作品ではなく「作家と出会う」。アートとあなたの新しい関係性

「アート・イン・ビジネス—ビジネスに効くアートの力」筆者のひとり、美術回路(※)メンバーの上原拓真と申します。私が担当した連載第2回ではビジネスパーソンが経験するアートの内在化、第3回では東京理科大でアートマーケットの科学的研究をする大西浩志による寄稿として「ビジネスにおけるアートの効果」について紹介しました。

(※) 美術回路:アートパワーを取り入れたビジネス創造を支援するアートユニットです。専用サイト。

 

「アート・イン・ビジネス」ではアートを内在化したビジネスパーソンが、どうやって初めにアートと出合ったのか、きっかけを紹介しています。主に①作品をたくさん見る、②作品に向き合う、③人と話す、④描いてみる、⑤作品を買う、に分類できるのですが、こういったアートに出合うきっかけをつくるための実践例─というか恥ずかしながら私、上原がどんなアート・イン・ビジネスをみずから手掛けてきたのかお話しさせてください。

日本の現代アートはまだ多くの人にとって「自分には関係ないもの」

現代アートを理解して楽しむには、膨大な数の作品を見ること、歴史や知識を理解することが必要です。とはいえ、ずっとハードルが高いままでは、作品はアート業界の中だけに閉じてしまい、作家にも資金が回りません。
そこで、「作品よりも作家に触れることで、アートの面白さを感じてもらえるのではないか」という仮説の下、あるプロジェクトを始めました。それが作家と話して、作品に出合えるアートテリングツアー、「RUNDA」です。RUNDAは冒頭に示したアートに出合うきっかけ、そのすべてに少しずつ触れることができるツアーとして実践しています。
今回はこの取り組みの紹介を通して、「アートを所有すること」の意味について、改めて考えてみたいと思います。

アートスクールの課題からライフワークへ

私がこのツアーを始めたきっかけは、AIT(Arts Initiative Tokyo)というNPO団体が主催するアートスクールでした(過去記事)。6カ月におよぶプログラムの締めくくりとして、アートに関するプロジェクトを企画することとなり、そこで当時の受講生仲間と共に構想したのがRUNDAの原型です。講座が修了した後、自主的な課外活動として、2016年から実際にこの活動を始めました。
一人一人に深い体験をしてもらうために、あえて少人数で開催していますが、これまでの参加者は延べ200人に上ります。当初はAITを通じて知り合った人が参加してくれていましたが、現在はビジネスパーソンを中心にした20代から60代まで、幅広い層から申し込みがあります。

RUNDAの企画概要図

美大卒なのに「作品を買う」発想がなかった10年間

今でこそこうした活動をしているものの、私自身、元はというと「アートを普通の個人が買う行為」に正直ピンときていませんでした。しかも学生時代、美大でアートマネジメントを専攻していたにもかかわらず、です。

振り返ってみると、その理由の一つには当時の時代背景が関係していたように思います。私が通っていた大学は比較的、アートとビジネスの関係について焦点を当てた教育がされていましたが、当時、日本の美大の多くは美術館のキュレーターや学芸員といった、どちらかといえばアカデミックな人材を育成する色が強い内容でした。そのため、無意識にアートは「団体や美術館が買うもの」という認識があったのかもしれません。

そんな私が初めてアートを買ったのは30歳前のこと。照屋勇賢氏の「Heroes」という作品です。

照屋勇賢氏の「Heroes」

私が当時、ボーナス2回分くらいの金額はする絵を所有することに決めた理由。それは作品に魅了されたことはもちろんですが、一番背中を押してくれたのは“縁”です。実は照屋氏は高校の先輩であり、デッサンを教わったこともある仲だったので、作品に出合う前からその存在を知っていました。加えて、作品を置いていたギャラリーには大学時代の同級生(マキファインアーツの牧高啓氏)が勤めていました。

先輩がつくった作品を同級生から買う──。

この瞬間、あることが急に腑に落ちました。それは「作家にお金が回ることが重要だ」という、大学時代にはたどり着くことがなかった、でもアート産業の発展のためには絶対に欠かせない発想です。

作品そのものではなく、人の縁をきっかけにしてアートを所有する。この原体験を自分以外の人にもしてもらいたい。そこから、今でもアート業界では珍しい「作家の声を直接聞く場を提供する」「作品と鑑賞者の距離を縮める」というRUNDAのコンセプトが生まれました。

展示された作品はもちろん、作家のインスピレーションの源泉になった場所を一緒に巡り、対話する。この行為自体も一つのアートとして位置づけられそうだと思いました。

ツアー参加者の中には、その場で作品を買ってくれた人もいます。別の人からは、ツアーから数か月たって「買うことにした」という報告を聞いて驚いたこともあります。

ギャラリーに所属している現代美術家の作品は、安くても10万円前後。ビジネスパーソンにはハードルが少し高いかもしれません。なにより、アートマネジメントを専攻していた私ですら、大学卒業から初めて作品を購入するまでに10年弱近い期間がありました。

当然、RUNDAの参加者も全員が作品を買って帰るわけではありません。それでも個人的に始めた地道な活動が誰かのアートの入り口になるのはとてもうれしく、やりがいを感じる瞬間でもあります。

RUNDAツアー後の飲み会の様子
RUNDAで大切にしていることのひとつ、ツアー後の作家を交えた飲み会。(RUNDA 第6回 17年12月2日より)

購買は一線を越える境界線

私はなぜここまで“買う”ことにこだわっているのでしょうか。先ほど挙げたように、作家にお金が渡ることの重要性もありますが、理由はそれだけではありません。

私は、「買う瞬間にしか真実は現れない」と思っています。
これはアートに限らず、私が普段の仕事でマーケティングを担当している消費財や自動車といったクライアントの製品でも同じです。

資本主義経済において、購買は非常に重要な行動です。

会員登録が必要ないメディアの記事や動画(電通報もそうです)、街で配られるガムや化粧水などの試供品、自動車や電動自転車の試乗。こうしたものに対して、人は簡単に「いいね」と言います。それは身銭を切っていないからです。ある種の無責任ともいえるかもしれません。

では、もしそれらをお金を払って手に入れるとしたらどうでしょうか。人は自分のお金と商品を交換するとなると、「対価として見合うか」を厳しく判断します。ここに初めて商品と自分との対話が生まれます。

RUNDAツアー過去の様子
(RUNDA 第1回 2016年2月27日 より)

アートも同じです。同じ作品でも、単に鑑賞するだけ(もちろん入館料が必要な場合もありますが)の場合と、購買を通して作者や作品と向き合うのには、大きな違いがあります。

「この作品を家に置きたいか」

言い換えれば、作家が生み出した“身体の一部”を所有し、自分の“生活の血肉”にすること。あるいはその判断をすること。

作品を受け入れる所有者も、受け入れられる作家も、このプロセスによってお互いの接し方や関係性が変わるのです。RUNDAは時としてこの、「売り手と買い手の本当の声が聞ける、尊い瞬間」を間近で目撃できる、とても“アート的”なインスタレーションの舞台でもあるのです。

皆さんもぜひ作家との対話を体験してみてください

作品と鑑賞者の間に作家が入ることで、結果として作品を理解するための最短ルートになる。時代背景や前提知識など、難しいことを一旦抜きにして作家と直接対話すれば、アートが実は身近なものであることを感じられます。

そして一人でも多くの人にそれを体験してもらうべく、RUNDAでは初の試みとなるオンラインツアーを開催します。今回ゲストとなる作家は、「緊急事態宣言下の東京の夜の街」を二つの視点から切り取る作品「Night Order(秩序ある夜)」を発表したフォトグラファー・小田駿一氏です。

小田駿一氏「Night Order」の作品
緊急事態宣言下の東京の夜の街を、客観的・記録的に写し取った作品(吉祥寺ハーモニカ横丁)
小田駿一氏「Night Order」の作品
東京の夜の街に灯る照明を捉え、その温かさ・楽しさを主観的に写し取った抽象作品(有楽町ガード下)

この作品は非常事態宣言の中で経営に苦しむ飲食店を救うべく、作品収益の一部を飲食店に寄付するという、ソーシャルアクションの要素も含んだとても興味深い活動です。クラウドファンディングサービスのmakuakeでも、プロジェクト開始から1週間で120万円以上を集め、現在注目が高まっています。

オンラインツアーでは小田さんの作品に懸ける思いや、当事者である飲食店経営者のリアルな声をお届けする予定です。トークセッションの後は、RUNDA恒例の「作家と直接話せる飲み会」もオンラインで行います。

ギャラリーや美術館に足を運ぶのはハードルが高いという方も、オンラインなのでぜひ気軽に参加してみてください。新たな作品、そして新たな自分の内面との出合いがあるはずです。

RUNDA「オンラインアートツアー」詳細はこちら

検察OB意見書が引用したジョン・ロックの訳者は安倍首相の大学時代の教授! しかも「無知で無恥」と安倍首相を徹底批判 

 検察庁法改正をめぐる国民の怒りの声が止まらない。安倍首相と安倍応援団はいつものように「黒川弘務検事長の定年延長に恣意的な理由はない」「検察庁法改正は国家公務員法改正にあわせただけ」「提案したのは官邸でなく法務省」などと嘘八百をふりまいているが、そんな弁明を信じているのは、...

『進撃の巨人』編集者が語る、これからの時代のサバイブ力

大ヒット漫画『進撃の巨人』をベースにした戦略論の解説書、『進撃の相談室』(発行:講談社)。その著者であり、クリエーティブ・ストラテジストの工藤拓真氏が、講談社の『進撃の巨人』担当編集者・川窪慎太郎氏とともに、「いまを生き抜くための『問いの作法』」について語り合います。

仕事、学校、人間関係…。あらゆる悩みに苦しむ現代人が課題を乗り越え、自分らしく生きる思考法とは?若い世代に必要な教育とはどんなものなのか?そのポイントを紐解きました。

前編:『進撃の巨人』編集者と考える、“人を動かす物語”とは

川窪慎太郎氏と工藤拓真氏のツーショット

一生懸命に人間の生を描き続ければ、結果として世界に届く

川窪:『進撃の巨人』が世界中でヒットした理由は、扱っているテーマがシンプルで普遍的なものだからだと思うんですよね。壁の内側と外側があって、外側には立ち向かわなければならない圧倒的な敵がいる。しかし話が進むと、壁の内側にも敵がいることが分かったり、敵だと思っていたものが、実は敵とはいえなかったり…。こういう構造って、どんなものにも当てはめられるものだと思うんです。日本だけじゃなく世界中にあるものでもありますよね。だから、いろいろな国の人が、自分の置かれた状況と重ね合わせて、「ああ、分かる分かる」と読んでくれているのだと思いました。

工藤:不自由に対する反逆っていうのかな、そういうことが描かれているんですよね。それでちょっと気になったんですが、川窪さんと作者である諫山創先生は、最初から世界を見据えて、こういう普遍的なテーマを扱おうと思っていたのですか?もともと日本だけでなく海外に広げたいと考えていたのでしょうか?

川窪:あ、それはまったくないですね。世界のことなんて考えていないし、もっといえば日本がどうという意識もありませんでした。諫山さんが純粋に描かんとするもの、描かなければいけないと思うものを描いただけだと思いますし、僕もそれをサポートしたいという思いだけでしたね。ただ、一生懸命、人間や人間の生を描いていくと、結果として世界に届くというか。思いを込めて作った物語が存在し続ければ、それが隣にいる日本人に届くように、隣にはいない世界の人にも届くのだなと思いました。

工藤:それはすてきですね。エレンたちが常に強い目的意識に突き動かされていたように、作り手の皆さんも、純粋で、強く、明確な目的意識を持っていらっしゃった、と。

僕は、心の中に強い目的意識のようなものを持っていれば、いろいろな悩みや息苦しさを乗り越えていけるんじゃないかと思っているんです。なにかを目指して、何度も何度も当たって砕けて。そういうことを繰り返して積み重ねていけば、どこかで道が開ける。それが、生きていくためにとっても大切なことなんじゃないかと思っています。

戦略論とは“問いの作法”を体系化したもの

工藤:もう一つ、川窪さんに、ぜひお聞きしたいと思っていたことがあるんです。僕自身が、子どもの頃から大の漫画好きだったということもあって、漫画編集者さんって、漫画家さんとどんなことを話しているのかなあということに興味があって。必ず伝えるようにしていることやアドバイスしていることなどはあるのでしょうか?

川窪:はい、あります。新人の漫画家に会うとき必ず聞くようにしているのが、「なんで漫画家になりたいの?」ということ。こう聞くと、「漫画が好きだからです」という子がすごく多いのですが、でもそれって、「=漫画家になりたい」ということじゃないですよね。僕も昔から漫画が好きでしたけど、漫画家になりたいとも、なれるとも思いませんでしたし。

もし漫画を読むだけで満たされるのであれば、普通に就職してお給料をもらって、そのお給料で漫画を買って読み続けるという道もありますよね。絵を描くことが好きなら、早く帰れる仕事に就いて、プライベートな時間でイラストを描いてSNSにアップするという手段もあるわけで。「今、あなたが漫画家になりたいと言っている、その思いはどこから来るものなのか」「どういう感情なのか」、それをしっかり考えた方がいいよと伝えています。

それは、100人のうち99人が漫画家になれずに終わっていくからです。何者にもなれずに去っていく子が多いからこそ、スタート段階で「本当に漫画家になりたいの?」「それはなんでなの?」という“問い”を投げかけることを大切にしています。

工藤:問いが大切…。これは、漫画家だけに限らず、どんな職業にもいえることですよね。職業だけでなく、なにかを選ぶときや始めるとき、行き詰まったときなど、あらゆるときに言えることだと思います。

川窪:そう思います。ちょっと話がズレてしまうかもしれませんが、昔読んだ本に、こんな話がありました。「どうして殺人がいけないのかに答えはない」「もし君に考えなければいけないことがあるとしたら、なぜ、今、この本を手に取ったかということだ」。もしかしたら友達との関係に悩んでいるのかもしれないし、将来の夢を描けず苦しんでいるのかもしれない。とにかく、その“なぜ”と真剣に向き合った方がいいんじゃないの、というようなことが書かれていたんです。

「これはすごくいい考え方だな」と思って、以来、何かを始めるときは「なんでやるんだっけ?」とか「なんのために始めるの?」と、必ず自分に聞くようにしています。

工藤:問いとか自問自答って、僕が『進撃の相談室』で伝えたいと思っている戦略論にも通じる、とても本質的で大切なことだと思います。戦略論って、問いの立て方というか、分析の手法というか、“問いの作法”とでも言った方がよいのかな、そういうものを体系化したものでもありますからね。

川窪:僕も『進撃の相談室』を読んで、そう思いました。本のメインターゲットである中学生ぐらいの子どもたちって、なんだか漠然とつらかったり、そもそもなんで悩んでいるかも分からなかったり、とてもモヤモヤした状況の中にいると思うんです。それは漫画家になりたいと言っている子たちも同じかもしれませんが。そこに、ちょっと新しい考え方や解決法、視点を変えるような問いが入ると、ガラッと景色が変わることがある。そういう、若い子たちのためのサバイブ術のようなことが書かれている本だと思いました。

『進撃の巨人』の担当者であるということを抜きに、一人の人間として、この本を、多くの小中学生に読んでもらえるといいなと思っています。

血肉の通った物語には、生きるヒントが詰まっている

川窪:前編でもお話ししたように僕は、問いだけでなく「物語」というものも、人間にとって必要不可欠なものだと思っています。物語には、人間がどう生きていけばいいのかを考えるヒントやエッセンスが詰まっていますから。

工藤:そうですね。今、小学校や中学校で、盛んに、問題解決能力を養うための対話教育が行われています。漫画や小説が取り入れられていることもあるようですが、その内容は「さあ、問題解決の時間ですよ」「ある日、突然、大きな男が襲ってきました。どうしますか?」といったような、多分に教科書的で現実離れしたものが多いように思います。

そうではなくて、血肉の通った物語を取り入れてほしい。幸い日本には漫画という良質なコンテンツがたくさんあるわけですから、これを活用しない手はありません。教科書的な漫画や小説を作って生きるヒントを“教える”のではなくて、多くの人に愛される良質な物語を生かして、「どう解釈するか」を、みんなで問いを立てながら“考える”ことが学びになります。そこに可能性や未来があるんじゃないかと思っています。

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「食」から見える、未来のビジネス

コロナ禍で大きく変わった私たちの食生活

新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言」が発出されてから1カ月以上、電通はリモートワーク/在宅勤務になって2カ月以上がたちます。私自身、この2カ月以上、一度も公共交通機関を使わずほぼ家で過ごしている中で、働き方はもちろん、食生活も大きく変わりました。

まず、子どもたちが休校になったことでお弁当を作る必要がなくなり、1日3食作るようになったこと。それなりの頻度で入っていた飲み会が一切なくなり、オンラインになったこと。家族で食卓を囲める機会がぐんと増えたこと。一回の買い物量が格段に増えたこと。自宅にあるリーフの紅茶の減りが早くなったこと…。挙げだすとキリがないくらい、その変化はいろいろと出てきます。

これを読んでくださっている皆さんも、多かれ少なかれ、そのような状況ではないでしょうか。

私も飲み会が一切なくなったように、おそらくほとんどの人の外食率はかなり減ったことと思います。そしてそれに伴い、今、外食産業に関わる多くの方たちが困っています。

私もささやかながら、できるだけお世話になっている近所の飲食店のテイクアウトを利用したり、困っている生産者や飲食事業者さんの支援サイトで購入・お取り寄せをするようにしているものの、残念ながら、わが家の冷蔵庫・冷凍庫のキャパ、個人の力には限界があることを感じずにはいられません。

ただ、一人一人の力は小さくても合わせれば大きな力になる、ということもまた事実。困っている生産者や事業者がSNSに投稿すると、全国で支援の輪が広がり、抱えた在庫の商品があっという間に完売している様子を見ていると、社会の課題はその社会に属する人たちで解決しようという気持ちの表れを感じます。

さて、これからスタートする電通「食生活ラボ」の連載記事のテーマは「未来の食」です。実はこの連載記事、今年の3月にスタートする予定で昨年から準備していたものですが、これまで掲載を見合わせてきました。

というのも、このコロナ禍で大きな打撃を受けて困っている多くの人や企業にとっては、目の前の「今の食」をなんとかすることが最優先であり、「未来の食」なんて想定できるものではないと思ったからです。

一方で、ここで取り上げている「未来の食」は、決してキラキラした夢物語のような未来の兆しを語っているものではなく、「社会課題の解決」が根っこにあります。なぜなら、「未来の食」は、今、そして、今後起こりうる社会課題を抜きにして考えることはできないからです。

世界中が未知なるウイルスと戦っている「今」の最大の社会課題は、まさにこのコロナによって起こっているさまざまな事象ですが、少し長い目で見ると、ちょっと先にも実にたくさんの社会課題があり、そしてそれらもまた深刻です。いったんはお蔵入りも考えたこの連載ですが、そう考えると、もしかするとこれからの皆さんにとって何かしらの一助になる可能性もあるのではと思い直し、スタートすることにしました。

本連載は、目の前に立ちはだかっている大きな「コロナ」という壁を越えた「その先」にイメージをはせていただきながらお読みいただけると幸いです。

「未来の食」は、ポジティブ?ネガティブ?

ところで、「未来の食」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか?

食材はオートメーションの無人工場で栽培された野菜や細胞を培養して作られた肉や魚。毎日の献立はAIが考え、調理はロボットがしてくれる。遠く離れた家族ともVR(バーチャルリアリティー)で一緒に囲むことができる…。そんな食卓でしょうか。

いやいや、一粒で十分な栄養素が取れるような完全栄養食が主流になって、食卓なんてものはなくなっているよ、という声も聞こえてきそうです。

イラスト:大嶌美緒(電通「食生活ラボ」)
イラスト:大嶌美緒(電通「食生活ラボ」)

え?そんなのとっくに始まっていて、未来でもなんでもないよって?

では、質問を変えましょう。

「未来の食」は、あなたにとって明るくポジティブなものですか?
それとも、できればあまり考えたくないようなネガティブなものでしょうか。

「未来の食」、それは社会課題のソリューションであり、ビジネスチャンスである

前述の通り、「食の未来」は、今、そして、今後起こりうる社会課題を抜きにして考えることはできません。人口・世帯の減少、高齢化、働く女性の増加、単身世帯の増加などによって、私たちの食が大きく変化していくことは言うまでもないでしょう。世界に目を向けてみると、爆発的な人口増加や温暖化による食糧不足は必至です。食料の大半を輸入している日本にとっては、決して他人事ではありません。

社会課題なんていうと、なんだか小難しい感じがするかもしれません。でも、「食」は人間の三大欲求のひとつであり、生きるためだけでなく楽しみにもなり得るもの。日々の生活の中で食べることが一番の楽しみ!という食いしん坊な私にとっては、将来それが損なわれてしまうかもしれない…なんて、考えるだけで居ても立っても居られません。

だからこそ、来る社会の課題解決を目指し、より豊かなものにしていくことこそが、「未来の食」に求められていることだと私は考えます。そしてそこには、当然ビジネスチャンスもあるはずです。

もちろん、それは一筋縄ではいかないことも確かでしょう。これまでの延長線上で、従来通りのことをしているだけではおそらくうまくいきません。2015年に国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)や経団連のSociety 5.0でもうたわれている通り、そこには、これまでになかったアイデアやイノベーションが必要です。

そのために大事なのが、発想の転換、未知のものへのチャレンジ、テクノロジーを駆使すること。

食のイノベーションを起こすためのテクノロジー、いわゆるフードテックの市場はここ数年急成長しています。それもそのはず、これからの社会課題解決のためには、それが不可欠だからです。

例えば、担い手の減少・高齢化が進む農林水産業においては、作業負荷を下げるためのロボットや効率化を図るためのITの導入がますます求められるでしょう。共働きや一人暮らし世帯がメジャーになれば、調理の担い手が変わるだけでなく、調理そのものがテクノロジーに頼る方向へシフトすることは想像に難くありません。調理器具として一家に一台3Dフードプリンター、なんて時代もそう遠くない未来かもしれませんね。今注目されている代替肉も、CO2の削減、ひいては地球温暖化対策のソリューションのひとつです。

イラスト:大嶌美緒(電通「食生活ラボ」)

イラスト:大嶌美緒(電通「食生活ラボ」)

「未来の食」は「未知の食」。未来を明るいものにするためにも、まずは「知る」ことから。

では、そういった兆しが見え始めている「未来の食」に対して、世の中の人はどう感じているのでしょうか。

2018年11月に実施した「食生活ラボ調査※」によると、期待感よりもまだまだ抵抗感の方が強く、ネガティブに捉えている傾向がうかがえます。

食生活ラボ調査

例えば、3Dフードプリンターによる食事に対しては、半数近くの人が「食文化が壊れそう」「気持ちが上がらない」「倫理的によくなさそう」といった理由で抵抗感を感じています。人間は未知のものに恐怖心を覚えるので、ある意味では当たり前の結果といえるかもしれません。

「未来の食」を明るいものにしていくためには、行政も、企業も、生活者も、関わる全ての人が意識を持って取り組んでいくことが望ましいといえるでしょう。でも、その実態を知らないままでは前に進めません。

未知へのチャレンジは、まず「知る」ことから!
ということで、本連載では、電通「食生活ラボ」の未来食プロジェクトのメンバーが、今見え始めている食の未来の兆しを自らが体験し、レポートします。

次回、第1回のテーマは、「昆虫食」。
世界的な食糧難、特にたんぱく質不足が懸念される中で、貴重なたんぱく源食材として注目される昆虫ですが、本当に未来の食の救世主になり得るのか!?
食ラボの加藤研究員が体当たりでレポートします。お楽しみに。

第6回「食生活ラボ調査」
調査方法 インターネット調査
調査期間 2018年11月16日(金)~18日(日)
調査エリア 全国47都道府県
対象者 15~79歳
サンプルサイズ 1200人
調査期間 株式会社ビデオリサーチ

 

ビデオリサーチ調査 「コロナ禍で、生活者が消費している“モノ”と“コト”」は

ビデオリサーチは5月13日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生活者の状況について、回答専用タブレットを用いたインターネット調査(ACR/ex調査)の結果を発表した。
4月は緊急事態宣言や外出自粛要請などで、生活に多大な影響を及ぼしたことから、社会的混乱や不安が生活者にどんな影響があったのか、生活意識・行動やメディアとの関わりについて紹介している。
(グラフ・表=ビデオリサーチ提供)

*以下の内容は、12‐69歳データ(全7地区)を中心に、一部70‐74歳データ(2地区)を掲載。ACR/ex調査の概要詳細はレポート参照。
 

◇新型コロナウイルス観点での情報接触は“テレビ”が大黒柱
 <メディアの位置づけ・メディアへの態度>

・メディアの位置づけでは“積極的に収集する”“わかりやすい”“信頼できる”におい て、“テレビ”が最 も高い。

・情報に対する意識でも“テレビ”のスコアが最も高く、“最新情報を入手(73%)”  “概要理解(70%)”“理解を深める(61%)”においてはインターネット・ニュースよ り約20ポイント上回っている。

◇「コロナ禍」不安は自分ゴト、まずは“感染しない”こと
 <不安度・不安なこと・欲しい情報>

・「不安である」と回答したのは98%。“ウィルス感染対策商品の生産体制    (64%)”が最も高い不安ではあるが、社会的混乱や要請による生活変化なども 5割以上と高く、複数の不安要素が混在している状況。

・知りたい情報では“対策商品の生産体制(60%)”が最も高い。他の上位項目にお いても感染に関わる事柄が多くなっている。また、上位項目では70才以上のス コアが12-69才を上回っており、シニアの感染に対する不安はより大きい。

 

◇「コロナ禍」で“動かない”生活になっている
 <生活の変化・増えた時間>

・「コロナ禍」により生活者の約8割に変化が起きており、“とても変わった”が約 5割と変化が大きい。

・“増えた”時間における最も高いメディア接触は“テレビのリアルタイム視聴    (71%)”であり、 上位項目には“テレビ”と“インターネット”を利用した視聴行 動が多く含まれている。


◇「コロナ禍」で“キャッシュレス決済”の利用が促進、“まとめ買い”は2人に1 人が経験アリ
 <買い物行動の増減・まとめ買い商品>

・“増えた”が“減った”を上回る利用については、全体的に“キャッシュレス決済  (32%)”の利用が増加。他、12-69才では“インターネットのショッピングモール (35%)”、70-74才では“ドラッグストア(37%)”の利用が高くなっている。

・“減った”利用では“デパートやスーパーの利用”“大型量販店・ディスカウントス トアの利用”が5割以上と突出して高い。
 また、利用行動の増減を全体的に見た場合“減った”スコアが“増えた”より高く なっており、消費は減少傾向と思われる。

・まとめ買い経験者は約5割。“調理済み冷凍食品・インスタント食品(26%)”が最 も高く、上位は食品と衛生商品。

同社は、「新型コロナウイルス感染症の拡大以降、“情報”は最も必要で重要なモノであることは言うまでもない。その中で、“テレビ”は最新の情報収集で最も利用され、増えた時間においても上位になっており私たちの生活に強く根付いていることがあらためてわかる。また、インターネットはテレビに次いで関与が高まっており、重要なメディアになっている状況もうかがえる。
社会全体の減速モードが続いているが、インターネット・ショッピングやキャッシュレス決済の利用増加など、生活に根付き始めているモノやコトも起きている。思考の転換や工夫が多方面で必要とされる生活の中で、より的確なコミュニケーションの促進が生活者の原動力に繋がると考える。
当社は、同調査を定期的に実施し、マーケティング業界および生活者の一助になるよう、今後も努めていく」としている。

ビデオリサーチ:
https://www.videor.co.jp/

 

検察庁法改正案が抗議の声を無視し強行採決へ! 安倍首相は会見で「黒川さんの人事はまだ決めてない」と国民を舐めきった嘘八百

 安倍首相が国民を虫けら同然に考えていることが、これではっきりとした。SNSを中心に反対の声が大きくあがっている検察庁法改正案について、きょう15日の衆院内閣委員会で強行採決することを、自民党幹部が明言したからだ。  新型コロナ対応に全力を傾けるべきときに、どさくさ紛れの...