方領土の日」に東京で行われる恒例の「返還要求全国大会」も無観客。例年、首相が参加するが、菅首相は「着実に進めたい」とのビデオメッセージを寄せただけだ。北方領土問題は国会議員の票につながらない。熱心なのは鈴木宗男氏や娘の鈴木貴子衆院議員くらいだ。今後、何を「着実に進める」のか不明だが、菅首相には安倍氏のようなパフォーマンスだけの「はったり外交」をやる力すらなさそう。旧島民の一世や二世が高齢化しているなか、北方領土問題に国民が関心を持たなくなる日を待っているようにしかみえない。

(写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト)

雇用保険から排除される非正規労働者…失業保険を少しでも多く受け取る裏ワザ

「ようやく解除か」と安堵する一方、日を追うごとに深刻になりつつある雇用への影響の大きさに気づく人も多いだろう。新型コロナウイルス感染者数の急増によって、1月7日に出された国内二度目の緊急事態宣言のことである。

 厚生労働省によれば、新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人は、見込みも含めて8万8000人とされるが、野村総合研究所は、働く女性1163万人のうち少なくとも7.7%にあたる90万人が”実質的な失業状態”にあるとの推計結果を先頃発表した(『コロナ禍で急増する女性の「実質的休業」と「支援からの孤立」』2021年1月19日)。

 この分を考慮した実質的な失業率は、すでにリーマンショック並みの5%を超えているのではとの見方もある。同調査によれば、6割の女性が休業手当や各種支援金を自分が受け取れることを知らなかったとされている。

 女性が比較的多く就業する飲食・サービス業への影響は甚大で、時短営業や休業を余儀なくされた店舗で働いている非正規労働者にとっては、収入激減で死活問題だ。

 そんなときこそ役に立つのがセーフティーネットとしての雇用保険だが、困ったことにコロナ禍は、雇用保険制度そのものに大きな欠陥があることを浮き彫りにした。

 雇用保険に何年間加入していても、非正規労働者は一定の勤務日数がなければ、退職後に失業手当の受給資格が得られないという理不尽な事態が起きている。いくら本人が働きたくても、店舗が時短営業や臨時休業しているところでは、通常営業通りにシフトに入れないからだ。

 11日以上(もしくは80時間以上勤務)働いた月が、原則として過去2年間に12カ月以上ないと雇用保険の受給資格を得らない。それをクリアできない人が激増している。これは制度上の大きな欠陥だ。

 雇用調整助成金や休業手当については、メディアでも広く報道されて国会等で議論されているが、雇用保険制度のこの欠陥については、まだほとんど認識すらされていない。

 そこで今回は、その仕組みと対処法を紹介したい。

 まずは、昨年12月22日付当サイト記事『コロナ禍の基礎知識!失業給付金を有利にもらうコツ…給付要件緩和&給付額増加の可能性も』でも取り上げた、雇用保険制度の問題点とその仕組みを、あらためて詳しくみておこう。

・非正規労働者の場合、会社都合で解雇される前に、単にシフトに入れる勤務日が激減する。「これでは生活できない」として退職すると、「自己都合」と判定されて退職前2年間に12カ月以上勤務していなければ失業手当を受給できない。

・受給資格を得るための加入期間に換算できるのは、11日以上もしくは80時間以上勤務した月のみ。飲食店などサービス業でシフト勤務の人は、10日(もしくは80時間未満)しか働いていない月は、雇用保険の受給資格上は「勤務していない月」とみなされる

・その結果、何年もフルタイムで働いてきたのに、コロナ禍で勤務先が休業を余儀なくされたケースでは、退職後に失業手当を1円ももらえない理不尽な事態が多発している

 では、どうしたらよいのか。前回記事では「在職中は、できる限り月11日(80時間)以上シフトに入る」「ハローワーク(ハロワ)で会社都合と認めてもらう要件に該当する証拠をもっていく」などを紹介した。

 今回は、もうひとつ重要なこととして「勤務先から休業手当をもらう」ことを挙げたい。

 休業手当をもらっていれば、その期間も被保険者期間として算入されることになり、これも含めた日数がトータルで月11日以上(または80時間以上)ある月は、雇用保険に加入していた月に換算できるからだ。

 月10日以下の勤務が続くと、それらはすべて「カラ期間」扱いだが、休業手当をもらっていた期間は普通に働いていた期間と同じ扱いになるため、受給資格のハードルが少し低くなるのだ。

 たとえば、昨年3月に入社して今年2月末で退職する人が、他の月は20日以上働いていたのに2月は10日間(80時間未満)しか働けなかったとしたら、退職前2年間に11カ月しか勤務してない(失業手当受給には12カ月必要)として、退職後は失業手当を受給できない。しかし、もし2月に1日でも休業手当をもらっていれば賃金支払基礎日数は11日となり、退職前2年間に12カ月加入していたとして、退職後は失業手当を受給できるようになる。

休業手当をもらったときの失業手当は?

 そこで気になるのが、休業手当を受け取った場合の失業手当の計算方法だろう。休業手当は原則休業前の平均賃金【※1】の6割以上。ただでさえ安い給与なのに、さらにその6割を基に失業手当(原則として退職前半年間にもらっていた給与の5~8割)を計算されると、極端に安くなってしまうのではないのかと心配される方も多いだろう。

 だが、その点は安心してほしい。雇用保険制度では、受給資格の決定には休業手当支給期間も含むが、失業手当の額を計算する際には、原則として休業していた期間は除くことになっている。

 たとえば、1カ月の給与を20万円、休業手当(1カ月当たり10万円)を3カ月にわたってもらっていた場合、賃金日額(過去半年の平均賃金)は、以下のような計算式になる。

    (半年間にもらった給与総額90万円)-(1カ月10万円×3カ月)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
   180(1カ月30日換算×6カ月)-90(休業手当支給30日×3カ月)

※1 時給・日給者は、休業日以前3カ月間の賃金総額 ÷ 3カ月間の労働日数 × 60%として計算

 要するに、過去半年の平均賃金を求めるときには、休業手当をもらっていた期間も含めて計算すると、その間の安い賃金が失業手当に反映されるため不利。そこで、休業手当をもらっていた期間は除外して、ちゃんと稼げていた期間の平均賃金を基に計算するという主旨である。

 そして、この平均賃金の5~8割(低い人ほど8割に近く、高い人ほど5割に近い額)が、実際の失業手当となるわけだ。

 ただし、ひとつ例外がある。失業手当を換算するときの対象になる「過去半年間」にわたって、まるまる休業手当をもらっていたケースに限っては、その半年間の休業手当の金額がそのまま失業手当を計算するときに使われるので注意したい。

休業手当が出なければ「会社都合」を主張すべし

 さて、ここで、メディアでさかんに取り上げられている”休業手当の問題点”が浮かび上がってくる。

 労働基準法では、会社が自らの都合で従業員を休ませる場合、平均賃金の60%以上を休業手当として払うことを義務づけている(その費用負担のために、解雇を回避した会社には雇用調整助成金が出る)。これは長期間の休業はもちろん、1日単位でも払う必要があり、違反すれば罰則もある。

 ところが、大企業でも、非正規のシフト労働者に対して休業手当を支給しないケースが多いことが判明し、いま大きな社会問題になっている。

 シフトが確定した後に一方的にキャンセルされたら「休業」に当たるが、シフトが決まる前の場合には、企業側が労働者に「休業」を命じていないので、休業手当を払う義務はない――と主張しているからだ。

 そこで知っておきたいのが、もし休業手当が一切出なかったら、退職後にハローワークで雇用保険の手続きをする際に、こう主張することだ。

「休業手当が支給されなかったので、やむなく退職した」

 考えてみてほしい。月何日勤務するとか、週何時間勤務するとは契約書には書かれていなくても、雇用保険の加入手続きをしているということは、実態として少なくとも週20時間以上勤務することが前提になっており、前月までのシフト表をみれば、休業入るまでの通常営業での平均的な勤務実績というのは、ある程度把握できるはずだ。

 それを基に休業手当が支払われるべきと考えるのが妥当で、それを拒否されているということは、生活維持が困難で、それに耐えきれずに退職したということになり、当然それは「会社都合」であるといえる。

 また、正社員には休業手当を払っているのに、非正規労働者にはそれを払っていないとしたら、明確に違法と認定される可能性は高くなるだろう。休業手当不支給の場合について、ハロワの現場には、まだ統一的な取り扱いを指示する通達が出ていないという。「現場で状況に応じて判断」ということになっているそうだが、こういう申立が激増すれば、安定所長も一律で判断せざるを得なくなるだろう。

 もし休業手当が出ないまま退職することになったら、上のような論理で、ハローワークで「会社都合退職」にあたると異議申立をすべきである。

 雇用している会社側に明らかに責任があると認められれば、会社都合と判定される可能性は大いに高まる。そして会社都合と認められた場合、11日または80時間以上勤務した月が6カ月以上あれば退職後に失業手当をもらえる。自己都合と比べたら、半分の加入期間で受給可能になるのだから、黙っていては大損である。

 さらに、雇用保険の受給資格さえ確保できれば、コロナ禍の臨時特例で実施されている延長給付の特典(60日)を受けられたり、職業訓練を受講することも可能になる。その結果、90日しか手当をもらえない人でも、なんとか半年くらいは食いつなぐことができるはずだ。だからこそ、何がなんでも会社都合で退職することにこだわるべきなのである。

 なお、新型コロナの影響で休業したのに、勤務先から休業手当を支給されない場合に、労働者本人の申請によって国から支給される「新型コロナ感染症対応休業支援金・給付金」(休業前の平均賃金の60~80%を支給)という制度も用意されているので、そちらもできる限り活用したい。

“コロナショック”を起こさないためには

 2008年のリーマンショックのとき、失業手当をもらえない大量の非正規労働者が出て、雇用保険制度に大きな穴があいていることがクローズアップされた。

 当時、雇用保険の加入要件に「1年以上雇用見込み」という抜け道があったため、「短期契約にすれば加入しなくてもよい」と解釈されていたからだった。そのため大手企業やその系列でもアルバイトや契約社員など非正規労働者に対しては、この抜け道を利用した「雇用保険未加入」という脱法行為が平然と行われていた。

労働政策にかかわる研究者たちからも長年、その弊害は指摘され続けてきたが、なぜか一向に改善されなかった。これがリーマンショックで大惨事を生んだひとつの大きな要因でもあった。

 その反省のもとに、「1年以上雇用見込み」という要件は、09~10年にかけて行われた二度の法改正を経て改善。現在は「31日以上雇用見込み」があり「週20時間以上」働いてさえいれば加入義務が発生するようになり、加入に関してはほぼ抜け道はなくなった。とりあえず、雇用保険制度からこぼれる労働者は、リーマンショックのときから比べると激減したとみられる。

 ところが、今回のコロナ禍は「シフト勤務労働者は、長く働いても退職後に雇用保険をもらえない」という新たな制度の欠陥があることが浮き彫りにされたのだった。

 この欠陥を修正するために、法改正は必要ない。安定所の現場で「休業手当不支給による生活維持困難者は会社都合退職」と判定するだけで解決するはずだ。ぜひ、そのような対応をお願いしたい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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hina39@gmail.com 日向咲嗣宛て

数十年後、欧州の平均気温4度低下の可能性…異常気象多発と大西洋南北熱塩循環の変化

 今年の冬の北半球では、例年以上に寒波が襲来した。年明けの日本では北海道や本州の日本海側が猛吹雪となったが、世界の注目を集めたのは2月中旬に米国テキサス州を襲った大寒波である。記録的な寒波に電力供給が間に合わず、テキサス州では400万世帯以上が停電となった。

 世界気象機関が今年1月、「2020年の世界の平均気温は16年と並び観測史上最高となった」ことを明らかにしたように、21世紀に入り、地球温暖化の勢いが加速しているといわれている。

 今年の冬の大寒波の襲来だけを根拠にして「地球温暖化は嘘だ」と主張するつもりはないが、なぜ近年異常気象が多発しているのだろうか。

 2月下旬に気になる研究結果が明らかになった。ドイツ・ポツダム気候影響研究所のチームが2月25日、「大西洋南北熱塩循環がここ数十年で最も弱い状態になっている」とする内容の論文を公表した。研究チームが注目している「大西洋南北熱塩循環」とは、赤道から北極に向かうにつれて冷却され、高緯度のグリーンランド海などで沈み込んで、その後、深海底をゆっくり南へと逆戻りする大規模な海流システムのことである。循環のサイクルは約1000年、大西洋南北熱塩循環が運ぶ流量はアマゾン川100本分に匹敵するといわれている。大西洋南北熱塩循環により大量の熱が運ばれていることから、緯度が高いのにもかかわらず、欧州地域の気候は暖かいのである。

 しかし、大西洋南北熱塩循環が、小氷期が終わった1850年以降、150年間にわたり徐々に弱まっており、近年そのスピードが増している。2018年に発表された研究によれば、現在の大西洋南北熱塩循環の動きは少なくとも過去1600年間で最も弱まっているという。デンマーク・コペンハーゲン大学のチームは3月2日「大西洋南北熱塩循環が、近年加速化している融氷現象のせいで崩壊する恐れがある」と警告を発した。

 大西洋南北熱塩循環の勢いは海水の塩分濃度に影響を受ける。塩分濃度が高いと海水は容易に沈み込むが、塩分濃度が低下すると沈み込みの力が弱くなるからである。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2019年4月、「現在のグリーンランドの氷床は40年前の6倍の速さで溶けている」と推定結果を発表しているが、氷河が溶けることによりもたらされる大量の真水が、グリーンランド周辺の海水の塩分濃度を下げている。

大西洋南北熱塩循環の中断

 大西洋南北熱塩循環の動きが弱まり続けると世界の気候はどうなってしまうのだろうか。コペンハーゲン大学の研究チームは「これがもし事実だとすれば、人類が安全に活動できる地域が減少してしまう」と警鐘を鳴らしている。地域別に見てみると、欧州や北米地域は、冬はより厳しくなるが、その反対に夏の数カ月間は異常に暑くなる。赤道周辺ではより強力な台風やハリケーンなどが発生し、南アジアやアフリカ地域では夏の降水量の著しい減少が起きるという。

 大西洋南北熱塩循環の動きを解明した米国の海洋科学者であるブロッカー氏は、次のように分析している。

「約2万年前まで続いた最後の氷河期の時代には、海水の塩分が薄くなったために大西洋南北熱塩循環がしばしば停止し、欧州地域が寒冷化したことが当時の氷の記録などからわかっている。塩分を薄めた犯人は陸地から流入した大量の真水だった。真水はカナダにあった膨大な氷河が溶けてできたものであることが突き止められた。大西洋南北熱塩循環の中断はわずか10年程度の出来事だったらしいが、気候変動はカナダ周辺にとどまらず、地球の至る所で同時に進行していた」

 04年に米国で製作された映画『デイ・アフター・トゥモロー』に描かれた世界が現実のものになってしまうのだろうか。この映画は地球温暖化によって突然訪れた氷河期に混乱するというストーリーだが、ベースには大西洋南北熱塩循環という科学的事実を据えている。

「海洋観測の結果から北大西洋の水温や塩分が低下した」という現象を見つけた主人公の気候学者が、過去の記録に基づいて「こういう現象が起こり始めると大規模な気候変動が起きる」と警告を発するが、周囲は彼のことを相手にしないというイントロから始まっている。ネタを10倍、いや、100倍に誇張しないと映画にならないからだろうか、映画では大規模な気候変動が6~8週間のスパンで生じ、大きな竜巻や高波が起きるなど大規模な気象災害がたて続けに起こり、嵐が過ぎ去ったあとの地球は氷河期になってしまうという極端な展開となっている。

 寒冷化による竜巻や高波の発生は論外だとしても、大規模な気候変動は最短で3年のスパンで起きる可能性は排除できない。05年11月30日付AFPは「映画ほどの急激さはないものの、映画と同じ理論に基づいて数十年後に欧州地域の平均気温が4度低下する恐れがある」と主張する科学者の見解を伝えている。

 気になるのは、ここ数年の間に「大西洋南北熱塩循環の中断」に関する科学者の危機意識が急速に高まっていることである。

 19年時点のIPCCは「大西洋南北熱塩循環の中断はほぼあり得ない」と結論づけていたが、前述したように欧州の研究チームの見解は「大いにありうる」である。何より心配なのは、温室効果ガスの排出量を著しく制限したとしても、北大西洋には大きな変化が訪れる可能性が高いということである。

 温室効果ガスの排出量削減のさらなる努力は不可欠であるが、これだけでは食い止められない気候変動に備えて抜本的な対策を講じることが、日本を始め世界にとって喫緊の課題になってきているのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

(参考文献)

『気候変動はなぜ起こるのか グレート・オーシャン・コンベヤーの発見』ウオ-レス・ブロッカー著

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職

メンタル不調を招きやすい組織、人とは?

 急激な社会の変化や過重労働、人間関係など、さまざまな理由からメンタルを病んでしまう人が増え続けている。その中でも、IT技術者は比較的「病みやすい」環境に身を置いているため、メンタルのケアをしっかり行わなければいけない。

 この連載では、カウンセラーでありベリテワークス株式会社代表の浅賀桃子氏が執筆した著書『IT技術者が病まない会社をつくる』(言視舎刊)を通して、IT企業におけるメンタルヘルスマネジメントを紐解いていく。そして、IT業界特有の病んでしまう環境、メンタル不調者が出づらい組織の特徴、どんな組織をつくっていけばいいのか、事例を交えながら「病まない会社」づくりをサポートしていく。

メンタルの不調を招く労働時間超過と「ジタハラ」

 今回のテーマは「メンタル不調を招きやすい組織と人」だ。

 前回記事でも説明したが、メンタル不調を招く要因として特に挙げられるのが「極度の長時間労働」「恒常的な長時間労働」である。労災認定の目安となる「極度の長時間労働」は直前1カ月間の時間外労働がおおむね160時間超となる。また、「恒常的」と認められる期間はおおむね6カ月とされている。

「労働時間が長すぎてつらい」と周囲に助けを求められる人だけではない。問題なのは、自分の不調を周囲に伝えることができない状況に追い込まれている人がいることだ。それがリモートワークの推奨によって拍車がかかっているようにも感じる、と浅賀氏は述べる。

 こうした背景を受けて、組織は「時短」に傾くわけだが、時短を推奨することが、かえって労働者の負担になってしまうこともある。

 10人程度の部署で働く20代後半のAさんは、最近、課長のCさんから「早く帰れ」「残業は月●時間以内に収めること」「成果は今までと同様に出せ」と強要されるようになった。仕事量は変わらないのに残業代がもらえなくなったことから、Aさんのモチベーションは低下。まさに「ジタハラ(時短ハラスメント)」の状況である。

 この背後にあるのは、「働き方改革=時短推奨」という表面的な対策になってしまっている会社の意思決定プロセスだ。課長のCさんは、経営層の意向を受けた部長のBさんからの指示を受けて、時短を強要していた。持ち帰り残業の実態や慢性的な人手不足も把握している中での「やむを得ない」言葉だったのである。

 Aさんからの相談を受けた浅賀氏は、持ち帰り残業の時間と業務内容の洗い出しをするようにアドバイス。B部長もC課長も、Aさんが抱えている仕事量やかかっている時間について正しく把握できていなかった。

 こうしたジタハラ対策には仕事量の見直しが欠かせない、と浅賀氏。もし上司に相談するときは、1日にどれだけの仕事をこなしているのか、勤務実態の記録をまとめておくことを勧めている。

自分の将来が見えないという不安を掻き立てる組織

 その他の「不調を招きやすい組織」の特徴も挙げていこう。

 たとえば成果主義の導入。IT業界でもエンジニアの評価方法として成果主義を取り入れる企業が増えているというが、逆にこれが不調をもたらすケースも少なくないという。

 成果主義の導入は従業員のキャリアプランにも大きな影響を及ぼしているといい、会社の中である程度のキャリアを積んできた人たちに、今後のキャリアプランを具体的に考えて書いてもらうワークを実施しても「全然浮かんでこない」という声が増えているという。

 年功序列ならば、何歳くらいにこれくらいのポジションで、というようなイメージができたものの、成果主義では何をもって評価されるのかもピンと来ず、10年後と言われても自分の先輩や上司と同じようになっているイメージがわかなくなっているのだ。これが将来への不安を呼び起こし、不調を招く要因の一つとなっている。

 また、職場の人間関係も欠かせない要因の一つだ。特に理不尽な上司にあたってしまうと、メンタルはどんどん削がれていく。組織であれば、異動にならない限りは嫌な人間関係が続くことになるが、もしそれが難しい場合は、いかに理不尽上司からの被害を最小限にとどめられるかが、メンタル不調を防ぐポイントになる。

 そんなときに浅賀氏がおすすめしている対処法が「逃げる」というもの。この「逃げる」とは、上司を理解しようとすることから「逃げる」という意味だ。私たちは相手への期待に対して、その意に沿わないことが起こるとネガティブな感情を抱く。上司に対する「上司は○○であるべき」という価値観が、ネガティブの感情を呼び起こすのだ。

 そこで「相手を理解できるとも、相手に理解してもらえるとも思わないこと」で、上司の振る舞いや言葉の捉え方を変えるのだ。理解できないものはできないとすれば、幾分かネガティブな感情を流すことができるだろう。

 もちろん、その場がどうしても耐えられない場合は、職場から「逃げる」ということも選択肢に入れるべきだ。

病みやすい人を取り巻く環境

 最後に「病みやすい人」のタイプについて説明をする。

 IT技術者によくみられるストレス要因には以下のものが挙げられる。

・人手不足
・長時間労働(休めない)
・ドッグイヤー(情報産業における技術革新など変化のスピードが速いこと)
・下請け構造
・厳しい納期、顧客の無理な要求
・顧客からの強いプレッシャー
・円滑でないコミュニケーションや人間関係

 この状況に当てはまっている人や組織は要注意だろう。

 また、浅賀氏は「自分自身が不調になったことを認めようとしない」心理を持っている人も、とりわけ30代くらいの男性に多いように感じると述べる。自分のストレス症状をいち早く把握できるのは自分しかいない。そこに気付き、いかに早期対処していくか。これが必要となる。

(文=編集部)

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ビジネスや投資の成功者が重視する「見」「待つ」の重要性…“場と運気”を全力でうかがう

 私が子供の頃「人生ゲーム」なる双六が流行った時がありました。人生ゲームとは言いながらも、しょせん双六ですので、サイコロを振り、出た目だけ紙製のボード上で自分の駒を進めるというものです。そして、早く「ゴール」に到着した者が勝ちとなる単純なものでした。

 サイコロの出た目の数通り進むと、そこには「交通事故にあい、2コマ下がる」とか「●●で3コマ進む」と記載があり、単純なゲームではありましたが、なかなか簡単にはゴールできないようにできていました。子供にとって雨の日の暇つぶしにはもってこいの遊びでした。

 こういった双六ゲームでよくあるのが「一回休み」というものです。つまりサイコロを振る順番が一度スルーされるというものです。その分だけ先へ進むのが遅れるわけです。さて、今回の新型コロナウイルス感染拡大によるさまざまな不自由は、早1年を経過しようとしています。経済的な面においては飲食店や宿泊・観光業で働く方々ばかりでなく、多くの業種において甚大な被害が続いています。結果、世界中で新型コロナという感染症によって、長期の「一回休み」を取らざるを得なくなりました。

 我々は、特にビジネスにおいて「休む」などということは元来想定しておらず、そもそも「休む」などということは怠惰なことか罪悪であるように教育を受けてきました。ただ、今やこのような状況になってみると、「休む」こと自体を学ぶことが必要だと感じます。「いかに休むか」をです。そんなことを申しますと「休んでいる余裕などない!」といったお怒りの声が聞こえてきそうですが。お許しください。

 しかし、この数十年を振り返っただけでも、阪神淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災、そして今回の新型コロナと、人間にはどうにもならない事態が次から次へと起こってきました。さらには現在、地球温暖化による異常気象の慢性化が世界各地にさまざまな天災を引き起こしています。

 人生ゲームは子供向けの双六ですが、思えばよくできたゲームだったと思います。リアルな人生においても、他者より数歩先に進むこともありますが、逆に3歩も6歩も遅れることが起こり得ます。まさにあのゲームと同じです。また、人生ゲームでは「降り出し(スタート地点)に戻る」などという目が出る時があります。しかし、このゲームが面白かったのは、一度降り出しに戻った者がその後、運に恵まれ最終的には勝ってしまうなんてことが起こったことです。この点は、リアルな人生においても同じなのではないでしょうか?

「休み」にも「術」が必要

 さて、今回は世界中の人々にとって「一回休み」という「目」が出ました。それも長期の「一回休み」となりました。そこで、前述のとおり、この「休み」を「いかに休むか」なのです。堂々と休む、虎視眈々と休む、捲土重来を期しながら休む――。一つ言えることは、「休み」にも「術」が必要だということです。

 ギャンブル用語で「見(けん)」というものがあります。賭場やカジノに入っていって、いきなり大金を掛けるのではなく、「場」と自分の「運気」の様子をうかがうのです。つまり少額のチップを掛けて、その様子を見るのです。自分に運気が向いていないと思えば、その日は賭けを見合わすのです。また当日の夜半か翌日に自分の運気が上昇してきたと感じたら勝負を始める。

 しかし、この「見る」というのもただ漫然と様子をうかがうということではありません。全神経を集中し、全身全霊をもってその場と自分の運気をうかがうのです。

 これは昔からギャンブルの世界でのプロにとっては、古典的ではありますが、唯一無二の戦略のようです。

 投資の世界でも、神様と言われるウォーレン・バフェットは、投資の必勝法(というよりは負けない方法)として、それを野球にたとえ「自分にとっての絶好球が来るまでバットを振らないことだ」と言っています。しかし、多くの投資家はこれが待てない、つまり自分にとっての絶好球が来るまでに、待てずに悪球に手を出しバットを振ってしまいます。自分にとって勝てるチャンスが来るまでバッターボックスに立ち続けるのは、やはり難しいことなのです。

ビットコインが大暴騰した」「日経平均が3万円を30年ぶりに超えた」といったニュースを聞いて、すぐに飛びつくのではダメなのです。つまり、まずは「見」の構えでいくのです。

 しかし、これがビジネスの場合は、こう単純にはいかないのも事実です。投資や博打はステークホルダーが自分だけですから「見」も自由勝手に行えますが、ビジネスにおいてはステークホルダーが多岐にわたります。今回のような状況になった時に「見」に徹すると言っても、とにもかくにも日々の糧を稼がなくてはいけません。特に経営者は毎月の賃料や従業員の給料を払い続けなければなりません。何カ月も「見」に徹するのは非現実的だと言われるのももっともです。言うはやすく行うはかたしです。

「商売は扇子のごとく」

 ところで、大阪船場商人の家訓には「商売は扇子のごとく」というものがあります。商売は扇子のように、何か危機が起こった時には、扇子をスパッと閉じるがごとく縮小できるようにしておかないといけない。現実的にこの四半世紀を振り返っただけでも、いくつも震災や経済危機が起こっています。このような時に、まさに扇子を閉じるがごとく事業を縮小するということなのでしょう。

 しかし、これはご存知の通り実践するとなると難しいわけですから、これが不可能であるのならば、ブラックスワン的な危機に対応できるだけの利益剰余金(個人であれば預貯金)を確保しておくか、事業にポートフォリオ(個人であれば副業?)を組んでおくことが重要なのでしょう。

 これまでも、一部の野党が、企業のもつ利益剰余金に対して課税すべきと主張してきました。これにより、彼らは一度も商売などしたことがないビジネスど素人だったことを証明したわけです。

 ところで、前述の人生ゲームの「ゴール」には、ほかに何と書いてあったのでしょうか?まさか「定年」とか「リタイア」などと書いてあったとも思えません。ただ「ゴール」と書いてあっただけでしょうか? そこが気になるのですが、どうしても思い出せません。

 そもそもリアルな人生における「ゴール」とはなんなのか? それを考えれば、今回、一回休むことを恐れる必要などないのかもしれません。確かなことは、リアルな世界での勝ち負けは「到着の順位」ではないのですし。

 東京でもやっと梅が満開です。今年も確実に春がやって来ようとしています。

(文=長谷川高/長谷川不動産経済社代表)

●長谷川高

長谷川不動産経済社代表。

東京生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。

大手デベロッパーにて、ビル・マンション企画開発事業、都市開発事業に携わり、バブルの絶頂期からその崩壊と処理までを現場の第一線で体験。 1996年に独立。

以来、創業から一貫して顧客(法人・個人)の立場で不動産と不動産投資に関するコンサルティング、投資顧問業務を行う。また、取引先企業と連携して大型の共同プロジェクトを数多く手掛ける。

自身も現役の不動産プレイヤーかつ投資家として、評論家ではなく現場と実践にこだわり続ける一方で、メディアへの出演や執筆、講演活動を通じて、難解な不動産の市況や不動産の購入・投資術をわかりやすく解説している。