JRA 日本ダービー(G1)は「NEWS・手越祐也」の“芸能活動休止サイン”で決まり!? 国歌独唱担当歌手からも強烈なヒントが?

 31日(日)に東京競馬場で開催される日本ダービー(G1)。このような国民的なレースでは、世相を示した「サイン」と結果がリンクすることがまれにある。そこで今回は今週世間を賑わせたニュースから、その「サイン」を読み取っていきたい。

 今週のトピックスとして挙げられるのは、NEWS・手越祐也の芸能活動休止ではないだろうか。手越は不要・不急の外出を控えるべきとされていた緊急事態宣言期間中にもかかわらず、飲食店に出向き、さらに友人や女性たちと宴席をともにすることもあったという。所属するジャニーズ事務所は再三再四に渡って咎めたものの、手越は同様の行為を繰り返したといい、このことを重く見た事務所は彼の芸能活動休止を発表した。

 今回の一件からも分かる通り、手越といえば、“ジャニーズの夜の帝王”と呼ばれるほどの遊び人。流した浮名は数知れず。これまでもAKB48や、その系列グループメンバーとも“火遊び”を繰り返してきた。そのため、4枠8番に入った馬は押さえた方がいいかもしれない。またベタ中のベタだが、手越の誕生日も忘れてはいけない。彼は11月11日生まれ。これは1枠1番、もしくは6枠11番に入った馬が熱いということだろう。

 また手越は「NEWS」に所属。「NEWS」には“新しい情報”を「North」「East」「West」「South」の東西南北に向けて発信するという意味も込められている。今回のダービーでは、コントレイル、コルテジアら“ノース”ヒルズ生産馬がエントリー。これは本命視されているコントレイルの牡馬2冠馬誕生を後押ししているのか。それともコルテジアの激走を示しているのか……。

 そしてNEWSでの手越のイメージカラーは「8枠」ピンク。内枠が有利とはいわれるものの、18頭がフルゲートとなった1992年以降では、2018年にワグネリアンが勝利するなど4勝をあげている。おいそれと切るわけにはいかないが、今週は果たして。

 手越から目線を変えると、今年の日本ダービーでは平原綾香が国歌を独唱することが決定している。平原といえば、ホルスト作曲の『木星』に日本語詞をつけた『Jupiter』を代表曲に持つ歌手だ。今回は惑星を由来に持つ馬の出走はない。だが宇宙繋がりだと考えると、ゴールドシップ産駒のブラックホールが浮上する。札幌2歳S(G3)以来、勝ち星から遠ざかっているが、大舞台で輝くことができるだろうか?

 競馬の常識から逸脱するのがサイン馬券の妙。頭の片隅に入れておくと、いいことが起こるかも!?

甘デジよりも「アマかった」!? パチンコ史に刻まれる「激レア」作の思い出

 パチスロ、パチスロ、パチスロ、パチンコ、パチスロ、合体。パチスロの中にパチンコが一人入っちゃってるぞ。これはいったいどうなっちゃうんだ? パロット~ !

 パチンコがコリントゲームに着想を得たように、ドラム機はたぶんスロットマシンを参考に開発されたのであろうことを考えるのであれば、ドラムマシンとパチスロは兄弟のような関係であり、いわんや「パロット」はドラム機の一形態と呼べるのである。

「パロットってなんやねん」というファンも多いであろう。最後に登場したのが2008年。いま25歳の若者なら当時中1である。若年層は、ほとんど見たことも触ったこともないのが実情だ。

「パロット」とは、パチンコ玉でプレイするパチスロだ。知らない人間が聞くと意味がわからないと思うが、見た目はパチスロの筐体で、従来メダル投入口やベットボタンがある平らになっている部分にパチンコの上皿のようなパチンコ玉投入口が搭載され、パチンコ玉を投入することでベットがかかりプレイが可能となる。

 1ベットは5玉で、通常のパチスロのように3枚がけ、要は15玉を使用して1ゲームを回せる。1玉は4円なので1メダル20円のパチスロと同じレート。

 この一連の手順は、上皿に玉を入れ、マックスベットを1回押すことでリール回転まで進むので、パチスロよりは簡単である。

 リールが回転すればストップボタンで3つのリールを停止させ、役が揃えばそれに対応する玉が払い出されると、後の流れはパチスロと一緒となる。スペックはパチスロに準拠し、BIGやREGの確率に設定差が設けられ、ボーナスの連打によって出玉を増やしていくタイプが主流。

ただ、ジャグラーやハナハナのような、いわゆるノーマルタイプではなく、ボーナス当選後に50ゲームや100ゲームのリプレイタイムが搭載されたRT機が多かった。

 この「パロット」は5号機に規定されていたので、出玉性能は極力抑えられていたのである。

 ちなみに、歴史上、市場投入されたパロットは『CRP花月伝説』『CRPカリブの海賊』『ドラスロ』『パロット湘南爆走族』『パロット電車でGO!2』『パロットコードネームアスカ』『美ら花』『CRレディマーメイド7』の8機種のみ。

 当初から導入店舗がかなり限られていたのと、初パロット『CRP花月伝説』を実際打って大盛りの「これじゃない」感というか、「いや、パチスロ打ったらええやん」感が怒涛のごとく押し寄せたので、その後見向きもしなかったこともあって、ほとんどパロットに触れていないのだが、波の荒い甘デジよりはまったり遊べた。

 いうなれば「雀球」のような趣きで、いま思えば後学のために全機種実戦しておけばよかったと後悔もしているし、このご時世にあえてパロットを打ってみたい気にもさせられるのである。

 しかし、このパロットの普及を志していた「日本新遊技機開発工業会」なる業界団体も同年に解散しているという。

 となると、「パロット」復活は夢のように感じるが、じつは2018年に6号機基準のパロット『SパロットブルーハワイKD』が検定を通過しているなど、水面下で活動しているようなのである。

 パロットを再びホールで打てる日も近いかもしれない。

(文=大森町男)

JRA日本ダービー(G1)暴れん坊の血が騒ぐ!? オークスの結果で「急浮上」ブラックホールが有力馬を飲み込む波乱を起こすか

 今週末はいよいよ競馬の祭典・日本ダービー(G1)を迎える。

 24日に東京競馬場で行われたオークス(G1)は1番人気デアリングタクトが優勝し、無敗の2冠馬となり、この勝利でエピファネイア産駒は桜花賞(G1)に続いてG1・2勝目をあげた。

 また10日に行われたNHKマイルC(G1)は9番人気ラウダシオンが重賞初勝利をG1で飾る波乱の結果となった。それと同時にリアルインパクト産駒としても、G1で初の重賞制覇となった。

 エピファネイア、リアルインパクトに共通する点は、2019年に2歳馬がデビューした新種牡馬という点だ。新種牡馬による覇権争いはキズナ産駒が重賞5勝を挙げて1歩リードしていたが、春のG1シーズン開幕とともにエピファネイア、リアルインパクトが大舞台で巻き返しを図り、甲乙つけ難い状況になっている。

 だが、忘れてはいけない新種牡馬がもう1頭いる。現役時代にG1・6勝を挙げたゴールドシップだ。これまで産駒による重賞制覇は1勝にとどまっている。だが、今週の日本ダービーに唯一の重賞勝ち馬ブラックホール(牡3歳、美浦・相沢郁厩舎)を送り込み、起死回生の一発を狙う。

 昨年の札幌2歳S(G3)の勝ち馬であるブラックホール。皐月賞(G1)では最後方からの競馬で、大外を回して追い込むも9着に敗れた。だが、上がり3ハロン35秒7は3着ガロアクリークと並んで3位タイの記録。立ち回り次第では、上位入線も十分にありえたと感じられる走りだった。また弥生賞(G2)では4着に敗れたが、青葉賞(G2)勝ち馬オーソリティにアタマ差まで迫っている。

『netkeiba.com』の日本ダービー予想オッズでは18番人気とかなり低評価だが、実績馬とそこまで大差はないはずだ。

 なによりブラックホールが日本ダービーで激走を予感させるのは、オークスで同じくゴールドシップ産駒のウインマイティーが3着入ったことが大きく影響している。

「ウインマイティーは稍重の忘れな草賞(L)を勝ってオークスへとコマを進めました。そのため、陣営はオークスでも馬場が渋ることを望んでいました。しかし、良馬場での開催となったにもかかわらず見事に3着に粘り込みました。

 和田竜二騎手の好騎乗もありましたが、ゴールドシップ産駒が東京の高速馬場に対応できたという非常に価値のある内容でした。ウインマイティーに続いて、ダービーでブラックホールが風穴を空けてもおかしくないでしょう。

 近2走は追い込みに徹しているブラックホールですが、札幌2歳Sでは中団からの競馬で勝利しています。スタートが下手なわけではないので積極策に出れば、人気馬を出し抜くこともありえますね」(競馬記者)

 父ゴールドシップは日本ダービーで5着、13年と15年に出走したジャパンC(G1)はともに2番人気だったが15着と10着に大敗しており、東京2400mという条件を苦手としていた。だが、産駒のウインマイティーの好走は“いい意味”で期待を裏切るものだ。

 現役時代はファンを幾度となく驚かせてきたゴールドシップ。競馬の祭典で父の血が騒いだブラックホールが激走しても、そこまで驚くべき内容ではないのかもしれない。

株式時価総額国内2位、利益率50%のキーエンスとは何者?無敵の“現金リッチ”経営

 株式時価総額(株価×発行済み株式数)は企業の価値を評価する指標である。東京株式市場での5月15日(5月第3週)終値での時価総額ランキングは次の通りだ。

・1位:トヨタ自動車 20兆3904億円

・2位:NTTドコモ 9兆8570億円

・3位:ソフトバンクグループ(G) 9兆5588億円

・4位:キーエンス 9兆4534億円

 トヨタは別格としても、ドコモ、ソフトバンクG、キーエンスが2位争いを繰り広げている。キーエンスは一般にはなじみがないが、省力化の先兵となるファクトリーオートメーション(FA)機器向けのセンサーや研究開発に使う計測器などのメーカーだ。

 キーエンスの抜群の財務力がプロの投資家から高く評価されている。2020年3月期の連結決算は売上高が前期比6%減の5518億円、営業利益は13%減の2776億円、純利益が12%減の1981億円だった。決算期変更の影響を考慮すると実質的に最終減益となるのは10年ぶりのことだ。

 米中貿易戦争の影響で、世界の主要地域で企業の設備投資の意欲が減退した。20年1月以降は中国を中心に新型コロナウイルス感染拡大による工場稼働率の低下が響いた。高収益会社として知られるキーエンスでさえ、外部環境の激変の影響を受けた。

 21年3月期の通期予想は公表していない。4月27日時点での市場予想平均(QUICKコンセンサス)は、売上高が7%増の5902億円、営業利益が11%増の3070億円と増収増益を見込んでいる。配当は年200円とする方針だ。19年11月に1株を2株に株式分割しており、実質的に100円の増配となる。

 今後は新型コロナの感染防止のために生産現場で密閉・密集・密接の「3密」を避ける動きが広がる。人手を介さない自動化につながるセンサーの需要増が見込めると、アナリストは分析している。新型コロナウイルスの影響が広がる20年3月期でも、キーエンスの売上高営業利益率は50.3%と高収益体質を維持した。3月末の現金・預金と短期有価証券の合計は9441億円にのぼる。自己資本比率は実に95.8%に達する。

 コロナ禍のような非常事態で、最後に頼りになるのはキャッシュ(現金)である。「キャッシュが王様」という古くて新しい教えが繰り返されるようになった。キーエンスは無借金。手元資金(現金・預金・短期有価証券)は年間売上高の1.7倍だ。コロナに抗する耐久力で抜きんでている。

 創業者である滝崎武光取締役名誉会長がキーエンスを耐久力のある高収益企業に育て上げた。倒産を2度経験した滝崎氏は、リスクを抑えるため生産設備を持たず、代理店を介さない直取引という事業モデルを貫徹した。

 米経済誌「フォーブス」の2020年版の日本人の長者番付によると、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が保有資産額2兆3870億円で2年連続の1位。2位はソフトバンクGの孫正義会長兼社長の2兆1940億円。3位がキーエンスの滝崎名誉会長の2兆1190億円だった。

 5月20日の東京株式市場。キーエンスの株価が一時、前日比1220円(3.0%)高の4万870円まで上昇、上場来高値を更新した。21日も高かった。同日、内閣府が発表した3月の機械受注統計を受けて、「設備投資の落ち込みは想定ほど厳しくない」との見方が広がったためだ。FAセンサーの大手、キーエンスが真っ先に買われた。時価総額は9兆9034億円。東証1部の時価総額ランキングでNTTドコモを抜き、トヨタ自動車に次ぐ第2位に浮上した。5月26日には一時、4万1940円(1090円高)まで買われ、21日につけた史上最高値をさらに更新した。

SMC

 SMCもキャッシュリッチ企業である。工場の自動化設備の空気圧制御機器で世界首位(国内シェア6割、世界シェア3割)のメーカーである。ドイツのフエスト社と世界2強を形成する。

 SMCの21年3月期の連結決算は、売上高が前期比14%減の4500億円、営業利益は37%減の920億円、純利益は35%減の720億円となる見通し。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で自動車メーカーの工場稼働率が低下しており、生産ラインで使う産業ロボット向け空気圧制御機器の需要が落ち込んでいる。 工作機械向けも前年に続き振るわない。売上高営業利益率は20.4%と20年3月期に比べて7.4ポイント低下する。

 それでも「強固な財務体質を生かし、苦境の時こそ次に備える」(太田昌宏取締役)と強気だ。今期の設備投資は400億円を予定。前年より4%増額する。年間配当は「未定」(前期は400円)だが、「どれだけ業績が悪くとも安定配当は続けたい」としている。20年3月期連結決算の売上高は前期比9%減の5260億円、営業利益は19%減の1462億円、純利益は15%減の1105億円だった。

 抜群の財務力が強気の裏付けとなっている。20年3月期の売上高営業利益率は27.8%、自己資本比率は89.9%だった。手元資金(現金・預金・短期有価証券)は5607億円。長短借入金は115億円。手元資金から有利子負債を引いた「ネットキャッシュ」は5492億円。年間売上高を上回る。SMCも、まごうことなきキャッシュリッチ企業なのである。SMCの株価は5月26日、5万5850円(1860円高)と急騰した。2017年1月につけた高値5万5830円を抜き、株価は天井圏に突入した。

コロナ耐久力の決め手はキャッシュ(現金)

 需要の急減や店舗の営業自粛といった非常事態に陥っても、企業は人件費や借入金の利息などの支払いを続けなければならない。資金繰りを確保するため、守りの財務に徹すること、これがリーマン・ショックの生きた教訓である。リーマン・ショック時には「黒字倒産」が続出した。

 リーマン後、日本の大企業はキャッシュを積み増してきた。どの程度の手元資金を持てば十分なのかは業種によって異なるが、現金・預金と短期の有価証券を合わせた金額が有利子負債を上回れば、実質無借金といえる。資金繰りの不安は小さくなる。

 コロナ禍に直面した企業の耐久力を判断する指標が手元資金の潤沢さなのだが、製品開発や設備投資を、まったくせずに豊富なキャッシュを持ち続けた場合、それは死に金(しにがね)となる。物言う株主の恰好のターゲットになる。株主還元を錦の御旗に、多額の増配や巨額の自社株買いを要求されるリスクも高まる。緊急事態に備えてため込んでいたキャッシュを吸い上げられてしまうことはままある。コロナ禍で増えるかもしれない。

(文=編集部)

レナウン倒産は対岸の火事ではない…オンワードや三陽商会、アパレルは軒並み苦境

 アパレル大手のレナウンが倒産した。同社は5月15日、東京地方裁判所より民事再生手続き開始決定および管理命令を受けたと発表した。負債総額は3月31日現在で138億7900万円。今後はスポンサーを探し、事業の維持・再生に取り組む考えだ。

 主要販路の百貨店の低迷で、レナウンは厳しい状況に置かれている。日本百貨店協会がまとめた2019年の全国百貨店売上高(全店ベース)は、前年比2.2%減の5兆7547億円で6年連続のマイナス。ピークとなる1991年の9兆7130億円からは4割も減った。「ZARA」などファストファッションの台頭や、米アマゾン・ドット・コムなど電子商取引(EC)の拡大などで顧客離れが進んだ。

 退潮著しいが、レナウンは百貨店売上高が占める割合(単体ベース)が55%(19年12月期)にもなる。百貨店に依存しているわけだが、その百貨店の退潮でレナウンの業績も低迷するようになった。

 19年12月期(決算期変更で10カ月の変則決算)は連結最終損益が67億円の赤字(前期は39億円の赤字)と、2期連続で最終赤字を計上。今期(20年12月期)も新型コロナウイルスの感染拡大で百貨店やショッピングセンターの休業で収益が上がらず、既存店売上高は3月が前年同月比42.5%減、4月が81.0%減と大きく落ち込んだ。

 こうした厳しい状況のなか、レナウンは取引先に対する売掛金の回収が滞る事態となった。親会社で中国繊維大手の山東如意科技集団の子会社に対する19年12月期に支払期日が到来する売掛金の回収が滞ったため、同期に貸倒引当金53億円を計上。資金が入らず、5月中旬以降の債務の支払いができなくなった。こうしたことから民事再生手続き開始の決定を受けて経営破綻するに至った。

 レナウンは、1902年に大阪で繊維卸売業を創業したのが始まりだ。「ダーバン」「アクアスキュータム」「アーノルドパーマータイムレス」などのブランドで知られる。23年に「栄光」などの意味を持つ「レナウン」を商標に採用。60年代にレナウンのテレビCMソング「ワンサカ娘」が流行し、脚光を浴びた。バブル景気に沸いた90年代初頭が最盛期で、世界最大の事業規模を誇った。しかし、バブルが崩壊し景気は低迷、90年代後半以降に「ユニクロ」などファストファッションが台頭するようになり、次第にレナウンの業績は下降するようになった。

中国・山東如意との提携も不発

 そうしたなか、2004年にレナウンとダーバンが経営統合し、事業のてこ入れを図ったが、再成長はできず業績は低迷したままだった。そこで頼ったのが中国の繊維会社大手、山東如意だ。10年に山東如意と資本業務提携を締結、約40億円の出資を受けた。13年には子会社となった。

 レナウンは11年、山東如意が持つ中国での販売・物流ネットワークなど経営資源を活用し、中国市場でレナウンブランドの商品の販売を始めた。しかし、展開ブランドの知名度の低さや山東如意との連携がうまくいかないなどで中国での展開は難航。結局、撤退に追い込まれた。

 近年は中国の景気減速や米中貿易摩擦で中国経済が厳しくなり、アパレル業界も苦境に立たされ、山東如意も厳しい状況に置かれている。山東如意はレナウンのほかにもイギリスの「アクアスキュータム」など海外ブランドを買収して規模を拡大したが、苦戦を強いられていたとみられる。

 こうしたさなかに、山東如意の子会社から売掛金の回収が滞る事態となった。山東如意が連帯債務者となっているが、債務保証が履行されなかった。そして追い討ちをかけるように新型コロナが直撃し、販売不振でこの面からの現金も入らなくなった。資金が枯渇に近づくなか、資金調達を試みるも実現せず、資金繰りに行き詰まった。

 レナウンは今後も店舗の営業は続ける。ただ、不採算店の整理や不採算ブランドの撤退が避けられないだろう。また経営破綻でブランド価値の毀損は免れず、スポンサー探しは難航しそうだ。

百貨店向けアパレルは軒並み苦境

 百貨店向けアパレルは、レナウン以外も厳しい。オンワードホールディングスは20年2月期の連結最終損益が521億円の赤字(前期が49億円の黒字)に転落した。特別退職金や店舗などの減損処理に伴う特別損失を計上したほか、繰り延べ税金資産の取り崩しで法人税等調整額を計上したことが響いた。同社は厳しい状況にあり、20年2月期に国内外で約700店を閉店したほか、21年2月期にも約700店規模を閉店する方針だ。21年2月期の連結業績予想は新型コロナの影響を合理的に算出することが困難なことから「未定」としている。

 三陽商会は20年2月期(14カ月の変則決算)の連結最終損益が26億円の赤字(前期は8億1900万円の赤字)だった。最終赤字は4期連続となる。さらに新型コロナが追い討ちをかけた。新型コロナの感染拡大を受けて臨時休業したことが響き、店頭売上高は3月が前年同月比44%減、4月が81%減と大幅減収が続いている。21年2月期の連結業績予想は新型コロナの終息時期に関して不確定要素が多いことから、未定としている。

 ワールドは21年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が60億円の赤字(前期は80億円の黒字)になる見通しだ。新型コロナで臨時休業したことが響いた。既存店売上高は3月が41.9%減、4月が84.5%減と大幅減が続いている。

 このように各社厳しい状況にあり、レナウンの倒産を対岸の火事とすることはできない。各社とも抜本的なてこ入れが必要だ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

『デジ単』重版出来記念!デジタル用語が分かりづらい理由を、1冊の本をつくりながら考えた

※書籍「『デジ単』デジタルマーケティングの単語帳 イメージでつかむ重要ワード365」(発行:翔泳社)の重版出来を記念して、 翔泳社の編集者・秦和宏さんに本書ができあがる裏側のお話をおまとめいただきました 。


「デジタルマーケティングの用語は分かりにくい!」

マーケティング・広告・ウェブ業界で仕事をしている方なら、誰もが感じたことがあるのではないでしょうか。

そんな悩みを解決するべく、1冊の書籍をつくりました。今回はそれを紹介しながら、デジタル用語が難解な原因と、その対策を探っていきたいと思います。

言葉を覚えるなら「単語帳」

紹介するのは『デジタルマーケティングの単語帳「デジ単」』という本です。英単語帳のデジタルマーケ版、と考えていただくと分かりやすいかと思います。

左側のページに単語とその意味が書いてあり、右側のページは単語に対応したイラスト図解になっています。イラストはすべて、「ポンタ」「ナナナ」「キメゾー」などの有名キャラクターを手がけた糸乘健太郎さん(電通デジタル)に描き下ろしていただきました。

デジ単

英単語帳も同じですが、単語帳の良さは「シンプル」「分かりやすい」「使える」といった点で、効率的・反復的な学習に向いています。後述しますが、パラパラめくっているだけでも、きっと仕事に役立つはずです。

新人もベテランも悩むデジタル時代の「言葉の壁」

この本は実は、まったく別の企画会議から生まれたものです。当初は「デジタル広告の教科書をつくりたい」と、著者の村山亮太さん(VOYAGE GROUP)や企画協力の高田了さん(電通デジタル)にオファーしていました。

その打ち合わせの際、「デジタル広告で分かりにくいのは、なんといっても単語だ」という話題になりました。

「単語は新しいものが次々出てくるし、アルファベット3文字の略語やカタカナの似たような言葉が多くて、今でも混乱する」

そんなご本人たちの苦労話から、「単語帳にまとめたら新人にもベテランにも便利だろう」という企画がぽんと浮かんできたのです。

このとき、「業界の中心で長く活躍しているこの二人が困っているなら、単語で困らない人なんてこの世にいないんじゃないか」と思ったのを覚えています。

デジタルマーケティング用語がやっかいな二つの原因

多くの人が抱える課題を解決するために、「どうすれば理解しやすい『単語帳』ができるか」ということを、内容面や、書籍表現の面で考えていきました。

デジタルマーケティング用語がやっかいな理由は、主に二つあると思います。

  1. 略語やカタカナ語ばかりで、パッと見てイメージがつかみにくい
  2. ただでさえ分かりにくいのに、相互に関係して絡み合っている

例えば、下の単語を見てください。

デジ単

もう「クローリング」はおなじみかもしれませんが、私は初めて聞いたとき、さっぱり意味が分かりませんでした。仕事の会話で何度か聞いているうちに、なんとなくイメージがつかめてきて、なんとなく自分でも使い始めるという調子で、おそらく多くの人が似たような経験をしているのではないでしょうか。

では、次のイラストを見てみてください。

デジ単

何をしているのか一目瞭然です。

イメージが頭に浮かぶか否かが理解度に与える影響というのは、書籍づくりをしていると身に染みて感じます。また、次々新しい言葉が出てくるデジタルマーケティングの世界では、目で見て「パッと」=「すぐ」理解することも重要です。一つ一つの単語を丁寧に咀嚼している時間は、ほとんどの人にはありません。

そしてもう一つやっかいなのが、それぞれの単語が絡み合っている点です。「CVとCVR」「KPIとKGI」などはまだ関係性が分かりやすいですが、さらに媒体用語やSEO用語、マーケティング理論などの違うステージにあるような言葉まで俯瞰して、つなげて理解するのは難しい。

デジタル化がマーケティングの世界にもたらした大きな変化として、マーケティング・オートメーションなどのツールで顧客行動を一連の流れに落とし込めるようになり、カスタマージャーニーといった考え方も広まりました。しかし、リード獲得から受注までの間が一つの部署で完結することはあまりないでしょう。

流れでいえば「マーケティング部門から営業部門へ」という順番ですが、そこにウェブ制作部門、広告部門、外注先、媒体が絡みます。そして、顧客の行動や態度変容などの考え方が一連の流れの根底にあります。

つまり、ある単語のイメージが浮かぶだけでなく、さらに「全体像」としてのイメージもとらえないと、自身の仕事への理解が深まらないということです。

デジ単

この図では、概念的なファネルから実務的なマーケティングツールまで、一つの視界に収められます。

著者の村山さんとイラストレーターの糸乘さんには、最後の最後まで、内容と表現を磨いていただきました(単語の掲載順や、イラストの色の付け方も)。その結果、絡み合ったデジタル用語が解きほぐされて、広い視野で見られるようにまとまったと感じています。

「言葉のひとり歩き」をさせない共通言語づくり

ビジネス現場の用語は、「なんとなく」理解しているケースが非常に多いと感じています。打ち合わせの場で繰り返し出てくる言葉の意味を文脈から想像して、同じような場面で自分でも使ってみる、という習得の仕方です。

言語の習得法としては実地的でまっとうですが、これでは少しずつ認識のズレが出てきてもおかしくありません。

しかも、これまでになかったようなコラボレーションや共創が会社や業界をまたいで実現する時代。最近はチャットによるコミュニケーションも増えてニュアンスが欠落しやすく、「なんとなく」では済まないシーンが増えてきているのではないでしょうか。

そこで、「デジ単」をプロジェクトメンバー全員で買って認識を揃えよう!…とまでは言いませんが、困ったときに参照できるものがあると、それをテコに「この場ではこの意味」という共通言語の形成ができます。「言葉」というコミュニケーションの土台にあるものだからこそ、さまざまな使い方ができる懐の深さがあると思っています。

このように、1冊の中に著者やイラストレーターのこだわりが詰まった本になっています。おかげさまで、発売1カ月で重版も決まりました。書店で見かけた方はパラパラとめくってみていただけると嬉しいです(電子書籍版もあります)。

【本書のポイント】
・デジタルマーケティングの頻出単語をシンプルに解説
・イラストを見るだけでもイメージがつかめる
・似た単語の意味の違いや、使い分け方もフォロー
・索引つきで単語や同義語を探しやすい
・英語表記もあるので、海外サイトを読むときや出張にも便利

一企業の悩みを 「社会課題」アプローチで解決する

あらゆる業界が大きく変化している時代。何が起こるか、先が見えない時代。
広告業界でも、新しい職種がいろいろ生まれています。

今回はその中から、電通のグループ内でも注目の職種「ビジネスプロデューサー」をご紹介。
顧客企業のビジネスをいかに豊かなものにしていくか。それぞれのやり方で、あの手この手で取り組んでいます。
どんな仕事をしているのか、この先どんな世界を目指していくのか、聞いてみました。

連載第2回は、萩原利幸さんを紹介します。


共存社会実現のために、マナー啓発から“自分ゴト化”を目指す

メディア部門で新聞社を11年半担当した後、ここ10年は営業担当、そしてビジネスプロデューサーとして、たばこメーカーを担当しています。

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たばこメーカーはテレビなどマスメディアで製品広告を出せないなど、業界で厳格な自主規準が設定されており、生活者とのコミュニケーションで工夫が必要とされます。その中でチャレンジしてきた取り組みは、他のカテゴリー企業のコミュニケーション活動にも生かしていけるのではないでしょうか。

大きなテーマとして「たばこを吸う人と吸わない人が共存し、心地よく暮らせる社会の実現」へ挑戦してきました。このような共存社会の実現により、愛煙家が気兼ねなくたばこを嗜め、たばこに対する愛着が維持されることを目指して。

実現へ向けたキーは、喫煙マナーや分煙の推進です。特に、喫煙マナーに関しては「吸う人の吸わない人への配慮」(迷惑をかけないこと)が大前提になります。

ポイントは、たばこを吸わない人にも喫煙マナーの取り組みを伝えること。喫煙者へのマナー啓発を推進する一方で、吸わない人にも喫煙者のマナー向上の様子を知ってもらうことで、吸わない人の喫煙者に対するイメージが上がり、理解も増します。

とはいえ、“たばこの”マナー啓発とうたえば吸わない人は関心を持ちません。そこで、さまざまなマナーを啓発するプロジェクトを立ち上げました。「社会課題」といえる規模のマナーに視点を高めることで、皆に自分ゴト化してもらえるように。

社会課題を軸とするアイデアの出口設計

まずは社団法人を設立し、多様なマナー課題と直面している企業・団体の賛同を募りました。そして、2016年9月、東京(日本)をより心地よい街にするために、日常や街の中にあるグッドマナーを取り上げるという趣旨で「Tokyo Good Manners Project」をローンチ。日本人のマナーは外国から高く評価されており、日本や東京のブランディングにもつながるはずだと。現在も活動を続けており、多くの企業がパートナーとして参画しています。

ある課題を一企業だけのものにせず、多くの人を巻き込む企画で課題解決の流れをつくった点は意義深かったと思います。社会課題を軸とする出口設計は新聞社担当の頃に培われたのかもしれません。

この経験を今後も生かしていきたいし、アイデアをクライアント企業とその場で話せる、すぐに返答できる「壁打ち相手」になりたいですね。「持ち帰ります」ではなく、その場でアイデアを出せるプロデューサーを目指したいです。

求む、失敗人財。「石の上に3年も待てない」時代の就活の形。

<目次>
これから「当たり前」になる価値観を表舞台に
ガクチカではなく、ガクシツを
いまの若者は「石の上に3年も待てない」
就「社」活動から本当の就「職」活動へ

 

これから「当たり前」になる価値観を表舞台に

「若者から未来をデザインする」をスローガンに掲げる電通若者研究部(電通ワカモン)は、若者を年齢や世代論で捉えるのではなく、「最初に新しくなる人」として定義しています。

日本のイノベーション能力の総合ランキングは、ここ数年間で低下しているという調査結果(内閣府 平成30年度年次経済財政報告)があります。UberやAirbnbのようなイノベーティブなサービスが、なぜ日本から生まれないのか?

その原因の一つとして、若者が社会にアクセスする機会が少ないことが考えられます。「社会人」という言葉が象徴するように、社会の「前」と「後」で若者(学生)と社会の間に断絶があるのではないでしょうか。

UberもAirbnbも、「モノをわざわざ所有しなくていい」といった、若者にとっては当たり前になりつつあった価値観をビジネスに転換したものでした。

まだ当たり前ではないけれど、これから当たり前になる。

そんな半歩先の未来を象徴する若者が、社会に働き掛ける機会をもっとつくることができたら、日本のイノベーション力向上にもつながるはず。

そこで、若者が失敗を恐れず挑戦できる社会の実現を目指し、電通ワカモンは、キャリア支援NPO法人エンカレッジと「失敗人財プロジェクト」を発足。皮切りとして、2020年1月、企業と学生が失敗談のみを語り合うキャリアイベント「失敗説明会」を開催しました。

イベントには、エントリーシートで事前に選考した約40人の「失敗人財」の学生と、日系大手企業から外資系企業、気鋭のスタートアップまで計7社が集まりました。

失敗説明会
「失敗説明会」に参加した企業は、サイバーエージェント、セイノーホールディングス、セールスフォース・ドットコム、TBM、電通、Voicy、三井物産(50音順)。

ガクチカではなく、ガクシツを

注目したのが、就職活動を中心に定番化した「ガクチカ」という言葉。

「ガクチカ」とは「学生時代に力を入れたこと」の略で、検索すると「ガクチカの書き方」「ガクチカの例文10選」といった結果が表示されます。

メイクや服装といった就活スタイルの「見た目」の同調圧力だけでなく、就職活動には実は「話す内容」にも同調圧力がある。表面的な美辞麗句や紋切り型の自己アピールに終始しがちです。

本イベントで学生に話してほしいのは、「ガクチカ」ではなく「ガクシツ」。すなわち「学生時代に失敗したこと」です。もちろん、失敗を正当化してほしいわけでも、自慢してほしいわけでもありません。その時、世の中をどう捉え、どう変えたかったのか。そんな意志ある挑戦をしたけれど失敗してしまった人を「失敗人財」と名付けることで、失敗を恐れずに挑戦する若者を増やすことを目指しました。

失敗説明会2




 





 

いまの若者は「石の上に3年も待てない」

電通ワカモンが独自に全国の大学生に調査した結果、就職した企業で仕事にやりがいを感じられなかったら、8割以上の学生が3年以内に退職すると考えていることが明らかになりました。

サークルアップ調査
出典:サークルアップ調査、調査時期:2020年2月16~20日、調査対象:大学生サークル専用アプリ「サークルアップ」に登録する大学1~4年生186名


いまの若者は「石の上に3年も待てない」。

だからこそ、就職活動において、企業が学生を選ぶ構図ではなく、企業も学生も対等な立場で、合う/合わないを判断できる場をつくっていく必要があります。

失敗説明会では、「何を・どう取り組んでいるのか」というWhatでもHowでもなく、失敗談を語り合うことで、その根底にある「なぜ挑戦したのか」のWhyの部分で企業と学生がマッチするきっかけをつくることも目指しました。

オンライン面談も浸透しつつある中で、オフライン面談のようには相手の熱量や人間性を測りきるのが難しいからこそ、企業は一層、画面の目の前の学生のWhyの部分を掘り下げていくことが重要です。

就「社」活動から本当の就「職」活動へ

新型コロナウイルスの影響で在宅ワークもあっという間に浸透し、「働く」にまつわる常識や当たり前が急速に変化している昨今。正解のないこれからの働き方は、ただ選ぶのではなく、一人一人が発明する時代へ向かっていくと考えられます。

これまでの就職活動が、企業に入社することを目指す「就社」活動だとすると、これからは一人一人の意志や問いに根差した職に就く本当の「就職」活動が加速する。企業に勤めない働き方も多様化していき、「就職とは企業に入ること」という考え方は古いものへ。自分の職能を定めてフリーランスの選択肢を選んだり、新卒入社のタイミングから一社で働くのではなく、複数社でパラレルワークするといった「就職」も増えていくでしょう。

電通ワカモンでは、合同説明会やインターンシップ、採用コミュニケーション開発など、就職活動のリデザインを通して、若者と社会の新しい関係性づくりに挑戦しています。

ワカモン
高校生・大学生を中心に10〜20代の若者の実態にとことん迫り、若者と社会がよりよい関係性を築けるようなヒントを探るプランニング&クリエーティブユニット。
https://dentsu-wakamon.com/

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うまくいっているときに、変える勇気。 CARTA宇佐美会長に聞くインターネットビジネスの心得

国内電通グループのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させると期待されているのが、2019年に誕生した新会社CARTA HOLDINGS(以下、CARTA)です。同社の会長には、広告事業からメディア運営まで幅広く手掛けるVOYAGE GROUP創業者・CEOの宇佐美進典氏が就任しました。

本連載では、新たに国内電通グループに加わったCARTAってどんな会社?宇佐美さんってどんな人?という疑問に答えるべく、宇佐美氏にインタビュー。文字通り日本のインターネット史と共に会社を成長させてきた宇佐美氏のビジネス思考に迫っていきます。

学生結婚から就職、転職。
2度にわたる起業。
サイバーエージェントの取締役就任とMBO。
そしてマザーズ、東証1部への上場。

社名(VOYAGE=航海)をはじめ、グループの営みを海洋冒険に例える希代の起業家・宇佐美氏は、デジタル系ベンチャーの “船長”としてどんな舵取りをしてきたのでしょうか。

CARTA HOLDINGS 宇佐美進典会長
CARTA HOLDINGS 宇佐美進典会長

人生に敷かれた「レール」を降りて見えた光景

――宇佐美会長のこれまでの歩みを時系列で伺っていきます。まず出発点として学生時代のお話から聞きたいのですが、大学時代に持っていた将来へのビジョンはどんなものでしたか?

宇佐美:1992年に大学入学したのですが、まだバブルの残り香がある時代で、入学時には「これから楽しい大学生活が送れる」としか考えていませんでしたね。高校時代も、どちらかというと青春を謳歌する系の、リア充的な高校生活を送っていた気がします(笑)。どこにでもいる普通の学生で、将来の仕事のイメージは正直持っていませんでした。

でも、大学1年生の時に学生結婚をし、子どもができたことがきっかけで、自分の人生をどういうふうに生きていくのか考えるようになりました。それまでなんとなく思っていた人生とは、「大学に入り、良い会社に入って、仕事を頑張る」という、敷かれたレールの上をいかにまっすぐ走っていくかというものでした。それが、学生結婚を経て、目の前にレールがなくなった気がして、自分で進む道を切り開いていくしかないと決心したんです。

早稲田大学在学中に学生結婚し、第1子が誕生。子育てと並行して学生生活を行ったことをきっかけに、レールの敷かれた人生ではなく自ら切り開いていく人生を考え始めた。
早稲田大学在学中に学生結婚し、第1子が誕生。子育てと並行して学生生活を行ったことをきっかけに、レールの敷かれた人生ではなく自ら切り開いていく人生を考え始めた。

――1年生だと、同級生はまだ将来のことを考えるような時期ではないかもしれません。そんな中で宇佐美さんは、どう生きていくかということを真剣に考えることになった。

宇佐美:はい。そこからはアルバイトや子育てをしながらの大学生活です。子どもを自転車で保育園に送ってから授業に出ていました。そして90年代前半というのは日本のインターネットの黎明期で、大学にコンピュータールームがあってインターネットができたんです。私の周りでも、ウェブ制作事業を学生ベンチャーとして立ち上げるような人が出てきました。私はその時点では、興味はありつつも、今の自分ではできないなと思っていましたが。

―――ただ、起業という道があるということは、頭には入ったということですね。

宇佐美:はい。まだ漠然とですが、自分で会社をつくって生きていく道を考えるようになり、会計の勉強をしたりしていました。それで就職活動の際に、浅はかですけど、コンサルティング会社に行けば起業に結びつくような、経営に近い経験ができると考え、トーマツ コンサルティング(現デロイト トーマツ コンサルティング)に入社しました。

――トーマツに入社されて、「ちゃんとした企業に就職できた、これでもうレールに戻れた」みたいなことは考えなかったのでしょうか。

宇佐美:「戻れた」というよりも、「戻ってしまった」という感じですね。入社してしばらくたったあるとき「レールから外れて、ジャングルの中で生きていく道を選んだはずなのに、気づいたらレールの上にいる」という自分に気づいて「おかしい」と(笑)。そこで、今度ははっきりと自分の意志でレールから降りて、道なき道に入っていこうと思い、転職を決めました。トーマツには結局2年間勤めました。

――2年で転職することになり、周囲の反応は?

宇佐美:転職先はまだ3~4年目のベンチャーだったので、元の会社の人たちからは止められました。でも妻は「いいんじゃないの、あなたがやりたければ」と。学生結婚にしても、転職にしてもそうなのですが、道なき道に入るのってすごく怖いじゃないですか?何があるか分からないし。でも、思い切ってジャングルに入ってみると、意外と水もあるし、食べ物も取れるんです。外から見るほどのリスクはないし、得られるものがたくさんあるなというのが実感です。

――転職先は、コンサルの経験を生かせるような仕事だったのでしょうか。

宇佐美:いえ、業務的には全く関係ありません(笑)。トーマツでは大手金融機関の業務改善プロジェクトやシステム化プロジェクトにコンサルタントとして関わっていたのですが、転職先は小さなソフトウエア会社で、そこに在籍していた友人から「うちに来てマーケティング関係のことをやってほしい」と言われていたんです。

今でいうAdobe Acrobatみたいなソフトウェアを開発している会社で、入社初日に社長から「わが社はこういうソフトで世の中を変えたいんだ。このソフトではあんなこともこんなこともできる」と熱く語られました。私が「それで、このソフトは誰が使うんですか?」と聞いたら、「それを考えるのは君の仕事だ」と。完全にプロダクトアウトの思考で「誰に、どう売るのか」が欠けたまま走っていたんですね。

結局その会社には1年いたのですが、そのソフトウェアのコア機能の一つが海外企業からライセンスを受けていて、その交渉のために、ラスベガスで行われるコムデックスという展示会に行ったのがその後の起業のきっかけになりました。コムデックスでは当時のアメリカのインターネット企業がいくつも出展していて、「アメリカではインターネットは来ているぞ」と目の当たりにしたんです。

最初の起業は失敗。「熱量のあるチーム」でなければビジネスは成功しないと知った

CARTA HOLDINGS 宇佐美進典会長

――アメリカが先駆けて、インターネットビジネスを生み始めたタイミングだったのですね。

宇佐美:一方で、自社のソフトウエアは売れなかったのですが、技術的にはXMLというマークアップ言語を使っていたので、XMLをもう少しインターネットのビジネス寄りに活用できないか考えるようになりました。それを最初の起業につなげたのですが、XMLを使った求人情報検索エンジンのビジネスです。

――90年代当時と今では起業家を取り巻く環境は全く違うと思いますが、起業時の目標はどんなものでしたか。

宇佐美:実は会社を将来的にどうするかは考えていませんでしたね。最初に起業した1998年頃は、IPOという言葉もまだ一般的でなかったですし。また、当時はいわゆる独立系のベンチャーキャピタルがほぼなくて、金融系しかいない状況で、実績のない状態では資金調達が難しかったんです。そこで、思い切って国に助成金を申請しました。求人情報検索エンジンの事業化に向けて、ベンチャー経営者何人かに声をかけてコンソーシアムをつくり、「こういう新しい技術分野におけるサービスをつくります」と申請したところ、1億円くらいの助成金が下りました。

しかしそこからが大変でした。もともとコンソーシアムという形を取っていたので、構成する各企業がそれぞれ「ここはうちが得意だから担当します」という感じで、なんとなくみんなで一緒にやろうという空気だったんです。それが、実際に1億円という助成金が出てくると、「うちの会社でここまでやるからいくら欲しい」とか「この権利はうちが持っているから」みたいなことになってきて。ビジネスを成功させるためにどうすればいいかではなく、目の前のお金と権利をそれぞれが取り合うようになってしまいました。検索エンジンの開発自体は完成までこぎつけたものの、サービスをリリースすることはありませんでした。

――最初の起業では、サービスの事業化までは至らなかったと。

宇佐美:物だけつくっておしまいみたいな。この経験があったので、次に自分が起業するときは、みんなで一つのゴールに向かって、どうすればそのゴールが実現するのかをみんなが考え、熱狂の中でビジネスをつくっていく、そんな熱量の高い「チーム」をつくろうと考えるようになりました。その後、友人と一緒に立ち上げることになった会社がアクシブドットコム、後のVOYAGE GROUPです。

前列中央が宇佐美氏(当時)。インターネットが黎明期だった1990年代に起業家人生をスタートした。のちに東証1部上場を成し遂げることになるが、それはまだ先のお話。
前列中央が宇佐美氏(当時)。インターネットが黎明期だった1990年代に起業家人生をスタートした。のちに東証1部上場を成し遂げることになるが、それはまだ先のお話。

――最初の起業で、一つのゴールをみんなで目指すチームにできなかったことが、宇佐美さんのその後の経営に反映されているのですね。2度目の起業時に意識したことはありますか。

宇佐美:当たり前ですが、一人でビジネスはできないので、自分にない経験や能力を持っている人たちとチームをつくること。また、インターネットのマーケティング領域にフォーカスをしてビジネスをしていくこと。そして今度は明確な目標として上場を目指そうということを、最初にはっきりと決めましたね。

「うまくいっているのに、なんで変えるんですか?」

CARTA HOLDINGS 宇佐美進典会長

――多くのスタートアップは、何か一つのテクノロジーやアイデアを軸に、1事業に集中するケースが多いと思います。宇佐美さんの場合、これから伸びる領域を見つけて、そこに旗を立てるような起業の仕方だったのでしょうか。

宇佐美:そうですね。正直、いまだにそうですが、事業の中身にはそこまでこだわりはないんです。ただ、やるからには「すごいこと」をやりたいじゃないですか。世界を変えるようなすごいことをやりたくて、その上で興味のある分野や伸びそうな分野というのを調べていきます。そして当時は「インターネットを使ったマーケティング領域がこれから伸びる」と。

それが1999年だったのですが、これからインターネットを使う人が増えて、物の売り買いが発生していくとしたら…例えばアメリカの開拓時代に、ゴールドラッシュで人がどんどん集まってきたところで、鉱山労働者にジーンズなどを売って成功したリーバイスみたいなイメージですね。インターネットが現代のゴールドラッシュだとして、人が集まってきたとき、何がこの時代のリーバイスなんだろうと考えたら、マーケティングだろうという結論に至りました。

――確かに、今のVOYAGE GROUPの事業も広くマーケティング関連が中心になっています。最初に立ち上げられたのは懸賞サイト「MyID」ですね。懸賞サイトをやろうと決めた経緯は?

宇佐美:実は、懸賞サイトをやろうと思ってつくったわけではないんです。そもそもやろうとしていたのは、「一つのIDであらゆるサービスを使える」というアイデア。今、FacebookやGoogleのIDを持っていれば、いろんな他社のサービスにもサインインして使えるじゃないですか。それと同じように、「一つのIDをつくると、それでいろんな企業のサービスが使えるようになったら、いちいちたくさんのアカウントをつくって管理せずに済むし、便利じゃないか」というコンセプトでした。だからサービス名も「MyID」なんです。

でも、「御社のサービスをMyIDでも使えるようにしてください」とお願いしても、相手の会社にしてみれば使う必要性がありませんよね。今でいうAPIの考え方もなかったし。これが仮にMyIDユーザーが100万人いれば、先方にも使うメリットが出てきますから、まずMyID単体で魅力のあるものにしなきゃいけない。

そこで、MyIDに付随するコンテンツとして、懸賞サイトを企画しました。そこに行けばお得なインターネットキャンペーン情報や懸賞情報があるよというものです。それでユーザーが増えれば、将来的には他社サービスに連携できる便利なものとして広げていけるだろうと。

――ちなみにこの時代のインターネットのサービスは、どういうものが主流だったのでしょうか。まだ音声や動画のようなリッチなコンテンツは乗せられなかったと思います。

宇佐美:テキストサイトなんかが流行していましたが、当時は普通の人がパソコンを買って何を最初にやるかというと、あまりやることがなかったんです(笑)。そんな中で懸賞サイトだったら、ユーザーがURLを貼って「応募したらデジカメもらえるらしいぞ」みたいに他の人に分かりやすく伝えられるので、比較的使われやすいだろうと。

――なるほど。その時代からインターネット関連産業は急速に進化していきますが、宇佐美さんは常に時代に先んじて、積極的に事業のピボットをしたり、幅広く新規事業の立ち上げを行ってきたのがユニークな点だと思います。多くのスタートアップが一つの事業にこだわる中、それが可能だったのはなぜですか? 

宇佐美:理由は先ほども話しましたが、「やるからには世界を変えるようなすごいことをやりたい」という思いがまず中心にあって、これを逆に言うと、その事業で世の中を良い方向に変えられるという実感を持てるのであれば、事業の中身は「なんでもいい」わけです。

そしてテクノロジーの最先端だったインターネットは、まさに世の中を変えるようなことが次々と起こりやすい領域でした。日本でもアメリカでも、世の中を変えるようなサービスをつくり、会社を大きくしていく人たちが同世代にたくさんいたことが、いつも刺激になっていましたね。

――その後、会社が成長していく中で、2001年にサイバーエージェントの連結子会社になり、宇佐美さんがサイバーエージェントの取締役に就任することになりました。この経緯は?

宇佐美:より良いサービスを実現するために、他社と組むことは常に模索していたんです。大手ポータルサイトをはじめ、複数の会社から「一緒にならないか」というお声がけを頂いて検討していたのですが、どれも最終的には完全吸収というスキームだったので、チームで話し合って、すべてお断りしたんです。それらの会社のいちメディアとして自分たちが取り込まれる形だったので。

一方で、懸賞サイトの収益源は、やはり広告なので、ネット事業系の広告会社としてのサイバーエージェントは取引先の一つだったのですが、実はサイバーエージェントとは企業文化的に近いものがあったんです。特に強く感じていたのが、「広告」というより「インターネット」が好きな人がたくさんいる会社だということ。「インターネットで新しい産業をつくっていくんだ」という、根っこの部分にある志に共感しました。

われわれからすると、自分たちの手でサービスを大きくしていきたいという思いを実現できて、かつお互いの事業の連携も強く、さらに価値観も合う会社は、サイバーエージェントであろうと。

――とはいえ、子会社化からしばらくはサイバーエージェント本体に宇佐美さんが直接関わることはなく、MyIDの事業に注力し続けていたんですよね。

宇佐美:はい。でも2002年ごろから競合の懸賞サイトもたくさん出てきて、広告枠をいかに安く売るかという競争が始まったんですね。その様子を見ていて、私としては「懸賞サイトはそろそろ潮時だろう」と感じたんです。2004年にサイトのコンセプトも名前もガラッと変えて、ショッピングでポイントが貯まる価格比較サイト「ECナビ」になりました。翌年、社名もECナビに変更しています。

当時は競合が出てきたとはいえ、懸賞サイトの中ではトップを争う売り上げがあったので、社内からは「成功しているのに、なんで変えるんですか?」という反対の声もありました。しかし、私自身ビジネスを続ける中で、「インターネット業界のビジネスサイクルは3~4年だ」と実感していました。ドッグイヤーというように、普通のビジネスと比べてインターネットビジネスは10倍くらいのスピード感で進むので、成長も速いけど、下がるときは急激に下がります。

――人間の心理として、どうしても変化を好まないというのはあると思います。宇佐美さんはその点、常に早い段階で「次の手」を打ち続けてきましたよね。

宇佐美:一つの山しか見えていないと「この山がもっとずっと続くんじゃないか」と考えてしまいがちなんですよね。そこで社員たちには「上がり調子の時に次の一手を考えてそっちに舵を切っていかないと、会社に未来はない。下がってから次の一手を考えるのはつらいよ」と徹底的に説明し、納得してもらったんです。この姿勢があったので、社員たちもどんどん新しい事業のアイデアを考えてくれるようになっていきましたね。

VOYAGE GROUP本社オフィスで。背後にある多数のロゴは、VOYAGE GROUPから生まれたさまざまなサービスと企業たちだ。
VOYAGE GROUP本社オフィスで。背後にある多数のロゴは、VOYAGE GROUPから生まれたさまざまなサービスと企業たちだ。

<※次回はサイバーエージェントでのお話、VOYAGE GROUPの特徴である事業部制の話、そしてMBOから株式上場までのお話を伺います。>