最終回前に最低視聴率…不満だらけの『日本沈没』視聴者を納得させられる結末とは

 視聴率では『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)と首位争いをしながらも、その内容については、スタート当初から賛否両論の状態が続いていた『日本沈没―希望のひと―』(TBS系)。

 しかし、12月5日の第8話は視聴率が過去最低を記録したほか、ネット上には否定的なコメントが大半を占める結果を招いてしまった。次回の12日放送は最終話であり、しかも2時間3分拡大スペシャル。つまり、「2話分を一気に放送して締めくくろうとしている」のだが、その前に暗雲が垂れ込めているのは、なぜなのか。

 真っ先に挙げられるのは、「放送中に現実の日本でも地震が繰り返し発生する」という思わぬ追い風を受けながらも、逆に「緊迫感や怖さを感じない」と言われてしまったところに表れている。

設定の“粗”が多すぎてツッコミ

 序盤から「会議のシーンばかり見せられている」「香川照之をはじめ演技が大げさすぎて冷める」、中盤に入っても「日本未来推進会議のメンバーに悲壮感がない」「関東が沈みかけたのにこの程度の動揺で済むのか」などと緊迫感や怖さを感じない理由がネット上にあがり続けていた。その声は収まるどころか、よりシリアスなはずの終盤に来てますます目立っている。

 第8話終了後に書き込まれたネット上の声を拾っていくと、「各国との交渉シーンばかりで見るのをやめた。旧作のような絶望感がない」「移民交渉が終わるまで地殻変動が待ってくれているように見える」「単なる政治駆け引きドラマになってしまった。昔見た『日本沈没』のような緊張感や絶望感、切迫感がまったくない」などと軽さを指摘する声が続出。

 さらに、「余震とか、がけ崩れとかがあちこちで起きてなきゃおかしい」「原発がみんな海中に沈んだらどうなる?」「巨大津波は起きない?」「日本が沈むなら中国にも影響が出て移民受け入れどころではなさそう」「韓国、台湾、フィリピン、インドネシアなども影響が出ると思うんだが……」「巨大企業を政府が売れるの?」「何でアメリカではなく中国に頼るのか」「なぜ大臣クラスの人間たちがほとんど出ないのか、なぜ国連が絡まないのか」などの真っ当なツッコミが続出。

 これらを書き込んでいる人々も、どこかで「このドラマにリアルや整合性を求めるのは野暮」だとわかっているだろうが、それでも設定の“粗”が多すぎてツッコミを入れずにはいられないのだ。

 あるいは、中盤あたりから「『日本沈没』はツッコミを入れながら楽しむドラマだ」と気づいていたが、地震というハイリスクな題材を扱っていることで、割り切れずに不満を漏らしてしまう人が少なくないのではないか。

「地震災害」を描くリスクを回避

 ただ、日本が沈むという映像だけならまだしも、地震によるビル倒壊、がけ崩れ、火災、爆発、津波、度重なる余震などを地上波のゴールデンタイムで描くことは難しい。

 少なくとも東日本大震災の被災者や遺族への配慮が必要なのは間違いなく、だからTBSはパニック色を薄くして、「信じられるリーダーはいるか?」という点にスポットを当て、希望を見せようとしているのだろう。

 それにしても、「世界各地にジャパンタウンを作って、インターネットでつながればいい」という解決策は、さすがに「浅い」と言われても仕方がないものだった。実現性が低そうな上に、もし実現したところで公平感は薄く、国民が救われないとみなし、「領土を買う方法のほうが現実的」と書き込む人々もいたくらいだ。

 ちなみに、ネット上で最も支持を集めていたのは、「移民させられて、荒れ地を開拓しなければいけないのなら、日本とともに沈むことを選ぶ」という声。「それが一番リアルな日本人の姿」と言い切り、ドラマの内容に不満を漏らす人の声が目立っている。

 第8話のラストでは、東山栄一総理(仲村トオル)と世良徹教授(國村隼)がテロに遭い、さらなる混乱を予感させたが、最終話は前述したツッコミや不満の声を吹き飛ばす、人間のリアルな姿を見せられるのだろうか。

翌週の『M-1グランプリ』から逃げた

 その最終回だが、次回予告映像では、「日本人の移民受け入れ停止」「最後の一人まで諦めない」「遂に起きてしまう、日本沈没」「次々と起こる最悪の瞬間」などの危機的なテロップが次々に映し出されている。

 さらに、田所雄介博士(香川照之)は「始まったぞ!」と叫び、里城弦副総理(石橋蓮司)は「日本列島が真っ二つに……」と言葉を失い、富士山が噴火。椎名実梨(杏)は「天海さん(小栗旬)、聞こえますか?」と涙声で祈り、常盤紘一(松山ケンイチ)は「必ずまたどこかで会おう」と気丈に語っていた。

 どこをどう切り取っても絶望しかなさそうな展開だが、どのように決着をつけるのか。単に日本を脱出して生き残るだけでなく、希望を見つけるところまで描かなければ、ここまで辛抱強く見続けてきた視聴者を納得させることはできないだろう。

 ちなみに日曜劇場の前作『TOKYO MER~走る緊急救命室~』は、「死者ゼロ」の救命救急チームを描く、ファンタジー色の濃い医療ドラマだった。『日本沈没』は、それ以上にファンタジー色が濃い作品だけに、それを生かしたアッと驚くポジティブな結末を見せて視聴者を笑わせるくらいでもよさそうだ。

 たとえば、登場人物の全員が生き生きとした笑顔を見せるラストシーンでもいいのかもしれない。「ありえない」というツッコミと、「まあ最後はこれくらいのほうがいい」という安堵の声が飛び交うのではないか。

 業界内では、「最終話を2時間にしたのは、翌週に放送される『M-1グランプリ』(ABC・テレビ朝日系)を避けるため」「視聴率を下げたくないから逃げた」なんて声も出ている。だからこそ、「この内容なら最終話は2時間特番で正解」と思わせる脚本・演出を見せてほしいところだ。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。