税務調査の通知後でも税理士は代えられる?手順と注意点を解説

税務調査の事前通知が届いたあとで、現在の顧問税理士の対応に不安を覚え、別の税理士に代えられないかと考える経営者は少なくない。調査という非日常の局面では、日頃は見えにくかった対応力の差が表面化しやすいためだ。

結論からいえば、税務調査の通知後でも税理士の変更は可能である。ただし、調査がどの段階まで進んでいるかによって、変更のしやすさは変わる。

本記事では、税務調査の流れに沿って変更できるタイミングを整理し、引き継ぎの手順と、新たに選ぶ税理士法人を見極める条件を解説する。

結論:税務調査の通知後でも税理士の変更は可能

税務調査の通知を受けた後であっても、税理士を変更すること自体は可能だ。納税者には、誰に税務代理を依頼するかを選ぶ権利があり、調査の途中だからといってその権利が失われるわけではない。ただし、円滑に変更するには、いくつかの前提を整える必要がある。

意識したいのは3つの点だ。1つ目は、事前通知から実地調査までの期間に応じて、変更の難易度が変わること。調査日が迫っているほど、引き継ぎに使える時間は短くなる。2つ目は、引き継ぎ資料の準備、立会日程の調整、新しい税理士の調査対応力という3点を整えておく必要があること。3つ目は、実地調査の直前や修正申告の交渉中など、変更を急ぐとかえって不利になる、現実的でないケースもあることだ。これらを踏まえれば、通知後でも落ち着いて変更を進められる。以下、それぞれを詳しく見ていく。

税務調査の流れと税理士を変更できるタイミング

税理士を変更できるかは、調査がどのフェーズにあるかによって変わる。まず税務調査の一般的な流れを押さえたうえで、各段階での変更可否を整理する。

参考:国税庁「税務調査手続について(国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係)」

事前通知から実地調査までの流れ
税務調査は、多くの場合、税務署からの事前通知で始まる。事前通知では、調査の対象となる税目や期間、実地調査を行う日程などが示される。この通知は、納税者が税務代理を委任している税理士に対しても行われる。

税理士は、税務代理権限証書を税務署に提出することで、納税者を代理して通知を受け取り、調査日程を調整し、当日の立会人となる。事前通知から実地調査までには、日程調整のための一定の期間が設けられることが多く、この期間が、税理士を変更する場合の準備時間にあたる。

各フェーズで税理士を変更できるか(事前通知後/実地調査直前/調査中/指摘事項後)
変更のしやすさはフェーズごとに異なる。事前通知を受けた直後の段階は、実地調査までに引き継ぎの時間を確保しやすく、原則として変更しやすいタイミングだ。一方、実地調査の直前は、新しい税理士が過去の申告内容を把握する時間が足りず、現実的に難しいことが多い。

調査が進行している最中の変更は、不可能ではないものの、論点が固まりつつある局面では推奨されにくい。指摘事項が示された後は、修正申告や更正の請求といった次の手続きに向けて、あらためて体制を整える意味で変更を検討する余地がある。自社の状況がどのフェーズにあたるかを当てはめて考えるとよい。

変更が現実的でないケース
変更を急ぐと、かえって不利になる場面もある。たとえば、実地調査の直前で、新しい税理士が資料を読み込む時間が取れない場合、引き継ぎが不十分なまま当日を迎えるリスクがある。修正申告の交渉中で、調査官との間で論点や着地点が固まりつつある段階も同様だ。途中で代理人が代わることで、これまでの経緯の共有に時間がかかり、交渉が振り出しに戻ってしまう懸念がある。

こうした局面では、変更そのものを否定する必要はないが、タイミングを慎重に見極め、現行の税理士との関係をどう整理するかを含めて判断したい。

税務調査の通知後に税理士を変更する手順

変更を決めた場合の実務的な流れを、3つのステップに分けて整理する。緊急性の高い局面でも、順序立てて進めれば混乱を避けやすい。

ステップ1 現行税理士への解約通知と税務代理権限証書の取り扱い
最初のステップは、現行の税理士への解約の申し入れである。顧問契約には解約予告期間が定められていることが多いため、契約書の条項を確認しておきたい。

あわせて重要になるのが、税務署に提出されている税務代理権限証書の取り扱いだ。税務代理人を変更する場合、新しい税理士が自らの税務代理権限証書を提出することになる。現行の税理士との関係を整理しつつ、税務署への代理人の切り替えが滞りなく行われるよう、双方の手続きの段取りを確認しておくことが、後の混乱を防ぐ。なお、現行の税理士の側から、税務署に「税務代理の委任が終了した旨の通知書」を提出する手続きもある。なじみは薄いものの、法令に沿って運用している事務所では知られた対応であり、代理人の切り替えを明確にしておくうえで、こうした手続きの有無もあわせて確認しておくとよい。

ステップ2 過去申告書・帳簿・調査関連資料の引き継ぎ
次に、新しい税理士が調査に対応できるよう、必要な資料の引き継ぎを行う。調査では過去の申告内容が問われるため、引き継ぐべき資料は幅広い。具体的には、次のようなものが挙げられる。

1. 過去3〜5期分の確定申告書・決算書
2. 総勘定元帳・仕訳帳などの会計帳簿
3. 請求書・領収書・契約書などの取引関係書類
4. これまでに提出した税務代理権限証書・書面添付の書面
5. 税務署から届いた事前通知の書面・調査に関する連絡記録

これらの資料がそろっていると、新しい税理士は過去の申告の論点を短時間で把握しやすい。引き継ぎの抜け漏れは、調査当日の対応の質に直結するため、現行の税理士の協力も得ながら、漏れなく受け渡すことが望ましい。

ステップ3 新税理士による調査対応方針の整理と立会日程の調整
資料を引き継いだ新しい税理士は、過去の申告内容を確認し、調査で論点になりそうな箇所を見立てたうえで、対応方針を整理する。そのうえで、税務署と実地調査の立会日程を調整する。

受任から立会いまでに必要な期間は案件により異なるが、資料の確認と方針整理を考えると、一般的には2〜3週間程度を見込んでおくと余裕を持ちやすい。日程に余裕がない場合は、その制約も踏まえて、現実的な対応方針を新しい税理士と相談することになる。

税務調査の通知後に選ぶ税理士法人の4つの条件

通常の顧問選びと異なり、調査の通知後という緊急性の高い局面では、確認すべき観点が絞られる。ここでは、短時間で見極めるための4つの条件を整理する。なお、「お任せください」と請け合うだけでなく、想定されるリスクを率直に共有し、具体的な防衛策を一緒に考えてくれる姿勢があるかも、あわせて見ておきたい。

条件1 国税OBの在籍と所属部署経験
1つ目は、国税出身者(国税OB)が在籍しているか、そしてその経歴である。国税OBは、調査官がどのような視点で申告内容を見るかを実務として把握しているため、調査当日の論点整理で力を発揮しやすい。

確認したいのは、在籍の有無だけでなく、所属していた部署(資産課税・法人課税・個人課税・調査査察など)や在職年数だ。自社の調査対象となる税目と経歴が噛み合っているかで、機能の仕方は変わる。なお、国税OBの知見は強力な後ろ盾になる一方、当局寄りの姿勢では本末転倒である。納税者側に立って、対等に交渉できるかどうかもあわせて確認したい。

条件2 直近の税務調査立会い実績の開示
2つ目は、直近の税務調査の立会い実績がどの程度開示されているかである。「実績豊富」といった定性的な表現だけでは、実態は読み取りにくい。どの業種・規模の調査に、どのくらいの頻度で立ち会ってきたかという、開示の質を見ることが役に立つ。

同業種・同規模の立会い経験があれば、調査官が確認しやすい論点や必要書類を先読みでき、限られた時間での準備がスムーズになりやすい。特定の件数を断定する表現よりも、対応の中身を具体的に説明できるかどうかに注目するとよい。

条件3 書面添付制度の運用実績
3つ目は、書面添付制度を運用しているかである。これは税理士法第33条の2に基づく制度で、税理士が申告書の作成にあたって計算・整理した事項などを記載した書面を申告書に添付するものだ。書面添付がある申告については、実地調査の前に税理士が意見を述べる機会(意見聴取)が設けられる。

日頃から書面添付を運用している事務所は、申告品質を高める体制を備えていると評価できる。調査後に新たな顧問として継続を考える場合、こうした運用の有無は、将来のリスク低減の観点でも確認しておきたい。

参考:日本税理士会連合会「書面添付制度」

条件4 機密書類の管理体制(ISO27001等)
4つ目は、調査で扱う書類をどう管理しているかである。税務調査では、帳簿や契約書、給与関連資料、電子データなど機密性の高い書類を新しい税理士に引き継ぐことになる。これらを安全に受け渡し、管理できる体制があるかは見落とされがちな観点だ。

情報セキュリティの国際規格であるISO27001を取得している事務所は、第三者の審査を通じて情報管理の仕組みが継続的に確認されている。短期間で多くの資料を預けることになる調査対応の局面では、こうした客観的な裏づけが一つの安心材料になる。

税務調査の通知後でも受任できる税理士法人の例

ここからは、前章の4条件に沿って、東京エリアで税務調査への対応体制を公表している税理士法人を紹介する。順位付けではなく、同じ観点で比較できるよう整理した。まず比較表で概要を示し、その後に各社を順に紹介する。各社の情報は執筆時点の公式サイト等の公開情報に基づくため、最新の状況は各社サイトで確認してほしい。

辻・本郷税理士法人
全国に拠点網を持つ大手の総合系税理士法人である。公開情報では、2,000名を超えるスタッフと80以上の拠点を擁するとされ、調査の通知後に新たな代理人を探す局面でも、所在地を問わず相談先を見つけやすい規模感が特徴だ。

税務調査の観点では、元国税局長や元国税調査官が在籍していることを公式サイトで明らかにしており、組織として調査に対応する体制がうかがえる。緊急の受任にあたっては、どの拠点のどの担当者が実際に関与し、引き継ぎにどの程度の期間を要するのかを、相談の段階で具体的に確認しておくと、限られた時間のなかでも段取りを立てやすい。

参考:辻・本郷税理士法人(公式サイト

TOMA税理士法人
「100年企業創り」を掲げ、中小企業の長期的な成長を支援する総合型のグループである。グループ全体で約200名規模の体制を公表し、税務に加えて法務・労務などの専門領域を士業連携でカバーする点が特徴とされる。調査対応においては、国税OBが8名在籍すると公表しており、日常の税務顧問とは別に、専門部署が連携して申告品質の管理から調査時の対応までを進める体制がうかがえる。

書面添付の運用や、グループ各社でのISO認証取得も公表しており、申告の透明性と情報管理の両面を仕組みで支えようとする姿勢が読み取れる。途中からの受任が可能かどうか、対応できる日程の余裕とあわせて確認しておきたい。

参考:TOMA税理士法人(公式サイト

小谷野税理士法人
東京を拠点とする中堅規模の総合系税理士法人である。公認会計士・税理士等30名を含む総員約80名が所属し、国税OB在籍2名、外部顧問1名という布陣を公表している。現役の有資格者と国税出身者が連携することで、過去の申告内容の確認から調査当日の対応、その後の修正申告・更正の請求までを一貫して進めやすい。

途中からの受任では資料の引き継ぎが要になるが、情報セキュリティのISO27001を2011年に取得し(約15年継続)、機密性の高い書類を扱う体制を第三者認証の形で備えている。事業承継・相続・M&Aなどへのワンストップ対応も含め、調査の前後をひと続きで任せたい中小企業にとって、確認しておきたい一社だ。

参考:小谷野税理士法人(サービス紹介公式サイト

FAQ:税務調査の通知後の税理士変更でよくある質問

税務調査の通知後に税理士の変更を検討する経営者から、挙がりやすい3つの疑問について要点を整理する。

税務調査の途中で税理士を変更した場合、調査官への通知は誰が行いますか?
一般的には、新しく就任する税理士が、自らの税務代理権限証書を税務署に提出することで、代理人の変更が税務当局に伝わる。納税者本人が個別に届け出る必要があるかどうかは状況によるため、新旧の税理士と段取りを確認しておくとよい。

現行の税理士が提出していた税務代理権限証書の取り扱いも含めて、代理人の切り替えが調査の進行に支障をきたさないよう、双方の手続きのタイミングを合わせておくことが望ましい。

修正申告の提出後に税理士を変更しても問題ありませんか?
修正申告が完了した後の段階であれば、通常の顧問変更と同じタイミングと考えてよい。調査に伴う一連の手続きが区切りを迎えているため、引き継ぎの負担も比較的軽い。ただし、提出した修正申告の内容に見直すべき点がないか、念のため確認しておきたい。納め過ぎが判明した場合には、更正の請求という手続きで減額を求めることができる。新しい税理士に過去の申告を一度確認してもらい、追加の対応が必要かを見極めておくと安心だ。

税務調査対応のみを単発で依頼することは可能ですか?
単発の依頼も可能な場合がある。税理士法人によっては、顧問契約とは別に、税務調査への対応のみを単発で引き受けるスポット契約に応じているところもある。一方で、顧問契約を前提とし、スポットの依頼は受けていない事務所もある。

調査対応のみを依頼したい場合は、その可否と費用の設定を事前に確認することが欠かせない。スポットで依頼する場合でも、過去の申告資料の引き継ぎは必要になるため、依頼の範囲と必要書類を明確にしたうえで相談するとよい。

まとめ:税務調査通知後の税理士変更は3つの視点で判断する

税務調査の通知後でも、税理士の変更は可能である。判断にあたっては、3つの視点を押さえておきたい。1つ目は変更可否で、事前通知後・実地調査直前・調査中・指摘後というフェーズによって変更のしやすさが変わる。2つ目は手順で、現行税理士への解約と税務代理権限証書の整理、過去資料の引き継ぎ、立会日程の調整を順に進める。3つ目は新しい税理士を選ぶ4条件で、国税OBの在籍、立会い実績の開示、書面添付の運用、機密書類の管理体制を確認する。

緊急性の高い局面ほど、調子のよい言葉に流されず、事実に基づいて冷静に判断することが大切だ。現行の顧問の対応に不安を感じている場合は、調査がどのフェーズにあるかを整理したうえで、早めに相談先を検討しておきたい。税務調査への対応に不安がある場合は、税務調査対応の無料相談などを活用し、自社の状況に照らして変更の可否や段取りを確認することをおすすめする。

※本稿はPR記事です。