牛角、“炎上”のリスク承知でサブスク導入か…焼肉ライクの急成長で存在感低下の危機

 最近、焼き肉チェーンに対する関心が高まっている。新興勢力の1人焼き肉店「焼肉ライク」の出店拡大によって、業界がにわかに活気づいたためだ。同じく新興勢力の「焼肉きんぐ」も出店攻勢を仕掛け、存在感を高めている。一方、古くからある焼き肉チェーンも黙ってない。「牛角」は月額定額制の食べ放題・飲み放題のサブスクリプション(定額課金)サービスの導入を試みて存在感を示している。他方、「安楽亭」は運営会社が業績不振で苦しんでいる。新旧入り乱れ、業界は混沌としている。

 焼肉ライクは急成長を遂げている。運営会社はダイニングイノベーションで、2018年8月に1号店を開いた。同社は牛角創業者の西山知義氏が13年に設立した。焼肉ライクは業界に革命を起こした。焼肉店は1人では行きづらいイメージが強かったが、1人台の無煙ロースターを備えて1人でも気軽に食べられるようにしたことが功を奏し、人気を博すようになった。

 現在、国内では関東を中心に約30店を展開している。この3月は怒涛の開店ラッシュで、ホームページでは6店舗のオープンが確認できる。焼肉ライクは当初、東京の繁華街を中心に出店を重ねてきたが、徐々に出店地域を拡大させ、東京以外や郊外ロードサイドにも触手を伸ばしている。

 フランチャイズ展開にも力を入れている。ラーメンチェーン「幸楽苑」を展開する幸楽苑ホールディングス(HD)と18年12月にフランチャイズ(FC)契約を締結。幸楽苑HDは郊外ロードサイドで焼肉ライクのFC展開を進めている。

 ダイニングイノベーションは23年までに焼肉ライクを直営とFC合わせて300店にする方針を掲げている。年70店程度を出店する計算になり野心的な数値だが、今の勢いを考えると達成できないこともないだろう。いずれにせよ、出店攻勢を仕掛けていく考えだ。

 焼肉きんぐも店舗数が伸びている。運営会社は物語コーポレーションで、07年に焼肉きんぐの1 号店を開いた。現在は約220店を展開している。郊外ロードサイドを主戦場とし、家族連れで楽しめるバイキング形式の焼肉チェーンとして人気を博している。店舗数は安楽亭を抜いて牛角に次ぐ業界2位だ。

 焼肉きんぐは食べ放題メニューが売りだ。2680円(税別)で「カルビ」や「ハラミ」など58品目から選べる「58品コース」、2980円(同)で「ドラゴンハラミ一本焼」など特別メニューも楽しめる「きんぐコース」、3980円(同)で「特選カルビ」など高級メニューも食べられる「プレミアムコース」の3種類がある。これら食べ放題は食べ応え十分で、たくさん食べたいというニーズに対応できている。

 焼肉きんぐを主体とした焼き肉部門の既存店売上高は絶好調だ。19年7月~20年2月は前年同期比7.0%増と大きく伸びた。19年6月期は前期比2.2%増で、2年連続のプラスとなっている。好調な焼肉きんぐが牽引し、物語コーポレーションの足元の業績は好調で、19年7~12月期連結売上高は前年同期比10.3%増の315億円と大幅増収を達成した。

 このように焼肉きんぐの業績は好調だ。ただ、今後は予断を許さない。焼肉ライクが郊外ロードサイドでの出店を強化し始めたためだ。安穏とはしていられないだろう。

サブスクで話題を呼んだ牛角

 牛角も焼肉ライクの台頭に脅威を覚えている焼き肉チェーンのひとつだろう。運営会社はレインズインターナショナルで、前出の西山氏が1996年に牛角の前身となる焼肉店を開業したのが始まりだ。現在は全国に600店超を展開する。店舗数は他の追随を許さない、堂々の業界ナンバーワンだ。

 最近の牛角は、焼き肉の食べ放題のサブスクで存在感を示している。昨年11月29日に月額1万1000円で通常3480円(税別)の「牛角コース」(90分食べ放題)が食べ放題になる「焼肉食べ放題PASS」のサブスクを始めたことが話題になった。同サービスは3回の利用で元が取れるというコストパフォーマンスの良さから人気に火がついた。だが、利用できる店舗が当初3店舗しかなかったこともあり、利用できる店舗にパスを持った客が殺到してしまった。それにより一般の客が利用できない状況になり、1月7日に販売中止に追い込まれた。

 わずか3回の利用で元が取れ、しかも利用できる店舗が当初は3店舗しかなかったという無理がある設定だったことから、わざと利用客が殺到するような設定にして関心を集める「炎上商法」との批判も上がった。炎上商法を狙ったのかそうでないのか真相はわからないが、話題を集めることに成功したことは間違いない。

 さらに牛角はこれに懲りずに、3月2日から31日まで一部店舗で1カ月間使用できるサブスクを新たに数量限定で販売している。7種類のコースを用意し、1番高いものが1万8700円の「500g焼肉定食」で、1番安いものが5500円の「生ビール付き50種類以上飲み放題」となっている。ラインアップは豊富だが、どれもコスパが良いわけではなく、利用できる店舗の数が少なかったり販売数が少なかったりで、「明らかな劣化版でガッカリ」といった失望の声が多数上がった。

 このように牛角のサブスクは運用がうまくいっているとはいえない。それでもサブスクに挑むのは、話題のサブスクを実施することで、成否にかかわらず牛角自体を大きく宣伝できるためだろう。炎上するなどリスクもあるが、焼肉ライクなどの台頭でそこまでしなければ競争に勝つことができない状況になっているともいえる。牛角は国内では飽和に達しており、何もしなければ埋没していくだけだ。多少のリスクを負ってでも存在感を示す必要があるといえる。

存在感が低下する安楽亭

 このように牛角、焼肉きんぐ、焼肉ライクが存在感を示しているが、一方で存在感が低下している焼肉チェーンがある。安楽亭だ。

 安楽亭は1963年に創業。78年に法人の安楽亭を設立している。郊外ロードサイドを中心に出店を重ね、現在は全国に約180店を展開する。

 安楽亭は90年代に存在感を示し業績は好調だった。しかし、00年代から競争激化などで低迷するようになる。連結売上高は01年3月期には360億円あったが、直近本決算の19年3月期は163億円と半分以下に減っている。同期の最終損益は1億300万円の赤字(前の期は1億4900万円の黒字)だった。

 焼肉業界は焼肉きんぐや焼肉ライクといった新興勢力が台頭し、混沌としている。創業が古い安楽亭や牛角は、うかうかしていられない。いずれにせよ厳しい戦いが当面続きそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

牛角、“炎上”のリスク承知でサブスク導入か…焼肉ライクの急成長で存在感低下の危機

 最近、焼き肉チェーンに対する関心が高まっている。新興勢力の1人焼き肉店「焼肉ライク」の出店拡大によって、業界がにわかに活気づいたためだ。同じく新興勢力の「焼肉きんぐ」も出店攻勢を仕掛け、存在感を高めている。一方、古くからある焼き肉チェーンも黙ってない。「牛角」は月額定額制の食べ放題・飲み放題のサブスクリプション(定額課金)サービスの導入を試みて存在感を示している。他方、「安楽亭」は運営会社が業績不振で苦しんでいる。新旧入り乱れ、業界は混沌としている。

 焼肉ライクは急成長を遂げている。運営会社はダイニングイノベーションで、2018年8月に1号店を開いた。同社は牛角創業者の西山知義氏が13年に設立した。焼肉ライクは業界に革命を起こした。焼肉店は1人では行きづらいイメージが強かったが、1人台の無煙ロースターを備えて1人でも気軽に食べられるようにしたことが功を奏し、人気を博すようになった。

 現在、国内では関東を中心に約30店を展開している。この3月は怒涛の開店ラッシュで、ホームページでは6店舗のオープンが確認できる。焼肉ライクは当初、東京の繁華街を中心に出店を重ねてきたが、徐々に出店地域を拡大させ、東京以外や郊外ロードサイドにも触手を伸ばしている。

 フランチャイズ展開にも力を入れている。ラーメンチェーン「幸楽苑」を展開する幸楽苑ホールディングス(HD)と18年12月にフランチャイズ(FC)契約を締結。幸楽苑HDは郊外ロードサイドで焼肉ライクのFC展開を進めている。

 ダイニングイノベーションは23年までに焼肉ライクを直営とFC合わせて300店にする方針を掲げている。年70店程度を出店する計算になり野心的な数値だが、今の勢いを考えると達成できないこともないだろう。いずれにせよ、出店攻勢を仕掛けていく考えだ。

 焼肉きんぐも店舗数が伸びている。運営会社は物語コーポレーションで、07年に焼肉きんぐの1 号店を開いた。現在は約220店を展開している。郊外ロードサイドを主戦場とし、家族連れで楽しめるバイキング形式の焼肉チェーンとして人気を博している。店舗数は安楽亭を抜いて牛角に次ぐ業界2位だ。

 焼肉きんぐは食べ放題メニューが売りだ。2680円(税別)で「カルビ」や「ハラミ」など58品目から選べる「58品コース」、2980円(同)で「ドラゴンハラミ一本焼」など特別メニューも楽しめる「きんぐコース」、3980円(同)で「特選カルビ」など高級メニューも食べられる「プレミアムコース」の3種類がある。これら食べ放題は食べ応え十分で、たくさん食べたいというニーズに対応できている。

 焼肉きんぐを主体とした焼き肉部門の既存店売上高は絶好調だ。19年7月~20年2月は前年同期比7.0%増と大きく伸びた。19年6月期は前期比2.2%増で、2年連続のプラスとなっている。好調な焼肉きんぐが牽引し、物語コーポレーションの足元の業績は好調で、19年7~12月期連結売上高は前年同期比10.3%増の315億円と大幅増収を達成した。

 このように焼肉きんぐの業績は好調だ。ただ、今後は予断を許さない。焼肉ライクが郊外ロードサイドでの出店を強化し始めたためだ。安穏とはしていられないだろう。

サブスクで話題を呼んだ牛角

 牛角も焼肉ライクの台頭に脅威を覚えている焼き肉チェーンのひとつだろう。運営会社はレインズインターナショナルで、前出の西山氏が1996年に牛角の前身となる焼肉店を開業したのが始まりだ。現在は全国に600店超を展開する。店舗数は他の追随を許さない、堂々の業界ナンバーワンだ。

 最近の牛角は、焼き肉の食べ放題のサブスクで存在感を示している。昨年11月29日に月額1万1000円で通常3480円(税別)の「牛角コース」(90分食べ放題)が食べ放題になる「焼肉食べ放題PASS」のサブスクを始めたことが話題になった。同サービスは3回の利用で元が取れるというコストパフォーマンスの良さから人気に火がついた。だが、利用できる店舗が当初3店舗しかなかったこともあり、利用できる店舗にパスを持った客が殺到してしまった。それにより一般の客が利用できない状況になり、1月7日に販売中止に追い込まれた。

 わずか3回の利用で元が取れ、しかも利用できる店舗が当初は3店舗しかなかったという無理がある設定だったことから、わざと利用客が殺到するような設定にして関心を集める「炎上商法」との批判も上がった。炎上商法を狙ったのかそうでないのか真相はわからないが、話題を集めることに成功したことは間違いない。

 さらに牛角はこれに懲りずに、3月2日から31日まで一部店舗で1カ月間使用できるサブスクを新たに数量限定で販売している。7種類のコースを用意し、1番高いものが1万8700円の「500g焼肉定食」で、1番安いものが5500円の「生ビール付き50種類以上飲み放題」となっている。ラインアップは豊富だが、どれもコスパが良いわけではなく、利用できる店舗の数が少なかったり販売数が少なかったりで、「明らかな劣化版でガッカリ」といった失望の声が多数上がった。

 このように牛角のサブスクは運用がうまくいっているとはいえない。それでもサブスクに挑むのは、話題のサブスクを実施することで、成否にかかわらず牛角自体を大きく宣伝できるためだろう。炎上するなどリスクもあるが、焼肉ライクなどの台頭でそこまでしなければ競争に勝つことができない状況になっているともいえる。牛角は国内では飽和に達しており、何もしなければ埋没していくだけだ。多少のリスクを負ってでも存在感を示す必要があるといえる。

存在感が低下する安楽亭

 このように牛角、焼肉きんぐ、焼肉ライクが存在感を示しているが、一方で存在感が低下している焼肉チェーンがある。安楽亭だ。

 安楽亭は1963年に創業。78年に法人の安楽亭を設立している。郊外ロードサイドを中心に出店を重ね、現在は全国に約180店を展開する。

 安楽亭は90年代に存在感を示し業績は好調だった。しかし、00年代から競争激化などで低迷するようになる。連結売上高は01年3月期には360億円あったが、直近本決算の19年3月期は163億円と半分以下に減っている。同期の最終損益は1億300万円の赤字(前の期は1億4900万円の黒字)だった。

 焼肉業界は焼肉きんぐや焼肉ライクといった新興勢力が台頭し、混沌としている。創業が古い安楽亭や牛角は、うかうかしていられない。いずれにせよ厳しい戦いが当面続きそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

JRA「G1・13戦6勝」ルメールの居ぬ間にM.デムーロ!? 大阪杯(G1)ラッキーライラックに勝機あり

 5日(日)、阪神競馬場では大阪杯(G1)が行われる。注目はG1・3勝目を狙うラッキーライラック(牝5歳、栗東・松永幹夫厩舎)だ。

 昨年11月のエリザベス女王杯(G1)で1年8か月ぶりの勝利を飾ったラッキーライラック。その後は香港ヴァーズ(G1)と中山記念(G2)で連続2着と勝ち切れていないが、牡馬相手に力を示している。

 前走の中山記念後も至極順調。25日(水)の1週前追い切りでは栗東CWで追われ、6F79秒9-1F12秒1をマーク。松永調教師は『スポニチ』の取材に「動きはホント良かったですね。前走の前より全然いい。競馬も上手だし舞台も問題ないかな」と自信をのぞかせた。

 今回の舞台設定について、ある記者はこう話す。

「阪神競馬場では阪神JFとチューリップ賞を勝つなど、4戦2勝とまずまず。桜花賞(2着)は相手(アーモンドアイ)が悪かっただけですし、8着に終わった昨年の阪神牝馬Sも勝った馬とは僅か0秒2差。序盤にごちゃつき、直線も前が詰まるチグハグな競馬だったので、度外視していいでしょう。本来は器用な馬ですから、内回りに替わる今回の方がより高いパフォーマンスを発揮できるはずです。

 それよりもオルフェーヴル産駒に乗った時のデムーロは怖いですよ」(競馬記者)

 前走からラッキーライラックの手綱を取るM.デムーロ騎手といえば、昨年春ごろから有力馬への騎乗が減少するなど低迷中。先週に至っては、土日の2日間で騎乗機会はわずか4鞍のみと存在感を示せていない。

 しかし、デムーロ騎手はオルフェーヴル産駒との相性が抜群にいい。通算成績は「10-5-6-15」で、勝率27.8%をマーク。これは、オルフェーヴル産駒に20回以上騎乗した騎手の中では堂々の1位である。

 そして今週はライバルのC.ルメール騎手が不在という点でも期待が高まる。

「ルメール騎手は本来なら有力馬の1頭ダノンキングリーへの騎乗が内定していました。しかし、新型コロナウイルスの影響でドバイ国際競走に参加するためUAE入りしていた同騎手には、帰国後14日間の自宅待機が要請されました。そのため今週末までは騎乗ができない状態です。ルメール不在時のデムーロには注意が必要ですよ」(同)

 2015年以降、ルメール騎手が不在だった平地G1は合計「17レース」を数える。デムーロ騎手はそのうちの13レースに騎乗し、実に6勝を挙げている。まさに「ルメの居ぬ間にデムーロ」というわけだ。

 ルメール騎手不在の先週はモズアスコットで高松宮記念(G1)に臨んだが、13着に惨敗。今週こそ、昨年オークス以来の中央G1制覇はなるだろうか。

JRA「G1・13戦6勝」ルメールの居ぬ間にM.デムーロ!? 大阪杯(G1)ラッキーライラックに勝機あり

 5日(日)、阪神競馬場では大阪杯(G1)が行われる。注目はG1・3勝目を狙うラッキーライラック(牝5歳、栗東・松永幹夫厩舎)だ。

 昨年11月のエリザベス女王杯(G1)で1年8か月ぶりの勝利を飾ったラッキーライラック。その後は香港ヴァーズ(G1)と中山記念(G2)で連続2着と勝ち切れていないが、牡馬相手に力を示している。

 前走の中山記念後も至極順調。25日(水)の1週前追い切りでは栗東CWで追われ、6F79秒9-1F12秒1をマーク。松永調教師は『スポニチ』の取材に「動きはホント良かったですね。前走の前より全然いい。競馬も上手だし舞台も問題ないかな」と自信をのぞかせた。

 今回の舞台設定について、ある記者はこう話す。

「阪神競馬場では阪神JFとチューリップ賞を勝つなど、4戦2勝とまずまず。桜花賞(2着)は相手(アーモンドアイ)が悪かっただけですし、8着に終わった昨年の阪神牝馬Sも勝った馬とは僅か0秒2差。序盤にごちゃつき、直線も前が詰まるチグハグな競馬だったので、度外視していいでしょう。本来は器用な馬ですから、内回りに替わる今回の方がより高いパフォーマンスを発揮できるはずです。

 それよりもオルフェーヴル産駒に乗った時のデムーロは怖いですよ」(競馬記者)

 前走からラッキーライラックの手綱を取るM.デムーロ騎手といえば、昨年春ごろから有力馬への騎乗が減少するなど低迷中。先週に至っては、土日の2日間で騎乗機会はわずか4鞍のみと存在感を示せていない。

 しかし、デムーロ騎手はオルフェーヴル産駒との相性が抜群にいい。通算成績は「10-5-6-15」で、勝率27.8%をマーク。これは、オルフェーヴル産駒に20回以上騎乗した騎手の中では堂々の1位である。

 そして今週はライバルのC.ルメール騎手が不在という点でも期待が高まる。

「ルメール騎手は本来なら有力馬の1頭ダノンキングリーへの騎乗が内定していました。しかし、新型コロナウイルスの影響でドバイ国際競走に参加するためUAE入りしていた同騎手には、帰国後14日間の自宅待機が要請されました。そのため今週末までは騎乗ができない状態です。ルメール不在時のデムーロには注意が必要ですよ」(同)

 2015年以降、ルメール騎手が不在だった平地G1は合計「17レース」を数える。デムーロ騎手はそのうちの13レースに騎乗し、実に6勝を挙げている。まさに「ルメの居ぬ間にデムーロ」というわけだ。

 ルメール騎手不在の先週はモズアスコットで高松宮記念(G1)に臨んだが、13着に惨敗。今週こそ、昨年オークス以来の中央G1制覇はなるだろうか。

年金受給、75歳まで繰り下げで84%増に?70歳まで働く時代の“老後資金リスク”

 60歳で定年、65歳まで継続雇用で働く――そんなイメージをしていた会社員の人生が一変するかもしれない。シニアの働き方にかかわる高年齢者雇用安定法や雇用保険法が改正されることになった。同時に、公的年金の改正も並走して進められる。我々の老後に直接かかわる改正だけに、ぜひ関心を持っておきたい。

 今回の改正を簡単に言うならば、「長寿社会なので、ぜひ長く働いてください。働いて収入があるから年金はまだ受け取らなくてもいいよというなら、もっと上乗せするので、できるだけ遅らせてください。それから、年金をもらいながら働くと年金が減らされる仕組みもありますが、それは緩和します」、つまりは「損しない仕組みをつくるので、とにかくできるだけ長く働いてほしい」ということだ。

 順を追って見て行こう。まず、現在の「高年齢者雇用安定法」は、65歳未満の定年制度を定めている企業に対し、65歳までの雇用を確保するため(1)定年の引上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年廃止のいずれかを義務付けていた。その理由は、公的年金の受給年齢が65歳となるからだ。年齢によっては厚生年金の報酬比例部分のみを60代前半で受け取れる場合があるが、現在40代の人はもう65歳までもらえない。60歳から65歳までの「年金空白期間」を埋めるために、高年齢者雇用安定法で企業に雇用を義務付けたのだ。

 今回の改正案では、さらにその期間を延長する。65歳から70歳まで、さらに働いてもらえるような制度導入を企業に促す(2021年4月からの施行)。働き方として、これまでの継続雇用以外に業務委託契約なども含まれる。ただし、現在のところはあくまで努力義務だ。

 それと同時に「高年齢雇用継続給付」が縮小される。これは、60歳時点と比べ、賃金が75%未満の金額に下がった場合に給付金が受け取れる制度。現在は60歳以降の賃金に対し上限15%までのプラス給付だが、2025年にそれを引き下げる。65歳以降も働けるからいいですよね、という理屈のようだ。

年金受給は75歳まで繰り下げで84%増に?

 長く働けるようになるんだから、年金の受け取り方についても連動しましょう、という改正もある。ひとつが年金受給開始時期の拡大。いわゆる「繰り下げ受給」の後ろ倒しだ。ずいぶんあちこちで取り上げられ、ご存知の方も多いと思うが、年金の受け取り開始を遅らせれば遅らせるほど、その金額を増やすことができる。65歳から受け取らず、ひと月でも遅らせれば月当たり0.7%が上乗せされる。現在は70歳まで繰り下げができ、それを選べば42%アップというすごい加算になるのだ。

 今回の改正では、70歳よりさらに後ろ倒して75歳まで受け取り時期を遅らせることができるようにする。もし、0.7%加算のまま月数が増えると、なんと84%ものアップになる計算だ。とはいえ、75歳まで年金をもらわずにいられるという人は、かなり健康で体力も資金力もある人だろう。ちなみに、繰り下げ分の元を取るには、受け取り始めてだいたい12年は生存する必要があるという。長寿家系の人は考えてみてもいいかもしれないが。

 なお、年金には注意すべき制度がある。年金を受け取りながら働く場合、給与が一定以上だと年金の支給が停止(減額)になってしまう「在職老齢年金」制度だ。たくさん稼いでいるのなら年金はなくてもいいでしょう、という理屈で、予算が潤沢とは言えない社会保障の観点から言えば、そりゃそうだ。

 しかし、この“在老”のせいで、特に60歳から64歳までの働き方を調整する人が多く、問題になっていた。月当たりの年金額と働いた月額報酬の合計が28万円を超えると、年金は満額もらえなくなる(65歳以降は合計47万円超えまでは全額支給)。

 この28万円を、65歳以降と同様に47万円まで引き上げるのが、今回の改正案。まさに、現役並みに働いてくださいというわけだ。ただし、60歳代前半で年金(厚生年金の一部)を受け取れる人たちは、男性が昭和36年3月生まれ、女性が昭和41年3月生まれまでなので、そもそも悩む必要がない人も多いだろう。

70歳まで働き続けるメリットと注意点

 70歳まで働いて、年金を繰り下げれば、その分生活費も余裕が出るし、現役時代に準備する老後資金も少なくて済むかもしれない。また、企業に雇用されて社会保険に加入できれば、自分で国民健康保険に入るより健康保険料は安く済み、国保にはない保障が受けられることもある。雇用保険に加入すれば、介護休業給付金や資格取得などに補助が出る教育訓練給付金の対象にもなる。

 ただし、いいことづくめでもないだろう。企業にとっては長く労働者の雇用をし続けるとなれば、どこかで給与調整をしなくてはいけなくなる。長く勤められるようになる代わりに、現役時代の給与が抑えられ、トータルでつじつま合わせが行われたりするなら痛しかゆしだ。

 おまけに、2020年4月からは同一労働同一賃金制度がスタートする。会社側は人件費をどう調整するか、コロナ不況も影を落とし、なかなか増やす方向には行きにくいだろう。

 また、現役並みの所得を得る高齢者には相応の負担をしてもらおうという方向に、国は進んでいる。税金も社会保険料もしっかり払ってもらうし、医療費も3割負担(年収約370万円以上)、高額介護合算療養費制度(介護保険と医療費を合算した際に自己負担となる上限額)も、そこそこの自己負担額になる。現役並みに働くのは、バラ色とばかりは言えないのだ。

 また、長寿社会と一口に言っても、健康で長寿な人もいれば持病を抱えて病院通いをしながらだましだまし……という人もいる。働く気持ちは満々でも、こればかりはその年齢になってみないとわからない。

 とはいえ、日本はこの先、労働力としてカウントされてきた15歳以上65歳未満の生産年齢人口は減り続け、高齢者の割合がどんどん増える。政府としては、全員になるべく長く働いてもらい、税金も社会保険料も医療費も、そして生活費も自助してほしいと思っている。特に高齢者にとって、健康コストはバカにならないのだ。

 個人的な話をすると、筆者は元来丈夫だと思ってきたが、昨年体のあちこちに不具合が出て通院を繰り返し、年末には人生初めての入院・手術を経験した。そのとき、しみじみ感じたのは「いくら自分が節約好きで知識があると言っても、医療費はなかなか節約できないなあ」ということだった。我々は、なるべく良質な医療を受けたいと考え、高額でも専門の大病院を選びたがる。そこはケチるところではないからだ。現役時代には無縁でも、高齢者にとって医療費負担は重い。年金だけから捻出し続ける生活はなかなか厳しい。

 やっぱり、長く働けるなら働いたほうがいい。いつまで働けばいいかはさておき。

(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

●松崎のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。Facebookページ「消費経済リサーチルーム」

年金受給、75歳まで繰り下げで84%増に?70歳まで働く時代の“老後資金リスク”

 60歳で定年、65歳まで継続雇用で働く――そんなイメージをしていた会社員の人生が一変するかもしれない。シニアの働き方にかかわる高年齢者雇用安定法や雇用保険法が改正されることになった。同時に、公的年金の改正も並走して進められる。我々の老後に直接かかわる改正だけに、ぜひ関心を持っておきたい。

 今回の改正を簡単に言うならば、「長寿社会なので、ぜひ長く働いてください。働いて収入があるから年金はまだ受け取らなくてもいいよというなら、もっと上乗せするので、できるだけ遅らせてください。それから、年金をもらいながら働くと年金が減らされる仕組みもありますが、それは緩和します」、つまりは「損しない仕組みをつくるので、とにかくできるだけ長く働いてほしい」ということだ。

 順を追って見て行こう。まず、現在の「高年齢者雇用安定法」は、65歳未満の定年制度を定めている企業に対し、65歳までの雇用を確保するため(1)定年の引上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年廃止のいずれかを義務付けていた。その理由は、公的年金の受給年齢が65歳となるからだ。年齢によっては厚生年金の報酬比例部分のみを60代前半で受け取れる場合があるが、現在40代の人はもう65歳までもらえない。60歳から65歳までの「年金空白期間」を埋めるために、高年齢者雇用安定法で企業に雇用を義務付けたのだ。

 今回の改正案では、さらにその期間を延長する。65歳から70歳まで、さらに働いてもらえるような制度導入を企業に促す(2021年4月からの施行)。働き方として、これまでの継続雇用以外に業務委託契約なども含まれる。ただし、現在のところはあくまで努力義務だ。

 それと同時に「高年齢雇用継続給付」が縮小される。これは、60歳時点と比べ、賃金が75%未満の金額に下がった場合に給付金が受け取れる制度。現在は60歳以降の賃金に対し上限15%までのプラス給付だが、2025年にそれを引き下げる。65歳以降も働けるからいいですよね、という理屈のようだ。

年金受給は75歳まで繰り下げで84%増に?

 長く働けるようになるんだから、年金の受け取り方についても連動しましょう、という改正もある。ひとつが年金受給開始時期の拡大。いわゆる「繰り下げ受給」の後ろ倒しだ。ずいぶんあちこちで取り上げられ、ご存知の方も多いと思うが、年金の受け取り開始を遅らせれば遅らせるほど、その金額を増やすことができる。65歳から受け取らず、ひと月でも遅らせれば月当たり0.7%が上乗せされる。現在は70歳まで繰り下げができ、それを選べば42%アップというすごい加算になるのだ。

 今回の改正では、70歳よりさらに後ろ倒して75歳まで受け取り時期を遅らせることができるようにする。もし、0.7%加算のまま月数が増えると、なんと84%ものアップになる計算だ。とはいえ、75歳まで年金をもらわずにいられるという人は、かなり健康で体力も資金力もある人だろう。ちなみに、繰り下げ分の元を取るには、受け取り始めてだいたい12年は生存する必要があるという。長寿家系の人は考えてみてもいいかもしれないが。

 なお、年金には注意すべき制度がある。年金を受け取りながら働く場合、給与が一定以上だと年金の支給が停止(減額)になってしまう「在職老齢年金」制度だ。たくさん稼いでいるのなら年金はなくてもいいでしょう、という理屈で、予算が潤沢とは言えない社会保障の観点から言えば、そりゃそうだ。

 しかし、この“在老”のせいで、特に60歳から64歳までの働き方を調整する人が多く、問題になっていた。月当たりの年金額と働いた月額報酬の合計が28万円を超えると、年金は満額もらえなくなる(65歳以降は合計47万円超えまでは全額支給)。

 この28万円を、65歳以降と同様に47万円まで引き上げるのが、今回の改正案。まさに、現役並みに働いてくださいというわけだ。ただし、60歳代前半で年金(厚生年金の一部)を受け取れる人たちは、男性が昭和36年3月生まれ、女性が昭和41年3月生まれまでなので、そもそも悩む必要がない人も多いだろう。

70歳まで働き続けるメリットと注意点

 70歳まで働いて、年金を繰り下げれば、その分生活費も余裕が出るし、現役時代に準備する老後資金も少なくて済むかもしれない。また、企業に雇用されて社会保険に加入できれば、自分で国民健康保険に入るより健康保険料は安く済み、国保にはない保障が受けられることもある。雇用保険に加入すれば、介護休業給付金や資格取得などに補助が出る教育訓練給付金の対象にもなる。

 ただし、いいことづくめでもないだろう。企業にとっては長く労働者の雇用をし続けるとなれば、どこかで給与調整をしなくてはいけなくなる。長く勤められるようになる代わりに、現役時代の給与が抑えられ、トータルでつじつま合わせが行われたりするなら痛しかゆしだ。

 おまけに、2020年4月からは同一労働同一賃金制度がスタートする。会社側は人件費をどう調整するか、コロナ不況も影を落とし、なかなか増やす方向には行きにくいだろう。

 また、現役並みの所得を得る高齢者には相応の負担をしてもらおうという方向に、国は進んでいる。税金も社会保険料もしっかり払ってもらうし、医療費も3割負担(年収約370万円以上)、高額介護合算療養費制度(介護保険と医療費を合算した際に自己負担となる上限額)も、そこそこの自己負担額になる。現役並みに働くのは、バラ色とばかりは言えないのだ。

 また、長寿社会と一口に言っても、健康で長寿な人もいれば持病を抱えて病院通いをしながらだましだまし……という人もいる。働く気持ちは満々でも、こればかりはその年齢になってみないとわからない。

 とはいえ、日本はこの先、労働力としてカウントされてきた15歳以上65歳未満の生産年齢人口は減り続け、高齢者の割合がどんどん増える。政府としては、全員になるべく長く働いてもらい、税金も社会保険料も医療費も、そして生活費も自助してほしいと思っている。特に高齢者にとって、健康コストはバカにならないのだ。

 個人的な話をすると、筆者は元来丈夫だと思ってきたが、昨年体のあちこちに不具合が出て通院を繰り返し、年末には人生初めての入院・手術を経験した。そのとき、しみじみ感じたのは「いくら自分が節約好きで知識があると言っても、医療費はなかなか節約できないなあ」ということだった。我々は、なるべく良質な医療を受けたいと考え、高額でも専門の大病院を選びたがる。そこはケチるところではないからだ。現役時代には無縁でも、高齢者にとって医療費負担は重い。年金だけから捻出し続ける生活はなかなか厳しい。

 やっぱり、長く働けるなら働いたほうがいい。いつまで働けばいいかはさておき。

(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

●松崎のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。Facebookページ「消費経済リサーチルーム」

解熱鎮痛薬は“本当に危険な薬”、脳症起こす例も…総合感冒薬、死亡例数が突出

薬の説明書を読んで疑問が湧いてしまう

 先日、私が勤務する薬局に患者さんから電話で問い合わせがありました。こうして電話をしてくるということは、薬について何か疑問があるからです。患者さんに薬を渡す際に服薬指導をするのですが、「病院で長い間待たされたので、早く帰りたい」という思いが勝って「ハイ、ハイ」と聞いたふりをして帰宅したが、「なぜこの薬が出ているの?」「いつ飲んだらいいの?」と疑問が湧いてくることもあるでしょう。

 今回の方は「熱があるのに、熱に効く薬が出ていなくて、咳止めが出ているのはおかしい」ということでした。咳はどの程度か質問すると「少し出る」とのことでした。また、体温は37.2度でした。この方は大人の男性で、微熱レベルなので薬を出さずに治るのを待つと処方医が判断したのでしょう。処方箋を見て私もそれが妥当だと思ったので、あえて薬の追加を依頼せずそのまま薬を渡しました。

 別の例もあります。お子さんを持つお母さんから「熱が出て病院行ったのに、なぜ熱を下げる薬が出ていないのよ!」と服薬指導の際に詰め寄られたことが何度もあります。解熱鎮痛薬を処方すべきかどうかは医師の判断になります。37度台は高熱ではないため、解熱鎮痛薬なしでも問題ないと考えられます。

 現在は薬の説明書が渡されるので、なんの薬が出されているかは読めばわかるようになっています。自分が感じている症状にない薬が出たりすると疑問に感じますし、実感している症状に当てはまる薬がなくても疑問に感じてしまいます。

 解熱鎮痛薬を使わずに治癒を待つほうがよいこともあるのです。

解熱鎮痛薬は本当に怖い薬です

 市販薬で最も副作用が多いのが総合感冒薬、2番目に多いのが解熱鎮痛薬です。もちろん最も多く発売されているのが総合感冒薬なので、件数が多くなるのは当然だと考えられがちですが、死に至るレベルとなると、ほかの薬効群に比べて圧倒的に多いのです。厚生労働省の平成19年から23年の副作用報告によると、死亡例は総合感冒薬で12人、解熱鎮痛薬で4人でした。総合感冒薬は解熱鎮痛薬のほかにさまざまな薬を混合して風邪の諸症状を和らげる薬です。つまり、解熱鎮痛薬が入っています。

 解熱鎮痛薬の歴史は「アスピリン」から始まりましたが、アスピリンを飲んだ人に脳症が起こる例が多数報告されています。アスピリンより解熱鎮痛作用が強い「ジクロフェナク」や「メフェナム酸」も、脳症を引き起こすことがわかっています。「メフェナム酸」はかつて市販で飲み薬として発売されていたのですが、副作用のため市販されなくなりました。“メフェナム酸信者”の方に「前はあったのに!」と何度も詰め寄られたこともあります。「大きい副作用が出たので市販されていないんです」と説明しても「今まで大丈夫だったんだから! これしか効かない!」とさらにヒートアップし「この店はダメだ!」と怒って帰る方もいました。

 こうした解熱鎮痛薬には「NF-kB」(エヌエフカッパビー)という物質を増やす作用があることがわかっています。この物質は転写因子の一つで、物質工場のスイッチをオンにする作用があります。これがオンになると炎症を起こす物質、炎症性サイトカインであるIL-1、IL-6、IL-12、TNF-αを大量につくります。ウイルスや細菌が入ってきてそれと戦うために、こうした炎症性サイトカインは必要ですが、薬により大量につくると制御が利かなくなり、ウイルスや細菌のみならず体内の細胞に総攻撃をしてしまいます。

 この総攻撃が脳内で起こってしまうと、脳症になります。解熱鎮痛薬は、脳における熱を出す指令を抑えることで熱を下げる効果があります。つまり薬自体が脳に作用しているということです。そこで、薬で「NF-kB」を増やすと、脳内で炎症性サイトカインを大量につくり、総攻撃へと突入していくわけです。

アセトアミノフェンは救世主

 唯一「NF-kB」を増やさない解熱鎮痛薬があります。それがアセトアミノフェンです。「家族みんなで使える」とうたっている風邪薬にはアセトアミノフェンが入っています。脳が未発達な小児では、アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬を飲んでしまうと脳症の危険が高まるため、ほかの解熱鎮痛薬の使用は禁止されています。

 いわゆる頭痛薬の場合、アセトアミノフェンのみが配合された製品はほとんどありません。効いた実感がしないものは「売れない」ためです。私も、より効くとされる「ロキソニン」や「イブA」を患者さんに紹介することがありますが、その時は添付文書通りに「症状があるときのみ」使ってもらうよう伝えます。そして、棚の下段のほうにひっそりと陳列されている「タイレノール」はアセトアミノフェンのみが入っている薬であり、救世主として覚えておいて損はないと思っています。

(文=小谷寿美子/薬剤師)

解熱鎮痛薬は“本当に危険な薬”、脳症起こす例も…総合感冒薬、死亡例数が突出

薬の説明書を読んで疑問が湧いてしまう

 先日、私が勤務する薬局に患者さんから電話で問い合わせがありました。こうして電話をしてくるということは、薬について何か疑問があるからです。患者さんに薬を渡す際に服薬指導をするのですが、「病院で長い間待たされたので、早く帰りたい」という思いが勝って「ハイ、ハイ」と聞いたふりをして帰宅したが、「なぜこの薬が出ているの?」「いつ飲んだらいいの?」と疑問が湧いてくることもあるでしょう。

 今回の方は「熱があるのに、熱に効く薬が出ていなくて、咳止めが出ているのはおかしい」ということでした。咳はどの程度か質問すると「少し出る」とのことでした。また、体温は37.2度でした。この方は大人の男性で、微熱レベルなので薬を出さずに治るのを待つと処方医が判断したのでしょう。処方箋を見て私もそれが妥当だと思ったので、あえて薬の追加を依頼せずそのまま薬を渡しました。

 別の例もあります。お子さんを持つお母さんから「熱が出て病院行ったのに、なぜ熱を下げる薬が出ていないのよ!」と服薬指導の際に詰め寄られたことが何度もあります。解熱鎮痛薬を処方すべきかどうかは医師の判断になります。37度台は高熱ではないため、解熱鎮痛薬なしでも問題ないと考えられます。

 現在は薬の説明書が渡されるので、なんの薬が出されているかは読めばわかるようになっています。自分が感じている症状にない薬が出たりすると疑問に感じますし、実感している症状に当てはまる薬がなくても疑問に感じてしまいます。

 解熱鎮痛薬を使わずに治癒を待つほうがよいこともあるのです。

解熱鎮痛薬は本当に怖い薬です

 市販薬で最も副作用が多いのが総合感冒薬、2番目に多いのが解熱鎮痛薬です。もちろん最も多く発売されているのが総合感冒薬なので、件数が多くなるのは当然だと考えられがちですが、死に至るレベルとなると、ほかの薬効群に比べて圧倒的に多いのです。厚生労働省の平成19年から23年の副作用報告によると、死亡例は総合感冒薬で12人、解熱鎮痛薬で4人でした。総合感冒薬は解熱鎮痛薬のほかにさまざまな薬を混合して風邪の諸症状を和らげる薬です。つまり、解熱鎮痛薬が入っています。

 解熱鎮痛薬の歴史は「アスピリン」から始まりましたが、アスピリンを飲んだ人に脳症が起こる例が多数報告されています。アスピリンより解熱鎮痛作用が強い「ジクロフェナク」や「メフェナム酸」も、脳症を引き起こすことがわかっています。「メフェナム酸」はかつて市販で飲み薬として発売されていたのですが、副作用のため市販されなくなりました。“メフェナム酸信者”の方に「前はあったのに!」と何度も詰め寄られたこともあります。「大きい副作用が出たので市販されていないんです」と説明しても「今まで大丈夫だったんだから! これしか効かない!」とさらにヒートアップし「この店はダメだ!」と怒って帰る方もいました。

 こうした解熱鎮痛薬には「NF-kB」(エヌエフカッパビー)という物質を増やす作用があることがわかっています。この物質は転写因子の一つで、物質工場のスイッチをオンにする作用があります。これがオンになると炎症を起こす物質、炎症性サイトカインであるIL-1、IL-6、IL-12、TNF-αを大量につくります。ウイルスや細菌が入ってきてそれと戦うために、こうした炎症性サイトカインは必要ですが、薬により大量につくると制御が利かなくなり、ウイルスや細菌のみならず体内の細胞に総攻撃をしてしまいます。

 この総攻撃が脳内で起こってしまうと、脳症になります。解熱鎮痛薬は、脳における熱を出す指令を抑えることで熱を下げる効果があります。つまり薬自体が脳に作用しているということです。そこで、薬で「NF-kB」を増やすと、脳内で炎症性サイトカインを大量につくり、総攻撃へと突入していくわけです。

アセトアミノフェンは救世主

 唯一「NF-kB」を増やさない解熱鎮痛薬があります。それがアセトアミノフェンです。「家族みんなで使える」とうたっている風邪薬にはアセトアミノフェンが入っています。脳が未発達な小児では、アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬を飲んでしまうと脳症の危険が高まるため、ほかの解熱鎮痛薬の使用は禁止されています。

 いわゆる頭痛薬の場合、アセトアミノフェンのみが配合された製品はほとんどありません。効いた実感がしないものは「売れない」ためです。私も、より効くとされる「ロキソニン」や「イブA」を患者さんに紹介することがありますが、その時は添付文書通りに「症状があるときのみ」使ってもらうよう伝えます。そして、棚の下段のほうにひっそりと陳列されている「タイレノール」はアセトアミノフェンのみが入っている薬であり、救世主として覚えておいて損はないと思っています。

(文=小谷寿美子/薬剤師)

国は“マスク在庫あるある詐欺”…緊急事態宣言で懸念、食品供給不足と生活苦を防ぐために

 小池百合子東京都知事が3月25日の記者会見で、都市封鎖や爆発的感染の危機だと言い始めてから、東京都を中心に首都圏では食品を中心とした買い占めが始まった。すると、大手スーパーマーケットのイオンは、テレビの取材に物流倉庫の在庫を見せて「米やカップめん、トイレットペーパーは十分あるので、消費者は落ち着いた行動を取るように」と呼びかけた。

 つい最近、似たような光景がテレビで何度も紹介されていた。それが、トイレットペーパーだ。やはりある業者が、物流倉庫のトイレットペーパーをテレビで見せ、在庫は十分にあると訴えていた。しかし、店頭での品不足は続くと、今度は在庫はあるがトイレットペーパーを店まで運ぶ物流が滞っていると弁解をした。そのトイレットペーパーも、一時期ほどではないが品薄状態は続いている。

 国民は、政府の「マスクは十分ある。いついつからは店頭に十分並ぶ」という言葉を何回聞かされただろうか。いつまでたってもマスク不足は解消されない。もう消費者は騙されない。筆者は、この問題で最初から「店頭に山と積まれなければ消費者は信じない」と言っているが、物流倉庫の在庫が自分の近所の小売店に来るわけではない。

 食料品の在庫については、国は国会で明確に答弁している。「米は、国と民間在庫で国民の消費量の6.2カ月分、食料小麦は2.3カ月分、大豆は民間在庫で1カ月分」であり、今後「輸入先を変えなければならない事態も考えられる」と述べている。生産から販売までの間の物流在庫がどの程度あるかわからないが、どの事業者もできるだけ在庫を抱えたくないので、物流在庫全体で数カ月分あるかどうか疑わしい。

 例えば、もし物流も含めた総在庫が米は約8カ月分、小麦は4カ月分強、大豆は3カ月分あるとすると、平時であれば、これで十分かもしれないが、世界中が異常事態の今、この在庫で日本国民の食料を十分賄えるのだろうか。もしも消費者が3カ月分の買い溜めをすると、日本全体の米の在庫は5カ月分、小麦は1カ月分、大豆は0カ月分ということになる。

 米は秋から収穫が始まるので、よほどの不作でなければ持ちこたえることはできるだろう。ただし、全国的な自粛となれば予断は許さない。小麦と大豆は輸入次第だ。小麦の輸入先は米国と豪州、大豆は米国、ブラジル、カナダである。果たして、今まで通りの輸入量を確保できるのだろうか。

 小麦といえばパスタだが、これはほとんどが輸入。では、うどんやラーメンは何カ月分の在庫があり、何カ月分先まで小麦の輸入量は確保できているのだろうか。納豆は何カ月分の在庫があり、輸入大豆は何カ月分の輸入量が確保できているのだろうか。食品に関しては、新型コロナウイルスの影響はどの程度なのだろうか。もしも国や東京都が緊急事態宣言をしたら、食品はどんな影響を受けるのかも明確に示してほしい。「十分ある」という抽象的な言葉で逃げないでほしい。

コロナ生活苦を防ぐために

 日本の緊急事態宣言は、法的拘束力はなくても、テレビが出歩いている人を見つけて「自粛をしていない悪い人だ」と国の代弁をする。一歩でも外に出ると極悪人のような扱いを受ける可能性がある。緊急事態宣言を出しただけで都市封鎖に近い状況が起こりうる。

 食品だけではないが、日本の場合、一つの商品が店頭に並ぶまで、数多くの中小事業者がかかわっている。そうした企業は、テレワークも時差出勤もできない。工場に行かなければ、現場に行かなければ仕事にならない。生きていくことができない。

 緊急事態宣言を出すことによって、事実上中小企業の動きを止めれば、日本の食は簡単に止まる恐れもある。日本特有の商業形態だが、それによって多くの人たちが生活をすることができている。もちろん消費者もだ。自粛をすればするほど、コロナの前に生活苦も同然になる人々が無数に出る。日本を支えている庶民の生活を奪えば、日本は立ち行かなくなる。

 もう“在庫あるある詐欺”はやめてほしい。国民にウソをつくのはやめてほしい。一番冷静にならなければならないのは、国であり地方自治体であり大手事業者だ。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

国は“マスク在庫あるある詐欺”…緊急事態宣言で懸念、食品供給不足と生活苦を防ぐために

 小池百合子東京都知事が3月25日の記者会見で、都市封鎖や爆発的感染の危機だと言い始めてから、東京都を中心に首都圏では食品を中心とした買い占めが始まった。すると、大手スーパーマーケットのイオンは、テレビの取材に物流倉庫の在庫を見せて「米やカップめん、トイレットペーパーは十分あるので、消費者は落ち着いた行動を取るように」と呼びかけた。

 つい最近、似たような光景がテレビで何度も紹介されていた。それが、トイレットペーパーだ。やはりある業者が、物流倉庫のトイレットペーパーをテレビで見せ、在庫は十分にあると訴えていた。しかし、店頭での品不足は続くと、今度は在庫はあるがトイレットペーパーを店まで運ぶ物流が滞っていると弁解をした。そのトイレットペーパーも、一時期ほどではないが品薄状態は続いている。

 国民は、政府の「マスクは十分ある。いついつからは店頭に十分並ぶ」という言葉を何回聞かされただろうか。いつまでたってもマスク不足は解消されない。もう消費者は騙されない。筆者は、この問題で最初から「店頭に山と積まれなければ消費者は信じない」と言っているが、物流倉庫の在庫が自分の近所の小売店に来るわけではない。

 食料品の在庫については、国は国会で明確に答弁している。「米は、国と民間在庫で国民の消費量の6.2カ月分、食料小麦は2.3カ月分、大豆は民間在庫で1カ月分」であり、今後「輸入先を変えなければならない事態も考えられる」と述べている。生産から販売までの間の物流在庫がどの程度あるかわからないが、どの事業者もできるだけ在庫を抱えたくないので、物流在庫全体で数カ月分あるかどうか疑わしい。

 例えば、もし物流も含めた総在庫が米は約8カ月分、小麦は4カ月分強、大豆は3カ月分あるとすると、平時であれば、これで十分かもしれないが、世界中が異常事態の今、この在庫で日本国民の食料を十分賄えるのだろうか。もしも消費者が3カ月分の買い溜めをすると、日本全体の米の在庫は5カ月分、小麦は1カ月分、大豆は0カ月分ということになる。

 米は秋から収穫が始まるので、よほどの不作でなければ持ちこたえることはできるだろう。ただし、全国的な自粛となれば予断は許さない。小麦と大豆は輸入次第だ。小麦の輸入先は米国と豪州、大豆は米国、ブラジル、カナダである。果たして、今まで通りの輸入量を確保できるのだろうか。

 小麦といえばパスタだが、これはほとんどが輸入。では、うどんやラーメンは何カ月分の在庫があり、何カ月分先まで小麦の輸入量は確保できているのだろうか。納豆は何カ月分の在庫があり、輸入大豆は何カ月分の輸入量が確保できているのだろうか。食品に関しては、新型コロナウイルスの影響はどの程度なのだろうか。もしも国や東京都が緊急事態宣言をしたら、食品はどんな影響を受けるのかも明確に示してほしい。「十分ある」という抽象的な言葉で逃げないでほしい。

コロナ生活苦を防ぐために

 日本の緊急事態宣言は、法的拘束力はなくても、テレビが出歩いている人を見つけて「自粛をしていない悪い人だ」と国の代弁をする。一歩でも外に出ると極悪人のような扱いを受ける可能性がある。緊急事態宣言を出しただけで都市封鎖に近い状況が起こりうる。

 食品だけではないが、日本の場合、一つの商品が店頭に並ぶまで、数多くの中小事業者がかかわっている。そうした企業は、テレワークも時差出勤もできない。工場に行かなければ、現場に行かなければ仕事にならない。生きていくことができない。

 緊急事態宣言を出すことによって、事実上中小企業の動きを止めれば、日本の食は簡単に止まる恐れもある。日本特有の商業形態だが、それによって多くの人たちが生活をすることができている。もちろん消費者もだ。自粛をすればするほど、コロナの前に生活苦も同然になる人々が無数に出る。日本を支えている庶民の生活を奪えば、日本は立ち行かなくなる。

 もう“在庫あるある詐欺”はやめてほしい。国民にウソをつくのはやめてほしい。一番冷静にならなければならないのは、国であり地方自治体であり大手事業者だ。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)