リバースモーゲージ利用が急拡大…「利息のみ返済」の裏で広がる利息格差のカラクリ

●この記事のポイント
リバースモーゲージの利用が拡大する一方、日本経済新聞によると融資額や借入時期で総利息に1000万円以上の差が生じる例も。2026年6月の日銀利上げ(0.75%→1.0%、31年ぶり高水準)を踏まえ、金利上昇・担保割れ・長生きリスクと、ノンリコース型「リ・バース60」など賢い利用法を専門的に解説する。

 自宅を担保に老後資金を借り入れる「リバースモーゲージ」の利用が広がっている。年金だけでは生活費が足りない、退職時に住宅ローンが残っている――そうした事情を背景に、生前は「利息のみ」を支払えばよいという仕組みが注目を浴びている。

 ただし、日本経済新聞は2026年6月、融資額や借り入れ時期によって総利息に1000万円以上の差が生じるケースがあると報じた。制度そのものは老後の資産活用に役立つ選択肢である一方、使い方を誤れば想定以上の負担につながりかねない。本稿では、リバースモーゲージの基本的な仕組みと、利息に大きな差が生まれる背景、そして注意すべきリスクと賢い利用法を整理する。

●目次

リバースモーゲージの仕組みと拡大の背景

 リバースモーゲージは、自宅(土地・建物)を担保として金融機関から融資枠を設定してもらい、契約者が生きている間は利息のみを返済し、元本は契約者の死亡後に自宅の売却などによって一括返済する仕組みだ。日本経済新聞の報道によれば、主要金融機関からの推計融資残高は2000億円を超えており、近年は住宅ローンの借り換え目的での利用も広がっているという。

 利用が拡大している背景には、①定年時に住宅ローンが残っている人の借り換えニーズ、②年金だけでは足りない生活費の補填、③「持ち家を子に残さなくてもよい」と考えるシニア層の価値観の変化、などが挙げられる。毎月の返済負担を大幅に軽減できる点は、年金収入のみで暮らす高齢者にとって大きな魅力となっている。

利息に大きな差が生じる要因

 同じリバースモーゲージでも、利用の仕方によって総利息の負担は大きく変わる。主な要因は次の3つだ。

(1)借入時期・融資額の違い
必要な都度、少額を借り入れる場合と、当初から融資枠の大部分をまとめて借りる場合とでは、利息計算の元となる借入残高の推移が異なる。借入期間が長期化するほど、この差は拡大しやすい。

(2)利息の支払い方式の違い
毎月きちんと利息を支払う方式に対し、「生前は一切支払わず、利息も元金に組み入れて死亡時にまとめて清算する」タイプの商品もある。この場合、未払いの利息にさらに利息がかかる形になりやすく、借入残高が想定以上に膨らむ可能性がある。契約時にどちらの方式かを必ず確認したい。

(3)金利上昇局面への突入
リバースモーゲージの多くは変動金利型で、民間金融機関の金利水準はおおむね年3〜4%台とされる。ここで見過ごせないのが、金融政策の転換だ。日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1.0%に引き上げることを決定した。これは1995年以来、31年ぶりの高水準である。市場関係者の間では、今後も年内から2027年にかけて追加利上げが続き、政策金利が1.5%前後まで切り上がるとの見方が多い(日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査など)。変動金利で長期にわたり借り入れを続ける場合、こうした金利上昇局面では総利息の負担が着実に増えていく点を踏まえておく必要がある。

知っておくべき3つのリスク

(1)金利上昇リスク
変動金利型の場合、基準となる短期プライムレートなどが上昇すれば、毎月の利息支払額もそれに応じて増加する。年金収入が中心の家計にとっては、じわじわとした負担増につながりやすい。

(2)担保割れ(不動産価値下落)
リスク 多くの商品では、数年ごとに担保となる自宅の再評価が行われる。地価下落などで担保評価額が下がり融資限度額が引き下げられると、超過分の一括返済を求められるケースがある。

(3)長生きリスクと配偶者の居住継続リスク
想定より長く生きて融資枠を使い切ってしまうと、その後は利息の支払いだけが残り、新たな生活資金を確保しにくくなる。また、契約者が死亡した際、同居する配偶者が契約を単独で引き継げるかどうかは商品によって異なる。連帯債務型であれば配偶者はそのまま利息を払い続けて住み続けられるが、単独契約の場合は審査が必要になることもあり、事前確認が欠かせない。

賢く利用するための3つの対策

対策1:必要な分だけ借りる
生活費の補填目的であれば、一括で大きく借りるのではなく、月々の必要額に応じて都度借り入れる方式を検討したい。借入残高の増加ペースを抑えることが、総利息の圧縮につながる。

対策2:ノンリコース型の商品を検討する
住宅の建て替えやリフォーム、住宅ローンの借り換え目的であれば、住宅金融支援機構が提携金融機関を通じて提供する「リ・バース60」も選択肢の一つだ。ノンリコース型を選べば、契約者の死亡後に自宅を売却しても借入残高を返済しきれなかった場合、相続人がその差額を負担する義務を負わない仕組みになっている(ノンリコース型はリコース型より金利がやや高めに設定される傾向がある点には留意したい)。

対策3:相続人と事前に話し合っておく
自宅が将来的に売却される可能性がある以上、「実家を相続できる」と考えている子どもがいる場合は、契約前に家族間で認識をすり合わせておくことが、後々のトラブル防止につながる。

 住宅金融に詳しいファイナンシャルプランナーの田中真一氏は「相談者の多くは、毎月の返済額の低さにばかり目が行きがちだが、本当に確認すべきは金利タイプと利息の清算方法だ。特に金利上昇局面では、変動金利型のリスクをどこまで許容できるか、家計全体でシミュレーションしておくことが欠かせない」と指摘する。

 リバースモーゲージは、持ち家という資産を老後の生活資金に活用できる有力な選択肢であり、年金収入だけで暮らすシニア世代にとって心強い制度になり得る。一方で、借入方式や金利タイプの選び方によって総利息に大きな差が生じることも事実だ。特に日銀の利上げ局面が続く現在の金利環境では、目先の返済額の軽さだけで判断せず、金利動向や自身のライフプランを踏まえたうえで、複数の金融機関の商品性(都度借り入れの可否、ノンリコース型の有無など)を比較検討することが、将来の安心につながる。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=田中真一/ファイナンシャルプランナー)