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子どもでも理解できるのにAIには絶対にできないことがある。なんでしょう?【本当に頭のいい人にはわかる】 – たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本
「実質国有化」ラピダス、3兆円投入+債務保証8割…JDIの二の舞or奇跡の逆転劇
●この記事のポイント
・政府がラピダスの融資の8割を債務保証する方針を固め、「実質国有化」とも言える段階に入った。累計3兆円投入の国策半導体は、JDIの失敗を超えられるのかが問われている。
・ラピダスはガラス基板や2nm試作など技術面では世界最前線に迫るが、量産実績や顧客獲得は未確立だ。技術力と事業化の間に横たわる深い溝が最大の課題となる。
・半導体は国家安全保障の戦略物資となり、各国が巨額補助金を競う時代だ。国の関与強化が「盾」か「重り」か、ラピダスは日本の産業政策の試金石となる。
「日の丸半導体」の再興を掲げて誕生したラピダス(Rapidus)が、いよいよ“国策企業”としての色合いを極限まで濃くしている。2025年12月19日、政府がラピダスの民間融資に対し最大8割を債務保証する方針を固めたと報じられた。すでに決定済みの約2.9兆円規模の公的資金投入に加え、今後の資金調達リスクまで国が引き受ける形だ。
これは単なる「支援強化」ではない。経営の成否に対する最終責任を、事実上、国が背負う構図が完成しつつある。言い換えれば、ラピダスは「実質国有化」への道を歩み始めたと言っても過言ではない。
過去、日本には国が深く関与した半導体・電機企業がいくつも存在した。ジャパンディスプレイ(JDI)、旧ルネサスエレクトロニクス――いずれも「技術はある」と言われながら、巨額の公的資金を投じた末に苦境に陥った記憶は生々しい。
今回のラピダスは、その“失敗の歴史”を塗り替える存在となるのか。それとも再び、国民の血税を飲み込む「巨大な賭け」となるのか。技術、経営、そして世界の半導体地政学の観点から、その現在地を検証する。
●目次
技術面での「勝ち筋」…10倍の生産効率と次世代への布石
懸念ばかりが先行しがちだが、技術面に限ればラピダスは決して見劣りしない。2025年12月、同社は世界初となる「半導体チップを実装する大型ガラス製基板」の試作成功を公表した。
従来主流だった樹脂製基板に比べ、ガラス基板は
・反りや歪みが少ない
・微細配線に適している
・生産工程の自動化がしやすい
といった利点があり、生産効率を10倍以上に高められる可能性があるとされる。AI半導体では「性能」以上に「供給量とコスト」が競争力を左右するため、この技術が確立すれば、ラピダスにとって大きな武器となる。
さらに同社は、2nm世代の試作にすでに成功しており、2027年の量産開始、将来的には1.4nm世代への着手というロードマップを掲げる。このスピード感は、世界的に見ても決して遅くない。
元半導体メーカー研究員で経済コンサルタントの岩井裕介氏はこう評価する。
「少なくとも研究開発の現場レベルでは、ラピダスは“二流”ではありません。IBMとの技術連携も含め、プロセス技術そのものは世界最先端に近い。問題は、それを“事業”として成立させられるかどうかです」
「技術のラピダス」は、確かに存在している。
「国策」のトラウマ――JDIとルネサスの影
だが、半導体ビジネスは技術だけでは勝てない。ラピダス最大の懸念は、そのガバナンス構造と「国策ゆえの歪み」にある。
過去を振り返れば、そのリスクは明白だ。
● ジャパンディスプレイ(JDI)
2012年、産業革新機構主導で設立。「日本の液晶技術は世界一」という自信のもと、市場の急速な有機ELシフトを読み誤り、補助金依存の経営体質に陥った。
● 旧ルネサスエレクトロニクス
NEC、日立、三菱電機の半導体部門を統合。だが、出身母体ごとの派閥争いで意思決定が遅れ、スマートフォン向け半導体の成長機会を逸した。
ラピダスにも、同じ構図が見え隠れする。出資企業はトヨタ、NTT、ソフトバンク、NEC、三菱UFJ銀行など、日本を代表する8社。「オールジャパン体制」は一見心強いが、裏を返せば意思決定が複雑化しやすい。
さらに今回は、国が融資の8割を保証する。金融機関にとっては安心材料だが、経営側にとっては「最後は国が支える」というモラルハザードを生みかねない。
戦略コンサルタントの高野輝氏は、企業統治の観点から警鐘を鳴らす。
「債務保証は“時間を買う”政策です。ただし、その時間を緊張感のある経営改革に使えなければ、JDIと同じ結末になります」
世界は「補助金戦争」の時代…ラピダスだけが特別ではない現実
もっとも、ラピダスへの支援を「甘やかし」とだけ批判するのは公平ではない。半導体は今や、単なる電子部品ではなく、国家安全保障の中核インフラだ。
米国はCHIPS法で7兆円超、中国は国家主導で数十兆円規模、韓国もサムスンを軸に破格の税制優遇を行っている。
各国が「民間任せ」を捨て、国家が前面に立つ時代に入っているのが現実だ。日本だけが支援を渋れば、先端半導体の製造基盤は完全に海外依存となり、自動車、AI、防衛産業すら成り立たなくなる。
問題は、ラピダスが“後発”であることだ。2027年の量産開始時点で、TSMC、サムスン、インテルはさらに先の世代へ進んでいる。実績のない新興ファウンドリが、顧客をどう獲得するのか。ここに最大の不透明さが残る。
「国策の違い」はどこにあるのか
最大の違いは、ラピダスが「救済」ではなく「賭け」として設計されている点だ。だが、その賭けが成功するかどうかは、冷徹な経営判断を貫けるかにかかっている。
国の関与強化は、巨額投資を可能にする強力な盾である一方、市場原理からの緊張感を奪う重い足かせにもなり得る。
ラピダスが過去の国策企業と決定的に異なる存在となるには、
・政治や大株主の顔色をうかがわない
・採算が合わなければ撤退も辞さない
・「失敗する勇気」を持つ
という、極めて民間的な経営が不可欠だ。
3兆円規模の血税を投じたこの挑戦は、日本の産業政策そのものへの審判でもある。ラピダスは“JDIの再来”となるのか。それとも、日本が最後に放つ“逆転の一手”となるのか。
その答えは、2027年の量産ラインが動き出す日まで、誰にもわからない。
【FAQ】ラピダス計画の「ここが気になる」
Q1:なぜ「国有化」に近い形まで支援を強めるのですか?
A: 最先端半導体(2nm以下)の工場建設には、1ライン数兆円という天文学的な投資が必要です。現在の日本には、それだけの巨額リスクを単独で取れる民間企業が存在しません。米国や中国も同様に国家レベルの巨額補助金を出しており、日本政府としては「今ここで投資をしなければ、次世代産業の全権を海外に握られる」という危機感から、退路を断つ形で関与を強めています。
Q2:ガラス基板で「生産効率10倍」は、本当にゲームチェンジになりますか?
A: 理論上は非常に強力な武器です。従来の円形シリコンウェハーに比べ、四角い大型ガラスパネルは面積効率が高く、一度に多くのチップを処理できます。特に、GPUとメモリを複雑に組み合わせるAI半導体において、この「後工程(パッケージング)」の低コスト化は、TSMCなど既存の巨人に対する有力な差別化要因になり得ます。ただし、ガラスの破損しやすさや熱制御など、量産化に向けた技術的ハードルは依然として高いままです。
Q3:TSMCやサムスンに「技術的に追いつけない」という指摘については?
A: 確かに実績では雲泥の差があります。しかし、ラピダスは先行他社のような「あらゆるチップを大量に作る」モデルではなく、特定の高度なAIチップなどを「短納期で少量多品種作る」ブティック型のファウンドリを目指しています。先行他社と同じ土俵で戦うのではなく、最新の技術(2nmやガラス基板)を用いた「尖ったサービス」としてニッチな需要を掴めるかどうかが、生き残りの焦点です。
Q4:もし事業が失敗した場合、どうなるのですか?
A: 国が8割の債務を保証しているため、事業が破綻すれば、民間銀行の損失の大部分を税金で補填することになります。JDIなどの前例では、赤字を垂れ流しながら公的資金で延命する「ゾンビ化」が批判されました。ラピダスの場合、これまでの投資額が数兆円規模と桁違いであるため、失敗した際の国民負担や産業界へのダメージは比較にならないほど巨大なものになります。
Q5:結局、ラピダスに「未来」はありますか?
A: 「技術開発」の未来は明るいですが、「ビジネス」の未来はまだ五分五分です。試作成功はあくまで「スタートライン」に立ったに過ぎません。2027年までに、高額な最先端チップを買ってくれる「大口顧客(米IT大手など)」を具体的に何社確保できるか。技術力の証明以上に、その「営業・マーケティング力」が試されることになります。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)
設立2年で職員10倍、民間人材が過半数に…GovTech東京「人的資本」公共DX戦略
●この記事のポイント
・GovTech東京が設立2年で職員数を21人から275人へ拡大。民間人材比率52%という異例の組織構成で行政DXを推進する。
・宮坂学理事長は「人材こそが最大の資本」と断言。採用・育成・輩出を一貫して担う「人材エコシステム」の構築を目指す。
・東京アプリや生成AIプラットフォームなど内製開発を加速。都内全62区市町村で協働事業を展開し、公共DXの新モデルを示す。
東京都庁の外側に設立された「GovTech東京」が、公共セクターにおける人材戦略の常識を塗り替えようとしている。
2025年12月17日、東京・丸の内のTokyo Innovation Baseで開催された初のソーシャルキャリアイベント「GO!公共」。会場にはベンダー関係者や自治体職員、民間のデジタル人材など約200人が詰めかけ、開演前から熱気に包まれていた。
登壇したのは、GovTech東京理事長で東京都副知事の宮坂学氏。冒頭、「統合年次報告2025」を掲げながら、この2年間の成果を淡々と、しかし力強く語り始めた。
「設立時21人だった組織が、いま275人になっています。そのうち民間人材が52%を占める。これは日本の公共セクターでは前例のない構成です」
会場からどよめきが起きた。行政組織における「民間人材過半数」という事実が、いかに異例かを物語る反応だった。
●目次
設立2年で職員10倍の衝撃
GovTech東京は2023年7月、東京都庁および都内62区市町村と連携し、東京全体のDXを推進する新たなプラットフォームとして発足した。
宮坂氏は当初から「人材こそが最大の資本」と公言してきたが、その成長スピードは想定を超えるものだった。
「事業開始時、デジタル人材は13人でした。それが現在107人。マネジメント層も4人から14人に増えています。職種別で見ると、エンジニア、UI/UXデザイナー、データアナリスト、プロダクトマネージャーといった専門人材が9割を占める。これは『内製開発力』を本気で獲得しにいった結果です」
従来の公共セクターでは、システム開発はベンダー任せが常態化していた。だがGovTech東京は発足当初から「外注開発+内製開発のハイブリッド型」への転換を掲げ、即戦力のデジタル人材を積極採用してきた。
宮坂氏が示した統合年次報告には、こうした人材構成の変化が詳細に記録されている。
「形態別で見ると、民間人材比率が52%まで増加しました。行政職員は都派遣が39%、区市町村派遣が9%。この官民バランスこそが、われわれの強みです」
会場最前列に座っていた自治体職員は、メモを取りながら何度も頷いていた。
民間人材が過半数を占める組織
では、なぜ民間人材を過半数にまで引き上げたのか。
宮坂氏は「行政DXを強力に推進するため」と明快に答えた。
「行政の現場を知る職員と、デジタルの専門性を持つ民間人材が『バディ』を組む。これがGovTech東京の基本戦略です。行政分野の知見を持つ東京都の職員と、デジタル分野の知見を持つGovTech東京の職員が、それぞれの強みを生かして事業を推進する。この両輪があるから、机上の空論ではなく現場で使えるサービスが生まれるんです」
実際、GovTech東京が提供する協働事業は、都内全62区市町村で利用されている。
「スポット相談は累計61区市町村、346件。プロジェクト型伴走サポートは51区市町村、202件。共同調達・共同開発には52区市町村が参加し、2025年度だけで約23億円のコストメリットを生んでいます。これらすべて、現場の職員と民間人材が協働した成果です」
宮坂氏の説明に、会場からは感嘆の声が漏れた。
さらに注目すべきは、職層別の推移だ。
「設立当初、管理職層は全体の33%でしたが、現在は9.1%。つまり、現場実務を担うスタッフ層とリーダー・エキスパート層が約9割を占める体制に変化しています。機動力と推進力を併せ持つ組織へと進化しました」
「人的資本」を開示する理由
統合年次報告で最も異例なのは、「人的資本情報の開示」に一章を割いている点だ。
採用経路別割合、研修満足度、リモートワーク実施率、男女別賃金差、障害者雇用率……。民間企業でも開示が進む人的資本情報を、公的組織が詳細に公表するケースは極めて珍しい。
「私たちは『人材輩出組織』を目指しています。GovTech東京で得た知見や経験を、行政の現場へ広げ、行政DXの進化を牽引していく人材を育成し、輩出する。そのためには、採用から育成、定着、輩出までを一貫して担う必要がある。人的資本の開示は、その戦略を可視化し、ステークホルダーからフィードバックを得るための手段です」
宮坂氏が強調したのは、「自力採用」の重要性だった。
「職員採用における経路別割合を見ると、自己応募が33%、ダイレクトリクルーティングが19%、リファラルが10%。つまり自力採用が62%を占めています。人材紹介会社への依存を抑え、自分たちの言葉で魅力を伝え、共感でつながる仲間を集める。これがGovTech東京の採用哲学です」
採用候補者満足度アンケートでは、選考不合格者でも5点満点中4.2点という高評価を得ている。
「選考結果を問わず、全候補者に満足度調査を実施しています。内定者だけでなく、お見送りした方からも高い評価をいただいている。これは採用プロセスそのものが、GovTech東京のブランドを形成しているということです」
会場では、採用担当者と思しき参加者が熱心にスライドを撮影していた。
内製開発力の獲得=東京アプリと生成AIプラットフォーム
人材戦略の成果は、具体的なプロダクトとして結実している。
宮坂氏が示したのは、2025年2月にリリースされた「東京都公式アプリ(東京アプリ)」だった。
「デジタル人材が企画・UIを内製し、外部委託と連携するハイブリッド方式で開発しました。プロダクト設計、構築、UI/UXデザインのすべてをGovTech東京が担当しています。現在は内製開発チームによる機能拡充を進めており、オンライン手続やAIサポートなどの機能を順次実装していきます」
もう一つの内製プロダクトが、「生成AIプラットフォーム」だ。
「行政職員の業務効率化を図るため、都庁各局で共通利用可能な生成AI活用環境を構築・運用しています。職員自身がAIアプリを開発・共有できる環境を本格展開し、デジタル公共財として他の区市町村への横展開も視野に入れています」
宮坂氏は、このプラットフォームがもたらす4つの効果を挙げた。
「開発の簡易化、効率化とコスト削減、資産の共有、柔軟なシステム連携。これらすべてが、内製開発力を持つ組織だからこそ実現できることです」
会場後方にいたベンダー関係者は、複雑な表情で頷いていた。内製化の進展は、従来の発注構造を変える可能性を秘めているからだ。
公共セクターの人材戦略が変わる
講演の終盤、宮坂氏は会場に向けてこう語りかけた。
「GovTech東京は、単なる人員補充ではなく、行政DXの最前線で活躍するデジタル人材を生み出し、公共の未来を支える人材として輩出していくことを目指しています。ここで得た知見や経験を行政の現場へ広げ、行政DXの進化を牽引していく──。そんな人材エコシステムを構築したい」
後半のパネルセッション「未来に渡す、仕事をしよう」では、GovTech東京デジタル人材本部長の小島隆秀氏、Kids Public代表の橋本直也氏、インパクトスタートアップ協会代表理事の星直人氏、江東区CIO補佐官の三上泰地氏が登壇。モデレーターの幸田友資氏(GovTech東京)の進行のもと、公共セクターにおけるキャリアの魅力や官民人材交流の実践について活発な議論が交わされた。
イベント終了後、交流会では名刺交換の列が途切れず、参加者同士が熱心に情報交換する姿が見られた。
公共セクターにおける人材戦略は、長らく「年功序列」「終身雇用」「ジェネラリスト育成」が前提だった。だがGovTech東京は、その常識を根底から覆そうとしている。
民間人材を過半数まで引き上げ、専門性を重視し、採用から育成、輩出までを一貫して担う。そして内製開発力を獲得し、実際にサービスを生み出す。
宮坂氏が示した「人的資本で勝つ公共DX戦略」は、日本全国の自治体にとって新たなモデルケースとなる可能性を秘めている。
行政DXの本質は、システムの導入ではなく人材の変革にある。GovTech東京の挑戦は、その命題に対する一つの明確な回答だ。
(取材・文=昼間たかし/ルポライター、著作家)
資さんうどん、突如PayPay取扱停止の裏側…関東進出の熱狂の陰で、「稼ぐ力」への挑戦
●この記事のポイント
・資さんうどんがPayPayを前日告知で突如停止。関東進出で熱狂する裏で、決済手数料という「数%」が利益を左右する外食の厳しい現実と、聖域なき経営改革の実像を追う。
・すかいらーく傘下入り後、全国展開を急ぐ資さんうどん。PayPay離脱は顧客利便性より「稼ぐ力」を選んだ決断だった。プラットフォーマーと加盟店の力関係を映す象徴的事例。
・シェア首位のPayPayを切る大胆な判断は、商品力への自信の裏返しでもある。不便さをファンは許容するのか。資さんうどんの選択は外食業界全体に波及する可能性を秘める。
「明日からPayPayは使えません」——。2025年12月、北九州発の人気うどんチェーン「資さんうどん」を巡り、外食業界をざわつかせる決断が下された。
運営する株式会社資さんは、12月16日をもってキャッシュレス決済大手・PayPayの取り扱いを停止。発表があったのは前日の15日で、実質“前日告知”という異例のスケジュールだった。SNS上では「突然すぎる」「なぜPayPayだけ?」と困惑の声が相次いだ。
同社は理由について「総合的な経営判断」と説明するにとどめている。しかし、クレジットカードや楽天ペイ、d払いなどは継続されている。なぜ、国内シェア首位のPayPayだけが外されたのか。この一点に、資さんうどんが直面する構造的な経営課題と、親会社・すかいらーくHDの冷徹な合理化思想が凝縮されている。
●目次
前日告知という異例の「決別」が示すもの
PayPayは、国内キャッシュレス決済の中でも圧倒的な存在感を誇る。経済産業省の調査でも、コード決済の利用率・認知度はいずれも首位級だ。そのPayPayを、しかも前日告知で外すという判断は、単なる運用変更とは考えにくい。
流通事情を詳しく知る戦略コンサルタントの高野輝氏は、次のように指摘する。
「通常、決済手段の停止は数週間から1カ月以上前に告知します。前日告知ということは、交渉が最後まで決裂寸前だった可能性が高い。むしろ“やむを得ず”というより、“腹を括った”決断に見えます」
顧客の利便性を犠牲にしてでも、コスト構造を守る。その覚悟がなければ、シェアNo.1の決済手段を切る判断はできない。
関東進出で証明された「資さんブランド」の熱狂
今回の決断を理解するには、現在の資さんうどんが置かれている“絶好調”の状況を押さえる必要がある。
2024年、外食最大手のすかいらーくホールディングスは、資さんを約240億円で完全子会社化。その直後から本格化した関東進出は、想像以上の反響を呼んだ。
千葉県内や東京都八王子市にオープンした店舗では、連日数時間待ちの行列が発生。名物の「肉ごぼ天うどん」、締めの「ぼた餅」を目当てに、北九州出身者だけでなく“初体験”の首都圏客が殺到した。
資さんの最大の特徴は、単なるうどん専門店ではなく、100種類超のメニューを抱える「うどんファミレス」としての完成度にある。24時間営業、出汁の鮮度管理、小石原焼の器など、効率一辺倒では説明できないこだわりが積み重なり、強烈なファン層を形成してきた。
この「行列ができる」という事実こそが、今回の意思決定の前提条件になっている。
「すかいらーく流」経営改革の本質
一方で、全国展開は“夢”だけでは続かない。すかいらーく傘下に入った資さんには、当然ながら収益改善という現実的なミッションが課される。
外食業界の営業利益率は、一般的に2〜5%程度。原材料費、人件費、光熱費が高止まりする中、決済手数料は「たった数%」でも利益構造を直撃する。
「うどん一杯600〜700円の世界で、決済手数料が1〜2%違うだけでも、利益の2〜3割が吹き飛ぶ計算になります。多店舗展開フェーズでは、看過できないコストです」(高野氏)
特にPayPayは、圧倒的な利用者数を背景に、加盟店側との条件交渉で強い立場にあるとされる。注目すべきは、すかいらーく本体ではPayPayが引き続き利用可能である点だ。
グループ一括交渉で条件改善ができなかった、あるいは資さんの単価・回転率では折り合えなかった——。そのいずれか、あるいは両方だった可能性が高い。
利便性より「稼ぐ力」を選んだという覚悟
今回の判断は、プラットフォーマーと加盟店の力関係を象徴する出来事でもある。
「PayPayが使えないなら行かない」という顧客離れのリスク。一方で、高い手数料を払い続け、利益を削り続けるリスク。
資さんが選んだのは、後者を断ち切る道だった。
「短期的には不便さへの不満は出るでしょう。ただ、商品力に自信があるからこそできる判断です。手数料を払うより、品質維持や人材投資に回すほうが、長期的にはブランド価値を守れます」(同)
性急とも映る停止スケジュールは、むしろ「譲歩なき決裂」を物語っている。
ファンは「不便さ」を許容するのか
キャッシュレス決済が生活インフラとなった現代において、シェアNo.1を切る判断は大きな賭けだ。しかし、資さんうどんには「行列を作ってでも食べたい」という強力な武器がある。
「PayPayは使えないが、味は変わらない」このメッセージがファンに受け入れられれば、外食業界全体に波及する可能性もある。
すかいらーく傘下で進む、聖域なきコスト改革。「幸せを一杯に」というスローガンの裏側で断行された今回の決断は、ローカルの名店が全国ブランドへ進化できるかを占う試金石となるだろう。北九州が生んだ至宝は、巨大資本の中でもその輝きを失わず、真の全国制覇を成し遂げられるのか——。資さんうどんの「PayPay離脱」は、その問いを私たちに突きつけている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)
オラクル信用不安が揺らす「AIバブル」…1千億ドル負債が暴く低コスト神話の終わり
●この記事のポイント
・オラクルの信用不安がAI市場全体に波及。1000億ドル超の負債と資金供給網の変調が、「低コストAI」という成長神話に疑問を突きつけている。
・CDS急騰やデータセンター建設遅延が示すのは、AIインフラ投資の限界。負債先行型の成長モデルが、業界全体の資金循環を詰まらせ始めた。
・資金調達コストの上昇は推論コスト増につながり、AI需要を冷やす恐れも。市場は「夢」からB/S重視の現実へと大きく転換しつつある。
「AIは、使えば使うほど安くなる」──ここ数年、生成AIを巡る市場には、半ば信仰に近い前提が存在してきた。半導体の量産効果、データセンター(DC)の大規模化、クラウド事業者による価格競争。これらが組み合わされ、計算コストは右肩下がりで低下し続けるという“低コスト神話”である。
しかし2025年12月、その前提を根底から揺るがす兆候が現れた。震源地となったのは、米IT大手オラクルだ。
同社が進めてきたAIデータセンター戦略を巡り、資金供給網の変調、信用リスクの急上昇、建設計画の遅延が同時多発的に顕在化。これまで「成長投資」として市場に受け入れられてきた巨額の負債が、AIエコシステム全体を揺るがすシステミックリスクへと姿を変えつつある。
本稿では、オラクルの信用不安を起点に、「低コストAI時代」は本当に持続可能なのかを検証する。
●目次
- 資金供給網に走った亀裂──キープレイヤー「ブルー・アウル」の撤退
- 数字が示す不信──CDSは「金融危機後」水準へ
- DC建設遅延がもたらす「AI循環取引」の目詰まり
- 最終的なツケは誰が払うのか──推論コストへの転嫁
資金供給網に走った亀裂──キープレイヤー「ブルー・アウル」の撤退
市場に最初の衝撃を与えたのは、AIインフラ投資の“黒子”ともいえる存在、ブルー・アウル・キャピタルの動向だった。
同社は、データセンターを自ら保有し、クラウド事業者やAI企業に長期リースするビジネスモデルで、AIブームを資金面から支えてきた投資会社である。そのブルー・アウルが、オラクルがOpenAI向けに計画していた約100億ドル規模のDC建設プロジェクトから、出資交渉を取り下げたことが明らかになった。
金融関係者の間では、この判断を「極めて象徴的」と見る声が多い。
「ブルー・アウルは、AIインフラ投資において最もリスク耐性が高いプレイヤーの一社だ。その彼らが“リターンが見合わない”と判断した意味は重い」(米系投資銀行アナリスト)
これは単なる個別案件の撤退ではない。“AIインフラには無尽蔵に資金が集まる”という市場の前提が、初めて明確に否定された瞬間といえる。
数字が示す不信──CDSは「金融危機後」水準へ
投資家の警戒感は、債券市場の数字に如実に表れている。
オラクルの負債総額はすでに1,000億ドル(約15兆円)を突破。そこに追い打ちをかけたのが、2025年9月に発表された約180億ドルの社債発行計画だ。
この結果、企業のデフォルトリスクを示す指標であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドは、125~140bp超へ急騰。これはリーマン・ショック直後の2009年以来の高水準に近い。
債券市場に詳しい金融アナリストの川﨑一幸氏は、次のように解説する。
「CDSがこの水準に達するということは、投資家がオラクルのデフォルトを“理論上の可能性”ではなく、“現実的なテールリスク”として織り込み始めたことを意味する」
株式市場もこの変化に敏感に反応した。オラクルの株価は9月の高値からおよそ半値水準まで下落。成長期待よりも、格付け低下と資金調達コストの上昇が嫌気された形だ。
DC建設遅延がもたらす「AI循環取引」の目詰まり
財務面以上に深刻なのが、実務レベルでの誤算である。
オラクルが手がけるOpenAI向けデータセンターは、当初2027年稼働予定とされていた。しかし、資材不足や建設人材の逼迫を背景に、完成時期は2028年以降へと大幅に後ろ倒しされる見通しとなった。
この1年の遅延は、現在のAI市場構造において致命的だ。
現在のAI産業は、半導体メーカー、クラウド/DC事業者、AIモデル開発企業、の間で巨額資金が循環する、極めてレバレッジの効いた構造に依存している。インフラが稼働しなければ、収益は生まれない。一方で、負債の利払いは待ってくれない。
「AI市場は、時間が止まると一気に資金繰りが悪化する。DC稼働の1年遅延は、単なるスケジュール問題ではなく、キャッシュフロー構造そのものを壊しかねない」(同)
この“時間差”が連鎖すれば、AI・半導体業界全体で資金の目詰まりが起き、ドミノ倒し的な調整局面に入る可能性も否定できない。
最終的なツケは誰が払うのか──推論コストへの転嫁
この問題は、決して金融市場だけの話ではない。最終的な影響は、AIを使う企業や開発者に及ぶ。
オラクルの資金調達コスト上昇やDC建設遅延は、最終的にOpenAIなどのモデル開発者が支払う計算リソースの賃料に反映される可能性が高い。つまり、API利用料や推論コストの上昇だ。
これまでAI導入を後押ししてきたのは、「今は高くても、いずれ安くなる」という期待だった。しかし、その前提が崩れれば、企業のROI(投資対効果)は急速に悪化する。
「推論コストが下がらない、あるいは上がるとなれば、生成AIは“実験的ツール”から“高価なIT投資”に逆戻りする」(同)
AI需要の冷え込みは、再びインフラ投資の採算を悪化させる。この負のスパイラルこそ、市場が最も恐れているシナリオだ。
オラクルの信用不安は、単なる一企業の経営問題ではない。それは、負債を原資に拡大してきたAI成長モデルそのものの限界を映し出している。
今後の焦点は明確だ。
・オラクルは新たな資金調達先を確保できるのか
・財務健全性を市場に示せるのか
・それができなければ、他のAIインフラ事業者はどうなるのか
2026年に向けて、市場の関心は「AIで何ができるか」という夢物語から、「その巨大なB/S(貸借対照表)を誰が支え切れるのか」という、極めて現実的な問いへと移行しつつある。
低コストAI時代は、本当に続くのか。オラクルを巡る動揺は、AIバブルが“逆回転”に入った可能性を、市場に静かに突きつけている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)