開発「TUNA SCOPE」〜匠の目利きをAIに託す〜

日本の匠が持つ技術をAIに実装するという革新的な取り組みでたちまち注目を浴び、世界三大広告賞の一つであるクリオアワードのイノベーション部門をはじめ、国内外における数々の賞を受賞しているプロジェクトがあります。

マグロの「目利き」職人の技を受け継いだ、品質判定AI「TUNA SCOPE」。

今回は「TUNA SCOPE」プロジェクトのリーダーであり、クリエーティブ・ディレクターの志村和広氏に、そのアイデアの裏側にある開発の経緯や今後の展望について聞きました。

志村氏
志村和広氏(電通 第4CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター)

日常での気づきが、プロジェクト発足のきっかけに

ー「TUNA SCOPE」はどのような技術なのでしょうか。

テレビ番組などで、市場で仲買人がマグロの尻尾の切り口を見て何かを確認している光景を見たことはありませんか?彼ら、熟練の職人たちは「マグロの尾部断面」を見て、マグロの品質を判断しています。この技術は、長い年の経験と、それに基づく直感によるもので、限られた人間にしかできない極めて感覚的な「暗黙知」です。

この目利きの技術を継承したAIが、我々が開発した「TUNA SCOPE」です。TUNA SCOPEがインストールされたスマートフォンでマグロの尻尾の断面を撮影すると、誰でも簡単にマグロの品質を判定できるようになります。

開発したTUNA SCOPEのスマートフォンアプリ
開発したTUNA SCOPEのスマートフォンアプリ

 

ー「TUNA SCOPE」が生まれた経緯を教えてください。

僕はもともと魚が好きで、スーパーでマグロの刺身をよく購入するのですが、物によっては「思ったよりおいしくないな」と感じることがありました。「同じような見た目、同じ金額なのに、当たり外れがあるのをなんとかできないだろうか」、と思ったちょうど同じ頃、築地市場が豊洲に移転するニュースがテレビで流れていて、そこでマグロの目利きをする仲買人を見て、このアイデアを思いついたのです。

市場では何十年という長い経験を持つ仲買人による「尾の断面」の目視によってマグロが値付けされていく。しかし調べてみると、仲買人は後継者不足に悩まされ、この貴重な目利きの職能を持つ人材は減少してしまっている。そこでこの仲買人の能力を AI に託せないかと閃いた。AI であれば職人の直感を学習し、最低10 年はかかると言われている修行をあっという間に終わらせることができる。この目利きAIを、一般のマグロにも広く普及させれば、みんながマグロを美味しく食ベられるのではないか、と考えました。

また、職人へのインタビューを通じてわかってきたのは、この能力は「暗黙知」で極めて感覚的なものであるということ。もしどこを見ているか言語化できれば、マニュアル化して新人に覚えさせたり、プログラム化してソフトに落とし込むこともできますが、この目利きの技術は言語化しづらい直感的なものなのだったのです。これはなおさら面白い。何十年もの間、毎日のようにマグロの尻尾を見続けることによって培われる、その貴重な技術を保存するためにも、AIに学習させる意義があると考えました。

限られた職人が持つ技術をAI化して、幅広く普及させ、私たちが日常生活の食べているマグロにその価値を導入できないか。その構想と自分の想いを電通社内で発表したところ、正式にプロジェクト発足となりました。電通のクリエイティブと、技術に強いISIDでチームをつくりました。

たった1カ月で、職人の10年以上の経験に相当するマグロの目利きを学習

ー開発の中で、特にどのようなことに苦労しましたか。

マグロの尻尾の断面画像を集めることです。職人の20年、30年分の修業をAIに学習させるには、膨大なサンプルデータが必要でしたが、彼らが日々マグロを見極めている水産市場は、職人以外の人間が容易に足を踏み入れることのできる現場ではありません。そこで、マグロのデータを多数保有しているところはどこか、考えをシフトしました。そして巡り合ったのが、世界でマグロビジネスを展開する総合商社・双日です。

三崎港で集めたマグロのデータをもとにアプリケーションのプロトタイプを制作し、それを持って相談に行きました。プロジェクトの概要を説明すると、双日さんも、目利きの精度の個人差・買い付けの際の当たり外れなどのビジネス上の課題を抱えていることが分かりました。「TUNA SCOPE」がある世界では、誰が目利きを行っても一定基準を満たした高品質のマグロを安定的に供給できます。両社の想いが合致して、プロジェクトに参画してもらうことになりました。

双日さんの協力を得たことで、4,000点ものキハダマグロのサンプルデータを集めることができました。そのサンプルの断面をスマートフォンのカメラでひたすら撮影し、職人の判定結果と照合。それらをセットにして、AIに読み込ませます。そしてたった1カ月で、職人が1日1体のマグロを見ると換算すると10年以上の修業に相当する量を学習させることに成功しました。

生涯かけて修行する目利きを、たった1カ月でAIが継承
生涯かけて修行する目利きを、たった1カ月でAIが継承

開発したAIをスマートフォンに実装し検証した結果、その道35年の職人による判定結果と比較して、約85%の一致率という精度を実現したのです。直近では、熟練の職人が高品質と判定したマグロを、90%を超える確率で「美味しい」と言い当てるまでになりました。

マグロの目利き風景
焼津工場で職人とAIの判定結果を照合した結果、高い一致率を記録
焼津工場で職人とAIの判定結果を照合した結果、高い一致率を記録

ー「TUNA SCOPE」が最高品質だと判定したマグロを、「AIマグロ」として販売し、実地調査も行ったそうですね。

2019年3月、東京駅の「産直グルメ回転ずし 函太郎Tokyo」で、TUNA SCOPEが最高ランクとして判定したマグロを「AIマグロ」(280円・税抜)として通常メニューに加えてもらい、販売しました。結果的に、5日間で約1000皿を売り切り、調査の結果、約90%のお客様から同じ価格帯のマグロよりおいしいというアンケート結果を得ることができました。お客様から「いつものマグロより実際に美味しい」、「このAIが導入されると、期待通りマグロをおいしく食べられるというのはとても嬉しいし、安心できる」という声をいただいたことが印象的でした。

大好評だった「AIマグロ」の販売提供
大好評だった「AIマグロ」の販売提供

2020年、TUNA SCOPE マグロ、世界展開へ

ープロジェクトの今後の展望を教えてください。

今後の具体的な展開としては、1月からTUNA SCOPEによるAI品質判定を行ったマグロが、ニューヨークとシンガポールでの提供が開始されました。

さらに3月には、プロジェクトが水産庁の「水産物輸出拡大連携推進事業」に認定されました。2020年は、水産庁の支援を受け、AIによる品質判定を受けた高品質なマグロを世界中に輸出していくための準備を進めています。

私は、このTUNA SCOPEが世界に拡がっていくことには、さまざまな面で重要な価値があると考えています。一つ目は、世界中どこでも、誰もが美味しいマグロを食べられるようになるからです。世界には、日本の職人のように長い人生をかけてマグロを見続けてきたプロの目利きの職人はいません。よって、日本ほどレベルの高い品質判定を通さず、人々の食卓にマグロが届けられているのが現状です。しかし、AIにより、世界中に日本の職人の能力を拡げていくことで、世界中の人たちが日本の目利きが入った美味しいマグロを食べることができるようになります。これは、日本人としても嬉しいことです。

TUNA SCOPEを通じて、日本の目利きを世界中に展開していく予定
TUNA SCOPEを通じて、日本の目利きを世界中に展開していく予定

また、もう一つの理由は「TUNA SCOPE」は、世界的な課題である「マグロの資源問題」の解決にも役立つのではないかと考えているからです。

私たちが日常生活で食べる普通のマグロは、主に重さや量で取引されています。ゆえに乱獲で問題となる漁では「量」を重視し、たくさんの数を獲るために幼魚も含めて群れをまとめて大量捕獲しています。さらに、一度にまとめて捕獲された魚は網の中で暴れまわるため、体温の上昇で身がヤケてしまったり、魚体に傷がついたり、なかには死んでしまうこともあります。その結果、著しく鮮度が落ちてしまうのです。

「TUNA SCOPE」を導入し、世界共通の品質基準をつくり、判定する仕組みをつくることができれば、獲り手側の意識を「質」重視に変えていくことができるだろうと考えています。大量に捕獲するよりも、マグロの品質、鮮度を保つために1体ずつ丁寧に獲ろうとする獲り手が増えていくでしょう。丁寧にマグロを獲る漁船のマグロが市場で評価され、みんながおいしいマグロを食べることができ、資源も安定することにつながっていく。人も資源もビジネスも、Win-Winの関係を築けるのではないでしょうか。

TUNA SCOPEのプロジェクトの始まりは個人の想いでしたが、それが拡大し、今では社会の課題を解決する可能性を持った事業へと拡大しつつあります。今後はこのプロジェクトで得られたノウハウを活用することで、匠の技をAIの力で継承する活動として、水産業はもちろん、他のさまざまな分野にまで拡大していきたいと思っています。

TUNA SCOPE:https://tuna-scope.com/jp/

リリース:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0424-010044.html

日用品の回転体が柔らかなフォルムを生み出す“ROTER PRODUCTS”

平面の領域を飛び越えたアートディレクションの可能性を打ち出す“NEWSPACE”プロジェクト。当連載ではこれまで6回にわたり、アートディレクターたちが自由な発想で生み出した創造性あふれるプロトタイプをご紹介してきました。

最終回はアートディレクターの宇崎弘美が手掛ける“ROTER PRODUCTS”が飾ります。独特な形状の花瓶がどのような発想と手法によって生まれたのか、聞いてみました。



「生理的に好き」な有機性のある幾何形態をつくってみた


—“ROTER PRODUCTS”とはどんなプロダクトですか?また、誕生した背景とはいかに?

ROTERとは、回転体という意味です。「ものはどんな形をしていても、回転させてアウトラインをかたどれば幾何形態ができる」という仮説を立て、回転体を3D CADで花瓶に仕立てたのが“ROTER PRODUCTS”です。

もともと六面体や球体、円錐や円柱のような幾何形態には興味があり、そのようなモチーフを使って個人的にアクセサリーを制作していました。

あと、昔からなぜだかぽてっと丸みを帯びたフォルムをしたものに引かれる傾向があります。キリッとした線ではなく、ちょっと歪んでいるような柔らかい曲線が好きなんですね。

最近私はよく「生理的に好き」という造語を使うのですが、自分でも理由は分からないけど好きなものってありませんか?よく言われている「生理的に無理」の逆の感覚です。今回“NEWSPACE”プロジェクトへ参加するにあたり、ずっと自分の中にある「生理的に好き」を形にしてみることにしました。

どうにかして、幾何形態の中に有機的な表現や柔らかなラインを生み出せないか?と考えた結果、行き着いたのが、身の周りにあるものを回転させて新しい曲面を生み出すというアイデアでした。

水平回転させて際立つフォルム、メリハリのある配色


—日用品がユニークな花瓶に変わるまでのプロセスを教えてください。

プロダクトの制作に加え、もうひとつの試みとして、モチーフを回転させて撮影した写真を使ったグラフィックポスターもつくりました。

“ROTER PRODUCTS”

モチーフを回転台の上に乗せて回しながら、定点から長時間露光の設定で撮影しています。背景に漂っているオーロラのような色彩は、撮る際に背景へ写り込んだモチーフの影を利用したものです。どうしても反射してしまうのを逆手にとり、ビジュアルへと生かしました。

“ROTER PRODUCTS”
“ROTER PRODUCTS”ポスター

花瓶のモチーフは上から時計回りに招き猫、洗剤のスプレーボトル、植物のラベンダー、ハサミ、天むす(!)です。いろいろなものを用いて実験し、最終的に残ったのがこの5点です。

モチーフは、形も重要ですが、実際のものの色を反映してつくりたかったので、色もひとつの要素として、そもそもの色がかわいいものを選びました。

●招き猫の置物が持つモコモコッとしたフォルムがきれいなカーブを描いてくれました。赤い首輪のラインもアクセントになっています。
●洗剤のスプレーボトルは、丸みとくびれと配色で選びました。
●最初はお花シリーズでつくってみたくて、お花の回転体にお花を生けたらかわいいなと思っていたんですが、実際に撮影してみたら華奢で形になりづらいものが多くて、思ったように3D化することができず、断念したという感じです。繊細すぎると向いていないようです。ラベンダーだけは物体感があるので、1点つくってみました。
●天むすは、2トーンに分かれているたたずまいが向きそうだなと思いました。
●ハサミは、回転させるとキュッとくびれができることを想定して選びました。

3Dプリンターを用いて実際のプロダクトにするためのステップについて説明します。まずモチーフを30ほどの多角度から静止画で撮影。それらをつなぎ合わせて作成した3Dデータが、中央と右のものです。右のデータを画面上で回転させ、花瓶状の3Dデータへ発展させます。それをもとに花瓶を制作していきます。

“ROTER PRODUCTS”制作過程 招き猫

広告の仕事でも、自分の好きを提案してみる価値がある


—“NEWSPACE”プロジェクトで実際に「生理的に好き」を形にしてみた感想は?

自分の頭の中で妄想していたものを表出し、完成させることができたのはありがたくも貴重なチャンスでした。

「次はあんなものを回転させてみよう」とか「ランプシェードにしてみたい」とか、新たな発想が生まれたり。また、既存の商品から“ROTER PRODUCTS”を制作し、広告や販売促進に活用することもできると考えています。自分の領域のひとつとして「このような技法があります」と言えるようになるのかな、と。

“NEWSPACE”プロジェクトでは皆さんが独創的なプロトタイプを発表しており、ハタから見ると「一体何をやっているの?」と思われることがあるかもしれません。でもこのように自由な実験をする場が、凝り固まった発想を解放するチャンスになると感じました。

電通のアートディレクターは多くが美大卒で、グラフィックデザインだけをやってきたわけではありません。いろいろな能力や発想を持っているのに、可能性を限定してしまうのはもったいないですよね。

受注する仕事にはさまざまな制約がありますが、一度は自分の「生理的に好き」を盛り込んでアプローチしてみる価値があると思っています。私たちが持っている独自の目線で提案すると、意外に喜ばれたり、受け入れてもらえたりすることがあるので。



情報を伝える+αの感性が既成概念を変え、人を動かす


—アートディレクション、アートディレクターの仕事の本質はどのようなものだと思いますか?

これまで広告会社におけるアートディレクターの仕事の領域は平面、グラフィックに偏ったところがありました。私の仕事に関しては、ここ数年、新店舗のブランディングやパッケージデザインなどもやらせていただく機会が増えてきました。

最近では渋谷スクランブルスクエア B2F 東急フードショーエッジ内にオープンした北海道のコロッケ屋さん「COROMORE」のブランディングや、2019年の3.11に開催されたYahoo!のイベントのアートディレクションなどを手掛けています。六本木ヒルズで実施された「Yahoo!防災ダイバーシティ」のイベントはTokyo ADC賞ノミネートを頂くことができました。

「COROMORE」のポスター
「COROMORE」のポスター
「COROMORE」の紙袋
「COROMORE」の紙袋

どのような切り口で防災のイベントをつくるかを考えた時、Yahoo!の検索履歴から防災にも多様性が求められているということに気付いたんです。例えば、がれきでペットがケガをしてしまったとか、高齢者に乾パンは固すぎて食べられなかったとか…。そこで、防災の情報やグッズを描いた100種類以上のイラストカードを用意し、訪れた人に自分が必要なものを選んで持ち帰ってもらうスタイルを提案しました。

「Yahoo!防災ダイバーシティ」のイベント 
「Yahoo!防災ダイバーシティ」のイベント
防災情報・グッズのイラストカード
防災情報・グッズのイラストカード

後に「カードがすてきで欲しくなった」とか「選ぶのが楽しくて見て回っているうちに防災の知識がついた」という声をいただき、それはアートディレクションの力だったのかな?と感じました。

災害や防災は暗くなりがちな題目なので、イラストレーターの方たちには「できるだけポップなイメージで描いてください」とお願いしたんです。情報を伝えるものに対し、すてきだとか、かわいいという感覚が加わるだけで関心が高まったりします。そういう視点からアプローチできるのは、アートディレクターならではでないでしょうか?アートディレクションには誰かの気持ちを動かす力がある。私はそう思っています。
“ROTER PRODUCTS”へ興味を持っていただけたら、ぜひこちらまでご連絡ください。

「Go Toキャンペーン」1兆7千億円に非難殺到、星浩も「正気か」! 一方、官邸は異常な楽観論、田崎史郎も「夏の観光に間に合うようコロナが収束」

 安倍首相が打ち出した「アベノマスク」にカビが付着するなどの不良品が見つかっていたことが報道によってあきらかになり、昨日22日、厚労省もその事実を認めた。ネット上では「アベノマスク」ならぬ「カビノマスク」などと呼ばれはじめているが、安倍政権は全戸配布の計画を撤回することなく...

コロナ感染拡大を防ぐ「いのち守るマナー新聞」を新聞6紙に掲載

新しい形のマナー向上プロジェクトを進めるTokyo Good Manners Project (以下TGMP) は4月22日、朝日新聞、産経新聞、東京新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞の6紙と連携し、新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的としたメッセージ広告「いのち守るマナー新聞」を、各紙朝刊に掲載した。

全国に緊急事態宣言が発令され、感染拡大を防止する行動が求められる中、TGMPは感染拡大を防ぐため、一人一人が誰かを思いやり、誰かの命を守るために必要な行動を6紙すべて異なるクリエイティブ表現で呼び掛けた。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的としたメッセージ広告「いのち守るマナー新聞」
例年、全国的に外出が多くなる大型連休の約1週間前というタイミングで、重症化のリスクが高いといわれる高齢者に届きやすい新聞を通してメッセージを伝えている。内容は、「自分の小さなアクションが、自分だけではなく周りの人たちの命も救うことにつながっている」と気付くきっかけとなり、すぐアクションに移せるものを選んでいる。

また、TGMPのTwitter公式アカウントでは、「#今日のグッド」を付けて、感染防止のために日常で役に立つグッドマナーを投稿し、いのちを守るためのマナーの向上促進を目指している。

Twitter公式アカウント 「#今日のグッド」

  アカウント名:TokyoGoodMannersProject
  ユーザー名:@TGMP2020
  URL:https://twitter.com/TGMP2020


「いのち守るマナー新聞」一覧

① こんなスペースでもいのちのためにできる運動があります。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的としたメッセージ広告「いのち守るマナー新聞」
 掲載:朝日新聞

② 手はいまいのちを握っている。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的としたメッセージ広告「いのち守るマナー新聞」
 掲載:産経新聞

③ ドラキュラが救ってくれるいのちがある。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的としたメッセージ広告「いのち守るマナー新聞」
 掲載:東京新聞

④ 気づかぬクセがいのちを脅かすかも。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的としたメッセージ広告「いのち守るマナー新聞」
 掲載:日本経済新聞


⑤ その距離が目の前のいのちを救っている。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的としたメッセージ広告「いのち守るマナー新聞」
  掲載:毎日新聞


⑥ いのちのために会うのはやめて鯉のぼりを送ろう。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止を目的としたメッセージ広告「いのち守るマナー新聞」
 掲載:読売新聞

*鯉のぼり用紙のダウンロードはこちら:
 https://goodmanners.tokyo/news/20200422/


Tokyo Good Manners Projectとは

2016年9月にスタートした、新しいかたちのマナー向上プロジェクト。一人一人の思いやりで街をもっと心地よい場所にすることで、街全体の魅力を上げていくことを目的に、“TOKYO GOOD“というコンセプトを掲げ、さまざまなアクションを行っている。
 URL: https://goodmanners.tokyo/





 

安倍首相「延期1年以内」ゴリ押しのせいで東京五輪が中止に! すでにIOCと森喜朗会長は「安倍首相が来夏といったから」と弁明 

 新型コロナ感染拡大が続くなか、唖然とするような情報がもたらされた。4月20日、来年に延期された東京オリンピックについて、IOC(国際オリンピック委員会)が公式サイトで、追加費用(約3000億円規模)の大部分を日本が負担することを「安倍首相が合意した」と発表したからだ。日本...

小泉今日子がアベノマスクを「汚らしさを具現化」と真っ向批判! 他にも外務省の情報操作24億円や五輪問題で安倍政権批判を連発

 小泉今日子がアベノマスクを真っ向から批判したと話題になっている。小泉は自ら代表を務める「株式会社明後日」名義のアカウントでツイッターをやっているのだが(プロフィルには〈代表取締役の小泉今日子が呟きます。〉とある)、4月22日13時、「アベノマスクの不良品を政府、公表せず」...

学生がAIで予測した2020年のヒットタレントは? ~企業と大学にメリットがある産学連携のカタチ~

近年、AIやデータサイエンス領域において、企業と大学との産学連携の重要性が高まっています。各大学でこの領域での産学連携の枠組みが整備されつつあり、電通データ・テクノロジーセンター AIソリューション部でも、昨年から取り組みを進めています。本連載では、各大学との産学連携の中で感じた、日本のAI活用の課題、産学連携のメリットや、電通ならではの視点について同部の福田宏幸がご紹介します。


日本のAI活用、何が課題?
 

今、グローバルでは、主要な国際学会でGoogleが大学などの研究機関を抜いて投稿論文数で1位になるなど、企業においても盛んに最先端の研究が行われています。一方で、大学教授が積極的に企業の研究に参加することも珍しくなく、企業と大学の研究の境目がシームレスになっています。その一方で、日本ではまだ、企業と大学の協業は十分であるとはいえません。

実は、AI活用のカギを握るのは、アルゴリズムそのものだけではなく、課題の発見とデータです。ですが、大学には、スパコンなどのコンピューターや高度な分析スキルを持つ研究者のリソースはあるものの、社会の「リアル」な課題やデータに触れる機会が少ないそうです。

一方で、企業では課題やデータが日々生まれているにもかかわらず、それを十分に活用できているとはいえません。そういった意味で、課題やデータが企業から大学に提供されることは、企業と大学、双方にとってメリットのあることだと考えられます。

日本では、まだまだAIの活用が進んでいないといわれますが、電通はソリューションカンパニーとしてさまざまな「リアル」な課題やデータに向き合っているので、こういった課題やデータを研究機関側に提供することで、海外のようにAIの実社会での活用を促進したいと考え、取り組みを始めました。

東北大学との産学連携
 

さて、第1回は、AIで著名な研究者がたくさん所属している東北大情報科学研究科との取り組みです。今回は、「学際情報科学論」という大学院生向けの全8回の講義の中で、学生の皆さんにAIによる「デジタル広告の効果予測」と「2020年にヒットするタレントの予測」に挑戦してもらいました。この二つの課題は、電通でもここ数年間取り組んでいる課題です。学生は修士の学生約10人が4チームに分かれて参加してくれました。

もう少し詳しく説明すると、デジタル広告の効果予測は、いわゆるインターネットのバナー広告がどれぐらいクリックされるかを予測する課題です。過去の配信データを元に、バナーのクリエイティブの特徴や配信の設定から機械学習という手法を用いて予測します。

また、タレントのヒット予測の方は、SNSのデータと、テレビの放送内容のテキストデータを用いて、2020年にヒットするタレントの予測をしてもらいました(講義は2019年11月~2020年1月に行われています)。

最初の講義では、電通側から電通の説明と課題の紹介があり、質疑応答がありました。その後は、リモートワークで週1回、予測モデル構築に取り組んでいただき、電通のメンバーはオンラインの掲示板で適宜やりとりしていきました(情報系の学生だけあって、こういうコミュニケーションのスタイルは全く問題なかったですね)。そして、最終回に各チームのプレゼンテーションがありました。

授業の様子
授業の様子
プレゼンテーションスライドの抜粋
プレゼンテーションスライドの抜粋

プレゼンテーションは、それぞれが力作。電通としての発見は、ここ数年取り組んできた課題でありながら、いろんな新しい解決の糸口が見つかったことです。分析やモデリングのスキルが高いのは当然ですが、学生のフレッシュな視点もあり、これまで試してもいなかったような手法や切り口がいくつも見つかりました。

電通との産学連携どうだった?

一方、大学や学生の立場から、今回の産学連携はどうだったでしょう?先生と学生の皆さんにインタビューしましたので、ご紹介します。

企業の現場で用いられているデータを用い、企業が知りたい事柄をテーマとして解析を行う授業が新鮮だった。テーマの奇抜さやデータの新規性という要素はデータ科学研究の成果を論文として公開する際に重要であり、企業との連携はそのようなものを生み出しやすいと感じた。(情報科学研究科 准教授 山田和範先生 専門:データ科学)

解析対象と大まかな方向性が決まっているものの、学生に考えさせる余地があり、難易度的に良いテーマ選定であるように感じた。アカデミアで研究を志す人も、企業で働く人にとっても今後AIの活用は必要不可欠なので、もっと授業を充実させる必要がある。(情報科学研究科 助教 Samy Baladram先生 専門:データ科学)

Samy先生

東北大情報科学研究科の大学院生からも、今回の取り組みについて意見を伺いました。

適当に集めたデータでは目的が定められず、結果モチベーションが低下して肝心の分析を行うところまでいかないことがある。企業によって「分析の意義」と「妥当性が保証されているデータ」がセットで提供されることは、最大のメリット。(修士2年 後藤悠希さん 専門:通信工学)

就職を考えている学生にとって、企業で扱っているデータやトピックに触れることができるのがメリット。実際のデータは想像以上に非構造的で欠損値があり、前処理に多くの時間がかかることを知った。(修士2年 矢後志明さん 専門:機械学習)

非常に自由度が高く、課題設定や解析手法の選択という面で自主的に考えさせられることが多かった。ビジネス面での利用を意識させられる内容になり、実際に就業した際の課題解決へのアプローチを意識しやすいと思った。(修士2年 荒井奎甫さん 専門:認知情報学)


AIが予測した2020年のヒットタレントは?

 

いかがでしたでしょう?まだまだ取り組みは始まったばかりですが、今後もこのような産学連携を続けていきたいと考えています。さて、最後に、気になるAIが予測した2020年のヒットタレントは…。

2020年のヒットタレント ハナコ

でした。上白石萌音さんは、先日TBSドラマ「恋はつづくよどこまでも」(3月17日最終話)が話題になったばかり。ハナコは、キングオブコント2018の勝者ですが、露出も着実に増えているようで、今後のヒットも期待できそうです。

グラフは、学生が作成したもので、横軸がテレビ出演回数、縦軸がSNS出現回数の週次集計データです。薄い黄色から黒に向かって時間が経過しています。これらの変動パターンをAIが学習して予測しています。

次回以降も、大学との取り組みをご紹介させていただく予定です。引き続きお付き合いいただければ幸いです。

ビジネスにおけるアートの効果をどうやって検証するか?

初めまして、美術回路(※1)メンバーの大西浩志と申します。本業は東京理科大経営学部の教員で、オンラインデータを用いたマーケティング解析を専門としております。

本連載「アート・イン・ビジネス最前線」は、「アートはビジネスに効くのか?」というテーマを取り扱っています。第1回では、われわれの著書『アート・イン・ビジネス —ビジネスに効くアートの力』(有斐閣)で提唱している、ビジネスにおいてアートが効果をもたらす仕組みを「アートパワー」と「アート効果」というキーワードを軸に解説しました。また第2回では、もう一つのキーワードである「アートの内在化」について、今のような時代状況だからこそビジネスパーソンが目指すべきビジネスの実践方法を、事例を交えながら紹介しました。

第3回となる今回は、ビジネスにおけるアートの効果はどのように検証することができるのか、これまでの学術研究を概観しつつ、われわれが実施した定量調査による効果検証の取り組みをご紹介します。

(※1)美術回路:アートパワーを取り入れたビジネス創造を支援するアートユニットです。専用サイト

 

ビジネスにおけるアート効果、これまでの実証研究

いきなり少し学術的になりますが、ビジネスにおけるアートの活用に関する、これまでの実証研究を整理すると、効果面から以下の三つのカテゴリーに大別することができます(※2)。

1    Art infusion(ブランディング効果)
2    Art-based management(リレーションシップ/組織活性化効果)
3    Artistic intervention(イノベーション効果)

一つ目の「Art infusion」(ブランディング効果)は、アートの挿入効果と呼ばれる学術研究領域で、企業が広告・コミュニケーションなどにおいて、アート作品やアーティストを活用することでコミュニケーション効果が高まることを研究しています。つまり、アートが挿入されることで、商品などへのイメージ構築を助け、付加価値を高めるといったブランディング効果が期待できます。

例えば、高級ファッションブランドがアーティストとコラボレーションしたり、アートアワードなどで育成支援したりするなど。しかし面白いことに、これまでの実証研究によると、せっけんやミネラルウオーターのような高級ではない実用的な商品の方が、アートを商品パッケージなどに利用することによる効果が高いことが示されています(※3)。

二つ目の「Art-based management」(リレーションシップ/組織活性化効果)は、アートを取り入れることによって組織内のコミュニケーションを円滑にしたり、組織を活性化したりする効果を研究する領域です。これらの実証研究では、アーティストが従業員に対してワークショップを行ったり、従業員たちが共同してアート体験をしたりすることによって、組織間のコンフリクトが解消され一体感が高まったり、仕事へのモチベーションが高まったりするなどの効果が確認されています。

ただし、小規模な組織には短期的に効果があるのですが、大きな組織への効果は限定的なことが多く、効果を高めるためには長期的な組織文化の構築が必要とされています(※4)。

三つ目は、アーティストがビジネスに入り込んで深く関与していくことを対象とした「Artistic intervention」(イノベーション効果)で、アートの介入効果とも呼ばれます。近年、欧米を中心に数多くの実践事例による研究が行われています。言葉そのまま、アーティストが企業のプロジェクトなどに参加・介入することにより、従業員のインスピレーションを刺激し、クリエイティビティーを高めるといった効果があります。

2018年に、Journal of Business Researchという学術雑誌において『The arts as sources of value creation for business: Theory, research, and practice』(ビジネス価値創造の源泉としてのアート:理論、調査と実践)と題する特集号が出版され、約20本の研究論文が掲載されています(※5)。それらの研究で共通して指摘されているポイントは、アート介入が成功するためには、アーティスト側とビジネス側とでは考え方も異なり、その共通言語もわずかであるため、両者の考えを仲介しコミュニケーションを取り持つ媒介者(ファシリテーター)の存在がカギだという点です。

しかしながら、以上で紹介した学術研究は、ケーススタディーや少人数の対象者へのヒアリング調査を基にした分析がほとんどで、多数の量的データを使ってアートの効果を確認しているものは限定的です。

(※2)筆者による独自の分類です。既存研究の分類では、Art-based managementとArtistic Interventionを同一カテゴリーとしているものも見られます。

(※3)Lee, Chen & Wang (2015) "The role of visual art in enhancing perceived prestige of luxury brands," Marketing Letters, 26、Huettl & Gierl (2012) "Visual art in advertising The effects of utilitarian vs. hedonic product positioning and price information," Marketing Letters, 23、Hagtvedt & Patrick (2008) "Art infusion: the influence of visual art on the perception and Evaluation of Consumer Products," Journal of Marketing Research, 45(3)などをご参照ください。

(※4)Berthoin Antal (2012) ”Artistic Intervention Residencies and Their Intermediaries: A Comparative Analysis,” Organizational Aesthetics, 1(1)、Sutherland (2012) "Arts-based methods in leadership development: Affording aesthetic workspaces, reflexivity and memories with momentum,” Management Learning, 44(1)、Taylor and Ladkin (2009) “Understanding Arts-Based Methods in Managerial Development,” Academy of Management Learning & Education, 8(1)などをご参照ください。

(※5)Journal of Business Research (2018)『The arts as sources of value creation for business: Theory, research, and practice』
 
この特集の掲載論文については、八重樫文,後藤智,重本祐樹,安藤拓生(2019)「ビジネスにおけるアートの活用に関する研究動向」立命館経営学、第58巻、第4号で詳細にレビューされています。


定量調査でアートの効果を検証する

そこでわれわれは、これまでの既存研究を参考にしつつ、定量調査によって数多くのデータから「アート効果」を検証する取り組みを行いました。書籍でも事例として取り上げた、アートに関わる取り組み(アート・イン・ビジネス)を実施している寺田倉庫、マネックスグループ、スマイルズの3社に協力いただき、2019年3月から4月にかけて従業員の方々への定量調査を実施しました。

一方で、その他の一般企業の従業員に対しても同じ調査を実施し、これらの結果を比較してビジネスにおけるアートの効果を分析しました。

「アート効果」合成評価指標スコア平均の比較

一番分かりやすく、そしてわれわれも驚いた結果として、ブランディング、イノベーション、組織活性化などのビジネスにおけるアート効果すべてで、アート・イン・ビジネスを実施している3社の従業員の方が、一般企業の従業員よりも合成評価指標の平均スコアで上回っていました。

特に、本書で新たに追加した四つ目のアート効果「ヴィジョン構想」について、例えば、寺田倉庫がアートに関連した新事業を次々に生み出していったことや、スマイルズの従業員やステークホルダーが「自分ごと」として新規ビジネスを企画・実施していく企業文化の構築につながった効果などを検証することができました。

これらの企業は、長期にわたってアートに関連する取り組みを行ってきており、連載第2回で紹介したように従業員の方々の「アートの内在化」が進み、それらがビジネスにおける成果として従業員たちも知覚し評価できるまで効果を挙げていると考えられます。

書籍では、より詳細な定量調査データの分析として、連載第1回で解説した「アートパワー」が、どのように「アート効果」と結びついているのか関連性の分析を行ったり、また、アート・イン・ビジネスが組織文化や職場の働きやすさにどの程度貢献をしているのかについても分析を行っています。

とはいえ、「アートはビジネスに効くのか?」という大きな問いに対して、今回の定量調査による検証は、まだその第一歩にすぎません。今後も、ビジネスにおけるアートの効果検証にご関心のある皆さまに協力を頂きつつ、これから先も定量調査を基軸に取り組みを行い、検証を深めていきたいと考えています。

「無事でいること」が何より重要な今、企業ができることを世界から学ぶ

世界人口の半分に当たる39億人が外出制限を経験した2020年4月。日本でも「ソーシャルディスタンス」や「テレワーク」という言葉が定着し、報道やSNSの投稿に、海外動向を目にすることが増えました。

しかしニュースだけでは、実際の海外での日常やビジネスがどう動いているのかまでは見えません。ここでは、世界300拠点に展開する電通イージスネットワークの各地レポートをとりまとめ、2~3月の外出制限がもたらしたものを各地域で比較し、有事に企業はどういう情報発信をすべきかを考えていきます。

未曽有の外出制限がもたらしたものは?アジアが世界の羅針盤になった2~3月

電通イージスネットワークでは既に2月中旬、危機に対応するブランド事例やビジネスへの影響のレポートが、台湾・中国・シンガポールから発信されていました。新型コロナウイルスの流行によるビジネスへの影響は、2002年にアジアで起こったSARS流行時との類似があり、先読みして手を打てると考えられたからです。

実際にSARS後のアジアでは、観光業と製造業への打撃が大きく、一方では、医療関連・Eコマース関連・テレワーク関連・家庭内の娯楽関連の産業にはプラスの影響があり、その後の中国の発展を支えるEコマースやオンラインサービスが飛躍的に伸長するきっかけになりました。生活様式の変化でビジネスチャンスが生まれることが分かっていたのです。
(注:4月現在では、短期・アジア限定で収束したSARSより、長期・数回にわたって世界に蔓延したスペイン風邪に学び、長期に備える動きが活発になっています)

2002年2月の春節休暇の延長と外出規制がもたらしたもの(中国)
2002年2月の春節休暇の延長と外出規制がもたらしたもの(中国)

中国では今年2月の外出制限で、「O2O(Online to Offline)」「オンライン教育プラットフォーム」「家庭内での健康志向」ニーズが高まり、孤立を回避するための「即時・正確な情報把握」と「社会とのつながり・共感が得られるコミュニティー活動」も盛んになりました。これらの事象は、翌月の3月には世界中で確認され、欧米のレポートにも2月期のアジア各地域の示唆が引用され、類似の事象がデータで確認されていきました。

オンラインとオフラインの新しいトレンド(アメリカ)
オンラインとオフラインの新しいトレンド(アメリカ)

台湾ではSARSの教訓を生かした「防疫大作戦」、韓国ではMERS(中東呼吸器症候群)の教訓を生かした「三つのポリシー(1:情報公開、2:透明性、3:民主的プロセス)」が、新型コロナウイルスの感染確認の初期段階から実行されました。どちらも市民の混乱を防ぐ目的で、政府内の複数組織の見解をまとめ、自治体・民間企業と連携して正しい情報を素早く届ける仕組みです。韓国・台湾ともに、政府による毎日の記者会見、公式情報の積極的なソーシャルメディア発信、自治体と連携した感染経路の公開、市民からの問い合わせ先や検査の際にどこに行けばよいかの案内が徹底して行われました。

世界に学ぶといっても、もちろん地域によって諸条件も違うため、最終的な舵取りは、状況を見ながら、各地域で判断するしかありません。しかし他地域の情報や過去からの学びは、正確な地図にはならなくても、方向を知るコンパスにはなります。

他地域と同じように推移するかどうか、もし異なるならその変数は何かなど、正解のない時は「比較」することで行動の手がかりを得られます。特に今回の危機は、アジアと世界とで空間的・時間的なラグがあり、長期戦で第2波・第3波に備える必要もあるため、引き続きアジアは世界の先行事例として注目されそうです。

研修施設などを生活医療センターにして医療崩壊を防いだ(韓国)
研修施設などを生活医療センターにして医療崩壊を防いだ(韓国)

混乱期のソーシャルムーブメントはどのように起こるのか?

イタリアで全土にわたる外出制限の際に、自宅の窓辺で歌う住民たちの動画やニュースが流れました。心の痛む、非常に深刻な状況が続きますが、日本で「宅飲み」が流行したように、深刻な中でも明るく、ワインを片手にがんばろうと団結していたというイメージを、この窓辺で歌う光景から受けたかもしれません。

しかし実は、外出制限の初期のイタリアではスーパーの入店制限があり、小麦粉・パスタ・お米・油・調味料などの購入が優先され、不要不急の品である、ワイン・ビール・スナックは後回しでした。そして当時のブランド広告も「今は我慢の時」というまじめな内容が目立ちました。

その後、外出禁止令よりも人々の心を防疫に動かしたのは、#iorestoacasa宣言(私はうちにいます)。インフルエンサーが「おじいちゃん、おばあちゃんのために、会いに行かないで」と訴えました。このハッシュタグが出るようになってからレシピ検索が急上昇し、DIYへの関心が高まるなど、ようやく積極的に家にいる、という覚悟が決まり、3月下旬からは、クリック&コレクト(ネット注文商品を受け取り専用のピックアップポイントで消費者自身が受け取ること)の利用者が2倍以上に伸びました。そして広告でも積極的に家で楽しむ工夫や、サプライチェーンに関わる従業員に感謝するなど、外出制限以外の表現が増えていきました。このように、イタリアの外出制限時には、危機に慣れて、気持ちや行動がついていくまでに段階があったのです。

人々の感情と企業コミュニケーションのあり方に段階がある(イタリア)
人々の感情と企業コミュニケーションのあり方に段階がある(イタリア)

一方で中国に目を向けると、初期の外出制限に入ってすぐ、「加油」(がんばろう)というポジティブメッセージが早い段階から広告でもSNSでも受容されていました。台湾では「防疫大作戦」の政府広告に、医者や政治家だけでなく、俳優やインフルエンサーが出演し、自治体の公式アカウントから人気ドラマやアイドルをモチーフにした投稿など、深刻一辺倒ではなく、興味を持って情報を見てもらうためのユーモアにもあふれていました。

韓国では、武漢からチャーター機で戻った人々の隔離・受け入れ先となった牙山(アサン)市で、「市民が反対している」という報道に対して、それは全員ではないと伝えるため、自発的に「#Weareasan」(私たちはアサン市民です)のハッシュタグをつけ、隔離されている人々に温かいメッセージを届けました。

応援メッセージ(中国)(韓国)
左:外出制限初期からSNS・広告で見られた応援メッセージ(中国)
右:牙山市民からのメッセージを伝えるハッシュタグ(韓国)

イタリアと中国・台湾・韓国におけるソーシャルムーブメントの立ち上がりの速さの違いは、感染者数や、もともとの国民性によるものとは思えません。人々が緊急事態に慣れて「何をすればいいか」分かっている段階と、心の準備ができていない不安な段階では、情報に対する許容度が違うのでしょう。中国・台湾・韓国ではSARSやMERSの記憶も新しく、政府の対応も迅速で、人々が自分たちのやるべきことが分かっていたのです。

日本を見ても、3月中旬までは何が正解か分からず、全体として情報に対する不信感がありましたが、いよいよ緊急事態宣言となったときにはある程度、状況にも情報にも慣れてきていました。そして3月末頃、ユーチューバー、スポーツ選手、芸能人などからも次々に「家にいよう」というメッセージが発信されていきます。そこでようやく政府や専門家が発信する警告に従うだけでなく、「家にいることが、一人一人ができる社会貢献なのだ」という共通認識が生まれ、企業からの「みんなで乗り越えよう」「医療関係者の人に感謝しよう」という前向きなメッセージが受け止められるようになっていきます。

次の連休も、三密を避けるだけでなく、人と距離をとることを徹底することが医療関係者の方への最大の貢献となります。人々が警告の情報に飽きないよう、表現を変えて「やるべきこと」のメッセージを出し続けることが、情報発信に一層求められる局面です。

実は、東日本大震災時にも買いだめがあり、情報の正確さを問いただすパニックがあり、情報が一巡して落ち着くと、みんなで復興支援しようというムーブメントが起こりました。しかしながら、いずれ「一丸となって戦おう」となると分かっていても、いち早くメッセージを打てばいいわけではありません。先に見たイタリア同様に、実際に自分ごととして受け入れられるまでには大量の多様な情報に接する「咀嚼の時間」が必要でした。

東日本大震災と新型コロナウイルス時の状況比較:3月(日本)
東日本大震災と新型コロナウイルス時の状況比較:3月(日本)

他アジアの例に学べることは、雰囲気を盛り上げる企業からのメッセージを出す前に、「早期・短期間に大量の公式情報を出し、何をすれば何の影響があるかを示し、パニックを防ぐ」ことの大切さです。政府からの深刻なメッセージだけでなく、オピニオンリーダーからも批判ではなく、前向きに一人一人が何をすべきかを発信しつづけた後で、やっと人々に企業からの前向きなメッセージが受け止められるようになります。パニック時の段階別の情報発信については、海外に学ぶことはまだありそうです。

企業・ブランド信頼に向けて:危機における情報発信(日本)
企業・ブランド信頼に向けて:危機における情報発信(日本)

ブランドパーパス(存在目的)の有無は、有事の時の初動と長期ファンベースの獲得に直結する

この有事の時に初動の速かったブランドは他と何が違ったのでしょうか。もちろんオンラインサービス系の社会貢献活動やメッセージは活発でした。しかしそれ以外で好調なカテゴリ、例えばマスクや消毒による肌荒れでスキンケアが売れるからといって、製品の効能を知らせるメッセージを望むでしょうか。ユニリーバが複数の国・複数の衛生商品ブランドでメッセージをする際に「他のブランドを使ってもよいので、手をよく洗いましょう」という発信が注目されたように、個別の製品特長を伝えるよりも企業姿勢が心に響くタイミングでした。

また、直接的に外出制限でニーズが生まれていない領域でも「この機にできることはないか?」という積極姿勢を見せたブランドがいくつかあります。例えば、日本ではローソンが「街のほっとステーション」というスローガンが古くから存在したように、地域社会貢献という姿勢が現場まで徹底されていました。そのため、3月2日からの小中高の全国一斉休校に即時対応して、学童へのおにぎり無償配布を告知する、給食の牛乳を販売できなくなった酪農家の支援のため、カフェオレなどミルク製品を休校期間に半額にするなどの行動が速かったのです。

「どんなときでも、ブランドが大事にしていることは変わらない」という姿勢があるから、「今こそ、自分たちができることからやろう」という行動喚起を促すメッセージや姿勢に共感や説得力が生まれます。ブランドパーパスに基づいて、下記のポイントを満たす行動がとれるかは、危機の時ほど明らかになります。

  • その事業・ブランドは、どう社会に貢献するために存在しているのか
  • その事業・ブランドの歴史に紐づいた独自のもので、生活者の今の期待に応えているか
  • タッチポイントに関わるすべての人々を奮い立たせるものになっているか
  • その事業・ブランドは、顧客や従業員が社会貢献の活動ができるよう支援をしているか

危機によって根付いた新しい生活様式は、進化の方向を大きく変えるより、むしろ今の進化を加速していきます。デジタルとリアルを融合した顧客体験の刷新、ECやオウンドメディアなど自社体制の変革、そして今回取り上げたブランドパーパスの浸透。これらは人々の社会的行動を促し、“ME”ではなく、“WE”の力を加速させていくでしょう。

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